JP2017039088A - 含油廃水の処理方法及び処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した被処理水から、油分を効率よく安価に除去することが可能な含油廃水の処理方法及び処理装置を提供する。【解決手段】油分を含み、且つ、該油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した被処理水から油分を除去する処理方法であり、被処理水に塩を添加することで、被処理水中に形成されたエマルジョンを油水分離する前処理工程と、被処理水に凝集剤を添加することにより、被処理水中に油分を含むフロックを形成する凝集処理工程と、を順次備える。【選択図】図1
Description
本発明は、含油廃水の処理方法及び処理装置に関し、より詳しくは、油分を含む被処理水から効果的に油分を除去する含油廃水の処理方法及び処理装置に関する。
従来から、含油廃水に対する処理技術として、重力分離や溶剤処理等の様々な技術が提案されており、各種方法で含油廃水中の油分の除去が行われている。ここで、含油廃水の中でも、特に、油滴が廃水中でエマルジョンを形成している場合(水中油滴型エマルジョン)には、粒径の非常に小さな油滴までも除去することが要求されている。このような、水中油滴型エマルジョンが形成された含油廃水の例としては、例えば、石油随伴水が挙げられる。
上記の石油随伴水は、石油や天然ガスの生産に伴って副次的に発生し、油分やガス成分のみならず、塩類、有機物、無機物、重金属類等の種々の成分を含んでいる。このため、石油随伴水を河川や海洋に放流することは、環境負荷が非常に大きく好ましくないことから、石油随伴水については、特に適切に処理することが求められている。さらに、近年においては、高水圧によって地層を破砕することでシェールガスを採掘することが盛んになっていることから、フローバック水として大量に発生する石油随伴水(以下、単に「随伴水」と称することがある)を効率的に処理することが強く求められている。
上記のような石油随伴水等からなる含油廃水を処理する方法としては、例えば、分離膜を用いて油分を除去する処理方法が提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
また、含油廃水を処理する方法として、油分吸着剤を用いて油分を除去する処理方法が提案されている(例えば、特許文献3,4を参照)。
また、含油廃水を処理する方法として、油分吸着剤を用いて油分を除去する処理方法が提案されている(例えば、特許文献3,4を参照)。
さらに、含油廃水を処理する方法として、薬剤を添加することで含油廃水中の油分を凝集させる処理方法も提案されている(例えば、特許文献5,6を参照)。特許文献5,6に記載されたような、薬剤を添加することで、含油廃水中の油分をフロック化して除去する処理方法は、処理装置を簡便な構成とすることができるとともに、処理操作も簡便なものとなるので、効果的な処理方法として広く採用されている。ここで、油分を含むフロックを分離除去する方法に関しては、例えば、特許文献5においては磁気分離法が用いられ、特許文献6においては凝集浮上分離法が用いられているが、添加薬剤としては、PAC(ポリ塩化アルミニウム)等の凝集剤が広く用いられている。
一方、PAC等の凝集剤を用いて石油随伴水等からなる含油廃水を処理する場合、実際の処理を行う現場においては、その処理効率や処理費用等の観点から、油分を含有するフロックの生成を最小限にすることが求められる。このため、従来は、事前に確認試験を行うことで凝集剤の最適添加量を決定し、凝集剤の過剰な添加を抑制する手法が採用されている。しかしながら、含油廃水への凝集剤の添加量は、廃水に含まれる懸濁物や油分の量に依存すると考えられることから、高濃度で油分が含まれる廃水に対しては、凝集剤の添加量を多くせざるを得ないという問題があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した被処理水から、油分を効率よく安価に除去することが可能な含油廃水の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
まず、本発明における第一の発明は、油分を含み、且つ、該油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した被処理水から前記油分を除去する、含油廃水の処理方法であって、前記被処理水に塩を添加することで、前記被処理水中に形成されたエマルジョンを油水分離する前処理工程と、前記被処理水に凝集剤を添加することにより、前記被処理水中に、前記油分を含むフロックを形成する凝集処理工程と、を順次備えることを特徴とする。
上記構成の含油廃水の処理方法によれば、水中油滴型エマルジョンが形成された被処理水中の油分を凝集処理(フロック形成)するにあたり、凝集剤を添加する凝集処理工程の前に、被処理水に塩を添加する前処理工程を備えることにより、予め、エマルジョンの油水分離を促進させる。これにより、エマルジョンを形成する油分の濃度が低下し、凝集処理工程において添加する凝集剤の添加量を削減することができるので、油分を含有するフロックの生成量を低減させることが可能になる。従って、被処理水中から除去された油分を含有するフロックを効率よく処理することができ、処理コストの削減が可能となる。
次に、本発明における第2の発明は、上記構成の含油廃水の処理方法において、前記前処理工程が、前記塩として、前記被処理水中に溶解して陽イオンとして存在可能な塩を添加することを特徴とする。
また、本発明における第3の発明は、上記構成の含油廃水の処理方法において、前記前処理工程が、前記塩として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムのうちの少なくとも何れか1種を添加することを特徴とする。
また、本発明における第3の発明は、上記構成の含油廃水の処理方法において、前記前処理工程が、前記塩として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムのうちの少なくとも何れか1種を添加することを特徴とする。
上記構成の含油廃水の処理方法によれば、前処理工程において、上記の塩を添加することにより、エマルジョンの油水分離をより促進できる。これにより、凝集処理工程における凝集剤の添加量をさらに削減してフロックの生成量を低減させることができるので、油分を含有するフロックを効率よく除去し、処理コストを削減できる効果がより顕著に得られる。
次に、本発明における第4の発明は、上記構成の含油廃水の処理方法において、前記前処理工程が、前記被処理水を用いた事前試験によって前記油水分離が可能な塩濃度を決定した後、該塩濃度に基づいて前記塩の添加量を決定することを特徴とする。
