本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(拡散反射性能を有する波長選択性の光学フィルムの例)
2.第2の実施形態(拡散反射性能を有する半透過性の光学フィルムの例)
3.第3の実施形態(光散乱体をさらに備えた光学フィルムの例)
4.第4の実施形態(自己洗浄効果層をさらに備えた光学フィルムの例)
5.第5の実施形態(ビースにより拡散反射面を形成した例)
6.第6の実施形態(ブラインド装置に光学フィルムを適用した例)
7.第7の実施形態(ロールスクリーン装置に光学フィルムを適用した例)
8.第8の実施形態(建具に光学フィルムを適用した例)
<1.第1の実施形態>
[光学フィルムの構成]
図1Aは、第1の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。図1Bは、第1の実施形態に係る光学フィルムを被着体に貼り合わせた例を示す断面図である。光学体としての光学フィルム1は、拡散反射性能を有する波長選択性の光学フィルムである。拡散反射性能を有する波長選択性の光学フィルムは、入射光のうち特定波長帯域の光を拡散反射するのに対して、特定波長帯域以外の光を透過するものである。光学フィルム1は、帯状の形状を有することが好ましい。これにより、光学フィルム1をロール・ツー・ロール工程により容易に作製することができる。また、ロール状などに光学フィルム1を巻回することで、取り扱いを容易とすることができる。
図1Aに示すように、この光学フィルム1は、ランダムな凹凸形状の界面を内部に有する光学層2と、この光学層2の界面に設けられた波長選択反射層3とを備える。光学層2は、ランダムな凹凸形状の第1の面を有する第1の光学層4と、ランダムな凹凸形状の第2の面を有する第2の光学層5とを備える。光学層内部の界面は、対向配置されたランダムな凹凸形状の第1の面と第2の面とにより形成されている。具体的には、光学フィルム1は、ランダムな凹凸面を有する第1の光学層4と、第1の光学層4のランダムな凹凸面上に形成された波長選択反射層3と、波長選択反射層3が形成されたランダムな凹凸面を埋めるように、波長選択反射層3上に形成された第2の光学層5とを備える。光学フィルム1は、太陽光などの光が入射する入射面S1と、この入射面S1より入射した光のうち、光学フィルム1を透過した光が出射される出射面S2とを有する。光学フィルム1は、内壁部材、外壁部材、窓材、壁材などに適用して好適なものである。また、光学フィルム1は、ブラインド装置のスラット(日射遮蔽部材)、およびロールスクリーン装置のスクリーン(日射遮蔽部材)として用いても好適なものである。さらに、光学フィルム1は、障子などの建具(内装部材または外装部材)の採光部に設けられる光学体として用いても好適なものである。
光学フィルム1が、必要に応じて、光学層2の出射面S2に第1の基材4aをさらに備えるようにしてもよい。また、光学フィルム1が、必要に応じて、光学層2の入射面S1に第2の基材5aをさらに備えるようにしてもよい。なお、このように第1の基材4a、および/または第2の基材5aを光学フィルム1に備える場合には、第1の基材4a、および/または第2の基材5aを光学フィルム1に備えた状態において、後述する透明性、および透過色などの光学特性を満たすことが好ましい。
光学フィルム1が、必要に応じて貼合層6をさらに備えるようにしてもよい。この貼合層6は、光学フィルム1の入射面S1および出射面S2のうち、窓材10に貼り合わされる面に形成される。この貼合層6を介して、光学フィルム1は被着体である窓材10の屋内側または屋外側に貼り合わされる。貼合層6としては、例えば、接着剤(例えば、UV硬化型樹脂、2液混合型樹脂)を主成分とする接着層、または粘着剤(例えば、感圧粘着材(PSA:Pressure Sensitive Adhesive))を主成分とする粘着層を用いることができる。貼合層6が粘着層である場合、貼合層6上に形成された剥離層7をさらに備えることが好ましい。このような構成にすることで、剥離層7を剥離するだけで、貼合層6を介して窓材10などの被着体に対して光学フィルム1を容易に貼り合わせることができるからである。
光学フィルム1が、第2の基材5aと、貼合層6および/または第2の光学層5の接合性を向上させる観点から、第2の基材5aと、貼合層6および/または第2の光学層5との間に、プライマー層(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。また、同様の箇所の接合性を向上させる観点から、プライマー層に代えて、またはプライマー層と共に、公知の物理的前処理を施すことが好ましい。公知の物理的前処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理などが挙げられる。
光学フィルム1が、窓材10などの被着体に貼り合わされる入射面S1または出射面S2上、またはその面と波長選択反射層3との間に、バリア層(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。このようにバリア層を備えることで、入射面S1または出射面S2から波長選択反射層3への水分の拡散を低減し、波長選択反射層3に含まれる金属などの劣化を抑制することができる。したがって、光学フィルム1の耐久性を向上させることができる。
光学フィルム1は、表面に耐擦傷性などを付与する観点から、ハードコート層8をさらに備えるようにしてもよい。このハードコート層8は、光学フィルム1の入射面S1および出射面S2のうち、窓材10などの被着体に貼り合わされる面とは反対側の面に形成することが好ましい。光学フィルム1の入射面S1または出射面S2に、防汚性などを付与する観点から、撥水性または親水性を有する層をさらに備えてもよい。このような機能を有する層は、例えば、光学層2上に直接備える、またはハードコート層8などの各種機能層上に備えるようにしてもよい。
光学フィルム1は、光学フィルム1を窓材10などの被着体に容易に貼り合わせ可能にする観点からすると、可撓性を有することが好ましい。ここで、フィルムにはシートが含まれるものとする。すなわち、光学フィルム1には光学シートも含まれものとする。
光学フィルム1は、透明性を有していることが好ましい。透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。第1の光学層4と第2の光学層5との屈折率差が、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.005以下である。屈折率差が0.010を超えると、透過像がぼけて見える傾向がある。0.008を超え0.010以下の範囲であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。0.005を超え0.008以下の範囲であると、明るい物体の周辺を良く見ると像が薄らとぼけているのが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。0.005以下であれば、透過像の明るさに依存せず、鮮明な像が観察される。第1の光学層4および第2の光学層5のうち、窓材10などと貼り合わせる側となる光学層は、粘着剤を主成分としてもよい。このような構成とすることで、粘着材を主成分とする第1の光学層4、または第2の光学層5により光学フィルム1を窓材10などに貼り合わせることができる。なお、このような構成にする場合、粘着剤の屈折率差が上記範囲を満たすことが好ましい。
第1の光学層4と第2の光学層5とは、屈折率などの光学特性が同じであることが好ましい。より具体的には、第1の光学層4と第2の光学層5とが、可視領域において透明性を有する同一材料、例えば同一樹脂材料からなることが好ましい。第1の光学層4と第2の光学層5とを同一材料により構成することで、両者の屈折率が等しくなるので、可視光の透明性を向上させることができる。ただし、同一材料を出発源としても、成膜工程における硬化条件などにより最終的に生成する層の屈折率が異なることがあるので、注意が必要である。これに対して、第1の光学層4と第2の光学層5とを異なる材料により構成すると、両者の屈折率が異なるので、波長選択反射層3を境界として光が屈折し、透過像がぼやける傾向がある。特に、明るい物体の透過像を良く見てみると、像のぼけが顕著に観察される傾向がある。なお、屈折率の値を調整するために、第1の光学層4および/または第2の光学層5に添加剤を混入させてもよい。
第1の光学層4と第2の光学層5は、可視領域において透明性を有することが好ましい。ここで、透明性の定義には2種類の意味があり、光の吸収がないことと、光の散乱がないことである。一般的に透明と言った場合に前者だけを指すことがあるが、第1の実施形態に係る光学フィルム1では両者を備えることが好ましい。現在利用されている再帰反射体は、道路標識や夜間作業者の衣服など、その表示反射光を視認することを目的としているため、例えば散乱性を有していても、下地反射体と密着していれば、その反射光を視認することができる。例えば、画像表示装置の前面に、防眩性の付与を目的として散乱性を有するアンチグレア処理をしても、画像は視認できるのと同一の原理である。しかしながら、第1の実施形態に係る光学フィルム1は、拡散反射する特定の波長帯域以外の光を透過する点に特徴を有しており、この透過波長を主に透過する透過体に接着し、その透過光を観察するため、光の散乱がないことが好ましい。但し、その用途によっては、第2の光学層5に意図的に散乱性を持たせることも可能である。
光学フィルム1は、好ましくは、透過した特定波長以外の光に対して主に透過性を有する剛体、例えば、窓材10に粘着剤などを介して貼り合わせて使用される。窓材10としては、高層ビルや住宅などの建築用窓材、車両用の窓材などが挙げられる。建築用窓材に光学フィルム1を適用する場合、特に東〜南〜西向きの間のいずれかの向き(例えば南東〜南西向き)に配置された窓材10に光学フィルム1を適用することが好ましい。このような位置の窓材10に適用することで、より効果的に熱線を反射することができるからである。光学フィルム1は、単層の窓ガラスのみならず、複層ガラスなどの特殊なガラスにも用いることができる。また、窓材10は、ガラスからなるものに限定されるものではなく、透明性を有する高分子材料からなるものを用いてもよい。光学層2が、可視領域において透明性を有することが好ましい。このように透明性を有することで、光学フィルム1を窓ガラスなどの窓材10に貼り合せた場合、可視光を透過し、太陽光による採光を確保することができるからである。また、貼り合わせる面としてはガラスの内面のみならず、外面にも使用することができる。
また、光学フィルム1は他の熱線カットフィルムと併用して用いることができ、例えば空気と光学フィルム1との界面(すなわち、光学フィルム1の最表面)に光吸収塗膜を設けることもできる。また、光学フィルム1は、ハードコート層、紫外線カット層、表面反射防止層などとも併用して用いることができる。これらの機能層を併用する場合、これらの機能層を光学フィルム1と空気との間の界面に設けることが好ましい。ただし、紫外線カット層については、光学フィルム1よりも太陽側に配置する必要があるため、特に室内の窓ガラス面に内貼り用として用いる場合には、該窓ガラス面と光学フィルム1の間に紫外線カット層を設けることが望ましい。この場合、窓ガラス面と光学フィルム1の間の貼合層中に、紫外線吸収剤を添加するようにしてもよい。
また、光学フィルム1の用途に応じて、光学フィルム1に対して着色を施し、意匠性を付与するようにしてもよい。このように意匠性を付与する場合、透明性を損なわない範囲で第1の光学層4および第2の光学層5の少なくとも一方が、可視領域における特定の波長帯の光を主として吸収する構成とすることが好ましい。
図2は、第1の実施形態に係る光学フィルムの機能を説明するための拡大断面図である。光学フィルム1は、光Lが入射する入射面S1を有する。光学フィルム1は、入射面S1に入射した光Lのうち特定波長帯の光L1を拡散反射するのに対して、特定波長帯以外の光L2を透過する。また、この光学フィルム1は、上記特定波長帯以外の光L2に対して透明性を有し、その透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。また、拡散反射特性に異方性を付与するようにしてもよい。例えば光学フィルム1が帯状の形状を有する場合、その長手方向と短手方向(幅方向ともいう。)との拡散反射特性に異方性を付与するようにしてもよい。
