以下、本発明の触感提供装置、及び、触感提供システムを適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1の触感提供装置100を示す図である。図1には、利用者の左の手10に触感提供装置100を装着した状態を透過的に示す。また、図1では、図1(A)に示す触感提供装置100の一部を拡大した図を図1(B)、図1(C)に示す。
触感提供装置100は、グローブ101と、アクチュエータ110(111〜115)及び120(121〜125)とを含む。触感提供装置100は、手袋(グローブ)型の装置であり、利用者が手10に装着することができる。グローブ101は、装着部の一例である。
グローブ101は、図1(A)に示すように、手10をすべて覆うように、5本の指11〜15をすべて別々に覆うように、グローブ型の形状を有する。グローブ101は、グローブ部101A及び101Bを有し、2層構造になっている。なお、ここでは、グローブ101として説明するが、5本の指11〜15をすべて別々に覆う部分があればよく、手のひらと手の甲とを覆わないタイプであってもよい。
グローブ部101A及び101Bは、ともにグローブ型の形状を有し、弾性体製又は布製である。グローブ部101A及び101Bは、例えば、ゴム製又は布製等であり、グローブ部101Bは、グローブ部101Aに比べて少しだけ小さい。
このため、グローブ部101Bをグローブ部101Aの内部に挿入すると、二重構造のグローブ101が得られる。
アクチュエータ110は、アクチュエータ111〜115の総称である。アクチュエータ110は、グローブ101に取り付けられている。アクチュエータ111〜115は、それぞれ、親指11、人差し指12、中指13、薬指14、小指15に対応して設けられている。
アクチュエータ111〜115は、それぞれ、親指11、人差し指12、中指13、薬指14、小指15の周囲を覆う筒状のアクチュエータであり、それぞれの内部に親指11、人差し指12、中指13、薬指14、小指15が挿通される。
アクチュエータ120は、アクチュエータ121〜125の総称である。アクチュエータ120は、アクチュエータ110の外側に重ねられてグローブ101に取り付けられている。アクチュエータ121〜125は、それぞれ、親指11、人差し指12、中指13、薬指14、小指15に対応して設けられている。
アクチュエータ121〜125は、アクチュエータ111〜115と同様に、それぞれ、親指11、人差し指12、中指13、薬指14、小指15の周囲を覆う筒状のアクチュエータである。
図1(B)には、触感提供装置100の親指11に対応する部分を拡大して示す。また、図1(C)には、図1(B)に示す触感提供装置100の親指11に対応する部分をさらに詳細に示す。
グローブ部101A及び101Bの間には、アクチュエータ111及び121が設けられている。アクチュエータ111及び121は、親指11の関節11Aに対応する位置において、親指の関節11Aを跨ぐように配置される。また、アクチュエータ111及び121は、アクチュエータ111がアクチュエータ121の上に重ねられた状態で、グローブ部101A及び101Bの間に設けられている。
これは、人差し指12、中指13、薬指14、小指15についても同様である。図1には詳細を図示しないが、触感提供装置100の人差し指12に対応する部分では、アクチュエータ112がアクチュエータ122の上に重ねられた状態で、グローブ部101A及び101Bの間に設けられている。
また、触感提供装置100の中指13に対応する部分では、アクチュエータ113がアクチュエータ123の上に重ねられた状態で、グローブ部101A及び101Bの間に設けられている。
また、触感提供装置100の薬指14に対応する部分では、アクチュエータ114がアクチュエータ124の上に重ねられた状態で、グローブ部101A及び101Bの間に設けられている。
また、触感提供装置100の小指15に対応する部分では、アクチュエータ115がアクチュエータ125の上に重ねられた状態で、グローブ部101A及び101Bの間に設けられている。
図2は、触感提供装置100のアクチュエータ111及び121の断面構造を示す図である。図3は、アクチュエータ111の一部を示す図である。
アクチュエータ111と121の間には、分離層105が設けられている。
アクチュエータ111は、電極111A及び111B、封止容器111C、ER(Electro-Rheological)流体111D、絶縁層111E及び111Fを有する。これらは、絶縁層111E、電極111A、封止容器111C、電極111B、絶縁層111Fの順で分離層105に重ねられている。なお、ER流体111Dは、封止容器111Cの内部に封止されている。絶縁層111Fには、グローブ部101Aが重ねられている。
電極111A及び電極111Bは、例えば、導電性布製又は導電性繊維製であり、封止容器111C内のER流体111Dに電圧を印加するために設けられている。導電性布としては、例えば、PET(polyethylene terephthalate)製の繊維の表面に銅とニッケルをコーティングした布を用いることができる。また、導電性繊維としては、例えば、導電性のある高分子材料で作製した繊維を用いることができる。
電極111A及び電極111Bは、実際には、親指11の周囲を覆う環状の電極である。環状の電極111Bの内側に環状の電極111Aが配置される。
電極111A及び電極111Bの間には、電圧V11が印加される。図2では、説明の便宜上、電極111A及び電極111Bの間に出力電圧がV11の直流電源とスイッチとを接続することによって、電極111A及び電極111Bの間に電圧を印加する状態と印加しない状態を切り替えられることを示す。スイッチを用いる代わりに、出力電圧をV11(>0V)と0Vとで切り替えられるようにしてもよい。
封止容器111Cは、電極111Aと電極111Bの間に設けられている。図2には、封止容器111Cの電極111A側の断面と電極111B側の断面とを示す。封止容器111Cは、一例として、電極111Aと電極111Bが重ねられている方向における厚さが非常に薄い2枚のフィルムを封止した容器である。
封止容器111Cは、例えば、シリコーンゴム又はポリイミド等の可撓性のある樹脂製の容器であり、内部にER流体111Dが注入された状態で封止されている。封止容器111Cは、実際には、親指11の周囲を覆う環状のフィルム状の容器である。
ER流体111Dは、親指11の周囲を覆う環状の封止容器111Cの内部に封止されている。このため、ER流体111Dは、図3(A)及び図3(B)に示すように親指の周囲を覆う。なお、図3(A)は、親指11とER流体111Dの位置関係を表す図であり、図3(B)は、親指11の周囲に分布するER流体111Dの環状の断面を示す図である。
ER流体111Dは、電圧が印加されると電界によって粘度が変化する流体である。ER流体111Dは、電圧が印加されない状態では粘度が低い。一方、ER流体111Dは、電圧が印加されると粘度が高くなる。ER流体111Dは、第1電気粘性流体の一例である。
このようなER流体111Dを用いたアクチュエータ111において、電圧を印加する状態と印加しない状態とを切り替えれば、アクチュエータ111の電極111Aと111Bとの間の剛性を変化させることができる。電圧を印加すれば剛性は高くなり、電圧を印加しなければ剛性は低くなる。
また、ER流体111Dは、印加される電圧の増大に応じて、剪断方向の外力に対する耐性が高くなる特性を有する。このため、親指11の周囲を覆うER流体111Dに電圧を印加すると、特に親指11の側面に位置するER流体111Dの耐性によってアクチュエータ111の剛性が得られる。
