JP2017076740A - スターポリマーを含む電荷蓄積材料 - Google Patents

スターポリマーを含む電荷蓄積材料 Download PDF

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【課題】有機電界効果トランジスタに用いられる、スターポリマーを含む新規な電荷蓄積材料を提供する。【解決手段】上記課題を解決する本発明は、電荷蓄積材料から構成された電荷蓄積層と、この電荷蓄積層によって隔てられたゲート電極および有機半導体層と、ソース電極およびドレイン電極とを有する有機電界効果トランジスタ(OFET)における電荷蓄積材料であって、金属フタロシアニン錯体のコア、および、4本又は8本のポリマー鎖のアーム部を有するスターポリマーを含み、前記コアが電荷蓄積部位であり、この電荷蓄積部位が絶縁体である前記アーム部によって囲まれている、電荷蓄積材料である。コアを構成する金属フタロシアニン錯体の各ベンゼン環に、ポリマー鎖のアーム部が1本又は2本ずつ結合されたスターポリマーを含んでいてよい。【選択図】なし

Description

本発明は、スターポリマーを含む電荷蓄積材料に関する。特に、本発明は、電荷蓄積層と、この電荷蓄積層によって隔てられたゲート電極および有機半導体層と、ソース電極およびドレイン電極とを有する有機電界効果トランジスタ(OFET)における電荷蓄積材料に関する。
携帯型オーディオプレーヤーやデジタルカメラ向けメモリカードの普及に伴い、近年、不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)の市場が拡大している。不揮発性メモリは、MOS−FETをベースとして開発されたメモリであり、MOS−FETのゲートと酸化膜の間に、フローティングゲートを挟んだ2重ゲート構造となっている。フローティングゲートは、酸化膜ですっぽりと覆われているので、通常は絶縁状態にある。フローティングゲート上部の制御ゲートに電圧を印加すると、絶縁膜を通じてトンネル電流が流れ、フローティングゲートに電荷が蓄えられる(データ書き込み)。逆に、シリコン基板側に電圧を印加すると、フローティングゲートに蓄えられた電荷が放出される(データ消去)。
このようなシリコン系不揮発性メモリと同様の構造を有する有機不揮発性メモリの研究が、有機トランジスタや有機エレクトロルミネッセンス(EL)の実用化が現実となった今、次世代を担うエレクトロニクス材料として注目を集めている。特に、不揮発性メモリの大容量・低価格化が進む中で、有機材料を利用する有機不揮発性メモリは、既存のシリコン系不揮発性メモリが苦手としている大面積のセンサやディスプレイ等の開発に有用であると期待されている。
トランジスタ型有機不揮発性メモリは、従来の有機トランジスタ構造に加え、有機半導体と制御ゲートの間に、ナノフローティングゲートと呼ばれる電荷蓄積層を有する。このナノフローティングゲート材料として、これまでに金属ナノ粒子やナノ結晶を絶縁層中に分散させる系などが報告されている(非特許文献1参照)。しかし、混合系の場合、金属ナノ粒子等を再現よく均一に絶縁層中に分散させ、ナノレベルでフローティングゲート構造を調節することは非常に困難である。そのため、熱処理による分散化や、帯電したナノ粒子を静電反発で分散化させる方法、あるいは、ブロックコポリマーをテンプレートとして分散化させる方法などが報告されている。
また、フラーレンやグラフェンなどのナノ炭素材料や、フタロシアニン(以下「Pc」と略することもある)などの有機合成分子を利用したナノフローティングゲートが報告されている(例えば、非特許文献2)。有機分子は、単一なサイズを持ち、分子設計の自由度が高いことから、デバイス性能の調整が可能なナノフローティングゲート材料として大容量メモリへの応用が期待される。しかし、有機薄膜中で電荷蓄積部位となる有機分子を孤立・分散化させることが難しいため、未だに報告例は少ない。
一方、機能性有機分子をコアに持ち、周囲をポリマーで覆われた構造を持つスターポリマーは、その3次元的な構造に起因する特殊な物理的・化学的性質により、広く研究されている。特にポルフィリンやフタロシアニン(Pc)などの芳香族マクロ環状化合物は、魅力的な光学的および電子的特性を有するため、スターポリマーのコアに利用され、その溶液中の挙動について調査されている(例えば、非特許文献3)。通常、コア部位はアーム部位であるポリマーに覆われているため、孤立、分散化し、凝集によって特性を阻害されることなくコア独自の特性を示す。
このような構造は、電荷蓄積部位が絶縁膜中に孤立分散化される構造を持つナノフローティングゲート材料として適切と考えられた。
このような背景から、有機電界効果トランジスタ(OFET)メモリにおいて、金属ナノ粒子を用いたフローティングゲートの代替材料として好適であり、上記の不都合を解消可能であり、均一で柔軟な化学構造をもつ有機分子を利用する新規ナノフローティングゲート材料の開発が、より一層望まれている。
Lee, J.S.,Electronic Materials letters, Vol.7, No.3 (2011), pp.175−183 Chang,H.C.,et al.,Advanced.Materials 2015,27,27. Loos,F.de.,J.Phys.Org.Chem.2012,25,586.
本発明は、上記事情にかんがみてなされたものであり、有機電界効果トランジスタ(OFET)において、機能性有機分子をナノフローティングゲートに利用するための、新規な電荷蓄積材料およびこれに基づいて作成されたデバイスを提供することを第一の目的とする。より望ましくは、本発明は、電荷蓄積部位がポリマー薄膜内に均一に分散した、欠陥がなくかつメモリサイズや密度が調節可能な電荷蓄積層を再現性良く得ることができる電荷蓄積材料を提供することを目的とする。さらには、本発明は、そのような電荷蓄積材料を有する有機電界効果トランジスタ、有機電界効果トランジスタを用いた有機不揮発性素子、及び、有機不揮発性素子を含んでなる有機不揮発性メモリを提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究した結果、有機半導体として知られるπ電子共役系分子である金属フタロシアニン(Pc)上に電荷を蓄積し、周りを絶縁体であるポリマーで覆うことによって、ナノフローティングゲート材料として、電荷蓄積部位が薄膜内に均一に分散化された電荷蓄積層を再現性良く得ることができる電荷蓄積材料を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の構成は、以下の通りである。
[1].
電荷蓄積材料から構成された電荷蓄積層と、この電荷蓄積層によって隔てられたゲート電極および有機半導体層と、ソース電極およびドレイン電極とを有する有機電界効果トランジスタ(OFET)における電荷蓄積材料であって、
金属フタロシアニン錯体のコア、および、4本又は8本のポリマー鎖のアーム部を有するスターポリマーを含み、
前記コアが電荷蓄積部位であり、この電荷蓄積部位が絶縁体である前記アーム部によって囲まれている、
上記電荷蓄積材料。
[2].
コアを構成する金属フタロシアニン錯体の各ベンゼン環に、ポリマー鎖のアーム部が1本又は2本ずつ結合されたスターポリマーを含む、上記[1]項に記載の電荷蓄積材料。
[3].
コアの金属フタロシアニン錯体を構成する金属が、IUPAC周期表の第7〜11族に属するいずれかの金属である、上記[1]又は[2]項に記載の電荷蓄積材料。
[4].
