JP2018016633A - 新規な治療用抗癌薬の製造及び使用 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は2012年12月28日に提出された出願番号が61/761,890で、標題が「汎用的抗癌薬及びワクチンの開発」である米国仮出願の優先権を主張する。本発明はさらに2010年6月2日に提出された出願番号が12/792,413で、標題が「汎用的抗癌薬及びワクチンの開発」である米国出願の優先権を主張する。本発明はさらに2012年8月10日に提出された出願番号が13/572,263で、標題が「原核細胞内においてII型真核ポリメラーゼプロモーター駆動性転写作用を使用するための誘導可能な遺伝子発現組成物及びその応用」である米国出願の優先権を主張する。本願は、2010年6月2日に提出された標題が「汎用的抗癌薬及びワクチンの開発」である米国特許出願12/792,413、2012年8月10日に提出された標題が「原核細胞内においてII型真核ポリメラーゼプロモーター駆動性転写作用を使用するための誘導可能な遺伝子発現組成物及びその応用」である米国特許出願13/572,263の一部継続出願(continuation-in-part)である。これらの出願の内容のすべては参照としてここに組み込まれている。
本発明は一般に新規DNA/RNA治療薬及び/又はワクチンの癌症治療での製品設計と関連使用に関する。より詳細には、本発明は新規核酸組成物を使用する設計及び方法に関し、該核酸組成物がヒト細胞に送達された後、小型リボ核酸(small RNA)遺伝子サイレンシングエフェクターに処理され、mir-302の標的となる細胞周期調節因子及び/又は発癌遺伝子で特定遺伝子のサイレンシング効果を引き起こし、さらに腫瘍/癌細胞の成長、侵入及び転移に対する腫瘍抑制及び/又は癌症予防の効果を奏する。小型リボ核酸遺伝子サイレンシングエフェクターは、mir-302a、mir-302b、mir-302c、mir-302d、mir-302e、mir-302f、それらの前駆体(プレマイクロリボ核酸,pre-miRNAs)、及びそれらの手動で再設計及び/又は修飾された小ヘアピンリボ核酸/小干渉リボ核酸(shRNA/siRNA)などの相同体/誘導体、並びにそれらの組み合わせのような腫瘍抑制因子マイクロリボ核酸(tumor suppressor microRNA,TS-miRNA)を含むことが好ましい。興味を示す該ヒト細胞は、エクスビボ(ex vivo)及び/又はインビボ(in vivo)の正常体細胞又は腫瘍/癌細胞を含む。
幹細胞は宝箱の如く、その内に、幹細胞成長/再生の誘発や損傷/老化組織の回復及び/又は再生、或いは退行性疾患の処置や腫瘍/癌症形成の防止に用いられる複数種の有効成分が含まれている。したがって、本発明者はこれらの幹細胞を新薬の同定や製造の手段とすることが理解できる。このことから、得られた新薬は薬学及び/又は治療への応用の発展、例えば生物薬の利用、診断装置及び/又は装備、幹細胞の生成、幹細胞の研究及び/又は治療、組織/器官の回復及び/又は再生、傷口の治癒処理、腫瘍抑制、癌症の治療及び/又は予防、疾患処置、薬物の製造、及びそれらの組み合わせに用いられる。
発明の概要
本発明はマイクロリボ核酸前駆体(microRNA precursors,pre-miRNAs)を癌症治療の治療薬及び/又はワクチンとして使用する設計及び方法である。具体的には、本発明は組換え核酸組成物を使用する設計及び方法に関し、この組換え核酸組成物がヒト細胞に送達された後、小型リボ核酸遺伝子サイレンシングエフェクター(small RNA-based gene silencing effector)に処理され、mir-302の標的となる細胞周期調節因子及び/又は発癌遺伝子に対する特定の遺伝子サイレンシング効果を引き起こし、腫瘍抑制及び/又は癌症予防などの効果をもたらし、これにより腫瘍/癌細胞の成長、増殖、侵入及び転移の抑制に用いることができる。これらの小型リボ核酸遺伝子サイレンシングエフェクターは腫瘍抑制因子マイクロリボ核酸(TS-miRNA)、例えばmir-302a、mir-302b、mir-302c、mir-302d、mir-302e、mir-302f、それらの前駆体(pre-miRNAs)、及びそれらの手動で再設計した小ヘアピンリボ核酸(shRNA)様相同体/誘導体、並びにそれらの組み合わせを含むことが好ましい。小ヘアピンリボ核酸相同体/誘導体の設計はshRNA及びそれと相同の小干渉リボ核酸(small interfering RNA,siRNA)構造における個別の単一ユニット又は複合クラスター(cluster)内のミスマッチ(mismatched)及びパーフェクトマッチ(perfectly matched)核酸組成物を含む。それらは標的特異性を促進するとともに、送達及び治療に必要なmir-302の数量(コピー数,copy number)を低減することができる。前記ヒト細胞はインビトロ、エクスビボ及び/又はインビボの正常細胞及び/又は腫瘍/癌細胞を含む。
添付した図面を参照しながら本発明の特定の具体的実施例を説明するが、これらの具体的実施例は実施例に過ぎず、本発明の原理の応用を代表できる少数の可能性のある特定の具体的実施例のみを例示的に挙げることを理解すべきである。当業者であれば、各種の変更や修飾は、添付した特許請求の範囲でさらに定義される本発明の精神、範囲や意図に含まれると見なすべきである。
我々の過去の研究では、ヒト黒色腫細胞Colo-829及び前立腺癌細胞PC3において、mir-302発現の増加はこれらの悪性癌細胞をhES様の多能性の(pluripotent)状態に再プログラムできることを示した(Lin氏ら,2008)。体細胞の再プログラム(SCR)の過程において、mir-302が98%より多くの(>98%)の癌細胞のアポトーシスを引き起こすとともに、さらに残りの(<2%)再プログラム細胞の増殖速度を大幅に低減した。確かにこれらの特性は癌症治療に有益であるが、mir-302が正常ヒト細胞における機能はまだ確実ではない。その効果を評価するために、我々は誘導可能なpTet-On-tTs-miR302s発現ベクターを正常ヒト毛嚢細胞(hHFCs)中に導入した。hHFCsを選んだ理由はその量が十分で、到達性を有し、且つ成長が速いことにある。我々は、ドキシサイクリン(Dox)の濃度が10 μMまで増加することにつれ、ドキシサイクリン濃度が7.5 μMより高い(>7.5 μM)(図1D、実施例5)の閾値で、コア再プログラム因子(core reprogramming factors)Oct4−Sox2−Nanogが一斉に促進されるとともに、増殖性の細胞クラスターが70%減少し、即ち、本来の37%±2%から11%±2%まで減少した(図1E、M期、実施例7)ことを観察できた。それに応じて、休眠細胞クラスターが41%増加し、即ち、本来の56%±3%から79%±5%まで増加し(図1E、G0/G1期、実施例7)、我々が以前、mir-302によって再プログラムされた多能性幹細胞(mir-302−reprogrammed pluripotent stem cells)において発見された(mirPS cells;Lin氏ら,2008)強力な抗増殖作用と相似することを示唆した。しかし、mir-302により再プログラムされたhHFC細胞(mirPS-hHFC)はアポトーシスを測定できるDNAラダーリング(DNA laddering)又は細胞死のいずれの徴候も示さない(図1F、実施例6)ことから、腫瘍/癌細胞と比較して、正常細胞の方がよりmir-302による抗増殖作用を耐えられることを示した。腫瘍/癌細胞はその旺盛な新陳代謝及び急速な成長拡張により、このような休眠状態における生存が極めて困難となると考えられる。
mir-302は癌細胞のアポトーシス及び細胞周期の減衰を引き起こす機能を有することに鑑みて、我々はmir-302を汎用的ヒト腫瘍/癌細胞の治療薬として使用する可能性を引き続き検討した。我々の過去の研究では、黒色腫(melanoma)と前立腺癌細胞における可能性を既に示した(Lin氏ら,2008)が、現行の研究で、乳癌細胞MCF7、肝臓癌細胞Hep G2、及び胚性奇形腫細胞NTera-2における可能性をさらに試した。図6A-6Bに示すように、3種類の腫瘍/癌細胞はpTet-On-tTS-miR302sベクターによって形質移入され、且つ、10μMドキシサイクリンの刺激下で、全てが休眠mirPS細胞に再プログラムされ、且つ、胚様体様コロニー(embryoid body-like colonoes)を形成した。3種類の腫瘍/癌細胞の全てにおいて、該濃度水準のmir-302は顕著なアポトーシスも引き起こした(>95%)(図1F、実施例6)。さらに、フローサイトメトリーによって、細胞周期の各時期のDNA含有量を分析した結果、全てのmirPS細胞中の有糸分裂細胞クラスターが著しく減少したことを示した(図6C、実施例7)。有糸分裂細胞クラスター(M期)はmirPS-MCF7細胞中では49%±3%から11%±2%まで78%低減し、mirPS-HepG2細胞中では46%±4%から17%±2%まで63%低減し、mirPS-NTera2細胞中では50%±6%から19%±4%まで62%低減した。逆に、休止/休眠の細胞クラスター(G0/G1期)は、mirPS-MCF7、mirPS-HepG2及びmirPS-NTera2細胞では、mirPS-MCF7細胞中では41%±4%から74%±5%まで、mirPS-HepG2細胞中では43%±3%から71%±4%まで、mirPS-NTera2細胞中では40%±7%から69%±8%まで、それぞれ80%、65%及び72%増加した。これらの結果は、mir-302がこれらの腫瘍/癌細胞の速い細胞周期速度を有効的に低減し、顕著なアポトーシスを誘発することができたことを示唆している。