上記構成の含油廃水の処理方法によれば、前処理工程において、事前試験に基づいて塩の添加量を調整して被処理水中における塩濃度を最適化することにより、上記同様、エマルジョンの油水分離をさらに促進できる。これにより、凝集処理工程における凝集剤の添加量及びフロックの生成量を低減させることができ、フロックを効率よく除去して処理コストを削減できる効果がより顕著に得られる。
次に、本発明における第5の発明は、上記構成の含油廃水の処理方法において、前記凝集処理工程が、前記凝集剤として、ポリ塩化アルミニウム及び硫酸バンドのうちの少なくとも何れかを添加し、且つ、ポリマーからなる高分子凝集剤を併用して添加することを特徴とする。
上記構成の含油廃水の処理方法によれば、凝集処理工程において、凝集剤として上記の化合物を添加することにより、凝集剤の添加量を効果的に削減しながらフロックの生成量を低減させることができる。これにより、油分を含有するフロックを効率よく除去して処理コストを削減できる効果がより顕著に得られる。
次に、本発明における第6の発明は、上記構成の含油廃水の処理方法において、前記凝集処理工程に次いで、前記被処理水中に形成された前記フロックを除去する除去工程を備えることを特徴とする。
上記構成の含油廃水の処理方法によれば、上記の凝集処理工程で油分を含有するフロックを形成した後、除去工程においてフロックを含油廃水中から除去することにより、処理効率の向上及び処理コスト削減効果が安定して得られる。
次に、本発明における第7の発明は、上記構成の含油廃水の処理方法において、前記被処理水が、エネルギー資源の採掘で発生した随伴水であることを特徴とする。
上記構成の含油廃水の処理方法によれば、例えば、石油や天然ガスの生産に伴って副次的に発生する、油分やガス成分を含む被処理水の処理に適用した場合において、上述したような、凝集剤の添加量を削減しながらフロックの生成量を低減させることができる。これにより、油分を含有するフロックを効率よく除去して処理コストを削減できる効果がより顕著に得られる。
本発明における第8の発明は、油分を含み、且つ、該油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した被処理水から前記油分を除去する、含油廃水の処理装置であって、前記被処理水に塩を添加することで、前記被処理水中に形成されたエマルジョンを油水分離する前処理手段と、前記被処理水に凝集剤を添加することにより、前記被処理水中に、前記油分を含むフロックを形成する凝集処理手段と、を順次備えることを特徴とする。
上記構成の含油廃水の処理装置によれば、被処理水に塩を添加する前処理手段を備えることにより、凝集処理手段において凝集剤を添加する前に、予め、エマルジョンの油水分離を促進させる。これにより、エマルジョンを形成する油分の濃度が低下し、凝集処理手段において添加する凝集剤の添加量を削減することができるので、油分を含有するフロックの生成量を低減させることが可能になる。従って、被処理水中から除去された油分を含有するフロックを効率よく処理することができ、処理コストの削減が可能となる。
なお、本発明においては、石油随伴水等の油分を含有する被処理水から、該被処理水中でエマルジョンを形成する油分を除去することを目的としているが、本発明に係る含油廃水の処理方法及び処理装置によって得られる作用は、原油や重油等の油分を除去することのみに限定されるものではない。例えば、本発明に係る含油廃水の処理方法及び処理装置は、上記の水中油滴型と同様のエマルジョンを形成する、非水溶性物質による水中エマルジョンの除去処理にも適用することが可能なものである。
本発明に係る含油廃水の処理方法によれば、前処理工程において被処理水に塩を添加し、エマルジョンの油水分離を促進させ、エマルジョンを形成する油分の濃度を低下させてから、凝集処理工程において凝集剤を添加するので、凝集剤の添加量を削減することができ、油分を含有するフロックの生成量を低減させることが可能になる。
また、本発明に係る含油廃水の処理装置によれば、上記同様、前処理手段において被処理水に塩を添加し、エマルジョンの油水分離を促進させ、エマルジョンを形成する油分の濃度を低下させてから、凝集処理手段において凝集剤を添加するので、凝集剤の添加量を削減することができ、油分を含有するフロックの生成量を低減させることが可能になる。
従って、本発明に係る含油廃水の処理方法及び処理装置によれば、被処理水中から除去された油分を含有するフロックを効率よく処理することができ、処理コストの削減が可能となる。
また、本発明に係る含油廃水の処理装置によれば、上記同様、前処理手段において被処理水に塩を添加し、エマルジョンの油水分離を促進させ、エマルジョンを形成する油分の濃度を低下させてから、凝集処理手段において凝集剤を添加するので、凝集剤の添加量を削減することができ、油分を含有するフロックの生成量を低減させることが可能になる。
従って、本発明に係る含油廃水の処理方法及び処理装置によれば、被処理水中から除去された油分を含有するフロックを効率よく処理することができ、処理コストの削減が可能となる。
以下、本発明の実施形態である含油廃水の処理方法及び処理装置(以下、単に処理方法又は処理装置と略称することがある)の一例を挙げ、その構成について、図1〜図8を適宜参照しながら詳述する。
[含油廃水の処理方法]
本実施形態の含油廃水の処理方法は、油分を含み、且つ、該油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した被処理水から油分を除去する処理方法であり、被処理水に塩を添加することで、被処理水中に形成されたエマルジョンを油水分離する前処理工程と、被処理水に凝集剤を添加することにより、被処理水中に油分を含むフロックを形成する凝集処理工程と、を順次備える方法である。具体的には、本実施形態の含油廃水の処理方法は、例えば、図1に示すような、詳細を後述する処理装置10を用いて実施することができる。
本実施形態の含油廃水の処理方法は、油分を含み、且つ、該油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した被処理水から油分を除去する処理方法であり、被処理水に塩を添加することで、被処理水中に形成されたエマルジョンを油水分離する前処理工程と、被処理水に凝集剤を添加することにより、被処理水中に油分を含むフロックを形成する凝集処理工程と、を順次備える方法である。具体的には、本実施形態の含油廃水の処理方法は、例えば、図1に示すような、詳細を後述する処理装置10を用いて実施することができる。
(被処理水:含油廃水)