拡散反射する特定の波長帯域の光、および透過させる特定波長帯以外の光は、光学フィルム1の用途により異なる。例えば、窓材10に対して光学フィルム1を適用する場合、拡散反射する特定の波長帯域の光は近赤外光であり、透過させる特定の波長帯域の光は可視光であることが好ましい。具体的には、拡散反射する特定の波長帯域の光が、主に波長帯域780nm〜2100nmの近赤外線であることが好ましい。近赤外線を反射することで、光学フィルム1をガラス窓などの窓材に貼り合わせた場合に、建物内の温度上昇を抑制することができる。したがって、冷房負荷を軽減し、省エネルギー化を図ることができる。ここで、反射するとは、特定の波長帯域、例えば近赤外域における反射率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上であることを示す。透過するとは、特定の波長帯域、例えば可視光域における透過率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上であることを示す。
光学フィルム1において、透過性を持つ波長帯に対する透過像鮮明度に関し、0.5mmの光学くしを用いたときの値が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは75以上である。透過像鮮明度の値が50未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。50以上60未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。60以上75未満であると、明るい物体の周辺を良く見ると像が薄らとぼけているのが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。75以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。明るい物体の周辺を良く見ると像が薄らとぼけているのが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。更に0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの光学くしを用いて測定した透過像鮮明度の値の合計値が、好ましくは230以上、より好ましくは270以上、さらに好ましくは350以上である。透過像鮮明度の合計値が230未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。230以上270未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。270以上350未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。350以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。ここで、透過像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K7105に準じて測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。
光学フィルム1において、透過性を持つ波長帯に対するヘイズが、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下である。ヘイズが6%を超えると、透過光が散乱され、曇って見えるためである。ここで、ヘイズは、村上色彩製HM−150を用いて、JIS K7136で規定される測定方法により測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。光学フィルム1の入射面S1、好ましくは入射面S1および出射面S2は、透過像鮮明度を低下させない程度の平滑性を有する。具体的には、入射面S1および出射面S2の算術平均粗さRaは、好ましくは0.08μm以下、より好ましくは0.06μm以下、さらに好ましくは0.04μm以下である。なお、上記算術平均粗さRaは、入射面の表面粗さを測定し、2次元断面曲線から粗さ曲線を取得し、粗さパラメータとして算出したものである。なお、測定条件はJIS B0601:2001に準拠している。以下に測定装置および測定条件を示す。
測定装置:全自動微細形状測定機 サーフコーダーET4000A(株式会社小坂研究所)
λc=0.8mm、評価長さ4mm、カットオフ×5倍
データサンプリング間隔0.5μm
以下、光学フィルム1を構成する第1の光学層4、第2の光学層5、および波長選択反射層3について順次説明する。
(第1の光学層、第2の光学層)
第1の光学層4は、例えば、波長選択反射層3を支持し、かつ保護するためのものである。第1の光学層4は、光学フィルム1に可撓性を付与する観点から、樹脂材料を主成分とする層であることが好ましい。第1の光学層4の両主面のうち、例えば、一方の面は平滑面であり、他方の面はランダムな凹凸面(第1の面)である。波長選択反射層3は該ランダムな凹凸面上に形成される。
第2の光学層5は、波長選択反射層3が形成された第1の光学層4の第1の面(ランダムな凹凸面)を包埋することにより、波長選択反射層3を保護するためのものである。第2の光学層5は、光学フィルム1に可撓性を付与する観点から、樹脂材料を主成分とする層であることが好ましい。第2の光学層5の両主面のうち、例えば、一方の面は平滑面であり、他方の面はランダムな凹凸面(第2の面)である。第1の光学層4のランダムな凹凸面と第2の光学層5のランダムな凹凸面とは、互いにランダムな凹凸を反転した関係にある。第1の光学層4の凹凸面と第2の光学層5の凹凸面とは、ランダムな凹凸が反転している点のみが異なるので、以下では第1の光学層4の凹凸面について説明する。
第1の光学層4が、100℃での貯蔵弾性率の低下が少なく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異ならない樹脂を主成分としていることが好ましい。具体的には、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下であり、100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上である樹脂を含んでいることが好ましい。なお、第1の光学層4は、1種類の樹脂で構成されているのが好ましいが、2種類以上の樹脂を含んでいてもよい。また、必要に応じて、添加剤が混入されていてもよい。
このように100℃での貯蔵弾性率の低下が少なく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異ならない樹脂を主成分としていると、熱、または熱と加圧とを伴うプロセスが第1の光学層4のランダムな凹凸面(第1の面)を形成後に存在する場合でも、設計した界面形状をほぼ保つことができる。これに対して、100℃での貯蔵弾性率の低下が大きく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異なる樹脂を主成分としていると、設計した界面形状からの変形が大きくなり、光学フィルム1にカールが生じたりする。
ここで、熱を伴うプロセスには、アニール処理などのように直接的に光学フィルム1またはその構成部材に対して熱を加えるようなプロセスのみならず、薄膜の成膜時、および樹脂組成物の硬化時などに、成膜面が局所的に温度上昇して間接的にそれらに対して熱を加えるようなプロセスや、エネルギー線照射により原盤の温度が上昇し、間接的に光学フィルムに熱を加えるようなプロセスも含まれる。また、上述した貯蔵弾性率の数値範囲を限定することにより得られる効果は、樹脂の種類に特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、およびエネルギー線照射型樹脂のいずれでも得ることができる。
第1の光学層4の貯蔵弾性率は、例えば以下のようにして確認することができる。第1の光学層4の表面が露出している場合には、その露出面の貯蔵弾性率を微小硬度計を用いて測定することにより確認することができる。また、第1の光学層4の表面に第1の基材4aなどが形成されている場合には、第1の基材4aなどを剥離して、第1の光学層4の表面を露出させた後、その露出面の貯蔵弾性率を微小硬度計を用いて測定することにより確認することができる。
高温下での弾性率の低下を抑制する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂にあっては、側鎖の長さおよび種類などを調整する方法が挙げられ、熱硬化型樹脂、およびエネルギー線照射型樹脂にあっては、架橋点の量および架橋材の分子構造などを調整する方法が挙げられる。但し、このような構造変更によって樹脂材料そのものに求められる特性が損なわれないようにすることが好ましい。例えば、架橋剤の種類によっては室温付近での弾性率が高くなり、脆くなってしまったり、収縮が大きくなりフィルムが湾曲したり、カールしたりすることがあるので、架橋剤の種類を所望とする特性に応じて適宜選択することが好ましい。
第1の光学層4が、結晶性高分子材料を主成分として含んでいる場合には、ガラス転移点が、製造プロセス中の最高温度より大きく、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が少ない樹脂を主成分としていることが好ましい。これに対して、ガラス転移点が、室温25℃以上、製造プロセス中の最高温度以下の範囲内にあり、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が大きい樹脂を用いると、製造プロセス中に、設計した理想的な界面形状を保持することが困難になる。
第1の光学層4が、非晶性高分子材料を主成分として含んでいる場合には、融点が、製造プロセス中の最高温度より大きく、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が少ない樹脂を主成分としていることが好ましい。これに対して、融点が、室温25℃以上、製造プロセス中の最高温度以下の範囲内にあり、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が大きい樹脂を用いると、製造プロセス中に、設計した理想的な界面形状を保持することが困難になる。
ここで、製造プロセス中の最高温度とは、製造プロセス中における第1の光学層4のランダムな凹凸面(第1の面)の最高温度を意味している。上述した貯蔵弾性率の数値範囲、およびガラス転移点の温度範囲は、第2の光学層5も満たしていることが好ましい。
すなわち、第1の光学層4、および第2の光学層5の少なくとも一方が、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である樹脂を含んでいることが好ましい。室温25℃において光学フィルム1に可撓性を付与することができるので、ロール・ツー・ロールでの光学フィルム1の製造が可能となるからである。
第1の基材4a、および第2の基材5aは、例えば、透明性を有している。基材の形状としては、光学フィルム1に可撓性を付与する観点から、フィルム状を有することが好ましいが、特にこの形状に限定されるものではない。第1の基材4a、および第2の基材5aの材料としては、例えば、公知の高分子材料を用いることができる。公知の高分子材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、特にこれらの材料に限定されるものではない。第1の基材4a、および第2の基材5aの厚さは、生産性の観点から38〜100μmであることが好ましいが、この範囲に特に限定されるものではない。第1の基材4a、および第2の基材5aは、エネルギー線透過性を有することが好ましい。これにより、後述するように、第1の基材4a、または第2の基材5aと波長選択反射層3との間に介在させたエネルギー線硬化型樹脂に対して、第1の基材4a、または第2の基材5a側からエネルギー線を照射し、エネルギー線硬化型樹脂を硬化させることができるからである。
