以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る動力伝達装置は、自動車(車両)のエンジン(駆動源)による駆動力を車輪(駆動輪)に伝達又は遮断するためのものであり、図1〜5に示すように、トルクコンバータ1と、クラッチ手段3と、ダンパ機構7と、バネ特性切替手段としてのダンパクラッチ10と、バネ特性制御手段14とを主に有している。なお、図1は、本実施形態に係る動力伝達装置の主要部を表す縦断面図であり、図2は、同実施形態に係る動力伝達装置を模式化した模式図(概念図)を示すものである。
しかるに、車両のエンジンEから車輪D(駆動輪)に至るまでの動力伝達系の途中には、図2に示すように、トルクコンバータ1及びトランスミッションAが配設されており、このうちトランスミッションAには、クラッチ手段3及び第3クラッチ手段8の他、無段変速機2(CVT)が配設されている。なお、同図中、符号11は、エンジンEから延設された入力軸を示している。
トルクコンバータ1は、エンジンEからのトルクを増幅して無段変速機2に伝達するトルク増幅機能を有して成るもので、当該エンジンEの駆動力が伝達されて軸回りに回転可能とされるとともにオイル(作動油)を液密状態で収容したトルコンカバー1a、13と、該トルコンカバー1a側に形成されて当該トルコンカバー1aと共に回転するポンプPと、該ポンプPと対峙しつつトルコンカバー13側で回転可能に配設されたタービンTとを主に具備している。
また、入力軸11は、カバー部材12を介してトルコンカバー13と連結されている。そして、エンジンEの駆動力にて入力軸11が回転し、カバー部材12、トルコンカバー13、1a及びポンプPが回転すると、その回転トルクが液体(作動油)を介してタービンT側にトルク増幅されつつ伝達される。しかして、トルク増幅されてタービンTが回転すると、該タービンTとスプライン嵌合した第1駆動シャフト5が回転し、無段変速機2に当該トルクが伝達される(第1動力伝達系)。なお、本発明における「トルクコンバータ1を介してエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達させる第1動力伝達系」は、上記したトルコンカバー1a、ポンプP、タービンT、及び第1駆動シャフト5が成す駆動力の伝達系を指すものである。
一方、ダンパ機構7は、第2動力伝達系の途中に配設されるとともに、トルク変動を減衰するためのバネ特性を有したダンパで構成されたもので、本実施形態においては、第1ダンパ7a及び第2ダンパ7bの2つのダンパと、トルコンカバー13の内周面から内側に向かって突出形成された連結部7dと、第2ダンパ7bを介して連結部7dと連結された連結部材7cとを具備している。また、連結部材7cは、第1ダンパ7aを介して連結部7eと連結されており、当該連結部7eの内周縁部が第2駆動シャフト6の外周面とスプライン嵌合して取り付けられている。しかして、ダンパ機構7には、第1ダンパ7a及び第2ダンパ7bが略同心円状(本実施形態においては、内側に第1ダンパ7a及び外側に第2ダンパ7b)に複数取り付けられている。
これにより、エンジンEの駆動力にて入力軸11が回転すると、カバー部材12、トルコンカバー13、連結部材7c及び第2駆動シャフト6が回転し、無段変速機2にエンジンEの駆動トルクが伝達される(第2動力伝達系)。しかして、第2動力伝達系においては、ダンパ機構7と第2駆動シャフト6により、トルクコンバータ1を介さずにエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達することが可能とされるとともに、第1ダンパ7a及び第2ダンパ7bのバネ特性により、トルク変動を減衰することが可能とされている。なお、本発明における「トルクコンバータ1を介さずエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達させる第2動力伝達系」は、上記したトルコンカバー13、連結部材7c及び第2駆動シャフト6が成す駆動力の伝達系を指すものである。
上記の如く、第1駆動シャフト5は、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介してエンジンEの駆動力で回転可能とされ、第1クラッチ手段3aと連結されるとともに、第2駆動シャフト6は、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介さずエンジンEの駆動力で直接回転可能とされ、第2クラッチ手段3bと連結されている。また、本実施形態においては、第1駆動シャフト5が円筒状部材とされるとともに、その内部に第2駆動シャフト6が回転自在に配設されており、これらの回転軸が同一となるよう構成されている。すなわち、当該第1駆動シャフト5と第2駆動シャフト6とは同心円状に形成されているのである。これにより、第1駆動シャフト5は、第2駆動シャフト6の外側にて回転自在とされるとともに、第2駆動シャフト6は、第1駆動シャフト5の内側で回転自在とされており、当該第1駆動シャフト5と第2駆動シャフト6とは、クラッチ手段3による選択的作動により、別個独立に回転可能とされる。
クラッチ手段3は、自動車(車両)の前進時に作動可能とされるとともに、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介してエンジンE(駆動源)の駆動力を車輪(駆動輪D)に伝達させる第1動力伝達系の状態とし得る第1クラッチ手段3a、及びトルクコンバータ1の駆動伝達系を介さずエンジンE(駆動源)の駆動力を車輪(駆動輪D)に伝達させて第2動力伝達系の状態とし得る第2クラッチ手段3bを有するものである。第1クラッチ手段3a及び第2クラッチ手段3bには、図3で示すように、同図中左右方向に対して摺動自在な複数の駆動側クラッチ板3aa、3ba及び被動側クラッチ板3ab、3bbが形成され、多板クラッチを成している。
しかるに、第1クラッチ手段3aにおいては、第1駆動シャフト5と連結されて連動する連動部材15に駆動側クラッチ板3aaが形成されるとともに、筐体17に被動側クラッチ板3abが形成され、これら駆動側クラッチ板3aaと被動側クラッチ板3abとが交互に積層形成されている。これにより、隣り合う駆動側クラッチ板3aaと被動側クラッチ板3abとが圧接又は離間(圧接力の解放)可能となっている。
また、第2クラッチ手段3bにおいては、第2駆動シャフト6と連結されて連動する連動部材16に駆動側クラッチ板3baが形成されるとともに、筐体17に被動側クラッチ板3bbが形成され、これら駆動側クラッチ板3baと被動側クラッチ板3bbとが交互に積層形成されている。これにより、隣り合う駆動側クラッチ板3baと被動側クラッチ板3bbとが圧接又は離間(圧接力の解放)可能となっている。
また、かかるクラッチ手段3は、図3に示すように、同一筐体17内に第1クラッチ手段3a、第2クラッチ手段3b、及び当該第1クラッチ手段3a及び第2クラッチ手段3bに対応する2つの油圧ピストンP1、P2を有するとともに、当該油圧ピストンP1、P2を作動させる油圧を制御することにより、当該第1クラッチ手段3a又は第2クラッチ手段3bを任意選択的に作動可能とされている。
すなわち、筐体17と油圧ピストンP1との間の油圧室S1に作動油を注入させることにより、油圧ピストンP1がリターンスプリング3cの付勢力に抗して同図中右側へ移動し、その先端で第1クラッチ手段3aを押圧して、駆動側クラッチ板3aaと被動側クラッチ板3abとを圧接させるよう構成されている。なお、第2クラッチ手段3bにおける駆動側クラッチ板3ba及び被動側クラッチ板3bbは、図4に示すように、それぞれの周縁に凹凸形状が形成されており、その凹部において油圧ピストンP1の先端が挿通されるよう構成されている。
また、油圧ピストンP1と油圧ピストンP2との間の油圧室S2に作動油を注入させることにより、油圧ピストンP2がリターンスプリング3cの付勢力に抗して図3中右側へ移動し、その先端で第2クラッチ手段3bを押圧して、駆動側クラッチ板3baと被動側クラッチ板3bbとを圧接させるよう構成されている。これにより、油圧ピストンP1、P2を作動させる油圧を制御することにより、第1クラッチ手段3a又は第2クラッチ手段3bを任意選択的に作動可能とされている。尚、図中符号gは、第1クラッチ手段3a側及び第2クラッチ手段3b側に設けられたストッパを示している。
クラッチ手段3を構成する筐体17は、ギアG1が形成された連動部材18と連結されており、該ギアG1は、図7に示すように、出力軸20に形成されたギアG2と噛み合って構成されている。これにより、第1クラッチ手段3a又は第2クラッチ手段3bにて伝達されたエンジンEの駆動力は、筐体17を介して連動部材18に至り、出力軸20を介して無段変速機2に伝達されるようになっている。
