JP2017507202A - フェノール含有水素化ニトリルゴム - Google Patents

フェノール含有水素化ニトリルゴム Download PDF

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Abstract

特定のフェノール含量を有する新規な水素化ニトリルゴム、それらを製造するためのプロセス、それらをベースとする加硫可能な混合物、およびそのようにして得られる加硫物が提供される。それらの加硫物は、特に良好な弾性率および圧縮永久歪み値を特徴としている。

Description

本発明は、特定のフェノール含有水素化ニトリルゴム、それらを製造するためのプロセス、それらをベースとする加硫可能な混合物、およびこの方法で得られる加硫物に関する。
ニトリルゴムは、少なくとも1種の不飽和ニトリルモノマー、少なくとも1種の共役ジエン、および任意選択的に1種または複数のさらなる共重合性モノマーのコポリマーおよびターポリマーである。ニトリルゴムを製造するためのプロセス(非特許文献1)、および適切な有機溶媒中でニトリルゴムを水素化するためのプロセス(非特許文献2)は公知である。
水素化ニトリルゴムは、略して「HNBR」とも呼ばれ、ニトリルゴム(これも略して「NBR」と呼ばれる)を使用し、水素化によって得られるゴムを意味していると理解されたい。したがって、HNBRにおいては、共重合されたジエン単位のC=C二重結合は、完全にもしくは部分的に水素化されている。共重合されたジエン単位の水素化のレベルは、典型的には、50〜100%の範囲内である。しかしながら、当業者は、残存二重結合含量が約0.9%以下であれば「完全水素化タイプ」と呼んでいる。市場において商業的に入手可能なHNBRは、典型的には、10〜120ムーニー単位の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有している。
HNBRは、極めて良好な耐熱性、優れた耐オゾン性および耐薬品性、ならびに優れた耐油性を有する特殊ゴムである。上述のHNBRの物理的および化学的性質が、極めて良好な機械的性質、特に高い耐摩耗性と組み合わさっている。
この性能プロファイルが理由で、HNBRは、広く各種の用途分野において各種の使用法が見出されてきた。HNBRは、たとえば以下の分野において使用されている:自動車分野におけるシール、ホース、伝動ベルト、ケーブルシース、ローラーカバーおよび制震要素、さらには採油分野におけるステーター、ウェルシールおよびバルブシール、さらには航空産業、電気産業、機械工学および造船における各種の部品。
重要度が高いのは、水素化ニトリルゴムおよびそれをベースとする加硫物の物性を最適化することだけではない。最適化されたプロセス条件を用いて水素化ニトリルゴムを製造するためのプロセスもまた、長年の研究開発活動の課題である。
(特許文献1)には、(H)Rh(L)または(H)Rh(L)タイプのロジウム触媒を使用した、ニトリルゴムを水素化するためのプロセスが記載されている。Lは、ホスフィン含有またはアルシン含有の配位子である。その水素化は、配位子を追加することなく、比較的大量の触媒(2.5〜40重量%)を用いて実施されている。クロロベンゼン溶液から水素化ニトリルゴムを単離するためには、その水素化溶液を冷却し、イソプロパノールを添加することによってゴムを凝集させる。このプロセスの結果として得られる水素化ニトリルゴムの加硫物の物性については、何らの記載もない。したがって、(特許文献1)からは、ニトリルゴムの水素化プロセスの最適化に関して何らの教示を得ることもできず、HNBRをベースとする加硫物の弾性率および圧縮永久歪み値の最適化に関して何らの指針も存在しない。
(特許文献2)には、ペルオキシド架橋後に低い圧縮永久歪みを有する加硫物を与える水素化ニトリルゴムの製造が記載されている。その水素化においては、C〜Cケトンと、二級もしくは三級のC〜Cアルコールとの溶媒混合物を用い、極めて異なる化学的構成要素のルテニウム触媒が使用されている。その溶媒混合物中の二級または三級アルコールの比率は、2〜60重量%であると述べられている。水素化の際または水素化後に溶液を冷却している過程で、2相が形成される可能性があると記述されている。その結果、所望の水素化レベルが達成されないか、および/または水素化の間に水素化ニトリルゴムがゲル化する。(特許文献2)に記載されているプロセスは、水素化の過程で起きる相分離およびゲル化が、数多くのパラメーターに予測不能な状態で依存するために、広く応用することは不可能である。それらのパラメーターには、以下のものが含まれる:アクリロニトリル含量およびニトリルゴム供給原料のモル質量、溶媒混合物の組成、水素化におけるポリマー溶液の固形分含量、水素化レベル、ならびに水素化の際の温度。水素化後のポリマー溶液の冷却の過程、またはポリマー溶液を貯蔵している過程においても、望ましくない相分離と、対応するプラント機器および容器の汚染とが起こりうる。(特許文献2)は、ニトリルゴム供給原料の製造を介した弾性率レベルおよび圧縮永久歪みの改良に関して何らの教示も与えておらず、水素化プロセスに関してさらなる最適化の提案もしていない。
(特許文献3)には、少量の、好ましくは0.08〜0.2重量%のトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)ハライド、2重量%以下のトリフェニルホスフィンを用い、選択された圧力(好ましくは30〜350bar)および温度範囲(100℃〜145℃)でNBRを水素化するためのプロセスが記載されている。表3にある実施例では、トリフェニルホスフィンの量を0重量%から5重量%に上げると、ペルオキシド加硫させた水素化ニトリルゴムの重要な物性において劣化がもたらされることが示されている。たとえば、100%、200%および300%伸びにおける弾性率値、ならびに23℃における硬度が低下している。23℃で70時間、125℃で70時間、および150℃で70時間エージングさせた後での破断時伸びおよび圧縮永久歪みの値が大きくなっている。(特許文献3)の教示によれば、トリフェニルホスフィンによる有害な影響を限定するためには、水素化において使用されるトリフェニルホスフィンの量が、0.6重量%未満に制限される。水素化において、トリフェニルホスフィンの存在量が0.6重量%未満であることの欠点は、水素化時間を変化させないために、高価なロジウム金属をより大量に使用する必要があり、または触媒の量を変化させなければ、極めてより長い水素化時間を受容しなければならないことである。(特許文献3)は、トリフェニルホスフィンの量を増やすことなく水素化時間を短縮することについて、さらには結果として得られる水素化ニトリルゴムの加硫物の弾性率および圧縮永久歪みのレベルに悪影響を及ぼさない水素化時間の短縮法について、何らの教示も与えていない。
(特許文献4)には、アルカリ土類金属塩をゼラチンと組み合わせて用いてラテックスの凝集を実施することによる、高い貯蔵安定性を有するニトリルゴムの製造が記載されている。それらのニトリルゴムは、そのニトリルゴム中に存在しているナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムイオンの含量に関連した、例外的なイオン指数を有している。(特許文献4)の概要部分において、凝集前にニトリルゴムラテックスに添加されるいくつかの老化安定剤が挙げられているが、量についての記載はない。それらの実施例から、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)を使用し、その量は、ゴム固形分を規準にして0.1〜0.8重量%の範囲内で変動させたことが明らかである。ニトリルゴムの貯蔵安定性は、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の量に依存せず、最小量(0.1重量%)の2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)を使用したときでさえも、十分な貯蔵安定性が得られることが示されている。このことから、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の量は、ニトリルゴムの性質に(たとえあったとしても)ほんのわずかな影響のみを与えるという結論を導くことができる。このタイプのニトリルゴムを原料として、水素化によって得られる水素化ニトリルゴムの物性に及ぼす2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の影響に関して、それ以上の何らの結論も得ることができない。
米国特許第4,503,196号明細書 独国特許出願公開第A3921264号明細書 欧州特許出願公開第A0134023号明細書 欧州特許出願公開第2238177A号明細書
したがって、本発明が対象としている課題は、水素化後でも水素化ニトリルゴム中に残る可能性があるが、それ以後の加硫物の物性に悪影響を与えない活性向上添加物の存在下での、ニトリルゴムのための水素化プロセスを提供するという課題であった。本発明が対象としているさらなる課題は、極めて良好な加硫物の物性を有する水素化ニトリルゴムが得られるようにすることであった。
驚くべきことには、この課題は、特定のフェノールの存在下でニトリルゴムの水素化を実施することによって解決された。それらは、水素化のための供給原料として使用されるニトリルゴム中に既に存在していてもよく、あるいは単に水素化の過程においてその反応系に添加してもよい。これらの特定のフェノールは、水素化に対する予想されなかった加速効果を示し、そのようにして製造された水素化ニトリルゴムをベースとする加硫物の物性に悪影響を与えることなく、水素化ニトリルゴム中に残存することができる。
したがって、本発明は、溶液中でニトリルゴムを水素化することによって、水素化ニトリルゴムを製造するためのプロセスにおいて、その水素化が、一般式(I)
(式中、
Xは、硫黄、二価の、直鎖状もしくは分岐状、非環状もしくは環状のヒドロカルビル基、好ましくは二価のC〜Cアルキレン基、より好ましくはメチレン、エチレンもしくはn−プロピレン、または式(II)
(式中、n=0〜9である)であり、
、R、RおよびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ直鎖状もしくは分岐状の、非置換もしくは置換されたC〜Cアルキル基、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の、非置換もしくは置換されたC〜Cアルキル基である)
の少なくとも1種のフェノールの存在下で実施され、この一般式(I)のフェノールは、使用されるニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.25重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%、より好ましくは0.05〜0.19重量%、最も好ましくは0.05〜0.18重量%の量で存在していることを特徴とする、プロセスを提供する。
本発明はさらに、水素化ニトリルゴムであって、一般式(I)
(式中、
Xは、硫黄、二価の、直鎖状もしくは分岐状、非環状もしくは環状のヒドロカルビル基、好ましくは二価のC〜Cアルキレン基、より好ましくはメチレン、エチレンもしくはn−プロピレン、または式(II)
(式中、n=0〜9である)であり、
、R、RおよびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ直鎖状もしくは分岐状の、非置換もしくは置換されたC〜Cアルキル基、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の、非置換もしくは置換されたC〜Cアルキル基である)
の少なくとも1種のフェノールを、水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.25重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%、より好ましくは0.05〜0.19重量%、最も好ましくは0.05〜0.18重量%の範囲の量で含む、水素化ニトリルゴムも提供する。
本発明はさらに、これらの水素化ニトリルゴムの加硫可能な混合物、それらをベースとする加硫物を製造するためのプロセス、さらにはそれらから得ることが可能である特に成形体の形態の加硫物も提供する。
本発明の水素化ニトリルゴム:
本発明の水素化ニトリルゴムには、一般式(I)の少なくとも1種のフェノールが、水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.25重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%、より好ましくは0.05〜0.19重量%、最も好ましくは0.05〜0.18重量%の範囲の量で含まれる。
別の実施形態においては、本発明の水素化ニトリルゴムには、一般式(I)の少なくとも1種のフェノールが、水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.19重量%、好ましくは0.01〜0.18重量%の範囲の量で含まれる。
本発明の水素化ニトリルゴムは、一般式(I)のフェノールとして、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、およびp−クレゾールとジシクロペンタジエンとのブチル化された反応生成物からなる群から選択される化合物を含む。

の2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)は、たとえば、Lanxess Deutschland GmbHからVulkanox(登録商標)BKFの形態で市販されている。

の2,2−チオビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)は、たとえば、ChemturaからLowinox(登録商標)TBP−6の形態で市販されている。

のp−クレゾールとジシクロペンタジエンとのブチル化された反応生成物は、たとえば、EliokemからWingstay(登録商標)Lの形態で市販されている。
水素化ニトリルゴムの繰り返し単位:
本発明の水素化ニトリルゴムは、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルモノマーおよび少なくとも1種の共役ジエンモノマーの繰り返し単位を有している。それらにはさらに、1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位が含まれていてもよい。
本発明の水素化ニトリルゴムには、完全にもしくは部分的に水素化されたニトリルゴムが含まれる。水素化レベルは、典型的には50〜100%の範囲内、好ましくは75〜100%の範囲内、より好ましくは80〜100%の範囲内、さらにより好ましくは90〜100%、特には94.5%超〜100%の範囲内、特に好ましくは95%〜100%の範囲内である。当業者は、残留二重結合含量(略して「RDB」と呼ばれる)が約0.9%以下である、すなわち、水素化のレベルが99.1%以上である場合も「完全に水素化されたタイプ」と呼んでいる。
本発明の1つの実施形態においては、本発明の水素化ニトリルゴムは、95〜100%の範囲内、好ましくは96%〜100%の範囲内の水素化レベルを有し、より好ましくは99.1%以上の水素化度で完全に水素化されたタイプを表し、および一般式(I)の少なくとも1種のフェノールを、水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.19重量%の範囲内、好ましくは0.01〜0.18重量%の範囲内、最も好ましくは0.05〜0.18重量%の範囲内の量で含んでいる。
少なくとも1種の共役ジエンの繰り返し単位が、(C〜C)共役ジエンまたはそれらの混合物をベースとしているのが好ましい。特に好ましいのは、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、およびそれらの混合物である。特に好ましいのは、1,3−ブタジエン、イソプレンおよびそれらの混合物である。さらにより好ましいのは、1,3−ブタジエンである。
本発明のニトリルゴムを製造するために使用されるα,β−不飽和ニトリルは、各種公知のα,β−不飽和ニトリルであってよく、(C〜C)−α,β−不飽和ニトリル、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物が好ましい。特に好ましいのは、アクリロニトリルである。
1種または複数のさらなる共重合性モノマーを使用するのであれば、それらはたとえば以下のものであってよい:芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレン、α−メチルスチレンおよびビニルピリジン、フッ素化ビニルモノマー、好ましくはフルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−フルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレン、あるいはそうでなければ、共重合性の老化防止性モノマー、好ましくはN−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、およびN−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリン、ならびにさらに非共役ジエン、たとえば4−シアノシクロヘキセンおよび4−ビニルシクロヘキセン、またはそうでなければ、アルキン、たとえば1−ブチンまたは2−ブチン。
さらに、使用される共重合性ターモノマーは、ヒドロキシル基を含むモノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルであってよい。それに対応して置換された(メタ)アクリルアミドを使用することもまた可能である。
好適なアクリル酸ヒドロキシアルキルモノマーの例としては以下のものが挙げられる:(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、モノ(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジ(エチレングリコール)、イタコン酸ジ(プロピレングリコール)、イタコン酸ビス(2−ヒドロキシプロピル)、イタコン酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、フマル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、マレイン酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、およびヒドロキシメチルビニルケトン。
さらに、使用される共重合性ターモノマーは、エポキシ基を含むモノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸グリシジルであってよい。
エポキシ基を含むモノマーの好ましい例は以下のものである:イタコン酸グリシジル、p−スチレンカルボン酸グリシジル、アクリル酸2−エチルグリシジル、メタクリル酸2−エチルグリシジル、アクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、アクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルメチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、メタクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、アクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、メタクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、アリルグリシジルエーテル、アリル3,4−エポキシヘプチルエーテル、6,7−エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニル3,4−エポキシヘプチルエーテル、3,4−エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7−エポキシヘプチルビニルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、および3−ビニルシクロヘキセンオキシド。
それらに代わるものとして、さらなる共重合性モノマーは、以下のものであってよい:カルボキシル基を含む共重合性ターモノマー、たとえばα,β−不飽和モノカルボン酸、それらのエステル、α,β−不飽和ジカルボン酸、それらのモノエステルもしくはジエステル、それらに対応する酸無水物、またはそれらのアミド。
使用されるα,β−不飽和モノカルボン酸は、好ましくは、アクリル酸およびメタクリル酸であってよい。
