<第1の実施形態>
本発明の第1実施形態に係る車両用シート10について、図1〜図7に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印LH、矢印RHは、車両の前方向(進行方向)、上方向、左方向、右方向をそれぞれ示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
(構成)
図1〜図4に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、乗員の臀部及び大腿部を支持する車両用シートクッションとしてのシートクッション12と、乗員の背部を支持する車両用シートバックとしてのシートバック14とを備えている。このシートバック14の上端部には、乗員の頭部を支持するヘッドレスト16が取り付けられている。この車両用シート10の前後左右上下の方向は、車両の前後左右上下の方向と一致している。
なお、本実施形態では、車両用シート10が運転席である場合について説明するが、この車両用シート10は、助手席などの運転席以外の車両用シートとしても適用可能である。また、本実施形態では、車両用シート10と乗員との関係を説明するために、便宜上、AM50と同等の体格の乗員が標準姿勢で車両用シート10に着座するものとするが、乗員の体格は特に限定されない。また、乗員に関して、背部とは、腰部及び背中を含む体の部分のことであり、腰部とは、腰椎や腰椎の周囲の体幹筋などを含む体の部分のことであり、腰部付近とは腰部及び腰部の周囲の体の部分のことである。また、胸部とは、胸椎や胸椎の周囲の筋肉などを含む体の部分のことであり、肩部とは、肩甲骨から肩に至る体の部分のことである。
上記のシートクッション12は、骨格部材であるシートクッションフレーム18を備えている。このシートクッションフレーム18は、平面視で枠状に形成されており、左右一対のスライドレール20を介して車体のフロア22に連結されている。このシートクッションフレーム18の上方には、乗員の臀部(骨盤)及び大腿部(大腿骨)を支持する座部24が配置されている。この座部24は、シートクッションフレーム18の前端部に取り付けられた座部支持機構26を介してシートクッションフレーム18に連結(支持)されている。
座部支持機構26は、シートクッションフレーム18に固定された軸受28と、座部24に固定されて軸受28に回転自在に連結された回転軸30とを備えた回動機構である。回転軸30及び軸受28は、各々の軸線方向が車両前後方向に対して後上りに傾斜するように配設されている。これにより、座部24は、シートクッションフレーム18に対して車両のロール方向及びヨー方向に回動可能にシートクッションフレーム18に連結されている。この座部24の回動軸線L1(仮想線:図2参照)は、車両上下方向に対して例えば60±15度の範囲内で傾斜しており、車両用シート10に着座した乗員の腰部付近を通るように設定されている。
なお、上記のシートクッションフレーム18、座部24及び座部支持機構26は、背景技術の欄で説明した車両用シート装置における第一シートフレーム部、座部及び座部支持機構と同様の構成とされているため、詳細な説明は省略する。また、シートクッション12の構成は、適宜変更可能であり、座部24がシートクッションフレーム18に対して固定されたものでもよい。
一方、シートバック14は、シートバックフレーム(メインフレーム)32と、乗員の背部を支持するバックレスト部34と、バックレスト部34をシートバックフレーム32に対して回動可能に連結した吊り下げ部(回動連結部)36と、バックレスト部34の外周側の複数箇所をシートバックフレーム32に連結した外周支持部38と、バックレスト部34の下端部とシートクッションフレーム18との間に架け渡された引張コイルバネ(付勢部材)40とを主要部として構成されている。なお、シートバック14の前後方向は、シート側面視でシートバック14の上下方向(高さ方向)と直交する方向である。また、シートバック14の幅方向は、シート幅方向及び車両幅方向と一致している。
上記のシートバックフレーム32は、シートバック前後方向視で枠状に形成されており、後述するサブフレーム42と共にシートバック14の骨格を構成している。このシートバックフレーム32は、左右一対のサイドフレーム部46と、アッパフレーム部48と、ロアフレーム部50とを備えている。
左右のサイドフレーム部46は、シートバック14の左右の側部においてシートバック上下方向に延在している。左右のサイドフレーム部46の下端部は、ブラケット52及び図示しないリクライニング機構を介してシートクッションフレーム18の後端部に傾倒可能に連結されている。また、左右のサイドフレーム部46の上端部には、円柱状に形成されたワイヤ固定部54が溶接等の手段によってそれぞれ固定されている。これらのワイヤ固定部54は、左右のサイドフレーム部46の上端部からシート幅方向外側へ突出している。
アッパフレーム部48は、シートバック14の上端部に配置されており、左右のサイドフレーム部46の上端部をシート幅方向に連結している。このアッパフレーム部48は、図1に示されるように、左右のサイドフレーム部46の上端部に固定され、左右のサイドフレーム部46からシートバック上方側へ延びる左右の脚部48Aと、左右の脚部48Aの上端部からそれぞれシートバック後方側へ延びる左右の後延部48Bと、左右の後延部48Bの後端部をシート幅方向に連結した幅方向連結部48Cとによって構成されている。この幅方向連結部48Cには、ヘッドレスト16の骨格を構成するヘッドレストフレーム56が連結されている。
