本発明の態様に係るビーム走査装置、ビーム走査方法、およびパターン描画方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の基板(被照射体)FSに露光処理を施す露光装置EXを含むデバイス製造システム10の概略構成を示す図である。なお、以下の説明においては、特に断わりのない限り、重力方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定し、図に示す矢印にしたがって、X方向、Y方向、およびZ方向を説明する。
デバイス製造システム10は、例えば、電子デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイ、フレキシブル配線、フレキシブル・センサ等を製造する製造ラインが構築された製造システムである。以下、電子デバイスとしてフレキシブル・ディスプレイを前提として説明する。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等がある。デバイス製造システム10は、可撓性のシート状の基板(シート基板)FSをロール状に巻いた図示しない供給ロールから基板FSが送出され、送出された基板FSに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板FSを図示しない回収ロールで巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の構造を有する。基板FSは、基板FSの移動方向が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。前記供給ロールから送られた基板FSは、順次、プロセス装置PR1、露光装置(描画装置、ビーム走査装置)EX、および、プロセス装置PR2等で各種処理が施され、前記回収ロールで巻き取られる。
なお、X方向は、水平面内において、プロセス装置PR1から露光装置EXを経てプロセス装置PR2に向かう方向(搬送方向)である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板FSの幅方向(短尺方向)である。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(上方向)であり、重力が働く方向と平行である。
基板FSは、例えば、樹脂フィルム、若しくは、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板FSの厚みや剛性(ヤング率)は、露光装置EXの搬送路を通る際に、基板FSに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板FSの母材として、厚みが25μm〜200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。
基板FSは、プロセス装置PR1、露光装置EX、およびプロセス装置PR2で施される各処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質の基板FSを選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または酸化ケイ素等でもよい。また、基板FSは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
ところで、基板FSの可撓性(flexibility)とは、基板FSに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板FSを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板FSの材質、大きさ、厚さ、基板FS上に成膜される層構造、温度、湿度等の環境等に応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本第1の実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラム等の搬送方向転換用の部材に基板FSを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板FSを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲といえる。
プロセス装置PR1は、露光装置EXで露光処理される基板FSに対して前工程の処理を行う。プロセス装置PR1は、前工程の処理を行った基板FSを露光装置EXへ向けて送る。この前工程の処理により、露光装置EXへ送られる基板FSは、その表面に感光性機能層(光感応層、感光層)が形成された基板(感光基板)となっている。
この感光性機能層は、溶液として基板FS上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジスト(液状またはドライフィルム状)であるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板FS上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)や半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、薄膜トランジスタ(TFT)等を構成する電極、半導体、絶縁、或いは接続用の配線や電極となるパターン層を形成することができる。感光性機能層として、感光性還元剤を用いる場合は、基板上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板FSを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にする場合、露光装置EXへ送られる基板FSは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものであってもよい。
本第1の実施の形態においては、ビーム走査装置としての露光装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置である。露光装置EXは、プロセス装置PR1から供給された基板FSの被照射面(感光面)に対して、ディスプレイ用の電子デバイス、回路または配線等のための所定のパターンに応じた光パターンを照射する。後で詳細に説明するが、露光装置EXは、基板FSを+X方向(副走査の方向)に搬送しながら、露光用のビームLBのスポット光SPを、基板FSの被照射面上で所定の走査方向(Y方向)に1次元に走査(主走査)しつつ、スポット光SPの強度をパターンデータ(描画データ)に応じて高速に変調(オン/オフ)する。これにより、基板FSの被照射面に電子デバイス、回路または配線等の所定のパターンに応じた光パターンが描画露光される。つまり、基板FSの副走査と、スポット光SPの主走査とで、スポット光SPが基板FSの被照射面上で相対的に2次元走査されて、基板FSに所定のパターンが描画露光される。また、基板FSは、搬送方向(+X方向)に沿って搬送されているので、露光装置EXによってパターンが露光される露光領域Wは、基板FSの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられることになる(図3参照)。この露光領域Wに電子デバイスが形成されるので、露光領域Wは、電子デバイス形成領域でもある。なお、電子デバイスは、複数のパターン層(パターンが形成された層)が重ね合わされることで構成されるので、露光装置EXによって各層に対応したパターンが露光されるようにしてもよい。
プロセス装置PR2は、露光装置EXで露光処理された基板FSに対しての後工程の処理(例えばメッキ処理や現像・エッチング処理等)を行う。この後工程の処理により、基板FS上にデバイスのパターン層が形成される。
上述したように、電子デバイスは、複数のパターン層が重ね合わされることで構成されるので、デバイス製造システム10の少なくとも各処理を経て、1つのパターン層が生成される。そのため、電子デバイスを生成するために、図1に示すようなデバイス製造システム10の各処理を少なくとも2回は経なければならない。そのため、基板FSが巻き取られた回収ロールを供給ロールとして別のデバイス製造システム10に装着することで、パターン層を積層することができる。そのような動作を繰り返して、電子デバイスが形成される。そのため、処理後の基板FSは、複数の電子デバイス形成領域が所定の間隔をあけて基板FSの長尺方向に沿って連なった状態となる。つまり、基板FSは、多面取り用の基板となっている。
電子デバイス形成領域(露光領域W)が連なった状態で形成された基板FSを回収した回収ロールは、図示しないダイシング装置に装着されてもよい。回収ロールが装着されたダイシング装置は、処理後の基板FSを電子デバイス形成領域毎に分割(ダイシング)することで、複数個の電子デバイスにする。基板FSの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板FSの寸法は、上記した寸法に限定されない。