mir-302とその標的となるG1チェックポイント調節因子との間の実際の相互作用を確認するために、我々はルシフェラーゼの3'末端非翻訳領域レポーター遺伝子(luciferase 3'UTR region reporter)試験を行った(図7A、実施例15)。その結果、異なる濃度のmir-302による処理は、サイクリン依存性キナーゼ2 (CDK2)、サイクリンD1/D2 (cyclins-D1/D2)とBMI-1ポリコームリングフィンガー発癌遺伝子(BMI1 polycomb ring finger oncogene)を含む標的となるG1チェックポイント調節因子に対して、大きく異なる抑制効果を引き起こすこととなった。10 μMドキシサイクリンの存在下で、mir-302はCDK2、cyclins D1/D2、及びBMI-1転写物の標的部位に効果的に結合し、80%より多く(>80%)のレポータールシフェラーゼの発現をサイレンシングすることに成功した(図7B、実施例15)。mirPS細胞中で真の標的遺伝子に対するMir-302の抑制効果をウェスタンブロット分析法によって確認した結果は、ルシフェラーゼの3'末端非翻訳領域レポーター遺伝子試験(図7C、実施例5)による結果と一致する。これに反して、5 μMのドキシサイクリンにより誘導されるmir-302の比較的少量の発現では、レポーター遺伝子の標的部位、又はサイクリンD2以外の標的となるG1チェックポイント調節因子のいずれに対しても顕著なサイレンシング効果を誘発できない(図7B及び7D)。これはmir-302発現の用量依存性(dose-dependent manner)及びmir-302が該用量依存性に基づいて細胞周期速度を微調整する能力を示している。哺乳動物細胞周期では、G1−S期の移行は通常、代償性の2つのサイクリン−サイクリン依存性キナーゼ複合体(cyclin−CDK complexes)であるcyclin-D−CDK4/6及びcyclin-E−CDK2によって制御される(Berthet氏ら,2006)。我々は、高濃度のmir-302がCDK2及びcyclins D1/D2に対する共抑制を通じて2つの複合体を失活させることで、G1−S期移行を制御する2つの経路を阻害するとともに、再プログラムされたmirPS細胞中の細胞周期速度を低下することを発見した。hHFCs及びmirPS細胞において、cyclin D3の有限な発現量は、mirPS細胞におけるcyclins D1/D2損失の代償に及ばない。
我々は、mir-302の腫瘍抑制機能及びその正常と腫瘍/癌細胞との間における異なる作用を確認した後、次に8週齢の雄性胸腺欠損マウス(BALB/c-nu/nu種)のインビボNTera2由来の奇形腫を治療する薬物としてmir-302が使用できるか否かの試験を行った(実施例13)。腫瘍Tera-2細胞株(neoplastic Tera-2,NTera-2)は多能性ヒト胚性奇形腫細胞株(human embryonalteratocarcinoma cell line)であって、インビボで多種の原始的体細胞組織(primitive somatic tissue)、特に原始的腺組織及び原始的神経組織に分化することができる(Andrews氏ら,1984)。その多能性のため、NTera-2由来の奇形腫はインビボでの様々な腫瘍を治療するモデルになることができる。薬剤の投与では、我々はインサイチュー(in situ)注射によってポリエチレンイミン(polyethylenimine,PEI)で調製されたpCMV-miR302s発現ベクターを腫瘍にできるだけ近い部位に注射した。pCMV-miR302sベクターはテトラサイクリン応答要素により制御される(TRE-controlled)CMVプロモーターを一般のCMVプロモーターに変えることで構成されたが(実施例2)、DNAメチル化のため、pCMV-miR302sのヒト細胞における発現は1ヶ月くらい期間に続く。上限値の10μg/マウス体重(g)(1回の注射の最大量)のpCMV-miR302sベクターを注射した後、マウスに疾患又は悪液質(cachexia)の徴候が観察されなかったため、この方法の安全性が証明された。組織学的検査においても、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓、及び脾臓に組織損傷(lesion)が検出されなかったことが示された。
我々は、試験したhpESC、PC3及びColo細胞においてmir-302の標的となる遺伝子を形質移入によってサイレンシングするために、連結したmir-302a−mir-302b−mir-302c−mir-302dであるpre-miRNAクラスター(SEQ.ID.NOs.9〜16)又は手動で再設計したpre-mir-302などの模倣体(例えば、5'-UAAGUGCUUC CAUGUUU-3'(SEQ.ID.NO.3)を含むヘアピン状の配列)を含む一連のmir-302の構成を設計して試験した。Mir-302a、mir-302b、mir-302c及びmir-302dの成熟配列はそれぞれ、5'-UAAGUGCUUC CAUGUUUUGG UGA-3' (SEQ.ID.NO.71)、5'-UAAGUGCUUC CAUGUUUUAG UAG-3' (SEQ.ID.NO.72)、5'-UAAGUGCUUC CAUGUUUCAG UGG-3' (SEQ.ID.NO.73)及び5'-UAAGUGCUUC CAUGUUUGAG UGU-3' (SEQ.ID.NO.74)である。注意すべきなのは、これらの相同のmir-302様の遺伝子サイレンシングエフェクターは、5'末端領域にある最初の17個のヌクレオチドが高い保存性(100%相同性)、即ち配列5'-UAAGUGCUUC CAUGUUU-3'(SEQ.ID.NO.3)を共有している。これらのmir-302の相同配列において、ウラシル(U)の代わりにチミン(T)を用いてもよい。
遺伝子の蓄積突然変異のため、癌の進行過程は不可逆的であるとされている。しかし、本発明はマイクロリボ核酸mir-302の前駆体(pre-mir-302)の新規な機能、即ち高度悪性の癌/腫瘍を低段階に再プログラムして良性状態とすることを開示し、自発性の癌の退縮(Cancer regression)と呼ばれる稀な自然療癒過程に属する可能性もある。自発性の癌の退縮は発生率が約100,000名の癌患者中の1名で、非常に稀に発生する。本発明者は、pre-mir-302による治療で稀な癌の退縮の発生率を約90%に向上させることができることを発見した。図15に示すように、pre-mir-302などの模倣体(pro-mir-302)をSCID-beigeヌードマウスの異種移植された悪性のヒト肝腫瘍の治療薬として使用した結果、pro-mir-302薬が悪性腫瘍を728±328 mm3(未処理のブランク群、コントロール群C)から75±15 mm3(pro-mir-302による処理、グループT)に減少させたことに成功したことを示しており、平均腫瘍サイズの90%に近い減少率を示した。それに比べて、他の合成siRNAなどの模倣体(siRNA-302)による処理ではいかなる近似した治療効果も示さなかった。更なる組織学的試験(最右)では、pro-mir-302で処理された異種移植された悪性腫瘍のグループのみで正常肝小葉のような構造(黒い矢印で示す丸)が観察され、他の処理グループ又はコントロール群では観察されなかったことを示しており、再プログラム機構の発生により悪性の癌細胞性質を比較的正常の状態に回復させた(癌の逆転,cancer reversion)ことを証明した。この新規な再プログラム機構はmir-302の腫瘍抑制因子の機能と関連するかもしれない。この機構は複数のヒト発癌遺伝子を同時で特に標的としてサイレンシングを行い、且つ腫瘍のシグナル伝達経路の起動を解消/予防する。しかし、多能性Oct4陽性幹細胞の現れが確認されていなかったため、この再プログラム機構は以前報告されたmir-302の体細胞に対する再プログラム機能とは異なるかもしれない(Lin氏ら,2008と2011)。