α,β−不飽和モノカルボン酸のエステル、好ましくはそれらのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを使用することもまた可能である。α,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル、特にC〜C18アルキルエステルが好ましく、特に好ましいのは、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステル、特にC〜C18アルキルエステル、特にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、およびメタクリル酸2−エチルヘキシルである。さらに、α,β−不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルが好ましく、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルコキシアルキルエステル、特にアクリル酸もしくはメタクリル酸のC〜C12−アルコキシアルキルエステルが特に好ましく、アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルがさらにより好ましい。アルキルエステルたとえば上に挙げたものと、アルコキシアルキルエステルたとえば上に挙げた形態のものとの混合物を使用することも可能である。シアノアルキル基中の炭素原子の数が2〜12個のアクリル酸シアノアルキルおよびメタクリル酸シアノアルキル、好ましくはアクリル酸α−シアノエチル、アクリル酸β−シアノエチル、およびメタクリル酸シアノブチルもまた使用することもまた可能である。その中のヒドロキシアルキル基の炭素原子の数が1〜12であるアクリル酸ヒドロキシアルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキルを使用することも可能であり、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、およびアクリル酸3−ヒドロキシプロピルが好ましく、さらには、フッ素置換されたベンジル基を含むアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル、好ましくはアクリル酸フルオロベンジルおよびメタクリル酸フルオロベンジルを使用することも可能である。フルオロアルキル基を含むアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、好ましくはアクリル酸トリフルオロエチルおよびメタクリル酸テトラフルオロプロピルを使用することもまた可能である。アミノ基を含むα,β−不飽和カルボン酸エステル、たとえばアクリル酸ジメチルアミノメチルおよびアクリル酸ジエチルアミノエチルを使用することもまた可能である。
使用されるさらなるモノマーは、α,β−不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびメサコン酸であってもよい。
α,β−不飽和ジカルボン酸無水物、好ましくは無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、および無水メサコン酸を使用することもさらに可能である。
さらに、α,β−不飽和ジカルボン酸のモノまたはジエステルを使用することも可能である。
これらのα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルまたはジエステルは、たとえば、アルキル、好ましくはC〜C10−アルキル、特にはエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルまたはn−ヘキシル、アルコキシアルキル、好ましくはC〜C12−アルコキシアルキル、より好ましくはC〜C−アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、好ましくはC〜C12−ヒドロキシアルキル、より好ましくはC〜C−ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C12−シクロアルキル、より好ましくはC〜C12−シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、好ましくはC〜C12−アルキルシクロアルキル、より好ましくはC〜C10−アルキルシクロアルキル、アリール、好ましくはC〜C14−アリール、のモノエステルまたはジエステルであってよく、ここでいずれのジエステルも、混合エステルであってもよい。
特に好ましいα,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、アクリル酸2−プロピルヘプチル、および(メタ)アクリル酸ラウリルである。特に、アクリル酸n−ブチルが使用される。
特に好ましいα,β−不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルである。特に、アクリル酸メトキシエチルが使用される。
使用されるその他のα,β−不飽和モノカルボン酸のエステルはさらに、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシメチル)アクリルアミド、およびウレタン(メタ)アクリレートである。
α,β−不飽和ジカルボン酸モノエステルの例には、以下のものが挙げられる:
・ マレイン酸モノアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、およびマレイン酸モノ−n−ブチル;
・ マレイン酸モノシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘプチル;
・ マレイン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル、およびマレイン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ マレイン酸モノアリール、好ましくはマレイン酸モノフェニル;
・ マレイン酸モノベンジル類、好ましくはマレイン酸モノベンジル;
・ フマル酸モノアルキル、好ましくはフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、およびフマル酸モノ−n−ブチル;
・ フマル酸モノシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびフマル酸モノシクロヘプチル;
・ フマル酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノメチルシクロペンチル、およびフマル酸モノエチルシクロヘキシル;
・ フマル酸モノアリール、好ましくはフマル酸モノフェニル;
・ フマル酸モノベンジル類、好ましくはフマル酸モノベンジル;
・ シトラコン酸モノアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、およびシトラコン酸モノ−n−ブチル;
・ シトラコン酸モノシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、およびシトラコン酸モノシクロヘプチル;
・ シトラコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチルシクロペンチル、およびシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ シトラコン酸モノアリール、好ましくはシトラコン酸モノフェニル;
・ シトラコン酸モノベンジル類、好ましくはシトラコン酸モノベンジル;
・ イタコン酸モノアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、およびイタコン酸モノ−n−ブチル;
・ イタコン酸モノシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、およびイタコン酸モノシクロヘプチル;
・ イタコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチルシクロペンチル、およびイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ イタコン酸モノアリール、好ましくはイタコン酸モノフェニル;
・ イタコン酸モノベンジル、好ましくはイタコン酸モノベンジル;
・ メサコン酸モノアルキル、好ましくはメサコン酸モノエチル。
使用されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジエステルも、上述のモノエステル基に基づいた類似のジエステルであってよく、ここで、それらのエステル基が化学的に異なった基であってもよい。
有用なさらなる共重合性モノマーはさらに、1分子あたり少なくとも2個のオレフィン性二重結合を含むフリーラジカル重合性化合物が挙げられる。ポリ不飽和化合物の例は、ポリオールのアクリレート、メタクリレート、またはイタコネートであって、たとえば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ブタンジオール1,4−ジアクリレート、プロパン−1,2−ジオールジアクリレート、ブタン−1,3−ジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、グリセリルのジ−およびトリ−アクリレート、ペンタエリスリチルのジ−、トリ−およびテトラ−アクリレートもしくは−メタクリレート、ジペンタエリスリチルのテトラ−、ペンタ−およびヘキサ−アクリレートもしくは−メタクリレートもしくは−イタコネート、ソルビチルテトラアクリレート、ソルビチルヘキサメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリエチレングリコールの、または末端ヒドロキシル基を有するオリゴエステルまたはオリゴウレタンのジアクリレートまたはジメタクリレートなどである。使用されるポリ不飽和モノマーはさらに、アクリルアミド、たとえばメチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレン−1,6−ビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、またはアクリル酸2−アクリルアミドエチルであってもよい。ポリ不飽和ビニルおよびアリル化合物の例としては以下のものが挙げられる:ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、フタル酸ジアリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、またはリン酸トリアリル。
本発明におけるプロセスにおいて使用するためのニトリルゴムまたは本発明の水素化ニトリルゴムにおける共役ジエンとα,β−不飽和ニトリルとの比率は、広い範囲で変化させることができる。共役ジエンの比率、すなわち総計は、全体のポリマーを規準にして、典型的には20〜95重量%の範囲、好ましくは45〜90重量%の範囲、より好ましくは50〜85重量%の範囲である。α,β−不飽和ニトリルの比率、すなわち総計は、全体のポリマーを規準にして、典型的には5〜80重量%、好ましくは10〜55重量%、より好ましくは15〜50重量%の範囲である。本発明のニトリルゴムまたは本発明の全完全にもしくは部分的に水素化されたニトリルゴムにおける共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルの繰り返し単位の比率は、それぞれの場合において、合計して100重量%になる。
さらなるモノマーは、ポリマー全体を基準にして、0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜26重量%の量で存在させてもよい。この場合、共役ジエンの繰り返し単位および/またはα,β−不飽和ニトリルの繰り返し単位の対応する比率が、これらのさらなるモノマーの比率で置き換えられ、ここで、それぞれの場合において、全部のモノマーの繰り返し単位の比率が、合計して100重量%になるようにしなければならない。
さらなるモノマーとして(メタ)アクリル酸のエステルを使用する場合には、典型的には1〜25重量%の量で実施する。さらなるモノマーとしてα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸を使用するのであれば、典型的には、10重量%未満の量で実施する。
好ましいのは、アクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンの繰り返し単位を有する本発明のニトリルゴムである。さらに好ましいのは、アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、および1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を有するニトリルゴムである。アクリロニトリルと、1,3−ブタジエンと、1種または複数のα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、またはそれらのエステルまたはアミドの繰り返し単位、特にα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルの繰り返し単位、極めて特に好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルまたは(メタ)アクリル酸ラウリルとの繰り返し単位を有するニトリルゴムが好ましい。
本発明の水素化ニトリルゴム中の窒素含量は、DIN 53 625に従い、Kjeldahl法により測定する。極性のコモノマーが含まれているために、そのニトリルゴムは、典型的には、20℃のメチルエチルケトン中に85重量%以上の量で溶解することができる。
本発明の1つの実施形態においては、本発明の水素化ニトリルゴムが、もっぱらアクリロニトリルおよびブタジエンから誘導される繰り返し単位を有するコポリマーを表し、および一般式(I)の少なくとも1種のフェノールを、水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.19重量%の範囲内、好ましくは0.01〜0.18重量%の範囲内、最も好ましくは0.05〜0.18重量%の範囲内の量で含んでいる。そのような水素化されたアクリロニトリル−ブタジエンコポリマーは、典型的には90〜100%、好ましくは92〜100%、より好ましくは95〜100%の水素化度を有している。
本発明の水素化ニトリルゴムは、10〜150ムーニー単位(MU)、好ましくは20〜100MUのムーニー粘度ML1+4@100℃を有する。
本発明のニトリルゴム、または本発明の完全にもしくは部分的に水素化されたニトリルゴムのガラス転移温度は、70℃〜+10℃の範囲内、好ましくは−60℃〜0℃の範囲内である。
本発明の水素化ニトリルゴムを製造するためのプロセス:
本発明においては、その水素化ニトリルゴムは、一般式(I)の少なくとも1種のフェノールの存在下に、溶液中でニトリルゴムを水素化することによって調製され、ここで、一般式(I)のフェノールは、それぞれの場合、使用される水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.25重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%、より好ましくは0.05〜0.19重量%、最も好ましくは0.05〜0.18重量%の量で存在する。
1つの実施形態においては、ここで、上述の一般式(I)の少なくとも1種のフェノールを既にある程度の量で含んでいるニトリルゴムが使用される。ニトリルゴムは、典型的には、乳化重合を介してニトリルゴムラテックスを形成させ、次いでそのニトリルゴムを凝集させることによって製造される。これは、当業者には十分周知である。ニトリルゴムのラテックスの凝集は、欧州特許出願公開第A1369436号明細書の概要部分に記載されているプロセスによって実施するのが好ましい。一般式(I)の少なくとも1種のフェノールは、たとえば、典型的には、乳化重合後に形成されたニトリルゴムラテックスに凝集前に添加される。一般式(I)のフェノールを水性分散体として添加するのが有用であることが見出された。この水性分散体の濃度は、典型的には2.50〜70重量%、好ましくは5〜60重量%の範囲内である。
別の実施形態においては、一般式(I)のフェノールのみを、水素化反応混合物中に別途に添加する。
水素化:
水素化は典型的には、典型的には貴金属のロジウム、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、白金またはイリジウム、好ましくはロジウム、ルテニウム、およびオスミウムをベースとする少なくとも1種の水素化触媒の存在下に実施される。
一般式(A)
Rh(X)(L) (A)
(式中、
Xは、同一であるか、または異なっており、および水素、ハロゲン、プソイドハロゲン、SnCl、またはカルボキシレートであり、
nは、1、2または3、好ましくは1または3であり、
Lは、同一であるか、または異なっており、およびリン、ヒ素、またはアンチモンをベースとする単座もしくは二座の配位子を表し、
mは、Lが単座配位子を表す場合には2、3、または4、Lが二座座配位子を表す場合には1または1.5または2または3または4である)
のロジウム錯体触媒を使用することが可能である。
一般式(A)において、Xは、同一であるか、または異なっており、および好ましくは水素または塩素である。
一般式(A)におけるLは、好ましくは、先に示した一般式(I−a)および(I−b)に対応するホスフィンまたはジホスフィンであり、そこで与えられた、一般的、好ましい、および特に好ましい定義が含まれる。
一般式(A)の特に好ましい触媒は、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)クロリド、トリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)クロリド、ヒドリドロジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ならびにトリフェニルホスフィンが、トリシクロヘキシルホスフィンによって全体的または部分的に置換された対応する化合物である。
ルテニウム錯体触媒を使用することもまた可能である。それらは、たとえば、独国特許出願公開第A39 21 264号明細書および欧州特許出願公開第A0 298 386号明細書に記載されている。それらは典型的には、一般式(B)
RuX[(L(L5−z] (B)
(式中、
Xは、同一であるか、または異なっており、および水素、ハロゲン、SnCl、CO、NO、またはR−COOであり、
は、同一であるか、または異なっており、および水素、ハロゲン、R−COO、NO、CO、または下記の一般式(2):
(式中、
〜Rは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルもしくはフェニルであるか、あるいはR〜Rからの2つの隣接する基が架橋されて、インデニルまたはフルオレニル系が形成されている)
のシクロペンタジエニル配位子であり、
は、ホスフィン、ジホスフィン、またはアルシンであり、かつ
nは、0、1または2であり、
mは、0、1、2または3であり、
zは、0、1、2、3または4であり、および
は、1〜20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは非分岐状、架橋または非架橋、および/または部分的に芳香族であってもよい基であり、好ましくはC〜Cアルキルである)
を有している。
一般式(2)のシクロペンタジエニル配位子タイプの、一般式(B)のL配位子の例としては、以下のものが挙げられる:シクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、エチルテトラメチルシクロペンタジエニル、ペンタフェニルシクロペンタジエニル、ジメチルトリフェニルシクロペンタジエニル、インデニル、およびフルオレニル。インデニルおよびフルオレニルタイプのL配位子中のベンゼン環は、以下のもので置換されていてもよい:C〜C−アルキル基、特にはメチル、エチル、およびイソプロピル、C〜C−アルコキシ基、特にはメトキシおよびエトキシ、アリール基、特にはフェニル、ならびにハロゲン、特にはフッ素および塩素。シクロペンタジエニルタイプの好ましいL配位子は、それぞれ非置換の、シクロペンタジエニル、インデニル、およびフルオレニル基である。
(R−COO)タイプの一般式(B)におけるL配位子では、Rとしては、たとえば以下のものが挙げられる:1〜20、好ましくは1〜12、特には1〜6個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状の、飽和ヒドロカルビル基、5〜12、好ましくは5〜7個の炭素原子を有する、環状飽和ヒドロカルビル基、さらには6〜18、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する、芳香族ヒドロカルビル基、または好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜Cアルキル基およびC〜C18アリール基、好ましくはフェニルを有する、アリール−置換されたアルキル基。
先に説明した、一般式(B)の配位子Lにおける(R−COO)のR基は、任意選択的に以下のもので置換されていてもよい:ヒドロキシル、C〜C−アルコキシ、C〜C−カルブアルコキシ、フッ素、塩素、またはジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルキルによってさらに置換されたシクロアルキル、アリール、およびアラルキル基;アルキル、シクロアルキルおよびアラルキル基にはケト基が含まれていてもよい。R基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、およびトリフルオロメチルが挙げられる。好ましいR基は、メチル、エチル、およびtert−ブチルである。
一般式(B)のL配位子は、好ましくは、先に示した一般式(1−a)および(1−b)に従うホスフィンまたはジホスフィン(そこで与えられた、一般的、好ましい、および特に好ましい定義が含まれる)であるか、または一般式(3)のアルシンである。
一般式(3)の好ましい配位子Lは、トリフェニルアルシン、ジトリルフェニルアルシン、トリス(4−エトキシフェニル)アルシン、ジフェニルシクロヘキシルアルシン、ジブチルフェニルアルシン、およびジエチルフェニルアルシンである。
好ましい一般式(B)のルテニウム触媒は、以下の群から選択され、ここで「Cp」は、シクロペンタジエニル、すなわちC−を表し、「Ph」は、フェニルを表し、「Cy」は、シクロヘキシルを表し、「dppe」は、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンを表している:RuCl(PPh;RuHCl(PPh;RuH(PPh;RuH(PPh;RuH(PPh;RuH(CHCOO)(PPh;RuH(CCOO)(PPh;RuH(CHCOO)(PPh;RuH(NO)(PPh;Ru(NO)(PPh;RuCl(Cp)(PPh;RuH(Cp)(PPh;Ru(SnCl)(Cp)(PPh;RuCl(μ−C)(PPh;RuH(μ−C)(PPh;Ru(SnCl)(μ−C)(PPh;RuCl(μ−C13)(PPh;RuH(μ−C13)(PPh;Ru(SnCl)(μ−C13)(PPh;RuCl(μ−C)(dppe);RuHCl(CO)(PCy);RuH(NO)(CO)(PCy;RuHCl(CO)(PPh;RuCl(CO)(dppe)RuHCl(CO)(PCy)、RuHCl(CO)(dppe)、RuH(CHCOO)(PPh;RuH(CHCOO)(PPh;およびRuH(CHCOO)(PPh
