JP2017064954A - 積層フィルムの製造方法および画像表示装置の製造方法 - Google Patents

積層フィルムの製造方法および画像表示装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、低屈折率層を破壊することなく、前記低屈折率層と他の層とを粘接着層を介して積層させることが可能な積層フィルムの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】 前記目的を達成するために、本発明の積層フィルムの製造方法においては、前記積層フィルムは、低屈折率層20上に粘接着層40が積層され、粘接着層40上に、さらに、低屈折率層20および粘接着層40以外の他の層30が積層された積層フィルムであり、前記製造方法は、他の層30上に粘接着層40が積層された粘接着層付き積層体の粘接着層40側を低屈折率層20に貼り合わせる、貼り合わせ工程(B)を含むことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、積層フィルムの製造方法および画像表示装置の製造方法に関する。
2つの基板を一定の間隔をあけて配置すると、両基板の間の空隙が空気層となる。このように、前記基板間に形成された空気層は、例えば、光を全反射する低屈折率層として機能する。このため、例えば、光学フィルムであれば、プリズム、偏光フィルムおよび偏光板等の部材を、一定の距離を持って配置することにより、前記部材間に、低屈折率層となる空気層を設けている。しかし、このように、空気層を形成するには、各部材を一定の距離を持って配置しなければならないため、部材を、順に積層していくことができず、製造に手間がかかる。
このような問題を解消するために、部材間の空隙により形成される空気層に代わり、低屈折性を示すフィルム等の部材の開発が試みられている。前記部材について、高い空孔率と強度とを両立させた例として、レンズ反射防止層への適用事例がある(例えば、特許文献1〜4参照)。この方法では、レンズ上に空隙層を形成した後に、150℃以上の高い温度を長時間かけて焼成させる。一方で、焼成処理を行わない空隙層の適用事例がある(例えば、非特許文献1参照)。
特開2006−297329号公報 特開2006−221144号公報 特開2006−011175号公報 特開2008−040171号公報
J.Mater.Chem.,2011,21,14830−14837
前記低屈折率層は、前述のとおり、その内部に空隙を有する空隙層であることにより、空気に近い低屈折率を実現できる。このため、前記低屈折率層の空隙率が高いほど低屈折率になる傾向がある。しかし、空隙率が高いと前記低屈折率層の膜強度は低く(弱く)なる傾向がある。このため、低屈折率と膜強度の高さ(強さ)とはトレードオフになる場合がある。
一方、光学フィルム等において、2つの層を積層させる場合、例えば、粘接着層を介して貼り合わせる方法が用いられる。この場合、前記2つの層の一方に予め粘接着層を塗付し、その後、前記粘接着層側に他方の層を貼り合わせることができる。このとき、前記粘接着層側は、貼り合わせ直前まで粘接着層が露出しないように、保護層(セパレータ)により被覆して保護することができる。その場合、貼り合わせ直前に、前記保護層(セパレータ)を前記粘接着層から剥離する。
しかし、前記低屈折率層と他の層とを積層させる場合、前記低屈折率層の膜強度が弱いと、前記低屈折率層上に粘接着層を塗付もしくは転写により形成する際に前記低屈折率層が破壊されるおそれがある。さらに、前記低屈折率層上に粘接着層および保護層(セパレータ)を積層させると、前記低屈折率層の膜強度が弱い場合、前記保護層を剥離するときに前記低屈折率層が破壊されるおそれがある。
そこで、本発明は、低屈折率層を破壊することなく、前記低屈折率層と他の層とを粘接着層を介して積層させることが可能な積層フィルムの製造方法および画像表示装置の製造方法の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の積層フィルムの製造方法においては、前記積層フィルムは、屈折率が1.25以下である低屈折率層上に粘接着層が積層され、前記粘接着層上に、さらに、前記低屈折率層および前記粘接着層以外の他の層が積層された積層フィルムであり、前記製造方法は、前記他の層上に前記粘接着層が積層された粘接着層付き積層体の前記粘接着層側を前記低屈折率層に貼り合わせる、貼り合わせ工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の画像表示装置の製造方法は、積層フィルムを含む画像表示装置の製造方法であって、前記積層フィルムを、前記本発明の積層フィルムの製造方法により製造することを特徴とする。
本発明の積層フィルムの製造方法によれば、前記他の層上に前記粘接着層が積層された粘接着層付き積層体の前記粘接着層側を前記低屈折率層に貼り合わせる。このため、前記低屈折率層上に前記粘接着層を塗付する工程、および、前記低屈折率層上から保護層を剥がす工程を必要としないので、これらの工程により前記低屈折率層が破壊されることが無い。このため、本発明の積層フィルムの製造方法および本発明の画像表示装置の製造方法によれば、低屈折率層を破壊することなく、前記低屈折率層と他の層とを粘接着層を介して積層させることが可能である。
図1は、本発明の積層フィルムの製造方法の例を模式的に示す工程断面図である。 図2は、基材10上に低屈折率層20を形成する方法の例を模式的に示す工程断面図である。 図3は、ロール状である積層フィルム(積層フィルムロール)の製造方法における工程の一部と、それに用いる装置の一例とを模式的に示す図である。 図4は、積層フィルムロールの製造方法における工程の一部と、それに用いる装置の別の一例とを模式的に示す図である。
以下、本発明について例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明によりなんら限定されない。
前述のとおり、低屈折率層(空隙層)の強度が弱いと、粘接着層を添付するときに、または保護層(セパレータ)を剥離するときに、前記低屈折率層(空隙層)が破壊されるおそれがある。例えば、保護層を剥離する際の剥離衝撃により、低屈折率層(空隙層)が凝集破壊されたり、または、前記低屈折率層が積層された基材との界面から前記低屈折率層が剥離したりするおそれがある。しかし、本発明によれば、前述のとおり、前記粘接着層上に前記粘接着層を塗付もしくは転写により形成する工程、および、前記低屈折率層上から保護層を剥がす工程を必要としないので、そのようなおそれが無い。前記他の層は、一般に、前記低屈折率層よりも強度が高いため、粘接着層の塗付により、または保護層を剥離する際の剥離衝撃により破壊されることが無い。
なお、前記他の層としては、特に限定されないが、例えば、偏光板、プリズムシート、位相差フィルム、輝度向上フィルム、集光フィルム、拡散板、光学等方性フィルム等の光学層が挙げられる。
本発明の積層フィルムの製造方法において、前記粘接着層付き積層体は、前記粘接着層が保護層で被覆されており、前記貼り合わせ工程に先立ち、前記保護層を前記粘接着層から剥離する保護層剥離工程を含むことが好ましい。
また、前記粘接着層付き積層体において、前記粘接着層の前記保護層と接触する面は、例えば、シリコン処理またはフッ素処理されていても良い。このような処理により、例えば、前記保護層を前記粘接着層から剥離しやすくなる。
なお、本発明において、「粘接着層」は、粘着剤または接着剤の一方または両方を含む層をいう。前記粘接着層は、例えば、粘着層であっても良いし、接着層であっても良い。本発明において、「粘着剤」および「粘着層」は、例えば、被着体の再剥離を前提とした剤または層をいう。本発明において、「接着剤」および「接着層」は、例えば、被着体の再剥離を前提としない剤または層をいう。ただし、本発明において、「粘着剤」と「接着剤」は、必ずしも明確に区別できるものではなく、「粘着層」と「接着層」は、必ずしも明確に区別できるものではない。本発明において、前記粘接着層を形成する粘着剤または接着剤は特に限定されず、例えば、一般的な粘着剤または接着剤等が使用できる。また、本発明において、前記粘接着層は、例えば、半硬化させた粘接着層であっても良い。例えば、半硬化させた粘接着層であっても、前記保護層(セパレータ)または前記低屈折率層と貼り合わせることができる。
本発明において、前記粘着剤または接着剤としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、エン−チオール系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系のポリマー製もしくはUV硬化型モノマーおよびオリゴマーからなる粘着剤および接着剤、SBR、SIS、SBSなどで表されるゴム系粘着剤および接着剤等が挙げられる。また、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤等から構成される接着剤等も挙げられる。これら粘着剤および接着剤は、1種類のみ用いても、複数種類を併用(例えば、混合、積層等)しても良い。前記粘接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、0.1〜100μm、5〜50μm、10〜30μm、または12〜25μmである。
本発明の積層フィルムの製造方法により製造される積層フィルム(以下「本発明の積層フィルム」という場合がある。)は、さらに、基材を含み、前記基材上に前記低屈折率層が積層され、さらに、前記低屈折率層上に前記粘接着層および前記他の層が積層されていても良い。
また、本発明の積層フィルムは、前記低屈折率層の前記基材に対する粘着ピール強度(投錨力)が、例えば、10N/25mm以下であっても良い。本発明の積層フィルムの製造方法によれば、前述のとおり、前記低屈折率層上から保護層(セパレータ)を剥がす工程が必要ない。このため、前記低屈折率層の粘着ピール強度が弱くても、保護層を剥離する際に基材との界面から前記低屈折率層が剥離するおそれがない。前記低屈折率層の前記基材に対する粘着ピール強度は、特に限定されないが、例えば、3N/25mm以下、2N/25mm以下、1N/25mm以下、0.5N/mm以下であっても良い。前記粘着ピール強度の下限値も特に限定されないが、例えば、0.03N/25mm以上、0.05N/25mm以上、0.1N/25mm以上であっても良い。
前記粘着ピール強度の測定方法は、特に限定されず、例えば、下記の方法により測定できる。
(粘着ピール強度の評価)
前記基材上に前記低屈折率層が形成された積層体を、50mm×140mmの短冊状にサンプリングを行い、前記サンプルをステンレス板に両面テープで固定する。PETフィルム(T100:三菱樹脂フィルム社製)にアクリル粘着層(厚み20μm)を貼合し、25mm×100mmにカットした粘着テープ片を、先ほどの前記低屈折率層に貼合し、前記PETフィルムとのラミネートを行う。次に、前記サンプルを、引っ張り試験機(島津製作所社製:AG−Xplus)にチャック間距離が100mmになるようにチャッキングした後に、0.3m/minの引張速度で引っ張り試験を行う。50mmピール試験を行った平均試験力を、ピール強度とする。
本発明の積層フィルムの製造方法は、さらに、前記貼り合わせ工程後に、前記低屈折率層から前記基材を剥離する基材剥離工程を含んでいても良い。
前記低屈折率層の屈折率は、例えば、1.25以下、1.20以下、1.15以下であり、その下限が、例えば、1.05以上、1.06以上、1.07以上であり、その範囲が、例えば、1.05以上〜1.25以下、1.05以上〜1.20以下、1.06以上〜1.20以下、1.07以上〜1.15以下である。本発明の積層フィルムによれば、前述のとおり、前記低屈折率層の膜強度が弱くても、前記低屈折率層が破壊されにくいので、屈折率層が低い低屈折率層を用いやすい。
なお、前記屈折率は、一般に、真空中の光の波面の伝達速度と、媒質内の伝播速度との比を、その媒質の屈折率という。本発明において、前記屈折率は、特に断らない限り、波長550nmにおいて測定した屈折率をいう。また、屈折率の測定方法は、特に限定されず、例えば、下記の方法により測定できる。
(屈折率の評価)