ヒト誘導多能性幹細胞(iPS)には老化を加速し、拡張を制限する問題があるという報告がある(Banito氏ら,2009;Feng氏ら,2010)。正常の成熟細胞は、有限数量の分裂を行い、最終的に複製老化(replective senescence)と呼ばれる静止状態(quiescence state)に至る。複製老化を回避した細胞は大抵腫瘍/癌細胞のような不死化細胞(immortal cells)となるため、複製老化は腫瘍/癌細胞の形成に対抗する正常の防御機構である。本発明では、我々は、mir-302はBMI-1を直接サイレンシングすることによって、p16Ink4a/p14ART関連の細胞周期調節を引き起こすことができることを発見した。他の研究では、BMI-1によってヒトテロメラーゼ逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase,hTERT)の転写作用が活性化され、テロメラーゼの活性が高められることによって複製老化が回避されて、細胞寿命が増長されるとのことがさらに指摘された(Dimri氏ら,2002)。このことから、mir-302の過剰発現はmirPS細胞のhTERT随伴性老化(hTERT-associated senescence)を引き起こすことが分かる。これを解明するために、我々はテロメアリピート増幅プロトコル試験(telomeric repeat amplification protocol,TRAP)(実施例16)を行い、テロメラーゼの活性を測定した。図9Aに示すように、10 μMのドキシサイクリンで処理した全てのmirPS細胞は、意外にもその本来の腫瘍/癌細胞及びヒト幹細胞H1/H9細胞に相似し、強烈なテロメラーゼ活性を示した。また、ウェスタンブロット分析は、これらのmirPS細胞において、hTERTの発現は減少ではなく、増加したことが示された(図9B)。テロメラーゼPCR ELISA試験によって、テロメラーゼの相対活性が増加したことが証明された(図9C)。また、我々はmirPS細胞中のリジン特異的ヒストンデメチラーゼ(lysine-specific histone demethylase AOF2、又はKDM1/LSD1とも言う)及びヒストンデアセチラーゼ(histone deacetylase HDAC2)のサイレンシングもさらに検出できた(図9B)。過去の研究では、hTERT転写の抑制にAOF2が必要であり、AOF2とHDAC2の両者の欠乏がhTERTの過剰発現を引き起こすことは指摘された(Won氏ら,2002;Zhu氏ら,2008)。我々はまた、本発明において、AOF2とHDAC2はmir-302の強い標的であり、且つmirPS細胞中ではいずれもサイレンシングされたことを発見した(図10)。そのため、mirPS細胞中では、mir-302は実際にhTERT随伴性老化を誘発するのではなく、mirPS細胞のテロメラーゼの活性を増強させる。しかしながら、hTERT活性増大の効果はmir-302により引き起こされたBMI-1の抑制とp16Ink4a/p14ARFの活性化で中和され、mir-302細胞中で腫瘍/癌細胞の形成を防ぐバランスに達している。
本発明をより理解しやすくするために、下記のように、幾つかの用語を定義する。
ヌクレオチド(Nucleotide):糖成分(五炭糖、pentose)、リン酸基(phosphate)及び窒素複素環塩基(nitrogenous heterocyclic base)を含む単分子のデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)である。該塩基はグリコシド炭素(glycosidic carbon、該五炭糖の1'炭素)によって該糖成分と結合し、該塩基と糖の組み合わせがヌクレオシド(nucleoside)である。該五炭糖の3'末端や5'末端の位置に少なくとも1つのリン酸基が結合しているヌクレオシドはヌクレオチド(nucleotide)である。つまり、DNAとRNAは異なるヌクレオチド単位、即ちデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチド単位でそれぞれ構成される。
センス核酸(Sense):配列順及び組成が相同なmRNAと同じ核酸分子である。符号「+」、「s」又は「sense」で該センス核酸構造形態を示す。
保存性(Conserved):ヌクレオチド配列が予め選択された配列(参照配列)に精確に相補するものと非ランダムにハイブリダイゼーションする場合、両者の配列は保存性を有する。
相補的ヌクレオチド配列(Complemetary Nucleotide Sequence):1本鎖分子のDNA又はRNAにおけるヌクレオチド配列が、もう一方の1本鎖のヌクレオチド配列と十分に相補しており、水素結合によって、2本鎖間で特異的にハイブリダイゼーションする。
イントロン切除(Intron Excision):RNA処理、成熟、及び分解を担当する細胞機構であって、RNAスプライシング(RNA splicing)、エキソソーム消化(exosome difestion)、ナンセンス仲介減衰(nonsense-mediated decay,NMD)、及びこれらの組み合わせを含む。
受容スプライス部位(Acceptor Splice Site):SEQ.ID.NO.5配列、SEQ.ID.NO.5に相同な配列、又は5'-CTGCAG-3' (SEQ.ID.NO.48)配列を含む核酸配列である。
癌組織(Cancerous Tissue):皮膚癌、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、肺癌、脳腫瘍/癌、リンパ癌、白血病、及びこれらの組み合わせから選ばれる腫瘍組織である。
薬学上及び/又は治療上の応用:生物医学的使用、装置及び/又は設備であって、診断、幹細胞の生成、幹細胞研究及び/又は治療発展、組織/器官の回復及び/又は再生、傷口の治癒処理、腫瘍抑制、癌の治療及び/又は予防、疾患処理、薬の製造及びこれらの組み合わせに用いられる。
全面的な腫瘍抑制及び/又は癌の治療効果を誘発する組成物及び方法であり、核酸組成物が用いられている。この核酸組成物は送達され、且つヒト細胞マトリックスでmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターに処理され、細胞におけるmir-302の標的となる細胞周期調節因子及び/又は発癌遺伝子を抑制することにより、腫瘍/癌細胞の成長を抑制及び/又は回避する。そのうち、上記mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターはSEQ.ID.NO.3配列を含み、また上記ヒト細胞マトリックスは正常であってもよいし、腫瘍及び/又は癌細胞を少なくとも1つ含んでもよい。
以下に開示された実験ファイルにおいて、次の略語を適用する。M(モーラー、molar)、mM(ミリモーラー、millimolar)、μm(マイクロモーラー、micromolar)、mol(モル、moles)、pmol(ピコモル、picomole)、gm(グラム、grams)、mg(ミリグラム、milligrams)、μg(マイクログラム、micrograms)、ng(ナノグラム、nanograms)、L(リットル、liters)、ml(ミリリットル、milliliters)、μl(マイクロリットル、microliters)、°C(摂氏温度、degrees Centigrade)、cDNA(コピー又は相補的DNA、copy or complementary DNA)、DNA(デオキシリボ核酸、deoxyribonucleic acid)、ssDNA(1本鎖DNA、single stranded DNA)、dsDNA(2本鎖DNA、double-stranded DNA)、dNTP(デオキシリボヌクレオシド−3リン酸、deoxyribonucleotide triphosphate)、RNA(リボ核酸、ribonucleic acid)、PBS(リン酸緩衝生理食塩水、phosphate buffered saline)、NaCl(塩化ナトリウム、sodium chloride)、HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-エタンスルホン酸、N-2-hydroxyethylpiperazine-N-2-ethanesulfonic acid)、HBS(HEPES緩衝生理食塩水、HEPES buffered saline)、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム、sodium dodecyl sulfate)、Tris-HCl(トリスヒドロキシメチルアミノメタン-塩酸塩、tris-hydroxymethylaminomethane-hydrochloride)、ATCC(米国培養細胞系統保存機関、American Type Culture Collection、Rockville、MD)、hES(ヒト胚性幹細胞、human embryonic stem cells)、iPS(誘導多能性幹細胞、induced pluripotent stem cells)、及びSCR(体細胞再プログラム、somatic cell reprogramming)。
細胞培養及び形質移入
ヒト癌細胞株NTera-2、HepG2、MCF7、PC3及びColo829は米国培養細胞系統保存機関(ATCC、Rockville、MD)から入手し、ヒト毛嚢細胞(hHFCs)は少なくとも2つの毛嚢真皮乳頭(hair dermal papillae)を4 mg/mlコラゲナーゼで分解することによって得られ、そのうち、コラゲナーゼの消化は20%ウシ胎児血清(FBS)を補充した新鮮なRPMI 1640培養液中で45分間作用させた。メラニン細胞(melanocytes)は、37°C、5% CO2で、ヒトメラニン細胞成長補充剤-2(HMGS-2、Invitrogen、Carlsbad、CA)が添加されかつ抗生物質が含まれていない254培養液(Medium 254)において培養された。細胞が70%〜80%の密集度(confluency)までに成長した時に、細胞をtrypsin-EDTA溶液中で1分間暴露することで単離させ、フェノールレッドフリーのDMEM培養液(phenol red-free DMEM medium、Invitrogen)で1回すすいだ後、これらの単離された細胞を1:10に希釈した後、HMGS-2補充剤を含有する新鮮な254培養液中で継代培養を行った。電気穿孔法で遺伝子導入を行う工程については、pTet-On-tTS-miR302sベクター(10 μg)とpTet-On-Adv-Neo(-)ベクター(50 μg)との混合物を、低浸透圧緩衝液(200 μl、Eppendorf、Westbury、NY)における単離された細胞(20,000〜50,000個)に加え、また、電気穿孔は電気穿孔機を用いて300〜400Vで150μsec実施し、これらのベクターを対応したこれらの細胞内に送達した。