次に、露光装置EXについて詳しく説明する。露光装置EXは、温調チャンバーECV内に格納されている。この温調チャンバーECVは、内部を所定の温度に保つことで、内部において搬送される基板FSの温度による形状変化を抑制する。温調チャンバーECVは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場の設置面Eに配置される。防振ユニットSU1、SU2は、設置面Eからの振動を低減する。この設置面Eは、工場の床面自体であってもよいし、水平面を出すために床面上に設置される設置土台(ペデスタル)上の面であってもよい。露光装置EXは、基板搬送機構12と、光源装置14と、ビーム切換部材(ビーム配送ユニット)16と、露光ヘッド18と、制御装置20と、複数のアライメント顕微鏡AMm(AM1〜AM4)とを少なくとも備えている。
基板搬送機構12は、プロセス装置PR1から搬送される基板FSを、露光装置EX内で所定の速度で搬送した後、プロセス装置PR2に所定の速度で送り出す。この基板搬送機構12によって、露光装置EX内で搬送される基板FSの搬送路が規定される。基板搬送機構12は、基板FSの搬送方向の上流側(−X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1、テンション調整ローラRT1、回転ドラム(円筒ドラム)DR、テンション調整ローラRT2、駆動ローラR2、および、駆動ローラR3を有している。
エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置PR1から搬送される基板FSの幅方向(Y方向であって基板FSの短尺方向)における位置を調整する。つまり、エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションが掛けられた状態で搬送されている基板FSの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板FSを幅方向に移動させて、基板FSの幅方向における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCは、基板FSが掛け渡されるローラと、基板FSの幅方向の端部(エッジ)の位置を検出する図示しないエッジセンサ(端部検出部)を有し、エッジセンサが検出した検出信号に基づいて、エッジポジションコントローラEPCの前記ローラをY方向に移動させて、基板FSの幅方向における位置を調整する。駆動ローラR1は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板FSの表裏両面を保持しながら回転し、基板FSを回転ドラムDRへ向けて搬送する。なお、エッジポジションコントローラEPCは、回転ドラムDRに巻き付く基板FSの長尺方向が、回転ドラムDRの中心軸AXoに対して常に直交するように、基板FSの幅方向における位置と適宜調整するともに、基板FSの進行方向における傾き誤差を補正するように、エッジポジションコントローラEPCの前記ローラの回転軸とY軸との平行度を適宜調整してもよい。
回転ドラムDRは、Y方向に延びるとともに重力が働く方向と交差した方向に延びた中心軸AXoと、中心軸AXoから一定半径の円筒状の外周面とを有し、外周面(円周面)に倣って基板FSの一部を長尺方向に支持しつつ、中心軸AXoを中心に回転して基板FSを+X方向に搬送する。回転ドラムDRは、露光ヘッド18からのビームLB(スポット光SP)が投射される基板FS上の露光領域(部分)をその円周面で支持する。回転ドラムDRのY方向の両側には、回転ドラムDRが中心軸AXoの周りを回転するように環状のベアリングで支持されたシャフトSftが設けられている。このシャフトSftは、制御装置20によって制御される図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられることで中心軸AXo回りに回転する。なお、便宜的に、中心軸AXoを含み、YZ平面と平行な平面を中心面Pocと呼ぶ。
駆動ローラR2、R3は、基板FSの搬送方向(+X方向)に沿って所定の間隔を空けて配置されており、露光後の基板FSに所定の弛み(あそび)を与えている。駆動ローラR2、R3は、駆動ローラR1と同様に、基板FSの表裏両面を保持しながら回転し、基板FSをプロセス装置PR2へ向けて搬送する。駆動ローラR2、R3は、回転ドラムDRに対して搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、この駆動ローラR2は、駆動ローラR3に対して、搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。テンション調整ローラRT1、RT2は、−Z方向に付勢されており、回転ドラムDRに巻き付けられて支持されている基板FSに長尺方向に所定のテンションを与えている。これにより、回転ドラムDRにかかる基板FSに付与される長尺方向のテンションを所定の範囲内に安定化させている。なお、制御装置20は、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機等)を制御することで、駆動ローラR1〜R3を回転させる。
光源装置14は、光源(パルス光源)を有し、パルス状のビーム(パルス光、レーザ)LBを射出するものである。このビームLBは、370nm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であり、ビームLBの発光周波数(発振周波数)をFsとする。光源装置14が射出したビームLBは、ビーム切換部材16を介して露光ヘッド18に入射する。光源装置14は、制御装置20の制御にしたがって、発光周波数FsでビームLBを発光して射出する。この光源装置14の構成は、後で詳細に説明するが、第1の実施の形態では、赤外波長域のパルス光を発生する半導体レーザ素子、ファイバー増幅器、増幅された赤外波長域のパルス光を紫外波長域のパルス光に変換する波長変換素子(高調波発生素子)等で構成され、発振周波数Fsが数百MHzで、1パルス光の発光時間がピコ秒程度の高輝度な紫外線のパルス光が得られるファイバーアンプレーザ光源を用いるものとする。
ビーム切換部材16は、露光ヘッド18を構成する複数の走査ユニットUn(U1〜U6)のうち、スポット光SPの1次元走査を行う1つの走査ユニットUnに、光源装置14からのビームLBが入射するように、ビームLBの光路を切り換えるものである。このビーム切換部材16については後で詳細に説明する。
露光ヘッド18は、ビームLBがそれぞれ入射する複数の走査ユニットUn(U1〜U6)を備えている。露光ヘッド18は、回転ドラムDRの円周面で支持されている基板FSの一部分に、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)によってパターンを描画する。露光ヘッド18は、同一構成の複数の走査ユニットUn(U1〜U6)を配列した、いわゆるマルチビーム型の露光ヘッドとなっている。露光ヘッド18は、基板FSに対して電子デバイス用のパターン露光を繰り返し行うことから、パターンが露光される露光領域W(電子デバイス形成領域)は、基板FSの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられている(図3参照)。図1にも示すように、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5は、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の上流側(−X方向側)に配置され、且つ、Y方向に沿って配置されている。偶数番の走査ユニットU2、U4、U6は、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の下流側(+X方向側)に配置され、且つ、Y方向に沿って配置されている。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6とは、中心面Pocに対して対称に設けられている。
走査ユニットUnは、光源装置14からのビームLBを基板FSの被照射面上でスポット光SPに収斂させるように投射しつつ、そのスポット光SPを基板FSの被照射面上で所定の直線的な描画ライン(走査線)SLnに沿って、回転するポリゴンミラーPM(図7参照)によって1次元に走査する。この走査ユニットUnの構成については、後で詳しく説明する。
複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、所定の配置関係で配置されている。複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の描画ラインSLnが、図2、図3に示すように、Y方向(基板FSの幅方向、主走査方向)に関して、互いに分離することなく、継ぎ合わされるように配置されている。以下、走査ユニットU1の描画ラインSLnをSL1、走査ユニットU2〜U6の描画ラインSLnを、SL2〜SL6と表す場合がある。なお、各走査ユニットUn(U1〜U6)に入射するビームLBを、各々LB1〜LB6と表す場合がある。この走査ユニットUnに入射するビームLBは、所定の方向に偏光した直線偏光(P偏光またはS偏光)のビームであり、本第1の実施の形態では、P偏光のビームとする。また、以下の説明では、6つの走査ユニットU1〜U6の各々に入射するビームLB1〜LB6をビームLBnと表すこともある。
