JP2017501221A - がん治療におけるオリゴウロン酸塩の使用 - Google Patents

がん治療におけるオリゴウロン酸塩の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、がんそのものに対して有効な薬剤である抗がん剤としても、化学療法薬または免疫療法剤等のさらなる(または異なる)抗がん剤の送達を向上または促進させる薬物送達手段としても用いられる、がんの治療または予防におけるオリゴウロン酸塩の使用に関する。従って、本発明は、単独でも、1つ以上の追加の(またはさらなる)抗がん剤と組み合わせても用いられる、がんの予防または治療のためのオリゴウロン酸塩の使用に関する。本発明は、オリゴウロン酸塩を単独で、または1つ以上のさらなる抗がん剤と組み合わせて用いる、がんの治療方法または予防方法にも関する。

Description

本発明は、がんそのものに対して有効な薬剤である抗がん剤としても、化学療法薬または免疫療法剤等のさらなる(または異なる)抗がん剤の送達を向上または促進させる薬物送達手段としても用いられる、がんの治療または予防のためのオリゴウロン酸塩の使用に関する。従って、本発明は、単独でも、1つ以上の追加の(またはさらなる)抗がん剤と組み合わせても用いられる、がんの予防または治療のためのオリゴウロン酸塩の使用に関する。本発明は、オリゴウロン酸塩を単独で、または1つ以上のさらなる抗がん剤と組み合わせて用いる、がんの治療方法または予防方法にも関する。
がんとは、細胞の成長および増殖の適切な制御ができなくなることを特徴とする疾患である。米国がん協会によれば、2010年にアメリカ国内で150万件を超えるがんの新たな症例があったとされ、その年の約57万人の死亡の原因はがんであったと推定されている。また、世界保健機関は、2010年における世界中の主な死因はがんだったとした上で、2030年までに、がんによる死亡者数は年間1200万人に増大すると想定している。
非常に多くの利用可能な療法があるが、患者のがん治療が成功するにあたって、公知の抗がん剤に対する耐性が問題になることがある。化学療法等の臨床治療の限界は、従来、主として細胞レベルで薬剤耐性に影響を与える仕組みによるものとされてきた。例えば、薬剤の摂取、代謝および細胞からの送出に作用するタンパク質の発現に影響を及ぼす機能的遺伝子変異(functional gene mutations)または他の改変は、一時的な薬剤の放出につながり得る後成的変化と同様に、薬剤耐性の重要な決定因子である。
しかし、細胞外マトリックス(ECM)、すなわち、がん細胞を取り囲む微小環境も、細胞増殖抑制剤、細胞毒性剤、化学療法剤または免疫療法剤を含む抗がん治療に対して、がん細胞が耐性を発揮できるようにする、または影響を受けにくいようにするのに一役買っているという証拠がある。ECMは、長らく、安定した構造として、組織形態を維持する上で主に補助的な役割を果たすとされてきた。しかし、ECMは、細胞の環境にとって不可欠な部分であり、驚くほど動的かつ多機能であるとともに、細胞生物学の基本的な側面に影響を及ぼし得る。ECMは、直接的または間接的に細胞過程を調節することができる。
ECMは、多細胞生物の細胞外成分である。ECMは、周囲の細胞と相互に作用して、これらの細胞に構造的かつ生化学的な支持を提供する。動物の場合、ECMは、間質液と基底膜とを含む。間質マトリックスは、様々な動物細胞の間(すなわち、細胞間隙)に存在する。多糖類のゲルおよび繊維状タンパク質が間質空間を埋めており、ECMにかかる応力に対する圧縮緩衝材として作用する。基底膜は、ECMがシート状に堆積したものであり、その上に、様々な上皮細胞が配置されている。
ECMの成分は、常在細胞によって細胞内で生成されて、エキソサイトーシスを介してECM内に分泌される。一旦分泌されると、それらの成分は既存のECMと一体になる。ECMは、タンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカンおよび多糖類等の生化学的に異なる成分が多数集まったものであり、繊維状タンパク質およびグリコサミノグリカンが絡み合って網目状になったものに類似している。グリコサミノグリカン(GAG)鎖は、大きな空間を占め、多孔質水和ゲルを形成することにより、組織に機械的支持を与える。GAGは、繰り返し二糖単位からなる、枝分かれのない多糖鎖である。繰り返し二糖単位の一方の糖は、常にアミノ糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)であり、ほとんどの場合、アミノ糖は硫酸化されている。もう一方の糖は、通常、ウロン酸(グルクロン酸またはイズロン酸)である。それらの糖の大部分には硫酸基またはカルボキシル基が結合しているため、GAGは、強く負に帯電している。実際に、それらは、動物細胞で産生される最も多い陰イオン分子である。GAGは、糖、糖の結合の種類ならびに硫酸基の数および位置によって、(1)ヒアルロン酸、(2)コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸、(3)ヘパラン硫酸、(4)ケラタン硫酸の4つの主なグループに区別される。
ヒアルロン酸を除く全てのGAGは、ほとんどの動物細胞で合成されるプロテオグリカンとして、タンパク質に共有結合した構造を有することが判明している。プロテオグリカンのポリペプチド鎖、すなわち、コアタンパク質は、膜結合リボソーム上で合成され、小胞体の内腔に挿入される。多糖鎖は、ゴルジ体内で、主にこのコアタンパク質に結合する。まず、コアタンパク質のセリンの側鎖に、特定の結合の四糖(special link tetrasaccharide)が結合して、多糖形成のプライマーとして作用する。その後、特異的なグリコシルトランスフェラーゼにより、一度に1つずつ糖が付加される。依然としてゴルジ体内であるが、重合した糖の多くは、連続的かつ協調的な一連の反応によって共有結合的に修飾される。エピマー化によって糖分子における個々の炭素原子の周りの置換基の構造が変わり、硫酸化によって負の電荷が増加する。
ECMは、コラーゲンを主成分とする繊維状タンパク質も含む。コラーゲンは、全ての多細胞動物に存在する繊維状タンパク質の一種である。典型的なコラーゲン分子の主要な特性として、その長さ、硬さおよび三重らせん構造が挙げられる。三重らせん構造とは、3本のコラーゲンポリペプチド鎖(アルファ鎖)が互いに巻きついてロープ状の超らせんを構成するものである。コラーゲンには、プロリンおよびグリシンが非常に多く含まれており、どちらも三重らせんの形成に重要である。
ECMは、エラスチンタンパク質も含む。多くの脊椎動物の皮膚、血管および肺等の組織は、それらの機能のために、強靭であるだけでなく、弾性も必要とする。上記組織の細胞外マトリックスでは、弾性繊維が網目状に絡み合っているため、必要な弾力性が得られる。これにより、上記組織は、一時的に伸長した後に回復することができる。細胞外マトリックスは、通常、複数のドメインからなる多くの非コラーゲンタンパク質も含む。各ドメインは、他のマトリックスの巨大分子および細胞表面の受容体に結合するための特定の結合部位を備えている。従って、これらのタンパク質は、マトリックスの構成および細胞とマトリックスとの接着の促進の両方に寄与する。これらのタンパク質の特徴をよく示すものとして第一に挙げられるのはフィブロネクチンである。フィブロネクチンは、全ての脊椎動物に存在する巨大な糖タンパク質である。細胞生物学におけるECMの重要な役割と一致して、その機能を正確に制御するように複数の調節機構が発達している。このような制御機構が阻害されると、ECMの調節は行われず、ECMが破壊されてしまう。その結果、ECMに常在する細胞の異常な細胞挙動を引き起こすことがある。実際に、異常な細胞外マトリックスの動態は、がん細胞との関連において明らかである。従って、改変されたECM(altered ECM)は、がんの特徴になり得る。
生化学的特性の変化に加えて、がん環境では、ECMの物理的特性も変化することがある。例えば、I型コラーゲンが太くなり、配向する(例えば、線形化する)ようになれば、ECMは正常よりも硬くなる。これは、乳がん等において組織の硬さが増すように、ある種のがんの特徴といえる。ECMリモデリング酵素も、がん組織内では調節されないことが多い。
ECMの肥厚化もしくは硬化等の改変、またはECMの量および/または組成の変化は、標的がん細胞に到達しなければ効果が発揮されないような化学療法剤および免疫療法剤等の抗がん剤の障害となることがある。このような薬物または薬剤のがん細胞への送達は、改変されたECMによって妨げられてしまうため、改変されたECMは、薬物療法に対するがん細胞の感度に影響を及ぼす可能性がある。
従って、新たな抗がん治療の継続的な必要性に加えて、特に改変されたECMを伴うがん細胞との関連において、化学療法および免疫療法の薬物および薬剤を含む抗がん剤の標的がん細胞への送達を可能にする、容易にする、または増強する有効な手段も必要とされている。
本発明者らは、驚くべきことに、上記目的のためにオリゴウロン酸塩を用いることができることを見出した。特に、オリゴウロン酸塩によってECMの物理的特性を変更して、構造上はECMを低粘度化もしくは低ゲル状化する(または挙動上はECMの固形化を抑制する)ことができるという驚くべき事実を見出した。すなわち、オリゴウロン酸塩を用いると、ECMの構造が破壊または分解されるため、分子がECMに至る、またはECMを通過する手段または経路、とりわけ分子がECMを通過してその下にあるがん細胞に到達する手段または経路を容易にすることができる。特に、オリゴウロン酸塩はECMを再構成または再構築することにより、ECMをより「開放的」な構造、すなわち孔状の複数の開口が明らかに見える構造にすることができる。理論に縛られたいわけではないが、目下のところ、オリゴウロン酸塩、特にアルギネート(alginate)オリゴマーは、ECMの成分自体を劣化させるのではなく、むしろECMがより開放的に、またはより多孔性になるように、全体としてECMの構造を変更すると考えられている。従来、オリゴウロン酸塩は、特に、嚢胞性線維症および他の呼吸器疾患の患者に発生する過粘稠の粘液(hyperviscous mucus)を含む、粘液の粘度を低下させるものとして提案されているが(WO2007/039754およびWO2008/125828参照)、粘液はECMとは全く異なる材質であり、ゆえに、このことからオリゴウロン酸塩がECMの構造にも影響を及ぼし得ると予想することはできなかったであろう。
下記実施例(例えば、図12参照)の結果は、オリゴウロン酸塩で処理することにより、ECMの構造が変化したことを立証している。例えば、オリゴウロン酸塩は、ECMの密度を減らして、ECMに「開口」または「孔」を生じさせることができ、これにより、ECMの内部における抗がん剤のがん細胞への到達可能性(accessibility)を向上することができると見られる。さらに、本発明の実施例(例えば、特に図1および図2参照)の結果は、様々なオリゴウロン酸塩、特にアルギネートオリゴマー、なかでもグルロネート(gluronate)含量が高いもの(以下、「高G(high G)」と称する)がマトリゲル(Matrigel)(登録商標)(BDバイオサイエンス(BD Biosciences))の粘度またはゲル強度を低下させることを立証している。マトリゲル(登録商標)は、細胞外マトリックスタンパク質を豊富に含むマウス肉腫から抽出された可溶性基底膜調製品であり、ラミニン、コラーゲIV、ヘパリン硫酸プロテオグリカンおよびエンタクチン/ニドゲンを含有する。従って、マトリゲルは、ECM調製品である。さらに、実施例8および図14は、「高G」アルギネートオリゴマーでマトリゲルを処理することにより、アルギネートオリゴマーを用いない対照マトリゲルと比較して、マトリゲルを通じた免疫グロブリン分子(IgG)の拡散が速くなることを立証している。
上記結果に基づき、がん治療との関連において、オリゴウロン酸塩により、抗がん剤がECM(特に、がんで起こるような改変されたECMを含む)を貫通または横断しやすくなることが提唱される。従って、オリゴウロン酸塩により、タンパク質のような巨大分子(治療用抗体等)を含む抗がん剤等の外部からの薬剤に対して、ECM、つまりECM内のがん細胞がより接触しやすくなることが提唱される。これは、動物実験によって証明されているだけでなく、下記実施例においても報告されている。下記実施例では、オリゴウロン酸塩と化学療法剤とを同時投与すると、動物の抗腫瘍反応が高まったこと、特に、化学療法剤の単独投与と比較して、腫瘍の重量が大きく減少したことが示されている。
さらに驚くべきことに、上記動物実験において、オリゴウロン酸塩を単独で用いた対照実験では、オリゴウロン酸塩そのものに予期せぬ抗がん作用があり、腫瘍の成長の程度を抑制することがわかった。特に、下記図3、図4、実施例2および実施例3から明らかなように、単独で投与されたオリゴウロン酸塩は、膵がんのインビボ動物モデルにおいて、腫瘍の大きさを減少させるのに予期せぬ有益な効果をもたらした。このような効果は、全く予想されておらず、非常に驚くべきことだった。なぜなら、オリゴウロン酸塩そのものが抗がん特性を有する可能性について、これまでに立証されたことも、何らかの形で示唆されたこともなかったからである。このことから、オリゴウロン酸塩は、それ自体で有効な抗がん剤になり得ること、それゆえに、オリゴウロン酸塩は、がんの治療または予防のために単独で用いられてもよく、併用治療として、あるいは他の抗がん剤の送達を容易にする、または増強するために、他の抗がん剤と組み合わせて用いられてもよいことが提唱される。
従って、第1の態様として、本発明は、抗がん剤として、すなわち、がんの治療または予防に用いられるオリゴウロン酸塩を提供する。あるいは、本発明は、がんの治療または予防のためのオリゴウロン酸塩の使用を提供する。
別の観点からは、本発明の上記態様は、抗がん治療薬(すなわち、医薬組成物、製剤、複合品(combined product)またはキット等の調製品または薬剤)の製造におけるオリゴウロン酸塩の使用(あるいは、抗がん剤として用いられる、またはがんの治療もしくは予防に用いられる薬剤の製造におけるオリゴウロン酸塩の使用)を提供する。
上述のように、がんの治療または予防において、オリゴウロン酸塩は、単独で用いられてもよく、必要に応じて他の(すなわち、さらなる、追加のまたは第2の)抗がん剤と組み合わせて用いられてもよい。
本発明によれば、オリゴウロン酸塩は、単独でも、他の抗がん剤と組み合わせても、対象のがんを治療または予防するあらゆる方法に用いることができる。
従って、さらなる態様として、本発明は、対象のがんを治療または予防する方法であって、対象にオリゴウロン酸塩を、必要に応じて他の抗がん剤と一緒に投与することを含む方法も提供する。特に、この態様において、上記方法は、有効な量のオリゴウロン酸塩および任意のさらなる抗がん剤を投与することを含む。
従って、本発明のさらなる実施形態は、がんの治療または予防のために使用される抗がん剤とともにオリゴウロン酸塩を提供する、あるいは、がんの治療または予防のために、抗がん剤とともに使用されるオリゴウロン酸塩を提供する。
上述のように、本発明によれば、オリゴウロン酸塩は、抗がん剤の送達または吸収(具体的にはECMを横断して抗がん剤が吸収されること)を促進する、容易にする、増加する、向上する、または増強するのに特に有用である。つまり、オリゴウロン酸塩は、抗がん剤のための薬剤送達剤として用いることができる。
従って、さらなる態様として、本発明は、抗がん剤の送達を増強するのに用いられるオリゴウロン酸塩を提供する。
特に、この態様では、オリゴウロン酸塩は、がんの治療および予防において、抗がん剤の送達を増強するために用いられる。
別の観点からは、本発明の上記態様は、抗がん剤をさらに含む薬剤の製造における、この抗がん剤の送達を増強するための、オリゴウロン酸塩の使用を提供する。
上述のように、薬剤は、複合調製品(combined preparation)、組成物またはキット等であるため、本発明のどの態様においても、オリゴウロン酸塩および他の抗がん剤が単一の組成物として一緒に配合される必要はなく、それらは別々に配合されて、別々に(連続的または同時に)投与されてもよい。
従って、本発明は、がんの治療または予防に用いるための、および/または抗がん剤を必要としている対象への送達を増強するための、オリゴウロン酸塩および(さらなる)抗がん剤を含むキットも提供する。
特に、本発明は、がんの治療または予防において、別々に、連続的にまたは同時に用いるための、および/または抗がん剤のそれを必要としている対象への送達を増強するための、複合調製品として、オリゴウロン酸塩および(さらなるまたは第2の)抗がん剤を含む製品(特に医薬品)を提供する。
さらなる態様として、本発明は、抗がん剤の送達を増強する方法であって、抗がん剤を必要としている対象にオリゴウロン酸塩と抗がん剤とを一緒に投与することを含む方法を提供する。
本発明の上記態様において、オリゴウロン酸塩は、好ましくはアルギネートオリゴマーであり、より好ましくは「高G」アルギネートオリゴマーである。「高G」アルギネートオリゴマーとは、少なくとも70%のグルロネート(G)残基を含有するアルギネートオリゴマーである。具体的には、好ましいオリゴウロン酸塩は、最大100個までのモノマー残基を含み(すなわち、最大100個までのモノマー残基を有する、または最大100個までのモノマー残基で構成されている)、そのうちの少なくとも70%がグルロネート(G)残基であるものとして規定されてもよい。
上述のように、この態様は、がんが改変されたECMを伴う場合、とりわけ改変されたECMの抗がん剤に対する貫通性が低い、言い換えれば、改変されたECMが抗がん剤にとって貫通、透過もしくは接触しにくい、または改変されたECMが抗がん剤に対してより耐性を示す場合のがん治療に特に適用される。