電気穿孔後の細胞はまずフェノールレッドフリーで、20%血清代替物(Knockout serum)、1% MEM非必須アミノ酸、10ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、1mM GlutaMax、及び1mMピルビン酸ナトリウムを含有するDMEM培養液(Invitrogen)中で、37°C、5% CO2の条件下で24時間培養した。続いて、850 μg/mlのG418及び3.75 μg/mlより高い濃度のテトラサイクリン(Dox)を追加し、毎日入れ替えるように、細胞が強烈の赤色蛍光(RGFP)を発現するまで3から5日間継続した。次に、TE200倒立顕微鏡システム(Nikon、Melville、NY)で個々の赤色蛍光細胞(mirPS)を監視し、MO-188NE 3D顕微操作システム(Nikon)で96穴プレートに個別的に収集した。ドキシサイクリン(Dox)欠乏の条件下で、20%血清代替物(Knockout serum)、1% MEM非必須アミノ酸、100 μM β-メルカプトエタノール、1mM GlutaMax、1mM ピルビン酸ナトリウム、10ng/ml 塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、100 IU/ml ペニシリン/100 μg/ml ストレプトマイシン/250 μg/ml G418、0.1 μM A83-01、及び0.1 μM バルプロ酸(Stemgent、San Diego、CA)を含有するDMEM/F-12培地でmirPS細胞を、37°C、5% CO2の条件で培養した。一方、ドキシサイクリン(Dox、3.75〜5 μg/ml、Sigma-Aldrich、St. Louis、MO)の存在下で、mirPS細胞を同様なフィーダーフリー(feeder-free)の培養条件下で培養し、さらに0.05 μM GSK抑制剤SB216763(Stemgent)を添加した。GSK抑制剤の添加はmirPSの増殖を促進したが、神経分化を引き起こす傾向がわずかに見られた。神経細胞誘導の面では、mirPS細胞を0.05 μM SB216763を含有し、ドキシサイクリン(Dox)を含有しない上記フィーダーフリーの培養条件で培養した。
mir-302sを発現する組換えベクターの構築
Mir-302ファミリークラスター(mir-302s)の生成は前記報告の通りである(Lin氏ら,2008)。Mir-302sクラスターは、mir-302a、mir-302b、mir-302c、及びmir-302dのプレマイクロリボ核酸(pre-miRNAs)という4つの部分を含有する。mir-302sクラスターを構築するために使用される合成オリゴヌクレオチド(Sigma-Genosys、St. Louis、MO)は下記のように挙げられる。発現ベクターの構築において、我々は等量(1:1)のmir-302sと予め作られたSpRNAi-RGFP組換え遺伝子を混合させ(Lin氏ら,2006と2008)、そしてMluI/PvuI制限酵素によって37°Cでこの混合物を4時間消化させた。次に、ゲル抽出キット(Qiagen、CA)で該消化された混合物を精製して30 μlの再蒸留水(ddH2O)に収集し、T4 DNAリガーゼ(T4 ligase)を用いて8°Cで16時間作用し、該混合物をライゲーションさせた。該工程では、mir-302を発現する組換えSpRNAi-RGFP遺伝子が形成され、さらにXhoI/HindIII制限酵素によって切断された後、ドキシサイクリンにより誘導できるpSingle-tTS-shRNAベクター(Clontech、Palo Alto、CA)中に挿入されたことで、誘導性のpTet-On-tTS-miR302s発現ベクターが形成された。その後、我々は該pTet-On-tTS-miR302sベクターをさらに修飾し、即ち、pTRE-Tightプラスミド(Clontech)から単離されたTRE-CMVプロモーターを用いてpTet-On-tTS-miR302sベクター本来のU6プロモーターを置換した。非誘導性のpCMV-miR302sの持続的発現ベクターを生成するために、我々はEcoRI制限酵素で該修飾されたpTet-On-tTS-miR302sベクターを切断し、さらにゲル電気泳動によりtTS-TREの上流配列(1.5 kb)を除去するとともに、該ゲルから切断されたベクターを改めて得ることによって、DNAライゲーション(ligation)工程を行い、非誘導性のpCMV-miR302sベクターの構築を完成させた。
マイクロリボ核酸(miRNA)のマイクロアレイ分析
細胞密集度70%で、mirVanaTMマイクロリボ核酸単離キット(mirVanaTM miRNA isolation kit、Ambion)を用いて、各細胞培養物から小型RNAsを単離した。単離した小型RNAsの純度と含有量を1%ホルムアルデヒド-寒天ゲル電気泳動及びスペクトロメーターの測定(Bio-Rad)によって評価した後、直ちにドライアイスで凍結させ、マイクロリボ核酸のマイクロアレイ分析を行うためにLC Sciences社(San Diego、CA)に送付した。各マイクロアレイチップは、それぞれCy3もしくはCy5で標識した単一のサンプルとハイブリダイゼーションされ、又はCy3及びCy5で標識した1対のサンプルとハイブリダイゼーションされた。次に、背景差分(background subtraction)及び正規化(normalization)を行った。二重サンプル分析において、p値を算出し、3倍より大きな差で発現した転写物を一覧表に示した。その結果は図1Cに示す。
ノーザンブロット分析法
mirVanaTMマイクロリボ核酸単離キット(Ambion、Austin、TX)で全RNAs(10 μg)を単離した後、15% TBE-ウレアポリアクリルアミドゲル又は3.5% 低融点寒天ゲル電気泳動によって該全RNAsを分画し、該分画された全RNAsをナイロンメンブラン(nylon membrane)上に電気ブロットした。続いて、[LNA]-DNAプローブ(5'-[TCACTGAAAC] ATGGAAGCAC TTA-3') (SEQ.ID.NO.19)でmir-302を検出した。その他の遺伝子を検出するプローブはさらに合成され、その配列は表1に示す。全てのプローブは高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)によって精製し、且つ[32P]-dATP (> 3000 Ci/mM、Amersham International、Arlington Heights、IL)の存在下で、末端転移酵素(terminal transferase、20 units)で末端標識を行った。ハイブリダイゼーション反応は、50% の新鮮な脱イオンホルムアミド(freshly deionized formamide、pH 7.0)、5倍デンハート(Denhardt's)液、0.5% SDS、4倍SSPE及び250 mg/mLの変性サケ精子DNA断片の混合物中で実施した(18時間、42°C)。次に、メンブランを2倍SSC、0.1%のSDSで2回連続洗浄し(15分間、25°C)、0.2倍SSC、0.1%のSDSで1回洗浄し(45分間、37°C)、そして、オートラジオグラフィーを実施した。その結果を図1D、図4A及び8Bに示す。
ウェスタンブロット分析法
メーカーの提案に従い、プロテアーゼ抑制剤(protease inhibitor)、ロイペプチン(Leupeptin)、TLCK、TAME及びPMSFを補充したCelLytic-M溶解/抽出試薬(CelLytic-M lysis/extraction reagent、Sigma)で細胞(1,000,000個)を溶解した。次に該溶解液を12,000 rpm、4°Cで20分間遠心分離し、遠心分離後の上澄み液を得た。そして、改良されたSOFTmaxタンパク質測定パッケージソフトウェアにより、E-maxマイクロプレートリーダー(microplate reader、Molecular Devices、CA)でタンパク質濃度を測定した。還元(reducing、+50 mM DTT)及び非還元(non-reducing、DTT無し)の条件下で、それぞれ30 μgの細胞溶解生成物をSDS-PAGEサンプル緩衝液に添加し、さらに3分間沸騰してから、6%〜8%ポリアクリルアミドゲルにロードした。次に、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)でタンパク質を解析した後、タンパク質をニトロセルロースメンブラン(nitrocellulose membrane)に電気ブロットし、オデッセーブッロキング試薬(Odyssey blocking reagent、Li-Cor Biosciences、Lincoln、NB)でメンブランを室温で2時間培養した。その後、該試薬に一次抗体を加えて4°Cで該混合物を培養した。使用した一次抗体は、Oct3/4 (Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)、Sox2 (Santa Cruz)、Nanog (Santa Cruz)、Lin28 (Abcam Inc.、Cambridge、MA)、UTF1 (Abcam)、Klf4 (Santa Cruz)、TRP1 (Santa Cruz)、keratin 16 (Abcam)、CDK2 (Santa Cruz)、cyclin D1 (Santa Cruz)、cyclin D2 (Abcam)、BMI-1 (Santa Cruz)、AOF2 (Sigma)、HDAC2 (Abcam)、hTERT (Santa Cruz)、s-actin (Chemicon、Temecula、CA)、及びRGFP (Clontech)を含む。一晩経過後、TBS-Tで該メンブランを3回ためすすぎ、そして、ヤギ抗マウスIgG (goat anti-mouse IgG)中に室温で1時間暴露した。該ヤギ抗マウスIgGとAlexa Fluor 680反応性染料(1:2,000、Invitrogen-Molecular Probes)が結合して二次抗体を形成した。さらにTBS-Tで3回ためすすいだ後、Li-Corオデッセー赤外線画像装置(Li-Cor Odyssey Infrared Imager)及びオデッセーソフトウェアV.10(Li-Cor)を用いて免疫ブロットの蛍光スキャニング及び画像解析を行った。その結果を図1D、図4B、図7C〜7D、図8B及び9Bに示す。