また、アッパフレーム部48における左右の脚部48Aの上端部には、姿勢保持用伸縮部材としての上端横糸部材58がシート幅方向に沿って張設されている。この上端横糸部材58は、可撓性及び伸縮性を有する線状(糸状)の部材であり、シート幅方向の両端部が左右の脚部48Aの上端部に固定されている。この上端横糸部材58の材料としては、例えば、ナイロン糸、ポリエチレン糸、カーボン糸、ワイヤなどを用いることができる。
ロアフレーム部50は、シートバック14の下端部に配置されており、左右のサイドフレーム部46の下端部をシート幅方向に連結している。このロアフレーム部50のシート幅方向中央部には、板金等によって形成されたワイヤ固定部60が固定されている。このワイヤ固定部60は、ロアフレーム部50のシート幅方向中央部からシートバック前方側へ突出しており、前端部が下方側へ向けて屈曲している。
上記構成のシートバックフレーム32は、例えば、車両用シート10に着座した乗員における肩部の上端と同等の高さに上端が位置するように高さ寸法が設定されている。なお、本実施形態では、左右のサイドフレーム部46及びロアフレーム部50が板金によって形成されており、アッパフレーム部48が金属パイプによって形成されているが、これに限らず、上記各フレーム部の材料は適宜変更可能である。また、図1〜図4では、左右のサイドフレーム部46及びロアフレーム部50が平板状に記載されているが、これに限らず、上記各フレーム部の断面形状は適宜変更可能である。
一方、バックレスト部34は、上記シートバックフレーム32に対してシートバック前方側に配置されている。このバックレスト部34は、骨格部材であるサブフレーム42と、伸縮部材である複数の横糸部材62及びネット状部材64とによって構成されている。
サブフレーム42は、例えば金属パイプが曲げ加工されて形成されたものであり、シートバックフレーム32よりもシートバック上下方向の寸法が小さく設定されている。このサブフレーム42は、上端が左右のサイドフレーム部46の上端と同等の高さに配置されており、下端が左右のサイドフレーム部46の下端と同等の高さに配置されている。このサブフレーム42は、左右のサイド部42Aと、左右のアッパ部42Bと、ロア部42Cとを備えており、シートバック前後方向から見て略逆U字状に形成されると共に、シートバック幅方向から見てシートバック後方側へ開口した略C字状に形成されている。
左右のサイド部42Aは、シートバック14の左右の側部においてシートバック上下方向に延在しており、シート幅方向から見てシートバック前方側へ凸をなすように弓なりに湾曲している。左右のアッパ部42Bは、左右のサイド部42Aの上端部からシートバック後方側かつ若干斜め下方側へ延出されており、シートバックフレーム32の左右のサイドフレーム部46よりもシートバック後方側へ突出している。左右のアッパ部42Bの後端部には、円柱状に形成されたワイヤ固定部66が溶接等の手段によってそれぞれ固定されている。これらのワイヤ固定部66は、左右のアッパ部42Bの後端部からシート幅方向外側へ突出しており、前述した左右のワイヤ固定部54に対してシートバック後方側かつ若干斜め下方側から対向している。
ロア部42Cは、シートバック14の下端部においてシート幅方向に延在しており、左右のサイド部42Aの下端部をシート幅方向に連結している。このロア部42Cは、シートバック上下方向から見てシートバック前方側へ開口した略U字状に形成されており、左右のサイド部42Aの下端部からシートバック後方側へ突出している。このロア部42Cは、シートバックフレーム32のロアフレーム部50に対してシートバック前方側から対向している。このロア部42Cのシート幅方向中央部には、板金等によって形成されたワイヤ固定部68が固定されている。このワイヤ固定部68は、ロア部42Cのシート幅方向中央部からシートバック後方側へ突出しており、後端部が上方側へ向けて屈曲している。このワイヤ固定部68は、前述したワイヤ固定部60に対してシートバック下方に配置されており、後端部がワイヤ固定部60の前端部に対してシートバック後方から対向している。
複数の横糸部材62は、前述した上端横糸部材58と同様に可撓性及び伸縮性を有する線状(糸状)の部材であり、左右のサイド部42A間にシート幅方向に沿って張設されている。これらの横糸部材62は、シート幅方向の両端部が左右のサイド部42Aに固定されており、シートバック上下方向に等間隔又は略等間隔に並んで配置されている。これらの横糸部材62の材料としては、例えば、ナイロン糸、ポリエチレン糸、カーボン糸、ワイヤなどを用いることができる。これらの横糸部材62は、上端横糸部材58と共に姿勢保持用伸縮部材を構成しており、シートバック14に凭れ掛る乗員の姿勢を保持する役割を担っている。
ネット状部材64は、可撓性及び伸縮性を有するネット状の部材であり、複数の横糸部材62と同様に左右のサイド部42A間にシート幅方向に沿って張設されている。このネット状部材64は、シート幅方向の両端部が左右のサイド部42Aに固定されており、サブフレーム42及び複数の横糸部材62を覆っている。さらに、このネット状部材64は、上縁部がシートバックフレーム32の上部側へ延長されてアッパフレーム部48に固定されており、シートバックフレーム32の上部及び上端横糸部材58を覆っている。このネット状部材64によってシートバック14の表層(表面)が形成されている。なお、以下の説明に記載する「シートバックせん断方向」は、上記表層に沿った方向のことであり、シートバック前後方向(シートバック面直方向)に対して略直交する方向のことである。