前記ポリマー鎖のアーム部が、炭素−炭素の単結合骨格を有する少なくとも1種の構造単位が少なくとも5個連結したポリマー鎖を含む、上記[1]、[2]又は[3]項に記載の電荷蓄積材料。
[5].
スターポリマーのアーム部が、
コアのベンゼン環に接続されたエーテル基又はスルフィド基、
このエーテル基又はスルフィド基に結合されたポリアルキレン基、及び
このポリアルキレン基にエステル結合を介して結合されたポリマー鎖を含む、
上記[1]〜[4]項のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
[6].
コアの金属フタロシアニン錯体を構成する金属が、Cu、Zn、Ni、Co、Fe及びMnからなる群から選択される、上記[1]〜[5]項のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
[7].
コアの金属フタロシアニン錯体を構成する金属が、Cuである、上記[6]項に記載の電荷蓄積材料。
[8].
ポリマー鎖を構成する構造単位の繰り返し数が、5以上200以下である、上記[4]〜[7]項のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
[9].
ポリアルキレン基の炭素数が、2以上20以下である、上記[5]〜[8]項のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
[10].
ポリマー鎖を構成する各構造単位が、−[CH−CH(Ph)]−(式中、Phはフェニル基である。)、−[CH−CHR]−(式中、Rは−C(=O)ORであり、Rは置換されていてよいC1−C10アルキル基である。)、および−[CH−C(CH)R1’]−(式中、R1’は−C(=O)OR2’であり、R2’は置換されていてよいC1−C10アルキル基である。)から選択される少なくとも1種である、上記[4]〜[9]項のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
[11].
スターポリマーが、以下の構造(式中、Mは、Cu、Zn、Ni、Co、Fe、及びMnからなる群から選択される金属であり、Rは、フェニル基、又はブタン酸のカルボキシル基の水素を除いた残基であり、pが2以上20以下であり、nが5以上200以下である。)で表される、上記[1]〜[10]項のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。

[12].
スターポリマーが、以下の構造(式中、Mは、Cu、Zn、Ni、Co、Fe、及びMnからなる群から選択される金属であり、Rは、フェニル基、又はブタン酸のカルボキシル基の水素を除いた残基であり、pが2以上20以下であり、nが5以上200以下である。)で表される、上記[1]〜[10]項のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。

[13].
上記[1]〜[12]項のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料から構成された電荷蓄積層を有する有機電界効果トランジスタ。
[14].
電荷蓄積層が、前記スターポリマーのアーム部以外の絶縁体を含まずに形成されている、上記[13]項に記載の有機電界効果トランジスタ。
[15].
上記[13]又は[14]項に記載の有機電界効果トランジスタを用いた有機不揮発性素子。
[16].
上記[15]項に記載の有機不揮発性素子を含んでなる有機不揮発性メモリ。
本発明に係るスターポリマーを含む電荷蓄積材料は、金属フタロシアニン錯体のコアが電荷蓄積部位であり、スターポリマーの4本又は8本のポリマー鎖のアーム部が絶縁体として電荷蓄積部位を取り囲む構成を有する。このようなスターポリマーは、有機溶媒に均一に十分溶解させて、粘性の低い溶液を形成できるため、スピンコート法等の湿式成膜法により薄膜形成が可能である。従って、本発明の電荷蓄積材料は、ナノフローティングゲート代替材料として、電荷蓄積部位がポリマー薄膜内に均一に分散した電荷蓄積層を再現性良く得ることができる。
さらには、電荷蓄積部位である金属フタロシアニン錯体のコアの会合状態を超分子的に調節することによって、貯蓄電荷の量を調節し、省エネ・大容量化を達成することができる。
特に、有機電界効果トランジスタの電荷蓄積層が、スターポリマーのアーム部以外の絶縁体を含まずに形成される場合には、電荷蓄積部位の密度を自在に調節することができ、有機不揮発性素子あるいは有機不揮発性メモリ全体の効率的な設計が可能となる。
なお、これらの望ましい効果によって、本発明の範囲が限定的に解釈されるべきではない。本発明の主要な目的は、有機電界効果トランジスタ(OFET)において、機能性有機分子をナノフローティングゲートに利用するための、新規な電荷蓄積材料およびこれに基づいて作成されたデバイスを提供することである。この目的を達成するための手段は、本願の特許請求の範囲によって確定される。
図1は、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(1))合成工程の反応式である。 図2は、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(1))合成工程の反応式である。 図3は、スターポリマー(Pc−(PS))合成工程の反応式である。 図4は、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(2))合成工程の反応式である。 図5は、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(2))合成工程の反応式である。 図6は、スターポリマー(Pc−(PS))合成工程の反応式である。 図7(a)は、CuPc−PSのCHCl中の吸収スペクトル(実線)およびフィルム形態の吸収スペクトル(点線)を示す図である。図7(b)は、CHClおよびメタノールの種々の比率の混合溶液中でのCuPc−PSの吸収スペクトルを示す図である。 図8(a)は、示差走査熱量測定(DSC)によってPn−PS、CuPc−PSおよびPSのガラス転移温度(Tg)を測定した結果を示す図である。図8(b)は、小角広角X線散乱(SWAXS)測定を用いてCuPc−PSおよびPSの粉末サンプルを解析した結果を示す図である。 図9は、ボトム−ゲート/トップ−コンタクト構造を有し、本発明の電荷蓄積層を有するペンタセンベースのOFETメモリデバイスの概略を、CuPc−PSフィルム上にデポジットされたペンタセンのAFM画像(a)およびCuPc−PBAフィルム上にデポジットされたペンタセンのAFM画像(b)を併せて表示する図である。 図10(a)は、CuPc−PS誘電体層を有するOFETデバイスに対する書き込み/消去操作における伝達特性を示す図であり、図10(b)は、CuPc−PBA誘電体層を有するOFETデバイスに対する書き込み/消去操作における伝達特性を示す図である。 図11は、CuPcコアのスターポリマーが埋め込まれたペンタセンOFETデバイスの保持時間試験結果を示す図である。 図12(a)は、負のゲート電圧を印加した際のペンタセンおよびCuPc−PSのエネルギーバンドの概略を示すである。図12(b)は、正のゲート電圧を印加した際のペンタセンおよびCuPc−PSのエネルギーバンドの概略を示すである。 図13は、CuPc−PSを用いるOFETメモリデバイスのエンデュランステスト結果を示す図である。
[1].スターポリマー
本発明による電荷蓄積材料に含まれるスターポリマーの構造は、金属フタロシアニン錯体のコア、および、4本又は8本のポリマー鎖のアーム部を有する以外は、特に限定されない。このスターポリマーは、コアが電荷蓄積部位として作用し、アーム部が、コアの電荷蓄積部位を取り囲む絶縁体として機能することを特徴とする。
