以下、本発明の一実施形態である演出装置50及びパチンコ機1について、図面を参照して説明する。まず、演出装置50を備えるパチンコ機1の機械的な構成について、図1、図2を参照して説明する。なお、以下の説明において、パチンコ機1の上下方向、左右方向、及び表裏方向については、特に断りがない場合、遊技盤2の盤面の向きを基準とする。即ち、ホールに設置されたパチンコ機1で遊技を行う遊技者からパチンコ機1を見た向き(即ち図1に図示されるパチンコ機1の向き)が基準となる。以下では便宜上、表裏方向を前後方向として、説明を行う。また、パチンコ機1に使用される装置や部品についても、パチンコ機1に組み付けられた場合の向きを基準に、上下方向、左右方向、及び前後方向を規定するものとする。
図1、図2に示すように、パチンコ機1の上段側には遊技盤2が設けられている。遊技盤2は略正方形であり、透明なガラス板を保持した前面枠13によって前面を保護されている。遊技盤2の下段側には上皿5及び下皿6が設けられている。上皿5は遊技盤2の下部に設けられ、発射機(図示略)に遊技球を供給し、且つ賞品球を受ける。上皿5の上部中央には、遊技者によって操作される操作ボタン9が配設されている。下皿6は上皿5の直下に設けられ、上皿5から溢れたり排出されたりする賞品球を受ける。下皿6の右横には、遊技球の発射を調整する発射ハンドル7が設けられている。また、前面枠13の上部で左右の角には、スピーカ48が夫々設けられている。
遊技盤2の前面には、ガイドレール3で囲まれた略円形の遊技領域4が形成されている。発射機によって発射された遊技球は、遊技領域4内を流下する。遊技領域4の略中央には、LCD(液晶ディスプレイ)等を用いて構成される図柄表示装置28が設けられている。図柄表示装置28は遊技盤2の背面側に配置され、遊技盤2の略中央に設けられた開口を介し、表示面27をパチンコ機1の前面に露出する。表示面27には動画、メッセージ等の様々な映像が表示され、特に、大当り判定の結果を報知するためのデモ図柄が表示される。パチンコ機1は、複数(本実施形態では3つ)のデモ図柄を変動させた後に、大当たり判定の結果を示すデモ図柄の組み合わせを確定表示させる報知演出を実行することで、大当たり判定の結果を遊技者に報知する。
遊技盤2の開口の縁部には装飾等が施され、図柄表示装置28の外縁を取り囲む装飾枠14が設けられている。図柄表示装置28は、装飾枠14の開口部19を介し、表示面27をパチンコ機1の前面に露出する。装飾枠14には、装飾枠14と共に各種演出を行う複数の演出装置が設けられている。演出装置は装飾枠14内、あるいは装飾枠14と図柄表示装置28との間に配置される。演出装置は、遊技状態に応じ、その場で、あるいは図柄表示装置28の前側にせり出して、LED等の発光体を発光させる等の演出を行う。そのうちの一つである演出装置50は、図柄表示装置28の上側外縁に沿って設けられている。詳細については後述するが、演出装置50は、非演出時には正面から見て装飾枠14の開口部19の上側縁部に隠れた位置に配置される(図2参照)。演出装置50は、演出時にはモータの動力を用いて装飾体を駆動し、更にLED等の発光体を発光させ、図柄表示装置28及びスピーカ48等と連動しながら様々な演出を行う。
図柄表示装置28の左方には普通図柄始動ゲート12が設けられている。普通図柄始動ゲート12の下方には大入賞口17が設けられている。図柄表示装置28の下方には、第一特別図柄始動入賞口15が設けられている。第一特別図柄始動入賞口15の直下には第二特別図柄始動電動役物16が設けられている。第二特別図柄始動電動役物16は開閉部材を備える。遊技球は、開閉部材が開放された場合にのみ第二特別図柄始動電動役物16に入賞することができる。第一特別図柄始動入賞口15、第二特別図柄始動電動役物16に遊技球が入賞すると、夫々所定数の遊技球が賞品球として払い出される。第二特別図柄始動電動役物16の下側には、遊技領域4の中央下端部まで流下した遊技球を回収するアウト口18が設けられる(図2参照)。
遊技領域4の右斜め下部には図柄表示部24(図2参照)が設けられている。図柄表示部24は、普通図柄表示部、第一特別図柄表示部、第二特別図柄表示部、普通図柄記憶数表示LED、第一特別図柄記憶数表示LED、及び第二特別図柄記憶数表示LEDを備える。
