JP2017221231A - 熟成型ナチュラルチーズの製造方法及び、熟成型ナチュラルチーズの熟成を促進する方法 - Google Patents

熟成型ナチュラルチーズの製造方法及び、熟成型ナチュラルチーズの熟成を促進する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熟成期間や風味(特に旨味)を簡便な操作で効率的に制御や調整できる、ナチュラルチーズの製造方法を提供する。
【解決手段】ナチュラルチーズの製造工程において、ホエイを排出した後のチーズカード(すなわち、熟成前のチーズカード)及び/又はチーズ(すなわち、熟成初期のチーズ)に対して、乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素の中のいずれか、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを追加してから熟成する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、従来法よりも熟成期間を短縮しながら、従来品と比べて風味を同等以上にでき、一方、従来法と熟成期間を同等にすれば、従来品と比べて風味を向上(強化)できる、ナチュラルチーズの製造方法に関する。
熟成型のチーズには、チェダー、ゴーダ、エダム、エメンタール、パルメザン、カマンベール、ブルーなどがある。この熟成型のチーズでは主に、熟成中の酵素反応により風味が形成される。そして、この酵素反応には次のような酵素が関与している。
(A-1) 生乳に由来する酵素(生乳を殺菌しても残存している耐熱性菌などに由来する酵素)
(A-2) 乳酸菌に由来する酵素(ペプチダーゼ、アミノペプチダーゼなど)
(A-3) レンネットに由来する酵素
(A-4) カビなどの乳酸菌以外の微生物に由来する酵素(カビなどを使用したチーズの場合)
ここで、カビなどを使用したチーズの場合には、前記(A-4)のカビなどの微生物に由来する酵素が風味の生成に最も影響するが、それ以外のチーズの場合には通常、前記(A-2)の乳酸菌に由来する酵素が熟成中の風味の生成に大きく影響する。
チーズの風味は酵素反応により、その成分であるタンパク質、炭水化物、脂肪が分解されて生成される。このとき、タンパク質の場合には、アミノ酸、アミン、硫黄化合物など、炭水化物の場合には、乳酸、エタノール、アルデヒドなど、脂肪の場合には、脂肪酸、ケトン、ラクトンなどが主な風味成分(呈味物質、香気物質、フレーバー)として生成される。そして、乳酸菌(スターター)の菌種や菌株により、酵素の産生量や種類が異なるため、風味成分の生成量や種類も異なり、乳酸菌が異なると、チーズの風味も異なることとなる。そのために、乳酸菌製造者(スターターサプライヤー)では、同種のチーズの製造に対して複数のスターターを取り揃えており、チーズ製造者(チーズメーカー)では、それぞれの判断でスターターを選択して使用している。
一方、チーズの風味は勿論、チーズの製造条件(化学的条件、物理的条件など)にも影響される。これは、乳酸菌の生育が変化することで、酵素の産生量や種類が異なったり、酵素反応が変化したりして、チーズの微量成分の濃度や種類などが変化するからである。ここで、チーズの製造条件には、例えば、原料乳(チーズ用乳)の成分組成、カードの調製時の温度やpH、熟成温度や熟成期間(熟成速度)などがある。ところが、チーズ製造者(チーズメーカー)では、それぞれの判断でチーズの製造条件を選択しているというよりも、むしろ歴史的な伝統や経験に基づいて、その製造条件を選択していることが多い。そして、そのような製造条件を選択することが最良だと考えられていた。
ところで、近代の多くのナチュラルチーズでは、原型(オリジナル)が西欧で作られており、そのチーズの風味や食べ方などは、西欧の食文化と深く結び付いている。つまり、多くのチーズでは西欧の食文化に合わせて風味などを選択し、さらには、チーズの製造条件を選択していることとなる。これに対して、日本の食文化は西欧のものとは異なるため、全てのチーズがオリジナルの製造条件や風味などのままで、日本の一般消費者に受け入れられるとは限らない。例えば、熟成型のチーズの風味について、日本では西欧と異なり、脂肪酸などに由来した風味成分(フレーバー)が弱く穏やかで、風味では特に旨味が強いと好まれる傾向にある。チーズ製造者にとって、熟成型のチーズの風味を日本の消費者の嗜好に合わせてアレンジすることは、製品の市場性を高める上で大きな関心事であり、その風味や嗜好のポイントは旨味の強調(強化)にあると考えられる。一方、チーズの熟成には長い期間(多くの日数)を要し、その保管設備(熟成庫)の設置費や運転費などが必要となる。このとき、チーズの熟成を促進して、熟成速度を速められれば、熟成庫の運転費(保管料)などを低減できることにもなる。そのために様々な方法が試行されてきた。
ナチュラルチーズの熟成は主にスターター乳酸菌の産生する酵素によって進行する。旨味やテクスチャーに関係するのはたんぱく質分解酵素(プロテアーゼ)である。プロテアーゼはその作用機作からエンドプロテアーゼとエキソプロテアーゼに分けられる。エンドプロテアーゼはたんぱく質分子の内部に位置するペプチド結合を切断する。エキソプロテアーゼは低分子ペプチドのN末端側やC末端側から作用してアミノ酸やジペプチドに切断する。乳酸菌は生残しているときは菌体外に酵素を放出し(菌体外酵素、主にエンドプロテアーゼ)、熟成中に死滅したときは溶菌によって菌体内酵素(主にエキソプロテアーゼ)を放出する。旨味(アミノ酸)を産生するのは主にエキソプロテアーゼである。通常、チーズに使われる乳酸菌は乳酸を生成してレンネットの効果を高め、カードの生成を促し、熟成中に酵素を放出して風味生成、テクスチャーの軟化に寄与する。
非特許文献1には、チーズの風味をアレンジしたり、熟成速度を制御したりする方法が記載されている。すなわち、(B-1) 熟成温度の制御(上昇)、(B-2) 乳酸菌以外に由来するプロテアーゼの使用、(B-3) アジャンクトスターターの使用、(B-4) 遺伝子組み換えスターターの使用、(B-5) 高圧処理したスターターの使用などである。前記(B-1)では、酵素反応の速度を制御していることになる。ただし、熟成温度には一般的に上限(15℃程度)があるため、チーズの風味をアレンジしたり、熟成速度を速めたりする効果にも限界があることとなる。前記(B-2)では、乳酸菌以外に由来するプロテアーゼの酵素製剤として、カビ由来の酵素抽出物などが実際に販売されている。ただし、カビ由来の酵素を使用すると、チーズで苦味が出やすく、チーズの種類や風味が限定される。前記(B-3)では、メインスターターに加えて、アジャンクトスターターを併用することとなる。アジャンクトスターターには酸生成能が低いなどの理由で、メインスターターに使用できないものなどが選抜される。前記(B-4)では、遺伝子組み換え操作により、乳酸菌の酵素産生能を高めたスターターなどを使用することとなる。ただし、スターターの種類が限定され、チーズの種類や風味が限定される。前記(B-1)と(B-3)は実際の製造へ適用されているが、前記(B-2)と(B-4)は実際の製造へ殆ど適用されておらず、あまり実用的ではない。
また、チーズの熟成を促進することを目的として、非特許文献2には、チーズ製造用のタンク(チーズバット)で、原料乳(チーズ用乳)に乳酸菌スターターの所定量を添加し、温度を30℃、pHを6.6に保持しながら10時間程度で発酵(培養)することで、チーズ用乳の乳酸菌を高濃度にしてから熟成する方法が記載されている。ただし、チーズ用乳の温度やpHを制御しながら、チーズバットに長時間で保持するために、大量生産や連続生産などでは製造効率が非常に悪くなり、実用的ではない。また、30℃付近にして長時間で保持するために、細菌増殖(細菌汚染)や、乳酸菌の酸生成(発酵)に伴う品質劣化(酸度上昇)などの問題が起こる可能性もある。
特許文献1には、乳酸菌の培養物(スターターなど)を加圧処理し、乳酸菌の酸生成能を消失させた上で、その培養物を酵素調製物として、スターターと併用する方法が記載されている。ただし、乳酸菌の活性を制御するために、加圧処理という手間が増えることとなる。また、酵素調製物を原料乳(チーズ用乳)へ添加するため、その有効成分である酵素の多くがホエイと共に排出されてしまうことが危惧される。つまり、実際に添加した酵素の一部のみがチーズカードに保持されて活用されることとなり、その有効成分である酵素の損失(ロス)が多いこととなる。
特許文献2には、特定のカビ由来の酵素と、特定の乳酸菌由来の酵素を併用する方法が記載されている。ただし、特定のカビや乳酸菌を用いるために、汎用性の低い技術である。そして、乳酸菌の培養物を酵素(リゾチーム)で処理するために、酵素反応という手間が増えることとなる。また、カビ由来の酵素を用いるために、チーズで苦味が出やすく、チーズの種類や風味が限定されることが危惧される。
近年チーズの熟成を速めるため、カビなどの微生物が産生するたんぱく質分解酵素を抽出しチーズ生産に導入する検討が行われている(特許文献3、特許文献4)。また、チーズ熟成促進目的とは限らないが、食品用に微生物由来たんぱく質分解酵素も販売されている。
しかしながら、販売されている微生物由来たんぱく質分解酵素がナチュラルチーズの風味強化あるいは熟成促進に実用化されている例は殆ど無い。チーズ関連での利用はEMC(Enzyme Modefied Cheese:チーズ呈味剤)の生産で使われている場合が殆どである。ナチュラルチーズの風味強化あるいは熟成促進に実用化されていない理由は苦味が出るからである。EMCの場合は、チーズよりもたんぱく質の分解を進めるため、苦味ペプチドもさらに分解され、苦味は少ない。