好適な触媒は、さらに、一般式(C)
(式中、
Mは、オスミウムまたはルテニウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
Lは、同一であるかまたは異なった配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、
Rは、同一であるか、または異なっており、および水素、アルキル、好ましくはC〜C30−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C20−シクロアルキル、アルケニル、好ましくはC〜C20−アルケニル、アルキニル、好ましくはC〜C20−アルキニル、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、カルボキシレート、好ましくはC〜C20−カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC〜C20−アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC〜C24−アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C20−アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC〜C30−アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC〜C30−アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC〜C24−アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、ここで、それらの基がすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよいか、あるいは別の方法として、2つのR基が、それらが結合されている共通の炭素原子を取り込んで、架橋されて、性質上脂肪族であっても芳香族であってもよく、任意選択的に置換されていたり1個または複数のヘテロ原子を含んでいたりしてもよい、環状基を形成している)
のものである。
一般式(C)の触媒の1つの実施形態においては、1個のR基が水素であり、他のR基が、C〜C20−アルキル、C〜C10−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C30−アルキルアミノ、C〜C30−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、ここで、それらの基はすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
一般式(C)の触媒において、XおよびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子である。
およびXは、たとえば以下のものであってよい:水素、ハロゲン、プソイドハロゲン、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C20−アルコキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルキルジケトネート、C〜C24−アリールジケトネート、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルキルスルホネート、C〜C24−アリールスルホネート、C〜C20−アルキルチオール、C〜C24−アリールチオール、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルフィニル、モノ−もしくはジ−アルキルアミド、モノ−もしくはジ−アルキルカルバメート、モノ−もしくはジ−アルキルチオカルバメート、モノ−もしくはジ−アルキルジチオカルバメート、またはモノ−もしくはジ−アルキルスルホンアミド基。
上述のXおよびX基が、1種または複数のさらなる基、たとえばハロゲン、好ましくはフッ素、C〜C10−アルキル、C〜C10−アルコキシまたはC〜C24−アリールによって置換されていてもよく、それらの基がさらに、任意選択的に次いでハロゲン、好ましくはフッ素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシおよびフェニルを含む群から選択される1種または複数の置換基によって置換されていてもよい。
さらなる実施形態においては、XおよびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれハロゲン、特に、フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素、ベンゾエート、C〜C−カルボキシレート、C〜C−アルキル、フェノキシ、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルキルチオール、C〜C24−アリールチオール、C〜C24−アリール、またはC〜C−アルキルスルホネートである。
さらなる実施形態においては、XおよびXが同一であって、それぞれハロゲン特に、塩素、CFCOO、CHCOO、CFHCOO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、PhO(フェノキシ)、MeO(メトキシ)、EtO(エトキシ)、トシレート(p−CH−C−SO)、メシレート(CHSO)、またはCFSO(トリフルオロメタンスルホネート)である。
一般式(C)において、Lは、同一であるかまたは異なった配位子であり、好ましくは電荷を有さない電子供与体である。
2個のL配位子は、たとえば、それぞれ独立して、ホスフィン、スルホネート化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、チオエーテル、イミダゾリン、またはイミダゾリジン配位子とすることができる。
それら2個のL配位子は、好ましくはそれぞれ独立して、C〜C24−アリール−、C〜C10−アルキル−もしくはC〜C20−シクロアルキルホスフィン配位子、スルホネート化C〜C24−アリール−もしくはスルホネート化C〜C10−アルキルホスフィン配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルホスフィナイト配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルホスホナイト配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルホスファイト配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルアルシン配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルアミン配位子、ピリジン配位子、C〜C24−アリールもしくはC〜C10−アルキル−スルホキシド配位子、C〜C24−アリールもしくはC〜C10−アルキルエーテル配位子もしくはC〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルアミド配位子であり、それらはすべてさらに、未置換であるか、または1個または複数のハロゲン、C〜C−アルキルもしくはC〜C−アルコキシ基によって置換されているフェニル基によって置換されていてもよい。
「ホスフィン」という用語には、たとえば、PPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソプロピル)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、およびP(ネオフェニル)が含まれ、ここで「Ph」はフェニルを表し、「Tol」はトリルを表している。
「ホスフィナイト」という用語には、たとえば、トリフェニルホスフィナイト、トリシクロヘキシルホスフィナイト、トリイソプロピルホスフィナイト、およびメチルジフェニルホスフィナイトが含まれる。
「ホスファイト」という用語には、たとえば、トリフェニルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ−tert−ブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、およびメチルジフェニルホスファイトが含まれる。
「スチビン」という用語には、たとえば、トリフェニルスチビン、トリシクロヘキシルスチビン、およびトリメチルスチビンが含まれる。
「スルホネート」という用語には、たとえば、トリフルオロメタンスルホネート、トシレート、およびメシレートが含まれる。
「スルホキシド」という用語には、たとえば、(CHS(=O)および(CS=Oが含まれる。
「チオエーテル」という用語には、たとえば、CHSCH、CSCH、CHOCHCHSCH、およびテトラヒドロチオフェンが含まれる。
「ピリジン」という用語は、本明細書に関連して、たとえば、国際公開第A03/011455号パンフレットにおいてGrubbsによって規定されているすべてのピリジンベースの配位子についての包括用語(umbrella term)として理解されるべきである。これらに含まれるのは、ピリジン、ならびに1置換基または多置換基を有する、以下の形態のピリジンである:ピコリン(α−、β−、およびγ−ピコリン)、ルチジン(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−および3,5−ルチジン)、コリジン(2,4,6−トリメチルピリジン)、トリフルオロメチルピリジン、フェニルピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、クロロピリジン、ブロモピリジン、ニトロピリジン、キノリン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、およびフェニルイミダゾール。
式(C)のL配位子の一方または両方が、イミダゾリンおよび/またはイミダゾリジン基(以後においては、まとめて、「Im」配位子と呼ぶ)である場合には、後者は、典型的には、一般式(4a)または(4b)
(式中、
、R、R10、R11は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C20−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C20−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルホネート、C〜C20−アリールスルホネート、またはC〜C20−アルキルスルフィニルである)
の構造を有している。
任意選択的に、R、R、R10、R11基の1個または複数が、それぞれ独立して、1個または複数の置換基、好ましくは直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アルコキシまたはC〜C24−アリールによって置換されていてもよく、ここで上述のそれらの置換基が、好ましくはハロゲン、特にフッ素、塩素または臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、およびフェニルの群から選択される1個または複数の基によってさらに置換されていてもよい。
単に明確にするために、本出願に関連して、一般式(4a)および(4b)に示されている構造は、この基についての文献で見かけることが多く、この基のカルベン的性質を強調している、構造(4a’)および(4b’)と均等であることを付け加えておく。このことは、後に示す関連する好ましい構造(5a)〜(5f)に対しても同様にあてはまる。それらの基はすべて、以下においては、まとめて「Im」基と呼ぶことにする。
一般式(C)の触媒の好ましい実施形態においては、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはプロピルまたはブチルであるか、またはそれらが結合している炭素原子を取り込んで、シクロアルキルまたはアリール基を形成し、ここで上述の基は、任意選択的に直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、C〜C10−アルコキシ、C〜C24−アリールを含む群から選択される1個または複数のさらなる基、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲンの官能基によって、さらに置換されていてもよい。
一般式(C)の触媒の好ましい実施形態においては、R10およびR11基は、さらに同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはメチル、イソプロピルまたはネオペンチル、C〜C10−シクロアルキル、好ましくはアダマンチル、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、C〜C10−アルキルスルホネート、より好ましくはメタンスルホネート、C〜C10−アリールスルホネート、より好ましくはp−トルエンスルホネートである。
任意選択的に、上述のR10およびR11で定義したような基が、直鎖状または分岐状のC〜C−アルキル、特にメチル、C〜C−アルコキシ、アリールを含む群から選択される1個または複数のさらなる基、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲン、特にフッ素、塩素、および臭素から選択される官能基によって置換されている。
さらに詳しくは、R10およびR11基は、同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれイソプロピル、ネオペンチル、アダマンチル、メシチル(2,4,6−トリメチルフェニル)、2,6−ジフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、または2,6−ジイソプロピルフェニルである。
特に好ましいIm基は、下記の(5a)〜(5f)
の構造を有しており、ここでそれぞれ、Phはフェニル基であり、Buはブチル基であり、Mesはそれぞれ2,4,6−トリメチルフェニル基、別の場合では、Mesがすべての場合において、2,6−ジイソプロピルフェニルである。
式(C)の触媒の広く各種の異なった代表的化合物は、たとえば国際公開第A96/04289号パンフレットおよび国際公開第A97/06185号パンフレットから、基本的には公知である。
それらの好適なIm基に代わるものとして、一般式(C)のL配位子の一方または両方が、この場合も好ましくは同一であるかまたは異なったトリアルキルホスフィン配位子であって、その中のアルキル基の少なくとも1個が、二級アルキル基またはシクロアルキル基、好ましくはイソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、ネオペンチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
さらに好ましくは、一般式(C)においては、1個または両方のL配位子が、その中で少なくとも1個のアルキル基が、二級アルキル基またはシクロアルキル基、好ましくはイソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、ネオペンチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである、トリアルキルホスフィン配位子である。
特に好ましいのは、一般式(C)によって包含され、構造(6)(Grubbs(I)触媒)および(7)(Grubbs(II)触媒)
(式中、Cyはシクロヘキシルである)
を有する触媒である。
好適な触媒は、さらに好ましくは、一般式(C1)
(式中、
、XおよびLは、一般式(C)におけるのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてよく、
nは、0、1または2であり、
mは、0、1、2、3または4であり、および
R’は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい)
のものである。
使用することが可能な一般式(C1)によって包含される好ましい触媒の例は、下記の式(8a)および(8b)
であり、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルであり、Phはフェニルである。
これらの触媒は、たとえば国際公開第A2004/112951号パンフレットからも公知である。触媒(8a)は、Nolan触媒とも呼ばれている。
好適な触媒は、さらに好ましくは、一般式(D)
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であっても異なっていてもよい配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
Yは、酸素(O)、硫黄(S)、N−R基もしくはP−R基(ここで、Rは以下に定義されるもの)であり、
は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ任意選択的に1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよく、
、R、RおよびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素または有機もしくは無機の基であり、
は、水素またはアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリール基であり、および
Lは、式(C)について定義された配位子である)
のものである。
一般式(D)の触媒は、原理的には公知であって、たとえば以下の文献に記載されている:Hoveydaらの米国特許出願公開第2002/0107138A1号明細書、およびAngew.Chem.Int.Ed.,2003.42,4592、ならびにGrelaによる国際公開第A2004/035596号パンフレット、Eur.J.Org.Chem.,2003,963−966、およびAngew.Chem.Int.Ed.,2002,41,4038、さらにはJ.Org.Chem.,2004,69,6894−96、およびChem.Eur.J.,2004,10,777−784、さらには米国特許出願公開第2007/043180号明細書。それらの触媒は市場で入手可能であるか、または引用文献に従って調製することができる。
一般式(D)の触媒においては、Lは、典型的には、電子供与体機能を有する配位子であって、一般式(C)におけるLと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していると考えてよい。さらに、一般式(D)におけるLは、P(R基であるのが好ましく、ここでRは独立して、C〜Cアルキル、C〜C−シクロアルキルまたはアリールであるか、そうでなければ、任意選択的に置換されたイミダゾリンまたはイミダゾリジン基(「Im」)である。
〜C−アルキルは、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、およびn−ヘキシルである。
〜C−シクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。
アリールには、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基、好ましくは6〜10個の骨格炭素原子を有する単環、二環もしくは三環式の炭素環芳香族基、特にはフェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが含まれる。
イミダゾリンまたはイミダゾリジン基(Im)は、一般式(C)の触媒と同様の、一般的、好ましい、および特に好ましい構造を有している。
一般式(D)として特に好適な触媒は、R10およびR11基は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはイソプロピルまたはネオペンチル、C〜C10−シクロアルキル、好ましくはアダマンチル、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、C〜C10−アルキルスルホネート、より好ましくはメタンスルホネート、C〜C10−アリールスルホネート、より好ましくはp−トルエンスルホネートであるものである。
任意選択的に、上述のR10およびR11で定義したような基が、直鎖状または分岐状のC〜C−アルキル、特にメチル、C〜C−アルコキシ、アリールを含む群から選択される1個または複数のさらなる基、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲンの群から選択される官能基によって置換されている。
さらに詳しくは、R10およびR11基は、同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれイソプロピル、ネオペンチル、アダマンチル、またはメシチルである。
特に好ましいイミダゾリンまたはイミダゾリジン基(Im)は、既に先に特定された構造(5a〜5f)を有しており、ここでMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
一般式(D)の触媒においては、XおよびXが、一般式(C)の触媒と同様の、一般的、好ましい、および特に好ましい定義を有している。
一般式(D)においては、R基が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって、任意選択的に置換されていてもよい。
典型的にはR基は、C〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルアミノ、C〜C20−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
