JP2017209104A - フィブロイン様タンパク質の製造法 - Google Patents

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健 長彦
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Abstract

【課題】フィブロイン様タンパク質の製造法を提供する。【解決手段】フィブロイン様タンパク質をコードする遺伝子を有し、且つ、特定のtRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の発現が増大するように改変されているエシェリヒア・コリ等の細菌を培地で培養すること、およびフィブロイン様タンパク質を採取することにより、フィブロイン様タンパク質を製造する。【選択図】なし

Description

本発明は、エシェリヒア・コリ等の細菌を利用した異種発現によるフィブロイン様タンパク質の製造法に関する。
フィブロインは、クモの糸やカイコの糸を構成する繊維状タンパク質である。クモの糸は、鋼鉄の4倍という高い強度と炭素繊維やアラミド繊維を凌ぐ高い靱性を有し、且つ、伸縮性や耐熱性も兼ね備える材料である。そのため、その構成成分であるフィブロインまたはそれに準ずる構造を有するタンパク質(以下、総称して「フィブロイン様タンパク質」ともいう)の大量生産が望まれている。
フィブロイン様タンパク質の生産については、エシェリヒア・コリを利用した異種発現の報告がある(特許文献1、2)。また、特に、tRNA遺伝子が導入されたエシェリヒア・コリを利用したフィブロイン様タンパク質の異種発現の報告がある(特許文献3、4、非特許文献1)。
WO2012/165476 WO2006/008163 WO2014/052975 US2011-0244515
Xiao-Xia Xia, et. al., Native-sized recombinant spider silk protein produced in metabolically engineered Escherichia coli results in a strong fiber. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. Aug 26;107(32):14059-63. Epub 2010 Jul 26.
本発明は、効率的なフィブロイン様タンパク質の製造法を提供することを課題とする。
本願発明者らは、鋭意検討の結果、特定のtRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の発現が増大するように改変されたエシェリヒア・コリを宿主としてフィブロイン様タンパク質を発現することにより、フィブロイン様タンパク質の生産が向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下のとおり例示できる。
[1]
フィブロイン様タンパク質をコードする遺伝子を有する細菌を培地で培養すること、および
フィブロイン様タンパク質を採取すること、
を含む、フィブロイン様タンパク質の製造方法であって、
前記細菌が、非改変株と比較して、tRNA(Gly)遺伝子、tRNA(Gln)遺伝子、tRNA(Ala)遺
伝子、tRNA(Pro)遺伝子、グリシルtRNA合成酵素遺伝子、グルタミニルtRNA合成酵素遺伝
子、アラニルtRNA合成酵素遺伝子、およびプロリルtRNA合成酵素遺伝子の発現が増大するように改変されている、方法。
[2]
前記tRNA(Gly)遺伝子が、glyV、glyX、glyY、glyT、glyU、およびglyW遺伝子から選択
される1種またはそれ以上の遺伝子である、前記方法。
[3]
前記tRNA(Gln)遺伝子が、glnU、glnW、glnV、およびglnX遺伝子から選択される1種ま
たはそれ以上の遺伝子である、前記方法。
[4]
前記tRNA(Ala)遺伝子が、alaU、alaV、alaW、alaX、およびalaT遺伝子から選択される
1種またはそれ以上の遺伝子である、前記方法。
[5]
前記tRNA(Pro)遺伝子が、proK、proL、およびproM遺伝子から選択される1種またはそ
れ以上の遺伝子である、前記方法。
[6]
前記グリシルtRNA合成酵素遺伝子が、glyQ遺伝子およびglyS遺伝子の一方または両方である、前記方法。
[7]
前記グルタミニルtRNA合成酵素遺伝子が、glnS遺伝子である、前記方法。
[8]
前記アラニルtRNA合成酵素遺伝子が、alaS遺伝子である、前記方法。
[9]
前記プロリルtRNA合成酵素遺伝子が、proS遺伝子である、前記方法。
[10]
前記glyV、glyX、glyY、およびglyW遺伝子が、それぞれ、配列番号19に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号19に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Gly)の機能を有するRNAをコードするDNAであり;
前記glyT遺伝子が、配列番号20に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号20に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Gly)の機能
を有するRNAをコードするDNAであり;
前記glyU遺伝子が、配列番号21に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号21に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Gly)の機能
を有するRNAをコードするDNAである、前記方法。
[11]
前記glnUおよびglnW遺伝子が、それぞれ、配列番号22に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号22に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Gln)の機能を有するRNAをコードするDNAであり;
前記glnVおよびglnX遺伝子が、それぞれ、配列番号23に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号23に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Gln)の機能を有するRNAをコードするDNAである、前記方法。
[12]
前記alaU、alaV、およびalaT遺伝子が、それぞれ、配列番号24に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号24に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Ala)の機能を有するRNAをコードするDNAであり;
前記alaWおよびalaX遺伝子が、それぞれ、配列番号25に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号25に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Ala)の機能を有するRNAをコードするDNAである、前記方法。
[13]
前記proK遺伝子が、配列番号26に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号26に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Pro)の機能
を有するRNAをコードするDNAであり;
前記proL遺伝子が、配列番号27に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号27に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Pro)の機能
を有するRNAをコードするDNAであり;
前記proM遺伝子が、配列番号28に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号28に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Pro)の機能
を有するRNAをコードするDNAである、前記方法。
[14]
前記glyQ遺伝子が、配列番号30に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであるか、配列番号30に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、グリシルtRNA合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAであり;
前記glyS遺伝子が、配列番号32に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであるか、配列番号32に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、グリシルtRNA合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記方法。
[15]
前記glnS遺伝子が、配列番号34に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであるか、配列番号34に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、グルタミニルtRNA合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記方法。
[16]
前記alaS遺伝子が、配列番号36に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであるか、配列番号36に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、アラニルtRNA合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記方法。
[17]
前記proS遺伝子が、配列番号38に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであるか、配列番号38に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、プロリルtRNA合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記方法。
[18]
少なくともglyV、glyT、glyU、glnU、glnV、alaU、alaW、proK、proL、glyQ、glyS、glnS、alaS、およびproS遺伝子の発現が増大している、前記方法。
[19]
前記各遺伝子の発現が、該遺伝子のコピー数を高めること、及び/又は該遺伝子の発現調節配列を改変することによって増大した、前記方法。
[20]
前記細菌が、エシェリヒア・コリである、前記方法。
[21]
前記フィブロイン様タンパク質が、細胞接着配列を含む、前記方法。
[22]
前記フィブロイン様タンパク質が、下記のタンパク質である、前記方法:
繰り返し構造と細胞接着配列を含むタンパク質であって、
前記繰り返し構造が、繰り返し単位の3回〜15回の繰り返しからなり、
各繰り返し単位が、Alaリッチ部位とAla非リッチ部位が連結してなり、
各Alaリッチ部位が、8残基〜54残基のアミノ酸配列からなり、
各Alaリッチ部位におけるAla残基の比率が、30%以上であり、
各Alaリッチ部位が、同部位中のいずれの連続する4アミノ酸残基中にも少なくとも1個のAla残基を含み、
各Ala非リッチ部位が、4残基以上のアミノ酸配列からなり、
各Ala非リッチ部位におけるAla残基の比率が、20%以下であり、
前記細胞接着配列が、前記繰り返し構造を構成する繰り返し単位から選択される1つまたはそれ以上の繰り返し単位中に含まれており、
各細胞接着配列が、Arg−Gly−Aspを含む、3残基〜18残基のアミノ酸配列からなる、タンパク質。
本発明により、フィブロイン様タンパク質を効率的に製造できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>フィブロイン様タンパク質
本発明において、「フィブロイン様タンパク質」とは、フィブロインおよびそれに準ずる構造を有するタンパク質の総称である。
「フィブロイン」とは、クモの糸やカイコの糸を構成する繊維状タンパク質である。すなわち、フィブロインとしては、クモのフィブロインやカイコのフィブロインが挙げられる。クモの種類、カイコの種類、糸の種類は、特に制限されない。クモとしては、ニワオニグモ(Araneus diadematus)やアメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)が挙げられる。クモとしては、他にも、Araneus bicentenarius、Argiope amoena、Argiope aurantia、Argiope trifasciata、Cyrtophora moluccensis、Dolomedes tenebrosus、Euprosthenops australis、Gasteracantha mammosa、Latrodectus geometricus、Latrodectus hesperus、Macrothele holsti、Nephila pilipes、Nephila madagascariensis、Nephila senegalensis、Octonoba varians、Psechrus sinensis、Tetragnatha kauaiensis、Tetragnatha versicolorが挙げられる。クモのフィブロインとしては、大瓶状腺で産生するしおり糸、枠糸、縦糸のタンパク質(大瓶状腺タンパク質)、小瓶状腺で産生する足場糸のタンパク質(小瓶状腺タンパク質)、鞭状腺で産生する横糸のタンパク質(鞭状腺タンパク質)が挙げられる。クモのフィブロインとして、具体的には、例えば、ニワオニグモの大瓶状腺タンパク質ADF3およびADF4や、アメリカジョロウグモの大瓶状腺タンパク質MaSp1およ
びMaSp2が挙げられる。カイコとしては、家蚕(Bombyx mori)やエリ蚕(Samia cynthia
)が挙げられる。これらフィブロインのアミノ酸配列、及びこれらフィブロインをコードする遺伝子(「フィブロイン遺伝子」ともいう)の塩基配列は、例えば、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等の公用データベースから取得できる。
「フィブロインに準ずる構造を有するタンパク質」とは、フィブロインが有する反復配列と同様の配列を有するタンパク質をいう。「フィブロインが有する反復配列と同様の配列」とは、実際にフィブロインが有する配列であってもよく、それと類似する配列であってもよい。フィブロインが有する反復配列と同様の配列としては、本発明において規定される「繰り返し構造」が挙げられる。フィブロインに準ずる構造を有するタンパク質としては、WO2012/165476に記載の大吐糸管しおり糸タンパク質に由来するポリペプチドや、WO2006/008163に記載の組換えスパイダーシルクタンパク質が挙げられる。また、フィブロインに準ずる構造を有するタンパク質としては、実施例で用いたADF3タンパク質も挙げられる。実施例で用いたADF3遺伝子の塩基配列を配列番号1に、同遺伝子がコードするADF3タンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。なお、配列番号1の7位〜1989位の塩基配列が、配列番号2に示すアミノ酸配列をコードする。フィブロインに準ずる構造を有するタンパク質は、繊維状タンパク質であってもよく、なくてもよい。
「繊維状タンパク質」とは、所定の条件下で繊維状の形態を取るタンパク質をいう。す
なわち、繊維状タンパク質は、繊維状の形態で発現するタンパク質であってもよく、発現時には繊維状の形態ではないが繊維状の形態に加工可能なタンパク質であってもよい。繊維状タンパク質は、例えば、封入体として発現し、その後、適当な手法により繊維状の形態に加工可能なタンパク質であってもよい。タンパク質を繊維状の形態に加工する手法としては、例えば、WO2012/165476に記載の方法が挙げられる。
すなわち、フィブロイン様タンパク質は、例えば、上記データベースや文献に開示されたフィブロイン様タンパク質のアミノ酸配列または配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。また、フィブロイン様タンパク質は、例えば、それらのアミノ酸配列の一部を有するタンパク質であってもよい。アミノ酸配列の一部としては、フィブロインが有する反復配列と同様の配列を有する部分が挙げられる。アミノ酸配列の一部として、具体的には、例えば、配列番号2の25位〜610位のアミノ酸配列や53位〜536位のアミノ酸配列が挙げられる。同様に、フィブロイン様タンパク質をコードする遺伝子(「フィブロイン様タンパク質遺伝子」ともいう)は、例えば、上記データベースに開示されたフィブロイン遺伝子の塩基配列または配列番号1の7位〜1989位の塩基配列を有する遺伝子であってよい。また、フィブロイン様タンパク質遺伝子は、例えば、それらの塩基配列の一部を有する遺伝子であってもよい。塩基配列の一部としては、フィブロインが有する反復配列と同様の配列を有するアミノ酸配列をコードする部分が挙げられる。なお、「(アミノ酸または塩基)配列を有する」という表現は、当該「(アミノ酸または塩基)配列を含む」場合および当該「(アミノ酸または塩基)配列からなる」場合を包含する。