本実施形態の処理方法における被処理水としては、油分を含む廃水であれば特に限定されず、種々の含油廃水が挙げられ、例えば、石油や天然ガス等のエネルギー資源の採掘に伴って発生する随伴水が挙げられる。その他、被処理水としては、例えば、工場、ガソリンスタンド、厨房、家庭等から排出される食用油、鉱物油、ガソリン等を含む含油排水であってもよく、本実施形態の処理方法は、何れの含油廃水に適用した場合であっても、その効果が顕著に発揮されるものである。
本実施形態の処理方法における被処理水としては、油分を含む廃水であれば特に限定されず、種々の含油廃水が挙げられ、例えば、石油や天然ガス等のエネルギー資源の採掘に伴って発生する随伴水が挙げられる。その他、被処理水としては、例えば、工場、ガソリンスタンド、厨房、家庭等から排出される食用油、鉱物油、ガソリン等を含む含油排水であってもよく、本実施形態の処理方法は、何れの含油廃水に適用した場合であっても、その効果が顕著に発揮されるものである。
本実施形態の処理方法においては、含油廃水(被処理水)に含まれる油分の種類は、特に限定されない。上記のような、石油採掘時の随伴水等の含油廃水中に含まれる油分の種類を特定することは、非常に困難である場合もあり得るが、例えば、炭素原子数が5〜30の炭化水素等を、油分の一例として挙げることができる。
被処理水である含油廃水に含まれる油分の量は、特に制限されるものではないが、油分の除去処理が必要になる濃度として、例えば、0.1mg/L以上の油分含有量を例示できる。また、石油採掘時の随伴水に含まれる油分の一例として、10〜200mg/L程度の油分含有量が例示できる。
本実施形態の処理方法においては、被処理水である含油廃水に含まれる油分の量1〜1000mg/L程度であれば、容易に油分を除去することが可能である。
本実施形態の処理方法においては、被処理水である含油廃水に含まれる油分の量1〜1000mg/L程度であれば、容易に油分を除去することが可能である。
さらに、本実施形態における被処理水である含油廃水には、上記の油分の他に、例えば、ポリマー増粘剤、塩類、油分やポリマー増粘剤以外の有機物、無機物、重金属類等の夾雑成分が含まれていても構わない。一方、これらの夾雑成分が、本実施形態の処理方法による油分除去を妨げるおそれがある場合には、予め、夾雑成分を除去するための処理を行ってもよいし、含油廃水を水で希釈することによって夾雑成分による影響を低減してもよい。通常、上記の夾雑成分の濃度が1〜5質量%未満であれば、油分除去に対する影響は、ほとんどみられない。
(処理方法)
本実施形態の処理方法においては、上述したように、含油廃水中に含まれる油分を凝集処理してフロックを形成させる凝集処理工程に先立ち、含油廃水に塩を添加することで、含油廃水中に存在する水中油滴型エマルジョンの油水分離を促進するための前処理工程を備えている。
本実施形態の処理方法においては、上述したように、含油廃水中に含まれる油分を凝集処理してフロックを形成させる凝集処理工程に先立ち、含油廃水に塩を添加することで、含油廃水中に存在する水中油滴型エマルジョンの油水分離を促進するための前処理工程を備えている。
本発明者等は、含油廃水に含有される油分を凝集させて除去する処理に関し、処理効率の向上や処理コストの削減を実現することを目的として、油分を含有するフロックの生成量を低減することが求められていることに対し、鋭意検討を重ねた。この結果、本発明者等は、含油廃水に凝集剤を添加する前の工程において塩を添加する前処理を施すことで、油分から形成されるエマルジョンの油水分離を促進できることを知見した。これにより、含油廃水中においてエマルジョンを形成する油分の濃度が低下するので、含油廃水中に含まれる油分をフロック化するにあたり、凝集剤の添加量を減量することが可能になり、且つ、油分を含有するフロックの生成量を低減できることを見出し、本発明を完成させたものである。上記のような、塩の添加によって水中油滴型エマルジョンの油水分離を促進できる作用は、塩による塩析で得られるものであり、含油廃水中においてエマルジョンを形成する油分の濃度を低下させるにあたり、非常に効果的である。
前処理工程は、上述したように、油分を含み、且つ、該油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した含油廃水に対して塩を添加することで、含油廃水中に形成されたエマルジョンを油水分離する工程である。
前処理工程において含油廃水に添加する塩の種類としては、特に限定されるものではないが、被処理水である含油廃水中に溶解し、陽イオンとして存在することが可能な塩、より具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムのうちの少なくとも何れか1種を添加することが好ましい。本実施形態においては、上記のような塩を選択して添加することにより、エマルジョンの油水分離が顕著に促進される作用が得られ、次の凝集処理工程における凝集剤の添加量をさらに削減してフロックの生成量を低減させることが可能となる。
前処理工程における塩の添加量としては、特に限定されず、水中油滴型エマルジョンの形成状況に応じて、事前試験を行うことで適宜決定すればよい。即ち、前処理工程においては、まず、被処理水である含油廃水を用いて予め事前試験を行い、当該含油廃水の油水分離が可能な塩濃度を決定した後、この塩濃度に基づいて塩の添加量を決定する方法を採用することができる。このように、含油廃水に対する塩の添加量を、塩濃度が最適化されるように調整することで、エマルジョンの油水分離が顕著に促進される作用が得られるので、凝集処理工程における凝集剤の添加量をさらに削減してフロックの生成量を低減させることが可能となる。
上記のような、エマルジョンの油水分離を顕著に促進できる効果は、塩濃度が最適化されるように、含油廃水に塩を添加することで得られるが、過剰な濃度になるまで塩を添加しても、油水分離に対する寄与度は変わらないため、塩の添加量は、処理コストを考慮しながら決定することが好ましい。
上記のような、エマルジョンの油水分離を顕著に促進できる効果は、塩濃度が最適化されるように、含油廃水に塩を添加することで得られるが、過剰な濃度になるまで塩を添加しても、油水分離に対する寄与度は変わらないため、塩の添加量は、処理コストを考慮しながら決定することが好ましい。
ここで、本発明においては、上述したように、塩の添加により、この塩が含油廃水中に陽イオンとして存在することが、エマルジョンの油水分離を促進する作用を得るうえで重要となるが、これについては、後述の実施例において詳述する。
上述したような、塩の添加による含油廃水中の水中油滴型エマルジョンの油水分離の作用については、後述の実施例においても詳細に説明する。