本実施形態では、第一特別図柄始動入賞口15へ遊技球が入賞すると、第一大当り判定が行われ、判定の結果に応じて複数の特別図柄のうちの1つが図柄表示部24の第一特別図柄表示部に表示される。その結果、大当たりであると判定されると、大入賞口17が開放される大当たり遊技が実行される。大入賞口17に入賞した遊技球の流路には、特定領域が形成されている。パチンコ機1では、大当たり遊技中に遊技球が大入賞口17内の特定領域を通過することが、大当たり遊技終了後に確率変動状態を生起する条件となっている。なお、遊技盤2の背面側には、遊技の主制御、各種演出等を制御する制御部(図示略)が設けられている。
また、普通図柄始動ゲート12を遊技球が通過すると普通当り判定が行われて、判定結果が図柄表示部24の普通図柄表示部に表示される。その結果、普通当たりであると判定されると、第二特別図柄始動電動役物16が開放される。第二特別図柄始動電動役物16へ遊技球が入賞すると、第二大当り判定が行われ、判定結果は図柄表示部24の第二特別図柄表示部に表示される。その結果、大当たりであると判定されると、上記同様に大当たり遊技が実行される。
普通図柄記憶数表示LEDは、普通図柄作動保留球数を4つまで表示する。普通図柄作動保留球数とは、普通図柄始動ゲート12を通過し、且つ普通図柄表示部に普通当り判定の結果がまだ表示されていない遊技球の個数である。図柄表示部24の第一特別図柄記憶数表示LEDは、第一特別図柄作動保留球数を4つまで表示する。第一特別図柄作動保留球数とは、第一特別図柄始動入賞口15に入賞し、且つ第一大当り判定の結果がまだ表示されていない遊技球の個数である。第二特別図柄記憶数表示LEDは、第二特別図柄作動保留球数を4つまで表示する。第二特別図柄作動保留球数とは、第二特別図柄始動電動役物16に入賞し、且つ第二大当り判定の結果がまだ表示されていない遊技球の個数である。
図示しないが、パチンコ機1の背面側には、各種基板を備えた制御部が設けられている。制御部の各基板は、CPU、RAM、ROM等を備えており、パチンコ機1の各種動作を制御する。例えば、主基板は、普通当たり判定、大当たり判定等を行い、パチンコ機1の主制御を司る。中継基板は、主基板で行われた制御結果に基づいて、大入賞口17を開閉するソレノイドを駆動する。また、演出基板のCPU(図示略)は、演出装置50を作動する駆動モータ52(図3参照)の駆動制御、演出装置50が備える電飾用のLED(図示略)等の発光制御等を行う。
次に、演出装置50の構造について説明する。前述したように、本実施形態の演出装置50は、図柄表示装置28の上側外縁に沿って装飾枠14内に設けられる。図3〜図5に示すように、演出装置50は、前後方向に厚みを有し、左右方向に延びる背板51に、演出を行う演出体80と、演出体80を回動する駆動モータ52を組み付けた装置である。演出体80は、先端部81と基端部82との間で延び、先端部81に、演出時に動作する可動部83を備える。基端部82には、前後方向の両側に、同軸且つ一対の軸体84,85が設けられる。演出体80は、軸体84,85を中心に回動する。演出体80の詳細な構成は後述する。
背板51の前面には、前カバー53が取り付けられる。前カバー53は、背板51の左右方向の略中央よりも左寄りの位置から右端にかけての部分に設けられる。前カバー53は、前板54、天板55、左側板56及び右側板57を有する。前板54は、背板51の前方に配置され、背板51に対向する。天板55、左側板56及び右側板57は、夫々、前板54の上端、左端及び右端から後方へ向けて延びる。前カバー53は、天板55及び右側板57の後端部分がねじ留めされて、背板51に固定される。前カバー53と背板51は、前板54、天板55、左側板56、右側板57及び背板51を外壁とし、下部を開放する箱状の収納部60(図3参照)を構成する。背板51の下端部は、収納部60の開口よりも下方に位置する。収納部60には、非演出時に演出体80が収納される。
背板51の略中央には軸受58が形成されている。軸受58は、演出体80の基端部82後側に設けられた軸体84を支持する。背板51の軸受58の位置に対応する前板54の位置にも、軸受59が形成されている。軸受59は、演出体80の基端部82前側に設けられた軸体85を支持する。一対の軸受58,59は、収納部60内を挟んで同軸となる位置に設けられる。演出体80は、一対の軸体84,85が一対の軸受58,59によって支持されることで、演出装置50に回動可能に組み付けられる。
