本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、薄型化を図ることができるサーマルヘッドを提供することをその課題とする。
本発明の第1の側面によって提供されるサーマルヘッドは、基板と、上記基板の厚み方向における一方側に設けられた発熱抵抗体と、上記基板の厚み方向における一方側に設けられており、かつ、上記発熱抵抗体と導通する電極層と、上記基板の厚み方向における一方側に設けられた制御手段と、を備えたサーマルヘッドであって、上記電極層は、共通電極配線と、上記共通電極配線から離間し、かつ、互いに離間している複数の個別電極配線とを具備し、上記各個別電極配線は、上記基板の厚み方向視において上記制御手段と重なる接続部を有している。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御手段は、上記基板の上記厚み方向における一方側の面と対向する底面と、上記底面に設けられた複数のパッドとを備えており、上記複数のパッドのいずれかと、上記複数の上記接続部のいずれかとが導通している。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の接続部が上記厚み方向と直交する第1の方向に沿って配列されており、上記複数のパッドは、上記第1の方向に沿って配列された複数の第1のパッドを含んでおり、上記複数の第1のパッドのいずれかと、上記複数の接続部のいずれかとが導通している。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の第1のパッドは上記第1の方向視において互いに重なるように配置されている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記厚み方向視において、上記各接続部は上記複数の第1のパッドのいずれかと重なっている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記厚み方向において上記制御手段と上記基板との間に挟まれており、かつ、上記厚み方向視において互いに離間する複数の導電部材を備えており、上記複数の導電部材は、上記複数の第1のパッドのいずれかと、上記複数の接続部のいずれかとの双方に接する第1の導電部材を含んでいる。
本発明の第2の側面によって提供されるサーマルヘッドは、基板と、上記基板の厚み方向における一方側に設けられた発熱抵抗体と、上記基板の厚み方向における一方側に設けられており、かつ、上記発熱抵抗体と導通する電極層と、上記基板の厚み方向における一方側に設けられた制御手段と、を備えたサーマルヘッドであって、上記電極層は、共通電極配線と、上記共通電極配線から離間し、かつ、互いに離間している複数の個別電極配線とを具備し、上記制御手段は、上記基板の上記厚み方向における一方側の面と対向する底面と、上記底面に設けられた複数のパッドとを備えており、上記複数のパッドは、上記厚み方向と直交する第1の方向に沿って配列された複数の第1のパッドを含んでおり、上記複数の第1のパッドの少なくともいずれかが上記複数の個別電極配線のいずれかと導通している。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記各個別電極配線は、上記厚み方向視において上記複数の第1のパッドのいずれかと重なる接続部を有している。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記厚み方向において上記制御手段と上記基板との間に挟まれ、かつ、上記厚み方向視において互いに離間する複数の導電部材を備えており、上記複数の導電部材は、上記厚み方向視において上記複数の第1のパッドの少なくともいずかれに接続された第1の導電部材を備えており、上記第1の導電部材は、上記厚み方向視において上記第1の導電部材が接続された上記第1のパッドと重なる上記接続部に当接している。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の第1のパッドは上記第1の方向視において互いに重なるように配置されている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記厚み方向視において、上記第1の導電部材はその全体が、当該第1の導電部材が接続される上記第1のパッドと重なるように形成されている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記電極層は、上記共通電極配線および上記複数の個別電極配線から離間する配線群を備えている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記配線群が上記厚み方向視において上記制御手段と重なるように形成されている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の個別電極配線は、上記第1の方向に沿って配列されており、上記発熱抵抗体は、上記第1の方向に沿って長く延びる帯状に形成されており、上記複数のパッドは、上記複数の第1のパッドのいずれよりも、上記厚み方向および上記第1の方向と直交する第2の方向において上記発熱抵抗体から遠ざかる位置に形成された複数の第2のパッドを含んでおり、上記配線群は、上記複数の第2のパッドのいずれかと導通する第1の配線パターンを含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の導電部材は、上記複数の第2のパッドのいずれかと、上記第1の配線パターンとの双方に接する第2の導電部材を含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の第2のパッドは、上記第1の方向に沿って配列されている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の第2のパッドは上記第1の方向視において互いに重なるように配置されている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数のパッドは、上記第2の方向視において上記第1のパッドと重ならない位置に設けられた複数の第3のパッドを含んでおり、