が、C〜C20−シクロアルキル基、C〜C24−アリール基、または直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル基であるのが好ましく、ここで後者は、任意選択的に1個もしくは複数の二重結合もしくは三重結合、またはそうでなければ1個もしくは複数のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素によって中断されていてもよい。Rが、直鎖状または分岐状のC〜C12−アルキル基であるのがより好ましい。
〜C20−シクロアルキル基には、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。
〜C12−アルキル基は、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、またはn−ドデシルであってよい。Rがメチルまたはイソプロピルであるのがより好ましい。
〜C24−アリール基は、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基である。6〜10個の骨格炭素原子を有する好適な単環式、二環式または三環式炭素環芳香族基としては、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが挙げられる。
一般式(D)において、R、R、R、およびR基は同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ水素、または有機もしくは無機の基であってよい。
好適な実施形態においては、R、R、R、Rは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ハロゲン、ニトロ、CF、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ任意選択的に1個または複数のアルキル、アルコキシ、ハロゲン、アリールまたはヘテロアリール基により置換されていてもよい。
典型的には、R、R、R、Rは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ハロゲン、好ましくは塩素もしくは臭素、ニトロ、CF、C〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルアミノ、C〜C20−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニル基であり、それらのすべてがそれぞれ、任意選択的に1個または複数のC〜C30−アルキル、C〜C20−アルコキシ、ハロゲン、C〜C24−アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
特に実証された実施形態においては、R、R、R、Rが同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれニトロ、直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、直鎖状または分岐状のC〜C20−アルコキシ基またはC〜C24−アリール基、好ましくはフェニルもしくはナフチルである。それらのC〜C30−アルキル基およびC〜C20−アルコキシ基は、任意選択的に1個もしくは複数の二重結合もしくは三重結合、またはそうでなければ、1個もしくは複数のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素によって中断されていてもよい。
さらに、R、R、RまたはR基の2種以上が、脂肪族または芳香族を介して架橋されていてもよい。たとえばそれらが式(D)のフェニル環中に結合されている炭素原子も含めて、RおよびRが縮合フェニル環を形成して、全体としてナフチル構造となっていてもよい。
一般式(D)においては、そのR基は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリール基、好ましくは水素、C〜C30−アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、またはC〜C24−アリール基である。Rが水素であれば、より好ましい。
他の好適な触媒は、一般式(D1)
(式中、M、L、X、X、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、一般式(D)において与えられた一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義と同じ定義を有していてよい)
の触媒である。
一般式(D1)の触媒は基本的には、たとえば米国特許出願公開第2002/0107138A1号明細書(Hoveydaら)からも公知であり、そこに規定された調製プロセスにより得ることができる。
特に好適な触媒は、一般式(D1)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲン、特に共に塩素であり、
が、直鎖状または分岐状のC〜C12アルキル基であり、
、R、R、Rはそれぞれ、一般式(D)において与えられた一般的な定義および好ましい定義を有しており、および
Lが、一般式(D)において与えられた一般的な定義および好ましい定義を有している。
特に好適な触媒は、一般式(D1)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共に塩素であり、
が、イソプロピル基であり、
、R、R、Rが、すべて水素であり、および
Lが、式(4a)または(4b)の、任意選択的に置換されたイミダゾリジン基である。
(式中、
、R、R10、R11は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルホネート、C〜C24−アリールスルホネート、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、ここで、上述の基は、それぞれ1個または複数の置換基、好ましくは直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アルコキシまたはC〜C24−アリールによって置換されていてもよく、またそれらの上述の置換基もまた、1個または複数の基、好ましくはハロゲン特に塩素もしくは臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシおよびフェニルの群から選択される基によって置換されていてもよい。)
極めて特に好適な触媒は、一般構造式(D1)で包含され、式(9)
を有しているものであり、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
この触媒(9)は、文献において、「Hoveyda触媒」と呼ばれることもある。
さらに好適な触媒は、一般構造式(D1)で包含され、以下の式(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)および(17)
の1つを有しているものであり、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
さらに好適な触媒は、一般式(D2)
(式中、
M、L、X、X、R、およびRは、それぞれ式(D)において与えられた一般的な定義および好ましい定義を有し、
12は、同一であるか、または異なっており、および式(D)においてR、R、R、およびR基に与えられた一般的な定義および好ましい定義を有するが、ただし水素は除き、および
nは、0、1、2または3である)
の触媒である。
一般式(D2)の触媒は原理的には、たとえば、国際公開第2004/035596号パンフレット(Grela)からも公知であり、そこに規定された調製プロセスにより得ることができる。
特に好適な触媒は、一般式(D2)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲン、特に共に塩素であり、
が、直鎖状または分岐状のC〜C12アルキル基であり、
12が、一般式(D2)において定義されたものであり、
nが、0、1、2または3であり、
が、水素であり、および
Lが、一般式(D)において定義されたものである。
特に好適な触媒は、一般式(D2)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共に塩素であり、
が、イソプロピル基であり、
nが、0であり、および
Lが、式(4a)または(4b)の、任意選択的に置換されたイミダゾリジン基であり、ここで、R、R、R10、R11は、同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ一般式(D1)の特に好ましい触媒について定義されたものである。
特に好適な触媒は、下記の構造(18)(「Grela触媒」)および(19)
のものであり、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
その他の好適な触媒は、一般式(D3)
(式中、X、X、XおよびXはそれぞれ、右側に示されているメチレン基を介して、式(D3)のケイ素に結合された一般式(20)
(式中、
M、L、X、X、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、一般式(D)において与えられた一般的定義および好ましい定義と同じ定義を有していてよい)
の構造を有している)
のデンドリマー(dendritic)触媒である。
その一般式(D3)の触媒は、米国特許出願公開第2002/0107138A1号明細書からも公知であり、その中で与えられた詳細に基づいて調製することができる。
その他の好適な触媒は、一般式(D4)
(式中、●の記号は担体を表している)
の触媒である。
担体は、好ましくはポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)コポリマー(PS−DVB)である。
式(D4)に従う触媒は、基本的には、Chem.Eur.J.,2004,10,777−784から公知であり、その中に記載された調製法によって得ることができる。
(D)、(D1)、(D2)、(D3)および(D4)タイプの上述の触媒はすべて、そのままで水素化反応において使用することもでき、または固体の担体に適用して固定化させることもできる。適切な固体相または支持体は、まず、メタセシス反応混合物に対して不活性であり、次いで、触媒の活性を損なわないようなものである。触媒は、たとえば、金属、ガラス、ポリマー、セラミック、有機ポリマービーズもしくはそうでなければ無機ゾル−ゲル、カーボンブラック、シリカ、ケイ酸塩、炭酸カルシウム、および硫酸バリウムを使用して固定化することができる。
他の好適な触媒は、一般式(E)
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアニオン性配位子であり、
R’’は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ有機基であり、
Imは、任意選択的に置換されたイミダゾリンまたはイミダゾリジン基であり、および
Anは、アニオンである)
の触媒である。
一般式(E)の触媒は原理的には公知である(たとえば、Angew.Chem.Int.Ed.,2004,43,6161−6165参照)。
一般式(E)におけるXおよびXが、式(C)および(D)におけるのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてよい。
Im基は、典型的には、一般式(4a)または(4b)の構造を有しており、それは、式(C)および(D)のタイプの触媒について既に特定されており、そこで好ましいと特定された構造のいずれか、特に式(5a)〜(5f)のものであってもよい。
一般式(E)におけるR’’基は同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C30−シクロアルキル、またはアリール基であり、ここで、そのC〜C30−アルキル基は、任意選択的に1個もしくは複数の二重結合もしくは三重結合またはそうでなければ1個または複数のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素によって中断されていてもよい。
アリールには、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基が含まれる。6〜10個の骨格炭素原子を有する好適な単環式、二環式または三環式炭素環芳香族基としては、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが挙げられる。
一般式(E)におけるR’’基は、同一であるのが好ましく、それぞれフェニル、シクロヘキシル、シクロペンチル、イソプロピル、o−トリル、o−キシリルまたはメシチルである。
他の好適な触媒は、一般式(F)
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
13およびR14はそれぞれ独立して、水素、C〜C20−アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、
は、アニオン性配位子であり、
は、単環式か多環式かには関係なく、電荷を有さないπ結合された配位子であり、
は、ホスフィン、スルホネート化ホスフィン、フッ素化ホスフィン、3個までのアミノアルキル、アンモニオアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、ヒドロカルボニルアルキル、ヒドロキシアルキルもしくはケトアルキル基を有する官能化ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスフィンアミン、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、チオエーテル、およびピリジンの群からの配位子であり、
は、非配位アニオンであり、および
nは、0、1、2、3、4または5である)
の触媒である。
他の好適な触媒は、一般式(G)
(式中、
は、モリブデンであり、
15およびR16は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、C〜C20−アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、
17およびR18は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ置換またはハロゲン−置換のC〜C20−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C30−アラルキル基、またはそれらのケイ素含有類似体である)
の触媒である。
さらなる好適な触媒は、一般式(H)
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ一般式(C)および(D)で与えられたXおよびXのすべての定義と考えてよいアニオン性配位子であり、
Lは、一般式(C)および(D)で与えられたLのすべての定義と考えてよい、同一または異なった配位子であり、
19およびR20は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素または置換または非置換のアルキルである)
の触媒である。
さらなる好適な触媒は、一般式(K)、(N)または(Q)
(式中、
Mは、オスミウムまたはルテニウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
Lは、配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、
およびZは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ電荷を有さない電子供与体であり、
21およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニルであり、それらのそれぞれは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリール、およびヘテロアリールから選択される1個または複数の基によって置換されている)
の触媒である。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒は基本的には、たとえば、国際公開第2003/011455A1号パンフレット、国際公開第2003/087167A2号パンフレット、Organometallics,2001,20,5314、およびAngew.Chem.Int.Ed.,2002,41,4038からも公知である。それらの触媒は、市場で入手することも可能であり、そうでなければ、上述の引用文献に規定された調製法によって合成することもできる。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、ZおよびZは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ電荷を有さない電子供与体である。それらの配位子は典型的には、弱く配位結合されている。それらは典型的には、任意選択的に置換された複素環状基である。それらは、1〜4個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の単環式の基であるか、または2、3、4もしくは5個のそのような5員または6員の単環式の基からなる二環もしくは三環構造であってよく、ここで上述の基のそれぞれが、任意選択的に1個または複数のアルキル、好ましくはC〜C10−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C−シクロアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜C10−アルコキシ、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、またはヘテロアリール、好ましくはC〜C23ヘテロアリール基によって置換されていてもよく、それらの置換基がさらに、好ましくはハロゲン、特に塩素または臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される1個または複数の基によって再度置換されていてもよい。
およびZの例には、窒素含有複素環、たとえば、ピリジン、ピリダジン、ビピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピラゾリジン、ピロリジン、ピペラジン、インダゾール、キノリン、プリン、アクリジン、ビスイミダゾール、ピコリルイミン、イミダゾリジン、およびピロールが含まれる。
およびZが互いに架橋されて、環式構造を形成していてもよい。この場合、ZおよびZは単一の二座配位の配位子である。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、Lは、一般式(C)および(D)におけるLと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有すると考えてよい。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、R21およびR22は同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれアルキル、好ましくはC〜C30−アルキル、より好ましくはC〜C20−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C20−シクロアルキル、より好ましくはC〜C−シクロアルキル、アルケニル、好ましくはC〜C20−アルケニル、より好ましくはC〜C16−アルケニル、アルキニル、好ましくはC〜C20−アルキニル、より好ましくはC〜C16−アルキニル、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、カルボキシレート、好ましくはC〜C20−カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC〜C20−アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC〜C24−アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C20−アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC〜C30−アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC〜C30−アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC〜C24−アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、上述の置換基は、1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、XおよびXは同一であっても異なっていてもよく、および先に一般式(C)においてXおよびXとして与えられたのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてもよい。
特に好適な触媒は、一般式(K)、(N)および(Q)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲン、特に塩素であり、
およびRが、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ1〜4個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の単環式の基であるか、または2、3、4もしくは5個のそのような5員または6員の単環式の基からなる二環もしくは三環構造であってよく、ここで上述の基のそれぞれが、1個または複数の、アルキル、好ましくはC〜C10−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C−シクロアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜C10−アルコキシ、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、またはヘテロアリール、好ましくはC〜C23ヘテロアリール基によって置換されていてもよく、