コアは、4つのフタル酸イミドがそれぞれ窒素原子で架橋された骨格構造およびその中心に位置する金属原子による錯体である部位として定義される。また、アーム部は、スターポリマーのコア以外であって、各フタル酸イミド部分のベンゼン6員環に結合した、絶縁性を奏するポリマー鎖として定義される。本発明による電荷蓄積材料の目的に鑑み、ここでのポリマー鎖には、多少なりとも絶縁性を奏する限り、いかなるものも包含される。
本発明に係るスターポリマーにおいて、コアの金属フタロシアニン錯体を構成する金属は、錯体を構成可能であって電荷蓄積部位として作用可能な金属である限りは特に限定されない。この金属は、典型的には、IUPAC周期表の第7〜11族に属するいずれかの金属(単数種あるいは複数種の混合)であってよい。
本発明に係るスターポリマーにおいて、コアの金属フタロシアニン錯体を構成する金属は、特に好ましくは、Cu、Zn、Ni、Co、Fe及びMnからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
コアの金属フタロシアニン錯体を構成する金属は、入手容易性およびコスト、加工および取扱容易性、電気伝導性等の観点から、最も好ましくはCuである。
本発明に係るスターポリマーは、コアを構成する金属フタロシアニン錯体の各ベンゼン環にポリマー鎖のアーム部が1本ずつ結合された(アーム部が合計4本である)スターポリマーであってもよく、あるいは、コアを構成する金属フタロシアニン錯体の各ベンゼン環にポリマー鎖のアーム部が2本ずつ結合された(アーム部が合計8本である)スターポリマーであってもよい。いずれの形態のアーム部であっても、コアの電荷蓄積部位を取り囲む絶縁体として機能することが可能である。アーム部のベンゼン環に対する結合位置は、各々独立に、3位〜6位のいずれであってもよい。各ベンゼン環にポリマー鎖のアーム部が1本ずつ結合されている場合、より典型的には、結合位置は4位または5位である。各ベンゼン環にポリマー鎖のアーム部が2本ずつ結合されている場合、より典型的には、結合位置は4位および5位である。
本発明に係るスターポリマーにおいて、ポリマー鎖のアーム部は、コアの電荷蓄積部位を取り囲む絶縁体として機能することが可能である限り特に限定されるものではないが、典型的には、炭素−炭素の単結合骨格を有する少なくとも1種の構造単位が少なくとも5個連結したポリマー鎖を含むものであってよい。このポリマー鎖は、典型的には、公知の原子移動ラジカル重合(ATRP:Atom Transfer Radical Polymerization)によって形成することができる。ポリマー鎖を構成する炭素−炭素の単結合骨格を有する少なくとも1種の構造単位は、例えば、好ましくは10個以上連結されたものでもよく、より好ましくは20個以上連結されたものであり、さらに好ましくは30個以上連結されたものである。構造単位の数が多いほど製膜性、耐熱性、絶縁性が高まるため好ましい。一方、合成効率・コスト、省資源等の観点から、構造単位の数は200個以下であってよい。従って、ポリマー鎖を構成する炭素−炭素の単結合骨格を有する少なくとも1種の構造単位は、典型的には、5以上200以下であってよく、好ましくは10個以上150個以下であってよい。
特に限定されないが、一実施形態として、スターポリマーのアーム部は、コアのベンゼン環に接続されたエーテル基又はスルフィド基、このエーテル基又はスルフィド基に結合されたポリアルキレン基、及びこのポリアルキレン基にエステル結合を介して結合されたポリマー鎖を含むものであってよい。
ここで、ポリアルキレン基の炭素数は、溶解性の向上の観点から、典型的には2以上20以下であり、好ましくは3以上18以下であってよい。
アーム部のコアに対する接続部は、より強固な接続の観点から、好ましくはスルフィド基である。
他の実施形態として、ポリマー鎖を構成する各構造単位は、
−[CH−CH(Ph)]−(式中、Phはフェニル基である。)、
−[CH−CHR]−(式中、Rは−C(=O)ORであり、Rは置換されていてよいC1−C10アルキル基である。)、および
−[CH−C(CH)R1’]−(式中、R1’は−C(=O)OR2’であり、R2’は置換されていてよいC1−C10アルキル基である。)
から選択される少なくとも1種であってよい。
特に限定されないが、一実施形態において、スターポリマーは、以下の構造で表されるものであってよい。

[式中、Mは、Cu、Zn、Ni、Co、Fe、及びMnからなる群から選択される金属であり、Rは、フェニル基、又はブタン酸のカルボキシル基の水素を除いた残基であり、pが2以上20以下であり、nが5以上200以下である。ベンゼン環に対するアーム部の結合位置は、各々独立に、3位〜6位のいずれであってもよい。]
また、特に限定されないが、他の実施形態において、スターポリマーは、以下の構造で表されるものであってよい。

[式中、Mは、Cu、Zn、Ni、Co、Fe、及びMnからなる群から選択される金属であり、Rは、フェニル基、又はブタン酸のカルボキシル基の水素を除いた残基であり、pが2以上20以下であり、nが5以上200以下である。ベンゼン環に対するアーム部の結合位置は、各々独立に、4位及び5位のいずれか又は両方に替えて、3位及び6位のいずれか又は両方であってもよい。]
本発明に係るスターポリマーの製造方法は、特に限定されず、任意の方法によって製造することができる。
ポリスチレンポリマー鎖のアーム部を有するスターポリマーの場合について、原子移動ラジカル重合(ATRP)を用いた製造方法の一例を以下に示す。
製造方法のフローは、以下のとおりである。
(S1)フタロニトリルATRPイニシエーター(開始剤)合成工程
(S2)フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS)合成工程
(S3)精製Pn−PS作製工程
(S4)スターポリマー合成工程
他のポリマー鎖(ATRPポリマー鎖)を有するスターポリマーについても、本方法を用いて同様に製造することができる。
(フタロニトリルATRPイニシエーター合成工程S1)
まず、4位又は/及び5位にハロゲン又はニトロ基を有するフタロニトリルに、HS(CH−OH(pは2以上20以下である。)を、好ましくはKCO存在下、DMSOなどの有機溶媒中で反応させて、フタロニトリル−{S−(CH−OH}(m=1又は2)を作製する。次に、Br−C(=O)−C(CH−Br(2-ブロモイソブチリルブロミド)を、TEA(トリエチルアミン)等の低級アルキルアミン存在下、テトラヒドロフラン(THF)中で反応させて、フタロニトリル−{S−(CH−O−C(=O)−C(CH−Br}(m=1又は2)(Pn−(S−(CH−(C(CH−C(=O)−O−)−PS)、以下、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i)と略記する。)を合成する。このように、容易にPn−iを合成できる。
4位又は/及び5位にハロゲン又はニトロ基を有するフタロニトリルとして、4−ニトロフタロニトリル又は4、5−ジクロロフタロニトリルを挙げることができる。また、上記臭化物に替えて他のハロゲン化物を用いることもできる。
(フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS)合成工程S2)
Pn−iをATRP開始剤として、CuBr/PMDETAなどの公知の触媒存在下、例えばアニソールなどの有機溶媒中、50〜200℃の適当な温度(典型的には60℃〜100℃程度)に加熱して、ポリスチレン(最小の繰り返し構造単位nが5以上200以下である。)を合成し、さらにフタロニトリル−{S−(CH−O−C(=O)−C(CH−スチレン−Br}(m=1又は2)(以下、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS)と略記する。)を合成する。