第1の光学層4、および第2の光学層5は、例えば、透明性を有する。第1の光学層4、および第2の光学層5は、例えば、樹脂組成物を硬化することにより得られる。樹脂組成物としては、製造の容易性の観点からすると、光または電子線などにより硬化するエネルギー線硬化型樹脂、または熱により硬化する熱硬化型樹脂を用いることが好ましい。エネルギー線硬化型樹脂としては、光により硬化する感光性樹脂組成物が好ましく、紫外線により硬化する紫外線硬化型樹脂組成物が最も好ましい。樹脂組成物は、第1の光学層4、または第2の光学層5と波長選択反射層3との密着性を向上させる観点から、リン酸を含有する化合物、コハク酸を含有する化合物、ブチロラクトンを含有する化合物をさらに含有することが好ましい。リン酸を含有する化合物としては、例えばリン酸を含有する(メタ)アクリレート、好ましくはリン酸を官能基に有する(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。コハク酸を含有する化合物としては、例えば、コハク酸を含有する(メタ)アクリレート、好ましくはコハク酸を官能基に有する(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。ブチロラクトンを含有する化合物としては、例えば、ブチロラクトンを含有する(メタ)アクリレート、好ましくはブチロラクトンを官能基に有する(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。
紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを含有している。また、紫外線硬化型樹脂組成物が、必要に応じて、光安定剤、難燃剤、レベリング剤および酸化防止剤などをさらに含有するようにしてもよい。
アクリレートとしては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーを用いることが好ましい。このモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどを用いることができる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基のいずれかを意味するものである。ここで、オリゴマーとは、分子量500以上60000以下の分子をいう。
光重合開始剤としては、公知の材料から適宜選択したものを使用できる。公知の材料としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラキノン誘導体などを単独で、または併用して用いることができる。重合開始剤の配合量は、固形分中0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると、光硬化性が低下し、実質的に工業生産に適さない。一方、10質量%を超えると、照射光量が小さい場合に、塗膜に臭気が残る傾向にある。ここで、固形分とは、硬化後のハードコート層12を構成する全ての成分をいう。具体的には例えば、アクリレート、および光重合開始剤などを固形分という。
樹脂はエネルギー線照射や熱などによって構造を転写できるものが好ましく、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、熱可塑性樹脂など上述の屈折率の要求を満たすものであればどのような種類の樹脂を使用しても良い。
硬化収縮を低減するために、オリゴマーを添加してもよい。硬化剤としてポリイソシアネートなどを含んでもよい。また、第1の光学層4、および第2の光学層5との密着性を考慮して水酸基やカルボキシル基、リン酸基を有するような単量体、多価アルコール類、カルボン酸、シラン、アルミ、チタンなどのカップリング剤や各種キレート剤などを添加しても良い。
樹脂組成物が、架橋剤をさらに含んでいることが好ましい。この架橋剤としては、環状の架橋剤を用いることが特に好ましい。架橋剤を用いることで、室温での貯蔵弾性率を大きく変化させることなく、樹脂を耐熱化することができるからである。なお、室温での貯蔵弾性率が大きく変化すると、光学フィルム1が脆くなり、ロール・ツー・ロール工程などによる光学フィルム1の作製が困難となる。環状の架橋剤としては、例えば、ジオキサングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどを挙げることができる。
第1の基材4a、または第2の基材5aは、第1の光学層4、または第2の光学層5より水蒸気透過率が低いことが好ましい。例えば、第1の光学層4をウレタンアクリレートのようなエネルギー線硬化型樹脂で形成する場合には、第1の基材4aを第1の光学層4より水蒸気透過率が低く、かつ、エネルギー線透過性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂により形成することが好ましい。これにより、入射面S1または出射面S2から波長選択反射層3への水分の拡散を低減し、波長選択反射層3に含まれる金属などの劣化を抑制することができる。したがって、光学フィルム1の耐久性を向上させることができる。なお、厚み75μmのPETの水蒸気透過率は、10g/m2/day(40℃、90%RH)程度である。
第1の光学層4および第2の光学層5の少なくとも一方が、極性の高い官能基を含み、その含有量が第1の光学層4と第2の光学層5とで異なることが好ましい。第1の光学層4と第2の光学層5との両方が、リン酸化合物(例えば、リン酸エステル)を含み、第1の光学層4と第2の光学層5とにおける上記リン酸化合物の含有量が異なることが好ましい。リン酸化合物の含有量は、第1の光学層4と第2の光学層5とにおいて、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上異なる。
第1の光学層4、および第2の光学層5の少なくとも一方が、リン酸化合物を含む場合、波長選択反射層3は、リン酸化合物を含む第1の光学層4または第2の光学層5と接する面に、酸化物もしくは窒化物、酸窒化物を含むことが好ましい。波長選択反射層3は、リン酸化合物を含む第1の光学層4または第2の光学層5と接する面に、酸化亜鉛(ZnO)または酸化ニオブを含む層を有することが特に好ましい。これらの光学層と波長選択反射層3との密着性が向上するためである。また、波長選択反射層3がAg等の金属を含む場合に、腐食防止効果が高いからである。また、この波長選択反射層3は、Al、Gaなどのドーパントを含有していても良い。金属酸化物層をスパッタ法等で形成する場合に、膜質や平滑性が向上するからである。
第1の光学層4、および第2の光学層5の少なくとも一方が、光学フィルム1や窓材10などに意匠性を付与する観点からすると、可視領域における特定の波長帯の光を吸収する特性を有することが好ましい。樹脂中に分散させる顔料は、有機系顔料および無機系顔料のいずれであってもよいが、特に顔料自体の耐候性が高い無機系顔料とすることが好ましい。具体的には、ジルコングレー(Co、NiドープZrSiO4)、プラセオジムイエロー(PrドープZrSiO4)、クロムチタンイエロー(Cr、SbドープTiO2またはCr、WドープTiO2)、クロムグリーン(Cr2O3など)、ピーコックブルー((CoZn)O(AlCr)2O3)、ビクトリアグリーン((Al、Cr)2O3)、紺青(CoO・Al2O3・SiO2)、バナジウムジルコニウム青(VドープZrSiO4)、クロム錫ピンク(CrドープCaO・SnO2・SiO2)、陶試紅(MnドープAl2O3)、サーモンピンク(FeドープZrSiO4)などの無機顔料、アゾ系顔料やフタロシアニン系顔料などの有機顔料が挙げられる。
(反射層)
部分反射層である波長選択反射層3は、例えば、入射面に入射した光のうち、特定波長帯の光を拡散反射するのに対して、特定波長帯以外の光を透過するものである。波長選択反射層3は、例えば、積層膜、透明導電層、または機能層である。また、積層膜、透明導電層、および機能層を2以上組み合わせて波長選択反射層3としてもよい。波長選択反射層3の平均膜厚は、好ましくは20μm、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。波長選択反射層3の平均膜厚が20μmを超えると、透過光が屈折する光路が長くなり、透過像が歪んで見える傾向がある。反射層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、ディップコーティング法、ダイコーティング法などを用いることができる。
以下、積層膜、透明導電層、および機能層について順次説明する。
(積層膜)
積層膜は、例えば、屈折率の異なる低屈折率層および高屈折率層を交互に積層してなる積層膜である。または、積層膜は、例えば、赤外領域において反射率の高い金属層と、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する高屈折率層とを交互に積層してなる積層膜である。高屈折率層としては、光学透明層、または透明導電層を用いることができる。
赤外領域において反射率の高い金属層は、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの単体を2種以上含む合金を主成分とする。そして、実用性の面を考慮すると、これらのうちのAg系、Cu系、Al系、Si系またはGe系の材料が好ましい。また、金属層の材料として合金を用いる場合には、金属層は、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgSi、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCa、AgPdMg、AgPdFe、AgまたはSiBなどを主成分とすることが好ましい。また、金属層の腐食を抑えるために、金属層に対してTi、Ndなどの材料を添加することが好ましい。特に、金属層の材料としてAgを用いる場合には、上記材料を添加することが好ましい。
光学透明層は、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する光学透明層である。光学透明層は、例えば酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタンなどの高誘電体を主成分とする。透明導電層は、例えば、ZnO系酸化物、インジウムドープ酸化錫などの主成分とする。なお、ZnO系酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウム(Ga)およびアルミニウム(Al)をドープした酸化亜鉛(GAZO)、Alをドープした酸化亜鉛(AZO)、およびガリウム(Ga)をドープした酸化亜鉛(GZO)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
また、積層膜に含まれる高屈折率層の屈折率は、1.7以上2.6以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.8以上2.6以下、更に好ましくは1.9以上2.6以下である。これにより、クラックが発生しない程度の薄い膜で可視光領域での反射防止が実現できるからである。ここで、屈折率は、波長550nmにおけるものである。高屈折率層は、例えば、金属の酸化物を主成分とする層である。金属の酸化物としては、層の応力を緩和し、クラックの発生を抑制する観点からすると、酸化亜鉛以外の金属酸化物を用いることが好ましい場合もある。特に、酸化ニオブ(例えば、五酸化ニオブ)、酸化タンタル(例えば、五酸化タンタル)、および酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。高屈折率層の平均膜厚は、好ましくは10nm以上120nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上80nm以下である。平均膜厚が10nm未満であると、可視光が反射しやすくなる傾向がある。一方、平均膜厚が120nmを超えると、透過率の低下やクラックが発生しやすくなる傾向がある。
なお、積層膜は、無機材料からなる薄膜に限定されるものではなく、高分子材料からなる薄膜や高分子中に微粒子などを分散した層を積層して構成してもよい。また、これら光学透明層成膜時の下層金属の酸化劣化を防ぐ目的で、成膜する光学透明層の界面に数nm程度のTiなどの薄いバッファー層を設けてもよい。ここで、バッファー層とは、上層成膜時に、自らが酸化することで下層である金属層などの酸化を抑制するための層である。