一方、第3クラッチ手段8は、第1クラッチ手段3a及び第2クラッチ手段3bと同様の多板クラッチから成り、車両の後進時に、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介してエンジンE(駆動源)の駆動力を車輪D(駆動輪)に伝達させるためのものである。すなわち、車両が具備するシフトレバーを操作してRレンジ(後進)とすると、連動部材15に形成されたギアと出力軸20側に形成されたギアとの間にアイドルギアGa(図7参照)が介在して噛み合い、エンジンEの駆動力が回転方向を逆転しつつ第3クラッチ手段8に至るようになっている。
クラッチ制御手段4は、エンジン制御手段9(ECU)と電気的に接続され、自動車(車両)の走行状態(車速、車体の傾斜角度、エンジン回転数、スロットル開度、油温など)に応じて、油圧室S1又はS2に作動油を所定の圧力で注入して油圧ピストンP1、P2を任意選択的に作動させることにより第1クラッチ手段3a又は第2クラッチ手段3bを任意選択的に作動させ、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介してエンジンE(駆動源)の駆動力を車輪D(駆動輪)に伝達させ(第1動力伝達状態)、又はトルクコンバータ1の駆動伝達系を介さずエンジンE(駆動源)の駆動力を車輪D(駆動輪)に伝達させ(第2動力伝達状態)得るものである。
ここで、本実施形態に係るダンパクラッチ10(バネ特性切替手段)は、外周縁部に摩擦材10aが形成されるとともに、第1ダンパ7aと接続された接続部10bが所定位置に形成されており、摩擦材10aがトルコンカバー13の内壁面に当接して接続された接続位置(図10(a)参照)と、当該摩擦材10aがトルコンカバー13の内壁面から離間した離間位置(同図(b)参照)との間で移動可能とされている。すなわち、ダンパクラッチ10は、図10に示すように、油圧バルブ30から供給された油圧が正面側に作用してα方向(同図(a)参照)に移動し、離間位置から接続位置に切替可能とされるとともに、当該油圧バルブ30から供給された油圧が背面側に作用してβ方向(同図(b)参照)に移動し、接続位置から離間位置に切替可能とされている。
より具体的には、油圧バルブ30は、スプリングspにて図10(b)中の矢印b方向に付勢されたピストン部材30aを有しており、通常時(ソレノイド22(SHA)の非作動時)には、同図に示すように、ダンパクラッチ10に供給される作動油が循環するとともに、その循環する作動油の油圧が当該ダンパクラッチ10の背面に対して作用して離間位置とされる。そして、ソレノイド22(SHA)から油圧バルブ30に作動油が供給されると、ピストン部材30aがスプリングspの付勢力に抗して図10(a)中の矢印a方向に移動し、ダンパクラッチ10の正面に対して油圧が作用して接続位置とされる。
そして、ダンパクラッチ10が接続位置にあるとき、摩擦材10aによる摩擦力にてトルコンカバー13から当該ダンパクラッチ10に駆動力が伝達されるので、その駆動力が接続部10bを介して第1ダンパ7aに伝達され、第2駆動シャフト6が回転することとなり、伝達されるトルクが変動した際、専ら第1ダンパ7aによって当該トルク変動を減衰し得るようになっている。
一方、ダンパクラッチ10が離間位置にあるとき、トルコンカバー13から連結部材7cに駆動力が伝達されるので、その駆動力が第1ダンパ7a及び第2ダンパ7bを介して伝達され、第2駆動シャフト6が回転することとなり、伝達されるトルクが変動した際、第1ダンパ7a及び第2ダンパ7bの両方のダンパによって当該トルク変動を減衰し得るようになっている。
しかして、図6に示すように、ダンパクラッチ10が離間位置にあるとき、第2動力伝達系に対して第1ダンパ7a及び第2ダンパ7bを直列に接続させることにより低バネレート状態(第1ダンパ7aのバネ定数をk1及び第2ダンパ7bのバネ定数をk2とした場合、全体のバネ定数がk1・k2/(k1+k2)とされた状態)とするとともに、当該第2動力伝達系に対して第1ダンパ7aのみを接続させることにより高バネレート状態(全体のバネ定数が第1ダンパ7aのバネ定数k1と同じ状態)とすることができる。
なお、図6のグラフにおける横軸は、第2駆動シャフト6に対するトルコンカバー13の捩り角度(すなわち、第1ダンパ7a及び第2ダンパ7bの圧縮方向の変位)を示している。また、本実施形態においては、第2動力伝達系に対して第1ダンパ7aのみを接続させることにより高バネレート状態としているが、第1ダンパ7a又は第2ダンパ7bの何れか一方を接続させる(例えば第2動力伝達系に対して第2ダンパ7bのみを接続する)ことにより高バネレート状態とし得るものであれば足りる。
バネ特性制御手段14は、クラッチ制御手段4に形成されたもので、自動車(車両)の走行状態に応じてバネ特性切替手段を作動させ、当該走行状態に応じたバネ特性に切り替えさせ得るものである。すなわち、クラッチ制御手段4は、エンジン制御手段9(ECU)からの信号により自動車の走行状態を把握可能とされていることから、その走行状態に応じた信号によりダンパクラッチ10を作動させ、第2動力伝達系における所定部位(ダンパクラッチ10が配設された部位)を遮断又は接続させることにより、低バネレート状態(ダンパクラッチ10が所定部位を遮断して、第1ダンパ7a及び第2ダンパ7bが直列に接続した状態)と高バネレート状態(ダンパクラッチ10が所定部位を接続して、第1ダンパ7aのみが接続した状態)とを切替可能とされているのである。
具体的には、バネ特性切替手段14は、車両が減速する過程においてエンジンEがアイドル状態よりも低い回転数で回転している走行状態のとき、低バネレート状態におけるエンジンとの共振範囲では、ダンパクラッチ10を接続位置として高バネレート状態に切り替えるとともに、高バネレート状態におけるエンジンとの共振範囲では、ダンパクラッチ10を離間位置として低バネレート状態に切り替えるよう制御可能とされている。
かかる制御により、車両が減速する過程においてエンジンEがアイドル状態よりも低い回転数で回転している走行状態のときであっても、共振が生じてしまうのを確実に回避することができ、より適切に第2動力伝達系の状態を保持させることができる。特に、車両が減速する過程でエネルギ回生が行われる車両においては、エンジンEがアイドル状態よりも低い回転数においても第2動力伝達系の状態を保持することができ、エンジンEの広い回転領域にてエネルギ回生を行わせることができる。
また、本実施形態に係るバネ特性切替手段14は、スロットル開度が所定より低い状態で車両の速度が略一定に保持された走行状態又は車両が所定より緩やかに加速する走行状態のとき、ダンパクラッチ10を離間位置として低バネレート状態とするよう制御可能とされている。これにより、スロットル開度が所定より低い状態で車両の速度が略一定に保持された走行状態又は車両が所定より緩やかに加速する走行状態のときであっても、こもり音が生じてしまうのを確実に回避することができ、より適切に第2動力伝達系の状態を保持させることができる。
さらに、本実施形態に係るバネ特性切替手段14は、車両が所定より急加速する走行状態のとき、ダンパクラッチ10を接続位置として高バネレート状態とするよう制御可能とされている。これにより、車両が所定より急加速する走行状態のときであっても、加速時又は減速時に車両がガクガクと振動を繰り返す現象(所謂しゃくり現象:jerk)が生じてしまうのを確実に回避することができ、より適切に第2動力伝達系の状態を保持させることができる。
またさらに、本実施形態に係るバネ特性切替手段14は、エンジンEが停止するとき、ダンパクラッチ10を接続状態として高バネレート状態とするとともに、エンジンの始動時に当該高バネレート状態が保持されるよう構成されている。これにより、エンジン始動時の第2動力伝達系の共振を確実に回避させることができる。すなわち、高バネレート状態の方が低バネレート状態よりもエンジン回転数が高い領域で共振が生じることから、エンジンの始動時に高バネレート状態とすることで、共振を回避することができるのである。
さらに、本実施形態に係るダンパクラッチ10は、第2動力伝達系における所定部位の遮断及び接続の切り替え過程(すなわち、ダンパクラッチ10がトルコンカバー13に対して離間する離間状態と当接して接続する接続状態との切り替え過程)でクラッチを滑らせる滑り制御が可能とされている。すなわち、ダンパクラッチ10の摩擦材10aのトルコンカバー13の内壁面に対する圧接力を調整して、当該摩擦材10aをトルコンカバー13に当接させつつ滑らせることにより、容量制御(動力伝達の容量を制御)を図り得るのである。
上記実施形態によれば、ダンパ機構7のバネ特性を任意に切り替え得るダンパクラッチ10(バネ特性切替手段)と、車両の走行状態に応じてダンパクラッチ10(バネ特性切替手段)を作動させ、当該走行状態に応じたバネ特性に切り替えさせ得るバネ特性制御手段14とを備えたので、より広いエンジンの回転領域において第2動力伝達系の状態を保持させることができ、燃費をより一層向上させることができる。
