以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1. 太陽電池を組み込んだ製品 >>>
本発明は、太陽電池の意匠性を向上させるためにその受光面に配置する印刷画像を作成する印刷画像作成装置に係るものであるが、ここでは説明の便宜上、印刷画像および太陽電池を組み込んだ具体的な製品の構造を、その例を示しながら簡単に説明しておく。
図1は、印刷シート10,拡散シート20,太陽電池30の3層によって構成される表示パネルPを示す分解斜視図である。ここでは、説明の便宜上、この表示パネルPの各構成要素について、図の左側に位置する面を前面、図の右側に位置する面を背面と呼ぶことにする。図示の例の場合、太陽電池30は、平板状のセル31〜36を並べることによって構成されており、個々のセル31〜36がそれぞれ独立した発電機能を有している。各セル31〜36の前面が受光面になる。
前述したとおり、太陽電池の受光面は光を吸収しやすい濃厚色にせざるを得ないという事情があり、各セル31〜36の前面は暗い色をしており意匠性に乏しい。印刷シート10および拡散シート20は、意匠性を改善するために付加された構成要素である。
印刷シート10は、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの樹脂からなる透光性シートの表面に、インキ層からなる印刷画像11を形成したものである。図示の例の場合、印刷画像11は、「PATENT」なる文字列11a,キャラクター絵柄11b,星印11cという3つの印刷要素によって構成されている。本発明に係る印刷画像作成装置は、この印刷画像11を作成するための装置である。
拡散シート20は、印刷シート10を透過してきた照明光を拡散する役割を果たすシートであり、観察者に対して、太陽電池30の受光面を白っぽく見せる効果を奏する。拡散シート20は必須の構成要素ではないが、印刷画像11の背景を白っぽくして意匠性を向上させるためには、印刷シート10と太陽電池30との間に設けるようにするのが好ましい。拡散シート20としては、やはり、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの透光性フィルムの表面に凹凸構造を形成したものを用いることができる。
一方、太陽電池30についても、様々なタイプのものを利用することができる。現在、実用的に利用されている太陽電池としては、無機系材料として、結晶シリコン、アモルファスシリコン(a−Si),化合物半導体(CIGS,CdS)などを用いたものが知られており、有機系材料として、色素増感(DCS),有機薄膜(OPV),ペロブスカイトなどを用いたものが知られている。本発明は、いずれのタイプの太陽電池に対しても適用可能である。もっとも、本発明は、屋内設置型や携帯型の製品に組み込まれる太陽電池への利用に特に適しており、このような用途に利用される太陽電池には、軽量かつフレキシブルという特性を生かしたアモルファスシリコン(a−Si),色素増感(DCS),有機薄膜(OPV),ペロブスカイトなどが主に利用されている。
図2は、図1に示す表示パネルPに、更に、電気回路40および電気機器50を付加した製品の構成を示すブロック図である。図1に示す表示パネルPは、印刷シート10,拡散シート20,太陽電池30の3層構造体によって構成され、何らかの表示媒体として機能する物品である。すなわち、この表示パネルPは、ユーザ(観察者)に対して、印刷シート10に形成された印刷画像11を提示する役割を果たす。
ここに示す例の場合、印刷画像11(インキ層)は、印刷シート10の背面(図の右側面)に形成されており、拡散シート20の前面に接触している。また、拡散シート20の光拡散用の凹凸構造は、その前面(図の左側面)に形成されている。これは、一般的に、このような構成を採ると、印刷画像11が最も見やすく、美観をもって観察されるためである。すなわち、印刷画像11は、できるだけ拡散シート20の表面近くに配置すると見やすくなるので、印刷シート10の背面に形成するのが好ましい。なお、実用上は、拡散シート20の背面(図の右側面)にも空気層形成用の凹凸構造(光拡散用の凹凸構造に比べて小さな凹凸でよい)を形成し、拡散シート20の両面が凹凸構造を有するようにするのが好ましい。これは、拡散シート20と太陽電池30との間に空気層を形成すると、印刷画像11がより見やすくなるためである。
一方、太陽電池30は、印刷シート10および拡散シート20を透過した外部からの光を受けて発電する機能を有している。もっとも、実用上は、太陽電池30に発生した電荷を外部に取り出して利用するために、電気回路40が必要になる。この電気回路40は、太陽電池30による発生電荷を一時的に蓄積するための蓄電素子を有し、外部に対して電力を安定供給する役割を果たす。この太陽電池用の電気回路40は、種々のものが公知であるため、ここでは詳しい説明は省略するが、実用上、太陽電池30と電気回路40との協働動作により発電が行われることになる。
図2に示す製品には、更に、この電気回路40からの電力供給を受けて動作する電気機器50が備わっている。電気機器50としては、たとえば、電子時計や電子カレンダーなどの表示機器、電子オルゴールなどの発音機器、ビーコンなどの電波発生機器、その他、様々な機器を用いることができる。結局、図2に示す製品は、外部電源なしで電気的な動作を行う何らかの装置ということになる。なお、電気回路40内の蓄電素子として、リチウムイオン電池などの比較的蓄電容量の大きな素子を用いた場合は、暗い環境下でも蓄電された電力で電気機器50を動作させることが可能であるが、蓄電容量の小さな素子を用いた場合は、蓄電素子と外部出力端子との間にスイッチを設けて蓄積された電荷の自己放電を抑制するようにするのが好ましい。具体的には、充電時には当該スイッチをOFF状態にし、電気機器50に対する給電時には当該スイッチをONにする切替動作を行えばよい。
必要に応じて、電圧センサや照度センサなどを併用し、スイッチのON/OFF制御に利用することもできる。たとえば、供給電圧や周囲照度が基準レベル以下になった場合には給電スイッチを自動的にOFFするようにしておけば、供給電圧や周囲照度が基準レベルに復帰したときに、給電スイッチを直ちにONにして給電を続行することができるようになる。また、電気回路40内に2種類の蓄電素子を用意して並列接続し、それぞれについて別個のスイッチを設けてもよい。たとえば、太陽電池30からの発電電力を蓄電する目的の第1の蓄電素子(大容量の蓄積に適した蓄電池など)と、電気機器50に電力を安定供給する目的の第2の蓄電素子(小容量であっても、一時的な瞬発力を発揮できるようなキャパシタなど)を設け、太陽電池30と第1の蓄電素子との間に第1のスイッチを介在させ、第2の蓄電素子と電気機器50との間に第2のスイッチを介在させるようにする。そして、第1のスイッチは、太陽電池30の発電電圧が低下したときにはOFFにする制御を行い、第2のスイッチは、電気機器50に対する給電が必要なときにだけONにする制御を行うようにすれば、周囲照度が低下したときに生じる自己放電を防止するとともに、電気機器50の負荷抵抗を介した自己放電を抑制することができるようになる。
ここで、当該装置の本来の機能を果たす動作は電気機器50の部分によって実行されることになるが、表示パネルPおよび電気回路40の部分が「表示媒体+電源」の機能を果たすことになる。すなわち、ユーザに対しては、表示パネルPの印刷画像11によって何らかの情報提示が行われ、太陽電池30および電気回路40によって、電気機器50を動作させるために必要な電源機能が確保されることになる。
もちろん、この装置は、暗い室内に置かれた場合、太陽電池30による発電が行われないため動作できないが、「人間が明るい環境で使用する装置」という前提であれば、特に支障は生じない。逆言すれば、通常、人間が使用しない暗い環境では給電が停止するため、自動的なスイッチ機能(夜間は自動停止するタイマー機能)を備えた装置としてのメリットが得られることになる。
図3は、表示パネルPをスタンド70に収容する形態を示す斜視図である。スタンド70は、図示のとおり、平板状の台座部71とその上面に設けられた支持体72によって構成される。支持体72は、表示パネルPをその周囲四方から支持する構造体であり、上面には上面開口部73が、前面には前面開口部74が、それぞれ設けられている。
表示パネルPは、印刷シート10,拡散シート20,太陽電池30の3層構造体であり、図示のとおり、3層を積層状態にして上面開口部73から挿入することにより支持体72内部に収容することができる。しかも、収容した状態で、表示パネルPの前面は前面開口部74から露出した状態になるため、ユーザは印刷シート10の背面に形成された印刷画像11を観察することができる。また、前面開口部74から取り込まれた外光の一部は、印刷シート10および拡散シート20を透過して太陽電池30まで到達し、発電に寄与することができる。
図4は、図3に示すスタンド70およびその変形例を示す横断面図である。図4(a) は、図3に示すスタンド70の支持体72に表示パネルPを収容した状態を示す横断面図であり、前面開口部74が上方となる向きに描かれている。図示のとおり、支持体72は、背面側壁部72B、左面側壁部72L、右面側壁部72Rを有しており、内部に印刷シート10,拡散シート20,太陽電池30の3層構造体からなる表示パネルPが収容されている。なお、太陽電池30の内部断面は、実際には、より複雑な構造をしているが、ここでは説明の便宜上、詳細な内部構造の図示は省略してある。ユーザは前面開口部74から、印刷シート10の背面(図の下側面)に形成された印刷画像11を観察することができる。外光は、前面開口部74から支持体72の内部へと侵入し、印刷シート10および拡散シート20を透過して太陽電池30に吸収される。
図4(b) は、図4(a) に示すスタンド70に対して、若干の変形を施したスタンド70′に表示パネルPを収容した状態を示す横断面図である。スタンド70′の支持体72′が、背面側壁部72B′、左面側壁部72L′、右面側壁部72R′を有している点は、図4(a) に示すスタンド70と同様であるが、支持体72′の左面側壁部72L′の内面には、内側に向かって突き出した区切用突起部72P1が設けられ、支持体72′の右面側壁部72R′の内面には、内側に向かって突き出した区切用突起部72P2が設けられている。この区切用突起部72P1,72P2は、拡散シート20の背面(図の下側面)と太陽電池30の前面(図の上側面)との間に空隙部Vを確保するための区切りとして機能する。
図4(a) に示す支持体72が、印刷シート10,拡散シート20,太陽電池30の3層を相互に密着状態で支持するのに対して、図4(b) に示す支持体72′は、印刷シート10と拡散シート20とを密着状態で支持するものの、太陽電池30については、空隙部Vを挟んで若干後ろの位置に支持することになる。ユーザが前面開口部74を通して印刷画像11を観察する場合、図4(a) に示すように、拡散シート20と太陽電池30とが密着していると背景がやや黒っぽく観察されるが、図4(b) に示すように、拡散シート20と太陽電池30との間に空隙部Vが介在していると背景がより白っぽく観察されるようになり、意匠性を向上させることができる。
図4(a) ,(b) のいずれの構造を採用した場合でも、表示パネルPを構成する印刷シート10,拡散シート20,太陽電池30は、上面開口部73を通して、スタンド70から独立して抜き差しすることができるため、必要に応じて容易に交換することができる。
図4(c) は、図4(b) に示すスタンド70′の背面に、更に、電気回路40およびビーコン51(いずれもブロック図で示す)を付加した製品を示す図である。図には示されていないが、太陽電池30と電気回路40との間には必要な配線が施されており、また、電気回路40とビーコン51との間にも必要な配線が施されている。この図4(c) に示す製品は、図2に示す製品における電気機器50としてビーコン51を用いた例であり、ビーコン装置としての機能を果たすことになる。ただ、電気回路40およびビーコン51は、実際には、背面側壁部72B′に埋め込まれた部品によって構成することができ、ユーザから見た外観は、表示パネルPを収容したスタンド70′として把握される。
ビーコン51は、ユーザが所持する携帯型電子機器(たとえば、スマートフォンなど)に対して電波による近距離通信を行うことができ、インターネットを通じて様々な情報を伝達することができる。もちろん、ビーコン51に無線LAN機能を付加すれば、インターネットから取得した情報を電波として発信する無線通信モジュールを実現できる。一般に、ビーコン装置は、ユーザの目に触れない場所に設置されることが多いが、図4(c) に示すビーコン装置は、スタンド型の表示媒体として、ユーザの目に積極的に触れる場所に置くことができる。
印刷画像11としては、任意の画像を利用することができるので、たとえば、「ビーコンです。スマホを受信モードにして下さい。」のようなメッセージを含む印刷画像11を用いることにすれば、ユーザにスタンド70′がビーコン装置である旨を積極的に報知することができ、ビーコン51が発する情報をユーザに積極的に受信させる効果が得られる。ビーコン51の動作に必要な電力は太陽電池30から供給されるため、外部からの電源供給は不要になり、自己給電型の機器として機能することができる。もちろん、真夜中の消灯状態の室内など、外光が全く得られない環境では、必要な電力供給を行うことはできないが、そのような環境下でユーザがビーコン信号を受信する操作を行うケースは極めて少ないと考えられるので、実用上、何ら支障は生じない。
このように、図4(c) に示す装置は、図1に示す表示パネルPと、この表示パネルPを立てた状態で収容して保持するスタンド70′と、このスタンド70′に取り付けられ、表示パネルPの太陽電池30が発生した電力を外部に供給する電気回路40と、この電気回路40から供給された電力によって動作する電気機器50と、を有する電力自給機能をもった電気機器装置ということになる。特に、図示の例は、電気機器50として、所定の情報を電波として送信する機能をもったビーコン51を組み込んだ例であり、電力自給機能をもったビーコン装置として機能する。もちろん、電気機器50としては、情報を送信する機能をもったビーコンだけでなく、所定の情報を電波として送信もしくは受信する機能をもった様々な通信モジュールを用いることが可能である。
しかも、外観は、図3に示す例のように、スタンド式の表示媒体の形態をとっており、太陽電池30の受光面の面積を比較的大きく設定しても、広い表示面を有する表示媒体として把握されるために違和感はない。また、印刷シート10を設けることにより意匠性にも優れた物品になる。そして、本来のビーコン装置としての動作に必要な電力は、太陽電池30によって賄われるため、電池交換も不要になる。
現在、一般に利用されているビーコン装置は、位置情報の発信機能のみをもつものが多いが、今後は、無線信号の受信、蓄積、中継機能などの付加機能を備えたビーコン装置も普及してゆくものと予想される。このような付加機能を備えたビーコン装置では、消費電力も増加することになるが、図3に示すようなスタンド式の表示媒体の形態を採用すれば、必要に応じて、表示パネルPの部分の面積を広くして発電量を増加させる対応が可能である。
もちろん、このような表示媒体の形態をとったビーコン装置では、表示内容(印刷画像11によって提示される内容)に関連づけた情報を無線送信することも可能になる。また、表示パネルPの部分の面積を広くすれば、装置全体を違和感なく大型化することができるので、種々のセンサを組み込んで、センサが検知した情報を無線送信することも容易にできる。
なお、図3,図4には、表示パネルPをスタンド70,70′に収容して利用する形態を示したが、もちろん、スタンド70,70′を用いずに表示パネルPのみを単独で利用することも可能である。たとえば、図1に示す3層構造体からなる表示パネルPを、各種案内板として用いることもできるし、トイレや非常口を示す標識として用いることも可能である。あるいは、レストランなどでメニューとして利用することもできるし、消火器台などに組み込むことも可能である。また、発電機能を有しているため、たとえば、各種リモコン用の操作パネルとして利用することも可能である。
要するに、図1に示す3層構造体は、太陽電池30の受光面を、そのまま表示媒体の表示面(印刷画像11を表示する面)として利用することができるので、発電機能をもった表示媒体として様々な用途への利用が期待できる。
なお、図1に示す3層構造体は、相互の位置関係が自由に変化しないように、何らかの手段で相互に固定された状態になるようにするのが好ましい。これは、印刷シート10,拡散シート20,太陽電池30が相互に自由に動く構造にすると、印刷画像11の見た目が変化してしまうためである。
たとえば、印刷シート10と拡散シート20との距離が、近づいたり離れたりして変化すると、ユーザによって観察される印刷画像11は濃く見えたり薄く見えたりして変化してしまう。一方、拡散シート20と太陽電池30との距離が、近づいたり離れたりして変化すると、ユーザによって観察される印刷画像11の背景の色が濃くなったり(黒っぽくなったり)薄くなったり(白っぽくなったり)して変化してしまう。また、印刷シート10,拡散シート20,太陽電池30が相互に自由に動くと、太陽電池30の発電効率にも変動が生じるため、安定した電力供給を行う上でも好ましくない。
図3に示すようなスタンド70もしくは図4に示すスタンド70′を用意し、そこに収容する表示パネルPの外寸と、スタンド70,70′の内寸を適切に設定すれば、印刷シート10,拡散シート20,太陽電池30を相互に固定することができる。この場合、太陽電池30は、スタンド70,70′から取り外せないように固定するのが好ましい。これは、一般に、太陽電池30はユーザの手に触れられないようにしておいた方が、故障の原因を誘発するリスクを低減できるためである。同様に、拡散シート20もスタンド70,70′から取り外せないように固定するのが好ましい。これは、常に拡散シート20によって太陽電池30が隠された状態とし、ユーザに太陽電池30の存在を気づかれないようにし、太陽電池30がユーザに触れられるリスクを低減するための配慮である。
したがって、図3に例示するようなスタンド70を用いる実施例を製品化する場合、実用上は、拡散シート20および太陽電池30を、スタンド70の内側に接着剤などを用いて固定するようにし、印刷シート10のみを自由に交換できる形態にしておくのが好ましい。そうすれば、ユーザから見ると、拡散シート20および太陽電池30は、スタンド70と一体化した構造物と認識され、スタンド70に印刷シート10を差し込んだ製品として認識されることになり、写真立てなどの一般的な製品と同種のものとして違和感なしに受け入れられる。
製品によっては、逆に、印刷シート10をスタンド70の内側に接着剤などを用いて固定するようにし、拡散シート20と太陽電池30を自由に交換できる形態にしておくことも可能である。この場合、拡散シート20と太陽電池30は、両者が一体となるようにパッケージ化しておくのが好ましい。印刷シート10をスタンド70に固定しておく形態を採ると、スタンド70の枠の部分(前面開口部74の周囲部分)の形状、色、模様などのデザインを、印刷シート10上の印刷画像11に合わせて設計することができるので、印刷画像11およびスタンド70についてデザイン的な整合性・一体感を確保することが可能になる。
もちろん、印刷シート10と拡散シート20との双方をスタンド70の内側に接着剤などを用いて固定するようにし、太陽電池30のみを交換できる形態にしても、印刷画像11およびスタンド70についてデザイン的な整合性・一体感を確保することが可能である。
以上、印刷シート10,拡散シート20,太陽電池30の3層からなる表示パネルPを、スタンド70によって支持する実施例を述べたが、表示パネルPを製品化する場合、必ずしもスタンド70を用いる構成を採る必要はない。ただ、スタンド70を用いない場合は、3層構造体がバラバラにならないように、何らかの方法で相互に固定されるようにするのが好ましい。
最も単純な固定方法は、印刷シート10と拡散シート20との間や、拡散シート20と太陽電池30との間に接着剤を充填し、3層を相互に貼り合わせる方法である。もちろん、必要があれば、電気回路40や電気機器50(ビーコン51など)も一緒に接着するようにしてもよい。ただ、印刷シート10と拡散シート20との間に接着剤層が介在することになると、印刷画像11に対して背景となる面(拡散シート20の前面)が離れ、画像の輪郭部分の鮮明さが失われることになる。また、拡散シート20の凹凸構造に接着剤が充填されてしまうと、光の拡散機能が損なわれる弊害もある。
