JP2018024104A - 潜像印刷物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 印刷画像に対する反射光量を高めるとともに色彩表現を豊かにし、出現する潜像の視認性が高くかつ同じ領域内に動的効果を奏する潜像画像とモアレ模様を配しても、それぞれの視認性が低下しない潜像印刷物を提供する。【解決手段】 樹脂を含む材料により形成された蒲鉾状要素群と、正反射光下において蒲鉾状要素と異なる色彩の明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一方の光学特性を備えた光反射要素群と、基画像を分割及び/又は圧縮した透明又は半透明の潜像要素群から成る印刷画像が形成され、蒲鉾状要素群の上に、光反射要素群、潜像要素群の順に積層又は潜像要素群、光反射要素群の順に積層され、蒲鉾状要素群及び光反射要素群は、要素のピッチ、配置角度、形状のいずれか一つが異なることで要素群同士の干渉によりモアレ模様が形成される。【選択図】 図5

Description

本発明は、偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等のセキュリティ印刷物の分野において、光が入射することで、画像のチェンジ効果、あるいは動画的な視覚効果が生じる、高い真偽判別性と偽造抵抗力を備えた潜像印刷物に関する。
複数の画像が切り替わる画像のチェンジ効果や、画像が動いて見える動画効果は、人目を惹きやすく、偽造することが困難であることから、近年、セキュリティ印刷物の真偽判別要素として用いられる傾向にある。これらの効果を備えた代表的な技術は、ホログラムであり、チェンジ効果や動画効果を有する様々な形態で、銀行券やパスポート等の高度なセキュリティが要求されるセキュリティ印刷物にも貼付されて広く用いられている。
一方、ホログラム以外にも、パララックスバリアやレンチキュラー等の公知技術を用い、僅かな角度変化で複数の画像が切り替わる画像のチェンジ効果や、画像が動いて見える動画効果を備えた真偽判別要素も、既に存在している。
しかし、ホログラムは、銀行券を代表とする各種セキュリティ印刷物に用いられているものの、一般的な印刷物と比較すると、製造工程の複雑さと高い製造コストに大きな問題がある。パララックスバリアやレンチキュラー、マイクロレンズアレイ等を用いた真偽判別要素は、クリア層かレンズが必要となることから、基材がほぼプラスティックに限定される上、印刷物には一定の厚み(少なくとも150μm程度)が必要となり、厚さに制限のある印刷物には用いることができず、一定の厚みが許されるプラスティック製カード以外には採用されない傾向にある。
以上の問題を解決するため、本出願人は、高光沢で盛り上がりを有した蒲鉾状画線群の上に潜像画線群を重ね合わせて形成する技術であって、潜像画線群の中の複数の潜像が観察角度に応じてチェンジする効果を実現した偽造防止技術を既に出願している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。この技術は、蒲鉾状画線に特定の角度で光が入射した場合に、蒲鉾状画線群の画線表面のうち、入射光と直交する角度を成す画線表面のみが強く光を反射する現象を利用することで、光を反射した画線表面に重ねられた潜像画線群の一部の潜像のみが反射光量や色彩の違いによって可視化される。また、パララックスバリアやレンチキュラーの10分の1程度の厚さで形成することが可能であって、製造技術も従来からある製版技術と印刷技術を活用することで容易に実施可能であり、かつ、一般的な印刷物と同じコストでホログラムと同様なチェンジ効果を備えた印刷画像を形成することができるという優れた特徴を有する。
また、これらの特許文献1や特許文献2の技術を応用した技術として、微細な模様同士が干渉し、模様の一部がサンプリングされることで拡大されたモアレ模様として視認される現象(モアレ拡大現象)やインテグラルフォトグラフィ方式の画線構成を用いて、特殊な立体的な視覚効果と動画的な視覚効果を実現した形態の技術が存在する(例えば、特許文献3、特許文献4及び特許文献5参照)。この技術は、正反射光下で出現した潜像が入射光の角度や観察者の観察位置に応じて立体感を伴いながら左右に動いて見えるという効果を有する。
加えて、特許文献1から特許文献5までの技術の効果をエンボス加工と光反射要素群の組合せによって実現した技術が存在する(例えば、特許文献6参照)。そして、特許文献1から特許文献5までの技術の原理を用いて、色彩変化の効果をより高めた技術も存在する(例えば、特許文献7及び特許文献8参照)。
特許第4682283号公報 特許第4660775号公報 特許第4844894号公報 特許第5131789号公報 特許第5200284号公報 特開第2013−240918号公報 特開第2014−083721号公報 特開第2014−108576号公報
特許文献1から特許文献6までに記載の全ての従来技術に共通した問題として、正反射光下において、印刷画像中に表現することができる色彩が制限されるという問題があった。特許文献1から特許文献6までに記載のいずれの技術においても、その効果発現の原理に基づく制約から、正反射光下で出現する画像が表現できる色彩は、蒲鉾状要素群が拡散反射光下から正反射光下にかけて発することができる色彩に限定される。
仮に、蒲鉾状要素群がカラーフリップフロップ性を備えていたとして、拡散反射光下では黒色で、正反射光下では金色に変化する特性を有していた場合、正反射光下で表現できる色彩は、暗い黒から明るい金色までの合成色のグラデーションのみであり、加えて潜像要素群によって形成される基画像には、正反射光下での蒲鉾状要素群の色彩の明るさを最大として、それより暗い色彩しか表現できない。
以上のように、それぞれの技術において印刷画像中に表現できる色彩は蒲鉾状要素群の光学特性に支配されており、この蒲鉾状要素群に、いかに優れた機能性顔料を用いたとしても一つの要素単体で表現できる色彩表現域には限界があり、結果として印刷画像中に適用できる色彩表現域が狭いという問題があった。
また、上記の印刷画像中に適用できる色彩表現域が狭いという問題に端を発し、図20(a)に示すように、正反射光下で出現する基画像(f)の周囲の背景には、一定のブランク(g)があった方が好ましいというデザイン上の制約が同時に生じていた。具体的に説明すると、仮に図20(b)や図20(c)に示すように、正反射光下で出現する基画像(f)と、基画像(f)と隣接した背景に基画像(f)とは別の模様(h又はi)を配置した場合、前述のとおり印刷画像中で表現可能な色彩は限定されているため、基画像(f)と模様(h又はi)は同じ色相に属する、完全に同じ色彩か、あるいは明暗のみが異なる色彩でしか表現不可能であって、結果的に互いの階調を相殺し、基画像(f)と模様(h又はi)の視認性が相互に損なわれるという問題があった。
この問題は、特に、背景にモアレ模様(i)のような動きを生じる模様を配置した場合により顕著であった。これは、モアレ模様(i)が、単純な模様(h)のように、単に基画像(f)と同じインキによって同じ版面上に構成されるというだけではなく、基画像(f)と同じく蒲鉾状画線と同じ規則に従って部分的に干渉することによって、模様の一部の情報のみがサンプリングされて動きを生じる構成であることに起因する。すなわち、基画像(f)とモアレ模様(i)は、インキと版面が同じであり、動きが生じる原理、効果も同じであることから、単純な模様(h)と比べてよりコントラストが相殺されやすい。以上のように、図20(a)に示す基画像(f)の周囲にブランク(g)がある形態と比較すると、基画像(f)の周囲に動きを生じるモアレ模様(i)を配置した場合、基画像(f)とモアレ模様(i)の両方の視認性が損なわれるという問題があった。
特許文献7及び特許文献8の技術においては、正反射光下の色彩表現を大きく広げるために、蒲鉾状要素群の光学特性だけでなく、潜像要素群の色彩を同時に利用して、色彩表現域を拡大する効果を得た技術である。この形態においては、特許文献1から特許文献6までの技術と異なり、潜像要素群は透明ではなく、特定の色彩で着色する構造であるために、潜像要素群が拡散反射光下で視認される形態である。このため、特許文献7に記載の技術においては潜像を出現させる機能を失って、印刷画像全体を色変化させるだけの効果に留まり、特許文献8に記載の技術においては、ネガポジ画線を対にした特殊な画線構成を潜像要素群に適用し、潜像を出現させるという機能は担保したものの、潜像要素群を着色したことでそのチェンジ効果は大きく損なわれ、表現できる潜像画像の数や隠蔽性が低下した。
また、特許文献1から特許文献8までの技術において、正反射光下でのみ出現する基画像に加えて、拡散反射光下で視認可能であって、正反射光下で消失して不可視となる可視画像を付与することは可能であった。この場合、可視画像は、蒲鉾状要素群の面積率の違いによって濃淡を表現するものであった。ただし、蒲鉾状要素群の面積率を変えることで、潜像要素群のサンプリング周期に乱れが生じて、チェンジ効果や動画効果が損なわれる場合があるという問題があった。また、立体的な形状の画線の集合である蒲鉾状要素群では、高解像度な可視画像を表現できないという問題があった。
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、盛り上がりを有する蒲鉾状画線の上に光反射要素群と潜像要素群を重ねることで、反射光の反射光量を高めるとともに、色彩表現を豊かにし、出現する潜像の視認性が高く、かつ、基画像の周囲にモアレ模様を配しても、それぞれの視認性が低下しないことを特徴とする潜像印刷物を提供する。
本発明は、基材上の少なくとも一部に、樹脂を含む材料により形成された蒲鉾形状を有する蒲鉾状要素が万線状に配置された蒲鉾状要素群と、正反射光下において蒲鉾状要素と異なる色彩の明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一方の光学特性を備えた光反射要素が万線状に配置された光反射要素群と、基画像を分割及び/又は圧縮した透明又は半透明の潜像要素が万線状に配置された潜像要素群から成る印刷画像が形成され、蒲鉾状要素群の上に、光反射要素群、潜像要素群の順に積層又は潜像要素群、光反射要素群の順に積層され、蒲鉾状要素群及び光反射要素群は、要素のピッチ、配置角度、形状のいずれか一つが異なることで要素群同士の干渉によりモアレ画像が形成され、基材を正反射光下で連続的に角度を変化させながら観察すると、潜像画像が変化及び/又は動的に視認されるとともにモアレ画像が動的に視認可能なことを特徴とする潜像印刷物である。