チーズの苦味はたんぱく質が分解されていく過程で苦味ペプチドが生成するために発生する。一般に乳酸菌由来エキソプロテアーゼは、アミノ酸が多数つながったたんぱく質分子鎖の端からアミノ酸に分解していくが、市販されている微生物由来たんぱく質分解酵素の多くはたんぱく質分子鎖の中ほどから分解するエンドペプチダーゼの活性が高いため、苦味を発生しやすい。
特開平3−160944号公報 特開平7−236484号公報 特開平3−160944号公報 特開平7−236484号公報
CHEESE Chemistry, Physics and Microbiology, Third Edition (Fox) P.289, 2004 Netherlands Milk & Dairy Journal, Vol.15, 1961
本発明は、上記従来技術の課題点を鑑みてなされたものであり、熟成期間や風味(特に旨味)を簡便な操作で効率的に制御や調整できる、ナチュラルチーズの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、大量生産や連続生産などで特に実用的であり、熟成を促進しながら、旨味を強化しつつ、苦味を抑制できる、熟成型のナチュラルチーズの製造方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、熟成型のナチュラルチーズの風味を改善し、苦味が殆ど無く、うまみなどのチーズ風味が強く、短期間で所定の熟成風味や組織に到達するチーズとその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、熟成中の酵素反応に関与する酵素やその添加条件を工夫することで、熟成期間や風味を簡便な操作で効率的に制御や調整できるという知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、熟成中の酵素反応に関与する酵素を産生する乳酸菌やその菌体破砕処理物の添加条件あるいは、微生物由来のたんぱく質分解酵素の添加条件を従来のナチュラルチーズの製造工程において工夫することで、熟成期間や風味を簡便な操作で効率的に制御や調整できるという知見を見出し、本発明を完成するに至った。
このとき、ナチュラルチーズの製造工程において、チーズカードやチーズへ乳酸菌やその菌体破砕処理物を菌体濃度が高くなるように追加してから熟成し、乳酸菌に由来する酵素を意図的に増やして活用することで、熟成を促進しつつ、風味を良好にした(特に旨味を強調した)、熟成型のチーズが得られるという知見を同時に見出した。
また、本発明者らは、酵素のたんぱく質分解パターンから苦味を発現しやすいかどうかを予想することができるであろうと仮定して鋭意検討した。その結果、酵素を添加したチーズを熟成させ、熟成途中のたんぱく質の分解状況を把握することで、酵素の種類と添加量の選択、熟成条件の設定により苦味が無く、良好な熟成風味を強化できる方法を見出した。
具体的には、熟成前のチーズカードや熟成中のチーズへ乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素の中のいずれかを追加(添加、接種など)した後に熟成を開始や継続するものである。あるいは、乳酸菌と乳酸菌の菌体破砕処理物との双方、乳酸菌と微生物由来のたんぱく質分解酵素との双方、乳酸菌の菌体破砕処理物と微生物由来のたんぱく質分解酵素との双方、乳酸菌と乳酸菌の菌体破砕処理物と微生物由来のたんぱく質分解酵素の中のいずれかを追加(添加、接種など)した後に熟成を開始や継続するものである。これらによってチーズの旨味が速く発現され、チーズの旨味が増強され、その結果として、チーズの熟成が促進されること、また苦味が抑制されることを見出した。
このとき、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対して乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素などを添加することが好ましいことを見出した。このようにすると、乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素などをチーズカードやチーズへ直に添加することになる。そこで、その有効成分である乳酸菌由来の酵素や、微生物由来のたんぱく質分解酵素がホエイと共に排出されることがない。つまり、実際に添加した乳酸菌由来の酵素や、微生物由来のたんぱく質分解酵素の全部か大部分がチーズカードに保持されて活用されることとなり、その有効成分である酵素の損失(ロス)がないか僅かで少ないこととなる。
通常のスターターに追加して、乳酸菌(生菌)を添加する場合に、原料乳(チーズ用乳)に対し、乳酸菌を添加すると、例えば、原料乳のpHが低下しすぎて、チーズカードが硬くなりすぎる、水分が低くなりすぎる、酸味が強くなりすぎるなどで、チーズカードの生成する状態へ影響する。しかし、チーズカードに対し、乳酸菌や、微生物由来のたんぱく質分解酵素を直に添加すると、カードの生成する状態へ影響しない。
ところで、乳酸菌(生菌)は本来、チーズの熟成中にチーズカード中で徐々に死滅しながら溶菌する。そして、その結果として、菌体内の酵素が菌体外に放出され、それらの酵素の作用でチーズの成分が分解される。そのため、菌体内の酵素がチーズの成分に作用するには溶菌するまでの時間が必要になる。これに対して、乳酸菌を菌体破砕処理して、乳酸菌の細胞壁を破壊すると、あらかじめ菌体内の酵素が菌体外に放出され、チーズカードやチーズへ添加した時点から、チーズの成分に作用することになり、乳酸菌を生菌で添加するよりも短時間で効率的に熟成を促進できる。これらの知見に基づき、従来法よりも熟成期間を短縮しながら、従来品と比べて風味を同等以上にでき、一方、従来法と熟成期間を同等にすれば、従来品と比べて風味を良好にできる(特に旨味を強調できる)、ナチュラルチーズの製造方法を見出した。
本発明においては、乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素などをチーズカードやチーズへ直に添加することから、チーズの風味を熟成の途中から調整できる。そこで、チーズカードの形成には、乳酸菌スターターの代わりに、あるいは乳酸菌スターターと共に、pH調整剤を使用しても良いこととなる。このとき、pH調整剤として、グルコノデルタラクトン(GDL)を例示できる。グルコノデルタラクトン は原料乳(チーズ用乳)のpHを少しずつ所定の時間で低下させて、チーズカードを所定の物性(硬さ)で形成させる。乳酸菌スターターの代わりにpH調整剤を使用すると、チーズカードの風味や物性は、乳酸菌スターターに影響されない。そこで、熟成型のナチュラルチーズにおいて、チーズカードへ添加する乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素などによって風味や物性を任意に調整できるようになる。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
請求項1の発明は、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対し、菌体濃度で107個/g以上になるように乳酸菌を追加してから熟成することを特徴とするナチュラルチーズの製造方法である。
請求項2の発明は、乳酸菌が生菌であることを特徴とする請求項1に記載のナチュラルチーズの製造方法である。
請求項3の発明は、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対し、菌体濃度で105個/g以上に相当するように乳酸菌の菌体破砕処理物を追加してから熟成することを特徴とするナチュラルチーズの製造方法である。
請求項4の発明は、菌体破砕処理が100MPa以上の操作圧力での均質化処理であることを特徴とする請求項3に記載のナチュラルチーズの製造方法である。
請求項5の発明は、膜分離法、遠心分離法、真空蒸発法の何れかの方法により濃縮された乳酸菌を用いることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のナチュラルチーズの製造方法である。
請求項6の発明は、凍結乾燥法、減圧噴霧乾燥法、噴霧乾燥法の何れかの方法により乾燥された乳酸菌を用いることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のナチュラルチーズの製造方法である。
請求項7の発明は、中和培養した乳酸菌を用いることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のナチュラルチーズの製造方法である。
請求項8の発明は、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対し、微生物由来のたんぱく質分解酵素を添加してから熟成することを特徴とするナチュラルチーズの製造方法である。
請求項9の発明は、微生物由来のたんぱく質分解酵素を添加した後、熟成したチーズのリンタングステン酸可溶性窒素量(Phospho Tangsten Acid Soluble Nitrogen(PTASN))が全窒素量(Total Nitrogen(TN))に対して6.0〜8.5%(PTASN/TN×100)に達した時点で、水溶性窒素量(Water Soluble Nitrogen (WSN))とPTASNの比(WSN/PTASN)が4.5以下であることを特徴とする請求項8記載のナチュラルチーズの製造方法である。