改変されたECMとは、健康な組織に存在するECMとは異なっているか、または健康な組織に存在するECMと比較して改質されているECMである。特に、がんとの関連において、ECMは、対応する非がん性または健康な組織よりも、がん組織またはがん腫瘍(すなわち、がんが発生する組織またはがんの原因となる組織)で改変される。従って、改変されたECMとは、異常なもの、変形したもの、または改質されたものとして規定されることもある。特定の実施形態において、改変されたECMが破壊されて、その構成および/または挙動が調節不全に陥る場合がある。ECMの動態が調節されなくなり、特にECMの再構築が調節されなくなる。ECMは、その量、組成および/または組織分布(topography)の点で改変される。例えば、ECMの産生が増加する、または過剰になることもあれば、ECMの代謝回転(turnover)が低下することもある。また、コラーゲン沈着の増加等、特定のECM成分(特定のタンパク質等)の産生が増加することもある。さらに、1つ以上の構成タンパク質または多糖成分の性質、つまり物理的特性および/または生化学的特性が変更されることもある。このような変化の結果、改変されたECMの構造の違い、または物理的特性の違いがもたらされる。
例えば、ECMのタンパク質成分、特に基質成分の配向が変化することがある。すなわち、コラーゲン繊維が太くなる、および/または線形化する。コラーゲンの架橋および/または他のECMタンパク質もしくはECM成分の架橋が増加することもある。このような改変により、ECMは、改変されていない又は正常なECMよりも厚くなる、および/または硬くなる、および/または密度が高くなると考えられる。そうした物理的変化に加えて、改変されたECMの生化学的特性が変化すると、ECMと、下層組織の細胞のみならず、間質細胞、幹細胞および免疫細胞も含む細胞との相互作用が変更されることになる。上記作用は、がんの発症および進行に関与すると仮定されている。ECMの特性の変更、とりわけ物理的または構造的な変化により、投与された抗がん剤を貫通させない、または貫通させにくいECMに改変されることがある。
上述のように、ほとんどではないにしても多くのがんは改変されたECMを伴っているが、改変されたECMは、組織やがんの種類が異なる等、がんによって様々である。ある種のがんは、例えば、正常なECMだけでなく、他のがんにおける改変されたECMと比較しても、薬物送達の大きな障害となる改変されたECMを示す。従って、このようながんは、抗がん剤治療に対してより耐性がある。抗がん剤(または特定の最適な抗がん剤)を貫通させにくい、変性されたECMを伴う上記がんこそ、本発明にとって特に興味深いものである。上記がんとして、例えば、より硬いECM、および/またはより厚いECM、および/またはより密度の高いECMを伴うがん(例えば、コラーゲンおよび/または他のタンパク質の架橋が増加したがんのような、より規則的な、より緊密な、またはより多く架橋されたタンパク質のネットワークを備えたがん)が含まれる。
「オリゴウロン酸塩」とは、ウロン酸残基、より具体的にはマンヌロン酸残基および/またはグルロン酸残基またはガラクツロン酸残基を含有するオリゴマーである分子を意味する。本明細書において、オリゴマーは、概して、残基またはモノマー単位が200個未満、より具体的には195個未満または190個未満の分子を意味するものとして規定される。別の規定では、オリゴマーの分子量は35000Da未満、より具体的には30000Da未満、25000Da未満または20000Da未満である。
オリゴウロン酸塩は、完全に、または実質的に完全に、モノマー単位としてのウロネート(uronate)残基から構成されることが好ましい。言い換えれば、それらは化学的に修飾されているかもしれないが(下記参照)、オリゴマーの主鎖はウロン酸残基からなることが好ましい。それらは、好ましくは線状分子であり、特に好ましくは非環状(non-cyclic)である。
多くの天然多糖類は、グルロン酸残基、マンヌロン酸残基およびガラクツロン酸残基等のウロン酸残基を含有しているので、オリゴウロン酸塩は、天然源から容易に得ることができる。このような多糖類を切断するか、または加水分解することにより、オリゴウロネート(oligouronate)分子を生成してもよい。
本発明により使用可能なオリゴウロン酸塩を産生するために、多糖類を切断してオリゴ糖類にするには、酵素加水分解または酸加水分解等の従来の多糖溶解技術を用いればよい。その後、イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィーにより、または分画沈殿法もしくは可溶化により、多糖分解生成物からオリゴウロン酸塩を分離してもよい。オリゴウロン酸塩を作製する技術は、当該技術分野において公知であり、文献にも記載されている。
ウロネートを含有する多糖類の例としては、天然に存在する多糖類(キサンタン、ペクチン、アルギネート、ヒアルロン酸、ヘパリンおよびコンドロイチン硫酸等)および化学的に修飾された多糖類が挙げられる。化学的に修飾された多糖類には、荷電基を付加するように修飾された多糖類(カルボキシル化またはカルボキシメチル化グリカン等)および(例えば、過ヨウ素酸酸化により)柔軟性を変えるように修飾された多糖類が含まれるが、これらに限定されない。好適な多糖類については、例えば、「Handbook of Hydrocolloids」(Ed. Phillips and Williams, CRC, Boca Raton, Florida, USA, 2000)で論じられている。しかし、アルギネートを用いてアルギネートオリゴマーを生成することは、アルギネートがマンヌロン酸(M)およびグルロン酸(G)のブロック共重合体として天然に産生するため好ましい。このような重合体を加水分解すれば、上記「ブロック」に相当するオリゴマーが放出されるので、アルギネート加水分解混合物からGブロックオリゴマーもしくはMブロックオリゴマーまたは、実際には、組み合わされた「MG」ブロックオリゴマーを容易に単離または分離することができる。
適切なアルギネート出発物質を選択することにより、所望のG含量および/またはM含量またはGブロック組成もしくはMブロック組成のオリゴマーを得ることができる。例えば、G含量またはM含量がより高いアルギネートもあれば、G(またはM)のストレッチ(ブロック)がより多い、またはより長いアルギネートもある。さらに、適切な加水分解および/または分画または分離の条件を選択すれば、所望のアルギネートオリゴマー(オリゴウロン酸塩)が良好に産生される。
オリゴウロン酸塩を作製するための出発物質としてアルギネートが用いられる場合、マンヌロナンC−5エピメラーゼを用いたエピマー化により、必要に応じてグルロン酸含量を増加させることができる。
本発明による使用に適したオリゴグルロン酸は、ラミナリア・ヒポルボレア(Laminaria hyperborea)等の藻類の供給源から得られたアルギン酸の酸加水分解、中性pHでの溶解、pHを3.4に低下させてオリゴグルロン酸を析出させるための鉱酸の添加、弱酸での洗浄、中性pHでの再懸濁、および凍結乾燥により、好都合に製造することができる。このような処理の結果、サイズだけでなく、おそらくはG含量も異なるオリゴグルロネート(oligoguluronates)の混合調製品(mixed preparation)が得られる。所望の(例えば、より均質または均一の)サイズ範囲および/またはG含量を有する調製品を得るために、さらに分画工程および/または分離工程を行ってもよい。
オリゴガラクツロネート(oligogalacturonates)の場合も、当該技術分野において公知の手順に従い、ペクチン含有物質を加水分解または消化することにより、得ることができる。
上述のように、本発明に用いられるオリゴウロン酸塩は、グルロネート残基、マンヌロネート(mannuronate)残基および/またはガラクツロネート(galacturonate)残基を含有する(または含む)ことが好ましい。グルロネート残基および/またはマンヌロネート残基を含有する(含む、またはからなる)オリゴマーは、アルギネートから好都合に得られるため特に好ましく、総称してアルギネートオリゴマーと呼ばれることがある。アルギネートは、(1−4)結合したβ−D−マンヌロン酸(M)および/またはそのC−5エピマーα−L−グルロン酸(G)の直鎖ポリマーである。アルギネートの一次構造は、大きく異なる場合がある。すなわち、M残基およびG残基は、連続したM残基またはG残基のホモポリマーブロックとして構成されることもあれば、M残基およびG残基を交互に含むブロックとして構成されることもあり、また、単一のM残基またはG残基がこれらのブロック構造の間に入っているのが見出されることもある。アルギネート分子は、上記構造のいくつか、または全てを含むことがあり、このような構造は、ポリマー全体にわたって均一に分布しないこともある。極端には、グルロン酸のホモポリマー(ポリグルロネート(polyguluronate))またはマンヌロン酸のホモポリマー(ポリマンヌロネート(polymannuronate))が存在する。
アルギネートは、海生褐藻類(例えば、デュルビレア(Durvillea)、レソニア(Lessonia)およびラミナリア(Laminaria)のある特定の種)、ならびに細菌(例えば、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)およびアゾトバクター・ビネランジー(Azotobacter vinelandii))から単離されている。他のシュードモナス菌(例えば、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)およびシュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina))は、アルギネートを産生する遺伝的素質を保持しているが、野生では検出可能なレベルのアルギネートを産生しない。突然変異により、これらの非産生型シュードモナス菌を、大量のアルギネートを安定的に産生するように誘導することができる。
アルギネートは、ポリマンヌロネートとして合成され、エピメラーゼ(具体的にはC−5エピメラーゼ)の作用により、ポリマー中のM残基に対してG残基が形成される。藻類から抽出されたアルギネートの場合、G残基は主にGブロックとして構成されるが、これは、藻類におけるアルギネート生合成に関与する酵素が、別のGに隣接してGを選択的に導入することにより、M残基のストレッチをGブロックに変換するためである。これらの生合成系の解明により、特定の一次構造を有するアルギネートの産生が可能になっている(国際公開第94/09124号、Gimmestad, M et al, Journal of Bacteriology, 2003, Vol 185 (12) 3515-3523および国際公開第2004/011628号)。
アルギネートは、一般に、高分子量(例えば、平均分子量が300000ダルトン〜500000ダルトンの範囲)の大きなポリマーとして、天然源から単離される。しかし、このような大きなアルギネートポリマーは、化学的加水分解または酵素加水分解等により分解または破壊されて、より低い分子量のアルギネート構造を形成し得る。工業的に用いられるアルギネートは、通常、平均分子量が100000ダルトン〜300000ダルトンの範囲である(すなわち、このようなアルギネートでも大きなポリマーであると考えられる)が、医薬品には、平均分子量が約35000ダルトンのアルギネートが使用されている。
上述のように、アルギネートは、一般に、平均分子量が少なくとも35000ダルトン、すなわち、モノマー残基数が約175個〜約190個(ただし、通常はもっと高い)のポリマーとして生じ、本発明によるアルギネートオリゴマーは、アルギネートポリマー(通常は天然のアルギネート)の分画(サイズの低減)によって得られる物質と規定することができる。アルギネートオリゴマーは、平均分子量が35000ダルトン未満(すなわち、モノマー残基数が約190個未満または約175個未満)のアルギネート、特に平均分子量が30000ダルトン未満(すなわち、モノマー残基数が約175個未満または約150個未満)のアルギネート、より具体的には平均分子量が25000ダルトン未満または20000ダルトン未満(すなわち、モノマー残基数が約135個未満もしくは約125個未満、またはモノマー残基数が約110個未満もしくは約100個未満)のアルギネートであると考えられる。
オリゴマーは、概して、2個以上の単位または残基を含み、本発明による使用のためのオリゴウロン酸塩、より具体的にはアルギネートオリゴマーは、上述したように、最大200個までのモノマー残基を含んでもよく、好ましくは最大195個または190個までのモノマー残基を含んでもよく、より具体的には最大180個、170個、150個、120個、100個、95個、90個、85個、80個、75個、70個、65個、60個、55個または50個までのモノマー残基を含んでもよい。一般に、アルギネートオリゴマーは、2個〜100個のモノマー残基、好ましくは2個〜75個、2個〜70個、2個〜60個、2個〜50個、2個〜45個、2個〜40個、2個〜35個、2個〜32個または2個〜30個のモノマー残基を含む。他の好ましい範囲として、3個、4個、5個または6個のいずれか1つから100個、75個、60個、50個、45個、40個、35個、32個、30個、27個、25個、22個または20個のいずれか1つまでが含まれる。本発明による代表的な好ましい範囲として、特に2個〜100個、3個〜100個、4個〜100個、5個〜100個、2個〜75個、3個〜75個、4個〜75個、5個〜75個、2個〜50個、3個〜50個、4個〜50個、5個〜50個、2個〜35個、3個〜35個、4個〜35個および5個〜35個が含まれる。別の規定では、本発明による使用のためのオリゴウロン酸塩は、通常、平均分子量が350ダルトン〜20000ダルトン、好ましくは350ダルトン〜15000ダルトン、好ましくは350ダルトン〜10000ダルトン、より好ましくは350ダルトン〜8000ダルトン、350ダルトン〜7000ダルトンまたは350ダルトン〜6000ダルトンの範囲である。
別の観点からは、オリゴウロン酸塩(アルギネートオリゴマー等)は、重合度(DP)または数平均重合度(DPn)が2〜100、2〜75、2〜70、2〜50、2〜45、2〜40、2〜35、2〜32または2〜30の範囲であればよい。特にDPまたはDPnの範囲として、3、4、5または6のいずれか1つから100、75、60、50、45、40、35、32、30、27、25、23または20のいずれか1つまでが含まれる。
上述のように、アルギネートオリゴマーは、グルロネートもしくはグルロン酸(G)および/またはマンヌロネートもしくはマンヌロン酸(M)の残基または単位を含有する(または含む)。本発明によるアルギネートオリゴマーは、好ましくはウロネート残基/ウロン酸残基のみ、または実質的にそれらのみから構成され(すなわち、それらから本質的になり)、より具体的にはG残基および/またはM残基のみ、または実質的にそれらのみから構成される。別の表現をすると、本発明に用いられるアルギネートオリゴマーでは、モノマー残基の少なくとも80%、より具体的には少なくとも85%、90%、95%または99%がウロネート残基/ウロン酸残基、またはより具体的にはG残基および/またはM残基であり得る。言い換えれば、アルギネートオリゴマーは、好ましくは、他の残基または単位(例えば、他の糖残基、またはより具体的には他のウロン酸残基/ウロネート残基を含まない。
アルギネートオリゴマーは、好ましくは直鎖オリゴマーである。
好ましさは劣るが、類似のオリゴガラクツロネートも、ガラクツロン酸残基のみ、または実質的にガラクツロン酸残基のみを含む(またはからなる)ものであればよく、すなわち、モノマー残基の少なくとも80%、より具体的には少なくとも85%、90%、95%または99%がガラクツロン酸残基である。
特に、好ましい実施形態において、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも30%がG残基(すなわち、グルロネートまたはグルロン酸)である。言い換えれば、アルギネートオリゴマーは、少なくとも30%のグルロネート(またはグルロン酸)残基、より具体的には少なくとも40%、50%、60%または70%のG(グルロネート)残基を含有する。従って、本発明による使用のための代表的なアルギネートオリゴマーは、少なくとも70%のG残基を含有し得る(すなわち、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも70%がG残基である)。
好ましくは、オリゴウロン酸塩またはアルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも60%、より具体的には少なくとも70%または75%、さらにより具体的には少なくとも80%、85%、90%、92%、95%または99%がグルロネートである。一実施形態において、アルギネートオリゴマーは、Gのホモオリゴマーまたは100%のGであり得る。
上記より、本明細書で用いられる「オリゴグルロネート」とは、オリゴマーの全てのモノマー残基がグルロン酸残基であることを意味するのではなく、オリゴマーがグルロン酸残基を含有することを意味すると理解される。オリゴグルロネートおよびオリゴガラクツロネートという用語は、同じように解釈されることになる。
代表的な好ましい実施形態において、オリゴウロン酸塩、より具体的にはアルギネートオリゴマーは、最大100個、90個、85個、80個、75個、70個、65個、60個、55個、50個、45個、40個、35個または30個までのモノマー残基(または上記で規定された類似の、対応する、もしくは同等のDPまたはDPn)を有し、少なくとも70%、75%、80%、82%、85%または90%のG残基を含む。
さらに好ましい実施形態において、本発明の上記アルギネートは、G残基の大部分がいわゆるGブロック中に存在する一次構造を有する。好ましくは、G残基の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%または75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%または95%がGブロック中に存在する。Gブロックは、少なくとも2個のG残基の連続した配列、好ましくは少なくとも3個の連続したG残基、より好ましくは少なくとも4個または5個の連続したG残基、最も好ましくは少なくとも7個の連続したG残基である。