また、本発明の潜像印刷物における蒲鉾状要素群及び光反射要素群は、少なくとも一つは透明又は半透明で形成され、光反射要素群は、面積率の差異による濃度差で可視画像を形成して成り、印刷画像を拡散反射光下で観察すると可視画像のみが視認可能となり、正反射光下で観察するとモアレ画像が出現し、可視画像は消失して視認されないことを特徴とする。
また、本発明は、基材上の少なくとも一部に、樹脂を含む材料により形成された蒲鉾形状を有する透明又は半透明の蒲鉾状要素が万線状に配置された蒲鉾状要素群と、正反射光下において蒲鉾状要素と異なる色彩の明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一方の光学特性を備え、かつ、拡散反射光下において基材と異なる色彩を有する光反射要素が万線状に配置された光反射要素群と、拡散反射光下において光反射要素群と同じ色相を有し、正反射光下においては光反射要素と異なる色彩を有し、基画像が分割及び/又は圧縮された潜像要素が万線状に配置された潜像要素群から成る印刷画像が形成され、蒲鉾状要素群の上に、i)光反射要素群、潜像要素群の順に積層又は潜像要素群、光反射要素群の順に積層、又は、ii)光反射要素群と潜像要素群が並置され、光反射要素群は、拡散反射光下における印刷画像の濃度から潜像要素群の濃度を減じた濃度で構成され、蒲鉾状要素群及び光反射要素群は、要素のピッチ、配置角度、形状のいずれか一つが異なることで要素群同士の干渉によりモアレ画像が形成され、基材を正反射光下で連続的に角度を変化させながら観察すると、潜像画像が変化及び/又は動的に視認されるとともにモアレ画像が動的に視認可能なことを特徴とする潜像印刷物である。
さらに、本発明の潜像印刷物における蒲鉾状要素群及び光反射要素群は、少なくとも一つは透明又は半透明で形成され、光反射要素群は、面積率の差異による濃度差で可視画像を形成して成り、印刷画像を拡散反射光下で観察すると可視画像のみが視認可能となり、正反射光下で観察するとモアレ画像が出現し、可視画像は消失して視認されないことを特徴とする。
本発明の潜像印刷物の印刷画像中の色彩は、従来の技術のように、蒲鉾状要素群の光学特性のみに依存せず、蒲鉾状要素群とは別の光反射要素群との組合せにより、異なる色彩を表現することが可能となり、従来技術と比較して色彩表現域が広まった。
従来の技術においては、蒲鉾状要素群と潜像要素群の二つの要素群の干渉によって基画像を出現させていたが、本発明では、蒲鉾状要素群と潜像要素群の二つの要素群の干渉に加え、蒲鉾状要素群と光反射要素群のもう一組の要素群の干渉によって異なる別の模様を表現できる。この場合、基画像と別の模様とは、別の色相であったり、全く異なる輝度であったり、異なる別の色彩を表現できることから、この画像にモアレ模様のような動きを生じる模様を配置した場合でも、それぞれの画像の視認性を損なうことはない。このため、基画像に隣接してモアレ模様を配置するデザインを用いることができる。
また、正反射光下で出現する基画像やモアレの視認性は、通常、光反射要素群を構成するインキのもともとの性能、すなわちインキの輝度の高低(反射光量の高低)に大きく左右される。そのため、明暗のコントラストに優れたモアレを出現させるためには、輝度の高い高価なインキを用いる必要があった。しかし、本発明の光反射要素群は、基材上に直接形成されるわけではなく、インキ樹脂で形成された蒲鉾状要素の上に重なる。このため、インキ樹脂上に印刷された光反射要素群の反射光量は、光反射要素群自体の反射光量に加えて、下地となるインキ樹脂の反射光量に準じる光量が加算されて全体に大きく嵩上げされることから、通常の上質紙やコート紙上に同じインキで印刷された光反射要素群の反射光量よりも、インキ樹脂上に印刷された光反射要素群の反射光量の方が著しく大きくなる。これによって、輝度が低い安価なインキを用いた場合でも正反射光下で出現する潜像やモアレ模様の視認性を高く保つことができる。
本発明において、従来技術と同様に、正反射光下でのみ出現する基画像に加えて、拡散反射光下で視認可能であって、正反射光下で消失して不可視となる可視画像を付与することが可能である。本発明においては、光反射要素群に面積率の違いによって濃淡を設けて可視画像を形成する。もともと、可視画像の消失効果は、正反射時の反射光量の増大によって濃淡を目視上捉えられなくなる現象に起因する。この消失効果は、光反射要素群の正反射時の反射光量の大きさに比例してより高まることから、前述のように、本発明は、光反射要素群の反射光量が著しく大きくなるため、従来技術と比較して可視画像の消失効果が飛躍的に高くなった。
そして、正反射時に消失させることができる濃淡差が拡大することは、拡散反射光下において付与可能な濃淡の範囲が拡大することを意味するため、結果として、視認性の高い濃淡差の大きな可視画像を形成可能となった。また、光反射層は立体的な構造を必要としないため、オフセット印刷やフレキソ印刷等で形成でき、高い解像度の可視画像であっても容易に表現できる。以上のように、可視画像を光反射要素群によって形成することで、従来技術よりも視認性が高く、高解像度の可視画像を付与可能となった。
さらに、仮に蒲鉾状要素群が印刷された段階で蒲鉾状要素の画線表面が滑らかさに欠け、画線表面に微小な凹凸が存在していたとしても、後刷りで形成される光反射要素群のインキ皮膜によって表面の凹凸が被覆されるため、蒲鉾状要素群の画線表面をより平滑化する作用が生まれる。この作用により、正反射光下で出現する基画像やモアレ模様の鮮明さが向上した。
本発明の潜像印刷物を示す。 本発明の潜像印刷物の概要図を示す。 本発明の潜像印刷物の蒲鉾状要素群を示す。 本発明の潜像印刷物の潜像要素群を示す。 本発明の潜像印刷物の積層順序を示す。 本発明の潜像印刷物の光反射要素群を示す。 本発明の印刷画像が入射光を反射する概要図を示す。 本発明の潜像印刷物の効果を示す。 本発明の潜像印刷物の背景モアレの動きを示す。 本発明の潜像印刷物のモアレ拡大方式の潜像要素群を示す。 本発明の潜像印刷物の効果を示す。 本発明の潜像印刷物のIP方式の潜像要素群を示す。 本発明の潜像印刷物の効果を示す。 本発明の潜像印刷物の光反射要素群の構成の一例を示す。 本発明の潜像印刷物を示す。 本発明の潜像印刷物の光反射要素群を示す。 本発明の潜像印刷物の積層順序を示す。 本発明の印刷画像が入射光を反射する概要図を示す。 本発明の潜像印刷物の効果を示す。 従来の潜像印刷物の問題点を示す。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
(第一の実施形態)
第一の実施形態として、本発明の潜像印刷物(1)を構成する潜像要素群(5)が透明あるいは半透明であって、光反射要素群(6)と潜像要素群(5)が重畳する形態について説明する。本発明における潜像印刷物(1)の基本的な構成について、図1から図14までを用いて説明する。
図1に、本発明の潜像印刷物(1)を示す。潜像印刷物(1)は、基材(2)上に印刷画像(3)を有して成る。基材(2)は、印刷画像(3)が形成可能な平面を備えていればよく、上質紙、コート紙、プラスティック、金属等、材質は特に限定されない。その他、基材(2)の色彩や大きさについても特に制限はない。印刷画像(3)の色彩については、透明や、不透明でも、着色されていても、いかなる色彩でも問題なく、正反射時に目視できる色彩を呈するのであればよい。ただし、第一の実施形態においては、拡散反射光下において視認できる「JPN」の文字を表して成るため、印刷画像(3)が、特定の物体色で着色されている形態として説明する。
図2に印刷画像(3)の概要を示す。印刷画像(3)は、蒲鉾状要素群(4)の上に潜像要素群(5)と光反射要素群(6)が重畳して形成されて成る。正反射時に出現する有意情報は、潜像要素群(5)中に含まれる。この例において潜像要素群(5)は、第一の有意情報であるアルファベットの「A」の文字を表す第一の潜像要素群(5A)と、第二の有意情報であるアルファベットの「B」の文字を表す第二の潜像要素群(5B)から成る。
図3に、基材(2)上に形成された蒲鉾状要素群(4)の一例を示す。蒲鉾状要素群(4)は、一定の幅(W1)の直線であり、一定の盛り上がり高さを有した蒲鉾形状を有する蒲鉾状要素(7)が、万線状に配置されて成る。本発明において、「万線状に配置する」とは、複数の要素が規則的に所定のピッチで配列されている状態をいう。より具体的には、蒲鉾状要素(7)が、画線方向と直交する第一の方向(図中S1方向)に一定のピッチ(P1)で連続して配置されて成る。なお、実施の形態において蒲鉾状要素群(4)は、盛り上がりを有した蒲鉾状の画線の集合によって構成された例について説明するが、本発明における蒲鉾状要素群(4)は、これに限定されるものではなく、盛り上がりを有した画素を要素として上下左右に等ピッチで配置して画素形態の蒲鉾状要素群(4)としてもよい。
蒲鉾状要素群(4)は、樹脂を含んだ材料によって構成される必要がある。ここでいう樹脂とは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の一般的な印刷インキのワニス成分に当たる、一定の光沢を有した樹脂を指す。透かしやエンボス等によって基材(2)に直接凹凸を形成する構成では、本発明の必須要件を満たさない。これは、基材(2)と同じ素材で構成した場合には、蒲鉾状要素群(4)の上に形成される光反射要素群(6)の反射光量を嵩上げする効果を得られないためである。また、最終的に蒲鉾状要素群(4)の反射光量は、光反射要素群(6)の反射光量を嵩上げする役目を担うため、蒲鉾状要素群(4)の反射光量が高いことが好ましい。すなわち、蒲鉾状要素群(4)の光沢は高ければ高いほど、最終的な潜像画像の視認性の高さに寄与する。