21およびR22は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C30−アルキルアミノ、C〜C30−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルフィニルであり、および
Lが、先に、特に式(5a)〜(5f)に既に記載した一般式(4a)または(4b)の構造を有している。
極めて特に好適な触媒は、一般式(K)によって包含され、構造(21)
(式中、
23およびR24は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれH、ハロゲン、直鎖状または分岐状のC〜C20−アルキル、C〜C20−ヘテロアルキル、C〜C10−ハロアルキル、C〜C10−アルコキシ、C〜C24−アリール、好ましくはフェニル、ホルミル、ニトロ、窒素複素環、好ましくはピリジン、ピペリジンおよびピラジン、カルボキシル、アルキルカルボニル、ハロカルボニル、カルバモイル、チオカルバモイル、カルバミド、チオホルミル、アミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルシリル、ならびにトリアルコキシシリルである)
を有するものである。
上述の、C〜C20−アルキル、C〜C20−ヘテロアルキル、C〜C10−ハロアルキル、C〜C10−アルコキシ、C〜C24−アリール基、好ましくはフェニル、ホルミル、ニトロ、窒素複素環、好ましくはピリジン、ピペリジンおよびピラジン、カルボキシル、アルキルカルボニル、ハロカルボニル、カルバモイル、チオカルバモイル、カルバミド、チオホルミル、アミノ、トリアルキルシリル、およびトリアルコキシシリルは、それぞれ1個または複数のハロゲン、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシまたはフェニル基によってさらに置換されていてもよい。
極めて特に好ましいのは、R23およびR24がそれぞれ水素である触媒(「Grubbs III触媒」)である。
やはり極めて特に好ましいのは、構造(22a)または(22b)
の触媒であり、R23およびR24が、水素は除いて、式(21)と同じ定義を有するものである。
一般式(K)、(N)および(Q)で包含される好適な触媒は、下記の構造式(23)〜(34)
を有しており、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
好適なのはさらに、一般構造要素(R1)
(式中、
25〜R32は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルデヒド、ケト、チオール、CF、ニトロ、ニトロソ、シアノ、チオシアノ、イソシアナト、カルボジイミド、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、アミノ、アミド、イミノ、シリル、スルホネート(−SO )、−OSO 、−PO もしくはOPO であるか、またはそれぞれアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、ジアルキルアミノ、アルキルシリル、またはアルコキシシリルであり、ここで、これらの基はすべて、それぞれ、任意選択的に1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよいか、または別の方法として、それぞれの場合において、R25〜R32の群からの2つの直接隣接している基が、それらが結合されている環の炭素原子も含めて、架橋されて、環状の基、好ましくは芳香族系を形成しているか、または別の方法として、Rが、任意選択的にルテニウム−もしくはオスミウム−カルベン錯体触媒の他の配位子と共に架橋されており、
mは、0または1であり、および
Aは、酸素、硫黄、C(R3334)、N−R35、−C(R36)=C(R37)−、−C(R36)(R38)−C(R37)(R39)−であり、ここで、R33〜R39が同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれR25〜R32基と同一の定義を有していてもよい)
を有する触媒(R)であり、ここで「*」で区別した炭素原子は、1個または複数の二重結合を介して、触媒の基本骨格に結合されている。
本発明の触媒は、一般式(R1)の構造要素を有しており、ここで、「*」印で区別した炭素原子は、1個または複数の二重結合を介して触媒の基本骨格に結合されている。「*」印で区別した炭素原子が、2個または複数の二重結合を介して触媒の基本骨格に結合されている場合には、それらの二重結合が集積されるかまたは共役していてもよい。
このタイプの触媒(R)は、欧州特許出願公開第A2 027 920号明細書に記載されている。一般式(R1)の構造要素を有する触媒(R)には、たとえば、以下の一般式(R2a)および(R2b)
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
およびLは、同一であっても異なっていてもよい配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、ここでLが、それに代えて、R基に架橋されていてもよく、
nは、0、1、2または3、好ましくは0、1または2であり、
n’は、1または2、好ましくは1であり、および
25〜R32、m、およびAは、それぞれ一般式(R1)におけると同じ定義を有する)
のそれらが含まれる。
一般式(R2a)の触媒においては、一般式(R1)の構造要素が、1個の二重結合(n=0)または2、3もしくは4個の集積二重結合(n=1、2または3の場合)を介して、錯体触媒の中心金属に結合されている。一般式(R2b)の本発明の触媒においては、一般式(R1)の構造要素が、共役二重結合を介して錯体触媒の金属に結合されている。いずれの場合においても、「*」印で区別した炭素原子の上で錯体触媒の中心金属の方向に二重結合が存在している。
したがって、一般式(R2a)および(R2b)の触媒には、次の一般的構造要素(R3)〜(R9)
が1個または複数の二重結合を介して「」印で区別した炭素原子を介して、一般式(R10a)または(R10b)
(式中、XおよびX、LおよびL、n、n’、およびR25〜R39はそれぞれ、一般式(R2a)および(R2b)で定義されたものである)
の触媒基本骨格に結合されている触媒が含まれる。
典型的には、これらのルテニウム−もしくはオスミウム−カルベン触媒は、五配位である。
一般式(R1)の構造要素において、
15〜R32が同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルデヒド、ケト、チオール、CF、ニトロ、ニトロソ、シアノ、チオシアノ、イソシアナト、カルボジイミド、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、アミノ、アミド、イミノ、シリル、スルホネート(−SO )、−OSO 、−PO もしくはOPO であるか、またはアルキル、好ましくはC〜C20−アルキル、特にはC〜C−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C20−シクロアルキル、特にはC〜C−シクロアルキル、アルケニル、好ましくはC〜C20−アルケニル、アルキニル、好ましくはC〜C20−アルキニル、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、特にはフェニル、カルボキシレート、好ましくはC〜C20−カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC〜C20−アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC〜C24−アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C20−アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC〜C30−アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC〜C30−アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC〜C24−アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルフィニル、ジアルキルアミノ、好ましくはジ(C〜C20−アルキル)アミノ、アルキルシリル、好ましくはC〜C20−アルキルシリル、もしくはアルコキシシリル、好ましくはC〜C20−アルコキシシリル基であり、ここでそれらの基は、任意選択的にそれぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されているか、または別の方法で、R25〜R32の群からの各種の2つの直接隣接している基が、それらが結合されている環の炭素原子を取り込んで、架橋されて、環状の基、好ましくは芳香族系を形成しているか、または別の方法として、Rが、任意選択的にルテニウム−もしくはオスミウム−カルベン錯体触媒の他の配位子と共に架橋されており、
mは、0または1であり、および
Aは、酸素、硫黄、C(R33)(R34)、N−R35、−C(R36)=C(R37)−、または−C(R36)(R38)−C(R37)(R39)−であり、ここで、R33〜R39が同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれR〜R基と同一の好ましい定義を有していてもよい。
一般式(R1)の構造要素中のC〜C−アルキルは、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、およびn−ヘキシルである。
一般式(R1)の構造要素中のC〜C−シクロアルキルは、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルである。
一般式(R1)の構造要素中のC〜C24−アリールには、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基が含まれる。6〜10個の骨格炭素原子を有する好適な単環式、二環式または三環式炭素環芳香族基としては、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが挙げられる。
一般式(R1)の構造要素中のXおよびX基は、一般式(C)の触媒において特定されたのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有している。
一般式(R2a)および(R2b)、ならびに同様の(R10a)および(R10b)においては、そのLおよびL基は、同一であっても異なっていてもよい配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、一般式(C)の触媒において特定されたのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてよい。
一般構造単位(N1)を有する一般式(R2a)または(R2b)の触媒が好ましく、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲンであり、
一般式(R2a)においてnが、0、1または2であるか、または
一般式(R2b)においてn’が1であり、
およびLが、同一であるか、または異なっており、および一般式(R2a)および(R2b)において特定されたのと同じ一般的定義または好ましい定義を有しており、
25〜R32が、同一であるか、または異なっており、および一般式(R2a)および(R2b)において特定されたのと同じ一般的定義または好ましい定義を有しており、
mが、0または1のいずれかであり、
および、m=1の場合には、
Aが、酸素、硫黄、C(C〜C10−アルキル)、−C(C〜C10−アルキル)−C(C〜C10−アルキル)−、−C(C〜C10−アルキル)=C(C〜C10−アルキル)−、または−N(C〜C10−アルキル)である。
一般構造単位(R1)を有する式(R2a)または(R2b)の触媒が特に好ましく、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共に塩素であり、
一般式(R2a)においてnが、0、1もしくは2であるか、または
一般式(R2b)においてn’が1であり、
が、式(5a)〜(5f)のイミダゾリジン基であり、
が、スルホネート化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン基、式(5a)〜(5f)のイミダゾリンまたはイミダゾリジン基、またはホスフィン配位子、特にPPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソプロピル)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、およびP(ネオフェニル)であり、
25〜R32が、一般式(R2a)および(R2b)において特定されたのと同じ、一般的定義または好ましい定義を有しており、
mが、0または1のいずれかであり、
および、m=1の場合には、
Aが、酸素、硫黄、C(C〜C10−アルキル)、−C(C〜C10−アルキル)−C(C〜C10−アルキル)−、−C(C〜C10−アルキル)=C(C〜C10−アルキル)−、または−N(C〜C10−アルキル)である。
25基が、式Rの触媒の他の配位子と架橋されている場合、たとえば一般式(R2a)および(R2b)の触媒の場合においては、これは、以下の一般式(R13a)および(R13b)
(式中、
は、酸素、硫黄、N−R41基、またはP−R41であり(R41は以下において定義されるもの)、
40およびR41は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニル基であって、それらはすべて、それぞれ任意選択的に1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよく、
pは、0または1であり、および
は、p=1のときは、−(CH−(ここでr=1、2または3)、−C(=O)−CH−、−C(=O)−、−N=CH−、−N(H)−C(=O)−であるか、またはそうでなければ、総括的な構造単位「−Y(R40)−(Y−」が、(−N(R40)=CH−CH−)、(−N(R40,R41)=CH−CH−)、であり、
ここで、M、X、X、L、R25〜R32、A、m、およびnが、一般式(R0a)および(R0b)の場合におけるのと同じ定義を有している)
の構造を与える。
一般式(R)の触媒の例としては、以下の構造(35)〜(45)
が挙げられる。
一般式(R)の触媒の調製は、欧州特許出願公開第A2 027 920号明細書からも公知である。
さらに、一般式(T)
(式中、
およびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアニオン性配位子であるか、あるいは炭素−炭素結合および/または炭素−ヘテロ原子結合を介して相互に結合されており、
Yは、O、S、NおよびPから選択される、電荷を有さない2電子供与体であり、
Rは、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリール、カルボキシル(RCO )、シアノ、ニトロ、アミド、アミノ、アミノスルホニル、N−ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミドであり、
およびRはそれぞれ、H、Br、I、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボキシル、アミド、アミノ、ヘテロアリール、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミドであり、
は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、チオカルボニル、またはアミノカルボニルであり、
EWGは、アミノスルホニル、アミドスルホニル、N−ヘテロアリールスルホニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アリールカルボニル、アルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミド、スルホンアミド、塩素、フッ素、H、またはハロアルキルからなる群から選択される電子求引性基であり、および
Lは、炭素−炭素および/または炭素−ヘテロ原子結合を介してXに結合されている、電子供与性配位子である)
に従う触媒も好適である。
一般式(T)のこれらの触媒は、米国特許出願公開第2007/0043180号明細書からも公知である。
好ましいのは、XおよびXが、ハライド、カルボキシレート、およびアリールオキシドの形態である、イオン性配位子から選択されている、一般式(T)の触媒である。XおよびXが共にハライド、特には共にクロリドであるのがより好ましい。一般式(T)において、Yが酸素であるのが好ましい。Rは、好ましくは、H、ハロゲン、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリール、カルボキシル、アミド、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミドである。さらに詳しくは、Rは、H、Cl、F、またはC1〜8アルコキシカルボニル基である。RおよびRは、同一であるか、または異なっており、および好ましくはそれぞれH、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミド基である。さらに詳しくは、RがHまたはアルコキシ基であり、およびRが水素である。一般式(T)において、Rは、好ましくはアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルカルボニル、またはアリールカルボニル基である。より好ましくは、Rが、イソプロピル、sec−ブチル、およびメトキシエチルである。一般式(T)において、EWGは、好ましくは、アミノスルホニル、アミドスルホニル、N−ヘテロアリールスルホニル、アリールスルホニル、アミノカルボニル、アリールスルホニル、アルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロゲン、またはハロアルキル基である。より好ましくは、EWGが、C1〜12N−アルキルアミノスルホニル、C2〜12N−ヘテロアリールスルホニル、C1〜12アミノカルボニル、C6〜12アリールスルホニル、C1〜12アルキルカルボニル、C6〜12アリールカルボニル、C6〜12アリールオキシカルボニル、Cl、F、またはトリフルオロメチル基である。一般式(T)において、Lは、ホスフィン、アミノ、アリールオキシド、カルボキシレート、および複素環式カルベン基(このものは、炭素−炭素および/または炭素−ヘテロ原子結合を介してXに結合されていてもよい)から選択される電子供与性配位子である。
特に好適な触媒は、その中のLが、複素環式カルベン配位子または次の構造:
(式中、
およびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC6〜12アリールであり、および
およびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリール、カルボキシル、シアノ、ニトロ、アミド、アミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、またはスルホンアミドであり、および
およびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC1〜8アルキルまたはC6〜12アリールである)
を有するホスフィン(P(R(R)である、一般式(T)のものである。
好適なのはさらに、一般式(U)
(L (U)
(式中、
は、ロジウム(Rh)またはルテニウム(Ru)であり、
は、ルテニウム(Ru)またはランタニドであり、
ここで、Mがロジウム(Rh)である場合には、Mがルテニウム(Ru)またはランタニドであり、およびMがルテニウム(Ru)である場合には、Mがランタニドであり、
Xは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれH、Cl、またはBrであり、
は、オルガノホスフィン(PR)、ジホスフィン(RP(CHPR)、オルガノアルシン(AsR)、またはその他の窒素、硫黄、酸素原子を含む有機化合物、またはそれらの混合物であり、ここで、R、R、RおよびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC〜Cアルキル、C〜C12シクロアルキル、アリール、C〜C12アラルキル、またはアリールオキシ基であり、
1≦a≦4、
1≦b≦2、
3≦m≦6、および
6≦n≦15である)
の二金属錯体である。
一般式(U)のこれらの触媒は、原理的には、米国特許第A6,084,033号明細書からも公知である。
特に好適な触媒は、その中でMがロジウムであり、およびMがルテニウムである、一般式(U)のそれである。他の特に好適な触媒は、その中でMがランタニド、特にはCeまたはLaである、一般式(U)のものである。一般式(U)の特に好適な触媒においては、Xが、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれHまたはClである。一般式(U)の特に好適な触媒は、その中でLが、以下のものから選択されているものである:トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェノキシホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン、1,4−ジ(ジフェニルホスファノ)ブタン、1,2−ジ(ジフェニルホスファノ)エタン、トリフェニルアルシン、ジブチルフェニルアルシン、ジフェニルエチルアルシン、トリフェニルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルチオエーテル、ジプロピルチオエーテル、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、アセチルアセトン、ジフェニルケトン、およびそれらの混合物。