フィブロイン様タンパク質は、元の機能が維持されている限り、上記例示したフィブロイン様タンパク質(すなわち、上記例示したフィブロインまたはそれに準ずる構造を有するタンパク質)のバリアントであってもよい。同様に、フィブロイン様タンパク質遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記例示したフィブロイン様タンパク質遺伝子(すなわち、上記例示したフィブロインまたはそれに準ずる構造を有するタンパク質をコードする遺伝子)のバリアントであってもよい。なお、このような元の機能が維持されたバリアントを「保存的バリアント」という場合がある。保存的バリアントとしては、例えば、上記例示したフィブロイン様タンパク質やそれをコードする遺伝子のホモログや人為的な改変体が挙げられる。
「元の機能が維持されている」とは、遺伝子やタンパク質のバリアントが、元の遺伝子やタンパク質の機能(活性や性質)に対応する機能(活性や性質)を有することをいう。すなわち、「元の機能が維持されている」とは、フィブロイン様タンパク質にあっては、例えば、タンパク質のバリアントが、繊維状タンパク質であることであってよい。また、「元の機能が維持されている」とは、フィブロイン様タンパク質にあっては、例えば、タンパク質のバリアントが、細胞接着配列を含む場合に幹細胞等の細胞に対する足場機能を示すことであってもよい。また、「元の機能が維持されている」とは、フィブロイン様タンパク質遺伝子にあっては、遺伝子のバリアントが、元の機能が維持されたタンパク質(例えば繊維状タンパク質や細胞接着配列を含む場合に幹細胞等の細胞に対する足場機能を示すタンパク質)をコードすることをいう。
フィブロイン様タンパク質のホモログとしては、例えば、上記フィブロイン様タンパク質のアミノ酸配列を問い合わせ配列として用いたBLAST検索やFASTA検索によって公開データベースから取得されるタンパク質が挙げられる。また、上記フィブロイン様タンパク質遺伝子のホモログは、例えば、各種生物の染色体を鋳型にして、上記フィブロイン様タンパク質遺伝子の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより取得することができる。
以下、フィブロイン様タンパク質およびフィブロイン様タンパク質遺伝子の保存的バリアントについて例示する。
フィブロイン様タンパク質は、元の機能が維持されている限り、上記フィブロイン様タンパク質のアミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。なお上記「1若しくは数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には、例えば、1〜50個、1〜40個、1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個を意味する。
上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、および/または付加は、タンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸
性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln
、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、および/または付加には、タンパク質が由来する生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
また、フィブロイン様タンパク質は、元の機能が維持されている限り、上記フィブロイン様タンパク質のアミノ酸配列全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。尚、本明細書において、「相同性」(homology)は、「同一性」(identity)を指す。
また、フィブロイン様タンパク質は、元の機能が維持されている限り、上記フィブロイン様タンパク質遺伝子の塩基配列から調製され得るプローブ、例えば同塩基配列の全体または一部に対する相補配列、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコ
ードされるタンパク質であってもよい。そのようなプローブは、例えば、同塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、同塩基配列を含むDNA断片を鋳型
とするPCRによって作製することができる。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる
特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ま
しくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1
% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは68℃、0.1×SSC、0.1%
SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2〜3回洗浄する条件を挙げることができる。また、例えば、プローブとして、300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合
には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件としては、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げ
られる。
2つの配列間の配列同一性のパーセンテージは、例えば、数学的アルゴリズムを用いて決定できる。このような数学的アルゴリズムの限定されない例としては、Myers and Miller (1988) CABIOS 4:11-17のアルゴリズム、Smith et al (1981) Adv. Appl. Math. 2:482の局所ホモロジーアルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443-453のホモロジーアライメントアルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444-2448の類似性を検索する方法、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877に記載されているような、改良された、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264のアルゴリズムが挙げられる。
これらの数学的アルゴリズムに基づくプログラムを利用して、配列同一性を決定するための配列比較(アラインメント)を行うことができる。プログラムは、適宜、コンピュータにより実行することができる。このようなプログラムとしては、特に限定されないが、PC/GeneプログラムのCLUSTAL(Intelligenetics, Mountain View, Calif.から入手可能)、ALIGNプログラム(Version 2.0)、並びにWisconsin Genetics Software Package, Version 8(Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Drive, Madison, Wis., USAから入手可能)のGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、及びTFASTAが挙げられる。これらのプログラムを用いたアライメントは、例えば、初期パラメーターを用いて行うことができる。CLUSTALプログラムについては、Higgins et al. (1988) Gene 73:237-244、Higgins et al. (1989) CABIOS 5:151-153、Corpet et al. (1988) Nucleic Acids Res. 16:10881-90、Huang et al. (1992) CABIOS 8:155-65、及びPearson et al. (1994) Meth. Mol. Biol. 24:307-331によく記載されている。
対象のタンパク質をコードするヌクレオチド配列と相同性があるヌクレオチド配列を得るために、具体的には、例えば、BLASTヌクレオチド検索を、BLASTNプログラム、スコア
=100、ワード長=12にて行うことができる。対象のタンパク質と相同性があるアミノ酸
配列を得るために、具体的には、例えば、BLASTタンパク質検索を、BLASTXプログラム、
スコア=50、ワード長=3にて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索やBLASTタンパ
ク質検索については、http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。また、比較を目的
としてギャップを加えたアライメントを得るために、Gapped BLAST(BLAST 2.0)を利用
できる。また、PSI-BLAST(BLAST 2.0)を、配列間の離間した関係を検出する反復検索を行うのに利用できる。Gapped BLASTおよびPSI-BLASTについては、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389を参照されたい。BLAST、Gapped BLAST、またはPSI-BLASTを利用する場合、例えば、各プログラム(例えば、ヌクレオチド配列に対してBLASTN、アミノ酸配列に対してBLASTX)の初期パラメーターが用いられ得る。アライメントは、手動にて行われてもよい。
2つの配列間の配列同一性は、2つの配列を最大一致となるように整列したときに2つの配列間で一致する残基の比率として算出される。
フィブロイン様タンパク質遺伝子は、上記例示したフィブロイン様タンパク質遺伝子またはその保存的バリアントの塩基配列において、任意のコドンをそれと等価のコドンに置換したものであってもよい。例えば、フィブロイン様タンパク質遺伝子は、使用する宿主のコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変されてよい。
以下、フィブロイン様タンパク質の構造について、具体的に例示する。
<フィブロインが有する反復配列と同様の配列>
フィブロイン様タンパク質は、フィブロインが有する反復配列と同様の配列を有していてよい。「フィブロインが有する反復配列と同様の配列」としては、例えば、下記繰り返し構造1や下記繰り返し構造2が挙げられる。
<繰り返し構造1>
すなわち、フィブロイン様タンパク質は、例えば、繰り返し構造1を有していてよい。繰り返し構造1は、下記式Iに示される配列(以下、「繰り返し単位1」ともいう)の繰り返しからなる構造である(WO2012/165476):
REP1−REP2 ・・・(I)
繰り返し構造1において、各繰り返し単位1は、REP1とREP2が連結してなる。各繰り返し単位1において、REP1がN末側、REP2がC末側である。すなわち、前記繰り返し構造1は、具体的には、N末端からC末端に向けて、REP1とREP2が交互に連結してなる。
繰り返し単位1の繰り返し数は、特に制限されない。繰り返し単位1の繰り返し数は、例えば、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、または10回以上であってもよく、100回以下、50回以下、30回以下、15回以下、12回以下、10回以下、8回以下、または6回以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。
繰り返し単位1の構成は、各繰り返しにおいて、同一であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、REP1の構成は、各繰り返しにおいて、同一であってもよく、そうでなくてもよい。また、REP2の構成は、各繰り返しにおいて、同一であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、繰り返し単位1の構成、REP1の構成、およびREP2の構成は、各繰り返しにおいてそれぞれ独立に設定できる。すなわち、繰り返し単位1、REP1、およびREP2としては、それぞれ、1種のアミノ酸配列を用いてもよく、2種またはそれ以上のアミノ酸配列を組み合わせて用いてもよい。
REP1は、Ala及びGlyから選択される1種またはそれ以上のアミノ酸残基の連続配列からなるアミノ酸配列である。REP1がAla及びGlyの両方を含む場合、Ala及びGlyの順番は特に制限されない。例えば、REP1において、Alaが2残基またはそれ以上連続していてもよく、Glyが2残基またはそれ以上連続していてもよく、Ala及びGlyが交互に並んでいてもよい。REP1の長さは、例えば、2残基以上、3残基以上、4残基以上、または5残基以上であってもよく、20残基以下、16残基以下、12残基以下、または8残基以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。REP1の長さは、具体的には、例えば、2残基〜20残基、3残基〜16残基、4残基〜12残基、または5残基〜8残基であってもよい。REP1は、例えば、クモのフィブロインにおいて、繊維内で結晶βシートを形成する結晶領域に相当し得る。
REP2は、Gly、Ser、Gln、及びAlaから選択される1種またはそれ以上、例えば全て、のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列である。REP2におけるGly、Ser、Gln、及びAlaの比率は、合計で、例えば、40%以上、60%以上、または70%以上であってよい。「REP2におけるGly、Ser、Gln、及びAlaの比率」とは、それぞれ、REP2を構成するアミノ酸残基の総数に対する同REP2に含まれるGly、Ser、Gln、及びAlaの個数の比率である。REP2の長さは、例えば、2残基以上、10残基以上、または20残基以上であってもよく、200残基以下、150残基以下、100残基以下、または75残基以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。REP2の長さは、具体的には、例えば、2残基〜200残基、10残基〜150残基、20残基〜100残基、または20残基〜75残基であってもよい
。REP2は、例えば、クモのフィブロインにおいて、柔軟性があり大部分が規則正しい構造を欠いている無定型領域に相当し得る。
<繰り返し構造2>
また、フィブロイン様タンパク質は、例えば、繰り返し構造2を有していてもよい。繰り返し構造2は、下記式IIに示される配列(以下、「繰り返し単位2」ともいう)の繰り返しからなる構造である:
Alaリッチ部位−Ala非リッチ部位 ・・・(II)
各繰り返し単位2は、Alaリッチ部位とAla非リッチ部位が連結してなる。各繰り返し単位2において、Alaリッチ部位がN末側、Ala非リッチ部位がC末側である。すなわち、前記繰り返し構造2は、具体的には、N末端からC末端に向けて、Alaリッチ部位とAla非リッチ部位が交互に連結してなる。
繰り返し単位2の繰り返し数は、特に制限されない。繰り返し単位2の繰り返し数は、例えば、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、または10回以上であってもよく、100回以下、50回以下、30回以下、15回以下、12回以下、10回以下、8回以下、または6回以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。繰り返し単位2の繰り返し数は、具体的には、例えば、3回〜15回、3回〜12回、3回〜10回、3回〜8回、3回〜6回、5回〜15回、7回〜15回、または10回〜15回であってもよい。
繰り返し単位2の構成は、各繰り返しにおいて、同一であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、Alaリッチ部位の構成は、各繰り返しにおいて、同一であってもよく、そうでなくてもよい。また、Ala非リッチ部位の構成は、各繰り返しにおいて、同一であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、繰り返し単位2の構成、Alaリッチ部位の構成、およびAla非リッチ部位の構成は、各繰り返しにおいてそれぞれ独立に設定できる。すなわち、繰り返し単位2、Alaリッチ部位、およびAla非リッチ部位としては、それぞれ、1種のアミノ酸配列を用いてもよく、2種またはそれ以上のアミノ酸配列を組み合わせて用いてもよい。
<Alaリッチ部位>
「Alaリッチ部位」とは、Ala残基の比率が高い部位(高い比率でAla残基を含む部位)をいう。一態様においては、Alaリッチ部位は、上述したREP1であってもよい。
Alaリッチ部位の長さは、例えば、8残基以上であってもよく、54残基以下、40残基以下、30残基以下、20残基以下、15残基以下、または10残基以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。Alaリッチ部位の長さは、具体的には、例えば、8残基〜54残基、8残基〜15残基、または8残基〜10残基であってもよい。Alaリッチ部位の長さは、より具体的には、例えば、9残基であってもよい。
Alaリッチ部位は、Ala残基からなるものであってもよく、Ala残基と他のアミノ酸残基(Ala残基以外のアミノ酸残基)との組み合わせからなるものであってもよい。
Alaリッチ部位におけるAla残基の比率は、例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、または70%以上であってもよく、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、または80%以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。Alaリッチ部位におけるAla残基の比率は、具体的には、例えば、30%