特に、G残基の少なくとも80%、85%または90%は、別のG残基に(1−4)結合している。より具体的には、アルギネートのG残基の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%が別のG残基に(1−4)結合している。
本発明に用いられるオリゴウロン酸塩は、好ましくは3mer〜35mer、より好ましくは3mer〜30merまたは3mer〜28mer、具体的には4mer〜30merまたは4mer〜25mer、特に6mer〜30mer、6 mer〜25merまたは6mer〜22mer、例えば、8mer〜30mer、8mer〜25merまたは8mer〜20mer、例えば、10mer〜20merまたは10mer〜18mer、10mer〜17merまたは10mer〜15merであり、例えば、350ダルトン〜6400ダルトンまたは350ダルトン〜6000ダルトン、好ましくは550ダルトン〜5500ダルトン、好ましくは750ダルトン〜5000ダルトン、特に750ダルトン〜4500ダルトンの範囲の分子量を有する。
オリゴウロン酸塩は単一の化合物でも、例えば、ある範囲の重合度を有する化合物の混合物でもよい。上述のように、多糖類を加水分解すると、ある範囲のサイズを有するオリゴマーの混合物が得られる。このサイズ範囲は、分離または分画によって低減させて、より均一または変化しにくい混合物を生成することができる。また、上述のように、オリゴウロン酸塩のモノマー残基は、同じであっても、異なっていてもよく、その全てが荷電基を保有する必要はないが、その大部分(例えば、少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%)が荷電基を保有することが好ましい。荷電基の実質的な大部分、例えば、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%が同じ極性を有することが好ましい。オリゴウロン酸塩では、ヒドロキシル基の荷電基に対する比は、好ましくは少なくとも2:1、より具体的には少なくとも3:1である。
本発明のオリゴウロン酸塩は、3〜28、4〜25、6〜22、8〜20または10〜15、あるいは5〜18、7〜15、または8〜12、特に10の重合度(DP)または数平均重合度(DPn)を有してもよい。
本発明のオリゴウロン酸塩は、8〜50、8〜40、8〜35、8〜30、8〜28、8〜25、8〜22、8〜20、8〜18、8〜16または8〜14の重合度(DP)または数平均重合度(DPn)を有してもよい。
本発明のオリゴウロン酸塩は、9〜50、9〜40、9〜35、9〜30、9〜28、9〜25、9〜22、9〜20、9〜18、9〜16または9〜14の重合度(DP)または数平均重合度(DPn)を有してもよい。
本発明のオリゴウロン酸塩は、10〜50、10〜40、10〜35、10〜30、10〜28、10〜25、10〜22、10〜20、10〜18、10〜16または10〜14の重合度(DP)または数平均重合度(DPn)を有してもよい。
本発明のオリゴウロン酸塩は、12〜50、12〜40、12〜35、12〜30、12〜28、12〜25、12〜22、12〜20、12〜18、12〜16または12〜14の重合度(DP)または数平均重合度(DPn)を有してもよい。
本発明のオリゴウロン酸塩は、15〜50、15〜40、15〜35、15〜30、15〜28、15〜25、15〜22、15〜20、15〜18または15〜16の重合度(DP)または数平均重合度(DPn)を有してもよい。
本発明のオリゴウロン酸塩は、18〜50、18〜40、18〜35、18〜30、18〜28、18〜25、18〜22または18〜20の重合度(DP)または数平均重合度(DPn)を有してもよい。
好ましくは、本発明のオリゴウロン酸塩は、本明細書で開示される範囲外の重合度を有するオリゴウロン酸塩を実質的に含まない、好ましくは本質的に含まない。このことは、本発明のオリゴウロン酸塩の分子量分布、例えば、関連範囲外のDPを有する、本発明により使用されるオリゴウロン酸塩の各々のモル%を単位として表される。分子量分布としては、DPnに関する適切な上限(relevant upper limit)より3、2または1高いDPを有するものが10モル%より少ない、好ましくは9モル%、8モル%、7モル%、6モル%、5モル%、4モル%、3モル%、2モル%または1モル%より少ないことが好ましい。同様に、DPnに関する適切な下限(relevant lower limit)より3、2または1小さい数未満のDPを有するものが10モル%より少ない、好ましくは9モル%、8モル%、7モル%、6モル%、5モル%、4モル%、3モル%、2モル%または1モル%より少ないことが好ましい。
国際公開第2008/125828号に記載されているように、多糖類の加水分解により得られたオリゴウロン酸塩の混合物を分画または分離して、いわゆる高分子量の尾(tail)、すなわち、混合物のより分子量が高い成分を除去し、その均質性を低下させることがさらに好ましい。分子量分布としては、DPnに関する適切な上限より2高いDPを有するものが5モル%より少ないことが好ましい。同様に、DPnに関する適切な下限より2小さい数未満のDPを有するものが5モル%より少ないことが好ましい。
好適なアルギネートオリゴマーは、国際公開第2007/039754号、国際公開第2007/039760号および国際公開第2008/125828号に記載されており、それらの開示の全体が明示的に参照により本明細書に援用される。
代表的な好適なオリゴウロン酸塩は、5〜30の範囲のDPnと、少なくとも0.80のグルロネート/ガラクツロネート率(FG)と、0.20未満のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%のDPが25未満である。
さらに好適なオリゴウロン酸塩は、7〜15(好ましくは8〜12)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.85(好ましくは少なくとも0.90)のグルロネート/ガラクツロネート率(FG)と、0.15未満(好ましくは0.10未満)のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満(好ましくは14未満)である。
さらに好適なオリゴウロン酸塩は、5〜18(特に7〜15)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.80(好ましくは少なくとも0.85、特に少なくとも0.92)のグルロネート/ガラクツロネート率(FG)と、0.20未満(好ましくは0.15未満、特に0.08未満)のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満(好ましくは17未満)である。
さらに好適なオリゴウロン酸塩は、5〜18の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.92のグルロネート/ガラクツロネート率(FG)と、0.08未満のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満である。
さらに好適なオリゴウロン酸塩は、5〜18(好ましくは7〜15、より好ましくは8〜12、特に約10)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.80(好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.90、特に少なくとも0.92、最も具体的には少なくとも0.95)のグルロネート/ガラクツロネート率(FG)と、0.20未満(好ましくは0.15未満、より好ましくは0.10未満、特に0.08未満、最も具体的には0.05未満)のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満(好ましくは17未満、より好ましくは14未満)である。
さらに好適なオリゴウロン酸塩は、7〜15(好ましくは8〜12)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.92(好ましくは少なくとも0.95)のグルロネート/ガラクツロネート率(FG)と、0.08未満(好ましくは0.05未満)のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満(好ましくは14未満)である。
さらに好適なオリゴウロン酸塩は、5〜18の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.80のグルロネート/ガラクツロネート率(FG)と、0.20未満のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満である。
さらに好適なオリゴウロン酸塩は、7〜15の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.85のグルロネート/ガラクツロネート率(FG)と、0.15未満のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満である。
さらに好適なオリゴウロン酸塩は、7〜15の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.92のグルロネート/ガラクツロネート率(FG)と、0.08未満のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満である。
本発明によれば、望ましい特定の群のオリゴウロン酸塩は、いわゆる「高G」または「Gブロック」オリゴマーとして規定されるアルギネートオリゴマー、すなわち、G残基またはGブロックの含量が高い(例えば、モノマー残基の少なくとも70%がGであり、好ましくはGブロック中に配置される)アルギネートオリゴマーであることが分かる。しかしながら、以下にさらに記載される、特に「高M」または「Mブロック」オリゴマーまたはMGブロックオリゴマーを含む、他のタイプのアルギネートオリゴマーを用いてもよい。従って、単一モノマータイプの割合が高い、すなわち、この種のモノマーが主にそのモノマータイプの連続した配列中に存在しているアルギネートオリゴマーであって、特に好ましいオリゴマー、例えば、オリゴマーのモノマー残基の少なくとも70%が別のG残基に(1−4)結合したG残基であるオリゴマー、またはより好ましくは、オリゴマーのモノマー残基の少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が別のG残基に(1−4)結合したG残基であるオリゴマーを表すアルギネートオリゴマーである。この2つのG残基の(1−4)結合は代替的に、隣接するグルロン単位と結合したグルロン単位として表すこともできる。
さらなる実施形態では、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも50%、より具体的には50%超がM残基(すなわち、マンヌロネートまたはマンヌロン酸)であり得る。言い換えれば、アルギネートオリゴマーは、少なくとも50%、あるいは50%超のマンヌロネート(またはマンヌロン酸)残基を含有する。従って、本発明の本実施形態による使用のための代表的なアルギネートオリゴマーは、70%超のM残基を含有する(すなわち、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の70%超がM残基である)。一実施形態において、アルギネートオリゴマーは、オリゴマンヌロネート(oligomannuronate)(すなわち、Mのホモオリゴマーまたは100%のM)であり得る。
さらなる実施形態では、本発明の上記アルギネートは、M残基の大部分がいわゆるMブロック中に存在する一次構造を有する。この実施形態において、好ましくは、M残基の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%または75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%または95%がMブロック中に存在する。Mブロックは、少なくとも2個のM残基の連続した配列、好ましくは少なくとも3個の連続したM残基、より好ましくは少なくとも4個または5個の連続したM残基、最も好ましくは少なくとも7個の連続したM残基である。
特に、M残基の少なくとも90%は、別のM残基に(1−4)結合している。より具体的には、アルギネートのM残基の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%が別のM残基に(1−4)結合している。
他の好ましいオリゴマーは、オリゴマーのモノマー残基の少なくとも70%が別のM残基に(1−4)結合したM残基であるアルギネートオリゴマー、またはより好ましくは、オリゴマーのモノマー残基の少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が別のM残基に(1−4)結合したM残基であるアルギネートオリゴマーである。この2つのM残基の(1−4)結合は代替的に、隣接するマンヌロン単位と結合したマンヌロン単位として表すこともできる。
さらなる実施形態では、本発明のアルギネートオリゴマーは、M残基およびG残基の交互の配列を含む。少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個のM残基およびG残基の交互の配列はMGブロックを表す。本発明のアルギネートオリゴマーは、MGブロックを含む。より具体的に表すと、MGブロックは、G残基およびM残基からなる少なくとも3個の連続した残基の配列であり、連続した配列中のそれぞれの非末端(内部)G残基は、M残基に(1−4)および(4−1)結合し、連続した配列中のそれぞれの非末端(内部)M残基はG残基に(1−4)および(4−1)結合する。好ましくは、MGブロックは少なくとも5個または6個の連続した残基、より好ましくは少なくとも7個または8個の連続した残基である。
さらなる実施形態では、アルギネートオリゴマーの少数のウロネート(すなわち、マンヌロネートまたはグルロネート)は、主としてMGブロック中に見られる。この実施形態において、アルギネートオリゴマーのMGブロック中の少数のウロネートモノマーの好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%または75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%または95%がMGブロック中に存在する。別の実施形態において、オリゴマーのG残基およびM残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、例えば、100%がMGブロック中に配置されるように、アルギネートオリゴマーが配置される。
ある特定の実施形態では、本発明のオリゴマーの末端ウロン酸残基は二重結合、特にC4原子とC5原子との間に位置する二重結合を有しない。このようなオリゴマーは飽和末端ウロン酸残基を有するものとして記載されることがある。当業者ならば、過度の負担なしに飽和末端ウロン酸残基を有するオリゴマーを調製することができるだろう。これは、上記オリゴマーを生じる製造技術を用いること、または不飽和末端ウロン酸残基を有するオリゴマーを生じる方法によって製造されたオリゴマーを変換する(飽和させる)ことによって行うことができる。
アルギネートオリゴマーは、通常、電荷を保持するので、アルギネートオリゴマーに対する対イオンは、任意の生理学的に耐容性があるイオン、特に荷電薬剤物質に一般的に用いられるイオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、塩化物イオン、メシレートイオン、メグルミンイオン等)であればよい。アルギネートのゲル化を促進するイオン(2族の金属イオン等)を用いてもよい。
オリゴウロン酸塩は、適切な数のウロン酸単位(例えば、グルロネート残基および/またはマンヌロネート残基)の重合から生成される合成物質であってもよいが、上述のように、オリゴウロン酸塩は、天然アルギネート原料等の上記天然源から得ることが好ましい。
上述のように、オリゴマーは、イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィーにより、または分画沈殿法もしくは可溶化もしくは濾過により、多糖分解生成物から分離してもよい。米国特許第6,121,441号および国際公開第2008/125828号(それらの全体が明示的に参照により本明細書に援用される)は、本発明に用いられるアルギネートオリゴマーを調製するのに適した方法を記載している。さらなる情報および考察は、例えば、「Handbooks of Hydrocolloids」(上記参照)に見ることができる。このテキストは、その全体が明示的に参照により本明細書に援用される。
オリゴウロン酸塩は化学的に修飾することもでき、これには荷電基を付加する修飾(カルボキシル化またはカルボキシメチル化グリカン等)または(例えば、過ヨウ素酸酸化により)柔軟性を変える修飾が含まれるが、これらに限定されない。
藻類の供給源は、これらの生物において産生されるアルギネートが、G残基の大部分が単一残基としてではなくGブロック中に配置される一次構造を有する傾向があるため、最も好適であることが期待されるものの、本発明のアルギネートオリゴマーの製造のためのアルギネートは、好適な細菌性供給源(例えば、シュードモナス・エルギノーサまたはアゾトバクター・ビネランジー)から直接得ることもできる。