凝集処理工程は、前処理工程に次いで行われる工程であり、上述したように、塩を添加して前処理を行った後の含油廃水に対し、凝集剤を添加することにより、含油廃水中に油分を含むフロックを形成する工程である。また、通常、含油廃水中の油分をフロック化することで、含油廃水の濁度を低下させることもできる。
凝集処理工程において添加する凝集剤の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ塩化アルミニウム及び硫酸バンド(硫酸アルミニウム)のうちの少なくとも何れかを添加し、且つ、ポリマーからなる高分子凝集剤を併用して添加することが好ましい。本実施形態においては、凝集剤として、上記の化合物群から適宜選択したものを、高分子凝集剤を併用して添加することにより、凝集剤の添加量をさらに削減してフロックの生成量を低減させる効果がより顕著に得られる。また、凝集処理工程において用いる凝集剤としては、比較的低濃度で優れたフロック化率を示す観点からポリ塩化アルミニウムを用いることがより好ましい。あるいは、ポリ塩化アルミニウム及び硫酸バンドを併用してもよいし、さらに、これら以外の公知の凝集剤を併用することも可能である。
凝集処理工程における凝集剤の添加量としては、特に限定されず、前処理工程における塩の添加量と同様、事前試験を行うことで、含油廃水中における油分の含有状況に応じて適宜決定すればよい。含油廃水に対する凝集剤の添加量を、事前試験結果に基づいて最適範囲に調整することで、凝集剤の添加量をさらに削減しながら、フロックの生成量を低減させることができるので、処理効率が向上するとともに、処理コストを低減する効果がより顕著に得られる。
また、凝集処理工程においては、含油廃水にPAC等の凝集剤を添加し、比較的小さなフロックを形成した後、高分子凝集剤と混合・撹拌することにより、油分のフロック化をより促進することが可能となる。この際のフロックの平均的な直径は5mm以上になり得る。
本実施形態の含油廃水の処理方法においては、さらに、上記の凝集処理工程で油分を含有するフロックが形成された含油廃水を、除去工程に供することでフロックを除去する。
除去工程において含油廃水からフロックを除去する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。このような方法としては、例えば、含油廃水を浮上槽内に一定時間で貯留することで、フロックを水面付近まで浮上させた後、このフロックを除去・回収する方法を採用できる。あるいは、逆にフロックを沈殿させて除去・回収する方法を採用してもよく、また、フロックを処理槽の壁や底にスカムとして吸着させて除去・回収する方法を採用してもよい。
除去工程において含油廃水からフロックを除去する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。このような方法としては、例えば、含油廃水を浮上槽内に一定時間で貯留することで、フロックを水面付近まで浮上させた後、このフロックを除去・回収する方法を採用できる。あるいは、逆にフロックを沈殿させて除去・回収する方法を採用してもよく、また、フロックを処理槽の壁や底にスカムとして吸着させて除去・回収する方法を採用してもよい。
そして、フロックを除去した後の含油廃水に、さらに、ろ過処理や吸着処理を施すことにより、フロック化せずに含油廃水中に残留した油分や、その他の有機物質及び無機物質等を除去することにより、油分が除去されて高度に精製された処理水を得る。
この処理水は、例えば、石油や天然ガス等の採掘現場において再利用するか、あるいは廃棄することができる。
この処理水は、例えば、石油や天然ガス等の採掘現場において再利用するか、あるいは廃棄することができる。
本実施形態の含油廃水の処理方法によれば、上記のような前処理工程を備えることにより、油分を凝集させてフロックを生成する前に、予め、エマルジョンの油水分離を促進させて該エマルジョンを形成する油分の濃度を低下させることで、次の凝集処理工程における凝集剤の添加量を削減できることから、フロックの生成量を低減することが可能になる。従って、含油廃水中に含有される油分を効率よく、且つ、低コストで除去することが可能になる。
ここで、本実施形態の処理方法において、被処理水(含油廃水)中における塩濃度が高まるが、このような場合、処理水を海洋に放流したり地中へ返送したりすることには問題無いものの、処理水を別途使用する場合には所定の処理が必要となる。
また、本実施形態の処理方法は、油分を含む被処理水のみならず、上記の水中油滴型と類似したエマルジョンを形成する、非水溶性物質による水中エマルジョンの処理にも適用可能である。
[含油廃水の処理装置]
図1は、本実施形態の含油廃水の処理装置10の構成を示す概略図である。
本実施形態の処理装置10は、油分を含み、且つ、該油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した含油廃水(被処理水)50から油分を除去する装置であり、含油廃水50に塩60を添加することで、含油廃水50中に形成されたエマルジョンを油水分離する前処理部(前処理手段)2と、含油廃水50に凝集剤70を添加することにより、含油廃水50中に油分を含むフロックを形成する凝集処理部(凝集処理手段)3と、を順次備えて概略構成される。
図1は、本実施形態の含油廃水の処理装置10の構成を示す概略図である。
本実施形態の処理装置10は、油分を含み、且つ、該油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した含油廃水(被処理水)50から油分を除去する装置であり、含油廃水50に塩60を添加することで、含油廃水50中に形成されたエマルジョンを油水分離する前処理部(前処理手段)2と、含油廃水50に凝集剤70を添加することにより、含油廃水50中に油分を含むフロックを形成する凝集処理部(凝集処理手段)3と、を順次備えて概略構成される。
また、図1に示す例の処理装置10においては、さらに、凝集処理部3に次いで、含油廃水50中のフロックを除去するための除去処理部4と、フロックが除去された含油廃水50をろ過するためのろ過処理部5と、ろ過後の含油廃水50中に残留する油分等を吸着して除去するための吸着処理部6とが、順次備えられている。
図1に示すように、石油採掘時に発生する随伴水等からなる含油廃水50は、まず、原液タンク1に導入される。原液タンク1に一時貯留された含油廃水50は、ポンプ11によって前処理部2に向けて送出される。
前処理部2は、含油廃水50を内部に貯留する前処理タンク21と、原液タンク1から導入される含油廃水50に対して塩60を添加する塩供給タンク22とから構成される。