そこで、実用上は、3層からなる表示パネルP全体を何らかの方法でパッケージ化するのが好ましい。たとえば、透明のプラスチックシートや透明プラスチック層などで外面をそっくり覆うような加工を施すことができる。具体的には、全体をパッケージフィルムで覆う、パッケージ用の袋に入れる、シュリンクフィルムで覆う、液状材料で被覆したのちに固化する、などを加工方法を採ることができる。
別法として、3層からなる表示パネルPの前後に透明板を配置し、これら透明板を何らかの方法で相互に固定する方法を採ることもできる。具体的には、前面透明板/印刷シート10/拡散シート20/太陽電池30/背面透明板という順序で5層構造体を重ね、前面透明板と背面透明板との間を、たとえばボルトで固定する方法を採ることができる。あるいは、蓋付きの透明なケースに3層からなる表示パネルPを収容することもできる。表示パネルPを収容して蓋を閉じた状態において、表示パネルPの外寸とケースの内寸とがほぼ同じになるように設計しておけば、3層からなる表示パネルPをケース内に固定状態で支持することができる。
なお、いずれの方法を採る場合も、表示パネルPの前面,背面,側面を含めた全外周面が被覆されるようにするのが好ましい。外周面全体をそっくり被覆するようにすれば、剥がれにくく、ユーザの手が太陽電池30に直接触れることを防ぐことができ、太陽電池30が破損するのを防止する役割も果たすことができる。また、印刷シート10の前面(表示面)は、できるだけ全面を一様に被覆するようにするのが好ましい。表示面を部分的に被覆したり、表示面にシュリンクフィルムなどの封部があったりすると、印刷画像11の見た目が悪くなるだけでなく、太陽電池30の発電特性にも影響を与えることになり好ましくない。
したがって、シュリンクフィルムなどで全体を被覆する場合は、封部を前面(表示面)ではなく、側面や背面(太陽電池30側)に設けるようにするのが好ましい。同様に、表示パネルPを蓋付きの透明なケースに収容する構成を採る場合は、蓋の部分を前面(表示面)ではなく、側面や背面(太陽電池30側)に設けるようにするのが好ましい。また、前面透明板と背面透明板とで挟んで固定する場合は、これら2枚の透明板の平面的な大きさを、印刷シート10,拡散シート20,太陽電池30よりもひと回り大きく設計するのが好ましい。
以上、図1に例示するように、印刷画像11が形成された印刷シート10と、この印刷シート10の背面に配置された拡散シート20と、この拡散シート20の背面に配置された太陽電池30と、を有する発電機能をもった表示パネルを製品化する際の工夫を種々述べたが、表示パネルは、必ずしもこのような3層構造体によって構成する必要はない。
たとえば、印刷画像11を拡散シート20の前面もしくは背面に形成するようにすれば、印刷シート10を省略することができる。印刷シート10を省略した実施例では、表示パネルは、印刷画像11が形成された拡散シート20と、この拡散シート20の背面に配置された太陽電池30と、の2層構造体によって構成されることになる。この場合、本発明に係る印刷画像作成装置は、拡散シート20の表面に形成される印刷画像を作成する役割を果たす。
更に単純化する場合は、印刷画像11を太陽電池30の前面(受光面)に直接形成するようにすれば、印刷シート10だけでなく拡散シート20も省略することができる。この場合、表示パネルは、印刷画像11が受光面に形成された太陽電池30のみの1層構造体によって構成されることになり、本発明に係る印刷画像作成装置は、太陽電池30の受光面に形成される印刷画像を作成する役割を果たす。
もちろん、拡散シート20を省略して、印刷シート10と太陽電池30とによる2層構造体を構成することも可能である。この場合、印刷シート10を接着剤によって太陽電池30の前面に接着するようにすれば、接着剤層が拡散シート20と同様の拡散機能を果たすことができる。
また、背景の白さをより際立たせるために、拡散シート20に、蛍光増白剤や青系色素(染料や顔料)を添加してもよい。一般に、紫外〜青色の波長域成分は、太陽電池における発電への寄与が低いため、蛍光増白剤や青系色素を添加しても、発電効率を低下させる問題は生じない。もちろん、背景の白さをより際立たせるためには、複数枚の拡散シート20を積層する構造を採用したり、拡散シート20の内部に拡散剤を添加したり、拡散シート20の表裏両面に凹凸構造を設けたりすることも可能である。なお、拡散シート20の表裏両面に凹凸構造を設け、かつ、その一方の面に印刷画像11を印刷する際には、インキ層によって凹凸構造が埋められてしまうため、凹凸が小さい面側に印刷するのが好ましい。
<<< §2. 太陽電池を組み込んだ製品の発電効率 >>>
§1では、図2に示すように、表示パネルPに電気回路40や電気機器50を付加した製品の例をいくつか紹介した。ここでは、このような製品における太陽電池の発電効率について述べておく。
図1に示す表示パネルPの場合、外光が太陽電池30の受光面(図の左側面)にまで到達して発電に寄与するためには、印刷シート10および拡散シート20を透過する必要がある。その過程で大きな障害となるのが、印刷画像11である。印刷画像11は、インキ層から構成されており、太陽電池30まで進行する外光を遮蔽する役割を果たす。一般的なカラー画像の場合、印刷画像11は、CMYKなる各色のインキ層から構成されており、これらのインキ層はいずれも太陽電池30への外光の進行を阻害する働きをする。
もっとも、インキ層が形成されている領域は、外光を完全に遮蔽するわけではなく、外光の一部はインキ層によって反射し、一部はインキ層によって吸収され、残りの一部がインキ層を透過することになる。なお、実際には、印刷シート10や拡散シート20による反射や吸収も生じることになる。したがって、図1に示す表示パネルPの場合、印刷シート10の前面(図の左側の面)に照射された外光の一部は、印刷シート10、印刷画像11(インキ層)、拡散シート20の各界面で反射してしまい、発電には寄与しない。また、太陽電池30に向かって各シートの内部へと進行した光も、その一部は、インキ層を含む印刷シート10および拡散シート20の材料によって吸収されてしまい、発電には寄与しない。結局、太陽電池30の受光面に到達する光は、上記反射や吸収の影響を受けずに残った光ということになる。
ただ、このような光の進行プロセスにおいて、太陽電池30の受光面への到達を阻む最も大きな阻害要因は、印刷画像11を構成するインキ層である。実用上、印刷シート10の元になるシート(印刷画像11を形成する前のシート)や拡散シート20には、できるだけ透明度の高い透光性シートが用いられる。したがって、これら透光性シートによる反射や吸収による光のロスはインキ層によるロスに比べれば小さい。これに対して、インキ層は、表面での光の反射率や内部に透過した光の吸収率が、透明性シートに比べて格段に高くなり、発電に寄与する光に大きなロスを生じさせる。
このように、太陽電池30の受光面にインキ層からなる印刷画像11を配置すれば、製品としての意匠性を高める効果は得られるが、太陽電池の発電効率を低下させる要因になってしまう。このように、発電効率と意匠性はトレードオフの関係にあり、実用上は、個々の製品ごとに、発電効率と意匠性とのバランスをうまくとった設計が必要になる。本発明は、このような点に着目し、デザイナーが作成した原画像に基づいて、必要に応じて修正を加えることにより、個々の製品に組み込まれた太陽電池に必要とされる性能の維持が可能な印刷画像を作成する装置を提供するものである。
より具体的には、本発明に係る印刷画像作成装置は、原画像をそのまま印刷することにより形成される印刷画像11(インキ層)を太陽電池30の受光面に配置した場合に、太陽電池30の発電特性がどうなるかを、当該印刷画像11の光の透過特性に基づいて予測し、予測した発電特性が太陽電池30に関する所定の設計条件を満たすように、原画像に対して必要な修正処理を施す機能を有している。
太陽電池30の発電特性を予測するには、太陽電池30に到達する光の強度だけでなく、その波長(スペクトル)も考慮する必要がある。これは、太陽電池の発電効率が、受けた光の波長にも依存するためである。そこで、以下、図1に示す表示パネルPについて、太陽電池30の発電特性の予測を行う方法の基本原理を簡単に述べておく。
まず、印刷シート30の前面に照射される外光のスペクトルを定める。もちろん、製品としての個々の表示パネルPが実際に置かれる照明環境は、千差万別である。たとえば、日中の屋外に置かれた場合は、外光は太陽光であるから、そのスペクトルは白色のブロードなものになる。また、日中の室内に置かれた場合は、外光は太陽光と室内照明光とを融合したものになり、夜間の室内に置かれた場合は、外光は室内照明光のみになる。ただ、本発明を実施する上では、個々の製品の典型的な利用形態を想定し、そのような利用形態における典型的な照明環境を考慮した設計条件を設定すれば十分である。
たとえば、図3に示すようなスタンド型のビーコン装置であれば、事務室などの一般的な室内照明環境を想定した設計を行えばよい。図5は、一般的な室内照明光の発光スペクトルの一例として、LED照明の発光スペクトルの例を示すグラフである。ここでは、説明の便宜上、この図5に例示する発光スペクトルをもったLED照明からの光が外光として、印刷シート10の前面に照射された場合を考えてみよう。上述したとおり、実際には、発電に寄与する光に大きなロスを生じさせる要因は、印刷画像11(インキ層)の存在にあるので、ここでは、インキ層によるロスのみを考えてみる。
図6は、一般的な印刷用インキの反射スペクトルの一例を示すグラフである。図にCMYKと記されたグラフは、それぞれCMYKなる各色のインキ層の反射スペクトルである。各色のインキは、それぞれ各色を観察者に提示する役割を果たすので、それぞれ固有の色に対応する波長域の反射率が高くなっている。K色のインキは、黒を表現するインキであるため、ほぼ全波長域に渡って、反射率は0に近くなっている。したがって、図5に示すような発光スペクトルをもつ外光を印刷画像11に照射した場合、まず、CMYKなる各色のインキ層が形成されている領域ごとに、図6の各色のインキの反射率に応じた成分が反射してしまい、発電には寄与しなくなる。
そして、反射せずに残った成分については、そのままインキ層の内部を進行することになるが、その一部はインキ層によって吸収されてしまう。ここでは、各インキの吸収スペクトルのグラフの提示は省略するが、一般に、インキの吸収スペクトルの形は、反射スペクトルを逆転した形状を有している。たとえば、K色のインキの吸収スペクトルは、ほぼ全波長域に渡って高い吸収率を示すグラフになる。こうして、インキ層による吸収を受けずに最後まで残った光成分が、太陽電池30の受光面まで到達することになる。
したがって、印刷画像11を形成するCMYK各色のインキ層の二次元的な分布(実用上は、各インキ層を構成する網点分布)が把握できれば、理論的には、太陽電池30の受光面上の各位置にまで到達する透過光のスペクトルを求めることができる。たとえば、特定の位置に到達する透過光のスペクトルは、図5に示す外光の発光スペクトルから、当該特定の位置に形成されているインキ層についての反射スペクトルおよび吸収スペクトルを減じることにより得ることができる。
ここでは、こうして得られた「太陽電池30の受光面上の特定の位置にまで到達した透過光のスペクトル」が、図7のグラフのようなものになったとしよう。もちろん、この図7に示すグラフの形は、当該特定の位置に形成されているインキ層に応じて定まることになるので、印刷画像11として図1に例示するような絵柄のカラー画像を用いた場合、太陽電池30の受光面上の個々の位置について、それぞれ異なる形をもった透過光スペクトルが得られることになる。したがって、この図7に示す透過光スペクトルに基づいて太陽電池30の発電効率を予測する場合、ある程度の面積をもった部分領域(たとえば、図1に示す例の場合、個々のセル31〜36ごとの部分領域)についての平均的な透過光スペクトルを算出すればよい。
一方、太陽電池30の発電効率にも、光の波長依存性があるため、太陽電池30の発電効率を求めるためには、太陽電池の吸収スペクトルを考慮する必要がある。図8は、太陽電池の吸収スペクトルの一例を示すグラフである。図示のとおり、太陽電池の吸光度はその波長に依存しており、吸収された光が発電に寄与することになる。したがって、太陽電池30の特定の部分領域についての発電効率は、当該部分領域に到達した光の平均的な透過光スペクトル(図7)と太陽電池の吸収スペクトル(図8)との積として与えられることになる。
もちろん、太陽電池の吸収スペクトルは、当該太陽電池の材質によって大きく異なる。図9は、太陽電池の種別ごとの吸収スペクトルのバリエーションを示すグラフである。図9(a) は、色素増感太陽電池(DSC)の吸収スペクトルの一例を示し、図9(b) は、アモルファスシリコン太陽電池(a−Si)の吸収スペクトルの一例を示し、図9(c) は、結晶シリコン太陽電池(c−Si)の吸収スペクトルの一例を示す。このように、吸収スペクトルのグラフの形は、個々の太陽電池によって様々なので、特定の製品についての太陽電池の発電効率を予測するには、当該製品に組み込まれている太陽電池に固有の吸収スペクトルのグラフが必要になる。
結局、図1に例示するような表示パネルPを製品として設計する際には、当該製品にとって典型的な照明環境を想定して適切な外光スペクトル(図5)を定め、当該製品に用いられる印刷画像11およびそれを形成するインキ層の反射および吸収スペクトル(図6)に基づいてロス成分を予測し、外光スペクトルからロス成分を除くことにより太陽電池30まで到達する透過光スペクトル(図7)を求め、最後に、当該太陽電池30に固有の吸収スペクトル(図8)と透過光スペクトル(図7)との積として、当該太陽電池30の発電効率を算出することができる。
本発明に係る印刷画像作成装置は、このような基本原理に基づいて、特定の画像を印刷して印刷画像11として太陽電池30の受光面に配置した場合の発電効率を予測し(実際に印刷を行う前に予測し)、予測結果が太陽電池30に関する所定の設計条件(たとえば、ビーコン51を動作させるために必要な電力を供給するための最低条件)を満たしていない場合には、実際に印刷を行う前に修正を施す処理を行う機能を有している。このような機能をもった印刷画像作成装置の構成について、以下、§3以降において詳述する。
<<< §3. 本発明に係る印刷画像作成装置 >>>
ここでは、本発明に係る印刷画像作成装置の基本的な実施形態を説明する。図10は、この基本的な実施形態に係る印刷画像作成装置の構成を示すブロック図である。この装置は、デザイナー等が作成した原画像Aに基づいて、太陽電池30の受光面に配置する印刷画像11を作成する処理を行う装置であり、必要に応じて、原画像Aに対して修正処理を施し、修正後の画像に基づいて印刷画像11を作成する機能を有している。
図10に示すとおり、この印刷画像作成装置は、原画像入力部100と、画像変換部200と、プリント部300とを備えている。原画像入力部100は、原画像Aを形成するためのデジタルデータを原画像データD(A)として入力する構成要素である。たとえば、原画像Aを作成するデザイナーが、パソコンに組み込まれた画像作成ソフトウェアを利用して、ディスプレイ画面上で原画像Aを作成した場合、原画像入力部100は、当該パソコンから出力されるデータファイルを原画像データD(A)として取り込む処理を行う。図1に示す印刷画像11は、この原画像Aに基づいて印刷された画像ということになる。
画像変換部200は、原画像入力部100によって入力された原画像データに対して所定の変換処理を施し、インキ層からなる印刷画像11を形成するのに適した変換画像データD(B)を生成する処理を行う構成要素である。上例の場合、原画像データD(A)は、画像作成ソフトウェアによって作成されたデータであり、通常、ディスプレイ画面に表示するのに適した形式のデータ(たとえば、RGBの三原色で表現された画素の集合体データ)によって構成されている。画像変換部200は、このような原画像データD(A)を、プリント部300でインキ層を形成するのに適した形式の変換画像データD(B)(たとえば、CMYKなる各色のインキ層の網点を示すデータ)に変換する処理を実行する。
また、画像変換部200は、変換画像データD(B)をプリント部300に与えた場合に形成される印刷画像11の光の透過特性に基づいて、受光面に当該印刷画像11が配置された太陽電池30の発電特性を予測する機能も有しており、更に、予測した発電特性が当該太陽電池30に関する所定の設計条件を満たすように、原画像データD(A)もしくは変換画像データD(B)、またはこれらに対して修正を加えた画像データに対して必要な修正処理を施す機能も有している。
プリント部300は、画像変換部200から与えられる変換画像データD(B)に基づいて、太陽電池30の受光面に配置するための透光性シート5の表面に、インキ層からなる印刷画像11を形成する処理を行う。透光性シート5は、印刷シート10の元になる材料シートであり、§1で述べたように、種々の樹脂からなる透明なシートや透明な基板によって構成されている。プリント部300によって、透光性シート5の表面にインキ層からなる印刷画像11が形成されたものが、印刷シート10になる。図1に示すとおり、この印刷シート10と拡散シート20と太陽電池30の3層構造体によって、表示パネルPが構成されることになる。
なお、§1で述べたとおり、印刷画像11は、拡散シート20の表面に形成することも可能である。この場合、プリント部300は、透光性シート5の代わりに、拡散シート20の表面にインキ層からなる印刷画像11を形成することになり、表示パネルPは、印刷画像11が形成された拡散シート20と太陽電池30との2層構造によって構成することができる。また、印刷画像11は、太陽電池の受光面に形成することも可能である。この場合、プリント部300は、透光性シート5の代わりに、太陽電池30の受光面に直接的にインキ層からなる印刷画像11を形成することになり、表示パネルPは、印刷画像11が形成された太陽電池30の1層構造によって構成することができる。もちろん、印刷シート10に拡散層を形成してもよい。
続いて、画像変換部200のより詳細な構成を説明する。図示のとおり、画像変換部200は、データ修正部210,データ変換部220,条件判定部230,設計条件格納部240,相関情報格納部250を有している。以下、これらの各構成要素の機能について説明する。
まず、データ変換部220は、原画像入力部100が入力した原画像データD(A)を変換画像データD(B)に変換する役割を果たす構成要素である。表示パネルPを商業製品として製造する場合、通常、原画像Aは、デザイナーがパソコン用の画像作成ソフトウェアを利用して、ディスプレイ画面上で作成することになり、原画像データD(A)は、当該ソフトウェアから出力されるデジタルデータになる。この原画像データD(A)のデータフォーマットは、当該ソフトウェアに固有の専用フォーマットである場合もあるし、汎用の画像データ用フォーマットである場合もある。
データ変換部220は、このような様々なフォーマットで記述されている原画像データD(A)を、プリント部300における印刷処理に適したフォーマットで記述されている変換画像データD(B)に変換する処理を行う。ここでは、説明の便宜上、原画像データD(A)が、それぞれ所定の画素値が定義された画素の集合体からなるデジタルデータであり、プリント部300が、与えられた変換画像データD(B)に基づいて、網点インキ層からなる印刷画像11を形成する印刷機であるものとしよう。この場合、データ変換部220は、画素の集合体を示す原画像データD(A)に基づいて、網点の集合体からなる網点画像を形成するための変換画像データD(B)を生成する変換処理を行うことになる。
より具体的には、原画像Aがカラー画像の場合、原画像入力部100によって入力される原画像データD(A)は、たとえば、RGBなる3原色についての各色別の画素値が定義された画素の集合体からなるデジタルデータになる。一方、プリント部300は、通常、CMYKなる4色のインキを用いて、印刷対象物の表面に網点インキ層を形成することにより印刷を行う。もちろん、プリント部300としては、その他の特色インキを用いて印刷を行う印刷機を用いることもできるが、ここでは、プリント部300が、CMYKなる4色インキを用いて印刷を行う典型例を述べることにする。