シュードモナス・フルオレセンスおよびアゾトバクター・ビネランジーにおけるアルギネート生合成に関与する分子装置が、クローニングされるとともに、特徴づけられており(国際公開第94/09124号;Ertesvag, H., et al, Metabolic Engineering, 1999, Vol 1, 262-269;国際公開第2004/011628号;Gimmestad, M., et al(上記参照);Remminghorst and Rehm, Biotechnology Letters, 2006, Vol 28, 1701-1712;Gimmestad, M. et al, Journal of Bacteriology, 2006, Vol 188(15), 5551-5560)、これらの系を操作することにより、調整した(tailored)一次構造を有するアルギネートを容易に得ることができる。アルギネート(藻類原料等)のG含量は、例えば、アゾトバクター・ビネランジー由来のマンヌロランC−5エピメラーゼまたは他のエピメラーゼ酵素を用いたエピマー化により、増加させることができる。
従って、シュードモナスまたはアゾトバクター由来の単離エピメラーゼ等、例えば、シュードモナス・フルオレセンスもしくはアゾトバクター・ビネランジー由来のAlgG、またはアゾトバクター・ビネランジー由来のAlgE酵素(AlgE1〜AlgE7)を用いて、インビトロでのエピマー化を実施することができる。アルギネートを産生する能力を有する他の生物(特に藻類)由来のエピメラーゼの使用も具体的に検討される。アゾトバクター・ビネランジーAlgEエピメラーゼを用いた低Gアルギネートのインビトロでのエピマー化は、Ertesvag et al(上記参照)およびStrugala et al(Gums and Stabilisers for the Food Industry, 2004, 12, The Royal Society of Chemistry, 84 - 94)に詳細に記載されている。AlgE4以外の1つ以上のアゾトバクター・ビネランジーAlgEエピメラーゼを用いたエピマー化は、これらの酵素がGブロック構造を産生する能力を有するため、好ましい。突然変異型または他の生物由来の相同体も、有用であるとして具体的に検討される。国際公開第94/09124号には、例えば、エピメラーゼ配列によりコードされる、組み換えまたは修飾マンヌロナンC−5エピメラーゼ酵素(AlgE酵素)が記載されている。ここでは、エピメラーゼの異なるドメインまたはモジュールをコードするDNA配列がシャッフルされるか、または欠失するとともに、組み換えられている。あるいは、例えば、AlgG遺伝子またはAlgE遺伝子の部位特異的突然変異誘発またはランダム突然変異誘発により得られる、天然のエピメラーゼ酵素(AlgGまたはAlgE)の突然変異体を用いてもよい。
異なるアプローチは、エピメラーゼ遺伝子のいくつか、または全てで突然変異したシュードモナス属およびアゾトバクター属の生物を作り出して、それらの突然変異体がアルギネートオリゴマーの製造に必要とされる構造のアルギネートか、または必要とされる構造およびサイズ(または分子量)のアルギネートオリゴマーさえも産生するようにすることである。AlgG遺伝子が突然変異した多数のシュードモナス・フルオレセンス生物の生成は、国際公開第2004/011628号およびGimmestad, M., et al, 2003(上記参照)に詳細に記載されている。AlgE遺伝子が突然変異した多数のアゾトバクター・ビネランジー生物の生成は、Gimmestad, M., et al, 2006(上記参照)に開示されている。当業者ならば、この教示を用いて、過度の負担なしに、本発明のアルギネートオリゴマーを産生する新たな突然変異体を製造することができるだろう。
さらなるアプローチは、アゾトバクター属またはシュードモナス属の生物由来の内在性エピメラーゼ遺伝子を欠失または不活性化させた後、1つ以上の外来性エピメラーゼ遺伝子(突然変異していても、突然変異していなくてもよい(すなわち、野生型であっても、修飾されていてもよい))を導入することであり、例えば、誘導性の、または他の「制御可能なプロモータ(controllable promoters)」を用いて、その発現が制御されていてもよい。遺伝子の適切な組合せを選択することにより、所定の一次構造を有するアルギネートを生成することができる。
またさらなるアプローチとして、シュードモナス属および/またはアゾトバクター属のアルギネート生合成機構のいくつか、または全てを非アルギネート産生生物(大腸菌等)に導入すること、およびこれらの遺伝子操作生物からのアルギネートの産生を誘導することであろう。
これらの培養基準のシステムが用いられる場合、アルギネートまたはアルギネートオリゴマーの一次構造は、培養条件に影響されることがある。特定の生物により産生されるアルギネートの一次構造を操作するために、温度、浸透圧(osmolarity)、栄養レベル/栄養源および大気パラメータ等の培養パラメータを調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
「G残基/G」および「M残基/M」、またはグルロン酸もしくはマンヌロン酸、またはグルロネートもしくはマンヌロネートに言及する場合、グルロン酸/グルロネートおよびマンヌロン酸/マンヌロネート(具体的には、α−L−グルロン酸/グルロネートおよびβ−D−マンヌロン酸/マンヌロネート)への言及と区別がなく解釈されるものとし、さらにこれらの誘導体も含まれるものとする。これらの誘導体において、非修飾オリゴマーの活性より実質的に低い活性(抗がん活性または抗ECM活性)をもたらすことなく、1つ以上の利用可能な側鎖または基が修飾されている。一般的な糖修飾基は、アセチル基、硫酸基、アミノ基、デオキシ基、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基及びアンヒドロ(anhydro)基を含む。アルギネートオリゴマーは、荷電基を付加するように(カルボキシル化またはカルボキシメチル化グリカン等)、および(例えば、過ヨウ素酸酸化により)柔軟性を変えるように、化学修飾することもできる。当業者ならば、オリゴ糖類の単糖サブユニットに対して行うことが可能なさらなる化学修飾を認識するだろう。
本明細書で用いられる「治療」とは、治療前のがんまたはその症状に対して、治療中のがんまたはその1つ以上の症状を軽減、緩和、回復または除去することを意味する。また、治療とは、固形腫瘍等におけるがん細胞の減少または除去を含む場合もある。
「予防」とは、がんの症状の発症を遅らせる、または予防することを意味する。
本明細書に記載される対象とは、任意のヒトまたは非ヒト動物であればよく、好ましくはウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ネコまたはイヌ等の哺乳動物、特に好ましくはヒトである。
特定の実施形態において、本発明は、最初に、治療を受ける対象ががんにかかっているか、がんにかかりやすいか、またはがんにかかる恐れがあるかについて確認または判断することを含んでもよい。
あるいは(またはさらに)、本発明は、対象、より具体的にはがん、またはがんの発症もしくは進行に及ぼすオリゴウロン酸塩および/または他の抗がん剤の投与の効果を評価または監視することを含んでもよい。抗がん作用を評価および/または監視する手順および手段は、当該技術分野において公知であり、例えば、症状、病態、(イメージング技術等による)腫瘍の大きさや広がり、または他のがんもしくは腫瘍の指標(がん/腫瘍マーカー等)を判断または監視することによって行われる。
1つ以上の他の抗がん剤と組み合わせてオリゴウロン酸塩を用いると、ECMを介した薬物送達を向上することができ、オリゴウロン酸塩は、例えば、がん治療における補助剤または薬物送達剤として用いることができる。有利なことに、オリゴウロン酸塩と組み合わせて薬物を送達または投与した場合、薬物の投与量または副作用が減少する可能性がある。必要な投与量を10%、20%、30%、40%または50%減らすこともできる。
抗がん薬または抗がん剤は、当該技術分野において公知の適切な抗がん剤であればよい。がんの治療用に幅広い様々な種類の薬剤が知られている、または提案されているが、化学的性質または作用様式に関わらず、これらのうちのどの薬剤を用いてもよい。従って、抗がん剤は、天然由来か合成的に調製されたかを問わず、化学分子(例えば、有機化学低分子(organic small chemical molecules))を含むとともに、タンパク質およびペプチド等の生体分子(例えば、後述の免疫療法剤)も含む。また、抗がん薬は、幅広い様々な化学的分類または機能的分類に当てはまると考えられる化学療法剤または化学療法薬に加えて、例えば、体内の様々な生理的過程または細胞(例えば、免疫応答および/または抗炎症反応または細胞)を促進、活性化または増強するように作用する抗体または抗体誘導体および他の生体分子を含む。
免疫応答を誘導してがんを治療することは、がんの「免疫療法」として知られている。免疫療法は、例えば、細胞療法(cell-based therapies)、抗体療法またはサイトカイン療法を伴うことがある。これらの3つのアプローチの全てにおいて、がん細胞は、免疫系によって検出可能な異なる細胞表面マーカー(またはがん抗原)を有することが多いという事実が利用されている。上記抗原は、タンパク質が最も一般的であるが、炭水化物等の他の分子を含むこともある。免疫療法の別の例としては、チェックポイント阻害により、チェックポイントタンパク質を阻害するものが挙げられる。これについては、さらに後述する。
このように、免疫療法は、免疫系を刺激してがん細胞を攻撃させるために用いられる。また、さらに後述するように、種々の分子が免疫療法に基づくアプローチの標的になり得る。例えば、がんにおける免疫療法介入(immunotherapeutic intervention)の標的として、CD52、CD30、CD33、CD20、CD152(CTLA4としても知られている)およびCD279(プログラム細胞死タンパク質1(PD−1)としても知られている)等の「CD」(分化抗原群(cluster of differentiation))タンパク質;血管内皮増殖因子(VEGF)等の増殖因子;上皮増殖因子受容体(EGFR)またはヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)等の増殖因子受容体;リンパ球活性化遺伝子3(LAG3);ならびにB7−H3およびB7−H4等のB7ファミリータンパク質が含まれる。これらは代表的な例に過ぎず、他の分子もがんにおける免疫療法介入の標的になり得る。
従って、本発明の一実施形態において、抗がん剤は、さらに後述するように、免疫療法剤である。
本発明は、様々な抗がん剤に対して有用であり、考えられる抗がん剤の例を以下に述べる。
「化学療法」に分類される代表的な抗がん剤の例として、フルダラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、メトトレキサート、タキソール、タキソテール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチン等の白金錯体、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルバジン、エトポシド、テニポシド、カンパテシン(campathecins)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、L−アスパラギナーゼ、エピムビシン(epimbicm)、5−フルオロウラシル、ドセタキセルおよびパクリタキセル等のタキサン、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、窒素マスタード、BCNU、カルムスチン(carmustme)およびロムスチン等のニトロソ尿素、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン等のビンカアルカロイド、イマチニブメシラート(imatimb mesylate)、ヘキサメチルメラミン(hexamethyhnelamine)、またはトポテカン(topoteca)が挙げられるが、これらに限定されない。
抗がん剤には、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、ATPアーゼ阻害剤、チルホスチン(tyrphostins)、プロテアーゼ阻害剤、ハービマイシンA、ゲニステイン、エルブスタチン、およびラベンダスチンAが含まれてもよい。
一実施形態において、抗がん剤は、以下の薬剤の分類、すなわち、アルキル化剤、植物性アルカロイド、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、葉酸拮抗薬、ピリミジン類似体、プリン類似体、DNA代謝拮抗薬、タキサン、ポドフィロトキシン、ホルモン療法、レチノイド、光増感剤または光力学療法に用いられる薬剤、血管新生阻害剤、有糸分裂阻害剤、イソプレニル化阻害剤、細胞周期阻害剤、アクチノマイシン、ブレオマイシン、アントラサイクリン、MDR阻害剤、およびCa2+ATPアーゼ阻害剤のうちの1つまたは組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない。
さらに、抗がん剤は、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、成長阻害因子、ホルモン、可溶性受容体、デコイ受容体、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体または多重特異性抗体、モノボディ(monobodies)、ポリボディ(polybodies)から選択され得るが、これらに限定されない。
別の抗がん剤は、エリスロポエチンおよびトロンボポエチン等の成長因子または造血因子、およびそれらの成長因子模倣物質(growth factor mimetics)から選択され得るが、これらに限定されない。
代表的な一実施形態において、薬物は低分子であり、より具体的には低分子化学療法剤である。低分子薬剤とは、分子量が2000Da未満、より具体的には1800Da、1500Da、1200Da、1000Da、900Da、800Daまたは700Da未満であり、通常は1000Da未満であるものとして規定される。例えば、低分子薬剤の大きさは、100〜1000Daの範囲、例えば、100〜800Daまたは300〜700Daの範囲であればよい。
このように、本発明の一実施形態において、抗がん剤は高分子薬物ではない。さらなる代表的な実施形態では、抗がん剤は、ポリマー分子でもオリゴマー分子でもなく、例えば、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質でもなく、核酸でもなく、多糖類もしくはオリゴ糖類でもない。
しかし、好ましい実施形態において、抗がん剤は、ポリマー分子またはオリゴマー分子であり、例えば、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質であり、核酸であり、または多糖類もしくはオリゴ糖類である。好ましくは、抗がん剤は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であり、タンパク質融合もしくはペプチド融合、または他の分子に結合したタンパク質もしくはペプチドを含む。
さらに好ましい実施形態において、抗がん剤は免疫療法剤であり、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であってもよい。免疫療法剤は、抗体、サイトカインおよびチェックポイント阻害剤から選択されてもよい。上述のように、治療用抗がん抗体(therapeutic anticancer antibody)は、チェックポイントタンパク質を含む標的範囲を有することがある。従って、抗体はチェックポイント阻害剤であってもよい。
第1の例では、免疫療法剤は抗体である。上述のように、がん細胞は、その表面にがん抗原を提示するが、このがん抗原は抗体によって認識される。そこで、例えば、がん細胞が固形腫瘍を形成する場合、抗体を治療的に用いて、がん細胞または細胞に対する免疫応答を標的にすることができる。このような抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体または多重特異性抗体、モノボディ、およびポリボディから選択されてもよく、実際には、今日、当該技術分野において公知の多くの抗体様または抗体誘導体分子(antibody-like or antibody derivative molecules)から任意で選択されてもよい。従って、「抗体」という用語は、本明細書において広く用いられるとともに、当該技術分野において公知のあらゆる抗体、抗体フラグメント、誘導体または変異体を含む。また、抗体は、都合がよければ、または望ましければ、どのような種、クラスまたはサブタイプであってもよい。さらに、抗体は、自然のものでも、誘導体化したものでも、合成したものでもよい。
従って、抗体は以下の通りである。
(a)あらゆる動物、例えば、ヒツジ、ウサギ、ヤギもしくはマウスまたは卵黄等の従来用いられている動物のいずれかに由来する免疫グロブリンの種々のクラスまたはサブクラス(IgG、IgA、IgM、IgDまたはIgE等)のいずれかの抗体;
(b)モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体;
(c)モノクローナルまたはポリクローナルの完全抗体または抗体フラグメントであり、フラグメントは、抗体の結合領域を含有するフラグメント、例えば、Fc部が欠けているフラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv等)、すなわち、完全抗体の重鎖成分を結合しているジスルフィド結合の還元開裂により得られた、いわゆる「半分子(half molecule)」フラグメントである。Fvとは、二本鎖で表される軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含有するフラグメントとして規定されることもある;