また、蒲鉾状要素群(4)は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一方の光学特性を備えていることがより好ましい。明暗フリップフロップ性とは、正反射した場合に明度が上昇する性質であり、一方のカラーフリップフロップ性とは、正反射した場合に色相が変化する性質を指す。明暗フリップフロップ性は、ワニス成分のみを印刷することでも得ることができるが、より優れた特性はアルミや真鍮、酸化鉄等の一般的な金属顔料をインキ中に配合することで容易に付与することができる。
また、カラーフリップフロップ性は、カラーフリップフロップ性を備えた機能性材料をインキ中に配合することで付与できる。カラーフリップフロップ性を備えた機能性材料の具体的な一例としては、パール顔料やコレステリック液晶、ガラスフレーク顔料、金属粉顔料や鱗ペン状金属顔料等がある。また、当然のことながら機能性材料をインキに配合するだけでなく、明暗フリップフロップ性やカラーフリップフロップ性を有するインキとして市販されているインキを用いて光反射要素群(6)を形成してもよい。
明暗フリップフロップ性を有する市販インキとしては、金インキや銀インキ、樹脂自体の光沢が高いOPニス、グロスニス等が存在し、カラーフリップフロップ性を有する市販インキとしては、CSI(Color Shifting Ink)やOVI(Optical Variable Ink)、液晶インキ等がある。
蒲鉾状要素群(4)が高い明暗フリップフロップ性のみを備える場合、光反射要素群(6)の構成にもよるが、正反射光下で出現するモアレ模様の視認性が向上する傾向にあり、高いカラーフリップフロップ性を備える場合には、モアレ模様はより色彩豊かな表現が可能となる。
一般にUV硬化型のスクリーン印刷によって蒲鉾状要素群(4)を形成する場合、スクリーンインキの粘度が高い方が、蒲鉾状要素(7)の盛り上がり高さは高く、かつ、それぞれの蒲鉾状要素(7)の三次元立体形状は、互いに均一になる傾向にある。このような蒲鉾状要素(7)の均一な構造は、潜像の視認性や鮮明さを高めるためには極めて好ましいことから、本発明の蒲鉾状要素群(4)を形成するに当たっては、粘度の高いインキを用いることが好ましい。以上が、蒲鉾状要素群(4)の説明である。
続いて、潜像要素群(5)について図4を用いて説明する。潜像要素群(5)は、正反射時に出現する潜像の基となる複数の有意情報を含んで成る。本実施の形態の例では、第一の有意情報である「A」の文字と、第二の有意情報である「B」の文字の二つの有意情報を含んでいる。それぞれの有意情報を表した画像をそれぞれ基画像と呼ぶ。本実施の形態においては、「A」の文字を第一の基画像とし、「B」の文字を第二の基画像とする。
本実施の形態において、第一の基画像が表す第一の有意情報は、図4(b)に示す第一の潜像要素群(5A)によって形成され、第二の基画像が表す第二の有意情報は、図4(c)に示す第二の潜像要素群(5B)によって形成される。第一の潜像要素群(5A)は、一定の画線幅(W2)の第一の潜像要素(8A)が、蒲鉾状要素群(4)と同じ第一の方向(S1)に、同じピッチ(P1)で、万線状に連続して配置されて成り、第二の潜像要素群(5B)は、一定の画線幅(W3)の第二の潜像要素(8B)が、蒲鉾状要素群(4)と同じ第一の方向(S1)に、同じピッチ(P1)で、万線状に連続して配置されて成る。第一の潜像要素(8A)の画線幅(W2)は全て同じであり、第二の潜像要素(8B)の画線幅(W3)も全て同じである必要があるが、第一の潜像要素(8A)の画線幅(W2)と第二の潜像要素(8B)の画線幅(W3)の値は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、それぞれの第一の潜像要素(8A)と第二の潜像要素(8B)の位置関係について説明する。第一の潜像要素(8A)と第二の潜像要素(8B)は重なり合ってはならない。具体的には、第一の潜像要素(8A)と第二の潜像要素(8B)は、第一の方向(S1)に位相がずれている必要がある。図4(a)は、その一例として、ピッチ(P1)の半分(2分の1)ずれて配置された状態を示している。仮に、第一の潜像要素(8A)と第二の潜像要素(8B)が重なり合って配置された場合には、正反射光下の特定の観察角度において、第一の有意情報と第二の有意情報が重なり合った不明瞭な画像が出現するため、そのような構成は避けなければならない。なお、以降の説明では、具体的に個別の潜像要素(8A、8B)を指すのではなく、潜像要素全般を指す場合には、潜像要素(8)として説明する。
以上のように、製作者が正反射光下で潜像として出現させたいと意図する情報(画像)が基画像であり、基画像を本技術の構成に合わせて分断及び/又は圧縮等の処理(圧縮等の処理については後述する。)を施した画像が潜像要素群(5)であり、潜像要素群(5)を構成している一つ一つの要素が潜像要素(8)である。
潜像要素群(5)を構成するそれぞれの潜像要素(8)の拡散反射光下の色彩は、透明であっても半透明であってもよく、着色されていてもよい。第一の実施形態においては、潜像要素群(5)が透明又は半透明である形態について説明する。潜像要素群(5)が着色されている形態については、第二の実施形態で説明する。なお、第一の実施形態においては、潜像要素群(5)が画線である形態で説明するが、これに限定されるものではなく、仮に蒲鉾状要素群(4)を画素形態とした場合には、潜像要素群(5)も画線ではなく、対応した画素形態とすることが好ましい。
潜像要素群(5)に要求される光学特性は、印刷画像(3)の層構造によって変化する。図5(a)に示すように、印刷画像(3)の層構造が蒲鉾状要素群(4)の上に潜像要素群(5)が重なり、その上に光反射要素群(6)が重なるような層構造の場合には、正反射光下で出現する基画像(12)の視認性を高くするために、蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8)はその表面性が大きく異なっていることが好ましい。このため、蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8)は、可能な限り大きな表面性の違いが生じるように設計する。なお、本発明における「表面性」とは、各要素を構成したインキの表面の滑らかさのことをいう。
その理由を以下に記す。蒲鉾状要素(7)の上に潜像要素(8)が重なり、更にその上に光反射要素群(6)が重なる場合、光反射要素群(6)は、蒲鉾状要素(7)と比較すると薄い膜厚であることから、蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8)の表面性の違いが光反射要素群(6)に反映される。すなわち、滑らかな蒲鉾状要素(7)の上に重なった光反射要素群(6)は、その表面が相対的に滑らかであり、粗い潜像要素(8)の上に重なった光反射要素群(6)は、その表面が相対的に粗くなる。基本的には蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8)の表面性の違いが、光反射要素群(6)の表面性の違いとして相対的に反映され、その違いが基画像(12)の視認性へと直結する。逆に、その表面性の差異が小さい場合には、光反射要素群(6)の膜厚によって埋められてしまい、光反射要素群(6)表面にその表面性の差異が反映されず、正反射光下で出現する基画像(12)の視認性が低くなる。
以上のことから、図5(a)に示すような蒲鉾状要素群(4)の上に潜像要素群(5)が重なり、その上に光反射要素群(6)が重なるような層構造の場合には、正反射光下で出現する基画像(12)の視認性を高くするために、蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8)は、その表面性が大きく異なっていることが好ましい。なお、光反射要素群(6)の表面性の差異は、僅かながら光反射要素群(6)の印刷膜厚で埋められるため、もともとの蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8)との表面性の差異から僅かながら小さくなる。これを見越して、可能な限り表面性の差異を大きくすることが好ましい。
表面性の差異の具体的な範囲については、微細な領域の表面性の違いを容易に測定できる数値で表すことは困難であることから、表面性と相関の高い数値である、正反射時の明度の差に換算して示すと、蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8)の間には少なくとも明度L*が10以上の明度差が必要である。多くの場合、蒲鉾状要素(7)は、高光沢な構成となることから、潜像要素(8)は逆に低光沢であることが好ましい。すなわち、蒲鉾状要素(7)の明度が高く、潜像要素(8)の明度が低い構成とすることが好ましい。なお、明度差L*が10に満たない場合、潜像が不鮮明となるため避けなければならない。
また、図5(b)のように、印刷画像(3)の層構造が蒲鉾状要素群(4)の上に光反射要素群(6)が重なり、更にその上に潜像要素群(5)が重なるような層構造の場合には、正反射光下で出現する基画像(12)の視認性を高くするために、蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8)は、正反射時の色彩が大きく異なっていることが好ましい。具体的には蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8)は、正反射時の色差ΔEが10以上異なっている必要がある。色差ΔEが10に満たない場合、光反射要素群(6)と潜像要素群(5)の色差が小さく、潜像画像が不明瞭となる場合があるため避けなければならない。この層構造の場合、潜像要素群(5)は明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性を備えていてもよく、この場合にはより豊かな色彩表現が可能となる。
以上のように、印刷画像(3)の層構造によって、潜像要素群(5)に要求される光学特性が変化する。なお、潜像要素群(5)が着色されて形成される形態において潜像要素群(5)に要求される光学特性については、第二の実施形態で説明する。また、潜像要素群(5)の画線構成によって、正反射光下において基画像(12)が異なる別の基画像(12)へとチェンジするだけでなく、出現した基画像(12)が動いて見える動画効果を生じさせる形態も存在し、これら動画効果を生じさせる潜像要素群(5)の構成についても後述する。以上が潜像要素群(5)の説明である。