一方、吊り下げ部36は、バックレスト部34をシートバックフレーム32から吊り下げて支持するものであり、縦糸部70と、横糸部72とによって構成されている。これらの縦糸部70及び横糸部72は、上端横糸部材58及び複数の横糸部材62と同様に、可撓性及び伸縮性を有する線状(糸状)の部材によって構成されている。これらの縦糸部70及び横糸部72の材料としては、例えば、ナイロン糸、ポリエチレン糸、カーボン糸、ワイヤなどを用いることができる。
縦糸部70は、シートバック14のシート幅方向中央部においてシートバック上下方向に延在している。この縦糸部70は、上端横糸部材58及び複数の横糸部材62のシート幅方向中間部に固定(結合)されており、上端横糸部材58及び複数の横糸部材62をシートバック上下方向に連結している。また、この縦糸部70は、上端横糸部材58からシートバック後方側へ延びており、アッパフレーム部48の幅方向連結部48Cにおけるシート幅方向中間部に固定されている。さらに、この縦糸部70は、バックレスト部34の下端部に配置された横糸部材62からシート後方側へ延びており、サブフレーム42のロア部におけるシート幅方向中央部に固定されている。
横糸部72は、シートバックフレーム32のアッパフレーム部48における左右の脚部48Aの上端部間に張設(架設)されており、シート幅方向両端部が左右の脚部48Aの上端部に固定されている。この横糸部72は、シートバック前方側から見てV字状を成すようにシート幅方向中央部がシートバック下方側へ屈曲している。この横糸部72のシート幅方向中央部は、バックレスト部34の上端部に配置された横糸部材62のシート幅方向中央部及び縦糸部70に固定されている。この横糸部72を介してバックレスト部34の上端部におけるシート幅方向中央部がシートバックフレーム32に対してシート幅方向(シート左右方向)及びシートバック上下方向に位置決めされている。
上記の縦糸部70及び横糸部72は、前述したネット状部材64によって覆われている。これらの縦糸部70及び横糸部72によってバックレスト部34がシートバックフレーム32から吊り下げられている。なお、バックレスト部34は、実質的に、横糸部72によってシートバック上下方向及びシート左右方向に位置決め(支持)されているため、縦糸部70が省略された構成にしてもよい。
一方、外周支持部38は、複数(ここでは3つ)のワイヤ(架渡部材:張力部材)74、76、78によって構成されている。シートバック14の上部におけるシート幅方向両端部に設けられたワイヤ74、76は、ワイヤ固定部54とワイヤ固定部56との間にそれぞれ架け渡されている。これらのワイヤ74、76は、バックレスト部34に凭れ掛る乗員の両肩よりもシート幅方向外側に位置するように設けられている。また、シートバック14の下端部におけるシート幅方向中央部に設けられたワイヤ78は、ワイヤ固定部60の前端部とワイヤ固定部68の後端部との間に架け渡されている。
これにより、バックレスト部34の上端部におけるシート幅方向両端部と、バックレスト部34の下端部におけるシート幅方向中央部とが、それぞれワイヤ74、76、78を介してシートバックフレーム32に連結されている。これらのワイヤ74、76、78は、バックレスト部34のシートバックフレーム32に対するシートバック後方側への変位を規制すると共に、シートバック前方側及びシートバック幅方向への変位を所定の範囲内に制限している。
一方、引張コイルバネ40は、一端部(上端部)がサブフレーム42のロア部42Cにおけるシート幅方向中央部に係止されている。この引張コイルバネ40の他端部(下端部)は、シートクッションフレーム18の後端部に設けられたリヤフレーム19のシート幅方向中央部に係止されている。この引張コイルバネ40は、サブフレーム42のロア部42Cにおけるシート幅方向中央部を、シートバック下方側かつシートバック後方側へ向けて付勢している。
上記構成のシートバック14では、バックレスト部34のサブフレーム42がシートバックフレーム32に対してワイヤ74、76、78を介して支持されている。そして、このサブフレーム42に張設された複数の横糸部材62、シートバックフレーム32の上端部に張設された上端横糸部材58、及びネット状部材64によって、シートバック14に凭れ掛る乗員の背部が支持される。このシートバック14のバックレスト部34は、乗員の腰椎及び胸椎(ここでは腰椎の全部及び胸椎の大部分)を支持可能な大きさに形成されている。
上記のバックレスト部34は、吊り下げ部36を介してシートバックフレーム32から吊り下げられているため、ワイヤ74、76、78が撓んだり伸縮したりする範囲内でシートバックフレーム32に対して回動可能とされている。この回動には、シートバック前後方向に沿った回動軸線L2(仮想線:図2参照)回りのシート幅方向への回動(揺動)と、シートバック上下方向に沿った回動軸線L3(仮想線:図2参照)回りの回動とが含まれている。
上記のシート幅方向への回動は、バックレスト部34の上端部に配置された横糸部材62と縦糸部70と横糸部72との固定部を回動中心Cとした車両のロール方向への回動である。また、上記のシートバック上下方向に沿った回動軸線回りの回動は、上記固定部を回動中心Cとした車両のヨー方向への回動である。この回動中心Cは、シートバック14の幅方向中央部で且つシートバック14に凭れ掛る乗員の胸椎が位置する高さに設定されており、乗員の胸椎に対してシートバック後方から対向する。本実施形態では、この回動中心Cが乗員の左右の肩甲骨の中央付近に対してシートバック後方から対向するように設定されている。この回動中心Cは、実質的に、吊り下げ部36の横糸部72によって規定されている。つまり、この横糸部72は、回動中心規定部として捉えることができるものである。