上記配線群は、上記複数の第3のパッドのいずれかと導通し、かつ、上記第1の配線パターンから離間する第2の配線パターンを含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の導電部材は、上記複数の第3のパッドのいずれかと、上記第2の配線パターンとの双方に接する第3の導電部材を含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記電極層は、上記厚み方向視において、上記共通電極配線、上記複数の個別電極配線、および、上記配線群のいずれからも離間する孤立部を有しており、上記複数のパッドは、上記孤立部に接続される第4のパッドを含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の導電部材は、上記孤立部と上記第4のパッドとの双方に接する第4の導電部材を含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の導電部材は金製のバンプである。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記電極層は金層である。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記接続部は、第1層と、この第1層に対して上記基板とは反対側に積層されているとともに上記第1層よりも粗い表面を有する第2層とからなる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2層は、金およびガラスを含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1層は、有機金化合物を含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2層は、上記第1層よりも厚い。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記各個別電極配線は、上記厚み方向と直交する第1の方向において第1の幅を有する通常幅部と、上記第1の方向において第1の幅よりも長い第2の幅を有する幅広部と、を有しており、上記各幅広部は、上記基板の厚み方向視において上記制御手段と重ならない位置に形成されている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の個別電極配線は、第1の個別電極配線と、上記第1の方向視において幅広部の位置が上記第1の個別電極配線と異なる第2の個別電極配線とを含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、少なくとも一部が、上記基板の厚み方向において、上記基板と上記制御手段との間に挟まれている封止樹脂を備えている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記封止樹脂は、上記制御手段の一部を露出させるように形成されている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御手段は、上記基板の厚み方向に起立する側面を有しており、上記封止樹脂は、上記側面の上記基板側部分を覆い、かつ上記側面のうち上記基板とは反対側部分を露出させている。
本発明の好ましい実施の形態においては、少なくとも一部が、上記基板の厚み方向において、上記基板と上記制御手段との間に挟まれている封止樹脂を備えており、上記封止樹脂の一部がさらに、上記接続部の上記第2層と上記パッドとの間に浸入している。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御手段は、互いに離間する複数の駆動ICを有している。
本発明の第3の側面によって提供されるサーマルヘッドの製造方法は、基板の厚み方向における一方側に発熱抵抗体を形成する工程と、上記基板の厚み方向における一方側に上記発熱抵抗体と導通する電極層を形成する工程と、上記基板の厚み方向における一方側に制御手段を固定する工程と、を備えたサーマルヘッドの製造方法であって、上記制御手段に複数の導電部材を接続する工程を備え、上記電極層を形成する工程は、共通電極配線、および、上記共通電極配線から離間し、かつ、互いに離間する複数の個別電極配線を形成する工程を具備し、上記制御手段を固定する工程は、上記複数の導電部材のいずれかである第1の導電部材と、上記複数の個別電極配線のいずれかである第1の個別電極配線とを接触させる工程と、上記第1の導電部材と上記第1の個別電極配線とを接合する工程と、具備している。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御手段は複数のパッドを備えており、
上記制御手段に上記複数の導電部材を接続する工程では、上記複数のパッドを覆うように金メッキを形成する工程を含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1の導電部材と上記第1の個別電極配線とを接合する工程では、上記制御手段に超音波振動を加える。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板は、細長形状であり、上記制御手段は、長手方向が上記基板の長手方向と一致する細長形状であり、上記複数の個別電極配線は、複数の上記導電部材と接合される接続部を有し、上記複数の個別電極配線の上記接続部は、上記基板の長手方向に沿って1列に配列されており、上記第1の導電部材と上記第1の個別電極配線とを接合する工程では、上記制御手段に上記基板の長手方向を振動方向とする超音波振動を加える。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板の長手方向における上記第1の導電部材の寸法は、上記基板の長手方向における上記接続部の寸法よりも小である。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記接続部は、第1層と、この第1層に対して上記基板とは反対側に積層されているとともに上記第1層よりも粗い表面を有する第2層とからなる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2層は、金およびガラスを含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1層は、有機金化合物を含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2層は、上記第1層よりも厚い。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板と上記制御手段との間に封止樹脂を形成する工程をさらに備えている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記封止樹脂を形成する工程は、上記制御手段の上記厚み方向と直交する方向において上記発熱抵抗体から遠い方の端縁に液状の樹脂材料を設置する工程を含む。