また、本実施形態に係るダンパ機構7は、第1ダンパ7a及び第2ダンパ7bの2つのダンパを有するとともに、ダンパクラッチ10(バネ特性切替手段)にて当該第1ダンパ7a及び第2ダンパ7bを任意選択的に接続させることにより、バネ定数が低い低バネレート状態とバネ定数が高い高バネレート状態とを切り替えさせ得るので、走行状態に応じて、より適切かつ円滑にダンパ機構7のバネ特性を切り替えさせることができる。
さらに、本実施形態によれば、第2動力伝達系に対して第1ダンパ7a及び第2ダンパ7bを直列に接続させることにより低バネレート状態とするとともに、当該第2動力伝達系に対して第1ダンパ7a又は第2ダンパ7bの何れか一方を接続させることにより高バネレート状態とし得るので、より確実かつ円滑にダンパ機構7のバネ特性を切り替えさせることができる。
またさらに、本実施形態においては、バネ特性切替手段が、バネ特性制御手段14からの信号により第2動力伝達系における所定部位を遮断又は接続させるダンパクラッチ10から成るので、より確実、かつ、円滑にダンパ機構7のバネ特性を切り替えることができる。また、バネ特性切替手段としてのダンパクラッチ10は、第2動力伝達系における所定部位の遮断及び接続の切り替え過程でクラッチを滑らせる滑り制御が可能とされたので、より滑らかにダンパ機構7のバネ特性を切り替えることができる。
さらに、バネ特性制御手段14は、車両の走行状態に応じた制御モードを参照可能な制御マップ(図12参照)を予め保持し、当該制御マップの制御モードに従ってダンパクラッチ10(バネ特性切替手段)を制御し得るようになっている。これにより、より円滑かつ適切なダンパ機構7の切り替えを行わせることができる。特に、バネ特性制御手段14は、ダンパクラッチ10の作動油が所定値より高温のときに限り、制御マップを参照するよう構成されており、これにいより、当該ダンパクラッチ10の作動油が所定値より低温であるとき(すなわち、ダンパクラッチ10の作動が円滑に行われない虞があるとき)、制御マップに従う制御を禁止することができる。
なお、本実施形態に係るダンパクラッチ10(バネ特性切替手段)は、トルクコンバータ1内(すなわち、トルコンカバー13内)に配設されたので、より効率よくダンパ機構7のバネ特性を任意に切り替えることができるとともに、トルクコンバータ1の外部の構成を簡素化することができる。また、本実施形態においては、エンジンEから車輪Dまでの動力伝達系の途中には、トルクコンバータ1と変速機(無段変速機2)を具備するトランスミッションAとが配設されるとともに、当該トランスミッションA内にクラッチ手段3が配設され、変速機が自動変速機から成り、及び自動変速機が無段変速機2から成るので、トルクコンバータ1と変速機を具備するトランスミッションとが配設され、変速機が自動変速機から成り、或いは自動変速機が無段変速機2から成る汎用的な車両に容易に適用することができる。
加えて、上記実施形態によれば、車両の状態に応じて第1クラッチ手段3a又は第2クラッチ手段3bを任意選択的に作動させて、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介してエンジンEの駆動力を車輪D(駆動輪)に伝達させ(第1動力伝達系)、又はトルクコンバータの駆動伝達系を介さずエンジンEの駆動力を車輪D(駆動輪)に伝達させ(第2動力伝達系)得るクラッチ制御手段4を備えたので、動力伝達装置の複雑化及び大型化を抑制し、且つ、トルクコンバータ1のトルク増幅機能により発進性能の向上を図るとともに、定常走行中における動力伝達効率を向上させることができる。
また、第1駆動シャフト5と第2駆動シャフト6とは同心円状に形成されたので、当該第1駆動シャフト5と第2駆動シャフト6とがそれぞれ延設されたもの(2本が併設されたもの)に比べ、動力伝達装置全体をより小型化することができる。さらに、第2駆動シャフト6は、トルク変動を減衰し得るダンパ機構7を介してエンジンEと連結されたので、第2クラッチ手段3bに伝達されるエンジンEの振動を減衰させることができる。
ところで、本実施形態における無段変速機2は、CVT(Continuously Variable Transmission)と称されるものとされている。本実施形態においては、図7に示すように、車両の駆動源(エンジンE)から車輪D(駆動輪)に至る動力伝達系の途中であってクラッチ手段3の第2クラッチ手段3bと車輪D(駆動輪)との間に無段変速機2を介装させたものとされる。
かかる無段変速機2は、2つのプーリQ1、Q2と、その間に懸架されたベルトVとを有しており、油圧制御回路21によりプーリQ1、Q2の可動シーブを動作させて互いに独立してベルトV懸架部の径を変化させ、所望の変速を行わせるものである。かかる無段変速機2は、オイルポンプ27(図8参照)からオイル(作動油)が供給されて当該オイルの油圧によりプーリ(Q1、Q2)の可動シーブを作動させ得るよう構成されている。一方、油圧制御回路21は、車両におけるブレーキペダルのブレーキスイッチS1やシフトレバーのポジションセンサS2、及びエンジン制御手段9等と電気的に接続されて成るクラッチ制御手段4と電気的に接続されている。なお、図7中符号S3は、車両におけるアクセルペダルのスロットル開度センサを示している。
そして、車両のエンジンE(駆動源)から車輪Dに至る動力伝達系の途中であってクラッチ手段3の第2クラッチ手段3bと車輪Dとの間には、無段変速機2が介装されたので、車両を前進させるクラッチとトルクコンバータ1の駆動伝達系を介さずエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達させるクラッチとを第2クラッチ手段3bにて兼用させることができる。なお、同図中符号19は、車両が具備するディファレンシャルギアを示している。また、符号S4はエンジンEの回転速度を検出するエンジン回転センサ、S5は第1駆動シャフト5の回転速度を検出するスピードセンサ、S6はクラッチ手段3(本実施形態においては第2クラッチ手段3b)の油圧を検出する油圧スイッチ、S7はセカンダリシャフトスピードセンサ、S8はカウンタシャフトスピードセンサを示している。
ここで、本実施形態に係るクラッチ制御手段4にバネ特性制御手段14が形成されており、当該バネ特性制御手段14による制御にて、油圧制御回路21を介してバネ特性切替手段としてのダンパクラッチ10が作動可能とされている。また、クラッチ制御手段4及びバネ特性制御手段14は、エンジン制御手段9(ECU)と電気的に接続されており、当該エンジン制御手段9にて把握される車両の走行状態を電気信号として受信し得るよう構成されている。しかして、バネ特性制御手段14は、受信した電気信号に基づき、車両の走行状態に応じてダンパクラッチ10を任意タイミングにて作動し得るものとされている。
油圧制御回路21は、図8に示すように、オイルポンプ27とオイルの供給対象(トルクコンバータ1、クラッチ手段3等)とを連結する油路やバルブ、当該バルブを開閉するソレノイドから主に構成されている。同図中、符号29は、ライン圧を調圧するレギュレータバルブ、符号25は、レギュレータバルブ29の制御圧を制御するリニアソレノイド(LSB)を示している。そして、リニアソレノイド24(LSA)により、Dレンジではクラッチ手段3用クラッチ圧を制御し、RレンジではRVS CLUTCH用クラッチ圧を制御するとともに、リニアソレノイド25(LSB)により、レギュレータバルブ29が調圧するライン圧を制御し得るようになっている。なお、同図中符号26は、蓄圧のためのアキュムレータを示している。また、符号28は、変速機のレンジ(P、R、N、D)に応じて供給路を切り替えるマニュアルバルブ、符号24は、クラッチ圧を制御するリニアソレノイド(LSA)を示している。
ここで、本実施形態においては、オイルポンプ27からトルクコンバータ1のオイルの流通経路途中に油圧バルブ30が接続されている。この油圧バルブ30は、ダンパクラッチ10(バネ特性切替手段)を任意に作動させて、ダンパ機構7のバネ特性を低バネレート状態と高バネレート状態との間で切り替え可能なものである。すなわち、バネ特性制御手段14の制御に基づき、油圧バルブ30が図10(b)の状態とされると、ダンパクラッチ10を離間位置として低バネレート状態とするとともに、当該油圧バルブ30が同図(a)の状態とされると、ダンパクラッチ10を接続位置として高バネレート状態とし得るのである。