図3に示すように、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)全部で露光領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、走査領域を分担している。これにより、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、基板FSの幅方向に分割された複数の領域毎にパターンを描画することができる。例えば、1つの走査ユニットUnによるY方向の走査長(描画ラインSLnの長さ)を30〜60mm程度とすると、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の3個と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の3個との計6個の走査ユニットUnをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を180〜360mm程度に広げている。各描画ラインSL1〜SL6の長さは、原則として同一とする。つまり、描画ラインSL1〜SL6の各々に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査距離は、原則として同一とする。なお、露光領域Wの幅を長くしたい場合は、描画ラインSLn自体の長さを長くするか、Y方向に配置する走査ユニットUnの数を増やすことで対応することができる。
なお、実際の各描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、スポット光SPが被照射面上を実際に走査可能な最大の長さよりも僅かに短く設定される。例えば、主走査方向(Y方向)の描画倍率が初期値(倍率補正無し)の場合にパターン描画可能な描画ラインSLnの最大長を30mmとすると、スポット光SPの被照射面上での最大走査長は、描画ラインSLnの走査開始点側と走査終了点側の各々に0.5mm程度の余裕を持たせて、31mm程度に設定されている。このように設定することによって、スポット光SPの最大走査長31mmの範囲内で、30mmの描画ラインSLnの位置を主走査方向に微調整したり、描画倍率を微調整したりすることが可能となる。スポット光SPの最大走査長は31mmに限定されるものではなく、主に走査ユニットUn内のポリゴンミラー(回転ポリゴンミラー)PMの後に設けられるfθレンズFT(図7参照)の口径によって決まり、31mm以上であってもよい。
複数の描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、中心面Pocを挟んで、回転ドラムDRの周方向に2列に配置される。奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5は、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の上流側(−X方向側)の基板FSの被照射面上に位置する。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6は、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板FSに被照射面上に位置する。描画ラインSL1〜SL6は、基板FSの幅方向、つまり、回転ドラムDRの中心軸AXoと略並行となっている。
描画ラインSL1、SL3、SL5は、基板FSの幅方向(走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に配置されている。描画ラインSL2、SL4、SL6も同様に、基板FSの幅方向(走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に配置されている。このとき、描画ラインSL2は、基板FSの幅方向に関して、描画ラインSL1と描画ラインSL3との間に配置される。同様に、描画ラインSL3は、基板FSの幅方向に関して、描画ラインSL2と描画ラインSL4との間に配置されている。描画ラインSL4は、基板FSの幅方向に関して、描画ラインSL3と描画ラインSL5との間に配置され、描画ラインSL5は、基板FSの幅方向に関して、描画ラインSL4と描画ラインSL6との間に配置されている。
奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5の各々に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査方向は、1次元の方向となっており、同じ方向となっている。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6の各々に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査方向は、1次元の方向となっており、同じ方向となっている。この描画ラインSL1、SL3、SL5に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査方向と、描画ラインSL2、SL4、SL6に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査方向とは互いに逆方向となっている。詳しくは、描画ラインSL1、SL3、SL5に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査方向は−Y方向であり、描画ラインSL2、SL4、SL6に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査方向は+Y方向である。これにより、描画ラインSL1、SL3、SL5の描画開始位置(描画開始点(走査開始点)の位置)と、描画ラインSL2、SL4、SL6の描画開始位置とはY方向に関して隣接(または一部重複)する。また、描画ラインSL3、SL5の描画終了位置(描画終了点(走査終了点)の位置)と、描画ラインSL2、SL4の描画終了位置とはY方向に関して隣接(または一部重複)する。Y方向に隣り合う描画ラインSLnの端部同士を一部重複させるように、各描画ラインSLnを配置する場合は、例えば、各描画ラインSLnの長さに対して、描画開始位置、または描画終了位置を含んでY方向に数%以下の範囲で重複させるとよい。
なお、描画ラインSLnの副走査方向の幅は、スポット光SPのサイズ(直径)φに応じた太さである。例えば、スポット光SPのサイズφが3μmの場合は、描画ラインSLnの幅も3μmとなる。スポット光SPは、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズφの半分)だけオーバーラップするように、描画ラインSLnに沿って投射されてもよい。また、Y方向に隣り合う描画ラインSLn(例えば、描画ラインSL1と描画ラインSL2)同士を互いに隣接させる場合(継ぐ場合)も、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズφの半分)だけオーバーラップさせるのがよい。
本第1の実施の態様の場合、光源装置14からのビームLBがパルス光であるため、主走査の間に描画ラインSLn上に投射されるスポット光SPは、ビームLBの発振周波数Fsに応じて離散的になる。そのため、ビームLBの1パルス光によって投射されるスポット光SPと次の1パルス光によって投射されるスポット光SPとを、主走査方向にオーバーラップさせる必要がある。そのオーバーラップの量は、スポット光SPのサイズφ、スポット光SPの走査速度、ビームLBの発振周波数Fsによって設定されるが、スポット光SPの強度分布がガウス分布で近似される場合、スポット光SPのピーク強度の1/e2(または1/2)で決まる実効的な径サイズφに対して、φ/2程度オーバーラップさせるのがよい。したがって、副走査方向(描画ラインSLnと直交した方向)に関しても、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1回の走査と、次の走査との間で、基板FSがスポット光SPの実効的なサイズφのほぼ1/2以下の距離だけ移動するように設定することが望ましい。また、基板FS上の感光性機能層への露光量の設定は、ビームLB(パルス光)のピーク値の調整で可能であるが、ビームLBの強度を上げられない状況で露光量を増大させたい場合は、スポット光SPの主走査方向の走査速度の低下、ビームLBの発振周波数Fsの増大、或いは基板FSの副走査方向の搬送速度の低下等のいずれかによって、スポット光SPの主走査方向または副走査方向に関するオーバーラップ量を実効的なサイズφの1/2以上に増加させればよい。