(透明導電層)
透明導電層は、可視領域において透明性を有する導電性材料を主成分とする透明導電層である。透明導電層は、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ含有体、インジウムドープ酸化錫、インジウムドープ酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化錫などの透明導電物質を主成分とする。もしくはこれらのナノ粒子や金属などの導電性を持つ材料のナノ粒子、ナノロッド、ナノワイヤーを樹脂中に高濃度に分散させた層を用いても良い。
(機能層)
機能層は、外部刺激により反射性能などが可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする。クロミック材料は、例えば、熱、光、侵入分子などの外部刺激により構造を可逆的に変化させる材料である。クロミック材料としては、例えば、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料、ガスクロミック材料、エレクトロクロミック材料を用いることができる。
フォトクロミック材料とは、光の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。フォトクロミック材料は、例えば紫外線などの光照射により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。フォトクロミック材料としては、例えばCr、Fe、NiなどをドープしたTiO2、WO3、MoO3、Nb2O5などの遷移金属酸化物を用いることができる。また、これらの層と屈折率の異なる層を積層することで波長選択性を向上させることもできる。
サーモクロミック材料とは、熱の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。フォトクロミック材料は、加熱により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。サーモクロミック材料としては、例えばVO2などを用いることができる。また、転移温度や転移カーブを制御する目的で、W、Mo、Fなどの元素を添加することもできる。また、VO2などのサーモクロミック材料を主成分とする薄膜を、TiO2やITOなどの高屈折率体を主成分とする反射防止層で挟んだ積層構造としてもよい。
または、コレステリック液晶などのフォトニックラティスを用いることもできる。コレステリック液晶は層間隔に応じた波長の光を選択的に反射することができ、この層間隔は温度によって変化するため、加熱により、反射率や色などの物性を可逆的に変化させることができる。この時、層間隔の異なるいくつかのコレステリック液晶層を用いて反射帯域を広げることも可能である。
エレクトロクロミック材料とは、電気により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる材料である。エレクトロクロミック材料としては、例えば、電圧の印加により構造を可逆的に変化させる材料を用いることができる。より具体的には、エレクトロクロミック材料としては、例えば、プロトンなどのドープまたは脱ドープにより、反射特性が変わる反射型調光材料を用いることができる。反射型調光材料とは、具体的には、外部刺激により、光学的な性質を透明な状態と、鏡の状態、および/またはその中間状態に制御することができる材料である。このような反射型調光材料としては、例えば、マグネシウムおよびニッケルの合金材料、マグネシウムおよびチタンの合金材料を主成分とする合金材料、WO3やマイクロカプセル中に選択反射性を有する針状結晶を閉じ込めた材料などを用いることができる。
具体的な機能層の構成としては、例えば、第2の光学層上に、上記合金層、Pdなどを含む触媒層、薄いAlなどのバッファー層、Ta2O5などの電解質層、プロトンを含むWO3などのイオン貯蔵層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。または、第2の光学層上に透明導電層、電解質層、WO3などのエレクトロクロミック層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。これらの構成では、透明導電層と対向電極の間に電圧を印加することにより、電解質層に含まれるプロトンが合金層にドープまたは脱ドープされる。これにより、合金層の透過率が変化する。また、波長選択性を高めるために、エレクトロクロミック材料をTiO2やITOなどの高屈折率体と積層することが望ましい。また、その他の構成として、第2の光学層上に透明導電層、マイクロカプセルを分散した光学透明層、透明電極が積層された構成を用いることができる。この構成では、両透明電極間に電圧を印加することにより、マイクロカプセル中の針状結晶が配向した透過状態にしたり、電圧を除くことで針状結晶が四方八方を向き、波長選択反射状態にすることができる。
[光学フィルムの製造装置]
図3は、第1の実施形態に係る光学フィルムを製造するための製造装置の一構成例を示す概略図である。図3に示すように、この製造装置は、ラミネートロール41、42、ガイドロール43、塗布装置45、および照射装置46を備える。
ラミネートロール41、42は、反射層付き光学層9と、第2の基材5aとをニップ可能に構成されている。ここで、反射層付き光学層9は、第1の光学層4の一主面上に波長選択反射層3を成膜したものである。なお、反射層付き光学層9として、第1の光学層4の波長選択反射層3が成膜された面と反対側の他主面上に第1の基材4aが形成されていてもよい。この例では、第1の光学層4の一主面上に波長選択反射層3が成膜され、他主面上に第1の基材4aが形成された場合が示されている。ガイドロール43は、帯状の光学フィルム1を搬送できるように、この製造装置内の搬送路に配置されている。ラミネートロール41、42およびガイドロール43の材質は特に限定されるものではなく、所望とするロール特性に応じてステンレスなどの金属、ゴム、シリコーンなどを適宜選択して用いることができる。
塗布装置45は、例えば、コーターなどの塗布手段を備える装置を用いることができる。コーターとしては、例えば、塗布する樹脂組成物の物性などを考慮して、グラビア、ワイヤバー、およびダイなどのコーターを適宜使用することができる。照射装置46は、例えば、電子線、紫外線、可視光線、またはガンマ線などの電離線を照射する照射装置である。この例では、照射装置46として紫外線を照射するUVランプを用いた場合が図示されている。
[原盤の製造方法]
ランダムな微細凹凸形状を有する原盤21を作製する方法としては、例えば以下の(1)〜(9)の方法を用いることができることができる。これらの(1)〜(9)の方法により、それぞれ異なる微細凹凸形状を有する原盤21を得ることができる。
(1)母材表面を粗面化する方法
この方法は、ガラス、金属、セラミックス、プラスチックスなどからなる原盤作製用母材の平滑面を砥粒もしくはサンドブラストなどにより研磨したり、またはエッチングしたりすることにより粗面化する方法である。母材表面に形成される凹凸のピッチは砥粒の粒径、ストロークやブラストの力および回転数で制御でき、またエッチングで粗化や平滑化して制御することができる。また、形状の制御は砥粒を用いる場合、揺動軌跡により制御することが可能で、サンドブラストやエッチングの場合は、母材への吹き付け角度を考慮することにより制御をすることができる。
サンドブラスト法を用いることで、面内方向のうち直交する2方向で異なる拡散角を持つ、または面内方向のうち直交する2方向で拡散特性に異方性を持つ光学フィルム1を作製することができる。このような光学フィルム1を作製するためのサンドブラスト方法としては、例えば、特開2005−250459号公報に開示の方法を用いることができる。
(2)母材表面を彫刻する方法
この方法は、例えば、ワックスの表面を尖った針(例えばダイアモンド針)で原盤作製用母材表面を彫刻する方法である。また、彫刻した原盤作製用母材表面上に金属を蒸着等により堆積させて、表面を強化するようにしてもよい。
(3)母材表面に気体または液体から微小な固体を凝集させる方法
この方法は、例えば原盤作製用母材表面に、蒸着を行う方法であり、母材の温度を低く設定するなどの、グレインサイズが大きくなるような条件を選択して蒸着を行うことにより、原盤作製用母材表面上に微小な凹凸を形成することができる。また、メッキにおいてメッキ液中に通常は添加される安定化剤やその他の添加剤の添加量を減らすような条件を設定することにより、同様に微小な固体を原盤作製用母材表面に形成することが可能である。また、固体溶液あるいは分散液を極めて微細な霧状の状態(ミスト)で原盤作製用母材表面に噴霧して、あるいは、上記ミストの中を原盤作製用母材を通過させることにより原盤作製用母材表面にミストを付着させ、その後溶媒あるいは分散媒を蒸発させることにより、原盤作製用母材表面に微小な固体を凝集させる方法も採用可能である。
(4)母材表面に微小粒子を敷き詰め固定する方法
微小粒子としては、粉体、ビーズ、砂、微小結晶体、微生物(菌、ウィルス、プランクトン等)等を挙げることができる。これらの微小粒子を、高分子バインダーと共に塗布することにより原盤作製用母材表面に微小粒子を敷き詰めることができる。また、微小粒子の粒径、微小粒子とバインダーの割合、塗布量等を種々変更することにより、表面凹凸のピッチ、凹凸の高さ等を調節することができる。また、上記の微生物とは、例えば、微生物が増殖する際に生ずるコロニーが微小凹凸を構成するものであり、菌種により、さまざまな形状のコロニーが形成される。
(5)塗膜層に発生する皺(レチキュレーション)を利用する方法
この方法は、例えば、高分子塗膜材料を有機溶媒に溶解した塗料を、原盤作製用母材表面に塗布し、乾燥条件を特定の条件に制御しつつ、溶媒の除去を行うことにより、原盤作製用母材表面に微細な皺、すなわち、微小な凹凸形状を有する表面を得る方法である。また、形成した塗膜に熱膨張あるいは吸水を制御条件下で行わせて皺を形成する方法を挙げることもできる。また、多層膜で各層の化学反応として異なる機構の材料を用いて各層の膨張収縮率を制御することにより発生する皺を微小凹凸として利用することもできる。
(6)種々の既存材料を用いる方法
この方法は、紙、皮、布、陶磁器、板ガラス、木板、岩石の表面の他、生物例えば昆虫、魚、貝等の外皮、ウロコ、外骨格、殻等をそのまま利用する方法である。
(7)フォトポリマーを露光、現像する方法
この方法は、原盤作製用母材表面にフォトポリマーを塗布した後、不均一パターンに露光し現像した面を利用する方法である。不均一パターンに露光するには、印刷用の網点パターンや、コヒーレント光の干渉でできるスペックル(以下、レーザー干渉法と称する。
)を利用することができる。レーザー干渉法としては、例えば、特許第4460163号公報に開示の方法を用いることができる。
(8)フォトリソグラフィおよびエッチングによる方法
この方法は、フォトリソグラフィおよびエッチング法により原盤作製用母材表面にランダムな凹凸形状を形成する方法である。
(9)上記方法の組合せ
この方法は、上記の(1)〜(8)のいずれかの方法により不規則な微小凹凸形状を有する表面を形成あるいは選択した後、さらにその表面に(1)〜(8)のいずれかの方法を再度施す方法である。
[光学フィルムの製造方法]
以下、図4A〜図8Cを参照して、第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法の一例について説明する。なお、以下に示す製造プロセスの一部または全部は、生産性を考慮して、ロール・ツー・ロールにより行われることが好ましい。但し、原盤の作製工程は除くものとする。
(原盤作製工程)
まず、図4Aに示すように、ランダムな微細凹凸形状を有する原盤21を形成する。原盤21の形状としては、例えば、平板状、円柱状、円筒状などが挙げられる。原盤表面に微細凹凸形状を形成する方法として、例えば、上記(1)〜(9)のうちのいずれかの方法を用いることができ、これらの方法を2以上組み合わせるようにしてもよい。これらの方法のうち、サンドブラスト法、レーザー干渉法、またはフォトリソグラフィおよびエッチングによる方法を用いることが好ましく、これらの方法を2以上組み合わせるようにしてもよい。ここで、例として、サンドブラスト法、およびフォトリソグラフィおよびエッチング法について説明する。