軸受58の右上にはストッパ109が設けられている。ストッパ109は、非演出時に演出体80が収納部60内に収容されたとき、演出体80の本体部86の第一側壁88(図6参照)に当接し、演出体80の反時計回りへの回動を規制する。軸受58の左下にはストッパ110が設けられている。ストッパ110は、演出体時に演出体80が収納部60から露出されたとき、演出体80の本体部86の第二側壁89(図6参照)に当接し、演出体80の時計回りへの回動を規制する。
背板51の前面には、溝部67が形成される。溝部67は、背板51の下端部から収納部60内に延びる。詳細は後述するが、溝部67の右側壁68は、第一溝部69、第二溝部70、第三溝部71を有する(図9参照)。溝部67の右側壁68は、収納部60内への演出体80の収納時に演出体80の突片101(図6参照)に当接し、突片101を案内する。また、収納部60内で、軸受58,59よりも右方且つ上方の位置には、フォトセンサ103が設けられる。フォトセンサ103は、前カバー53の前板54の背面に、ねじ留めによって固定される。フォトセンサ103は、演出体80の遮蔽板102(図6参照)を検出する。フォトセンサ103は、収納部60に演出体80を収納するときの演出体80の位置決めに用いられる。
収納部60の左側には、棚板61が設けられる。棚板61は、ねじ留めによって背板51の前面に固定され、前方へ向けて棚状に突出する。棚板61上には、駆動モータ52が配置される。駆動モータ52は、例えばステッピングモータである。駆動モータ52は、カバー体66に覆われて保護される。駆動モータ52の出力軸(図示略)は、棚板61を上下に貫通する貫通穴内に挿通される。駆動モータ52の出力軸には、ピニオンギア62が固定される。ピニオンギア62は、棚板61の下側に配置され、上下方向を軸方向にして回転する。
ピニオンギア62にはラックギア63が噛合する。ラックギア63は左右方向に長く延びる。ラックギア63は歯面を後方へ向け、ピニオンギア62の前側に配置される。ラックギア63は、駆動モータ52の駆動によって回動するピニオンギア62に従動し、左右方向に移動する。棚板61の下部にはギアカバー64が取り付けられる。ギアカバー64は、ピニオンギア62とラックギア63とが噛合する部分を覆う。棚板61とギアカバー64は、夫々、ラックギア63の上端と下端を移動可能な状態で保持し、ラックギア63とピニオンギア62とが噛合した状態を維持する。
ラックギア63の右端部には、案内部65が設けられる。案内部65は上下方向に延びる溝形状に形成される。案内部65の上下両側の端部は閉じられ、案内部65は、前後方向に貫通する長円状の穴部として構成される。案内部65は、溝形状の穴部として簡易に構成することができるので、ラックギア63と一体に形成することができる。案内部65は、演出体80の伝達部104(後述)に係合する。案内部65の溝幅は、伝達部104に設けられるワッシャ105(図4参照)の外径よりも若干大きい。ラックギア63の左右方向への移動に伴い、案内部65は、伝達部104の上下方向への相対的な移動を案内する。
演出体80について説明する。以下の説明において、演出体80の本体部86が延びる方向を演出体80の延伸方向とし、可動部83が設けられた側を先端側、軸体84,85が設けられた側を基端側とする。また、延伸方向及び前後方向に直交する方向を演出体80の幅方向とし、演出体80の収納部60への収納時に上側に位置する側を一端側、下側に位置する側を他端側とする。
図6〜図8に示すように、演出体80の本体部86は、先端部81と基端部82との間で延伸方向に延びる。本体部86は、後側が開放するU字溝状に形成され、前壁87、第一側壁88、第二側壁89を備える。第一側壁88は、幅方向において、前壁87の一端部から後方へ向けて立ち上がる。第二側壁89は、前壁87の幅方向の他端部から後方へ向けて立ち上がる。本体部86の基端部82には、軸体84,85が設けられる。軸体84は、基端部82の後側で、本体部86の基端寄り、且つ第一側壁88寄りの位置に設けられる。軸体85は、基端部82の前側(前壁87側)で、本体部86の基端寄り、且つ第一側壁88寄りの位置に設けられる。前述したように、軸体84,85は、前後方向において同軸且つ一対に設けられる。