(d)組み換えDNA技術または他の合成技術により産生または修飾された抗体であり、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、キメラ抗体、または合成的に生成もしくは改変された抗体様構造を含む。
また、一本鎖抗体等の抗体の機能性誘導体または「等価物(equivalents)」も含まれる。一本鎖抗体は、融合された一本鎖分子として、好適なポリペプチドリンカーで連結された軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含有する遺伝子操作分子として規定されることもある。抗体ならびに抗体のフラグメントおよび誘導体を作製する方法は、当該技術分野において公知である。
好ましい実施形態において、抗体はモノクローナル抗体である。
多くの場合、モノクローナル抗体とは、修飾されていない抗体であり、現在使用されている治療用抗体の大部分がこの部類に当てはまる。しかし、本発明の一実施形態では、抗体(モノクローナル抗体等)と、毒性物質または放射性物質等のさらなる付加分子(additional molecule)とを接合または融合させている。従って、接合抗体または融合抗体は、別の分子、すなわち、細胞に有毒な分子(薬物等)または放射性分子に結合している。抗体は、がん細胞の表面で特定の抗原に結合することにより、毒素または放射線を腫瘍に向ける。
毒性分子は、例えば、本明細書に記載される化学療法薬(例えば、下記モノメチルアウリスタチンE)等の一般的に用いられている薬物であればよいが、他の好適な分子を用いることもできる。例えば、タンパク質、ペプチドまたは他の生体分子等の高分子薬物を用いてもよい。抗体が化学療法剤(chemotherapy)または毒素で標識されている場合、それぞれ化学標識(chemolabelled)抗体または免疫毒素複合体として知られている。
放射性化合物が結合した抗体は、放射性標識抗体と称される。好適な放射性同位体の例としては、イットリウム−90、ヨウ素−131、ストロンチウム−89、サマリウム−153およびラジウム−223が挙げられる。
従って、本発明の一実施形態において、抗体は、接合抗体または融合抗体(もしくは融合タンパク質)である。すなわち、抗体と、毒素(例えば、タンパク質、ペプチドまたは化学療法薬等の薬物)または放射性同位体等のさらなる付加分子とを接合または融合させている。
別の実施形態では、抗体と低分子干渉RNA(siRNA)とを接合または融合させている。siRNAは、標的遺伝子サイレンシングに用いられる。しかし、siRNAをヒトの治療に用いる際には、有効なインビボ送達に加えて、標的細胞のみに薬物を送達できるようにすることが障害の一つとなっていた。抗体によって送達される薬剤を用いれば、特定の細胞型を標的としてsiRNAを送達させることができる。従って、本発明において、本明細書に記載される抗体とsiRNA分子とを接合または融合させてもよい。別の実施形態では、siRNAは、抗体に接合していない、すなわち、遊離(非結合)型であってもよい。
本発明において、がん抗原を認識して結合するならば、任意の適切な抗体を用いることができる。上述のように、がん抗原、すなわち、治療用抗体の標的の例としては、CD52、CD47、CD30、CD33、CD20、CD152およびCD279等の多くの「CD」タンパク質;血管内皮増殖因子(VEGF)等の増殖因子;上皮増殖因子受容体(EGFR)またはヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)等の増殖因子受容体が挙げられる。
上記抗原または標的に結合する数種の抗体が知られており、がん治療に承認されている。本発明は、これらの抗体のいずれかを用いることができる。好ましい抗体は、固形腫瘍、特に、乳がん、卵巣がんおよび膵がん等の改変されたECMを伴う固形腫瘍の治療において有用な抗体である。
公知であり、かつ承認された抗体には、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、セツキシマブ、ゲムツズマブ オゾガマイシン、イブリツモマブ チウキセタン、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブおよびトラスツズマブが含まれる。
アレムツズマブは、抗CD52ヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、フルダラビン抵抗性の慢性リンパ性白血病(CLL)、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫およびT細胞前リンパ球性白血病の治療に適応される。
ベバシズマブ(アバスチン)は、ヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、血管内皮増殖因子A(VEGF−A)(通常は接尾語を付けないVEGFと称される)に結合する。ベバシズマブは、VEGFに結合して物理的に阻害することにより、腫瘍の血管新生に重大な影響を与える受容体の活性化を阻止する。ベバシズマブは、大腸がん、腎臓がん、肺がん、卵巣がん、神経グリア芽細胞腫および乳がんを対象に認可されている。
ブレンツキシマブ ベドチンは、第二世代キメラ型IgG1抗体薬物複合体であり、ホジキンリンパ腫および未分化大細胞リンパ腫(ALCL)の治療に用いられる。ブレンツキシマブ ベドチンは、微小管を阻害することで細胞分裂を停止させる薬物であるモノメチルアウリスタチンEに接合した抗体である。この抗体は、ホジキンリンパ腫およびALCLの細胞表面に多く発現することが明らかになっているCD30に結合し、細胞内に取り込まれた後、抗体から薬物を放出して、その細胞効果を発揮する。抗体は、細胞分裂を停止させることにより、プログラム細胞死を誘導してがん細胞を死滅させる。
セツキシマブ(アービタックス)は、キメラ型IgG1モノクローナル抗体であり、上皮増殖因子受容体(EGFR)の細胞外ドメイン(細胞外の受容体の一部)を標的とする。セツキシマブは、大腸がんおよび頭頸部がんの治療に用いられる。細胞表面のEGFRにリガンドが結合すると、細胞内で、悪性特性(malignant characteristics)に関与するシグナル伝達経路が活性化される。シグナル伝達には、PI3K/AKT経路およびKRAS/BRAF/MEK/ERK経路が含まれる。このような経路により、がん細胞の増殖、浸潤および分化ならびにがん幹細胞の再生が行われる。セツキシマブは、競合的にリガンド結合を阻害することにより、EGFRの活性化を防ぎ、その後の細胞内シグナル伝達を遮断するように機能する。
ゲムツズマブ オゾガマイシンは、細胞毒性を有するカリケアミシン誘導体に化学的に結合したIgG4抗CD33抗体の「免疫複合体」であり、急性骨髄性白血病(AML)の治療に用いることができる。
イブリツモマブ チウキセタン(ゼヴァリン)は、放射性同位体イットリウム90(90Y)を結合させたキレート剤に化学的に結合したマウス型抗CD20抗体である。イブリツモマブ チウキセタンは、特定のタイプの非ホジキンリンパ腫、すなわち、B細胞腫瘍である濾胞性リンパ腫の治療に用いられる。
イピリムマブ(ヤーボイ)は、ヒトIgG1抗体であり、T細胞の活性化を負に調節する役割を果たす表面タンパク質CTLA4に結合する。CTLA4については、チェックポイント阻害剤との関連で後述する。
ニモツズマブは、キメラ型ヒト/マウス抗EGFRモノクローナル抗体であり、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)を対象に承認されている。
オファツムマブは、第二世代ヒトIgG1抗体であり、CD20に結合する。オファツムマブは、慢性リンパ性白血病(CLL)の治療に用いられる。なぜなら、CLLのがん細胞は、通常、CD20が発現しているB細胞だからである。CD20タンパク質の大ループに結合するリツキシマブと異なり、オファツムマブは、別の小ループに結合する。
パニツムマブ(ベクティビックス)は、ヒトIgG2抗体であり、EGF受容体に結合する。セツキシマブと同様に、パニツムマブは、受容体とそのリガンドとの相互作用を妨げることにより、受容体による細胞内シグナル伝達を遮断する。パニツムマブは、大腸がんの治療に用いられる。
リツキシマブは、その親抗体であるイブリツモマブから作製された、CD20に対して特異的なキメラ型モノクローナルIgG1抗体である。イブリツモマブと同様に、リツキシマブは、B細胞に存在するCD20を標的とする。このため、リツキシマブは、がん化したB細胞からなるある種の悪性腫瘍の治療に有効である。これらの悪性腫瘍には、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫および濾胞性リンパ腫等の侵攻性(aggressive)リンパ腫および緩慢性(indolent)リンパ腫、ならびにB細胞慢性リンパ性白血病等の白血病が含まれる。
トシツモマブは、「ベキサール」としても知られ、放射性ヨウ素131に共有結合したマウス型IgG2a抗CD20抗体であり、非ホジキンリンパ腫の治療に承認されていたが、市場から自主的に撤退した。
トラスツズマブ(ハーセプチン)は、上皮増殖因子受容体2型(HER2)タンパク質に対して特異的なモノクローナルIgG1ヒト化抗体である。トラスツズマブは、1998年にFDAの認可を取得して以来、乳がんの治療に臨床的に用いられている。HER2は、膜貫通型チロシンキナーゼの上皮増殖因子受容体(EGFR)ファミリーに属する受容体である。本発明の好ましい実施形態において、免疫療法剤、つまり抗がん剤は、好ましくは卵巣がんの治療に用いられるトラスツズマブである。
別の実施形態において、抗体は、抗CD47抗体、すなわち、CD47シグナル伝達を遮断する抗体である。このような抗体は、細胞およびマウスの臨床試験において、様々ながんおよび腫瘍の増殖を止めるか、または阻害することが示されている。CD47は、多くのがん細胞だけでなく、多くの正常な細胞にも存在している。
さらに別の実施形態において、抗体は、がん細胞の表面に見られる炭水化物分子に対する抗体である。例として、このような抗体は抗GD2抗体であってもよい。GD2は、多くの種類のがん細胞(神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、黒色腫、小細胞肺がん、脳腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、脂肪肉腫、繊維肉腫、平滑筋肉腫および他の軟部組織肉腫等)の表面に見られるガングリオシドである。GD2は、通常、正常組織の表面には発現しないため、免疫療法の良好な標的となり、腫瘍に対して特異的に作用するとともに、毒性を低下することが可能になる。
第2の例では、免疫療法剤はサイトカインである。サイトカインには、インターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子(TNF)および他の調節分子等の免疫調節剤が含まれる。サイトカインは、その機能、分泌細胞または作用の標的に基づいて、リンホカイン、インターロイキンおよびケモカインとして分類されている。各サイトカインは、対応する細胞表面受容体を有し、細胞機能を変化させる細胞内シグナル伝達のカスケードを起こす。がんとの関連において、サイトカインは、腫瘍内に存在する多くの細胞型で産生される。サイトカインは、当該技術分野において公知であり、そのようなサイトカインの全てが本発明による使用に含まれる。従って、一実施形態において、免疫療法剤はサイトカインである。好ましい実施形態において、サイトカインはインターロイキンまたはインターフェロンである。
インターロイキンは、免疫系に多様な影響を及ぼすサイトカインの一群である。インターロイキン(IL)の例としては、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7,IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15およびIL−17が挙げられる。好ましい実施形態において、インターロイキンは、IL−2である。
インターロイキン−2は、免疫系に非常に多くの影響を及ぼし、一般的なT細胞増殖因子として作用する。インターロイキン−2は、T細胞の表面に存在する受容体に結合することにより、これを行う。この結合がT細胞の増殖を促進して、サイトカインの産生を継続させるとともに、複数の種類の免疫細胞を活性化する。IL−2は、悪性黒色腫および腎細胞がんの治療に用いられる。高用量IL−2療法により、腎細胞がんおよび黒色腫の一部の患者(4%〜6%)で完全寛解が認められることが示されている。これは、このような一部の患者にとって、IL−2療法が内因性抗腫瘍免疫応答を操作することに成功したことを示唆するものである。正常な生理機能では、IL−2は、エフェクターT細胞(免疫応答を発生させる細胞)およびT調節細胞(免疫応答を抑制する細胞)の両方を促進するが、がん治療におけるその正確な機構は知られていない。
インターフェロンは、通常は抗ウイルス応答に関わる免疫系により産生されるサイトカインであるが、がんの治療にも用いられている。インターフェロン(IFN)は、I型(IFNαおよびIFNβ)、II型(IFNγ)および比較的新しく発見されたIII型(IFNλ)の3グループに分類される。好ましい実施形態において、免疫療法剤はインターフェロンαである。IFNαは、毛様細胞性白血病、エイズ関連カポジ肉腫、濾胞性リンパ腫、慢性骨髄性白血病および黒色腫で承認されている。
本発明は、上記サイトカインについて、それらの機能的に同等の変異体、誘導体およびフラグメントを含む、全ての公知の種類を用いることができる。従って、本明細書で用いられる「サイトカイン」には、そのようなフラグメント、変異体または誘導体が活性化しているか、または「機能的」である、すなわち、関連するサイトカインの少なくとも1つの機能または活性(生物活性等)を保持している限り、公知のサイトカインポリペプチドのアミノ酸配列変異体およびサイトカインポリペプチドのフラグメントまたはそれらの誘導体が含まれる。サイトカインは、組み換えポリペプチドでも、合成ポリペプチドでもよく、または天然源から単離されたものであってもよい。好適なサイトカインは市販されているため、当業者ならば知っているだろう。例えば、ヒトサイトカインは、ジェンスクリプト(GenScript)(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)から入手できる。
第3の例では、免疫療法剤は免疫チェックポイントを標的とした薬剤、すなわち、免疫チェックポイント阻害剤である。チェックポイントタンパク質は、どの細胞が正常で、どの細胞を破壊すべきかを免疫系に指示することで、免疫系を抑制している。チェックポイントタンパク質は、T細胞の活性化を阻止することにより、免疫系に対して「ブレーキ」の働きをする。細胞の表面に十分なチェックポイントタンパク質がないと、その細胞は免疫系によって破壊されてしまうことがある。がん細胞の場合、細胞ががんであるという情報を伝達する分子は存在するかもしれないが、細胞表面に十分なチェックポイントタンパク質があれば、この細胞は免疫応答を回避し得る。ゆえに、チェックポイントタンパク質は、がんの免疫療法が成功しない一因となると考えられてきた。
最もよく知られたチェックポイントタンパク質の例は、PD−L1(プログラム細胞死リガンド1)である。PD−L1の受容体は、PD−1である。PD−L1は、T細胞が正常な細胞を攻撃しないようにするものである。がん細胞は、防御機構として、PD−L1をアップレギュレート(upregulate)することがある。PD−L1がT細胞の表面に存在するPD−1受容体を活性化させると、このT細胞そのものを破壊するように情報が伝達される。T細胞が選択的にがん細胞を攻撃するようにプログラムされている場合、一連のT細胞は破壊され、がんが広がることになる。
別のチェックポイントタンパク質は、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)である。細胞傷害性T細胞が活性化すると、その表面にCTLA4を発現する。その後、CTLA4は、共刺激分子CD28と、抗原提示細胞上の共通のリガンドであるB7−1およびB7−2を競合する。このバランスによって細胞傷害活性が抑制される一方で、自己限定的にT細胞の機能を発揮することが可能になる。
他のチェックポイントタンパク質には、共刺激チェックポイントタンパク質であるCD−137(4−1BB);寛容T細胞(tolerant T cells)上にPD−1と共発現したCD4関連の抑制性受容体であるリンパ球活性化遺伝子3(LAG−3、CD223);B7のスーパーファミリータンパク質であるB7−H3およびB7−H4;T細胞タンパク質であるTIM3;および正常な細胞のリン脂質であって、アポトーシスの際に細胞の外面に転移することにより、崩壊する細胞物質を処理および除去するときに起こり得る過剰な免疫活性化を抑制するホスファチジルセリン(PS)が含まれる。PSの外在化により、マクロファージが間接的に刺激されるため、樹状細胞の抗原提示が抑制されることになる。PD−L1と同様に、外在化したPSは、腫瘍細胞および腫瘍由来微小胞で異常に発現している。従って、PSは、適応腫瘍免疫を阻止するために、腫瘍によって利用されると考えられる。
本発明による免疫療法剤は、上記チェックポイントタンパク質のいずれかを標的または阻害することができる。このような免疫療法剤は「チェックポイント阻害剤」として知られている。
チェックポイント阻害剤(免疫チェックポイント調節剤(immune checkpoint modulators)またはCPMとしても知られている)は、チェックポイントタンパク質の有効性を低減するように設計されている。理想的には、CPMにより、がんが免疫系にさらされても、その同じ免疫系が正常な組織を攻撃しないようにすべきである。