(サンドブラスト法)
図5A、図5Bは、サンドブラスト法による原盤表面の加工方法の一例を説明するための略線図である。
サンドブラスト加工は、サンドブラスト装置(図示せず)のブラストガン61から研削材62を射出させて、原盤作製用母材21aの表面に吹き付け、研削材62が原盤作製用母材21aの表面に衝突することにより、該原盤作製用母材21aの表面に凹凸が形成される加工である。
サンドブラスト装置は、ブラストガン61から研削材62を空気、窒素などの加圧ガスで射出させて、被加工材である原盤の原盤作製用母材21aに吹き付けて、その表面加工を行う装置である。この例では、原盤作製用母材21aを回転させながら、以下に示す所定の条件でサンドブラスト加工を行う。
研削材62は、樹脂、ガラス、金属、セラミックなどからなる球形あるいは多角形などの角のある粒子が好ましく、とくに角のある粒子が好ましい。例えば、ガラスビーズ、ジルコニア粒子、スチールグリッド、アルミナ粒子、シリカ粒子などが挙げられる。また、研削材62の平均粒径は、1〜1000μmが好ましく、5〜600μmがより好ましい。さらに5〜50μmとするとなお好ましい。研削材62の粒子1個の重さは、0.002〜8mgが好ましい。
原盤作製用母材21aは、サンドブラスト加工を行うのに適した材料からなる。この材料は樹脂あるいは金属、例えば、アルミニウム、銅、スチールなどがよく、とくにアルミニウムが好適である。原盤作製用母材21aの大きさは、例えば、帯状などを有する光学フィルム1の幅に対応できる幅サイズに選ばれる。
研削材62の吹き付け条件は、図5において、原盤作製用母材21aの主面に対して研削材62の吹き付け角度(俯角)がすべて90°未満となるようにすることが好ましい。詳しくは、原盤作製用母材21aの主軸とブラストガン61とのなす角度θは、好ましくは0〜60°、より好ましくは0〜20°、さらにより好ましくは0〜10°である。
例えば、この例では、角度θを10°にて吹き付けを行うことで研削材62の吹き付け方向とそれに直角な方向の溝のピッチを変えることができ、さらに吹き付け方向の表面粗さプロファイルを光拡散シートの主面軸(法線)に対して非対称にすることが可能である。
原盤作製用母材21aに衝突した研削材62は、そのエネルギーを失いながら原盤作製用母材21aの表面を切削、あるいは変形させた後に原盤作製用母材21aの上方へある角度をもって飛散するが、上記吹き付け条件とすることにより、研削材62は原盤作製用母材21aにある角度をもって衝突するため、その衝突によって生じた変形形状は横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)とで異なる。例えば、図1の条件では、X軸方向の変形形状(くぼみ)の方がY軸方向のそれよりも長くなる。言いかえれば、X軸方向の表面粗さの方がY軸方向の表面粗さよりもピッチが長くなる。このピッチなどの表面粗さのパラメータは原盤作製用母材21a、研削材62、サンドブラスト加工条件(研削材62の吹き付け条件など)の各パラメータにより調整することが可能である。例えば、粒径の大きい研削材を用いた場合はX,Y軸方向共に大きなピッチの粗さが実現でき、より密度の大きい研削材を使用すれば溝の深い形状を実現することができる。
また、原盤作製用母材21aにおける加工形状として、研削材62の噴射方向の加工形状は噴射時のエネルギーを決めるブラストガン61の加圧空気の圧力、ブラストガン61の角度、ブラストガン61と原盤作製用母材21aとの距離、研削材62の形状、密度、硬度、原盤作製用母材の材質などで制御できる。噴射方向と垂直方向の加工形状については、研削材の形状、硬度によって制御することが可能である。さらに、研削材62がエネルギーを失いながら原盤作製用母材21aを変形させる軌跡と、反発力により原盤作製用母材21aから飛散していく時の軌跡は対称ではないため、原盤作製用母材21aの主面軸に対して非対称の表面形状を形成する事が可能である。
また、上記吹き付け条件により製造した原盤を使用することにより、光学フィルム1を縦方向と横方向とで拡散角の異なる、あるいは縦横方向に拡散特性に異方性のあるものとすることができる。例えば、図5の研削材62の吹き付け条件では、反射光または透過光の拡散角はX方向に狭く、Y方向に広くなり、拡散特性としてX方向のX1側に輝度ピークが軸ずれしたものとなる。
あるいは、反射光または透過光の拡散角はX方向に狭く、Y方向に広くなり、更に入射角0°で拡散面に照射した光の前記拡散面からの拡散光輝度の角度依存性を測定した時に最大輝度軸が光拡散シート主面の法線方向に対してX1側に傾いており、該最大輝度軸に対して前記輝度分布が非対称なものとなる。
また、ブラストガン61を原盤作製用母材21aに対して寝かせるほど、すなわち角度θを小さくするほど、後述する光拡散シートの拡散角の縦横比率を大きくすることができ、拡散特性の異方性の効果も大きい。
なお、研削材62は原盤作製用母材21aに対して角度θを中心として角度幅αをもってブラストガン61から射出される。言いかえると研削材62は原盤作製用母材に角度β1〜β2の範囲内で入射し衝突する。角度幅αは通常、10°程度である。
原盤作製用母材21aのより小さい領域を加工する場合には角度幅αをより小さくするか、あるいはブラストガン61と原盤作製用母材21aとの距離Lを小さくすればよい。より広い領域を加工するためには、ブラストガン61または原盤作製用母材21aをなめらかに移動させながらサンドブラスト加工を行えばよい。
この例では、ブラストガン61から研削材62を出射しながら、ブラストガン61を原盤作製用母材21a上でスキャンさせて、原盤作製用母材21aの主面全面に対してサンドブラスト加工を行う。
(フォトリソグラフィおよびエッチングにより原盤表面を加工する方法)
図6A〜図6Fは、フォトリソグラフィおよびエッチングにより原盤表面の加工方法の一例を説明するための工程図である。
(レジスト層形成工程)
まず、被加工体である原盤作製用母材21aの表面上に、レジスト層71を形成する(図6A参照)。被加工体である原盤作製用母材21aの形状としては、例えば、板状、シート状、フィルム状、ブロック状、円柱状、円筒状、円環状などが挙げられる。レジスト層71の材料としては、例えば、無機レジストおよび有機レジストのいずれも用いることができる。なお、原盤作製用母材21aが円柱状または円筒状を有する場合には、それらの外周面にレジスト層71を形成することが好ましい。
(露光工程)
次に、例えば、レーザー光などの光L1をレジスト層71に照射することにより、露光部71aをランダムにレジスト層71に形成する(図6B参照)。レジスト層71に形成される露光部71aの形状としては、例えば、円形状またはほぼ円形状を挙げることができる。
(現像工程)
次に、露光部71aが形成されたレジスト層71を現像する。これにより、露光部71aに応じた開口部71bがレジスト層71に形成される(図6C参照)。開口部71bは、異なる半径を有する円形状であることが好ましい。なお、図6Cでは、レジストとしてポジ型レジストを用い、露光部に開口部71bを形成する例が示されているが、レジストはこの例に限定されるものではない。すなわち、レジストとしてネガ型レジストを用い、露光部を残すようにしてもよい。
(エッチング工程)
次に、開口部71bが形成されたレジスト層71をマスクとして、原盤作製用母材21aの表面をエッチングする。これにより、異なる深さおよび/または異なる半径を有する凹部72が、原盤作製用母材21aの表面に形成される(図6D参照)。凹部72の形状は、部分球面形状であることが好ましい。部分球面形状とは、球形またはほぼ球形の一部を切り出した形状である。エッチングとしては、例えば、ドライエッチングおよびウエットエッチングのいずも用いることができるが、設備が簡易である点からすと、ウエットエッチングを用いることが好ましい。また、エッチングとしては、例えば、等方性エッチングおよび異方性エッチングのいずれも用いることができ、所望とするランダムな凹凸形状に応じて適宜選択することが好ましい。
(レジスト剥離工程)
次に、必要に応じて、アッシングなどにより、原盤作製用母材21aの表面に形成されたレジスト層71を剥離する。
(メッキ工程)
次に、必要に応じて、原盤21の凹凸面にメッキ処理を施し、ニッケルメッキなどのメッキ層を形成するようにしてもよい。
以上により、ランダムな凹凸形状を有する原盤21が得られる。
(転写工程)
次に、図4Bに示すように、例えば溶融押し出し法または転写法などを用いて、上記原盤のランダムな凹凸形状をフィルム状の樹脂材料に転写する。転写法としては、型にエネルギー線硬化型樹脂を流し込み、エネルギー線を照射して硬化させる方法、樹脂に熱や圧力を加え、形状を転写する方法、または樹脂フィルムをロールから供給し、熱を加えながら型の形状を転写する方法(ラミネート転写法)などが挙げられる。これにより、図4Cに示すように、一主面にランダムな凹凸面を有する第1の光学層4が形成される。
また、図4Cに示すように、第1の基材4a上に、第1の光学層4を形成するようにしてもよい。この場合には、例えば、フィルム状の第1の基材4aをロールから供給し、該基材上にエネルギー線硬化型樹脂を塗布した後に型に押し当て、型の形状を転写し、エネルギー線を照射して樹脂を硬化させる方法が用いられる。なお、樹脂は、架橋剤をさらに含んでいることが好ましい。室温での貯蔵弾性率を大きく変化させることなく、樹脂を耐熱化することができるからである。
(成膜工程)
次に、図7Aに示すように、その第1の光学層4の一主面上に波長選択反射層3を成膜する。波長選択反射層3の成膜方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ウェットコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられる。次に、図7Bに示すように、必要に応じて、波長選択反射層3に対してアニール処理31を施す。アニール処理の温度は、例えば100℃以上250℃以下の範囲内である。
(包埋工程)
次に、図7Cに示すように、未硬化状態の樹脂22を波長選択反射層3上に塗布する。樹脂22としては、例えば、エネルギー線硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂などを用いることができる。エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線硬化樹脂が好ましい。次に、図8Aのように、樹脂22上に第2の基材5aを被せることにより、積層体を形成する。次に、図8Bに示すように、例えばエネルギー線32または加熱32により樹脂22を硬化させるとともに、積層体に対して圧力33を加える。エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、可視光線、ガンマ線、電子線などを用いることができ、生産設備の観点から、紫外線が好ましい。積算照射量は、樹脂の硬化特性、樹脂や基材11の黄変抑制などを考慮して適宜選択することが好ましい。積層体に加える圧力は、0.01MPa以上1MPa以下の範囲内であることが好ましい。0.01MPa未満であると、フィルムの走行性に問題が生じる。一方、1MPaを超えると、ニップロールとして金属ロールを用いる必要があり、圧力ムラが生じ易く好ましくない。以上により、図8Cに示すように、波長選択反射層3上に第2の光学層5が形成され、光学フィルム1が得られる。
ここで、図3に示す製造装置を用いて、光学フィルム1の形成方法について具体的に説明する。まず、図示しない基材供給ロールから第2の基材5aを送出し、送出された第2の基材5aは、塗布装置45の下を通過する。次に、塗布装置45の下を通過する第2の基材5a状に、塗布装置45により電離線硬化樹脂44を塗布する。次に、電離線硬化樹脂44が塗布された第2の基材5aをラミネートロールに向けて搬送する。一方、図示しない光学層供給ロールから反射層付き光学層9を送出し、ラミネートロール41、42に向けて搬送する。