請求項10の発明は、微生物由来のたんぱく質分解酵素はプロテアーゼ活性が2000unit/g以上であり、なおかつペプチダーゼ活性が160unit/g以上であることを特徴とする請求項8又は9記載のナチュラルチーズの製造方法である。
請求項11の発明は、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズを殺菌しないことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のナチュラルチーズの製造方法である。
請求項12の発明は、チーズカードは、原料乳へpH調整剤を添加して形成されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のナチュラルチーズの製造方法である。
請求項13の発明は、pH調整剤がグルコノデルタラクトンであることを特徴とする請求項12に記載のナチュラルチーズの製造方法である。
請求項14の発明は、請求項1〜13に記載の製造方法を用いて製造したナチュラルチーズである。
本発明によれば、熟成期間や風味(特に旨味)を簡便な操作で効率的に制御や調整できる、ナチュラルチーズの製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、大量生産や連続生産などで特に実用的であり、熟成を促進しながら、旨味を強化しつつ、苦味を抑制できる、熟成型のナチュラルチーズの製造方法を提供できる。
更に、本発明によれば、熟成型のナチュラルチーズの風味を改善し、苦味が殆ど無く、うまみなどのチーズ風味が強く、短期間で所定の熟成風味や組織に到達するチーズとその製造方法を提供できる。
従来のゴーダチーズの熟成開始後の可溶性窒素含量を表すグラフ。 本発明のチェダーチーズの熟成開始後の可溶性窒素含量を表すグラフ。 本発明のチェダーチーズの熟成開始後の酵素活性を表すグラフ。 本発明のゴーダチーズの熟成開始後の可溶性窒素含量を表すグラフ。 本発明のゴーダチーズの熟成開始後の可溶性窒素含量を表すグラフ。 本発明(酵素添加)のチェダーチーズの熟成開始後の可溶性窒素含量を表すグラフ。
本発明者らは、熟成型のチーズでは、熟成中に、酵素がチーズカードやチーズの成分(タンパク質、炭水化物、脂肪など)を分解することで、風味成分(フレーバー)が生成されていることに改めて着目した。
そして、従来のナチュラルチーズの製造工程において熟成中の酵素反応に関与する酵素を産生する乳酸菌やその菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素などの様々な添加条件により、熟成型のチーズを試作し、それらのチーズについて食感や風味、物性などを評価・解析した。このとき、食感や風味の評価には官能検査を用い、物性の評価には熟成の進行の指標として可溶性窒素含量を用いた。これら食感や風味と物性を同時に評価・解析することにより、食感や風味の良好な熟成型のチーズの効率的な製造方法を見出した。
つまり、実験的な検討により、従来のナチュラルチーズの製造工程において乳酸菌やその菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素などの添加条件を工夫することで、熟成期間や風味を簡便な操作で効率的に制御や調整できるという知見を見出した。このとき、ナチュラルチーズの製造工程において、チーズカードやチーズへ乳酸菌を高濃度に追加してから熟成し、乳酸菌に由来する酵素を意図的に増やして活用することで、熟成を促進しつつ、風味を向上(特に旨味を強化)した、熟成型のチーズが得られるという知見を同時に見出した。また、微生物由来のたんぱく質分解酵素を添加したチーズを熟成させ、熟成途中のたんぱく質の分解状況を把握することで、酵素の種類と添加量の選択、熟成条件の設定により苦味が無く、良好な熟成風味を強化できる方法を見出した。
本発明のナチュラルチーズの製造方法は、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対し、菌体濃度で107 個/g以上、好ましくは108 個/g以上になるように、乳酸菌を追加してから熟成することを特徴とする。
このとき、乳酸菌を107 個/g未満でチーズカードやチーズへ添加すると、熟成期間の大幅な短縮や風味の向上(特に旨味の強調)という、本発明の効果が十分に得られないこととなる。
また、乳酸菌をチーズカードやチーズへ添加する際に、乳酸菌数には特に上限はないが、実際に利用したいと考える本発明の効果の程度、チーズの風味や製造工程の効率などを勘案しながら設定すれば良いこととなる。
乳酸菌を高濃度でチーズカードやチーズへ添加することで、熟成期間を短縮しやすく、風味を向上(強調)しやすくなるが、乳酸菌を過剰に添加すると、旨味の他に好ましくない風味を強調してしまう可能性もある。
そのため、乳酸菌数の上限として例えば、109 個/g、1010 個/g、1011 個/gなどが考えられる。一方、チーズでは熟成の進行に伴い、乳酸菌の生菌数は減少しつつ溶菌し、菌体内の酵素が菌体外に放出されて、チーズの成分が風味物質(フレーバーなど)に変換される。
チーズの熟成では一般的に、乳酸菌が世代交代しながら、酸生成などの代謝活動を活発に持続したりすることはないため、乳酸菌を過剰に添加しない限り、熟成を促進する効果の他には、特に欠陥は現れないと考えられる。
本発明において、前記のホエイを排出した後のチーズカードは熟成前のチーズカードであり、前記のチーズは熟成初期のチーズに相当する。熟成初期のチーズとは、例えば、一旦成形包装され、熟成工程に移行できる状態になっているチーズ、あるいは熟成工程中にあるがまだ所定の熟成度合(熟成期間)に達していない(通常は1/3以下)チーズのことをいう。
なお、本発明のナチュラルチーズの製造方法では、乳酸菌が生菌であっても死菌であっても良いこととなる。つまり、乳酸菌が本来で持っている酸生成能(活性)などを意図的に低くすることなどが必須ではなく、乳酸菌を何らかの方法で特別に処理せずに、そのまま生菌で使用しても良いこととなる。このとき、チーズカードやチーズへ乳酸菌の生菌を直に添加すると、時間の経過に伴い生菌数が減少しつつ溶菌することで、菌体内酵素が菌体外へ放出され、菌体外酵素と共にチーズカードやチーズへ作用し、熟成を促進したり、旨味を強調したりすることとなる。
なお、チーズカードやチーズの乳酸菌数を多くする目的で、乳酸菌の生菌(スターターなど)を前もって原料乳(チーズ用乳)へ多く添加すると、チーズカードの調製の際に、チーズ用乳の酸度が過剰に上昇したりするため、pHの制御という技術的に特殊な工夫が別途必要となる。
一方、乳酸菌の死菌をチーズカードやチーズへ直に添加しても、菌体内酵素が失活していなければ、何れは菌体外へ放出されて菌体外酵素と共にチーズカードやチーズへ作用し、熟成を促進したり、旨味を強調したりすることとなる。
なお、乳酸菌を物理的(機械的)や化学的に菌体破砕処理して、細胞壁や細胞膜を破砕や破壊すれば、菌体内酵素を強制的に菌体外へ放出できることとなり、チーズカードやチーズへ菌体内酵素が作用を開始するまでの時間を短縮できることとなる。
そのため、本発明のナチュラルチーズの製造方法は、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対し、菌体濃度で105 個/g以上、好ましくは106 個/g以上に相当するように、乳酸菌の菌体破砕処理物を追加してから熟成しても良いこととなる。
このとき、菌体濃度で105 個/g以上に相当するように、乳酸菌の菌体破砕処理物を追加するとは、例えば、菌体濃度が107個/g以上の乳酸菌の培養物を菌体破砕処理してから、この菌体破砕処理した培養液を、チーズカードへ1重量%以上で添加すると、菌体濃度で105個/g以上に相当する乳酸菌の菌体破砕物がチーズカードへ含まれることとなり、このような状態を意味している。
つまり、菌体濃度が107 個/g以上の乳酸菌の培養物を菌体破砕処理すると、乳酸菌は細胞片(破片)などとなって菌体の形状を維持できないため、乳酸菌数を正確に計測できなくなるが、実質的には菌体濃度で107 個/g以上に相当する乳酸菌の破片などが培養液には含まれていることになる。この菌体濃度で107 個/g以上に相当する乳酸菌の破片などを含んだ培養液を、チーズカードやチーズへ1重量%以上で添加すると、菌体濃度で105個/g以上に相当する乳酸菌の菌体破砕物がチーズカードやチーズへ含まれることとなる。そして、この乳酸菌の菌体破砕物がチーズカードやチーズへ作用し、熟成を促進したり、旨味を強調したりすることとなる。
なお、本発明のナチュラルチーズの製造方法では、菌体破砕処理として乾式粉砕や湿式粉砕などが例示できる。具体的には、ボールミル、ビーズミル、ホモゲナイザー(均質機)、超音波装置などを使用できる。より具体的には、ビーズショッカー(ビーズ径: 0.1〜0.5mm、好ましくは0.2〜0.4mm、より好ましくは0.3mm)、高圧ホモゲナイザー(操作圧力: 100〜200MPa、好ましくは130〜150MPa、より好ましくは140MPa)などを使用できる。
このとき、菌体破砕処理として効率を勘案すると、連続処理などへ対応しやすいことなどから、高圧ホモゲナイザーを使用し、100MPa以上の操作圧力での均質化処理とすることが特に好ましいと考えられる。