電圧が印加されたときのER流体111Dの粘度は、後述するアクチュエータ121のER流体121Dに同様の電圧を印加したときの粘度よりも高くなるように設定されている。この点については、アクチュエータ121の構成とともに後述する。
利用者が手10に触感提供装置100を装着し、後述するアクチュエータ121のER流体121Dに電圧が印加されておらず、かつ、ER流体111Dに電圧が印加されていない状態では、利用者は、手10に触感提供装置100を装着していないときと同様に、親指11を動かすことができる。
また、利用者が手10に触感提供装置100を装着し、後述するアクチュエータ121のER流体121Dに電圧が印加されていない状態で、ER流体111Dに電圧が印加されると、ER流体111Dの粘度が高くなるため、親指11が比較的強く拘束され、親指11を動かす動作が制限される。親指11を動かす動作が制限される程度は、一例として、利用者が親指11を動かすのに明らかな抵抗を感じる程度である。
ER流体111Dの印加電圧に対する粘度が増大する特性は、このような親指11の動作を制限できる程度に設定されている。なお、これは、人差し指12、中指13、薬指14、小指15に対応するアクチュエータ112〜115についても同様である。
このようなアクチュエータ110は、アクチュエータ111〜115のER流体に電圧を印加するかどうかで、親指11、人差し指12、中指13、薬指14、小指15を通した状態で、アクチュエータ110を曲げやすくなるか、又は、曲げにくくなるかが変わる。すなわち、アクチュエータ110は、アクチュエータ111〜115のER流体に電圧を印加するかどうかで、剛性が変わる。アクチュエータ110は、第1可変剛性層の一例である。
次に、アクチュエータ121について説明する。
アクチュエータ121は、電極121A及び121B、封止容器121C、ER(Electro-Rheological)流体121D、絶縁層121E及び121Fを有する。これらは、絶縁層121E、電極121A、封止容器121C、電極121B、絶縁層121Fの順でグローブ部101Aに重ねられている。なお、ER流体121Dは、封止容器121Cの内部に封止されている。絶縁層121Fには、分離層105が重ねられている。
電極121A及び電極121Bは、例えば、例えば、導電性布製又は導電性繊維製であり、封止容器121C内のER流体121Dに電圧を印加するために設けられている。導電性布と導電性繊維は、電極111A及び電極111Bと同様である。
電極121A及び電極121Bは、実際には、親指11の周囲を覆う環状の電極である。環状の電極121Bの内側に環状の電極121Aが配置される。
電極121A及び電極121Bの間には、可変電圧V21が印加される。図2では、説明の便宜上、電極121A及び電極121Bの間に出力電圧がV21(可変電圧)の可変直流電源とスイッチとを接続することによって、電極121A及び電極121Bの間に電圧を印加する状態と印加しない状態を切り替えられることを示す。スイッチを用いる代わりに、出力電圧をV21(>0V)と0Vとで切り替えられるようにしてもよい。
封止容器121Cは、電極121Aと電極121Bの間に設けられている。図2には、封止容器121Cの電極121A側の断面と電極121B側の断面とを示す。封止容器121Cは、一例として、電極121Aと電極121Bが重ねられている方向における厚さが非常に薄い2枚のフィルムを封止した容器である。
封止容器121Cは、例えば、シリコーンゴム又はポリイミド等の可撓性のある樹脂製の容器であり、内部にER流体121Dが注入された状態で封止されている。封止容器121Cは、実際には、親指11の周囲を覆う環状のフィルム状の容器である。
ER流体121Dは、親指11の周囲を覆う環状の封止容器121Cの内部に封止されている。このため、ER流体121Dは、ER流体111Dと同様に親指の周囲を覆う。ER流体121Dは、図3(B)に示すER流体111Dの内側に位置する。
ER流体121Dは、電圧が印加されると電界によって粘度が変化する流体である。ER流体121Dは、電圧が印加されない状態では粘度が低い。一方、ER流体121Dは、電圧が印加されると粘度が高くなる。
このようなER流体121Dを用いたアクチュエータ121において、電圧を印加する状態と印加しない状態とを切り替えれば、アクチュエータ121の電極121Aと121Bとの間の剛性を変化させることができる。電圧を印加すれば剛性は高くなり、電圧を印加しなければ剛性は低くなる。
また、ER流体121Dは、印加される電圧の増大に応じて、剪断方向の外力に対する耐性が高くなる特性を有する。このため、親指11の周囲を覆うER流体121Dに電圧を印加すると、特に親指11の側面に位置するER流体121Dの耐性によってアクチュエータ121の剛性が得られる。
電圧が印加されたときのER流体121Dの粘度は、アクチュエータ111のER流体111Dに同様の電圧を印加したときの粘度よりも低くなるように設定されている。なお、これは、人差し指12、中指13、薬指14、小指15に対応するアクチュエータ122〜125についても同様である。
このようなアクチュエータ120は、アクチュエータ121〜125のER流体に電圧を印加するかどうかで、親指11、人差し指12、中指13、薬指14、小指15を通した状態で、アクチュエータ120を曲げやすくなるか、又は、曲げにくくなるかが変わる。すなわち、アクチュエータ120は、アクチュエータ121〜125のER流体に電圧を印加するかどうかで、剛性が変わる。アクチュエータ120は、第2可変剛性層の一例である。
ER流体には、分散系ER流体と均一系ER流体がある。均一系ER流体は、電圧を印加しない状態から、電圧を徐々に印加すると、粘度が徐々に増大する特性を有する。これに対して、分散系ER流体は、電圧を印加していない状態から、微小な電圧を印加すると、粘度が急激に増大し、急激に増大した状態から電圧を増大させると、粘度が徐々に増大する特性を有する。
このため、分散系ER流体は、電圧を印加しない状態から電圧を徐々に印加すると、微小な電圧を印加したときに粘度が急激に増大する分だけ、均一系ER流体よりも粘度が高いレベルで変化する特性を有する。
実施の形態1では、アクチュエータ121のER流体121Dには、均一系ER流体を用いる。また、アクチュエータ111のER流体111Dには、分散系ER流体を用いる。
ER流体111Dとして用いる分散系ER流体は、印加電圧に対して第1レベル特性で粘性が変化する第1電気粘性流体の一例である。また、ER流体121Dとして用いる均一系ER流体は、印加電圧に対して第2レベル特性で粘性が変化する第2電気粘性流体の一例である。
電圧印加時に第2電気粘性流体の第2レベル特性によって得られる粘性は、電圧印加時に第1電気粘性流体の第1レベル特性によって得られる粘性よりも小さい。
このため、利用者が手10に触感提供装置100を装着し、アクチュエータ111のER流体111Dに電圧が印加されておらず、かつ、ER流体121Dに電圧が印加されていない状態では、利用者は、手10に触感提供装置100を装着していないときと同様に、親指11を動かすことができる。
また、利用者が手10に触感提供装置100を装着し、アクチュエータ111のER流体111Dに電圧が印加されていない状態で、ER流体121Dに電圧が印加されると、ER流体121Dの粘度が高くなる。