また、バネ特性制御手段14は、図12に示すように、車両の走行状態(本実施形態においては、車速V及びスロットル開度TH)に応じた制御モード(モード1〜3)を参照可能な制御マップを予め保持している。かかる制御マップによれば、ダンパクラッチ10が非作動の状態をモード1、ダンパクラッチ10が滑り制御された状態をモード2、ダンパクラッチ10が作動した状態をモード3とするとともに、例えば車速が高速(V2)以上の場合、スロットル開度に関わらずモード3とする。また、車速が高速(V2)以下の場合において、スロットル開度が高開度(TH2)以上のときモード3、低開度(TH1)以上かつ高開度(TH2)以下のときモード2とするとともに、スロットル開度が全閉のとき、車速が低速(V1)以下でモード3、低速(V1)以上かつ高速(V2)以下でモード1とされる。
そして、図9に示すように、参照されたモードに従い、ソレノイド22(SHA)及びソレノイド23(SHB)を制御して任意のソレノイド(リニアソレノイド24(LSA)又はリニアソレノイド25(LSB))にソレノイド圧を供給して作動させ得るよう構成されている。同図中符号マル印はソレノイド圧が供給されてソレノイドを電気的にオンすることを示し、バツ印はソレノイド圧の供給が停止されてソレノイドを電気的にオフすることを示している。
次に、車両の走行状態に応じたダンパクラッチ10に対する制御内容(すなわち、バネ特性制御手段14の制御内容)を、図11に示すタイムチャートに基づき説明する。
先ず、エンジンの始動時においては、ダンパクラッチ10が接続位置に保持されており、高バネレート状態とされている。すなわち、エンジンが停止するとき、ダンパクラッチ10が接続位置に保持されて高バネレート状態とされており、当該高バネレート状態がエンジン始動時にも保持されているのである。
なお、エンジン停止時においては、オイルポンプ27が停止しており、ダンパクラッチ10が容量を持たない状態であるため、当該ダンパクラッチ10が接続位置であっても厳密には「高バネレート状態」ではなく「高バネレート状態と同一状態」とされている。すなわち、エンジン停止時、オイルポンプ27が停止した状態においても、アキュムレータ26の蓄圧によって油圧バルブ30に油圧が供給されており、ダンパクラッチ10の接続状態が保持されているのである。これにより、エンジン始動時、高バネレート状態とすべくダンパクラッチ10を接続状態に切り替える必要がなく、応答性を向上させることができる。
その後、アクセルペダル(スロットル)を緩やかに操作して車両を緩やかに加速させると、ダンパクラッチ10が離間位置に切り替えられ、低バネレート状態とされるとともに、その緩やかな加速後に略一定の速度(スロットル開度が所定より低い状態、かつ、低速走行)とされると、ダンパクラッチ10が離間位置にて保持され、低バネレート状態が維持されることとなる。
そして、アクセルペダルを急に操作して車両を所定より急加速させると、ダンパクラッチ10は、滑り制御が行われた後、接続位置に移動して高バネレート状態に切り替えられる。その急加速後に略一定の速度(スロットル開度が所定より高い状態、かつ、高速走行)とされると、ダンパクラッチ10が接続位置にて保持され、高バネレート状態が維持されることとなる。
しかるに、アクセルペダルの操作を止めて車両を緩やかに減速させると、所定速度までは、ダンパクラッチ10は、滑り制御が行われた後、離間位置に移動して低バネレートに切り替えられるとともに、所定速度に達すると、ダンパクラッチ10は、接続位置に移動して高バネレートに切り替えられる。本実施形態においては、車両が減速する過程においてエンジンEがアイドル状態よりも低い回転数で回転している走行状態のとき、低バネレート状態におけるエンジンEとの共振範囲(図12中、低速(V1)以下の車速時)では高バネレート状態に切り替えるとともに、高バネレート状態におけるエンジンEとの共振範囲(同図中、低速(V1)以上かつ高速(V2)以下の車速時)では低バネレート状態に切り替えるよう制御される。
次に、本実施形態におけるダンパクラッチ10の制御内容(すなわち、バネ特性制御手段の制御内容)を図13のフローチャートに基づいて説明する。
まず、車両が停車中であるか否かが判定され(S1)、停車中でないと判定された場合、S2に進み、第2クラッチ手段3bが作動しているか否か(すなわち、トルクコンバータ1を介さずエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達させる第2動力伝達系とされているか否か)が判定され、第2クラッチ手段3bが作動して第2動力伝達系とされていると判定されると、S3に進み、作動油が所定値より高温(作動のためのオイルが所定値より高い温度)か否かが判定される。
そして、S3にて作動油が所定値より高温であると判定されると、S4に進み、図12で示す制御マップが参照される。すなわち、車両の走行状態に応じてダンパクラッチ10の切り替えが行われることで、当該走行状態に応じて高バネレート状態と低バネレート状態とが切り替えられるのである。そして、制御マップの参照の結果、モード3に設定すべきか否かの判定(S5)、及びモード2に設定すべきか否かの判定(S6)が順次行われ、S6にてモード2に設定すべきと判定された場合、S7に進んでモード2の制御(すなわち、滑り制御)が行われる。
一方、S5において、制御マップの参照の結果、モード3に設定すべきと判定された場合、S12に進み、モード1から所定時間経過したか否かが判定された後、所定時間経過したと判定されると、S13に進み、モード3の設定に従ってダンパクラッチ10を作動させ(接続位置に移動)、高バネレート状態とする。また、S12にて、モード1から所定時間経過していない(すなわち、車両の走行状態が変化してから所定時間経過していない)と判定されると、S7に進んでモード2の制御(滑り制御)が行われる。
さらに、S6において、制御マップの参照の結果、モード2に設定すべきでないと判定されると、S9に進み、モード3から所定時間経過したか否かが判定された後、所定時間経過したと判定されると、S10に進み、モード1の設定に従ってダンパクラッチ10を非作動とし(離間位置に移動)、低バネレート状態とする。また、S9にて、モード3から所定時間経過していない(すなわち、車両の走行状態が変化してから所定時間経過していない)と判定されると、S7に進んでモード2の制御(滑り制御)が行われる。
なお、S2において、第2クラッチ手段3bが非作動とされて第1動力伝達系とされていると判定されると、制御マップの参照は行われず、S8に進んでモード1が設定された後、S9、S10のステップが順次行われる。同様に、S3において、作動油が所定値より低温であると判定されると、制御マップの参照は行われず、S11に進んでモード3が設定された後、S12、S13のステップが順次行われる。
次に、本実施形態における第2クラッチ手段3b(ロックアップクラッチ)の制御内容を図14のフローチャートに基づいて説明する。
まず、車両が停車中であるか否かが判定され(S1)、停車中でないと判定された場合、S2に進み、第2クラッチ手段3bにおける作動油が所定値より高温(作動のためのオイルが所定値より高い温度)か否かが判定される。そして、所定値より高温であると判定されると、LC用(第2クラッチ手段3b用)の制御マップ(例えば、車両の走行状態に応じた制御モードを参照可能なマップ)を参照し(S3)、当該制御マップの参照の結果、第2クラッチ手段3bを作動させる制御モードであると判定された場合、S5に進み、当該第2クラッチ手段3bを作動させる。
一方、S4において、制御マップの参照の結果、第2クラッチ手段3bを作動させない制御モードであると判定された場合、S6に進み、当該第2クラッチ手段3bを非作動とする。なお、S1において、エンジンが始動中又はアイドルストップ中であり車両が停車中であると判定された場合、或いはS2において、第2クラッチ手段3bにおける作動油が所定値より高温でないと判定された場合、LC用(第2クラッチ手段3b用)の制御マップを参照しないでS6に進み、当該第2クラッチ手段3bを非作動とする。
しかるに、上記の動力伝達装置に代えて、例えば図15に示すように、第1動力伝達系と第2動力伝達系とを切り替え得るクラッチ手段31(上記実施形態の第2クラッチ3bに相当)をトルクコンバータ1内に配設させて構成してもよい。この場合、トランスミッションA内において、第3クラッチ手段8と並行して別個のクラッチ手段32を無段変速機2の上流側に接続させ、前進と後退とを切り替え制御し得るよう構成されている。このように、第1動力伝達系と第2動力伝達系とを切り替え得るクラッチ手段31をトルクコンバータ1内に配設することにより、より効率よく第1動力伝達系と第2動力伝達系とを切り替えることができるとともに、トルクコンバータ1の外部の構成を簡素化することができる。
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係る動力伝達装置は、第1の実施形態と同様、自動車(車両)のエンジン(駆動源)による駆動力を車輪(駆動輪)に伝達又は遮断するためのものであり、図16〜18に示すように、トルクコンバータ1と、クラッチ手段3と、ダンパ機構33と、バネ特性切替手段としてのダンパクラッチ34と、バネ特性制御手段14とを主に有している。なお、図16は、本実施形態に係る動力伝達装置の主要部を表す縦断面図であり、図17は、同実施形態に係る動力伝達装置を模式化した模式図(概念図)を示すものである。また、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