〜100%、50%〜90%、または60%〜85%であってもよい。「Alaリッチ部位におけるAla残基の比率」とは、Alaリッチ部位を構成するアミノ酸残基の総数に対する同Alaリッチ部位に含まれるAla残基の個数の比率である。Alaリッチ部位における他の任意のアミノ酸残基の比率も、同様に算出できる。
他のアミノ酸残基(Ala残基以外のアミノ酸残基)としては、Gly、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Cys、Met、Asn、Gln、Pro、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Phe、Tyr、Trpが挙げられる。他のアミノ酸残基として、具体的には、例えば、Gly残基およびSer残基が挙げられる。Alaリッチ部位は、他のアミノ酸残基を、1種のみ含んでいてもよく、2種またはそれ以上含んでいてもよい。Alaリッチ部位は、例えば、Gly残基を1個以上含んでいてもよく、Ser残基を1個以上含んでいてもよく、Gly残基およびSer残基をそれぞれ1個以上含んでいてもよい。Alaリッチ部位の両端(N末端およびC末端)は、それぞれ、例えば、Ala残基、Gly残基、またはSer残基であってよい。具体的には、例えば、Alaリッチ部位のN末端がAla残基またはGly残基で、Alaリッチ部位のC末端がAla残基またはSer残基であってもよい。Alaリッチ部位におけるAla残基、Gly残基、およびSer残基の比率は、合計で、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または100%であってよい。
Alaリッチ部位は、同部位中のいずれの連続する4アミノ酸残基中にも、少なくとも1個のAla残基を含んでいてよい。すなわち、Alaリッチ部位には、Ala残基を含まない連続する4アミノ酸残基は存在しなくてよい。また、Alaリッチ部位は、同部位中のいずれの連続する7、6、または5アミノ酸残基中にも、少なくとも2個のAla残基を含んでいてもよい。すなわち、Alaリッチ部位には、Ala残基を含まない、あるいは、Ala残基を1個のみ含む、連続する7、6、または5アミノ酸残基は存在しなくてもよい。
Alaリッチ部位のアミノ酸配列としては、例えば、フィブロイン様タンパク質のアミノ酸配列中の、上述したようなAlaリッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列が挙げられる。フィブロイン様タンパク質については上述した通りである。配列番号2に示すアミノ酸配列の内、上述したようなAlaリッチ部位の要件を満たす部分としては、アミノ酸番号53〜61、92〜100、121〜129、152〜160、186〜194、219〜227、258〜266、292〜300、326〜334、370〜378、439〜447、498〜506の部分が挙げられる。それらAlaリッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列として、具体的には、例えば、GASAAAAAA(配列番号4)、GSSAAAAAA(配列番号5)、GASAASAAS(配列番号6、GASAAAGAA(配列番号7)が挙げられる。すなわち、Alaリッチ部位は、例えば、それらAlaリッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列(例えば、配列番号4、5、6、または7)を有するものであってよい。
また、Alaリッチ部位は、それらAlaリッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列(例えば、配列番号4、5、6、または7)のバリアントであってもよい。それらAlaリッチ部位の要件を満たす部分のバリアントについては、フィブロイン様タンパク質の保存的バリアントについての記載を準用できる。Alaリッチ部位は、例えば、それらAlaリッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列(例えば、配列番号4、5、6、または7)において、1若しくは数個の位置での1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。なお上記「1若しくは数個」とは、それらAlaリッチ部位の要件を満たす部分の長さ等にもよるが、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、または1個であってもよい。また、Alaリッチ部位は、例えば、それらAlaリッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配
列(例えば、配列番号4、5、6、または7)全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するものであってもよい。それらAlaリッチ部位の要件を満たす部分のバリアントについては、改変後のアミノ酸配列が上述したようなAlaリッチ部位の要件を満たす限り、特に制限されない。
<Ala非リッチ部位>
「Ala非リッチ部位」とは、Ala残基の比率が低い部位をいう。一態様においては、Ala非リッチ部位は、上述したREP2であってもよい。
Ala非リッチ部位の長さは、例えば、4残基以上、10残基以上、15残基以上、20残基以上、30残基以上、40残基以上、または50残基以上であってもよく、200残基以下、150残基以下、100残基以下、80残基以下、60残基以下、または40残基以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。Ala非リッチ部位の長さは、具体的には、例えば、4残基〜200残基、10残基〜150残基、または15残基〜100残基であってもよい。
Ala非リッチ部位は、Ala残基を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。Ala非リッチ部位におけるAla残基の比率は、例えば、20%以下、16%以下、14%以下、10%以下、5%以下、または0%であってよい。
Ala非リッチ部位は、具体的には、例えば、Gly、Ser、Gln、Pro、及びTyrから選択される1種またはそれ以上、例えば全て、のアミノ酸残基を含んでいてもよい。Ala非リッチ部位におけるGly、Ser、Gln、Pro、及びTyrの比率は、合計で、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または100%であってよい。Ala非リッチ部位は、Ala残基を含まない連続する4アミノ酸残基を含んでいてよい。Ala非リッチ部位は、例えば、Ala残基を含まない連続する4アミノ酸残基を両端(N末端およびC末端)に含んでいてもよい。
Ala非リッチ部位のアミノ酸配列としては、例えば、フィブロイン様タンパク質のアミノ酸配列中の、上述したようなAla非リッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列が挙げられる。フィブロイン様タンパク質については上述した通りである。配列番号2に示すアミノ酸配列の内、上述したようなAla非リッチ部位の要件を満たす部分としては、アミノ酸番号62〜91、101〜120、130〜151、161〜185、195〜218、228〜257、267〜291、301〜325、335〜369、379〜438、448〜497、507〜536の部分が挙げられる。すなわち、Ala非リッチ部位は、例えば、それらAla非リッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列を有するものであってよい。また、Ala非リッチ部位は、例えば、上記例示したAla非リッチ部位のアミノ酸配列(例えば、それらAla非リッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列)の部分配列を有するものであってもよい。部分配列は、上述したようなAla非リッチ部位の要件を満たす限り、特に制限されない。部分配列としては、例えば、上記例示したAla非リッチ部位のアミノ酸配列の部分配列であって、上述したようなAla非リッチ部位の長さを満たすものが挙げられる。また、部分配列としては、例えば、上記例示したAla非リッチ部位のアミノ酸配列の部分配列であって、それらAla非リッチ部位のアミノ酸配列の30%以上、50%以上、70%以上、または90%以上の長さを有するものが挙げられる。また、それらAla非リッチ部位の要件を満たす部分に含まれるモチーフとして、具体的には、例えば、GGYGPGSGQQG(配列番号8)、GGNGPGSGQQG(配列番号9)、GGYGPGYGQQG(配列番号10)、GGYGPGSGQG(配列番号11)、PGQQG(配列番号12)、AGQQG(配列番号13)、SGQQG(配列番号14)、PSQQG(配列番号15)
、PGGQG(配列番号16)、PYGP(配列番号17)、AYGP(配列番号18)が挙げられる
。配列番号8〜11に示すモチーフを総称して「モチーフA」、配列番号12〜16に示すモチーフを総称して「モチーフB」、配列番号17〜18に示すモチーフを総称して「モチーフC」ともいう。すなわち、Ala非リッチ部位は、より一般的には、例えば、これらのモチーフから選択される1種またはそれ以上を有するものであってよい。Ala非リッチ部位は、具体的には、例えば、モチーフAおよびBを有していてもよく、さらにモチーフCを有していてもよい。Ala非リッチ部位がこれらのモチーフから選択される2種またはそれ以上のモチーフを有する場合、それらの順序は特に制限されない。Ala非リッチ部位は、例えば、N末端からC末端に向けて、モチーフAおよびBを有していてもよく、モチーフA、B、およびCを有していてもよい。Ala非リッチ部位は、これらのモチーフを、いずれも、1個のみ有していてもよく、2個またはそれ以上有していてもよい。Ala非リッチ部位がいずれかのモチーフを2個またはそれ以上有する場合、同モチーフは、Ala非リッチ部位中で、タンデムに並んでいてもよく、そうでなくてもよい。Ala非リッチ部位は、例えば、モチーフBを、1個のみ有していてもよく、2個またはそれ以上有していてもよい。1つのAla非リッチ部位に含まれるモチーフBの数は、例えば、1個以上、2個以上、3個以上、5個以上、または7個以上であってもよく、15個以下、10個以下、7個以下、または5個以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。
また、Ala非リッチ部位は、それらAla非リッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列のバリアント、それらの部分配列のバリアント、またはそれらに含まれるモチーフのバリアントであってもよい。それらAla非リッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列のバリアント、それらの部分配列のバリアント、またはそれらに含まれるモチーフのバリアントについては、フィブロイン様タンパク質の保存的バリアントについての記載を準用できる。Ala非リッチ部位は、例えば、それらAla非リッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列、それらの部分配列、またはそれらに含まれるモチーフにおいて、1若しくは数個の位置での1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。なお上記「1若しくは数個」とは、それらAla非リッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列、それらの部分配列、またはそれらに含まれるモチーフの長さ等にもよるが、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、または1個であってもよい。また、Ala非リッチ部位は、例えば、それらAla非リッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列全体、それらの部分配列全体、またはそれらに含まれるモチーフ全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するものであってもよい。それらAla非リッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列のバリアント、それらの部分配列のバリアント、またはそれらに含まれるモチーフのバリアントについては、改変後のアミノ酸配列が上述したようなAla非リッチ部位の要件を満たす限り、特に制限されない。
<その他の配列>
フィブロイン様タンパク質は、フィブロインが有する反復配列と同様の配列に加えて、さらに、その他の配列を含んでいてよい。その他の配列としては、例えば、N末領域、C末領域、機能性配列が挙げられる。
フィブロイン様タンパク質は、最初の繰り返し単位の前に、すなわち繰り返し構造(例えば繰り返し構造1や繰り返し構造2)の前に、さらに、N末領域を含んでいてよい。N末領域のアミノ酸配列は特に制限されない。N末領域の長さは、例えば、1残基以上、3残基以上、5残基以上、10残基以上、30残基以上、50残基以上、または100残基以上であってもよく、200残基以下、150残基以下、100残基以下、80残基以下
、60残基以下、または40残基以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。N末領域は、具体的には、例えば、1残基〜200残基であってもよい。N末領域は、例えば、Ala非リッチ部位の要件を満たすアミノ酸配列を含んでいてよい。また、N末領域は、例えば、REP2の要件を満たすアミノ酸配列を含んでいてもよい。
フィブロイン様タンパク質は、最後の繰り返し単位の後に、すなわち繰り返し構造(例えば繰り返し構造1や繰り返し構造2)の後に、さらに、C末領域を含んでいてよい。C末領域のアミノ酸配列は特に制限されない。C末領域の長さは、例えば、1残基以上、3残基以上、5残基以上、10残基以上、30残基以上、50残基以上、または100残基以上であってもよく、200残基以下、150残基以下、100残基以下、80残基以下、60残基以下、または40残基以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。C末領域は、具体的には、例えば、1残基〜200残基であってもよい。C末領域は、例えば、Alaリッチ部位の要件を満たすアミノ酸配列を含んでいてよい。また、C末領域は、例えば、REP1の要件を満たすアミノ酸配列を含んでいてもよい。また、C末領域は、例えば、クモのフィブロインのC末端付近のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含んでいてよい。クモのフィブロインのC末端付近のアミノ酸配列としては、例えば、クモのフィブロインのC末端50残基のアミノ酸配列、C末端50残基からC末端20残基を除去したアミノ酸配列、C末端50残基からC末端29残基を除去したアミノ酸配列が挙げられる。クモのフィブロインのC末端付近のアミノ酸配列として、具体的には、例えば、ニワオニグモのADF3(partial;NCBI AAC47010.1
GI:1263287)の587位〜636位(C末端50残基)のアミノ酸配列、587位〜6
16位のアミノ酸配列、587位〜607位のアミノ酸配列が挙げられる。C末端にニワオニグモのADF3(partial;NCBI AAC47010.1 GI:1263287)の587位〜636位のアミ
ノ酸配列を有するフィブロイン様タンパク質として、具体的には、例えば、配列番号2に示すタンパク質が挙げられる。
フィブロイン様タンパク質は、例えば、機能性配列を含んでいてよい。機能性配列としては、所望の機能を示すアミノ酸配列を利用することができる。機能性配列としては、1種の機能性配列を用いてもよく、2種またはそれ以上の機能性配列を組み合わせて用いてもよい。機能性配列としては、例えば、ペプチドタグやプロテアーゼの認識配列が挙げられる。ペプチドタグとして、具体的には、Hisタグ、FLAGタグ、GSTタグ、Mycタグ、MBP(maltose binding protein)、CBP(cellulose binding protein)、TRX(thioredoxin)
、GFP(green fluorescent protein)、HRP(horseradish peroxidase)、ALP(alkaline
phosphatase)、抗体のFc領域が挙げられる。ペプチドタグは、例えば、発現したタンパク質の検出や精製に利用できる。プロテアーゼの認識配列として、具体的には、HRV3Cプ
ロテアーゼ認識配列、Factor Xaプロテアーゼ認識配列、proTEVプロテアーゼ認識配列が
挙げられる。プロテアーゼの認識配列は、例えば、発現したタンパク質の切断に利用できる。
フィブロイン様タンパク質は、例えば、N末領域および/またはC末領域中に機能性配列等のその他の配列を含んでいてもよい。すなわち、N末領域およびC末領域は、いずれも、例えば、機能性配列を含んでいてよい。N末端にHisタグとHRV3Cプロテアーゼ認識配列を有するフィブロイン様タンパク質として、具体的には、例えば、配列番号2に示すタンパク質が挙げられる。
また、フィブロイン様タンパク質は、例えば、繰り返し構造(例えば繰り返し構造1や繰り返し構造2)中に機能性配列等のその他の配列を含んでいてもよい。すなわち、機能性配列等のその他の配列は、繰り返し構造中に挿入されていてもよい。言い換えると、フィブロイン様タンパク質が有する繰り返し構造は、機能性配列等のその他の配列が挿入さ
れた繰り返し構造であってもよい。