なお、本発明では、乳酸菌由来の酵素を利用できれば良いことから、乳酸菌を菌体破砕処理した後に、一部が生菌として残存していても良いこととなる。
従来のナチュラルチーズの製造方法では、熟成期間を調整する目的で以下に例示するような種々の方策が採用されていた。チーズ用乳へ乳酸菌スターターを添加してから発酵して乳酸菌数を増やす。カビ由来の酵素を利用する。乳酸菌の培養物(乳酸菌スターターなど)を加熱処理、加圧処理、酵素(リゾチーム)処理などして乳酸菌の酸生成能を消失させた上で、その培養物を酵素調製物として利用しつつ、スターターと併用する。
ただし、これらの製造方法には、例えば、以下に説明するような問題点があった。チーズ用乳で乳酸菌(生菌)を増やしても、酸度が過剰に上昇して正常なチーズカードが調製されない。チーズ用乳に乳酸菌培養物を処理した酵素調整物を添加しても、その大部分がホエイへ流出して損失(ロス)してしまう。カビ由来の酵素では熟成中に苦味が出る。
このように、従来、ナチュラルチーズの製造方法において熟成期間を調整する目的で採用されていた方法には、何らかの制約(汎用性の低さ)や手間などがあり、大量生産や連続生産などで特に実用性に欠けていた。
本発明のナチュラルチーズの製造方法では、ホエイを排出した後のチーズカードやチーズに対し、乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素の中のいずれか、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを直に追加(添加)するため、従来の製造方法の問題や課題などを解決しており、以下のような特徴がある。
(C-1) カードの調製時の工程や操作に影響せず、従来の工程や操作を変えなくても良い、
(C-2) カードの調整時の乳酸菌(スターターなど)の選択の自由度が大きい、
(C-3) 原料乳(チーズ用乳)へ酵素調製物を添加する場合と異なり、酵素がホエイへ流出して損失しないため、その効果の全部を有効に活用できる、
(C-4) 乳酸菌を死菌だけでなく、生菌でも活用でき、乳酸菌を酵素調製物などへ加工することが必須でない、
(C-5) 乳酸菌を生菌だけでなく、死菌でも菌体破砕処理物でも活用でき、チーズカードやチーズへ添加する前に、乳酸菌の生菌数が減少していても良いため、乳酸菌の培養物などを冷蔵状態でも冷凍状態でも保存できる(乳酸菌の保存方法に制約が少なく自由度が高い)、
(C-6) 熟成前のチーズカードだけでなく、熟成中のチーズに熟成の途中からでも適用できる。
前記(C-6)では、例えば、当初には従来通りでチーズの熟成を開始し、その熟成の途中でチーズへ乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素の中のいずれか、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを追加で添加しても良い。具体的には、その熟成中のチーズをミートチョッパーなどで粉砕し、そこへ乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素の中のいずれか、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを添加・混合してから、そのチーズを改めて真空包装して熟成を継続することなどが考えられる。
本発明の製造方法において、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対して追加(添加)する、乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素の中のいずれか、あるいはこれらを任意に組み合わせたものにおける乳酸菌には、Lactococcus 属、Lactobacillus 属、Streptococcus 属、Leuconostoc 属、Propionibacterium 属、Bifidobacterium 属などを例示できる。具体的には、Lactococcus lactis subsp. lactis、L. lactis subsp. lactis biovar diacetilactis、L. lactis subsp.cremoris、Lactobacillus helveticus、L. helveticus subsp. jugurti、L. delbrueckii subsp. bulgaricus、L. delbrueckii subsp. lactis、L. acidophilus、L. crispatus、L. amylovorus、L. gallinarum、L. gasseri、L. johnsonii、L. casei、L. casei subsp. rhamnosus、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus、Leuconostoc cremoris、Leu. lactis、Leu. mesenteroides subsp. mesenteroides、Leu. mesenteroides subsp. dextranicum、Leu. parames enteroides、Propionibacterium shermani、Bifidobacterium bifidum、B. longum、B. breve. B. infantis、B. adolescentisなどを例示できる。このとき、これらの乳酸菌を単独で用いても、2種類以上を混合して組み合わせて用いても良い。
本発明のナチュラルチーズの製造方法において、乳酸菌は、膜分離法、遠心分離法、真空蒸発法の何れか1以上の方法により濃縮されたものを用いることができる。また、凍結乾燥法、減圧噴霧乾燥法、噴霧乾燥法の何れかの方法により乾燥された乳酸菌を用いても良い。更に、中和培養した乳酸菌を用いても良い。
膜分離法、遠心分離法、真空蒸発法、凍結乾燥法、減圧噴霧乾燥法、噴霧乾燥法、中和培養法などにより、単位容量当たりの乳酸菌数を増やして、乳酸菌の培養物などで乳酸菌を高濃度に調整できる。
このとき、乳酸菌の培養物を膜分離法、遠心分離法、真空蒸発法、中和培養法などで調製すると、乳酸菌は1010 〜1012 個/g程度となり、凍結乾燥法、減圧噴霧乾燥法、噴霧乾燥法などで調製すると、乳酸菌は1011〜1013 個/g程度となる。
本発明のナチュラルチーズの製造方法では、乳酸菌を高濃度でチーズカードやチーズへ添加することで、熟成期間を短縮しやすく、風味を強化しやすくなるが、乳酸菌の培養物を過剰に添加すると、その培養物の組成や風味の影響が大きくなり、好ましくない物性や風味となる可能性もある。そのため、乳酸菌の培養物の添加を少量にして、乳酸菌を高濃度でチーズカードやチーズへ添加することが好ましい。つまり、前記した濃縮法、乾燥法、中和培養法などにより、乳酸菌の培養物などで乳酸菌を高濃度に調整してから、チーズカードやチーズへ添加することが好ましい。一方、乳酸菌の培養物の添加を少量にしすぎると、チーズカードやチーズで乳酸菌が均一に混合されず、分散状態が偏る可能性もある。そのため、乳酸菌の培養物の添加量を、チーズやチーズカードに対して0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%、より好ましくは1〜3重量%に設定することが適当であり、この添加量で、チーズカードやチーズに対して追加で、乳酸菌を107 個/g以上となるように設定することが好ましい。
本発明のナチュラルチーズの製造方法では、乳酸菌を濃縮や乾燥する際に、乳酸菌を生残させずに死滅させても良いが、乳酸菌の持つ酵素を損失や失活させないことが重要となる。具体的には、乳酸菌を50℃以下や40℃以下などの低温や中温で扱う必要がある。そのため、乳酸菌の濃縮法では、膜分離法、遠心分離法が真空蒸発法よりも好ましく、乳酸菌の乾燥法では、凍結乾燥法、減圧噴霧乾燥法が噴霧乾燥法よりも好ましい。
ところで、乳酸菌の持つ酵素には、菌体外に生成(放出)される菌体外酵素と、菌体内に生成(保持)される菌体内酵素がある。そして、この菌体外酵素では、タンパク質を分子量の大きいペプチドに分解するプロテアーゼが主体であり、菌体内酵素では、菌体内に取り込んだペプチドを分子量の小さいペプチドやアミノ酸に分解するペプチダーゼやアミノペプチダーゼが主体である。このとき、凝乳酵素のレンネット由来の酵素がプロテアーゼとして主体で効果を発揮し、乳酸菌由来の菌体外酵素は特に必要ではない。一方、分子量の大きいペプチドは苦味の素となることがあり、分子量の小さいペプチドやアミノ酸は旨味の素となる。このとき、ペプチダーゼやアミノペプチダーゼは主に乳酸菌の菌体内酵素に由来するため、菌体内酵素は特に必要である。ここで、乳酸菌の濃縮法のうち、真空蒸発法では、培養液の成分と共に乳酸菌を高濃度化するのに対して、膜分離法、遠心分離法では、培養液の成分を除去しながら乳酸菌の菌体のみを高濃度化できる。つまり、膜分離法、遠心分離法では、チーズの旨味を増やす菌体内酵素の比率を高めながら、乳酸菌を高濃度化でき、真空蒸発法に比べて効率的である。なお、本発明のナチュラルチーズの製造方法では、食品用のプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)を適宜併用すると、より効率的である。