しかしながら、電圧が印加されたときのER流体121Dの粘度は、アクチュエータ111のER流体111Dに同様の電圧を印加したときの粘度よりも低いため、ER流体121Dに電圧を印加せずにER流体111Dに電圧を印加した場合に比べると、親指11が比較的緩やかに拘束され、親指11を動かす動作が制限される度合は低い。このときに親指11を動かす動作が制限される程度は、一例として、利用者が親指11を動かすのに微小な抵抗を感じる程度である。
さらに、また、利用者が手10に触感提供装置100を装着し、アクチュエータ111のER流体111Dに電圧が印加されている状態で、ER流体121Dにも電圧を印加すると、ER流体111D及びER流体121Dの粘度が増大する。
この場合には、利用者の親指11には、アクチュエータ111のER流体111Dのみに電圧を印加する場合に比べて、アクチュエータ121のER流体121Dの粘度の増大による緩やかな制限が加わるため、アクチュエータ111のER流体111Dのみに電圧を印加する場合とは異なる抵抗感が提供される。
実施の形態1の触感提供装置100は、印加される電圧の変化に応じて変化するER流体111DとER流体121Dの粘度のレベルの違いを利用して、利用者の手10に現実感のある触感を提供する。
図4は、触感提供装置100を含む触感提供システム800の構成を示す図である。
触感提供システム800は、触感提供装置100、駆動制御装置500、表示部600、及びモーションセンサ700を含む。
触感提供装置100は、アクチュエータ110、120、制御部130、通信部140、及びバッテリ150を含む。駆動制御装置500は、画像制御部510、駆動制御部520、メモリ530、及び通信部540を含む。
まず、触感提供装置100の構成について説明する。なお、アクチュエータ110及び120は、図1乃至図3に示す通りであるため、ここでは説明を省略する。
制御部130、通信部140、及びバッテリ150は、グローブ101(図1参照)の甲の部分に配置される。
制御部130は、アクチュエータ110、120、及び通信部140と配線によって接続されている。制御部130は、アクチュエータ110及び120の駆動制御に用いる駆動制御信号に基づき、アクチュエータ110の電極111A及び111Bとアクチュエータ120の電極121A及び121Bに電圧を印加する制御を行う。制御部130は、例えば、マイクロコンピュータ(マイコン)によって実現される。
アクチュエータ110及び120は、それぞれ、アクチュエータ111〜115及び121〜125を含むため、制御部130によって、アクチュエータ111〜115及び121〜125の各々のER流体に印加される電圧が制御され、アクチュエータ111〜115及び121〜125が駆動される。
通信部140は、駆動制御装置500の通信部540と無線通信を行う。無線通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)又はLAN(Local Area Network)等で実現される。通信部140は、通信部540から駆動制御信号を受信し、制御部130に出力する。なお、通信部140と通信部540とをケーブルで接続して通信を行ってもよい。
バッテリ150は、アクチュエータ110、120、制御部130、及び通信部140に直流電力を供給する電源である。バッテリ150は、充電可能な二次電池であればよく、例えば、リチウムイオン電池を用いることができる。
次に、駆動制御装置500について説明する。駆動制御装置500は、例えば、PC(Personal Computer)によって実現される。駆動制御装置500は、表示部600及びモーションセンサ700とケーブル601及び701によって接続されている。
画像制御部510は、表示部600に表示する画像を制御する。画像制御部510は、利用者によって選択された仮想物体の画像を表す画像データを表示部600に出力する。これにより、表示部600に仮想物体の画像が表示される。
また、画像制御部510は、モーションセンサ700によって検出される利用者の手の位置を表示部600の座標系における位置に変換し、変換した位置を表す位置座標のデータと、手の画像を表す画像データとを表示部600に出力する。これにより、表示部600は、変換した位置を表す位置座標に手の画像を表示する。なお、表示部600に表示される手の画像は、利用者の手の写真画像ではなく、予め用意された手のCG(Computer Graphic)画像である。
また、画像制御部510は、手の画像と仮想物体の画像とが接触したかどうかを検出する。手の画像と仮想物体の画像との接触は、表示部600の座標系における手の位置座標から広がる手のCG画像と、仮想物体の画像とが交点を有するかどうかで判定される。
駆動制御部520は、手の画像と仮想物体の画像との接触が画像制御部510によって検出されると、アクチュエータ110(111〜115)のER流体に印加する電圧を表す駆動制御信号を生成して出力する。
また、駆動制御部520は、画像制御部510によって接触が検出された後に、モーションセンサ700によって手10を握る動きが検出されると、アクチュエータ120(121〜125)のER流体に印加する電圧を表す駆動制御信号を生成して出力する。
なお、アクチュエータ111〜115及びアクチュエータ121〜125の各々に印加する電圧値は、表示部600に表示される仮想物体の種類によって予め決められており、電圧値を表すデータは、メモリ530に格納されている。
メモリ530は、アクチュエータ111〜115及びアクチュエータ121〜125の各々に印加する電圧値を表すデータを格納する。メモリ530は、PCのRAM(Ramdom Access Memory)とHD(Hard Disk)の両方をメモリ530として表したものである。
通信部540は、触感提供装置100の通信部140と無線通信を行う。無線通信は、例えば、上述したように、Bluetooth又はLAN等で実現される。通信部540は、仮想物体の画像を表す画像データ、表示部600の座標系における位置座標のデータ、手の画像を表す画像データ、及び駆動制御信号を通信部140に送信する。
表示部600は、例えば、スクリーン及び投影装置、又は、液晶ディスプレイパネル等によって実現される。表示部600は、利用者によって選択された仮想物体の画像と手の画像を表示する。
モーションセンサ700は、利用者の手の位置及び手の動きを検出するセンサである。モーションセンサ700としては、例えば、赤外線を出射し、反射光を受光し、受光した反射光に基づいて、利用者の手の位置及び手の動きを検出するセンサを用いることができる。
図5は、仮想物体の画像と手の画像を表すデータを示す図である。
図5に示すデータは、項目名、ID(Identifier)、画像データ、位置座標、3次元形状データを関連付けたデータである。
項目名は、手又は仮想物体等の項目の種類を表す名称である。図5には、1つの手の項目名と、複数の仮想物体の項目名とを示す。
IDは、各項目に割り当てられる識別子である。図5では、一例として、手のIDは000であり、仮想物体1のIDは001であり、仮想物体2のIDは002である。その他の仮想物体のIDは省略する。
画像データは、各項目の画像を表すデータである。図5では、一例として、手の画像データはimage 0であり、仮想物体1の画像データはimage 1であり、仮想物体2の画像データはimage 2である。その他の仮想物体の画像データは省略する。
位置座標は、各項目の位置座標を表すデータである。図5では、一例として、手の位置座標はh(x,y,z)であり、仮想物体1の位置座標はodj1(x,y,z)であり、仮想物体2の位置座標はodj2(x,y,z)である。その他の仮想物体の位置座標は省略する。