アポトーシスした細胞のDNAラダー試験
メーカーの提案に従い、アポトーシス細胞のDNAラダーキット(Apoptotic DNA Ladder Kit、Roche Biochemicals、Indianapolis、IA)を用いて、約2,000,000個の細胞からゲノムDNAを単離し、そして単離されたDNAを2 μg取り、2%の寒天ゲル電気泳動法によって評価した。その結果を図1Fに示す。
DNA含有量のフローサイトメトリー分析
必要な実験を完成した後、細胞をトリプシンで加水分解させ、粒状に遠心分離し、さらに予め冷却した1 ml 70%メタノールを含有するPBS中に浮遊させ、これらの細胞を-20°Cで1時間固定した。そして、これらの細胞を粒状に遠心分離し、1 mlのPBSで1回洗浄した。再びこれらの細胞を粒状に遠心分離し、37°Cで1 mg/mlのヨウ化プロピジウム(propidium iodide、PI)、0.5 μg/mlのリボヌクレアーゼ(RNase)を含有する1 mlのPBS溶液において30分間再浮遊させた。その後、BD FACSCaliburフローサイトメトリー(San Jose、CA)で約15,000個の細胞を分析した。パルス幅対パルス面積図を描き、単一細胞をゲーティングすることにより細胞ダブレットを除外した。収集したデータをパッケージソフトウェアFlowjoを使用して「Watson Pragmatic」アルゴリズムで解析した。その結果を図3A〜3B、図6A〜6Cに示す。
ゲノム全体のマイクロアレイ分析
ヒトゲノムGeneChip U133 plus 2.0アレイ(Affymetrix、Santa Clara、CA)を用いて、被検細胞において47,000個を超えたヒト遺伝子の発現パターンの変化を検出した。メーカーの提案に従い、mirVanaTMマイクロリボ核酸単離キット(mirVanaTM miRNA Isolation Kit、Ambion)を用いて、各被検サンプルから全RNAを単離した。単離されたRNAの純度と含有量を1%ホルムアルデヒド-寒天ゲル電気泳動及びスペクトロメーターの測定(Bio-Rad)によって評価した。パーフェクトマッチプローブとミスマッチプローブとの間の全体的平均差によりこれらのサンプルシグナルを正規化した。そして、Affymetrix Microarray Suite 5.0版、Expression ConsoleTM 1.1.1版(Affymetrix)及びGenesprings (Silicon Genetics)ソフトウェアを用いて、ゲノム全体の遺伝子発現パターンの変化を分析した。遺伝子発現の変化が1倍より大きい場合は、陽性差異遺伝子と見なされた。遺伝子クラスター試験(gene clustering)において、プラグインプログラムGenetrix (Epicenter Software)とAffymetrixソフトウェアを組み合わせて使用した。各マイクロアレイ中のコントロール群ハウスキーピング遺伝子の平均で、該サンプルのシグナルを正規化した。その結果を図5Aに示す。
DNAの脱メチル化試験
DNA単離キット(DNA isolation kit、Roche)によって約2,000,000個の細胞中のゲノムDNAを単離した。1 μgの単離されたDNAを取り、メーカーの提案に従い、重亜硫酸塩処理(CpGenome DNA modification kit、Chemicon、Temecula、CA)を行った。一方、2 μgの単離されたDNAsを取り、CCGG切断制限酵素HpaIIで消化した後、1%寒天ゲル電気泳動法により全ゲノムの脱メチル化を判別した(図5B)。重亜硫酸塩でDNAを処理することによって、全ての非メチル化シトシンをウラシルに変換させる一方、メチル化シトシンをシトシンのままに維持させた。重亜硫酸塩DNA配列決定分析においては、我々はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてOct3/4及びNanogのプロモーター領域を増幅した。Oct3/4プロモーター領域の増幅に使用されるプライマーは、5'-GAGGCTGGAG CAGAAGGATT GCTTTGG-3' (SEQ.ID.NO.20)及び5'-CCCTCCTGAC CCATCACCTC CACCACC-3' (SEQ.ID.NO.21)を含む。また、Nanogプロモーター領域の増幅に使用されるプライマーは、5'-TGGTTAGGTT GGTTTTAAAT TTTTG-3' (SEQ.ID.NO.22)及び5'-AACCCACCCT TATAAATTCT CAATTA-3' (SEQ.ID.NO.23)を含む。まず、重亜硫酸塩修飾後のDNAs(50 ng)とこれらのプライマー(合計100 pmole)を1倍PCR緩衝液中にて混合し、94°Cに加熱した後2分間保ち、そして直ちに氷で冷却した。その後、高感度PCRキット(Expand High Fidelity PCR kit、Roche)を用いて94°Cで1分間、70°Cで3分間のようなPCRを25サイクル行った。増幅反応終了後、3%寒天ゲル電気泳動法により正確な長さを有するDNA生成物をさらに分画し、続いて該DNA生成物をゲル抽出キット(Qiagen)で精製し、DNA配列決定を行った。DNAメチル化部位の詳細なパターンは、重亜硫酸塩で修飾されたDNA配列における変わっていないシトシンと、重亜硫酸塩で修飾されていないDNA配列における変わっていないシトシンとを比較することによって得られた。その結果を図5Cに示す。
移植及び奇形腫の形成
約5〜10個のmirPS細胞由来の胚様体(4〜8細胞段階)を50 μlのDMEM培養液とマトリゲルMatrigelの2:1混合液中に浮遊させ、次にこれらのmirPS細胞由来の胚様体を6週齢の雌性偽妊娠の免疫不全SCID-beigeマウスの子宮に移植した。偽妊娠マウスを作る方法は、腹膜内に1 IUのヒト閉経期性腺刺激ホルモン(human menopausal gonadotrophin、HMG)を2日間注射し、そしてヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotrophin、hCG)をもう1日間注射した。該細胞及び該マウスは、移植前または移植後にドキシサイクリン(Dox)処理を行わない。移植期間では、2.5%のトリブロモエタノール(Avertin)溶液で、1匹のマウスに0.4 mlの量でマウスを麻酔した。移植後又は該移植細胞集団が100 mm3より大きいサイズに成長した後、該異種移植集団(Xenografted masses)を3から4週間監視した。該嚢腫/奇形腫を切り離した後、数式(長さ×幅2)/2を用いてその体積を算出し、さらにカウント、秤量及び更なる組織学的解析を行った。奇形腫様組織嚢腫の形成(teratoma-like tissue cysts)は、通常移植してから約2.5週間後に観察できる。その結果を図5Dに示す。
細胞侵入試験
まず、200 μg/mlのMatrigelを単独使用し、又は20% FBS及び1% L-グルタミン(L-Glutamine)を含むフェノールレッドフリーのDMEM培養液を補充したMatrigelを用いて、チャンバーインサート(chamber inserts、穴径12μm、Chemicon)を塗布し、無菌環境下において翌日まで乾燥させた。フェノールレッドフリーのDMEM培養液を使用して、最終的に100,000個細胞/mlの細胞密度になるように細胞を収集、すすぎ、及び再浮遊させた。該細胞懸濁液を500 μl取ってトップチャンバー(top chamber)内に分配させ、1.5mlのDMEMならし培養液をボトムチャンバーに添加することで、走化性勾配(chemotactic gradient)を作り出した。37°Cで一晩置きに16時間培養した後、侵入状況について測定を行った。まず、脱脂綿でトップチャンバーを拭き、そして100%メタノールを用いてメンブランの下側に位置する侵入細胞を10分間固定し、風乾させ、クレシルバイオレット(cresyl violet)で20分間染色した後、水で緩やかに洗浄した。乾燥後、1:1の100%エタノールと0.2 Mクエン酸ナトリウム(NaCitrate)を含む洗浄液でメンブラン上のクレシルバイオレット染色を20分間洗い出し、Precisionマイクロプレートリーダー(Precision Microplate Reader、Molecular Dynamics)で波長570 nmの吸光度を読み取った。細胞の侵入率の表示方式は、チャンバーインサートの膜層が未乾燥の場合(総細胞数)に得られた吸光度に対する被検サンプルの吸光度の百分比とした。その結果を図6Dに示す。