いくつかのチェックポイント阻害剤が公知であり、本発明に用いることができる。このような阻害剤は、例えば、Creelan (2014) Cancer Control 21:80-89に記載されており、その内容が参照により本明細書に援用される。
チェックポイント阻害剤の例としては、CTLA−4との親和性が高いヒトIgG2モノクローナル抗体であるトリメリムマブ(CP−675、206);CTLA−4に対するヒトIgG1モノクローナル抗体であるイピリムマブ(MDX−010);検出可能な抗体依存性細胞傷害(ADCC)が本質的に欠如しているヒトモノクローナル抗PD−1IgG4抗体であるニボルマブ(BMS−936558);Fc媒介性ADCCを阻止するように設計されたC228Pに突然変異を含有するヒト化IgG4抗PD−1抗体であるMK−3475(正式にはラムブロリズマブ);完全ヒトIgG4モノクローナル抗CD137抗体であるウレルマブ(BMS−663513);抗LAG−3モノクローナル抗体(BMS−986016);およびPSに対するキメラ型IgG3抗体であるバビツキシマブ(キメラ型3G4)が挙げられる。これら全てのチェックポイント阻害剤を本発明に用いることができる。
別の方針としては、腫瘍細胞の表面に存在するPD−L1(PD−1のリガンド)を阻害することである。従って、PD−L1の阻害剤も本発明に含まれる。例えば、MPDL3280A(RG7446)は、ヒトIgG1カッパ抗PD−L1モノクローナル抗体であり、本発明において用いられてもよい。MEDI4736は、別のIgG1カッパPD−L1阻害剤である。
別のアプローチは、B7−DC−Fc融合タンパク質を用いて、PD−1受容体を競合的に阻害することである。このような融合タンパク質も本発明に用いることができる。さらに別のアプローチは、免疫療法剤として、キラー細胞免疫グロブリン様受容体に対する抗体を用いることである。キラー細胞免疫グロプリン様受容体(KIR)は、ナチュラルキラー(NK)細胞上に存在する受容体であり、NK細胞傷害活性をダウンレギュレート(downregulate)する。HLAクラスI対立遺伝子特異的KIR受容体は、細胞溶解性(cytolytic)(CD56dimCD16+)NK細胞に発現するが、CD56brightCD16-NK細胞サブセットには発現しない。このように、抑制性KIRは、腫瘍周囲のNK細胞浸潤に選択的に発現すると見られるため、PL−1と同様に、腫瘍に取り込まれた(co-opted)チェックポイント経路であると考えられる。従って、抗体により特定のKIRを阻害すれば、NK細胞のインビボ活性化が持続されるはずである。例えば、リリルマブ(IPH2102)は、KIRに対する完全なヒトモノクローナル抗体であり、本発明において用いられてもよい。
免疫療法の別の選択肢は、免疫細胞療法に関するものであり、本発明は、そのような療法、例えば、養子細胞移入(adoptive cell transfer)と組み合わせて用いることもできる。がん治療のためのT細胞に基づく療法が数多く開発されているが、養子細胞移入(ACT)として知られている治療は、近年、ますます注目を浴びるようになってきた。これまでに、3つの主なACTの方針が立てられている。これらのうち第一の最も進んだものでは、末梢部位または腫瘍部位から患者自身の腫瘍反応性T細胞(腫瘍浸潤リンパ球(TIL)として知られている)を単離する。これらの細胞は、体外で増殖された後、患者に再注入される。
また、腫瘍を認識できる受容体で患者自身のT細胞を改変することを含む、2つの別の療法を用いることができる。一つの選択肢として、がん抗原に対して活性を有するTCR(T細胞受容体)を単離して特徴付けた後、このTCRをコードする遺伝子をT細胞に導入してから、患者に再注入する療法がある。この療法は、患者の固形腫瘍を縮小させることが示されているものの、使用されるTCRを患者の免疫型に一致させなければならないという大きな欠点がある。そこで、TCRを用いる代わりに、T細胞におけるキメラ抗原受容体(CAR)の発現を伴う療法も提案されている。CARは、TCR複合体のシグナル伝達ドメインに結合される抗体を含む融合タンパク質であり、適切な抗体が選択されると、腫瘍にT細胞を誘導するために用いることができる。TCRとは異なり、CARは、レシピエントとのMHC適合性(MHC-matched)を必要としない。
あるいは、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞でもよく、NK細胞は、必要に応じてCARを発現するように改変されてもよい。
従って、本発明によれば、免疫療法剤は、細胞、特にリンパ球等の免疫細胞、特に上述したT細胞またはNK細胞であってもよい。例えば、T細胞はTILでもよく、TCRまたはCARを発現するように改変されてもよい。NK細胞は、CARを発現するように改変されてもよい。
抗がん剤の別の選択肢は、マイクロRNA(miRNA)である。マイクロRNAは、小さな(22程度のヌクレオチドからなる)非コードRNA分子であり、植物、動物およびウイルス等に存在している。マイクロRNAは、RNAサイレンシングおよび遺伝子発現の転写後調節に機能する。また、miRNAは、mRNA分子中の相補配列との塩基対合を介して機能している。その結果、これらのmRNA分子は、mRNA鎖を2本に切断する、ポリA末端の短縮によってmRNAの不安定化させる、またはmRNAのタンパク質へ翻訳の効率が低下することによりサイレンシングされる。miRNAと上記siRNAとは、miRNAがRNA転写物の短いヘアピン状に折り返された領域に由来するのに対して、siRNAが二本鎖RNAの長い領域に由来すること以外は類似している。多くのmiRNAは、種々のがんに関連することが判明しており、このため「oncomirs」と称されることがある。
マイクロRNAは、がん治療において、マイクロRNAに基づく腫瘍療法に用いることができる。miRNA療法が開発された理由は、がんが発症する際に、異常に発現したmiRNAが重要な役割を果たしていること、さらに、miRNAの機能を弱めるか、または回復させることにより、このようなmiRNAの欠陥を補正すれば、miRNA補充療法等による治療的有用性が得られる可能性があるという前提に基づいている。例えば、MRX34(MiRNA療法)は、がん患者を対象とした臨床試験に進んだ最初のマイクロRNA補充療法である。MRX34は、様々ながんで低発現される、天然のマイクロRNA腫瘍抑制因子miR−34を模倣したものを送達するように設計された。MRX34は、本発明に用いることができる。
さらなる例によると、マイクロRNA−7は、23のヌクレオチドからなるmiRNAであり、その発現は、大部分が脳、脾臓および膵臓に厳しく調節および制限されている。miR−7のレベルの低下は、がんの発症および転移と関連付けられている。腫瘍抑制因子として、miR−7は、多くの直接的(上皮増殖因子受容体等)および間接的(リン酸化Akt(phospho-Akt)等)に増殖を促進するターゲット(growth promoting targets)を協調的にダウンレギュレートするように機能して、インビトロおよびインビボの腫瘍増殖を抑制する。さらに、miR−7は、治療抵抗性がん細胞の各種療法に対する感度を高め、転移を阻害する。従って、特定のヒトがんでmiR−7を補充すること(miRNA補充療法)は、新たな治療法となり得る。
本発明による抗がん剤として、任意の適切なmiRNAを用いることができる。miRNAは遊離型でもよく、別の分子に結合していなくてもよい。あるいは、miRNAは、別の分子(例えば、本明細書に記載される抗体)に接合または結合していてもよい。
本発明は、どんながんにでも適用可能である。本明細書において、がんとは、あらゆる腫瘍性疾患を含み、特に、悪性疾患または前がん状態を含むように広く規定される。がんとしては、固形腫瘍を発症する、もしくは固形腫瘍の原因となる、または固形腫瘍として顕在化するものがあるが、これらには限定されず、造血系のがんも含まれる。また、良性腫瘍も含まれる。
がんは、体のあらゆる組織または器官で起こり得る。例えば、本発明は、患者または対象について、下記のがんのいずれかの治療または予防に用いることができる。
すなわち、本発明は、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質がん、エイズ関連がん(カポジ肉腫およびリンパ腫等)、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、基底細胞がん、胆管がん、肝外、膀胱がん、骨がん(ユーイング肉腫、骨肉腫および悪性線維性組織球腫)、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、心臓腫瘍、中枢神経系のがん(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、胚芽腫、胚細胞腫瘍およびリンパ腫等)、子宮頚がん、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、大腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭管腫瘍、皮膚T細胞リンパ腫、胆管がん、肝外、非浸潤性乳管がん(DCIS)、胚芽腫、子宮体がん、脳室上皮腫、食道がん、神経上皮腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん(眼内黒色腫および網膜芽細胞腫等)、骨の線維性組織球腫、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、ヘアリーセル白血病、頭頚部がん、心臓がん、肝細胞(肝臓)がん、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、カポジ肉腫、腎臓がん(腎細胞およびウィルムス腫瘍等)、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、白血病(急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)および慢性骨髄性白血病(CML)等)、口唇がんおよび口腔がん、肝臓がん(原発性)、非浸潤性小葉がん(LCIS)、肺がん、リンパ腫、マクログロブリン血症、ワルデンシュトレーム、黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫、原発不明の転移性頸部扁平上皮がん、NUT遺伝子を含む正中管がん、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、小児期、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、脊髄形成異常性症候群、脊髄形成異常/骨髄増殖性腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔がんおよび副鼻腔がん、上咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口のがん(oral cancer)、口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、膵神経内分泌腫瘍(島細胞腫瘍)、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔がんおよび鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体がん、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、妊娠期の乳がん、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞(腎臓)がん、腎孟尿管、移行上皮がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、セザリー症候群、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮がん、原発不明の頸部扁平上皮がん、転移性、胃がん、T細胞リンパ腫、精巣がん、咽喉がん、胸腺腫および胸腺がん、甲状腺がん、腎孟尿管の移行上皮がん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症およびウィルムス腫瘍のいずれかの治療または予防に用いることができる。
本発明は、特に、改変されたECM(例えば、上述のような硬化または肥厚化したECM)を伴うがんの治療または予防を含む。改変されたECMは、乳がん、卵巣がんおよび膵がんに見られることがある。これに関して、線維形成性の(または線維形成性の高い)腫瘍または間質に関する腫瘍も含まれる。
さらなる実施形態では、がんは、1つ以上の固形腫瘍として提示される。好ましい実施形態において、がんは、乳がん、卵巣がんおよび膵がん、または間質が関与するがん、もしくは線維形成性の(または線維形成性の高い)がんから選択される。「間質が関与する」とは、腫瘍のがん細胞を取り囲み、結合組織、線維芽細胞、白血球および血管を含む、稠密な線維性の塊(間質と呼ばれる)が形成されることを表す。間質は、基本的に、血管、リンパ管および様々な悪性でない宿主細胞を含み、これらは全てECMに埋め込まれている。ある種のがん、とりわけ膵がんおよび卵巣がんにおいて、間質は、特に緻密または稠密であり、かつ広範囲に及ぶことがある。従って、ある種の腫瘍には間質バリア(stromal barrier)が設けられることがあり、そのような間質の豊富な腫瘍の治療は、本発明の特別な一態様である。
別の観点からは、ある種のがんは、線維形成に関連している可能性がある。線維形成は、線維芽細胞、がんが形成されている組織に由来する細胞、リンパ管および血管の内皮細胞、免疫細胞、病的に増加した神経ならびにECMからなり、がんの発症を促進する複雑な腫瘍微小環境を作り出すことにより、化学療法の障壁となると考えられている。膵がんはその顕著な例であり、例えば、膵管腺がんおよび乳がんも相当する。
オリゴウロン酸塩および抗がん剤は、本発明において、組成物、すなわち、医薬組成物という形で用いられてもよい。上述のように、オリゴウロン酸塩および他の抗がん剤は、単一の組成物として一緒に配合されてもよく、別々の組成物として別々に投与されてもよい。これは、他の抗がん剤の性質およびその選択された、または必要とされる投与方法によって決まる。本発明の驚くべき特徴は、対象に(例えば、全身投与または非経口投与により)オリゴウロン酸塩を単独で投与して、それとは別に投与された(異なる手段で投与されてもよい)抗がん剤の送達を増強できることである。特に、オリゴウロン酸塩を静脈内(i.v)投与することが好ましい。抗がん剤は、他の手段(他の非経口手段を含む)で投与されてもよく、別々に静脈内(i.v)投与されてもよい。
本発明に用いられる組成物は、例えば、1つ以上の製薬上許容される希釈剤、担体または賦形剤を用いて、製薬分野において公知の技術および手段により、任意の都合のよい方法で配合することができる。本明細書に記載される「製薬上許容される」とは、組成物中の他の成分との適合性があるだけでなく、レシピエントにとっても生理学的に許容される成分を意味する。組成物および担体または賦形剤材料の性質および投与量等は、選択肢、所望の投与経路および治療目的等に応じて、通常の方法で選択すればよい。投与量も、同様に、通常の方法で決めればよく、分子の性質、治療目的、患者の年齢および投与方法等によって異なってもよい。上述した本発明の治療薬のどれでも、製薬上許容される賦形剤と組み合わせて治療用組成物を形成することができる。
従って、「製薬上」または「製薬上許容される」とは、哺乳動物、とりわけヒトに、適宜投与された場合、副作用、アレルギー反応または他の有害反応を起こさない分子実体および組成物を意味する。製薬上許容される担体または賦形剤とは、無毒な固体、半固体もしくは液状充填剤、希釈剤、封入材料または各種の配合助剤(formulation auxiliary)を意味する。
医薬組成物の剤形、投与経路、投薬量および投与レジメン(dosage regimen)は、本来、治療されるがんの性質、疾病の重症度、患者の年齢、体重および性別等、または所望の治療期間によって決まる。
医薬組成物は、製剤のための製薬上許容されるビヒクルを含む。このようなビヒクルは、特に無菌等張食塩水(リン酸一ナトリウムもしくはリン酸ニナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウム等、またはこれらの塩の混合物)、または状況に応じて滅菌水または生理食塩水を添加することにより、溶液の投与を可能にする乾燥組成物もしくは凍結乾燥組成物であってもよい。
医薬組成物を調製するために、本発明によるオリゴウロン酸塩または抗がん薬の有効量を製薬上許容される担体または水性媒体に溶解または分散することができる。組成物は、公知のあらゆる担体、希釈剤または賦形剤を含んでもよい。例えば、非経口投与に適した製剤には、通常、塩化ナトリウム、グリセリン、グルコース、マンニトールおよびソルビトール等を用いて、好ましくはレシピエントの血液と浸透圧を等しくした、製薬上許容される活性成分の無菌水溶液および/または無菌水懸濁液が都合よく含まれる。
当該技術分野における一般的または標準的な任意の投与方法を用いることができる。例えば、医療技術分野において公知の適切な方法により、体表の内側および外側のいずれに対しても、注射、点滴、局所投与、吸入および経皮投与等を行うことができる。従って、投与方法には、経口投与、経鼻投与、経腸投与、直腸投与、膣内投与、経粘膜投与、局所投与もしくは非経口投与、または吸引が含まれる。腫瘍に直接投与してもよい。
オリゴウロン酸塩の場合、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与または皮下投与等の非経口的な投与手段が好ましい。特定の実施形態において、オリゴウロン酸塩および抗がん剤は、非経口的に、好ましくは静脈内に投与される。別の実施形態では、オリゴウロン酸塩は、例えば、注射または点滴により、腫瘍に直接投与される。