各項目の画像の座標は、表示部600が表示する画像に設定されるxyz座標系の座標値として表される。なお、位置座標は各項目の画像データの基準点の座標である。基準点は、重心点又はxyz座標系の原点に最も近い点等である。
ここで、手の位置座標h(x,y,z)は、モーションセンサ700によって検出される利用者の手の位置を画像制御部510が表示部600の座標系における位置に変換することによって得られる。このため、手の位置座標h(x,y,z)は、変数である。
また、仮想物体1の位置座標odj1(x,y,z)は、表示部600の座標系における所定の位置として予め設定されており、固定値である。これは、仮想物体2及びその他の仮想物体の位置座標についても同様である。
3次元形状データは、各項目の3次元形状を表すデータである。図5では、一例として、手の3次元形状はhであり、仮想物体1の3次元形状はodj1であり、仮想物体2の3次元形状はodj2である。その他の仮想物体の3次元形状は省略する。
手の3次元形状hは、位置座標h(x,y,z)を基準として、3次元的に存在する手の画像の範囲を表すデータである。仮想物体1の3次元形状odj1は、位置座標odj1(x,y,z)を基準として、3次元的に存在する手の画像の範囲を表すデータである。これは、仮想物体2及びその他の仮想物体についても同様である。
図6は、アクチュエータ111〜115及び121〜125に印加する電圧のデータを示す図である。
項目のIDが001の仮想物体について、アクチュエータ111〜115及び121〜125割り当て得られた電圧値を表すデータ(電圧データ)である。
電圧データは、アクチュエータ111〜115及び121〜125の各々について割り当てられている。図6では、アクチュエータ111〜115及び121〜125について、それぞれ、電圧データV11〜V15及びV21〜V25が割り当てられている。
電圧データV11〜V15及びV21〜V25は、それぞれ、アクチュエータ111〜115及び121〜125の駆動に用いる駆動制御信号に含まれる電圧値を表す。また、電圧データV11〜V15が表す電圧値は固定値であるが、電圧データV21〜V25が表す電圧値は、時間的に変化する変動値である。
電圧データV11〜V15及びV21〜V25は、IDが表す仮想物体の形状及び表面の凹凸等の質感に応じて設定されている。例えば、仮想物体が野球のボールである場合には、実際の野球のボールに手10が触れていない状態から、手10で握り始めたときに手10で感じるような触感が提供されるように、電圧データV11〜V15が設定されている。電圧データV11〜V15でアクチュエータ111〜115を駆動し、比較的強い拘束感を利用者の手10に提供するためである。
また、実際の野球のボールを手10で握ってから、手10でボールを握る力をさらに少し強めたときの触感を提供できるようにするために、電圧データV21〜V25が設定されている。電圧データV21〜V25でアクチュエータ121〜125を駆動し、アクチュエータ111〜115による比較的強い拘束感に加えて、比較的緩やかな拘束感を利用者の手10に提供するためである。
このような電圧データV11〜V15及びV21〜V25を用いることにより、実際の野球のボールに手10が触れていない状態から、手10で握り始めて、ボールを握る力をさらに少し強めたときの触感を提供することができる。
また、特に、電圧データV21〜V25が表す電圧値は、時間的に変化する変動値であるため、手10でボールを握る力を強めるときの触感をより忠実に提供できるように、電圧値が時間的に変動するように電圧データV21〜V25を設定すればよい。
なお、ここでは、一例として、上述のように野球のボールを握る際の触感を再現できるように、アクチュエータ111〜115及び121〜125を駆動する電圧データV11〜V15及びV21〜V25を設定する形態について説明する。しかしながら、電圧データV11〜V15及びV21〜V25の電圧値は、野球のボール用のものに限られない。
このようなアクチュエータ111〜115及び121〜125による2段階の拘束力を利用して、様々な物品の現実感のある触感を再現することができる。
図7は、駆動制御装置500が実行する処理を表すフローチャートである。
駆動制御装置500は、電源スイッチがオンにされた状態で、触感提供システム800の利用を開始する操作が行われると一連の処理を開始する(START)。触感提供システム800の利用を開始する操作の一例は、駆動制御装置500で処理を開始するボタンを押す等の操作が行われることである。
駆動制御装置500は、利用者によって選択された仮想物体の画像を表す画像データと、手の画像を表す画像データとを表示部600に出力する(ステップS1)。
これにより、表示部600に仮想物体と手の画像が表示される。仮想物体と手の画像データは、駆動制御装置500が図5に示すデータを読み出すことによって得られる。ここでは、一例として、仮想物体1が利用者によって選択されたこととする。なお、ステップS1の処理は、画像制御部510によって実行される。
駆動制御装置500は、モーションセンサ700によって検出される利用者の手の位置を表示部600の座標系における位置に変換し、変換した位置を表す位置座標のデータと、表示部600に仮想物体の画像が接触したかどうかを判定する(ステップS2)。
より具体的には、駆動制御装置500は、仮想物体1の位置座標odj1(x,y,z)と3次元形状odj1によって表される空間領域と、利用者の手の位置座標とに交点があるかどうかを判定する。なお、ステップS2の処理は、画像制御部510によって実行される。
駆動制御装置500は、仮想物体と手が接触した(S2:YES)と判定すると、アクチュエータ111〜115を駆動する駆動制御信号を出力する(ステップS3)。より具体的には、駆動制御装置500は、図6に示す電圧データV11〜V15を用いて駆動制御振動を生成し、触感提供装置100に伝送する。
これにより、アクチュエータ111〜115が電圧データV11〜V15によって駆動される。なお、ステップS3の処理は、駆動制御部520によって実行される。
駆動制御装置500は、モーションセンサ700によって手を握る動きが検出されたかどうかを判定する(ステップS4)。ステップS2の処理は、画像制御部510によって実行される。
駆動制御装置500は、モーションセンサ700によって手を握る動きが検出された(S4:YES)と判定すると、アクチュエータ121〜125を駆動する駆動制御信号を出力する(ステップS5)。より具体的には、駆動制御装置500は、図6に示す電圧データV21〜V25を用いて駆動制御振動を生成し、触感提供装置100に伝送する。
これにより、アクチュエータ121〜125が電圧データV21〜V25によって駆動される。なお、ステップS5の処理は、駆動制御部520によって実行される。
駆動制御装置500は、触感提供システム800の利用を終了する操作が行われたかどうかを判定する(ステップS6)。触感提供システム800の利用を終了する操作の一例は、駆動制御装置500で処理を終了するボタンを押す等の操作が行われることである。
駆動制御装置500は、触感提供システム800の利用を終了する操作が行われていない(S6:NO)と判定すると、フローをステップS1にリターンする。表示部600に表示する手の画像を更新するためである。
駆動制御装置500は、触感提供システム800の利用を終了する操作が行われた(S6:YES)と判定すると、一連の処理を終了する(END)。
なお、駆動制御装置500は、仮想物体と手が接触していない(S2:NO)と判定した場合は、フローをステップS1にリターンする。表示部600に表示する手の画像を更新するためである。