アクリルフィルム上に前記低屈折率層を形成した後に、50mm×50mmのサイズにカットし、これを粘着層でガラス板(厚み:3mm)の表面に貼合する。前記ガラス板の裏面中央部(直径20mm程度)を黒マジックで塗りつぶして、前記ガラス板の裏面で反射しないサンプルを調製する。エリプソメーター(J.A.Woollam Japan社製:VASE)に前記サンプルをセットし、500nmの波長、入射角50〜80度の条件で、屈折率を測定し、その平均値を屈折率とする。
本発明の製造方法により製造される積層フィルム(本発明の積層フィルム)は、例えば、長尺状の積層フィルムロールであってもよい。なお、以下において、ロール状である本発明の積層フィルムを、「本発明の積層フィルムロール」または単に「積層フィルムロール」という場合がある。
本発明の積層フィルムの製造方法は、例えば、前記低屈折率層において、膜強度を示すベンコット(登録商標)による耐擦傷性が、60〜100%であり、可撓性を示すMIT試験による耐折回数が、100回以上であっても良い。
本発明の積層フィルムの製造方法は、例えば、前記低屈折率層において、微細な空隙構造を形成する一種類または複数種類の構成単位同士が化学的に結合していても良い。前記構成単位同士は、例えば、直接的な結合を含んでいても良いし、間接的な結合を含んでいても良い。なお、本発明では、前記低屈折率層中において、前記一種類または複数種類の構成単位同士は、例えば、少なくとも一部が化学的に結合していれば良い。具体的には、例えば、構成単位同士が接触していても化学的に結合していない部分が存在していても良い。また、本発明において、構成単位同士が「間接的に結合している」とは、構成単位量以下の少量のバインダー成分を仲介して構成単位同士が結合していることを指す。構成単位同士が「直接的に結合している」とは、構成単位同士が、バインダー成分等を介さずに直接結合していることを指す。
本発明の積層フィルムの製造方法は、前記低屈折率層において、例えば、前記構成単位同士の結合が、水素結合もしくは共有結合を含んでいても良い。前記構成単位は、例えば、粒子状、繊維状、平板状の少なくとも一つの形状を有する構造からなっていても良い。前記粒子状および平板状の構成単位は、例えば、無機物からなっていても良い。また、前記粒子状構成単位の構成元素は、例えば、Si、Mg、Al、Ti、ZnおよびZrからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含んでいても良い。粒子状を形成する構造体(構成単位)は、実粒子でも中空粒子でもよく、具体的にはシリコーン粒子や微細孔を有するシリコーン粒子、シリカ中空ナノ粒子やシリカ中空ナノバルーン等が挙げられる。繊維状の構成単位は、例えば、直径がナノサイズのナノファイバーであり、具体的にはセルロースナノファイバーやアルミナナノファイバー等が挙げられる。平板状の構成単位は、例えば、ナノクレイが挙げられ、具体的にはナノサイズのベントナイト(例えばクニピアF[商品名])等が挙げられる。前記繊維状の構成単位は、特に限定されないが、例えば、カーボンナノファイバー、セルロースナノファイバー、アルミナナノファイバー、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー、ポリマーナノファイバー、ガラスナノファイバー、およびシリカナノファイバーからなる群から選択される少なくとも一つの繊維状物質であっても良い。
本発明においては、例えば、前記低屈折率層が、微細孔粒子を含む多孔体であっても良い。なお、本発明において、「粒子」(例えば、前記微細孔粒子等)の形状は、特に限定されず、例えば、球状でも良いが、非球状系等でも良い。また、本発明において、前記微細孔粒子は、例えば、前述のとおり、ゾルゲル数珠状粒子、ナノ粒子(中空ナノシリカ・ナノバルーン粒子)、ナノ繊維等であっても良い。
本発明の積層フィルムは、例えば、前記低屈折率層が、40%以上の空隙率であっても良い。
本発明の積層フィルムは、例えば、孔の空隙サイズが、2〜200nmであっても良い。
本発明の積層フィルムは、例えば、厚みが、0.01〜100μmであっても良い。
本発明の積層フィルムは、例えば、透明性を示すヘイズが、5%未満であっても良い。
以下、本発明の例について、さらに具体的に説明する。
[1.低屈折率層等]
まず、本発明の積層フィルムの製造方法において用いる前記低屈折率層(以下「本発明の低屈折率層」ともいう。)等について説明する。
前述のとおり、本発明の積層フィルムは、さらに、基材を含み、前記基材上に前記低屈折率層が積層されていても良い。本発明の低屈折率層は、例えば、前記基材上に、直接積層されてもよいし、他の層を介して積層されてもよい。前記基材としては、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムである。前記樹脂フィルムは、特に制限されず、前記樹脂の種類は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の、透明性に優れた熱可塑性樹脂等が挙げられ、1種類のみ用いても複数種類併用しても良い。
本発明の低屈折率層は、前述のように、膜強度を示すベンコット(登録商標)による耐擦傷性が、60〜100%であっても良い。低屈折率層がこのような膜強度を有すれば、例えば、製造時の巻き取りや使用時等における物理的衝撃にも強い。前記耐擦傷性は、その下限が、例えば、60%以上、80%以上、90%以上であり、その上限が、例えば、100%以下、99%以下、98%以下であり、その範囲が、例えば、60〜100%、80〜99%、90〜98%である。ただし、本発明の積層フィルムの製造方法では、前述のとおり、本発明の低屈折率層の膜強度が弱くても破壊されにくいという利点がある。
本発明の低屈折率層において、例えば、膜強度を示すベンコット(登録商標)による耐擦傷性が、60〜100%であり、可撓性を示すMIT試験による耐折回数が、100回以上であっても良い。前記耐擦傷性は、例えば、前記低屈折率層がケイ素(Si)を含む場合、以下のような方法により測定できる。また、前記低屈折率層がケイ素(Si)以外の元素を含む場合、例えば、下記の方法に準じて測定できる。
(耐擦傷性の評価)
(1) アクリルフィルムに塗工・成膜をした空隙層(本発明の低屈折率層)を、直径15mm程度の円状にサンプリングする。
(2) 次に、前記サンプルについて、蛍光X線(島津製作所社製:ZSX PrimusII)でケイ素を同定して、Si塗布量(Si)を測定する。つぎに、前記アクリルフィルム上の前記空隙層について、前述のサンプリングした近傍から、50mm×100mmに前記空隙層をカットし、これをガラス板(厚み3mm)に固定した後、ベンコット(登録商標)による摺動試験を行う。摺動条件は、重り100g、10往復とする。
(3) 摺動を終えた前記空隙層から、前記(1)と同様にサンプリングおよび蛍光X測定を行うことで、擦傷試験後のSi残存量(Si)を測定する。耐擦傷性は、ベンコット(登録商標)による摺動試験前後のSi残存率(%)で定義し、以下の式で表される。
耐擦傷性(%)=[残存したSi量(Si)/Si塗布量(Si)]×100(%)
本発明の低屈折率層は、例えば、前述のように、可撓性を示すMIT試験による耐折回数が、100回以上であっても良い。このような可撓性を有すれば、例えば、連続製造時における巻き取りや使用時等における取扱い性に優れる。
前記耐折回数は、特に限定されないが、その下限が、例えば、100回以上、500回以上、1000回以上であり、その上限が、例えば、10000回以下であり、その範囲が、例えば、100〜10000回、500〜10000回、1000〜10000回である。
前記可撓性は、例えば、物質の変形のし易さを意味する。前記MIT試験による耐折回数は、例えば、以下のような方法により測定できる。
(耐折試験の評価)
前記空隙層(本発明の低屈折率層)を、20mm×80mmの短冊状にカットした後、MIT耐折試験機(テスター産業社製:BE−202)に取り付け、1.0Nの荷重をかける。前記空隙層を抱き込むチャック部は、R2.0mmを使用し、耐折回数を最大10000回行い、前記空隙層が破断した時点の回数を耐折回数とする。
本発明の低屈折率層において、膜密度は、特に制限されず、その下限が、例えば、1g/cm以上、10g/cm以上、15g/cm以上であり、その上限が、例えば、50g/cm以下、40g/cm以下、30g/cm以下、2.1g/cm以下であり、その範囲が、例えば、5〜50g/cm、10〜40g/cm、15〜30g/cm、1〜2.1g/cmである。また、本発明の低屈折率層において、前記膜密度に基づく空孔率は、その下限が、例えば、50%以上、70%以上、85%以上であり、その上限が、例えば、98%以下、95%以下であり、その範囲が、例えば、50〜98%、70〜95%、85〜95%である。
前記膜密度は、例えば、以下のような方法により測定でき、前記空孔率は、例えば、前記膜密度に基づいて、以下のようにして算出できる。
(膜密度、空孔率の評価)
基材(アクリルフィルム)上に空隙層(本発明の低屈折率層)を形成した後、この積層体における前記空隙層について、X線回折装置(RIGAKU社製:RINT−2000)を用いて全反射領域のX線反射率を測定する。そして、Intensityと2θのフィッティグを行った後に、前記積層体(空隙層・基材)の全反射臨界角から膜密度(g/cm)を算出し、さらに、空孔率(P%)を、以下の式より算出する。
空孔率(P%)=45.48×膜密度(g/cm)+100(%)
本発明の低屈折率層は、例えば、孔構造を有していても良い。本発明において、前記孔の空隙サイズは、空隙(孔)の長軸の直径および短軸の直径のうち、前記長軸の直径を指すものとする。好ましい空孔サイズは、例えば、2nm〜500nmである。前記空隙サイズは、その下限が、例えば、2nm以上、5nm以上、10nm以上、20nm以上であり、その上限が、例えば、500nm以下、200nm以下、100nm以下であり、その範囲が、例えば、2nm〜500nm、5nm〜500nm、10nm〜200nm、20nm〜100nmである。空隙サイズは、空隙構造を用いる用途に応じて、好ましい空隙サイズが決まるため、例えば、目的に応じて、所望の空隙サイズに調整する必要がある。空隙サイズは、例えば、以下の方法により評価できる。
(空隙サイズの評価)
本発明において、前記空隙サイズは、BET試験法により定量化できる。具体的には、比表面積測定装置(マイクロメリティック社製:ASAP2020)のキャピラリに、サンプル(本発明の低屈折率層)を0.1g投入した後、室温で24時間、減圧乾燥を行って、空隙構造内の気体を脱気する。そして、前記サンプルに窒素ガスを吸着させることで吸着等温線を描き、細孔分布を求める。これによって、空隙サイズが評価できる。
本発明の低屈折率層は、例えば、前述のように孔構造(多孔質構造)を有していてもよく、例えば、前記孔構造が連続した連泡構造体であってもよい。前記連泡構造体とは、例えば、前記本発明の低屈折率層(例えばシリコーン多孔体)において、三次元的に、孔構造が連なっていることを意味し、前記孔構造の内部空隙が連続している状態ともいえる。多孔質体が連泡構造を有する場合、これにより、バルク体中に占める空孔率を高めることが可能であるが、中空シリカのような独泡粒子を使用する場合は、連泡構造を形成できない。これに対して、本発明の低屈折率層は、例えば、シリカゾル粒子(ゾルを形成するゲル状ケイ素化合物の粉砕物)を使用する場合、前記粒子が三次元の樹状構造を有するために、塗工膜(前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物を含むゾルの塗工膜)中で、前記樹状粒子が沈降・堆積することで、容易に連泡構造を形成することが可能である。また、本発明の低屈折率層は、より好ましくは、連泡構造が複数の細孔分布を有するモノリス構造を形成することが好ましい。前記モノリス構造は、例えば、ナノサイズの微細な空隙が存在する構造と、同ナノ空隙が集合した連泡構造として存在する階層構造を指す。前記モノリス構造を形成する場合、例えば、微細な空隙で膜強度を付与しつつ、粗大な連泡空隙で高い空孔率を付与し、膜強度と高空孔率とを両立することができる。それらのモノリス構造を形成するには、例えば、まず、前記シリカゾル粒子に粉砕する前段階のゲル(ゲル状ケイ素化合物)において、生成する空隙構造の細孔分布を制御することが好ましい。また、例えば、前記ゲル状ケイ素化合物を粉砕する際、粉砕後のシリカゾル粒子の粒度分布を所望のサイズに制御することで、前記モノリス構造を形成させることができる。