複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、ビームLBnのスポット光SPの走査を、予め決められた順番(所定の順番)にしたがって繰り返し行う。例えば、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番が、U1→U2→U3→U4→U5→U6、となっている場合は、まず、走査ユニットU1がスポット光SPの走査を1回行う。そして、走査ユニットU1のスポット光SPの走査が終了すると、走査ユニットU2がスポット光SPの走査を1回行い、その走査が終了すると、走査ユニットU3がスポット光SPの走査を1回行うといった具合に、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)が所定の順番でスポット光SPの走査を1回ずつ行う。そして、走査ユニットU6のスポット光SPの走査が終了すると、走査ユニットU1のスポット光SPの走査に戻る。このように、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、スポット光SPの走査を所定の順番で繰り返す。
各走査ユニットUn(U1〜U6)は、少なくともXZ平面において、各ビームLBnが回転ドラムDRの中心軸AXoに向かって進むように、各ビームLBnを基板FSに向けて照射する。これにより、各走査ユニットUn(U1〜U6)から基板FSに向かって進むビームLBnの光路(ビーム中心軸)は、XZ平面において、基板FSの被照射面の法線と同軸(平行)となる。また、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)に照射するビームLBnが、YZ平面と平行な面内では基板FSの被照射面に対して垂直となるように、ビームLBnを基板FSに向けて照射する。すなわち、被照射面でのスポット光SPの主走査方向に関して、基板FSに投射されるビームLBn(LB1〜LB6)はテレセントリックな状態で走査される。ここで、各走査ユニットUn(U1〜U6)によって規定される描画ラインSLn(SL1〜SL6)の各中点を通って基板FSの被照射面と垂直な線(または光軸とも呼ぶ)を、照射中心軸Len(Le1〜Le6)と呼ぶ。
この各照射中心軸Len(Le1〜Le6)は、XZ平面において、描画ラインSL1〜SL6と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の各々の照射中心軸Le1、Le3、Le5は、XZ平面において同じ方向となっており、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の各々の照射中心軸Le2、Le4、Le6は、XZ平面において同じ方向となっている。また、照射中心軸Le1、Le3、Le5と照射中心軸Le2、Le4、Le6とは、XZ平面において、中心面Pocに対して角度が±θとなるように設定されている(図1参照)。
図1に示したアライメント顕微鏡AMm(AM1〜AM4)は、図3に示すように、基板FSに形成されたアライメントマークMKm(MK1〜MK4)を検出するためのものであり、Y方向に沿って複数(本第1の実施の形態では、4つ)設けられている。アライメントマークMKm(MK1〜MK4)は、基板FSの被照射面上の露光領域Wに描画される所定のパターンと、基板FSとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。アライメント顕微鏡AMm(AM1〜AM4)は、回転ドラムDRの円周面で支持されている基板FS上で、アライメントマークMKm(MK1〜MK4)を検出する。アライメント顕微鏡AMm(AM1〜AM4)は、露光ヘッド18からのビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPによる基板FS上の被照射領域(描画ラインSL1〜SL6で囲まれた領域)よりも基板FSの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。
アライメント顕微鏡AMm(AM1〜AM4)は、アライメント用の照明光を基板FSに投射する光源と、基板FSの表面のアライメントマークMKm(MK1〜MK4)を含む局所領域(観察領域)の拡大像を得る観察光学系(対物レンズを含む)と、その拡大像を基板FSが搬送方向に移動している間に高速シャッターで撮像するCCD、CMOS等の撮像素子とを有する。アライメント顕微鏡AMm(AM1〜AM4)が撮像した撮像信号(画像データ)ig(ig1〜ig4)は制御装置20に送られる。制御装置20は、撮像信号ig(ig1〜ig4)の画像解析と、撮像した瞬間の回転ドラムDRの回転位置の情報(図2に示したスケール部SDを読み取るエンコーダEN1a、EN1bによる計測値)とに基づいて、アライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置を検出して、基板FSの位置を高精度に計測する。なお、アライメント用の照明光は、基板FS上の感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば、波長500〜800nm程度の光である。
アライメントマークMK1〜MK4は、各露光領域Wの周りに設けられている。アライメントマークMK1、MK4は、露光領域Wの基板FSの幅方向の両側に、基板FSの長尺方向に沿って一定の間隔Dhで複数形成されている。アライメントマークMK1は、基板FSの幅方向の−Y方向側に、アライメントマークMK4は、基板FSの幅方向の+Y方向側にそれぞれ形成されている。このようなアライメントマークMK1、MK4は、基板FSが大きなテンションを受けたり、熱プロセスを受けたりして変形していない状態では、基板FSの長尺方向(X方向)に関して同一位置になるように配置される。さらに、アライメントマークMK2、MK3は、アライメントマークMK1とアライメントマークMK4の間であって、露光領域Wの+X方向側と−X方向側との余白部に基板FSの幅方向(短尺方向)に沿って形成されている。アライメントマークMK2、MK3は、露光領域Wと露光領域Wとの間に形成されている。アライメントマークMK2は、基板FSの幅方向の−Y方向側に、アライメントマークMK3は、基板FSの+Y方向側に形成されている。
さらに、基板FSの−Y方向の側端部に配列されるアライメントマークMK1と余白部のアライメントマークMK2とのY方向の間隔、余白部のアライメントマークMK2とアライメントマークMK3のY方向の間隔、および基板FSの+Y方向の側端部に配列されるアライメントマークMK4と余白部のアライメントマークMK3とのY方向の間隔は、いずれも同じ距離に設定されている。これらのアライメントマークMKm(MK1〜MK4)は、第1層のパターン層の形成の際に一緒に形成されてもよい。例えば、第1層のパターンを露光する際に、パターンが露光される露光領域Wの周りにアライメントマーク用のパターンも一緒に露光してもよい。なお、アライメントマークMKmは、露光領域W内に形成されてもよい。例えば、露光領域W内であって、露光領域Wの輪郭に沿って形成されてもよい。また、露光領域W内にアライメントマークMKmを形成する場合は、露光領域W内に形成される電子デバイスのパターン中の特定位置のパターン部分、或いは特定形状の部分をアライメントマークMKmとして利用してもよい。
アライメント顕微鏡AM1は、対物レンズによる観察領域(検出領域)Vw1内に存在するアライメントマークMK1を撮像するように配置される。同様に、アライメント顕微鏡AM2〜AM4は、対物レンズによる観察領域Vw2〜Vw4内に存在するアライメントマークMK2〜MK4を撮像するように配置される。したがって、複数のアライメント顕微鏡AM1〜AM4は、複数のアライメントマークMK1〜MK4の位置に対応して、基板FSの−Y方向側からアライメント顕微鏡AM1〜AM4の順で設けられている。アライメント顕微鏡AMm(AM1〜AM4)は、X方向に関して、露光位置(描画ラインSL1〜SL6)とアライメント顕微鏡AMmの観察領域Vw(Vw1〜Vw4)との距離が、露光領域WのX方向の長さよりも短くなるように設けられている。なお、Y方向に設けられるアライメント顕微鏡AMmの数は、基板FSの幅方向に形成されるアライメントマークMKmの数に応じて変更可能である。また、観察領域Vw1〜Vw4の基板FSの被照射面上の大きさは、アライメントマークMK1〜MK4の大きさやアライメント精度(位置計測精度)に応じて設定されるが、100〜500μm角程度の大きさである。