次に光反射要素群(6)について説明する。蒲鉾状要素群(4)の上に形成される光反射要素群(6)とは、蒲鉾状要素群(4)の上に重ねて形成されることで、印刷画像(3)から著しく強い正反射光を生じさせる働きを成す、光反射特性に優れた印刷層である。
図6に示すように第一の実施形態においては、拡散反射光下において視認可能な有意情報(以下「可視画像」という。)の「JPN」の文字を表した情報部(6A)と、その背景を成す背景部(6B)から成る。情報部(6A)と背景部(6B)は、少なくとも一部の領域が画線の太細によって区分けされなければならない。第一の実施形態の例においては、情報部(6A)の全ての領域が太い画線幅(W4)の光反射要素(9)が万線状に連続して配置され、背景部(6B)の全ての領域は、細い画線幅(W5)の光反射要素(9)が万線状に連続して配置されることで、画線面積率の差異によって光反射要素群(6)の中に特定の有意情報を表して成る。
なお、第一の実施形態では情報部(6A)を太い画線幅で、背景部(6B)を細い画線幅で構成しているが、情報部(6A)を細い画線幅(W5)で、背景部(6B)を太い画線幅(W4)で構成しても問題ない。なお、第一の実施形態においては、光反射要素群(6)が画線である形態で説明するが、これに限定されるものではなく、仮に蒲鉾状要素群(4)を画素形態とした場合には、光反射要素群(6)も画線ではなく、対応した画素形態とすることが好ましい。
第一の実施形態においては、光反射要素群(6)は、第一の方向(S1)に第一のピッチ(P1)と異なる第二のピッチ(P2)で万線状に連続して配置して成るが、方向、ピッチ及び形状の少なくとも一つが蒲鉾状要素群(4)と異なっていればよい。これは、光反射要素群(6)と蒲鉾状要素群(4)とを干渉させてモアレ模様(m)を生じさせるための必須要件である。仮にピッチのみを異ならせる場合には、第二のピッチ(P2)は、第一のピッチ(P1)に対して80%〜120%程度の値とすることが好ましく、仮に方向のみを変えるのであれば、第二の方向(S2)は、第一の方向(S1)に対してプラスマイナス10度以下の角度とすることが好ましい。この範囲外の数値の場合、モアレ模様(m)が発生しないか、生じたモアレ模様(m)の動きが小さく、適さない。基本的には、全ての蒲鉾状要素(7)上に少なくとも一つ光反射要素(9)が重なるように形成する。
また、形状を異ならせる場合には、「モアレ拡大現象(Moire Magnification)」と呼ばれる現象によって、光反射要素群(6)の形状が出現するモアレの形状に反映される。仮に、蒲鉾状要素群(4)が画素の場合に「Moire Magnification」を用いて特定の形状のモアレを出現させるには、特許第3338860号公報等に記載の構成を光反射要素群(6)に適用すればよい。また、蒲鉾状要素群(4)が画線の場合には、特許第4427796号公報や特許第5131789号公報等に記載の構成を光反射要素群(6)に適用すればよい。ただし、本発明は、印刷によって形成することを前提としていることから、高い解像度を要求する形状とすることは避けることが望ましい。蒲鉾状要素群(4)が画線の場合には、光反射要素群(6)には曲線や波線等の単純な形状の画線を適用することが望ましい。いずれの場合であっても、基本的には、全ての蒲鉾状要素(7)上に、少なくとも一つ光反射要素(9)が重なるように形成する。
第一の実施形態のように、画線の太細によって可視画像を表している場合には、物体色を有している必要があるが、可視画像を表さない形態においては、特に光反射要素群(6)は、透明や半透明であってもよい。
また、光反射要素群(6)は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一方の光学特性を有する必要があり、加えて光反射要素群(6)の正反射時の色彩は、蒲鉾状要素群(4)の正反射時の色彩と異なっている必要がある。より具体的には、蒲鉾状要素群(4)の正反射時の色彩よりも明るい色彩か、あるいは色相が異なる色彩である必要がある。これは、正反射光下で蒲鉾状要素群(4)と光反射要素群(6)とが干渉することで出現するモアレ模様(m)を、基画像(12)の視認性を損なわずに可視化するために必要な条件である。なお、仮に光反射要素群(6)が透明であっても、不透明であっても本発明の効果を得ることができる。
ただし、光反射要素群(6)が透明な場合、入射する光を反射する画線表面が光反射要素群(6)と蒲鉾状要素(7)の二つの面となる。反射面が二つ存在する場合、この反射面の距離の差(光反射要素群(6)の厚み)が1μm以下であっても、潜像の鮮明さに影響を与えるため、潜像は不鮮明になる場合がある。このため、本発明の潜像印刷物(1)において、潜像を鮮明に出現させることを意図する場合には、光反射要素群(6)を不透明とすることがより好ましい。
光反射要素群(6)は、図5(a)、図5(b)のいずれの層構造の形態であっても、先に印刷されて、既に硬化した蒲鉾状要素群(4)より上に形成される。光反射要素群(6)は、光反射要素(9)が特定のピッチで複数配置されて形成された構造を有し、基本的には、全ての蒲鉾状要素(7)上に少なくとも一つの光反射要素(9)が重なって形成される。
図5(a)の形態の場合、断面構造は、図7(a)に示すように蒲鉾状要素(7)の上に潜像要素(8A、8B)が重なり、更に光反射要素群(6)が重なって形成される。蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8A、8B)の表面性は異なっており、一定膜厚のインキ層から成る光反射要素群(6)がその上に重ねられて形成された場合、その表面性の差異は、光反射要素群(6)のインキ層によって埋められて僅かに小さくなるものの、光反射要素群(6)の表面性の違いとして反映される。そのため、光反射要素群(6)の表面に光が入射した際、仮にその光反射要素群(6)の下に蒲鉾状要素(7)が存在する場合、反射光量は大きくなり、光反射要素群(6)の下に潜像要素(8)が存在する場合、反射光量は小さくなる。すなわち、図5(a)のように、蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8A、B)の上に光反射要素群(6)が重なった場合でも、正反射光下においては、蒲鉾状要素(7)と潜像要素(8A、8B)の表面性の違いが光反射要素群(6)から生じる反射光量の大小として反映される。
また、蒲鉾状要素(7)に直接光反射要素群(6)が重なった領域は、土台となる蒲鉾状要素(7)の盛り上がりの高さや幅のような大まかな立体構造はそのまま反映されるが、一方で蒲鉾状要素(7)の画線表面の僅かな凹凸は光反射要素群(6)の膜厚によって印刷直後にある程度平坦に埋められる。このため、蒲鉾状要素(7)に光反射要素群(6)が重なった場合の表面は、元の蒲鉾状要素(7)の表面よりも滑らかになって反射光量も大きくなり、結果として正反射光下で出現する基画像(12)の鮮明さが向上することとなる。
一方、図5(b)の形態の場合、断面構造は、図7(b)に示すように蒲鉾状要素(7)の上に光反射要素群(6)が重なり、更に潜像要素(8A、8B)が重なって形成される。この形態においては、図5(a)の形態と同様に土台となる蒲鉾状要素(7)の盛り上がりの高さや幅のような大まかな立体構造はそのまま反映され、一方で蒲鉾状要素(7)の画線表面の僅かな凹凸は、光反射要素群(6)の膜厚によって平坦に埋められ、元の蒲鉾状要素(7)の表面よりも滑らかになり、反射光量も大きくなる。光反射要素群(6)の上に潜像要素(8A、8B)が重なった領域は、その下の光反射要素群(6)へ達する入射光を遮ることで、生じる反射光量が著しく低下する。以上のように、正反射光下においては潜像要素(8A、8B)の有無が、反射光量の大小として反映される。
なお、図5(a)、図5(b)のいずれの層構造の形態であっても、光反射要素群(6)は、蒲鉾状要素(7)上にのみ形成される必要はなく、蒲鉾状要素(7)と蒲鉾状要素(7)の間の非画線部に形成されてもよい。
以上、説明したとおり、本発明の潜像印刷物(1)において、蒲鉾状要素(7)の上に光反射要素群(6)を形成することで、基画像(12)の視認性を損なわないモアレ模様(m)を出現させることができ、かつ、光反射要素群(6)を不透明とした場合には、反射光を画線表面由来の光のみとすることができ、基画像(12)の鮮明さが向上する。
本発明の潜像印刷物(1)の効果について、図8を用いて説明する。まず、潜像印刷物(1)を、図8(a)に示すように拡散反射光下で観察した場合、第一の実施形態においては、可視画像(15)の「JPN」の文字のみが視認される。拡散反射光下においては、基画像(12)やモアレ模様(m)は出現せず、完全に不可視である。
続いて、正反射光下の効果について説明する。正反射光下においては、まず、拡散反射光下で視認されていた可視画像(15)の「JPN」は、目視上消失する。これは、光反射要素群(6)が正反射することで画像全体の濃度が淡くなり(明度が上昇し)、「JPN」の文字とその周辺の濃度差(明度差)が圧縮されて小さくなり、目視上捉えられなくなるためである。
また、図8(b)のように、左側にある光源(10)から潜像印刷物(1)に光が入射した場合、観察者(11)には、第一の有意情報であるアルファベットの「A」(第一の基画像(12A))と、「A」とは異なる色彩を有したモアレ模様(m)が視認される。一方、図8(c)のように、右側から潜像印刷物(1)に光が入射した場合、観察者(11)には、第二の有意情報であるアルファベットの「B」(第二の基画像(12B))と、「B」とは異なる色彩を有したモアレ模様(m)が視認される。また、背景に出現するモアレ模様(m)は、図9に示すように、潜像印刷物(1)の傾きを変えることで左右(図中⇔方向)に連続的に動いて見える。実際には、入射する光の角度の変化に応じて、印刷画像(3)中に視認される有意情報がチェンジする効果と、モアレ模様(m)が動いて見える効果が同時に発現する。また、チェンジする有意情報と、モアレ模様(m)の色彩が異なっているため、それぞれの視認性は損なわれない。