この場合、データ変換部220は、RGBなる3原色についての各色別の画素値が定義された画素の集合体を示す原画像データD(A)に基づいて、CMYKなる各色の網点の集合体からなる網点画像を形成するための変換画像データD(B)を生成する変換処理を行うことになる。実際には、RGBの3原色の画素値をCMYKの4色の画素値に変換することにより、CMYKの各色についての各色別の画素値が定義された画素の集合体からなる中間画像データを作成した上で、更に、当該中間画像データを、それぞれ所定の大きさをもつ各色の網点の集合体を示す網点画像データに変換し、当該網点画像データを変換画像データD(B)として出力する処理が行われる。もちろん、原画像入力部100が入力した原画像データD(A)が、もともとCMYKの画素値データであった場合には、当該原画像データD(A)を直接網点画像データに変換して、変換画像データD(B)とすればよい。
プリント部300は、こうして与えられた変換画像データD(B)に基づいて、透光性シート5の表面(上述したとおり、拡散シート20の表面や太陽電池30の受光面でもよい)に、CMYKなる各色の網点インキ層からなる印刷画像11を形成する。
なお、RGB形式の原画像データD(A)を、CMYK形式の中間画像データに変換し、更に、CMYK形式の変換画像データD(B)に変換するための具体的な処理は、一般的な網点印刷の技術として古くから知られている処理であるため、ここでは具体的な処理内容についての説明は省略する。このように、上述したデータ変換部220による変換処理の内容自体は、公知の技術であるが、本発明に係る画像変換部200の特徴は、更に、データ修正部210,条件判定部230,設計条件格納部240,相関情報格納部250が付加されている点にある。
設計条件格納部240は、太陽電池の発電特性に関する設計条件を格納する構成要素である。図10に示す例の場合、プリント部300によって形成する予定の印刷画像11の配置対象となる特定の太陽電池30に関する設計条件が、設計条件格納部240内に予め設定されることになる。したがって、この印刷画像作成装置を利用するユーザ(たとえば、表示パネルPの設計担当者)は、予め、製品化予定となっている表示パネルPの用途等を考慮して、内蔵される太陽電池30の発電特性に関する設計条件を定め、これを設計条件格納部240に設定する作業を行っておく必要がある。
設計条件格納部240に設定する設計条件としては、たとえば「所定の照明環境下において供給可能な電力の下限値」のような具体的な数値を設定することができる。具体的には、表示パネルPからの電力供給を受けて動作する予定の電気機器50が必要とする消費電力の値が既知であれば、当該消費電力の値を設計条件として設定することができる。このように、設計条件格納部240には、印刷画像11と太陽電池30とを有する実際の製品に要求される発電特性に関する条件が、個々の製品ごとにそれぞれ個別に設定されることになる。
一方、相関情報格納部250は、プリント部300によって形成されるインキ層の被覆面積(絶対的な面積であってもよいし、被覆率や網点面積率のような相対的な面積であってもよい。)と太陽電池の発電特性との関係を示す相関情報を格納する構成要素である。ここに示す実施例の場合、プリント部300は、CMYKなる4色のインキを用いて、印刷対象物の表面にCMYKなる4色の網点インキ層を形成する機能を有している。したがって、相関情報格納部250に格納される相関情報は、CMYKなる4色のインキ層の被覆面積と太陽電池の発電特性との関係を示す情報になる。
もちろん、この相関情報の内容は、プリント部300が用いるインキの特性や太陽電池30の種別に依存するものになるので、相関情報格納部250に格納されている相関情報は、特定のプリント部300(特定のインキ)と特定の太陽電池30(特定の種別の太陽電池)との組み合わせについて意味のあるものになる。したがって、これらの組み合わせが複数種類存在する場合には、相関情報格納部250にも、複数種類の相関情報を用意しておく必要がある。また、図5に示すような特定の外光スペクトルおよびその照度を想定して発電特性を定義する必要がある。この相関情報の具体的な内容については、§4において詳述する。
条件判定部230は、相関情報格納部250に格納されている相関情報を用いることにより、判定対象となる画像データに基づいて形成される印刷画像11を受光面に配置したときの太陽電池の発電特性を、特定の条件で外光を照射した場合を想定して予測し、予測した発電特性が、設計条件格納部240に格納されている設計条件を満たすか否かの条件判定を行う構成要素である。
上例の場合、変換画像データD(B)は、所定の大きさ(面積)をもつCMYK各色の網点の集合体を示す網点画像データであり、CMYK各色のインキ層の被覆面積(網点面積率)を示すデータになっている。そこで、インキ層の被覆面積と太陽電池の発電特性との関係を示す相関情報を参照すれば、当該網点画像データに基づいて印刷された印刷画像を配置したときの太陽電池の発電特性を予測することができ、当該発電特性が、設計条件格納部240に格納されている設計条件を満たすか否かの条件判定を行うことができる。
条件判定部230による判定の結果、設計条件を満たしている旨の肯定的な判定結果が得られた場合は、データ変換部220によって変換された変換画像データD(B)(原画像データD(A)と実体的には同一内容のデータ)をそのままプリント部300へ引き渡して、印刷画像11を印刷させればよい。当該印刷画像11を配置した場合でも、太陽電池30の発電特性が設計条件を満たす旨の予測がなされているので、太陽電池30は設計条件どおりの発電機能を発揮することができる。
一方、条件判定部230による判定の結果、設計条件を満たさない旨の否定的な判定結果が得られた場合は、そのまま判定対象となる画像データに基づいて印刷を行うと、太陽電池30は設計条件どおりの発電機能を発揮することができなくなる。データ修正部210は、このような場合に判定対象となる画像データに対する修正を行う構成要素である。すなわち、データ修正部210は、条件判定部230により否定的な判定結果が得られた場合に、肯定的な判定結果が得られるよう判定対象となる画像データに対して修正処理を施すことになる。
なお、ここでいう「判定対象となる画像データ」とは、そのデータフォーマットの形式的な相違を問わず、実体的に同一内容のデータであれば、同一の「判定対象となる画像データ」と呼ばれるべきデータを意味している。たとえば、デザイナーが作成した原画像データD(A)と、データ変換部220においてこれを変換することによって得られる変換画像データD(B)とは、前者がRGB形式のいわゆるラスターデータであるのに対して、後者はCMYKの網点画像データであり、データフォーマットは異なっているが、後者は前者に対して所定のアルゴリズムに基づく変換処理を施すことにより一義的に得られるデータであり、この場合の原画像データD(A)と変換画像データD(B)とは、「判定対象となる画像データ」としては同一の画像データである。同様に、データ変換部220内で生成されるCMYK形式のラスターデータからなる中間画像データも、データD(A),D(B)と同一の画像データである。
したがって、条件判定部230による判定処理には、原画像データD(A)を用いてもよいし、変換画像データD(B)を用いてもよいし、データ変換部220の内部で生成される中間画像データを用いてもよい。いずれの場合も、「判定対象となる画像データ」としては同じものになる。ただ、相関情報を用いて太陽電池の発電特性を予測するためには、インキ層の被覆面積に関する情報を取得する必要があるため、実用上は、データ変換部220による変換後の変換画像データD(B)、すなわち、網点画像データを用いて判定処理を行うのが好ましい。この場合、変換画像データD(B)に対して得られた判定結果は、変換前の原画像データD(A)や中間画像データについても適用されることになる。
同様の理由により、データ修正部210による修正処理も、変換前の原画像データD(A)に対して行ってもよいし、変換後の変換画像データD(B)に対して行ってもよいし、中間画像データに対して行ってもよい。上例の場合、変換前の原画像データD(A)はRGB形式のラスターデータであるため、原画像データD(A)に対する修正処理は、RGB形式のラスターデータに対して行われることになり、修正後の原画像データD(A)に対してデータ変換部220における変換処理が行われ、修正後の変換画像データD(B)が生成されることになる。プリント部300には、この修正後の変換画像データD(B)が与えられ、印刷画像11が形成される。一方、変換後の変換画像データD(B)に対して修正を行う場合は、CMYKの各色についての網点画像データに対して修正処理が行われることになる。この場合、原画像データD(A)は修正されずに残ることになる。もちろん、CMYK形式のラスターデータである中間画像データに対して修正を行った場合は、修正後の中間画像データに基づいて変換画像データD(B)が生成される。
ここに示す実施例の場合、条件判定部230は、データ修正部210による修正前の画像データを判定対象とする条件判定を行うとともに、データ修正部210による修正後の画像データを判定対象とする条件判定を行う機能を有しており、データ修正部210は、条件判定部230により肯定的な判定結果が得られるまでデータ修正を繰り返し実行する。したがって、最終的にプリント部300に与えられる変換画像データD(B)は、必ず条件判定部230によって肯定的な判定がなされた画像データになる。
結局、表示パネルPを組み込んだ種々の製品の設計者は、図10に示す印刷画像作成装置を利用するにあたり、まず、設計対象となる製品に組み込まれる太陽電池の発電特性に関する設計条件を設計条件格納部240に設定する作業を行えばよい。上述したとおり、実際の製品に要求される発電特性は、個々の製品ごとにそれぞれ異なるので、設計条件は個々の製品ごとにそれぞれ個別に設定されることになる。
一方、相関情報格納部250にも、製品に利用する太陽電池30についての相関情報を設定しておく必要があるが、この相関情報は、印刷画像11を構成するインキ層の被覆面積と太陽電池の発電特性との関係を示す情報であるから、プリント部300および太陽電池30が特定されれば一義的に定まる情報になる。したがって、常に同じプリント部300を用いて印刷画像11を形成し、常に同じ種別の(同じ発電特性をもつ)太陽電池30を利用して製品を構成するのであれば、当該プリント部300および当該太陽電池30の組み合わせに応じた相関情報を相関情報格納部250に用意しておけば足り、設計者が相関情報を毎回設定する必要はない。
このような準備をしておけば、デザイナーが、意匠性のみを考慮して原画像Aを作成したとしても、設計条件を満足する印刷画像11が自動的に作成される。すなわち、原画像Aに対応する原画像データD(A)は、原画像入力部100によって入力された後、画像変換部200によってインキ層からなる印刷画像11を形成するのに適した変換画像データD(B)に変換されることになるが、このとき、当該画像データを利用してそのまま印刷した場合に設計条件を満たすか否かの判定が行われ、条件を満たさない場合には、データ修正部210による修正が施されることになる。したがって、プリント部300に提供される画像データは、必ず設計条件を満たすデータになり、印刷された印刷画像11を太陽電池30の受光面に配置した製品は、必ず設計条件を満たす製品になる。
なお、図1に示す例は、印刷画像11のサイズと太陽電池30の受光面のサイズとが同一の例であるが、実際には、両者のサイズが異なるケースもある。たとえば、印刷シート10として、太陽電池30の受光面より大きなサイズのシートを用い、当該印刷シート10の全面に印刷画像11を形成した場合、印刷画像11のサイズは太陽電池30の受光面より大きくなる。逆に、印刷シート10として、太陽電池30の受光面より小さなサイズのシートを用いた場合、当該シート10に形成する印刷画像11のサイズは太陽電池30の受光面より小さくなる。
このように、印刷画像11のサイズと太陽電池30の受光面のサイズとが異なる場合には、印刷画像11を太陽電池30の受光面に重ねて配置したときに両者が重なる重畳領域を定めるようにし、画像変換部200は、印刷画像11の上記重量領域のみについて光の透過特性を演算し、上記重量領域のみについて太陽電池30の発電特性の予測処理を行えばよい。
このように、本発明に係る太陽電池受光面用の印刷画像作成装置によれば、様々な製品に太陽電池を組み込んで発電機能をもたせ、その受光面に画像を配置して意匠性を向上させる際に、原画像に基づいて、当該太陽電池に必要とされる性能の維持が可能な印刷画像を作成することができる。
なお、図10に示す印刷画像作成装置は、実際には、印刷機および当該印刷機にデータを提供するコンピュータによって実現することができる。具体的には、図10に示すプリント部300は、CMYKの4色のインキを用いて網点印刷を行う網点印刷機によって構成することができ、原画像入力部100および画像変換部200は、この網点印刷機に与える印刷用の画像データを準備するとともに、必要に応じて、当該画像データに対する条件判定や修正を行うためのプログラムを組み込んだコンピュータによって構成することができる。
また、この図10に示す印刷画像作成装置を用いて印刷画像11を作成するプロセスは、太陽電池30の受光面に配置する印刷画像11を作成する方法として把握することができる。当該方法は、コンピュータが、原画像Aを形成するためのデジタルデータを原画像データD(A)として入力する原画像入力段階と、コンピュータが、この原画像データD(A)に対して所定の変換処理を施し、インキ層からなる印刷画像11を形成するのに適した変換画像データD(B)を得る画像変換段階と、印刷機(プリント300)が、変換画像データD(B)に基づいて、太陽電池30の受光面もしくは太陽電池30の受光面に配置するための透光性シート5,20の表面に、インキ層からなる印刷画像11を形成するプリント段階と、を有している。
そして、当該方法の特徴は、画像変換段階において、コンピュータが、変換画像データD(B)を印刷機に与えた場合に形成される印刷画像11の光の透過特性に基づいて、受光面に当該印刷画像11が配置された太陽電池30の発電特性を予測し、予測した発電特性が太陽電池30に関する所定の設計条件を満たすように、原画像データD(A)もしくは変換画像データD(B)またはこれらに対して修正を加えた画像データに対して必要な修正処理を施す点にある。
なお、この図10に示す印刷画像作成装置の一部は、太陽電池の受光面に配置する印刷画像の適否を判定する、太陽電池受光面用の印刷画像の適否判定装置として利用することも可能である。具体的には、図10に示す構成要素のうち、原画像Aを形成するためのデジタルデータを原画像データD(A)として入力する原画像入力部100と、太陽電池30の発電特性に関する設計条件を格納する設計条件格納部240と、原画像データD(A)に基づく印刷によって形成されるインキ層の被覆面積と太陽電池30の発電特性との関係を示す相関情報を格納した相関情報格納部250と、この相関情報を用いることにより、原画像データD(A)に基づいて形成される印刷画像11を受光面に配置したときの太陽電池30の発電特性を予測し、予測した発電特性が設計条件を満たすか否かの条件判定を行う条件判定部230と、によって太陽電池受光面用の印刷画像の適否判定装置を構成することができる。条件判定部230による判定結果は、オペレータに報知される。
この適否判定装置は、データ修正部210を有していないため、条件判定部230において否定的な判定がなされた場合に、判定対象となった画像に対して自動的な修正を行うことはできないが、少なくとも、所定の設計条件を満たしていない旨の判定結果が提示されるので、オペレータは、必要に応じて、手作業により画像データに対する修正を行うことができる。
<<< §4. 相関情報の具体的内容 >>>
図10に示す印刷画像作成装置において、条件判定部230は、相関情報格納部250に格納されている相関情報を用いることにより、判定対象となる画像データに基づいて形成される印刷画像11を受光面に配置したときの太陽電池30の発電特性を予測する。ここで、相関情報とは、プリント部300によって形成されるインキ層の被覆面積(絶対的な面積であってもよいし、被覆率や網点面積率のような相対的な面積であってもよい。)と太陽電池30の発電特性との関係を示す情報であり、条件判定部230は、判定対象となる画像データに基づいて、印刷画像11として形成されるインキ層の被覆面積を求め、更に相関情報を利用して、当該被覆面積に応じた太陽電池30の発電特性を予測することになる。
別言すれば、この相関情報を利用すれば、インキ層から構成される印刷画像11の光の透過特性(透過スペクトル)を予測することができるので、印刷画像11の前面に照射される外光として、たとえば図5に例示するようなスペクトルをもった所定強度(たとえば、200ルックスの照度)の基準光を想定すれば、図7に例示するような透過光スペクトルを求めることができ、更に、この透過光スペクトルと図8に例示するような太陽電池30の量子効率スペクトルとの積を計算すれば、太陽電池30の発電特性を予測することができる。あるいは、所定の単位領域ごとに透過光のCMYK成分の平均を求め、当該平均に対する太陽電池30の吸収特性に基づいて当該単位領域についての発電特性を求め、こうして求めた各単位領域の発電特性の総和として、太陽電池30全体の発電特性を予測してもよい。また、CMYKの各色が占めている面積をそれぞれ算出し、この算出値に基づいて太陽電池の発電効率を推測することもできる。
§3で述べた実施例の場合、プリント部300は、CMYKなる4色のインキを用いて網点を形成する処理を行うので、相関情報としては、CMYKの各インキ層の被覆面積と太陽電池30の発電特性との関係を示す情報を用意しておく必要がある。もちろん、同じ色のインキであっても、メーカーや型番によって光の透過特性は異なるので、上記予測を行う際には、プリント部300が実際に用いるCMYKの各インキについての相関情報を用意しておけばよい。そうすれば、プリント部300が当該CMYKの各インキを用いて印刷を行う限り、適切な発電特性の予測が可能になる。
たとえば、図1に示す実施例の場合に、太陽電池30の1つの部分領域を構成するセル31についての発電特性を予測するには、まず、このセル31の受光面に配置される印刷画像11の対応部分について、プリント部300に与える予定の変換画像データD(B)に基づいてCMYKの各インキ層による被覆面積を求め、どの程度の領域が、CMYKの各インキ層によって被覆されるかを算出すればよい。相関情報は、各インキ層の被覆面積と太陽電池30の発電特性との関係を示す情報であるから、各インキ層の被覆面積が算出できれば、相関情報を参照することにより、太陽電池30の発電特性を予測することができる。
なお、§3で述べた実施例のように、プリント部300が、変換画像データD(B)に基づいて、網点インキ層からなる印刷画像11を形成する場合は、インキ層の被覆面積を示す情報として、網点面積率を用いるようにするのが好ましい。網点印刷を行うプリント部300に対しては、変換画像データD(B)として、網点面積率(所定領域内における網点からなるインキ層が占有する面積の割合)の二次元分布を示すデータが用いられるので、相関情報格納部250に、網点面積率と太陽電池の発電特性との関係を示す相関情報を格納しておけば、条件判定部230は、この相関情報を用いることにより、変換画像データD(B)を判定対象として、当該画像データに基づいて形成される印刷画像11を配置したときの太陽電池30の発電特性を比較的単純な処理で予測することができる。
すなわち、§3で述べた実施例では、原画像入力部100は、RGBなる各色別の画像データを有する原画像データD(A)を入力する機能を有しているが、プリント部300は、CMYKなる各色の網点インキ層からなる印刷画像11を形成する機能を有している。したがって、相関情報格納部250に、CMYKなる各色の網点面積率の組み合わせと太陽電池の発電特性との対応関係を示す相関情報を格納しておくようにしておけば、条件判定部230は、網点画像を印刷させるための変換画像データD(B)を判定対象として、太陽電池30の発電特性を予測することができる。
具体的には、条件判定部230は、判定対象となる変換画像データD(B)に基づいて、CMYKなる各色についての特定の網点面積率の組み合わせを決定し、相関情報格納部250に格納されている相関情報を参照することにより、決定した組み合わせに対応する発電特性を認識し、認識した発電特性に基づいて、判定対象となる画像データに基づいて形成される印刷画像11を配置したときの太陽電池30の発電特性を予測する処理を行うことができる。
相関情報格納部250に格納すべき相関情報は、プリント部300が実際に用いる各インキの反射スペクトルや吸収スペクトルなどの物理的な特性データと、太陽電池30の吸収スペクトルや発電効率などの物理的な特性データと、標準的な外光として想定する基準光のスペクトルや照度を示す特性データと、が用意できれば、理論的には、これらのデータを用いた演算によって求めることができる。ただ、実際には、透光性シート5や拡散シート20による反射や吸収など、様々なファクターが関与してくるため、理論的な演算によって正確な相関情報を求める作業は、かなり複雑で労力を要する作業になる。