また、その他の配列としては、例えば、細胞接着配列も挙げられる。すなわち、フィブロイン様タンパク質は、例えば、細胞接着配列を含んでいてよい。「細胞接着配列」とは、幹細胞等の細胞に対する足場機能をフィブロイン様タンパク質に付与できるアミノ酸配列を意味してよい。「細胞接着配列」とは、具体的には、フィブロイン様タンパク質に挿入することにより幹細胞等の細胞に対する足場機能を同タンパク質に付与できるアミノ酸配列を意味してよい。このような性質(すなわち、幹細胞等の細胞に対する足場機能をフィブロイン様タンパク質に付与できる性質)を「細胞接着配列としての性質」ともいう。すなわち、細胞接着配列を含むフィブロイン様タンパク質は、幹細胞等の細胞に対する足場機能を示し得る。よって、特に、細胞接着配列を含むフィブロイン様タンパク質は、例えば、幹細胞等の細胞の培養に利用してよい。なお、「細胞の培養」には、細胞の増殖に限られず、例えば、細胞の維持、細胞の分化、iPS細胞等の幹細胞の樹立、等も包含され
る。
細胞接着配列は、RGD(Arg−Gly−Asp)を含むアミノ酸配列である。細胞接着配列は、例えば、RGDを含む、3残基〜18残基のアミノ酸配列からなるものであってよい。すなわち、細胞接着配列の長さは、例えば、3残基〜18残基であってよい。細胞接着配列は、RGDからなるものであってもよく、そうでなくてもよい。細胞接着配列としては、細胞接着性タンパク質の部分アミノ酸配列(細胞接着性タンパク質のアミノ酸配列の一部)であってRGDを含むもの(細胞接着性タンパク質のRGD配列)が挙げられる。また、細胞接着配列としては、細胞接着性タンパク質の部分アミノ酸配列の組み合わせであってRGDを含むものも挙げられる。細胞接着性タンパク質として、具体的には、例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲン、オステオポンチン、ラミニンが挙げられる。細胞接着配列のRGD配列として、具体的には、例えば、GRGDSP(配列番号39)、VTGRGDSPAS(配列番号40)、PQVTRGDVFTM(配列番号41)、VTRGDVF(配列番号42)、GRGDNP(配列番号43)、GAAGRGDSPAAGY(配列番号44)が挙げられ
る。すなわち、細胞接着配列は、例えば、それらアミノ酸配列(例えば、配列番号39、40、41、42、43、または44)を有するものであってよい。
また、細胞接着配列は、RGDが保存されている限り、それらアミノ酸配列(例えば、配列番号39、40、41、42、43、および44等の細胞接着性タンパク質の部分アミノ酸配列)のバリアントであってもよい。それらアミノ酸配列のバリアントについては、フィブロイン様タンパク質の保存的バリアントについての記載を準用できる。細胞接着配列は、例えば、それらアミノ酸配列(例えば、配列番号39、40、41、42、43、および44等の細胞接着性タンパク質の部分アミノ酸配列)において、RGD以外の1若しくは数個の位置での1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。なお上記「1若しくは数個」とは、それら細胞接着配列の要件を満たす部分の長さ等にもよるが、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、または1個であってよい。また、細胞接着配列は、例えば、それら細胞接着配列の要件を満たす部分のアミノ酸配列(例えば、配列番号39、40、41、42、43、および44等の細胞接着性タンパク質の部分アミノ酸配列)全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、且つRGDが保存されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。それらアミノ酸配列のバリアントについては、RGDが保存されており、且つ、改変後のアミノ酸配列が所望の機能を有する限り(例えば改変後のアミノ酸配列が細胞接着配列としての性質を有する限り)、特に制限されない。
或るアミノ酸配列が細胞接着配列としての性質を有するか否かは、例えば、当該アミノ酸配列が挿入されたフィブロイン様タンパク質が幹細胞等の細胞に対する足場機能を示す
か否かを確認することにより、確認することができる。当該タンパク質が幹細胞等の細胞に対する足場機能を示すか否かは、例えば、当該タンパク質で細胞培養面をコーティングした培養容器を用いて幹細胞等の細胞を培養することにより、確認できる。すなわち、当該タンパク質で細胞培養面をコーティングすることにより幹細胞等の細胞の増殖が向上した場合に、当該タンパク質が幹細胞等の細胞に対する足場機能を示すと判断できる。
フィブロイン様タンパク質における細胞接着配列の位置は、特に制限されない。フィブロイン様タンパク質は、例えば、繰り返し構造(例えば繰り返し構造1や繰り返し構造2)中に細胞接着配列を含んでいてよい。すなわち、細胞接着配列は、繰り返し構造中に挿入されていてよい。言い換えると、フィブロイン様タンパク質が有する繰り返し構造は、細胞接着配列が挿入された繰り返し構造であってもよい。細胞接着配列は、具体的には、繰り返し構造を構成する繰り返し単位から選択される1つまたはそれ以上の繰り返し単位中に挿入されて(含まれて)いてよい。細胞接着配列は、例えば、繰り返し構造を構成する繰り返し単位から選択される2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、または7つ以上の繰り返し単位中に挿入されて(含まれて)いてもよい。細胞接着配列は、例えば、繰り返し構造を構成する全ての繰り返し単位中に挿入されて(含まれて)いてもよい。1つの繰り返し単位は、細胞接着配列を、1個のみ有していてもよく、2個またはそれ以上有していてもよい。1つの繰り返し単位が細胞接着配列を2個またはそれ以上有する場合、同細胞接着配列は、繰り返し単位中で、タンデムに並んでいてもよく、そうでなくてもよい。1つの繰り返し単位に含まれる細胞接着配列の数は、例えば、1個以上、2個以上、または3個以上であってもよく、5個以下、3個以下、または2個以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。1つの繰り返し単位に含まれる細胞接着配列の数は、具体的には、例えば、1個〜3個であってもよい。フィブロイン様タンパク質に含まれる細胞接着配列の総数は、例えば、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、または7個以上であってもよく、50個以下、40個以下、30個以下、25個以下、20個以下、15個以下、または10個以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。繰り返し構造に含まれる細胞接着配列の総数は、具体的には、例えば、1個〜50個、3個〜30個、または5個〜15個であってもよい。フィブロイン様タンパク質が2個以上の細胞接着配列を含む場合、細胞接着配列の構成はそれぞれ独立に設定できる。すなわち、細胞接着配列としては、1種の細胞接着配列を用いてもよく、2種またはそれ以上の細胞接着配列を組み合わせて用いてもよい。
繰り返し単位における細胞接着配列の位置は、特に制限されない。各細胞接着配列は、例えば、Ala非リッチ部位中、またはAlaリッチ部位とAla非リッチ部位の連結部に挿入されていてよい。細胞接着配列が挿入されるAla非リッチ部位としては、例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列の内、アミノ酸番号62〜91、101〜120、130〜151、161〜185、195〜218、228〜257、267〜291、301〜325、335〜369、379〜438、448〜497、507〜536の部分が挙げられる。細胞接着配列が挿入されるAla非リッチ部位として、より具体的には、例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列の内、アミノ酸番号109と110、170と171、203と204、276と277、310と311、403と404、472と473の間が挙げられる。細胞接着配列が挿入されるAlaリッチ部位とAla非リッチ部位の連結部としては、例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列の内、アミノ酸番号61と62、91と92、100と101、120と121、129と130、151と152、160と161、185と186、194と195、218と219、227と228、257と258、266と267、291と292、300と301、325と326、334と335、369と370、378と379、438と439、447と448、497と498、506と507の間が挙げられる。細胞接着配列は、Ala非リッチ部位中、および/またはAlaリッチ部位とAla非リッチ部位の連結部に挿入されることに加え、さらにその他の部位に挿入されてもよい。その他の部位としては、Alaリッ
チ部位や、N末領域およびC末領域が挙げられる。
<2>本発明の細菌
本発明の細菌は、フィブロイン様タンパク質をコードする遺伝子(フィブロイン様タンパク質遺伝子)を有する細菌であって、tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase)遺伝子の発現が増大するように改変された細菌である。
<2−1>細菌
細菌は、フィブロイン様タンパク質を発現できるものであれば特に制限されない。細菌としては、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌やコリネ型細菌が挙げられる。
腸内細菌科に属する細菌としては、エシェリヒア(Escherichia)属、エンテロバクタ
ー(Enterobacter)属、パントエア(Pantoea)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、セ
ラチア(Serratia)属、エルビニア(Erwinia)属、フォトラブダス(Photorhabdus)属
、プロビデンシア(Providencia)属、サルモネラ(Salmonella)属、モルガネラ(Morganella)等の属に属する細菌が挙げられる。具体的には、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=91347)で用いられている分類法により腸内細菌科に分類されている細菌を用いることができる。
エシェリヒア属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりエシェリヒア属に分類されている細菌が挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、Neidhardtらの著書(Backmann, B. J. 1996. Derivations and Genotypes
of some mutant derivatives of Escherichia coli K-12, p. 2460-2488. Table 1. In F. D. Neidhardt (ed.), Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Second Edition, American Society for Microbiology Press, Washington, D.C.
)に記載されたものが挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。エシェリヒア・コリとしては、例えば、W3110株(ATCC 27325)やMG1655株(ATCC 47076)等のエシェリヒア・コリK-12株;エシェリ
ヒア・コリK5株(ATCC 23506);BL21(DE3)株、そのrecA-株であるBLR(DE3)株、Rosetta(DE3)株等のエシェリヒア・コリB株;およびそれらの派生株が挙げられる。
エンテロバクター属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりエンテロバクター属に分類されている細菌が挙げられる。エンテロバクター属細菌としては、例えば、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)やエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)が挙げられる。エンテロバクター・アグロメランスとして、具体的には、例えば、エンテロバクター・アグロメランスATCC12287株が挙げられる。エンテロバクター・アエロゲネスとして、具体的
には、例えば、エンテロバクター・アエロゲネスATCC13048株、NBRC12010株(Biotechonol Bioeng. 2007 Mar 27; 98(2) 340-348)、AJ110637株(FERM BP-10955)が挙げられる
。また、エンテロバクター属細菌としては、例えば、欧州特許出願公開EP0952221号明細
書に記載されたものが挙げられる。なお、Enterobacter agglomeransには、Pantoea agglomeransと分類されているものも存在する。
パントエア属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりパントエア属に分類されている細菌が挙げられる。パントエア属細菌としては、例えば、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)が挙げられる。パントエア・アナナティスとして、
具体的には、例えば、パントエア・アナナティスLMG20103株、AJ13355株(FERM BP-6614
)、AJ13356株(FERM BP-6615)、AJ13601株(FERM BP-7207)、SC17株(FERM BP-11091
)、SC17(0)株(VKPM B-9246)、及びSC17sucA株(FERM BP-8646)が挙げられる。なお、エンテロバクター・アグロメランスのある種のものは、最近、16S rRNAの塩基配列分析等に基づき、パントエア・アグロメランス、パントエア・アナナティス、パントエア・ステワルティイ等に再分類された(Int. J. Syst. Bacteriol., 43, 162-173 (1993))。本発明において、パントエア属細菌には、このようにパントエア属に再分類された細菌も含まれる。
エルビニア属細菌としては、エルビニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、エル
ビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)が挙げられる。クレブシエラ属細菌としては、クレブシエラ・プランティコーラ(Klebsiella planticola)が挙げられる。
コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリ
ウム(Brevibacterium)属、およびミクロバクテリウム(Microbacterium)属等の属に属する細菌が挙げられる。
コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような種が挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)
コリネバクテリウム・アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)
コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)
コリネバクテリウム・クレナタム(Corynebacterium crenatum)
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)
コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)
コリネバクテリウム・メラセコーラ(Corynebacterium melassecola)
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(コリネバクテリウム・エフィシエンス)(Corynebacterium thermoaminogenes (Corynebacterium efficiens))
コリネバクテリウム・ハーキュリス(Corynebacterium herculis)
ブレビバクテリウム・ディバリカタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium divaricatum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・フラバム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium
flavum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・イマリオフィラム(Brevibacterium immariophilum)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium lactofermentum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・ロゼウム(Brevibacterium roseum)
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevibacterium saccharolyticum)
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス(Brevibacterium thiogenitalis)
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・スタティオニス)(Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis))
ブレビバクテリウム・アルバム(Brevibacterium album)
ブレビバクテリウム・セリナム(Brevibacterium cerinum)
