JP2017072379A - 原子炉および原子力プラント - Google Patents
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Abstract
Description
IVRが適切に実施される場合、通常、原子炉容器を水没させると、原子炉容器の外壁面において溶融燃料の崩壊熱によって冷却水が沸騰し、蒸気が発生する。この蒸気によって、原子炉容器の外壁面近傍に気液密度差が生じ、原子炉容器の外壁面に新たな冷却水が供給される。こうして、原子炉容器壁における除熱量を確保し、原子炉容器壁の溶断等による破損を防いでいる。
この点、特許文献1の冷却器は、原子炉容器の効果的な冷却が可能であるが、例えば大型の原子炉のように溶融燃料の崩壊熱が大きい場合にもIVR技術を適用可能なように、より一層優れた除熱効果を有する原子炉が求められている。
原子炉容器と、
前記原子炉容器内に設けられ、少なくとも一部が金属により形成された炉内構造物と、
前記原子炉容器を冷却するための冷却流体が貯留されるように前記原子炉容器の周囲に設けられた冷却流体貯留空間と、
前記原子炉容器の外表面を覆うように前記冷却流体貯留空間内に設けられ、前記冷却流体の膜沸騰を抑制するための多孔質体を含む冷却促進デバイスと、を備え、
前記冷却促進デバイスは、少なくとも、前記原子炉容器内において前記炉内構造物が溶融したときに形成される前記金属の液層が占める高さ方向範囲にわたって設けられる。
そこで、上記(1)の原子炉は、少なくとも、原子炉容器内において炉内構造物が溶融したときに形成される金属の液層(溶融金属層)が占める高さ方向範囲にわたって冷却促進デバイスが設けられた構成としている。これにより、熱流束が大きい金属の液層に対応した高さ方向範囲において、冷却促進デバイスによって原子炉容器壁の限界熱流束を高めることができる。このため、例えば崩壊熱が大きい大型の原子炉においても、原子炉容器壁での熱流束を限界熱流束より低く抑えることができる。これにより、原子炉容器の外表面における膜沸騰を抑制可能であり、原子炉での高い除熱量を維持できる。よって、比較的大型の原子炉であっても、原子炉容器壁を介した溶融燃料の崩壊熱除去を長期的に維持可能であり、IVRを成立させることができる。
前記原子炉容器内において前記炉内構造物が溶融したときに形成される前記金属の前記液層の上面の高さをH1としたとき、前記冷却促進デバイスの前記高さ方向範囲の最高位置hUは1.2H1以上である。
前記原子炉容器内において前記炉内構造物が溶融したときに形成される前記金属の前記液層の下面の高さをH2としたとき、前記冷却促進デバイスの前記高さ方向範囲の最低位置hLは0.7H2以下である。
なお、上記(2)又は(3)において、金属の液層の上面の高さ又は下面の高さは、原子炉容器下端からの高さである。
前記原子炉容器の底部は、開口部を有しない閉じた形状である。
前記原子炉容器は、
前記原子炉容器内に冷却材を導くための冷却材入口部と、
前記冷却材を前記原子炉容器から排出するための冷却材出口部と、
を含み、
前記冷却促進デバイスは、前記冷却材入口部又は前記冷却材出口部の下端の高さをH3としたとき、前記冷却促進デバイスは少なくとも0≦h≦H3の前記高さ方向範囲にわたって設置される。
前記冷却流体貯留空間は、前記冷却流体が、少なくとも前記炉内構造物の溶融時に前記冷却流体貯留空間を含む循環路内を流れて循環するように構成される。
前記循環路に設けられ、前記冷却流体貯留空間を通過する間に蒸発した前記冷却流体を凝縮させるためのコンデンサをさらに備える。
前記コンデンサによって凝縮させた前記冷却流体を下方に導くためのリターン流路と、
前記冷却流体貯留空間を前記原子炉容器の周囲に形成するように前記原子炉容器の周りに設けられた流路形成部材をさらに備え、
前記流路形成部材の底部には、前記リターン流路からの前記冷却流体を前記冷却流体貯留空間に取り込むための開口が設けられている。
上記(1)乃至(8)の何れかに記載の原子炉を備える。
原子炉容器11にはペレット状の核燃料(例えばウラン燃料やMOX燃料等)を含む燃料棒12が収容されており、この燃料の核分裂反応で発生する熱エネルギーにより、原子炉容器11の中の一次冷却水が加熱される。原子炉容器11には、原子炉出力を制御するために、核燃料を含む炉心で生成される中性子数を吸収して調整するための制御棒13が設けられている。なお、原子炉容器11内で加熱された一次冷却水は蒸気発生器16に送られ、熱交換により二次冷却ループ20を流れる二次冷却水(二次冷却材)を加熱して蒸気を発生させる。
なお、他の実施形態において、原子炉2が沸騰水型原子炉である場合、内部構造物(炉内構造物)は、蒸気中の湿分を除去する機能を有する構造物を含む。
図3〜図6に示すように、冷却促進デバイス100は、原子炉容器11の外表面を覆うように冷却流体貯留空間90内に設けられ、冷却流体の膜沸騰を抑制するための多孔質体を含む。なお、冷却促進デバイス100の具体的な実施形態については図4〜図9を用いて後述する。
原子炉容器11は、原子炉容器本体60と、開閉可能な原子炉容器蓋(上鏡)61とを含む。