本実施形態に係るダンパ機構33は、図17に示すように、第2動力伝達系の途中に配設されるとともに、トルク変動を減衰するためのバネ特性を有したダンパで構成されたもので、本実施形態においては、第1ダンパ33a及び第2ダンパ33bの2つのダンパと、バネ特性切替手段としてのダンパクラッチ34と、トルコンカバー13の内周面から内側に向かって突出形成された連結部33cとを具備している。
ここで、本実施形態においては、ダンパ機構33は、第1ダンパ33aを保持する保持部材35と、第2ダンパ33bを有するダンパクラッチ34とを有しており、保持部材35から成る動力伝達系と、ダンパクラッチ34から成る動力伝達系とが並列に接続されている。より具体的には、保持部材35は、第1ダンパ33aを介して連結部33cと連結された一端部35bと、第2駆動シャフト6の外周面とスプライン嵌合した他端部35cと、第2ダンパ33bを介してダンパクラッチ34と連結された連結部35dとを有している。
これにより、エンジンEの駆動力にて入力軸11が回転すると、カバー部材12、トルコンカバー13、保持部材35及び第2駆動シャフト6が回転し、無段変速機2にエンジンEの駆動トルクが伝達される(第2動力伝達系)。しかして、第2動力伝達系においては、ダンパ機構33と第2駆動シャフト6により、トルクコンバータ1を介さずにエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達することが可能とされるとともに、第1ダンパ33a及び第2ダンパ33bのバネ特性により、トルク変動を減衰することが可能とされている。なお、本発明における「トルクコンバータ1を介さずエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達させる第2動力伝達系」は、上記したトルコンカバー13、保持部材35及び第2駆動シャフト6が成す駆動力の伝達系を指すものである。
上記の如く、第1駆動シャフト5は、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介してエンジンEの駆動力で回転可能とされ、第1クラッチ手段3aと連結されるとともに、第2駆動シャフト6は、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介さずエンジンEの駆動力で直接回転可能とされ、第2クラッチ手段3bと連結されている。また、本実施形態においては、第1実施形態と同様、第1駆動シャフト5が円筒状部材とされるとともに、その内部に第2駆動シャフト6が回転自在に配設されており、これらの回転軸が同一となるよう構成されている。すなわち、当該第1駆動シャフト5と第2駆動シャフト6とは同心円状に形成されているのである。これにより、第1駆動シャフト5は、第2駆動シャフト6の外側にて回転自在とされるとともに、第2駆動シャフト6は、第1駆動シャフト5の内側で回転自在とされており、当該第1駆動シャフト5と第2駆動シャフト6とは、クラッチ手段3による選択的作動により、別個独立に回転可能とされる。
ここで、本実施形態に係るダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)は、外周縁部に摩擦材34aが形成されるとともに、連結部35dを介して保持部材35と連結された第2ダンパ33bが所定位置に保持されており、摩擦材34aがトルコンカバー13の内壁面に当接して接続された接続位置(図22(a)参照)と、当該摩擦材34aがトルコンカバー13の内壁面から離間した離間位置(同図(b)参照)との間で移動可能とされている。すなわち、ダンパクラッチ34は、図22に示すように、油圧バルブ30から供給された油圧が正面側に作用してα方向(同図(a)参照)に移動し、離間位置から接続位置に切替可能とされるとともに、当該油圧バルブ30から供給された油圧が背面側に作用してβ方向(同図(b)参照)に移動し、接続位置から離間位置に切替可能とされている。
より具体的には、油圧バルブ30は、スプリングspにて図22(b)中の矢印b方向に付勢されたピストン部材30aを有しており、通常時(ソレノイド22(SHA)の非作動時)には、同図に示すように、ダンパクラッチ34に供給される作動油が循環するとともに、その循環する作動油の油圧が当該ダンパクラッチ34の背面に対して作用して離間位置とされる。そして、ソレノイド22(SHA)から油圧バルブ30に作動油が供給されると、ピストン部材30aがスプリングspの付勢力に抗して図22(a)中の矢印a方向に移動し、ダンパクラッチ34の正面に対して油圧が作用して接続位置とされる。
そして、ダンパクラッチ34が接続位置にあるとき、摩擦材34aによる摩擦力にてトルコンカバー13から当該ダンパクラッチ34に駆動力が伝達されるので、その駆動力が第2ダンパ33b及び連結部35dを介して保持部材35に伝達されるとともに、ダンパクラッチが伝達しない残りの駆動力がトルコンカバー13から連結部33c及び第1ダンパ33aを介して保持部材35に伝達され、第2駆動シャフト6が回転することとなり、伝達されるトルクが変動した際、第1ダンパ33a及び第2ダンパ33bによって当該トルク変動を減衰し得るようになっている。
一方、ダンパクラッチ34が離間位置にあるとき、トルコンカバー13から連結部33c及び第1ダンパ33aを介して保持部材35に伝達され、第2駆動シャフト6が回転することとなり、伝達されるトルクが変動した際、専ら第1ダンパ33aによって当該トルク変動を減衰し得るようになっている。
しかして、図19に示すように、ダンパクラッチ34が離間位置にあるとき、第2動力伝達系に対して第1ダンパ33aのみを接続させることにより低バネレート状態(全体のバネ定数が第1ダンパ33aのバネ定数k1と同じ状態)とするとともに、ダンパクラッチ34が接続位置にあるとき、第2動力伝達系に対して第1ダンパ33a及び第2ダンパ33bを並列に接続させることにより高バネレート状態(第1ダンパ33aのバネ定数をk1及び第2ダンパ33bのバネ定数をk2とした場合、全体のバネ定数が(k1+k2)とされた状態)とすることができる。なお、図19のグラフにおける横軸は、第2駆動シャフト6に対するトルコンカバー13の捩り角度(すなわち、第1ダンパ33a及び第2ダンパ33bの圧縮方向の変位)を示している。
ここで、本実施形態においては、図18に示すように、第1ダンパ33aは、ダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)に対して外周方向に延長した位置までオーバーラップして配設されている。すなわち、本実施形態においては、第1ダンパ33aを有する動力伝達系と、第2ダンパ33b及びダンパクラッチ34を有する動力伝達系とが並列に接続されているので、高バネレート状態におけるダンパクラッチ34に付与されるトルクを低減させることができ、その分、ダンパクラッチ34を小型化(低容量化)することができる。しかして、ダンパクラッチ34を小型化して径方向の寸法を小さくすることができるので、そのスペース(ダンパクラッチ34の外周方向に延長した部位)に第1ダンパ33aをオーバーラップさせて配設させることができ、より径寸法が大きい第1ダンパ33aを用いることができるのである。
さらに、本実施形態においては、図18に示すように、ダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)を接続状態とする方向へ常時付勢する皿バネ36(付勢手段)を具備している。すなわち、皿バネ36は、一端が保持部材35に当接しつつ他端がダンパクラッチ34に当接して介装されることにより、摩擦材34aがトルコンカバー13の内壁面に当接する方向にダンパクラッチ34を付勢させているのである。なお、皿バネ36に代えて、他の汎用的な付勢手段(コイルスプリング等)としてもよい。これにより、ダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)の応答性をより向上させることができる。
またさらに、本実施形態においては、図18に示すように、トルクコンバータ1が有するタービンTの出力部材Taには、ダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)を作動させるための作動油が流通可能な流通孔Taaが形成されるとともに、第1ダンパ33aを保持する保持部材35には、ダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)を作動させるための作動油が流通可能な流通孔35aが形成されている。なお、保持部材35の流通孔35aは形成せず、出力部材Taの流通孔Taaのみ形成するようにしてもよい。これにより、ダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)の応答性を向上させることができる。