図2に示すように、回転ドラムDRの両端部には、回転ドラムDRの外周面の周方向の全体に亘って環状に形成された目盛を有するスケール部SD(SDa、SDb)が設けられている。このスケール部SD(SDa、SDb)は、回転ドラムDRの外周面の周方向に一定のピッチ(例えば、20μm)で凹状または凸状の格子線を刻設した回折格子であり、インクリメンタル型のスケールとして構成される。このスケール部SD(SDa、SDb)は、中心軸AXo回りに回転ドラムDRと一体に回転する。また、このスケール部SD(SDa、SDb)と対向するように、複数のエンコーダ(スケール読取ヘッド)ENnが設けられている。このエンコーダENnは、回転ドラムDRの回転位置を光学的に検出するものである。回転ドラムDRの−Y方向側の端部に設けられたスケール部SDaに対向して、3つのエンコーダENn(EN1a、EN2a、EN3a)が設けられている。同様に、回転ドラムDRの+Y方向側の端部に設けられたスケール部SDbに対向して、3つのエンコーダENn(EN1b、EN2b、EN3b)が設けられている。
エンコーダENn(EN1a〜EN3a、EN1b〜EN3b)は、スケール部SD(SDa、SDb)に向けて計測用の光ビームを投射し、その反射光束(回折光)を光電検出することにより、パルス信号である検出信号を制御装置20に出力する。制御装置20は、その検出信号(パルス信号)をカウンタ回路106a(図13参照)でカウントすることにより、回転ドラムDRの回転角度位置および角度変化をサブミクロンの分解能で計測することができる。カウンタ回路106aは、各エンコーダENn(EN1a〜EN3a、EN1b〜EN3b)の検出信号をそれぞれ個別にカウントする。制御装置20は、回転ドラムDRの角度変化から、基板FSの搬送速度も計測することもできる。各エンコーダENn(EN1a〜EN3a、EN1b〜EN3b)の各々の検出信号を個別にカウントするカウンタ回路106aは、各エンコーダENn(EN1a〜EN3a、EN1b〜EN3b)がスケール部SDa、SDbの周方向の一部に形成された原点マーク(原点パターン)ZZを検出すると、そのエンコーダENnに対応するカウント値を0にリセットする。
エンコーダEN1a、EN1bは、設置方位線Lx1上に配置されている。設置方位線Lx1は、XZ平面において、エンコーダEN1a、EN1bの計測用の光ビームのスケール部SD(SDa、SDb)上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Lx1は、XZ平面において、各アライメント顕微鏡AMm(AM1〜AM4)の観察領域Vw(Vw1〜Vw4)と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。
エンコーダEN2a、EN2bは、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられており、且つ、エンコーダEN1a、EN1bより基板FSの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられている。エンコーダEN2a、EN2bは、設置方位線Lx2上に配置されている。設置方位線Lx2は、XZ平面において、エンコーダEN2a、EN2bの計測用の光ビームのスケール部SD(SDa、SDb)上への投射位置と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。この設置方位線Lx2は、XZ平面において、照射中心軸Le1、Le3、Le5と同角度位置となって重なっている。
エンコーダEN3a、EN3bは、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられている。エンコーダEN3a、EN3bは、設置方位線Lx3上に配置されている。設置方位線Lx3は、XZ平面において、エンコーダEN3a、EN3bの計測用の光ビームのスケール部SD(SDa、SDb)上への投射位置と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。この設置方位線Lx3は、XZ平面において、照射中心軸Le2、Le4、Le6と同角度位置となって重なっている。
このエンコーダEN1a、EN1bからの検出信号のカウント値(回転角度位置)と、エンコーダEN2a、EN2bからの検出信号のカウント値(回転角度位置)と、エンコーダEN3a、EN3bからの検出信号のカウント値(回転角度位置)とは、各エンコーダENnが回転ドラムDRの周回方向の1ヶ所に付設された原点マークZZを検出した瞬間にゼロにリセットされる。そのため、エンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)のときの、回転ドラムDRに巻き付けられている基板FSの設置方位線Lx1上における位置(アライメント顕微鏡AM1〜AM4の各観察領域Vw1〜Vw4の位置)を第1の位置とした場合に、基板FS上の第1の位置が設置方位線Lx2上の位置(描画ラインSL1、SL3、SL5の位置)まで搬送されると、エンコーダEN2a、EN2bに基づくカウント値は第1の値(例えば、100)となる。同様に、基板FS上の第1の位置が設置方位線Lx3上の位置(描画ラインSL2、SL4、SL6の位置)まで搬送されると、エンコーダEN3a、EN3bに基づく検出信号のカウント値は第1の値(例えば、100)となる。
ところで、基板FSは、回転ドラムDRの両端のスケール部SDa、SDbより内側に巻き付けられている。図1では、スケール部SD(SDa、SDb)の外周面の中心軸AXoからの半径を、回転ドラムDRの外周面の中心軸AXoからの半径より小さく設定した。しかしながら、図2に示すように、スケール部SD(SDa、SDb)の外周面を、回転ドラムDRに巻き付けられた基板FSの外周面と同一面となるように設定してもよい。つまり、スケール部SD(SDa、SDb)の外周面の中心軸AXoからの半径(距離)と、回転ドラムDRに巻き付けられた基板FSの外周面(被照射面)の中心軸AXoからの半径(距離)とが同一となるように設定してもよい。これにより、エンコーダENn(EN1a、EN1b、EN2a、EN2b、EN3a、EN3b)は、回転ドラムDRに巻き付いた基板FSの被照射面と同じ径方向の位置でスケール部SD(SDa、SDb)を検出することができ、エンコーダENnによる計測位置と処理位置(描画ラインSL1〜SL6)とが回転ドラムDRの径方向で異なることで生じるアッベ誤差を小さくすることができる。
以上のことから、アライメント顕微鏡AMm(AM1〜AM4)によって検出されたアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置(エンコーダEN1a、EN1bによるカウント値)に基づいて、制御装置20によって基板FSの長尺方向(X方向)における露光領域Wの描画露光の開始位置が決定され、そのときにエンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値を第1の値(例えば、100)とする。この場合は、エンコーダEN2a、EN2bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)となると、基板FSの長尺方向における露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL1、SL3、SL5上に位置する。したがって、走査ユニットU1、U3、U5は、エンコーダEN2a、EN2bのカウント値に基づいて、スポット光SPの走査を開始することができる。また、エンコーダEN3a、EN3bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)となると、基板FSの長尺方向における露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上に位置する。したがって、走査ユニットU2、U4、U6は、エンコーダEN3a、EN3bのカウント値に基づいて、スポット光SPの走査を開始することができる。
図4は、光源装置(パルス光源装置、パルスレーザ装置)14の構成を示す図である。ファイバーレーザ装置としての光源装置14は、DFB半導体レーザ素子30、DFB半導体レーザ素子32、偏光ビームスプリッタ34、描画用光変調器としての電気光学素子36、この電気光学素子36の駆動回路36a、偏光ビームスプリッタ38、吸収体40、励起光源42、コンバイナ44、ファイバー光増幅器46、波長変換光学素子48、50、複数のレンズ素子GL、および、クロック発生器52aを含む制御回路52を備える。
DFB半導体レーザ素子(第1固体レーザ素子)30は、所定周波数Fsで俊鋭若しくは尖鋭のパルス状の種光(レーザ光)S1を発生し、DFB半導体レーザ素子(第2固体レーザ素子)32は、所定周波数Fsで緩慢(時間的にブロード)なパルス状の種光(レーザ光)S2を発生する。DFB半導体レーザ素子30が発生する種光S1と、DFB半導体レーザ素子32が発生する種光S2とは、1パルス当たりのエネルギーは略同一であるが、偏光状態が互いに異なり、ピーク強度は種光S1の方が強い。本第1の実施の形態では、DFB半導体レーザ素子30が発生する種光S1の偏光状態をS偏光とし、DFB半導体レーザ素子32が発生する種光S2の偏光状態をP偏光として説明する。このDFB半導体レーザ素子30、32は、クロック発生器52aで生成されるクロック信号LTC(所定周波数Fs)に応答して、制御回路52の電気的な制御によって、所定周波数(発振周波数)Fsで種光S1、S2を発光するように制御される。この制御回路52は、制御装置20によって制御される。