このような構成によれば、上記制御手段と上記複数の個別電極配線との接続を、上記厚み方向視において上記制御手段と重なる位置において行うことになる。この場合の接続手法はワイヤによらないものとなる。このため、本発明に基づくサーマルヘッドにおいては、制御手段と個別電極配線との間にワイヤが存在せず、上記制御手段を保護するために保護樹脂を形成する際に保護樹脂を薄く形成することが可能となる。従って、本発明に基づくサーマルヘッドによれば、保護樹脂の薄型化を図ることができ、従来の説明で記したようなプラテンローラと印刷媒体との接触不具合を解消することができる。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
図1〜図10には本発明に基づくサーマルヘッドを示している。図1は、本実施形態に基づくサーマルヘッドの平面図であり、図2はその断面図である。図3〜図10ではサーマルヘッドA1のさらに細部を示している。図1および図2に示すサーマルヘッドA1は、基板1、グレーズ層2、電極層3、発熱抵抗体4、制御手段5、保護樹脂6、および、保護層7を備えている。図2に示すようにサーマルヘッドA1は、これらと対向配置されたプラテンローラ(図示略)との間に供給される印刷媒体8に対して印刷を行うためのものである。印刷媒体8には、たとえば感熱紙が用いられる。なお、図1においては保護層7を省略している。
制御手段5は、x方向に沿って配列された3個の駆動IC51,52,53を有している。図1では、これらの駆動IC51,52,53を破線で示している。
基板1は、平面視長矩形状の平板状であり、たとえばアルミナセラミックにより形成されている。図1に示すx方向は基板1の長手方向であり、y方向は短手方向である。また、図2に示すz方向は基板1の厚み方向である。基板1の厚みは、たとえば1mmである。以降の説明において、図2における基板1のz方向図中上側の面を表面とする。基板1の表面にはグレーズ層2が形成されている。なお、x方向は本発明の請求項における第1の方向に相当し、y方向は本発明の請求項における第2の方向に相当する。
グレーズ層2は、ガラス製であり、基板1の表面を覆うように形成されている。このグレーズ層2は、電極層3、発熱抵抗体4、および制御手段5を設置するのに適した平滑面を供給するためのものである。グレーズ層2の厚みは、たとえば110μmである。ただし、図2に示すように、グレーズ層2の表面の一部はz方向に膨出している。この膨出している部分を膨出部21とする。
グレーズ層2上には、電極層3が形成されている。電極層3は、発熱抵抗体4に通電するためのものであり、共通電極配線31、複数の個別電極配線32、配線群33、および、外部接続用端子群34を備えている。電極層3は、たとえば厚さ1.7μmであり、有機金化合物からなる。
図3には、サーマルヘッドA1のz方向視において膨出部21と重なる部分の一部を拡大して示している。なお、図3では、保護層7を省略している。図3に示すように、共通電極配線31は、y方向に延びる複数の帯状部311を備えている。複数の帯状部311は、x方向に沿って配列されている。これらの帯状部311は根元では繋がっている。図2および図3に示す例では、複数の帯状部311の根元部分を覆うように、補助電極層35が設けられている。この補助電極層35は、たとえば銀製であり、電気抵抗を低減させるために設けられている。
複数の個別電極配線32は、共通電極配線31および補助電極層35から離間し、かつ、互いに離間するようにx方向に沿って配列されている。各個別電極配線32は、y方向に沿って延びる帯状に形成されている。以降において、各個別電極配線32のy方向における図1中上端部を先端部321とし、図1中下端部を末端部322とする。図3に示すように、複数の個別電極配線32の先端部321と帯状部311とは互い違いに並んでいる。また、各個別電極配線32の末端部322は、制御手段5に接続されている。
配線群33は、共通電極配線31および各個別電極配線32と離間するように形成されている。配線群33は、主に制御手段5と外部接続用端子群34とを接続するものである。外部接続用端子群34は、サーマルヘッドA1を外部の電源手段等に接続するのに用いられる部分である。図1に示す例では、外部接続用端子群34は、z方向視矩形状に形成された複数の外部接続用端子を含んでいる。
図5は、図1に示す斜線部Saにおける電極層3を拡大して示したものである。図7は図1に示す斜線部Sbにおける電極層3を拡大して示したものである。図5および図7では説明のために保護樹脂6を省略している。また、図5および図7では、電極層3と重なるように配置されている駆動IC52を二点鎖線で示している。
図5に示すように、各個別電極配線32は通常幅部32aと、通常幅部32aよりもx方向における幅が広い幅広部32bとを備えている。各個別電極配線32の大部分は通常幅部32aにより構成されている。幅広部32bは、末端部322の一部のうち、z方向視において制御手段5と重ならない部分に設けられている。図5に示す例では、隣り合う個別電極配線32A,32Bにおいて幅広部32bの位置がy方向にずれるように配置されている。個別電極配線32Bの幅広部32bは、個別電極配線32Aにおける幅広部32bよりもy方向における先端側(図5中上方)に位置している。個別電極配線32Aの幅広部32bと個別電極配線32Bの幅広部32bとはx方向視において重ならないようになっている。このような配置によれば、x方向視において幅広部32bが重なる場合よりも、個別電極配線32A,32Bのx方向における間隔をより狭くすることができ、配線密度を向上させることができる。
さらに、図5および図7に示すように、各個別電極配線32の末端部322の最も末端の領域は、z方向視において駆動IC52と重なる部分まで延びている。各個別電極配線32のz方向視において駆動IC52と重なる領域を接続部325とする。駆動IC52と各個別電極配線32との接続は接続部325において行われる。
図5および図7に示すように、配線群33は、各個別電極配線32から離間する複数の配線パターン331,332,333,334,335,336を備えている。配線群33は、共通電極配線31および補助電極層35からも離間している。図5および図7に示す例では、配線パターン331,332,333,334,335,336はいずれもz方向視において駆動IC52と重なる領域を備えている。配線パターン331,332,333,336は図5および図7に示す領域外で外部接続用端子群34に接続されている。
配線パターン331は、たとえば、駆動IC52にグラウンド電圧を供給さるためものである。z方向視において駆動IC52のy方向における図5中下端縁と重なるように形成されている。
配線パターン332,333,334,335は、たとえば、制御手段5に制御信号を供給するためのものである。配線パターン332は、図7に示す範囲外で駆動IC53とz方向視において重なる位置まで延びている。配線パターン333は、図7に示すように、z方向視において駆動IC52のx方向における図中右端まで延びている。配線パターン334は、図5に示すように、z方向視において駆動IC52のx方向における図中左端と重なる部分を有している。配線パターン334は、図5に示す範囲外でさらに駆動IC51とz方向視において重なる位置まで延びている。配線パターン335は、図7に示すように、z方向視において駆動IC52のx方向における図中右端と重なる部分を有している。配線パターン335は、図7に示す範囲外で駆動IC53とz方向視において重なる位置まで延びている。