本発明の低屈折率層において、透明性を示すヘイズは、特に制限されず、その上限は、例えば、5%未満であり、好ましくは3%未満である。また、その下限は、例えば、0.1%以上、0.2%以上であり、その範囲が、例えば、0.1%以上5%未満、0.2%以上3%未満、である。
前記ヘイズは、例えば、以下のような方法により測定できる。
(ヘイズの評価)
空隙層(本発明の低屈折率層)を50mm×50mmのサイズにカットし、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社製:HM−150)にセットしてヘイズを測定する。ヘイズ値については、以下の式より算出を行う。
ヘイズ(%)=[拡散透過率(%)/全光線透過率(%)]×100(%)
本発明の低屈折率層の厚みは、特に制限されず、その下限が、例えば、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、0.3μm以上であり、その上限が、例えば、100μm以下、80μm以下、50μm以下、10μm以下であり、その範囲が、例えば、0.01〜100μmである。
本発明の低屈折率層は、例えば、前述のようにゲル状化合物の粉砕物を含み、前記粉砕物同士が化学的に結合している。本発明の低屈折率層において、前記粉砕物同士の化学的な結合(化学結合)の形態は、特に制限されず、前記化学結合の具体例は、例えば、架橋結合等が挙げられる。なお、前記粉砕物同士を化学的に結合させる方法の詳細については、後述する。
前記ゲル状化合物のゲル形態は、特に制限されない。「ゲル」とは、一般に、溶質が、相互作用のために独立した運動性を失って集合した構造をもち、固化した状態をいう。また、ゲルの中でも、一般に、ウェットゲルは、ゲルの骨格を構成する溶質が溶媒を内部に含んだ形で一体化し前記溶媒により前記溶質表面が湿っている状態の構造をとるものをいい、キセロゲルは、溶媒が除去されて、溶質が、空隙を持つ網目構造をとるものをいう。本発明において、前記ゲル状化合物は、例えば、ウェットゲルでもよいし、キセロゲルでもよい。
前記ゲル状化合物は、例えば、モノマー化合物をゲル化したゲル化物が挙げられる。具体的に、前記ゲル状ケイ素化合物は、例えば、前記モノマーのケイ素化合物が互いに結合したゲル化物、具体例として、前記モノマーのケイ素化合物が互いに水素結合または分子間力結合したゲル化物が挙げられる。前記結合は、例えば、脱水縮合による結合が挙げられる。前記ゲル化の方法は、本発明の製造方法において後述する。
本発明の低屈折率層において、前記粉砕物の粒度バラツキを示す体積平均粒子径は、特に制限されず、その下限が、例えば、0.10μm以上、0.20μm以上、0.40μm以上であり、その上限が、例えば、2.00μm以下、1.50μm以下、1.00μm以下であり、その範囲が、例えば、0.10μm〜2.00μm、0.20μm〜1.50μm、0.40μm〜1.00μmである。前記粒度分布は、例えば、動的光散乱法、レーザー回折法等の粒度分布評価装置、および走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡等により測定することができる。
また、前記粉砕物の粒度バラツキを示す粒度分布は、特に制限されず、例えば、粒径0.4μm〜1μmの粒子が、50〜99.9重量%、80〜99.8重量%、90〜99.7重量%であり、または、粒径1μm〜2μmの粒子が、0.1〜50重量%、0.2〜20重量%、0.3〜10重量%である。前記粒度分布は、例えば、粒度分布評価装置または電子顕微鏡により測定することができる。
本発明の低屈折率層において、前記ゲル状化合物の種類は、特に制限されない。前記ゲル状化合物としては、例えば、ゲル状ケイ素化合物が例示できる。以下に、ゲル状化合物がゲル状ケイ素化合物である場合を例として説明するが、本発明は、これには制限されない。
前記架橋結合は、例えば、シロキサン結合である。シロキサン結合は、例えば、以下に示す、T2の結合、T3の結合、T4の結合が例示できる。本発明の低屈折率層がシロキサン結合を有する場合、例えば、いずれか一種の結合を有してもよいし、いずれか二種の結合を有してもよいし、三種全ての結合を有してもよい。前記シロキサン結合のうち、T2およびT3の比率が多いほど、可撓性に富み、ゲル本来の特性を期待できるが、膜強度が脆弱になる。一方で、前記シロキサン結合のうちT4比率が多いと、膜強度と発現しやすいが、空隙サイズが小さくなり、可撓性が脆くなる。このため、例えば、用途に応じて、T2、T3、T4比率を変えることが好ましい。
Figure 2017064954
本発明の低屈折率層が前記シロキサン結合を有する場合、T2、T3およびT4の割合は、例えば、T2を「1」として相対的に表した場合、T2:T3:T4=1:[1〜100]:[0〜50]、1:[1〜80]:[1〜40]、1:[5〜60]:[1〜30]である。
また、本発明の低屈折率層は、例えば、含まれるケイ素原子がシロキサン結合していることが好ましい。具体例として、前記低屈折率層に含まれる全ケイ素原子のうち、未結合のケイ素原子(つまり、残留シラノール)の割合は、例えば、50%未満、30%以下、15%以下である。
前記ゲル状化合物が、前記ゲル状ケイ素化合物の場合、前記モノマーのケイ素化合物は、特に制限されない。前記モノマーのケイ素化合物は、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。前記ゲル状ケイ素化合物が、前述のように、モノマーのケイ素化合物が互いに水素結合または分子間力結合したゲル化物の場合、式(1)のモノマー間は、例えば、それぞれの水酸基を介して水素結合できる。
Figure 2017064954
前記式(1)中、例えば、Xは、2、3または4であり、Rは、直鎖もしくは分枝アルキル基、である。前記Rの炭素数は、例えば、1〜6、1〜4、1〜2である。前記直鎖アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、前記分枝アルキル基は、例えば、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。前記Xは、例えば、3または4である。
前記式(1)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、Xが3である下記式(1’)に示す化合物が挙げられる。下記式(1’)において、Rは、前記式(1)と同様であり、例えば、メチル基である。Rがメチル基の場合、前記ケイ素化合物は、トリス(ヒドロキシ)メチルシランである。前記Xが3の場合、前記ケイ素化合物は、例えば、3つの官能基を有する3官能シランである。
Figure 2017064954
また、前記式(1)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、Xが4である化合物が挙げられる。この場合、前記ケイ素化合物は、例えば、4つの官能基を有する4官能シランである。
前記モノマーのケイ素化合物は、例えば、ケイ素化合物前駆体の加水分解物でもよい。前記ケイ素化合物前駆体としては、例えば、加水分解により前記ケイ素化合物を生成できるものであればよく、具体例として、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2017064954
前記式(2)中、例えば、Xは、2、3または4であり、
およびRは、それぞれ、直鎖もしくは分枝アルキル基であり、
およびRは、同一でも異なっていても良く、
は、Xが2の場合、互いに同一でも異なっていても良く、
は、互いに同一でも異なっていても良い。
前記XおよびRは、例えば、前記式(1)におけるXおよびRと同じである。また、前記Rは、例えば、式(1)におけるRの例示が援用できる。
前記式(2)で表されるケイ素化合物前駆体の具体例としては、例えば、Xが3である下記式(2’)に示す化合物が挙げられる。下記式(2’)において、RおよびRは、それぞれ、前記式(2)と同様である。RおよびRがメチル基の場合、前記ケイ素化合物前駆体は、トリメトキシ(メチル)シラン(以下、「MTMS」ともいう)である。
Figure 2017064954
前記モノマーのケイ素化合物は、例えば、低屈折率性に優れる点から、前記3官能シランが好ましい。また、前記モノマーのケイ素化合物は、例えば、強度(例えば、耐擦傷性)に優れる点から、前記4官能シランが好ましい。また、前記ゲル状ケイ素化合物の原料となる前記モノマーのケイ素化合物は、例えば、一種類のみを使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。具体例として、前記モノマーのケイ素化合物として、例えば、前記3官能シランのみを含んでもよいし、前記4官能シランのみを含んでもよいし、前記3官能シランと前記4官能シランの両方を含んでもよいし、さらに、その他のケイ素化合物を含んでもよい。前記モノマーのケイ素化合物として、二種類以上のケイ素化合物を使用する場合、その比率は、特に制限されず、適宜設定できる。
本発明の低屈折率層は、例えば、前記微細な空隙構造を形成する一種類または複数種類の構成単位同士を化学的に結合させるための触媒を含んでいても良い。前記触媒の含有率は、特に限定されないが、前記微細な空隙構造を形成する一種類または複数種類の構成単位の重量に対し、例えば、0.01〜20重量%、0.05〜10重量%、または0.1〜5重量%である。ただし、本発明の低屈折率層において、前記触媒は、必須ではなく任意であり、含んでいなくても良い。本発明の積層フィルムの製造方法によれば、前述のとおり、本発明の低屈折率層の膜強度が弱くても破壊されにくい。このため、例えば、前記触媒により本発明の低屈折率層の強度を高めなくても、本発明の低屈折率層が破壊されにくい。
また、本発明の低屈折率層は、例えば、さらに、前記微細な空隙構造を形成する一種類または複数種類の構成単位同士を間接的に結合させるための架橋補助剤を含んでいても良い。前記架橋補助剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、前記微細な空隙構造を形成する一種類または複数種類の構成単位の重量に対して0.01〜20重量%、0.05〜15重量%、または0.1〜10重量%である。ただし、本発明の低屈折率層において、前記架橋補助剤は、必須ではなく任意であり、含んでいなくても良い。
本発明の低屈折率層の形態は、特に制限されないが、フィルム形状が通常である。
本発明の低屈折率層は、例えば、ロール体であっても良い。また、本発明の低屈折率層は、例えば、前述のように、基材(例えば樹脂フィルム)上に積層されても良い。
つぎに、本発明の低屈折率層の製造方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。
[2.低屈折率層の製造方法]
本発明の低屈折率層の製造方法は、例えば、微細孔粒子を含む液を作製する工程、基材(樹脂フィルム)上に前記液を塗工する工程、および塗工された液を乾燥する工程を含むことが好ましいが、これには限定されない。前記微細孔粒子を含む液(以下「微細孔粒子含有液」という場合がある。)は、特に限定されないが、例えば、前記微細孔粒子を含む懸濁液である。なお、以下において、主に、前記微細孔粒子が、ゲル状化合物の粉砕物であり、前記低屈折率層がゲル状化合物の粉砕物を含む多孔体(好ましくはシリコーン多孔体)である場合について説明する。ただし、本発明は、前記微細孔粒子が、ゲル状化合物の粉砕物以外である場合も、同様に実施することができる。また、本発明の低屈折率層の形成材料は、前述のとおり、微細孔粒子に限定されない。本発明の積層フィルムの製造方法において、前記低屈折率層は、例えば、微細孔粒子同士が化学的に結合している多孔体であり、前記低屈折率層形成工程において、例えば、前記微細孔粒子同士を化学的に結合させる。前記微細孔粒子が、例えば、ケイ素化合物の微細孔粒子であり、前記多孔体が、シリコーン多孔体である。前記ケイ素化合物の微細孔粒子が、例えば、ゲル状シリカ化合物の粉砕体を含む。また、前記低屈折率層の別形態として、ナノファイバー等の繊維状物質からなり、前記繊維状物質が絡まり合い空隙を含む形で層を形成している空隙層がある。前記繊維状物質により形成された空隙層の製造方法は、例えば、前記微細孔粒子により形成された空隙層と同様である。さらに他にも、中空ナノ粒子やナノクレイを用いた空隙層、中空ナノバルーンやフッ化マグネシウムを用いて形成した空隙層も含まれる。また、それらの低屈折率層は単一の構成物質からなる空隙層であってもよいし、また複数の構成物質からなる空隙層であってもよい。空隙層の形態も単一の前記形態であってもよいし、複数の前記形態からなる空隙層であってもよい。以下においては、主に、前記微細孔粒子同士が化学的に結合している多孔体の空隙層について説明する。