なお、このクロック信号LTCは、詳しくは後述するが、ビットマップ状の描画データのメモリ回路中のアドレスを指定するためのカウンタ部CN1〜CN6(図15参照)の各々に供給されるクロック信号CLKのベースとなるもので、クロック信号LTCをn分周(nは2以上の整数が好ましい)したものがクロック信号CLKとなる。また、クロック発生器52aは、クロック信号LTCの所定周波数(基本周波数)Fsを±ΔFだけ調整する機能、すなわち、ビームLBのパルス発振の時間間隔を微調する機能も有する。これによって、例えば、スポット光SPの走査速度が僅かに変動しても、所定周波数Fsを微調整することで、描画ラインSLn(走査ライン)に渡って描画されるパターンの寸法(描画倍率)を精密に保つことができる。
偏光ビームスプリッタ34は、S偏光の光を透過し、P偏光の光を反射するものであり、DFB半導体レーザ素子30が発生した種光S1と、DFB半導体レーザ素子32が発生した種光S2とを、電気光学素子36に導く。詳しくは、偏光ビームスプリッタ34は、DFB半導体レーザ素子30が発生したS偏光の種光S1を透過することで種光S1を電気光学素子36に導き、DFB半導体レーザ素子32が発生したP偏光の種光S2を反射することで種光S2を電気光学素子36に導く。DFB半導体レーザ素子30、32、および、偏光ビームスプリッタ34は、種光S1、S2を生成するレーザ光源部35を構成する。
電気光学素子36は、種光S1、S2に対して透過性を有するものであり、例えば、電気光学変調器(EOM:Electro-Optic Modulator)が用いられる。電気光学素子36は、描画ビット列データSdw(またはシリアルデータDLn)のハイ/ロー状態に応答して、偏光ビームスプリッタ34を通ってきた種光S1、S2の偏光状態を駆動回路36aによって切り換えるものである。この描画ビット列データSdwは、走査ユニットU1〜U6の各々が露光すべきパターンに応じたパターンデータ(ビットパターン)に基づいて生成されるものである。DFB半導体レーザ素子30、DFB半導体レーザ素子32の各々からの種光S1、S2は波長域が800nm以上と長いため、電気光学素子36として、偏光状態の切り換え応答性がGHz程度のものを使うことができる。
パターンデータは、走査ユニットUn毎に設けられ、このパターンデータは、スポット光SPの走査方向(主走査方向、Y方向)に沿った方向を行方向とし、基板FSの搬送方向(副走査方向、X方向)に沿った方向を列方向とするように2次元に分解された複数の画素データで構成されているビットマップデータである。この画素データは、「0」または「1」の1ビットのデータである。「0」の画素データは、基板FSに照射するスポット光SPの強度を低レベルにすることを意味し、「1」の画素データは、基板FS上に照射するスポット光SPの強度を高レベルにすることを意味する。パターンデータの1列分の画素データは、1本分の描画ラインSLn(SL1〜SL6)に対応するものであり、1本の描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って基板FSに投射されるスポット光SPの強度が、1列分の画素データに応じて変調される。この1列分の画素データをシリアルデータDLnと呼ぶ。つまり、パターンデータは、シリアルデータDLnが列方向に並んだビットマップデータである。走査ユニットU1のパターンデータのシリアルデータDLnをDL1で表し、同様に、走査ユニットU2〜U6のパターンデータのシリアルデータDLnをDL2〜DL6で表す。
また、複数の走査ユニットU1〜U6は、所定の順番でスポット光SPの走査を1回ずつ行う動作を繰り返すことから、それに対応して、各走査ユニットUnのパターンデータのシリアルデータDLnが、所定の順番で駆動回路36aに出力される。この駆動回路36aに順次出力されるシリアルデータDLnを描画ビット列データSdwと呼ぶ。例えば、所定の順番が、U1→U2→・・・→U6、となっている場合は、まず、1列分のシリアルデータDL1が駆動回路36aに出力され、続いて、1列分のシリアルデータDL2が駆動回路36aに出力されるといった具合に、描画ビット列データSdwを構成する1列分のシリアルデータDL1〜DL6が順次駆動回路36aに出力される。その後、次の列のシリアルデータDL1〜DL6が描画ビット列データSdwとして順次駆動回路36aに出力される。この駆動回路36aに描画ビット列データSdwを出力する具体的な構成については後で詳細に説明する。
駆動回路36aに入力される描画ビット列データSdw(またはシリアルデータDLn)の1ビットの画素データがロー(「0」)状態のとき、電気光学素子36は種光S1、S2の偏光状態を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ38に導く。一方で、駆動回路36aに入力される描画ビット列データSdw(またはDLn)の1ビットの画素データがハイ(「1」)状態のとき、電気光学素子36は入射した種光S1、S2の偏光状態を変えて、つまり、偏光方向を90度変えて偏光ビームスプリッタ38に導く。このように電気光学素子36を駆動させることによって、電気光学素子36は、描画ビット列データSdw(またはシリアルデータDLn)の画素データがハイ状態(「1」)のときは、S偏光の種光S1をP偏光の種光S1に変換し、P偏光の種光S2をS偏光の種光S2に変換する。
偏光ビームスプリッタ38は、P偏光の光を透過してレンズ素子GLを介してコンバイナ44に導き、S偏光の光を反射させて吸収体40に導く。励起光源42は励起光を発生し、該発生した励起光は、光ファイバー42aを通ってコンバイナ44に導かれる。コンバイナ44は、偏光ビームスプリッタ38から照射された種光と励起光とを合成して、ファイバー光増幅器46に出力する。ファイバー光増幅器46は、励起光によって励起されるレーザ媒質がドープされている。したがって、合成された種光および励起光が伝送するファイバー光増幅器46内では、励起光によってレーザ媒質が励起されることにより種光が増幅される。ファイバー光増幅器46内にドープされるレーザ媒質としては、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ツリウム(Tm)等の希土類元素が用いられる。この増幅された種光は、ファイバー光増幅器46の射出端46aから所定の発散角を伴って放射され、レンズ素子GLによって収斂またはコリメートされて波長変換光学素子48に入射する。
波長変換光学素子(第1の波長変換光学素子)48は、第2高調波発生(Second Harmonic Generation:SHG)によって、入射した種光(波長λ)を、波長がλの1/2の第2高調波に変換する。波長変換光学素子48として、疑似位相整合(Quasi Phase Matching:QPM)結晶であるPPLN(Periodically Poled LiNbO3)結晶が好適に用いられる。なお、PPLT(Periodically Poled LiTaO3)結晶等を用いることも可能である。
波長変換光学素子(第2の波長変換光学素子)50は、波長変換光学素子48が変換した第2高調波(波長λ/2)と、波長変換光学素子48によって変換されずに残留した種光(波長λ)との和周波発生(Sum Frequency Generation:SFG)により、波長がλの1/3の第3高調波を発生する。この第3高調波が、370mm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光(ビームLB)となる。
以上のように、駆動回路36aに印加する描画ビット列データSdw(またはシリアルデータDLn)の1ビットの画素データがロー(「0」)の場合は、電気光学素子36は、入射した種光S1、S2の偏光状態を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ38に導く。そのため、偏光ビームスプリッタ38を通過する種光は種光S2となる。したがって、光源装置14から最終的に出力されるP偏光のビームLBは、DFB半導体レーザ素子32からの種光S2と同じ発振プロファイル(時間特性)を有する。すなわち、この場合は、ビームLBは、パルスのピーク強度が低く、時間的にブロードな鈍った特性となる。ファイバー光増幅器46は、そのようなピーク強度が低い種光S2に対する増幅効率が低いため、光源装置14から射出されるビームLBは、露光に必要なエネルギーまで増幅されない光となる。したがって、露光という観点からみれば、実質的に光源装置14はビームLBを射出していないのと同じ結果となる。つまり、基板FSに照射されるスポット光SPの強度は低レベルとなる。ただし、パターンの露光が行われない期間(非露光期間)では、種光S2由来の紫外域のビームLBが僅かな強度であっても照射され続けるので、描画ラインSL1〜SL6が、長時間、基板FS上の同じ位置にある状態が続く場合(例えば、搬送系のトラブルによって基板FSが停止している場合等)は、光源装置14のビームLBの射出窓(図示略)に可動シャッタを設けて、射出窓を閉じるようにするとよい。