細胞接着試験
細胞接着試験は過去の報告に述べられた通りに行われた(Lin氏ら,2007)。ヒト骨髄内皮細胞(hBMECs)を100,000個細胞/mlの密度で96穴プレート中に植え、試験前に接着培養液(adhesion medium)[RPMI 1640/0.1% BSA/20 mM HEPES (pH7.4)]ですすいだ。トリプシン(腫瘍/癌細胞に使用する)又はコラゲナーゼ(mirPS細胞に使用する)を用いて被検細胞を単離させ、無菌生理食塩水で細胞をすすいだ後、10 μM fura-4アセトキシメチルエステルの蛍光プローブ(acetoxymethyl ester、fluorescent probe、Sigma)を含有するPBS中で、細胞を1,000,000個細胞/mlの密度で再浮遊させたまま、37°Cの暗黒環境下で1時間経過した。続いて該細胞を遠心分離し、1%(v/v)プロベネシド(probenecid、100 mM)を含む無血清の培養液で細胞をすすいだ後、該細胞を接着培養液に37°Cの暗黒環境で20分間培養することで、細胞内の蛍光プローブを活性化させた。その後、該100,000個細胞(300 μlの細胞懸濁液/well)をコンフルエント(confluent)なhBMEC内皮細胞単層に投入し、37°Cで50分間培養した。250 μlの接着培地を用いて2回すすいで、未接着の細胞を洗い流した。蛍光プレートリーダー(fluorescent plate reader、Molecular Dynamics)を用いて、37°Cで励起波長485 nm及び発光波長530 nmで蛍光を読み取った。その結果を図6Eに示す。
インビボでの腫瘍成長試験
我々はNTera-2細胞(総体積が100 μlであるMatrigel-PBS中の2,000,000個細胞)を8週齢の雄性マウス(BALB/c-nu/nu種)の脇腹部(即ち、後右肢)に異種移植した。該腫瘍に対して毎週監視し、NTera-2異種移植してから1週間後、pCMV-miR302sベクター又はpCMV-miR302d*ベクターをインサイチュー注射で導入した。2 μg(マウス体重の1gあたり)のポリエチレンイミン(PEI)により調製されたpCMV-miR302s又はpCMV-miR302d*ベクター(合計10 μg)で、5回の処理(3日置きに)を行った。メーカーの使用提案に従い、インビボ-jetPEI送達試薬(Polyplus-transfection Inc.、New York、NY)を使用した。注射してから3週間後又は非ベクター処理の腫瘍が平均サイズで約100 mm3に成長した後、サンプリングし始めた。腫瘍の組織学的評価及び免疫反応細胞毒性試験を行うために、血液、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓及び脾臓のような主要な器官、及び異種移植腫瘍は全て摘出された。そのうち、触診で腫瘍の形成を監視し、数式(長さ×幅2)/2で腫瘍体積を算出した。また、腫瘍に対してもカウント、解剖、及び秤量を行い、ヘマトキシリン-エオシン染色(H&E)及び免疫染色試験で組織学的な検査を行った。組織学的な検査では、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓及び脾臓における検査可能な組織的病変が検出されなかった。その結果を図8A〜8Bに示す。
免疫染色試験
組織サンプルを4°Cで4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)で一晩固定させた。該サンプルをパラフィンワックスに包埋する前に、1倍PBS、メタノール、イソプロパノール及びテトラヒドロナフタレン(tetrahydronaphthalene)の順で洗浄した。次に包埋されたサンプルをミクロトーム(microtome)で7〜10 μmの厚さに切断し、TESPAでコートした清潔なスライドガラス上に固定した。そして、キシレン(xylene)を用いて該スライドガラスを脱ろうし、封入剤(mounting media;Richard Allan Scientific、Kalamazoo、MI)を用いてカバーガラスの下に固定し、そしてヘマトキシリン(hematoxylin)及びエオシン(eosin)(H&E、Sigma)で染色して形態を観察した。免疫組織化学(IHC)染色キットはImgenex(San Diego、CA)から購入した。メーカーの提案に従い、抗体の希釈及び免疫染色法の工程を行った。用いられた一次抗体は、Oct3/4 (Santa Cruz)、Sox2 (Santa Cruz)、Nanog (Santa Cruz)、CDK2 (Santa Cruz)、cyclin D1 (Santa Cruz)、cyclin D2 (Abcam)、BMI-1 (Santa Cruz)、及びRGFP (Clontech)を含む。二次抗体として、ビオチン結合のヤギ抗ウサギ(goat anti-rabbit)又はビオチン結合のウマ抗マウス(horse anti-mouse)抗体(Chemicon、Temecula、CA)を用いた。三次抗体としてのストレプトアビジンが付いたホースラディッシュペルオキシダーゼ(Streptavidin-HRP)を加えた。スライドガラスをPBTにて3回洗浄した後、DAB基質(DAB substrate)で、結合された抗体の検出を行った。全視野スキャニングを備える100倍の顕微鏡で陽性結果が観察され、Metamorph画像処理プログラム(Nikon 80i顕微鏡定量分析システム)によって200倍の拡大倍率で計測して定量分析を行った。その結果を図8Cに示す。
ルシフェラーゼの3'末端非翻訳領域レポーター遺伝子試験
ルシフェラーゼ試験は、修飾されたpMir-Report miRNA発現レポーターベクターシステム(pMir-Report miRNA Expression Reporter Vector System、Ambion)を用いて行った。Mir-302の標的部位(正常及び/又は突然変異)がpMir-Report Luciferase Reporterレポーターベクターの3'末端非翻訳領域(3'-UTR)のクローニング部位に挿入された。合成された2つの標的部位を12個の-CAGT-重複配列で区切った。もう1つのpMir-Reportβ-gal Controlベクターはレポーターなし(no reporter)の制御ベクターとして使用された。ドキシサイクリン(Dox)によって処理し、又は処理せずに、FuGene HD試薬(Roche)を使用し、メーカーの提案に従い、200 ngのレポーターベクターで50,000個のmirPS細胞を形質移入した。形質移入してから48時間経過後に細胞溶解液を収集した。ルシフェラーゼの分解レベルは正規化(normalize)され、相対的なルシフェラーゼ活性(relative luciferase activity、RLA)で表され、その計算方法は、ドキシサイクリンにより処理された(Dox-on)mirPS細胞のルシフェラーゼ活性レベルをドキシサイクリンにより処理されなかった(Dox-off)mirPS細胞のルシフェラーゼ活性レベルで割ることである。また、mir-434を発現する細胞は電気穿孔法によってpTet-On-tTS-miR434-5pをhHFCsに導入することで生成され、ネガティブコントロール群とした。その結果を図7B及び図10Bに示す。
テロメアリピート増幅プロトコル試験
メーカーの提案に従い、プロテアーゼ抑制剤、ロイペプチン(Leupeptin)、TLCK、TAME及びPMSFを補充した細胞溶解/抽出試薬(CelLytic-M lysis/extraction reagent、Sigma)で約1,000,000個の細胞を溶解した。12,000 rpmの回転速度で、4°Cで該溶解液を20分間遠心分離し、遠心分離後の溶解液(上澄み液)を収集した。続いて、改良されたSOFTmaxタンパク質測定パッケージソフトウェアにより、E-maxマイクロプレートリーダー(microplate reader、Molecular Devices、CA)でタンパク質の濃度を測定した。赤外蛍光染剤(infrared Alexa Fluor 680 dye、TS Primer、Sigma-Genosys)標識のオリゴヌクレオチド5'-AATCCGTCGAGCAGAGTT-3' (SEQ.ID.NO.24)及び5'-GTGTAACCCTAACCCTAACCC-3' (CX primer、30 μM) (SEQ.ID.NO.25)を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物を検出した。テロメラーゼ抑制剤は主要な混合液に直接添加された。全ての被検細胞株に対して、反応ごとに50 ngのタンパク質を使用することで最適な結果に達した。30°Cで30分間培養した後、サンプルをポリメラーゼ連鎖反応器に入れ、94°Cまで加熱し、2分間保持した後、94°Cで変性反応(denaturation)を30秒間、57°Cで合成反応(synthesis)を30秒間のPCRを35サイクル行った。最後に57°Cで単一合成後工程を30秒間行った。次に、6%の非変性ポリアクリルアミドゲル(Nondenaturing polyacrylamide gel)電気泳動法でPCR生成物を分画させ、Li-Corオデッセー赤外線画像装置(Li-Cor Odyssey Infrared Imager)及びオデッセーソフトウェアV.10(Li-Cor)を用いて画像の検出及び分析を行った。その結果を図9Aに示す。
統計解析