次に、第2の基材5aと反射層付き光学層9との間に気泡が入らないように、搬入された第2の基材5aと反射層付き光学層9とをラミネートロール41、42により挟み合わせ、第2の基材5aに対して反射層付き光学層9をラミネートする。次に、反射層付き光学層9によりラミネートされた第2の基材5aを、ラミネートロール41の外周面に沿わせながら搬送するとともに、照射装置46により第2の基材5a側から電離線硬化樹脂44に電離線を照射し、電離線硬化樹脂44を硬化させる。これにより、第2の基材5aと反射層付き光学層9とが電離線硬化樹脂44を介して貼り合わされ、目的とする長尺の光学フィルム1が作製される。次に、作製された帯状の光学フィルム1を図示しない巻き取りロールにより巻き取る。これにより、帯状の光学フィルム1が巻回された原反が得られる。
硬化した第1の光学層4は、上述の第2の光学層形成時のプロセス温度をt℃としたときに、(t−20)℃における貯蔵弾性率が3×107Pa以上であることが好ましい。ここで、プロセス温度tとは、例えば、ラミネートロール41の加熱温度である。第1の光学層4は、例えば、第1の基材4a上に設けられ、第1の基材4aを介してラミネートロール41に沿うように搬送されるため、実際に第1の光学層4にかかる温度は、経験的に(t−20)℃程度であることが分かっている。したがって、第1の光学層4の(t−20)℃における貯蔵弾性率を3×107Pa以上にすることにより、熱、または熱と加圧とにより光学層内部の界面のランダムな凹凸形状が変形することを抑制することができる。
また、第1の光学層4は、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下であることが好
ましい。これにより、室温において可撓性を光学フィルムに付与することができる。したがって、ロール・ツー・ロールなどの製造工程により光学フィルム1を作製することが可能となる。
なお、プロセス温度tは、光学層または基材の使用樹脂の耐熱性を考慮すると、200℃以下であることが好ましい。ただし、耐熱性の高い樹脂を用いることにより、プロセス温度tを200℃以上に設定することも可能である。
第1の実施形態によれば、ランダムな凹凸形状を有する拡散反射面とすることで、回折パターンの発生を抑制することができる。また、サンドブラスト法、レーザー干渉法、またはフォトリソグラフィおよびエッチングによる方法などを用いて、ランダムな凹凸面を有する原盤21を作製することで、原盤加工の日数を大幅に削減できる。
これに対して、光学フィルムの反射光の方向を制御するために、設計通りに規則的な凹凸形状を有する原盤、例えば幅100cm以上で直径20cm以上のロール原盤を作製するためには、膨大な時間を有し、コストがかかる。また、加工時間中に地震等のトラブルがあると、原盤が使用出来なくなるなどの問題もある。
また、原盤形状を転写した拡散反射面上に、部分透過性の反射層である波長選択反射層3を形成することで、日射の一部を上空に反射することが可能となる。更に、第1の光学層4とほぼ同一の屈折率を有する第2の光学層5により、第1の光学層4の凹凸形状を包埋し、第2の光学層5の表面を平滑にした場合には、透過像も鮮明に視認することが可能となる。
<2.第2の実施形態>
図9Aは、第2の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。第2の実施形態において、第1の実施形態と同一または対応する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。第2の実施形態に係る光学フィルム1は、拡散反射性能を有する半透過性の光学フィルムであり、部分反射層として半透過層52を備える点において、第1の実施形態のものとは異なっている。拡散反射性能を有する半透過性の光学フィルムは、入射光うちの一部の光を拡散反射するのに対して、残り光を透過するものである。
図9Bは、第2の実施形態に係る光学フィルムの機能を説明するための拡大断面図である。光学フィルム1は、光Lが入射する入射面S1を有する。光学フィルム1は、入射面S1に入射した光Lのうちの一部の光LAを拡散反射するのに対して、残りの光LBを透過する。拡散反射する光は、主に波長帯域400nm以上2100nm以下の光であることが好ましい。
部分反射層である半透過層52は、例えば、赤外光のみならず可視光も同時に遮蔽する半透過性の反射層である。半透過性の反射層は、例えば、可視領域および近赤外領域において半透過性を有している。半透過性の反射層としては、例えば、半導体性物質を含む薄い金属層、金属窒化層などが挙げられ、反射防止、色調調整、化学的濡れ性向上、または環境劣化に対する信頼性向上などの観点からすると、上記反射層を酸化層、窒化層、または酸窒化層などと積層した積層構造とすることが好ましい。
可視領域および赤外領域において反射率の高い金属層として、例えばAu、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの単体を2種以上含む合金を主成分とする材料が挙げられる。そして、実用性の面を考慮すると、これらのうちのAg系、Cu系、Al系、Si系またはGe系の材料が好ましい。また、金属層の腐食を抑えるために、金属層に対してTi、Ndなどの材料を添加することが好ましい。また金属窒化層としては、例えば、TiN、CrN、WNなどが挙げられる。
半透過層52の平均膜厚は、例えば、2nm以上40nm以下の範囲とすることが可能であるが、可視領域および近赤外領域において半透過性を有する膜厚であればよく、これに限定されるものではない。ここで、半透過性とは、波長500nm以上1000nm以下における透過率が5%以上70%以下、好ましくは10%以上60%以下、更に好ましくは15%以上55%以下であることを示す。また、半透過層とは、波長500nm以上1000nm以下における透過率が5%以上70%以下、好ましくは10%以上60%以下、更に好ましくは15%以上55%以下である反射層を示す。
<3.第3の実施形態>
第3の実施形態において、第1の実施形態と同一または対応する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。第3の実施形態に係る光学フィルム1は、特定波長の光を拡散反射するのに対して、特定波長以外の光を散乱させる点において、第1の実施形態のものとは異なっている。光学フィルム1は、入射光を散乱する光散乱体を備えている。この散乱体は、例えば、光学層2の表面、光学層2の内部、および波長選択反射層3と光学層2との間のうち、少なくとも1箇所に設けられている。光散乱体は、好ましくは、波長選択反射層3と第1の光学層4との間、第1の光学層4の内部、および第1の光学層4の表面のうちの少なくとも一箇所に設けられている。光学フィルム1を窓材などの支持体に貼り合わせる場合、室内側および室外側のどちらにも適用可能である。光学フィルム1を室外側に対して貼り合わせる場合、波長選択反射層3と窓材などの支持体との間にのみ、特定波長以外の光を散乱させる光散乱体を設けることが好ましい。波長選択反射層3と入射面との間に光散乱体が存在すると、拡散反射特性が失われてしまうからである。また、室内側に光学フィルム1を貼り合せる場合には、その貼り合わせ面とは反対側の出射面と、波長選択反射層3との間に光散乱体を設けることが好ましい。
図10Aは、第3の実施形態に係る光学フィルム1の第1の構成例を示す断面図である。図10Aに示すように、第1の光学層4は、樹脂と微粒子11とを含んでいる。微粒子11は、第1の光学層4の主構成材料である樹脂とは異なる屈折率を有している。微粒子11としては、例えば有機微粒子および無機微粒子の少なくとも1種を用いることができる。また、微粒子11としては、中空微粒子を用いてもよい。微粒子11としては、例えば、シリカ、アルミナなどの無機微粒子、またはスチレン、アクリルやそれらの共重合体などの有機微粒子が挙げられるが、シリカ微粒子が特に好ましい。
図10Bは、第3の実施形態に係る光学フィルム1の第2の構成例を示す断面図である。図10Bに示すように、光学フィルム1は、第1の光学層4の表面に光拡散層12をさらに備えている。光拡散層12は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の例と同様のものを用いることができる。
図10Cは、第3の実施形態に係る光学フィルム1の第3の構成例を示す断面図である。図10Cに示すように、光学フィルム1は、波長選択反射層3と第1の光学層4との間に光拡散層12をさらに備えている。光拡散層12は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の例と同様のものを用いることができる。
第3の実施形態によれば、赤外線などの特定波長帯の光を拡散反射し、可視光などの特定波長対以外の光を散乱させることができる。したがって、光学フィルム1を曇らせて、光学フィルム1に対して意匠性を付与することができる。
<4.第4の実施形態>
図11は、第4の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。第4の実施形態において、第1の実施形態と同一または対応する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。第4の実施形態は、光学フィルム1の入射面S1および出射面S2のうち、被着体に貼り合わされる面とは反対側の露出面上に、洗浄効果を発現する自己洗浄効果層51をさらに備えている点において、第1の実施形態とは異なっている。自己洗浄効果層51は、例えば、光触媒を含んでいる。光触媒としては、例えば、TiO2を用いることができる。
上述したように、光学フィルム1は入射光の一部を透過する点に特徴を有している。光学フィルム1を屋外や汚れの多い部屋などで使用する際には、表面に付着した汚れにより光が散乱され透過性および反射性が失われてしまうため、表面が常に光学的に透明であることが好ましい。そのため、表面が撥水性や親水性などに優れ、表面が自動的に洗浄効果を発現することが好ましい。
第4の実施形態によれば、光学フィルム1が自己洗浄効果層51を備えているので、撥水性や親水性などを入射面に付与することができる。したがって、入射面に対する汚れなどの付着を抑制し、拡散反射特性の低減を抑制できる。
<5.第5の実施形態>
図12は、本発明の第5の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。第5の実施形態において、第1の実施形態と対応する箇所には同一の符号を付す。図10に示すように、第3の実施形態は、第1の光学層4のランダムな凹凸形状をビース53により形成している点において、第1の実施形態とは異なっている。
第2の光学層5の一主面には、この一主面からビース53の一部が突出するように複数のビース53が埋め込まれている。そして、複数のビース53が埋め込まれた第2の光学層5の一主面に、焦点層54、波長選択反射層3、第1の光学層4が順次積層されている。ビース31は、例えば球状を有する。ビース31は、透明性を有することが好ましい。ビース53は、例えば、ガラスなどの無機材料、または高分子樹脂などの有機材料を主成分とする。
第2の光学層5からの複数のビース53の突出量が異なっている、および/または複数のビース53の大きさが異なっていることが好ましい。これにより、第1の光学層4の波長選択反射層3の形状をランダムに変化させることができるからである。
<6.第6の実施形態>
上述の第1の実施形態では、本発明を窓材などに適用する場合を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、窓材以外の内装部材や外装部材などに適用することが可能である。また、本発明は壁や屋根などのように固定された不動の内装部材および外装部材のみならず、季節や時間変動などに起因する太陽光の光量変化に応じて、太陽光の透過量および/または反射量を内装部材または外装部材を動かして調整し、屋内などの空間に取り入れ可能な装置にも適用可能である。第6の実施形態では、このような装置の一例として、複数の日射遮蔽部材からなる日射遮蔽部材群の角度を変更することにより、日射遮蔽部材群による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置(ブラインド装置)について説明する。