なお、本実施形態では、AM50(米国成人男性の50パーセンタイルのダミー人形)を車両用シート10に標準姿勢で着座させ、当該AM50の胸椎の位置を基準にして上記の回動中心Cが設定される。
また、本実施形態では、バックレスト部34がシートバックフレーム32に対してシート幅方向に回動する際には、サブフレーム42のロア部42Cとシートクッションフレーム18のリヤフレーム19との間に架け渡された引張コイルバネ40が引張り力を受けて伸ばされる。このため、シートバックフレーム32に対してシート幅方向へ回動したバックレスト部34は、引張コイルバネ40の付勢力によって、シートバックフレーム32に対するシート幅方向への回動範囲の中央位置(図1〜図3に示される位置)へと自動的に復帰するようになっており、通常時には、上記中央位置に保持されている。
また、本実施形態では、車両用シート10に標準姿勢で着座している乗員がシートバック14に凭れ掛っている状態では、バックレスト部34における着座圧力分布の積分値の中心(以下、着力点と称する)が、乗員の第1腰椎付近に位置するように設定されている。また、この着力点は、乗員の上体の重心よりも若干下方側に位置するように設定されている。
(作用及び効果)
次に、本第1実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成の車両用シート10では、シートバック14が、乗員の背部を支持するバックレスト部34を備えている。このバックレスト部34は、吊り下げ部36によりシートバックフレーム32に対してシート幅方向へ回動可能に連結されている。また、このバックレスト部34は、外周側の複数箇所(ここでは三箇所)がワイヤ74、76、78によりシートバックフレーム32に対して連結されている。これらのワイヤ74、76、78は、バックレスト部34をシートバックフレーム32に対して支持させると共に、上記の回動を許容する。
このように、バックレスト部34における外周側の複数箇所がワイヤ74、76、78を介してシートバックフレーム32に支持されているため、乗員からバックレスト部34に入力される荷重を分散することができる。これにより、本車両用シート10では、車両の停車時及び走行時(直進時、加速時、旋回時など)に乗員からバックレスト部34に入力される荷重に対する剛性を、従来よりも効率的に確保することに寄与する。
また、本実施形態では、シートバック14のバックレスト部34によってシートバック14に凭れ掛る乗員の胸椎及び腰椎が支持される。このバックレスト部34の回動中心Cは、乗員の胸椎が位置する高さに設定されており、乗員がバックレスト部34から受ける支持反力の着力点及び乗員上体の重心よりもシートバック上方側に位置している。
このため、例えば、車両の旋回や路面からの外乱等によって乗員上体にシート幅方向の外力F1(図5参照:以下、横力F1と称する)が作用した際には、回動中心Cと着力点FPとの距離をモーメントアーム長とする力のモーメントMが発生する。このモーメントMの発生により、乗員背部とバックレスト部34との間には、シートバックせん断方向に沿い、且つ乗員の上体が横力F1の作用方向に倒れることを抑える方向の力(摩擦力)が作用する。この力は、乗員背部とバックレスト部34との接触部分の全体に作用し、特に着座圧力の高い腰椎の着座面から背中に向けて作用する。これにより、バックレスト部34が回動中心C回りに横力F1の作用方向へ回動する(図4に実線で示されるバックレスト部34参照)。
この際には、乗員は、図5に示されるように、上体の重心UGよりもシートバック上方側に位置する回動中心C付近でバックレスト部34からシート幅方向の支持力F2を受ける一方、着力点FP付近(第1腰椎付近)がバックレスト部34と共に横力F1の作用方向へ変位する。これにより、乗員の上体におけるより高い位置(ここでは重心UGよりも高い位置にある胸部)にシート幅方向の支持力F2を作用させることができる。また、乗員の脊椎が横力F1の作用方向に凸を成すように湾曲されることにより、上体の剛性を高めることができる。つまり、乗員は、横力F1の作用方向の体幹側方筋を伸ばすと共に、横力F1の作用方向とは反対側の体幹側方筋を縮めることにより、シート幅方向の剛性を高めることができる。以上のことから、乗員の姿勢保持性を向上させることに寄与する。
なお、乗員の背部を支持するバックレスト部がシートバックフレームに固定されている一般的な車両用シートのシートバックでは、図7に示されるように、乗員の上体に横力F1が作用した際に、乗員の腰部(腰椎)L付近がシートバックからシート幅方向の支持力F2を受ける。この場合、乗員は、横力F1の作用方向へ移動しようとする胸部C及び頭部Hを自らの筋力によって支える必要があるため、上体におけるシート幅方向の支持効率が悪くなる。このような支持効率の悪化を抑制するために、一般的なシートバックでは、シート幅方向の側部に大型なサイドサポート部(膨出部)を設定し、当該サイドサポート部によって乗員の上体をシート幅方向から支持する構成をとっている。しかしながら、上記のようなサイドサポート部では、乗員の体形や体格差によって、サポート性能と座り心地との両立が困難になると共に、シートバックが大型化する原因にもなる。