一方、駆動回路36aに印加する描画ビット列データSdw(またはシリアルデータDLn)の1ビットの画素データがハイ(「1」)の場合は、電気光学素子36は、入射した種光S1、S2の偏光状態を変えて偏光ビームスプリッタ38に導く。そのため、偏光ビームスプリッタ38を透過する種光は種光S1となる。したがって、光源装置14から射出されるビームLBは、DFB半導体レーザ素子30からの種光S1に由来して生成されたものとなる。DFB半導体レーザ素子30からの種光S1はピーク強度が強いため、ファイバー光増幅器46によって効率的に増幅され、光源装置14から出力されるP偏光のビームLBは、基板FSの露光に必要なエネルギーを持つ。つまり、基板FSに照射されるスポット光SPの強度は高レベルとなる。
このように、光源装置14内に、描画用光変調器としての電気光学素子36を設けたので、1つの電気光学素子36を制御することで、各走査ユニットUn(U1〜U6)によって走査されるスポット光SPの強度を、描画すべきパターンに応じて変調させることができる。したがって、光源装置14から射出されるビームLBは、強度変調された描画ビームとなる。
なお、図4の構成において、DFB半導体レーザ素子32および偏光ビームスプリッタ34を省略して、DFB半導体レーザ素子30からの種光S1のみを、描画データに基づく電気光学素子36の偏光状態の切り換えで、ファイバー光増幅器46にバースト波状に導光することも考えられる。しかしながら、この構成を採用すると、種光S1のファイバー光増幅器46への入射周期性が描画すべきパターンに応じて大きく乱される。すなわち、ファイバー光増幅器46にDFB半導体レーザ素子30からの種光S1が入射しない状態が続いた後に、ファイバー光増幅器46に種光S1が入射すると、入射直後の種光S1は通常のときよりも大きな増幅率で増幅され、ファイバー光増幅器46からは、規定以上の大きな強度を持つビームが発生するという問題がある。そこで、本第1の実施の形態では、好ましい態様として、ファイバー光増幅器46に種光S1が入射しない期間に、DFB半導体レーザ素子32からの種光S2(ピーク強度が低いブロードなパルス光)をファイバー光増幅器46に入射することで、このような問題を解決している。
また、電気光学素子36をスイッチングするようにしたが、描画ビット列データSdw(またはシリアルデータDLn)に基づいて、DFB半導体レーザ素子30、32を駆動するようにしてもよい。つまり、制御回路52は、描画ビット列データSdw(またはシリアルデータDLn)に基づいて、DFB半導体レーザ素子30、32を制御して、所定周波数Fsでパルス状に発振する種光S1、S2を選択的(択一的)に発生させる。この場合は、偏光ビームスプリッタ34、38、電気光学素子36、および吸収体40は不要となり、DFB半導体レーザ素子30、32のいずれか一方から選択的にパルス発振される種光S1、S2の一方が、直接コンバイナ44に入射する。このとき、制御回路52は、DFB半導体レーザ素子30からの種光S1と、DFB半導体レーザ素子32からの種光S2とが同時にファイバー光増幅器46に入射しないように、各DFB半導体レーザ素子30、32の駆動を制御する。すなわち、基板FSに各ビームLBnのスポット光SPを照射する場合は、種光S1のみがファイバー光増幅器46に入射するようにDFB半導体レーザ素子30を制御する。また、基板FSに各ビームLBnのスポット光SPを照射しない(スポット光SPの強度を極めて低くする)場合には、種光S2のみがファイバー光増幅器46に入射するようにDFB半導体レーザ素子32を制御する。このように、基板FSにビームLBnを照射するか否かは、画素データ(HまたはL)に基づいて決定される。また、この場合の種光S1、S2の偏光状態はともにP偏光でよい。
図5は、ビーム切換部材16の構成図である。ビーム切換部材16は、複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)と、複数の集光レンズCD1〜CD6と、複数の反射ミラーM1〜M12と、複数のユニット側入射ミラーIM1〜IM6と、複数のコリメートレンズCL1〜CL6と、吸収体TRとを有する。選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、ビームLBに対して透過性を有するものであり、超音波信号で駆動される音響光学変調素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)である。これらの光学的な部材(選択用光学素子AOM1〜AOM6、集光レンズCD1〜CD6、反射ミラーM1〜M12、ユニット側入射ミラーIM1〜IM6、コリメートレンズCL1〜CL6、および、吸収体TR)は、板状の支持部材IUBによって支持されている。この支持部材IUBは、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の上方で、これらの光学的な部材を下方(−Z方向側)から支持する。したがって、支持部材IUBは、発熱源となる選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)と複数の走査ユニットUn(U1〜U6)との間を断熱する機能も備えている。
光源装置14からビームLBは、反射ミラーM1〜M12によってその光路がつづらおり状に曲げられて、吸収体TRまで導かれる。以下、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)がいずれもオフ状態(超音波信号が印加されていない状態)の場合で、詳述する。光源装置14からのビームLB(平行光束)は、Y軸と平行に+Y方向に進んで集光レンズCD1を通って反射ミラーM1に入射する。反射ミラーM1で−X方向側に反射したビームLBは、集光レンズCD1の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第1の選択用光学素子AOM1をストレートに透過し、コリメートレンズCL1によって再び平行光束にされて、反射ミラーM2に至る。反射ミラーM2で+Y方向側に反射したビームLBは、集光レンズCD2を通った後に反射ミラーM3で+X方向側に反射される。
反射ミラーM3で反射されたビームLBは、集光レンズCD2の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第2の選択用光学素子AOM2をストレートに透過し、コリメートレンズCL2によって再び平行光束にされて、反射ミラーM4に至る。反射ミラーM4で+Y方向側に反射されたビームLBは、集光レンズCD3を通った後に反射ミラーM5で−X方向側に反射される。反射ミラーM5で−X方向側に反射されたビームLBは、集光レンズCD3の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第3の選択用光学素子AOM3をストレートに透過し、コリメートレンズCL3によって再び平行光束にされて、反射ミラーM6に至る。反射ミラーM6で+Y方向側に反射されたビームLBは、集光レンズCD4を通った後に反射ミラーM7で+X方向側に反射される。
反射ミラーM7で反射されたビームLBは、集光レンズCD4の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第4の選択用光学素子AOM4をストレートに透過し、コリメートレンズCL4によって再び平行光束にされて、反射ミラーM8に至る。反射ミラーM8で+Y方向側に反射されたビームLBは、集光レンズCD5を通った後に反射ミラーM9で−X方向側に反射される。反射ミラーM9で−X方向側に反射されたビームLBは、集光レンズCD5の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第5の選択用光学素子AOM5をストレートに透過し、コリメートレンズCL5によって再び平行光束にされて、反射ミラーM10に至る。反射ミラーM10で+Y方向側に反射されたビームLBは、集光レンズCD6を通った後に反射ミラーM11で+X方向側に反射される。反射ミラーM11で反射されたビームLBは、集光レンズCD6の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第6の選択用光学素子AOM6をストレートに透過し、コリメートレンズCL6によって再び平行光束にされ、反射ミラーM12で−Y方向側に反射された後、吸収体TRに至る。この吸収体TRは、ビームLBの外部への漏れを抑制するためにビームLBを吸収する光トラップである。
以上のように、選択用光学素子AOM1〜AOM6は、光源装置14からのビームLBを順次透過するように配置されるとともに、集光レンズCD1〜CD6とコリメートレンズCL1〜CL6とによって、各選択用光学素子AOM1〜AOM6の内部にビームLBのビームウエストが形成されるように配置される。これにより、選択用光学素子AOM1〜AOM6(音響光学変調素子)に入射するビームLBの径を小さくして、回折効率を高くするとともに応答性を高めている。