また、駆動制御装置500は、モーションセンサ700によって手を握る動きが検出されていない(S4:NO)と判定した場合には、フローをステップS1にリターンする。表示部600に表示する手の画像を更新するためと、次の制御周期におけるモーションセンサ700の検出結果を得るためである。
以上のような処理を繰り返し実行することにより、駆動制御装置500は、表示部600への仮想物体と手の画像を表示し、仮想物体と手の画像の接触状態に応じてアクチュエータ110を駆動する。そして、さらに、仮想物体と手の画像が接触している状態で、モーションセンサ700によって手で握る動作が行われたことが検出されると、アクチュエータ110を駆動する。
このような処理を実行することにより、触感提供装置100を装着した利用者の手10に物体に触れて、さらに力を加えたときの触感が提供される。
なお、ここでは、ステップS4において、駆動制御装置500がモーションセンサ700によって手を握る動きが検出されたかどうかを判定する形態について説明した。しかしながら、モーションセンサ700の精度又は分解能の制約によって手を握る動きを検出できない場合には、ステップS4の判定を行わずに、ステップS3でアクチュエータ110を駆動する駆動制御信号を出力してから所定時間が経過したときに、アクチュエータ121〜125を駆動する駆動制御信号を出力するステップS5の処理を実行してもよい。
所定時間は、例えば、0.5秒程度に設定すればよい。このような所定時間は、現実世界において物品に触れる際の動作等を実験等で求め、求まった結果に基づいて設定すればよい。また、物品の種類、又は、触れる際に手に加える力の大きさ等に応じて設定すればよい。
図8は、触感提供システム800の配置を示す図である。
触感提供システム800は、触感提供装置100、駆動制御装置500、スクリーン600A、投影装置600B、モーションセンサ700を含む。これらのうち、スクリーン600A及び投影装置600Bは、図4に示す表示部600に対応する。
スクリーン600Aは、例えば、プロジェクタ用スクリーンを用いることができる。スクリーン600Aのサイズは、用途に応じて適宜設定すればよい。スクリーン600Aには、投影装置600Bによって投影される画像が表示される。ここでは、物品610の画像と手620の画像とがスクリーン600Aに表示されていることとする。物品610は、ボールである。
投影装置600Bは、スクリーン600Aに画像を投影できる装置であればよく、例えば、プロジェクタを用いることができる。投影装置600Bは、ケーブル601によって駆動制御装置500に接続されており、駆動制御装置500から入力される画像をスクリーン600Aに投影する。ここでは、投影装置600Bは、3D画像(立体視の画像)をスクリーン600Aに投影できるタイプのものである。
なお、スクリーン600A及び投影装置600Bの代わりに、例えば、液晶ディスプレイパネルを用いてもよい。また、スクリーン600A及び投影装置600Bの代わりに、ヘッドマウントディスプレイを用いてもよい。
図9は、アクチュエータ111及び121の電圧データの時間的変化を示すタイミングチャートである。図10は、アクチュエータ111及び121の駆動状態を示す図である。
ここでは、図8に示す触感提供システム800の構成図に加えて、図9及び図10を用いて、触感提供システム800の動作例について説明する。なお、図9と図10には、アクチュエータ111及び121の電圧データと駆動状態を示すが、アクチュエータ112〜115及び122〜125についても同様である。
触感提供システム800において、駆動制御装置500が投影装置600Bに物品610と手620の画像データを出力すると、投影装置600Bがスクリーン600Aに物品610(ボール)と手620の画像を表示する。このとき、スクリーン600Aに表示される物品610(ボール)と手620は離れている。
物品610(ボール)と手620は離れているため、図9に示すアクチュエータ111の電圧データV11は、時刻t0に示すように、0Vである。
このとき、図10(A)に示すように、アクチュエータ111及び121には、ともに電圧が印加されていない(0Vの)状態である。
そして、左の手10に触感提供装置100を装着した利用者が、現実空間で左の手10を移動させると、モーションセンサ700が手10の動きを検出し、駆動制御装置500が手620の画像を表示する位置座標を移動させる。
スクリーン600Aに表示される物品610に手620が触れるように利用者がさらに手10を動かし、時刻t1で物品610に手620が触れたと判定すると、駆動制御装置500は、アクチュエータ110を駆動する駆動制御信号を出力する。これにより、アクチュエータ110のER流体に電圧が印加され、アクチュエータ110は手10の指11〜15の動きを制限する。
このとき、図9に示すように、アクチュエータ111の電圧データは、時刻t1でV11になる。
すなわち、図10(B)に示すように、アクチュエータ111のER流体には電圧V11が印加され、アクチュエータ121のER流体には、電圧が印加されていない(0Vの)状態になる。
そして、時刻t2で利用者がボールを握るように指11〜15を動かすと、指11〜15を動かしたことがモーションセンサ700によって検出され、駆動制御装置500がアクチュエータ120を駆動する駆動制御信号を出力する。
このとき、図9に示すように、アクチュエータ111の電圧データは、V11に保持され、アクチュエータ121の電圧データは、時刻t2でV21になる。電圧データV21は、一例として、図9の時刻t2に示すように、緩やかに立ち上がり、暫くすると一定値になる電圧データである。
このように時間的に変化する電圧データV21は、例えば、電圧データV21の出力を開始してから、時間の経過とともに電圧値が増大する電圧データを作成することによって実現することができる。なお、このように時間的に変化する電圧データは、電圧データをV22〜V25についても同様である。
すなわち、図10(C)に示すように、アクチュエータ111のER流体に電圧V11が印加されるとともに、アクチュエータ121のER流体に電圧V21が印加される状態になる。
この結果、利用者の手10には、アクチュエータ111による比較的強い拘束力と、アクチュエータ121による比較的緩やかな拘束力が伝達される。これらの拘束力は、利用者にボールを掴んでいる触感を与える。
なお、これは、アクチュエータ112〜115及びアクチュエータ122〜125についても同様である。
さらに、時刻t3で利用者がボールを掴んだ状態から少し離すように指11〜15を動かすと、指11〜15を動かしたことがモーションセンサ700によって検出され、駆動制御装置500は、アクチュエータ120を駆動しないようにするために電圧データを0Vに設定した駆動制御信号を出力する。
このとき、図9に示すように、アクチュエータ111の電圧データは、V11に保持され、アクチュエータ121の電圧データは、時刻t3で0Vになる。
すなわち、図10(B)に示すように、アクチュエータ111のER流体には電圧V11が印加され、アクチュエータ121のER流体には、電圧が印加されていない(0Vの)状態に戻る。
この結果、利用者の手10には、アクチュエータ111による比較的強い拘束力のみが伝達され、利用者にボールに触れている触感が提供される。
また、時刻t4において、いままで利用者が手10でボールに触れる動作をしていた位置から手10をずらすと、駆動制御装置500は、物品610に手620が触れていないと判定し、アクチュエータ110を駆動しないようにするために電圧データを0Vに設定した駆動制御信号を出力する。