これに対し、本実施形態では、図6に示されるように、乗員の胸部Cがシートバック14からシート幅方向の支持力F2を受けるため、乗員が筋力によって胸部Cを支える必要性を低下させることができる。しかも、乗員の第1腰椎付近がバックレスト部34と共に横力F1の作用方向へ移動することにより、図6に示される如く、乗員の胸部Cがシート幅方向において頭部H及び腰部Lとは逆方向へ移動する。これにより、乗員の頭部Hが外力の作用方向とは反対側へ傾くため、頭部Hに作用する重力におけるシート幅方向の分力と、頭部に作用するシート幅方向の外力との吊り合いによって頭部Hの姿勢を安定させることが可能になる。その結果、乗員が筋力によって頭部Hを支える必要性を低下させることができる。したがって、旋回時及び外乱時における乗員の姿勢保持性を向上させることに寄与する。また、前述したようなサイドサポート部を不要或いは最低限の大きさにすることができ、乗員の体形や体格差によらず、座り心地を良好にすることができると共に、シートバック14の小型化に寄与する。
さらに、本実施形態では、車両用シート10が運転席とされているため、上述の如きバックレスト部34の回動が、乗員(ドライバ)の操舵操作性の向上に寄与する。つまり、操舵操作を行うドライバは、ステアリングを回動させるために、車両の旋回方向内側の肩部を、旋回方向外側の肩部に対して車両上下方向において相対的に下方に移動させる。この際には、ドライバは、胸部がシート幅方向において頭部及び腰部とは逆方向へ移動するように脊椎を曲げる(図5及び図6参照)ことにより、楽な姿勢で操舵操作を行うことができる。この点、本実施形態では、前述した如きバックレスト部34の回動によって、上記のような脊椎の曲がりや旋回方向内側の肩部の下方移動を促進することができる。これにより、操舵操作を行うドライバは、意識的又は無意識的に楽な姿勢をとることができる。
また、ドライバがステアリングを回動させる際には、旋回方向内側の肩部を旋回方向外側の肩部に対して相対的に後方に移動させることにより、楽な姿勢で操舵操作を行うことができる。この点においても、本実施形態では、バックレスト部34がワイヤ74、76、78の撓み及び伸縮によってシートバックフレーム32に対する車両ヨー方向の回動を許容されるため、上記のような旋回方向内側の肩部の後方移動を促進することができる。これにより、操舵操作性を一層向上させることができる。
しかも、本実施形態では、シートクッション12の座部24が車両のロール方向及びヨー方向に回動可能とされているため、乗員は、骨盤と肩甲骨とを車両のロール方向及びヨー方向において逆方向に回動させることができる。これにより、乗員がより自然な姿勢で操舵操作を行うことが可能になるので、乗員の操舵操作性及び姿勢保持性をより一層向上させることができる。
なお、図4〜図7では、車両左方向の横力F1が作用した際のバックレスト部34及び座部24の回動位置と、乗員の上体の挙動とを示している。車両右方向の横力が作用した際には、図4〜図7と左右対称になる以外は同様である(図4の二点鎖線参照)ため、図4の二点鎖線以外の図示を省略する。
また、本実施形態では、バックレスト部34において回動中心Cが設けられた部位が、吊り下げ部36を介してシートバックフレーム32から吊り下げられている。これにより、バックレスト部34をシートバックフレーム32に対してシート幅方向に回動可能(揺動可能)に連結することができるので、回動連結部を簡単な構成にすることができる。しかも、この吊り下げ部36は、線状(糸状)の部材である縦糸部70及び横糸部72によって構成されているため、吊り下げ部36の構成を極めて簡単なものにすることができる。
さらに、本実施形態では、バックレスト部34の上端部におけるシート幅方向両端部と、バックレスト部34の下端部におけるシート幅方向中央部とが、外周支持部38を構成するワイヤ74、76、78を介して三点でシートバックフレーム32に連結(支持)されている。これにより、簡単な構成でバックレスト部34の支持を安定させることができる。また、これらのワイヤ74、76、78が張力を受けることにより、バックレスト部34をシートバックフレーム32に対してシートバック前後方向に支持させることができると共に、ワイヤ74、76、78の撓み及び伸縮によって回動中心C回りのバックレスト部34の回動を許容することができる。これにより、外周支持部38を簡単な構成にすることができる。
しかも、本実施形態では、バックレスト部34の上端部におけるシート幅方向両端部に設けられたワイヤ74、76は、乗員の両肩部よりもシート幅方向外側に位置している。このため、バックレスト部34に対して乗員の一方の肩部から荷重が入力された際には、上記一方の肩部が作用点となり、ワイヤ74、76のうち上記一方の肩部から遠いワイヤが支点となり、上記一方の肩部に近いワイヤが力点となることにより、梃子の原理で上記一方の肩部からの荷重を受け止めることができる。これにより、ワイヤ74、76に要求される剛性を低下させることができ、乗員からの荷重に対する剛性を効率的に確保することができる。この点は、バックレスト部34の下端部におけるシート幅方向中央部に設けられたワイヤ78についても同様である。
なお、背景技術の欄で説明した車両用シート装置では、バックレスト部をシートフレームに対して車両のロール方向に回動可能に支持するために、回転軸及び軸受(ベアリング等)からなる回動機構を用いている。このため、バックレスト部における車両ヨー方向及び車両ピッチ方向の支持剛性を確保するために、回転軸や軸受を支持するブラケットの剛性を十分に確保する必要があり、質量が増加する原因になる。また、耐久性や衝突時の安全性を確保する観点でも改善の余地がある。この点、本実施形態では、上記のように、乗員からの荷重に対する剛性を効率的に確保することができるので、軽量化、耐久性の向上、及び衝突安全性の向上に寄与する。