前処理タンク21の内部には、塩60が添加された含油廃水50を撹拌するための攪拌子21Aが配置されている。この攪拌子21Aは、モータによって回転駆動され、回転軸と同軸で2枚設けられている。
前処理タンク21の内部には、塩60が添加された含油廃水50を撹拌するための攪拌子21Aが配置されている。この攪拌子21Aは、モータによって回転駆動され、回転軸と同軸で2枚設けられている。
塩供給タンク22の内部には、貯留された塩60を撹拌するための攪拌子22Aが配置されており、この攪拌子22Aもモータによって回転駆動される。また、塩供給タンク22には、塩60を送出するためのポンプ22Bが備えられている。
図示例の塩供給タンク22は、塩60を、原液タンク1と前処理タンク21とを接続する配管経路に供給するように構成されているが、例えば、前処理タンク21内に向けて塩60を供給するように構成することもできる。
図示例の塩供給タンク22は、塩60を、原液タンク1と前処理タンク21とを接続する配管経路に供給するように構成されているが、例えば、前処理タンク21内に向けて塩60を供給するように構成することもできる。
前処理部2において塩60が供給され、油分から形成されたエマルジョンが油水分離された含油廃水50は、ポンプ23によって凝集処理部3に向けて送出される。
また、図示例の前処理部2には、前処理タンク21の上部近傍にスクレーパー24が備えられている。このスクレーパー24は、前処理タンク21に収容された含油廃水50の上澄みに存在する、油水分離された油分を除去するものであり、この油分は、スカムタンク8に導入された後、脱水機9によって脱水乾燥されることでスラッジとされ、廃棄処分される。このように、前処理部2にスクレーパー24を設けることで、後段の凝集処理部3に対する油分の流入を抑制できるというメリットがある。
また、図示例の前処理部2には、前処理タンク21の上部近傍にスクレーパー24が備えられている。このスクレーパー24は、前処理タンク21に収容された含油廃水50の上澄みに存在する、油水分離された油分を除去するものであり、この油分は、スカムタンク8に導入された後、脱水機9によって脱水乾燥されることでスラッジとされ、廃棄処分される。このように、前処理部2にスクレーパー24を設けることで、後段の凝集処理部3に対する油分の流入を抑制できるというメリットがある。
凝集処理部3は、油水分離の前処理が施された含油廃水50を内部に貯留する凝集タンク31と、前処理部2から導入される含油廃水50に対して凝集剤70を添加する凝集剤供給タンク32とから構成される。
凝集タンク31の内部には、槽内を上流側と下流柄とに仕切る2枚の邪魔板31C,31Dが設置されている。
また、凝集タンク31の内部には、凝集剤70が添加された含油廃水50を撹拌するための攪拌子31A,31Bが2箇所に配置されており、図示例では、攪拌子31Aが上流側に、攪拌子31Bが下流側に、それぞれ配置されている。これら攪拌子31A,31Bは、モータによって回転駆動され、それぞれ、回転軸と同軸で2枚ずつ設けられている。
凝集タンク31の内部には、槽内を上流側と下流柄とに仕切る2枚の邪魔板31C,31Dが設置されている。
また、凝集タンク31の内部には、凝集剤70が添加された含油廃水50を撹拌するための攪拌子31A,31Bが2箇所に配置されており、図示例では、攪拌子31Aが上流側に、攪拌子31Bが下流側に、それぞれ配置されている。これら攪拌子31A,31Bは、モータによって回転駆動され、それぞれ、回転軸と同軸で2枚ずつ設けられている。
凝集剤供給タンク32の内部には、貯留された凝集剤70を撹拌するための攪拌子32Aが配置されており、この攪拌子32Aも、モータによって回転駆動される。また、凝集剤供給タンク32には、凝集剤70を送出するためのポンプ32Bが備えられている。
図示例の凝集剤供給タンク32は、凝集剤70を、前処理タンク21と凝集タンク31とを接続する配管経路に供給するように構成されているが、例えば、凝集タンク31内に向けて凝集剤70を供給するように構成することもできる。
図示例の凝集剤供給タンク32は、凝集剤70を、前処理タンク21と凝集タンク31とを接続する配管経路に供給するように構成されているが、例えば、凝集タンク31内に向けて凝集剤70を供給するように構成することもできる。
凝集処理部3において凝集剤70が供給され、油分を含有するフロックが形成された含油廃水50は、マイクロバブルポンプ33によって除去処理部4に向けて送出される。マイクロバブルポンプ33には、不燃ガス供給部34が接続されている。マイクロバブルポンプ33は、不燃ガス供給部34から供給された不燃ガスNを用いて、含油廃水50中にマイクロバブルを生成させながら、この含油廃水50を除去処理部4に導入する。
本実施形態においては、上記のようなマイクロバブルポンプ33及び不燃ガス供給部34を備え、不燃ガスNによるマイクロバルブを含油廃水50中に生成させることで、後述の除去処理部4において、フロックの浮上性を向上させる効果が得られる。マイクロバルブを不燃ガスNから生成させる理由としては、可燃ガスや助燃ガスに比べて安全性が高いことが挙げられ、例えば、窒素ガスを用いることができる。
除去処理部4は、油分を含有するフロックが形成された含油廃水50を内部に貯留し、フロックを浮上させて除去するためのする処理槽である。
除去処理部4は、内部が浮上槽41と排出槽42の2槽に分割されており、凝集処理部3の凝集タンク31から送出された含油廃水50が浮上槽41に貯留される。さらに、排出槽42には、浮上槽41からオーバーフローした含油廃水50が、フィルター42Aを介して排出槽42に流入するように構成されている。
除去処理部4は、内部が浮上槽41と排出槽42の2槽に分割されており、凝集処理部3の凝集タンク31から送出された含油廃水50が浮上槽41に貯留される。さらに、排出槽42には、浮上槽41からオーバーフローした含油廃水50が、フィルター42Aを介して排出槽42に流入するように構成されている。
また、図1に例示する処理装置10には、内部に高分子凝集剤Pを貯留するポリマー供給タンク46が備えられている。ポリマー供給タンク46には、上述した塩供給タンク22等と同様、内部に、モータによって駆動される攪拌子46Aが配置されている。また、ポリマー供給タンク46は、内部に貯留された高分子凝集剤Pを、ポンプ46Bにより、凝集タンク31と浮上槽41とを接続する配管経路に供給するように構成されている。
本実施形態においては、上記のようなポリマー供給タンク46を備え、含油廃水50に高分子凝集剤Pを添加することにより、PACや硫酸バンド等によって形成された比較的小さなフロック同士を凝集させることで、フロックをより大きくする作用が得られる。これにより、除去処理部4におけるフロックの除去効率が向上する効果が得られる。このような高分子凝集剤Pとしては、例えば、アニオン系の高分子凝集剤を用いることができる。