バネ特性制御手段14は、第1実施形態と同様、クラッチ制御手段4に形成されたもので、自動車(車両)の走行状態に応じてバネ特性切替手段を作動させ、当該走行状態に応じたバネ特性に切り替えさせ得るものである。すなわち、クラッチ制御手段4は、エンジン制御手段9(ECU)からの信号により自動車の走行状態を把握可能とされていることから、その走行状態に応じた信号によりダンパクラッチ34を作動させ、第2動力伝達系における所定部位(ダンパクラッチ34が配設された部位)を遮断又は接続させることにより、低バネレート状態(ダンパクラッチ34が所定部位を遮断して、第1ダンパ33aのみが接続した状態)と高バネレート状態(ダンパクラッチ34が所定部位を接続して、第1ダンパ33a及び第2ダンパ33bが並列に接続した状態)とを切替可能とされているのである。
具体的には、バネ特性切替手段14は、車両が減速する過程においてエンジンEがアイドル状態よりも低い回転数で回転している走行状態のとき、低バネレート状態におけるエンジンとの共振範囲では、ダンパクラッチ34を接続位置として高バネレート状態に切り替えるとともに、高バネレート状態におけるエンジンとの共振範囲では、ダンパクラッチ34を離間位置として低バネレート状態に切り替えるよう制御可能とされている。
かかる制御により、車両が減速する過程においてエンジンEがアイドル状態よりも低い回転数で回転している走行状態のときであっても、共振が生じてしまうのを確実に回避することができ、より適切に第2動力伝達系の状態を保持させることができる。特に、車両が減速する過程で、オルタネータ(交流発電機)等を使ってエネルギ回生が行われる車両においては、エンジンEがアイドル状態よりも低い回転数においても第2動力伝達系の状態を保持することができ、エンジンEの広い回転領域にてエネルギ回生を行わせることができる。
また、本実施形態に係るバネ特性切替手段14は、スロットル開度が所定より低い状態で車両の速度が略一定に保持された走行状態又は車両が所定より緩やかに加速する走行状態のとき、ダンパクラッチ34を離間位置として低バネレート状態とするよう制御可能とされている。これにより、スロットル開度が所定より低い状態で車両の速度が略一定に保持された走行状態又は車両が所定より緩やかに加速する走行状態のときであっても、こもり音が生じてしまうのを確実に回避することができ、より適切に第2動力伝達系の状態を保持させることができる。
さらに、本実施形態に係るバネ特性切替手段14は、車両が所定より急加速する走行状態のとき、ダンパクラッチ34を接続位置として高バネレート状態とするよう制御可能とされている。これにより、車両が所定より急加速する走行状態のときであっても、加速時又は減速時に車両がガクガクと振動を繰り返す現象(所謂しゃくり現象:jerk)が生じてしまうのを確実に回避することができ、より適切に第2動力伝達系の状態を保持させることができる。
またさらに、本実施形態に係るバネ特性切替手段14は、エンジンEが停止するとき、ダンパクラッチ34を接続状態として高バネレート状態とするとともに、エンジンの始動時に当該高バネレート状態が保持されるよう構成されている。これにより、エンジン始動時の第2動力伝達系の共振を確実に回避させることができる。すなわち、高バネレート状態の方が低バネレート状態よりもエンジン回転数が高い領域で共振が生じることから、エンジンの始動時に高バネレート状態とすることで、共振を回避することができるのである。
さらに、本実施形態に係るダンパクラッチ34は、第2動力伝達系における所定部位の遮断及び接続の切り替え過程(すなわち、ダンパクラッチ34がトルコンカバー13に対して離間する離間状態と当接して接続する接続状態との切り替え過程)でクラッチを滑らせる滑り制御が可能とされている。すなわち、ダンパクラッチ34の摩擦材34aのトルコンカバー13の内壁面に対する圧接力を調整して、当該摩擦材34aをトルコンカバー13に当接させつつ滑らせることにより、容量制御(動力伝達の容量を制御)を図り得るのである。
上記実施形態によれば、ダンパ機構33のバネ特性を任意に切り替え得るダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)と、車両の走行状態に応じてダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)を作動させ、当該走行状態に応じたバネ特性に切り替えさせ得るバネ特性制御手段14とを備えたので、より広いエンジンの回転領域において第2動力伝達系の状態を保持させることができ、燃費をより一層向上させることができる。
また、本実施形態に係るダンパ機構33は、第1ダンパ33a及び第2ダンパ33bの2つのダンパを有するとともに、ダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)にて当該第1ダンパ33a及び第2ダンパ33bを任意選択的に接続させることにより、バネ定数が低い低バネレート状態とバネ定数が高い高バネレート状態とを切り替えさせ得るので、走行状態に応じて、より適切かつ円滑にダンパ機構33のバネ特性を切り替えさせることができる。
さらに、本実施形態によれば、ダンパ機構33は、第1ダンパ33aを有する動力伝達系と、第2ダンパ33b及びダンパクラッチ34を有する動力伝達系とが並列に接続されるとともに、当該ダンパクラッチ34を接続状態とすることにより、低バネレート状態から高バネレート状態に切り替え得るので、高バネレート状態において第1ダンパ33aと第2ダンパ33bとの双方で受けるべきトルクを分担させることができる。したがって、高バネレート状態におけるダンパクラッチ34に付与されるトルクを低減させることができ、より小型のダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)を用いることができる。
またさらに、本実施形態においては、バネ特性切替手段が、バネ特性制御手段14からの信号により第2動力伝達系における所定部位を遮断又は接続させるダンパクラッチ34から成るので、より確実、かつ、円滑にダンパ機構33のバネ特性を切り替えることができる。また、バネ特性切替手段としてのダンパクラッチ34は、第2動力伝達系における所定部位の遮断及び接続の切り替え過程でクラッチを滑らせる滑り制御が可能とされたので、より滑らかにダンパ機構33のバネ特性を切り替えることができる。
さらに、バネ特性制御手段14は、第1実施形態と同様、車両の走行状態に応じた制御モードを参照可能な制御マップ(図12参照)を予め保持し、当該制御マップの制御モードに従ってダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)を制御し得るようになっている。これにより、より円滑かつ適切なダンパ機構33の切り替えを行わせることができる。特に、バネ特性制御手段14は、ダンパクラッチ34の作動油が所定値より高温のときに限り、制御マップを参照するよう構成されており、これにより、当該ダンパクラッチ34の作動油が所定値より低温であるとき(すなわち、ダンパクラッチ34の作動が円滑に行われない虞があるとき)、制御マップに従う制御を禁止することができる。
なお、本実施形態に係るダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)は、トルクコンバータ1内(すなわち、トルコンカバー13内)に配設されたので、より効率よくダンパ機構33のバネ特性を任意に切り替えることができるとともに、トルクコンバータ1の外部の構成を簡素化することができる。また、本実施形態においては、図17に示すように、エンジンEから車輪Dまでの動力伝達系の途中には、トルクコンバータ1と変速機(無段変速機2)を具備するトランスミッションAとが配設されるとともに、当該トランスミッションA内にクラッチ手段3が配設され、変速機が自動変速機から成り、及び自動変速機が無段変速機2から成るので、トルクコンバータ1と変速機を具備するトランスミッションとが配設され、変速機が自動変速機から成り、或いは自動変速機が無段変速機2から成る汎用的な車両に容易に適用することができる。