本体部86は、第一側壁88に遮蔽板102を備える。遮蔽板102は、前後方向に厚みを有する板状に形成される。遮蔽板102は、第一側壁88において前壁87寄りの位置に設けられ、幅方向一端側へ向けて突出する。演出体80の収納時、遮蔽板102は、収納部60内のフォトセンサ103(図5参照)が検出可能な位置に配置される。演出基板のCPUは、駆動モータ52の制御において、フォトセンサ103の検出結果に基づいて、演出体80の回動における原点位置(収納部60に収納された状態の演出体80の位置)を補正する。
図4に示すように、本体部86は、前壁87に伝達部104を備える。伝達部104は、基端部82において、軸体84よりも延伸方向先端側、且つ第二側壁89(図6参照)寄りの位置に設けられる。伝達部104は、前壁87の前方へ向けてピン状に突出する。ピン状の伝達部104は簡易な構成であるので、本体部86と一体に形成することができる。伝達部104には、樹脂製のワッシャ105が嵌められる。伝達部104は、ワッシャ105を介し、ラックギア63の案内部65の穴部内を挿通される。ワッシャ105は、ねじ留めによって伝達部104に組み付けられ、伝達部104と案内部65の係合を維持する。伝達部104は案内部65の溝内を移動することができる。本体部86が軸体84,85を軸に回動するので、伝達部104は案内部65に係合しながら、軸体84,85の軸心を中心に下側に膨らむ円弧状の軌道に沿って揺動する。演出体80は、本体部86の基端部82において、軸体84,85よりも先端部81も近い側に伝達部104を配置することで、回転半径を大きくすることができる。
このように、演出装置50は、駆動モータ52の駆動力をラック&ピニオン機構によって演出体80の伝達部104に伝達することができる。例えば駆動モータ52の駆動力を複数のギアを連結して伝達する場合と比べると、駆動力の伝達における損失が少なく、且つ駆動モータ52を演出体80から離れた位置に容易に配置することができる。
図6〜図8に示すように、本体部86の先端部81には、LED基板97と導光板98がねじ留めによって固定される。LED基板97は前面に複数のLEDを備え、演出時に所定の発光パターンに従ってLEDを発光する。導光板98はLED基板97の前面に取り付けられ、LED光の照射方向を誘導する。導光板98の基端部には、後方へ向けて立ち上がる板状の規制部材99が設けられる。規制部材99は、可動部83に設ける押え板96(後述)の延伸方向先端側への移動を規制する。規制部材99の後端には、切り欠き状の誘導部108が形成されている。LED基板97と導光板98がねじ留めされた状態で、規制部材99はLED基板97の基端部よりも後側に突出する。誘導部108は、LED基板97の基端部よりも後側に配置される。誘導部108は押え板96に係合し、押え板96の延伸方向への移動を誘導する。
本体部86の溝内にはソレノイド90が収容され、ねじ留めによって固定される。ソレノイド90のプランジャ91は、延伸方向先端側に突出する。プランジャ91の周囲には、圧縮ばね92が組み付けられる。圧縮ばね92の基端部には、皿状のばねガイド93が設けられる。ばねガイド93は、ソレノイド90の先端に当接する。プランジャ91の先端部107は、鍔状に形成されている。先端部107は、可動部83に接続される。
可動部83は、可動カバー94及び可動フレーム95を備える。可動フレーム95は透明な部材で形成され、LED基板97及び導光板98の前面側に配置される。可動フレーム95は前面が弧状の凸面状に形成され、LED基板97が発光するLED光を透過する。可動フレーム95は、LED基板97及び導光板98に対し、延伸方向に移動することができる。可動フレーム95の基端部には、保持部100が形成される。保持部100は、本体部86の幅方向略中央に配置される。保持部100には、プランジャ91の先端部107に係合する溝部が形成される。
保持部100の後側には、押え板96が取り付けられる。押え板96は前後方向に厚みを有する板状の部材である。押え板96は、本体部86の幅方向略中央に配置される。押え板96の基端部には、プランジャ91の先端部107に係合する溝部が形成されている。押え板96と保持部100は、プランジャ91の先端部107を前後方向に挟んで保持する。プランジャ91は、可動フレーム95に対して軸の周方向に回転可能な状態で抜け止めされる。故に可動フレーム95は、プランジャ91の軸線に対し、周方向に揺動することができる。即ち、可動部83は、ソレノイド90の駆動に伴う延伸方向への移動の際に、延伸方向に対する周方向にも揺動することができる。