また、背景技術の欄で説明した車両用シート装置では、バックレスト部のシート幅方向中央位置で回動機構を成立させており、乗員の両肩部よりもシート幅方向内側で車両ヨー方向のモーメントを支持するため、バックレスト部の面内剛性の不足によって、乗員の支持効率が悪くなる。つまり、バックレスト部の面内剛性は、バックレスト部のフレームの剛性に依存するため、フレームの変形がそのまま乗員に対する支持反力の低下につながってしまう。特に、フレームの変形によって車両の旋回方向外側の肩部の保持力が低下し、乗員上体のサポート性が損なわれる可能性がある。このため、バックレスト部の面内剛性を十分に確保するために、例えば、フレーム枠と、該フレーム枠から回転軸へ向けて延びる複数の補強部とを設定する必要があり、質量及び製作工程上のコストが高くなってしまう。
この点、本実施形態では、バックレスト部34の上端部におけるシート幅方向両端部がシートバックフレーム32に支持されるため、バックレスト部34の面内剛性によらず、乗員の両肩部の支持を安定させることができる。これにより、バックレスト部34の軽量化及び低コスト化に寄与する。また、このバックレスト部34では、外周部に設けられたサブフレーム42が外周支持部38を介してシートバックフレーム32に支持されており、当該サブフレーム42に張設された伸縮性を有する伸縮部材(複数の横糸部材62及びネット状部材64)によって乗員の背部が支持される。このため、バックレスト部34において、シートバックフレーム32に連結される外周部の剛性をサブフレーム42によって確保しつつ、上記伸縮部材によって乗員の背部を包み込むように支持することができる。これにより、乗員背部がバックレスト部34に対してシート幅方向に不用意に位置ずれしないようにすることができる。また、複数の横糸部材62及びネット状部材64が乗員の背部にフィットすることにより、背部が受ける圧力を分散させることができるので、それによっても上記のような不用意な変位を抑制できる。
なお、背景技術の欄で説明した車両用シート装置では、前述したように、バックレスト部の中央部のみが回転軸及び軸受を介してシートバックフレームに連結されている。このような構成では、バックレスト部とシートバックフレームとの間隔をシートバック前後方向に広くとることが困難であり、バックレスト部の表層特性を柔らかく設定し難い。その結果、乗員の背部が受ける圧力分布が急峻となるため、車両旋回時等における乗員の姿勢の変化によって上記圧力分布の中心が急激に移動し、乗員上体がバックレスト部に対してシート幅方向に不用意に変位する可能性がある。この点、本実施形態では、複数の横糸部材62及びネット状部材64によってバックレスト部34の表層特性を柔らかく設定することができるため、上述のような不用意な変位を抑制できる。また、前述したモーメントMを良好に発生させることにも寄与する。
また、本実施形態では、バックレスト部34をシートバックフレーム32に対する回動範囲の中央側へ付勢する引張コイルバネ40を有している。このため、シートバックフレーム32に対してシート幅方向に回動したバックレスト部34を、引張コイルバネ40の付勢力によって、シートバックフレーム32に対する回動範囲の中央側へ自動的に復帰させることができる。これにより、乗員が降車した際などに、バックレスト部34の姿勢を正す(シートバック上下方向に真っ直ぐにする)ことができる。
しかも、本実施形態では、バックレスト部34が吊り下げ部36によってシートバックフレーム32から吊り下げられており、上記の引張コイルバネ40がバックレスト部34をシートバック下方側へ付勢している。これにより、バックレスト部34のシートバック上下方向の位置決めを、極めて簡単な構成で成立させることができる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前記第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、前記第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
<第2の実施形態>
図8には、本発明の第2実施形態に係る車両用シートのシートバック80が斜視図にて示されている。このシートバック80では、バックレスト部34のサブフレーム42に、伸縮部材としての放射状ネット部82が張設されている。この放射状ネット部82は、シートバック80の上部におけるシート幅方向中央部に位置するリング部材84と、該リング部材84からサブフレーム42のサイド部42A及びロア部42Cへ向けて放射状に延びる複数の放射糸部材86とを備えている。
リング部材84は、シートバック14の幅方向中央部で且つシートバック14に凭れ掛る乗員の胸椎が位置する高さに配置されている。詳細には、このリング部材84は、乗員の左右の肩甲骨の中央付近に対してシートバック後方から対向する位置に配置されている。また、複数の放射糸部材86は、可撓性及び伸縮性を有する線状(糸状)の部材であり、一端部がリング部材84に固定されると共に、他端部がサブフレーム42に固定されている。