免疫染色、ウェスタンブロット及びノーザンブロットによる分析において、75%より大きいシグナル強度の変化はいずれも陽性結果とみなされ、これらの結果が解析された後、平均値±標準偏差(mean ± SE)で表された。データの統計解析は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)によって計算された。主効果が有意な場合、ダネットのポストホックテスト(Dunnett's post-hoc test)でコントロール群と有意に異なる群を判定した。2処理群間でマッチして比較する時に、両側スチューデントt検定(two-tailed student ttest)を用いた。2群より多い処理群を含む実験では、ANOVAを行った後にポストホック多重範囲検定(post-hoc multiple range test)を行った。確率p<0.05を統計上において有意とみなした。両側検定から全てのpを決定した。
細胞形質転換及びpre-miRNA発現の誘発
z-コンピテント大腸菌形質転換キット(z-competent E. coli transformation kit、Zymo Research、Irvine、CA)から得られたコンピテント大腸菌DH5α細胞株(competent E. coli DH5α)とpLVX-Grn-miR302+367又はpLenti-EF1α-RGFP-miR302のような選ばれたプラスミドベクターとを混合して形質転換作用を行った。非形質転換の細菌細胞を、10 mM硫酸マグネシウム(MgSO4)と0.2 mMグルコースを補充した37℃のLB(Luria-Bertani)培地で正常に成長させながら、170 rpmで頻繁に振盪した。形質転換された細菌細胞をさらに100 μg/mlアンピシリンを添加したLB培地で培養した。一方、10 mM硫酸マグネシウムと0.2 mMグルコースを補充し、且つ100 μg/mlアンピシリンを添加したLB培地中において、1リットルごとに0.5〜2 mlのMOPSを化学的誘導用として添加した。また、形質転換された細菌細胞をネガティブコントロール群として、前記アンピシリンが添加されたが、いかなる化学的誘導物が添加されていないLB培地で培養した。
ヒト細胞培養及び細胞内のMir-302の伝達
ヒト上皮初代培養細胞(human primary epidermal skin cells、hpESCs)は、20% ウシ胎児血清(FBS)を補充した新鮮なRPMI 1640培養液で調製された4 mg/mlコラゲナーゼIで、37℃で少なくとも2 mm3体積から35分間処理して単離させて得られたものである。単離された角化細胞(keratinocytes)は、37℃及び5%二酸化炭素の条件下で、ヒト角化細胞成長補充剤(HKGS、Invitrogen、Carlsbad、CA)が添加されかつ抗生物質が含まれていないEpiLife無血清(serum-free)細胞培養液において培養された。細胞が50%〜60%の密集度(confluency)までに成長した時、細胞をtrypsin/EDTA溶液中で1分間暴露し、フェノールレッドフリーのDMEM培養液(phenol red-free DMEM medium、Invitrogen)で1回すすぎ、さらにこれらの単離された細胞を1:10で希釈し、HKGS補充剤を含有する新鮮なEpiLife培養液中で継代培養を行った。ヒト癌/腫瘍細胞株Colo-829、PC3、MCF7、HepG2及びTera-2は米国培養細胞系統保存機関(ATCC、Rockville、MD)から入手し、メーカーが提案した条件で培養した。microRNAの形質移入では、15 μgの単離miR-302及び/又はその前駆体を50 μlリポソーム/ポリソームDNA形質移入剤(X-tremeGENE HP DNA transfection reagent)を混入したEpiLife培養液に溶解させた。10分間培養した後、この混合液を100 mm細胞培養皿で50%〜60%の密集度(confluency)に達したhpESCs又は癌/腫瘍細胞にそれぞれ加えた。12〜18時間の後、HKGS補充剤を含有する新鮮なEpiLife培養液又はATCCが提案した培養液で元の培養液を交換した。3〜4日ごとに、形質移入工程を3〜4回繰り返すことにより形質移入の効率を向上させてもよい。細胞形態がボール状に変化した後、20%血清代替物(Knockout serum)、1% MEM非必須アミノ酸、100 μM β-メルカプトエタノール、1 mM GlutaMax、1 mMピルビン酸ナトリウム、10 ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、10 ng/ml FGF-4、5 ng/ml LIF、100 IU/mlペニシリン/100 μg/mlストレプトマイシン、0.1 μM A83-01、及び0.1 μM バルプロ酸(Stemgent、San Diego、CA)を補充したknockout DMEM/F-12培養液で、37°C、5% CO2の条件でこれらの細胞(mirPSCs)を培養及び継代した。
プラスミドDNA/全RNA/microRNA抽出
プラスミドで形質転換(実施例18)されたコンピテント大腸菌DH5α細胞を37℃で10 mM硫酸マグネシウム及び0.2 mMグルコースを補充したLB培地で一晩置きに培養し、170 rpmで頻繁に振盪した。細菌培養及び増幅の以外、前記培地1リットルごとにさらに0.5〜2 ml MOPSを添加することで真核プロモーターにより駆動されるリボ核酸及び/又はタンパク質の生産を誘発した。プラスミド精製キット(HiSpeed plasmid purification kit、Qiagen、Valencia、CA)を用いて、全ての増幅されたプラスミドDNAと発現されたmRNA/microRNAs前駆体(pre-miRNAs)とを共に単離した。そのうち、単離工程はメーカーが提案した工程に従うが若干調整したものであり、即ちリボヌクレアーゼRNase AをP1緩衝液に添加しなかった。プラスミド及びmRNAs/pre-miRNAsの両者を含む最終抽出生成物は、DEPCで処理された再蒸留水(ddH2O)中に溶解され、使用されるまで-80℃で保存した。増幅されたプラスミドベクターのみを精製したい場合、メーカーが提案した工程に従ってリボヌクレアーゼRNase AをP1緩衝液に添加するようにする。
Mir-302及びその前駆体の精製
さらに、メーカーの提案に従い、mirVanaTM miRNA単離キット(Ambion、Austin、TX)を用いて実施例20における方法で単離されたRNA全体を精製した。最終生成物はDEPCで処理された再蒸留水(ddH2O)中に溶解され、使用されるまで-80℃で保存した。細菌RNAsは自然状況で分解が非常に速い(数時間)が、真核poly-A RNAs (mRNAs)及びヘアピン様のmicroRNA前駆体(pre-miRNA/pro-miRNA)は4℃で比較的安定である(半減期が3〜4日に達することが可能)ため、我々はこの差異性を利用して純粋なmRNAs及び/又はpre-miRNAs/pro-miRNAsを得て後の応用に供することができた。例として、RGFPのmRNAは細胞の形質移入の判明に用いられ、pre-miR-302s/pro-miRNAsは体細胞を胚性幹細胞様(hES-like)のiPS細胞に再プログラムすること、又はヒト腫瘍/癌細胞を処理することに用いられる。精製されたpre-miR-302s/pro-mir-302sは高度悪性癌細胞を比較的良性の低段階状態に再プログラムすることにも用いられる。これは癌症治療に有益な結果である。
インビボでの傷口治癒及び組織回復/再生試験
Pro-miR-302s及び関連プラスミドベクターは、実施例18及び20に記載の方法により増幅及び抽出が行われ、実施例20及び21に記載の方法によりさらに精製された。次に、単離されたpro-miR-302sは予め用意したカカオバター、綿実油、オリーブオイル、ピルビン酸ナトリウム、及び白色ワセリンを含む軟膏基剤によって調製された。用意された軟膏基剤におけるこのpro-mir-302の濃度は約10 μg/mLであった。解剖用メスで皮膚を切り開いて、皮膚の開放創である約0.5×0.5平方センチメートルの傷口を形成した。軟膏(約0.3 mL)を傷口に直接塗布し、創部全体を覆った。続いて、さらに液状包帯(liquid bandage)で処理された領域をシールした。
インビボでの肝臓癌の治療試験
我々は悪性のヒト肝腫瘍を免疫不全のSCID-beigeマウス体内に異種移植し、肝臓癌転移及び治療を研究するための有効な動物モデルを構築した。このモデルを構築するため、我々は五百万個のヒト肝臓癌細胞(HepG2)と100 μLマトリックスゲル(matrix gel)とを混合し、この混合物をマウス後肢の脇腹に皮下移植した。そのため、マウスの両側の後肢に約等量の癌細胞移植体がある。移植後の約2週間に該悪性腫瘍を観察した。そのうち、該腫瘍の平均サイズが約15.6±8 mm3(即ち治療前の腫瘍の初期サイズ)であった。各マウスで、我々は比較的大きい腫瘍を有する側を実験群とし、腫瘍が比較的小さい他側をコントロール群として選択した。同じマウスの一側がブランク処方剤で処理され(ネガティブコントロール群)、他側がpro-mir-302を含む調製薬で処理されたため、個体間差異が最小化の結果が得られた。
以下の参考文献は、その全文が参照として本明細書に組み込まれている。
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34. EU Pat. No. EP2198025 to Lin.