以上のような効果を生じる理由について説明する。基画像(12)がチェンジする効果と、モアレ模様(m)が動く効果のうち、まず、基画像(12)がチェンジする効果について説明する。図8(b)に示すように、左側から潜像印刷物(1)に光が入射した場合、光反射要素群(6)は、盛り上がりを有する蒲鉾状要素(7)上に形成されて成るため、入射した光と法線を成す面のみを中心に光を強く反射する。光反射要素群(6)は、光反射要素(9)が特定のピッチで複数配置されて形成された構造を有し、全ての蒲鉾状要素(7)上に少なくとも一つ光反射要素(9)が重なって形成される。このため、光反射要素群(6)の画線表面のうち、盛り上がりの中心より左側は光を強く反射して色彩が変化する。
光反射要素群(6)の左側には、通常の観察条件では不可視であるが、蒲鉾状要素(7)とは表面性や正反射時の明度が異なる材料で形成された第一の潜像要素(8A)が重なって形成されており、反射光の色彩の違いによって、第一の潜像要素(8A)が周囲とは異なる色彩で可視化される。この場合、光反射要素群(6)の表面のそれぞれの盛り上がりにある、全ての第一の潜像要素(8A)が一度に可視化されるため、結果として第一の潜像要素群(5A)が表す第一の有意情報の「A」(第一の基画像(12A))が出現する。その一方で、入射した光と法線を成さなかった、光反射要素群(6)の盛り上がりの中心より右側表面は、光を反射できないため色彩は変化せず、結果として右側表面にある第二の潜像要素(8B)は可視化されず、第二の有意情報の「B」(第二の基画像(12B))は出現しない。
逆に図8(c)のように、右側から潜像印刷物(1)に光が入射した場合には、光反射要素群(6)の左側にある第二の潜像要素(8B)が色彩の違いによって可視化され、第二の潜像要素群(5B)が表す第二の有意情報の「B」(第二の基画像(12B))が出現する。この場合、左側表面にある第一の潜像要素(8A)は可視化されず、第一の有意情報の「A」(第一の基画像(12A))は出現しない。
以上のように、蒲鉾状要素(7)の画線表面に重ねられた潜像要素(8)のうち、入射した光と法線を成した光反射要素群(6)の下層に存在する潜像要素(8)のみが色彩の違いによって可視化され、それ以外の潜像要素(8)は可視化されない効果が生じる。これによって、入射する光の角度の変化に応じて、印刷画像(3)中に視認される画像がチェンジする効果が生じる。以上が、本発明の潜像印刷物(1)の基画像(12)のチェンジ効果が生じる原理である。
続いて、正反射光下で基画像(12)がチェンジする効果とは別に、基画像(12)と異なる色彩のモアレ模様(m)が出現し、傾きを変えることで動く効果が生じる原理について説明する。モアレ模様(m)は、光反射要素群(6)と蒲鉾状要素群(4)の干渉によって生じる効果である。正反射光下において光反射要素群(6)と蒲鉾状要素群(4)は、方向、ピッチ、形状の少なくとも一つが異なるため、二つの要素が干渉することでモアレ模様(m)が出現する。
モアレ模様(m)が出現する原理や模様の形成方法については、本出願人が先に出願した特許第4844894号公報及び特許第5131789号公報で明らかである。本発明においては、光反射要素群(6)と蒲鉾状要素群(4)の少なくとも一つが透明又は半透明であると、拡散反射光下では、このモアレ模様(m)は不可視となり、正反射光下においてのみ光反射要素群(6)と蒲鉾状要素群(4)の色彩が異なるため、モアレ模様(m)は、正反射光下でのみ可視化される。
蒲鉾状要素群(4)に対して、どの位置に光反射要素群(6)が重なっているかの位置関係は、それぞれの蒲鉾状要素群(4)で異なっており、入射する光の角度が変わることで、盛り上がりを有する蒲鉾状要素群(4)と、その上に重なった光反射要素群(6)のいずれの表面が可視化されるかが変化する。この変化によって、出現したモアレ模様(m)が動いて見えるものである。以上が、本発明の潜像印刷物(1)のモアレ模様(m)が動いて見える効果が生じる原理である。
また、出現する基画像(12)は、主として蒲鉾状要素群(4)と潜像要素群(5)の干渉によって生じるものである(形態によっては光反射要素群(6)との干渉も同時に生じる。)。ここで、潜像要素群(5)は、その直下にある印刷層(蒲鉾状要素群(4)又は光反射要素群(6))の正反射を抑制する働きを成すため、正反射光下において出現する基画像(12)は、拡散反射光下における可視画像(15)の色彩(蒲鉾状要素群(4)、光反射要素群(6)、潜像要素群(5)等が重ねて視認される色彩)と同じ色彩で視認される(拡散反射光下と同じ色彩から変化しない。)。
一方、モアレ模様(m)は、光反射要素群(6)と蒲鉾状要素群(4)の干渉によって生じる模様であることから、正反射光下の光反射要素群(6)の色彩と蒲鉾状要素群(4)の色彩の二つの色彩で彩られる。通常、異なる二つの色彩を重ねると、合成された色彩は減法混色又は加法混色による一様な合成色となる。しかし、モアレ模様(m)は、二つの模様が部分的に強く干渉するか、弱く干渉するかの強弱によって生み出されて模様を形作るものであり、色彩に関しても一方の色彩が強調される領域、もう一方の色彩が強調される領域、二つの色彩が合成される領域等の強弱が生まれる。それ故、モアレ模様(m)には単純な混色のような一様な合成色とならず、それぞれの合成前の元の色彩を反映した二つの異なる色彩が、部分的に強弱を有して入り混じった美しいグラデーションが生まれる。よって、本発明において印刷画像(3)中に出現するモアレ模様(m)と基画像(12A)は、必ず異なる色彩となる。
なお、光反射要素群(6)の正反射光下の色彩を、蒲鉾状要素群(4)の正反射光下の色彩よりも明るい色彩か、あるいは色相が異なる色彩とするのは、この時生じる二つの色彩のグラデーションを、元の蒲鉾状要素群(4)の色彩と、蒲鉾状要素群(4)の色彩よりも明るい色彩、あるいは色相が異なる色彩として、基画像(12)の色彩と異ならせるためである。仮に、光反射要素群(6)が明暗フリップフロップ性を有して蒲鉾状要素群(4)の正反射光下の色彩と異なる色彩であったとしても、その色彩が蒲鉾状要素群(4)の正反射光下の色彩よりも暗い色彩であった場合には、基画像(12)と同様に蒲鉾状要素群(4)の正反射光を抑制するのと同じ現象が生じて、結果として基画像(12)に近い色彩となってしまい、基画像(12)と入り混じって視認されてしまうためである。
また、第一の実施形態において、画像のチェンジ効果については、一例として二つの潜像がチェンジする構成について説明したが、潜像の数を二つに限定するものではない。すなわちn個の潜像を付与するのであれば、第一の潜像要素群から第nの潜像要素群までを有する潜像要素群(5)を構成し、それぞれの潜像要素が重なり合わないように配置すればよい。
正反射光下で出現する潜像は、前述した観察角度の変化により画像をチェンジさせる構成に限定されず、例えば、特許第4844894号公報や特許第5131789号公報に記載の技術のようなモアレが拡大されて視認できる「モアレ拡大現象(Moire Magnification)」を利用した動画効果や、特許第5200284号公報に記載の技術のように、インテグラルフォトグラフィ方式の動画効果を基画像(12)に対して適用してもよい。これらについて、以下に具体的に説明する。
図10に示すのは、モアレ拡大現象を利用し、基画像(12)として拡大モアレ(12A、12B)が出現し、潜像印刷物(1)を傾けることで基画像(12)として出現した拡大モアレ(12A、12B)が動いて見える、特殊な動画効果を生じさせることが可能な潜像要素群(5)の一形態である。潜像要素群(5)以外の印刷画像(3)の構成については、先に説明した画像のチェンジ効果が生じる形態と全く同じであるため説明を省略する。
モアレ拡大現象を利用する潜像要素群(5)は、蒲鉾状要素(7)の画線方向と直交する第一の方向(S1)に基画像(12A、12B)を圧縮した潜像要素(8)を、蒲鉾状要素群(4)のピッチ(P1)と僅かに異なるピッチ(P2、P3)で万線状に連続して配置した構成を有する。図10の例では、潜像要素群(5)は、二つの要素群から成り、第一の潜像要素群(5A)と、第二の潜像要素群(5B)から成る。第一の潜像要素群(5A)は、第一の基画像(12A)としてアルファベットの「J」の文字を第一の方向(S1)に圧縮して画線幅(W2)とした第一の潜像要素(8A)を、蒲鉾状要素群(4)のピッチ(P1)より僅かに小さなピッチ(P2)で、第一の方向(S1)に万線状に連続して配置して成る。第二の潜像要素群(5B)は、第二の基画像(12B)としてアルファベットの「P」の文字を第一の方向(S1)にミラー反転、かつ、圧縮して画線幅(W3)とした第二の潜像要素(8B)を、蒲鉾状要素群(4)のピッチ(P1)より僅かに大きなピッチ(P3)で、第一の方向(S1)に万線状に連続して配置して成る。
図10に示した潜像要素群(5)を用いた場合の潜像印刷物(1)の効果について説明する。拡散反射光下の効果については、チェンジ効果で説明した例と同様であって、図11(a)のように、観察者の視点(11)が強い反射光が生じない拡散反射光下にある場合、観察者は、可視画像(15)の「JPN」のみを視認できる。
また、図11(b)や図11(c)のように、観察者の視点(11)が強い反射光が生じる正反射光下にある場合、観察者は、「J」を第一の基画像(12A)とする拡大モアレ(12A)と、「P」を第二の基画像(12B)とする拡大モアレ(12B)を視認できる。さらに、図11(b)及び図11(c)のように、潜像印刷物(1)を傾けたり、入射する光の角度を変えたりした場合には、それぞれの拡大モアレ(12A、12B)が、第一の方向(S1)又は第一の方向(S1)と逆方向に、それぞれが相反する方向に動く様子を視認することができる。また、チェンジ効果で説明した例と同様に、基画像(12)とは色彩の異なるモアレ模様(m)が出現し、動いて見える効果が生じる。
以上のように、本発明の潜像印刷物(1)において、潜像要素群(5)の画線構成を変えるだけで、基画像(12)に対してチェンジ効果とは全く異なるモアレ拡大現象を利用した動画効果を生じさせることができる。
なお、このような効果が生じる原理や効果的な構成、条件等については特許第4844894号公報及び特許第5131789号公報に記載のとおりであり、特許第4844894号公報及び特許第5131789号公報に記載の画線、画素構成等については、本発明の潜像印刷物(1)に応用することができる。