ATRPは、制御ラジカル重合法(Controlled radical polymerization,CRP)の一つである。この方法により、目的の分子量のポリマーを狭い分子量分布で合成でき、また、多様な機能性部位を持つポリマーを作ることもできる。そのため、スチレン分子量を高精度に制御することができ、フタロシアニンのコア間距離を調整することができる。
(精製Pn−PS作製工程S3)
Pn−PSから、高分子量のポリマー(不純物ポリマー)を除去して、精製して、精製Pn−PSを作製する。精製法は、特に限定されず、任意の手段により行ってよい。
(スターポリマー合成工程S4)
金属化合物およびDBU(ジアザビシクロウンデセン)等の強塩基の存在下、例えばブタノール/トルエン混合溶媒等のPn−PS溶解性有機溶媒中で、精製Pn−PSを環化反応させる。
この金属化合物は、特に限定されないが、環化反応の効率性の観点から、Zn、Cu、Ni、Co、Fe、Mnの群から選択されるいずれか一の金属のハロゲン化合物であることが好ましい。最も典型的には、金属化合物はCuClである。
この工程では、混合溶媒を用いることが好ましい。Pn−PSはアルコール溶媒に対する溶解性が低い。Pn−PSの溶解性を上げるため、ブタノール(沸点117℃)にトルエン(沸点110℃)を加えて混合溶媒とするとよい。混合溶媒としては、ブタノール/トルエンの他、プロパノール/トルエン、ペンタノール/トルエン、ヘキサノール/アニソールとしてもよい。
上記工程により、スターポリマー(M−Pc−(S−(CH−(C(CH−C(=O)−O−)−PS(n)))を容易に合成できる。
[2].有機電界効果トランジスタ、有機不揮発性素子、有機不揮発性メモリ
本発明による有機電界効果トランジスタ(OFET)は、上記スターポリマーを含む電荷蓄積材料から構成された電荷蓄積層と、この電荷蓄積層によって隔てられたゲート電極および有機半導体層と、ソース電極およびドレイン電極とを有するものである以上は、特に限定されない。
電荷蓄積層、ゲート電極、有機半導体層、ソース電極およびドレイン電極は、通常、シリコン、ガラス、プラスチックフィルムなどの基板上に形成される。
ソース電極は、ドレイン電極との間に電界を印加し、有機半導体層にキャリアを注入することができるものである。ドレイン電極は、ソース電極との間に電界を印加し、有機半導体層からキャリアを流れ込ませることができるものである。ソース電極、ドレイン電極は、同じ構成のものを採用することができる。ソース電極、ドレイン電極としては、導電性を有する以上は特に限定されないが、例えば、Au、Pt、Al、Cu、Cr又はこれらを複数積層させたものを好適に用いることができる。
有機半導体層は、ゲート電極から印加される電圧によってソース電極とドレイン電極との間に流れる電流を調整する機能を有する層である。有機半導体層としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ペンタセンやペリレンビスイミド誘導体等の低分子、P3HT、MEH−PPV等の高分子を好適に用いることができる。
電荷蓄積層を構成する電荷蓄積材料は、上記スターポリマーを含む以外は、特に限定されない。電荷蓄積材料は、有機溶媒に均一に十分溶解させて、粘性の低い溶液を形成可能であるというスターポリマーの特性を阻害しない限りは、スターポリマー以外の公知の任意材料を含んでよい。
上記スターポリマーを含む電荷蓄積材料は、金属フタロシアニン錯体のコアが電荷蓄積部位であり、スターポリマーの4本又は8本のポリマー鎖のアーム部が絶縁体として電荷蓄積部位を取り囲む構成を有する。電荷蓄積材料は、上記スターポリマーを含むことによって、有機溶媒に均一に十分溶解させて、粘性の低い溶液を形成できるため、スピンコート法等の湿式成膜法により薄膜形成が可能である。従って、ナノフローティングゲート代替材料としてこの電荷蓄積材料を用いることによって、電荷蓄積部位がポリマー薄膜内に均一に分散した電荷蓄積層を再現性良く得ることができる。
さらには、電荷蓄積部位である金属フタロシアニン錯体のコアの会合状態を超分子的に調節することによって、貯蓄電荷の量を調節し、省エネ・大容量化を達成することができる。
特に、電荷蓄積層を、スターポリマーのアーム部以外の絶縁体を含まずに形成することによって、電荷蓄積部位の密度を自在に調節することができ、有機不揮発性素子あるいは有機不揮発性メモリ全体の効率的な設計が可能となる。
ゲート電極は、電圧を印加することで有機半導体層にキャリアを誘起させることができるものである。ゲート電極としては、導電性を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えばAu、Pt、Al、Cu、Cr又はこれらを複数積層させたものを好適に用いることができる。
基板上には、上記電荷蓄積層とは別に、ゲート絶縁層を形成することができる。ゲート絶縁層は、有機半導体層とゲート電極とを絶縁する機能を有する膜である。ゲート絶縁層としては、絶縁性を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、SiO、SiN、Al、Ta、BaSr1−xTiO(BST)等の無機絶縁物、PVA、PVP、PMMA等の有機絶縁物を好適に用いることができる。
本発明による有機電界効果トランジスタ(OFET)を用いて、公知の構造を有する有機不揮発性素子、有機不揮発性メモリを形成することができる。これらの有機不揮発性素子、有機不揮発性メモリは、上記スターポリマーを含む電荷蓄積材料から構成された電荷蓄積層と、この電荷蓄積層によって隔てられたゲート電極および有機半導体層と、ソース電極およびドレイン電極とを有する有機電界効果トランジスタ(OFET)を用いるものである以上、特に限定されない。
以下では、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(合成例1)
<フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(1))合成工程>
図1は、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(1))合成工程の反応式である(Scheme 1−1)。まず、メルカプトウンデセノール(HS−(CH11−OH)と、4−ニトロフタロニトリルを、DMSO中、炭酸カリウムとともに反応させて、OHを末端に有するウンデシルチオフタロニトリル(フタロニトリル−{S−(CH11−OH}(m=1))を合成した。
次に、これを2−ブロモイソブチリルブロミド(Br−C(=O)−C(CH−Br)と反応させて、フタロニトリル−{S−(CH11−O−C(=O)−C(CH−Br}(m=1)にて表記されるフタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(1))を合成した。
<フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(1))合成工程>
図2は、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(1))合成工程の反応式である(Scheme 1−2)。アニソール中、70℃で、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(1))を開始剤、CuBr/PMDETAを触媒系として用い、ATRP法により、スチレンからポリスチレンを合成し、さらにフタロニトリル−{S−(CH11−O−C(=O)−C(CH−ポリスチレン(n)−Br}(m=1)にて表記されるフタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(1))を合成した。
ポリスチレン標準を用いたGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により、重合度を見積もったところ、重合度は41となった。また、重クロロホルム中H NMRにより、重合度を見積もった。この重合度は42となった。
このフタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(1))のラジカル重合反応過程において、再結合による停止反応により、両末端にフタロニトリルを有するポリマーも生成した。この高分子量のポリマーは、次に続く環化反応の際にネットワーク構造を形成させる可能性があるため、次の精製工程を行い取り除いた。
<フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(1))精製工程>
リサイクル分取GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)(JAIGEL 2H/2.5H、溶離液:テトラヒドロフラン)を用いて、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(1))から高分子量のポリマーを取り除く精製を行い、精製フタロニトリル−ポリスチレン(精製Pn−PS(1))を得た。
<スターポリマー合成工程>
図3は、スターポリマー合成工程の反応式である(Scheme 1−3)。
まず、ブタノール(沸点117℃)にトルエン(沸点110℃)を加えた混合溶媒を用意した。精製Pn−PSはアルコール溶媒に溶けないため、Pn−PSの溶解性を上げるためである。
次に、前記混合溶媒に精製Pn−PSを、CuCl、DBUとともに添加した。次いで、前記混合溶媒を加熱して、130℃として、この状態を12時間維持して、反応溶液を得た。このようにして、精製Pn−PS(1)を、CuCl、DBU存在下、ブタノール(BuOH)/トルエン(Toluene)中で反応させた。
この反応溶液を室温に戻し、次いで、反応溶液をアルミナに通して触媒を取り除いた。次いで、メタノール中で再沈殿して、反応混合物固体を得た。その後、分取GPC(JAIGEL 2.5H/3H、溶離液:THF)を用いて、緑色粉末のPcのスターポリマーと、原料である白色粉末のPnのポリマーを分離した。これらの操作によって、銅フタロシアニンをコアに持つスターポリマー(Cu−Pc−(S−(CH11−(C(CH−C(=O)=O−)−PS(n))、更にPc−(PS)と略記する。)を合成した。
ポリスチレンスタンダードを用いたGPCにより、重合度を見積もった。その結果、4−armの分子量(PcPS)は、Pnのポリマーの分子量の約4倍から20%程度小さく見積もられた。
(合成例2)
<フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(2))合成工程>
4−ニトロフタロニトリルの替わりに市販品(ジクロロフタロニトリル)を用いた他は、合成例1と同様にして、合成を行った。
図4は、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(2))合成工程の反応式である(Scheme 2−1)。まず、メルカプトウンデセノールと、(4,5―ジクロロフタロニトリル)を、DMSO中、炭酸カリウムとともに反応させ、OHを末端に有するアルキルチオフタロニトリルを合成した。次に、これを2−ブロモイソブチリルブロミドと反応させて、フタロニトリル含有2官能性開始剤(Pn−i(2))を合成した。
<フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(2))合成工程>
図5は、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(2))合成工程の反応式である(Scheme 2−2)。アニソール中、70℃で、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(2))を開始剤、CuBr/PMDETAを触媒系として用い、ATRP法により、スチレンからポリスチレンを合成し、さらにフタロニトリル−{S−(CH11−O−C(=O)−C(CH−ポリスチレン(n)−Br}(m=2)にて表記される2分岐のフタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(2))を合成した。この重合反応は、分析GPCにより追跡した。時間に伴うスチレン反応率の変化を示す一次速度論プロットから、重合がリビングで進行していたことが分かった。
ポリスチレン標準を用いたGPCと、重クロロホルム中H NMRにより、生成物の重合度を見積もった。この重合度は、それぞれ、45と58と見積もった。
<フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(2))精製工程>
リサイクル分取GPC(JAIGEL 2H/2.5H、溶離液:テトラヒドロフラン)を用いて、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(2))から高分子量のポリマーを取り除く精製を行い、精製フタロニトリル−ポリスチレン(精製Pn−PS(2))を作製した。フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(2))のATRP直後のGPC分析結果とGPCによる精製後のGPC分析結果との比較により、GPCを行うことで精製できたことが確認された。
<スターポリマー合成工程>
図6は、スターポリマー合成工程の反応式である(Scheme 2−3)。まず、ブタノール(沸点117℃)にトルエン(沸点110℃)を加えた混合溶媒を用意した。この混合溶媒に、精製Pn−PS(2)を、CuCl、DBUとともに添加した。次に、混合溶媒を加熱して130℃とし、この状態を12時間維持して、反応溶液を得た。このようにして、精製Pn−PS(2)を、CuCl、DBU存在下、ブタノール/トルエン中で反応させた。
この反応溶液を室温に戻し、次いで、反応溶液をアルミナに通して触媒を取り除いた。次いで、メタノール中で再沈殿して、反応混合物固体を得た。その後、分取GPC(JAIGEL 2.5H/3H、溶離液:THF)を用いて、緑色粉末のPcのスターポリマーと、原料である白色粉末のPnのポリマーを分離した。これらの操作によって、銅フタロシアニンをコアに持つスターポリマー(Cu−Pc−(S−(CH11−(C(CH−C(=O)=O−)−PS(n))、更にPc−(PS)と略記する。)を合成した。
ポリスチレンスタンダードを用いたGPC測定結果によれば、8−armの分子量(Pc−(PS))は、Pn−PS(2)の分子量に対して4倍よりも約25%小さく見積もられた。
表1にフタロニトリル−ポリスチレンの合成条件をまとめた。また、表2にスターポリマーの合成条件をまとめた。
ここで、Mは重量平均分子量、Mは数平均分子量を示し、Mn(theor)は開始剤とモノマー比から計算した分子量の理論値を表す。
<各種スターポリマーの調製>
また、スチレンの替わりにn−ブチルアクリレート(n−BA)を用いて、上記同様の合成法に従って、スターポリマーCuPc−PBAを得た。一方、比較のため、4官能性開始剤を用いたスチレンおよびn−ブチルアクリレートのATRPにより、CuPcコアを有しないアーム数が4のスターポリマー(PSおよびPBA)を合成した。
CuPc−PSおよびCuPc−PBAと併せて、PSおよびPBAの化学構造を、以下に示す。
また、ここまでに合成した4種の4本アーム・スターポリマーについて、化学的構造及び性質を以下の表3に示す。
<スターポリマーの自己集合構造の調査>