図13は、第6の実施形態に係るブラインド装置の一構成例を示す斜視図である。図13に示すように、日射遮蔽装置であるブラインド装置は、ヘッドボックス203と、複数のスラット(羽)202aからなるスラット群(日射遮蔽部材群)202と、ボトムレール204とを備える。ヘッドボックス203は、複数のスラット202aからなるスラット群202の上方に設けられている。ヘッドボックス203からラダーコード206、および昇降コード205が下方に向かって延びており、これらのコードの下端にボトムレール204が吊り下げられている。日射遮蔽部材であるスラット202aは、例えば、細長い矩形状を有し、ヘッドボックス203から下方に延びるラダーコード206により所定間隔で吊り下げ支持されている。また、ヘッドボックス203には、複数のスラット202aからなるスラット群202の角度を調整するためのロッドなどの操作手段(図示省略)が設けられている。
ヘッドボックス203は、ロッドなどの操作手段の操作により応じて、複数のスラット202aからなるスラット群202を回転駆動することにより、室内などの空間に取り込まれる光量を調整する駆動手段である。また、ヘッドボックス203は、昇降操作コード207などの操作手段の適宜操作に応じて、スラット群202を昇降する駆動手段(昇降手段)としての機能も有している。
図14Aは、スラットの第1の構成例を示す断面図である。図14Aに示すように、スラット202は、基材211と、光学フィルム1とを備える。光学フィルム1は、基材211の両主面のうち、スラット群202を閉じた状態において外光が入射する入射面側(例えば窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。光学フィルム1と基材211とは、例えば、接着層または粘着層などの貼合層により貼り合される。
基材211の形状としては、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材211の材料としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。光学フィルム1としては、上述の第1〜第5の実施形態に係る光学フィルム1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
図14Bは、スラットの第2の構成例を示す断面図である。図14Bに示すように、第2の構成例は、光学フィルム1をスラット202aとして用いるものである。光学フィルム1は、ラダーコード205により支持可能であるとともに、支持した状態において形状を維持できる程度の剛性を有していることが好ましい。
<7.第7の実施形態>
第7の実施形態では、日射遮蔽部材を巻き取る、または巻き出すことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置の一例であるロールスクリーン装置について説明する。
図15Aは、第7の実施形態に係るロールスクリーン装置の一構成例を示す斜視図である。図15Aに示すように、日射遮蔽装置であるロールスクリーン装置301は、スクリーン302と、ヘッドボックス303と、芯材304とを備える。ヘッドボックス303は、チェーン205などの操作部を操作することにより、スクリーン302を昇降可能に構成されている。ヘッドボックス303は、その内部にスクリーンを巻き取り、および巻き出すための巻軸を有し、この巻軸に対してスクリーン302の一端が結合されている。また、スクリーン302の他端には芯材304が結合されている。スクリーン302は可撓性を有し、その形状は特に限定されるものではなく、ロールスクリーン装置301を適用する窓材などの形状に応じて選択することが好ましく、例えば矩形状に選ばれる。
図15Bは、スクリーン302の一構成例を示す断面図である。図15Bに示すように、スクリーン302は、基材311と、光学フィルム1とを備え、可撓性を有していることが好ましい。光学フィルム1は、基材211の両主面のうち、外光を入射させる入射面側(窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。光学フィルム1と基材311とは、例えば、接着層または粘着層などの貼合層により貼り合される。なお、スクリーン302の構成はこの例に限定されるものではなく、光学フィルム1をスクリーン302として用いるようにしてもよい。
基材311の形状としては、例えば、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材311としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。光学フィルム1としては、上述の第1〜第5の実施形態に係る光学フィルム1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<8.第8の実施形態>
第8の実施形態では、拡散反射性能を有する光学体を採光部に備える建具(内装部材または外装部材)に対して本発明を適用した例について説明する。
図16Aは、第8の実施形態に係る建具の一構成例を示す斜視図である。図16Aに示すように、建具401は、その採光部404に光学体402を備える構成を有している。具体的には、建具401は、光学体402と、光学体402の周縁部に設けられる枠材403とを備える。光学体402は枠材403により固定され、必要に応じて枠材403を分解して光学体402を取り外すことが可能である。建具401としては、例えば障子を挙げることができるが、本発明はこの例に限定されるものではなく、採光部を有する種々の建具に適用可能である。
図16Bは、光学体の一構成例を示す断面図である。図16Bに示すように、光学体402は、基材411と、光学フィルム1とを備える。光学フィルム1は、基材411の両主面のうち、外光を入射させる入射面側(窓材に対向する面側)に設けられる。光学フィルム1と基材311とは、接着層または粘着層などの貼合層などにより貼り合される。なお、障子402の構成はこの例に限定されるものではなく、光学フィルム1を光学体402として用いるようにしてもよい。
基材411は、例えば、可撓性を有するシート、フィルム、または基板である。基材411としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空欄に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来建具の光学体として公知のものを用いることができる。光学フィルム1としては、上述の第1〜第5の実施形態に係る光学フィルム1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、反射層の平均膜厚は以下のようにして測定した。まず、FIB(Focused Ion Beam)により光学フィルムをカットして断面を形成した。次に、TEM(Transmission Electron Microscope)を用いて、入射面または出射面の垂線方向の反射層の膜厚を測定した。この測定を光学フィルムの任意の10箇所で繰り返し行い、その測定値を単純に平均(算術平均)して平均膜厚を求めた。
(実施例1)
まず、下地の形状フィルム(形状樹脂層)として、レーザー干渉法により作製したPOC(Physical Optics Coorporation)社製の透過型異方性拡散シート(商品名:LSD40×20°、アクリルシートタイプ)(フィルムへの垂直入射光に対する透過光のFHWMがフィルム面内第1の軸とそれに垂直な軸に対してそれぞれ40°、20°)を準備した。次に、この形状フィルム上に、スパッタ法によりAg/Bi=99.0at%/1.0at%の組成を有する合金ターゲットを使用してAgBiを平均膜厚で12nm製膜した。
次に、上記下地フィルム上に透過型異方性拡散シート(商品名:LSD40×20°)と屈折率が一致するように調合したUV硬化樹脂を塗布し、厚み75μmのPETフィルム(東洋紡製、A4300)を載置して気泡を押し出した後に、UV光照射することで樹脂を硬化させた。これにより、平滑なPETフィルムと反射層との間の樹脂組成物が硬化され、樹脂層(以下、包埋樹脂層と称する。)が形成された。以上により、目的とする光学フィルムを得た。
(実施例2)
まず、下地の形状フィルム(形状樹脂層)としてPOC社製の透過型拡散シート(商品名:DDS40°)(アクリルタイプ)を用いた以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
(実施例3)
以下の条件で斜めブラスト法により異方性光拡散シート複製用原盤を作製した。
(1)原盤作製用母材:アルミロール(直径20cm)
(2)サンドブラスト条件
・サンドブラスト装置(不二製作所製、型名:SGF−4(A))
・研削材:アルミナ(番手#180、平均粒径:76μm)
・ブラストガンと原盤作製用母材との距離:50mm
・ブラストガンと原盤作製用母材との角度:8°
・圧縮空気圧:0.5MPa
・原盤作製用母材表面への研削材吹き付け状態:図5A、図5Bの状態
・ブラストガンスキャン条件:ロールを回転しながら、図5A、図5BのX方向にピッチ5mmでスキャンした。
次に、厚み75μmのPETフィルム(東洋紡製、A4300)上にウレタンアクリレート(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.533)を塗布し、Roll to Roll法により上記原盤に密着させた状態でPETフィルム側からUV光を照射してウレタンアクリレートを硬化させ、このウレタンアクリレートが硬化されてなる樹脂層とPETフィルムとの積層体を原盤から剥離した。これにより、原盤形状の反転形状が付与された樹脂層(以下、形状樹脂層と称する。)がPETフィルム上に形成された。次に、形状樹脂面上に実施例1と同様にしてスパッタ法によりAgBiを平均膜厚で12nm製膜した。
次に、この反射層上に下記配合の樹脂組成物を塗布し、厚み75μmのPETフィルム(東洋紡製、A4300)を積層させ、ニップロールにより気泡を押し出した後に、UV光照射することで樹脂を硬化させた。これにより、平滑なPETフィルムと反射層との間の樹脂組成物が硬化され、包埋樹脂層が形成された。以上により、目的とする光学フィルムを得た。
<樹脂組成物の配合>
ウレタンアクリレート 99質量部
(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.533)
2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート 1質量部
(共栄社化学製、ライトアクリレートP−1A)
(実施例4)
部分反射層としてAlTiを10nm製膜した以外は、実施例3と同様にして光学フィルムを得た。
(実施例5)
包埋樹脂層の材料として、下記配合の樹脂組成物を使用し、包埋樹脂層と形状樹脂層との屈折率差を0.003とした以外は実施例4と同様にして、光学フィルムを得た。
<樹脂組成物の配合>
ウレタンアクリレート 99質量部
(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.536)
2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート 1質量部
(共栄社化学製、ライトアクリレートP−1A)
(実施例6)
包埋樹脂層の材料として、下記配合の樹脂組成物を使用し、包埋樹脂層と形状樹脂層との屈折率差を0.006とした以外は実施例4と同様にして、光学フィルムを得た。
<樹脂組成物の配合>
ウレタンアクリレート 99質量部
(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.542)
2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート 1質量部
(共栄社化学製、ライトアクリレートP−1A)
(実施例7)
包埋樹脂層の材料として、下記配合の樹脂組成物を使用し、包埋樹脂層と形状樹脂層との屈折率差を0.006とした以外は実施例4と同様にして、光学フィルムを得た。
<樹脂組成物の配合>
ウレタンアクリレート 99質量部
(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.542)
2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート 1質量部
(共栄社化学製、ライトアクリレートP−1A)
(実施例8)