押え板96の幅方向両端には、一対の当接部106が形成されている。当接部106が保持部100にねじ留めされることで、押え板96が可動フレーム95に固定される。可動部83が延伸方向先端側へ移動したとき、当接部106は、導光板98に設けた規制部材99の基端側の面に当接する。このときの可動部83の位置を、延伸方向において移動可能な範囲の最も先端側の位置である「突出位置」という(図6参照)。
押え板96は、導光板98の規制部材99に形成された誘導部108に係合する。誘導部108は、押え板96の延伸方向への移動を誘導する。押え板96の幅方向の長さは、誘導部108の幅方向の長さより短い。つまり誘導部108は、幅方向において、押え板96との間に所定の間隙を有する。故に押え板96は、誘導部108に対する幅方向への位置ずれが許容される。即ち、可動部83は、ソレノイド90の駆動に伴う延伸方向への往復移動の際に、幅方向にも移動することができる。
圧縮ばね92の先端部は、保持部100と押え板96の基端に当接する。圧縮ばね92は、ソレノイド90と保持部100及び押え板96との間に挟まれて、可動フレーム95を延伸方向先端側に向けて付勢する。即ち圧縮ばね92は、演出体80の本体部86に対し、可動部83を延伸方向先端側へ向けて付勢する。ソレノイド90の駆動時、ソレノイド90はプランジャ91を延伸方向基端側へ移動する。プランジャ91は、圧縮ばね92の付勢力に抗して圧縮ばね92を圧縮しつつ、可動部83を延伸方向基端側へ向けて移動させる。延伸方向において移動可能な範囲の最も基端側の位置に移動したときの可動部83の位置を、「退行位置」という(図8参照)。
押え板96の後面には、後方へ向けて突出する突片101が形成されている。突片101は、本体部86の幅方向略中央に設けられる。突片101は、演出体80を収納部60内に収納するときに、背板51の溝部67(図4参照)に係合する。前述したように、突片101を有する押え板96は、圧縮ばね92によって、延伸方向先端側へ向けて付勢されている。本体部86が軸体84,85を軸に回動するので、突片101は、軸体84,85の軸心を中心に下側に膨らむ円弧状の軌道に沿って揺動する。演出体80の収納時、突片101は、溝部67内で、溝部67の右側壁68に当接する。突片101は、右側壁68の形状に合わせて溝部67に案内されて、延伸方向基端側へ移動する。
可動カバー94は、ねじ留めによって可動フレーム95に固定され、可動フレーム95の前面を覆う。可動カバー94は、延伸方向に延び後側が開放する半円筒状に形成され、延伸方向先端部分が半球状に閉じる。可動カバー94の延伸方向における中間部分には、周方向に延びる複数のスリットが形成されている。LED基板97が発光するLED光は、可動フレーム95の凸面部分を透過し、スリットを介して前方へ向けて照射される。可動部83が延伸方向に移動すると、延伸方向におけるスリットの位置が変化し、前方に照射されるLED光の照射パターンが変化する。
次に、図9、図10を参照し、溝部67の構成について説明する。前述したように、溝部67の右側壁68は、第一溝部69、第二溝部70、第三溝部71を有する。第一溝部69は、背板51の下端部から上方に延びる。第二溝部70は、第一溝部69の上端部に接続し、右斜め上方に延びる。第二溝部70が延びる方向は、軸体84,85を中心とする円の第二溝部70付近における接線に略平行な方向である。第三溝部71は、第二溝部70の上端部に接続し、上方に延びる。第三溝部71の上端部は、軸体84,85の水平位置よりも上に位置する。
次に、演出装置50の動作について、図5、図6、図8〜図10を参照して説明する。図5に示すように、非演出時、演出体80は、収納部60(図3参照)内に配置されている。演出体80は、本体部86の第一側壁88が背板51のストッパ109に当接する。このとき、駆動モータ52の駆動力を伝達するラックギア63は、左右方向への移動範囲において、右端に位置する。図10に示すように、演出体80の伝達部104の軸心は、軸体84,85の軸心の右斜め下方(矢印A1で示す位置)に位置する。伝達部104は、ラックギア63の案内部65に設けられた溝形状の穴部において、上端寄りの位置に配置される。