続いて、図12に示すのは、インテグラルフォトグラフィ方式の立体画像の形成方法を利用して潜像要素群(5)を構成することによって、潜像として基画像(12)が出現し、潜像印刷物(1)を傾けることで出現した基画像(12)が動いて見える、動画効果を生じさせることが可能な潜像要素群(5)の一形態である。潜像要素群(5)以外の印刷画像(3)の構成については、先に説明した画像のチェンジ効果が生じる形態と全く同じであるため説明を省略する。
インテグラルフォトグラフィ方式の立体画像の形成方法を利用する潜像要素群(5)は、蒲鉾状要素群(4)の画線方向と直交する第一の方向(S1)に基画像(12)を分割して圧縮した潜像要素(8)を、蒲鉾状要素群(4)のピッチ(P1)と同じピッチ(P1)で万線状に連続して複数配置した構成を有する。図12の例では、潜像要素群(5)は、桜の花びらを表した基画像(12)から作製した複数の潜像要素(8)から成る。潜像要素群(5)は、基画像(12)を一定の幅で分割して取り出し、取り出した画像を第一の方向(S1)に圧縮して画線幅(W2)とした潜像要素(8)を蒲鉾状要素群(4)のピッチ(P1)と同じピッチ(P1)で、第一の方向(S1)に万線状に連続して配置して成る。モアレ拡大現象を利用した図8の例と異なり、隣り合う潜像要素(8)同士は、基画像(12)から取り出す際の位相を一ピッチ分だけずらして圧縮しているため、僅かに形状が異なる。
図12に示した潜像要素群(5)を用いた場合の潜像印刷物(1)の効果は、図13に示すとおりである。図13(a)のように、拡散反射光下では、印刷画像(3)として可視画像(15)の「JPN」のみが視認できる。また、図13(b)又は図13(c)のように、観察者の視点(11)が強い反射光が生じる正反射光下にある場合、観察者は、印刷画像(3)の中に基画像(12)である「桜の花びら」を視認できる。また、図13(b)又は図13(c)のように、潜像印刷物(1)を傾けたり、入射する光の角度を変えたりした場合には、基画像(12)が第一の方向(S1)か、あるいは第一の方向(S1)と逆方向に動く様子を視認することができる。また、チェンジ効果で説明した例と同様に、基画像(12)とは色彩の異なるモアレ模様(m)が出現し、動いて見える効果が生じる。
このように、本発明の潜像印刷物(1)において、潜像要素群(5)の画線構成を変えるだけで、チェンジ効果とは全く異なるインテグラルフォトグラフィ方式の立体画像の形成方法を利用した動画効果を生じさせることができる。なお、このような効果が生じる原理や効果的な構成、条件等については、特許第5200284号公報に記載のとおりであり、特許第5200284号公報に記載の画線、画素構成を本発明の潜像印刷物(1)の構成に応用することができる。また、特開第2014−151557号公報や特開第2015−47772号公報のような曲線構造とすることもできる。
以上のように、本発明の潜像印刷物(1)は蒲鉾状要素群(4)の上に重ねる潜像要素群(5)の構成を変えることで、基画像(12)に対して様々な効果を生み出すことができる。
また、前述の光反射要素群(6)は、異なる二つの面積率で構成された、二階調を表した構成であったが、図14に示すような画像を表してもよい。図14(a)に示すのは、濃淡のないフラットな単一階調の画像であり、図14(b)、図14(c)に示すのは、有意情報を多階調で表した画像である。なお、本技術において、正反射光下で光反射要素群(6)が表す有意情報が消失する効果を担保するためには、光反射要素群(6)が表す画像の最大面積率と最小面積率の差異を70%以下とする必要がある。この差異が70%を越える場合、光反射要素群(6)が表す有意情報が正反射光下で完全に消失しきらない場合があるためである。
(第二の実施形態)
続いて、第二の実施形態について説明する。前述の第一の実施形態は、潜像要素群(5)が透明又は半透明であったのに対し、第二の実施形態では、潜像要素群(5)が特定の色彩を有し、また、光反射要素群(6)と同じ色相に属する色彩であることを特徴とする形態である。この形態は、品質管理を重視する場合や、蒲鉾状要素群(4)や光反射要素群(6)から生じる反射光量が大き過ぎる場合等に適用することを目的とした形態である。
第二の実施形態で説明する潜像印刷物(1')の外観は、図1(a)に示した第一の実施形態と同じとして説明する。また、第二の実施形態の潜像印刷物(1’)の効果は、第一の実施形態の潜像印刷物(1)と同じであり、構成の多くも共通している。大きく異なるのは、潜像要素群(5’)の色彩と光反射要素群(6’)の色彩と構成及び潜像要素群(5’)と光反射要素群(6’)の位置関係であることから、それらを中心に説明し、第一の実施形態と共通な構成については、説明を省略する。
図15に、第二の実施形態の潜像印刷物(1’)の印刷画像(3’)の概要を示す。印刷画像(3’)は、蒲鉾状要素群(4’)の上に潜像要素群(5’)と光反射要素群(6’)が重畳されて成る。ただし、第二の形態において潜像要素群(5’)と光反射要素群(6’)との層構造としては、併置の関係を含む。正反射時に出現する有意情報は、潜像要素群(5’)中に含まれる。第二の実施形態においても第一の実施形態と同様に、潜像要素群(5’)は、第一の有意情報であるアルファベットの「A」の文字を表す第一の潜像要素群(5A’)と、第二の有意情報であるアルファベットの「B」の文字を表す第二の潜像要素群(5B’)から成る。
蒲鉾状要素群(4’)の画線構成や構成材料、正反射光下の光学特性等については、第一の実施形態と同様である。ただし、第二の実施形態の蒲鉾状要素群(4’)においては、拡散反射光下で透明又は半透明の必要がある。第一の実施形態と異なり、蒲鉾状要素群(4’)が透明又は半透明の必要がある理由とは、一方の光反射要素群(6’)が透明や半透明以外の任意の色彩を有するため、拡散反射光下でもモアレ模様(m)が可視化されることを防ぐためである。第一の実施形態についても共通するが、可視画像(15)が有意情報を表す場合(本例においては「JPN」)、拡散反射光下でモアレ模様(m)が可視化された場合には、有意情報と重なり合い、有意情報の視認性を低下させることがあるから好ましくない。
続いて、潜像要素群(5’)について図4を用いて説明する。潜像要素群(5’)の画線構成や構成材料については第一の実施形態と同様である。ただし、第二の実施形態の潜像要素群(5’)においては、拡散反射光下で透明又は半透明以外で、かつ、基材と異なる任意の色彩を有する。この理由は、任意の物体色を有している方が、透明又は半透明であるよりも、各種光学センサーで検出するためには格段に有利であり、特に印刷中のオンライン検査を実施しなければならない場合に、より適しているためである。また、光反射要素群(6’)や蒲鉾状要素群(4’)から生じる反射光量が大き過ぎる場合、透明なインキで構成した潜像要素群(5)では反射光を抑制しきれないことがあり、その場合には潜像要素群(5)を着色した本形態とすることがより好ましい。
また、潜像要素群(5’)に要求される光学特性としては、第一の実施形態と同様に、蒲鉾状要素(7’)と潜像要素(8’)は、正反射時の色彩が大きく異なっていることが好ましく、具体的には、蒲鉾状要素(7’)と潜像要素(8’)は、正反射時の色差ΔEが10以上異なっている必要がある。以上が潜像要素群(5’)の説明である。
次に、光反射要素群(6’)について図16を用いて説明する。光反射要素群(6’)の構成については、第一の実施形態とは大きく異なる。まず、光反射要素群(6’)は、拡散反射光下において潜像要素群(5’)と同じ色相の色彩を有する必要があり、透明や半透明であってはならない。また、第二の実施形態においては、第一の実施形態同様に、可視画像として視認可能な有意情報「JPN」の文字を表した情報部(6A’)と、その背景を成す背景部(6B’)を備えるが、それに加えて、潜像要素群(5’)と同じ画線構成と大きさを有して、印刷画像(3’)の濃度から潜像要素群(5’)の濃度を差し引いた濃度を有する色彩である潜像カモフラージュ要素群(6C’)を備える。潜像カモフラージュ要素群(6C’)は、潜像カモフラージュ要素(14’)が万線状に配置されて成る。
以上の構成を備えた光反射要素群(6’)は、図17のように、蒲鉾状要素群(4’)の上に光反射要素群(6’)を印刷して潜像要素群(5’)を印刷するか、あるいは潜像要素群(5’)を印刷して光反射要素群(6’)を印刷するか、いずれの印刷順序で形成してもよく、仮に潜像カモフラージュ要素群(6C’)が白抜き(面積率0%)の構成の場合には、潜像要素群(5’)と光反射要素群(6’)が併置関係となるが、それ以外の場合には、潜像カモフラージュ要素群(6C’)と潜像要素群(5’)は重畳関係となる。
いずれにしても潜像カモフラージュ要素(14’)の位置にそれぞれ一対に対応する同じ形状、同じ大きさの潜像要素(8)が嵌め合わさる構造を有する。潜像カモフラージュ要素群(6C’)と潜像要素群(5’)が嵌め合わさった場合に、印刷画像(3’)の中に潜像要素群(5’)が隠蔽され、拡散反射光下で不可視となる。
ここで、拡散反射光下で不可視とするための印刷画像(3’)と光反射要素群(6’)と、潜像要素群(5’)における色彩の関係について説明する。なお、光反射要素群(6’)と潜像要素群(5’)は拡散反射光下において、同じ色相に属することから、二つの画像の濃淡(明度)のみを調整することで、印刷画像(3’)の中に潜像要素群(5’)を隠蔽でき、拡散反射光下で不可視とすることができる。
基本的な色彩の設計順序としては、まず印刷画像(3’)の色彩を決定する。それによって、光反射要素群(6’)と潜像要素群(5’)の属する色相が自動的に決まり、続いて潜像要素群(5’)の色濃度を決定し、最後に光反射要素群(6’)の各部分の色濃度が決定する。
以下に、色彩の設計手順を具体的に説明する。まず、印刷画像(3’)を赤色で表現することとし、かつ「JPN」を表す濃い部分が赤色の反射濃度で1.0、淡い部分が赤色の反射濃度で0.6と設計したと仮定する。この場合、潜像要素群(5’)と光反射要素群(6’)は、赤色の色相で表現することとなる。ここで、潜像要素群(5’)を赤色の反射濃度0.4と設計したとする。これらの条件が決定された場合に、光反射要素群(6’)の全ての領域の反射濃度を決定することができる。光反射要素群(6’)の反射濃度は、印刷画像(3’)の反射濃度から、同じ位置に存在する潜像要素群(5’)の反射濃度を差し引くことで算出される。