配線パターン336は、たとえば、制御手段5に駆動電圧を供給するためのものである。なお、この駆動電圧は制御手段5を通じて個別電極配線32に供給される。配線パターン336は、配線パターン332,333,334,335よりもy方向に幅広に形成されている。配線パターン336は、図5に示すように、駆動IC52のx方向における図中左方から延びてきている。配線パターン336は、駆動IC52のz方向における下側を通ってx方向における図7中右方へ抜けている。配線パターン336は、図5および図7に示す範囲外で駆動IC51,52とz方向視において重なる位置まで延びている。
さらに、本実施形態では、電極層3は、図5および図7に示すように、各個別電極配線32および配線群33から離間する孤立部337を備えている。この孤立部337は共通電極配線31および補助電極層35からも離間している。
発熱抵抗体4は、サーマルヘッドA1の発熱源である。発熱抵抗体4はx方向に延びる帯状とされており、膨出部21上に形成されている。共通電極配線31といずれかの個別電極配線32とが通電すると、発熱抵抗体4のうち帯状部311と先端部321とに挟まれた領域が部分的に発熱する。上述した配線パターン336が供給する駆動電圧は、個別電極配線32と共通電極配線31との間に電位差を生じさせるために外部から付与される電圧である。
制御手段5は、共通電極配線31および複数の個別電極配線32を介して発熱抵抗体4に通電することにより、発熱抵抗体4を部分的に発熱させるための駆動制御を行う。このため、各駆動IC51,52,53は、それぞれ複数の半導体素子を内蔵している。
本実施形態では、駆動IC51,52,53は設置位置が異なるだけで同一の部品である。駆動IC52について説明を行い、駆動IC51,53についての説明を省略する。
駆動IC52は、たとえば、x方向寸法が9.37mm、y方向寸法が0.53mm、z方向寸法が0.30mmであり、x方向を長手方向とする細長い直方体状に形成されている。
図4には、駆動IC52の底面52aを示している。なお、駆動IC52の底面52aは、基板1の表面と対向する面であり、駆動IC52のz方向において基板1に近い端面である。図4に示すように、駆動IC52の底面52aには、x方向に沿って配列された複数の第1のパッド501が設けられている。複数の第1のパッド501はx方向視において互いに重なるように一列に配列されている。複数の第1のパッド501が成す列は、駆動IC52のy方向における一方(図4中下方)の端縁に沿うように配置されている。複数の第1のパッド501は、たとえば60μmごとに設けられている。第1のパッド501は、たとえば、x方向寸法が42.0μmであり、y方向寸法が67.0μmとなっている。複数の第1のパッド501が配列されている領域を接続領域501Aとする。駆動IC51,53についても接続領域501Aを定めることができる。複数の個別電極配線32は全ての末端部322が3個の接続領域501Aのいずれかの内に収まるように形成されている。
図5に示すように、各第1のパッド501はそれぞれ個別電極配線32の接続部325とz方向視において重なっている。このため、予め接続部325がx方向に沿って60μmごとに並ぶように電極層3は形成されている。また、本実施形態では接続部325のy方向幅はたとえば35μmに形成されている。
図9および図10には、第1のパッド501を拡大して示している。簡略化のために図9ではグレーズ層2および保護樹脂6を省略している。
図9に示すように、第1のパッド501は層構造を有している。図9に示す例では、第1のパッド501は、z方向に沿って積層された、第1層511、第2層512、第3層513、および、第4層514を備えている。第1層511は、たとえばチタン製であり、厚さ40nm程度である。第1層511は、たとえば駆動IC52に内蔵された半導体素子に接合されている。第2層512は、第1層511に接し、たとえばチタンニッケル製であり、厚さ100nm程度である。第3層513は、第2層512に接し、たとえばアルミニウムを主成分としており、厚さ400nm程度である。第4層514は第3層513に接し、たとえばチタン製であり、厚さ40nm程度である。
各第1のパッド501は、それぞれ駆動IC52に内蔵されている半導体素子に接続されている。図4に示すように、第1のパッド501をx方向に沿って一列に揃えて配置する場合、駆動IC52内での半導体素子の配置をより効率的に行うことができる。
図4に示すように、駆動IC52の底面52aには、複数の第1のパッド501の列と並列するようにx方向に沿って配列された複数の第2のパッド502が設けられている。複数の第2のパッド502はx方向視において互いに重なるように一列に配列されている。複数の第2のパッド502がなす列は、駆動IC52のy方向における他方(図4中上方)の端縁寄りの位置にある。隣り合う第2のパッド502同士の間隔は、隣り合う第1のパッド501同士の間隔よりも長くなっている。x方向における間隔がより長いため、各第2のパッド502のx方向寸法は第1のパッド501のx方向寸法よりも長くなっている。
図5および図7に示すように、各第2のパッド502は、z方向視において配線パターン331と重なっている。このため、各第2のパッド502は、駆動IC52内の半導体素子にグラウンド電圧を供給するためのものとなっている。
各第2のパッド502は、それぞれ駆動IC52に内蔵されている半導体素子に接続されている。図4に示すように、第2のパッド502をx方向に沿って一列に揃えて配置する場合、駆動IC52内での半導体素子の配置をより効率的に行うことができる。
さらに、駆動IC52の底面52aのx方向における両端部には、複数の第3のパッド503a,503bが設けられている。図4に示す例では、複数の第3のパッド503a,503bは、y方向視において接続領域501Aと重ならない領域に配置されている。このため、複数の第3のパッド503a,503bは、y方向視において、複数の第1のパッド501と重なっていない。
各第3のパッド503a,503bは、それぞれ駆動IC52に内蔵されている半導体素子に接続されている。一例において、第3のパッド503aに接続される半導体素子は、第1のパッド501に接続される半導体素子とは異なるものである。駆動IC52のx方向における中央部に第1のパッド501に接続される半導体素子を設置した場合、その他の半導体素子は駆動IC52のx方向における両端部に配置されることになる。この場合、第3のパッド503aを底面52aのx方向における両端部に設けることは駆動IC52内での接続構造を簡略化する上で望ましい。