加えて、上記実施形態によれば、車両の状態に応じて第1クラッチ手段3a又は第2クラッチ手段3bを任意選択的に作動させて、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介してエンジンEの駆動力を車輪D(駆動輪)に伝達させ(第1動力伝達系)、又はトルクコンバータの駆動伝達系を介さずエンジンEの駆動力を車輪D(駆動輪)に伝達させ(第2動力伝達系)得るクラッチ制御手段4を備えたので、動力伝達装置の複雑化及び大型化を抑制し、且つ、トルクコンバータ1のトルク増幅機能により発進性能の向上を図るとともに、定常走行中における動力伝達効率を向上させることができる。
また、第1駆動シャフト5と第2駆動シャフト6とは同心円状に形成されたので、当該第1駆動シャフト5と第2駆動シャフト6とがそれぞれ延設されたもの(2本が併設されたもの)に比べ、動力伝達装置全体をより小型化することができる。さらに、第2駆動シャフト6は、トルク変動を減衰し得るダンパ機構33を介してエンジンEと連結されたので、第2クラッチ手段3bに伝達されるエンジンEの振動を減衰させることができる。
ところで、本実施形態における無段変速機2は、第1実施形態と同様、CVT(Continuously Variable Transmission)と称されるものとされている。本実施形態においては、図20に示すように、車両の駆動源(エンジンE)から車輪D(駆動輪)に至る動力伝達系の途中であってクラッチ手段3の第2クラッチ手段3bと車輪D(駆動輪)との間に無段変速機2を介装させたものとされる。
かかる無段変速機2は、2つのプーリQ1、Q2と、その間に懸架されたベルトVとを有しており、油圧制御回路21によりプーリQ1、Q2の可動シーブを動作させて互いに独立してベルトV懸架部の径を変化させ、所望の変速を行わせるものである。かかる無段変速機2は、オイルポンプ27(図21参照)からオイル(作動油)が供給されて当該オイルの油圧によりプーリ(Q1、Q2)の可動シーブを作動させ得るよう構成されている。一方、油圧制御回路21は、車両におけるブレーキペダルのブレーキスイッチS1やシフトレバーのポジションセンサS2、及びエンジン制御手段9等と電気的に接続されて成るクラッチ制御手段4と電気的に接続されている。なお、図20中符号S3は、車両におけるアクセルペダルのスロットル開度センサを示している。
そして、車両のエンジンE(駆動源)から車輪Dに至る動力伝達系の途中であってクラッチ手段3の第2クラッチ手段3bと車輪Dとの間には、無段変速機2が介装されたので、車両を前進させるクラッチとトルクコンバータ1の駆動伝達系を介さずエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達させるクラッチとを第2クラッチ手段3bにて兼用させることができる。なお、同図中符号19は、車両が具備するディファレンシャルギアを示している。また、符号S4はエンジンEの回転速度を検出するエンジン回転センサ、S5は第1駆動シャフト5の回転速度を検出するスピードセンサ、S6はクラッチ手段3(本実施形態においては第2クラッチ手段3b)の油圧を検出する油圧スイッチ、S7はセカンダリシャフトスピードセンサ、S8はカウンタシャフトスピードセンサを示している。
ここで、本実施形態に係るクラッチ制御手段4にバネ特性制御手段14が形成されており、当該バネ特性制御手段14による制御にて、油圧制御回路21を介してバネ特性切替手段としてのダンパクラッチ34が作動可能とされている。また、クラッチ制御手段4及びバネ特性制御手段14は、エンジン制御手段9(ECU)と電気的に接続されており、当該エンジン制御手段9にて把握される車両の走行状態を電気信号として受信し得るよう構成されている。しかして、バネ特性制御手段14は、受信した電気信号に基づき、車両の走行状態に応じてダンパクラッチ34を任意タイミングにて作動し得るものとされている。
油圧制御回路21は、図21に示すように、オイルポンプ27とオイルの供給対象(トルクコンバータ1、クラッチ手段3等)とを連結する油路やバルブ、当該バルブを開閉するソレノイドから主に構成されている。同図中、符号29は、ライン圧を調圧するレギュレータバルブ、符号25は、レギュレータバルブ29の制御圧を制御するリニアソレノイド(LSB)を示している。そして、リニアソレノイド24(LSA)により、Dレンジではクラッチ手段3用クラッチ圧を制御し、RレンジではRVS CLUTCH用クラッチ圧を制御するとともに、リニアソレノイド25(LSB)により、レギュレータバルブ29が調圧するライン圧を制御し得るようになっている。なお、同図中符号26は、蓄圧のためのアキュムレータを示している。また、符号28は、変速機のレンジ(P、R、N、D)に応じて供給路を切り替えるマニュアルバルブ、符号24は、クラッチ圧を制御するリニアソレノイド(LSA)を示している。
ここで、本実施形態においては、オイルポンプ27からトルクコンバータ1のオイルの流通経路途中に油圧バルブ30が接続されている。この油圧バルブ30は、ダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)を任意に作動させて、ダンパ機構33のバネ特性を低バネレート状態と高バネレート状態との間で切り替え可能なものである。すなわち、バネ特性制御手段14の制御に基づき、油圧バルブ30が図22(b)の状態とされると、ダンパクラッチ34を離間位置として低バネレート状態とするとともに、当該油圧バルブ30が同図(a)の状態とされると、ダンパクラッチ34を接続位置として高バネレート状態とし得るのである。
また、バネ特性制御手段14は、第1実施形態と同様、図12に示すように、車両の走行状態(本実施形態においては、車速V及びスロットル開度TH)に応じた制御モード(モード1〜3)を参照可能な制御マップを予め保持している。かかる制御マップによれば、ダンパクラッチ34が非作動の状態をモード1、ダンパクラッチ34が滑り制御された状態をモード2、ダンパクラッチ34が作動した状態をモード3とするとともに、例えば車速が高速(V2)以上の場合、スロットル開度に関わらずモード3とする。また、車速が高速(V2)以下の場合において、スロットル開度が高開度(TH2)以上のときモード3、低開度(TH1)以上かつ高開度(TH2)以下のときモード2とするとともに、スロットル開度が全閉のとき、車速が低速(V1)以下でモード3、低速(V1)以上かつ高速(V2)以下でモード1とされる。そして、図9に示すように、参照されたモードに従い、ソレノイド22(SHA)及びソレノイド23(SHB)を制御して任意のソレノイド(リニアソレノイド24(LSA)又はリニアソレノイド25(LSB))にソレノイド圧を供給して作動させ得るよう構成されている。
次に、車両の走行状態に応じたダンパクラッチ34に対する制御内容(すなわち、バネ特性制御手段14の制御内容)を、図23に示すタイムチャートに基づき説明する。
先ず、エンジンの始動時においては、ダンパクラッチ34が接続位置に保持されており、高バネレート状態とされている。すなわち、エンジンが停止するとき、ダンパクラッチ34が接続位置に保持されて高バネレート状態とされており、当該高バネレート状態がエンジン始動時にも保持されているのである。
なお、エンジン停止時においては、オイルポンプ27が停止しており、ダンパクラッチ34が容量を持たない状態であるため、当該ダンパクラッチ34が接続位置であっても厳密には「高バネレート状態」ではなく「高バネレート状態と同一状態」とされている。すなわち、エンジン停止時、オイルポンプ27が停止した状態においても、アキュムレータ26の蓄圧によって油圧バルブ30に油圧が供給されており、さらに皿バネ36の付勢力が付与されていることから、ダンパクラッチ34の接続状態が保持されているのである。これにより、エンジン始動時、高バネレート状態とすべくダンパクラッチ34を接続状態に切り替える必要がなく、応答性を向上させることができる。
その後、アクセルペダル(スロットル)を緩やかに操作して車両を緩やかに加速させると、ダンパクラッチ34が離間位置に切り替えられ、低バネレート状態とされるとともに、その緩やかな加速後に略一定の速度(スロットル開度が所定より低い状態、かつ、低速走行)とされると、ダンパクラッチ34が離間位置にて保持され、低バネレート状態が維持されることとなる。
そして、アクセルペダルを急に操作して車両を所定より急加速させると、フューエルカット等によってエンジンEのトルクダウン制御が行われるとともに、ダンパクラッチ34は、滑り制御が行われた後、接続位置に移動して高バネレート状態に切り替えられる。すなわち、本実施形態においては、エンジンEのトルクダウン制御が行われたことを条件として、ダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)を接続状態とすることにより、低バネレート状態から高バネレート状態に切り替えるよう構成されているのである。