本発明では、例えば、以下に説明する方法により、優れた低屈折率を示す低屈折率層を得ることができる。すなわち、本発明の低屈折率層の製造方法で使用する前記粉砕物は、前記ゲル状ケイ素化合物を粉砕したものであるため、前記粉砕前のゲル状ケイ素化合物の三次元構造が、三次元基本構造に分散された状態となっている。そして、本発明の低屈折率層の製造方法では、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物を前記基材上に塗工することで、前記三次元基本構造に基づく多孔性構造の前駆体が形成される。つまり、本発明の製造方法によれば、前記ゲル状ケイ素化合物の三次元構造とは異なる、前記三次元基本構造の前記粉砕物から形成された新たな多孔構造が形成される。このため、最終的に得られる前記低屈折率層は、例えば、空気層と同程度に機能する低屈折率を奏することができる。また、本発明の製造方法においては、さらに、前記粉砕物同士を化学的に結合させるため、前記新たな三次元構造が固定化される。このため、最終的に得られる前記低屈折率層は、空隙を有する構造であるが、十分な強度と可撓性とを維持できる。このように、本発明の製造方法により得られる低屈折率層は、例えば、前記空気層の代替品として、低屈折性という機能の面において、また、強度と可撓性においても、有用である。また、前記空気層の場合、例えば、部材と部材とを、両者の間にスペーサー等を介することで間隙を設けて積層することにより、前記部材間に空気層を形成する必要があった。しかし、本発明の製造方法により得られる低屈折率層は、例えば、目的の部位に配置するのみで、前記空気層と同程度に機能する低屈折性を発揮させることができる。したがって、前述のように、前記空気層を形成するよりも、容易且つ簡便に、前記空気層と同程度に機能する低屈折性を、例えば、光学部材に付与することができる。ただし、この説明は例示であって、本発明は、この説明によりなんら限定されない。
本発明の低屈折率層の製造方法は、特に記載しない限り、前記本発明の低屈折率層の説明を援用できる。
本発明の低屈折率層の製造方法において、前記ゲル状化合物およびその粉砕物、前記モノマー化合物および前記モノマー化合物の前駆体は、前記本発明の低屈折率層における説明を援用できる。
本発明の低屈折率層の製造方法は、例えば、前述のように、微細孔粒子を含む液を作製する工程を有していても良い。前記微細孔粒子がゲル状化合物の粉砕物である場合は、前記粉砕物は、例えば、前記ゲル状化合物を粉砕して得られる。前記ゲル状化合物の粉砕によって、前述のように、前記ゲル状化合物の三次元構造が破壊され、三次元基本構造に分散される。
以下に、前記モノマー化合物のゲル化による前記ゲル状化合物の生成、前記ゲル状化合物の粉砕による粉砕物の調製について説明するが、本発明は、以下の例示には制限されない。
前記モノマー化合物のゲル化は、例えば、前記モノマー化合物を、互いに水素結合させることまたは分子間力結合させることで行うことができる。
前記モノマー化合物は、例えば、前記本発明の低屈折率層において述べた前記式(1)で表されるケイ素化合物が挙げられる。
Figure 2017064954
前記式(1)のケイ素化合物は、水酸基を有するため、前記式(1)のモノマー間は、例えば、それぞれの水酸基を介して、水素結合または分子間力結合が可能である。
また、前記ケイ素化合物は、前述のように、前記ケイ素化合物前駆体の加水分解物でもよく、例えば、前記本発明の低屈折率層において述べた前記式(2)で表されるケイ素化合物前駆体を、加水分解して生成してもよい。
Figure 2017064954
前記モノマー化合物前駆体の加水分解の方法は、特に制限されず、例えば、触媒存在下での化学反応により行うことができる。前記触媒としては、例えば、シュウ酸、酢酸等の酸等が挙げられる。前記加水分解反応は、例えば、シュウ酸の水溶液を、前記ケイ素化合物とジメチルスルホキシドとの混合液(例えば懸濁液)に、室温環境下でゆっくり滴下混合させた後に、そのまま30分程度撹拌することで行うことができる。前記ケイ素化合物前駆体を加水分解する際は、例えば、前記ケイ素化合物前駆体のアルコキシ基を完全に加水分解することで、その後のゲル化・熟成・空隙構造形成後の加熱・固定化を、さらに効率良く発現することができる。
前記モノマー化合物のゲル化は、例えば、前記モノマー間の脱水縮合反応により行うことができる。前記脱水縮合反応は、例えば、触媒存在下で行うことが好ましく、前記触媒としては、例えば、塩酸、シュウ酸、硫酸等の酸触媒、およびアンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基触媒等の、脱水縮合触媒が挙げられる。前記脱水縮合触媒は、塩基触媒が特に好ましい。前記脱水縮合反応において、前記モノマー化合物に対する前記触媒の添加量は、特に制限されず、前記モノマー化合物1モルに対して、触媒は、例えば、0.01〜10モル、0.05〜7モル、0.1〜5モルである。
前記モノマー化合物のゲル化は、例えば、溶媒中で行うことが好ましい。前記溶媒における前記モノマー化合物の割合は、特に制限されない。前記溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、γ−ブチルラクトン(GBL)、アセトニトリル(MeCN)、エチレングリコールエチルエーテル(EGEE)等が挙げられる。前記溶媒は、例えば、1種類でもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記ゲル化に使用する溶媒を、以下、「ゲル化用溶媒」ともいう。
前記ゲル化の条件は、特に制限されない。前記モノマー化合物を含む前記溶媒に対する処理温度は、例えば、20〜30℃、22〜28℃、24〜26℃であり、処理時間は、例えば、1〜60分、5〜40分、10〜30分である。前記脱水縮合反応を行う場合、その処理条件は、特に制限されず、これらの例示を援用できる。前記ゲル化を行うことで、例えば、シロキサン結合が成長し、シリカ一次粒子が形成され、さらに反応が進行することで、前記一次粒子同士が、数珠状に連なり三次元構造のゲルが生成される。
前記ゲル化により得られた前記ゲル状化合物は、ゲル化反応の後、熟成処理を施すことが好ましい。前記熟成処理により、例えば、ゲル化で得られた三次元構造を有するゲルの一次粒子をさらに成長させることで、粒子自体のサイズを大きくすることが可能であり、結果的には、粒子同士が接触しているネック部分の接触状態を、点接触から面接触に増やすことができる。上記のような熟成処理を行ったゲルは、例えば、ゲル自体の強度が増加し、結果的には、粉砕を行った後の三次元基本構造の強度を向上できる。これにより、例えば、前記粉砕物を塗工した後の乾燥工程において、前記三次元基本構造が堆積した空隙構造の細孔サイズが、乾燥過程の溶媒揮発に伴って収縮することを抑制できる。
前記熟成処理は、例えば、所定の温度で所定の時間、前記ゲル状化合物をインキュベートすることにより行える。前記所定の温度は、特に制限されず、その下限が、例えば、30℃以上、35℃以上、40℃以上であり、その上限が、例えば、80℃以下、75℃以下、70℃以下であり、その範囲が、例えば、30〜80℃、35〜75℃、40〜70℃である。前記所定の時間は、特に制限されず、その下限が、例えば、5時間以上、10時間以上、15時間以上であり、その上限が、例えば、50時間以下、40時間以下、30時間以下であり、その範囲が、例えば、5〜50時間、10〜40時間、15〜30時間である。なお、熟成の最適な条件については、例えば、前記のシリカ一次粒子サイズの増大、およびネック部分の接触面積の増大が得られる条件が主目的である。さらには、使用している溶媒の沸点を考慮することが好ましく、例えば、熟成温度が高すぎると、溶媒が過剰に揮発してしまい、塗工液(ゲル液)濃度の濃縮により三次元空隙構造の細孔が閉口する等の不具合が生じる可能性がある。一方で、例えば、熟成温度が低すぎる場合は、前記の熟成による効果が十分に得られないばかりでなく、量産プロセスの経時での温度バラツキが増大することとなり、品質に劣る製品ができる可能性がある。
前記熟成処理は、例えば、前記ゲル化処理と同じ溶媒を使用でき、具体的には、前記ゲル処理後の反応物(つまり、前記ゲル状化合物を含む前記溶媒)に対して、そのまま施すことが好ましい。ゲル化後の熟成処理を終えた前記ゲル(前記ゲル状化合物、例えば、前記ゲル状ケイ素化合物)に含まれる残留シラノール基のモル数は、例えば、添加した原材料(例えば、前記モノマー化合物前駆体)のアルコキシ基のモル数を100とした場合の残留シラノール基の割合であり、その下限が、例えば、50%以上、40%以上、30%以上であり、その上限が、例えば、1%以下、3%以下、5%以下であり、その範囲が、例えば、1〜50%、3〜40%、5〜30%である。ゲルの硬度を上げる目的では、例えば、残留シラノール基のモル数が低いほど好ましい。シラノール基のモル数が高すぎると、例えば、シリコーン多孔体の前駆体が架橋されるまでに、空隙構造を保持できなくなる可能性がある。一方で、シラノール基のモル数が低すぎると、例えば、前記微細孔粒子含有液(例えば懸濁液)を作製する工程および/またはその後の工程において、ゲル状化合物の粉砕物を架橋できなくなり、十分な膜強度を付与できなくなる可能性がある。なお、上記はシラノール基の例であるが、例えば、モノマーのケイ素化合物を各種反応性官能基で修飾した場合は、各々の官能基に対しても同様の現象を適用できるものとする。
前記モノマー化合物を前記ゲル化用溶媒中でゲル化した後、得られたゲル状化合物を粉砕する。前記粉砕は、例えば、前記ゲル化用溶媒中のゲル状化合物に対して、そのまま粉砕処理を施してもよいし、前記ゲル化用溶媒を他の溶媒に置換してから、前記他の溶媒中のゲル状化合物に対して、粉砕処理を施してもよい。また、例えば、ゲル化反応に用いた触媒および用いた溶媒が、熟成工程後も残存することで、液の経時ゲル化(ポットライフ)、乾燥工程時の乾燥効率低下を発生させる場合は、他の溶媒に置換することが好ましい。前記他の溶媒を、以下、「粉砕用溶媒」ともいう。
前記粉砕用溶媒は、特に制限されず、例えば、有機溶媒が使用できる。前記有機溶媒は、例えば、沸点130℃以下の溶媒が挙げられる。具体例としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、メタノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、ペンタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルセロソルブ、アセトン等が挙げられる。前記粉砕用溶媒は、例えば、1種類でもよいし、2種類以上の併用でもよい。
前記ゲル化用溶媒と前記粉砕用溶媒との組合せは、特に制限されず、例えば、DMSOとIPAとの組合せ、DMSOとエタノールとの組合せ、DMSOとイソブチルアルコールとの組合せ、DMSOとn−ブタノールとの組合せ等が挙げられる。このように、前記ゲル化用溶媒を前記粉砕用溶媒に置換することで、例えば、後述する塗膜形成において、より均一な塗工膜を形成することができる。
前記ゲル状化合物の粉砕方法は、特に制限されず、例えば、超音波ホモジナイザー、高速回転ホモジナイザー、その他のキャビテーション現象を用いる粉砕装置もしくは高圧で液同士を斜向衝突させる粉砕装置等により行うことができる。ボールミル等のメディア粉砕を行う装置は、例えば、粉砕時にゲルの空隙構造を物理的に破壊するのに対し、ホモジナイザー等の本発明に好ましいキャビテーション方式粉砕装置は、例えば、メディアレス方式のため、ゲル三次元構造にすでに内包されている比較的弱い結合のシリカ粒子接合面を、高速のせん断力で剥離する。これにより、得られるゾル三次元構造は、例えば、一定範囲の粒度分布をもつ空隙構造を保持することができ、塗工・乾燥時の堆積による空隙構造を再形成できる。前記粉砕の条件は、特に制限されず、例えば、瞬間的に高速の流れを与えることで、溶媒を揮発させることなくゲルを粉砕することができることが好ましい。例えば、前述のような粒度バラツキ(例えば、体積平均粒子径または粒度分布)の粉砕物となるように粉砕することが好ましい。仮に粉砕時間・強度等の仕事量が不足した場合は、例えば、粗粒が残ることとなり緻密な細孔を形成できないばかりか外観欠点も増加し高い品質を得ることができない可能性がある。一方で、仕事量が過多な場合は、例えば、所望の粒度分布よりも微細なゾル粒子となり、塗工・乾燥後に堆積した空隙サイズが微細となり、所望の空孔率に満たない可能性がある。