図5および図7に示すように、各第3のパッド503aは、z方向視において配線群33のうち配線パターン333,334,335のいずれかと重なっている。各第3のパッド503aは、駆動IC52内の半導体素子に制御信号を伝達するためのものである。
図5に示すように、各第3のパッド503bは、配線パターン336と重なっている。各第3のパッド503bは、駆動IC52内の半導体素子に制御電圧を供給するためのものである。
図4に示すように、駆動IC52の底面52aには複数の第4のパッド504が設けられている。第4のパッド504は、たとえば駆動IC52が正常に動作するのかをチェックするために設けられているものである。このため、第4のパッド504を電極層3と接続させなくても、駆動IC52は正常に作動する。
本実施形態では、図5および図7に示すように、z方向視において第4のパッド504と孤立部337とが重なるような配置となっている。
サーマルヘッドA1は、図6および図8に示すように、制御手段5と基板1との間にz方向視において互いに離間する複数の導電部材521,522,523,524を備えている。複数の導電部材521,522,523,524は金製のバンプである。複数の導電部材521,522,523,524のz方向における厚みはたとえば15μmである。複数の導電部材521は、複数の第1のパッド501のそれぞれに接続されている。さらに、各導電部材521は、接続部325に接している。このように複数の導電部材521はそれぞれ、第1のパッド501とその第1のパッド501と向かい合う接続部325とを接続している。図9に示すように、導電部材521の第1のパッド501と接する部分は他の部分よりもy方向に短く形成されている。導電部材521はz方向視長矩形状であり、図10に示すように、その全体が第1のパッド501の内側に含まれるように形成されている。導電部材521のz方向視形状は第1のパッド501よりも小さく、x方向寸法が35μmであり、y方向寸法が60μmとなっている。なお、導電部材521のy方向寸法は、接続部325のy方向幅と同一となっており、接続部325と導電部材521とはy方向においてずれなく重なっている。
複数の導電部材522は、それぞれ複数の第2のパッド502のいずれかに接続されている。各導電部材522はz方向視において各第2のパッド502の内側に位置するように配置される。上述したように、第2のパッド502と重なるように配線パターン331が形成されている。複数の導電部材522はいずれも配線パターン331と接することになり、第2のパッド502は複数の導電部材522を介して配線パターン331と導通する。導電部材522のz方向視形状は、たとえば一辺が70μmの正方形である。
複数の導電部材523は、それぞれ複数の第3のパッド503a,503bのいずれかと接続されている。各導電部材523はz方向視において各第3のパッド503a,503bの内側に位置するように配置される。上述したように、各第3のパッド503aと重なるように配線パターン333,334,335が形成されており、各第3のパッド503bと重なるように配線パターン336が形成されている。導電部材523を介して、第3のパッド503aは配線パターン333,334,335と導通し、第3のパッド503bは配線パターン336と導通する。導電部材523のz方向視形状は長辺が80μmで短辺が70μmの長矩形状であり、導電部材521よりもx方向寸法および平面視寸法が大とされている。
さらに、本実施形態では第4のパッド504に導電部材524が接続されている。導電部材524は、z方向視において第4のパッド504の内側に位置するように配置される。上述したように第4のパッド504はz方向視において孤立部337と重なっているため、第4のパッド504に接続された導電部材524は孤立部337に接している。
本実施形態では、後述する製造方法で示す手法により、複数の導電部材521はそれぞれ接する接続部325に接合されている。同様に、複数の導電部材522は配線パターン331に接合され、複数の導電部材523はそれぞれ接する配線パターン333,334,335,336に接合されている。第4のパッド504に接続された導電部材524も孤立部337に接合されている。
保護樹脂6は、保護樹脂61,62,63を備えている。駆動IC51は保護樹脂61によって覆われている。駆動IC52は保護樹脂62によって覆われている。駆動IC53は保護樹脂63によって覆われている。保護樹脂61,62,63は、たとえば黒色樹脂であり、駆動IC51,52,53の損傷、および紫外線などの受光による誤作動を防止する。
図6に示すように保護樹脂6は、さらに封止樹脂60を備えている。封止樹脂60は、エポキシ樹脂を主成分としており、駆動IC52とグレーズ層2との間を埋めるように形成されている。封止樹脂60は、図6に示すように、駆動IC52のy方向両側に、z方向において基板1に近付くほどy方向に駆動IC52から遠ざかるような傾斜部60aを有している。なお、封止樹脂60と同じものが、駆動IC51,52とグレーズ層2との間にも形成されている。
保護層7は、印刷媒体8と接触し、磨耗しやすい部分を保護するためのものである。図2に示すように、保護層7は、複数の個別電極配線32の一部を露出させるように形成されている。複数の個別電極配線32の露出部分は、駆動IC51,52,53のいずれかに接続されている。保護層7は、たとえばガラス、サイアロン、窒化タンタル、炭化ケイ素から選択される適切な素材により形成される。
次に、サーマルヘッドA1の製造方法について図11〜図15を参照にしつつ説明を行う。
サーマルヘッドA1を製造する際には、まず、基板1上にグレーズ層2を形成する工程を行う。グレーズ層2を形成する工程は、たとえば、ガラスペースト材を基板1に印刷塗布し、焼成させることにより行うことができる。
次に、グレーズ層2上に電極層3を形成する工程を行う。電極層3を形成する工程は、たとえば、グレーズ層2上に有機金化合物を含むペースト材を印刷して焼成させることにより行われる。なお、この方法に限らず、たとえばメッキ処理によっても所望の配線パターンを得ることが可能である。
さらに、電極層3を形成した後に、補助電極層35を形成する。この工程は、所望の領域に銀ペーストを印刷して焼成させることにより行われる。
また、電極層3を形成した後に、複数の個別電極配線32が互いに絶縁されているかのチェックを行うのが望ましい。このチェック作業は、たとえば、各個別電極配線32に針状の検査器具を接触させることにより行われる。このとき、各個別電極配線32に設けられた幅広部32bに検査器具を接触させることで、比較的容易にチェック作業を行うことができる。このチェック作業で不良が検出されなかった製品に対して以降の処理を行う。
図11には、グレーズ層2上に電極層3が形成された状態を示している。図12に示す領域は、駆動IC52が設置される予定の領域である。