これにより、アクチュエータ110は駆動されない状態になり、手10の指11〜15の動きは、アクチュエータ110によって制限されなくなる。
このとき、図9に示すように、アクチュエータ111の電圧データは、時刻t4で0Vになる。
すなわち、図10(A)に示すように、アクチュエータ111及び121には、ともに電圧が印加されていない(0Vの)状態に戻る。
以上のように、触感提供システム800によれば、スクリーン600Aに表示される物品610に手10で触ったような触感を利用者に提供することができる。このような触感を提供できるのは、RE流体の粘性の異なる2つのアクチュエータ110と120を重ねて設けているからである。また、さらに、アクチュエータ110と120が指11〜15の周囲を覆うように環状であるため、より現実感のある触感を提供することができる。
従って、実施の形態1によれば、現実感のある触感を提供できる触感提供装置100、及び、触感提供システム800を提供することができる。
なお、以上では、電圧データV21〜V25が時間的に変化する電圧データである形態について説明したが、電圧データV21〜V25が表す電圧値は固定値であってもよい。
また、以上では、アクチュエータ110及び120が指の周りを囲む環状の形状を有する形態について説明したが、必ずしも環状ではなくてもよく、少なくとも一部において、分離されていてもよい。
また、以上では、分離層105をアクチュエータ110と120の間に設ける形態について説明したが、アクチュエータ110と120を直接接続してもよい。
また、以上では、分離層105、絶縁層111E、及び絶縁層121Fを設けずに、電極111Aと電極121Bを共通化してもよい。この場合には、共通化した電極を基準電位(接地電位)の電極にすればよい。
また、アクチュエータ110を駆動している状態で、さらにアクチュエータ120を駆動するときに、アクチュエータ110のER流体に印加する電圧値を増大させてもよい。
図11は、実施の形態1の第1変形例によるアクチュエータ111及び121の電圧データの時間的変化を示すタイミングチャートである。
図11に示すように、時刻t2において電圧データV21による電圧をアクチュエータ121のER流体に印加するときに、アクチュエータ111のER流体に印加する電圧値をV31に増大させてもよい。このようにアクチュエータ111のER流体に印加する電圧値を増大させるのは、電圧データV21による電圧をアクチュエータ121のER流体に印加する期間(時刻t2〜t3)の間だけでよい。
このようにアクチュエータ111のER流体に印加する電圧値を可変にすることにより、さらに感触の異なる触感を提供することができる。
また、アクチュエータ111と121を重ねる際には、図12に示すようにしてもよい。
図12は、実施の形態1の第2変形例によるアクチュエータ111−1、111−2及び121−1、121−2、121−3の断面構造を示す図である。
アクチュエータ111−1及び111−2と、アクチュエータ121−1、121−2、及び121−3とは、図2に示すアクチュエータ111と112と同様に、互いに重ね合わされている。
また、アクチュエータ111−1と111−2は、親指11(図1参照)の伸延方向において、分離されている。アクチュエータ111−1と111−2の間には、空隙116が設けられている。
同様に、アクチュエータ121−1、121−2、及び121−3は、親指11(図1参照)の伸延方向において、分離されている。アクチュエータ121−1、121−2、及び121−3の間には、空隙117A及び117Aが設けられている。
図12に示すように、アクチュエータ111−1及び111−2と、アクチュエータ121−1、121−2、及び121−3とは、空隙116と、空隙117A及び117Aとの位置が異なるように、互いに重ね合わされている。
アクチュエータ111−1及び111−2の構成は、図2に示すアクチュエータ111と同様であり、アクチュエータ121−1、121−2、及び121−3の構成は、図2に示すアクチュエータ111と同様である。より具体的には、次の通りである。
アクチュエータ111−1は、電極111−1A及び111−1B、封止容器111−1C、ER流体111−1D、絶縁層111−1E及び111−1Fを有する。
アクチュエータ111−2は、電極111−2A及び111−2B、封止容器111−2C、ER流体111−2D、絶縁層111−2E及び111−2Fを有する。
アクチュエータ121−1は、電極121−1A及び121−1B、封止容器121−1C、ER流体121−1D、絶縁層121−1E及び121−1Fを有する。
アクチュエータ121−2は、電極121−2A及び121−2B、封止容器121−2C、ER流体121−2D、絶縁層121−2E及び121−2Fを有する。
アクチュエータ121−3は、電極121−3A及び121−3B、封止容器121−3C、ER流体121−3D、絶縁層121−3E及び121−3Fを有する。
このようなアクチュエータ111−1及び111−2と、アクチュエータ121−1、121−2、及び121−3とを、例えば、空隙116の位置が親指11の関節の位置と一致し、かつ、空隙117A及び117Aとの位置が親指11の関節の位置と異なるように配置してもよい。あるいは、この逆であってもよい。
このような配置にすることにより、図2に示すアクチュエータ111及び112を用いる場合とは異なる触感を利用者に提供することができる。
<実施の形態2>
図13は、実施の形態2の触感提供装置200を示す図である。図13には、利用者の左の手10に触感提供装置200を装着した状態を透過的に示す。また、図13では、図13(A)に示す触感提供装置200の一部を拡大した図を図13(B)
に示す。
触感提供装置200は、実施の形態1の触感提供装置100に圧力センサ260(261〜265)を追加したものである。その他の構成は、実施の形態1の触感提供装置100と同様であるため、同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
圧力センサ260は、親指11、人差し指12、中指13、薬指14、小指15にそれぞれ対応して設けられる圧力センサ261、262、263、264、265の総称である。
圧力センサ261、262、263、264、265は、それぞれ、親指11、人差し指12、中指13、薬指14、小指15の腹に対応する位置であって、アクチュエータ111〜115及びアクチュエータ121〜125と重複する位置に設けられている。圧力センサ261〜265は、例えば、ピエゾ素子を含み、圧力の変動を検出できるセンサであればよい。
圧力センサ261〜265は、グローブ部101Bの内側(グローブ部101Bの指11〜15に当接する側)に設けられている。親指11については、図13(B)に示すように、圧力センサ261は、グローブ部101Bの内側で、親指11の腹に対応する位置で、かつ、アクチュエータ111及び121と重複する位置に設けられている。これは、人差し指12、中指13、薬指14、小指15についても同様である。
このような圧力センサ261〜265を用いると、アクチュエータ111〜115のER流体に電圧が印加された状態において、さらに利用者が指11〜15に力をかける動作を検出することができる。このため、圧力センサ261〜265が圧力を検出する閾値は、アクチュエータ111〜115のER流体に電圧が印加された状態において、さらに利用者が指11〜15に力をかける動作を検出できる値に設定されている。