そこで実用上は、CMYKなる各色のそれぞれについて、何通りかの測定用印刷シートを実際に印刷し、この測定用印刷シートを適宜組み合わせて受光面に配置したときの太陽電池30の発電特性を実測することにより、CMYKなる各色の網点面積率の組み合わせと太陽電池の発電特性との対応関係を示す相関情報を用意するのが好ましい。以下、このような方法で、相関情報格納部250に格納すべき相関情報を作成する具体的な手順を説明する。
まず、段階A1として、所定の網点面積率で所定色の網点インキ層が均一に分散形成された測定用印刷シート(いわゆる、平網のシート)を、複数J通りのサンプル網点面積率のそれぞれについて、かつ、CMYKの4通りの色のそれぞれについて用意する。図11は、J=6に設定することにより用意された24通りの測定用印刷シートのバリエーションを示す平面図である。1行目に示す6枚の測定用印刷シートC(0%)〜C(100%)は、いずれもC色インキからなる網点が、それぞれ網点面積率0%,20%,40%,60%,80%,100%(サンプル網点面積率)で印刷されたC版の平網シートである。
同様に、2行目に示す6枚の測定用印刷シートM(0%)〜M(100%)はM色インキからなる網点を、3行目に示す6枚の測定用印刷シートY(0%)〜Y(100%)はY色インキからなる網点を、4行目に示す6枚の測定用印刷シートK(0%)〜K(100%)はK色インキからなる網点を、それぞれ所定の網点面積率で印刷した平網シートである。
これら24枚の測定用印刷シートは、いずれも、図10に示す印刷画像作成装置におけるプリント部300によって、透光性シート5の表面に印刷された印刷シート10に相当するものである。別言すれば、印刷に用いる変換画像データD(B)として、各色の各網点面積率の平網画像(同一の大きさの網点を均一に分布するように形成した画像)を印刷するためのデータを用いて透光性シート5上に印刷画像11を形成した印刷シート10ということになる。
したがって、たとえば、測定用印刷シートC(20%)上には、C色のインキ層からなる同一サイズの網点が一様に分散形成されており、その網点による被覆面積が全体の20%を占めていることになる。また、測定用印刷シートC(100%)上には、隣接する網点が融合して、全面にC色のインキ層が形成されていることになる。なお、図11には、説明の便宜上、測定用印刷シートC(0%),M(0%),Y(0%),K(0%)をそれぞれ異なるシートとして描いているが、実際には、網点面積率0%のシートには、インキ層は形成されていないので、これらのシートは、実際には、印刷前の透光性シート5に相当するものである。したがって、実際には、24通りのシートではなく、21通りのシートを用意すれば足りるが、ここでは、原理説明を行うため、便宜上、測定用印刷シートC(0%),M(0%),Y(0%),K(0%)をそれぞれ異なるシートとして取り扱った説明を行う。
続いて、段階A2として、各色について、それぞれJ通りの測定用印刷シートの中の1つを選択することにより、4色の測定用印刷シートの組み合わせを構成し、当該組み合わせに係る4枚の測定用印刷シートを太陽電池30の受光面に重ねて配置したときの当該太陽電池30の発電特性を実測する処理を、合計「Jの4乗通り」の組み合わせについて実行する。上述したように、図11に示す例は、J=6に設定した例であり、CMYKの各色について、それぞれ6通りの測定用印刷シートの中の1つを選択することになる。
図12は、このような実測の原理を示す斜視図である。太陽電池30の上方には、4枚の測定用印刷シート10C,10M,10Y,10Kが重ねて配置されている。ここで、シート10Cは、図11の1行目に描かれている6枚のC色シートのいずれか1枚であり、シート10Mは、図11の2行目に描かれている6枚のM色シートのいずれか1枚であり、シート10Yは、図11の3行目に描かれている6枚のY色シートのいずれか1枚であり、シート10Kは、図11の4行目に描かれている6枚のK色シートのいずれか1枚である。各色について、それぞれ6通りの選択肢があるので、4枚の測定用印刷シートの組み合わせは、全部で「6の4乗通り(1296通り)」になる。
基本原理としては、これら4枚の測定用印刷シート10C,10M,10Y,10Kを、太陽電池30の上面(受光面)に積層状態で配置し、上方から基準光を照射して、そのときの太陽電池30の発電特性を実測すればよい。基準光としては、「所定の標準光源(たとえば、図5のグラフに示す発光スペクトルを有するLED照明光源)を所定の照度(たとえば、200ルックス)で照射したときの光」として予め設定しておけばよい。こうして照射された基準光のうち、一部は4枚の測定用印刷シートによって反射もしくは吸収されてしまうが、残りの一部が太陽電池30の受光面まで到達して発電に寄与する。最後に、段階A3として、上記実測により得られた発電特性と、当該実測に用いられた測定用印刷シートのサンプル網点面積率の組み合わせと、の対応関係を示す相関情報を作成すればよい。
ただ、図12に示すように、4枚のシートを積層した状態で測定すると、シート自体による吸収の影響により、若干の測定誤差が生じることになる。すなわち、照射された基準光は、インキ層だけではなく、シート自身による吸収も受けることになる。したがって、4枚のシートを積層した状態で測定すると、シート自身による吸収量が4倍になり、1枚の印刷シート10を想定した相関情報を得る上では、誤差が生じることになる。
そこで、実際には、図12に基本原理として示す方法Aの代わりに、次のような代替方法Bを採るのが好ましい。まず、段階B1として、CMYKの4通りの色の網点インキ層が、重畳して、それぞれ所定の網点面積率(c%,m%,y%,k%)で均一に分散形成された単一の測定用全色印刷シート10(c%,m%,y%,k%)を用意する。このとき、CMYK各色の網点面積率として、それぞれ複数J通りのサンプル網点面積率を採用することにより、合計「Jの4乗通り」の組み合わせのそれぞれについての測定用全色印刷シート10(c%,m%,y%,k%)を用意するようにする。
この測定用全色印刷シート10(c%,m%,y%,k%)は、図10に示す印刷画像作成装置におけるプリント部300によって、1枚の透光性シート5の表面に、C色のインキを網点面積率c%、M色のインキを網点面積率m%、Y色のインキを網点面積率y%、K色のインキを網点面積率k%でそれぞれ重畳して平網印刷したものである。上例のように、J=6に設定した場合、CMYK各色の網点面積率として、それぞれ6通りのサンプル網点面積率が設定されることになるので、合計「6の4乗枚(1296枚)」の測定用全色印刷シート10(c%,m%,y%,k%)が用意される。
次に、段階B2として、上記段階B1で用意された「Jの4乗通り」の測定用全色印刷シート(J=6の場合、1296枚のシート)の中の1枚を選択し、選択した測定用全色印刷シート10(c%,m%,y%,k%)を太陽電池30の受光面に重ねて配置し、この測定用全色印刷シート10(c%,m%,y%,k%)を通して基準光を太陽電池30に照射したときの当該太陽電池30の発電特性を実測する処理を、「Jの4乗通り」の測定用全色印刷シートのそれぞれについて実行する。そして、最後に、段階B3として、上記実測により得られた発電特性と、当該実測に用いられた定用全色印刷シート10(c%,m%,y%,k%)におけるCMYK各色のサンプル網点面積率の組み合わせと、の対応関係を示す相関情報を作成すればよい。
このように、測定用全色印刷シート10(c%,m%,y%,k%)を用いた測定を行えば、基準光が太陽電池30に到達するまでに透過するシートは1層分だけになるので、シート自身による吸収量が4倍になることに起因する誤差を抑制することができる。ただ、図12に示すように4枚のシート10C,10M,10Y,10Kを積層して測定する方法を採る場合は、図11に示すような24通りの測定用印刷シートを用意すれば足りるが、測定用全色印刷シート10(c%,m%,y%,k%)を用いて測定する方法を採る場合は、全部で6の4乗通り(1296通り)のシートを用意しておく必要があり、シートを準備する作業負担は増えることになる。
このような作業負担を軽減する方法として、次のような別法Cを採ることも可能である。まず、段階C1として、所定の網点面積率で所定色の網点インキ層が均一に分散形成された測定用印刷シートを、複数J通りのサンプル網点面積率のそれぞれ、かつ、CMYKの4通りの色のそれぞれについて用意する。この段階C1は、前述した段階A1と全く同じであり、J=6に設定した場合、図11に示すような24通り(実際には、前述したとおり、21通りでよい)の測定用印刷シートが用意される。
次に、段階C2として、上記段階C1で用意された測定用印刷シートの中の1枚を選択し、選択した測定用印刷シートのみを太陽電池30の受光面に配置したときの当該太陽電池30の発電特性を実測する処理を、用意された各測定用印刷シートのそれぞれについて実行する。別言すれば、図11に示す各測定用印刷シートについて、それぞれ太陽電池30の発電特性が実測されることになる。
そこで、これらの実測結果に基づいて、CMYKの4通りの色の網点インキ層が重畳して形成された単一の測定用全色印刷シート(実在のシートではなく、あくまでも仮想のシート)を、太陽電池30の受光面に配置したときの当該太陽電池30の発電特性を推測する処理を、CMYKの各色についてそれぞれJ通りのサンプル網点面積率を採用した合計「Jの4乗通り」の組み合わせの測定用全色印刷シートについて実行する。要するに、前述した段階B2の実測(実在の測定用全色印刷シートを用いた測定)によって得られる結果を、図11に示す測定用印刷シート(単色の印刷シート)を用いた実測結果に基づいて推定する処理が行われることになる。
図11に示す測定用印刷シート(単色の印刷シート)を用いた実測結果は、いずれも、特定のある1色のインキ層による吸収の影響とシート自身による吸収の影響とを受けた測定結果になる。したがって、これら実測結果に基づいて所定の演算を行うことにより、4色のインキ層による吸収の影響とシート自身による吸収の影響とを受けた場合の測定結果を、演算による推定値として得ることができる。前述した段階B2を実施する場合は、「Jの4乗通り」の測定用全色印刷シートを用意する段階B1が必要があるのに対して、段階C2を実施する場合、図11に例示する単色の印刷シートを用意する段階C1を行えば足りるので、シートを準備する作業負担は大幅に低減される。
最後に、段階C3として、上記段階C2における推測により得られた発電特性と、当該推測に用いられた測定用印刷シートのサンプル網点面積率の組み合わせと、の対応関係を示す相関情報を作成する段階を行えばよい。
以上、図12に示す実測モデルを参照しながら、図10に示す相関情報格納部250に格納される相関情報を作成する具体的な方法A,B,Cを説明したが、もちろん、相関情報を作成する方法は上述した方法に限定されるものではない。本発明で用いる相関情報は、プリント部300によって形成されるインキ層の被覆面積と太陽電池30の発電特性との関係を示す情報であれば足り、その作成方法は特に限定されるものではない。
太陽電池30の発電特性を示す測定値としては、供給可能な電圧値や電流値、あるいはその積である電力値などの測定値を用いることができるが、実際には、これらの値は太陽電池30に接続する負荷によって変動する。すなわち、実際の製品では、図2に示すように、太陽電池30が発電した電力は、電気回路40を介して電気機器50に供給されるため、太陽電池30から供給される電圧値や電流値は、電気回路40の特性や電気機器50の負荷抵抗などに応じて変わることになる。
そこで、実用上は、たとえば、上述した段階A2,B2,C2において、測定用印刷シートもしくは測定用全色印刷シートを通して所定の基準光を太陽電池30に照射したときに、当該太陽電池30から出力される電力についての電圧電流特性を実測し、当該電圧電流特性に基づいて、予め定められた設定電圧に応じた電流値を当該太陽電池の発電特性として用いるようにすればよい。
図13(a) に示すグラフG1は、太陽電池30に特定の光を照射したときに得られる電圧/電流特性を示すグラフG1である。このグラフG1は、太陽電池30の出力段に接続する負荷抵抗を変化させることによって測定することができ、このようなグラフを自動的に測定する測定装置が市販されている。負荷抵抗を増加させれば、太陽電池30の出力端子間の電圧Vは増加するが、出力電流I(図のグラフでは太陽電池の単位面積あたりの電流密度)は減少する。逆に、負荷抵抗を減少させれば、出力電圧Vは減少するが、出力電流Iは増加する。グラフG1は、このような出力電流I(電流密度)と出力電圧Vとの関係を示している。
ここで、出力電圧がVaの場合、グラフG1上の参照点aに対応する特性が得られるため、電流密度はIaになる。同様に、出力電圧がVbの場合、グラフG1上の参照点bに対応する特性が得られるため、電流密度はIbになる。図2に示すように、太陽電池30が発電した電力は、まず、電気回路40に与えられることになるが、通常、電気回路40には、固有の最適な入力電圧値が設定されている。このような場合、当該最適な入力電圧値を所定の設定電圧として定めておき、図13(a) に示すようなグラフG1に基づいて、当該設定電圧に応じた電流値を求め、当該電流値を発電特性を示す値として利用すればよい。
すなわち、上述した段階A2,B2,C2において、図13(a) に示すようなグラフG1が太陽電池30の発電特性として実測されれば、予め定められた所定の設定電圧に応じた電流値を当該太陽電池の発電特性を示す数値として利用することができる。たとえば、所定の設定電圧として、電圧Vaを定めておけば、これに応じた電流密度Ia(電流値)が発電特性を示す電流値となり、電圧Vbを定めておけば、これに応じた電流密度Ib(電流値)が発電特性を示す電流値となる。
一方、電圧値を固定しない運用をとる場合は、太陽電池30から供給される最適電流値を太陽電池30の発電特性として利用することもできる。この最適電流値は、太陽電池30から最大の供給電力が得られる電流値として定まる。以下、この最適電流値を決定する方法を図13のグラフを用いて説明する。
一般に、太陽電池30を効率的に利用するという観点からは、グラフG1上に最大の電力供給が行われるような参照点を設定するのが好ましい。電力Wは電圧Vと電流Iの積として与えられる量であるから、結局、グラフ上において、参照点を右上頂点、原点Oを左下頂点とする矩形を定めた場合に、当該矩形の面積が最大となるような参照点を設定すればよいことになる。
たとえば、図13(a) の場合、参照点を点aに設定した場合、点aを右上頂点とする矩形は図にハッチングを施した図形になる。一方、参照点を点bに設定した場合、点bを右上頂点とする矩形は破線で示す図形になる。図から前者の面積の方が後者の面積よりも大きいことが明らかであるから、供給電力を大きくして太陽電池30の発電機能をできるだけ効率的に利用する、という観点では、参照点を点aに設定し、電気機器50に対しては、電圧Va,電流密度Iaという条件で電力供給がなされるような電気回路40を設計するのが好ましいことになる。
ここでは、矩形の面積が最大となる位置に参照点を設定したとき(すなわち、最大の電力供給が可能になるような設定をしたとき)に得られる電流I(電流密度)を最適電流値と呼び、その時の電圧Vを最適電圧値と呼ぶことにする。たとえば、図13(a) にハッチングを施して示す矩形が、面積が最大となる矩形であるとすれば、このグラフG1に示す特性を示す太陽電池の発電特性としては、最適電流値(電流密度)Iaを用いることができる。同様に、図13(b) のグラフG2に示す特性を示す太陽電池の発電特性は、図にハッチングを施す矩形が最大矩形であるならば、参照点cについての最適電流値(電流密度)Icが与えられることになり、図13(c) のグラフG3に示す特性を示す太陽電池の発電特性は、図にハッチングを施す矩形が最大矩形であるならば、参照点dについての最適電流値(電流密度)Idが与えられることになるので、これら最適電流値を発電特性として用いることができる。もちろん、最適電流値の代わりに最適電圧値を発電特性として用いることもできるし、その両方を発電特性として用いることもできるし、両者の積(最適電力値)を発電特性として用いることもできる。
なお、図13のグラフG1,G2,G3を比較すればわかるとおり、ハッチングが施された矩形の面積を大きくするためには(別言すれば、より大きな電力供給を行うためには)、できるだけショルダー部分が右上方向に張り出した形状のグラフが得られるのが好ましい。一般に、このグラフのショルダー部分の張り出し度合いは、Fill Factorと呼ばれており、図13(a) に示すグラフG1はFill Factorが大きいグラフ、図13(c) に示すグラフG3はFill Factorが小さいグラフということになる。一般的な太陽電池の特性としては、Fill Factorが大きい特性が得られるものの方が好ましいとされている。
上述したとおり、図12に示す基本原理に基づく方法Aにおける相関情報を作成するプロセスの段階A2では、全1296通りの測定用印刷シートの組み合わせについて、当該組み合わせに係る4枚の測定用印刷シートを太陽電池30の受光面に重ねて配置し、それぞれの場合について、太陽電池30の発電特性を実測する処理が行われることになる。そして、ここで述べる実施例の場合は、太陽電池30の最適電流値をその発電特性として実測する処理が行われる。
具体的には、4枚の測定用印刷シート10C,10M,10Y,10Kを通して所定の基準光を太陽電池30に照射したときに、当該太陽電池30から出力される電力についての電圧電流特性を実測し、当該電圧電流特性から導出された最適電流値を当該太陽電池30の発電特性として用いることになる。最適電流値は、図13のグラフを用いて説明したように、電圧電流特性グラフ上に参照点をとり、当該参照点の電圧値を一辺の長さ、電流値を他辺の長さとする矩形を定義したときに、当該矩形の面積が最大となるような参照点を最適点とし、当該最適点の電流値を最適電流値とすることにより求めることができる。
なお、太陽電池の両出力端子に負荷抵抗を接続し、この負荷抵抗の値を徐々に変化させながら、両出力端子間の出力電圧および出力電流を自動的に測定し、その測定結果に基づいて、現照明環境間における太陽電池の最適電流値や最適電圧値を自動的に決定する測定装置が市販されている。したがって、前述した段階A2,B2,C2の実測を行う作業者は、このような市販の装置を用いた測定により、個々の組み合わせに対する最適電流値や最適電圧値を得ることができる。
ここでは、前述した段階A2において、測定用印刷シート10Cとして図11に示すシートC(c%)を用い、測定用印刷シート10Mとして図11に示すシートM(m%)を用い、測定用印刷シート10Yとして図11に示すシートY(y%)を用い、測定用印刷シート10Kとして図11に示すシートK(k%)を用いて得られた最適電流値を「最適電流値I(c,m,y,k)」と呼ぶことにする。ここで、c%,m%,y%,k%は、0%,20%,40%,60%,80%,100%のいずれか(サンプル網点面積率)になり、たとえば、「最適電流値I(20,80,60,0)」は、図11に示すシートC(20%),シートM(80%),シートY(60%),シートK(0%)の4枚を太陽電池30の受光面に積層したときに得られた最適電流値ということになる。
ここに示す実施例の場合、段階A2では、全1296通りの組み合わせについて、それぞれ上述の方法で最適電流値I(c,m,y,k)が実測されることになる。そして、最後の段階A3において、上記実測により得られた発電特性と、当該実測に用いられた測定用印刷シートのサンプル網点面積率の組み合わせと、の対応関係を示す相関情報が作成される。
この段階A3において作成される相関情報は、結局、各色のシートの組み合わせを示す情報と実測された最適電流値I(最適電圧値Vや最適電力値Wでもよい)を示す情報との相関関係を示す情報ということになる。当該相関情報は、特定のプリント部300によって形成されるインキ層の被覆面積と特定の太陽電池30の発電特性との関係を示す情報ということになり、条件判定部230が、変換画像データD(B)をプリント部300に与えた場合に形成される印刷画像11の光の透過特性に基づいて、受光面に当該印刷画像11が配置された太陽電池30の発電特性を予測するために利用される情報ということになる。
図10に示す印刷画像作成装置において、このような相関情報を用意しておけば、条件判定部230は、次のような方法で、判定対象となる画像データに基づいて印刷された印刷画像11を配置した場合の太陽電池30の発電特性を予測することができる。