浮上槽41の内部には、槽内を上流側と下流側とに仕切る2枚の邪魔板41A,41Bが設置されている。これら邪魔板41A,41Bは、未除去のフロックが下流側に流出するのを防止するものであり、これら邪魔板41A,41Bの間を通過したフロック除去後の含油廃水50が、浮上槽41からオーバーフローして排出槽42に流入する。また、邪魔板41A,41Bの間を通過した小さなフロックについては、排出槽42の上端に設けられたフィルター42Aにより、排出槽42への流入を規制する。
浮上槽41の上端近傍には、浮上槽41において浮上した油分を含有するフロックを掬い取って除去するためのスクレーパー43が備えられている。また、浮上槽41の上端の一部には、スクレーパー43によって掬い取ったフロックを収容するための容器45が接続されている。また、浮上槽41と容器45との境界には、油分を含有するフロック以外の水分が容器45に流入するのを防止するための堰部材44が設置されている。
除去処理部4において油分を含有するフロックが除去された含油廃水50は、ポンプ47によってろ過処理部5に向けて送出される。また、含油廃水50から除去された油分を含有するフロックは、容器45からスカムタンク8に導入された後、脱水機9によって脱水乾燥されることでスラッジSとされ、廃棄処分される。
ろ過処理部5は、含油廃水50中において凝集浮上処理で処理出来なかった濁質をろ過して除去するものである。このようなろ過処理部5としては、汚水処理等の分野における懸濁物の除去手段として通常用いられているろ過手段を何ら制限無く採用することができ、例えば、アンスラサイトによって構成されたものを採用できる。
吸着処理部6は、さらに、含油廃水50中においてフロック化せずに、凝集浮上処理で処理出来なかった有機物質を吸着して除去することで、より高度に精製された処理水を得るものである。吸着処理部6としても、この分野において有害物等の除去に通常用いられている吸着手段を何ら制限無く採用することができ、例えば、活性炭等に含油廃水50を接触させることで各種物質を吸着可能な構成とされたものを採用できる。
吸着処理部6において、高度に精製された被処理水は、浄化された処理水80として処理水タンク7に貯留された後、石油採掘現場等において再利用するか、あるいは、排水処分することができる。
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態の含油廃水の処理方法によれば、前処理工程において被処理水である含油廃水に塩を添加し、エマルジョンの油水分離を促進させ、エマルジョンを形成する油分の濃度を低下させてから、凝集処理工程において凝集剤を添加するので、凝集剤の添加量を削減することができ、油分を含有するフロックの生成量を低減させることが可能になる。
以上説明したように、本実施形態の含油廃水の処理方法によれば、前処理工程において被処理水である含油廃水に塩を添加し、エマルジョンの油水分離を促進させ、エマルジョンを形成する油分の濃度を低下させてから、凝集処理工程において凝集剤を添加するので、凝集剤の添加量を削減することができ、油分を含有するフロックの生成量を低減させることが可能になる。
また、本実施形態の含油廃水の処理装置10によれば、前処理部2において被処理水である含油廃水50に塩60を添加し、エマルジョンの油水分離を促進させ、エマルジョンを形成する油分の濃度を低下させてから、凝集処理部3において凝集剤70を添加するので、凝集剤70の添加量を削減することができ、油分を含有するフロックの生成量を低減させることが可能になる。
従って、本実施形態の含油廃水の処理方法及び処理装置10によれば、含油廃水50中から除去された油分を含有するフロックを効率よく処理することができ、処理コストの削減が可能となる。
次に、本発明の実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、本実施例によってその範囲が制限されるものではない。
[実施例1]
実施例1においては、まず、塩濃度(NaCl含有)を種々の濃度(0〜25質量%の範囲で14ポイント:0,0.2,0.4,0.6,0.8,1,2,4,6,8,10,15,20,25質量%)に調整した水溶液を各々50mL作製した。
そして、各塩水に対してA重油0.15mLを添加し、試験瓶に収容した状態で一昼夜(12時間以上)にわたって振とうすることで、水中油滴型エマルジョンを含んだ模擬含油廃水を調製した。
実施例1においては、まず、塩濃度(NaCl含有)を種々の濃度(0〜25質量%の範囲で14ポイント:0,0.2,0.4,0.6,0.8,1,2,4,6,8,10,15,20,25質量%)に調整した水溶液を各々50mL作製した。
そして、各塩水に対してA重油0.15mLを添加し、試験瓶に収容した状態で一昼夜(12時間以上)にわたって振とうすることで、水中油滴型エマルジョンを含んだ模擬含油廃水を調製した。
図2に、実施例1において塩濃度を各濃度に調整して作製した模擬含油廃水を、各々試験瓶に収容した状態で、水中油滴型エマルジョンが形成された様子を確認した写真を示す。
また、図2の写真に示した、模擬含油廃水中の塩濃度を変化させた実験で得られたデータとして、図3(a)に塩濃度と油分濃度との関係を表すグラフ、図3(b)に塩濃度と濁度との関係を表すグラフ、図3(c)に塩濃度とTOC(全有機炭素)との関係を表すグラフを、それぞれ示す。
また、図2の写真に示した、模擬含油廃水中の塩濃度を変化させた実験で得られたデータとして、図3(a)に塩濃度と油分濃度との関係を表すグラフ、図3(b)に塩濃度と濁度との関係を表すグラフ、図3(c)に塩濃度とTOC(全有機炭素)との関係を表すグラフを、それぞれ示す。
図2の写真に示すように、塩濃度が高くなるほど模擬含油廃水の濁りが減少しており(透明度が増しており)、水中油滴型エマルジョンを形成している油分濃度が低下していることが伺える。これは、図3(a)〜(c)の各グラフに示すデータからも明らかであり、模擬含油廃水の塩濃度が高くなるにつれ、油分濃度、濁度、TOCの各値が低下する傾向があることが確認できる。
[実施例2]
実施例2においては、各塩水に添加するA重油の量を0.30mLとした点を除き、実施例1と同様の手順で、種々の塩濃度を有する、水中油滴型エマルジョンを含んだ模擬含油廃水を調製した。
図4に、実施例2において塩濃度を各濃度に調整して作製した模擬含油廃水を、各々試験瓶に収容した状態で、水中油滴型エマルジョンが形成された様子を確認した写真を示す。
実施例2においては、各塩水に添加するA重油の量を0.30mLとした点を除き、実施例1と同様の手順で、種々の塩濃度を有する、水中油滴型エマルジョンを含んだ模擬含油廃水を調製した。