本発明のナチュラルチーズの製造方法では、中和培養法として以下を例示できる。すなわち、乳酸菌の培養液でpHを5〜6程度に制御しながら、乳酸菌の増殖の至適温度付近である25〜40℃、10〜36時間で保持して培養する方法である。乳酸菌の培養液には、乳酸菌が良好に増殖(生育)できる公知の液体培地を適用すれば良く、脱脂乳、還元脱脂乳、ホエイ、還元ホエイなどに、炭素源としてブドウ糖、乳糖、ショ糖など、窒素源として酵母エキス、肉エキス、ペプトンなど、塩類としてリン酸一カリウム、リン酸二カリウム、酢酸ナトリウムなどを添加して調製すれば良い。乳酸菌の培養中でのpHの制御には、アルカリ剤として水酸化ナトリウム、アンモニア、炭酸ナトリウムの水溶液などを適宜使用すれば良い。乳酸菌の培養液へアルカリ剤を添加し、乳酸菌の生育を阻害や抑制する乳酸を中和して、乳酸菌の増殖を促進する。中和培養しない場合に比べて、中和培養した場合には、単位容量当たりの乳酸菌数を10倍程度に増やせることとなる。
本発明のナチュラルチーズの製造方法は、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対し、微生物由来のたんぱく質分解酵素を添加してから熟成することを特徴とする。
このとき、前記の微生物由来のたんぱく質分解酵素を添加した後、熟成したチーズのリンタングステン酸可溶性窒素量(Phospho Tangsten Acid Soluble Nitrogen(PTASN))が全窒素量(Total Nitrogen(TN))に対して6.0〜8.5%(PTASN/TN×100)に達した時点で、水溶性窒素量(Water Soluble Nitrogen (WSN))とPTASNの比(WSN/PTASN)が4.5以下であることを特徴とするものである。
また、前記の微生物由来のたんぱく質分解酵素はプロテアーゼ活性が2000unit/g以上であり、なおかつペプチダーゼ活性が160unit/g以上であることを特徴とするものである。
前記において、リンタングステン酸可溶性窒素量(PTASN)はケルダール法で測定することができ、その前処理などの操作手順の一例を説明すると次の通りである。チーズカードやチーズ(試料)を25gで採取し、温湯の150mLに溶解する。これにホルマリン(40%)を数滴で加えて、振とうしながら、50℃、2時間で保持する。その後、脂肪層を除去した残りの液体を、3000rpm、5分間で遠心分離する。上清液を目の細かい綿布で濾過し、その濾液(透過液)をメスフラスコ(250ml)へ入れる。遠沈管や綿布に残った沈殿を温湯で洗いながら、遠心分離と濾過する操作を2回程度で繰り返し、そこで得た液体を最初の濾液と混合する。前記の混合液へ水を加えて、250mLの液体にする。前記の液体50mLを採取して、そこへ水を10mL、硫酸(25w/v%)を30mL、PTA水溶液(19w/v%)を10mLで加えて、室温、24時間で保持する。これを濾紙(TOYO No.5 B)で濾過し、その濾液(透過液)20mLを採取して、ケルダール法で窒素を定量する。
また、全窒素量(TN)はケルダール法により測定できる。例えば、次のようにして行うことができる。
試料(チーズ)5gに約50℃に加温した0.05Mクエン酸ナトリウム・二水和物溶液を60ml加え、回転式ホモゲナイザーを用いて8000rpmで約3分間、ホモジナイズする。ホモゲナイザーを蒸留水で洗いこみながら100gの試料液とする。この試料液2mlを取り、ケルダール法により窒素を定量する。得られた値がチーズ1gあたりの全窒素量である。
前記における水溶性窒素量(WSN)はケルダール法により測定できる。例えば、次のようにして行うことができる。
試料(チーズ)5gに約50℃に加温した0.05Mクエン酸ナトリウム・二水和物溶液を60ml加え、回転式ホモゲナイザーを用いて8000rpmで約3分間、ホモジナイズする。ホモゲナイザーを蒸留水で洗いこみながら100gとする。これをスターラーで攪拌しながら、6規定塩酸溶液でpH4.40±0.05に調整する。東洋ろ紙No.5Aでろ過し、ろ液2mlを取り、ケルダール法により窒素を定量する。得られた値がチーズ1gあたりの水溶性窒素量である。
前記においてプロテアーゼ活性の測定はカゼインーフォリン法(日本食品添加物協会)に準じて、例えば、次のようにして行うことができる。
プロテアーゼ活性測定の基質は、酸カゼイン(ALACID720, Fonterra社)1.2gを50mMリン酸水素二ナトリウム溶液に溶解させ、1N塩酸でpH7.0に調整した後、蒸留水で200mlにフィルアップしたものを使用した。
20mlのガラスチューブに基質液5mlを入れ37℃で保温した。ここに適宜希釈した酵素液1mlを注入し、反応を開始した。30分後に反応停止液(0.44Mトリクロロ酢酸)を注入後、30分間放置し、酵素反応を停止させた。反応液を東洋ろ紙No.2Aでろ過し、ろ液2mlに5mlの0.55M炭酸ナトリウム溶液、1mlの0.67Nフェノール試薬(和光純薬)を加え、37℃で30分間反応させた。発色した液の660nmの吸光度を測定した。60分間に反応ろ液1ml中にチロシン10μgに相当するアミノ酸を生成させる酵素量を1unitと定義して、次式により酵素重量当たりの活性を算出した。単位は、unit/gとした。
unit/g=(OD660−OD)×117.6×(1/2)×(1/10)×N
OD660:反応ろ液の吸光度
OD:酵素ブランクの吸光度
117.6:チロジン検量線より求めた、吸光度差が1のときのチロジン量
(1/2):反応ろ液量
(1/10):単位換算係数
N:試料1g又は1ml当たりの希釈倍率
また、前記において、ペプチダーゼ活性の測定は、例えば、次のようにして行うことができる。
ペプチダーゼ活性測定の基質には、アミノ酸のp−ニトロアニリド(以下、p−NAと略す)誘導体であるLys−p−NAを用いた。
5mlのガラスチューブに、100μlの20mMアミノ酸p−NA溶液、1.8mlの100mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0、37℃)を入れ37℃に保温した。ここに適宜希釈した酵素液100μlを注入し、反応を開始した。30分後に反応停止液(30%(w/v)酢酸)1.0mlを注入し酵素反応を停止させた。反応停止後10000rpmで5分遠心分離し、上清の410nmの吸光度を測定した。ペプチダーゼ活性によって遊離したp−NAは410nmに極大吸収を持つ。1分間に1μmolのp−NAを遊離する酵素活性を1unitと定義して、次式により酵素重量当たりの活性を算出した。単位は、unit/gとした。
unit/g=(OD410−OD)×1.13×(1/30)×(1/0.1)×N
OD410:酵素反応液の吸光度
OD:酵素ブランクの吸光度
1.13:検量線より求めた、吸光度差が1のときのp−NA量
(1/30):反応時間(1/0.1):反応液量
N:試料1g又は1ml当たりの希釈倍率
本発明において、PTASN/TN×100が6〜8.5%に達した時点というのはチーズ風味の傾向が分析によって確認できる熟成程度に相当し、その時期においてWSN/PTASNが4.5以下であることが苦味が出ないために必要である。
PTASN/TN×100が6%未満の場合、熟成の傾向(たんぱく質の分解の特徴)を把握するには不十分で、実際の熟成風味を反映しない場合もありうる。
PTASN/TN×100が6〜8.5%に達するのは、通常のチーズでは7〜10℃の熟成温度では6〜10ヶ月であるが、保管温度15℃では1.5〜3ヶ月である。熟成促進のために本発明のように微生物由来のたんぱく質分解酵素を添加したチーズでは、15℃保管では1〜2ヶ月、18〜20℃保管では2週間から1ヶ月で判定が可能である。
添加する微生物由来のたんぱく質分解酵素の特徴として、プロテアーゼ活性が2000unit/g以上であり、なおかつペプチダーゼ活性が160unit/g以上であることが必要である。プロテアーゼ活性が2000unit/g未満の場合はタンパク分解が遅くなりペプチドの生成量が少なくなる。ペプチダーゼ活性が160unit/g未満だとペプチドの分解が遅くなり、苦味ペプチドが残存して熟成課程で苦味の強いチーズになる。
前述した微生物由来のたんぱく質分解酵素としては、例えば、天野エンザイム株式会社製の「プロテアーゼA『アマノ』G」(商品名)、「プロテアーゼM『アマノ』G」(商品名)、「ウマミザイムG」(商品名)、「ペプチダーゼR」(商品名)、「グルタミナーゼダイワ」(商品名)、Kerry Food ingredients社製の「BioFV」(商品名)などを使用することができる。チーズの風味の改善という観点からは、「プロテアーゼA『アマノ』G」(商品名)、「プロテアーゼM『アマノ』G」(商品名)、「ウマミザイムG」(商品名)、「BioFV」(商品名)がより好ましかった。
本発明のナチュラルチーズの製造方法では、チーズカード及び/又はチーズを殺菌しなくても良い。何れにしても、乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素などをチーズカードやチーズへ直に添加するため、その有効成分である乳酸菌由来の酵素や微生物由来のたんぱく質分解酵素などがホエイと共に排出されない。つまり、実際に添加した乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素などの全部か大部分がチーズカードに保持されて活用されることとなり、その有効成分である酵素の損失(ロス)がないか僅かで少ないこととなる。
本発明のナチュラルチーズの製造方法では、原料乳(チーズ用乳)へpH調整剤を添加して、チーズカードを形成させても良く、このpH調整剤には、あたかも乳酸菌を添加した場合のようなpHの履歴(経時変化)で、チーズ用乳のpHを低下させる物質(食品添加物など)が好ましく、具体的には、グルコノデルタラクトン(GDL)を例示できる。