まず、条件判定部230は、印刷画像11の全領域のうち、ある程度の面積をもった部分領域(たとえば、図1に示す例の場合、個々のセル31〜36ごとの受光面領域でもよいし、これを更に細分割した領域でもよい。)を判定対象として設定する。そして、この部分領域についての画像データから、当該部分領域内の各色の網点面積率の平均値を算出する。たとえば、判定対象となる画像データが、データ変換部220によって変換された変換画像データD(B)であった場合には、既に網点画像データの形式になっているので、個々の色成分ごとの網点面積率の平均値を算出すればよい。判定対象となる画像データがデータ変換部220による変換前のRGBやCMYKの色成分ごとの画素値をもった画素の集合体からなるデータであった場合には、個々の画素の色成分ごとの画素値の平均値を算出した後、これを網点画像データの形式に変換すればよい。
いずれにしても、所定の部分領域について、平網の網点画像データ(それぞれ単一の網点面積率をもったCMYKの各版の網点データ)が平均のデータとして得られる。そこで、条件判定部230は、CMYKの4通りの色のそれぞれについて、J通り(図11に示す例では、J=6)のサンプル網点面積率のうち、判定対象となる画像データから導出される本来の網点面積率(上述した平網の網点面積率)に最も近似するサンプル網点面積率を最近接サンプル網点面積率として選択することにより、特定のサンプル網点面積率の組み合わせを決定する。
たとえば、図11に示す例のように、J=6に設定して、0%,20%,40%,60%,80%,100%なる6通りのサンプル網点面積率についての相関情報が用意されているときに、所定の部分領域について、C(22%),M(78%),Y(64%),K(0%)のような平網の網点画像データ(当該部分領域内の平均データ)が得られた場合は、これらC(22%),M(78%),Y(64%),K(0%)を本来の網点面積率として、これらに最も近似するサンプル網点面積率C(20%),M(80%),Y(60%),K(0%)が最近接サンプル網点面積率として選択され、当該組み合わせが、特定のサンプル網点面積率の組み合わせとして決定される。
そこで、条件判定部230は、決定した組み合わせに対応する相関情報を参照することにより、太陽電池30の当該部分領域に関する発電特性を予測することができる。上例の場合、相関情報格納部250に格納されている全1296通りの組み合わせの中から、C(20%),M(80%),Y(60%),K(0%)なる組み合わせが決定されるので、これに対応して保存されている「最適電流値I(20,80,60,0)」が太陽電池30の当該部分領域に関する発電特性を示す予測値ということになる。
この予測値は、図12に示す基準光として、たとえば、図5のグラフに示す発光スペクトルを有するLED照明光源からの光を200ルックスで照射したときの特定の部分領域に関する発電特性(最適電流値I)を示すものである。すべての部分領域について同様の予測値を求めれば、太陽電池30全体についての発電特性(最適電流値I)を予測することができる。
一方、設計条件格納部240には、予め、太陽電池30の発電特性に関する設計条件が定められている。この設計条件として、たとえば、「図5のグラフに示す発光スペクトルを有するLED照明光源からの光を200ルックスで照射したとき、最適電流値I(電流密度)が○○mA/平方cm以上」のような条件が設定されていれば、条件判定部230は、上記予測値が上記設計条件を満たしているか否かの判定を行うことができる。もちろん、「最適電圧値が○○V以上」のような最適電圧値に関する設計条件を設定したり、最適電流値と最適電圧値の双方に関する設計条件を設定したり、その積である最適電力値に関する設計条件を設定したりすることもできる。
なお、図12に示す実測モデルで述べた段階A1〜A3を実施する方法Aでは、4枚の測定用印刷シート10C,10M,10Y,10Kを積層した状態で基準光が照射されるため、インキ層だけでなく、個々の透光性シート自身による反射や吸収の影響を考慮すると、必ずしも正確な相関情報を用意することはできない。より正確な相関情報が必要な場合には、たとえば、各測定用印刷シートとして、図10に示す透光性シート5の厚みの1/4の厚みをもったシートを採用すれば、透光性シート自身による吸収の影響を排除することができる。
また、前述した方法A,B,Cでは、段階A2,B2,C2として説明した発電特性の実測時に、測定用印刷シート10C,10M,10Y,10Kや測定用全色印刷シート10(c%,m%,y%,k%)と太陽電池30との間に拡散シート20を設けていないが、より正確な相関情報が必要な場合には、両者間に拡散シート20を挿入して測定を行うようにしてもよい。
もっとも、実際には、予め拡散シート20の透過率を単独で測定しておき、図12に示す実測モデルに基づく測定時には拡散シート20なしで測定を行い、この測定値に基づいて太陽電池30の発電特性を求める際に、予め測定しておいた拡散シート20の透過率を利用した補正を行うようにすればよい。すなわち、段階A2,B2,C2における発電特性の実測時に、測定用印刷シート10C,10M,10Y,10Kもしくは測定用全色印刷シート10(c%,m%,y%,k%)と太陽電池30の受光面との間に、所定の拡散シート20を介挿させた場合に生じる損失を推測し、拡散シート20なしで実測された発電特性に対して、推測された損失に基づく補正を施すようにすればよい。たとえば、拡散シート20の全光線透過率が80%であった場合、20%が損失してしまうことになるので、実測によって得られた太陽電池30の発電特性に対して0.8を乗じる補正を行えばよい。
また、段階A2,B2,C2における発電特性の実測処理を、コンピュータシミュレーションに置き換えることも可能である。すなわち、当該実測処理に代えて、CMYKの各色インキ層の透過スペクトルおよび太陽電池の吸収スペクトルのデータを用いたシミュレーションを実行することにより、太陽電池の発電特性(たとえば、当該太陽電池から出力される電力についての電圧電流特性)を推測する処理を行い、段階A3,B3もしくはC3では、このシミュレーションにより推測された発電特性と、当該推測に用いられた測定用印刷シートもしくは測定用全色印刷シートのサンプル網点面積率の組み合わせと、の対応関係を示す相関情報を作成すればよい。
また、上例では、J=6に設定し、0%,20%,40%,60%,80%,100%なる6通りのサンプル網点面積率を設定しているが、判定対象となる画像データから導出される本来の網点面積率と、選択した最近接サンプル網点面積率と、の差に起因して誤差が生じることは否めない。たとえば、本来の網点面積率がC(22%)である場合でも、上例の方法では、サンプル網点面積率として設定されているC(20%)を最近接サンプル網点面積率として代用せざるを得ない。もちろん、発電特性についてより正確な予測を行うためには、Jの数を増やして、サンプル網点面積率の刻み幅を狭めるのが好ましい。ただ、Jの数を増やすと、それだけ組み合わせの数が増えるため、実測作業の労力は増加することになる。
Jの数を一定に抑えながら、より正確な予測を行う方法として、サンプル網点面積率の間隔を補間する処理を採用することも可能である。すなわち、条件判定部230は、判定対象となる画像データから導出される本来の網点面積率と、選択した最近接サンプル網点面積率と、の差に起因して生じる誤差を補正するために、本来の網点面積率に2番目に近似するサンプル網点面積率を次近接サンプル網点面積率として選択し、この最近接サンプル網点面積率を次近接サンプル網点面積率に置換した組み合わせに対応する相関情報を参照することにより、誤差の補正を行うことができる。
たとえば、本来の網点面積率がC(22%)である場合に、最近接サンプル網点面積率C(20%)を代用して得られた発電特性の予測値がXであったとしよう。この場合、本来の網点面積率がC(22%)に対して、次近接サンプル網点面積率としてC(30%)を選択し、この次近接サンプル網点面積率C(30%)を代用して得られた発電特性の予測値Yを求めるようにする。そして、C(20%)とC(30%)との間に線形補間法を適用すれば、Z=X+α(Y−X)なる演算によって補正後の予測値Zを算出することができる。ここで、αは、本来の網点面積率C(22%)に基づく線形補間係数であり、上例の場合、α=(22%−20%)/(30%−20%)なる演算により決定することができる。
このような補正を、他の色成分M,Y,Kについても同様に行えば、誤差を補正した補間値として、より正確な発電特性の予測値を得ることができる。
以上、図10に示す相関情報格納部250内に格納する相関情報の具体的内容の一例を示したが、本発明に用いる相関情報としては、特定のプリント部300によって形成されるインキ層の被覆面積と特定の太陽電池30の発電特性との関係を示す情報であれば、どのような情報を用いてもかまわない。ただ、本願発明者は、上述したように、サンプル網点面積率が異なる平網の測定用印刷シートの組み合わせによって実測した発電特性に基づいて作成された相関情報が最も実用的であると考えている。
<<< §5. 複数セルを有する太陽電池の特性 >>>
図1に示す太陽電池30は、平板状のセル31〜36を並べることによって構成されており、個々のセル31〜36がそれぞれ独立した発電機能を有している。複数のセルを並列接続した場合は、個々のセルの出力電圧のうち最も低い値が太陽電池30全体の出力電圧となり、すべてのセルの出力電流の総和が太陽電池30全体の出力電流になる。これに対して、複数のセルを直列接続した場合は、個々のセルの出力電流のうち最も低い値が太陽電池30全体の出力電流となり、すべてのセルの出力電圧の総和が太陽電池30全体の出力電圧になる。一般的には、出力電圧を維持するため、直列接続するケースが多い。もちろん、直列接続された複数のセルからなるグループを複数組設けて、これらを相互に並列接続する構成を採るものや、後段に昇圧回路を接続することにより、必要な出力電圧を確保するものもある。
このように複数のセルによって構成されている太陽電池30の受光面に配置する印刷画像11を作成する場合、図10に示す条件判定部230は、個々のセルごとの発電特性を考慮した判定を行い、図10に示すデータ修正部210は、個々のセルごとの発電特性を考慮した修正を行うようにするのが好ましい。上述したように、太陽電池全体の出力電圧もしくは出力電流は、最も発電効率の低いセルの性能によって決められてしまうことになる。以下、複数セルを有する太陽電池の一般的な特性を説明しながら、個々のセルごとの判定および修正を行うメリットを説明する。
図14は、一般的な太陽電池のセル構成を示す平面図である。図示の例のように、多くの太陽電池は、細長い矩形状のセルをその長手方向に直交する方向に複数並べることにより構成されている。図14(a) に示す例は、水平方向に伸びた細長いセル31〜36を垂直方向に並べて1つの太陽電池30を構成した例であり、図14(b) に示す例は、垂直方向に伸びた細長いセル31〜36を水平方向に並べて1つの太陽電池30を構成した例である。
もちろん、図14(a) に示す太陽電池30と図14(b) に示す太陽電池30とは、物理的な構造体としては同一のものであり、セルの配置面上で一方を90°回転させれば他方になる関係にあり、両者の相違は実空間上での配置のみである。しかしながら、この太陽電池30の前面に印刷画像11を配置した実際の製品では、図14(a) の例のように縦向きの状態で利用するか、図14(b) の例のように横向きの状態で利用するか、のいずれかが定まっていることが多い。
たとえば、図1に示す例は、縦向きの状態で利用することを想定しており、図3に示すように、スタンド70に収容することにより、セル31〜36が上方から下方に向かって配置されることになる。このため、印刷画像11も、このような縦向きに配置されることを前提とした絵柄になっている。
本願発明者が、このように、実際の利用環境において、複数のセルが上方から下方に向かって配列された状態になる製品について、個々のセルに照射される光量の相違を調べたところ、上方に配置されたセルに比べて、下方に配置されたセルの方が、受光量が少ない傾向にあることが判明した。このような傾向が生じる理由についての詳細な解析は行っていないが、一般に、室内において人間が触れることが可能な位置に設置される製品の場合、天井からの照明光もしくは窓からの太陽光によって斜め上方からの照明を受けるため、上方に配置されたセルほど、より入射光量が多くなる傾向が生じるものと考えられる。
このような現象を踏まえると、条件判定部230は、個々のセルごとにその発電特性を予測するのが好ましい。そのためには、相関情報格納部250に、個々のセルの二次元的配置情報と、プリント部300によって形成されるインキ層の被覆面積と個々のセルの発電特性との関係を示す相関情報を格納しておくようにすればよい。
たとえば、図14(a) に示すように、6個のセル31〜36から構成される太陽電池30の場合、相関情報格納部250には、相関情報に加えて、個々のセル31〜36の二次元的配置情報(たとえば、各セル31〜36の輪郭線の座標位置を示す情報)を格納しておくようにする。原画像入力部100は、複数のセル31〜36を面状に並べることにより構成される太陽電池について、その受光面に配置するための原画像Aを形成するデジタルデータを原画像データD(A)として入力することになるが、相関情報格納部250に、このセル31〜36の二次元的配置情報を格納しておけば、条件判定部230は、この二次元的配置情報を参照することにより、各セル31〜36に相当する部分領域をそれぞれ認識することができる。したがって、条件判定部230は、個々のセルについて、当該セルの受光面に配置される部分領域の画像データを特定することができ、当該部分領域の
画像データに基づいて、当該セルについての発電特性を予測することができる。
また、図14(a) に示すように、セル31〜36が上方から下方に向かって配置される向きで利用される製品の場合、上述したとおり、上方に配置されたセルに比べて、下方に配置されたセルの方が、受光量が少なくなる傾向がある。このように、個々のセルに個別の事情が存在する場合には、設計条件格納部240には、個々のセルについて、それぞれ別個の個別設計条件を格納しておくようにするのが好ましい。
たとえば、図14(a) に示すような縦置きで利用されることを前提とした製品の場合、上方のセル31に比べて下方のセル36の方が受光量が少なくなる傾向にあるので、全セルについて共通の設計条件を設定してしまうと、実際の利用環境下では、上方のセル31については設計条件に対して十分に余裕がある発電特性が得られるが、下方のセル36については設計条件が満たされない、という事態が生じる可能性がある。そこで、個々のセルについて、それぞれ別個の個別設計条件を設定できるようにしておき、たとえば、上方から下方に向かって複数のセルが並べられた状態での利用が想定される太陽電池30については、下方に配置されるセルほど、より多くの光を必要とする個別設計条件(別言すれば、より高い発電効率を要求する条件)を設定するのが好ましい。このように、上方のセル31についての個別設計条件に比べて、下方のセル36についての個別設計条件の方が厳しくなるような設定を行っておけば、より適切な判定を行うことができるようになる。
すなわち、条件判定部230は、個々のセルについて、それぞれ当該セルについての個別設計条件を満たすか否かの条件判定を行うことになる。上例の場合、上方のセル31に比べて、下方のセル36についての個別設計条件が厳しくなっているため、たとえ、セル31の前面に配置される部分画像とセル36の前面に配置される部分画像とが、全く同一の画像であったとしても、上方のセル31については条件を満たす旨の判定が行われても、下方のセル36については条件を満たさない旨の判定が行われることもありうる。
そこで、データ修正部210は、条件判定部230によって否定的な判定結果が得られたセルがあった場合には、当該セルについての個別設計条件が満たされるようにするための修正処理を施すようにすればよい。たとえば、上例のように、上方のセル31については条件を満たす旨の判定が行われ、下方のセル36については条件を満たさない旨の判定が行われた場合は、下方のセル36について修正処理が行われることになる。
複数セルを有する太陽電池の特性として、もう1つ留意しておくべき点は、多くの太陽電池が複数セルを直接接続して用いる形態をとっているため、いずれか1つのセルの発電特性が低いと、太陽電池全体の発電特性の低下を招いてしまう点である。以下、この点について説明する。
図15は、一般的な太陽電池30のセル構成およびこの太陽電池からの電力供給形態を示すブロック図である。図示のとおり、この太陽電池30は、複数n個のセルを直列接続した形態を有している。具体的には、図示のとおり、第1番目のセル1,第2番目のセル2,第3番目のセル3,... ,第(n−1)番目のセル(n−1),第n番目のセルnが、この順序で直接接続されている。そして、第1番目のセル1の正側端子(発電時に正電圧を発生させる端子)は正電極E1に接続されており、第1番目のセル1の負側端子(発電時に負電圧を発生させる端子)は第2番目のセル2の正側端子に接続されており、第2番目のセル2の負側端子は第3番目のセル3の正側端子に接続されており、以下同様にして、最後に、第n番目のセルnの負側端子は負電極E2に接続されている。
そして、正電極E1および負電極E2は電気回路40の正負の端子に接続されており、太陽電池30の発電によって生じた正負の電荷は、電気回路40内の蓄電素子に一時的に蓄積された後、電気機器50に対して安定して供給される。電気回路40内に正負の電荷を効率的に取り込むため、通常、正電極E1としては、比較的電気抵抗が大きなITOなどが用いられ、負電極E2としては、比較的電気抵抗が小さなアルミニウムなどが用いられる(場合によっては、この逆のケースもある)。
このように、複数セルを直接接続した太陽電池の場合、一般に、1つのセルの発電特性が低いと、太陽電池全体の発電特性が低下する現象が見られる。これは、ある1つのセルの電流特性が悪いと、当該セルがボトルネックとなり、太陽電池全体の電流特性に悪影響を与えてしまうためである。もっとも、本願発明者が行った実験によると、1つのセルの特性が全体に影響を及ぼす現象の程度は、太陽電池の種類によって異なることが判明した。以下、この点について説明する。
図16は、複数のセルを有する太陽電池についてのセルごとの遮光特性を示す第1のグラフである。より具体的には、複数n個のセルを直列接続することによって構成される太陽電池において、いずれか1つのセルを100%遮光した場合(n個のセルのうち、1つのセルの受光面だけを完全に遮蔽し、残りのセルには所定の基準光を照射した場合)の当該太陽電池全体の電圧電流特性(VI特性)を示している。図13で説明したとおり、この電圧電流特性では、できるだけショルダー部分が右上方向に張り出した形状のグラフ(Fill Factorが大きいグラフ)が得られるのが好ましい。
図16(a) は、n=14、すなわち、14個のセルを直列接続することにより構成された色素増感太陽電池(DSC)についての測定結果を示すグラフである。図に示すグラフ0は、比較のためのグラフであり、14個のセルすべてに基準光を照射したときの電圧電流特性を示している。これに対して、グラフ1は、14個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第1番目のセルのみを100%遮光した場合の特性を示しており、グラフ14は、14個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第14番目のセル(負電極E2側から数えたときの第1番目のセル)のみを100%遮光した場合の特性を示している。図にはグラフの符号は示されていないが、グラフ1〜グラフ14の間に描かれた各グラフは、グラフ1に近い方から順にグラフ2〜グラフ13であり、これらのグラフは、14個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第2〜13番目のセルのみを100%遮光した場合の特性を示している。
この図16(a) のグラフに示す結果からわかることは、14個のセルのすべてに基準光を照射した場合(グラフ0)に比べて、いずれか1個のセルを100%遮光すると、太陽電池全体の電圧電流特性(供給可能な電力)が低下する、という点と、14個のセルのうち、負電極E2に近い側のセルを遮光するほど、電圧電流特性の低下が激しい、という点である。