図4に、実施例2において塩濃度を各濃度に調整して作製した模擬含油廃水を、各々試験瓶に収容した状態で、水中油滴型エマルジョンが形成された様子を確認した写真を示す。
図4の写真に示すように、実施例1における結果(図2参照)と同様、塩濃度が高くなるほど模擬含油廃水の濁りが減少している(透明度が増している)。しかしながら、図2及び図4の写真における同じ塩濃度のサンプル同士を比較すると、図4の写真中のサンプルの方がより濁っているのが分かり、これは、図6のグラフに示した、実施例1と実施例2の結果を比較するデータからも明らかである。この結果より、初期における油分の濃度が高めである場合でも、塩添加による塩析が作用し、水中油滴型エマルジョンを形成している油分濃度の低下に寄与していると考えられる。一方、その油分濃度の低下度合は、初期条件(油分濃度)に依存すると考えられる。
[実施例3]
実施例3においては、実際の石油採掘現場等における含油廃水の処理を考慮し、水中油滴型エマルジョンが形成された含油廃水に対して塩(NaCl)を添加した後、試験瓶に収容した状態で一昼夜(12時間以上)にわたって振とうし、含油廃水の状態を確認した。
実施例3においては、実際の石油採掘現場等における含油廃水の処理を考慮し、水中油滴型エマルジョンが形成された含油廃水に対して塩(NaCl)を添加した後、試験瓶に収容した状態で一昼夜(12時間以上)にわたって振とうし、含油廃水の状態を確認した。
具体的には、まず、水道水50mLに対してA重油15mLを添加して模擬含油廃水を調製した。
そして、塩濃度が0〜25%の範囲で種々の濃度(14ポイント:0,0.2,0.4,0.6,0.8,1,2,4,6,8,10,15,20,25質量%)となるように、上記の模擬含油廃水に対して塩(NaCl)を添加した後、試験瓶に収容した状態で1時間にわたって振とうした。
図5(a)に、模擬含油廃水の初期状態における写真を示すとともに、図5(b)に、塩の量を変更しながら添加して振とうした後の含油廃水の写真を示す。なお、実施例3においては、模擬含油廃水を調製した後に塩を添加していることから、図5(b)に示す写真においては、図5(a)に示す状態に比べて、試験瓶に収容した模擬含油廃水の量が若干多くなっている。
そして、塩濃度が0〜25%の範囲で種々の濃度(14ポイント:0,0.2,0.4,0.6,0.8,1,2,4,6,8,10,15,20,25質量%)となるように、上記の模擬含油廃水に対して塩(NaCl)を添加した後、試験瓶に収容した状態で1時間にわたって振とうした。
図5(a)に、模擬含油廃水の初期状態における写真を示すとともに、図5(b)に、塩の量を変更しながら添加して振とうした後の含油廃水の写真を示す。なお、実施例3においては、模擬含油廃水を調製した後に塩を添加していることから、図5(b)に示す写真においては、図5(a)に示す状態に比べて、試験瓶に収容した模擬含油廃水の量が若干多くなっている。
図5(a)に示すように、模擬含油廃水に塩を添加する前の初期状態においては、全ての試験瓶に収容した模擬含油廃水が濁った状態となっている。
一方、図5(b)に示すように、実施例3においても、実施例1,2における結果(図2及び図4参照)と同様、塩濃度が高くなるほど模擬含油廃水の濁りが減少している(透明度が増している)ことがわかる。この結果より、実際の石油採掘現場等における含油廃水の処理を考慮した条件下においても、塩添加による塩析が作用し、水中油滴型エマルジョンを形成している油分濃度を低下させることが可能であることが明らかとなった。
一方、図5(b)に示すように、実施例3においても、実施例1,2における結果(図2及び図4参照)と同様、塩濃度が高くなるほど模擬含油廃水の濁りが減少している(透明度が増している)ことがわかる。この結果より、実際の石油採掘現場等における含油廃水の処理を考慮した条件下においても、塩添加による塩析が作用し、水中油滴型エマルジョンを形成している油分濃度を低下させることが可能であることが明らかとなった。
[実施例4〜6]
実施例4〜6においては、塩として、塩化マグネシウム・MgCl2(実施例4)、塩化カルシウム・CaCl2(実施例5)、硝酸ナトリウム・NaNO3(実施例6)を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で、種々の塩濃度を有する、水中油滴型エマルジョンを含んだ模擬含油廃水を調製した。
実施例4〜6においては、塩として、塩化マグネシウム・MgCl2(実施例4)、塩化カルシウム・CaCl2(実施例5)、硝酸ナトリウム・NaNO3(実施例6)を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で、種々の塩濃度を有する、水中油滴型エマルジョンを含んだ模擬含油廃水を調製した。
図7(a)〜(b)に、実施例4〜6において塩濃度を各濃度に調整して作製した模擬含油廃水を、各々試験瓶に収容した状態で、水中油滴型エマルジョンが形成された様子を確認した写真を示す。ここで、図7(a)は塩として塩化マグネシウムを用いた場合、図7(b)は塩化カルシウムを用いた場合、図8(c)は硝酸ナトリウムを用いた場合の状態を示す写真である。
図7(a)に示した実施例4(塩化マグネシウム)、及び、図7(b)に示した実施例5(塩化カルシウム)においては、図2に示したような塩化ナトリウムを用いた実施例1に比べて、特に、塩濃度が0.2〜1%の低濃度領域において模擬含油廃水の濁りが減少しており(透明度が増しており)、水中油滴型エマルジョンを形成している油分濃度が低下していることが伺える。これは、2価の陽イオン(MgCl2、CaCl2)による塩析効果は、1価の陽イオン(NaCl)による塩析効果に比べて大きくなるためではないかと考えられる。
一方、図7(c)に示した実施例6(NaNO3)においては、図2に示した実施例1(NaCl)とほぼ同様の結果(模擬含油廃水の濁り:透明度)となった。これは、硝酸ナトリウムは、塩化ナトリウムの場合と同様に、1価の陽イオンによる塩析作用を発現するためと考えられる。
[実施例1〜6の結果に基づく評価]
上記の各実施例の結果より、石油採掘現場等で発生する随伴水のような含油廃水を処理するにあたっては、以下のようなことが考えられる。
即ち、水中油滴型エマルジョンを形成している油分濃度を低下させるためには、塩を最適な量で添加する必要があり、その把握が求められる。実施例1〜3で実施した実験においては、模擬含油廃水中における塩濃度(塩化ナトリウム)が高くなるにつれて、油分濃度が低下していく傾向はみられるものの、塩濃度(塩化ナトリウム)が1%以上だと、大きな油分濃度の低下は見られなかった。従って、本発明に係る含油廃水の処理方法においては、含油廃水中における塩濃度(塩化ナトリウム)が1%程度となるように塩を添加するのが、最も効率的であると考えられる。しかしながら、実際には、含油廃水の水質や経済性等を考慮し、石油採掘現場等において、塩の最適添加量を設定するための事前試験を実施することが必要であると考えられる。