本発明の特定の実施形態において、オリゴウロン酸塩は、陽イオン性高分子材料と錯体を形成せず、陽イオン性高分子材料に含有されず、および/または小胞もしくは粒子、特に表面が正の電荷を帯びている小胞もしくは粒子の表面に含有されることも、存在することもない。従って、一実施形態において、オリゴウロン酸塩を含む粒子状もしくは小胞状の材料もしくは調製品、またはオリゴウロン酸塩が陽イオン性高分子材料を含む外殻を有する調製品は、本発明の範囲から除外される。より具体的には、オリゴウロン酸塩は、リポソーム、リポプレックスまたはポリプレックスの形で提供されることも、用いられることもない。
本発明の別の実施形態において、オリゴウロン酸塩は、微小球もしくは微小粒子、すなわち、直径がマイクロメートルの範囲(例えば、1μm〜1000μm)の球体もしくは粒子と錯体を形成せず、これらに含有されず、またはこれらの形をとることもない。特定の実施形態では、オリゴウロン酸塩は、微小球もしくは微小粒子と錯体を形成せず、これらに含有されず、またはこれらの形をとることもないアルギネートオリゴマーである。
本発明のさらに別の実施形態において、オリゴウロン酸塩は、水不溶性ポリマーおよび/または水膨潤性ポリマーではない。ゆえに、オリゴウロン酸塩は、水に溶けない「ゲル状」ではない。従って、本発明の好ましい実施形態では、オリゴウロン酸塩は水溶性である。
上述のように、オリゴウロン酸塩および抗がん剤は、同時に投与されても、別々に投与されても、または連続的に投与されてもよい。好ましい実施形態において、オリゴウロン酸塩および抗がん剤は、連続的に、例えば、別々の時間に投与される。すなわち、これらは、同一の組成物として一緒に投与されない。別の実施形態では、オリゴウロン酸塩および抗がん剤は、例えば、同一の組成物または別々の組成物として、一緒に同時に投与される。別々に投与するタイミングは、特定の抗がん剤、製剤および/または用いられる投与方法に応じて決めればよい。従って、オリゴウロン酸塩は、抗がん剤の前または後に投与されてもよい。例えば、まず、抗がん剤が非経口的に(例えば、静脈内または腹腔内)投与された後、適切な時間間隔をあけてから、オリゴウロン酸塩を投与することにより、抗がん剤が標的部位に送達する最適な時間に合わせることができる。このような投与は、完全に臨床医の通常の技能の範囲内である。従って、例えば、オリゴウロン酸塩は、抗がん剤投与の少なくとも、または最長で20分、30分、40分、50分、60分、70分もしくは90分または2時間、3時間、4時間、5時間もしくは6時間よりも前または後に、好ましくは非経口的に、より好ましくは静脈内に投与されてもよい。
本発明は、オリゴウロン酸塩および低分子抗がん剤(すなわち、非高分子薬物)、特に低分子化学療法剤を含む製品またはキットも提供する。キットまたは製品は、本明細書に記載されるあらゆる使用および方法、すなわち、がんを治療または予防するため、および/または抗がん剤の送達を増強するために用いることができる。特に、キットまたは製品は、同時に、別々にまたは連続的に用いるためのものである。オリゴウロン酸塩は、必要に応じて抗がん剤とともに、非経口投与、好ましくは静脈内(i.v.)投与のために配合されることが好ましい。
以下の限定されない実施例を参照して、本発明をさらに説明する。
図1は、(100μLのGブロックを添加した)300μLの対照(または検査)マトリゲル溶液を、10℃でレオメータのプレート(C40/1ジオメトリを使用)に塗布し、10℃〜37℃の温度範囲、0.5℃/minで実施された調査の結果を示す。 図2は、対照または(様々なオリゴウロン酸塩を添加した)異なる検査マトリゲル溶液を、10℃でレオメータのプレート(C40/1ジオメトリを使用)に塗布し、10℃〜37℃の温度範囲、0.5℃/minで実施された調査の結果を示す。 図3は、膵がんのインビボモデルにおいて、オリゴウロン酸塩が単独で用いられた場合または抗がん剤(ゲムシタビン)と併用した場合の、腫瘍サイズに対するオリゴウロン酸塩の効果を検査する試験の結果を示す。 図4は、図3と同じ試験における動物の平均体重を示す。 図5は、日数に対する腫瘍重量の各曲線を処置ごとにパネルに示す。 図6は、日数に対する腫瘍重量の平均値曲線を示す。 図7は、動的処置(active treatments)とビヒクルとを日ごとに比較するための、95%信頼区間の推定差を示す。 図8は、動的処置とビヒクルとを日ごとに比較するための、95%信頼区間の推定比を示す。 図9は、平均値曲線および近似(fitted)指数曲線と重ね合わせた各腫瘍重量曲線を示す。 図10は、処置ごとの近似指数曲線を示す。 図11は、Capan−2ヒト膵臓腫瘍異種移植モデルにおける、腫瘍重量に対するGブロックの効果を示す。実験の投与期間は、灰色の領域で示されている。各実験において、5つの動物群(n=10)に、ビヒクルまたは3つの濃度のGブロック(0.5mg/kg、25mg/kgまたは560mg/kg)を静脈内注射した。 図12は、組織学的結果を示す。組織サンプルは、ホルマリン固定された後、パラフィンに包埋され、加工され、さらにヘマトキシリン・エオシン(HE)染色された。エオシン染色された領域の白い領域は、ECMに形成された孔または開口を示している。 図13は、HE染色された実施例2の腫瘍サンプルの組織学的結果を示す。 図14は、対照およびGブロックで処置されたサンプルのマトリゲルにおける完全な蛍光回復に要する時間を示す。
実施例1
マトリゲル特性に対するオリゴウロン酸塩の効果
製造業者から入手したマトリゲル(BDバイオサイエンス)を用いた。検査済みのGブロック(Dp10、炭濾過(charcoal filtered))を、生理食塩水(150mM、NaCl)に10mg/mLで溶解した。このGブロック溶液および生理食塩水を氷上で冷却し、エッペンドルフ(Ependorf)製のラックおよびピペットの先端も冷却した。また、マトリゲル(100μL、エッペンドルフ×4)を氷上で解凍した。
対照として、マトリゲルを入れた2本のエッペンドルフのぞれぞれに、100μLの生理食塩水を添加し、上下にピペッティングして完全に混合した。これらの2本のチューブの内容物を氷上で混合し、貯蔵した。
Gブロックを検査するために、2本のエッペンドルフのそれぞれに、100μLのGブロック溶液を添加し、上下にピペッティングして完全に混合した。これらの2本のチューブの内容物を氷上で混合し、貯蔵した。
300μLの上記対照(または検査)マトリゲル溶液を、10℃でレオメータのプレート(C40/1ジオメトリを使用)に塗布して、流動学測定を行った。10℃〜37℃の温度範囲、0.5℃/minで複素弾性率(G*(Pa))を測定した。G*は、被験材料の機械的特性を示す。図1に結果を示す。
下記の他のオリゴウロン酸塩を用いて、実験を繰り返した。
対照(上記参照);Gブロック10(Dp10、94%G:5mg/mL);Gブロック20(Dp20、90%G:5mg/mL);Mブロック(Dp20、100%M:5mg/mL);およびガラクツロネートオリゴマー(十分に分析されていないが、Dpは10〜20の範囲であり、ガラクツロネート(GalU)は80%を超えると考えられた:5mg/mL)。図2に結果を示す。
実験では、ゲル形成の動態のみを調査し、平衡状態の性質は調査していない。それにもかかわらず、上記図面からは、オリゴウロン酸塩、特にアルギネートオリゴマー、とりわけGブロックオリゴマー(オリゴグルロネート)がマトリゲルECM調製品のレオロジーに影響を及ぼし、特にG*を低下させるのに効果的であったことが分かる。これは、構造が影響を受けている(破壊されている)ため、ECMの固体様挙動が抑制されることを明らかに示している。言い換えれば、オリゴウロン酸塩により、ECMのゲル挙動またはゲル状挙動が抑制される。
実施例2
Capan−2ヒト膵臓腫瘍異種移植モデルにおいて、Gブロックが単独で用いられた場合またはゲムシタビンと併用した場合のGブロックの効果
この試験の目的は、Capan−2ヒト膵臓腫瘍異種移植モデルにおいて、ゲムシタビンと併用したエンハンサーとしてGブロックの抗腫瘍活性を評価することにあった。ゲムシタビンは、治癒量ではなく、このモデルの概念評価の証拠となり得るようなレベルで添加された。効力は、11日目および74日目の処置群の腫瘍重量とビヒクル対照群の腫瘍重量とを比較し、さらに、11日目および74日目の併用群の腫瘍重量と各併用群のそれぞれの薬剤を単独で用いた場合の腫瘍重量とを比較することにより、評価した。
材料および方法
エヌティーエヌユー・テクノロジー・トランスファー・エーエス(NTNU Technology Transfer AS)(ノルウェー国トロンヘイム)から、白色吸湿性の非晶質粉末であるGブロック(ロット番号:PolyG230712−Dp10、95%G)を入手し、使用するまで室温で乾燥保存した。NTNUのGブロックをミリQ水に溶解して70mg/mLの濃度とし、原液として用いた。この溶液により、200μLの固定用量(fixed dose)で約560mg/kgの投与量を送達した。次に、70mg/mL溶液を、0.9%、150mMのNaCl溶液(ビー・ブラウンメディカル(B. Braun Medical)、カリフォルニア州アーバイン)に希釈し、200μLの一定投与容量(fixed dose volume)で約200mg/kg、約75mg/kg、約25mg/kgおよび約5mg/kgの投与量をそれぞれ送達した。全ての投与量計算は、25gの動物を前提としている。NTNUのGブロック70mg/mL原液は、試験の最初に作製された後、それぞれの投与前に希釈に用いられ、滅菌濾過されて、各投与間には4℃で保存された。未使用の全ての投与混合物は、試験終了後、TD2において適正に処分された。
イーライリリー・アンド・カンパニー(Eli Lilly and Co.)(インディアナ州インディアナポリス)から、溶液であるゲムシタビン(ロット番号:A892259C)を入手し、使用するまで室温で保存した。ゲムシタビンを食塩水(ビー・ブラウンメディカル(B. Braun Medical)、カリフォルニア州アーバイン)に希釈して0.5mg/mLの濃度とし、10mL/kgの投与容量で5.0mg/kgの投与量を送達した。ゲムシタビンは、それぞれの投与前に新たに作製された。未使用の全ての投与混合物は、毎回の投与後に、TD2において適正に処分された。
ビヒクル対照に0.9%、150mMのNaCl溶液を10mL/kgの投与容量で投与した。ビヒクル対照は室温で保存した。
細胞培養
Capan−2ヒト膵臓腫瘍異種移植細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(ヴァージニア州マナッサス)から入手した。培養物を、10%ウシ胎児血清(オメガ・サイエンティフィック(Omega Scientific)、カリフォルニア州ターザナ)を添加したマッコイ5A培地(McCoy's 5A medium)(ハイクローン(Hyclone)、ユタ州ローガン)で維持し、5%二酸化炭素雰囲気中に配置した。培養物は、十分な量の細胞が採取されるまで、分割比1:5で組織培養フラスコ内に増殖させた。
動物
ハーラン(Harlan)(ニューヨーク州ジャーマンタウン)から、雌無胸腺ヌードマウス(Hsd: Athymic Nude-Foxn1nu)が供給された。4週齢のマウスを入手した。全てのマウスは、取り扱う前に気候順化させた。マイクロアイソレーター・ケージ(microisolator cages)(ラボプロダクツ(Lab Products)、デラウェア州シーフォード)にマウスを収容し、特定病原体を含まない条件下で維持した。マウスには、実験動物用照射飼料であるTeklad Global Diet(登録商標)2920x(ハーラン(Harlan)、インディアナ州インディアナポリス)を与えて飼育し、オートクレーブ滅菌水(autoclaved water)を自由に飲めるようにした。全ての手順は、TGen薬剤開発動物実験委員会(TGen Drug Development Institutional Animal Care and Use Committee)(プロトコル番号:13046)によるガイドラインに従って行われた。
Capan−2ヒト膵臓腫瘍異種移植モデル
Capan−2腫瘍細胞(約5.0×106細胞/マウス)の懸濁液を含有する50%RPMI/50%マトリゲル(登録商標)(BDバイオサイエンス、マサチューセッツ州ベッドフォード)混合物0.1mLを、雌マウスの右脇腹に皮下接種した。接種後7日間、キャリパーを用いて腫瘍を測定し、動物試験管理ソフトウェアStudy Director V.2.1.1 (Study Log)1を用いて腫瘍重量を算出した。Study Directorを用いて、約140mgを平均値とするランダム平衡化を行うことにより、腫瘍サイズが101mg〜194mgの80匹のマウスを1群10匹からなる8群に無作為に分けた(1日目)。マウスを無作為化した際に体重を記録し、その後は、腫瘍測定とともに週2回記録した。下記表1に示すように投与を行った。
表1:Capan−2ヒト膵臓腫瘍異種移植モデルにおいて、Gブロックが単一の薬剤として用いられた場合およびゲムシタビンと併用した場合のGブロックの評価
全ての群は、74日目に終了した。腫瘍重量が1500mgを超えた場合、マウスは、試験終了前に犠牲にされた。剖検により、全ての群の全動物から腫瘍を切除し、二分して、ホルマリンの瓶(アゼル・サイエンティフィック/VWR(Azer Scientific/VWR)、ニュージャージー州フランクリンレイクス)に入れた後、約24時間固定してからエタノールに移した。ホルマリン固定された組織は、パラフィンに包埋され、加工され、さらにヘマトキシリン・エオシン(HE)染色された。
結果
全ての処置群において、試験の最初の数日後に体重の増加が示された。これは、治療レジメンが十分に許容されるものであったことを表している。数匹のマウスには、小さな腫瘍壊死が認められた。1匹のマウス(第2群マウス10)は、皮膚上の円板状丘疹(discoid papules)および塊を含む、特異的な臨床所見を呈した。ただし、この所見は、処置に関連したものとは判断されなかった。
図3(3AおよびB)および図4に結果をまとめて示す。これらの図に示されているように、驚くべきことに、単一の薬剤としてGブロックを用いた場合、ビヒクル対照と比較して、投与段階の最後に平均腫瘍重量が減少した。また、Gブロックとゲムシタビンとを併用した全ての処置において、ビヒクル対照と比較して、投与段階の最後に平均腫瘍重量が著しく減少した。単一の薬剤の場合、特にゲムシタビンだけの場合よりも、平均腫瘍重量の減少が見られた。
実施例3−統計分析
下記は、実施例2で報告された試験における腫瘍重量の統計分析に関する。これは、前臨床試験であり、マウス10匹ずつを、ビヒクル(偽薬)、Gブロック560mg(エンハンサー)、ゲムシタビン5mg(抗がん剤)またはゲムシタビン5mgとGブロック5mg、25mg、75mg、200mgもしくは560mgとの併用による8つの異なる処置に割り当てた。腫瘍重量および体重は、どちらも1日目に評価した後、74日目の最後の評価まで、週2回評価した。
統計分析
処置を固定因子とし、1日目の腫瘍重量を共変量とした分散分析(ANOVA)モデルを用い、各評価の分散は等しい(共変量のない1日目のモデル)と仮定して、それぞれの処置を比較した。評価日ごとに異なるモデルが割り当てられた。動的処置(active treatments)とビヒクルとの対差(pairwise differences)を計算し、かつGブロック560mgと、ゲムシタビン5mgと、これらの併用との対比較(pairwise comparison)を行ったことにより、上記差についての95%信頼区間および関連するP値(P-value)が出力された。加重最小二乗回帰を用いた基本的なANOVAから得られた処置平均値(treatment means)に直線を近似させることにより、ゲムシタビン5mgに加えてGブロックを投与した処置の用量反応を評価した。曲線下面積(AUC)は、台形法則を用いて計算し、さらに積分区間長で割ることにより標準化した。その結果、平均腫瘍重量(Eav)が求められた。Eavは、処置を固定因子としたANOVAモデルによって分析した。さらなる腫瘍データは、均等目盛による主分析として対応するモデルを用いた対数目盛で分析した。これは、まずデータのログが記録され、次に分析され、最後に結果が元の目盛に変換されることを意味する。このように作成された処置平均値は相乗平均になり、各処置間の差は、この相乗平均の比として表される。さらに、ログが記録されたデータの標準偏差を、元の目盛上のデータの変動係数(CV;相対標準偏差)に変換することができる。この分析において、特異点を避けるために、0mgの腫瘍重量(1匹のマウスが該当)は10mgに設定された。74日目までに、3つの値を除いてデータは完成した。これらは、分析においては欠落したままにされていたが、平均値曲線を形成する際には、延長された最終値に基づく帰属値(imputed values)が代わりに用いられた。
結果
腫瘍重量−日ごとの分析
図5に日ごとおよび処置ごとの腫瘍重量の各曲線を示し、図6に対応する平均値のグラフを示す。かなり一般的な開始腫瘍重量から、腫瘍重量が急激に増加しているマウスもあれば、ほとんど変化していないマウスもあり、これは、全ての処置群で見られた。従って、得られた平均値曲線は増加傾向を示しており、ビヒクル処置の曲線は最も急速な増加を示している。6つの各曲線は、グラフのスケールを分かりやすくするために、2000mgで切り捨てられている(すなわち、ビヒクルで3、ゲムシタビン5mgで2およびゲムシタビン5mgとGブロック5mgとの併用で1)。最大の腫瘍重量は3321mgであった。3匹のマウスは、腫瘍重要が3000mgを超えたため、71日目以降に終結させた(すなわち、ビヒクルで各1、ゲムシタビン5mgで2およびゲムシタビン5mgとGブロック5mgとの併用で1)。表2に、評価日ごとに別々に適用された基本的なANOVAの結果をまとめて示す。図7に、ビヒクルに対する動的処置の差を示す(1日当たりの95%信頼区間の推定された処置差(treatment difference))。1日目の各処置間で、腫瘍重量のバランスがよく取れていた。全ての活性薬剤、Gブロック560mg、ゲムシタビン5mgならびにゲムシタビン5mgとGブロック5mg、25mg、75mg、200mgおよび560mgとの併用による処置を行った結果、8日目に、ビヒクルに対して統計的に有意な差に到達した。統計的に有意な効果は、Gブロック560mgで24日まで、ゲムシタビン5mgで36日まで、ゲムシタビンとGブロックとの併用の場合、43日まで(Gブロック5mgおよび560mg)、46日まで(Gブロック25mgおよび200mg)または50日まで(Gブロック75mg)、それぞれ一貫して示された。モデルの残差標準偏差は、4日目の22mgから71日目の625mgに増加している。処置差は、処置の開始後、約1か月まで増加したが、その後はサイズがかなり一定に保たれたので、統計的に有意な効果の損失は、主として、データにおける変動の増加の影響によるものである。
