以下、本発明の実施形態について、図面(図1〜図14)を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
≪実施形態1≫
まず、図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置1について説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の構成を示す図である。本実施形態において画像形成装置1は、カラー複写機である。
画像形成装置1は、用紙P上に画像を形成する装置であって、筐体10、給紙部2、搬送部L、トナー補給ユニット3、画像形成ユニット4、転写部5、電源部6、定着部7、排出部8、及び、制御部9を備える。用紙Pは、「記録媒体」の一例に相当する。
給紙部2は、筐体10の下部に配置され、用紙Pを搬送部Lへ供給する。給紙部2は、複数枚の用紙Pを収容可能であって、最上部の用紙Pを1枚ずつ搬送部Lへ供給する。
搬送部Lは、給紙部2によって供給された用紙Pを、転写部5及び定着部7を経由して排出部8まで搬送する。
トナー補給ユニット3は、画像形成ユニット4にトナーを供給する容器であって、4つのトナーカートリッジ3y、3c、3m、及び、3kを備える。トナーカートリッジ3yには、イエロー色のトナーが収容される。トナーカートリッジ3cには、シアン色のトナーが収容される。トナーカートリッジ3mには、マゼンタ色のトナーが収容される。トナーカートリッジ3kには、ブラック色のトナーが収容される。
画像形成ユニット4は、4つの画像形成部4y、4c、4m、4kを含む。画像形成部4yには、トナーカートリッジ3yからイエロートナーが供給される。画像形成部4cには、トナーカートリッジ3cからシアントナーが供給される。画像形成部4mには、トナーカートリッジ3mからマゼンタトナーが供給される。画像形成部4kには、トナーカートリッジ3kからブラックトナーが供給される。画像形成ユニット4の構成については、図2を参照して後述する。
転写部5は、中間転写ベルト54を備える。転写部5は、画像形成ユニット4によって、中間転写ベルト54上に形成されたトナー像を、用紙P上に転写する。転写部5の構成については、図2を参照して後述する。
電源部6は、転写部5に電圧を印加する。また、電源部6は、転写部5に流れる電流の電流値を検出する。電源部6の構成については、図3を参照して後述する。
定着部7は、転写部5によって用紙Pに形成されたトナー像を定着するローラー対であって、加熱ローラー71及び加圧ローラー72を備える。用紙Pは、加熱ローラー71及び加圧ローラー72によって加熱及び加圧される。その結果、定着部7によって、転写部5において用紙Pに転写された未定着のトナー像が定着される。排出部8は、トナー像が定着された用紙Pを装置の外部へ排出する。
制御部9は、画像形成装置1の動作を制御する。制御部9の構成については、図4を参照して後述する。
次に、図2を参照して画像形成ユニット4及び転写部5の構成について説明する。図2は、画像形成ユニット4及び転写部5の構成を示す側面図である。図2に示すように、画像形成ユニット4は、4つの画像形成部4y、4c、4m、4kを備える。
画像形成部4y、4c、4m、4kは、それぞれ、露光装置41、感光体ドラム42、現像部43、帯電ローラー44、及び、クリーニングブレード45を備える。4つの画像形成部4y、4c、4m、4kの構成は、供給されるトナーの色が異なるのみでその他の構成は略同一である。したがって、本明細書では、画像形成部4yの構成について説明し、画像形成部4y以外の画像形成部4c、4m、4kの構成についての説明は省略する。
画像形成部4yは、露光部41y(41)、感光体ドラム42y(42)、現像部43y(43)、帯電ローラー44y(44)、及び、クリーニングブレード45y(45)を有する。
帯電ローラー44yは、感光体ドラム42yを所定の電位に帯電させる。露光部41yは、感光体ドラム42yにレーザー光を照射して露光し、感光体ドラム42y上に静電潜像を形成する。現像部43yは、現像ローラー431yを有する。現像ローラー431yは、感光体ドラム42yにイエロートナーを供給して静電潜像を現像してトナー像を形成する。その結果、感光体ドラム42yの周面にイエロー色のトナー像が形成される。
クリーニングブレード45yは、その先端(図2では上端)が、感光体ドラム42yの周面と摺接する。感光体ドラム42yの周面とクリーニングブレード45yの先端とが摺接することで、感光体ドラム42yの周面に残留するイエロートナーが除去される。