また、このシートバック80では、回動連結部としての吊り下げ部88が、リング部材84からシートバック80の上方側へ向けて放射状に延びる複数の放射糸部材90によって構成されている。これらの放射糸部材90は、可撓性及び伸縮性を有する線状(糸状)の部材であり、一端部がリング部材84に固定され、他端部がシートバックフレーム32のアッパフレーム部48に固定されている。また、これらの放射糸部材90のうち、シートバック80の幅方向中央部に位置する放射糸部材90は、中間部が上端横糸部材58のシート幅方向中間部に固定されている。これら複数の放射糸部材90によってバックレスト部34がシートバックフレーム32から吊り下げられている。さらに、上記複数の複数の放射糸部材86、90は、リング部材84の回りに環状に設定された複数の環状糸部材87によって互いに連結されている。これらの環状糸部材87は、放射状ネット部82及び吊り下げ部88の構成部材として共用されている。
このシートバック80では、上記複数の放射糸部材86、90及び環状糸部材87によって略クモの巣状の乗員支持部が形成されており、当該乗員支持部によってシートバック80に凭れ掛かる乗員の背部が支持される。さらに、このシートバック80は、リング部材84と複数の環状糸部材87との間に、トルク伝達部材94が設けられている。このトルク伝達部材94は、例えばゴム等の弾性体によってシートバック上下方向に長尺なリング状に形成されており、複数の放射糸部材86及び複数の放射糸部材90の各中間部に固定されている。上記以外の構成は、前記第1実施形態と同様である。
上記構成のシートバック80では、バックレスト部34は、シートバックフレーム32に対して吊り下げ部88及び複数のワイヤ74、76、78を介して連結されている。吊り下げ部88は、バックレスト部34をシートバックフレーム32に対してリング部材84を回動中心としてシートバック幅方向に回動可能に連結しており、複数のワイヤ74、76、78は、バックレスト部34の外周側の複数箇所(ここでは三箇所)をシートバックフレーム32に連結している。これらのワイヤ74、76、78は、バックレスト部34をシートバックフレーム32に支持させると共に、上記の回動を許容する。従って、前記第1実施形態と基本的に同様の作用効果を得ることができる。
しかも、このシートバック80では、複数の放射糸部材86、90が前述したモーメントM(図5参照)と交差する方向に設定されており、これらの放射糸部材86、90がトルク伝達部材94によってモーメントMの発生方向に連結されている。これにより、モーメントMをより大きく発生させることができるので、乗員の姿勢保持性や操舵操作性を、第1実施形態よりも向上させることができる。
<第3の実施形態>
図9Aには、本発明の第3実施形態に係る車両用シートのシートバック100における部分的な構成が斜視図にて示されており、図9Bには、同構成が正面図にて示されている。このシートバック100では、外周支持部102が複数(ここでは3つ)のリンク部材104、106、108によって構成されている。
シートバック100の上部におけるシート幅方向両端部に設けられたリンク部材104、106は、サブフレーム42における左右のサイド部42Aの上端部と、シートバックフレーム32における左右のサイドフレーム部46の上端部との間にそれぞれ架け渡されている。これらのリンク部材104、106は、各サイド部42Aの上端部に一端部が回転可能に連結された第1リンク110と、各サイドフレーム部46の上端部に一端部が回転可能に連結された第2リンク112とを備えている。第1リンク110及び第2リンク112の他端部は、これらのリンク104、106の一端部に対してシート幅方向外側で互いに回転可能に連結されている。
また、シートバック100の下端部におけるシート幅方向中央部に設けられたリンク部材108は、サブフレーム42におけるロア部42Cのシート幅方向中央部と、シートバックフレーム32におけるロアフレーム部50のシート幅方向中央部との間に架け渡されている。このリンク部材108は、ロアフレーム部50のシート幅方向中央部に一端部が回転可能に連結された第1リンク110と、ロア部42Cのシート幅方向中央部に一端部が回転可能に連結された第2リンク112とを備えている。第1リンク110及び第2リンク112の他端部は、これらのリンク110、112の一端部に対してシート幅方向一側で互いに回転可能に連結されている。
上述したリンク部材104、106、108では、第1リンク110及び第2リンク112の回転軸線がシートバック前後方向に沿っている。これらのリンク部材104、106、108は、サブフレーム42をシートバックフレーム32に支持させると共に、シートバックフレーム32に対するサブフレーム42のシートバックせん断方向の変位を所定の範囲内で許容する。この実施形態では、上記以外の構成は、前記第1実施形態と同様とされている。この実施形態においても、前記第1実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
<第4の実施形態>
図10Aには、本発明の第4実施形態に係る車両用シートのシートバック120における部分的な構成が斜視図にて示されている。このシートバック120では、外周支持部122が複数(ここでは3つ)のコイルバネ状部材124、126、128によって構成されている。それ以外の構成は、前記第1実施形態に係るシートバック14と同様である。
コイルバネ状部材124、126、128は、コイルバネの玩具であるスリンキー(登録商標)と同様の構成のものであり、引張コイルバネ状に形成されている。これらのコイルバネ状部材124、126、128は、軸線方向がシートバック前後方向に沿う姿勢で、シートバック120の上部におけるシート幅方向両端部と、シートバック120の下端部におけるシート幅方向中央部とにそれぞれ設けられている。シートバック120の上部におけるシート幅方向両端部に設けられたコイルバネ状部材124、126は、軸線方向一端部が左右のサイド部42Aの上端部に板状のブラケット130を介して固定されており、軸線方向他端部が左右のサイドフレーム部46の上端部に板状のブラケット132を介して固定されている。