まず、光反射要素群(6’)の情報部(6A)のうち、潜像要素群(5’)が重ならない領域の反射濃度は、印刷画像(3’)の濃い部分の反射濃度と同じ1.0となり、潜像要素群(5’)が重なる領域の反射濃度は、印刷画像(3’)の濃い部分の反射濃度1.0から潜像要素群(5’)の反射濃度0.4を差し引いた0.6となる。また、背景部(6B)のうち、潜像要素群(5’)が重ならない領域の反射濃度は、印刷画像(3’)の淡い部分の反射濃度と同じ0.6となり、潜像要素群(5’)が重なる領域の反射濃度は、印刷画像(3’)の淡い部分の反射濃度0.6から潜像要素群(5’)の反射濃度0.4を差し引いた0.2となる。なお、全ての反射濃度は赤色の色相に属する。以上のように、印刷画像(3’)の色彩と潜像要素群(5’)の色彩をデザインすることで、自動的に光反射要素群(6’)の色彩が決定される。
設計値どおりの反射濃度に形成できるのであれば、潜像要素群(5’)と光反射要素群(6’)とは同じ色彩の等色インキを用いる必要はない。例えば、潜像要素群(5’)には濃い赤色インキを用い、光反射要素群(6’)には淡い赤色インキを用いてもよい。また、当然のことながら潜像要素群(5’)には淡い赤色インキを用い、光反射要素群(6’)には濃い赤色インキを用いてもよい。色相が同じであれば、網点面積率や印刷膜厚を制御することで、異なる濃度のインキを図柄上で等色とすることは可能である。
潜像要素群(5’)と光反射要素群(6’)とを同じ色彩の等色インキで形成する必要がないことは、ユニット数が限られた印刷機を用いて本潜像印刷物(1’)を形成する場合の色彩設計上のアドバンテージとなる。例えば、印刷画像(3’)の色彩を無彩色の灰色としたとする。この場合、光反射要素群(6’)は、メタリックインキである銀インキを用いることが妥当であるが、一方の潜像要素群(5’)は、等色の灰色インキを使用するのではなく、通常、印刷物のテキスト部に用いられる黒色インキを流用して形成することができる(黒色の網点面積率を下げることで灰色を表現する。)。このようなインキの流用によって、等色ペアインキを用いて形成する偽造防止技術と比較して、印刷ユニットを1胴分開放することができる。その印刷ユニットには、異なる色彩のインキを用いて印刷画像(3’)自体や、その周辺を鮮やかな色彩で彩ることができ、結果として潜像印刷物(1’)全体の色彩デザインが向上する。
その他、光反射要素群(6’)は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一方の光学特性を有する必要があり、加えて光反射要素群(6’)の正反射時の色彩は、蒲鉾状要素群(4’)の正反射時の色彩と異なっている必要がある。より具体的には、蒲鉾状要素群(4’)の正反射時の色彩よりも明るい色彩か、あるいは色相が異なる色彩の必要があることは、第一の実施形態と同様である。
第二の実施形態の印刷画像(3’)の一要素を拡大した場合の断面構造を図18に示す。蒲鉾状要素(7’)の上に光反射要素群(6’)と潜像要素(8A’、8B’)が嵌め合わさり重なって成る。この形態においても、図5(b)の形態と同様に、土台となる蒲鉾状要素(7’)の盛り上がりの高さや幅のような大まかな立体構造はそのまま反映され、一方で蒲鉾状要素(7’)の画線表面の僅かな凹凸は、光反射要素群(6’)の膜厚によって平坦に埋められ、元の蒲鉾状要素(7’)の表面よりも滑らかになり、潜像要素(8A’、8B’)の存在しない領域の反射光量も大きくなる。蒲鉾状要素(7’)の上に潜像要素(8A’、8B’)が重なった領域は、その下の蒲鉾状要素(7’)へ達する入射光を遮ることで、蒲鉾状要素(7’)から生じる反射光量が著しく低下する。
第一の実施形態において図5(a)と図5(b)で示した二つの構造の場合、潜像要素(8A、8B)の上層か下層に光反射要素群(6)が存在したが、本例では、蒲鉾状要素(7’)の上に直接重なり、潜像要素(8A’、8B’)のある領域には、光反射要素群(6’)が存在しない。そのため、この第二の実施形態の例においては、潜像要素(8A’、8B’)のある領域では、正反射時に光反射要素群(6’)が介在しないことから、潜像要素(8A’、8B’)のある領域から生じる反射光量をより減少させることができる。このため、光反射要素群(6’)がある領域と潜像要素(8A’、8B’)のある領域との反射光量の差異がより大きくなり、潜像の視認性をより高めることができる。
本発明の潜像印刷物(1’)の効果については、図19に示すとおりである。効果は、第一の実施形態で示した効果と同じである。まず、潜像印刷物(1’)を拡散反射光下で観察した場合、アルファベットの「JPN」のみが視認される(図示せず。)。拡散反射光下においては、基画像(12)やモアレ模様(m’)は出現せず、完全に不可視である。
続いて、正反射光下の効果について説明する。正反射光下においては、まず拡散反射光下で視認されていたアルファベットの「JPN」は目視上消失する。これは、光反射要素群(6’)が正反射することで画像全体の濃度が淡くなり(明度が上昇し)、「JPN」の文字とその周辺の濃度差(明度差)が圧縮されて小さくなり、目視上捉えられなくなるためである。
また、図19(a)のように、右側にある光源(10’)から潜像印刷物(1’)に光が入射した場合、観察者(11’)には、第一の有意情報であるアルファベットの「A」と、「A」とは異なる色彩を有したモアレ模様(m’)が視認される。一方、図19(b)のように、左側から潜像印刷物(1’)に光が入射した場合、観察者(11’)には、第二の有意情報であるアルファベットの「B」と、「B」とは異なる色彩を有したモアレ模様(m’)が視認される。
また、背景に出現するモアレ模様(m’)は、図9に示すように潜像印刷物(1’)の傾きを変えることで左右に連続的に動いて見える。実際には、入射する光の角度の変化に応じて、印刷画像(3’)中に視認される有意情報がチェンジする効果と、モアレ模様(m’)が動いて見える効果が同時に発現する。また、チェンジする有意情報と、モアレ模様(m’)の色彩が異なっているため、それぞれの視認性は損なわれない。これらの原理については第一の実施形態と同様であることから説明を省略する。
第二の実施形態においては、基画像(12)がチェンジする形態の潜像印刷物(1’)についてのみ説明したが、モアレ拡大現象を利用した基画像(12)が出現する形態や、インテグラルフォトグラフィ方式の基画像(12)が出現する形態についても、第一の実施形態と同様に用いることができる。以上が、第二の実施形態の説明である。
本発明において基画像とは別に背景に生じるモアレ模様(m)は、場合によっては基画像の動きやチェンジ効果等に対して影響を及ぼす場合がある。これは、潜像印刷物(1)の層構造によっては、潜像要素群(5)が蒲鉾状要素群(4)の上に重なるだけでなく、光反射要素群(6)の上にも重なるため、光学特性の異なる二つの要素群に別々にサンプリングされることに起因する。蒲鉾状要素群(4)と光反射要素群(6)の光学特性の差異が大き過ぎると、例えば、モアレ模様(m)の色彩の異なる領域ごとに基画像のチェンジするタイミングにずれが生じたり、基画像の動きの速度や大きさが変化したりする場合がある。このような場合には、光反射要素群(6)の面積率を全体に上下させて光学特性の差異が小さくなるように調整するか、あるいは潜像要素群(5)が上に重なる光反射要素群(6)のみを、要素が一定のピッチで配置された構成から微細な網点が一様に配置された構成に変更することで、潜像要素群(5)が存在する領域の光学特性が、一様に変化がない構造(その領域のみモアレ模様(m)が発生しない構成)とすることで解決できる。
蒲鉾状要素群(4)、光反射要素群(6)及び潜像要素群(5)に用いるインキに機能性を付与してもよい。例えば、赤外線吸収インキ、赤外線透過インキ、あるいは赤外線反射インキ等で形成してもよく、また、発光顔料を配合してもよい。
蒲鉾状要素(7)の画線の盛り上がりの高さは、特に制限するものではないが流通適性を考えると1mmを超える高さを有することは、好ましくはない。また、蒲鉾状要素(7)をインキにより形成する場合であって、皮膜の厚さが2μm未満の場合は、画像のチェンジ効果が低くなることがある。よって、蒲鉾状要素(7)をインキ皮膜によって形成する場合には、2μm以上1mm以下であることが好ましい。
それぞれの構造や画線のピッチ(P1、P2)は、0.01mm以上5.0mm以下で形成することが好ましい。0.01mm未満のピッチで、蒲鉾状要素(7)に2μm以上の盛り上がりを形成する場合には、一般的な印刷で再現できる蒲鉾状要素(7)のピッチとしては、ほぼ限界のピッチであり、印刷物品質の安定性に欠ける上に、たとえ、0.01mm未満のピッチで要素を形成できたとしても、ほとんどの場合、出現する潜像の視認性が極端に低くなるため適当ではない。また、逆に、5.0mmを超えるピッチで形成した場合には、潜像として再現できる画像の解像度が極端に低くなってしまうため適切ではない。
実施の形態の潜像印刷物(1)のように潜像要素群(5)を印刷で形成する場合には、比較的高解像度な印刷が可能なオフセット印刷方式やフレキソ印刷方式等が適している他、インクジェットプリンターやレーザプリンター等のデジタル印刷機を用いて形成することも可能である。これらのデジタル印刷機を用いる場合には一枚一枚異なる情報を与える可変情報を容易に付与できるという特徴がある。また、第一の実施形態で説明した構造であれば、レーザーマーカー等を用いて蒲鉾状要素群(4)や光反射要素群(6)の画線表面を僅かに切削し、光学特性を変化させることで潜像要素群を形成することも可能である。
なお、本明細書中における正反射とは、物質にある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度とほぼ等しい角度に強い反射光が生じる現象を指し、拡散反射とは、物質にある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度と異なる角度に弱い反射光が生じる現象を指す。例えば、虹彩色パールインキを例とすると、拡散反射の状態では無色透明に見えるが、正反射した状態では特定の干渉色の強い光を発する。また、正反射光下で観察するとは、印刷物に入射した光の角度とほぼ等しい反射角度に視点をおいて観察する状態を指し、拡散反射光下で観察するとは、印刷物に入射した光の角度と大きく異なる角度で観察する状態を指す。
