JP2018020350A - プレス成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】天板部1とフランジ部2とが側壁部を介して幅方向で連続していると共に、天板部1及びフランジ部2が長手方向に沿って天板部1側に凸に湾曲したハット形断面を有する製品形状に、金属板をプレス成形して製造する際に、天板部1と側壁部3を繋ぐ稜線部10の断面の曲率半径が製品形状での曲率半径より大きい金型でプレス成形することで、長手方向に沿った湾曲を製品形状での曲率半径以下の第2の曲率半径のハット形断面を有する中間部品を製造する第1の工程と、中間部品を上記製品形状にプレス成形する第2の工程と、を有する。
【選択図】 図1
Description
車体構造部品に用いられるプレス成形品の一つとして、例えばBピラーアウターのような、長手方向に沿って所定の曲率半径で湾曲した天板部およびフランジ部を有するハット形断面部品が挙げられる。このような部品をプレス成形した場合、成形下死点で、天板部に引張応力が発生すると共にフランジ部に圧縮応力が発生し、これらの応力差によりスプリングバック(キャンバーバック)が発生する。このような部品に対して、ハイテン材を適用した場合、前述の下死点での応力差が大きくなり、スプリングバックが増加するといった課題が発生する。さらに、ハイテン材では材料強度のバラツキが大きくなるため、寸法精度のバラツキも大きくなる、すなわち材料強度感受性が悪い。
特許文献1に記載の方法では、長手方向に湾曲した天板部と、天板部の長手方向に沿った両端から湾曲内側に向かって延在する二つの側壁部とを有する成形品に対して、前工程の天板部の曲率と天板部と側面部とがなす角度とを変更する。これによって、後工程で発生する応力を低減し、スプリングバックを抑制する。
特許文献3に記載の方法は、プレス成形時に発生する反りを見込んだ金型を生成する方法であり、この見込み形状を用いてプレス成形することによりスプリングバックを低減する。
特許文献2に記載の方法では、圧縮応力もしくは引張応力が発生する領域により、変更する曲率の大小傾向が変化するため、金型の設計が複雑になる。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、ハイテン材を使用した場合でも、金型が複雑にすることなく、側面視のスプリングバック、すなわちキャンバーバックを大きく低減することができるプレス成形品の製造方法を提供する。
この結果、本発明の態様によれば、材料強度が振れた場合でも、寸法精度の高い部品が得られ、歩留りの向上に繋がる。さらに、ハット断面形状の部品を用いて車体構造部品とする際に、部品の組立てを容易に行うことが可能となる。
天板部1の幅方向両側が側壁部3を介してフランジ部2に連続しているハット形断面部品であって、長手方向に沿って天板部1側に凸となるように湾曲したハット形断面部品に、ブランク材からなる金属板をプレス成形すると、図1(a)に示すように、湾曲部分の天板部1において引張残留応力が発生すると共に、フランジ部2において圧縮残留応力が発生する。そして、プレス金型から部品を外して、これらの応力が開放されることによって、図1(b)に示すようなスプリングバックが発生する。このとき、金属板の材料強度の増加に伴い、この残留応力が増加して、スプリングバック量が大きくなる傾向がある。すなわち、590MPa以上のハイテン材を採用するとスプリングバックが大きくなる。
さらに、天板部1に対し、補強その他を目的とした凹や凸の形状が形成される場合であっても適用できる。この場合、天板部1と対向する金型のプレス面部分にその凹や凸の形状を形成しておけばよい。
ここで、フランジ外周をトリムするトリム加工(不図示)を有する。トリム加工は、第1の工程の前に実施しても良いし、第1の工程と第2の工程の間で実施しても良いし、第2の工程の後に実施しても良い。本実施形態では、トリム加工を第1の工程でのプレス加工の後に実施する場合で説明する。この場合、中間部品は、フランジ外周のトリム加工が行われた状態の部品となる。
同じ線長とするには、例えばフランジ部2と張出部5を接続する縦壁部6の線長を変更するように調整することで可能である。
1.2 ≦ (r’/r) < 5.0・・・・(1)
例えば、製品形状における天板部1の長手方向に沿った天板部1の曲率半径をR1oと定義した場合、中間部品におけるスプリングバック後の天板部1の長手方向に沿った曲率半径R1’が下記(2)式を満たす値となるように、天板部1での第2の曲率半径の値を設定することが好ましい。すなわち、スプリングバック後の中間部品では、製品形状と比較してスプリングゴー側となる曲率半径となるように設定する。