転写部5は、用紙Pにトナー像を転写する。転写部5は、4つの1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)、2次転写ローラー52、駆動ローラー53、中間転写ベルト54、従動ローラー55、及び、ブレード56を備える。
転写部5は、各画像形成部4y、4c、4m、4kの感光体ドラム42(42y、42c、42m、42k)に形成された各トナー像を重ねて中間転写ベルト54に転写した後、重ねられたトナー像を中間転写ベルト54から用紙Pに転写する。
1次転写ローラー51yは、中間転写ベルト54を介して感光体ドラム42yに対向して配置される。1次転写ローラー51yは、図示しない駆動機構によって中間転写ベルト54を介して感光体ドラム42yに圧接したり、感光体ドラム42yから離れたりすることができる。1次転写ローラー51yは、通常、中間転写ベルト54を介して感光体ドラム42yに圧接されている。他の1次転写ローラー51c、51m、51kも1次転写ローラー51yと同様に、それぞれ対応する感光体ドラム42(42c、42m、又は42k)に中間転写ベルト54を介して圧接されている。
駆動ローラー53は、2次転写ローラー52に対向して配置され、中間転写ベルト54を駆動する。
中間転写ベルト54は、4つの1次転写ローラー51、駆動ローラー53、及び、従動ローラー55に張架された無端ベルトである。中間転写ベルト54は、駆動ローラー53によって、図2では矢印F1、F2に示す通り、反時計回りに回転駆動される。また、中間転写ベルト54は、その表面側が各感光体ドラム42(42y、42c、42m、42k)の周面に、それぞれ、当接している。中間転写ベルト54の表面には、1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)によって、感光体ドラム42(42y、42c、42m、42k)からトナー像が転写される。
従動ローラー55は、中間転写ベルト54の回転に伴って回転駆動される。従動ローラー55に、中間転写ベルト54を介して対向する位置には、ブレード56が配置されている。ブレード56は、中間転写ベルト54の表面に残留しているトナーを除去する。
2次転写ローラー52は、駆動ローラー53に押圧されている。これにより、2次転写ローラー52と駆動ローラー53との間にニップ部Nが形成される。2次転写ローラー52及び駆動ローラー53は、用紙Pがニップ部Nを通過する際に、中間転写ベルト54上のトナー像を用紙Pに転写する。
次に、図3を参照して、電源部6について説明する。図3は、電源部6の構成を示す側面図である。電源部6は、電圧印加部61及び電流検出部62を備えている。また、1次転写ローラー51には、電圧印加部61によって電圧が印加される。
電圧印加部61は、4つの電圧印加部61y、61c、61m、61kを含む。4つの電圧印加部61y、61c、61m、61kは、それぞれ、1次転写ローラー51y、51c、51m、51kに電圧を印加する。例えば、電圧印加部61yは、1次転写ローラー51yに電圧を印加する。また、感光体ドラム42(42y、42c、42m、42k)は、接地されている。その結果、電圧印加部61yは、1次転写ローラー51と感光体ドラム42との間に電圧を印加する。
電流検出部62は、4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kのそれぞれに流れる電流の合計電流値JSを検出する。なお、電流検出部62は1個に限られない。4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kに対応して図示しない4個の電流検出部62を設けることもできる。この場合には、4個の電流検出部62のそれぞれが、対応する1次転写ローラー51に流れる電流を検出する。
次に、図4を参照して、制御部9の構成について説明する。図4は、制御部9の構成を示す図である。制御部9は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリーを備える。メモリーには、制御プログラムが記憶される。CPUは、制御プログラムを実行することによって、各種機能部として機能する。また、CPUは、制御プログラムを実行することによって、メモリーを各種機能部として機能させる。その結果、制御部9の各種機能部は、画像形成装置1の動作を制御する。また、制御部9は、電圧制御部911、電流取得部912、補正部914、及び、電圧電流記憶部92を備える。電圧制御部911は、4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kごとに、1次転写ローラー51に印加する転写電圧値を更新する。電圧制御部911が「制御部」に相当し、電圧電流記憶部92が「記憶部」に相当する。