ここで、14個のセルは、すべて同じ材料からなり、すべて同じサイズのセルであるが、正電極E1に近いセルを遮光した場合(グラフ1)に比べて、負電極E2に近いセルを遮光した場合(グラフ14)の方が、太陽電池全体の電圧電流特性に与える悪影響の程度が大きいという現象が生じたことになる。このような現象が生じる原因は、図15に示すように、正電極E1としては、比較的電気抵抗が大きなITOなどが用いられ、負電極E2としては、比較的電気抵抗が小さなアルミニウムが用いられているためと考えられる。電気抵抗が大きなITOからなる正電極E1に遠いセルほど、太陽電池全体に与える悪影響の程度が大きくなることになる。
このような現象を踏まえると、一般論として、第1の端部から第2の端部に向かって直列接続された複数のセルを有し、第1の端部には第1の電極が接続され、第2の端部には第2の電極が接続されており、第1の電極の電気抵抗が第2の電極の電気抵抗よりも大きくなるような設定がなされている太陽電池については、第2の端部に近い位置に配置されたセルほど、より多くの光を必要とする個別設計条件を設定するのが好ましい。すなわち、第2の端部に近い位置に配置されたセルほど、より厳しい個別設計条件を設定しておけば、第2の端部に近い位置に配置されたセルの発電特性が低いために太陽電池全体の発電特性を大幅に低下させてしまう現象を極力避けることができるようになる。
一方、図16(b) は、n=8、すなわち、8個のセルを直列接続することにより構成された屋内用のアモルファスシリコン太陽電池(a−Si)についての測定結果を示すグラフである。ここでも、図に示すグラフ0は、比較のためのグラフであり、8個のセルすべてに基準光を照射したときの電圧電流特性を示している。これに対して、グラフ1は、8個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第1番目のセルのみを100%遮光した場合の特性を示しており、グラフ8は、8個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第8番目のセル(負電極E2側から数えたときの第1番目のセル)のみを100%遮光した場合の特性を示している。図にはグラフの符号は示されていないが、グラフ1〜グラフ8の間に描かれた各グラフは、グラフ1に近い方から順にグラフ2〜グラフ7であり、これらのグラフは、8個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第2〜7番目のセルのみを100%遮光した場合の特性を示している。
この図16(b) のグラフも、8個のセルのすべてに基準光を照射した場合(グラフ0)に比べて、いずれか1個のセルを100%遮光すると、太陽電池全体の電圧電流特性が低下し、かつ、8個のセルのうち、正電極E1に遠い側のセルを遮光するほど、電圧電流特性の低下が激しい、という特徴を示す点については、図16(a) のグラフと同様である。ただ、図16(a) に示すグラフと比較すると、いずれか1個のセルを100%遮光すると、太陽電池全体の電圧電流特性が大幅に低下する現象が顕著に表れている。
別言すれば、屋内用のアモルファスシリコン太陽電池(a−Si)を用いた場合、たとえ1個のセルの電圧電流特性が低下した場合であっても、それがボトルネックとなって太陽電池全体の電圧電流特性を大幅に低下させる現象が生じることになる。
これに対して、図16(c) は、n=10、すなわち、10個のセルを直列接続することにより構成された屋外用のアモルファスシリコン太陽電池(a−Si)についての測定結果を示すグラフである。ここでも、図に示すグラフ0は、比較のためのグラフであり、10個のセルすべてに基準光を照射したときの電圧電流特性を示している。これに対して、グラフ1は、10個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第1番目のセルのみを100%遮光した場合の特性を示しており、グラフ10は、10個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第10番目のセル(負電極E2側から数えたときの第1番目のセル)のみを100%遮光した場合の特性を示している。図にはグラフの符号は示されていないが、グラフ1〜グラフ10の間に描かれた各グラフは、グラフ1に近い方から順にグラフ2〜グラフ9であり、これらのグラフは、10個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第2〜9番目のセルのみを100%遮光した場合の特性を示している。
この図16(c) のグラフも、10個のセルのすべてに基準光を照射した場合(グラフ0)に比べて、いずれか1個のセルを100%遮光すると、太陽電池全体の電圧電流特性が低下し、かつ、10個のセルのうち、負電極E2に近い側のセルを遮光するほど、電圧電流特性の低下が激しい、という特徴を示す点については、図16(a) ,(b) のグラフと同様である。ただ、図16(a) ,(b) に示すグラフと比較すると、いずれか1個のセルを100%遮光すると、太陽電池全体の電圧電流特性が低下する現象は、それほど顕著ではない。
別言すれば、屋外用のアモルファスシリコン太陽電池(a−Si)を用いた場合、1個のセルの電圧電流特性が低下した場合であっても、それがボトルネックとなって太陽電池全体の電圧電流特性が低下する現象は、それほど顕著ではないことになる。これは、屋外用のアモルファスシリコン太陽電池の場合、隣接して接続されている各セル間にバイパスダイオードを用いた補償回路が設けられているため、1個のセルの電圧電流特性が低下した場合でも、当該セルがボトルネックとなって全体の足を引っ張る現象を低減できるためと考えられる。
図16は、いずれか1個のセルを100%遮光した場合に、太陽電池全体の電圧電流特性がどのようになるかを示すグラフであるが、図17は、遮光度を70%,50%,30%に設定した場合の結果を示すグラフである。測定対象となる太陽電池は、図16(b) のグラフを得るための測定で利用した8個のセルを有する屋内用のアモルファスシリコン太陽電池(a−Si)である。図16(b) のグラフが100%遮光の場合の結果を示しているのに対して、図17(a) のグラフは70%遮光の場合の結果、図17(b) のグラフは50%遮光の場合の結果、図17(c) のグラフは50%遮光の場合の結果を示している。
図17(a) 〜(c) においても、グラフ0は、8個のセルすべてに基準光を照射したときの電圧電流特性を示し、グラフ1〜8が、8個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第1〜8番目のセルのみを遮光した場合の特性を示している。なお、グラフAllは、8個のセルすべてを遮光した場合の特性を示すものである。図17(a) 〜(c) のグラフは、遮光率が100%ではなく、70%〜30%であるため、すべてのセルを遮光した場合にも発電は可能である。図17(a) 〜(c) を見るとわかるとおり、遮光率が低くなるほど、太陽電池全体の電圧電流特性の低下は緩慢になるが、全体的な傾向は、図16(b) のグラフに示されている傾向と変わりはない。
一方、図18は、連続的に配置されている複数のセルを70%遮光した場合に、太陽電池全体の電圧電流特性がどのようになるかを示すグラフである。図18(a) ,(b) ,(c) のグラフを得るために測定対象として用いた太陽電池は、それぞれ図16(a) ,(b) ,(c) のグラフを得るために測定対象として用いた太陽電池と同じものである。図16(a) ,(b) ,(c) のグラフは、1個のセルのみを遮光した場合の電圧電流特性を示すものであるが、図18(a) ,(b) ,(c) のグラフは、複数のセルを遮光した場合の電圧電流特性を示している。
たとえば、図18(a) のグラフ0は、比較のためのグラフであり、14個のセルすべてに基準光を照射したときの電圧電流特性を示している。これに対して、グラフ1は、14個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第1番目のセルのみを70%遮光した場合の特性を示しており、グラフ1〜2は、14個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第1番目と第2番目のセルを70%遮光した場合の特性を示しており、グラフ1〜3は、14個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第1番目〜第3番目のセルを70%遮光した場合の特性を示しており、以下同様に、グラフ1〜12は、14個のセルのうち、正電極E1側から数えたときの第1番目〜第12番目のセルを70%遮光した場合の特性を示している。
図18(b) ,(c) の各グラフも同様である。複数のセルが遮光されると、当然ながら、それだけ太陽電池全体の電圧電流特性の低下が激しくなるが、やはり全体的な傾向は、図16のグラフに示す結果を踏襲したものになる。
以上、図16〜図18のグラフに示す結果を踏まえると、特に、アモルファスシリコン(a−Si)を用いた複数のセルを直列接続して構成される屋内用の太陽電池の場合、たった1個のセルの電圧電流特性の低下がボトルネックとなり、太陽電池全体の電圧電流特性に大きな悪影響を及ぼすことがわかる。§1で述べた例のように、本発明は、特に、室内に設置される中型装置(たとえば、ビーコン装置)の製造に利用するのに最適であるが、このような中型装置では、一般に、200ルックス程度の低照度環境下での利用を想定した屋内型のアモルファスシリコン(a−Si)を用いた太陽電池が用いられる。したがって、個々のセルごとの発電特性を考慮した判定を行い、個々のセルごとの発電特性を考慮した修正を行うようにし、ボトルネックとなるようなセルが生じないように、印刷画像に対して適切な修正を施すことが非常に重要である。
<<< §6. データ修正部による具体的な修正形態 >>>
これまで、§3において、図10を参照しながら、本発明に係る印刷画像作成装置の基本構成を述べ、§4において、相関情報格納部250に格納する相関情報の具体例を示しながら条件判定部230による具体的な判定方法を述べ、§5において、複数セルを有する太陽電池の特性を説明しながら個々のセルごとに条件判定を行う方法について述べた。そこで、ここでは、データ修正部210における具体的な修正処理を述べることにする。
既に述べたとおり、データ修正部210は、条件判定部230による判定の結果、判定対象となる画像データに基づいて印刷を行うと設計条件を満たさない旨の否定的な判定結果が得られたときに、肯定的な判定結果が得られるよう当該判定対象となる画像データに対して修正処理を施す機能をもった構成要素である。実用上は、設計条件格納部240内の設計条件や、相関情報格納部250内の相関情報を参照して、適切な修正処理を行うようにするのが好ましい。
ここで、「判定対象となる画像データ」とは、そのデータフォーマットの形式的な相違を問わず、実体的に同一内容のデータであれば、同一の「判定対象となる画像データ」を意味するものであり、たとえば、原画像データD(A)とこれに対してデータ変換部220において所定のフォーマット変換処理を施して得られる中間画像データや変換画像データD(B)とは、実質的に同一の「判定対象となる画像データ」になる。すなわち、原画像データD(A)に基づいて形成される印刷画像11は、原画像データD(A)を中間画像データを介して変換画像データD(B)に変換し、この変換画像データD(B)をプリント部300に与えることにより作成することになるので、結局、原画像データD(A)や中間画像データに基づいて形成される印刷画像11は、変換画像データD(B)に基づいて形成される印刷画像11と同一であり、各画像データは、実体的に同一内容の画像データということになる。
このような点に鑑みれば、データ修正部210による修正処理は、データ変換部220による変換前の原画像データD(A)に対して行ってもよいし、データ変換部220による変換後の変換画像データD(B)に対して行ってもよいし、変換途中の中間画像データに対して行ってもよい。原画像データD(A)に対して修正処理を施し、修正原画像データD(A)′を作成した場合、これをデータ変換部220で変換すれば、修正変換画像データD(B)′が得られることになり、プリント部300が当該修正変換画像データD(B)′に基づいて印刷を行えば、修正が施された印刷画像11が作成されることになる。もちろん、変換画像データD(B)に対して修正処理を施し、修正変換画像データD(B)′を直接作成するようにしてもよいし、中間画像データ(CMYK形式の画像データ)に対して修正処理を施してもよい(この場合は、修正原画像データD(A)′は作成されない)。
なお、前述したとおり、条件判定部230は、データ修正部210による修正前の画像データを判定対象とする条件判定を行うとともに、データ修正部210による修正後の画像データを判定対象とする条件判定を行う機能を有しており、データ修正部210は、条件判定部230により肯定的な判定結果が得られるまでデータ修正を繰り返し実行する。したがって、上例の場合、たとえば、修正変換画像データD(B)′に対しても条件判定部230による判定が実行され、否定的な判定結果が得られた場合には、データ修正部210による再度の修正が行われ、修正変換画像データD(B)′′が作成されることになる。こうして、最終的には、条件判定部230によって肯定的な判定がなされた画像データがプリント部300に与えられることになる。
データ修正部210は、予め設定された特定の修正アルゴリズムに基づいて、判定対象となる画像データに対して所定の修正処理を施すことになる。修正アルゴリズムとしては、条件判定部230により否定的な判定結果が得られた場合に、肯定的な判定結果が得られる方向に修正することができるアルゴリズムであれば、どのようなアルゴリズムを採用してもかまわない。基本方針としては、形成される印刷画像の光の透過特性を向上させる修正が行われればよい。
具体的には、インキ層の被覆面積を減少させる修正を行ったり、カラー画像の場合は、透光率の低い色のインキをより透光率の高い色のインキに置換する修正を行ったりすればよい。その他、§5で述べた複数セルを有する太陽電池の場合は、特定の印刷要素を別なセルに移動させる修正を行うことも可能である。以下、実用的と思われる修正処理の具体例をいくつか述べておく。
<6−1 複数セルに固有の修正形態>
§5では、複数セルを有する太陽電池の特性を説明した。ここでは、このような特性を踏まえて、複数セルを有する太陽電池に固有の修正形態を述べる。
既に§5で述べたとおり、複数セルを有する太陽電池の受光面に配置する画像の場合、条件判定部230は、個々のセルごとに、それぞれ当該セルの発電特性を考慮した判定を行い、データ修正部210は、個々のセルごとの発電特性を考慮した修正を行うことになる。そのため、原画像Aは、個々のセルに対応する部分領域に分割して取り扱われることになる。
ここでは、図1に示すように、太陽電池30が6個のセル31〜36によって構成されており、その受光面に図示のような印刷画像11を配置する場合を例にとってみよう。図19は、データ修正部210における印刷要素の移動に基づく修正形態を示すための原画像Aの平面図である。図19(a) は、デザイナーが作成したオリジナルの原画像Aを示す平面図である。図示のA1〜A6は、この原画像Aを分割して得られる部分領域であり、図1に示す太陽電池30の各セル31〜36に対応するものである。たとえば、部分領域A1は、セル31の受光面と同一形状、同一サイズの領域であり、部分領域A1内の画像がセル31の受光面に配置されることになる。
ここでは、このデザイナーが、太陽電池30の発電特性やセル構成に一切関知せずに、純全たる意匠性のみを考慮して、図示のような原画像Aを作成したものとしよう。したがって、デザイナーが原画像Aを作成する際には、部分領域A1〜A6という認識はなく、あくまでも1枚の画像として、原画像Aが作成されることになり、原画像データD(A)として、原画像入力部100に取り込まれる。
一方、§5で述べたように、相関情報格納部250には、個々のセル31〜36の二次元的配置情報と、プリント部300によって形成されるインキ層の被覆面積と個々のセルの発電特性(6つのセル31〜36が物理的に同一のセルであれば、共通の発電特性になる。)との関係を示す相関情報が格納されており、設計条件格納部240には、個々のセル31〜36について、それぞれ別個の個別設計条件が格納されている。したがって、条件判定部230は、個々のセル31〜36について、それぞれその受光面に配置される部分領域A1〜A6の画像データに基づいて、当該セルの発電特性を予測することができる。
(1) 印刷要素の移動による修正形態
このような状況におけるデータ修正部210による修正形態の1つは、否定的な判定結果が得られたセルに対応する部分領域内に配置されている印刷要素の一部もしくは全部を、肯定的な判定結果が得られたセルに対応する部分領域内に移動させるデータ修正を施すことである。
たとえば、条件判定部230が、図19(a) に示す原画像Aに対応する原画像データD(A)を判定対象となる画像データとして、個々のセル31〜36について、それぞれ設定されている個別設計条件を参照して条件判定を行った結果、セル31〜35については個別設計条件を満たすとの肯定的な判定結果が得られたが、セル36については個別設計条件を満たさないとの否定的な判定結果が得られた場合を考えてみよう。このような個別の判定結果は、図19(a) に示す原画像Aにおいて、部分領域A1〜A5に対応する画像データについては合格(条件を満たす)、部分領域A6に対応する画像データについては失格(条件を満たさない)との結果を示すものである。
そこで、データ修正部210は、部分領域A6に対応する画像データについて、光の透過特性を向上させる修正を行う必要がある。そのような修正の一形態として、否定的な判定結果が得られたセル36に対応する部分領域A6内に配置されている印刷要素の一部(たとえば、星印11c)を、肯定的な判定結果が得られたセルに対応する部分領域(たとえば、セル33に対応する部分領域A3)内に移動させるデータ修正を施すことが可能である。
図19(b) は、このようなデータ修正を施すことにより得られる修正後の原画像A′を示す平面図である。図19(a) では、部分領域A6に位置していた星印11cが、図19(b) では部分領域A5に移動している。原画像Aにおいて、インキ層が形成される部分が、3つの印刷要素11a(文字列),11b(キャラクター絵柄),11c(星印)のみであり、それ以外の背景部分にはインキ層が形成されない、ということであれば、星印11cを部分領域A6外へ移動させることにより、部分領域A6の光の透過特性は大幅に向上することになる。図19(b) には、星印11cを部分領域A6から隣接する部分領域A5に完全に移動させた例が示されているが、図示の例よりも移動量を少なくして、たとえば、部分領域A6と部分領域A5との境界線の位置に移動させるような修正を行ってもかまわないし、図示の例よりも移動量を多くして、部分領域A1〜A4に移動させるような修正を行ってもかまわない。
一般的な画像の場合、個々の印刷要素に比べて背景画像は薄い色で表現される傾向(網点画像の場合、網点面積率の低い領域になる傾向)にあるため、たとえ背景部分にインキ層が形成される場合であっても、星印11cのような特定の印刷要素の一部もしくは全部を部分領域の外へ移動させることにより、当該部分領域の光の透過特性を向上させる効果が得られる可能性が高い。
もちろん、星印11cを部分領域A6の外へ移動させる修正だけでは、依然として、部分領域A6が個別設計条件を満たさないケースもあろう。また、図19(b) のように、星印11cを部分領域A6から部分領域A5に移動させたために、今度は、部分領域A5が個別設計条件を満たさなくなってしまうケースもあろう。したがって、データ修正部210による修正処理は、必ずしも完全なものではなく、奏功しない場合もありうる。
ただ、前述したとおり、修正後の原画像A′が得られたら、この修正後の原画像A′に対して条件判定部230による再度の判定が行われ、否定的な判定結果が得られた場合には、データ修正部210による再度の修正が行われる、というプロセスが繰り返し行われるので、このような試行錯誤を繰り返すことにより、やがて、肯定的な判定がなされる修正画像に到達することが可能である。もちろん、データ修正部210による修正を何度繰り返しても、肯定的な判定結果が得られる修正画像まで到達しないというケースも考えられるが、そのようなケースでは、オペレータに対してエラーを提示するようにすればよい。エラーが提示された場合は、オペレータが手作業で修正を加えるか、デザイナーが作成した別な原画像に差し替えるかすればよい。