ここで、本実施形態では、上記中間部品を成形する金型において、天板部1と側壁部3を繋ぐ稜線部10の断面の曲率半径r’が、上述の通り、製品形状の曲率半径rより大きく設定する。これによって、第1の工程の金型から中間部品を取り出す際のスプリングバックで、その分、第1の工程で使用する金型に設けた長手方向の曲率半径よりも、中間部品での長手方向の曲率半径が小さくなる。従って、その分だけ、第1の工程で使用する金型の長手方向の曲率半径を、第2の曲率半径よりも大きく設定しても良い。例えば、第1の工程で使用する金型の長手方向の曲率半径を、製品形状の曲率半径と等しく設定しても良い。
0.70 ≦ (R2’/R2o) < 1.00・・・・(3)
上記の各中間部品に発生するスプリングバック後の各曲率半径は、CAE解析その他のシミュレーション解析をコンピュータで行うことで計算によって求めても良いし、実際に試験品を作製して実測によって求めても良い。
また本実施形態では、第1の工程での上記プレス成形後に、フランジ外周のトリム加工を施す。トリム加工には、せん断加工やレーザ切断加工などの公知の加工方法を採用すれば良い。
第2の工程は、第1の工程で製造した中間部品を目標とする製品形状にプレス成形する工程である。第2の工程の成形にはリストライク加工を適用すればよい。
本実施形態のプレス成形品の製造方法では、スプリングバックを低減するために、第1の工程で、上記天板部1と側壁部3を繋ぐ稜線部10の断面の曲率半径が上記製品形状の曲率半径より大きい金型を用いることにより、天板部1とフランジ部2の曲率半径をそれぞれ、製品形状の曲率半径よりも小さくなるようにプレス成形し、第2の工程で、第1の工程で得られた中間部品を、製品形状での曲率半径となるようにプレス成形して目標の製品形状からなるプレス成形品を得る。
プレス加工する金属板としてはハイテン材を対象とするが、鋼板やアルミニウム板などを用いてもよい。また、長手方向に沿った、製品形状での天板部1の曲率半径とフランジ部の曲率半径は異なっていてもよい。
第1の工程において、天板部1の線長を製品形状よりも短く成形した場合(L1>L1’)、第2の工程の成形時に、天板部1で引張応力が発生する可能性がある。また第1の工程において、フランジ部の線長を製品形状よりも長く成形した場合(L2<L2’)、第2の工程の成形時に、フランジ部で圧縮応力が発生する可能性がある。そのため、第1の工程の成形後と第2の工程の成形後との天板部1およびフランジ部の線長はそれぞれ同じ若しくは略同一にすることが望ましい。
ここで、(R1’/R1o)および(R2’/R2o)が0.7よりも小さい場合、第2の工程での金型下死点において天板部1に過度の圧縮応力が、フランジ部2に過度の引張応力が発生し、成形部品にスプリングゴーが発生するおそれがある。逆に、(R1’/R1o)および(R2’/R2o)が1よりも大きい場合、第2の工程の金型下死点において天板部1に引張応力が、フランジ部2に圧縮応力が残り、スプリングバックが十分抑制されない可能性がある。
この結果、本実施形態によれば、材料強度が振れた場合でも、寸法精度の高い部品が得られ、歩留りの向上に繋がる。さらに、ハット断面形状の部品を用いて車体構造部品とする際に、部品の組立てを容易に行うことが可能となる。
本実施例では、金属板を、図6に示す長手方向に湾曲したハット形断面部品にプレス成形して製造する場合を対象とした。すなわち、ハット形断面部品の形状(製品形状)は、図6に示すように、天板部と側壁部をなす稜線部10の断面の曲率半径が5mm(角度が95度)であり、長手方向に沿って曲率半径1600mmで天板部1側に一律の曲率を有する形状である。また、ハット形断面部品は長手方向の寸法が500mmであり、幅方向の寸法が160mmである。
比較例1は、1回のプレス成形で上記のハット形断面部品の形状に成形し、その成形にフォーム成形を採用した場合の解析例である。また、比較例2、発明例1、2は、第1の工程と第2の工程との2回のプレス成形で上記のハット形断面部品の形状に成形し、第2の工程で製品形状の金型を用いてリストライク成形をした場合の解析例である。なお、第1の工程に使用した金型の長手方向の曲率半径を1400mmとした。
比較例1では、第1の工程を省略して、1回のプレス成形で上記のハット形断面部品の形状にプレス成形した場合を想定して、プレス成形解析とスプリングバック解析とを実施した例である。そして、スプリングバック前後の天板部1およびフランジ部2の曲率半径の変化倍率とスプリングバック量を測定した。また、スプリングバックによる製品形状との乖離量は長手方向中央のパンチ底でベストフィットし、長手方向端部における製品形状とのZ方向乖離量によって評価した。