電圧電流記憶部92は、電圧印加部61が1次転写ローラー51に印加する電圧の電圧値VTと、電流検出部62によって検出される合計電流値JSとを対応付けて記憶する。電圧電流記憶部92に記憶された電圧の電圧値VT及び合計電流値JSは、補正部914によって読み出される。また、電圧電流記憶部92は、転写電圧値情報を記憶する。転写電圧値情報については、後述する。
初めに、合計電流値JSから4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kのそれぞれに流れる電流の電流値を求める方法について説明する。
電圧制御部911は、電圧印加部61が1次転写ローラー51y、51c、51m、51kに印加する電圧を制御する。具体的には、電圧制御部911は、4個の1次転写ローラー51のうち、1個の1次転写ローラー51に検出電圧VSを印加するときに、他の全ての1次転写ローラー51に検出電圧VSと同極性を有する第1電圧を印加する。1個の1次転写ローラー51は、例えば、1次転写ローラー51yであり、他の全ての1次転写ローラー51は、例えば、1次転写ローラー51c、51m、51kである。検出電圧VSは、1次転写ローラー51と感光体ドラム42との間の抵抗値Rを検出するために印加する電圧であり、予め設定された電圧値(例えば、1000V)を有する。第1電圧は、検出電圧VSの電圧値に対して200分の1以上10分の1以下の電圧値(例えば、100V)を有する。
また、電圧制御部911は、4個全ての1次転写ローラー51y、51c、51m、51kに第2電圧を印加する。
更に、電圧制御部911は、互いに異なる複数の電圧値を有する検出電圧VSを1つの1次転写ローラー51(例えば、1次転写ローラー51y)に印加すると共に、他の全ての1次転写ローラー51(例えば、1次転写ローラー51c、51m、51k)に第1電圧を印加する。
電流取得部912は、電流検出部62によって検出される合計電流値JSを取得する。また、電流取得部912は、4つの1次転写ローラー51y、51c、51m、51kに電圧印加部61が印加する電圧の電圧値と対応付けて、合計電流値JSを電圧電流記憶部92に記録する。
電圧電流記憶部92は、4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kごとに、転写電圧値E1y、E1c、E1m、E1kを転写電圧値情報として記憶する。転写電圧値情報は電圧制御部911の制御により更新可能である。転写電圧値情報の初期値は、例えば画像形成装置1が製造されたときに電圧電流記憶部92に記憶される。
図5は、複数の1次転写ローラーにおける電圧‐電流特性のばらつきを示すグラフである。グラフの横軸X1は電圧軸であり、4つの1次転写ローラー51y、51c、51m、51kのそれぞれに電圧印加部61が印加する電圧の電圧値VTを示す。グラフの縦軸Y1は、4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kのそれぞれに流れる電流の電流値Iを示す。曲線L11、L12、L13、L14は、環境温度Tが23℃であり、相対湿度Hが50%であるときの4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kにおける電圧‐電流特性曲線(以下、単に特性曲線と記載する)である。曲線L15、L16、L17、L18は、環境温度Tが10℃であり、相対湿度Hが15%であるときの4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kにおける特性曲線である。なお、本明細書においては、「曲線」は「直線」を含む概念として使用する。
4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kにおける抵抗値Rは互いに異なっている。したがって、図5に示すように、4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kのそれぞれに電流値IGの電流を流すことができる転写電圧値E1(E1y、E1c、E1m、E1k)は互いに異なる。
環境温度T及び相対湿度Hが変動すると、1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)における抵抗値Rも変動する。その結果、1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)の特性曲線は、横軸X1方向に平行移動する。図示例においては、環境温度Tが23℃であり、相対湿度Hが50%であるときに、1次転写ローラー51kにおける転写電圧値E1kは1100ボルトであり、1次転写ローラー51yにおける転写電圧値E1yは900ボルトである。一方、環境温度Tが10℃であり、相対湿度Hが15%であるときに、1次転写ローラー51kにおける転写電圧値E1yは2100ボルトであり、1次転写ローラー51yにおける転写電圧値E1kは1900ボルトである。