CuPc−PSの溶解性は、ポリスチレンスターポリマー(PS)と同様であり、ジクロロメタン(CHCl)、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、トルエンなどの有機溶媒によく溶け、メタノールなどの極性溶媒に難溶である。CuPc−PSのCHCl中の吸収スペクトルは、チオアルキルフタロシアニンの文献値と実質的に合致する693nmに吸収極大を持つ吸収バンド(Q帯)および350nmにピークを持つ吸収バンド(ソーレー帯)を示した(図7aの実線参照)。興味深いことには、CuPc−PSのドロップキャストフィルムは、溶液とは全く異なる吸収スペクトルを示し、698nmにショルダーピークを有すると共に、630nmにピークを有するより広いQバンドを与えた(図7aの点線参照)。一方、CHCl溶液に極性溶媒であるメタノールを添加し、更にその添加割合を増大させていくと、693nmでのピークは減少し、630nmに短波長シフトしたピークを持つより広がった吸収バンドを示した(図7b参照)。このメタノール中のCuPc−PSのスペクトルは、CuPc−PSを石英基板にドロップキャストしたフィルムのスペクトルに類似していた。このようなQ帯が短波長シフトしたスペクトルは、隣接するPcの間の励起子相互作用(エキシトンカップリング)から生じるものであり、CuPcコア平面がπ−π相互作用によって重なり合った集合体を形成しているときの特徴である。CuPc−PBAも同様に、メタノール中および固体状態で短波長シフトしたスペクトルを示したことから、コアがPBAアームポリマー中πスタックした構造を形成することがわかった。
また、CuPc−PSのCHCl溶液の吸収スペクトルを確認したところ、チオアルキルフタロシアニンの文献値と実質的に合致する711nmに吸収極大ピークが現れた。
一方、CuPc−PSのガラス転移温度(Tg)を示差走査熱量測定(DSC)により調査したところ、2回目の昇温過程において、50℃のTgを示したが、これは、分子量の大きな相違にも関わらず、Pn−PSのガラス転移温度(49℃)とほぼ同じである(図8a参照)。CuPcコアを有しないアーム数が4のスター型のPSであるPS(CuPc−PSと類似の分子量を有する)は、92℃のTgを示した(図8a参照)。この結果は、CuPc−PSのセグメント運動が、個々のアームポリマーに類似していることを示した。それゆえ、CuPc−PSのCuPcコアは、π−π相互作用によりコアユニットを超分子的に結合させる架橋剤として作用し、ポリマー全体にミクロな配列を誘起し、スターポリマー間の絡み合いを抑止すると考えられた。さらに、DSCプロファイルに融解も液晶化も観察されず、偏光顕微鏡観察においてもテクスチャが確認されなかったことから、CuPcコアの集合体は、マイクロサイズの大きなドメインを形成することなく、PSマトリックス中に分散していると結論づけた。
CuPc−PSの自己集合構造を調査するため、ガラス毛細管に封入したCuPc−PSの粉末サンプルを、室温の小角広角X線散乱(SWAXS)測定を用いて解析した(図8b参照)。SWAXSプロフィールにてq=0.9nm−1(d=7.0nm)の周辺に拡散した散乱を示した。これは、PSマトリックス中に分散したPc集合体の間の距離を示唆している。比較のため、PSについてSWAXS測定を用いて解析したが、そのような散乱は観測されなかった。CuPc−PBAも同様に、SWAXSプロフィールにてq=1nm−1(d=6.3nm)の周辺に散乱を示した。
以上の結果から、CuPcコアを持つスターポリマーは、コア部位がπ相互作用によって集合化し、アーム部位のPSマトリックス中に分散しているこのような構造を形成することが分かった。このような構造はOFETメモリデバイスにおけるナノフローティングゲート構造に適切と考えられたため、引き続きデバイスについて調査した。
<スターポリマー誘電体層を有するOFETデバイスの特徴>
図9に例示されているように、ボトム−ゲート/トップ−コンタクト構造を有するペンタセンOFETメモリデバイスの電荷蓄積層にCuPc−PSを適用することを試みた。CuPc−PBA及びPBA並びにPSスターポリマーもまた、比較のため電荷蓄積層として利用した。
ポリマーのトルエン溶液(5mg/ml)を、厚み100nmのSiO層を有するnドープしたシリコンウェハー上にそれぞれスピンコートし、減圧下40℃で2時間乾燥させ、残留溶媒を除去した。次いで、ペンタセン電荷輸送層を室温で真空下蒸着した。ポリマー層とペンタセン層の厚みは、それぞれ55nmおよび50nmであった。最後に、チャネル長(L)50μm、チャネル幅(W)1000μm、厚み80nmとなるようにマスクを通じて金を蒸着してソース・ドレイン電極を作成した。
これらのデバイスに関連した性質を、表4に要約する。表中、全てのデータは、少なくとも2つのバッチデバイスの異なる10カ所で測定した数値を平均化したものである。ここで、CuPc−PS層を有するデバイスの電荷移動度(mobility)は、0.41cm/V/sと見積もられ、ペンタセンを用いるOFETとして適切な値を示した。一方、CuPc−PBA層を有するデバイスの電荷移動度(9.9×10−4cm/V/s)は、3桁も小さい値であった。
原子間力顕微鏡(AFM)によるペンタセン層の表面観察により、それぞれのスターポリマー薄膜上でペンタセン結晶ドメイン構造に重大な相違があることが明らかになった(図9)。
CuPc−PS薄膜上に蒸着されたペンタセンのAFM画像において、0.4μm程度の大きな結晶ドメインを持つペンタセン結晶を確認した(図9a)。一方で、CuPc−PBA薄膜上に蒸着されたペンタセンにおいては、0.06μm程度の小さな粒子状の結晶ドメインを観察した(図9b)。さらに、CuPc−PSが自乗平均面粗さ(RMS値)が0.19nmの非常に滑らかな薄膜表面を持つのに対し、CuPc−PBAはRMS値が1.32nmの比較的粗い薄膜表面を形成した。これはPBAのTgが約−50度と低く、均一で滑らかな表面を持つスピンコートフィルムを作製するのが困難であるためであり、それがペンタセン結晶の成長を阻害し、より小さい粒状のペンタセン結晶が得られたと考えられる。
また、ポリマー薄膜の表面エネルギーは、ポリマー表面でのペンタセン分子の拡散プロセスや結晶成長速度に影響し、ペンタセンの結晶ドメインサイズの差異に関係することが知られている。そこで、水およびジヨウドメタンの接触角を測定し、ペンタセンおよび各スターポリマーの薄膜の表面自由エネルギーを見積もったところ、ペンタセンは47.2mJ/m、CuPc−PSは、47.3mJ/mとほぼ同じ値であった。表面自由エネルギーに差がないことで、界面でペンタセン結晶が欠陥なく成長し、CuPc−PS薄膜上でより大きな結晶ドメインを形成したと考えられる。他方、CuPc−PBAの表面自由エネルギーは、39.6mJ/mと見積もられた。粗いポリマー表面と極性の高い高分子鎖の性質により、CuPc−PBA上でのペンタセンの結晶成長が阻害されたことが示唆された。一方で、CuPcコアを有しないスターポリマー、すなわちPS及びPBAは、相当するCuPcコアを有するスターポリマーとほぼ同じ表面自由エネルギーを有し、これは、ポリマー表面がCuPcコアではなくアームポリマーにより覆われていたことを意味する。
ペンタセン結晶構造を調査するために、これらのフィルムについて、薄膜X線回折(XRD)測定を行った。
SiO基板、CuPc−PSまたはPS薄膜上のペンタセンの面外XRD測定をしたところ、2θ=5.71°に面間隔が約15.5Åの鋭い(001)回折ピークを示した。これは「薄膜相」と呼ばれる準安定構造に由来し、この相では、ペンタセン分子の長軸方向が基板に垂直に配向し、隣り合う分子同士のπ−軌道が重なることにより効率的な電荷キャリア輸送を達成することが知られている。他方、CuPc−PBAまたはPBA上のペンタセン蒸着膜のXRD回折では、(001)ピークが減少し、代わりに2θ=6.05°にショルダーピーク(001’)が現れた。このショルダーピークは、面間隔約14.6Åの熱力学的に安定な三斜晶相、いわゆる「バルク相」に起因するものであった。(001)構造のみからなる結晶構造と比べて、薄膜相(001)及びバルク相(001’)が混在すると、ペンタセン分子のπ軌道の重なり合いが阻害され、ペンタセン結晶内の電荷移動度を一般に悪化させる。従って、ポリマー表面の粗さおよび極性がペンタセン結晶の成長に影響し、CuPc−PS層またはCuPc−PBA層上に異なる結晶構造を与え、終局的に電荷キャリア性能に影響を与えたものと結論される。結果として、CuPc−PS電荷蓄積層を有するOFETデバイスは、CuPc−PBA層を有するOFETデバイスよりもずっと高い電荷移動度を与えた。