(比較例2)
比較例2では、第1の工程の金型と第2の工程後の製品形状における天板部1と側壁部3との間の稜線部10の断面の曲率半径を同じ値に設定した(r’/r=1.0)。
発明例1では、第1の工程の金型の第2の工程後の製品形状に対する、天板部1と側壁部3との間の稜線部10の断面の曲率半径の比を1.3に設定した(r’/r=1.3)。
(発明例2)
発明例2では、第1の工程の金型の第2の工程後の製品形状に対する、天板部1と側壁部3との間の稜線部10の断面の曲率半径の比を4.8に設定した(r’/r=4.8)。
また、第1の工程と第2の工程の2回のプレス成形で製造する場合であっても、比較例2のように、第1の工程の金型と第2の工程後の製品形状における天板部1と側壁部3をなす稜線部10の断面の曲率半径を同じ(r’/r=1.0)に設定した場合、(R1’/R1o)および(R2’/R2o)が1.2となり、金型との乖離量は従来工法から大きな改善が見られなかった。
2 フランジ部
3 側壁部
4 本体部
5 張出部
6 縦壁部
10 稜線部
r 製品形状での稜線部の断面の曲率半径
r′ 中間部品を成形する金型での稜線部の断面の曲率半径
Claims (8)
- 天板部とフランジ部とが側壁部を介して幅方向で連続していると共に、上記天板部及び上記フランジ部が長手方向に沿って上記天板部側に凸に湾曲したハット形断面を有する製品形状に、金属板をプレス成形して製造する際に、
上記天板部と側壁部を繋ぐ稜線部の断面の曲率半径が上記製品形状での曲率半径より大きい金型でプレス成形することで、長手方向に沿った湾曲が上記製品形状での曲率半径以下の第2の曲率半径のハット形断面を有する中間部品を製造する第1の工程と、
上記中間部品を上記製品形状にプレス成形する第2の工程と、を有することを特徴とするプレス成形品の製造方法。 - 上記中間部品における上記天板部およびフランジ部の長手方向の線長をそれぞれ、上記製品形状における上記天板部およびフランジ部の長手方向の線長と同じ値に設定することを特徴とする請求項1に記載したプレス成形品の製造方法。
- 上記天板部及びフランジ部の上記各第2の曲率半径は、それぞれ上記第1の工程で成形した後に上記中間部品に発生するスプリングバック後の曲率半径が、上記製品形状での曲率半径以下となる値に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレス成形品の製造方法。
- 上記製品形状における天板部と側壁部とを繋ぐ稜線部の断面の曲率半径をrと定義した場合、上記中間部品を成形する金型において、上記天板部と側壁部とを繋ぐ稜線部の断面の曲率半径r’が下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレス成形品の製造方法。
1.2 ≦ (r’/r) < 5.0・・・・(1) - 上記製品形状における天板部の長手方向に沿った天板部の曲率半径をR1oと定義した場合、上記中間部品におけるスプリングバック後の天板部の長手方向に沿った曲率半径R1’が下記(1)式を満たす値となるように、上記天板部での上記第2の曲率半径の値を設定することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項4に記載のプレス成形品の製造方法。
0.70 ≦ (R1’/R1o) < 1.00・・・・(2) - 上記製品形状におけるフランジ部の長手方向に沿った曲率半径をR2oと定義した場合、上記中間部品におけるスプリングバック後のフランジ部の長手方向に沿った曲率半径R2’が下記(2)式を満たす値となるように、上記フランジ部での上記第2の曲率半径の値を設定することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項4又は請求項5に記載のプレス成形品の製造方法。
0.70 ≦ (R2’/R2o) < 1.00・・・・(3) - 上記第1の工程の成形にドロー成形またはフォーム成形を適用し、上記第2の工程の成形にリストライク加工を適用することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。
- 上記金属板の材料強度が590MPa以上の鋼板とすることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。
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