なお、図5では、1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)の特性曲線がシフトする要因として、環境温度T及び相対湿度Hの変動を挙げている。しかし、1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)における抵抗値Rを変動させる要因は環境温度T及び湿度Hに限られない。例えば、中間転写ベルト54にトナーが付着した場合には、中間転写ベルト54の抵抗(以下、ベルト抵抗と記載する)が増大する。ベルト抵抗が増大すると、1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)における抵抗値Rが増大し、特性曲線は横軸X1方向にシフトする。また、多数枚の用紙Pに連続的に画像形成した場合にも、1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)の温度が上昇し、1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)の抵抗は増大する。その結果、特性曲線は横軸X1方向にシフトする。なお、ベルト抵抗の変動により1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)における抵抗値Rが変動しても、4つの1次転写ローラー51y、51c、51m、51kにおける抵抗値Rの大小関係は入れ替わらない。
図6は、第1モードにおける検出電圧の電圧値を示すグラフである。第1モードにおいては、複数の電圧値を有する複数の検出電圧が特定の1次転写ローラーに印加される。図6において、グラフG1、G2、G3、G4は、4つの1次転写ローラー51y、51c、51m、51kのそれぞれに電圧印加部61が印加する検出電圧の電圧値VTy、VTc、VTm、VTkを示している。図6に示す例においては、グラフG4に示すように、互いに異なる複数の電圧値V1、V2、V3を有する複数の検出電圧が1次転写ローラー51kに印加される。一方、他の1次転写ローラー51y、51c、51mには、グラフG1、G2、G3に示すように、常に0(ゼロ)ボルトの検出電圧が印加される。
図6において、時刻T1から時刻T2の期間は、1次転写ローラー51kに検出電圧を印加するまでの準備期間である。準備期間においては、中間転写ベルト54の表面に付着したトナーをブレード56により取り除く処理が行われる。準備期間が終了する時刻T2においては、中間転写ベルト54の表面はトナーが付着していない状態になっている。具体的には、中間転写ベルト54において、少なくとも1次転写ローラー51yと対向する位置から1次転写ローラー51kと対向する位置に亘る領域は、トナーが付着していない状態になっている。そして、時刻T2に、複数の検出電圧の印加が開始される。
図7は、第1モードにおいて、転写電圧値を求めるための電流値を示すグラフである。図7のグラフにより、電圧制御部911は、特定の1次転写ローラー51kに流れる電流の電流値Iに基づいて、特定の1次転写ローラー51kに対応する転写電圧値E1kを新たに算出する。グラフの横軸X2は、特定の1次転写ローラー51kにおける電圧値VTkを示す。グラフの縦軸Y2は、1次転写ローラー51kにおける電流値Ikを示す。図7においては、点P1、点P2及び点P3は、複数の電圧値ごとに、特定の1次転写ローラー51kに流れる電流を電流検出部62が検出した結果を示している。700ボルトの電圧値VTkに対応する電流値Ikは電流値Ik1であり、1000ボルトの電圧値VTkに対応する電流値Ikは電流値Ik2であり、1300ボルトの電圧値VTkに対応する電流値Ikは電流値Ik3である。
規定の転写電流の電流値IGは、点P2における電流値Ik2より大きく、点P3における電流値Ik3より小さい。したがって、点P2と点P3との間を直線補間した線分L1と、電流値IGを示す直線L2との交点P4から転写電圧値E1k(=1100ボルト)を決定することができる。線分L1は、1次転写ローラー51kにおける特性曲線を近似的に表している。線分L1は、傾きa1を有する。1次転写ローラー51kの特性曲線を求める方法は、直線補間に限られず、例えば点P1、点P2及び点P3から最小二乗法により求めることもできる。