35. U.S. Pat. No. 5,843,780, 6,200,806, 7,029,913, and 7,220,584 to Thomson.
36. U.S. Pat. No. 6,090,622, 6,245,566, and 6,331,406 to Gearhart.
37. U.S. Pat. No. 6,875,607 to Reubinoff.
38. U.S. Pat. No. 7,250,255 to Shinya Yamanaka.
本明細書に記載されている実施例及び実施形態はただ説明のために用いられるものであり、それらに基づく様々な修正や変更が当業者にとって想到できるものであり、そして添付された特許請求の範囲に記載された本発明の精神と範囲内に含まれるべきであることは理解される。本明細書に引用された全ての刊行物及び特許文献は、その内容の全てを各種の目的の参照として本明細書に援用される。
悪性ヒト癌を比較的低段階で良性、又は正常の状態に再プログラムすることで、治療用抗癌薬の開発に用いられる組成物であって、
(a)3-モルホリノプロパン-1-スルホン酸(3-morpholinopropane-1-sulfonic acid、MOPS)、エタノール、グリセリン、又はそれらの混合物の分子構造を有する少なくとも1つの化学的誘導物剤と、
(b)真核プロモーターにより該マイクロリボ核酸前駆体を発現する少なくとも1つの発現ベクターを有する少なくとも1つの形質転換された原核細胞株と、
を含み、ある条件で(a)と(b)とを混合し、該真核プロモーターにより駆動される該マイクロリボ核酸前駆体の転写を誘発する、マイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNA)を生産する組
成物。
[付記2]
該化学的誘導物剤は、原核細胞内で該真核プロモーターにより駆動されるリボ核酸の転写を刺激する転写誘導物である、付記1に記載の組成物。
[付記3]
該原核細胞が細菌培地に存在し、該化学的誘導物剤が該細菌培地に添加され、且つ該細菌培地で0.05% (v/v)〜0.2% (v/v)の最終濃度を有する、付記1に記載の組成物。
[付記4]
該細菌培地がLB培地である、付記3に記載の組成物。
[付記5]
該原核細胞が大腸菌(E. coli)DH5αのコンピテント細胞である、付記1に記載の組成物。
[付記6]
該発現ベクターがSEQ.ID.NO.3に示す配列をコードする組換えプラスミドである、請求項1に記載の組成物。
[付記7]
該発現ベクターがpLenti-EF1α-RGFP-miR302である、付記1に記載の組成物。
[付記8]
該マイクロリボ核酸前駆体が少なくともSEQ.ID.NO.3に示す配列を含有する、付記1に記載の組成物。
[付記9]
該マイクロリボ核酸が原核細胞により生産されるマイクロリボ核酸(pro-miRNA)である、付記1に記載の組成物。
[付記10]
該原核細胞により生産されるマイクロリボ核酸が少なくともSEQ.ID.NO.9、SEQ.ID.NO.11、SEQ.ID.NO.13、SEQ.ID.NO.15又はSEQ.ID.NO.17に示す配列を含有する、付記9に記載の組成物。
[付記11]
該マイクロリボ核酸が薬学又は治療応用に用いられる、付記1に記載の組成物。
[付記12]
該真核プロモーターがII型リボ核酸ポリメラーゼ(pol-2)プロモーター又はpol-2様プロモーターである、付記1に記載の組成物。
[付記13]
該pol-2プロモーターがEF1αのプロモーターである、付記12に記載の組成物。
[付記14]
該pol-2様プロモーターがCMVプロモーターである、付記12に記載の組成物。
[付記15]
該条件が37℃で頻繁に振盪しているLB培地である、付記1に記載の組成物。
[付記16]
該抗癌薬の抗癌機構は、インビトロ、エクスビボ又はインビボで悪性且つ高度のヒト癌を低段階又は正常の状態に再プログラムする癌の逆転を含む、付記1に記載の組成物。
[付記17]
該ヒト癌が腫瘍又は癌細胞を含む、付記1に記載の組成物。
[付記18]
悪性ヒト癌を低段階で良性、又は正常の状態に再プログラムすることで、治療用抗癌薬の開発に用いられるマイクロリボ核酸前駆体を生産する方法であって、
(a)3-モルホリノプロパン-1-スルホン酸(3-morpholinopropane-1-sulfonic acid、MOPS)、エタノール、グリセリン、又はそれらの混合物の分子構造を有する少なくとも1つの化学的誘導物剤を提供する工程と、
(b)真核プロモーターにより該マイクロリボ核酸前駆体を発現する少なくとも1つの発現ベクターを有する少なくとも1つの形質転換された原核細胞株を提供する工程と、
(c)ある条件で(a)と(b)を混合し、該真核プロモーターにより駆動される該マイクロリボ核酸前駆体の転写を誘発する工程と、
を含む、マイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNA)を生産する方法。
[付記19]
該化学的誘導物剤は、原核細胞内で該真核プロモーターにより駆動されるリボ核酸の転写を刺激する転写誘導物である、付記18に記載の方法。
[付記20]
該原核細胞を提供する該工程は細菌培地に該原核細胞を提供する工程をさらに含み、(a)と(b)を混合する該工程は該化学的誘導物を該細菌培地に0.05% (v/v)〜0.2% (v/v)の最終濃度まで添加する工程をさらに含む、付記18に記載の方法。
[付記21]
該細菌培地がLB培地である、付記20に記載の方法。
[付記22]
該原核細胞が大腸菌(E. coli)DH5αのコンピテント細胞である、付記18に記載の方法。
[付記23]
該発現ベクターがSEQ.ID.NO.3に示す配列をコードする組換えプラスミドである、請求項18に記載の方法。
[付記24]
該発現ベクターがpLenti-EF1α-RGFP-miR302である、付記18に記載の方法。
[付記25]
該マイクロリボ核酸前駆体が少なくともSEQ.ID.NO.3に示す配列を含有する、付記18に記載の方法。
[付記26]
該マイクロリボ核酸が原核細胞により生産されるマイクロリボ核酸(pro-miRNA)である、付記18に記載の方法。
[付記27]
該原核細胞により生産されるマイクロリボ核酸が少なくともSEQ.ID.NO.9、SEQ.ID.NO.11、SEQ.ID.NO.13、SEQ.ID.NO.15又はSEQ.ID.NO.17に示す配列を含有する、付記26に記載の方法。
[付記28]
該マイクロリボ核酸が薬学又は治療応用に用いられる、付記18に記載の方法。
[付記29]
該真核プロモーターがII型リボ核酸ポリメラーゼ(pol-2)プロモーター又はpol-2様プロモーターである、付記18に記載の方法。
[付記30]
該pol-2プロモーターがEF1αのプロモーターである、付記27に記載の方法。
[付記31]
該pol-2様プロモーターがCMVプロモーターである、付記27に記載の方法。
[付記32]
該条件が37℃で頻繁に振盪しているLB培地である、付記18に記載の方法。
[付記33]
該抗癌薬の抗癌機構は、インビトロ、エクスビボ又はインビボで悪性且つ高度のヒト癌を低段階又は正常の状態に再プログラムする癌の逆転を含む、付記18に記載の方法。
[付記34]
該ヒト癌が腫瘍又は癌細胞を含む、付記18に記載の方法。
Claims (11)
- 共通のSEQ.ID.NO.3の配列を含んだマイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNA)を用いて、悪性のヒト癌細胞の性質を低段階の良性又は正常の状態に再プログラムする方法であって、
(a) 少なくとも1つのヒト癌細胞を含んだ細胞被検体を提供する工程と、
(b) SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ少なくとも1つのpre-miRNAを提供する工程と、
(c) ある条件で(a)の細胞被検体と(b)のSEQ.ID.NO.3の配列を含んだ少なくとも1つのpre-miRNAとを接触させて、低段階の良性又は正常の状態へのヒト癌細胞の再プログラミングを誘導する工程と
を含む方法。 - SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ前記pre-miRNAは、原核細胞内で真核プロモーターにより駆動されるRNAの転写によって生産される、請求項1に記載の方法。
- 前記原核細胞がルリア−ベルターニ(LB)培地で培養される、請求項2に記載の方法。
- 前記原核細胞がE. coli DH5αのコンピテント細胞である、請求項2に記載の方法。
- SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ前記pre-miRNAは、mir-302ファミリークラスターをコードする組換えプラスミドから転写される、請求項1に記載の方法。
- SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ前記pre-miRNAが少なくともmir-302a、mir-302b、mir-302c又はmir-302dの配列を含有する、請求項1に記載の方法。
- 前記条件がインビボである、請求項1に記載の方法。
- 前記悪性のヒト癌細胞の性質を低段階の良性又は正常の状態に再プログラムすることは癌の逆転と呼ばれる抗癌機構である、請求項1に記載の方法。
- 前記ヒト癌細胞が肝臓癌細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記pre-miRNAが薬学用途又は治療用途で用いられる、請求項1に記載の方法。
- 前記薬学用途又は治療用途が抗癌薬の開発を含む、請求項10に記載の方法。
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