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム(Microbacterium ammoniaphilum)
コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような菌株が挙げられる。
Corynebacterium acetoacidophilum ATCC 13870
Corynebacterium acetoglutamicum ATCC 15806
Corynebacterium alkanolyticum ATCC 21511
Corynebacterium callunae ATCC 15991
Corynebacterium crenatum AS1.542
Corynebacterium glutamicum ATCC 13020, ATCC 13032, ATCC 13060, ATCC 13869, FERM BP-734
Corynebacterium lilium ATCC 15990
Corynebacterium melassecola ATCC 17965
Corynebacterium efficiens (Corynebacterium thermoaminogenes) AJ12340 (FERM BP-1539)
Corynebacterium herculis ATCC 13868
Brevibacterium divaricatum (Corynebacterium glutamicum) ATCC 14020
Brevibacterium flavum (Corynebacterium glutamicum) ATCC 13826, ATCC 14067, AJ12418(FERM BP-2205)
Brevibacterium immariophilum ATCC 14068
Brevibacterium lactofermentum (Corynebacterium glutamicum) ATCC 13869
Brevibacterium roseum ATCC 13825
Brevibacterium saccharolyticum ATCC 14066
Brevibacterium thiogenitalis ATCC 19240
Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis) ATCC 6871, ATCC 6872
Brevibacterium album ATCC 15111
Brevibacterium cerinum ATCC 15112
Microbacterium ammoniaphilum ATCC 15354
なお、コリネバクテリウム属細菌には、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に統合された細菌(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1991))も含まれる。また、コリネバクテリウム・スタティオニスには、従来コリネバクテ
リウム・アンモニアゲネスに分類されていたが、16S rRNAの塩基配列解析等によりコリネバクテリウム・スタティオニスに再分類された細菌も含まれる(Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 60, 874-879(2010))。
これらの菌株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852 P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることが出来る。すなわち各菌株に対応する
登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。また、これらの菌株は、例えば、各菌株が寄託された寄託機関から入手することができる。また、エシェリヒア・コリBL21(DE3)株
は、例えば、ライフテクノロジーズ社より入手可能である(製品番号C6000-03)。また、エシェリヒア・コリBLR(DE3)株は、例えば、メルクミリポア社より入手可能である(製品番号 69053)。また、エシェリヒア・コリRosetta(DE3)株は、例えば、ノバジェン社より入手可能である。
本発明の細菌は、栄養要求性株であってもよい。栄養要求性株は、1種類の栄養要求性を有していてもよく、2またはそれ以上の種類の栄養要求性を有していてもよい。栄養要求性としては、イソロイシン要求性やトリプトファン要求性等のアミノ酸要求性や核酸要求性が挙げられる。例えば、エシェリヒア・コリBLR(DE3)株は、イソロイシン要求性を有する(Schmidt M, Romer L, Strehle M, Scheibel T, Biotechnol Lett 2007, 29(11):1741-1744.)。
<2−2>フィブロイン様タンパク質遺伝子の導入
本発明の細菌は、フィブロイン様タンパク質遺伝子を有する。本発明の細菌は、フィブロイン様タンパク質遺伝子を有することにより、フィブロイン様タンパク質の生産能を有
する。「本発明の細菌がフィブロイン様タンパク質の生産能を有する」とは、本発明の細菌を培地で培養した際に、本発明の細菌がフィブロイン様タンパク質を生成し、回収できる程度に培地中および/または菌体内に蓄積できることをいう。本発明の細菌は、非改変株よりも多い量のフィブロイン様タンパク質を培地中および/または菌体内に蓄積することができる細菌であってよい。ここでいう「非改変株」とは、tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の発現が増大するように改変されていない対照株をいう。すなわち、非改変株としては、野生株や親株であって、フィブロイン様タンパク質遺伝子を有するものが挙げられる。非改変株として、具体的には、例えば、後述するような細菌にフィブロイン様タンパク質遺伝子を導入して得られる株が挙げられる。
フィブロイン様タンパク質遺伝子を有する細菌は、例えば、上記のような細菌に同遺伝子を導入することにより取得できる。
フィブロイン様タンパク質遺伝子は、例えば、クモやカイコ等のフィブロイン様タンパク質遺伝子を有する生物からのクローニングにより取得できる。クローニングには、同遺伝子を含むゲノムDNAやcDNA等の核酸を利用できる。取得したフィブロイン様タンパク質
遺伝子は、そのまま、あるいは適宜改変して、利用することができる。また、フィブロイン様タンパク質遺伝子は、例えば、化学合成によっても取得できる(Gene, 60(1), 115-127 (1987))。
フィブロイン様タンパク質遺伝子を細菌に導入する手法は特に制限されない。本発明の細菌において、フィブロイン様タンパク質遺伝子は、当該細菌で機能するプロモーターの制御下で発現可能に保持されていればよい。プロモーターは、宿主由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。プロモーターは、フィブロイン様タンパク質遺伝子の固有のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。プロモーターは、例えば、誘導可能なプロモーターであってもよい。エシェリヒア・コリ等の細菌で機能する誘導可能なプロモーターとしては、lacプロモーター
、trcプロモーター、tacプロモーター、trpプロモーター、araBADプロモーター、tetAプ
ロモーター、rhaPBADプロモーター、proUプロモーター、cspAプロモーター、λPLプロモ
ーター、λPRプロモーター、phoAプロモーター、pstSプロモーター等の直接的に誘導可能なプロモーターや、T3プロモーター、T5プロモーター、T7プロモーター、SP6プロモータ
ー等の間接的に誘導可能なプロモーターが挙げられる。本発明の細菌において、フィブロイン様タンパク質遺伝子は、プラスミドのように染色体外で自律複製するベクター上に存在していてもよく、染色体上に導入されていてもよい。本発明の細菌は、フィブロイン様タンパク質遺伝子を1コピーのみ有していてもよく、2またはそれ以上のコピーで有していてもよい。本発明の細菌は、1種類のフィブロイン様タンパク質遺伝子のみを有していてもよく、2またはそれ以上の種類のフィブロイン様タンパク質遺伝子を有していてもよい。フィブロイン様タンパク質遺伝子の導入は、例えば、後述する遺伝子の発現を上昇させる手法における遺伝子の導入と同様に行うことができる。
<2−3>tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の発現の増強
本発明の細菌は、tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の発現が増大するように改変されている。本発明の細菌は、具体的には、非改変株と比較して、tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の発現が増大するように改変されている。本発明の細菌は、例えば、フィブロイン様タンパク質遺伝子を有する細菌を、tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の発現が増大するように改変することにより取得できる。また、本発明の細菌は、例えば、tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の発現が増大するように細菌を改変した後に、フィブロイン様タンパク質遺伝子を導入することによっても得ることができる。本発明の細菌を構築するための改変は、任意の順番で行うことができる。
tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の発現が増大するように細菌を改変することにより、細菌のフィブロイン様タンパク質の生産能を向上させることができる。すなわち、本発明の細菌を用いることにより、非改変株(tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の発現が増大するように改変されていない対照株)を用いた場合と比較して、フィブロイン様タンパク質の生産を向上させることができる。フィブロイン様タンパク質の生産の向上としては、例えば、培養液単位容積当たりのフィブロイン様タンパク質の蓄積量の向上や菌体単位重量当たりのフィブロイン様タンパク質の蓄積量の向上が挙げられる。
「tRNA遺伝子」とは、tRNAをコードする遺伝子をいう。本発明の細菌において発現を増強するtRNA遺伝子は、tRNA(Gly)遺伝子、tRNA(Gln)遺伝子、tRNA(Ala)遺伝子、およびtRNA(Pro)遺伝子である。「tRNA(Gly)遺伝子」、「tRNA(Gln)遺伝子」、「tRNA(Ala)遺伝子
」、および「tRNA(Pro)遺伝子」とは、それぞれ、tRNA(Gly)、tRNA(Gln)、tRNA(Ala)、およびtRNA(Pro)をコードする遺伝子をいう。tRNA(Gly)遺伝子、tRNA(Gln)遺伝子、tRNA(Ala)遺伝子、およびtRNA(Pro)遺伝子としては、それぞれ、1種の遺伝子の発現を増強して
もよく、2種またはそれ以上の遺伝子の発現を増強してもよい。
「tRNA(Gly)」とは、グリシンのtRNAをいう。「tRNA(Gly)」とは、具体的には、グリシンと結合してグリシルtRNAとなり、翻訳中のペプチド鎖にグリシンを転移させるためのアダプター分子として機能するRNAであってよい。同機能を「tRNA(Gly)の機能」ともいう。tRNA(Gly)遺伝子としては、glyV、glyX、glyY、glyT、glyU、glyW遺伝子が挙げられる。tRNA(Gly)遺伝子としては、例えば、glyV、glyX、glyY、glyT、glyU、およびglyW遺伝子から選択される1種またはそれ以上の遺伝子の発現を増強してよい。tRNA(Gly)遺伝子とし
ては、具体的には、例えば、glyV、glyT、およびglyU遺伝子の発現を増強してもよい。
「tRNA(Gln)」とは、グルタミンのtRNAをいう。「tRNA(Gln)」とは、具体的には、グルタミンと結合してグルタミニルtRNAとなり、翻訳中のペプチド鎖にグルタミンを転移させるためのアダプター分子として機能するRNAであってよい。同機能を「tRNA(Gln)の機能」ともいう。tRNA(Gln)遺伝子としては、glnU、glnW、glnV、glnX遺伝子が挙げられる。tRNA(Gln)遺伝子としては、例えば、glnU、glnW、glnV、およびglnX遺伝子から選択される1種またはそれ以上の遺伝子の発現を増強してよい。tRNA(Gln)遺伝子としては、具体的に
は、例えば、glnUおよびglnV遺伝子の発現を増強してもよい。
「tRNA(Ala)」とは、アラニンのtRNAをいう。「tRNA(Ala)」とは、具体的には、アラニンと結合してアラニルtRNAとなり、翻訳中のペプチド鎖にアラニンを転移させるためのアダプター分子として機能するRNAであってよい。同機能を「tRNA(Ala)の機能」ともいう。tRNA(Ala)遺伝子としては、alaU、alaV、alaW、alaX、alaT遺伝子が挙げられる。tRNA(Ala)遺伝子としては、例えば、alaU、alaV、alaW、alaX、およびalaT遺伝子から選択される1種またはそれ以上の遺伝子の発現を増強してよい。tRNA(Ala)遺伝子としては、具体的
には、例えば、alaUおよびalaW遺伝子の発現を増強してもよい。
「tRNA(Pro)」とは、プロリンに対応するtRNAをいう。「tRNA(Pro)」とは、具体的には、プロリンと結合してプロリルtRNAとなり、翻訳中のペプチド鎖にプロリンを転移させるためのアダプター分子として機能するRNAであってよい。同機能を「tRNA(Pro)の機能」ともいう。tRNA(Pro)遺伝子としては、proK、proL、proM遺伝子が挙げられる。tRNA(Pro)遺伝子としては、例えば、proK、proL、およびproM遺伝子から選択される1種またはそれ以上の遺伝子の発現を増強してよい。tRNA(Pro)遺伝子としては、具体的には、例えば、proKおよびproL遺伝子の発現を増強してもよい。
「アミノアシルtRNA合成酵素遺伝子」とは、アミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子をいう。「アミノアシルtRNA合成酵素」とは、アミノ酸を対応するtRNAにエステル結合させアミノアシルtRNAを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう。同活性を「アミノアシルtRNA合成酵素活性」ともいう。本発明の細菌において発現を増強するアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子は、グリシル(glycyl-tRNA synthetase)tRNA合成酵素遺伝子、グルタミニル(glutaminyl-tRNA synthetase)tRNA合成酵素遺伝子、アラニルtRNA合成酵素(alanyl-tRNA synthetase)遺伝子、およびプロリルtRNA合成酵素(prolyl-tRNA synthetase)遺伝子である。「グリシルtRNA合成酵素遺伝子」、「グルタミニルtRNA合成酵素遺伝子」、「アラニルtRNA合成酵素遺伝子」、および「プロリルtRNA合成酵素遺伝子」とは、それぞれ、グリシルtRNA合成酵素、グルタミニルtRNA合成酵素、アラニルtRNA合成酵素、およびプロリルtRNA合成酵素をコードする遺伝子をいう。グリシルtRNA合成酵素遺伝子、グルタミニルtRNA合成酵素遺伝子、アラニルtRNA合成酵素遺伝子、およびプロリルtRNA合成酵素遺伝子としては、それぞれ、1種の遺伝子の発現を増強してもよく、2種またはそれ以上の遺伝子の発現を増強してもよい。
「グリシルtRNA合成酵素」とは、グリシンを対応するtRNAにエステル結合させグリシルtRNAを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう(EC 6.1.1.14)。同活性
を「グリシルtRNA合成酵素活性」ともいう。グリシルtRNA合成酵素は、グリシンtRNAリガーゼ(glycine-tRNA ligase)等とも呼ばれる。グリシルtRNA合成酵素遺伝子としては、glyQ遺伝子およびglyS遺伝子が挙げられる。glyQ遺伝子およびglyS遺伝子は、それぞれ、
グリシルtRNA合成酵素のαサブユニット(小サブユニット)およびβサブユニット(小サブユニット)をコードする。グリシルtRNA合成酵素遺伝子としては、例えば、glyQ遺伝子およびglyS遺伝子の一方または両方の発現を増強してよい。
「グルタミニルtRNA合成酵素」とは、グルタミンを対応するtRNAにエステル結合させグルタミニルtRNAを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう(EC 6.1.1.18
)。同活性を「グルタミニルtRNA合成酵素活性」ともいう。グルタミニルtRNA合成酵素は、グルタミンtRNAリガーゼ(glutamine-tRNA ligase)等とも呼ばれる。グルタミニルtRNA合成酵素遺伝子としては、glnS遺伝子が挙げられる。
「アラニルtRNA合成酵素」とは、アラニンを対応するtRNAにエステル結合させアラニルtRNAを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう(EC 6.1.1.7)。同活性を「アラニルtRNA合成酵素活性」ともいう。アラニルtRNA合成酵素は、アラニンtRNAリガーゼ(alanine-tRNA ligase)等とも呼ばれる。アラニルtRNA合成酵素遺伝子としては、alaS遺伝子が挙げられる。
「プロリルtRNA合成酵素」とは、プロリンを対応するtRNAにエステル結合させプロリルtRNAを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう(EC 6.1.1.15)。同活性