図8は、第2モードにおける検出電圧の電圧値を示すグラフである。第2モードにおいては、複数の検出電圧が所定個数の全ての1次転写ローラーにそれぞれ印加される。図8において、グラフG11、G12、G13、G14は、4つの1次転写ローラー51y、51c、51m、51kのそれぞれに電圧印加部61が印加する電圧の電圧値VTy、VTc、VTm、VTkを示している。
図8に示す例においては、グラフG11に示すように、互いに異なる複数の電圧値V11、V12、V13を有する複数の検出電圧が1次転写ローラー51yに印加されている。グラフG12に示すように、互いに異なる複数の電圧値V21、V22、V23を有する複数の検出電圧が1次転写ローラー51cに印加されている。グラフG13に示すように、互いに異なる複数の電圧値V31、V32、V33を有する複数の検出電圧が1次転写ローラー51mに印加されている。グラフG14に示すように、互いに異なる複数の電圧値V41、V42、V43を有する複数の検出電圧が1次転写ローラー51kに印加されている。
時刻T1から時刻T2の期間は、図6を参照して説明した準備期間である。準備期間が終了する時刻T2に、複数の電圧値V11、V12、V13の検出電圧を1次転写ローラー51yに印加する処理が開始される。
時刻T21に、複数の電圧値V11、V12、V13を有する検出電圧を1次転写ローラー51yに印加する処理が終了すると、引き続き、1次転写ローラー51cに複数の電圧値V21、V22、V23を有する検出電圧を印加する処理が開始される。更に、時刻T22に、複数の電圧値V21、V22、V23を有する検出電圧を1次転写ローラー51cに印加する処理が終了すると、引き続き、1次転写ローラー51mに複数の電圧値V31、V32、V33を有する検出電圧を印加する処理が開始される。更に、時刻T23に、複数の電圧値V31、V32、V33を有する検出電圧を1次転写ローラー51mに印加する印加処理が終了すると、引き続き、1次転写ローラー51kに複数の電圧値V41、V42、V43を有する検出電圧を印加する処理が開始される。
なお、実施形態においては、トナーの極性は正極性である。したがって、実際は、電圧値VTは負極性である。しかし、理解を容易にするために、図5から図8及び図10から図12においては、電圧値VTを絶対値として示している。本発明は、トナーが負極性であり、電圧値VTが正極性である場合にも適用可能である。
次に、図9を参照しながら、制御部の動作について説明する。図9は、電圧制御部の動作を示すフローチャートである。図9に示す処理においては、電圧制御部911は、所定個数の1次転写ローラーのうち、特定の1次転写ローラーに流れる電流の電流値に基づいて、特定の1次転写ローラーに対応する転写電圧値を新たに算出する。具体的には、まず、電圧制御部911は、画像形成装置1のステータス情報を取得する(S101)。ステータス情報は、画像形成装置1の状態を示す。例えば、ステータス情報は、画像形成装置1がスリープ状態であるか否か、画像形成装置1が起動直後であるか否か、及び、画像形成装置1が連続的に画像形成を行っているか否かを示す。
次に、電圧制御部911は、ステータス情報に応じて、第1モードと第2モードとを切り替えるための判断処理を実行する(S102)。ステップS102の判断処理においては、第1モード及び第2モードのいずれかが選択される。第1モードでは、特定の1次転写ローラー51kに対応する新たな転写電圧値E1kと、他の1次転写ローラー51y、51c、51mに対応する新たな転写電圧値E1y、E1c、E1mとが算出される。第2モードでは、4個全ての1次転写ローラー51y、51c、51m、51kの転写電圧値E1y、E1c、E1m、E1kが直接的に算出される。
第2モードの制御動作は、例えば、画像形成装置1が印字処理終了後のレディー状態であるなど、画像形成装置1に対する緊急の画像形成要求が無く、時間的に余裕がある場合に実行される。また、第2モードの制御動作は、1次転写ローラー51における抵抗値Rに大幅な変動が生じていることが予想される場合に実行される。例えば、比較的に多くの枚数の用紙Pへの画像形成が終了した場合、及び環境温度T及び/又は相対湿度Hが大きく変動した場合に第2モードの制御動作が実行される。一方、第1モードの制御動作は、1次転写ローラー51における抵抗値Rに変動が生じていることが予想されるが、画像形成装置1に対する緊急の画像形成要求があり、時間的に余裕が無い場合に実行される。例えば、比較的に多くの枚数(1例として1000枚)の用紙Pへの画像形成が連続的に行われているときに、所定枚数(1例として100枚)の用紙Pへの画像形成が完了する毎に第1モードの制御動作が実行される。