原子炉容器本体60は、下部が半球形状をなす下鏡65により閉塞された円筒形状となっている。そして、原子炉容器本体60は、上部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を供給する冷却材入口部(入口管台)66と、軽水を排出する冷却材出口部(出口管台)67とが形成されている。また、原子炉容器本体60は、冷却材入口部66及び冷却材出口部67とは別に、図示しない注水ノズル(注水管台)が形成されている。
原子炉容器本体60の内部には、該原子炉容器本体60の内壁面と所定間隔をもって、円筒形状をなす炉心槽72が配置されている。炉心槽72は、上部が上部炉心板71に連結され、下部に下部炉心板73が連結されている。下部炉心板73は、円板形状をなし、図示しない多数の連通孔が形成されており、下部炉心支持板69に支持されている。
炉心74の内部には、多数の燃料集合体50及び多数の制御棒13が配置されている。多数の制御棒13は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ51となり、燃料集合体50内に挿入可能となっている。上部炉心支持板68には、該上部炉心支持板68を貫通するように、多数の制御棒クラスタ案内管75が固定されている。各制御棒クラスタ案内管75は、下端部が燃料集合体50内の制御棒クラスタ51まで延出されている。
幾つかの実施形態では、冷却流体貯留空間90は、原子炉容器壁30に沿って冷却流体が通流するように構成される。なお、原子炉容器壁30は、側壁部31と、底部32(下鏡65:図2参照)と、を含む。
図3〜図6に示すように、原子力プラントにおいて過酷事故が発生して燃料(図2に示す燃料集合体50)や炉内構造物80が溶融したとき、典型的には、これらの比重差によって、溶融燃料が原子炉容器11の下部プレナム(下部空間)に溜まって燃料層55が形成され、その上方に金属の液層(以下、溶融金属層85と称する)85が形成される。なお、燃料層55又は溶融金属層85は、原子炉容器壁30に近い領域において一部固化している場合もある。例えば、燃料層55は、原子炉容器壁30に近い領域において固化した固化部56と、溶融した燃料からなる燃料プール部57と、を含む。
また、冷却促進デバイス100は、少なくとも、原子炉容器11内において炉内構造物80が溶融したときに形成される溶融金属層85が占める高さ方向範囲HRにわたって設けられる。なお、冷却促進デバイス100の具体的な構成については後述する。
なお、これらのグラフにおいて、角度とは、図4〜図6に示す原子炉容器11の下端Pを0°とし、上方に向かう矢印A方向に大きくなる角度をいう。
一方、図7Aに示すように冷却促進デバイス100が少なくとも高さ方向範囲HR(図4〜図6参照)に設けられた原子炉2においては、過酷事故発生時、原子炉容器11の底部32の厚さは、燃料層55の高さにおいてある程度確保されており、また溶融金属層85の高さにおいても厚さが0とはなっていない。すなわち、溶融金属層85においても原子炉容器壁30が溶断されていないことがわかる。このように、本実施形態によれば、比較的大型の原子炉2であっても、IVRを成立させることができる。
なお、金属の液層(溶融金属層)85の上面の高さH1及び最高位置hUは、原子炉容器下端Pからの高さである。
このように、冷却促進デバイス100の高さ方向範囲HRの最高位置hUを、溶融金属層85の上面の高さH1の1.2倍以上とした場合、原子炉容器壁30のうち熱流束が高い領域(溶融金属層85近傍の領域)を確実にカバーすることができ、原子炉容器壁30の溶断等の破損を防止できる。
なお、金属の液層(溶融金属層)の下面の高さH2及び最低位置hLは、原子炉容器下端Pからの高さである。
このように、冷却促進デバイス100の高さ方向範囲HRの最低位置hLを、溶融金属層85の下面の高さH2の0.7倍以下とした場合、原子炉容器壁30のうち熱流束が高い領域(溶融金属層85近傍の領域)を確実にカバーすることができ、原子炉容器壁30の溶断等の破損を防止できる。
なお、冷却材入口部66又は冷却材出口部67の下端の高さをH3は、原子炉容器下端Pからの高さである。
この実施形態は、上述の図2の説明に記載したように、原子炉2が、原子炉容器11内に冷却材を導くための冷却材入口部66と、冷却材を原子炉容器11から排出するための冷却材出口部67と、を含む場合に適用される。
これにより、過酷事故発生時における原子炉容器壁30の溶断をより一層確実に防ぐことができる。
この実施形態によれば、原子炉容器11の底部32に例えば計装管等の機器が設けられておらず、原子炉容器11の底部32が閉じた形状であるため、原子炉容器11の底部32を均一に冷却することができ、原子炉容器11の底部32に開口(例えば計装管を挿入するための管台)が設けられている場合に比べて、原子炉容器壁30の部分的な溶断を防止するうえで有利である。
この実施形態によれば、原子炉容器11周囲の冷却流体貯留空間90において冷却流体が循環するようになっているので、原子炉容器壁30を介した除熱効果をより一層高めることができる。