使用することが可能なさらなる触媒が、以下の文献に記載されている:米国特許第A37 00 637号明細書、独国特許出願公開第A25 39 132号明細書、欧州特許出願公開第A134 023号明細書、独国特許出願公開第A35 41 689号明細書、独国特許第3540918号明細書、欧州特許出願公開第A0 298 386号明細書、独国特許出願公開第A3529252号明細書、独国特許出願公開第A3433 392号明細書、米国特許第A4,464,515号明細書、米国特許第4,503,196号明細書、および欧州特許出願公開第A1 720 920号明細書。
水素化触媒の量:
ニトリルゴムを水素化する場合、水素化触媒は、広い範囲の量で使用することができる。触媒は、水素化されるニトリルゴムを規準にして、典型的には0.001〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%、特には0.05〜0.3重量%の量で使用される。
その他の水素化条件:
水素化の実施は、たとえば米国特許第6,683,136A号明細書に見られるように、当業者には十分に知られていることである。
溶媒:
水素化は、典型的には、溶媒、好ましくは有機溶媒中で実施される。好適な有機溶媒としては、たとえば以下のものが挙げられる:アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、およびジクロロベンゼン。モノクロロベンゼンが特に有用であることが見出され、その理由は、それが、各種のニトリル含量を有するニトリルゴムと、それに対応する製品の水素化ニトリルゴムとの両方に対する良好な溶媒であるからである。
ニトリルゴムの濃度:
水素化のためには、ニトリルゴムは、典型的には、少なくとも1種の溶媒中に溶解される。水素化におけるニトリルゴムの濃度は、一般的には1〜30重量%の範囲、好ましくは5〜25重量%の範囲、より好ましくは7〜20重量%の範囲である。
水素化における圧力は、典型的には0.1bar〜250bar、好ましくは5bar〜200bar、より好ましくは50bar〜150barの範囲内である。その温度は、典型的には0℃〜180℃、好ましくは20℃〜160℃、より好ましくは50℃〜150℃の範囲内である。その反応時間は、一般的には2〜10時間である。
水素化の過程において、使用されたニトリルゴム中に存在していた二重結合は、少なくとも50%、好ましくは70〜100%、より好ましくは80〜100%、さらにより好ましくは90〜100%、特には94.5%超〜100%、特に好ましくは95〜100%の程度にまで水素化される。0〜0.9%の範囲の残存二重結合含量(「RDB」)を有する水素化ニトリルゴムを得ることもまた可能である。水素化は、水素吸収をオンラインで測定するか、またはラマン分光光度法(欧州特許出願公開第A0 897 933号明細書)もしくはIR分光光度法(米国特許第A6,522,408号明細書)によりモニターする。水素化レベルをオフラインで測定するのに好適なIR法についてはさらに、D.Brueckによる記述がある:Kautschuke+Gummi,Kunststoffe,Vol.42、(1989),No.2,p.107−110(part 1)およびKautschuke+Gummi,Kunststoffe,Vol.42、(1989),No.3,p.194−197。
所望の水素化レベルに達したら、反応器を減圧する。残存量の水素は、典型的には、窒素パージで除去する。
溶媒の除去と有機相からの水素化ニトリルゴムの単離を行う前に、水素化触媒を除去することもできるが、必須ではない。ロジウム回収のための好ましいプロセスは、たとえば、米国特許第A4,985,540号明細書に記載されている。
助触媒:
水素化は、助触媒としてのホスフィンまたはジホスフィンを添加して実施することも可能である。後者は、水素化されるニトリルゴムを規準にして、一般的には0.1〜10重量%、好ましくは0.25〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、さらにより好ましくは0.75〜3.5重量%、特には1〜3重量%の量で使用される。
好適なホスフィン助触媒は、一般式(1−a)
(式中、
R’は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアルキル、アルケニル、アルカジエニル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルカジエニル、ハロゲン、またはトリメチルシリルである)
のものであり、および好適なジホスフィン助触媒は、一般式(1−b)
(式中、
R’は、同一であるか、または異なっており、および一般式(1−a)におけるのと同じ定義を有しており、
kは、0または1であり、および
Xは、直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル、アルケンジイル、またはアルキンジイル基である)
のものである。
これら式(1−a)および(1−b)両方におけるR’基は、非置換であっても、あるいは一置換もしくは多置換されていてもよい。
そのような一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンは、当業者に公知の方法で調製することもでき、または市場で購入することもできる。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルキル基は、典型的には直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル基、好ましくはC〜C24−アルキル基、より好ましくはC〜C18−アルキル基を意味していると理解されたい。C〜C18−アルキルとしては、たとえば以下のものが挙げられる:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、およびn−オクタデシル。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルケニル基は、典型的にはC〜C30−アルケニル基、好ましくはC〜C20−アルケニル基を意味していると理解されたい。アルケニル基がビニル基またはアリル基であれば、より好ましい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルカジエニル基は、典型的にはC〜C30−アルカジエニル基、好ましくはC〜C20−アルカジエニル基を意味していると理解されたい。アルカジエニル基が、ブタジエニルまたはペンタジエニルであれば、より好ましい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルコキシ基は、典型的にはC〜C20−アルコキシ基、好ましくはC〜C10−アルコキシ基、より好ましくはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、およびn−ヘキソキシを意味していると理解されたい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアリール基は、典型的にはC〜C24−アリール基、好ましくはC〜C14−アリール基、より好ましくはC〜C12−アリール基を意味していると理解されたい。C〜C24−アリールの例は、フェニル、o−、p−もしくはm−トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル、およびフルオレニルである。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’’基中のヘテロアリール基は、アリール基について先に挙げたのと同じ定義を有するが、ただし、骨格炭素原子の1個または複数が、窒素、硫黄および酸素の群から選択されるヘテロ原子によって置換されている。そのようなヘテロアリール基の例としては、ピリジニル、オキサゾリル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、およびキノリニルが挙げられる。
上述のアルキル、アルケニル、アルカジエニル、およびアルコキシ基はすべて、非置換であっても、あるいはたとえば以下のものによって一置換もしくは多置換されていてもよい:C〜C24−アリール基、好ましくはフェニル(アルキル基の場合においては、その結果、たとえばアリールアルキル、好ましくはフェニルアルキル基となる)、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素、CN、OH、NHもしくはNR’’基(ここでR’’は、さらにC〜C30−アルキルまたはC〜C24−アリールである)。
それらのアリール基およびヘテロアリール基はいずれも、非置換であるか、あるいはたとえば以下のものによって一置換もしくは多置換されている:直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル(その結果、いわゆるアルキルアリール基となる)、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素、スルホネート(SONa)、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルコキシ、好ましくはメトキシもしくはエトキシ、ヒドロキシル、NHもしくはN(R’’)基(ここで、R’’はさらに、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキルまたはC〜C24−アリールである)、またはさらなるC〜C24−アリールもしくは−ヘテロアリール基(その結果、ビスアリール基、好ましくはビフェニルもしくはビナフチル、ヘテロアリールアリール基、アリールヘテロアリール基、またはビスヘテロアリール基となる)。これらのC〜C24−アリールもしくは−ヘテロアリール置換基もまた、非置換であるか、あるいはすべての上記の置換基によって一置換もしくは多置換されている。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のシクロアルキル基は、典型的にはC〜C20−シクロアルキル基、好ましくはC〜C−シクロアルキル基、より好ましくはシクロペンチルおよびシクロヘキシルを意味していると理解されたい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のシクロアルケニル基は、同一であるかまたは異なっており、および環の骨格に1個のC=C二重結合を有しており、典型的にはC〜Cシクロアルケニル、好ましくはシクロペンテニルおよびシクロヘキセニルである。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のシクロアルカジエニル基は、同一であるかまたは異なっており、および環の骨格に2個のC=C二重結合を有しており、典型的にはC〜Cシクロアルカジエニル、好ましくはシクロペンタジエニルおよびシクロヘキサジエニルである。
上述のシクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルカジエニル基もまた、非置換であるか、あるいはたとえば以下のものによって一置換もしくは多置換されている:直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル(その結果は、いわゆるアルキルアリール基である)、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素、もしくは臭素、スルホネート(SONa)、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルコキシ、好ましくはメトキシもしくはエトキシ、ヒドロキシル、NHもしくはNR’’基(ここで、R’’はさらに、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキルもしくはC〜C24−アリールであるか、またはC〜C24−アリールもしくは−ヘテロアリール基によって置換されており、それらはさらに、非置換であるか、またはすべての上述の置換基によって一置換もしくは多置換されている)。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のハロゲン基は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれフッ素、塩素、または臭素である。
一般式(1−a)の特に好ましいホスフィンは、以下のものである:トリアルキル−、トリシクロアルキル−、トリアリール−、トリアルクアリール−、トリアラルキル−、ジアリールモノアルキル−、ジアリールモノシクロアルキル−、ジアルキルモノアリール−、ジアルキルモノシクロアルキル−、またはジシクロアルキルモノアリールホスフィン(ここで、上述の基はさらに、非置換であるか、または上述の置換基によって一置換もしくは多置換されている)。
特に好ましいホスフィンは、その中のR’基が同一であるか、または異なっており、およびそれぞれフェニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、フェニルスルホネート、またはシクロヘキシルスルホネートである、一般式(1−a)のものである。
使用される一般式(1−a)の最も好ましいホスフィンは、以下のものである:PPh3、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(iso−Pr)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、P(CCH)(C、P(NCCHCH(C)、P[(CHC]Cl、P[(CHC](CH)、P(tert−Bu)(biph)、P(C11Cl、P(CH)(OCHCH、P(CH=CHCH、P(CO)、P(CHOH)、P(m−CHOC、P(C、P[(CHSi]、P[(CHO)(ここで、Phはフェニルであり、Tolはトリルであり、biphはビフェニルであり、Buはブチルであり、およびPrはプロピルである)。トリフェニルホスフィンが特に好ましい。
一般式(1−b)のジホスフィンにおいて、kは0または1、好ましくは1である。
一般式(1−b)のXは、以下のものである:直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル、アルケンジイル、またはアルキンジイル基、好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜C20−アルカンジイル、C〜C20−アルケンジイル、またはC〜C20−アルキンジイル基、より好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルカンジイル、C〜C−アルケンジイル、またはC〜C−アルキンジイル基。
〜C−アルカンジイルは、1〜8個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル基である。特に好ましいのは、1〜6個の炭素原子、特には2〜4個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル基である。好ましいのは、メチレン、エチレン、プロピレン、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−2,4−ジイル、ペンタン−2,4−ジイル、および2−メチルペンタン−2,4−ジイルである。
〜C−アルケンジイルは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルケンジイル基である。好ましいのは、2〜4、より好ましくは2または3の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状のアルケンジイル基である。好ましい例としては以下のものが挙げられる:ビニレン、アリレン、プロペ−1−エン−1,2−ジイル、およびブテ−2−エン−1,4−ジイル。
〜C−アルキンジイルは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキンジイル基である。好ましいのは、2〜4、より好ましくは2または3の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状のアルキンジイル基である。好ましい例としては以下のものが挙げられる:エチンジイル、およびプロピンジイル。
一般式(1−b)の特に好ましいジホスフィンは、以下のものである:ClPCHCHPCl、(C11PCHP(C11)、(CHPCHCHP(CH、(CPCCP(C、(CPCH=CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CPCH(CH)CH(CH)P(C、および(CPCH(CH)CHP(C
本発明においても同様に使用しうる具体的なジホスフィンは、Chem.Eur.J.,2008,14,9491−9494でも公表されている。例として以下のものが挙げられる。
本発明におけるプロセスにおける水素化を、ホスフィンまたはジホスフィンを添加して実施する場合、それらは、水素化されるニトリルゴムを規準にして、典型的には0.1〜10重量%、好ましくは0.25〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、さらにより好ましくは0.75〜3.5重量%、特には1〜3重量%の量で使用される。
試行され、信頼される方法では、ホスフィンまたはジホスフィンは、水素化触媒の1当量を規準にして、0.1〜10当量の範囲、好ましくは0.2〜5当量の範囲、より好ましくは0.3〜3当量の範囲の量で使用される。
添加されるホスフィンまたはジホスフィンの、水素化触媒に対する重量比は、典型的には(1〜100):1、好ましくは(3〜30):1、特には(5〜15):1である。
水素化の前に、ニトリルゴムの分子量を低下させる目的で、ニトリルゴムをメタセシス反応にかけておくこともまた可能である。ニトリルゴムのメタセシスは、当業者には十分に知られていることである。メタセシスを実施する場合には、それに続く水素化反応をインサイチューで、すなわち、前もってメタセシス分解を実施したのと同一の反応混合物中で、分子量を低下させたニトリルゴムを単離する必要もなく、実施することも可能である。その水素化触媒は、反応容器中に単に添加する。
水素化後では、乾式仕上げ、好ましくはローラー乾燥プロセスもしくはスクリュープロセスによるか、または湿式仕上げ、好ましくは水蒸気蒸留によって、溶媒を除去する。
乾式仕上げプロセスとしては、たとえば、独国特許第4032598号明細書に記載されているローラー乾燥プロセス、および国際公開第A2011/023763号パンフレットおよび欧州特許出願公開第A2368917号明細書に記載されているスクリュープロセスがある。
水蒸気蒸留による湿式仕上げもまた、水素化において使用された溶媒を除去するには適している。水蒸気蒸留による溶媒除去の場合においては、その中で得られたゴムを、クラムの水性分散体から、篩、たとえば撹拌篩(agitated sieve)または曲線篩(curved sieve)で除去し、次いで、機械的に脱水してから乾燥させる。水で湿ったゴムクラムを機械的に脱水するのに好適な装置としては、スクリューユニット、たとえばストレーナーもしくはエクスペラースクリューが挙げられる。それに続く加熱乾燥は、エクスパンダースクリュー中、または流動床乾燥機、ベルト乾燥機もしくはその他適切な乾燥機で実施することができる。1つの可能な水蒸気蒸留の例は、同一出願人による、依然として未公開の出願に記載されている。
仕上げ操作においては、使用した一般式(II)のフェノールの90〜100%が、そのゴム中に残っている。
1つの具体的な実施形態においては、乾燥状態にある本発明の完全にもしくは部分的に水素化されたニトリルゴムには、1.0重量%未満の揮発性画分のみが含まれ、この場合、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールは、水素化されたニトリルゴムを基準にして、0.1重量%〜0.25重量%の範囲内の量で存在している。
加硫可能な混合物:
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明の水素化ニトリルゴムおよび少なくとも1種の架橋系を含む、加硫可能な混合物も提供する。これらの加硫可能な混合物は、好ましくは、1種または複数のさらなる典型的なゴム添加剤をさらに含んでいてもよい。
これらの加硫可能な混合物は、少なくとも1種の本発明の水素化ニトリルゴム(i)を、少なくとも1種の架橋系(ii)および任意選択的に1種または複数のさらなる添加剤と混合することによって製造する。
その架橋系には、少なくとも1種の架橋剤と、任意選択的に1種または複数の架橋促進剤とが含まれる。
典型的には、本発明の水素化ニトリルゴムを、全部の選択された添加剤と最初に混合し、少なくとも1種の架橋剤および任意選択的に架橋促進剤からなる架橋系は、最後に混ぜ込む。
これらの加硫可能な混合物は、少なくとも1種の本発明の水素化ニトリルゴムと少なくとも1種の架橋剤とを混合することにより調製される。1種または複数の充填剤および/または1種もしくは複数のさらなる添加剤を使用する場合には、これらもまた混ぜ込む。
有用な架橋剤としては、たとえば、以下のものが挙げられる:ペルオキシド系架橋剤たとえば、ビス(2,4−ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブテン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン。
それらのペルオキシド系架橋剤と同様にして、架橋収率を向上させるのに役立つ可能性がある、さらなる添加物を使用するのも有利となりうる。それらの好適な例としては、以下のものが挙げられる:トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、1,2−ポリブタジエン、またはN,N’−m−フェニレンジマレイミド。
その架橋剤の全量は、未水素化であるかまたは完全にもしくは部分的に水素化されたニトリルゴムを基準にして、典型的には1〜20phrの範囲、好ましくは1.5〜15phrの範囲、より好ましくは2〜10phrの範囲である。
使用される架橋剤はさらに、元素状の可用性もしくは不溶性の形態である硫黄か、または硫黄供与体であってもよい。