ステップS102において、第1モードの制御動作を実行すると判断されると、図6に示すように、電圧印加部61kが、階段状に変化する複数の電圧値V1、V2、V3を有する複数の検出電圧を特定の1次転写ローラー51kに印加する(S103)。このとき、電流検出部62は、複数の電圧値V1、V2、V3ごとに、特定の1次転写ローラー51kに流れる電流の電流値Ikを検出する。
次に、特定の1次転写ローラー51kにおける特性曲線(例えば図7の線分L1)と、規定の転写電流の電流値IGとに基づいて、特定の1次転写ローラー51kに対応する新たな転写電圧値E1kが算出される(S104)。次に、差分D11が算出される(S105)。差分D11は、特定の1次転写ローラー51kに対応して電圧電流記憶部92に記憶されている転写電圧値E1kと、特定の1次転写ローラーに対応してステップS104において新たに算出された転写電圧値E1kとの差分である。
次に、他の1次転写ローラー51y、51c、51mに対応して電圧電流記憶部92に記憶されている転写電圧値E1y、E1c、E1mと、差分D11とに基づいて、他の1次転写ローラー51y、51c、51mに対応する転写電圧値E1y、E1c、E1mが新たに算出される(S106)。以下、図10を参照しながら、ステップS105及びS106において、1次転写ローラー51yにおける新たな転写電圧値E1yを算出する場合を説明する。1次転写ローラー51c、51mにおける転写電圧値E1c、E1mを算出する場合については説明を省略する。図10において、横軸X5は、1次転写ローラー51における抵抗値Rを示す。縦軸Y5は、1次転写ローラー51における転写電圧値E1を示す。
図10に示す例においては、電圧電流記憶部92には、抵抗値Rが値R(0)であるときの転写電圧値E1k(0):1100ボルト、及び、抵抗値Rが値R(0)であるときの転写電圧値E1y(0):900ボルトが記憶されている。そして、例えば抵抗値Rが値R(1)であるときの転写電圧値E1k(1):1200ボルトが新たな転写電圧値として算出される。なお、値R(1)は値R(0)より大きい。
次に、抵抗値Rが値R(0)から値R(1)に変動した場合における転写電圧値E1kの差分:(E1k(1)−E1k(0))が算出される。差分(E1k(1)−E1k(0))は、100(=1200−1100)ボルトである。抵抗値Rが値R(0)であるときの転写電圧値E1y(0)に差分(E1k(1)−E1k(0))が加算されることにより、抵抗値Rが値R(1)であるときの転写電圧値E1y(1):1000ボルトが新たに算出される。
特定の1次転写ローラー51kにおける転写電圧値E1k(0)に対して、画像形成装置1の製造時に電圧電流記憶部92に記憶された初期値、又は以前の第2モードの制御動作で求められた転写電圧値E1kを代入することができる。他の1次転写ローラー51yにおける転写電圧値E1y(0)に対して、画像形成装置1の製造時に電圧電流記憶部92に記憶された初期値、又は以前の第2モードの制御動作で求められた転写電圧値E1yを代入することができる。
以上のように、1次転写ローラー51yにおける新たな転写電圧値E1y(1)は下記式(5)により算出される。1次転写ローラー51c、51mについても同様である。
E1y(1)=E1y(0)+(E1k(1)−E1k(0)) ・・・(5)
続けて図9を参照して、ステップS107以降の処理を説明する。ステップS102において、第2モードが選択されると、4つの1次転写ローラー51y、51c、51m、51kの各々に、互いに異なる複数の電圧値VTを有する複数の検出電圧が電圧印加部61y、61c、61m、61kにより印加される(S107)。電流検出部62は、4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kの各々に流れる電流の電流値Iを、複数の電圧値VTごとに検出する。
次に、4個の1次転写ローラー51y、51c、51m、51kごとに、1次転写ローラーの特性を示す特性曲線と、規定の転写電流の電流値IGy、IGc、IGm、IGとに基づいて、1次転写ローラー51y、51c、51m、51kに対応する転写電圧値E1y、E1c、E1m、E1kが新たに算出される(S108)。次に、電圧電流記憶部92に記憶された転写電圧値情報が、ステップS108において新たに算出された転写電圧値E1y、E1c、E1m、E1kに更新される(S109)。
図1から図10を参照して説明したように、実施形態1の画像形成装置1によれば、例えば環境温度T、相対湿度H、及び、抵抗値Rの変動により1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)の電圧‐電流特性が変化した場合にも、特性の変動に応じて転写電圧値E1を設定することができる。したがって、画像形成が良好に行えるように、1次転写ローラーにおける転写電圧値を設定することができる。