また、本発明における画線とは、印刷画像を形成する最小単位の小さな点である網点を特定の方向に一定の距離連続して配置した点線や破線の分断線、直線、曲線、破線等を指し、画素とは、少なくとも一つの印刷網点又は印刷網点を複数集めて一塊にした円や三角形、四角形を含む多角形、星形等の各種図形、あるいは文字や記号、数字等を指す。
さらに、本明細書中における「明度」とは色の明るさを指し、高い場合には明るく、低い場合には暗い。また、彩度とは、色の鮮やかさの度合いを指す。加えて、本発明における「色彩」とは、色相、彩度及び明度の概念を含んで色を表したものであり、また、「色相」とは、赤、青、黄といった色の様相のことであり、具体的には、可視光領域(400〜700nm)の特定の波長の強弱の分布を示すものである。本明細書中では特に、白や黒も一つの色相とする。本発明における「色相が同じ」とは、二つの色において赤、青、黄といった色の様相が一致し、可視光領域の波長の強弱の分布が二つの色において相関を有することである。また、本明細書中においては無彩色も一つの色相であると定義し、白、灰色、黒は同じ色相であると考える。
以下、前述の発明を実施するための形態に従って、具体的に作成した潜像印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
実施例については、第一の実施形態で説明した潜像印刷物(1)の例で説明する。具体的には、実施の形態と同様に図1から図8までを用いて説明する。図1に、実施例の潜像印刷物(1)を示す。潜像印刷物(1)は、基材(2)上に灰色の印刷画像(3)を有して成る。基材(2)には、一般的なコート紙(エスプリコートFM 日本製紙製)を用いた。
図2に印刷画像(3)の概要を示す。印刷画像(3)は、蒲鉾状要素群(4)の上に潜像要素群(5)と光反射要素群(6)とが重なり合って成る。積層形態は、図5(a)の形態とした。潜像要素群(5)は、アルファベットの「A」を構成する第一の潜像要素群(5A)及びアルファベットの「B」を構成する第二の潜像要素群(5B)を含んで成る。
図3に、基材(2)上に形成した蒲鉾状要素群(4)を示す。蒲鉾状要素群(4)は、幅0.3mmの直線を成す蒲鉾状要素(7)が、直線方向と直交する第一の方向(S1)に、ピッチ0.4mmで連続して配置されて成る。このような画線構成の蒲鉾状要素群(4)をUV乾燥方式のスクリーン印刷で、表1に示す半透明なパールインキを用いて基材(2)上に印刷した。本インキで印刷した蒲鉾状要素(7)は、拡散反射光下で半透明であり、正反射光下において金色の干渉色を発するカラーフリップフロップ性を生じた。また、それぞれの蒲鉾状要素(7)の高さは約15μmであった。
Figure 2018024104
潜像要素群(5)について図4を用いて説明する。潜像要素群(5)は、第一の有意情報である、アルファベットの「A」と、第二の有意情報であるアルファベットの「B」の二つの有意情報を含む。第一の有意情報は、図4(b)に示す第一の潜像要素群(5A)によって表され、第二の有意情報は、図4(c)に示す第二の潜像要素群(5B)によって表される。第一の潜像要素群(5A)は、画線幅0.15mmの第一の潜像要素(8A)を、第一の方向(S1)にピッチ0.4mmで万線状に連続して配置し、第二の潜像要素群(5B)は、画線幅0.15mmの第二の潜像要素(8B)を第一の方向(S1)にピッチ0.4mmで万線状に連続して配置した。第一の潜像要素(8A)と第二の潜像要素(8B)は、第一の方向(S1)にピッチの半分に当たる0.2mmだけずらした構成とした。以上のような構成の潜像要素群(5)をウェットオフセット印刷によって、低光沢で透明なインキ(マットメジウム T&K TOKA製)で、蒲鉾状画線群(4)の上に形成した。
図2に示す光反射要素群(6)は、アルファベットの「JPN」を表す情報部(6A)の面積率を約60%とし、その他の背景部(6B)の面積率を約30%として可視画像を構成した。具体的な構成としては、情報部(6A)は、画線幅0.25mmの光反射要素(9)を、ピッチ(P2)が0.412mmで第一の方向(S1)に万線状に配置し、背景部(6B)は、画線幅0.12mmの光反射要素(9)を、同じくピッチ(P2)が0.412mmで第一の方向(S1)に万線状に配置した。光反射要素群(6)は、ウェットオフセット印刷で銀インキ(TKSOシルバー T&K TOKA製)を用いて蒲鉾状要素群(4)と潜像要素群(5)上に印刷した。この光反射要素群(6)は、拡散反射光下では暗い灰色で正反射光下では白色となる、優れた明暗フリップフロップ性を有する。なお、光反射要素群(6)の印刷皮膜は、約1μmであった。
本実施例の潜像印刷物(1)の効果について図8を用いて説明する。拡散反射光下で潜像印刷物(1)を観察した場合、可視画像(15)の「JPN」の文字が視認された。次に、図8(b)のように、左側から潜像印刷物(1)に光が入射した場合、可視画像(15)の「JPN」の文字が消失するとともに、観察者(11)には、明るい白色と金色の二つの色相の異なる色彩豊かなグラデーションを有するモアレ模様(m)の中に、第一の有意情報である「A」の文字が暗い灰色の色彩で視認された。また、図8(c)のように、右側から潜像印刷物(1)に光が入射した場合、観察者(11)には、明るい白色と金色の二つの色相の異なる色彩豊かなグラデーションを有するモアレ模様(m)の中に、第二の有意情報である「B」の文字が暗い灰色の色彩で視認された。
また、モアレ模様(m)は、基材(2)の傾きを僅かに変えることで、図9に示すように、第一の方向(S1)に連続的に移動する効果が確認できた。以上のように、入射する光の角度の変化に応じて、印刷画像(3)中に視認される基画像(12)がチェンジし、同時に色彩豊かなモアレ模様(m)が動いて見える効果を有することが確認できた。また、基画像(12)とモアレ模様(m)は色相が異なり、それぞれの視認性を損なうことはなかった。
1、1’ 潜像印刷物
2、2’ 基材
3、3’ 印刷画像
4、4’ 蒲鉾状要素群
5、5’ 潜像要素群
5A、5A’ 第一の潜像要素群
5B、5B’ 第二の潜像要素群
6、6’ 光反射要素群
6A、6A’ 情報部
6B、6B’ 背景部
6C’ 潜像カモフラージュ要素群
7、7’ 蒲鉾状要素
8 潜像要素
8A、8A’ 第一の潜像要素
8B、8B’第二の潜像要素
9、9’ 光反射要素
10、10’ 光源
11、11’ 観察者の視点
12 基画像
12A 第一の基画像
12B 第二の基画像
14’ 潜像カモフラージュ要素
15 可視画像
S1 第一の方向
i、m、m’ モアレ模様
f 従来技術における基画像

Claims (4)

  1. 基材上の少なくとも一部に、樹脂を含む材料により形成された蒲鉾形状を有する蒲鉾状要素が万線状に配置された蒲鉾状要素群と、
    正反射光下において前記蒲鉾状要素と異なる色彩の明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一方の光学特性を備えた光反射要素が万線状に配置された光反射要素群と、
    基画像を分割及び/又は圧縮した透明又は半透明の潜像要素が万線状に配置された潜像要素群から成る印刷画像が形成され、
    前記蒲鉾状要素群の上に、前記光反射要素群、前記潜像要素群の順に積層又は前記潜像要素群、前記光反射要素群の順に積層され、
    前記蒲鉾状要素群及び前記光反射要素群は、要素のピッチ、配置角度、形状のいずれか一つが異なることで要素群同士の干渉によりモアレ模様が形成され、
    前記基材を正反射光下で連続的に角度を変化させながら観察すると、前記潜像画像が変化及び/又は動的に視認されるとともに前記モアレ模様が動的に視認可能なことを特徴とする潜像印刷物。
  2. 前記蒲鉾状要素群及び前記光反射要素群は、少なくとも一つは透明又は半透明で形成され、
    前記光反射要素群は、面積率の差異による濃度差で可視画像を形成して成り、
    前記印刷画像を拡散反射光下で観察すると前記可視画像のみが視認可能となり、正反射光下で観察すると前記モアレ模様が出現し、前記可視画像は消失して視認されないことを特徴とする請求項1記載の潜像印刷物。
  3. 基材上の少なくとも一部に、樹脂を含む材料により形成された蒲鉾形状を有する透明又は半透明の蒲鉾状要素が万線状に配置された蒲鉾状要素群と、
    正反射光下において前記蒲鉾状要素と異なる色彩の明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一方の光学特性を備え、かつ、拡散反射光下において前記基材と異なる色彩を有する光反射要素が万線状に配置された光反射要素群と、
    拡散反射光下において前記光反射要素群と同じ色相を有し、正反射光下においては前記光反射要素と異なる色彩を有し、基画像が分割及び/又は圧縮された潜像要素が万線状に配置された潜像要素群から成る印刷画像が形成され、
    前記蒲鉾状要素群の上に、
    i)前記光反射要素群、前記潜像要素群の順に積層又は前記潜像要素群、前記光反射要素群の順に積層、又は、
    ii)前記光反射要素群と前記潜像要素群が並置され、
    前記光反射要素群は、拡散反射光下における前記印刷画像の濃度から前記潜像要素群の濃度を減じた濃度で構成され、
    前記蒲鉾状要素群及び前記光反射要素群は、要素のピッチ、配置角度、形状のいずれか一つが異なることで要素群同士の干渉によりモアレ模様が形成され、
    前記基材を正反射光下で連続的に角度を変化させながら観察すると、前記潜像画像が変化及び/又は動的に視認されるとともに前記モアレ模様が動的に視認可能なことを特徴とする潜像印刷物。
  4. 前記蒲鉾状要素群及び前記光反射要素群は、少なくとも一つは透明又は半透明で形成され、
    前記光反射要素群は、面積率の差異による濃度差で可視画像を形成して成り、
    前記印刷画像を拡散反射光下で観察すると前記可視画像のみが視認可能となり、正反射光下で観察すると前記モアレ模様が出現し、前記可視画像は消失して視認されないことを特徴とする請求項3記載の潜像印刷物。
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