なお、図19(b) では、星印11cを部分領域A6から部分領域A5に移動させる修正を行っているが、印刷要素を移動させるデータ修正を行う際には、より多くの光を必要とする個別設計条件(より厳しい条件)が設定されているセルに対応する部分領域内に配置されている印刷要素を、より少ない光を必要とする個別設計条件(より緩い条件)が設定されているセルに対応する部分領域内に移動させるデータ修正を施すようにするのが好ましい。
たとえば、§5では、図1の例のように、上方から下方に向かって複数のセルが並べられた状態での利用が想定される太陽電池30については、下方に配置されるセルほど、より多くの光を必要とする個別設計条件を設定するのが好ましいことを述べた。
このような設計条件が設定されている場合は、否定的な判定結果が得られたセルに対応する部分領域内に配置されている印刷要素の一部を、より上方に位置する肯定的な判定結果が得られたセルに対応する部分領域内に移動させるデータ修正を施すようにすればよい。具体的には、図19(b) に示す例の場合、星印11cを、より厳しい個別設計条件(より多くの光を必要とする個別設計条件)が設定されている部分領域A6から、より緩い個別設計条件が設定されている部分領域A1〜A5に移動させる修正を行うことにより、全部分領域A1〜A6について、肯定的な判定がなされる可能性が高くなる。
また、§5では、図15に示すような直列接続された複数のセルを有する太陽電池について、図16〜図18のグラフに示す測定結果を参照しながら、正電極E1に近い位置に接続されたセルに比べて、負電極E2に近い位置に接続されたセルの方が、セル単独での発電特性の低下が、太陽電池全体の発電特性に悪影響を及ぼす程度が大きくなるという現象を述べた。この現象は、前述したとおり、正電極E1(図示の例の場合、ITO)の電気抵抗が、負電極E2(図示の例の場合、アルミニウム)の電気抵抗よりも大きいために生じるものと考えられる。
§5で述べたとおり、このような現象を踏まえると、一般論としては、第1の端部から第2の端部に向かって直列接続された複数のセルを有し、第1の端部には第1の電極が接続され、第2の端部には第2の電極が接続されており、第1の電極の電気抵抗が第2の電極の電気抵抗よりも大きくなるような設定がなされている太陽電池については、第2の端部に近い位置に配置されたセルほど、より多くの光を必要とする個別設計条件を設定するのが好ましい。
このような設計条件が設定されている場合は、否定的な判定結果が得られたセルに対応する部分領域内に配置されている印刷要素の一部を、第1の端部により近い位置に配置された肯定的な判定結果が得られたセルに対応する部分領域内に移動させるデータ修正を施すようにすればよい。たとえば、図19(b) に示す例の場合、もし、上端に配置されたセル31(部分領域A1に対応するセル)が電気抵抗の大きなITOからなる正電極E1に接続され、下端に配置されたセル36(部分領域A6に対応するセル)が電気抵抗の小さなアルミニウムからなる負電極E2に接続されていた場合には、星印11cを、負電極E2に近い部分領域A6から、より正電極E1に近い部分領域A1〜A5に移動させる修正を行うことにより、全部分領域A1〜A6について、肯定的な判定がなされる可能性が高くなる。
(2) 文字列の縦書き/横書きの仕様変更による修正形態
データ修正部210によって行われる、複数セルに固有の別な修正形態は、文字列からなる印刷要素の縦書き/横書きの仕様を変更する方法である。以下、このような修正形態の一例を図20を参照しながら説明する。
図20(a) は、図19(a) と同様に、デザイナーが作成したオリジナルの原画像Aを示す平面図である。また、図示のA1〜A6は、この原画像Aを分割して得られる部分領域であり、図1に示す太陽電池30の各セル31〜36に対応するものである。上述したように、デザイナーが、太陽電池30の発電特性やセル構成に一切関知せずに、原画像Aを作成した場合、部分領域A1〜A6という認識はないため、特定の部分領域の光の透過特性が極端に低下する可能性がある。特に、文字列には、一般的に黒色などの濃い色が用いられる傾向があるので、特定の部分領域のみに集中して文字列が配置されると、当該部分領域の光の透過特性は極端に低下することになる。ここで述べる実施例は、このような状況において効果的な修正方法を提案するものである。
ここでは、図20(a) に示す原画像Aについて、条件判定部230が、個々の部分領域A1〜A6について、それぞれセル31〜36について設定されている個別設計条件を満たすか否かの判定を行った結果、セル32〜36については個別設計条件を満たすとの肯定的な判定結果が得られたが、セル31については個別設計条件を満たさないとの否定的な判定結果が得られた場合を考えてみよう。このような個別の判定結果は、図20(a) に示す原画像Aにおいて、部分領域A2〜A6に対応する画像データについては合格(条件を満たす)、部分領域A1に対応する画像データについては失格(条件を満たさない)との結果を示すものである。
データ修正部210は、部分領域A1に対応する画像データについて、光の透過特性を向上させる修正を行う必要があるが、ここに示す実施例では、部分領域A1に割り付けられている印刷要素として、文字列11aに着目する。図示のとおり、文字列11aは、「PATENT」なる横書き仕様の文字列によって構成されている。一方、各部分領域A1〜A6は、セル31〜36の形状に合わせて、いずれも横長の矩形領域になっている。そのため、横書き仕様の文字列11a「PATENT」は、部分領域A1内にのみ割り付けられる結果となっている。上述したとおり、文字列には、一般的に黒色などの濃い色が用いられる傾向があるので、文字列11aの存在は、部分領域A1の光の透過特性を極端に低下させる要因になっている可能性が高い。
そこで、ここに示す実施例では、横書き仕様の文字列11aを縦書き仕様に変更することにより、部分領域A1の光の透過特性を向上させる修正を行っている。図20(b) は、このようなデータ修正を施すことにより得られる修正後の原画像A′を示す平面図である。図20(a) では、部分領域A1にのみ割り付けられていた横書き仕様の文字列11a「PATENT」が、図20(b) では、縦書き仕様の文字列11a′に改められ、部分領域A1〜A6に分散して割り付けられるように変更されている。なお、図示の例では、字間についての修正も併せて行われており、各文字が各部分領域A1〜A6に分散するよう配慮されている。
このような変更を行った結果、部分領域A1の光の透過特性は大幅に向上することになる。もちろん、部分領域A2〜A6の光の透過特性は若干低下することになるが、文字が分散しているため、個々の部分領域についての影響はそれ程大きくない。また、当該修正によって、別な部分領域について判定結果が肯定的な結果から否定的な結果に転じた場合には、当該別な部分領域に対して再度の修正を行えば問題はない。
このような修正処理を実行するには、相関情報格納部250が、所定の長手方向軸に沿って伸びる細長い矩形状のセル(図20に示す例の場合、水平方向に伸びる6個の矩形状のセル)を、当該長手方向軸に対して直交する直交軸方向(図20に示す例の場合、垂直方向)に並べて配置することにより構成される太陽電池について、個々のセルの二次元的配置情報(たとえば、各セル31〜36の輪郭線の座標位置を示す情報)を格納しておくようにする。
そうすれば、データ修正部210は、原画像A内に、上記長手方向軸に沿って配置された文字列からなる印刷要素(図20に示す例の場合、水平方向に配置された横書き仕様の文字列11a「PATENT」)が含まれていた場合に、当該文字列の縦書き/横書きの仕様を変更することにより、当該文字列の配置方向を上記直交軸方向(図20に示す例の場合、垂直方向)に変更するデータ修正を施すことができる。もちろん、図14(b) に示すように、垂直方向に伸びる細長い矩形状のセルを、水平方向に並べて配置することにより構成される太陽電池の場合は、縦書き仕様の文字列を横書き仕様に変更する修正を行えばよい。
なお、図19に示す修正を行う場合は、原画像Aに含まれる星印11cを修正対象となる印刷要素としてパターン認識する処理が必要になり、図20に示す修正を行う場合は、原画像Aに含まれる文字列11aを修正対象となる印刷要素としてパターン認識する処理が必要になる。このように、原画像Aから特定の印刷要素をパターン認識する処理は、原画像AがRGBやCMYKといった各色成分の画素値をもった画素の集合体からなるラスターデータの場合、対象物を認識するための何らかのパターン認識アルゴリズムを用いて、認識対象となる印刷要素を構成する画素を抽出する必要がある。このようなパターン認識アルゴリズムとしては、種々のアルゴリズムが公知であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
ただ、上述したパターン認識アルゴリズムは、比較的複雑な手順を必要とするものになるので、実用上は、ラスターデータとなる前の段階の図形データや文字データに基づいて、上述した修正を行うようにするのが好ましい。一般に、デザイナーが原画像Aを作成する場合、パソコンなどに組み込まれた画像作成ソフトウェアを利用して、ディスプレイ画面上で画像作成操作を行うことになる。このような画像作成ソフトウェアは、通常、個々の要素を図形データや文字データの形式で取り扱うことが多い。
たとえば、図19に示す星印11cは、図形の輪郭線を示すベクターデータ、その内部を着色するための色を指定するデータ、図形の割付位置を示す座標データなどを含む図形データによって構成することができる。また、図20に示す文字列11aは、文字コード、フォントデータ、サイズ指定コード、字間指定コード、色指定コード、縦書き/横書き指定コード、文字列の割付位置を示す座標データなどを含む文字データによって構成することができる。
したがって、原画像入力部100が、図形データや文字データを含む形式の原画像データD(A)を入力し、データ変換部220において、これをラスター形式の画像データ(画素の集合体データ)に展開し、更に、網点画像データに変換して変換画像データD(B)を得る方式を採用する場合には、図19に示す星印11cの移動処理や、図20に示す文字列11aの縦書き/横書き仕様の変更処理は、原画像データD(A)内の図形データや文字データに対して実行することができる。
たとえば、星印11cを移動させるには、星印11cを示す図形データ内の割付位置を示す座標データを修正する処理を行えばよいし、文字列11aの縦書き/横書き仕様を変更するには、文字列11aを示す文字データ内の縦書き/横書き指定コードを修正する処理を行えばよい。したがって、図19や図20に示す修正を実施する際には、実用上は、画素の集合体を示すラスターデータに対してではなく、図形データや文字データを含む形式の画像データに対して修正を施すようにするのが好ましい。
<6−2 網点に対する修正形態>
続いて、データ変換部220が、原画像データD(A)に基づいて、網点の集合体からなる網点画像を形成するための変換画像データD(B)を得る変換処理を行い、プリント部300が、この変換画像データD(B)に基づいて、網点インキ層からなる印刷画像11を形成する場合に有効な修正形態として、網点に対する修正を行う例を説明する。
(1) 網点の間引きによる修正形態
網点に対する修正形態として最も単純な形態は、データ修正部210によって、変換画像データD(B)に対して、網点画像を構成する網点の一部を間引く修正処理を施すことである。図21は、このような網点間引処理に基づく修正形態の一例を示す平面図であり、図21(a) は修正前の網点分布状態、図21(b) は修正後の網点分布状態を示している。図において、Mなる符号が記された円はM色成分の網点を示し、Kなる符号が記された円はK色成分の網点を示している。各網点の大きさは、網点画像データの形式をもった変換画像データD(B)によって指定される網点面積率によって定められる。
図示のとおり、ここに示す実施例の場合、K色成分の網点の1/3を間引く処理(間引率を1/3に設定した処理)が行われており、図21(a) に示す6個のK色成分の網点のうち、2個が間引かれ、図21(b) では4個のK色成分の網点が残っている。この例では、M色成分の網点の間引きは行われていない。
この網点間引処理に基づく修正処理は、本来、形成すべきであった網点の一部を間引いて形成しないように変更する処理であり、間引かれた網点の領域に形成されるべきであったインキ層を排除する処理ということになる。当然ながら、排除されたインキ層によって遮蔽されるはずであった光が透過することになるので、光の透過特性は改善される。
どの色成分の網点を、どの程度の間引率で間引くかは、予測される発電特性と設計条件とがどの程度乖離しているかに応じて適宜定めればよい。一般に、K色成分は、光の透過率を著しく減少させるインキ層を形成する成分なので、K色成分の網点を間引くと、発電特性を大きく向上させることができる。ただ、特定の色成分の網点のみを間引くと、画像の色味が変わってしまうので、色味の変化が好ましくない画像の場合は、各色成分の網点を満遍なく間引くようにするのが好ましい。
このように、網点間引処理は、光の透過特性を直接的に改善する効果があり、非常に単純な修正処理であるが、本来は存在するはずの網点がなくなるため、原画像Aの見た目が大きく変化してしまう弊害がある。一般的に、この網点間引処理による修正を施すと、画像がやや白っぽく見えるようになるので、意匠性は若干低下せざるを得ない。
(2) 透過光の照射領域の分散によって生じる特異な現象
本願発明者は、本願に係る印刷画像作成装置を開発する実験過程で、非常に興味深い現象を確認した。そこで、まず、この興味深い現象について、図22を参照しながら簡単に説明しておく。
図22は、印刷画像の網点形態と太陽電池の発電効率との関係を示す平面図である。図22(a) は、直径d1の寸法をもつほぼ円形の網点を透光性シート(厚み100μm、A5判サイズのPETフィルム)に印刷したサンプル(以下、網点サンプルシートと呼ぶ)の一例を示す平面図であり、図22(b) は、一辺d2(d1に比べて十分に大きな値とする)をもつ正方形からなる市松パターン(チェス盤のようなパターン)を同じ透光性シートに印刷したサンプル(以下、チェス盤サンプルシートと呼ぶ)の一例を示す平面図である。いずれも、黒色インキのみを用いて網点や市松模様を形成しており、図22に黒色で塗られている部分には、黒インキの層が形成されており、図22に白色で示されている部分は、シートの地が露出している部分である。
ここに示す実験では、図22(a) に示す網点サンプルシートとして、網点面積率(光の遮蔽部分の面積率:図に黒く塗った領域の全領域に対する割合)が30%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%になる合計9枚のシートを用意した。寸法値d1は、網点面積率が50%の場合にd1=10μmとなるように設定した。
一方、図22(b) に示すチェス盤サンプルシートとして、寸法値d2が、d2=0.25mm,d2=0.5mm,d2=1.0mm,d2=2.0mmなる合計4枚のシートを用意した。こちらは、同じサイズの黒い正方形(インキ層形成領域)と白い正方形(インキ層非形成領域)とを市松模様になるように配置したものなので、光の遮蔽部分の面積率は、4枚とも50%になる。
そして、上述した9枚の網点サンプルシートおよび4枚のチェス盤サンプルシートのそれぞれについて、太陽電池の受光面に配置したときの当該太陽電池の発電効率を測定した。具体的には、太陽電池として色素増感太陽電池(DSC)を用い、その受光面に拡散シートを配置し、この拡散シートの上面に、印刷面が太陽電池側となるように上記サンプルシートを配置し、蛍光灯の光を照度200ルックスで照射したときの太陽電池の出力電力を所定条件で測定した。
この実験の目的は、図22(a) に示す網点サンプルシートを用いた場合と図22(b) に示すチェス盤サンプルシートを用いた場合とについて、被覆面積率が同じになる条件で比較した場合に、太陽電池の出力特性に何らかの差が生じるか否かを確認することである。上述したとおり、4枚のチェス盤サンプルシートは、いずれも市松模様のパターンであるため、光の遮蔽部分の面積率は50%になる。そこで、網点サンプルシートを用いて得られた測定結果に対しては、網点面積率50%の場合の出力電力に換算した想定換算値を算出して比較することにした。
すなわち、9枚の網点サンプルシートには、網点面積率30%〜70%のバリエーションがあるため、網点面積率50%のシートについては、そのままチェス盤サンプルシートを用いた測定結果と比較することができるが、残りの8枚の網点サンプルシートについては、網点面積率50%であった場合の想定換算値を求め、この想定換算値についてチェス盤サンプルシートを用いた測定結果と比較することにした。たとえば、網点面積率30%の網点サンプルシートについて得られた測定結果については、係数50/(100−30)を乗じる補正を行い、網点面積率50%であった場合の想定換算値を求めた。
このように、理論的には、遮蔽部分の面積率(黒インキの層が形成された部分の面積率)が50%である網点サンプルシートとチェス盤サンプルシートとについての比較であるのにもかかわらず、実際には、太陽電池の出力電力は、網点サンプルシートを用いた場合よりも、チェス盤サンプルシートを用いた場合の方が概ね大きくなる結果が得られた。
具体的には、9枚の網点サンプルシートを用いた測定によって得られた出力電力を網点面積率50%であった場合に換算し、これら換算値の平均を100とした場合、d2=0.25mmに設定したチェス盤サンプルシートを用いた測定結果は同じ100であるが、d2=0.5mmに設定したチェス盤サンプルシートを用いた測定結果は101、d2=1.0mmに設定したチェス盤サンプルシートを用いた測定結果は105、d2=2.0mmに設定したチェス盤サンプルシートを用いた測定結果は107という結果が得られた。
別言すれば、たとえインキ層の被覆面積が同じであったとしても(上例の実験では、被覆面積率を50%に換算して比較している)、d1=10μm程度の微細な網点の集合が印刷された網点サンプルシートを用いた場合よりも、d2=0.5mm,1.0mm,2.0mm程度の図形(図示の例の場合は正方形)の集合が印刷されたチェス盤サンプルシートを用いた場合の方が、太陽電池の発電効率は向上する、という現象が実験により確認されたことになる。
このような現象が生じる原因についての理論的な解析は、現時点では十分にはなされていないが、本願発明者は、太陽電池の受光面に対する透過光の照射領域(図22(a) ,(b) における白い部分)が、細かく分散して存在するよりも、ある程度まとまって存在する方が、太陽電池の発電効率が向上する何らかの要因が存在するものと予想している。すなわち、この現象は、透過光の照射領域の分散の具合によって生じる特異な現象と考えられる。
たとえば図22に示す例の場合、図22(a) に示す網点サンプルシートにおける白い領域の面積の総和と、図22(b) に示すチェス盤サンプルシートにおける白い領域の面積の総和とが等しかったとしても、前者では、透過光の照射領域が細かく分散されてしまうため、何らかの要因で太陽電池の発電効率は低下し、後者では、透過光の照射領域がまとまって存在するため、何らかの要因で太陽電池の発電効率は向上する、という現象が生じているものと、本願発明者は考えている。
(3) 網点の解像度低下による修正形態
さて、上述したように、透過光の照射領域の分散によって特異な現象が生じることに着目すれば、網点の解像度を低下させる修正処理が、太陽電池の発電効率を向上させる上で有効なことがわかる。
一般に、プリント部300として機能する網点印刷機に対して与えられる網点画像データには、網点の解像度を指定するデータが含まれている。図23は、2通りの解像度で印刷された画像を対比して示す平面図であり、図23(a) は600dpiの印刷画像、図23(b) は300dpiの印刷画像を示している。両者は、解像度が異なるため、図23(a) では、細かな網点が多数配置されているのに対して、図23(b) では、若干大きな網点が若干少なめに配置されている。いずれも、画像データとしては、同じ網点面積率が指定された画像であり、インキ層による被覆面積に変わりはない。
したがって、図23(a) に示す600dpiの画像も、図23(b) に示す300dpiの画像も、色合い等に関しては同じ画像として観察されることになる。もちろん、解像度が異なるため、写真画像などの場合、前者の方が繊細で高品質な画像として把握され、後者は若干画質が低下した粗い画像として把握されることになるが、図1に例示するような平網部分の多い画像であれば、解像度低下による画質の劣化はそれほど顕著なものにはならない。