を「プロリルtRNA合成酵素活性」ともいう。プロリルtRNA合成酵素は、プロリンtRNAリガーゼ(proline-tRNA ligase)等とも呼ばれる。プロリルtRNA合成酵素遺伝子としては、proS遺伝子が挙げられる。
glyQ遺伝子、glyS遺伝子、glnS遺伝子、alaS遺伝子、proS遺伝子にコードされるタンパク質を、それぞれ、GlyQタンパク質、GlySタンパク質、GlnSタンパク質、AlaSタンパク質、ProSタンパク質ともいう。
より具体的には、例えば、少なくともglyV、glyT、glyU、glnU、glnV、alaU、alaW、proK、proL、glyQ、glyS、glnS、alaS、およびproS遺伝子の発現を増強してもよい。
tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子としては、各種生物の遺伝子が挙げ
られる。tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子として、具体的には、例えば、腸内細菌科に属する細菌やコリネ型細菌等の細菌の遺伝子が挙げられる。各種生物由来のtRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の塩基配列ならびにそれらの遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ酸配列は、例えば、NCBI等の公開データベースから取得できる。エシェリヒア・コリK-12 MG1655株のglyV、glyT、glyU、glnU、glnV、alaU、alaW、proK、proL、proM、glyQ、glyS、glnS、alaS、proS遺伝子の塩基配列を、それ
ぞれ、配列番号19〜29、31、33、35、および37に示す。なお、MG1655株のglyX、glyY、およびglyW遺伝子の塩基配列は、glyV遺伝子の塩基配列と同一である。すなわち、「glyV遺伝子」、「glyX遺伝子」、「glyY遺伝子」、および「glyW遺伝子」という用語は、互いに同義であり得る。また、MG1655株のglnW遺伝子の塩基配列は、glnU遺伝子の塩基配列と同一である。すなわち、「glnU遺伝子」および「glnW遺伝子」という用語は、互いに同義であり得る。また、MG1655株のglnX遺伝子の塩基配列は、glnV遺伝子の塩基配列と同一である。すなわち、「glnV遺伝子」および「glnX遺伝子」という用語は、互いに同義であり得る。また、MG1655株のalaVおよびalaT遺伝子の塩基配列は、alaU遺伝子の塩基配列と同一である。すなわち、「alaU遺伝子」、および「alaV遺伝子」、「alaT遺伝子」という用語は、互いに同義であり得る。また、MG1655株のalaX遺伝子の塩基配列は、alaW遺伝子の塩基配列と同一である。すなわち、「alaW遺伝子」および「alaX遺伝子」という用語は、互いに同義であり得る。また、MG1655株のGlyQ、GlyS、GlnS、AlaS、ProSタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号30、32、34、36、および38に示す。
すなわち、glyV、glyT、glyU、glnU、glnV、alaU、alaW、proK、proL、proM、glyQ、glyS、glnS、alaS、proS遺伝子は、それぞれ、配列番号19〜29、31、33、35、および37に示す塩基配列を有していてよい。また、GlyQ、GlyS、GlnS、AlaS、ProSタンパク質は、それぞれ、配列番号30、32、34、36、および38に示すアミノ酸配列を有していてよい。
tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子は、上記例示したtRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子(例えば、配列番号19〜29、31、33、35、および37に示す塩基配列を有する遺伝子)の保存的バリアントであってもよい。同様に、アミノアシルtRNA合成酵素は、上記例示したアミノアシルtRNA合成酵素(例えば、配列番号30、32、34、36、および38に示すアミノ酸配列を有する遺伝子)の保存的バリアントであってもよい。「glyV遺伝子」、「glyX遺伝子」、「glyY遺伝子」、「glyT遺伝子」、「glyU遺伝子」、「glyW遺伝子」、「glnU遺伝子」、「glnW遺伝子」、「glnV遺伝子」、「glnX遺伝子」、「alaU遺伝子」、「alaV遺伝子」、「alaW遺伝子」、「alaX遺伝子」、「alaT遺伝子」、「proK遺伝子」、「proL遺伝子」、「proM遺伝子」、「glyQ遺伝子」、「glyS遺伝子」、「glnS遺伝子」、「alaS遺伝子」、および「proS遺伝子」という用語は、それぞれ、上記例示したglyV、glyX、glyY、glyT、glyU、glyW、glnU、glnW、glnV、glnX、alaU、alaV、alaW、alaX、alaT、proK、proL、proM、glyQ、glyS、glnS、alaS、およびproS遺伝子に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。また、「GlyQタンパク質」、「GlySタンパク質」、「GlnSタンパク質」、「AlaSタンパク質」、および「ProSタンパク質」という用語は、それぞれ、上記例示したGlyQ、GlyS、GlnS、AlaS、およびProSタンパク質に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子ならびにアミノアシルtRNA合成酵素の保存的バリアントについては、上述したフィブロイン様タンパク質遺伝子およびフィブロイン様タンパク質の保存的バリアントに関する記載を準用できる。
なお、「元の機能が維持されている」とは、tRNA遺伝子にあっては、遺伝子のバリアントが、元の機能が維持されたRNAをコードすることをいう。また、「元の機能が維持され
ている」とは、tRNAにあっては、RNAのバリアントが、対応するtRNAの機能(すなわち、t
RNA(Gly)、tRNA(Gln)、tRNA(Ala)、およびtRNA(Pro)について、それぞれ、tRNA(Gly)の機能、tRNA(Gln)の機能、tRNA(Ala)の機能、およびtRNA(Pro)の機能)を有することをいう
。また、「元の機能が維持されている」とは、アミノアシルtRNA合成酵素遺伝子にあっては、遺伝子のバリアントが、元の機能が維持されたタンパク質をコードすることをいう。また、「元の機能が維持されている」とは、アミノアシルtRNA合成酵素にあっては、タンパク質のバリアントが、対応するアミノアシルtRNA合成酵素活性(すなわち、グリシルtRNA合成酵素、グルタミニルtRNA合成酵素、アラニルtRNA合成酵素、およびプロリルtRNA合成酵素について、それぞれ、グリシルtRNA合成酵素活性、グルタミニルtRNA合成酵素活性、アラニルtRNA合成酵素活性、およびプロリルtRNA合成酵素活性)を有することをいう。
アミノアシルtRNA合成酵素活性は、例えば、ATPの存在下で酵素を基質(活性を測定す
るアミノアシルtRNA合成酵素に対応するアミノ酸およびtRNA)とインキュベートし、酵素および基質依存的なAMPの生成を測定することにより測定できる。
<2−4>遺伝子の発現を増大(上昇)させる手法
以下に、遺伝子の発現を増大させる手法について説明する。
「遺伝子の発現が上昇する」とは、同遺伝子の発現が野生株や親株等の非改変株と比較して増大することを意味する。「遺伝子の発現が上昇する」とは、具体的には、同遺伝子の細胞当たりの発現量が非改変株と比較して増大することを意味してよい。ここでいう「非改変株」とは、標的の遺伝子の発現が増大するように改変されていない対照株を意味する。非改変株としては、野生株や親株が挙げられる。非改変株として、具体的には、各細菌種の基準株(type strain)が挙げられる。また、非改変株として、具体的には、細菌
の説明において例示した菌株も挙げられる。すなわち、一態様において、遺伝子の発現は、基準株(すなわち本発明の細菌が属する種の基準株)と比較して増大してよい。また、別の態様において、遺伝子の発現は、E.coli K-12 MG1655株と比較して増大してもよい。また、別の態様において、遺伝子の発現は、E.coli K-12 BLR(DE3)株と比較して増大してもよい。「遺伝子の発現が上昇する」とは、より具体的には、遺伝子の転写量(mRNAやtRNA等のRNAの量)が増大すること、および/または、遺伝子の翻訳量(タンパク質の量)が増大することを意味してよい。また、「遺伝子の発現が上昇する」とは、具体的には、同遺伝子にコードされるタンパク質の活性が増大することを意味してもよい。なお、「遺伝子の発現が上昇する」ことを、「遺伝子の発現が増強される」ともいう。遺伝子の発現は、例えば、非改変株の、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。また、「遺伝子の発現が上昇する」とは、もともと標的の遺伝子が発現している菌株において同遺伝子の発現量を上昇させることだけでなく、もともと標的の遺伝子が発現していない菌株において、同遺伝子を発現させることを含む。すなわち、「遺伝子の発現が上昇する」とは、例えば、標的の遺伝子を保持しない菌株に同遺伝子を導入し、同遺伝子を発現させることを含む。
遺伝子の発現の上昇は、例えば、遺伝子のコピー数を増加させることにより達成できる。
遺伝子のコピー数の増加は、宿主の染色体へ同遺伝子を導入することにより達成できる。染色体への遺伝子の導入は、例えば、相同組み換えを利用して行うことができる(Miller, J. H. Experiments in Molecular Genetics, 1972, Cold Spring Harbor Laboratory)。相同組み換えを利用する遺伝子導入法としては、例えば、Redドリブンインテグレー
ション(Red-driven integration)法(Datsenko, K. A, and Wanner, B. L. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 97:6640-6645 (2000))等の直鎖状DNAを用いる方法、温度感受
性複製起点を含むプラスミドを用いる方法、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないスイサイドベクターを用いる方法、ファージを用いた
transduction法が挙げられる。遺伝子は、1コピーのみ導入されてもよく、2コピーまたはそれ以上導入されてもよい。例えば、染色体上に多数のコピーが存在する配列を標的として相同組み換えを行うことで、染色体へ遺伝子の多数のコピーを導入することができる。染色体上に多数のコピーが存在する配列としては、反復DNA配列(repetitive DNA)、
トランスポゾンの両端に存在するインバーテッド・リピートが挙げられる。また、目的物質の生産に不要な遺伝子等の染色体上の適当な配列を標的として相同組み換えを行ってもよい。また、遺伝子は、トランスポゾンやMini-Muを用いて染色体上にランダムに導入す
ることもできる(特開平2-109985号公報、US5,882,888、EP805867B1)。
染色体上に標的遺伝子が導入されたことの確認は、同遺伝子の全部又は一部と相補的な配列を持つプローブを用いたサザンハイブリダイゼーション、又は同遺伝子の配列に基づいて作成したプライマーを用いたPCR等によって確認できる。
また、遺伝子のコピー数の増加は、同遺伝子を含むベクターを宿主に導入することによっても達成できる。例えば、標的遺伝子を含むDNA断片を、宿主で機能するベクターと連結して同遺伝子の発現ベクターを構築し、当該発現ベクターで宿主を形質転換することにより、同遺伝子のコピー数を増加させることができる。標的遺伝子を含むDNA断片は、例えば、標的遺伝子を有する微生物のゲノムDNAを鋳型とするPCRにより取得できる。ベクターとしては、宿主の細胞内において自律複製可能なベクターを用いることができる。ベクターは、マルチコピーベクターであるのが好ましい。また、形質転換体を選択するために、ベクターは抗生物質耐性遺伝子などのマーカーを有することが好ましい。また、ベクターは、挿入された遺伝子を発現するためのプロモーターやターミネーターを備えていてもよい。ベクターは、例えば、細菌プラスミド由来のベクター、酵母プラスミド由来のベクター、バクテリオファージ由来のベクター、コスミド、またはファージミド等であってよい。エシェリヒア・コリ等の腸内細菌科の細菌において自律複製可能なベクターとして、具体的には、例えば、pUC19、pUC18、pHSG299、pHSG399、pHSG398、pBR322、pSTV29(いずれもタカラバイオ社より入手可)、pACYC184、pMW219(ニッポンジーン社)
、pTrc99A(ファルマシア社)、pPROK系ベクター(クロンテック社)、pKK233‐2(クロ
ンテック社)、pET系ベクター(ノバジェン社)、pQE系ベクター(キアゲン社)、pCold TF DNA(タカラバイオ社)、pACYC系ベクター、広宿主域ベクターRSF1010が挙げられる。コリネ型細菌で自律複製可能なベクターとして、具体的には、例えば、pHM1519(Agric. Biol. Chem., 48, 2901-2903(1984));pAM330(Agric. Biol. Chem., 48, 2901-2903(1984));これらを改良した薬剤耐性遺伝子を有するプラスミド;pCRY30(特開平3-210184
);pCRY21、pCRY2KE、pCRY2KX、pCRY31、pCRY3KE、およびpCRY3KX(特開平2-72876、米
国特許5,185,262号);pCRY2およびpCRY3(特開平1-191686);pAJ655、pAJ611、およびpAJ1844(特開昭58-192900);pCG1(特開昭57-134500);pCG2(特開昭58-35197);pCG4およびpCG11(特開昭57-183799);pVK7(特開平10-215883);pVK9(US2006-0141588)
;pVC7(特開平9-070291);pVS7(WO2013/069634)が挙げられる。
遺伝子を導入する場合、遺伝子は、発現可能に宿主に保持されていればよい。具体的には、遺伝子は、宿主で機能するプロモーター配列による制御を受けて発現するように導入されていればよい。プロモーターは、宿主において機能するものであれば特に制限されない。「宿主において機能するプロモーター」とは、宿主においてプロモーター活性を有するプロモーターをいう。プロモーターは、宿主由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。プロモーターは、導入する遺伝子の固有のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。プロモーターとしては、例えば、後述するような、より強力なプロモーターを利用してもよい。
遺伝子の下流には、転写終結用のターミネーターを配置することができる。ターミネーターは、宿主において機能するものであれば特に制限されない。ターミネーターは、宿主
由来のターミネーターであってもよく、異種由来のターミネーターであってもよい。ターミネーターは、導入する遺伝子の固有のターミネーターであってもよく、他の遺伝子のターミネーターであってもよい。ターミネーターとして、具体的には、例えば、T7ターミネーター、T4ターミネーター、fdファージターミネーター、tetターミネーター、およびtrpAターミネーターが挙げられる。
各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーターに関しては、例えば「微生物学基礎講座8 遺伝子工学、共立出版、1987年」に詳細に記載されており、それらを利用することが可能である。
また、2またはそれ以上の遺伝子を導入する場合、各遺伝子が、発現可能に宿主に保持されていればよい。例えば、各遺伝子は、全てが単一の発現ベクター上に保持されていてもよく、全てが染色体上に保持されていてもよい。また、各遺伝子は、複数の発現ベクター上に別々に保持されていてもよく、単一または複数の発現ベクター上と染色体上とに別々に保持されていてもよい。また、2またはそれ以上の遺伝子でオペロンを構成して導入してもよい。「2またはそれ以上の遺伝子を導入する場合」としては、例えば、tRNA遺伝子およびアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子から選択される1種またはそれ以上の遺伝子とフィブロイン様タンパク質遺伝子とを導入する場合が挙げられる。
導入される遺伝子は、宿主で機能する産物(例えばRNAやタンパク質)をコードするものであれば特に制限されない。導入される遺伝子は、宿主由来の遺伝子であってもよく、異種由来の遺伝子であってもよい。導入される遺伝子は、例えば、同遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用い、同遺伝子を有する生物のゲノムDNAや同遺伝子を
搭載するプラスミド等を鋳型として、PCRにより取得することができる。また、導入され
る遺伝子は、例えば、同遺伝子の塩基配列に基づいて全合成してもよい(Gene, 60(1), 115-127 (1987))。取得した遺伝子は、そのまま、あるいは適宜改変して、利用すること
ができる。すなわち、遺伝子を改変することにより、そのバリアントを取得することができる。遺伝子の改変は公知の手法により行うことができる。例えば、部位特異的変異法により、DNAの目的部位に目的の変異を導入することができる。すなわち、例えば、部位特