図14は、触感提供装置200を含む触感提供システム800Aの構成を示す図である。
触感提供システム800Aは、触感提供装置200、駆動制御装置500A、表示部600、及びモーションセンサ700を含む。
触感提供装置200は、アクチュエータ110、120、制御部130A、通信部140、バッテリ150、及び圧力センサ260(261〜265)を含む。駆動制御装置500Aは、画像制御部510A、駆動制御部520A、メモリ530、及び通信部540を含む。
触感提供装置200の構成は、実施の形態1の触感提供装置100に圧力センサ260(261〜265)を加えたものであり、圧力センサ260(261〜265)については図13に示す通りである。また、触感提供装置200は、実施の形態1の触感提供装置100の制御部130を制御部130Aに置き換えている。制御部130Aは、圧力センサ260(261〜265)の検出値を通信部140を介して駆動制御装置500Aに送信する。
駆動制御装置500Aは、画像制御部510A、駆動制御部520A、メモリ530、通信部540を有する。駆動制御装置500Aは、実施の形態1の駆動制御装置500の画像制御部510及び駆動制御部520を画像制御部510A及び駆動制御部520Aに置き換えたものである。
画像制御部510Aは、実施の形態1のステップS4において、モーションセンサ700によって手を握る動きが検出されたかどうかを判定する代わりに、圧力センサ260(261〜265)の検出値に基づいて、手を握る動きが行われたかどうかを判定する点が実施の形態1の画像制御部510と異なる。
また、駆動制御部520Aは、画像制御部510Aによって手を握る動きが行われたと判定された場合に、アクチュエータ120(121〜125)を駆動する点が実施の形態1の駆動制御部520と異なる。
なお、画像制御部510Aによる手を握る動きが行われたかどうかの判定は、圧力センサ261〜265の検出値に基づいて、指11〜15の各々について独立的に行われる。
また、駆動制御部520Aによるアクチュエータ121〜125の駆動は、画像制御部510Aの検出結果に基づいて、指11〜15の各々について独立的に行われる。
なお、圧力センサ260(261〜265)で手を握る動きを検出するため、モーションセンサ700は、手の移動を検出できる程度の分解能があればよく、手を握る動きを検出できる程度の分解能を備える必要はない。
図15は、アクチュエータ111及び121の駆動状態を示す図である。ここでは、アクチュエータ111及び121の電圧データと駆動状態を示すが、アクチュエータ112〜115及び122〜125についても同様である。
触感提供システム800Aにおいて、駆動制御装置500Aが投影装置600Bに物品610と手620の画像データを出力すると、投影装置600Bがスクリーン600Aに物品610(ボール)と手620の画像を表示する。このとき、スクリーン600Aに表示される物品610(ボール)と手620は離れている。
物品610(ボール)と手620は離れているため、アクチュエータ111及び121には、ともに電圧が印加されていない(0Vの)状態である。
そして、左の手10に触感提供装置200を装着した利用者が、現実空間で左の手10を移動させると、モーションセンサ700が手10の動きを検出し、駆動制御装置500Aが手620の画像を表示する位置座標を移動させる。
スクリーン600Aに表示される物品610に手620が触れるように利用者がさらに手10を動かし、物品610に手620が触れたと判定すると、駆動制御装置500Aは、アクチュエータ111を駆動する駆動制御信号を出力する。これにより、アクチュエータ111のER流体に電圧が印加され、アクチュエータ111は手10の親指11の動きを制限する。
すなわち、アクチュエータ111のER流体には電圧V11が印加され、アクチュエータ121のER流体には、電圧が印加されていない(0Vの)状態になる。
そして、利用者がボールを握るように指11を動かすと、圧力センサ261の検出値に基づいて、駆動制御装置500Aがボールを握る動作が行われたことを検出し、アクチュエータ121を駆動する駆動制御信号を出力する。
これにより、アクチュエータ111のER流体に電圧V11が印加されるとともに、アクチュエータ121のER流体に電圧V21が印加される状態になる。
この結果、利用者の手10には、アクチュエータ111による比較的強い拘束力と、アクチュエータ121による比較的緩やかな拘束力が伝達される。これらの拘束力は、利用者にボールを掴んでいる触感を与える。
なお、これは、アクチュエータ112〜115及びアクチュエータ122〜125についても同様である。
さらに、利用者がボールを握った状態から少し離すように指11を動かすと、圧力センサ261の検出値に基づいて、駆動制御装置500Aがボールを離す動作が行われたことを検出し、駆動制御装置500Aは、アクチュエータ121を駆動しないようにするために電圧データを0Vに設定した駆動制御信号を出力する。
このとき、アクチュエータ111の電圧データは、V11に保持され、アクチュエータ121の電圧データは、0Vになる。
すなわち、アクチュエータ111のER流体には電圧V11が印加され、アクチュエータ121のER流体には、電圧が印加されていない(0Vの)状態に戻る。
この結果、利用者の手10には、アクチュエータ111による比較的強い拘束力のみが伝達され、利用者にボールに触れている触感が提供される。
また、いままで利用者が手10でボールに触れる動作をしていた位置から手10をずらすと、駆動制御装置500Aは、物品610に手620が触れていないと判定し、アクチュエータ110を駆動しないようにするために電圧データを0Vに設定した駆動制御信号を出力する。
これにより、アクチュエータ110は駆動されない状態になり、手10の指11〜15の動きは、アクチュエータ110によって制限されなくなる。
以上のように、触感提供システム800Aによれば、スクリーン600Aに表示される物品610に手10で触ったような触感を利用者に提供することができる。このような触感を提供できるのは、RE流体の粘性の異なる2つのアクチュエータ110と120を重ねて設けているからである。また、さらに、アクチュエータ110と120が指11〜15の周囲を覆うように環状であるため、より現実感のある触感を提供することができる。
従って、実施の形態2によれば、現実感のある触感を提供できる触感提供装置200、及び、触感提供システム800Aを提供することができる。
<実施の形態3>
図16は、実施の形態3の触感提供装置300の一部を示す図である。図16には、実施の形態1の図1(C)と同様に、親指11に対応する部分を示す。
触感提供装置300は、手のひら側と甲側とで分離されている点が実施の形態1の触感提供装置100と異なる。その他の点は、実施の形態1の触感提供装置100と同様であるため、同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
図16(A)に示すように、触感提供装置300は、親指11に対応する部分として、アクチュエータ311U、311L、321U、321Lを含む。アクチュエータ311Lは、第1可変剛性層の一例であり、アクチュエータ321Lは、第2可変剛性層の一例である。アクチュエータ311Uは、第3可変剛性層の一例であり、アクチュエータ321Uは、第4可変剛性層の一例である。
アクチュエータ311Uと311Lは、手のひらを下に向けて手を水平に保った場合の手の甲側(上側:Upper side)と、ひら側(下側:Lower side)とに、図1(C)に示すアクチュエータ111を分断した構成を有する。アクチュエータ311Uは、手の甲側に配置され、アクチュエータ311Lは、手のひら側に配置される。