また、図9に示した処理によれば、画像形成装置1のステータス情報に応じて第1モード及び第2モードの制御動作が選択的に実行される。第1モードによる制御動作(図6参照)は、第2モードによる制御動作(図8参照)よりも、処理に要する時間が短い。したがって、例えば画像形成装置1がユーザーの画像形成指示に対応して迅速に画像形成を実行する必要があり、且つ転写電圧値E1に変動が生じていることが予想される場合に、第1モードの制御動作を行うことで、画像形成を良好且つ迅速に行うことができる。
一方、画像形成装置1が、例えば印字処理終了後のレディー状態であり、緊急の画像形成要求が無い場合には、第2モードによる制御動作を行うことで、1次転写ローラー51における実際の抵抗値Rに基づいて、転写電圧値E1を設定することができる。したがって、より画像形成を良好に行うことができる。
≪実施形態2≫
以下、図11から図13を参照して、本発明の実施形態2を説明する。
図11は、第3モードにおける検出電圧の電圧値を示すグラフである。第3モードにおいては、単一の検出電圧が特定の1次転写ローラーに印加される。図11において、グラフG21、G22、G23、G24は、4つの1次転写ローラー51y、51c、51m、51kのそれぞれに電圧印加部61が印加する検出電圧の電圧値VTy、VTc、VTm、VTkを示している。図11に示す例においては、グラフG24に示すように、電圧値V51を有する単一の検出電圧が電圧印加部61kにより1次転写ローラー51kに印加される。一方、他の1次転写ローラー51y、51c、51mには、グラフG21、G22、G23に示すように、常に0(ゼロ)ボルトの検出電圧が印加される。
図11において、時刻T1から時刻T2の期間は、図6を参照して説明した準備期間である。そして、時刻T2に、単一の検出電圧の印加が開始される。
図12は、第3モードにおいて、特定の1次転写ローラーにおける転写電圧値を求めるための電流値を示すグラフである。図12のグラフにより、電圧制御部911は、特定の1次転写ローラー51kに流れる電流の電流値Ikに基づいて、特定の1次転写ローラー51kに対応する転写電圧値E1kを新たに算出する。グラフの横軸X4は、特定の1次転写ローラーである1次転写ローラー51kにおける電圧値VTkを示す。グラフの縦軸Y4は、1次転写ローラー51kにおける電流値Ikを示す。
第3モードの制御動作においては、直近に実行した第2モードの制御動作により得られる特性曲線が使用される。図12においては、直線L11は、図7に示した線分L1を含む特性曲線に相当している。以下、直線L11を特性曲線L11と記載する。直近に実行した第2モードの制御動作により得られる特性曲線(例えば、特性曲線L11)を定める情報は、電圧電流記憶部92に特性曲線情報として記憶される。
特性曲線L11の傾きa1は線分L1の傾きa1と等しい。特性曲線L11上の点P11は、図7に示す点P4に相当する。したがって、点P11における電圧値E1(b)は、直近に実行した第2モードによる制御動作により算出された転写電圧値E1kと等しい。図12においては、単一の検出電圧の電圧値E1(b)と、電圧値E1(b)に対応する電流値I2とによって、点P12が示されている。
図12において、点P12は直線L13上の点である。直線L13は、特性曲線L11を横軸X4方向に平行移動して得られる直線である。つまり、直線L13は、単一の検出電圧の電圧値E1(b)と、単一の検出電圧の電圧値E1(b)に対応する電流値I2と、特定の1次転写ローラー51kの特性を示す特性曲線L11とから得られている。特定の1次転写ローラー51kに対応する新たな転写電圧値E1k(図示例においては、電圧値E1(p))は、直線L13と規定電流値IGを示す直線L12との交点P13における電圧値として求められる。
次に、図13を参照しながら、実施形態2における制御部の動作について説明する。図13は、実施形態2における電圧制御部の動作を示すフローチャートである。なお、図13において、ステップS205は、図9に示すステップS106に対応する。ステップS201からステップS202は図9に示すステップS101からステップS102に対応し、ステップS107からステップS109は図9に示すステップS107からステップS109に対応する。したがって、以下にステップS203及びS204だけを説明する。
ステップS202において、第3モードによる制御動作を実行すると判断されると、図11に示すように、電圧印加部61kが、例えば電圧値V51を有する単一の検出電圧を特定の1次転写ローラー51kに印加する(S203)。このとき、電流検出部62は、単一の検出電圧の電圧値V51に対応して、特定の1次転写ローラー51kに流れる電流の電流値Ikを検出する。