この流路形成部材98の底部には、リターン流路96からの冷却流体を冷却流体貯留空間に取り込むための開口97が設けられている。
なお、上述した実施形態では、コンデンサ94を用いた冷却流体の自然循環について説明したが、勿論、ポンプを用いて冷却流体を強制循環させてもよい。
第1の多孔質体110は、毛細管現象により作動流体を原子炉容器壁30との接触部に供給した後、この接触部で発生した蒸気を第2の多孔質体112側へ排出するように構成されている。
第2の多孔質体112は、冷却流体貯留空間90の作動流体を第1の多孔質体110側へ供給し、第1の多孔質体110から排出された蒸気を冷却流体貯留空間90の作動流体中へ排出するように構成されている。
また、図1に示す原子力プラント1は、発電を行うための原子力発電プラントを例示したが、動力等のように電力以外のエネルギーを生成するように構成された原子力プラントであってもよい。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
2 原子炉
4 蒸気タービン
6 発電機
10 一次冷却ループ
11 原子炉容器
12 燃料棒
13 制御棒
16 蒸気発生器
19 原子炉格納容器
20 二次冷却ループ
21 高圧タービン
22 低圧タービン
30 原子炉容器壁
31 側壁部
32 底部
50 燃料集合体
55 燃料層
66 冷却材入口部
67 冷却材出口部
72 炉心槽
74 炉心
80 炉内構造物
85 溶融金属層
90 冷却流体貯留空間
92 循環路
93 原子炉容器収容部
94 コンデンサ
96 リターン流路
97 開口
98 流路形成部材
100,100A,100B 冷却促進デバイス
110 第1の多孔質体
112 第2の多孔質体
114 多孔質体
Claims (9)
- 原子炉容器と、
前記原子炉容器内に設けられ、少なくとも一部が金属により形成された炉内構造物と、
前記原子炉容器を冷却するための冷却流体が貯留されるように前記原子炉容器の周囲に設けられた冷却流体貯留空間と、
前記原子炉容器の外表面を覆うように前記冷却流体貯留空間内に設けられ、前記冷却流体の膜沸騰を抑制するための多孔質体を含む冷却促進デバイスと、を備え、
前記冷却促進デバイスは、少なくとも、前記原子炉容器内において前記炉内構造物が溶融したときに形成される前記金属の液層が占める高さ方向範囲にわたって設けられることを特徴とする原子炉。 - 前記原子炉容器内において前記炉内構造物が溶融したときに形成される前記金属の前記液層の上面の高さをH1としたとき、前記冷却促進デバイスの前記高さ方向範囲の最高位置hUは1.2H1以上であることを特徴とする請求項1に記載の原子炉。
- 前記原子炉容器内において前記炉内構造物が溶融したときに形成される前記金属の前記液層の下面の高さをH2としたとき、前記冷却促進デバイスの前記高さ方向範囲の最低位置hLは0.7H2以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の原子炉。
- 前記原子炉容器の底部は、開口部を有しない閉じた形状であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の原子炉。
- 前記原子炉容器は、
前記原子炉容器内に冷却材を導くための冷却材入口部と、
前記冷却材を前記原子炉容器から排出するための冷却材出口部と、
を含み、
前記冷却促進デバイスは、前記冷却材入口部又は前記冷却材出口部の下端の高さをH3としたとき、前記冷却促進デバイスは少なくとも0≦h≦H3の前記高さ方向範囲にわたって設置されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の原子炉。 - 前記冷却流体貯留空間は、前記冷却流体が、少なくとも前記炉内構造物の溶融時に前記冷却流体貯留空間を含む循環路内を流れて循環するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の原子炉。
- 前記循環路に設けられ、前記冷却流体貯留空間を通過する間に蒸発した前記冷却流体を凝縮させるためのコンデンサをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の原子炉。
- 前記コンデンサによって凝縮させた前記冷却流体を下方に導くためのリターン流路と、
前記冷却流体貯留空間を前記原子炉容器の周囲に形成するように前記原子炉容器の周りに設けられた流路形成部材をさらに備え、
前記流路形成部材の底部には、前記リターン流路からの前記冷却流体を前記冷却流体貯留空間に取り込むための開口が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の原子炉。 - 請求項1乃至8の何れか一項に記載の原子炉と、
前記原子炉で回収した熱を利用して発電を行うための発電機と、
を備えることを特徴とする原子力プラント。
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