以上のようにして、前記微細孔粒子を含む液(例えば懸濁液)を作製することができる。さらに、前記微細孔粒子を含む液を作製した後に、または作製工程中に、前記微細孔粒子同士を化学的に結合させる触媒を加えることにより、前記微細孔粒子および前記触媒を含む含有液を作製することができる。前記触媒の添加量は、特に限定されないが、前記微細孔粒子(例えば、ゲル状ケイ素化合物の粉砕物)の重量に対し、例えば、0.01〜20重量%、0.05〜10重量%、または0.1〜5重量%である。この触媒により、例えば、後述の結合工程において、前記微細孔粒子同士を化学的に結合させることができる。ただし、前述のとおり、本発明において、前記触媒は必須ではなく任意であり、無くても良い。本発明の積層フィルムの製造方法によれば、前述のとおり、本発明の低屈折率層の膜強度が弱くても破壊されにくい。このため、例えば、前記触媒により本発明の低屈折率層の強度を高めなくても、本発明の低屈折率層が破壊されにくい。前記触媒は、例えば、前記微細孔粒子同士の架橋結合を促進する触媒であっても良い。前記微細孔粒子同士を化学的に結合させる化学反応としては、シリカゾル分子に含まれる残留シラノール基の脱水縮合反応を利用することが好ましい。シラノール基の水酸基同士の反応を前記触媒で促進することで、短時間で空隙構造を硬化させる連続成膜が可能である。前記触媒としては、例えば、光活性触媒および熱活性触媒が挙げられる。前記光活性触媒によれば、例えば、加熱によらずに前記微細孔粒子同士を化学的に結合(例えば架橋結合)させることができる。これによれば、例えば、加熱による収縮が起こりにくいため、より高い空隙率を維持できる。また、前記触媒に加え、またはこれに代えて、触媒を発生する物質(触媒発生剤)を用いても良い。例えば、前記触媒が架橋反応促進剤であり、前記触媒発生剤が、前記架橋反応促進剤を発生する物質でも良い。例えば、前記光活性触媒に加え、またはこれに代えて、光により触媒を発生する物質(光触媒発生剤)を用いても良いし、前記熱活性触媒に加え、またはこれに代えて、熱により触媒を発生する物質(熱触媒発生剤)を用いても良い。前記光触媒発生剤としては、特に限定されないが、例えば、光塩基発生剤(光照射により塩基性触媒を発生する触媒)、光酸発生剤(光照射により酸性触媒を発生する物質)等が挙げられ、光塩基剤が好ましい。前記光塩基発生剤としては、例えば、9−アントリルメチル N,N−ジエチルカルバメート(9-anthrylmethyl N,N-diethylcarbamate、商品名WPBG−018)、(E)−1−[3−(2−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]ピペリジン((E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine、商品名WPBG−027)、1−(アントラキノン−2−イル)エチル イミダゾールカルボキシレート(1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate、商品名WPBG−140)、2−ニトロフェニルメチル 4−メタクリロイルオキシピペリジン−1−カルボキシラート(商品名WPBG−165)、1,2−ジイソプロピル−3−〔ビス(ジメチルアミノ)メチレン〕グアニジウム 2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオナート(商品名WPBG−266)、1,2−ジシクロヘキシル−4,4,5,5−テトラメチルビグアニジウム n−ブチルトリフェニルボラート(商品名WPBG−300)、および2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(東京化成工業株式会社)、4-ピペリジンメタノールを含む化合物(商品名HDPD-PB100:ヘレウス社製)等が挙げられる。なお、前記「WPBG」を含む商品名は、いずれも和光純薬工業株式会社の商品名である。前記光酸発生剤としては、例えば、芳香族スルホニウム塩(商品名SP-170:ADEKA社)、トリアリールスルホニウム塩(商品名CPI101A:サンアプロ社)、芳香族ヨードニウム塩(商品名Irgacure250:チバ・ジャパン社)等が挙げられる。また、前記微細孔粒子同士を化学的に結合させる触媒は、前記光活性触媒に限定されず、例えば、尿素のような熱活性触媒でも良い。前記微細孔粒子同士を化学的に結合させる触媒は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基触媒、塩酸、酢酸、シュウ酸等の酸触媒等が挙げられる。これらの中で、塩基触媒が好ましい。前記微細孔粒子同士を化学的に結合させる触媒は、例えば、前記粉砕物(微細孔粒子)を含むゾル粒子液(例えば懸濁液)に、塗工直前に添加して使用する、または前記触媒を溶媒に混合した混合液として使用することができる。前記混合液は、例えば、前記ゾル粒子液に直接添加して溶解した塗工液、前記触媒を溶媒に溶解した溶液、前記触媒を溶媒に分散した分散液でもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、各種有機溶剤、水、緩衝液等が挙げられる。
また、例えば、前記微細孔粒子が、3官能以下の飽和結合官能基を少なくとも含むケイ素化合物から得られたゲル状ケイ素化合物の粉砕物である場合、前記微細孔粒子を含む液を作製した後に、または作製工程中に、さらに、前記微細孔粒子同士を間接的に結合させるための架橋補助剤を添加してもよい。この架橋補助剤が、粒子同士の間に入り込み、粒子と架橋補助剤が各々相互作用もしくは結合することで、距離的に多少離れた粒子同士も結合させることが可能であり、効率よく強度を上げることが可能となる。前記架橋補助剤としては、多架橋シランモノマーが好ましい。前記多架橋シランモノマーは、具体的には、例えば、2以上3以下のアルコキシシリル基を有し、アルコキシシリル基間の鎖長が炭素数1以上10以下であっても良く、炭素以外の元素も含んでもよい。前記架橋補助剤としては、例えば、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)-N-ブチル-N-プロピル-エタン-1,2-ジアミン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。この架橋補助剤の添加量としては、特に限定されないが、例えば、前記ケイ素化合物の微細孔粒子の重量に対して0.01〜20重量%、0.05〜15重量%、または0.1〜10重量%である。ただし、前述のとおり、本発明の低屈折率層において、前記架橋補助剤は、必須ではなく任意であり、含んでいなくても良い。
つぎに、本発明の低屈折率層の製造方法は、例えば、前述のように、基材(樹脂フィルム)上に前記微細孔粒子含有液(例えば懸濁液)を塗工する工程を有していても良い。前記塗工は、例えば、後述する各種塗工方式を用いることができ、また、これらに限定されない。また、前記粉砕物を含む溶媒を、前記基材に、直接塗工することにより、前記多孔体の前駆体(塗工膜)を形成することができる。前記多孔体の前駆体は、例えば、塗工層ということもできる。また、前記多孔体前駆体、つまり、後述する結合工程前の前記多孔体の前駆体は、例えば、前記本発明の低屈折率層に対する前駆膜(または前駆層)ということもできる。前記多孔体の前駆体(塗工膜)を形成することにより、例えば、前記三次元構造が破壊された前記粉砕物が沈降・堆積することによって、新たな三次元構造が構築される。
前記溶媒(以下、「塗工用溶媒」ともいう。)は、特に制限されず、例えば、有機溶媒が使用できる。前記有機溶媒は、例えば、沸点130℃以下の溶媒が挙げられる。具体例としては、例えば、IPA、エタノール、メタノール、ブタノール等が挙げられ、また、前記粉砕用溶媒と同様のものが使用できる。本発明が、前記ゲル状化合物を粉砕する工程を含む場合、前記多孔体の前駆体の形成工程においては、例えば、前記ゲル状化合物の粉砕物を含む前記粉砕用溶媒を、そのまま使用してもよい。
前記塗工工程においては、例えば、前記溶媒に分散させたゾル状の前記粉砕物(以下、「ゾル粒子液」ともいう。)を、前記基材上に塗工することが好ましい。本発明のゾル粒子液は、例えば、基材上に塗工・乾燥した後に、結合工程により化学架橋を行うことで、一定レベル以上の膜強度を有する空隙層を、連続成膜することが可能である。なお、本発明における「ゾル」とは、ゲルの三次元構造を粉砕することで、空隙構造の一部を保持したナノ三次元構造のシリカゾル粒子が溶媒中に分散して流動性を示す状態をいう。
前記溶媒における前記粉砕物の濃度は、特に制限されず、例えば、0.3〜50%(v/v)、0.5〜30%(v/v)、1.0〜10%(v/v)である。前記粉砕物の濃度が高すぎると、例えば、前記ゾル粒子溶液の流動性が著しく低下し、塗工時の凝集物・塗工スジを発生させる可能性がある。一方で、前記粉砕物の濃度が低すぎると、例えば、前記ゾル粒子液の溶媒の乾燥に相当の時間がかかるだけでなく、乾燥直後の残留溶媒も高くなるために、空孔率が低下してしまう可能性がある。
前記ゾルの物性は、特に制限されない。前記ゾルのせん断粘度は、例えば、10001/sのせん断速度において、例えば、粘度100cPa・s以下、粘度10cPa・s以下、粘度1cPa・s以下である。せん断粘度が高すぎると、例えば、塗工スジが発生し、グラビア塗工の転写率の低下等の不具合が見られる可能性がある。逆に、せん断粘度が低すぎる場合は、例えば、塗工時のウェット塗布厚みを厚くすることができず、乾燥後に所望の厚みが得られない可能性がある。
前記基材に対する前記粉砕物の塗工量は、特に制限されず、例えば、所望の前記シリコーン多孔体の厚み等に応じて、適宜設定できる。具体例として、厚み0.1〜1000μmの前記シリコーン多孔体を形成する場合、前記基材に対する前記粉砕物の塗工量は、前記基材の面積1mあたり、例えば、0.01〜60000μg、0.1〜5000μg、1〜50μgである。前記ゾル粒子液の好ましい塗工量は、例えば、液の濃度や塗工方式等と関係するため、一義的に定義することは難しいが、生産性を考慮すると、できるだけ薄層で塗工することが好ましい。塗布量が多すぎると、例えば、溶媒が揮発する前に乾燥炉で乾燥される可能性が高くなる。これにより、溶媒中でナノ粉砕ゾル粒子が沈降・堆積し、空隙構造を形成する前に、溶媒が乾燥することで、空隙の形成が阻害されて空孔率が大きく低下する可能性がある。一方で、塗布量が薄過ぎると、基材の凹凸・親疎水性のバラツキ等により塗工ハジキが発生するリスクが高くなる可能性がある。
さらに、本発明の低屈折率層の製造方法は、前述のように、塗工された微細孔粒子含有液(多孔体の前駆体(塗工膜))を乾燥する工程を有していても良い。前記乾燥処理によって、例えば、前記多孔体の前駆体中の前記溶媒(前記ゾル粒子液に含まれる溶媒)を除去するだけでなく、乾燥処理中に、ゾル粒子を沈降・堆積させ、空隙構造を形成させることを目的としている。前記乾燥処理の温度は、例えば、50〜250℃、60〜150℃、70〜130℃であり、前記乾燥処理の時間は、例えば、0.1〜30分、0.2〜10分、0.3〜3分である。乾燥処理温度、および時間については、例えば、連続生産性や高い空孔率の発現の関連では、より低く短いほうが好ましい。条件が厳しすぎると、例えば、基材が樹脂フィルムの場合、前記基材のガラス転移温度に近づくことで、前記基材が乾燥炉の中で伸展してしまい、塗工直後に、形成された空隙構造にクラック等の欠点が発生する可能性がある。一方で、条件が緩すぎる場合、例えば、乾燥炉を出たタイミングで残留溶媒を含むため、次工程でロールと擦れた際に、スクラッチ傷が入る等の外観上の不具合が発生する可能性がある。