さらに、制御手段5に複数の導電部材521,522,523,524を接続する工程を行う。なお、各駆動IC51,52,53に対して行われる処理は同一であるため、以降、駆動IC52に対して行われる処理を説明する。駆動IC52に対して行われる工程は、駆動IC51,53に対しても行われる。
まず、駆動IC52の底面52aを覆う被覆部材500を形成する工程を行う。この被覆部材500には、駆動IC52に設けられている第1〜第4のパッド501,502,503,504の全てを露出させる開口500aが形成されている。図12では、例として第1のパッド501を露出させる開口500aを示している。図12に示すように、開口500aの底部(図中上側)には段差が設けられている。
次に、駆動IC52の底面52aに対して金メッキを施す処理を行う。前記のように底面52aは被覆部材500に覆われた状態であるため、開口500aによって露出している部分に金メッキは形成される。すなわち、第1〜第4のパッド501,502,503,504に対して金メッキからなるバンプが形成される。このとき形成されるバンプが複数の導電部材521,522,523,524である。このような製造方法によれば、複数の導電部材521,522,523,524は、それぞれ第1〜第4のパッド501,502,503,504に接続された状態で形成される。なお、導電部材521,522,523,524と第1〜第4のパッド501,502,503,504との対応関係は構成の説明で示した通りであるため説明を省略する。
駆動IC52に複数の導電部材521,522,523,524を形成した後に、駆動IC52を基板1に固定する工程を行う。この工程では、まず、図13に示すように、複数の導電部材521が複数の接続部325に当接するように駆動IC52を設置する。上述したように、複数の第1のパッド501と、複数の接続部325とはx方向に沿って同一の間隔で設置されている。各導電部材521は複数の第1のパッド501のいずれかに接続されているため、各導電部材521と各接続部325に当接することになる。この工程では、同時に、複数の導電部材522は配線パターン331に当接する。複数の導電部材523は配線パターン333,334,335,336に当接する。複数の導電部材524は孤立部337に当接する。
続けて、複数の導電部材521,522,523,524とそれに当接する電極層3とを接合する工程を行う。この工程は、たとえば超音波接合により行われる。図13に示す状態では、駆動IC52の重量が、複数の導電部材521,522,523,524を介して電極層3の各部に加えられている。この状態でさらに、駆動IC52に対して超音波振動を加えると、その振動が複数の導電部材521,522,523,524に伝達され、振動エネルギーの付加により、複数の導電部材521,522,523,524と電極層3の各部とが接合される。複数の導電部材521,522,523,524が電極層3の各部に接合されることにより、駆動IC52は基板1に固定される。
駆動IC52を基板1に固定した状態で、駆動IC52と電極層3とが予定通りに導通しているかチェックする工程を行う。このチェック作業は、たとえば、各個別電極配線32に針状の検査器具を接触させることにより行われる。このとき、各個別電極配線32に設けられた幅広部32bに検査器具を接触させることで、比較的容易にチェック作業を行うことができる。このチェック作業で不良が検出されなかった製品に対して以降の処理を行う。なお、幅広部32bが、z方向視において制御手段5と重ならない位置に設けられているのは、このチェック工程をより容易に行うためである。
次に、封止樹脂60を形成する工程を行う。この工程では、上述の工程で得られた基板1を真空環境下におく。その上で、図14に示すように、駆動IC52の側に液状の樹脂材料60Aを設置する。樹脂材料60Aは、駆動IC52のy方向における発熱抵抗体4から遠い方の端縁(図14中左端縁)に沿って設置する。このようにすると、樹脂材料60Aは、駆動IC52とグレーズ層2との間に浸透していき、駆動IC52のy方向における発熱抵抗体4に近い方の端縁(図14中右端縁)にまで到達する。樹脂材料60Aは、たとえば、ビスフェノール型エポキシ樹脂にフェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、硬化促進剤、シリコーン樹脂系改質剤、ジエチレングリコールジエチルエーテル、シリカ等の充填剤を添加したものである。このような樹脂材料60Aは、時間経過によって硬化する。図15には、樹脂材料60Aが硬化した状態を示している。樹脂材料60Aが硬化したものが封止樹脂60となる。
上述のような製造方法を行うと、封止樹脂60のy方向における両側縁に傾斜部60aが形成される。
その後、駆動IC52をさらにエポキシ樹脂で覆うことで保護樹脂62が形成され、図6に示すようなサーマルヘッドA1が製造される。
次に、サーマルヘッドA1の作用について説明する。
上述したサーマルヘッドA1では、各個別電極配線32の接続部325がz方向視において駆動IC52と重なる位置にまで延出している。サーマルヘッドA1における駆動IC52と各個別電極配線32との接続は、接続部325を介して行われている。このような接続を実現するために、複数の第1のパッド501は駆動IC52の底面52aに設けられている。各第1のパッド501は、z方向視において各接続部325と重なる位置にあるため、両者を接続するにあたってワイヤを用いる必要性は低い。上記の実施形態に示したように、金メッキからなる複数の導電部材521によって接続するのが合理的である。このように、サーマルヘッドA1では、従来の場合と異なり、ワイヤを用いずに駆動IC52と各個別電極配線32とを接続することができる。ワイヤを用いないことにより、保護樹脂6は、駆動IC52の表面を覆えばよいことになる。このため、サーマルヘッドA1は、保護樹脂6のz方向における厚みを抑えることが可能な構成を備えている。保護樹脂6の厚みを抑えることで、サーマルヘッドA1は、従来の説明で記したようなプラテンローラと印刷媒体8との接触不具合を解消することができる。
従来の説明で示した場合のように、ワイヤを用いて駆動ICと個別電極配線とを接続するときには、ワイヤを金属層に接続する際にワイヤが押し広げられることが想定される。このため、個別電極配線同士の間隔に余裕を持たせる必要があった。しかしながら、サーマルヘッドA1のようにワイヤを用いない構成とすれば、そのような余裕を持たせる必要はない。このため、サーマルヘッドA1では、個別電極配線同士の間隔を従来よりも狭くすることが可能である。個別電極配線同士の間隔を狭くする場合、たとえば、同一基板内により多数の個別電極配線を形成することができるようになる。個別電極配線を増加させることにより、たとえば、解像度の向上を図ることができる。