有用な硫黄供与体としては、たとえば以下のものを挙げることができる:ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、およびテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)。
本発明の、水素化されていないかまたは完全にもしくは部分的に水素化されたニトリルゴムの硫黄加硫における架橋収率の向上に役立つ可能性があるさらなる添加物を使用することもまた可能である。原理的には、その架橋は、硫黄または硫黄供与体を単独で用いて実施することも可能である。
それとは逆に、本発明の、水素化されていないかまたは完全にもしくは部分的に水素化されたニトリルゴムの架橋を、上述の添加物を存在させるだけで、すなわち元素状の硫黄または硫黄供与体を添加せずに、実施することもまた可能である。
架橋収率を向上させるのに役立つ可能性がある好適な添加物としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジチオカルバミン酸塩、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲン酸塩、グアニジン誘導体、カプロラクタム、およびチオ尿素誘導体。
使用されるジチオカルバミン酸塩は、たとえば以下のものであってよい:ジメチルジチオカルバミン酸アンモニウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(Z5MC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、およびジイソノニルジチオカルバミン酸亜鉛。
使用されるチウラムは、たとえば以下のものであってよい:テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、またはテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)。
使用されるチアゾールは、たとえば以下のものであってよい:2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、亜鉛メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT)、および銅2−メルカプトベンゾチアゾール。
使用されるスルフェンアミド誘導体は、たとえば以下のものであってよい:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(DCBS)、2−モルホリノチオベンゾチアゾール(MBS)、N−オキシジエチレンチオカルバミル−N−tert−ブチルスルフェンアミド、またはオキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシエチレンスルフェンアミド。
使用されるキサントゲン酸塩は、たとえば以下のものであってよい:ジブチルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルジブチルキサントゲン酸亜鉛、またはジブチルキサントゲン酸亜鉛。
使用されるグアニジン誘導体は、たとえば以下のものであってよい:ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)、またはo−トリルビグアニジエン(OTBG)。
使用されるジチオホスフェートは、たとえば以下のものであってよい:ジ(C〜C16)アルキルジチオリン酸亜鉛、ジ(C〜C16)アルキルジチオリン酸銅、およびジチオホスフォリルポリスルフィド。
使用されるカプロラクタムは、たとえば、ジチオビスカプロラクタムであってよい。
使用されるチオ尿素誘導体は、たとえば以下のものであってよい:N,N’−ジフェニルチオ尿素(DPTU)、ジエチルチオ尿素(DETU)、およびエチレンチオ尿素(ETU)。同様に添加物として好適なものとしては、たとえば以下のものが挙げられる:亜鉛ジアミノジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、および環状ジスルファン。
上述の添加物および架橋剤は、個別に使用しても、あるいは混合物として使用してもよい。ニトリルゴムを架橋させるためには、以下の物質を使用するのが好ましい:硫黄、2−メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジモルホリルジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、およびジチオビスカプロラクタム。
架橋剤および上述の添加物はそれぞれ約0.05〜10phr、好ましくは0.1〜8phr、特には0.5〜5phrの量で使用することができる(単一使用量、それぞれの場合において、活性物質基準)。
硫黄架橋の場合においては、架橋剤と上述の添加物に加えて、たとえば以下に挙げるさらなる無機物質または有機物質を使用することも同様に可能である:酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉛、酸化マグネシウム、飽和もしくは不飽和の有機脂肪酸およびそれらの亜鉛塩、ポリアルコール、アミノアルコールたとえば、トリエタノールアミン、およびアミン、たとえば、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルエチルアミン、およびポリエーテルアミン。
本発明の水素化ニトリルゴムが、カルボキシル基を含む1種または複数のターモノマーの繰り返し単位を含むものであるならば、架橋は、好ましくは架橋加硫促進剤の存在下、ポリアミン架橋剤を使用することにより、実施することも可能である。ポリアミン架橋剤には限定はないが、ただし、それは、(1)2個以上のアミノ基を含む化合物(任意選択的に塩の形態)、または(2)架橋反応の際にインサイチューで2個以上のアミノ基を含む化合物を形成する化学種のいずれかである。その中で少なくとも2個の水素原子がアミノ基で置換されているか、そうでなければヒドラジド構造(後者は、「−C(=O)NHNH」の構造である)で置換されている、脂肪族または芳香族炭化水素化合物を使用するのが好ましい。
そのようなポリアミン架橋剤(ii)は以下のものである:
・ 脂肪族ポリアミン、好ましくはヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタアミン、ヘキサメチレンジアミン−シンナムアルデヒドアダクト、またはヘキサメチレンジアミンジベンゾエート;
・ 芳香族ポリアミン、好ましくは2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、または4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン);
・ 少なくとも2つのヒドラジド構造を有する化合物、好ましくはイソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、またはセバシン酸ジヒドラジド。
特に好ましいのは、ヘキサメチレンジアミン、およびヘキサメチレンジアミンカルバメートである。
加硫可能な混合物中におけるポリアミン架橋剤の量は、100重量部の水素化ニトリルゴムを基準にして、典型的には0.2〜20重量部の範囲、好ましくは1〜15重量部の範囲、より好ましくは1.5〜10重量部の範囲である。
ポリアミン架橋剤と組み合わせて使用される架橋加硫促進剤は、当業者には公知のいかなるものであってもよく、好ましくは塩基性の架橋加硫促進剤である。使用可能な例としては、以下のものが挙げられる:テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)、o−トリルビグアニジン、およびジカテコールホウ酸のジ−o−トリルグアニジン塩。さらに使用可能なのは、アルデヒドアミン架橋促進剤、たとえばn−ブチルアルデヒドアニリンである。使用される架橋促進剤はいずれも、少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン性塩基であるのがより好ましい。それらは、当業者には公知である。次のものが特に好適である:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)。
この場合における架橋性加硫促進剤の量は、100重量部の水素化ニトリルゴムを基準にして、典型的には0.5〜10重量部、好ましくは1〜7.5重量部、特には2〜5重量部の範囲内である。
本発明の水素化ニトリルゴムをベースとする加硫可能な混合物は、原理的には、スコーチ抑制剤が含まれていてもよく、それらは、硫黄を用いた加硫の場合とペルオキシドを用いた加硫の場合とでは異なる。
硫黄を用いた加硫の場合には、次のものが使用される:シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、無水フタル酸(PTA)、およびジフェニルニトロソアミン。好ましいのは、シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)である。
ペルオキシドを用いた加硫の場合には、国際公開第A97/01597号パンフレットおよび米国特許第A4,857,571号明細書に記載されている化合物を使用して、スコーチを抑制する。立体障害p−ジアルキルアミノフェノール、特には、Ethanox 703(Sartomer製)が好ましい。
慣用されるさらなるゴム添加剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:当業者には公知の典型的な物質、たとえば充填剤、充填剤活性化剤、オゾン劣化防止剤、老化安定剤、抗酸化剤、加工助剤、エキステンダーオイル、可塑剤、補強材、および離型剤。
使用される充填剤は、たとえば以下のものであってよい:カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、Teflon(後者は粉体の形状にあるのが好ましい)、またはケイ酸塩。充填剤は、100重量部の水素化ニトリルゴムを規準にして、典型的には5〜350重量部、好ましくは5〜300重量部の範囲の量で使用される。
有用な充填剤活性化剤としては、特に、たとえば以下のものが挙げられる:ビス(トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド)、ビス(トリエトキシシリルプロピルジスルフィド)、ビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、または(オクタデシル)メチルジメトキシシラン。さらなる充填剤活性化剤としては、たとえば、トリエタノールアミンおよび74〜10000g/molの分子量を有するエチレングリコールなどの界面活性物質が挙げられる。充填剤活性化剤の量は典型的には、ニトリルゴム100phrを基準にして、0〜10phrである。
有用な離型剤の例としては以下のものが挙げられる:飽和または部分不飽和の脂肪酸およびオレイン酸、ならびにそれらの誘導体(脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪族アルコール、脂肪酸アミド)(それらは、混合物成分として使用するのが好ましい)、およびさらには、金型表面に適用することが可能な製品、たとえば低分子量シリコーン化合物をベースとする製品、フルオロポリマーをベースとする製品、およびフェノール樹脂をベースとする製品。
離型剤は、混合物の一成分として、ニトリルゴムの100phrを基準にして、約0〜10phr、好ましくは0.5〜5phrの量で使用される。
その他の可能性としては、米国特許第A−4,826,721号明細書の教示に従った、ガラス製の強化材(繊維)を用いた補強が挙げられ、またそれとは別に、脂肪族および芳香族ポリアミド(Nylon(登録商標)、Aramid(登録商標))、ポリエステル、および天然繊維製品から製造したコード、織布、繊維による補強も挙げられる。
加硫可能な混合物の製造を目的とした成分の混合は、典型的には、インターナルミキサー中、またはローラー上で実施される。使用されるインターナルミキサーは、典型的には、「かみ合い方式(intermeshing)」のローター形状と呼ばれているものを備えたものである。開始時点で、本発明のニトリルゴムをインターナルミキサーに仕込む。このものは、典型的にはベールの形態であり、この場合、最初に微粉砕される。適切な時間(これは、当業者が容易に決めることができる)の後、添加剤を添加し、典型的には最後に架橋系を添加する。その混合は温度制御下で実施するが、ただし、混合物が、100〜150℃の範囲の温度に適切な時間滞留するようにする。適切な混合時間の後に、インターナルミキサーのガス抜きをし、シャフトをきれいにする。さらなる時間の後に、インターナルミキサーを空にして、加硫可能な混合物を得る。上述の時間はすべて、典型的には数分の範囲であり、当業者であれ製造する混合物に合わせて問題なく決めることができる。混合ユニットとしてローラーを使用するのであれば、同様の方法および順序で、計量仕込みを進行させることが可能である。
本発明はさらに、本発明の水素化ニトリルゴムをベースとする加硫物を製造するためのプロセスも提供し、それが特徴としているのは、本発明の水素化ニトリルゴムを含む加硫可能な混合物を加硫にかけることである。加硫は、典型的には100℃〜200℃の範囲の温度、好ましくは120℃〜190℃、最も好ましくは130℃〜180℃の温度で実施する。
成形プロセスの際に加硫を行わせるのが好ましい。
この目的のためには、押出機、射出成形系、ローラーまたはカレンダーによって、加硫可能な混合物をさらに加工する。次いで、そのようにして得ることが可能な予備成形した物質を、典型的には、プレス、オートクレーブ、加熱空気系、または自動マット加硫系(automatic mat vulcanization system)と呼ばれる系の中で完全に加硫させ、そこでの有用な温度は、120℃〜200℃、好ましくは140℃〜190℃の範囲であることが見いだされた。その加硫時間は、典型的には1分〜24時間、好ましくは2分〜1時間である。加硫物の形状およびサイズによっては、完全な加硫を得るために、さらなる加硫が必要になることもある。
したがって、本発明は、本発明の水素化ニトリルゴムをベースとする、そのようにして得ることが可能な加硫物も提供する。それらの加硫物は、伝動ベルト、ローラーカバー、シール、キャップ、ストッパー、ホース、床仕上材、シーリングマット、またはシート、形材もしくは膜の形状をとることができる。さらに詳しくは、それらの加硫物は、以下のものであってよい:O−リングシール、フラットシール、シャフトシーリングリング、ガスケットスリーブ、シーリングキャップ、ダスト保護キャップ、コネクターシール、断熱ホース(添加PVCの存在下または非存在下)、オイルクーラーホース、空気吸込ホース、パワーステアリングホース、靴底もしくはその部分(または部品)、またはポンプの膜。
I.分析測定法
ニトリルゴム中または水素化ニトリルゴム中の2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(Vulkanox(登録商標)KB)の定量的な測定は、内部標準(ナフタレン)を使用したガスクロマトグラフィーにより実施する。測定のためには、3〜5gのポリマー(測定精度、0.01g)を、密閉可能なErlenmeyerフラスコ内で40mLのトルエン/THF混合物(容積比、1:1)中に撹拌しながら溶解させる。(5mLのトルエンに溶解させた)20.0mgの内部標準としてのナフタレンを、その溶液に添加し、撹拌によって均質に分散させる。80mLのメタノールを添加することにより、ポリマーを沈殿させる。そのセラムをガスクロマトグラフィー(Agilent Technologies(Waldbronn,Germany)、機器:6890)により分析し、機器の設定条件は次の通りである:
キャピラリーカラム:HP−5、長さ:30m;内径0.32mm;膜厚:0.25μm
注入量:1μL
注入温度:320℃
オーブン温度プログラム:100℃、加熱速度:10℃/分、300℃まで
検出器温度:300℃。
これらの条件下では、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールでは3.4分の保持時間、ナフタレンでは6.44分の保持時間であることが見出された。
同じ条件下での独立した測定において、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの含量を計算するための基準として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールのナフタレンに対する相対的な応答比を測定する。
ニトリルゴム中の2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(Vulkanox(登録商標)BKF)の定量的な測定は、内部標準(n−ドコサン)を使用したガスクロマトグラフィーで実施する。測定のためには、3〜5gのポリマー(測定精度、0.01g)を、密閉可能なErlenmeyerフラスコ内で40mLのトルエン/THF混合物(容積比、1:1)中に撹拌しながら溶解させる。(5mLのトルエンに溶解させた)50.0mgの内部標準としてのn−ドコサンを、その溶液に添加し、撹拌によって均質に分散させる。80mLのメタノールを添加することにより、ポリマーを沈殿させる。そのセラムをガスクロマトグラフィー(Agilent Technologies(Waldbronn,Germany)、機器:6890)により分析し、機器の設定条件は次の通りである:
キャピラリーカラム:HP−5、長さ:30m;内径0.32mm;膜厚:0.25μm
注入量:1μL
注入温度:320℃
オーブン温度プログラム:240℃、10分、加熱速度:20℃/分、300℃まで
検出器温度:300℃。
これらの条件下では、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)では5.96分の保持時間、n−ドコサンでは3.70分の保持時間であることが見出された。
同じ条件下での独立した測定において、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の含量を計算するための基準として、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)のn−ドコサンに対する相対的な応答比を測定する。
水素化ニトリルゴム中のトリフェニルホスフィン含量は、内部標準を用いたガスクロマトグラフィーによって測定した。その測定のためには、それぞれの場合において、2〜3g±0.01gの水素化ニトリルゴムを小型の試験管内に秤込み、25mLのアセトンを用いて溶解させ、既知量の内部標準(ドコサン、Sigma−Aldrich製;CA:629−97−0)を添加し、完全に混合してから、50mLのメタノールを添加することにより希釈して、沈殿させた。キャピラリーカラム(たとえば:HP−5、0.25μm膜、30m×0.32mmID)を使用したガスクロマトグラフィーにより、その沈殿の上澄みを分離させた。
注入量:1μL
注入温度:300℃
オーブン温度プログラム:150℃、10分>300℃、5分
検出器温度:300℃
検出には、フレームイオン化検出器(FID)を使用した。
与えられた条件下では、トリフェニルホスフィンおよび内部標準は、以下の保持時間を有している。
トリフェニルホスフィン:8.47分
ドコサン:8.65分
水素化ニトリルゴム中に存在しているトリフェニルホスフィン(TPP)の量を定量的に測定するには、TPP/n−ドコサンのための応答関数を使用し、それは独立した測定で求めた。
揮発性画分は、ISO 248、4th editon,version 15.06.2005に従って求めた。
II.NBRの製造
II.1.乳化重合
下記の表1に示した配合に基づいて、NBRラテックスを製造した。すべての供給原料は、100重量部のモノマー混合物を基準にした重量部で表されている。重合は、温度20℃で7時間かけて実施し、74%の重合転化率が得られた。
表1では、分子量を調節するために使用したt−DDM6)に2つの数値を与えているが、その理由は、全量を一度に計量仕込みしなかったからである。第一の半量を重合開始前に反応器に仕込み、その後、第二の半量を、転化率が15%になったところで計量仕込みした。
NBRラテックスは、2mの撹拌オートクレーブでバッチ式で製造した。バッチあたり350kgのモノマー混合物および全量で700kgの水を使用した。オートクレーブには、最初に、600kgの量の水中の乳化剤のErkantol(登録商標)BXG(9.8kg)、Baykanol(登録商標)PQ(2.94kg)およびココヤシ脂肪酸のカリウム塩(1.96kg)を180gの水酸化カリウムと共に仕込み、窒素気流を用いてパージした。窒素パージが終了した後、反応器に、脱安定化させたモノマー(196kgのブタジエンおよび154kgのアクリロニトリル)およびt−DDM重合調節剤の一部(1.16kg)を添加した。その後で、反応器を閉じた。残りの量の水(100kg)を使用して、トリス(α−ヒドロキシエチル)アミン、ペルオキソ二硫酸カリウムの水溶液、および重合停止剤溶液を製造した。950gのペルオキソ二硫酸カリウム(表1によれば0.27重量部に相当)および530gのトリス(α−ヒドロキシエチル)アミン(表1によれば0.15重量部に相当)の水溶液を添加することによって、重合が20℃で開始され、全重合時間の間、この温度を維持した。転化率を重量分析することにより、重合の進行をモニターした。重合転化率が15%になったところで、さらなる1.16kgのt−DDM重合調節剤(表1に記載の0.33重量部に相当)を計量仕込みした。74%の転化率に達したところで(7時間)、亜ジチオン酸ナトリウム/N,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)および水酸化カリウムの水溶液を添加することによって、重合を停止させた。水蒸気蒸留によって、未転化モノマーおよびその他の揮発性成分を除去した。
重合後では、そのラテックスは以下の物性を有していた(表2)。
II.2.NBRラテックスの安定化および仕上げ(以後において、水素化に使用 − 表5参照)