このように、エンジンEのトルクダウン制御が行われたことを条件として、ダンパクラッチ34(バネ特性切替手段)を接続状態とすれば、第1ダンパ33aに付与されているトルクを一時的に低減させることができ、これにより第1ダンパ33aが作動した状態でダンパクラッチ34が接続状態となってしまうのを回避することができる。したがって、高バネレート状態における第1ダンパ33aによるトルク変動の減衰を確実に行わせることができる。また、本実施形態においては、低バネレート状態から高バネレート状態への切り替えは、トルクダウン制御が所定時間行われたことを条件としている。これにより、所定時間を短時間とすることで、切り替え時のトルク抜けによる空走感を低減させることができる。
その急加速後に略一定の速度(スロットル開度が所定より高い状態、かつ、高速走行)とされると、ダンパクラッチ34が接続位置にて保持され、高バネレート状態が維持されることとなる。しかるに、アクセルペダルの操作を止めて車両を緩やかに減速させると、所定速度までは、ダンパクラッチ34は、滑り制御が行われた後、離間位置に移動して低バネレートに切り替えられるとともに、所定速度に達すると、ダンパクラッチ34は、接続位置に移動して高バネレートに切り替えられる。
本実施形態においては、車両が減速する過程においてエンジンEがアイドル状態よりも低い回転数で回転している走行状態のとき、低バネレート状態におけるエンジンEとの共振範囲(図12中、低速(V1)以下の車速時)では高バネレート状態に切り替えるとともに、高バネレート状態におけるエンジンEとの共振範囲(同図中、低速(V1)以上かつ高速(V2)以下の車速時)では低バネレート状態に切り替えるよう制御される。しかるに、エンジンEが停止する直前であって、低バネレート状態から高バネレート状態に切り替えられる際には、エンジンEの電動スロットル開け制御やバルブリフトアップ制御等によって、(減速時における)トルクダウン制御が行われるよう構成されている。
次に、本実施形態におけるダンパクラッチ34の制御内容(すなわち、バネ特性制御手段の制御内容)を図24のフローチャートに基づいて説明する。
まず、車両が停車中であるか否かが判定され(S1)、停車中でないと判定された場合、S2に進み、第2クラッチ手段3bが作動しているか否か(すなわち、トルクコンバータ1を介さずエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達させる第2動力伝達系とされているか否か)が判定され、第2クラッチ手段3bが作動して第2動力伝達系とされていると判定されると、S3に進み、作動油が所定値より高温(作動のためのオイルが所定値より高い温度)か否かが判定される。
そして、S3にて作動油が所定値より高温であると判定されると、S4に進み、図12で示す制御マップが参照される。すなわち、車両の走行状態に応じてダンパクラッチ34の切り替えが行われることで、当該走行状態に応じて高バネレート状態と低バネレート状態とが切り替えられるのである。そして、制御マップの参照の結果、モード3に設定すべきか否かの判定(S5)、及びモード2に設定すべきか否かの判定(S6)が順次行われ、S6にてモード2に設定すべきと判定された場合、S7にて、モード1から所定時間経過した(すなわち必要トルクダウン時間経過した)か否かが判定され、所定時間経過していないと判定された場合は、S9にてエンジンEのトルクダウン制御を行った後、S10に進んでモード2の制御(すなわち、滑り制御)が行われる。また、S7において、モード1から所定時間経過したと判定された場合は、S8に進んでエンジンEのトルクダウン制御を終了させた後、S10に進んでモード2の制御(すなわち、滑り制御)が行われる。
一方、S5において、制御マップの参照の結果、モード3に設定すべきと判定された場合、S16に進み、モード1から所定時間経過したか否かが判定された後、所定時間経過したと判定されると、S17にてエンジンEのトルクダウン制御を終了させた後、S18に進み、モード3の設定に従ってダンパクラッチ34を作動させ(接続位置に移動)、高バネレート状態とする。また、S16にて、モード1から所定時間経過していない(すなわち、車両の走行状態が変化してから所定時間経過していない)と判定されると、S7〜S9にてエンジンEのトルクダウン制御を行った後、S10に進んでモード2の制御(すなわち、滑り制御)が行われる。
さらに、S6において、制御マップの参照の結果、モード2に設定すべきでないと判定されると、S12にてエンジンEのトルクダウン制御を終了させた後、S13に進み、モード3から所定時間経過したか否かが判定される。その後、S13にてモード3から所定時間経過したと判定されると、S14に進み、モード1の設定に従ってダンパクラッチ34を非作動とし(離間位置に移動)、低バネレート状態とする。また、S13にて、モード3から所定時間経過していない(すなわち、車両の走行状態が変化してから所定時間経過していない)と判定されると、S10に進んでモード2の制御(滑り制御)が行われる。
なお、S2において、第2クラッチ手段3bが非作動とされて第1動力伝達系とされていると判定されると、制御マップの参照は行われず、S11に進んでモード1が設定された後、S12〜S14のステップが順次行われる。同様に、S3において、作動油が所定値より低温であると判定されると、制御マップの参照は行われず、S15に進んでモード3が設定された後、S16〜S18のステップが順次行われる。
しかるに、上記の動力伝達装置に代えて、例えば図25に示すように、第1動力伝達系と第2動力伝達系とを切り替え得るクラッチ手段37(上記実施形態の第2クラッチ3bに相当)をトルクコンバータ1内に配設させて構成してもよい。この場合、トランスミッションA内において、第3クラッチ手段8と並行して別個のクラッチ手段38を無段変速機2の上流側に接続させ、前進と後退とを切り替え制御し得るよう構成されている。このように、第1動力伝達系と第2動力伝達系とを切り替え得るクラッチ手段37をトルクコンバータ1内に配設することにより、より効率よく第1動力伝達系と第2動力伝達系とを切り替えることができるとともに、トルクコンバータ1の外部の構成を簡素化することができる。
上記第1実施形態及び第2実施形態に係る動力伝達装置によれば、ダンパ機構のバネ特性を任意に切り替え得るバネ特性切替手段(ダンパクラッチ10、34)と、車両の走行状態に応じてバネ特性切替手段を作動させ、当該走行状態に応じたバネ特性に切り替えさせ得るバネ特性制御手段14とを備えたので、トルク変動を十分に減衰させることができるとともに、燃費をより一層向上させることができる。
加えて、上記第1実施形態及び第2実施形態に係る動力伝達装置によれば、車両に搭載されてトルク増幅機能を有するトルクコンバータ1と、トルクコンバータ1を介してエンジンEの駆動力を車輪に伝達させる第1動力伝達系と、トルクコンバータ1を介さずエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達させる第2動力伝達系とを切り替え得るクラッチ手段とを具備し、ダンパ機構(7、33)は、当該第2動力伝達系の途中に配設されたので、より広いエンジンの回転領域において第2動力伝達系の状態を保持させることができ、トルク変動を十分に減衰させることができるとともに、燃費をより一層向上させることができる。
参考例として、クラッチ手段は、トルクコンバータ1を介してエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達させる第1動力伝達系と、トルクコンバータ1を介さずエンジンEの駆動力を車輪Dに伝達させる第2動力伝達系とを切り替え得るものではなく、例えば図26に示すように、エンジンEの動力伝達系の途中に配設された前進用クラッチ38から成るものが考えられる。なお、同図中符号39は、エンジンEの動力伝達系の途中に配設された後進用クラッチ、符号34は、ダンパクラッチ、符号33は、ダンパクラッチ34等を具備したダンパ機構をそれぞれ示している。かかる参考例としての動力伝達装置によれば、トルクコンバータ1を具備しない車両に対しても適用させることができる。
以上、本実施形態(第1の実施形態及び第2の実施形態)について説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、本実施形態においては、ダンパ機構が第1ダンパ(7a、33a)及び第2ダンパ(7b、33b)の2つのダンパを有するものとされ、これらの接続をバネ特性切替手段としてのダンパクラッチ10、34にて切り替え、低バネレート状態と高バネレート状態とで切り替え可能とされているが、ダンパ機構が3つ以上のダンパを有し、それらを切り替えて車両の走行状態に応じた複数のバネレート状態に切り替えるようにしてもよい。なお、複数のダンパ(本実施形態においては、第1ダンパ(7a、33a)及び第2ダンパ(7b、33b))は、互いに異なるバネ定数のものであってもよく、或いは互いに同一のバネ定数のものであり、その組み合わせにより低バネレート状態及び高バネレート状態とされるものであってもよい。