前記乾燥処理は、例えば、自然乾燥でもよいし、加熱乾燥でもよいし、減圧乾燥でもよい。前記乾燥方法は、特に制限されず、例えば、一般的な加熱手段が使用できる。前記加熱手段は、例えば、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等が挙げられる。中でも、工業的に連続生産することを前提とした場合は、加熱乾燥を用いることが好ましい。また、使用される溶媒については、乾燥時の溶媒揮発に伴う収縮応力の発生、それによる空隙層(前記シリコーン多孔体)のクラック現象を抑える目的で、表面張力が低い溶媒が好ましい。前記溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)に代表される低級アルコール、ヘキサン、ペルフルオロヘキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
前記乾燥処理は、例えば、自然乾燥でもよいし、加熱乾燥でもよいし、減圧乾燥でもよい。前記乾燥方法は、特に制限されず、例えば、一般的な加熱手段が使用できる。前記加熱手段は、例えば、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等が挙げられる。中でも、工業的に連続生産することを前提とした場合は、加熱乾燥を用いることが好ましい。また、使用される溶媒については、乾燥時の溶媒揮発に伴う収縮応力の発生、それによる空隙層(前記シリコーン多孔体)のクラック現象を抑える目的で、表面張力が低い溶媒が好ましい。前記溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)に代表される低級アルコール、ヘキサン、ペルフルオロヘキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、上記IPA等にペルフルオロ系界面活性剤もしくはシリコン系界面活性剤を少量添加し表面張力を低下させてもよい。
本発明の低屈折率層の製造方法によれば、例えば、前記多孔体の前駆体における前記粉砕物の三次元構造が、固定化される。従来の焼結による固定化を行う場合は、例えば、200℃以上の高温処理を行うことで、シラノール基の脱水縮合、シロキサン結合の形成を誘発する。本発明においては、例えば、上記の脱水縮合反応を触媒する各種添加剤を反応させることで、例えば、基材が樹脂フィルムの場合に、前記基材にダメージを起こすことなく、100℃前後の比較的低い乾燥温度、および数分未満の短い処理時間で、連続的に空隙構造を形成、固定化することができる。ただし、本発明において、上記の脱水縮合反応を触媒する各種添加剤は、必須ではなく任意であり、無くても良い。
前記化学的に結合させる方法は、特に制限されず、例えば、前記ゲル状ケイ素化合物の種類に応じて、適宜決定できる。具体例として、前記化学的な結合は、例えば、前記粉砕物同士の化学的な架橋結合により行うことができ、その他にも、例えば、酸化チタン等の無機粒子等を、前記粉砕物に添加した場合、前記無機粒子と前記粉砕物とを化学的に架橋結合させることも考えられる。また、酵素等の生体触媒を担持させる場合も、触媒活性点とは別の部位と前記粉砕物とを化学架橋結合させる場合もある。したがって、本発明は、例えば、前記ゾル粒子同士で形成する空隙層(シリコーン多孔体)だけでなく、有機無機ハイブリッド空隙層、ホストゲスト空隙層等の応用展開が考えられるが、これらに限定されない。
前記結合は、例えば、前記ゲル状化合物の粉砕物の種類に応じて、前記粉砕物(微細孔粒子)同士を化学的に結合させる触媒存在下での化学反応により行うことができる。前記触媒は、例えば、微細孔粒子同士の架橋結合を促進する触媒であっても良い。本発明における化学反応としては、シリカゾル分子に含まれる残留シラノール基の脱水縮合反応を利用することが好ましい。シラノール基の水酸基同士の反応を前記触媒で促進することで、短時間で空隙構造を硬化させる連続成膜が可能である。前記触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基触媒、塩酸、酢酸、シュウ酸等の酸触媒等が挙げられるが、これらに限定されない。前記脱水縮合反応の触媒は、塩基触媒が特に好ましい。また、光(例えば紫外線)を照射することで触媒活性が発現する、光酸発生触媒、光塩基発生触媒、光酸発生剤、光塩基発生剤等も好ましく用いることができる。光酸発生触媒、光塩基発生触媒、光酸発生剤、および光塩基発生剤としては、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。ただし、本発明の低屈折率層において、前記触媒は、前述のとおり、必須ではなく任意であり、無くても良い。前記触媒は、例えば、前述のとおり、前記微細孔粒子含有液を作製する工程において、前記微細孔粒子含有液(例えば、前記粉砕物(微細孔粒子)の懸濁液)に添加することができる。より具体的には、例えば、前記粉砕物(微細孔粒子)を含むゾル粒子液(例えば懸濁液)に、前記触媒を塗工直前に添加して使用する、または前記触媒を溶媒に混合した混合液として使用することが好ましい。前記混合液は、例えば、前記ゾル粒子液に直接添加して溶解した塗工液、前記触媒を溶媒に溶解した溶液、前記触媒を溶媒に分散した分散液でもよい。前記溶媒は、特に制限されず、前述のとおり、例えば、水、緩衝液等が挙げられる。
前記触媒存在下での化学反応は、本発明の製造方法におけるどの段階で行う(起こる)かは、特に限定されない。前記化学反応は、例えば、事前に前記ゾル粒子液(例えば懸濁液)に添加された前記触媒を含む前記塗工膜に対し光照射もしくは加熱、または、前記塗工膜に、前記触媒を吹き付けてから光照射もしくは加熱、または、前記触媒に吹き付けながら光照射もしくは加熱することによって、行うことができる。例えば、前記触媒が光活性触媒である場合は、光照射により、前記微細孔粒子同士を化学的に結合させて前記低屈折率層を形成することができる。また、前記触媒が、熱活性触媒である場合は、加熱により、前記微細孔粒子同士を化学的に結合させて前記低屈折率層を形成することができる。前記光照射における積算光量は、特に限定されないが、@360nm換算で、例えば、200〜800mJ/cm、250〜600mJ/cm、または300〜400mJ/cmである。照射量が十分でなく触媒発生剤の光吸収による分解が進まず効果が不十分となることを防止する観点からは、200mJ/cm以上の積算光量が良い。また、空隙層下の基材にダメージがかかり熱ジワが発生することを防止する観点からは、800mJ/cm以下の積算光量が良い。前記加熱処理の条件は、特に制限されず、前記加熱温度は、例えば、50〜250℃、60〜150℃、70〜130℃であり、前記加熱時間は、例えば、0.1〜30分、0.2〜10分、0.3〜3分である。または、塗工された前記ゾル粒子液(例えば懸濁液)を乾燥する工程が、前記触媒存在下での化学反応を行う工程を兼ねていても良い。すなわち、塗工された前記ゾル粒子液(例えば懸濁液)を乾燥する工程において、前記触媒存在下での化学反応により、前記粉砕物(微細孔粒子)同士を化学的に結合させても良い。この場合において、前記乾燥工程後に前記塗工膜をさらに加熱することにより、前記粉砕物(微細孔粒子)同士をさらに強固に結合させても良い。さらに、前記触媒存在下での化学反応は、前記微細孔粒子含有液(例えば懸濁液)を作製する工程、および、前記微細孔粒子含有液を塗工する工程においても起こる場合があると推測される。しかしながら、この推測は、本発明を何ら限定しない。また、使用される溶媒については、例えば、乾燥時の溶媒揮発に伴う収縮応力の発生、それによる空隙層のクラック現象を抑える目的で、表面張力が低い溶媒が好ましい。例えば、イソプロピルアルコール(IPA)に代表される低級アルコール、ヘキサン、ペルフルオロヘキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
以上のようにして、本発明の低屈折率層を製造することができるが、本発明の製造方法は、これに限定されない。
また、得られた本発明の低屈折率層に対し、例えば、加熱エージング等の処理をして強度を向上させる強度向上工程(以下「エージング工程」ともいう場合がある。)を行っても良い。例えば、本発明の低屈折率層が基材(樹脂フィルム)上に積層されている場合、前記強度向上工程(エージング工程)により、前記基材に対する粘着ピール強度を向上させることができる。前記強度向上工程(エージング工程)においては、例えば、本発明の低屈折率層を加熱しても良い。前記エージング工程における温度は、例えば40〜80℃、50〜70℃、55〜65℃である。前記反応の時間は、例えば5〜30hr、7〜25hr、または10〜20hrである。前記エージング工程においては、例えば、加熱温度を低温にすることで、前記低屈折率層の収縮を抑制しながら粘着ピール強度を向上させ、高空隙率と強度の両立を達成できる。ただし、本発明の積層フィルムの製造方法によれば、前述のとおり、本発明の低屈折率層の膜強度が弱くても破壊されにくい。このため、例えば、前記強度向上工程(エージング工程)により本発明の低屈折率層の強度を向上させなくても、本発明の低屈折率層を破壊せずに本発明の積層フィルムを製造することが可能である。
前記強度向上工程(エージング工程)において起こる現象およびメカニズムは不明であるが、例えば、本発明の低屈折率層中に含まれる触媒により、前記微細孔粒子同士の化学的な結合(例えば架橋反応)がさらに進むことにより、強度が向上すると考えられる。具体例として、前記微細孔粒子が、ケイ素化合物の微細孔粒子(例えばゲル状シリカ化合物の粉砕体)であって、前記低屈折率層中に残留シラノール基(OH基)が存在する場合、前記残留シラノール基同士が架橋反応により化学的に結合すると考えられる。なお、本発明の低屈折率層中に含まれる触媒は、特に限定されないが、例えば、前記結合工程で用いた触媒でも良いし、前記結合工程で用いた光塩基発生触媒が光照射により発生した塩基性物質、前記結合工程で用いた光酸発生触媒が光照射により発生した酸性物質等でも良い。ただし、この説明は例示であり、本発明を限定しない。
また、本発明の積層フィルムの製造方法においては、前述のとおり、前記他の層上に前記粘接着層が積層された粘接着層付き積層体の前記粘接着層側を前記低屈折率層に貼り合わせる、貼り合わせ工程を行う。本発明の積層フィルムの製造方法においては、例えば、前記貼り合わせ工程後に、さらに、本発明の低屈折率層を、前記粘接着層と反応させて、本発明の低屈折率層と前記粘接着層との中間に配置された中間層を形成しても良い(中間層形成工程)。前記中間層により、例えば、本発明の低屈折率層と前記粘接着層とが剥離しにくくなる。この理由(メカニズム)は不明であるが、例えば、前記中間層の投錨性(投錨効果)によると推測される。前記投錨性(投錨効果)とは、前記空隙層と前記中間層との界面付近において、前記中間層が前記空隙層内部に入り組んだ構造をしていることにより、前記界面が強固に固定される現象(効果)をいう。ただし、この理由(メカニズム)は、推測される理由(メカニズム)の一例であり、本発明を限定しない。本発明の低屈折率層と前記粘接着層との反応も、特に限定されないが、例えば、触媒作用による反応でも良い。前記触媒は、例えば、本発明の低屈折率層中に含まれる触媒でも良い。具体的には、例えば、前記結合工程で用いた触媒でも良いし、前記結合工程で用いた光塩基発生触媒が光照射により発生した塩基性物質、前記結合工程で用いた光酸発生触媒が光照射により発生した酸性物質等でも良い。また、本発明の低屈折率層と前記粘接着層との反応は、例えば、新たな化学結合が生成される反応(例えば架橋反応)でも良い。前記反応の温度は、例えば40〜80℃、50〜70℃、55〜65℃である。前記反応の時間は、例えば5〜30hr、7〜25hr、または10〜20hrである。また、この中間層形成工程が、本発明の低屈折率層の強度を向上させる前記強度向上工程(エージング工程)を兼ねていても良い。ただし、本発明において、前記中間層形成工程は必須ではなく任意であり、行わなくても良い。
[3.積層フィルムの製造方法]
つぎに、本発明の積層フィルムの製造方法について、例を挙げて説明する。
本発明の積層フィルムの製造方法において、前記各構成要素の積層は、例えば、効率的であることから、長尺フィルムを用いた連続処理(いわゆるRoll to Roll等)により積層を行ってもよい。また、例えば、前記各構成要素が成形物・素子等の場合はバッチ処理を行ったものを積層してもよい。
以下に、本発明の積層フィルムの製造方法について、図1〜4を用いて例を挙げて説明する。