また、シートバック120の下端部におけるシート幅方向中央部に設けられたコイルバネ状部材128は、軸線方向一端部がロア部42Cのシート幅方向中央部に板状のブラケット134を介して固定されており、軸線方向他端部がロアフレーム部50のシート幅方向中央部に板状のブラケット136を介して固定されている。
これらのコイルバネ状部材124、126、128は、サブフレーム42をシートバックフレーム32に支持させると共に、シートバックフレーム32に対するサブフレーム42のシートバックせん断方向の変位を所定の範囲内で許容する(図10B参照)。この実施形態では、上記以外の構成は、前記第1実施形態と同様とされている。この実施形態においても、前記第1実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
<第5の実施形態>
図11には、本発明の第5実施形態に係る車両用シートのシートバック140の構成が斜視図にて示されている。このシートバック140では、シートバックフレーム32の上端部及び下端部には、巻取軸142、144が設けられている。これらの巻取軸142、144は、それぞれ軸線方向がシートバック幅方向に沿う姿勢で配置されている。上方側の巻取軸142は、軸線方向中間部がアッパフレーム部48の上端部に回転可能に支持されており、下方側の巻取軸144は、軸線方向両端部が左右のサイドフレーム部46に回転可能に支持されている。
また、この実施形態では、吊り下げ部88が、複数の放射糸部材90及び環状糸部材87によって略クモの巣状に形成されている。複数の放射糸部材90のうち、シートバック80の幅方向中央部に位置する放射糸部材90(以下、縦糸部材90Aと称する)は、シートバック140の上端側へ延長されると共に、上端部が前述した巻取軸142に係止されており、当該巻取軸142の回転によって当該巻取軸142に巻き取られるようになっている。また、この縦糸部材90Aは、サブフレーム42の下端側へ延長されると共に、サブフレーム42のロア部42Cにおけるシート幅方向中央部に固定されている。さらに、この縦糸部材90Aは、シートバックフレーム32の下端側へ延長されると共に、下端部が前述した巻取軸144に係止されており、当該巻取軸144の回転によって当該巻取軸144に巻き取られるようになっている。
さらに、この実施形態では、シートバック140の左側部及び右側部にそれぞれ上下一対の支持部材146が配設されており、これらの支持部材146によって外周支持部38が構成されている。これらの支持部材146は、円柱状に形成されており、軸線方向がシートバック前後方向に沿う姿勢で配置されている。これらの支持部材146は、一端部(前端部)がサブフレーム42のサイド部42Aに固定され、他端部(後端部)がシートバックフレーム32のサイドフレーム部46に固定されており、バックレスト部34の外周部をシートバックフレーム32に連結している。これらの支持部材146は、シートバック前後方向(シートバック面直方向)の剛性が、シートバックせん断方向の剛性よりも高い材料(例えば、アイシン精機株式会社製の樹脂弾性体である「FINE REVO(登録商標)」)によって構成されている。これにより、シートバックフレーム32に対してサブフレーム42が支持されると共に、回動中心C回りのサブフレーム42のシート幅方向への回動が許容される構成になっている。したがって、前記第1実施形態と基本的に同様の作用効果を得ることができる。
しかも、この実施形態では、巻取軸142、144を回転させることにより、縦糸部材90Aがシートバック上下方向に移動される。これにより、回動中心Cにおけるシートバック上下方向の位置を所定の範囲内で変更(調節)することができる。つまり、巻取軸142、144及び縦糸部材90Aによって回動中心Cの上下位置を調節するための調節機構150が構成されている。これにより、乗員の体格や好み等に応じて、バックレスト部34の回動特性を変更(調節)することができる。
<実施形態の補足説明>
前記各実施形態では、バックレスト部34が回動連結部である吊り下げ部36、88によってシートバックフレーム32から吊り下げられた構成にしたが、本発明はこれに限らず、回動連結部の構成は適宜変更可能である。例えば、回転軸及び軸受などからなる回動機構によって回動連結部を構成してもよい。その場合、例えば、外周支持部によるバックレスト部とシートバックフレームとの連結箇所を二箇所とし、当該二箇所と上記回動機構の3点でバックレスト部をシートバックフレームに支持させる構成にしてもよい。
また、前記各実施形態では、バックレスト部34がシートバックフレーム32に対して回動中心C回りにシート幅方向へ回動される構成にしたが、これに限らず、シートバックにおいて乗員を支持する支持面(表層:背凭れ面)が、乗員の胸椎が位置する高さに設定された面内変形中心回りに面内変形する構成にしてもよい。その場合でも、前述した如きモーメントMを発生させることができるので、乗員の姿勢保持性及び操舵操作性の向上に寄与することができる。
また、前記各実施形態では、バックレスト部34が乗員の胸椎及び腰椎を支持可能とされた構成にしたが、本発明はこれに限らず、バックレスト部は、乗員の胸椎及び腰椎のうち少なくとも腰椎を支持可能とされていればよい。
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。