さらに、CuPc−PS組み込みデバイスは、ドレイン電流のON/OFF比が10と高いため、メモリデバイスへの高い潜在性が見込まれた。
<OFETメモリデバイスの特徴>
CuPcコアのスターポリマーの電荷蓄積層を有するトランジスタメモリに対して、ドレイン電圧(V)を−50Vで一定とし、ゲート電極に−50V/+50Vのパルス電圧を1秒毎に印加し、メモリ特性を評価した。図10aに図示されるように、CuPc−PS層を有するOFETデバイスに、ゲート電圧(V=−50V)を印加すると、伝達特性が大きく左(負)方向にシフトした(1stP)。これは、チャネルに生成した正電荷(ホール)がCuPc−PS層へ移動し蓄積された結果であり、この過程を「書き込み」と定義する。逆に、消去操作(1stE、1秒につきV=50V)では、スターポリマー層に蓄積されたホール電荷が、チャネルへと戻り、伝達特性が初期のものとほぼ同じ位置へ戻った。この書き込み・消去の際のしきい値の変化(ΔVth)をメモリウィンドウと呼び、これはポリマー中に蓄積された電荷の量に比例する。CuPc−PS層を有するOFETデバイスは、メモリウィンドウが約21Vであることが分かった。また、書き込み/消去前後の最大電流ON/OFF比(メモリ比)は、Vgが−10Vで10以上であった。さらに、書き込みプロセス(2ndP、1秒につきV=−50V)を続けて適用したとき、伝達特性は、再び負の方向にシフトし、一度目の書き込みと類似の特性を示した。これは、書き込み/消去が繰り返し可能なことを示し、フラッシュタイプのメモリデバイスであることを示唆した。
他方、ポリマー誘電体層としてPSを有するデバイスは、+50Vのゲート電圧をかけると正方向にシフトするI−V特性を示した。さらに逆の電圧(−50V)を印可すると元のヒステリシス曲線の位置近くに戻った。これはCuPc−PS層とは逆に、電子を貯蓄するフラッシュ型メモリと特徴づけられる。しかし、メモリウィンドウは3V程度、最大メモリ比は10程度であり、より高いゲート電圧を付与しないと明確なメモリ現象を発現しない。従って、CuPc−PSデバイスでのPSアームの影響は無視できる程度のものであることが明らかになった。
また、CuPc−PBAデバイスのメモリ特性を、図10bに図示されるように、同様の交互書き込み/消去操作を用いて調査した。
CuPc−PS埋め込みデバイスと同じく、最初の書き込みプロセス(1stP、1秒につきV=−50V)後の伝達特性は、初期状態から負の方向への約29Vもの明確なシフトを与えた。しかし、続く消去パルス(1stE、1秒につきV=50V)を印可しても、伝達特性は、初期の位置に移動しなかった。これは、ポリマー層に蓄えられたホールがチャネルに引き戻されなかったことを意味する。よって、CuPc−PBAデバイスは、ライトワンス・リードメニー(WORM)メモリと帰属される。2回目の書き込み動作(2ndP、1秒につきV=−50V)を適用後にも伝達特性は維持された。これは、さらなるゲート電圧によってポリマー中により多くのホールを誘導しなかったことを意味する。
一方、PBAを有するOFETについても、類似のWORM型のトラップ挙動が見出され、そのメモリウィンドウは9.7Vと見積もられた。これによって、たとえポリマー中にCuPcユニットがない場合でさえも、PBA層はホールキャリアをトラップする能力を示すことが明らかにされた。
上で論じたように、PBA及びCuPc−PBA薄膜は、PBAの本質的な性質のため、粗い界面及びより高い極性を有しており、電荷伝導パスがフィルムの内部に形成し易く、容易に残留電荷や内部電界が誘導される可能性がある。CuPc−PBAを有するメモリデバイス中で生じるホールトラップ挙動は、CuPcコアによるものとPBAアームによるものの両方に因ると考えられた。
以上のスターポリマーを電荷蓄積層に用いるメモリデバイスの性能を表5にまとめた。
次にメモリの保持性について調査した。図11には、CuPcコアのスターポリマーが埋め込まれたペンタセンOFETデバイスの保持時間試験の結果が図示されている。−50Vの書き込みパルス電圧を1秒間印可し、その後ゲート電圧−10Vのドレイン電流をモニターしたところ、CuPc−PSのデバイスは、オン状態、オフ状態ともに10s超の間ほぼ一定の高い安定性と長い保持時間を示した。またその間のオンオフ電流比は、約10を示した。他方、CuPc−PBAを有するメモリデバイスについて、オフ状態の電流値は10秒に渡って維持されたが、オン状態の電流は徐々に低下し、3×10秒後には、オン/オフ電流比が10以下まで低下した。これと同様の挙動が、スター型のPBAのデバイスについて観察された。PBAまたはCuPc−PBAのメモリデバイスのこのような劣った保持特性は、ポリマー薄膜層中に存在する漏洩経路を通って電荷が消散することに起因すると推測される。PBAまたはCuPc−PBAデバイスの伝達特性に現れるWORMタイプのメモリ挙動および電圧印加後のメモリ保持の劣化挙動を合わせて考えると、これらのデバイスは揮発性のスタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)に帰属できる。
デバイスの作動メカニズムをさらに調査するために、3電極セルを用い、窒素下の0.1Mの過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)を含む無水アセトニトリル中で、CuPcコアのスターポリマー薄膜の、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。CuPcコアのスターポリマーのHOMOおよびLUMOエネルギー準位は、以下の式により、フェロセン(4.8eV)を基準としてCVから見積もられた。
LUMO = − (Ered onset vs. Ag/AgCl + 4.8 eV − E1/2, ferrocene);
HOMO = − (Eox onset vs. Ag/AgCl + 4.8 eV − E1/2, ferrocene
CV測定により見積もられたCuPc−PSのHOMOおよびLUMOエネルギー準位は、それぞれ、−5.21eVおよび−2.97eVであった。一方、CuPc−PBAは、−5.31eVのHOMO準位および−2.71eVのLUMO準位を示した。これらの見積りエネルギー準位によれば、2種のCuPcコアのスターポリマー、すなわちCuPc−PSおよびCuPc−PBAは、ペンタセン(LUMOが−2.90eVであり、HOMOが−5.10eVである)のものと比べて、ほぼ同様のLUMOおよびHOMO準位を有する。
従って、観察されたメモリ効果のメカニズムは、以下のとおりである。負のゲート電圧が印加されると、ペンタセン層に誘導された正の電荷がポリマー層を通って、CuPcコアの集合体の内部にトラップされる。この場合のペンタセンおよびCuPc−PSのエネルギーバンドの概略を図12aに示す。CuPc−PSの場合、CuPcコアの集合体がPS障壁包囲によって十分に隔離されているため、電圧を除いた後もこれらの正の電荷が残るナノフローティングゲートしての挙動を示す。
逆の電圧バイアスを適用すると、電子がペンタセン上に誘起され、それがPSアームへと移動し、CuPcコアにトラップされていたホールと再結合すると考えられる。この場合のペンタセンおよびCuPc−PSのエネルギーバンドの概略を図12bに示す。さらに、キャパシタンスから見積もられたCuPc−PSの誘電率は2.51と比較的低い値である。このような低い誘電率は、ポリマーのトンネル層中でより高い電界を誘導し、従って、半導体ペンタセン層からCuPcコア集合体のトラップ位置までの正電荷キャリアの効率的な注入につながりうる。
一方、上で議論したように、CuPc−PBAは、柔らかいアームポリマーセグメントにより、ポリマー層中にて様々な電荷漏洩経路を形成すると推測される。従って、同じコアの化学構造および2.60と同様の誘電率であるにもかかわらず、異なるメモリ特性が観察された。