曲線下面積(AUC)の分析
経時的な測定を組み合わせるために、腫瘍重量の曲線下面積(AUC)を計算した。0日〜60日、0日〜50日、0日〜39日および0日〜29日のそれぞれの時間間隔にわたって、異なるAUCを算出した。得られたACUを間隔の長さで割ることにより、各間隔にわたる平均腫瘍重量(Eav)として、さらに値を表した。
表3に、計算された各Eavパラメータについての基本的な分散分析の結果をまとめて示す。60日までの全ての間隔における組み合わせ(全てのGブロック投与量)、50日までの間隔におけるゲムシタビン5mgおよび39日までの間隔におけるGブロックに関して、ビヒクルに対する統計的に有意な効果を示すことができた。それぞれの日数を分析すると明らかなように、残差標準偏差は、間隔ごとに含まれる日数が増加するにつれて増加している。

乗法分析(Multiplicative analysis)
時間とともに腫瘍重量は増加し、また、ANOVAモデルにおける残留変動(residual variability)も増加する。表4に、分散の安定化を図るために、ログされた腫瘍重量データに基づく対応するANOVAモデルの結果をまとめて示す。このような乗法モデルにより、推定値として相乗平均が得られるため、処置群間の差は、この相乗平均の比として表される。図8に、95%信頼区間のビヒクルに対する推定比を示す。変動係数(CV)で表される変動は、依然として増加傾向を示していることから、(対数(log-arithmation))変換によって、十分に変動を安定させることはできなかった。(ビヒクルに対する)統計的に有意な効果に関して、結果は、対応する付加的な分析の結果に非常によく似ている。
モデルに基づくアプローチ
図6の平均値曲線を調査すると、指数関数による近似は、平均値データによく一致するようである。従って、Cを定数(共通の開始腫瘍重量)とし、処置iおよび試験中の時間t(日数−1)に対する腫瘍増殖率のy=C*exp(aj *t)で表されるモデルは、データに近似した。モデル化には、60日までのデータのみを用いた。
図9に、各曲線(細い赤の曲線)および観測された平均値曲線(青の曲線)とともに、得られた指数曲線(黒の曲線)を示す。全ての動的処置において、2つの曲線のタイプは非常によく似ている。ビヒクル処置では、いくらかの矛盾が示されているが、これは、概して腫瘍重量が最初に急激に増殖した後、その成長が遅くなるためである。これは、図9に示されている、非常に急速に腫瘍が増殖した3匹のマウスによるものである。一方、ビヒクルを投与されたマウスのなかには、腫瘍重量の増加をほとんど示さないものもあり、そのため、指数増殖は許容範囲に収まり、その群の平均的な挙動を表している。
図10に、8つの近似指数曲線を示す。これらの構造により、比率は処置間の差を示している。その結果、処置間の差は、時間がとともに単調に増加する。表5に、動的処置とビヒクルとの比率の差を示す。全ての動的処置の比率は、ビヒクルの比率よりも、統計的に有意に小さい。表6に、同様に動的処置間の比率の差を示す。単一の処置(mono-treatments)として投与された場合のGブロック560mgおよびゲムシタビン5mgのいずれに対しても、Gブロックとゲムシタビンとの全ての組み合わせにおいて、比率は、統計的に有意に小さいことが分かる。
実施例4
Capan−2ヒト膵臓腫瘍異種移植モデルにおける、Gブロック単独の効果についてのさらなる試験
この実験の目的は、用量反応を調査して、異なる投与レジメンを比較することにあった。Gブロック単独に関して、材料および方法は、実施例2に記載された通りである。2つの異なるGブロックの投与レジメンが検査された。第1のレジメン(Q3×4)は、実施例2と同様に、Gブロックを2日おきに計4回注入した。第2のレジメン(Q3×10)は、Gブロックを2日おきに計10回注入した。図11に結果を示す。各実験において、5つの動物群(n=10)に、ビヒクルまたは3つの濃度のGブロック(0.5mg/kgb.w.、25mg/kgb.w.または560mg/kgb.w.)を静脈内注射した。
実施例5
ECM構造に対するGブロックの効果
試験終了後、組織学的分析により、実施例2の腫瘍を分析した。剖検により、全ての群の全動物から腫瘍を切除し、二分して、ホルマリンの瓶(アゼル・サイエンティフィック/VWR(Azer Scientific/VWR)、ニュージャージー州フランクリンレイクス)に入れた後、約24時間固定してからエタノールに移した。ホルマリン固定された組織は、パラフィンに包埋され、加工され、さらにヘマトキシリン・エオシン(HE)染色された。図12の組織学的結果により、エオシン染色された領域における白い領域の割合が高いことから実証されるように、Gブロックで処置された動物は、細胞外マトリクスが低密度になることが示された。
実施例6
SK−OV−3ヒト卵巣腫瘍異種移植モデルにおいて、Gブロックが単一の薬剤として用いられた場合およびハーセプチンと併用した場合のGブロックの抗腫瘍活性の評価
この試験の目的は、SK−OV−3ヒト卵巣腫瘍異種移植モデルにおいて、ハーセプチンと併用したエンハンサーとしてのGブロックの抗腫瘍活性を評価することにある。
エヌティーエヌユー・テクノロジー・トランスファー・エーエス(NTNU Technology Transfer AS)(ノルウェー国トロンヘイム)から、白色吸湿性の非晶質粉末であるGブロック(ロット番号:PolyG230712−Dp10、95%G)を入手し、使用するまで室温で乾燥保存する。NTNUのGブロックをミリQ水に溶解して70mg/mLの濃度とし、原液として用いる。この溶液により、60μLの固定用量(fixed dose)で約25g/kg体重の投与量を送達する。70mg/mL溶液を、0.9%、150mMのNaCl溶液に希釈し、60μLの一定投与容量(fixed dose volume)で25mg/kgまたは0.5mg/kgの投与量を含む他の投与溶液を調製する。全ての投与量計算は、25gの動物を前提としている。NTNUのGブロック70mg/mL原液は、試験の最初に作製された後、それぞれの投与前に希釈に用いられ、滅菌濾過されて、各投与間には4℃で保存される。未使用の全ての投与混合物は、試験終了後、TD2において適正に処分される。
トラスツマブ(ハーセプチン)は、使用するまで室温で保存される。トラスツマブは、10mL/kgの容量で10mg/kg投与される。
ビヒクル対照に0.9%、150mMのNaCl溶液を60μLの一定投与容量で投与した。ビヒクル対照は室温で保存した。
細胞培養
SK−OV−3ヒト卵巣腫瘍異種移植細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(ヴァージニア州マナッサス)から入手される。培養物を、10%ウシ胎児血清を添加した培地で維持し、5%二酸化炭素雰囲気中に配置する。培養物は、十分な量の細胞が採取されるまで、組織培養フラスコ内に増殖させた。
動物
ハーラン(Harlan)(ニューヨーク州ジャーマンタウン)から、雌無胸腺ヌードマウスが供給される。5〜8週齢のマウスを入手する。マウスは、特定病原体を含まない条件下で維持される。マウスには、実験動物用照射飼料であるTeklad Global Diet(登録商標)2920x(ハーラン(Harlan)、インディアナ州インディアナポリス)を与えて飼育し、オートクレーブ滅菌水(autoclaved water)を自由に飲めるようにする。
SK−OV−3ヒト卵巣腫瘍異種移植モデル
SK−OB−3腫瘍細胞(約5.0×106細胞/マウス)の懸濁液を含有する50%培地/50%マトリゲル(登録商標)(BDバイオサイエンス、マサチューセッツ州ベッドフォード)混合物0.1mLを、雌マウスの右脇腹に皮下接種する。下記表7に従い、処置は1日目に開始する。腫瘍重量および体重を週2回測定する。また、下記表7にしめすように投与を行う。
表7:SK−OV−3ヒト卵巣腫瘍異種移植モデルにおいて、Gブロックが単一の薬剤として用いられた場合およびハーセプチンと併用した場合のGブロックの評価
腫瘍体積が3000mm3を超えた場合、マウスは、試験終了前に犠牲にされる。剖検により、全ての群の全動物から腫瘍を切除し、二分して、ホルマリンの瓶(アゼル・サイエンティフィック/VWR(Azer Scientific/VWR)、ニュージャージー州フランクリンレイクス)に入れた後、約24時間固定してからエタノールに移す。ホルマリン固定された組織は、パラフィンに包埋され、加工され、さらにヘマトキシリン・エオシン(HE)染色される。
統計分析
Student t−検定およびパーセントT/C計算(% T/C calculation)が行われる。成長曲線およびマウスの体重変化のグラフ(パーセント)を作成して、各療法の用量耐性(dose tolerance)を評価する。
実施例7
腫瘍組織へのリンパ球の浸潤
死後のマウスから、実施例2で得られたような腫瘍組織のサンプルを摘出し、パラフィンに包埋し、HE染色を用いた光学顕微鏡検査のために調製した。
対照群およびGブロック処置群のそれぞれのマウスから採取された組織切片内のリンパ球を観察し、その違いを確認した(図13Aおよび図13B参照)。Gブロック処置を施されていない対照群のマウスからの腫瘍組織と比較して、Gブロック処置を施されたマウスからの腫瘍組織では、リンパ球浸潤の程度がより大きいことが判明した。浸潤しているリンパ球の集団を示す(赤い矢印)。マウスは無胸腺ヌードマウスであり、Tリンパ球(キラーT細胞)が欠如しているが、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を有している。
実施例8
光退色後蛍光回復によって測定される、マトリゲル内のALEXA488で標識したIgGの移動性
解凍したマトリゲル(BDバイオサイエンス)から、濃度75%の細胞外マトリクスゲルを冷却して調製した。細胞外マトリクスゲルには、2μg/mLのALEXA488IgG(ヤギ抗ヒト、ライフテクノロジーズ(Life technologies))および5mL/mLのGブロック(DPn12、93%G)またはイオン強度を適合させた食塩水(対照)を含有させた。200μLのサンプルをピペットでカバーガラスチャンバーに移して密封した後、37℃で30分間加熱してゲル化を引き起こした。高強度レーザー光(波長488のアルゴンレーザー)を用いて、関心領域の蛍光標識されたIgGを退色させ、この領域における蛍光回復(すなわち、退色していない標識IgGが退色領域の外側から関心領域内に拡散することによって蛍光が回復すること)を監視した。
対照およびGブロックで処置されたマトリゲルに対する測定を20回行った場合に、完全な蛍光回復を達成するまでの時間(秒)を以下に示す(平均値±標準偏差)。図14に結果を示す。各群間の差は、Student t−検定(p=0.0005)により、統計的に有意であることが分かる。

Claims (28)

  1. 対象のがんの治療または予防において、抗がん剤として用いられるオリゴウロン酸塩であって、最大100個までのモノマー残基を含有し、前記モノマー残基の少なくとも70%はグルロネート残基である、オリゴウロン酸塩。
  2. 前記オリゴウロン酸塩は、2mer〜75mer、2mer〜70mer、2mer〜50mer、2mer〜35mer、2mer〜30mer、3mer〜35mer、3mer〜28mer、4mer〜25mer、6mer〜22mer、8mer〜20merまたは10mer〜15merである、請求項1に記載のオリゴウロン酸塩。
  3. 前記オリゴウロン酸塩の数平均重合度(DPn)は、2〜100、好ましくは2〜75、2〜50、2〜35または2〜30である、請求項1または2に記載のオリゴウロン酸塩。
  4. 前記オリゴウロン酸塩は、少なくとも75%、80%、85%または90%のG残基を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のオリゴウロン酸塩。
  5. 前記オリゴウロン酸塩は、全身投与または腫瘍に直接投与される、請求項1〜4のいずれかに記載のオリゴウロン酸塩。
  6. 前記オリゴウロン酸塩は、静脈内投与される、請求項1〜5のいずれかに記載のオリゴウロン酸塩。
  7. 前記オリゴウロン酸塩は、陽イオン性高分子材料と錯体を形成せず、陽イオン性高分子材料に含有されず、および/または小胞もしくは粒子の表面に含有されることも、存在することもなく、および/または微小粒子と錯体を形成せず、微小粒子に含有されず、または微小粒子の形をとらない、請求項1〜6のいずれかに記載のオリゴウロン酸塩。
  8. 前記オリゴウロン酸塩は水溶性である、請求項1〜7のいずれかに記載のオリゴウロン酸塩。
  9. 前記がんは、1つ以上の固形腫瘍として提示される、請求項1〜8のいずれかに記載のオリゴウロン酸塩。
  10. 前記がんは、改変された細胞外マトリクス(ECM)を伴う、請求項1〜9のいずれかに記載のオリゴウロン酸塩。
  11. 前記ECMは、非がん性組織の対応するECMと比較して、厚くなる、および/または硬くなる、および/または密度が高くなる、請求項10に記載のオリゴウロン酸塩。
  12. 前記がんは、間質の関与または線維形成性腫瘍を示す、請求項10に記載のオリゴウロン酸塩。
  13. 前記がんは、乳がん、卵巣がんおよび膵がんから選択される、請求項1〜12に記載のオリゴウロン酸塩。
  14. 前記対象はヒトである、請求項1〜13に記載のオリゴウロン酸塩。
  15. がんを治療または予防するための治療製品の製造における、請求項1〜8のいずれかに規定されたオリゴウロン酸塩の使用であって、
    前記がんは、請求項1または9〜13のいずれかに規定されている、オリゴウロン酸塩の使用。
  16. がんを治療または予防するために抗がん剤とともに用いられる、請求項1〜8のいずれかに規定されたオリゴウロン酸塩であって、
    前記がんは、請求項1または9〜13のいずれかに規定されている、オリゴウロン酸塩。
  17. 前記抗がん剤は、分子量が2000Da未満、好ましくは1000Da未満の低分子である、請求項16に記載のオリゴウロン酸塩。
  18. 前記抗がん剤は化学療法薬である、請求項16または17に記載のオリゴウロン酸塩。
  19. 前記抗がん剤は免疫療法剤であり、好ましくは抗体、サイトカインおよびチェックポイント阻害剤から選ばれる、請求項16に記載のオリゴウロン酸塩。
  20. 前記抗がん剤と毒性化合物または放射性化合物とを接合または融合させている、請求項19に記載のオリゴウロン酸塩。
  21. 前記サイトカインは、インターロイキン−2およびインターフェロンαから選択される、請求項19に記載のオリゴウロン酸塩。
  22. 前記チェックポイント阻害剤は、PD−L1またはCTLA4を標的とする、請求項19に記載のオリゴウロン酸塩。
  23. 対象のがんを治療または予防する方法であって、
    請求項1〜8のいずれかに規定されたオリゴウロン酸塩を、単独で、または別の抗がん剤と組み合わせて患者に投与することを含み、
    前記別の抗がん剤は、請求項17〜22のいずれかに規定されている、方法。
  24. がんの治療または予防において、抗がん剤の対象への送達を増強するのに用いられる、請求項1〜8のいずれかに規定されたオリゴウロン酸塩であって、
    前記抗がん剤は、請求項17〜22のいずれかに規定されており、
    前記がんは、請求項1または9〜13のいずれかに規定されている、オリゴウロン酸塩。
  25. 抗がん剤をさらに含む治療製品の製造における、前記抗がん剤の送達を増強するための、請求項1〜8のいずれかに規定されたオリゴウロン酸塩の使用であって、
    前記抗がん剤は、請求項17〜22のいずれかに規定されており、
    前記がんは、請求項1または9〜13のいずれかに規定されている、オリゴウロン酸塩の使用。
  26. 請求項1〜8のいずれかに規定されたオリゴウロン酸塩と、
    さらに請求項17〜22のいずれかに規定された抗がん剤とを含むキットであって、
    請求項1または9〜13のいずれかに規定されたがんの治療または予防に用いるための、および/または抗がん剤を必要としている対象への送達を増強するためのキット。
  27. 請求項1〜8のいずれかに規定されたオリゴウロン酸塩と、
    さらに請求項17〜22のいずれかに規定された抗がん剤とを含む、複合調整品としての製品であって、
    請求項1または9〜13のいずれかに規定されたがんの治療または予防において、別々に、連続的にまたは同時に用いるための、および/または抗がん剤を必要としている対象への送達を増強するための製品。
  28. 抗がん剤の送達を増強する方法であって、
    前記抗がん剤を必要としている対象に、前記抗がん剤とオリゴウロン酸塩とを同時投与することを含み、
    前記オリゴウロン酸塩は、請求項1〜8のいずれかに規定されており、
    前記抗がん剤は、請求項17〜22のいずれかに規定されている、方法。
JP2016560044A 2013-12-23 2014-12-23 がん治療におけるオリゴウロン酸塩の使用 Pending JP2017501221A (ja)

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