凝集させる前に、それぞれのラテックス25kgを、4−メチル−2,6−tert−ブチルフェノール(Vulkanox(登録商標)KB、Lanxess Deutschland GmbH製)、または2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(Vulkanox(登録商標)BKF、Lanxess Deutschland GmbH製)と混合した。この目的のためには、Vulkanox(登録商標)KBまたはVulkanox(登録商標)BKFの水中50%分散体を使用した。
Vulkanox(登録商標)KBまたはVulkanox(登録商標)BKFの水性分散体は、以下の配合に基づき、Ultraturraxを利用して95〜98℃で調製した。
360g:脱イオン水(DW水)
40g:アルキルフェノールポリグリコールエーテル(NP(登録商標)10乳化剤、Lanxess Deutschland GmbH製)
400g:Vulkanox(登録商標)KBまたはVulkanox(登録商標)BKF、Lanxess Deutschland GmbH製
4−メチル−2,6−tert−ブチルフェノールまたは2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の添加は、ラテックス中に存在している固形分を基準にして、重量%で表した。
各種の実施例で使用した老化安定剤およびその量の概略を表3に示す。
表3に示した実施例のラテックスの凝集は、それぞれのラテックス25kgを対象に実施して、固形分を得た。この目的のためには、容量100Lの撹拌可能な解放容器を使用した。この容器に、最初にラテックスを仕込み、撹拌しながら加熱して90℃とし、20%の塩化ナトリウム水溶液を撹拌しながら徐々に加えて凝集を起こさせた。ラテックスを凝集させるために使用した塩化ナトリウム溶液は、通常の水道水(脱イオン化なし、従ってカルシウムイオンを含む)を用いて作成した。凝集のためには、それぞれの場合において、固形分を基準にして20重量%の塩化ナトリウムを使用した。
クラムの洗浄のために、その凝集容器に入口と出口とを備えた。その容器の内側に2本のレールを取り付け、篩(メッシュサイズ2mm)によって、洗浄を実施する前に出口をふさぐことができるようにして、洗浄操作の際に凝集したゴムクラムが流れ出ないようにした。実施例においては、ラテックスの凝集で得られたラテックスの上澄みは、洗浄の開始まで、その凝集容器から取り出さなかった。換言すれば、そのラテックス上澄みは、希釈洗浄によって除去した。その洗浄は、通常の水道水(脱イオン化なし、従ってカルシウムイオンを含む)を用いて実施し、60℃で、通水量は一定で、200L/時間とした。
洗浄が終了した後、篩を用いてゴムクラムを取り出し、ウェルディングスクリューで機械的脱水にかけて残存水分含量10〜15重量%とし、真空乾燥キャビネット中70℃でバッチ式の加熱乾燥をさせて、残存水分含量を1.5重量%未満とした。
乾燥後のニトリルゴム中に存在している老化安定剤の含量を、表4にまとめる。
III.水素化ニトリルゴムの製造
III.1.ニトリルゴムの水素化
その水素化は、以下の境界条件下で実施した。
NBR濃度:11.8重量%
水素圧:80bar
撹拌速度:600min−1
温度:120〜130℃
トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(Evonik Degussa):0.08重量%
トリフェニルホスフィン(BASF):表5参照
2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール):表5参照
それぞれの水素化においては、40Lのオートクレーブ中で、セクションII.2の記載に従って製造したニトリルゴム4.0kgを29.50kgのクロロベンゼンに溶解させた。水素化の前に、ポリマー溶液を、撹拌しながら、連続的に窒素(20bar)を用いて1回、および水素(20bar)を用いて2回接触させてから、減圧した。その反応混合物を加熱して120℃とし、80barの水素と接触させた。次の工程において、ニトリルゴムに対して、トリフェニルホスフィン助触媒を、250gのクロロベンゼン中の溶液として反応器内に計量仕込みし、本発明実施例2および3においては、そのトリフェニルホスフィン含有溶液にVulkanox(登録商標)BKFがさらに含まれていた(表5)。(250gのクロロベンゼンに溶解させた)トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリドを添加することによって、水素化を開始させた。反応の減退を伴いながら、内部温度は徐々に上昇して130℃となった。水素化の過程は、Kautschuk+Gummi.Kunststoffe,vol.42(1989),no.3,p.194−197に記載の方法に従って、IR分光光度法により追跡した。水素化はそれぞれ、表5に記載の反応時間の後、残存二重結合含量が1%未満に達したところで、冷却により停止させた。次いで、そのバッチを減圧した。窒素を通過させることによって、残存している量の水素は除去した。
トリフェニルホスフィンを0.8phrから3.0phrへと増加させると、水素化速度が増大することが表5から明らかになった(非本発明実施例5〜8)。本発明実施例1および2と実施例5との比較、ならびに本発明実施例3および4と実施6との比較から、本発明により、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(Vulkanox(登録商標)BKF(Lanxess Deutschland GmbH製)を添加すると、水素化において使用されたトリフェニルホスフィンの量(0.8または1.0重量%)とは無関係に、水素化速度がかなり加速されることが明らかになった。2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)が水素化バッチに、ニトリルゴムと同時に添加されるか(本発明実施例1および4)または別途に添加されるか(本発明実施例2および3)は、大きな問題ではない。
III.2.HNBRのクロロベンゼン中溶液の仕上げ
上のIII.1に記述した水素化からの実施例1〜8の水素化ニトリルゴムの、クロロベンゼン溶液からの単離は、事前にロジウムを除去することなく、水蒸気蒸留によって実施した。水蒸気蒸留のためには、撹拌可能な、ジャケット加熱つきの20Lガラスフランジ容器を使用した。スチームは、底部のバルブからフィードした。さらに、そのストリッピング容器には、HNBRのクロロベンゼン中溶液に、カルボキシル基を含む水溶性ポリマー(Orotan(登録商標)、Rohm and Haas製)の2%水溶液、2%塩化カルシウム水溶液、および希水酸化ナトリウム溶液(0.5%)を連続的に計量添加するための器具が備わっていた。
ストリッピング容器には最初に8.5Lの脱イオン水を仕込み、ジャケット加熱によって98〜100℃に加熱した。スチームの導入を開始してから、撹拌速度2000rpmで、水素化ニトリルゴムの95〜100℃に加熱したクロロベンゼン溶液(0.5kgのHNBR/時間)と、Orotan(登録商標)および塩化カルシウムの水溶液とを、別々に計量添加した。Orotan(登録商標)および塩化カルシウムの計量添加速度は、いずれの場合においても、そのストリッピング容器内に存在している水素化ニトリルゴム量の100重量部を基準にして、いずれの時点でも0.3重量部のOrotan(登録商標)および0.15重量部の塩化カルシウムが存在しているように調節した。さらに、希水酸化ナトリウム溶液(0.5%)を添加することによって、そのストリッピングプロセス全体にわたって、その水相のpHを7.7〜8.3のpH範囲内に維持した。クロロベンゼンおよび水蒸気からなる気相を、大気圧、98〜100℃で留出させ、凝縮させた。ストリッピング容器内に1.5kgのHNBRが存在するようになったら、直ちにHNBR溶液の計量添加を終了させた。その後、水蒸気蒸留をさらに0.5時間継続した。水蒸気蒸留が終了した後では、水素化ニトリルゴムは、水性分散体中に直径範囲3〜10mmのゴムクラムの形態で存在していた。フランジ容器を開けた後、篩網によりゴムクラムを抜き出した。残存している水は、ドリップ−乾燥およびスクイージング(sqeezing)により機械的に除去した。残存水分は、15〜20重量%の間であった。
次いで、その水で湿ったHNBRクラムの乾燥を、6Lの容積を有する流動床乾燥機(TG 200高速乾燥機、Kurt Retsch(Haan/Duesseldorf)製)で実施した。それぞれの場合において、0.5kgの水分を含む水素化ニトリルゴムを、120〜130℃、5分で乾燥させた。すべての実験において、加熱空気の流速は、100m/時間で一定に維持した。2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールおよび2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の含量は、乾燥させた水素化ニトリルゴム中で測定した(表6)。
表6からは、本発明により製造された水素化ニトリルゴムには、0.52〜0.73重量%の量のトリフェニルホスフィンと、0.06〜0.18重量%の量のメチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)とが含まれていることが分かる(実施例1〜4)。本発明ではない水素化ニトリルゴム5〜8には、0.53〜2.6重量%の量のトリフェニルホスフィンが含まれるが、メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)は含まれていない。
加硫物の物性を測定するために、表6の水素化ニトリルゴムからゴム混合物を製造して加硫させ、加硫特性および物性を測定した。ゴム混合物を製造するためには、表7に列記の混合物を使用した。
表7に列記された成分を有するゴム混合物を、「かみ合い式ローター配列(intermeshing rotor geometry)」を有するインターナルミキサー(GK1.5E、Werner&Pfleiderer製)(容量、1.5L)で製造した。その混合物を製造する際には、ローター速度(40rpm)およびラム圧力(8bar)を一定に保った。第一の工程において、水素化ニトリルゴムをミキサーに加えた。30秒後に、その他の混合物成分(ペルオキシドを除く)を、表7に記載した順に添加した。4分の混合時間の後、混合物を排出させた。加硫の直前にペルオキシドを、冷却したローラー上、50℃未満の温度で混ぜ込んだ。
IV.未加硫ゴム混合物の物性
未加硫ゴム混合物の加工特性を評価するために、ASTM D1646に従ってムーニー粘度(ML1+4/100℃)を測定した。
それらの混合物の加硫特性は、ASTM D5289に従い、ムービングダイレオメーター(MDR2000、Alpha Technology製)を使用して、180℃で調べた。このようにして、特性加硫計値のF、Fmax、Fmax.−F、t10、t50、t90、およびt95を測定した。
DIN 53 529、Part 3においては、下記の特性値は、下記の意味合いを有している。
min.:架橋等温線が最小のときの加硫計の値
max.:加硫計の値の最大値
max−F:加硫計の読みにおける最大値と最小値との差
10:最終転化率の10%に到達した時間
50:最終転化率の50%に到達した時間
90:最終転化率の90%に到達した時間
95:最終転化率の95%に到達した時間
未加硫ゴム混合物について求めた物性値を表8にまとめる。
表8からも明らかなように、本発明において製造されたゴムをベースとするゴム混合物(実施例1〜4)の加硫速度と、本発明ではない比較例4〜8をベースとするゴム混合物のそれとの間には、顕著な差はない。
ゴム混合物をベースとして、プレス中、120barの油圧で180℃/26分かけて加硫させることによって試験片を作成し、(加熱処理することなく)冷却して室温とした。
下記の標準に基づいて、加硫物の物性を測定した。
DIN 53505:23℃および70℃でのショアーA硬度(「ショアーA/23℃」および「ショアーA/70℃」)
DIN 53512:レジリエンス(23℃、70℃)(「R23」および「R70」)
DIN 53504:10%、25%、50%、100%、200%および300%伸びにおける応力値(σ10、σ25、σ50、σ100、σ200およびσ300)、引張強度、および破断時伸び
DIN 53516:摩耗
DIN 53517:圧縮永久歪み(CS);円筒状の試験片1(高さ:6.3;直径:13mm)で測定
70時間/23℃で保存後:CS(70時間/023℃)
70時間/150℃で保存後:CS(70時間/150℃)
ゴム混合物の加硫物の物性を表9にまとめる。
表9から、本発明により製造された水素化ニトリルゴムをベースとする加硫物(実施例1、2、3、および4)は、本発明によらずに製造されたゴム5、6、7、および8をベースとする加硫物よりも、より高い弾性率レベルおよびより低い圧縮永久歪み(70時間/23℃保存後および70時間/150℃保存後の両方とも)を有していることが分かる。特に好ましいレベルの弾性率および圧縮永久歪みは、水素化ニトリルゴム1および4をベースとした加硫物に見出されるが、これらのNBR供給原料には、老化安定剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールが含まれている(および2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノールは含まれていない)。

Claims (17)

  1. 水素化ニトリルゴムであって、一般式(I)
    (式中、
    Xは、硫黄、二価の、直鎖状もしくは分岐状、非環状もしくは環状のヒドロカルビル基、好ましくは二価のC〜Cアルキレン基、より好ましくはメチレン、エチレンもしくはn−プロピレン、または式(II)
    (式中、n=0〜9である)であり、
    、R、RおよびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ直鎖状もしくは分岐状の、非置換もしくは置換されたC〜Cアルキル基、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の、非置換もしくは置換されたC〜Cアルキル基である)
    の少なくとも1種の置換フェノールを、前記水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.25重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%、より好ましくは0.05〜0.19重量%、最も好ましくは0.05〜0.18重量%の範囲の量で含む、水素化ニトリルゴム。
  2. 前記一般式(I)の前記フェノールが、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、および以下の式:
    のp−クレゾールとジシクロペンタジエンとのブチル化反応生成物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の水素化ニトリルゴム。
  3. 少なくともアクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンから誘導される繰り返し単位、好ましくはアクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンのみから誘導されるか、あるいはアクリロニトリル、1,3−ブタジエン、および1種または複数のα,β−不飽和モノもしくはジカルボン酸、またはそれらのエステルもしくはアミドのみから誘導される繰り返し単位、特にはアクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンのみから誘導されるか、あるいはアクリロニトリル、1,3−ブタジエン、および1種または複数の、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルおよび(メタ)アクリル酸ラウリルからなる群から選択されるα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルのみから誘導される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の水素化ニトリルゴム。
  4. 前記一般式(I)の前記フェノールを、前記水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.19重量%の範囲内の量で含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴム。
  5. 前記一般式(I)の前記フェノールを、前記水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.18重量%の範囲内の量で含むことを特徴とする、請求項4に記載の水素化ニトリルゴム。
  6. 95〜100%の範囲内、好ましくは96〜100%の範囲内の水素化度を有するか、またはより好ましくは99.1%以上の水素化度を有する完全に水素化されたタイプを表し、および一般式(I)の少なくとも1種のフェノールを、前記水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.19重量%の範囲内、好ましくは0.01〜0.18重量%の範囲内、より好ましくは0.05〜0.18重量%の範囲内の量で含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴム。
  7. アクリロニトリルおよびブタジエンのみから誘導される繰り返し単位を有し、および一般式(I)の少なくとも1種のフェノールを、前記水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.19重量%の範囲内、好ましくは0.01〜0.18重量%の範囲内、最も好ましくは0.05〜0.18重量%の範囲内の量で含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴム。
  8. 溶液中でニトリルゴムを水素化することによって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴムを製造するための方法であって、前記水素化が、一般式(I)
    (式中、
    Xは、硫黄、二価の、直鎖状もしくは分岐状、非環状もしくは環状のヒドロカルビル基、好ましくは二価のC〜Cアルキレン基、より好ましくはメチレン、エチレンもしくはn−プロピレン、または式(II)
    (式中、n=0〜9である)であり、
    、R、RおよびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ直鎖状もしくは分岐状の、非置換もしくは置換されたC〜Cアルキル基、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の、非置換もしくは置換されたC〜Cアルキル基である)
    の少なくとも1種のフェノールの存在下で実施され、
    前記一般式(I)のフェノールが、それぞれの場合において、使用される前記水素化ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.25重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%、より好ましくは0.05〜0.19重量%、最も好ましくは0.05〜0.18重量%の量で存在していることを特徴とする、方法。
  9. 前記一般式(I)の少なくとも1種のフェノールを、それぞれの場合において、使用されるニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.25重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%、より好ましくは0.05〜0.19重量%、最も好ましくは0.05〜0.18重量%の量で含むニトリルゴムが使用されることを特徴とする、請求項8に記載の水素化ニトリルゴムを製造するための方法。
  10. 前記一般式(I)のフェノールのみが、それぞれの場合において、使用される前記ニトリルゴムを基準にして、0.01〜0.25重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%、より好ましくは0.05〜0.19重量%、最も好ましくは0.05〜0.18重量%の量で水素化混合物中に導入されることを特徴とする、請求項8に記載の水素化ニトリルゴムを製造するための方法。
  11. トリフェニルホスフィンが、前記水素化の際に、使用される前記ニトリルゴムを基準にして、0〜1重量%の量で存在していることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴムを製造するための方法。
  12. 前記水素化後に溶媒が除去され、かつ前記水素化ニトリルゴムが単離および脱水されることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴムを製造するための方法。
  13. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の少なくとも1種の水素化ニトリルゴム、および少なくとも1種の架橋剤と任意選択的に1種または複数の架橋促進剤とを含む少なくとも1種の架橋系を含む、加硫可能な混合物。
  14. 加硫物、特に成形体の形態の加硫物を製造するための方法であって、
    請求項13に記載の加硫可能な混合物が、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは120℃〜190℃、特に好ましくは130℃〜180℃の範囲の温度で加硫されることを特徴とする、方法。
  15. 請求項14に記載の方法によって得ることが可能な加硫物。
  16. 伝動ベルト、ローラーカバー、シール、キャップ、ストッパー、ホース、床仕上材、シーリングマット、またはシート、形材もしくは膜の形態を有することを特徴とする、請求項15に記載の加硫物。
  17. O−リングシール、フラットシール、シャフトシーリングリング、ガスケットスリーブ、シーリングキャップ、ダスト保護キャップ、コネクターシール、断熱ホース(添加PVC有りまたは無し)、オイルクーラーホース、空気吸込ホース、パワーステアリングホース、靴底もしくはその部分、またはポンプの膜の形態を有することを特徴とする、請求項16に記載の加硫物。
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