また、演出体80の突片101の軸心は、軸体84,85の軸心の水平位置よりも上方(矢印A2で示す位置)に位置する。突片101が本体部86の幅方向略中央に設けられるのに対し、軸体84,85は、本体部86の第一側壁88寄り、即ち幅方向の一端側に設けられる。よって、本体部86の先端部81は、収納部60内において、基端部82の右斜め上方に配置される。
演出時、演出基板のCPUは、駆動モータ52を制御し、ラックギア63を左方に移動させる。案内部65は、穴部の右側の内周面で、伝達部104を左方に押圧する。伝達部104は、軸体84,85の軸心を中心とする下側に膨らむ円弧状の軌道に沿って、左方へ移動する。故に伝達部104は、案内部65の穴部内で、相対的に下方へ移動する。演出体80は、伝達部104の移動に応じて軸体84,85の軸心を中心に時計回りに回動する。CPUは、フォトセンサ103が演出体80の遮蔽板102を非検出となったときの演出体80の回動位置を基準に、駆動モータ52のステップ数を設定する。よってCPUは、可動部83が収納部60から露出する位置から延伸方向が上下方向に沿う位置までの任意の位置に演出体80を回動し、演出体80の演出動作を行うことができる。
伝達部104が軸体84,85の軸心の直下に位置するとき、伝達部104は、案内部65の穴部内で相対的に移動可能な範囲の最下点(矢印B1で示す位置)に位置する。演出体80の突片101は、伝達部104が軸体84,85の側方から下方に移動する過程で背板51よりも下方(矢印B2で示す位置)に位置し、溝部67とは非係合の状態になる。よって可動部83は、圧縮ばね92によって延伸方向先端側に押圧されて、突出位置に配置される。
駆動モータ52がステップ数に応じて駆動され、ラックギア63が更に左方に移動すると、伝達部104は下側に膨らむ円弧状の軌道に沿って、更に左方へ移動する。伝達部104は、案内部65の穴部内で、相対的に上方へ移動する。図9に示すように、演出体80の本体部86の第二側壁89がストッパ110に当接したとき、演出体80は、延伸方向が上下方向に沿う位置に配置される。ラックギア63は、左右方向への移動範囲の左端に位置する。図10に示すように、伝達部104の軸心は、軸体84,85の軸心の左斜め下方(矢印C1で示す位置)に位置する。伝達部104は、案内部65の穴部において、上端寄りの位置に配置される。演出体80の突片101は、軸体84,85の下方よりも左側(矢印C2で示す位置)に位置する。突片101は、溝部67とは非係合の状態である。
演出基板のCPUは、演出体80のソレノイド90とLED基板97に通電し、プランジャ91の駆動とLEDの発光を所定のパターンに従って行う。図8に示すように、ソレノイド90が通電されると、プランジャ91に接続する可動部83は、退行位置に移動する。図6に示すように、ソレノイド90が非通電となると、可動部83は、圧縮ばね92に押圧されて、突出位置に移動する。CPUはソレノイド90への通電と非通電を繰り返す。可動部83は、退行位置と突出位置との間において、往復移動を繰り返す。
押え板96の当接部106が突出位置で規制部材99に当接したとき、可動部83は、当接部106が規制部材99から受ける反力によって、退行位置側へ向けて僅かに移動するが、圧縮ばね92によって突出位置に戻される。すなわち、可動部83は、退行位置と突出位置との間で、跳ね返りと付勢による延伸方向への僅かな揺れを含む往復移動を行う。また、押え板96は、規制部材99の誘導部108との間に所定の間隙を有する。故に可動部83は、退行位置と突出位置との間における往復移動の過程で、幅方向に僅かに揺れながら動くことができる。間隙の大きさは、ソレノイド90が駆動するプランジャ91の移動長さ(ストローク)よりも小さい。更に、可動部83は、プランジャ91の軸線に対し、周方向に揺動することもできる。このように可動部83は、ソレノイド90の駆動によって大きなストロークで目立つように往復移動しながらも、あたかも振動モータを内蔵するかの如きぶれを生じた動作を行うことができる。そして、ラックギア63の案内部65の溝幅は、伝達部104のワッシャ105の外径よりも若干大きい。即ち、伝達部104を有する本体部86は、可動部83の往復移動に伴う振動で、左右方向に僅かに揺れ動くことができる。従って、可動部83だけでなく、本体部86も含めた演出体80の全体が、可動部83の往復移動に伴い、あたかも振動モータを内蔵するかの如きぶれを生じた動作を行うことができる。また、可動カバー94のスリットを介して前方に照射されるLED光も、可動部83及び本体部86のぶれを伴う動作によって瞬いて照射される。故に演出体80は、振動のようなぶれを伴う可動部83の往復移動と、LED光の瞬きによって、遊技者の注目を集めることができる。