さらに、サーマルヘッドA1では、複数の第2のパッド502と配線パターン331との導通も金メッキからなる複数の導電部材522によって行われている。また、複数の第3のパッド503aと配線パターン333,334,335との導通、および複数の第3のパッド503bと配線パターン336との導通も金メッキからなる複数の導電部材523によって行われている。このため、サーマルヘッドA1は電極層3との接続にワイヤを全く必要としない構成となっている。この構成は保護樹脂6の厚みを抑える上で望ましいものである。
さらに、上述した製造方法によれば、サーマルヘッドA1では、複数の導電部材521,522,523,524はそれぞれ当接する電極層3に接合されている。このため、製造過程において駆動IC52の位置がずれることを防ぐことができる。駆動IC52が予定された位置とずれて設置された場合には、たとえば第1のパッド501が予定とは異なる個別電極配線32と導通することが起こり得る。しかしながら、上述した製造方法によれば、そのような問題を未然に防ぐことが可能である。
サーマルヘッドA1における駆動IC52は、図4に示すようにx方向に長い形状である。複数の第1のパッド501および複数の第2のパッド502は駆動IC52の長手方向であるx方向に沿って列を成すように配列されている。さらに、複数の第1のパッド501が成す列と複数の第2のパッド502が成す列とはy方向に離間するように配置されている。このような構造は、上述した製造方法において、駆動IC52を基板1に設置した際に、駆動IC52が傾斜するのを防ぐのに適している。
さらに、本実施形態では、第4のパッド504と孤立部337とを導電部材524で接続している。このため、接合箇所が増えており、駆動IC52はより強固に電極層3に接合される。
サーマルヘッドA1では、第1のパッド501よりもz方向視の寸法が大きい第2のパッド502や第3のパッド503に接続される導電部材522,523のz方向視寸法は導電部材521よりも大きくなるように形成されている。複数の導電部材521の場合、隣接する個別電極配線32同士の導通を防ぐ必要があるため、必要以上に大きな形状となることは避けるのが望ましい。一方、導電部材522,523ではそのような事情はないため、z方向視における寸法を比較的大きなものとできる。上述したように、複数の導電部材521,522,523,524は、駆動IC52と電極層3との導通を図るのみならず、駆動IC52を固定する役割も果たしている。このため、導電部材522,523のz方向視面積を大きくすることは、駆動IC52を固定する上で有利な効果が期待できる。
さらに、サーマルヘッドA1では、比較的y方向に幅が広い配線パターン336がz方向視において駆動IC52の重なるように配置されている。配線パターン336は、制御手段5に駆動電圧を供給するためのものであり省くことができず、かつ、幅広に形成することが望ましいものである。この配線パターン336をz方向視において駆動IC52と重ならない位置に配置しようとすると、基板1のy方向における幅を広くとらねばならなくなる。換言すると、上述した構成は、基板1のy方向における幅を小さくしやすい構成であり、サーマルヘッドA1の小型化を図るのに適した構成である。
さらに、上述した製造方法によれば、駆動IC52とグレーズ層2との間に封止樹脂60を形成している。封止樹脂60は、駆動IC52とグレーズ層2との間に異物が入りこむのを防ぐとともに、駆動IC52をより強固に固定する。
本実施形態では、制御手段5は、x方向に離間する3個の駆動IC51,52,53によって構成されている。制御手段5を単一の駆動ICで形成することも可能であるが、その場合、x方向に沿って並ぶ複数の第1のパッド501の数が大幅に増大することになる。このとき多数の第1のパッド501の全てを精密に接続部325に接合することが困難になる場合がある。このようなリスクを軽減するため、本実施形態では、制御手段5を3個の駆動IC51,52,53によって構成している。
従来のサーマルヘッドにおいて、駆動ICと個別電極配線とをワイヤで接続している場合にも、配線パターンの一部を駆動ICの下に形成することがあった。そのような場合、配線上に平坦なガラス層を形成し、そのガラス層上に駆動ICの底面を固定するのが一般的であった。サーマルヘッドA1では、上述したように、駆動IC52の底面52aに設けられた第1〜第4のパッド501,502,503,504に複数の導電部材521,522,523,524が接続されており、これらの導電部材521,522,523,524が電極層3に固定された構造となっている。この構造によれば、駆動IC52を支持するためにグレーズ層2上にさらにガラス層を形成する必要はない。このことは、サーマルヘッドA1の部品点数を減らす効果を期待できる。さらに保護樹脂6のz方向における厚みを抑える上でも望ましいものである。
図16〜図21は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
図16は、本発明の第2実施形態に基づくサーマルヘッドを示している。本実施形態のサーマルヘッドA2は、主に個別電極配線32の構成が上述した実施形態と異なっている。本実施形態においては、個別電極配線32の接続部325は、第1層325aおよび第2層325bからなる。接続部325の厚さは、おおむね2μm程度かそれ以下である。本実施形態においては、個別電極配線32のうち接続部325が、第1層325aおよび第2層325bからなり、個別電極配線32のうち接続部325以外の部位は、第1層325aのみによって構成されている。ただし、個別電極配線32全体が第1層325aおよび第2層325bからなる構成としてもよい。接続部325を第1層325aを下地層とした2層構造とすることにより、接続部325を形成するためのパターニングをより正確に行うことができる。接続部325および導電部材521のx方向寸法は、いずれも35μm程度である。
第1層325aは、グレーズ層2上に形成されており、比較的平滑な断面形状の層とされている。第1層325aの主成分としては、たとえば有機金化合物が挙げられる。第1層325aの厚さは、たとえば0.6μm程度である。第1層325aは、たとえばグレーズ層2上に、有機金化合物を含むペーストを印刷した後に、これを焼成することによって形成される。図16においては、この焼成過程において第1層325aがグレーズ層2に対して沈降した構成を示しているが、これは一例である。第1層325aがグレーズ層2に対して沈降しない場合もある。また、第1層325aと第2層325bとは、図16に示すように明瞭な界面を形成する場合もあるが、このような明瞭な界面が形成されない場合もある。このような場合、第1層325aと第2層325bとは、たとえば切断面を観察した際、外観として1層と認められうる。