つまり、チーズカードを形成させる際に、乳酸菌スターターの代わりに、pH調整剤を使用しても良いし、乳酸菌スターターとpH調整剤を併用しても良いこととなる。
このとき、グルコノデルタラクトンの添加量は、原料乳(チーズ用乳)に対して、0.1〜1重量%、好ましくは0.2〜0.8重量%、より好ましくは0.3〜0.6重量%である。グルコノデルタラクトンの添加量が1重量%を超えると、チーズ用乳へグルコノデルタラクトンを添加した際に、pHが緩やかに低下しないため、チーズカードの水分が十分に排出できないこともあり、チーズ(最終製品)の水分が高めになってしまう。
チーズカードを形成させる際に、pH調整剤を使用する利点は以下の通りである。
(D-1) 乳酸菌スターターの培養用の設備投資、培養中の運転条件の管理、培養終了後の乳酸菌の活力や菌数の管理などが不要になり、それらの負担が軽減される、
(D-2) 乳酸菌スターターを使用してチーズカードを形成させる場合には、pHの履歴を常に意識しながら、乳酸菌スターターを選択しなければならないが、pH調整剤(GDLなど)では、その危惧がなくなる、
(D-3) 乳酸菌スターターを使用してチーズカードを形成させる場合には、ファージによる汚染でチーズ用乳のpHの低下が遅延し、チーズカードが正常に形成されないことがあるが、pH調整剤(GDLなど)では、その可能性がなくなる。つまり、チーズカードやチーズへ乳酸菌を後添加(追加)する場合には、pHの低下などとは無関係なので、ファージによる汚染があっても問題とならない。ここでの乳酸菌では菌体内酵素の利用が目的であり、ファージによる汚染で溶菌が進行する可能性があり、むしろファージによる汚染は良い方向に働く可能性もある、
(D-4) 乳酸菌スターターを使用してチーズカードを形成させる場合には、チーズの風味や物性への影響を意識しながら、乳酸菌スターターを選択しなければならないが、pH調整剤(GDLなど)では、その危惧がなくなる。そのため、チーズカードやチーズへ後添加(追加)する乳酸菌の選択に注力でき、この後添加する乳酸菌として風味の生成へ大きく影響するものを使用しやすくなる。その結果として、熟成型のナチュラルチーズで、風味(香味)や物性を任意で様々に調整でき、従来にない新たなナチュラルチーズを開発できる、
(D-5) チーズの細菌的な保存性を確保する目的で、チーズカードを形成させる段階で、その菌叢を乳酸菌で優勢に保つ必要がある場合には、pH調整剤(GDLなど)と乳酸菌を併用することも可能である。
ホエイを排出した後のチーズカード(すなわち、熟成前のチーズカード)及び/又はチーズ(すなわち、熟成初期のチーズ)に対して、乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素の中のいずれか、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを添加する場合には、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズを細かく切断や粉砕した状態で行うことが効率的である。すなわち、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズを細かく切断や粉砕した状態で、乳酸菌の培養液や濃縮液を噴霧したり、乳酸菌の乾燥粉体を添加・混合したり、微生物由来のたんぱく質分解酵素を添加・混合する。このようにすると、乳酸菌由来の酵素や微生物由来のたんぱく質分解酵素がチーズカード(熟成前のチーズカード)及び/又はチーズ(熟成初期のチーズ)の全体へ十分に混合されて効率的である。
例えば、ドライソルトチーズなどの製造工程では、ホエイの大部分が排出された後に、チーズカードが細断されている工程で食塩(粉末)を添加・混合することとなるが、この食塩などと共に乳酸菌の乾燥粉体を添加すれば、新たな工程が特に必要ないこととなる。
一方、熟成中のチーズに熟成の途中から乳酸菌を添加する場合には、チーズカードの場合と同様に、チーズを細かく切断や粉砕した状態で処理すると、乳酸菌がチーズの全体へ十分に混合されて効率的であるが、チーズの塊へ乳酸菌の液体や粉体をニードルやチューブで注入などしても良い。
本発明のナチュラルチーズの製造方法では、特に熟成型のチーズを対象としており、チェダー、ゴーダ、エダム、エメンタール、パルメザン、カマンベール、ブルーなどを本発明の製造方法によって製造するナチュラルチーズとして例示できる。
本発明のナチュラルチーズは、前記の製造方法で製造される、熟成型のチーズであり、その風味の特徴として、旨味が強化され、苦味が抑制されている。
そして、本発明のナチュラルチーズでは、例えば、ホエイ排出後のチーズカードに対して追加で、乳酸菌、乳酸菌の菌体破砕処理物、微生物由来のたんぱく質分解酵素の中のいずれか、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを添加してから熟成を開始して90日後のチーズの可溶性窒素含量が熟成開始時に比較して4%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上で増加する。
本発明において前述したチーズの可溶性窒素含量は、チーズの全窒素中のリンタングステン酸(PTA)可溶性窒素のことであり、分子量が約600以下の低分子のペプチドやアミノ酸に含まれる窒素のことである。これらの低分子のペプチドやアミノ酸は、チーズカードやチーズのタンパク質が酵素により分解されて生成してくるものであり、チーズの熟成の進行に伴い増加する。
この可溶性窒素含量は、熟成の進行を表す指標であり、次のように定義される
可溶性窒素含量 [%] = チーズのPTA可溶性窒素 / チーズの全窒素 × 100
ここで、チーズのPTA可溶性窒素や全窒素はケルダール法で測定することができ、その際の前処理工程などの一例としては前述したものを採用できる。
なお、可溶性窒素含量の評価では、乳酸菌の培養液の成分などに由来する可溶性窒素含量を減じて、チーズカードやチーズの熟成に伴う実際の可溶性窒素含量と定義した。
図1は、従来のゴーダチーズについて可溶性窒素含量を前述した方法で測定した結果を表わすグラフである。従来のゴーダチーズでは熟成開始から90日後のチーズの可溶性窒素含量は熟成開始時に比較して2〜3%で増加していた。
本発明の製造方法によって製造した本発明のナチュラルチーズにおいても、チーズの可溶性窒素含量は従来と同様な傾向で増加することが想定される。これは、後述する実施例1〜8においても確認することができた。熟成開始後のチーズの可溶性窒素含量は、風味の改善という観点から、熟成開始後90日の時点の可溶性窒素含量が熟成開始時に比較して4%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上で増加することが好ましい。
本発明者等の実験によれば、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対し、菌体濃度で107 個/g以上になるように乳酸菌を追加してから、あるいは、菌体濃度で105 個/g以上に相当するように乳酸菌の菌体破砕処理物を追加してから熟成する場合、熟成開始後3カ月経過時の可溶性窒素含量 [%]が、熟成開始時に比較して4.0〜8.5%増加していることが風味の改善という観点から望ましかった。
また、ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対し、微生物由来のたんぱく質分解酵素を添加してから熟成する場合、熟成開始後3カ月経過時の可溶性窒素含量 [%]が、熟成開始時に比較して6.0〜8.5%増加していることが風味の改善という観点から望ましかった。
チーズの熟成期間や風味などを調整する方法では従来、熟成(保管)温度を制御(管理)することが実用的であり、代表的であった。つまり、チーズの熟成を促進して、熟成期間を短くしたい場合や風味を強くしたい場合などには、熟成温度を高くすれば良く、チーズの熟成を抑制して、熟成期間を長くしたい場合や風味を弱くしたい場合などには、熟成温度を低くすれば良い。このとき、チーズの熟成を停止したい場合には、熟成(保管)温度を氷温や冷凍などの状態にすれば良い。ただし、チーズの熟成を大幅に促進しようとしても、細菌増殖、酸化反応、品質劣化などの影響から熟成温度には上限(約15℃)が存在し、熟成温度で熟成を促進する効果には限界があった。
これに対して、熟成温度を制御しつつ、さらに本発明を適用すれば、チーズの熟成を促進することも抑制することも自由自在に調整できる。そして、このようにしてチーズの熟成を調整する方法は前記した通り、熟成前のチーズカードだけでなく、熟成中のチーズに熟成の途中からでも適用できる。このことは、各種のチーズ(製品)の需要を予測して在庫を管理したり、生産物量を調整したりしながら、発注の時期(タイミング)を計るという、チーズ製造者や販売者にとって不安定でストレスの大きい業務を軽減できる。特に長期熟成型のチーズを短期間で容易に入手できるようになることは画期的である。
本発明のナチュラルチーズの製造方法では、例えば、通常や従来の必要な熟成期間と比べて、30〜60%、好ましくは30〜70%、より好ましくは30〜80%、さらに好ましくは20〜70%、最も好ましくは20〜80%まで実質的に短縮できる。
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これにより限定されるものではない。