演出が終了すると、演出基板のCPUは、駆動モータ52を制御し、ラックギア63を右方に移動させる。図10に示すように、案内部65は、穴部の左の内周面で、矢印C1に位置する伝達部104を右方に押圧する。伝達部104は、軸体84,85の軸心を中心とする下側に膨らむ円弧状の軌道に沿って、右方へ移動する。伝達部104は、案内部65の穴部内で、相対的に下方へ移動する。演出体80は、伝達部104の移動に応じて軸体84,85の軸心を中心に反時計回りに回動する。なお、演出基板のCPUは、演出体80を収納部60に収納する収納過程において、駆動モータ52の出力軸を一定速度で回転させ、演出体80を一定の角速度で回動させるものとする。
伝達部104が軸体84,85の軸心の直下(矢印B1の位置)を通過すると、伝達部104は、案内部65の穴部内で、相対的に上方へ移動する。突片101は、下側に膨らむ円弧状の軌道に沿って背板51の溝部67内に進入する。
伝達部104が、円弧状の軌道に沿って、軸体84,85の軸心の直下よりも右側の位置(矢印D1で示す位置)に移動したとき、突片101は、溝部67の右側壁68のうち、最下部に設けられた第一溝部69に、矢印D2で示す位置において当接する。このとき、可動部83は、突出位置にある。突片101は、軸体84,85の軸心を中心とする下側に膨らむ円弧状の軌道に沿って回動を続けるが、第一溝部69によって、右方への移動が規制される。故に突片101は、押え板96によって圧縮ばね92を圧縮し、軸体84,85の軸心との間の距離を縮めながら、第一溝部69に上向きに案内される。可動部83は、突片101が第一溝部69に案内される間、突出位置から退行位置側へ向けて移動する。
突片101は、第一溝部69に次いで、第一溝部69の上端に接続する第二溝部70に案内される。第二溝部70は、突片101を、右斜め上向きに案内する。突片101は、軸体84,85の軸心を中心とする下側に膨らむ円弧状の軌道に沿って回動を続ける。第二溝部70において、突片101は、右方への移動に対する規制が緩和される。故に突片101は、圧縮ばね92に対する圧縮を緩和し、軸体84,85の軸心との間の距離を僅かに縮めながら、第二溝部70に右斜め上向きに案内される。可動部83は、突片101が第二溝部70に案内される間、突出位置から退行位置側へ向けて移動する。
突片101は、第二溝部70に次いで、第二溝部70の上端に接続する第三溝部71に案内される。第三溝部71は、突片101を、上向きに案内する。突片101は、軸体84,85の軸心を中心とする下側に膨らむ円弧状の軌道に沿って回動を続ける。第三溝部71において、突片101は、第一溝部69と同様に、右方への移動が規制される。故に突片101は、圧縮ばね92を圧縮し、軸体84,85の軸心との間の距離を更に縮めながら、第三溝部71に上向きに案内される。可動部83は、突片101が第三溝部71に案内される間、突出位置から退行位置側へ向けて移動する。
演出基板のCPUは、フォトセンサ103が遮蔽板102を検出したときの演出体80の回動位置を基準に、本体部86の第一側壁88がストッパ109に当接するまでの駆動モータ52のステップ数を設定する。CPUが設定するステップ数によって演出体80が回動する角度は、遮蔽板102がフォトセンサ103に検出されたときの演出体80の回動位置から、第一側壁88がストッパ109に当接する位置までの角度よりも大きい。故にCPUは、演出体80の重さによって、たとえ駆動モータ52に空転が生じても、確実に、第一側壁88がストッパ109に当接する位置に演出体80を回動させて、収納部60内に収納させることができる。
このように、演出体80の収納部60への収納過程において、演出基板のCPUは、可動部83の退行位置側への移動を、ソレノイド90の駆動によって行わない。このため、ソレノイド90の駆動に伴う熱は、収納部60内に籠もりにくい。
演出体80の可動部83は、収納部60内で、本体部86の右斜め上方に配置される。演出体80にかかる回転モーメントは、可動部83が本体部86の真横に配置される場合よりも小さい。故に駆動モータ52は、静止トルクによって確実に、演出体80を収納部60内に収納した状態を維持することができる。