第2層325bは、第1層325a上に積層されており、少なくとも第1層325aと比較して粗い表面を有している。図17は、導電部材521と接合される前の接続部325を示している。図16および図17によく表れているように、第2層325bの表面は、顕著な凹凸形状となっている。この凹凸形状の表面は、たとえば微細な金粒子が不規則に分布し、かつその一部が起立した状態で固定されることによって実現されている。第2層325bは、主成分としての金と、これに加えてガラスを含む。第2層325bの厚さは、第1層325aよりも厚く、たとえば1.1μm程度である。
このような第2層325bの形成には、たとえば微細な金粒子およびガラスと溶媒としての樹脂とを含むペーストが用いられる。第1層325aの元となる有機金を含む金層を形成した後に、この金層の上に微細な金粒子とガラスとを含むペーストを印刷する。そしてこのペーストを焼成すると、微細な金粒子の間に介在していた溶媒としての樹脂が消失し、また介在していたガラスが下方に移動する。これにより、微細な金粒子が不規則に分布し、かつその一部が起立した状態で固定された金層が得られる。この後は、上述した有機金を含む金層と、微細な金粒子を含む金層とに対してたとえばエッチングによるパターニングを施すことにより、個別電極配線32が得られる。
図18は、駆動IC52と基板1(本図においては図示略)とが接合される直前の状態を示している。同図に示す通り、本実施形態においては、接合前の導電部材521のx方向寸法W2は、接続部325のx方向寸法W1よりも小であり、たとえば25μm程度である。
次いで、図19に示すように、駆動IC52を下降させ、導電部材521と接続部325とを当接させる。また、駆動IC52にz方向下向きの力を付与しつつ、超音波振動を加える。本実施形態においては、この超音波振動の振動方向は、x方向である。この超音波接合の工程により、導電部材521と接続部325とが超音波接合される。導電部材521は、x方向を振動方向とする超音波振動を受けながら加圧されることにより、x方向寸法が接合前よりも若干大となる。本実施形態においては、接合後の導電部材521のx方向寸法は、35μm程度であり、接続部325とほぼ同じとなっている。
また、接続部325の第2層325bが凹凸形状であるため、接合後は第2層325bの上端部分が導電部材521の下端部分に食い込んだ態様となっている。また、第2層325bの凹凸の度合いおよび超音波接合の接合条件によっては、接合後の第2層325bと導電部材521との間に、微細な隙間が生じうる。このため、図16に示すように、第2層325bと導電部材521との間に封止樹脂60の一部がわずかに介在する構成となりうる。この介在する封止樹脂60は、第2層325bと導電部材521との全域にわたって介在するものではないため、第2層325bと導電部材521との導通を妨げるものではない。なお、第2層325bの凹凸の度合いおよび超音波接合の接合条件によっては、第2層325bと導電部材521との間に隙間が生じることや封止樹脂60が介在することを回避することも可能である。
本実施形態によれば、超音波接合において長手方向がx方向である駆動IC52に対して振動方向がx方向である超音波振動を付与する。このような振動方向を採用することにより、駆動IC52を安定して振動させやすいという利点がある。たとえば本実施形態と異なり、振動方向がy方向である超音波振動を駆動IC52に付与すると、x方向に延びる軸を中心として駆動IC52が揺動するおそれが大きい。この揺動にしたがって導電部材521が接続部325に擦れると、導電部材521の下面がz方向下方にわずかに膨出する凸面となる。このような凸面を有することとなった導電部材521は、接続部325との適切な接合が期待できない。本実施形態によれば、振動方向が駆動IC52の長手方向であるため、駆動IC52は揺動しにくい。したがって、導電部材521が揺動に伴う摩擦によって不当な形状になってしまうことを防止することが可能であり、接続部325に対して適切に接合することができる。
超音波振動の振動方向がx方向であるにも関わらず、複数の接続部325をx方向に沿って1列に配置している。このような構成は、駆動IC52の内部において、積層させる配線層の数を削減するのに適している。配線数の削減は、駆動IC52のコスト低減に寄与する。
接続部325が凹凸形状の第2層325bを有することにより、接続部325を導電部材521に食い込ませる接合態様を実現できる。このような接合態様は、接続部325と導電部材521との接合強度を高めるのに適している。
接合前の状態において、導電部材521のx方向寸法W2を接続部325のx方向寸法W1よりも小としておくことにより、振動方向がx方向である超音波振動を駆動IC52に付与しても、導電部材521が接続部325から大きくはみ出してしまうことを抑制することができる。これは、隣り合う個別電極配線32同士がショートしてしまうことを回避するのに好ましい。また、接合後において導電部材521と接続部325とのx方向寸法がほぼ同じであることは、互いを確実に導通させるのに適している。
図20および図21は、本発明の第3実施形態を示している。本実施形態のサーマルヘッドA3においては、封止樹脂60の形状が上述した第1実施形態と異なっている。なお、サーマルヘッドA3には、接続部325および導電部材521として、上述した第1および第2実施形態のいずれの構成であっても採用できる。また、上述した第2実施形態のサーマルヘッドA2には、封止樹脂60として、上述した第1実施形態および本実施形態のいずれの構成であっても採用できる。
本実施形態においては、封止樹脂60は、駆動IC52のy方向を向く側面52bおよびx方向を向く側面52bいずれもの下方部分を覆い、これらの上側部分を露出させている。このような封止樹脂60の形成は、上述した第1実施形態で述べた通り、封止樹脂60の材料となる液状の樹脂材料60Aをたとえばy方向を向く側面52bに沿わせるように駆動IC52と基板1との間に注入することによってなされる。
このような実施形態によれば、駆動IC52と基板1との接合強度をより高めることができる。特に、駆動IC52がx方向に長く延びる形状であるため、サーマルヘッドA3の使用時においては、たとえば駆動IC52のx方向両端が基板1から離間するような熱変形が生じやすい。封止樹脂60のうちx方向を向く側面52bを覆う部分は、このような駆動IC52の熱変形に起因して駆動IC52が基板1から外れてしまうことを防止するのに好適である。
本発明の範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るサーマルヘッドおよびサーマルヘッドの製造方法の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、電極層3は、たとえばアルミ配線や銀配線などの金属配線で代用可能である。また、上記実施形態では、駆動IC52を超音波接合により、基板1に固定しているが、これは好ましい一例に過ぎない。駆動IC52を基板1に固定する際には、他のフリップチップ実装手法も利用可能である。