同様に、アクチュエータ321Uは、手の甲側に配置され、アクチュエータ321Lは、手のひら側に配置される。また、アクチュエータ321Uは、アクチュエータ311Uよりも内側(親指11に近い側)に配置され、アクチュエータ321Lは、アクチュエータ311Lよりも内側(親指11に近い側)に配置される。
なお、アクチュエータ311U及び311Lの断面構造は、実施の形態1のアクチュエータ111の断面構造と同様であり、アクチュエータ321U及び321Lの断面構造は、実施の形態1のアクチュエータ121の断面構造と同様である。
アクチュエータ311U、311L、321U、321Lは、上述のような構成を有するため、ER流体も手の甲側と手のひら側とに分離される。
図16(B)及び図16(C)には、アクチュエータ311Uと311LのER流体311UDと311LDを示す。図16(B)は、図3(A)に対応し、図16(C)は、図3(B)に対応する。
図16(B)及び図16(C)に示すように、ER流体311UDと311LDは、手の甲側と手のひら側とに分離されている。
アクチュエータ311Uと311LのER流体には、別々に電圧を印加することができる。また、アクチュエータ321Uと321LのER流体には、別々に電圧を印加することができる。
図17は、アクチュエータ311U、311L、321U、321Lを駆動した状態を示す図である。
図17(A)に示す状態は、アクチュエータ311U及び321UのER流体に電圧を印加せずに、アクチュエータ311L及び321LのER流体に電圧を印加した状態である。
利用者が親指11の関節を折り曲げる動作を行う場合に、この動作を制限するには、手のひら側のアクチュエータ311U及び321UのER流体に電圧を印加せずに、手の甲側のアクチュエータ311L及び321LのER流体に電圧を印加することが効果的である。
一方、図17(B)に示すように、利用者が親指11の関節を折り曲げた状態から親指11を真っ直ぐに伸ばす状態に戻す動作を行う場合に、この動作を制限するには、手の甲側のアクチュエータ311L及び321LのER流体に電圧を印加せずに、手のひら側のアクチュエータ311U及び321UのER流体に電圧を印加することが効果的である。
以上、実施の形態3によれば、手のひら側と甲側とで分離したアクチュエータ311U、311L、321U、321Lを用いることにより、親指11の動作に、よりきめ細かく対応でき、より現実感のある触感を提供できる触感提供装置300を提供することができる。
なお、ここでは、触感提供装置300のうちの親指11に対応する部分について説明したが、他の指の部分についても同様である。また、一部の指のみについて、上述のように手のひら側と甲側とで分離した構成にしてもよい。
以上、本発明の例示的な実施の形態の触感提供装置、及び、触感提供システムについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
手の指に装着される弾性体製又は布製の筒状の装着部であって、指の関節に対応する1又は複数の関節位置を有する、装着部と、
前記関節位置において前記装着部に取り付けられ、印加電圧に対して第1レベル特性で粘性が変化する第1電気粘性流体を封止し、電圧を印加するかどうかで剛性が変化する第1可変剛性層と、
前記関節位置において前記第1可変剛性層と重ね合わされて前記装着部に取り付けられ、印加電圧に対して第2レベル特性で粘性が変化する第2電気粘性流体を封止し、電圧を印加するかどうかで剛性が変化する第2可変剛性層と
を含み、
電圧印加時に前記第2電気粘性流体の前記第2レベル特性によって得られる粘性は、電圧印加時に前記第1電気粘性流体の前記第1レベル特性によって得られる粘性よりも小さい、触感提供装置。
(付記2)
前記第2可変剛性層の前記第2電気粘性流体の前記印加電圧は、可変電圧である、付記1記載の触感提供装置。
(付記3)
前記第1可変剛性層及び前記第2可変剛性層は、前記関節位置において、指の周りを囲むように環状に設けられている、付記2記載の触感提供装置。
(付記4)
前記装着部の指の腹に対応する位置において前記第1可変剛性層と重ねて配置される圧力センサをさらに含む、付記1乃至3のいずれか一項記載の触感提供装置。
(付記5)
前記関節位置における手の甲側において前記装着部に取り付けられ、印加電圧に対して第3レベル特性で粘性が変化する第3電気粘性流体を封止し、電圧を印加するかどうかで剛性が変化する第3可変剛性層と、
前記関節位置における手の甲側において、前記第3可変剛性層に重ね合わされて前記装着部に取り付けられ、印加電圧に対して第4レベル特性で粘性が変化する第4電気粘性流体を封止し、電圧を印加するかどうかで剛性が変化する第4可変剛性層と
をさらに含み、
前記第1可変剛性層及び前記第2可変剛性層は、前記関節位置における手のひら側において互いに重ね合わされて前記装着部に取り付けられており、
前記第2電気粘性流体の前記第2レベル特性によって得られる粘性と、前記第4電気粘性流体の前記第4レベル特性によって得られる粘性とは、前記第1電気粘性流体の前記第1レベル特性によって得られる粘性と、前記第3電気粘性流体の前記第3レベル特性によって得られる粘性とよりも小さい、付記1乃至4のいずれか一項記載の触感提供装置。
(付記6)
利用者の手の指に装着される触感提供装置と、前記触感提供装置の駆動制御を行う駆動制御装置と、利用者の手の動きを検出するモーションセンサと、利用者の手の画像と仮想物体の画像とを表示する表示部とを含む、触感提供システムであって、
前記触感提供装置は、
手の指に装着される弾性体製又は布製の筒状の装着部であって、指の関節に対応する1又は複数の関節位置を有する、装着部と、
前記関節位置において前記装着部に取り付けられ、印加電圧に対して第1レベル特性で粘性が変化する第1電気粘性流体を封止し、電圧を印加するかどうかで剛性が変化する第1可変剛性層と、
前記関節位置において前記第1可変剛性層と重ね合わされて前記装着部に取り付けられ、印加電圧に対して第2レベル特性で粘性が変化する第2電気粘性流体を封止し、電圧を印加するかどうかで剛性が変化する第2可変剛性層と
を有し、
前記第2電気粘性流体の前記第2レベル特性によって得られる粘性は、前記第1電気粘性流体の前記第1レベル特性によって得られる粘性よりも小さく
前記駆動制御装置は、
前記表示部に画像を表示する画像制御部であって、前記モーションセンサによって検出される利用者の手の位置に対応する前記表示部の座標系における位置に利用者の手の画像を表示するとともに、仮想物体の画像を表示し、手の画像と仮想物体の画像とが接触したかどうかを判定する画像制御部と、
前記画像制御部によって前記手の画像と前記仮想物体の画像とが接触したと判定されると、前記第1可変剛性層の前記第1電気粘性流体に電圧を印加する駆動制御部と
を有する、触感提供システム。
(付記7)
前記駆動制御部は、前記画像制御部によって前記手の画像と前記仮想物体の画像とが接触したと判定された後に、前記モーションセンサによって手の動きが検出されると、前記第2可変剛性層の前記第2電気粘性流体に電圧を印加する、付記6記載の触感提供システム。
(付記8)
前記触感提供装置は、
前記装着部の指の腹に対応する位置において前記第1可変剛性層と重ねて配置される圧力センサをさらに有し、
前記駆動制御部は、前記圧力センサによって所定以上の圧力が検出されると、前記第2可変剛性層の前記第2電気粘性流体に電圧を印加する、付記7記載の触感提供システム。