以上説明したように、演出装置50は、駆動モータ52の駆動力をラック&ピニオン機構によって演出体80に伝達する。故に、演出装置50は、例えば複数のギアを連結して駆動力を伝達する構成と比べ、駆動モータ52を演出体80から離れた位置に容易に配置することができる。このため、演出装置50は、構成要素の配置レイアウトの設計において自由化を図ることができる。また、演出装置50は、複数のギアを連結して駆動力を伝達する構成と比べ、構成要素の点数を減らすことができる。故にパチンコ機1は、製造コストを低減できる。
また、演出体80の基端部82において、伝達部104は軸体84,85よりも先端部81に近い側に位置する。言い換えると、演出体80の軸体84,85は、伝達部104よりも先端部81から離れて位置する。従って、演出体80は、演出体80の大きさを変えずに回転半径を大きくすることができる。故に演出装置50は、演出時に遊技者の注目を演出体80の回動動作に対して集めやすくすることができる。
また、伝達部104は、構成が簡易であるので、演出体80と一体に成形することができる。また、案内部65は、構成が簡易であるので、ラックギア63と一体に成形することができる。故にパチンコ機1は、生産コストを削減できる。
本発明は、以上詳述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは言うまでもない。伝達部104は、演出体80の本体部86に一体に設けたが、別体に形成し、本体部86に組み付ける構成であってもよい。案内部65も同様に、ラックギア63と別体に設け、ラックギア63の右端部に組み付ける構成であってもよい。
ラックギア63は、案内部65を右端部に設け、左右方向に移動する構成としたが、これに限らず、案内部65を左端部に設け、演出体80の収納時には左方に移動し、演出体80による演出時には右方に移動する構成であってもよい。また、ラックギア63の移動方向は、左右方向に限らず、上下方向であってもよいし、斜め方向であってもよい。
演出体80は、本体部86の基端部82において、伝達部104を軸体84,85よりも基端側に設けてもよい。この場合、前面視で演出体80が収納時に反時計回りに回動する本実施形態同様の構成とするには、収納時に、伝達部104が軸体84,85よりも上側に配置されるようにすればよい。そして、ラックギア63は、軸体84,85の上側に配置して左右方向に移動し、伝達部104が軸体84,85の軸心を中心に上側に膨らむ円弧状の軌道に沿って揺動するように、案内部65で伝達部104を案内すればよい。なお、軸体84,85を伝達部104よりも基端側に設ける本実施形態の構成とすることで、演出体80は、軸体84,85の位置から可動部83の先端の位置までの長さを大きく確保し、演出体80の大きさを変えずに回動半径を大きくすることができるので、望ましい。
特許請求の範囲、明細書及び図面に記載される全ての要素(例えば、表示装置、普通電動役物、図柄作動口等)は、個数を意識的に限定する明確な記載がない限り、物理的に単一であっても複数であっても構わないし、適宜配置の変更が行われても構わない。また、各要素につけられた名称(要素名)は、単に本件の記載のために便宜上付与したにすぎないものであり、それによって特別な意味が生じることを特に意識したものではない。従って、要素名のみによって要素が何であるかが限定解釈されるものではない。例えば、「表示装置」は、ハード単体でも、ソフトを含んだものであっても構わない。更には、上記全ての要素のうちの複数の要素を適宜一体的に構成するか、もしくはひとつの要素を複数の要素に分けて構成するかは、特許請求の範囲等において特定していない限り、何れも当業者であれば極めて容易に考えられる事項であるため、あえて明細書等において全パターンを記載しなくても何れのパターンも想定範囲内であることは明らかであることから、本発明に係る権利範囲に含まれることは勿論である。従って、その程度の範囲内での構成上の差異を有する遊技機を、本実施形態に記載がなされていないことを理由に採用することのみでは、本発明に係る権利を回避したことにはならない。その他、各要素の構成や形状等における、本実施形態から当業者であれば容易に考えられる自明な範囲の差異についても同様である。
なお、本発明においては、パチンコ機1が「遊技機」に相当する。左右方向が、「第一方向」に相当する。上下方向が、「第二方向」に相当する。