次に、図12を参照して説明したように、単一の検出電圧の電圧値(例えば、電圧値E1(b))と、単一の検出電圧の電圧値に対応する電流値Ik(例えば、電流値I2)と、特定の1次転写ローラー51kの特性を示す特性曲線(例えば、特性曲線L11)と、規定の転写電流の電流値IGとに基づいて、特定の1次転写ローラー51kに対応する新たな転写電圧値E1k(例えば、E1(p))が算出される(S204)。
ステップS201からS205の処理によれば、実施形態1で説明した第1モードによる制御動作に要する時間よりも更に短い時間で転写電圧値を適正に設定することができる。したがって、例えば画像形成装置1がユーザーの画像形成指示に対応して迅速に画像形成を実行する必要があり且つ転写電圧値E1に変動が予想される場合にも、画像形成を良好且つ更に迅速に実行することができる。
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す変形例1〜変形例2)。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
変形例1
電圧電流記憶部92に転写電圧値情報に代えて、ローラー間差分情報を記憶させることができる。ローラー間差分情報は、特定の1次転写ローラー51kにおける転写電圧値E1kと、他の1次転写ローラー51y、51c、51mにおける転写電圧値E1y、E1c、E1mのそれぞれとの差分を示す情報である。ローラー間差分情報は電圧制御部911の制御により更新可能である。ローラー間差分情報を更新する更新処理は、転写電圧値情報の更新処理と同様に、例えば第2モードによる制御動作が実行されたときに実行することができる。
具体的には、図5において、規定電流値IGを示す直線L19と、曲線L11及び曲線L12との交点をそれぞれ点P31、点P32とする。例えば、点P31における電圧値VT(=900ボルト)と、点P32における電圧値VT(=1100ボルト)との差分D1(200(=1100−900)ボルト)が求められる。同様にして、転写電圧値E1kと転写電圧値E1cとの差分D2、及び転写電圧値E1kと転写電圧値E1mとの差分D3が求められる。差分D1、D2及びD3は、ローラー間差分情報として電圧電流記憶部92に記憶される。
電圧制御部911は、特定の1次転写ローラー51kにおける新たな転写電圧値E1k(例えば図10に示す転写電圧値E1k(1))と、差分D1とに基づいて、他の1次転写ローラー(例えば1次転写ローラー51y)における新たな転写電圧値E1y(例えば図10に示す転写電圧値E1y(1))を算出する。具体的には、転写電圧値E1k(1)(=1200ボルト)から差分D1(=200ボルト)を減算することにより転写電圧値E1y(1)(=1000ボルト)を算出する。
変形例1の画像形成装置1においても、実施形態1及び実施形態2の画像形成装置と同様に、例えば環境温度T、相対湿度H、及び、抵抗値Rの変動により1次転写ローラー51(51y、51c、51m、51k)の電圧‐電流特性が変化した場合にも、特性の変動に応じて転写電圧値E1を設定することができる。したがって、画像形成が良好に行えるように、1次転写ローラーにおける転写電圧値を設定することができる。
変形例2
以下、図14を参照して、変形例2に係る画像形成装置を説明する。図14は、変形例2における電圧制御部の動作を示すフローチャートである。なお、図14において、ステップS201からステップS205は、図13に示すステップS201からステップS205に対応する。したがって、以下にステップS206からS208だけを説明する。図14に示した制御部の動作においては、第3モードの制御動作(ステップS203、S204及びS205)と、第4モードの制御動作(ステップS206、S207及びS208)とを切り替えて実行することができる。以下、第4モードの制御動作を説明する。
ステップS202において、第4モードの制御動作を実行すると判断されると、4個全ての1次転写ローラー51y、51c、51m、51kに、単一の検出電圧が電圧印加部61y、61c、61m、61kによりそれぞれ印加される(S206)。
次に、ステップS204において説明した方法と同様の方法により、4個全ての1次転写ローラー51y、51c、51m、51kにおける転写電圧値E1y、E1c、E1m、E1kが新たに算出される(S207)。次に、電圧電流記憶部92に記憶された転写電圧値情報が、ステップS207において新たに算出された転写電圧値E1y、E1c、E1m、E1kに更新される(S208)。
変形例2の画像形成装置1によれば、第2モードよりも更に迅速に、全ての1次転写ローラー51y、51c、51m、51kにおける転写電圧値を設定することができる。