まず、図1の断面図に、本発明の積層フィルムの製造方法における工程の一例を、模式的に示す。まず、図示のとおり、低屈折率層および粘接着層以外の他の層30上に粘接着層40が積層され、さらに粘接着層40が保護層(セパレータ)50で被覆された粘接着層付き積層体を準備する。他の層30は、特に限定されず、例えば、前述のとおり、偏光板、プリズムシート、位相差フィルム等であっても良い。つぎに、保護層50を粘接着層40から剥離する保護層剥離工程(A)を行う。これにより、他の層30上に粘接着層40が積層され、保護層が無くて粘着剤が露出した粘接着層付き積層体を得ることができる。なお、本発明において、保護層剥離工程(A)は必須ではなく、最初から、他の層30上に粘接着層40が積層され、保護層が無くて粘着剤が露出した粘接着層付き積層体を準備しても良い。一方、図示のとおり、基材10上に低屈折率層20が積層された基材付き低屈折率層を準備する。そして、他の層30上に粘接着層40が積層された粘接着層付き積層体の粘接着層40側を、低屈折率層20に貼り合わせる、貼り合わせ工程(B)を行う。このようにして、本発明の積層フィルム1Aを得ることができる。図示のとおり、積層フィルム1Aは、基材10上に、低屈折率層20、粘接着層40および他の層30が、前記順序で積層されている。さらに、図示のとおり、積層フィルム1Aから基材10を剥離する基材剥離工程(C)を行い、本発明の積層フィルム1Bを得ても良い。積層フィルム1Bは、図示のとおり、低屈折率層20上に、粘接着層40および他の層30が、前記順序で積層されている。
基材10上に低屈折率層20が積層された基材付き低屈折率層は、例えば、図2(a)または図2(b)の工程断面図に示す製造方法により製造することができる。まず、図2(a)の製造方法では、図示のとおり、基材10上に、前記ゲル状化合物の粉砕物のゾル粒子液20’’を塗工する塗工工程(1)、および、ゾル粒子液20’’を乾燥させて、低屈折率層20を形成する塗工膜形成工程(乾燥工程)(2)により、基材10上に低屈折率層20が積層された基材付き低屈折率層を製造することができる。一方、図2(b)の製造方法は、さらに、化学処理工程3を含む。具体的には、図2(b)の製造方法は、図示のとおり、基材10上に、前記ゲル状化合物の粉砕物のゾル粒子液20’’を塗工する塗工工程(1)、ゾル粒子液20’’を乾燥させて、前記低屈折率層の前駆層である塗工膜20’を形成する塗工膜形成工程(乾燥工程)(2)、および、塗工膜20’に化学処理(例えば、架橋処理)をして、低屈折率層20を形成する化学処理工程(例えば、架橋処理工程)(3)を含む。このようにして、図示のとおり、基材10上に低屈折率層20を形成できる。なお、前述のとおり、低屈折率と膜強度の高さ(強さ)とはトレードオフになる場合があるので、この点を考慮して、前記化学処理工程(例えば、架橋処理工程)(3)を行うか行わないかを決定しても良い。例えば、本発明の積層フィルムの製造方法においては、前述のとおり、低屈折率層の膜強度が低くても前記低屈折率層が破壊されにくいので、前記化学処理工程(3)を行わなくても良い場合がある。例えば、図1(a)に示したように乾燥工程(2)により低屈折率層20を形成した後に、低屈折率層20を、樹脂フィルム等(図示せず)により被覆して保護しても良い。これにより、例えば、化学処理工程(架橋工程)(3)により低屈折率層20の強度を向上させなくても、低屈折率層20を破壊することなく連続生産できる。なお、低屈折率層20を被覆して保護するための前記樹脂フィルムは、例えば、前記貼り合わせ工程(B)の直前に低屈折率層20から剥離しても良い。
前記塗工工程(1)において、ゾル粒子液20’’の塗工方法は特に限定されず、一般的な塗工方法を採用できる。前記塗工方法としては、例えば、スロットダイ法、リバースグラビアコート法、マイクログラビア法(マイクログラビアコート法)、ディップ法(ディップコート法)、スピンコート法、刷毛塗り法、ロールコート法、フレキソ印刷法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、エクストルージョンコート法、カーテンコート法、リバースコート法等が挙げられる。これらの中で、生産性、塗膜の平滑性等の観点から、エクストルージョンコート法、カーテンコート法、ロールコート法、マイクログラビアコート法等が好ましい。前記ゾル粒子液20’’の塗工量は、特に限定されず、例えば、低屈折率層20の厚みが適切になるように、適宜設定可能である。低屈折率層20の厚みは、特に限定されず、例えば、前述の通りである。
前記乾燥工程(2)において、ゾル粒子液20’’を乾燥し(すなわち、ゾル粒子液20’’に含まれる分散媒を除去し)、塗工膜(前駆層)20’を形成する。乾燥処理の条件は、特に限定されず、前述の通りである。
さらに、前記化学処理工程(3)において、塗工前に添加した前記触媒(例えば、光活性触媒またはKOH等の熱活性触媒)を含む塗工膜20’に対し、光照射または加熱し、塗工膜20’中の前記粉砕物同士を化学的に結合させて(例えば、架橋させて)、低屈折率層20を形成する。前記化学処理工程(3)における光照射または加熱条件は、特に限定されず、前述の通りである。基材10として、例えば、前記樹脂フィルムを使用することで、前記樹脂フィルム(基材10)上に、直接、低屈折率層20を積層することもできる。
また、前記低屈折率層の形成方法は、前記工程(1)〜(3)以外の工程を、適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良い。例えば、低屈折率層20を形成する前記化学処理工程(例えば、架橋処理工程)(3)の後に、強度向上工程(エージング工程)(4)を行っても良い。前記強度向上工程(エージング工程)(4)においては、低屈折率層20の強度を向上させ、強度が向上した低屈折率層とする。前記強度向上工程(エージング工程)(4)は、特に限定されないが、例えば前述のとおりである。また、例えば、図1のとおり粘接着層40を低屈折率層20に貼り合わせる、貼り合わせ工程(B)を行い、貼り合わせ工程(B)後に、低屈折率層20を粘接着層40と反応させて中間層(図示せず)を形成する中間層形成工程(5)を行っても良い。なお、前記貼り合わせ工程は、例えば、前記乾燥工程(2)または前記化学処理工程(3)の後に行うことができる。前記中間層形成工程(5)は、例えば、低屈折率層20の強度を向上させる工程(強度向上工程)を兼ねていても良い。前記中間層形成工程(5)は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。なお、前述のとおり、低屈折率と膜強度の高さ(強さ)とはトレードオフになる場合があるので、この点を考慮して、前記強度向上工程(エージング工程)(4)および前記中間層形成工程(5)を行うか行わないかを決定しても良い。例えば、本発明の積層フィルムの製造方法においては、前述のとおり、低屈折率層の膜強度が低くても前記低屈折率層が破壊されにくいので、前記強度向上工程(エージング工程)(4)および前記中間層形成工程(5)を行わなくても良い場合がある。例えば、前記乾燥工程(2)または化学処理工程(3)により低屈折率層20を形成した後に、低屈折率層20を、樹脂フィルム等(図示せず)により被覆して保護しても良い。これにより、例えば、前記強度向上工程(エージング工程)(4)および前記中間層形成工程(5)により低屈折率層20の強度を向上させなくても、低屈折率層20を破壊することなく連続生産できる。なお、低屈折率層20を被覆して保護するための前記樹脂フィルムは、例えば、前記貼り合わせ工程(B)の直前に低屈折率層20から剥離しても良い。
つぎに、図3に、スロットダイ法の塗工装置およびそれを用いた本発明の積層フィルムの製造方法の一例を模式的に示す。なお、図3は、断面図であるが、見易さのため、ハッチを省略している。
図示のとおり、この装置を用いた方法における各工程は、基材10を、ローラによって一方向に搬送しながら行う。搬送速度は、特に限定されず、例えば、1〜100m/分、3〜50m/分、5〜30m/分である。
まず、送り出しローラ101から基材10を繰り出して搬送しながら、塗工ロール102において、基材10にゾル粒子液20’’を塗工する塗工工程(1)を行い、続いて、オーブンゾーン110内で乾燥工程(2)に移行する。図2の塗工装置では、塗工工程(1)の後、乾燥工程(2)に先立ち、予備乾燥工程を行う。予備乾燥工程は、加熱をせずに、室温で行うことができる。乾燥工程(2)においては、加熱手段111を用いる。加熱手段111としては、前述のとおり、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等を適宜用いることができる。また、例えば、乾燥工程(2)を複数の工程に分け、後の乾燥工程になるほど乾燥温度を高くしても良い。
乾燥工程(2)の後に、化学処理ゾーン120内で化学処理工程(架橋工程)(3)を行う。化学処理工程(3)においては、例えば、乾燥後の塗工膜20’が光活性触媒を含む場合、基材10の上下に配置したランプ(光照射手段)121で光照射する。または、例えば、乾燥後の塗工膜20’が熱活性触媒を含む場合、ランプ(光照射装置)121に代えて熱風器(加熱手段)を用い、基材10の上下に配置した熱風器121で基材10を加熱する。この架橋処理により、塗工膜20’中の前記粉砕物同士の化学的結合が起こり、低屈折率層20が硬化・強化される。なお、本例では、乾燥工程(2)の後に化学処理工程(3)を行っているが、前述のとおり、本発明の製造方法のどの段階で前記粉砕物同士の化学的結合を起こさせるかは、特に限定されない。例えば、前述のように、乾燥工程(2)が化学処理工程(3)を兼ねていても良い。また、乾燥工程(2)において前記化学的結合が起こった場合でも、さらに化学処理工程(3)を行い、前記粉砕物同士の化学的結合を、さらに強固にしても良い。また、乾燥工程(2)よりも前の工程(例えば、予備乾燥工程、塗工工程(1)、塗工液(例えば懸濁液)を作製する工程等)において、前記粉砕物同士の化学的結合が起こっても良い。また、前述のとおり、本発明において、化学処理工程(架橋工程)(3)は、任意であり、行わなくても良い。例えば、前述のとおり、図1(a)に示したように乾燥工程(2)により低屈折率層20を形成した後に、低屈折率層20を、長尺状の樹脂フィルム等(図示せず)により被覆して保護しても良い。これにより、例えば、化学処理工程(架橋工程)(3)により低屈折率層20の強度を向上させなくても、低屈折率層20を破壊することなく連続生産できる。なお、低屈折率層20を被覆して保護するための前記樹脂フィルムは、例えば、後述する貼り合わせ工程(B)の直前に低屈折率層20から剥離しても良い。
一方、低屈折率層および粘接着層以外の他の層30上に粘接着層40が積層され、さらに粘接着層40が保護層(セパレータ)50で被覆された粘接着層付き積層体が、ロール状に巻き取られたロール106を準備する。そして、図示のとおり、ロール106から保護層50を剥離する保護層剥離工程(A)を行う。剥離した保護層50は、図示のとおり、巻き取ってロール107とする。
そして、化学処理工程(架橋工程)(3)の後(化学処理工程(架橋工程)(3)を行わなかった場合は乾燥工程(2)の後)、他の層30上に粘接着層40が積層された粘接着層付き積層体の粘接着層40側を、低屈折率層20に貼り合わせる、貼り合わせ工程(B)を行う。このようにして、図1に示した構造の積層フィルム1Aを、長尺状の積層フィルムとして得ることができる。製造した積層フィルム1Aは、巻き取りロール105により巻き取る。また、さらに、積層フィルム1Aから基材10を剥離する基材剥離工程(C)(図示せず)を行い、図1に示した構造の積層フィルム1Bを得ても良い。剥離した基材10は、例えば、巻き取りロール(図示せず)により巻き取ることができる。
図4に、マイクログラビア法(マイクログラビアコート法)の塗工装置およびそれを用いた前記低屈折率層の形成方法の一例を模式的に示す。なお、同図は、断面図であるが、見易さのため、ハッチを省略している。
図示のとおり、この装置を用いた方法における各工程は、図3と同様、基材10を、ローラによって一方向に搬送しながら行う。搬送速度は、特に限定されず、例えば、1〜100m/分、3〜50m/分、5〜30m/分である。
まず、送り出しローラ201から基材10を繰り出して搬送しながら、基材10にゾル粒子液20’’を塗工する塗工工程(1)を行う。ゾル20粒子液’’の塗工は、図示のとおり、液溜め202、ドクター(ドクターナイフ)203およびマイクログラビア204を用いて行う。具体的には、液溜め202に貯留されているゾル粒子液20’’を、マイクログラビア204表面に付着させ、さらに、ドクター203で所定の厚さに制御しながら、マイクログラビア204で基材10表面に塗工する。なお、マイクログラビア204は、例示であり、これに限定されるものではなく、他の任意の塗工手段を用いても良い。