異的変異法により、コードされるタンパク質が特定の部位においてアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加を含むように、遺伝子のコード領域を改変することができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., 61, in PCR technology, Erlich, H. A. Eds., Stockton press (1989);Carter, P., Meth. in Enzymol., 154, 382 (1987))や、ファージを用いる方法(Kramer,W. and Frits, H. J., Meth. in Enzymol., 154, 350 (1987);Kunkel, T. A. et al., Meth. in Enzymol., 154, 367 (1987))が挙げられる。あるいは、遺伝子のバリアントを全合成してもよい。
なお、標的の遺伝子にコードされるタンパク質が複数のサブユニットからなる複合体として機能する場合、結果として遺伝子の発現増強の効果が得られる限り(例えば、タンパク質の活性が増大する限り)、それらのサブユニットをコードする複数の遺伝子の全ての発現を増強してもよく、一部の発現のみを増強してもよい。通常は、それらのサブユニットをコードする複数の遺伝子の全ての発現を増強するのが好ましい。また、複合体を構成する各サブユニットは、複合体が標的のタンパク質の機能を有する限り、1種の生物由来であってもよく、2種またはそれ以上の異なる生物由来であってもよい。すなわち、例えば、複数のサブユニットをコードする、同一の生物由来の遺伝子を宿主に導入してもよく、それぞれ異なる生物由来の遺伝子を宿主に導入してもよい。
また、遺伝子の発現の上昇は、遺伝子の転写効率を向上させることにより達成できる。また、遺伝子の発現の上昇は、遺伝子の翻訳効率を向上させることにより達成できる。遺伝子の転写効率や翻訳効率の向上は、例えば、発現調節配列の改変により達成できる。「
発現調節配列」とは、遺伝子の発現に影響する部位の総称である。発現調節配列としては、例えば、プロモーター、シャインダルガノ(SD)配列(リボソーム結合部位(RBS)ともいう)、およびRBSと開始コドンとの間のスペーサー領域が挙げられる。発現調節配列は、プロモーター検索ベクターやGENETYX等の遺伝子解析ソフトを用いて決定することができる。これら発現調節配列の改変は、例えば、温度感受性ベクターを用いた方法や、Redドリブンインテグレーション法(WO2005/010175)により行うことがで
きる。
遺伝子の転写効率の向上は、例えば、染色体上の遺伝子のプロモーターをより強力なプロモーターに置換することにより達成できる。「より強力なプロモーター」とは、遺伝子の転写が、もともと存在している野生型のプロモーターよりも向上するプロモーターを意味する。より強力なプロモーターとしては、例えば、公知の高発現プロモーターであるT7プロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、thrプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、tetプロモーター、araBADプロモーター、rpoHプロモーター、msrAプロモーター、Bifidobacterium由来のPm1プロモーター、PRプロモーター、およびPLプロモーターが挙げられる。また、コリネ型細菌で利用できるより強力なプロモーターとしては、例えば、人為的に設計変更されたP54-6プロモーター(Appl. Microbiol. Biotechnolo., 53, 674-679(2000))、コリネ型細菌内で酢酸、エタノール、ピルビン酸等で誘導でき
るpta、aceA、aceB、adh、amyEプロモーター、コリネ型細菌内で発現量が多い強力なプロモーターであるcspB、SOD、tuf(EF-Tu)プロモーター(Journal of Biotechnology 104 (2003) 311-323, Appl Environ Microbiol. 2005 Dec;71(12):8587-96.)、lacプロモー
ター、tacプロモーター、trcプロモーターが挙げられる。また、より強力なプロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得してもよい。例えば、プロモーター領域内の-35、-10領域をコンセンサス配列に近づけることにより、プロモーターの活性を高めることができる(国際公開第00/18935号)。高活性型プロモーターとしては、各種tac様プロモーター(Katashkina JI et al. Russian Federation Patent application 2006134574)やpnlp8プロモーター(WO2010/027045)が挙げられる。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev.,
1, 105-128 (1995))等に記載されている。
遺伝子の翻訳効率の向上は、例えば、染色体上の遺伝子のシャインダルガノ(SD)配列(リボソーム結合部位(RBS)ともいう)をより強力なSD配列に置換することにより達成できる。「より強力なSD配列」とは、mRNAの翻訳が、もともと存在している野生型のSD配列よりも向上するSD配列を意味する。より強力なSD配列としては、例えば、ファージT7由来の遺伝子10のRBSが挙げられる(Olins P. O. et al, Gene,
1988, 73, 227-235)。さらに、RBSと開始コドンとの間のスペーサー領域、特に開始コドンのすぐ上流の配列(5’-UTR)における数個のヌクレオチドの置換、あるいは挿入
、あるいは欠失がmRNAの安定性および翻訳効率に非常に影響を及ぼすことが知られており、これらを改変することによっても遺伝子の翻訳効率を向上させることができる。
遺伝子の翻訳効率の向上は、例えば、コドンの改変によっても達成できる。例えば、遺伝子中に存在するレアコドンを、より高頻度で利用される同義コドンに置き換えることにより、遺伝子の翻訳効率を向上させることができる。すなわち、導入される遺伝子は、例えば、使用する宿主のコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変されてよい。コドンの置換は、例えば、DNAの目的の部位に目的の変異を導入する部位特異的変異法により行うことができる。また、コドンが置換された遺伝子を全合成してもよい。種々の生物におけるコドンの使用頻度は、「コドン使用データベース」(http://www.kazusa.or.jp/codon; Nakamura, Y. et al, Nucl. Acids Res., 28, 292 (2000))に開示され
ている。
また、遺伝子の発現の上昇は、遺伝子の発現を上昇させるようなレギュレーターを増幅すること、または、遺伝子の発現を低下させるようなレギュレーターを欠失または弱化させることによっても達成できる。
上記のような遺伝子の発現を上昇させる手法は、単独で用いてもよく、任意の組み合わせで用いてもよい。
形質転換の方法は特に限定されず、従来知られた方法を用いることができる。例えば、エシェリヒア・コリ K-12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウム
で処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel, M. and Higa, A.,J. Mol. Biol. 1970, 53,
159-162)や、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法(Duncan, C. H., Wilson, G. A. and Young, F. E.., 1997. Gene 1: 153-167)を用いることができる。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類、及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組
換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang, S. and Choen, S. N., 1979.Mol. Gen. Genet. 168: 111-115; Bibb, M. J., Ward, J. M. and Hopwood, O. A. 1978.Nature 274: 398-400;
Hinnen, A., Hicks, J. B. and Fink, G. R. 1978. Proc. Natl.Acad. Sci. USA 75: 1929-1933)も応用できる。あるいは、コリネ型細菌について報告されているような、電気
パルス法(特開平2-207791)を利用することもできる。
遺伝子の発現が上昇したことは、同遺伝子の転写量が上昇したことを確認することや、同遺伝子から発現するタンパク質の量が上昇したことを確認することにより確認できる。また、遺伝子の発現が上昇したことは、同遺伝子から発現するタンパク質の活性が増大したことを確認することにより確認できる。
遺伝子の転写量が上昇したことの確認は、同遺伝子から転写されるmRNAやtRNA等のRNA
の量を野生株または親株等の非改変株と比較することによって行うことができる。mRNAやtRNA等のRNAの量を評価する方法としてはノーザンハイブリダイゼーション、RT-PCR等が
挙げられる(Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual/Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (USA), 2001)。mRNAやtRNA等のRNAの量は、例えば、非改変株の、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。
タンパク質の量が上昇したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって行うことができる(Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (USA), 2001))。タンパク質の量は、例えば、非改変株の、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。
タンパク質の活性が増大したことは、同タンパク質の活性を測定することで確認できる。タンパク質の活性は、例えば、非改変株の、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。
上記した遺伝子の発現を増大させる手法は、フィブロイン様タンパク質遺伝子、tRNA遺伝子、アミノアシルtRNA合成酵素遺伝子等の任意の遺伝子の発現増強や導入に利用できる。
<3>本発明の方法
本発明の方法は、本発明の細菌を培地で培養すること、およびフィブロイン様タンパク
質を採取することを含む、フィブロイン様タンパク質の製造方法である。
培養条件は、本発明の細菌が増殖でき、且つ、フィブロイン様タンパク質が生産される限り、特に制限されない。培養条件は、細菌の種類等の諸条件に応じて適宜設定してよい。
培地としては、例えば、エシェリヒア・コリ等の細菌の培養に用いられる通常の培地を、そのまま、あるいは適宜改変して、用いることができる。培地としては、例えば、炭素源、窒素源、リン酸源、硫黄源、その他の各種有機成分や無機成分から選択される成分を必要に応じて含有する液体培地を用いることができる。培地成分の種類や濃度は、当業者が適宜設定してよい。
炭素源として、具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、廃糖蜜、澱粉加水分解物、バイオマスの加水分解物等の糖類、酢酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸類、グリセロール、粗グリセロール、エタノール等のアルコール類、脂肪酸類が挙げられる。炭素源としては、1種の炭素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の炭素源を組み合わせて用いてもよい。
窒素源として、具体的には、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、大豆タンパク質分解物等の有機窒素源、アンモニア、ウレアが挙げられる。窒素源としては、1種の窒素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の窒素源を組み合わせて用いてもよい。
リン酸源として、具体的には、例えば、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム等のリン酸塩、ピロリン酸等のリン酸ポリマーが挙げられる。リン酸源としては、1種のリン酸源を用いてもよく、2種またはそれ以上のリン酸源を組み合わせて用いてもよい。
硫黄源として、具体的には、例えば、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩等の無機硫黄化合物、システイン、シスチン、グルタチオン等の含硫アミノ酸が挙げられる。硫黄源としては、1種の硫黄源を用いてもよく、2種またはそれ以上の硫黄源を組み合わせて用いてもよい。
その他の各種有機成分や無機成分として、具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の微量金属類;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ビタミンB12等のビ
タミン類;アミノ酸類;核酸類;これらを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆タンパク質分解物等の有機成分が挙げられる。その他の各種有機成分や無機成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
また、生育にアミノ酸等の栄養素を要求する栄養要求性株を使用する場合には、培地に要求される栄養素を補添することが好ましい。また、抗生物質耐性遺伝子を搭載するベクターを用いて遺伝子を導入した際は、培地に対応する抗生物質を添加するのが好ましい。
培養は、例えば、通気培養または振盪培養により、好気的に行うことができる。酸素濃度は、例えば、飽和溶存酸素濃度の5〜50%、好ましくは飽和溶存酸素濃度の20〜40%となるように制御されてよい。培養温度は、例えば、20〜45℃、25〜40℃、または30〜37℃であってよい。培養中のpHは、例えば、5〜9であってよい。尚、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、例えば、炭酸カルシウム、ア
ンモニアガス、アンモニア水等、を使用することができる。培養は、回分培養(batch culture)、流加培養(fed-batch culture)、連続培養(continuous culture)、またはそれらの組み合わせにより実施することができる。また、培養は、前培養と本培養とに分けて行われてもよい。その場合、種培養と本培養の培養条件は、同一であってもよく、そうでなくてもよい。前培養は、例えば、平板培地や液体培地を用いて行ってよい。培養期間は、例えば、10時間〜120時間であってよい。培養は、例えば、培地中の炭素源が消費されるまで、あるいは本発明の細菌の活性がなくなるまで、継続してもよい。
培養の際には、必要に応じて、フィブロイン様タンパク質遺伝子等の遺伝子の発現誘導を行ってよい。発現誘導の条件は、プロモーターの種類等の諸条件に応じて適宜選択することができる。なお、特に、エシェリヒア・コリを宿主として用いる場合、フィブロイン様タンパク質の発現誘導時の有機酸蓄積を低減させること(WO2015/178465)やフィブロ
イン様タンパク質の発現誘導後の菌体増殖を低減すること(WO2015/178466)により、フ
ィブロイン様タンパク質を効率的に製造することができると期待される。
上記のようにして本発明の細菌を培養することにより、培地中および/または菌体内にフィブロイン様タンパク質が蓄積する。フィブロイン様タンパク質は、例えば、菌体内に封入体として蓄積し得る。
フィブロイン様タンパク質の回収および定量は、例えば、異種発現させたタンパク質を回収および定量する既知の方法(例えば、「新生化学実験講座 タンパク質VI 合成及び発現」日本生化学会編、東京化学同人(1992) pp183-184を参照)により行うことができる。
以下、フィブロイン様タンパク質が菌体内に封入体として蓄積する場合の回収および定量の手順について例示する。まず、培養液から菌体を遠心操作にて集菌後、緩衝液で懸濁する。菌体懸濁液を、超音波処理やフレンチプレス等の処理に供し、菌体を破砕する。菌体破砕の前に、菌体懸濁液にリゾチームを終濃度0-200 mg/lで添加し、氷中に30分から20時間放置してもよい。次いで、破砕物から、低速遠心分離(6000-15000 rpm, 5-10分、4
℃)により、不溶性画分を沈殿として得る。不溶性画分は、必要により、適宜緩衝液で洗浄する。洗浄回数は特に制限されず、例えば、1回、2回、または3回以上であってもよい。不溶性画分を緩衝液で懸濁することにより、フィブロイン様タンパク質の懸濁液が得られる。菌体やフィブロイン様タンパク質の懸濁用の緩衝液としては、フィブロイン様タンパク質の溶解性が低いものを好ましく用いることができる。そのような緩衝液としては、例えば、20mMトリス-塩酸、30 mM NaCl、10 mM EDTAを含む緩衝液や20mMトリス-塩酸、30 mM NaClを含む緩衝液が挙げられる。緩衝液のpHは、例えば、通常4〜12、好ましく
は6〜9であってよい。また、不溶性画分をSDS溶液や尿素溶液で溶解することにより、フ
ィブロイン様タンパク質の溶液が得られる。回収されるフィブロイン様タンパク質は、フィブロイン様タンパク質以外に、細菌菌体、培地成分、及び細菌の代謝副産物等の成分を含んでいてもよい。フィブロイン様タンパク質は、所望の程度に精製されていてよい。フィブロイン様タンパク質の量は、例えば、懸濁液や溶液等のフィブロイン様タンパク質を含むサンプルをSDS-PAGEに供して染色し、目的のフィブロイン様タンパク質の分子量に相当する位置のバンドの強度に基づいて決定することができる。染色は、CBB染色、蛍光染