そこで、データ修正部210は、変換画像データD(B)に対して、網点画像の一部の領域もしくは全部の領域の解像度を低下させる修正処理を施すことにより、太陽電池の発電特性を改善することが可能である。すなわち、網点の解像度として600dpiが指定されていた場合、一部の領域もしくは全部の領域に対して、網点の解像度を300dpiに低下させる修正を行えば、太陽電池の発電特性を向上させることが期待できる。
これは、図22を用いて説明した「透過光の照射領域の分散によって生じる特異な現象」に基づく効果である。図23(a) に示す600dpiの画像における白い領域の面積の総和と、図23(b) に示す300dpiの画像における白い領域の面積の総和とが等しかったとしても、前者では、透過光の照射領域(白い領域)が細かく分散されてしまうために太陽電池の発電効率は低下し、後者では、透過光の照射領域(白い領域)がまとまって存在するために太陽電池の発電効率は向上することになる。
(4) 網点の不均一化による修正形態
図22を用いて説明した「透過光の照射領域の分散によって生じる特異な現象」を利用した修正形態の一例として、上例では、図23を参照しながら網点の解像度を低下させる方法を説明した。ここでは、同現象を利用した別な修正形態として、網点を不均一化する修正形態を述べておく。
ここに示す修正形態では、変換画像データD(B)に対して、網点画像の一部の領域もしくは全部の領域に存在する網点の二次元的な空間分布を不均一化する修正処理が施される。たとえば、変換画像データD(B)を構成する網点画像データによって、図24(a) に示すように一様に分布した網点からなる画像が示されていた場合、これら網点の空間分布が不均一化するように、図24(b) に示すような画像に修正すれば、上述した「透過光の照射領域の分散によって生じる特異な現象」によって、太陽電池の発電特性の向上が期待できる。
すなわち、この例の場合も、図24(a) に示す均一画像における白い領域の面積の総和と、図24(b) に示す不均一画像における白い領域の面積の総和とが等しかったとしても、前者では、透過光の照射領域(白い領域)が細かく分散されてしまうために太陽電池の発電効率は低下し、後者では、透過光の照射領域(白い領域)がまとまって存在するために太陽電池の発電効率は向上することになる。
図25は、図24(a) に示す均一画像を不均一化して、図24(b) に示す不均一画像を作成する手順の一例を示す図である。具体的には、データ修正部210は、変換画像データD(B)に対して、網点画像上に定義された所定の局所領域内に分散している複数の網点を、当該局所領域内の特定点に接近させる方向に移動させる修正処理を施せばよい。
図25(a) に示す例の場合、修正対象となる領域は、一点鎖線で区切ることにより、4つの局所領域Q1〜Q4に分割されている。そこで、各局所領域Q1〜Q4のそれぞれについて、内部の所定位置に特異点を定義する。図示の例の場合、黒丸で示した網点の中心位置に、それぞれ特異点を定義している。続いて、図25(b) に示すように、個々の局所領域Q1〜Q4のそれぞれにおいて、当該局所領域内に分散している複数の網点(図の白丸)を、当該局所領域内の特定点(図の黒丸の中心)に接近させる方向に移動させる修正処理を施せばよい。図24(b) に示す不均一画像は、このような修正処理によって作成されたものである。
なお、図24,図25では、説明の便宜上、網点を極端に移動させて不均一化を誇張した例を示したが、実際には、網点の移動距離を図示の例より小さく設定しても、太陽電池の発電特性を向上させる効果は得られる。
<6−3 画素値に対する修正形態>
最後に、画素の集合体からなる原画像データD(A)について、画素値に対する修正を行う例を説明する。特に、ここで述べる修正方法は、カラー画像を前提とした修正方法であり、画像の色を修正することにより、太陽電池の発電効率を向上させることになる。
(1) 色調変更による修正形態
図9には、3種類の太陽電池についての吸収スペクトルの例を示した。この吸収スペクトルにおいて、吸光度の大きな波長域の光は、太陽電池に吸収され発電に大きく寄与する光ということになる。したがって、太陽電池の受光面にまで到達する透過光スペクトルのピーク位置が、図9に示す吸収スペクトルのピーク位置に重なっていた方が、太陽電池の発電効率は向上することになる。
図9に示す3種類の吸収スペクトルのグラフは、それぞれ固有の形をしているが、可視波長域に着目すると、いずれも、紫色〜青色に対応する波長域の吸光度に比べて、黄色〜赤色に対応する波長域での吸光度の方が高い傾向にある。したがって、太陽電池の受光面にまで到達する透過光としては、紫色〜青色に対応する波長域成分よりも、黄色〜赤色に対応する波長域成分が多く含まれていた方が、太陽電池の発電効率は向上する。
一方、CMYKの各色のインキの吸収スペクトルは、前述したように、図6に示す反射スペクトルを逆転した形状を有している。したがって、C色インキやM色インキでは、紫色〜青色に対応する波長域成分よりも黄色〜赤色に対応する波長域成分の吸収量が大きくなるのに対して、Y色インキでは、逆に、黄色〜赤色に対応する波長域成分よりも紫色〜青色に対応する波長域成分の吸収量が大きくなる。これは、CMYKの各色インキを用いた印刷画像については、C色インキやM色インキの量を減らし、Y色インキの量を増やすような修正を施すと、太陽電池の受光面にまで到達する透過光に関して、紫色〜青色に対応する波長域成分が減り、黄色〜赤色に対応する波長域成分が増えるので、太陽電池の発電効率を向上させる効果が得られることを意味している。
このような点を踏まえれば、データ修正部210は、原画像データD(A)に対して、原画像Aの一部もしくは全部を構成する特定領域の色調を変更する修正処理を施すことにより、太陽電池の発電効率を向上させることができることになる。具体的には、データ修正部210は、原画像Aの一部もしくは全部を構成する特定領域について、C色成分およびM色成分を減少させ、Y色成分を増加させる修正処理を施すようにすればよい。
図26は、このような色調変更処理に基づく修正形態を示す平面図である。図示のとおり、この例の場合に修正対象となる中間画像データは、CMYKの各色についての画素値を有する画素の集合体である。図26では、二次元マトリックス状に配置された画素配列において、第i行第j列目の画素P(i,j)にハッチングを施して示してある。ここでは、この画素P(i,j)のもつCMYKの各色についての元の画素値が、図示のとおり、Cold,Mold,Yold,Koldであったものとしよう。
この場合、データ修正部210による修正処理によって与えられる新たな画素値Cnew,Mnew,Ynew,Knewは、図示のとおり、
Cnew = fc・Cold (但し、fc<1)
Mnew = fm・Mold (但し、fm<1)
Ynew = fy・Yold (但し、fy>1)
Knew = fk・Kold (但し、fk=1)
なる演算によって定めればよい。
ここで、fc,fm,fy,fkは修正係数であり、fc,fmとしては1より小さな値が設定され、fyとしては1より大きな値が設定され、fk=1に設定される。このような演算によって、画素P(i,j)の画素値を修正すれば、C色成分の画素値およびM色成分の画素値は減少し、Y色成分の画素値は増加することになる。K色成分の画素値は変わらない。なお、上記演算によって新たな画素値がその最大値を超えてしまう場合は当該最大値を新たな画素値とし、新たな画素値がその最小値を下回ってしまう場合は当該最小値を新たな画素値とすればよい。
このような修正処理により、カラー画像の修正対象となった領域についての色調が変更され、若干、赤みや黄色みが増すことになるので、意匠性の劣化が生じる可能性はあるが、人間が観察した場合に違和感が生じない程度の色調変化であれば、実用上、支障は生じない。
(2) GCR処理による修正形態
本願発明者は、本願に係る印刷画像作成装置を開発する実験過程で、GCR処理による修正も非常に効果的であることを見出した。GCRは、「Gray Component Replacement:グレー成分置換」の略として知られている手法であり、CMYKの各色インキを用いてカラー印刷を行う際に、CMYの各色成分で表現されるグレー成分を、K色成分に置換する手法を指す。このGCRの手法は、既に公知のものであり、印刷の分野では広く利用されている技術であるが、ここでは、説明の便宜上、その原理を簡単に述べておく。
図27は、一般的なGCR処理の原理を示すグラフである。いま、図27(a) に示すように、CMYKの各色成分の混合により、ある色が表現されているものとする。図示の例では、縦軸の画素値は%で表現されており、0%〜100%の間の値をとる。たとえば、8ビットのデジタルデータによって1つの色成分の画素値を表現した場合、実際の画素値は、0〜255の範囲の値をとることになるが、図示の例では、縦軸の0%が画素値0に対応し、100%が画素値255に対応することになる。図27(a) に示す例は、C色成分が60%,M色成分が50%,Y色成分が40%,K色成分が0%の例であり、このような色を網点で表現する場合、C色インキを網点面積率60%、M色インキを網点面積率50%、Y色インキを網点面積率40%、K色インキを網点面積率0%でそれぞれ印刷すればよい。
図27(b) は、図27(a) に示すC色成分,M色成分,Y色成分の一部を、K色成分に置換した例である。具体的には、破線で示すとおり、C色成分のうちの50%の分と、M色成分のうちの40%の分と、Y色成分のうちの40%の分とが、K色成分の40%に置換されている。その結果、実際の印刷に用いられる各色成分は、図27(c) に示すとおり、C色成分が10%,M色成分が10%,Y色成分が0%,K色成分が40%になる。図27(b) に破線で示す3色成分の混合によって表現されるグレー色が、図27(b) に示す40%のK色成分によって表現されるグレー色と同じであれば、理論的には、図27(a) に示す画素値に基づいて印刷された平網画像の色と、図27(c) に示す画素値に基づいて印刷された平網画像の色とは同じになる。
もちろん、厳密には、このような置換を行うと、印刷される色は若干異なることになるが、人間が観察した場合に違和感が生じない程度の置換を行うのであれば、実用上、支障は生じない。このように、図27(a) に示すCMYKの各色成分を、図27(c) に示すCMYKの各色成分に置き換える処理は、GCR処理として知られており、印刷の分野では広く利用されている。このGCR処理は、インキの全使用量を低減させる効果が得られるので、主として、製造コスト削減を目的として利用されている。
本願発明者は、太陽電池の受光面に配置する印刷画像について、このGCR処理を施すと、太陽電池の発電効率が向上する現象を、次のような実験を行うことによって確認した。この実験では、次の3通りのサンプルシートを用いた。いずれも、透光性シート(厚み100μm、A5判サイズのPETフィルム)にCMYKの4色のインキによる網点を印刷したものである。
<基準シート>
C色成分,M色成分,Y色成分のインキからなるグレーの平網画像を印刷したもの。光の透過率の測定値は、50.4%
<GCR(1)>
上記基準シートのCMYの各色成分の一部をK色成分に置換するGCR処理を施して印刷したもの。CMYの各色成分からなるインキ層についてのみ考慮した光の合計透過率の測定値は、27.1%。K色成分からなるインキ層についてのみ考慮した光の透過率の測定値は、25.0%。全インキ層についての光の合計透過率は、52.1%。
<GCR(2)>
上記基準シートのCMYの各色成分の一部をK色成分に置換するGCR処理を施して印刷したもの。CMYの各色成分からなるインキ層についてのみ考慮した光の合計透過率は、1.8%。K色成分からなるインキ層についてのみ考慮した光の透過率は、50.0%。全インキ層についての光の合計透過率は、51.8%。
実験は、上記3種類のサンプルシートのそれぞれについて、太陽電池の受光面に配置したときの当該太陽電池の発電効率を測定した。具体的には、太陽電池として色素増感太陽電池(DSC)を用い、その受光面に拡散シートを配置し、この拡散シートの上面に、印刷面が太陽電池側となるように上記サンプルシートを配置し、蛍光灯の光を照度200ルックスで照射したときの太陽電池の出力電力を所定条件で測定した。
図28は、上記3種類のサンプルシートに用いられているインキの透過率に関する情報と、実験により得られた太陽電池の発電効率との関係を示す表である。発電効率の欄には、基準シートについて測定された発電効率を100%としたときの、GCR(1)およびGCR(2)について測定された発電効率の割合を%値で示した。
この3種類のサンプルシートは、いずれも、光の全透過率がほぼ50%になるグレーの平網画像が印刷されたシートであるが、発電効率には若干の差が生じる結果となった。すなわち、基準シートとGCR(1)とを比較すると、前者の全透過率に比べて後者の全透過率の方が3%程度高いため、発電効率が103%になる結果が得られたのは、全透過率の違いに基づく結果と考えることができるが、基準シートとGCR(2)とを比較すると、前者の全透過率に比べて後者の全透過率は、2〜3%程度高いだけであるのに、発電効率が109%になる結果が得られており、実質、6%程度の効率向上が見られる。
同様の実験を、写真画像について行ったところ、GCR処理を施すことにより、概ね10%程度の発電効率の向上が見られた。すなわち、CMYの各色成分のインキ層を形成するよりも、K色成分のインキ層のみを形成する方が、発電効率が向上することになる。このように、GCR処理によって発電効率が向上する現象が生じる原因についての理論的な解析は、現時点では十分にはなされていないが、本願発明者は、CMYの各色成分のインキは可視波長域の吸収が大きいため、これらの網点を相互に重ねて黒を表現した場合、K色成分のインキのみで黒を表現した場合よりも発電効率の低下を招くのではないかと考えている。
いずれにせよ、データ修正部210は、原画像Aの一部もしくは全部を構成する特定領域内の画素について、CMYの3色合成成分をK色成分に置換するGCR処理に基づく修正処理を施すことにより、太陽電池の発電効率を向上させることができる。
(3) 逆GCR処理を併用する修正形態
図28の表は、光の全透過率がほぼ50%になるグレーの平網画像が印刷された3種類のサンプルシートについて発電効率を測定した結果を示すものである。このように、一般的には、GCR処理を行うことにより、太陽電池の発電効率が向上する傾向が見られる。しかしながら、本願発明者が多種多様のサンプルシートを用いて実験を行った結果、光の全透過率が10%前後しかない暗い画像の場合、GCR処理を行うと、逆に太陽電池の発電効率が低下する現象が確認された。
しかも、本願発明者が行った実験によると、このような暗い画像に対しては、GCR処理を行う変わりに、逆GCR処理を行うと、太陽電池の発電効率が向上する現象も確認できた。逆GCR処理は、図27(c) に示すCMYKの各色成分を、図27(a) に示すCMYKの各色成分に置き換える処理であり、K色成分をCMYの3色合成成分に置換する処理と言うことができる。要するに、暗い画像については、K色成分のインキ層のみを形成するよりも、CMYの各色成分のインキ層を形成する方が、発電効率が向上することになる。
このように、暗い画像については、逆GCR処理によって発電効率が向上する現象が生じる原因についての理論的な解析も、現時点では十分にはなされていないが、本願発明者は、暗い画像の場合、K色成分のインキ層によって、光の全波長域成分が遮蔽されてしまうよりは、CMYの各色成分のインキ層によって、少なくとも一部の波長域成分が透過するようにした方が、何らかの要因で発電効率を向上させるのではないかと考えている。
したがって、このような暗い原画像に対して修正を行う場合には、データ修正部210は、原画像の一部もしくは全部を構成する特定領域内の画素について、K色成分をCMYの3色合成成分に置換する逆GCR処理に基づく修正処理を施すことにより、太陽電池の発電効率を向上させることができる。
実用上は、データ修正部210に、GCR処理と逆GCR処理との双方を実行する機能をもたせておき、修正対象となる画像の特定領域に対して、原則としてGCR処理による修正を実行することとし、当該特定領域が「暗い画像」であった場合には、逆GCR処理による修正を実行するようにすればよい。ここで、「暗い画像」であるか否かは、たとえば、CMYK(RGBでもよい)の各色成分の画素値の平均値を求め、当該平均画素値が所定値α以上である場合に「暗い画像」とする、というような判定方法で決定すればよい。
図29は、データ修正部210におけるGCR処理/逆GCR処理に基づく修正切替の態様を示す図である。図に示すバーは、CMYKの各色成分の平均画素値を示している。たとえば、CMYKの各色成分の画素値をもった画素の集合体からなる中間画像データに対して、特定領域内の部分画像を修正する必要が生じた場合、当該特定領域に所属する個々の画素について、それぞれCMYKの各色成分の画素値の「色に関する平均値」を求め、更に、当該特定領域に所属する全画素について、上記「色に関する平均値」の平均を求め、こうして得られた平均画素値が、予め設定した所定値α以上である場合に、当該特定領域内の画像を「暗い画像」と判定すればよい。
図示のとおり、所定値αを境界として、平均画素値が所定値α未満である場合には、GCR処理によって発電効率の改善が図られるものと判断し、GCR処理による修正を行うようにし、平均画素値が所定値α以上である場合には、逆GCR処理によって発電効率の改善が図られるものと判断し、逆GCR処理による修正を行うようにすればよい。
要するに、データ修正部210には、原画像Aの一部もしくは全部を構成する特定領域について、CMYの3色合成成分をK色成分に置換するGCR処理に基づく第1の修正処理と、K色成分をCMYの3色合成成分に置換する逆GCR処理に基づく第2の修正処理と、のいずれかを選択的に施す機能をもたせておき、特定領域内の画素の平均画素値が所定値α未満である場合には第1の修正処理を施し、所定値α以上である場合には第2の修正処理を施すようにすればよい。
ここで、所定値αとしての最適値は、プリンタ300が実際に利用するCMYKのインキの種類などに応じて変動する値になるが、本願発明者が行った実験によると、画素値の範囲を0%〜100%の範囲に換算した場合に、所定値αを、80%〜90%の範囲内の所定値に設定すれば、GCR処理か逆GCR処理かの切替を適切に行うことができる。
<6−4 原画像全体や特定の印刷要素の変倍による修正形態>
最後に、原画像全体や特定の印刷要素に対して変倍処理を施すことにより、データ修正を施す形態を述べておく。§6−1(1) では、特定の印刷要素を移動させる修正形態を述べた。具体的には、図19を参照して、特定の印刷要素である星印11cを、部分領域A6から部分領域A5に移動させることにより、部分領域A5の光の透過特性を向上させる修正を行う例を説明した。
ここで述べる印刷要素の変倍による修正形態は、特定の印刷要素に対して、縮小処理もしくは拡大処理を行うことにより、データ修正を施すものである。たとえば、図19(a) に示す例において、特定の印刷要素である星印11cに対して縮小処理を施したとすれば、星印11cの占有面積は小さくなり、背景部分の面積が大きくなる。前述したとおり、一般的な画像の場合、個々の印刷要素に比べて背景画像は薄い色で表現される傾向(網点画像の場合、網点面積率の低い領域になる傾向)にあるため、星印11cに対して縮小処理を施せば、部分領域A6を含む原画像A全体について、光の透過特性の向上が期待できる。文字列11aやキャラクター絵柄11bについても同様である。
一方、個々の印刷要素に比べて背景画像が濃い色で表現される傾向(網点画像の場合、網点面積率の高い領域になる傾向)にある画像の場合は、逆に、文字列11a,キャラクター絵柄11b,星印11cといった印刷要素に対して拡大処理を施してその占有面積は大きくすれば、背景部分の面積は小さくなるので、やはり原画像A全体について、光の透過特性の向上が期待できる。
特定の印刷要素に対して、縮小処理を行うか、拡大処理を行うかは、背景画像に対して濃いか薄いかを認識した上で定めることもできるが、いずれか一方を試してみて、光の透過特性が低下した場合には他方を採用する、という試行錯誤を行うようにしてもかまわない。
なお、特定の印刷要素に対して縮小処理もしくは拡大処理を行う代わりに、原画像全体に対して縮小処理もしくは拡大処理を行うようにしてもかまわない。このように、原画像全体や特定の印刷要素に対して、縮小処理もしくは拡大処理を行うデータ修正方法は、比較的単純な修正方法でありながら、非常に効果的である。しかも、複数セルを有する太陽電池だけでなく、単一セルからなる太陽電池についても有効である。また、通常、原画像全体や個々の印刷要素のサイズを若干変えたとしても、画像全体の意匠性が大きく損なわれることはない。