また、実施例1と実施例4〜6とを比較すると、添加する塩の陽イオンの価数が大きいほど、少ない添加量で効果的な油水分離(塩析)が可能となることを確認することが出来た。
上記の各実施例の結果より、石油採掘現場等で発生する随伴水のような含油廃水を処理するにあたっては、以下のようなことが考えられる。
即ち、水中油滴型エマルジョンを形成している油分濃度を低下させるためには、塩を最適な量で添加する必要があり、その把握が求められる。実施例1〜3で実施した実験においては、模擬含油廃水中における塩濃度(塩化ナトリウム)が高くなるにつれて、油分濃度が低下していく傾向はみられるものの、塩濃度(塩化ナトリウム)が1%以上だと、大きな油分濃度の低下は見られなかった。従って、本発明に係る含油廃水の処理方法においては、含油廃水中における塩濃度(塩化ナトリウム)が1%程度となるように塩を添加するのが、最も効率的であると考えられる。しかしながら、実際には、含油廃水の水質や経済性等を考慮し、石油採掘現場等において、塩の最適添加量を設定するための事前試験を実施することが必要であると考えられる。
また、実施例1と実施例4〜6とを比較すると、添加する塩の陽イオンの価数が大きいほど、少ない添加量で効果的な油水分離(塩析)が可能となることを確認することが出来た。
なお、本発明者等は、実施例4のような塩として塩化カルシウムを用いた場合において、さらに、塩濃度が次の3ポイント:0.01,0.05,0.1質量%となるように塩水を調整し、同様の条件で模擬含油廃水を調製して、同様に観察する参考実験を行った。この結果、図8の写真に示すように、塩濃度が0.01質量%、0.05質量%、0.1質量%と高くなるにつれて油分濃度が低下していく傾向が見られ、塩濃度を低めに設定した場合であっても、本発明の処理方法による効果が得られることが確認できた。
以上説明した各実施形態及び各実施例における 各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
本発明の含油廃水の処理方法及び処理装置によれば、たとえば、石油や天然ガスの生産に伴って副次的に発生する随伴水等、含油廃水の処理に幅広く適用することができることから、環境保全等の観点からも寄与度の高いものである。
1…原液タンク
2…前処理部(前処理手段)
3…凝集処理部(凝集処理手段)
4…除去処理部(除去手段)
10…処理装置(含油廃水の処理装置)
2…前処理部(前処理手段)
3…凝集処理部(凝集処理手段)
4…除去処理部(除去手段)
10…処理装置(含油廃水の処理装置)
Claims (8)
- 油分を含み、且つ、該油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した被処理水から前記油分を除去する、含油廃水の処理方法であって、
前記被処理水に塩を添加することで、前記被処理水中に形成されたエマルジョンを油水分離する前処理工程と、
前記被処理水に凝集剤を添加することにより、前記被処理水中に、前記油分を含むフロックを形成する凝集処理工程と、
を順次備えることを特徴とする含油廃水の処理方法。 - 前記前処理工程は、前記塩として、前記被処理水中に溶解して陽イオンとして存在可能な塩を添加することを特徴とする請求項1に記載の含油廃水の処理方法。
- 前記前処理工程は、前記塩として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムのうちの少なくとも何れか1種を添加することを特徴とする請求項2に記載の含油廃水の処理方法。
- 前記前処理工程は、前記被処理水を用いた事前試験によって前記油水分離が可能な塩濃度を決定した後、該塩濃度に基づいて前記塩の添加量を決定することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の含油廃水の処理方法。
- 前記凝集処理工程は、前記凝集剤として、ポリ塩化アルミニウム及び硫酸バンドのうちの少なくとも何れかを添加し、且つ、ポリマーからなる高分子凝集剤を併用して添加することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の含油廃水の処理方法。
- 前記凝集処理工程に次いで、前記被処理水中に形成された前記フロックを除去する除去工程を備えることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の含油廃水の処理方法。
- 前記被処理水が、エネルギー資源の採掘で発生した随伴水であることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の含油廃水の処理方法。
- 油分を含み、且つ、該油分の少なくとも一部がエマルジョンを形成した被処理水から前記油分を除去する、含油廃水の処理装置であって、
前記被処理水に塩を添加することで、前記被処理水中に形成されたエマルジョンを油水分離する前処理手段と、
前記被処理水に凝集剤を添加することにより、前記被処理水中に、前記油分を含むフロックを形成する凝集処理手段と、
を順次備えることを特徴とする含油廃水の処理装置。
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JP2015162447A JP2017039088A (ja) | 2015-08-20 | 2015-08-20 | 含油廃水の処理方法及び処理装置 |
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Cited By (2)
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CN107055995A (zh) * | 2017-06-07 | 2017-08-18 | 成都诺德源环保科技有限公司 | 一种应用于油气田油基钻井废弃物中石油类回收利用的方法 |
CN115536119A (zh) * | 2022-11-01 | 2022-12-30 | 新疆聚力环保科技有限公司 | 一种废油再生用废水处理药剂及其制备方法 |
-
2015
- 2015-08-20 JP JP2015162447A patent/JP2017039088A/ja active Pending
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