(チェダーチーズ用チーズカードの調製)
乳量にして100kgの規模でチェダーチーズを製造するにあたり、まず、チーズカードを調製した。原料乳(チーズ用乳)では、タンパク質/脂肪の比率を0.8に調整し、63℃、30分間で加熱殺菌した。この殺菌後のチーズ用乳へ塩化カリウムを0.03重量%で添加した後に、乳酸菌のスターターを1.2重量%、レンネットを0.01重量%で添加した。凝固を確認した後カッティング、クッキングを行い、ホエイを排出したチーズカードを製造した。この乳酸菌のスターターには、Lactococcus lactis subsp. lactis、L. lactis subsp. cremoris の混合菌が含まれていた。ホエイを排出したチーズカードを加圧成形した後に、約2cm四方の寸法に切り分けてから重量で3等分し、チーズカード1、2、3とした。
(チェダーチーズの調製)
チーズカード1に、チーズカードの食塩の含量が1.8重量%になるように食塩を加え、さらに乳酸菌の濃縮物を2重量%で加えて混合した後に真空包装した。この乳酸菌の濃縮物は、Lactococcus crispatus のみを1010 個/gで含んでいた。この乳酸菌の濃縮物は中和培養した後に、遠心分離で乳酸菌を濃縮して調製されたものである。そして、この真空包装したチーズカードを10℃で熟成した。
(チェダーチーズの調製)
チーズカード2に、チーズカードの食塩の含量が1.8重量%になるように食塩を加え、さらに菌体破砕処理した乳酸菌の濃縮物を2重量%で加えて混合した後に真空包装した。この乳酸菌の濃縮物は、Lactococcus crispatus のみを菌体破砕処理の前には1010 個/g、菌体破砕処理の後には107 個/gで含んでいた。この乳酸菌の濃縮物は中和培養した後に、遠心分離で乳酸菌を濃縮して調製されたものである。また、菌体破砕処理には、高圧ホモゲナイザー(操作圧力:140MPa)を用いた。そして、この真空包装したチーズカードを10℃で熟成した。
(比較例1)
(チェダーチーズの調製)
チーズカード3に、チーズカードの食塩の含量が1.8重量%になるように食塩のみを加えて混合した後に真空包装した。そして、この真空包装したチーズカードを10℃で熟成した。
実施例1、実施例2、比較例1のチーズについて、熟成期間と可溶性窒素含量の関係を図2に示した。比較例1では、熟成を開始して90日後のチーズの可溶性窒素含量が約3.5%であり、4%未満であったのに対して、実施例1や実施例2では、それぞれ90日後の可溶性窒素含量が5.3%と7.4%であり、何れも5%以上であった。また、比較例1では、チーズの可溶性窒素含量が約3.5%に達するまでの熟成期間が約90日であったのに対して、実施例1や実施例2では、それぞれ約45日と約30日であった。このとき、実施例1や実施例2では、比較例1に比べて熟成期間が約50%(2分の1)と約33%(3分の1)に短縮されていた。つまり、実施例1や実施例2では、比較例1に比べて熟成が促進されており、実質的に熟成期間が短縮されていた。
実施例1、実施例2、比較例1のチーズについて、熟成期間と酵素活性の関係を図3に示した。酵素活性は、実施例2>実施例1>比較例1の順で高く、酵素活性の高い順に、可溶性窒素の生成が速く、熟成の進行が速いことが示された。このとき、熟成期間が0日(熟成開始)で、実施例1では0.17 ABS/h、実施例2では0.62 ABS/h、比較例1では0.02 ABS/hであった。実施例1と比較例1を比べると、チーズカードへ乳酸菌の生菌を添加することで、酵素活性は約10倍に増加した。実施例2と比較例1を比べると、菌体破砕処理することで、酵素活性は約30倍に増加した。また、熟成期間が90日で、実施例1では0.53 ABS/h、実施例2では0.78 ABS/h、比較例1では0.04 ABS/hであった。実施例1と比較例1を比べると、チーズカードへ乳酸菌の生菌を添加することで、酵素活性は約10倍に増加した。実施例2と比較例1を比べると、菌体破砕処理することで、酵素活性は約20倍に増加した。
本発明において前述した酵素活性は、次の方法で測定した数値である。
(E-1) 乳酸菌の濃縮液や破砕処理液の20gに、抽出用の緩衝液(37℃)の80mlを加え、ホモゲナイザー(IKA社製、型式:ULTRA-TURRAX T25)により9500rpm、1分間で処理する。ここで、抽出用の緩衝液とは、リン酸カリウム緩衝液(50mM、pH = 7(37℃))、スクロース(30w/v%)、塩化ナトリウム(150mM)からなる水溶液である、
(E-2) 前記(E-1)の水溶液の30gを4℃、8000g、10分間で遠心分離する、
(E-3) 上清液を濾紙(TOYO No.2)で濾過し、その濾液(透過液)を乳酸菌の抽出液とする、
(E-4) 酵素活性の測定には、アミノ酸のリジン(以下「Lys」ともいう)とp-ニトロアニリド(以下「p-NA」ともいう)の誘導体であるLys−p-NA(シグマ社)を基質として用いる。Lys−p-NA溶液(20mM)の100μl、リン酸カリウム緩衝液(100mM、pH = 7(37℃))の1.8mlを小試験管(5ml)に入れ、37℃で保温する、
(E-5) 乳酸菌の抽出液の100μlを前記(E-4)の小試験管に入れ、反応を開始させる、
(E-6) 反応の開始から0、2、4、6時間が経過した後に、酢酸(30w/v%)の1.0mlを前記(E-5)の小試験管に入れ、それぞれの時間で反応を停止させる、
(E-7) 前記の反応により遊離したp-NAは、波長の410nmに極大吸収を持つ。前記(E-6)の液体を、10000rpm、5分間で遠心分離する、
(E-8) 上清液の吸光度を分光光度計(島津製作所製、型式:UV-1200、波長:410nm)で測定する、
(E-9) それぞれの反応時間で測定した結果について、横軸に反応時間(h)、縦軸に吸光度(ABS)をプロットして、近似二次曲線式を求める。そして、前記の二次曲線で、一次係数を酵素活性(ABS/h)と定義する。
実施例1、実施例2、比較例1のチーズについて、官能評価で風味を比較した。熟成を開始して90日後で官能評価したところ、実施例1や実施例2では、比較例1に比べて全体的に香気を強く感じたが、苦味を感じることはなく、旨味を強く感じた。
(ドライソルトゴーダチーズ用チーズカードの調製)
乳量にして100kgの規模で、ドライソルトゴーダチーズを製造するにあたり、まず、チーズカードを調製した。原料乳(チーズ用乳)では、タンパク質/脂肪の比率を1.0に調整し、63℃、30分間で加熱殺菌した。この殺菌後のチーズ用乳へ塩化カルシウムを0.03重量%で添加した後に、乳酸菌のスターターを1重量%、レンネットを0.01重量%で添加した。凝固を確認した後カッティング、クッキングを行い、ホエイを排出したチーズカードを製造した。この乳酸菌のスターターには、Lactococcus lactis subsp. lactis、L. lactis subsp. lactis biovar diacetilactis、L. lactis subsp. cremoris の混合菌が含まれていた。ホエイを排出したチーズカードを加圧成形した後に、約2cm四方の寸法に切り分けてから重量で5等分し、チーズカード4、5、6、7、8とした。
(ドライソルトゴーダチーズの調製)
チーズカード4に、チーズカードの食塩の含量が1.7重量%になるように食塩を加え、さらに乳酸菌の濃縮物を2重量%で加えて混合した後に真空包装した。この乳酸菌の濃縮物は、Lactobacillus helveticus のみを1010 個/gで含んでいた。この乳酸菌の濃縮物は中和培養した後に、遠心分離で乳酸菌を濃縮して調製されたものである。そして、この真空包装したチーズカードを10℃で熟成した。
(ドライソルトゴーダチーズの調製)
チーズカード5に、チーズカードの食塩の含量が1.7重量%になるように食塩を加え、さらに菌体破砕処理した乳酸菌の濃縮物を2重量%で加えて混合した後に真空包装した。この乳酸菌の濃縮物は、Lactobacillus helveticus のみを菌体破砕処理の前には1010 個/g、菌体破砕処理の後には107 個/gで含んでいた。この乳酸菌の濃縮物は中和培養した後に、遠心分離で乳酸菌を濃縮して調製されたものである。また、菌体破砕処理には、マルチビーズショッカー(安井器械社製、ビーズ径:0.3 mm)を用いた。そして、この真空包装したチーズカードを10℃で熟成した。
(比較例2)
(ドライソルトゴーダチーズの調製)
チーズカード6に、チーズカードの食塩の含量が1.7重量%になるように食塩のみを加えて混合した後に真空包装した。そして、この真空包装したチーズカードを10℃で熟成した。
実施例3、実施例4、比較例2のチーズについて、熟成期間と可溶性窒素含量の関係を図4に示した。比較例2では、熟成を開始して90日後のチーズの可溶性窒素含量が約2.8%であり、3%未満であったのに対して、実施例3や実施例4では、それぞれ90日後の可溶性窒素含量が4.3%と6.8%であり、何れも4%以上であった。また、比較例2では、チーズの可溶性窒素含量が約2.5%に達するまでの熟成期間が約60日であったのに対して、実施例3や実施例4では、それぞれ約30日と約20日であった。このとき、実施例3や実施例4では、比較例2に比べて熟成期間が約50%(2分の1)と約33%(3分の1)に短縮されていた。つまり、実施例3や実施例4では、比較例2に比べて熟成が促進されており、実質的に熟成期間が短縮されていた。