部分反射層(波長選択反射層)として、下層よりGAZO(27nm)/AgNdCu(9nm)/GAZO(88nm)を製膜した以外は実施例3と同様にして、光学フィルムを得た。
(実施例9)
部分反射層(波長選択反射層)として、下層よりGAZO(平均膜厚27nm)/AgNdCu(平均膜厚9nm)/GAZO(平均膜厚88nm)/AgNdCu(平均膜厚9nm)/GAZO(平均膜厚27nm)を製膜した以外は実施例3と同様にして、光学フィルムを得た。
(比較例1)
平滑な表面を有するPETフィルム(東洋紡製A4300、厚み75μm)上に、AlTiを平均膜厚で10nm製膜して、光学フィルムを得た。
(比較例2)
部分反射層(波長選択反射層)としてAlTiを平均膜厚で100nm製膜した以外は実施例3と同様にして、光学フィルムを得た。
(比較例3)
包埋樹脂層の材料として、下記配合の樹脂組成物を使用し、包埋樹脂層と形状樹脂層との屈折率差を0.012とした以外は実施例4と同様にして、光学フィルムを得た。
<樹脂組成物の配合>
ウレタンアクリレート 99質量部
(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.545)
2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート 1質量部
(共栄社化学製、ライトアクリレートP−1A)
(分光透過率・色度の評価)
実施例1〜9、比較例1〜3の光学フィルムの分光透過率を以下のようにして評価した。
可視領域および近赤外領域の分光透過率を島津製作所製のDUV3700により測定した。試料への光線入射角は0°(垂直入射)とし、直線透過光を測定した。その分光透過率波形を図18A、図19A、図20Aに示す。
分光反射率は同一の装置により、試料への光線入射角を8°とし、反射光を積分球で受光して測定した。その分光反射率波形を図18B、図19B、図20Bに示す。
(拡散反射の評価)
実施例1〜9、比較例1〜3の光学フィルムの反射角度分布を以下のようにして評価した。平行度0.5°以下にコリメートされたハロゲン光源501を用い、ハーフミラー502で反射した光を入射光とし、サンプル503に照射し、検出器504により検出を行った。サンプル503は入射光に対し45°傾けて配置し、入射光に垂直な軸で360°回転(φm)しながら、検出器504を0〜90°(θm)の範囲で走査し、波長900〜1550nmの反射強度の平均値を極座標プロットした(図21、図22参照)。評価結果の一例として、実施例1〜3の結果を図23〜図25に示す。なお、拡散反射の異方性がある実施例1、3に関しては、拡散反射光が広角まで広がっている方向をφm≒90°となるよう配置して測定した。また、入射光軸と正反射光軸を含む方位における反射強度をプロットした結果を図26A、図26B、図27に示す。この時、サンプル面に垂直な軸をθ=0°とし、下方向への反射をマイナス方位とした。サンプル503を鉛直面内に配置した時に、水平面より上方に反射する成分が上方反射であり、図22の極座標プロットから計算することができるが、計算方法が複雑になるため、ここでは、入射面内での反射強度分布を表す図26A、図26B、図27のグラフを用いて、簡易的に上方反射率を計算した。図26A、図26B、図27のプロットにおいて、正反射光を除く拡散反射光に対して、ハーフミラー502による強度減少分、迷光による強度上昇分の補正を行った(グラフ中、計算データのプロット参照)。この時、測定光学系の影響で正反射より下方の反射が測定出来ないため、反射強度最大となる軸に対して上下対称の反射分布と仮定してプロットを行った。次に、サンプル面に垂直な軸(θm=45°)より高角側を上方反射とし、上方反射/正反射を除く全反射成分を上方反射率と定義して計算した結果を表に示す。なお、この計算法によると、反射層の種類が異なっていても、上方反射率は形状に依存することが分かる。また、実施例3ではその非対称形状に依存して、拡散反射最大強度方向が軸ずれしているため、この反射方向と正反射方向のφが10°程度異なるが、どちらの軸で計算しても数%の違いであった。
(透過写像鮮明度の評価)
実施例1〜9、比較例1〜3の光学フィルムの透過写像鮮明性を以下のようにして評価した。JIS−K7105に従い、くし幅2.0mm、1.0mm、0.5mm、0.125mmの光学くしを用いて透過写像鮮明度を評価した。評価に使用した測定装置はスガ試験機(株)製の写像性測定器(ICM−1T型)である。次に、くし幅2.0mm、1.0mm、0.5mm、0.125mmの光学くしを用いて測定した透過写像鮮明度の総和を求めた。それらの結果を表1に示す。なお、光源はD65光源を用いた。
(ヘイズの評価)
実施例1〜9、比較例1〜3の光学フィルムのヘイズ評価を以下のようにして評価した。
JIS K7136に準拠した測定条件に基づき、ヘイズメータHM−150(村上色彩技術研究所製)を用いてヘイズの測定を行った。その結果を表1に示す。なお、光源はD65光源を用いた。
(視認性の評価)
実施例1〜9、比較例1〜3の光学フィルムの視認性を以下のようにして評価した。
作製したフィルムを光学透明な粘着剤により3mm厚のガラスに貼合した。次にこのガラスを目から50cm程度離して保持し、ガラス越しに約10mの距離にある隣の建物内部を観察し、以下の基準で評価した。その結果を表1に示す。
○:回折による多重像や曇りなどは見られず、通常の窓と同様に見える
△:通常の使用には問題ないが、鏡面反射体などがあるとその周辺が若干ボケて見える
×:曇っていて、反対側に何があるか分からない
××:反対側が全く見えない
(回折パターンの評価)
実施例1〜9、比較例1〜3の光学フィルムの回折パターンを以下のようにして評価した。
作製したフィルムを光学透明な粘着剤により3mm厚のガラスに貼合した。次に、このガラスを目から50cm程度離して保持し、ガラス越しに約500m程度の距離にある電灯を観察し、その回折パターンを以下の基準で評価した。その結果を表1に示す。
○:フィルムを貼らない時と同等で気にならない
△:電灯の周辺にうっすらと広がりが見えるが、殆ど気にならない
×:電灯の周辺にスポット状の強いパターンが見える
(表面粗さの評価)
斜めブラストにより作製した複製原盤を用いて転写した光学フィルム(実施例3)の表面粗さを以下のようにして評価した。その結果を図17A、図17Bに示す。
触針式表面形状測定器ET−4000(小坂研究所製)を用いて、2次元断面曲線から粗さ曲線を取得し、算術平均粗さRaを算出した。なお、測定条件はJIS B0601:2001に準拠している。以下に測定条件を示す。
λc=0.8mm、評価長さ4mm、カットオフ×5倍
データサンプリング間隔0.5μm
上記評価結果から以下のことがわかった。
X軸方向の表面粗さのピッチPxの方がY軸方向の表面粗さのピッチPyよりも長くなっていた。また、平均凹凸間隔Smとして、X軸方向ではS=0.14、Y軸方向でS=0.08となっていた。
(原盤加工日数の評価)
実施例1〜9の光学フィルムの作製に用いられる複製原盤について、原盤加工に要する日数を以下の基準で評価した。また、比較のために、コーナーキューブ形状を有する複製原盤についても、原盤加工に要する日数を同様の基準で評価した。
○:〜2日(加工中に地震などの発生でトラブルが生じるリスクが低い。また、加工途中でトラブルが生じたとしてもすぐに再加工により原盤を容易に作製することが可能であり、光学フィルムの生産に影響を与えることがない。したがって、リスク管理をする必要が特にない。)
△:3日〜10日(加工中に地震などの発生でトラブルが生じるリスクがある。また、加工途中でトラブルが生じた場合には再加工により原盤を作製することは可能であるが、光学フィルムの生産に影響を与える可能性がある。したがって、リスク管理をすることが好ましい。)
×:11日〜1ヶ月(加工中に地震などの発生でトラブルが生じるリスクが高い。また、加工途中でトラブルが生じた場合には再加工により原盤を作製することは困難であり、光学フィルムの生産に与える影響が大きい。したがって、リスク管理をすることが必要である。)
上記評価結果から以下のことがわかる。
実施例1〜9では、ランダムな凹凸形状を有する形状樹脂層上に、部分反射層である半透過層または波長選択反射層を形成しているので、回折パターンの発生を抑制できている。また、形状樹脂層と包埋樹脂層との屈折率差Δnを0.010以下としているため、透過像鮮明度の値を50以上とすることができる。したがって、光学フィルムの透過像を鮮明にすることができる。
比較例1では、光学フィルムの平坦面に部分反射層を形成しているため、上方反射率が0%となっている。
比較例2では、部分反射層を100nmと厚く形成しているため、光を透過することができない。
比較例3では、形状樹脂層と包埋樹脂層との屈折率差Δnが0.010を超えているため、透過像鮮明度の値が50未満となっている。したがって、光学フィルムの透過像がぼけて見える傾向がある。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限
定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、形状、材料および数値などを用いてもよい。
また、上述の実施形態の各構成は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、上述の実施形態では、ブランインド装置、およびロールスクリーン装置の駆動方式が手動式である場合を例として説明したが、ブランインド装置、およびロールスクリーン装置の駆動方式を電動式としてもよい。
また、上述の実施形態では、光学フィルムを窓材などの被着体に貼り合わせる構成を例として説明したが、窓材などの被着体を光学フィルムの第1の光学層、または第2の光学層自体とする構成を採用するようにしてもよい。これにより、窓材などの光学体に予め拡散反射の機能を付与することができる。
また、上述の実施形態では、光学体が光学フィルムである場合を例として説明したが、光学体の形状はフィルム状に限定されるものではなく、プレート状、ブロック状などでもよい。
上述の実施形態では、本発明を窓材、建具、ブラインド装置のスラット、およびロールスクリーン装置のスクリーンなどの内装部材または外装部材に適用した場合を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、上記以外の内装部材および外装部材にも適用可能である。
本発明に係る光学体が適用される内装部材または外装部材としては、例えば、光学体自体により構成された内装部材または外装部材、拡散反射体が貼り合わされた透明基材などにより構成された内装部材または外装部材などが挙げられる。このような内装部材または外装部材を室内の窓付近に設置することで、例えば、赤外線だけを屋外に拡散反射し、可視光線を室内に取り入れることができる。したがって、内装部材または外装部材を設置した場合にも、室内照明の必要性が低減される。また、内装部材または外装部材による室内側への散乱反射も殆どないため、周囲の温度上昇も抑えることができる。また、視認性制御や強度向上など必要な目的に応じ、透明基材以外の貼り合わせ部材に適用することも可能である。
また、上述の実施形態では、ブラインド装置、およびロールスクリーン装置に対して本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、室内または屋内に設置される種々の日射遮蔽装置に適用可能である。
また、上述の実施形態では、日射遮蔽部材を巻き取る、または巻き出すことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置(例えばロールスクリーン装置)に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、日射遮蔽部材を折り畳むことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置に対しても本発明は適用可能である。このような日射遮蔽装置としては、例えば、日射遮蔽部材であるスクリーンを蛇腹状に折り畳むことで、入射光線の遮蔽量を調整するプリーツスクリーン装置を挙げることができる。
また、上述の実施形態では、本発明を横型ブラインド装置(ベネシアンブラインド装置)に対して適用した例について説明したが、縦型ブラインド装置(バーチカルブラインド装置)に対しても適用可能である。