つぎに、乾燥工程(2)を行う。具体的には、図示のとおり、オーブンゾーン210中に、ゾル粒子液20’’が塗工された基材10を搬送し、オーブンゾーン210内の加熱手段211により加熱してゾル粒子液20’’を乾燥する。加熱手段211は、例えば、図2と同様でも良い。また、例えば、オーブンゾーン210を複数の区分に分けることにより、乾燥工程(2)を複数の工程に分け、後の乾燥工程になるほど乾燥温度を高くしても良い。乾燥工程(2)の後に、化学処理ゾーン220内で、化学処理工程(3)を行う。化学処理工程(3)においては、例えば、乾燥後の塗工膜20’が光活性触媒を含む場合、基材10の上下に配置したランプ(光照射手段)221で光照射する。または、例えば、乾燥後の塗工膜20’が熱活性触媒を含む場合、ランプ(光照射装置)221に代えて熱風器(加熱手段)を用い、基材10の下方に配置した熱風器(加熱手段)221で、基材10を加熱する。この架橋処理により、塗工膜20’中の前記粉砕物同士の化学的結合が起こり、低屈折率層20が形成される。また、前述のとおり、本発明において、化学処理工程(架橋工程)(3)は、任意であり、行わなくても良い。例えば、図3での説明と同様に、乾燥工程(2)により低屈折率層20を形成した後に、低屈折率層20を、長尺状の樹脂フィルム等(図示せず)により被覆して保護しても良い。前記樹脂フィルムは、例えば、後述する貼り合わせ工程(B)の直前に低屈折率層20から剥離しても良い。
一方、低屈折率層および粘接着層以外の他の層30上に粘接着層40が積層され、さらに粘接着層40が保護層(セパレータ)50で被覆された粘接着層付き積層体が、ロール状に巻き取られたロール261を準備する。そして、図示のとおり、ロール261から保護層50を剥離する保護層剥離工程(A)を行う。剥離した保護層50は、図示のとおり、巻き取ってロール271とする。
そして、化学処理工程(架橋工程)(3)の後(化学処理工程(架橋工程)(3)を行わなかった場合は乾燥工程(2)の後)、他の層30上に粘接着層40が積層された粘接着層付き積層体の粘接着層40側を、低屈折率層20に貼り合わせる、貼り合わせ工程(B)を行う。このようにして、図1に示した構造の積層フィルム1Aを、長尺状の積層フィルムとして得ることができる。製造した積層フィルム1Aは、巻き取りロール251により巻き取る。また、さらに、積層フィルム1Aから基材10を剥離する基材剥離工程(C)(図示せず)を行い、図1に示した構造の積層フィルム1Bを得ても良い。剥離した基材10は、例えば、巻き取りロール(図示せず)により巻き取ることができる。
[4.積層フィルムの用途]
本発明の積層フィルムは、本発明の低屈折率層を含むことにより、例えば、空気層に代わる低屈折率層として用いることができる。さらに、本発明によれば、前記低屈折率層上に前記他の層(例えば、偏光板、プリズムシート、位相差フィルム等)を積層させるので、本発明の低屈折率層に、前記他の層が有する機能を付与することができる。本発明の積層フィルムは、例えば、画像表示装置用等の光学部材として用いることができるが、その用途は、特に限定されない。
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
[参考例1:ゾル液の調製]
(1)ケイ素化合物のゲル化
DMSO 2.2gに、ケイ素化合物の前駆体であるMTMSを0.95g溶解させた。前記混合液に、0.01mol/Lのシュウ酸水溶液を0.5g添加し、室温で30分撹拌を行うことでMTMSを加水分解して、トリス(ヒドロキシ)メチルシランを生成した。
DMSO 7.7gに、28%濃度のアンモニア水0.38g、および純水0.2gを添加した後、さらに、前記加水分解処理した前記混合液を追添し、室温で15分撹拌することで、トリストリス(ヒドロキシ)メチルシランのゲル化を行い、ゲル状ケイ素化合物を得た。
(2)熟成処理
前記ゲル化処理を行った混合液を、そのまま、40℃で20時間インキュベートして、熟成処理を行った。
(3)粉砕処理
つぎに、前記熟成処理したゲル状ケイ素化合物を、スパチュラを用いて数mm〜数cmサイズの顆粒状に砕いた。そこに、イソブチルアルコール 40gを添加し、軽く撹拌した後、室温で6時間静置して、ゲル中の溶媒および触媒をデカンテーションした。同様のデカンテーション処理を3回繰り返し、溶媒置換を完了した。そして、前記混合液中の前記ゲル状ケイ素化合物を粉砕処理(高圧メディアレス粉砕)した。前記粉砕処理(高圧メディアレス粉砕)は、ホモジナイザー(商品名 UH−50、エスエムテー社製)を使用し、5ccのスクリュー瓶に、前記溶媒置換を完了したゲル状化合物1.85gおよびイソブチルアルコール 1.15gを秤量した後、50W、20kHzの条件で2分間の粉砕で行った。
前記粉砕処理によって、前記混合液中の前記ゲル状ケイ素化合物が粉砕したことにより、前記混合液は、前記粉砕物のゾル液となった。前記混合液に含まれる前記粉砕物の粒度バラツキを示す体積平均粒子径を、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(日機装社製、UPA-EX150型)にて確認したところ、0.50〜0.70であった。
[実施例1]
以下のようにして、長尺状の基材(樹脂フィルム)上に本発明の低屈折率層が積層された本発明の積層フィルムロールを製造した。
まず、参考例1で得られたゾル液(塗工液)を、バーコート法により、ポリエチレンテレフタレート(PET)製樹脂フィルム(100m長)の表面に塗布(塗工)して、塗工膜を形成した。この時の前記塗工膜のWet厚み(乾燥させる前の厚み)は、約27μmであった。前記塗工膜を、温度100℃で1分処理して乾燥し、基材(前記PET製樹脂フィルム)上に本発明の低屈折率層が形成された基材付き低屈折率層を得た。
一方、他の層(日東電工株式会社製、商品名:輝度向上フィルム付偏光板)上に粘着剤(綜研化学株式会社製、商品名SKダイン)をDry厚み(乾燥厚み)12μmで塗布して粘接着層を形成し、粘接着層付き積層体を得た。前記粘接着層は、後述の貼り合わせ工程直前まで、保護層(セパレータ、三菱樹脂株式会社製樹脂フィルム、商品名:ダイアフォイルMRF38)により被覆して保護した。
そして、前記粘接着層付き積層体から前記保護層を剥離し(保護層剥離工程)、前記粘接着層付き積層体の前記粘接着層側を、前記基材付き低屈折率層における前記低屈折率層に貼り合わせた(貼り合わせ工程)。このようにして、本実施例の積層フィルムロールを得た。この積層フィルムロールは、図1の積層フィルム1Aと同様に、基材上に、低屈折率層、粘接着層および他の層が、前記順序で積層されていた。
[実施例2]
参考例1で得られたゾル液0.75gに対し、さらに、光塩基発生剤(和光純薬工業株式会社:商品名WPBG266)の1.5%濃度MEK(メチルエチルケトン)溶液を0.062g、ビス(トリメトキシシリル)エタンの5%濃度MEK溶液を0.036gの比率で添加し、塗工液を得た。この塗工液を、実施例1と同様に塗工し乾燥させた。さらに、乾燥後の塗工膜に、波長360nmの光を用いて300mJ/cmの光照射量(エネルギー)でUV照射し、基材(前記PET製樹脂フィルム)上に本発明の低屈折率層が形成された基材付き低屈折率層を得た。この基材付き低屈折率層を、実施例1で用いた基材付き低屈折率層に代えて用いたこと以外は実施例1と同様にして、本実施例の積層フィルムロールを得た。
[比較例]
実施例1で用いた基材付き低屈折率層の低屈折率層側に、実施例1で用いた粘着剤を塗付し、形成した粘接着層を実施例1で用いた保護層(セパレータ)で被覆して、積層フィルムの製造に用いることを試みた。その結果、粘着剤を塗付することは出来たが、保護層(セパレータ)を剥離する際に、その剥離衝撃で低屈折率層が凝集破壊または基材から剥離され、積層フィルムの製造に用いることができなかった。
なお、実施例1および2の積層フィルムにおいて、低屈折率層の屈折率および基材に対する投錨力(粘着ピール強度)を、前述の方法により測定した。その結果を、下記表1にまとめて示す。
Figure 2017064954
以上、説明したとおり、本発明の積層フィルムの製造方法によれば、前記他の層上に前記粘接着層が積層された粘接着層付き積層体の前記粘接着層側を前記低屈折率層に貼り合わせる。このため、前記粘接着層上に前記粘接着層を塗付する工程、および、前記低屈折率層上から保護層を剥がす工程を必要としないので、これらの工程により低屈折率層が破壊されることが無い。このため、本発明の積層フィルムの製造方法および本発明の画像表示装置の製造方法によれば、低屈折率層を破壊することなく、前記低屈折率層と他の層とを粘接着層を介して積層させることが可能である。本発明の積層フィルムは、本発明の低屈折率層を含むことにより、例えば、空気層に代わる低屈折率層として用いることができる。さらに、本発明によれば、前記低屈折率層上に前記他の層(例えば、偏光板、プリズムシート、位相差フィルム等)を積層させるので、本発明の低屈折率層に、前記他の層が有する機能を付与することができる。本発明の積層フィルムは、例えば、画像表示装置用等の光学部材として用いることができるが、その用途は、特に限定されない。
10 基材
20 低屈折率層
20’ 塗工膜(前駆層)
20’’ ゾル粒子液
30 他の層
40 粘接着層
50 保護層(セパレータ)
101 送り出しローラ
102 塗工ロール
110 オーブンゾーン
111 熱風器(加熱手段)
120 化学処理ゾーン
121 ランプ(光照射手段)または熱風器(加熱手段)
130a 粘接着層塗工ゾーン
130 中間体形成ゾーン
131a 粘接着層塗工手段
131 熱風器(加熱手段)
105 巻き取りロール
106、107 ロール
201 送り出しローラ
202 液溜め
203 ドクター(ドクターナイフ)
204 マイクログラビア
210 オーブンゾーン
211 加熱手段
220 化学処理ゾーン
221 ランプ(光照射手段)または熱風器(加熱手段)
230a 粘接着層塗工ゾーン
230 中間体形成ゾーン
231a 粘接着層塗工手段
231 熱風器(加熱手段)
251 巻き取りロール
261、271 ロール

Claims (9)

  1. 積層フィルムの製造方法であって、
    前記積層フィルムは、屈折率が1.25以下である低屈折率層上に粘接着層が積層され、前記粘接着層上に、さらに、前記低屈折率層および前記粘接着層以外の他の層が積層された積層フィルムであり、
    前記製造方法は、前記他の層上に前記粘接着層が積層された粘接着層付き積層体の前記粘接着層側を前記低屈折率層に貼り合わせる、貼り合わせ工程を含むことを特徴とする製造方法。
  2. 前記粘接着層付き積層体は、前記粘接着層が保護層で被覆されており、
    前記貼り合わせ工程に先立ち、前記保護層を前記粘接着層から剥離する保護層剥離工程を含む請求項1記載の製造方法。
  3. 製造される前記積層フィルムは、さらに、基材を含み、
    前記基材上に前記低屈折率層が積層され、
    さらに、前記低屈折率層上に前記粘接着層および前記他の層が積層されている請求項1または2記載の製造方法。
  4. 製造される前記積層フィルムは、前記低屈折率層の前記基材に対する粘着ピール強度が10N/25mm以下である請求項3記載の製造方法。
  5. さらに、前記貼り合わせ工程後に、前記低屈折率層から前記基材を剥離する基材剥離工程を含む請求項3または4記載の製造方法。
  6. 前記低屈折率層において、微細な空隙構造を形成する一種類または複数種類の構成単位同士が化学的に結合している請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記構成単位が、粒子状、繊維状、および平板状からなる群から選択される少なくとも一つの形状の構成単位である請求項6記載の製造方法。
  8. 製造される前記積層フィルムが、長尺状の積層フィルムロールである請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 積層フィルムを含む画像表示装置の製造方法であって、
    前記積層フィルムを、請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法により製造することを特徴とする製造方法。
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