実施例3、実施例4、比較例2のチーズについて、官能評価で風味を比較した。熟成を開始して90日後で官能評価したところ、実施例3や実施例4では、比較例2に比べて全体的に香気を強く感じたが、苦味を感じることはなく、旨味を強く感じた。
(ドライソルトゴーダチーズの調製)
チーズカード7に、チーズカードの食塩の含量が1.7重量%になるように食塩を加え、さらに乳酸菌の濃縮物を2重量%で加えて混合した後に真空包装した。この乳酸菌の濃縮物は、Lactococcus lactis subsp. lactis、L. lactis subsp. lactis biovar diacetilactis、L. lactis subsp. cremoris の混合菌を1010 個/gで含んでいた。この乳酸菌の濃縮物は中和培養した後に、遠心分離で乳酸菌を濃縮して調製されたものである。そして、この真空包装したチーズカードを10℃で熟成した。
(ドライソルトゴーダチーズの調製)
チーズカード8に、チーズカードの食塩の含量が1.7重量%になるように食塩を加え、さらに菌体破砕処理した乳酸菌の濃縮物を2重量%で加えて混合した後に真空包装した。この乳酸菌の濃縮物は、Lactococcus lactis subsp. lactis、L. lactis subsp. lactis biovar diacetilactis、L. lactis subsp. cremoris の混合菌を菌体破砕処理の前には1010 個/g、菌体破砕処理の後には107 個/gで含んでいた。この乳酸菌の濃縮物は中和培養した後に、遠心分離で乳酸菌を濃縮して調製されたものである。また、菌体破砕処理には、マルチビーズショッカー(安井器械社製、ビーズ径:0.3 mm)を用いた。そして、この真空包装したチーズカードを10℃で熟成した。
実施例5、実施例6、比較例2のチーズについて、熟成期間と可溶性窒素含量の関係を図5に示した。比較例2では、熟成を開始して90日後のチーズの可溶性窒素含量が約2.8%であり、3%未満であったのに対して、実施例5や実施例6では、それぞれ90日後の可溶性窒素含量が3.6%と5.2%であり、何れも3.5%以上であった。また、比較例2では、チーズの可溶性窒素含量が約2.5%に達するまでの熟成期間が約60日であったのに対して、実施例5や実施例6では、それぞれ約50日と約40日であった。このとき、実施例5や実施例6では、比較例2に比べて熟成期間が約83%(6分の5)と約66%(3分の2)に短縮されていた。つまり、実施例5や実施例6では、比較例2に比べて熟成が促進されており、実質的に熟成期間が短縮されていた。
実施例5、実施例6、比較例2のチーズについて、官能評価で風味を比較した。熟成を開始して90日後で官能評価したところ、実施例5や実施例6では、比較例2に比べて全体的に香気を強く感じたが、苦味を感じることはなく、旨味を強く感じた。
(pH調整剤を用いたゴーダチーズ用チーズカードの調製)
グルコノデルタラクトン(GDL、扶桑化学工業社製)を用いて、乳量にして10kgの規模でチーズカードを製造した。原料乳(チーズ用乳)では、タンパク質/脂肪の比率を0.8に調整し、63℃、30分間で加熱殺菌した。この殺菌後のチーズ用乳へ塩化カリウムを0.03重量%で添加した後に、グルコノデルタラクトンを0.5重量%、レンネットを0.01重量%で添加した。凝固を確認した後カッティング、クッキングを行い、ホエイを排出したチーズカードを製造した。チーズカードの製造では、保持温度を約30℃とした。チーズカードの製造では、グルコノデルタラクトンとレンネットを添加し、pHが5.40になった時点でホエイを排出した。ホエイを排出したチーズカードを加圧成形した後に、約2cm四方の寸法に切り分けてから重量で2等分し、チーズカード9、10とした。
(ゴーダチーズの調製)
チーズカード9に、チーズカードの食塩の含量が1.8重量%になるように食塩を加え、さらに乳酸菌の濃縮物を2重量%で加えて混合した後に真空包装した。この乳酸菌の濃縮物は、Lactobacillus crispatusのみを1010 個/gで含んでいた。この乳酸菌の濃縮物は中和培養した後に、遠心分離で乳酸菌を濃縮して調製されたものである。そして、この真空包装したチーズカードを10℃で熟成した。
(比較例3)
(ゴーダチーズの調製)
チーズカード10に、チーズカードの食塩の含量が1.8重量%になるように食塩のみを加えて混合した後に真空包装した。そして、この真空包装したチーズカードを10℃で熟成した。
実施例7、比較例3のチーズについて、熟成後の可溶性窒素含量を測定した。比較例3では、熟成を開始して90日後のチーズの可溶性窒素含量が約1.9%であったのに対して、実施例7では90日後の可溶性窒素含量が約4.0%であり、実施例7では、図1に示したゴーダチーズの90日後の可溶性窒素含量を上回っていた。
実施例7、比較例3のチーズについて、官能評価で風味を比較した。熟成を開始して90日後で官能評価したところ、比較例3では、チーズの風味に乏しかったが、実施例7では、チーズらしい香気や旨味を強く感じ、十分な美味しさであった。
常法によってチェダーチーズのカードを調製した(殺菌した原料乳に乳酸菌スターター、レンネットを添加し、凝固を確認した後カッティング、クッキングを行い、ホエイを排出する)。チェダリング、ミリングを経た後加塩し、微生物由来のたんぱく質分解酵素を添加し、カードと良く混合した後成形、包装し、10℃で熟成した。
微生物由来のたんぱく質分解酵素はKerry Food Ingredients社製BIO FVで、で、ペプチダーゼ活性が180u/gで、カードに対する添加量は100ppmである。
試作したチーズを7℃で60日間保管した。そのときのPTASN/TN×100=6.86%、WSN/PTASN=1.86であった。
この保管品の風味は苦味が無く、良好なチーズ風味であった。
本発明によれば、熟成期間や風味(特に旨味)を簡便な操作で効率的に制御や調整できる、ナチュラルチーズの製造方法を提供できる。また、大量生産や連続生産などで特に実用的であり、熟成を促進しながら、旨味を強化しつつ、苦味を抑制できる、熟成型のナチュラルチーズの製造方法を提供できる。

Claims (14)

  1. ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対し、菌体濃度で107 個/g以上になるように乳酸菌を追加してから熟成することを特徴とするナチュラルチーズの製造方法。
  2. 乳酸菌が生菌であることを特徴とする請求項1に記載のナチュラルチーズの製造方法。
  3. ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対し、菌体濃度で105 個/g以上に相当するように乳酸菌の菌体破砕処理物を追加してから熟成することを特徴とするナチュラルチーズの製造方法。
  4. 菌体破砕処理が100MPa以上の操作圧力での均質化処理であることを特徴とする請求項3に記載のナチュラルチーズの製造方法。
  5. 膜分離法、遠心分離法、真空蒸発法の何れかの方法により濃縮された乳酸菌を用いることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のナチュラルチーズの製造方法。
  6. 凍結乾燥法、減圧噴霧乾燥法、噴霧乾燥法の何れかの方法により乾燥された乳酸菌を用いることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のナチュラルチーズの製造方法。
  7. 中和培養した乳酸菌を用いることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のナチュラルチーズの製造方法。
  8. ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズに対し、微生物由来のたんぱく質分解酵素を添加してから熟成することを特徴とするナチュラルチーズの製造方法。
  9. 微生物由来のたんぱく質分解酵素を添加した後、熟成したチーズのリンタングステン酸可溶性窒素量(Phospho Tangsten Acid Soluble Nitrogen(PTASN))が全窒素量(Total Nitrogen(TN))に対して6.0〜8.5%(PTASN/TN×100)に達した時点で、水溶性窒素量(Water Soluble Nitrogen (WSN))とPTASNの比(WSN/PTASN)が4.5以下であることを特徴とする請求項8記載のナチュラルチーズの製造方法。
  10. 微生物由来のたんぱく質分解酵素はプロテアーゼ活性が2000unit/g以上であり、なおかつペプチダーゼ活性が160unit/g以上であることを特徴とする請求項8又は9記載のナチュラルチーズの製造方法。
  11. ホエイを排出した後のチーズカード及び/又はチーズを殺菌しないことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のナチュラルチーズの製造方法。
  12. チーズカードは、原料乳へpH調整剤を添加して形成されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のナチュラルチーズの製造方法。
  13. pH調整剤がグルコノデルタラクトンであることを特徴とする請求項12に記載のナチュラルチーズの製造方法。
  14. 請求項1〜13の何れか1項に記載の製造方法を用いて製造したナチュラルチーズ。
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