電荷蓄積層としてCuPc−PSを用いるOFETメモリデバイスの書き込み/消去を繰り返したときの耐久性評価を、図13に図示されるとおり、エンデュランステストを用いてさらに評価した。ライト・リード・イレーズ・リード(WRER)サイクルの操作を、ドレイン電流をV=−50Vとし、一方、書き込み、読み込み、および消去を、それぞれ−50、−5、50Vのゲート電圧下で繰り返した。100回のWRERサイクルの間、メモリデバイスは劣化することなく、10を超えるON/OFF電流比が達成された。
CuPc−PSを含むOFETメモリデバイスは、高いメモリ保持能力および信頼性の高い書き込み/消去の繰り返し動作を示し、フラッシュタイプメモリの新規ナノフローティングゲート材料としての高い潜在能力が明らかにされた。
このように、CuPcコアを有するアーム数が4のスターポリマーが埋め込まれた新規なOFETメモリデバイスが実証された。
CuPcコアのスターポリマーのスピンコートフィルムは、電荷蓄積層として使用され、ペンタセンは電荷輸送層として使用された。CuPcコアは、ホール電荷を蓄積する挙動を示し、大きいメモリウインドウを与えた(>20V)。アームポリマーの性質により、PBAスターポリマー(CuPc−PBA)はSRAMタイプのメモリ特性を示した一方で、CuPc−PSは、高いON/OFF比率および長いデータ保持性を持つフラッシュタイプのメモリを与えた。CuPcコアを有するスターポリマーは、単にスピンコートするだけで、電荷トラップとなるコア部位をスターポリマー薄膜内に孤立・拡散させることができ、さらにそれらの密度は、アームポリマーの長さを変えることによって制御することができる。従って、本発明のスターポリマーに関するポリマーデザインは、メモリ性能を調節可能なナノフローティングゲート・メモリデバイスのための有望な候補と考えられる。
なお、これらの実施例にて実証された具体的な形態および効果によって、本発明の範囲が限定的に解釈されるべきではない。本発明の主要な目的は、有機電界効果トランジスタ(OFET)において、機能性有機分子をナノフローティングゲートに利用するための、新規な電荷蓄積材料およびこれに基づいて作成されたデバイスを提供することである。この目的を達成するための手段は、本願の特許請求の範囲によって確定される。当業者は、本明細書の開示事項および技術常識に基づいて、特許請求の範囲に包含される上記実施例以外の電荷蓄積材料を製造しかつ使用することができることを当然に理解するであろう。
本発明に係る電荷蓄積材料は、有機溶媒に均一に十分溶解させて、粘性の低い溶液を形成できるため、スピンコート法等の湿式成膜法により薄膜形成が可能である。従って、本発明の電荷蓄積材料は、電荷蓄積部位がポリマー薄膜内に均一に分散した電荷蓄積層を再現性良く得ることができる、ナノフローティングゲート代替材料として好適である。
さらに、本発明に係る電荷蓄積材料は、電荷蓄積部位であるスターポリマーの金属フタロシアニン錯体コアの会合状態を超分子的に調節することによって、貯蓄電荷の量を調節し、省エネ・大容量化を達成することができ、ひいては、スターポリマーのアーム部以外の絶縁体を含まずに電荷蓄積層を形成することで、電荷蓄積部位の密度を自在に調節することができ、有機不揮発性素子あるいは有機不揮発性メモリ全体の効率的な設計が可能となる。

Claims (16)

  1. 電荷蓄積材料から構成された電荷蓄積層と、この電荷蓄積層によって隔てられたゲート電極および有機半導体層と、ソース電極およびドレイン電極とを有する有機電界効果トランジスタ(OFET)における電荷蓄積材料であって、
    金属フタロシアニン錯体のコア、および、4本又は8本のポリマー鎖のアーム部を有するスターポリマーを含み、
    前記コアが電荷蓄積部位であり、この電荷蓄積部位が絶縁体である前記アーム部によって囲まれている、
    上記電荷蓄積材料。
  2. コアを構成する金属フタロシアニン錯体の各ベンゼン環に、ポリマー鎖のアーム部が1本又は2本ずつ結合されたスターポリマーを含む、請求項1に記載の電荷蓄積材料。
  3. コアの金属フタロシアニン錯体を構成する金属が、IUPAC周期表の第7〜11族に属するいずれかの金属である、請求項1又は請求項2に記載の電荷蓄積材料。
  4. 前記ポリマー鎖のアーム部が、炭素−炭素の単結合骨格を有する少なくとも1種の構造単位が少なくとも5個連結したポリマー鎖を含む、請求項1、請求項2または請求項3に記載の電荷蓄積材料。
  5. スターポリマーのアーム部が、
    コアのベンゼン環に接続されたエーテル基又はスルフィド基、
    このエーテル基又はスルフィド基に結合されたポリアルキレン基、及び
    このポリアルキレン基にエステル結合を介して結合されたポリマー鎖を含む、
    請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
  6. コアの金属フタロシアニン錯体を構成する金属が、Cu、Zn、Ni、Co、Fe及びMnからなる群から選択される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
  7. コアの金属フタロシアニン錯体を構成する金属が、Cuである、請求項6に記載の電荷蓄積材料。
  8. ポリマー鎖を構成する構造単位の繰り返し数が、5以上200以下である、請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
  9. ポリアルキレン基の炭素数が、2以上20以下である、請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
  10. ポリマー鎖を構成する各構造単位が、
    −[CH−CH(Ph)]−(式中、Phはフェニル基である。)、
    −[CH−CHR]−(式中、Rは−C(=O)ORであり、Rは置換されていてよいC1−C10アルキル基である。)、および
    −[CH−C(CH)R1’]−(式中、R1’は−C(=O)OR2’であり、R2’は置換されていてよいC1−C10アルキル基である。)
    から選択される少なくとも1種である、請求項4から請求項9のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
  11. スターポリマーが、以下の構造(式中、Mは、Cu、Zn、Ni、Co、Fe、及びMnからなる群から選択される金属であり、Rは、フェニル基、又はブタン酸のカルボキシル基の水素を除いた残基であり、pが2以上20以下であり、nが5以上200以下である。)で表される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
  12. スターポリマーが、以下の構造(式中、Mは、Cu、Zn、Ni、Co、Fe、及びMnからなる群から選択される金属であり、Rは、フェニル基、又はブタン酸のカルボキシル基の水素を除いた残基であり、pが2以上20以下であり、nが5以上200以下である。)で表される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料。
  13. 請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の電荷蓄積材料から構成された電荷蓄積層を有する有機電界効果トランジスタ。
  14. 電荷蓄積層が、前記スターポリマーのアーム部以外の絶縁体を含まずに形成されている、請求項13に記載の有機電界効果トランジスタ。
  15. 請求項13または請求項14に記載の有機電界効果トランジスタを用いた有機不揮発性素子。
  16. 請求項15に記載の有機不揮発性素子を含んでなる有機不揮発性メモリ。
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