色、銀染色等により行うことができる。定量の際には、濃度既知のタンパク質を標準として利用することができる。そのようなタンパク質としては、例えば、アルブミンや、別途濃度を決定したフィブロイン様タンパク質が挙げられる。
回収されたフィブロイン様タンパク質は、例えば、そのまま、あるいは適宜、繊維化等の加工を施してから利用することができる。フィブロイン様タンパク質の線維化は、例えば、既知の方法により行うことができる。フィブロイン様タンパク質の線維化は、具体的
には、例えば、WO2012/165476に記載の大吐糸管しおり糸タンパク質に由来するポリペプ
チドの繊維化に関する記載を参照して行うことができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明する。
参考例:フィブロイン様タンパク質生産菌の構築
フィブロイン様タンパク質遺伝子ADF3を発現するプラスミドpET22b-ADF3は、pET22b(+)ベクター(Novagen)を制限酵素NdeIとEcoRIによって切断した後、フィブロイン様タンパク質ADF3遺伝子をDNA Ligation Kit(TaKaRa)を用いて挿入して構築した。ADF3遺伝子の塩基配列を配列番号1に、同遺伝子がコードするフィブロイン様タンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。
翻訳関連因子搭載プラスミドpGQAPは、pGETS118ベクターを制限酵素SfiIによって切断
した後、エシェリヒア・コリK-12 MG1655株由来の14種の翻訳関連遺伝子(glyV, glyT, glyU, glnU, glnV, alaU, alaW, proK, proL, glyQ, glyS, glnS, alaS, proS)をOGAB法
(JP2004-129654)により集積して構築した。プラスミドpGQAPの全長の塩基配列を配列番号3に示す。
pET22b-ADF3およびpGQAPでエシェリヒア・コリBLR(DE3)株(F- ompT hsdSB(rB - mB -) gal dcm (DE3) Δ(srl-recA)306::Tn10 (TetR))を形質転換することにより、フィブロイ
ン様タンパク質生産菌エシェリヒア・コリBLR(DE3)/pET22b-ADF3/pGQAPを得た。また、pET22b-ADF3でエシェリヒア・コリBLR(DE3)株を形質転換することにより、フィブロイン様
タンパク質生産菌の対照株エシェリヒア・コリBLR(DE3)/pET22b-ADF3を得た。
実施例:フィブロイン様タンパク質の生産
フィブロイン様タンパク質生産菌BLR(DE3)/pET22b-ADF3株(対照株)およびBLR(DE3)/pET22b-ADF3/pGQAP株(pGQAP導入株)を用い、以下の手順により、培養を実施した。
坂口フラスコ中の表1に示したフラスコ培養用培地20mlに、フィブロイン様タンパク質生産菌を620nmの吸光度が0.1となるように植菌した。培養液の吸光度は分光光度計U-2800(HITACHI)を用いて測定した。培養液温度を37℃に保ち、120rpmにて振とう培養を行っ
た。
Figure 2017209104
グルコースと硫酸マグネシウム七水和物をA区、その他の成分をB区としてストック溶液を調製した。次いで、A区は、オートクレーブを用いて115℃、10分の条件で滅菌した。B
区は、水酸化カリウムを用いてpHを7に調整した後、オートクレーブを用いて115℃、10分の条件で滅菌した。その後、A区とB区を混合し、180℃、6時間乾熱滅菌を行った炭酸カル
シウムを終濃度30g/L、0.22μmのフィルターにて滅菌したアンピシリンを終濃度100 mg/Lとなるように添加し、フラスコ培養用培地とした。
培養開始後17時間目に、フラスコ培養用培地中のグルコースが全て消費されたことを確認し、表2に示したIPTG+グルコース混合液を培地の1/20量添加した。その後、培養を41時間まで継続した。
Figure 2017209104
水に溶解し、0.22 μmのフィルターを用いて滅菌した。
培養終了後、培地中に生産されたフィブロイン様タンパク質を定量した。定量結果の平均値を表3に示す。pGQAP導入株では、対照株に比べてフィブロイン蓄積量が高かった。
Figure 2017209104
<配列表の説明>
配列番号1:実施例で用いたフィブロイン様タンパク質遺伝子ADF3の塩基配列
配列番号2:実施例で用いたフィブロイン様タンパク質遺伝子ADF3がコードするフィブロイン様タンパク質のアミノ酸配列
配列番号3:翻訳関連因子搭載プラスミドpGQAPの塩基配列
配列番号4〜7:Alaリッチ部位の要件を満たす部分のアミノ酸配列
配列番号8〜18:Ala非リッチ部位の要件を満たす部分に含まれるモチーフのアミノ酸配列
配列番号19:Escherichia coli K-12 MG1655のglyV遺伝子の塩基配列
配列番号20:Escherichia coli K-12 MG1655のglyT遺伝子の塩基配列
配列番号21:Escherichia coli K-12 MG1655のglyU遺伝子の塩基配列
配列番号22:Escherichia coli K-12 MG1655のglnU遺伝子の塩基配列
配列番号23:Escherichia coli K-12 MG1655のglnV遺伝子の塩基配列
配列番号24:Escherichia coli K-12 MG1655のalaU遺伝子の塩基配列
配列番号25:Escherichia coli K-12 MG1655のalaW遺伝子の塩基配列
配列番号26:Escherichia coli K-12 MG1655のproK遺伝子の塩基配列
配列番号27:Escherichia coli K-12 MG1655のproL遺伝子の塩基配列
配列番号28:Escherichia coli K-12 MG1655のproM遺伝子の塩基配列
配列番号29:Escherichia coli K-12 MG1655のglyQ遺伝子の塩基配列
配列番号30:Escherichia coli K-12 MG1655のGlyQタンパク質のアミノ酸配列
配列番号31:Escherichia coli K-12 MG1655のglyS遺伝子の塩基配列
配列番号32:Escherichia coli K-12 MG1655のGlySタンパク質のアミノ酸配列
配列番号33:Escherichia coli K-12 MG1655のglnS遺伝子の塩基配列
配列番号34:Escherichia coli K-12 MG1655のGlnSタンパク質のアミノ酸配列
配列番号35:Escherichia coli K-12 MG1655のalaS遺伝子の塩基配列
配列番号36:Escherichia coli K-12 MG1655のAlaSタンパク質のアミノ酸配列
配列番号37:Escherichia coli K-12 MG1655のproS遺伝子の塩基配列
配列番号38:Escherichia coli K-12 MG1655のProSタンパク質のアミノ酸配列
配列番号39〜44:細胞接着配列

Claims (22)

  1. フィブロイン様タンパク質をコードする遺伝子を有する細菌を培地で培養すること、および
    フィブロイン様タンパク質を採取すること、
    を含む、フィブロイン様タンパク質の製造方法であって、
    前記細菌が、非改変株と比較して、tRNA(Gly)遺伝子、tRNA(Gln)遺伝子、tRNA(Ala)遺
    伝子、tRNA(Pro)遺伝子、グリシルtRNA合成酵素遺伝子、グルタミニルtRNA合成酵素遺伝
    子、アラニルtRNA合成酵素遺伝子、およびプロリルtRNA合成酵素遺伝子の発現が増大するように改変されている、方法。
  2. 前記tRNA(Gly)遺伝子が、glyV、glyX、glyY、glyT、glyU、およびglyW遺伝子から選択
    される1種またはそれ以上の遺伝子である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記tRNA(Gln)遺伝子が、glnU、glnW、glnV、およびglnX遺伝子から選択される1種ま
    たはそれ以上の遺伝子である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記tRNA(Ala)遺伝子が、alaU、alaV、alaW、alaX、およびalaT遺伝子から選択される
    1種またはそれ以上の遺伝子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記tRNA(Pro)遺伝子が、proK、proL、およびproM遺伝子から選択される1種またはそ
    れ以上の遺伝子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記グリシルtRNA合成酵素遺伝子が、glyQ遺伝子およびglyS遺伝子の一方または両方である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記グルタミニルtRNA合成酵素遺伝子が、glnS遺伝子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記アラニルtRNA合成酵素遺伝子が、alaS遺伝子である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記プロリルtRNA合成酵素遺伝子が、proS遺伝子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記glyV、glyX、glyY、およびglyW遺伝子が、それぞれ、配列番号19に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号19に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Gly)の機能を有するRNAをコードするDNAであり;
    前記glyT遺伝子が、配列番号20に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号20に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Gly)の機能
    を有するRNAをコードするDNAであり;
    前記glyU遺伝子が、配列番号21に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号21に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Gly)の機能
    を有するRNAをコードするDNAである、請求項2に記載の方法。
  11. 前記glnUおよびglnW遺伝子が、それぞれ、配列番号22に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号22に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Gln)の機能を有するRNAをコードするDNAであり;
    前記glnVおよびglnX遺伝子が、それぞれ、配列番号23に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号23に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且
    つ、tRNA(Gln)の機能を有するRNAをコードするDNAである、請求項3に記載の方法
  12. 前記alaU、alaV、およびalaT遺伝子が、それぞれ、配列番号24に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号24に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Ala)の機能を有するRNAをコードするDNAであり;
    前記alaWおよびalaX遺伝子が、それぞれ、配列番号25に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号25に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Ala)の機能を有するRNAをコードするDNAである、請求項4に記載の方法
  13. 前記proK遺伝子が、配列番号26に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号26に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Pro)の機能
    を有するRNAをコードするDNAであり;
    前記proL遺伝子が、配列番号27に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号27に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Pro)の機能
    を有するRNAをコードするDNAであり;
    前記proM遺伝子が、配列番号28に示す塩基配列を含むDNAであるか、配列番号28に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、且つ、tRNA(Pro)の機能
    を有するRNAをコードするDNAである、請求項5に記載の方法。
  14. 前記glyQ遺伝子が、配列番号30に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであるか、配列番号30に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、グリシルtRNA合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAであり;
    前記glyS遺伝子が、配列番号32に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであるか、配列番号32に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、グリシルtRNA合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAである、請求項6に記載の方法。
  15. 前記glnS遺伝子が、配列番号34に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであるか、配列番号34に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、グルタミニルtRNA合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAである、請求項7に記載の方法。
  16. 前記alaS遺伝子が、配列番号36に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであるか、配列番号36に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、アラニルtRNA合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAである、請求項8に記載の方法。
  17. 前記proS遺伝子が、配列番号38に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであるか、配列番号38に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、プロリルtRNA合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAである、請求項9に記載の方法。
  18. 少なくともglyV、glyT、glyU、glnU、glnV、alaU、alaW、proK、proL、glyQ、glyS、glnS、alaS、およびproS遺伝子の発現が増大している、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記各遺伝子の発現が、該遺伝子のコピー数を高めること、及び/又は該遺伝子の発現
    調節配列を改変することによって増大した、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記細菌が、エシェリヒア・コリである、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 前記フィブロイン様タンパク質が、細胞接着配列を含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 前記フィブロイン様タンパク質が、下記のタンパク質である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法:
    繰り返し構造と細胞接着配列を含むタンパク質であって、
    前記繰り返し構造が、繰り返し単位の3回〜15回の繰り返しからなり、
    各繰り返し単位が、Alaリッチ部位とAla非リッチ部位が連結してなり、
    各Alaリッチ部位が、8残基〜54残基のアミノ酸配列からなり、
    各Alaリッチ部位におけるAla残基の比率が、30%以上であり、
    各Alaリッチ部位が、同部位中のいずれの連続する4アミノ酸残基中にも少なくとも1個のAla残基を含み、
    各Ala非リッチ部位が、4残基以上のアミノ酸配列からなり、
    各Ala非リッチ部位におけるAla残基の比率が、20%以下であり、
    前記細胞接着配列が、前記繰り返し構造を構成する繰り返し単位から選択される1つまたはそれ以上の繰り返し単位中に含まれており、
    各細胞接着配列が、Arg−Gly−Aspを含む、3残基〜18残基のアミノ酸配列からなる、タンパク質。
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