各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、超音波信号(高周波信号)が印加されると、入射したビームLB(0次光)を、高周波の周波数に応じた回折角で回折させた1次回折光を射出ビーム(ビームLBn)として発生させるものである。本第1の実施の形態では、複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々から1次回折光として射出されるビームLBnをビームLB1〜LB6とし、各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、光源装置14からのビームLBの光路を偏向する機能を奏するものとして扱う。ただし、実際の音響光学変調素子は、1次回折光の発生効率が0次光の80%程度であるため、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々で偏向されたビームLB1〜LB6は、元のビームLBの強度よりは低下している。また、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)のいずれか1つがオン状態のとき、回折されずに直進する0次光が20%程度残存するが、それは最終的に吸収体TRによって吸収される。
また、選択用光学素子AOMnは、超音波によって透過部材中の所定方向に屈折率の周期的な粗密変化を生じさせる回折格子であるため、入射ビームLBが直線偏光(P偏光かS偏光)である場合、その偏光方向と回折格子の周期方向とは、1次回折光の発生効率(回折効率)が最も高くなるように設定される。図5のように、選択用光学素子AOMnが入射したビームLBをZ方向に回折偏向するように設置される場合、選択用光学素子AOMn内に生成される回折格子の周期方向もZ方向であるので、それと整合するように光源装置14からのビームLBの偏光方向が設定(調整)される。
さらに、図5に示すように、複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々は、偏向されたビームLB1〜LB6(1次回折光)を、入射するビームLBに対して−Z方向に偏向するように設置される。選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々から偏向して射出するビームLB1〜LB6は、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々から所定距離だけ離れた位置に設けられたユニット側入射ミラーIM1〜IM6に投射され、そこで−Z方向に照射中心軸Le1〜Le6と平行(同軸)になるように反射される。ユニット側入射ミラーIM1〜IM6(以下、単にミラーIM1〜IM6とも呼ぶ)で反射されたビームLB1〜LB6は、支持部材IUBに形成された開口部TH1〜TH6の各々を通って、照射中心軸Le1〜Le6に沿うように走査ユニットUn(U1〜U6)の各々に入射する。
各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の構成、機能、作用等は互いに同一のものを用いてもよい。複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、制御装置20からの駆動信号(高周波信号)のオン/オフにしたがって、入射したビームLBを回折させた回折光の発生をオン/オフする。例えば、選択用光学素子AOM1は、制御装置20からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射したビームLBを回折させずに透過する。したがって、選択用光学素子AOM1を透過したビームLBは、コリメートレンズCL1を透過して反射ミラーM2に入射する。一方、選択用光学素子AOM1は、制御装置20からの駆動信号が印加されてオンの状態のときは、入射したビームLBを回折させてミラーIM1に向かわせる。つまり、この駆動信号によって選択用光学素子AOM1をスイッチングする。ミラーIM1は、選択用光学素子AOM1によって回折されたビームLB1を走査ユニットU1側に反射する。ミラーIM1で反射したビームLB1は、支持部材IUBの開口部TH1を通って照射中心軸Le1に沿って走査ユニットU1に入射する。したがって、ミラーIM1は、反射したビームLB1の光軸が照射中心軸Le1と同軸となるように、入射したビームLB1を反射する。また、選択用光学素子AOM1がオンの状態のとき、選択用光学素子AOM1をストレートに透過するビームLBの0次光(入射ビームの20%程度の強度)は、その後のコリメートレンズCL1〜CL6、集光レンズCD2〜CD6、反射ミラーM2〜M12、および、選択用光学素子AOM2〜AOM6を透過して吸収体TRに達する。
図6Aは、選択用光学素子AOM1によるビームLBの光路の切り換えを+Z方向側からみた図であり、図6Bは、選択用光学素子AOM1によるビームLBの光路の切り換えを−Y方向側からみた図である。駆動信号がオフの状態のときは、選択用光学素子AOM1は、入射したビームLBを回折させずにそのまま反射ミラーM2側に向けて透過する。一方で、駆動信号がオンの状態のときは、選択用光学素子AOM1は、入射したビームLBを−Z方向側に回折させたビームLB1を発生し、それをミラーIM1に向かわせる。したがって、XY平面内においては、選択用光学素子AOM1から射出するビームLB(0次光)および偏向されたビームLB1(1次回折光)の進行方向を変えずに、Z方向に関して、ビームLB1(1次回折光)の進行方向を変えている。このように、制御装置20は、選択用光学素子AOM1に印加すべき駆動信号(高周波信号)をオン/オフ(ハイ/ロー)にすることによって、選択用光学素子AOM1をスイッチングして、ビームLBが後続の選択用光学素子AOM2に向かうか、偏向されたビームLB1が走査ユニットU1に向かうかを切り換える。
同様に、選択用光学素子AOM2は、制御装置20からの駆動信号(高周波信号)がオフの状態のときは、入射したビームLB(選択用光学素子AOM1で回折されずに透過してきたビームLB)を回折させずにコリメートレンズCL2側(反射ミラーM4側)に透過し、制御装置20からの駆動信号がオンの状態のときは、入射したビームLBの回折光であるビームLB2をミラーIM2に向かわせる。このミラーIM2は、選択用光学素子AOM2によって回折されたビームLB2を走査ユニットU2側に反射する。ミラーIM2で反射したビームLB2は、支持部材IUBの開口部TH2を通って照射中心軸Le2と同軸となって走査ユニットU2に入射する。さらに、選択用光学素子AOM3〜AOM6は、制御装置20からの駆動信号(高周波信号)がオフの状態のときは、入射したビームLBを回折させずにコリメートレンズCL3〜CL6側(反射ミラーM6、M8、M10、M12側)に透過し、制御装置20からの駆動信号がオンの状態ときは、入射したビームLBの1次回折光であるビームLB3〜LB6をミラーIM3〜IM6に向かわせる。このミラーIM3〜IM6は、選択用光学素子AOM3〜AOM6によって回折されたビームLB3〜LB6を走査ユニットU3〜U6側に反射する。ミラーIM3〜IM6で反射したビームLB3〜LB6は、照射中心軸Le3〜Le6と同軸となって、支持部材IUBの開口部TH3〜TH6の各々を通って走査ユニットU3〜U6に入射する。このように、制御装置20は、選択用光学素子AOM2〜AOM6の各々に印加すべき駆動信号(高周波信号)をオン/オフ(ハイ/ロー)にすることによって、選択用光学素子AOM2〜AOM6のいずれか1つをスイッチングして、ビームLBが後続の選択用光学素子AOM3〜AOM6または吸収体TRに向かうか、偏向されたビームLB2〜LB6の1つが、対応する走査ユニットU2〜U6に向かうかを切り換える。
以上のように、ビーム切換部材16は、光源装置14からのビームLBの進行方向に沿って直列に配置された複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)を備えることで、ビームLBの光路を切り換えてビームLBnが入射する走査ユニットUnを1つ選択することができる。例えば、走査ユニットU1にビームLB1を入射させたい場合は、選択用光学素子AOM1をオン状態にし、走査ユニットU3にビームLB3を入射させたい場合は、選択用光学素子AOM3をオン状態にすればよい。この複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)に対応して設けられ、対応する走査ユニットUnにビームLBnを入射させるか否かを切り換えている。
複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、所定の順番でスポット光SPの走査を行うという動作を繰り返すので、ビーム切換部材16もこれに対応して、ビームLB1〜LB6のいずれか1つが入射する走査ユニットU1〜U6を切り換える。例えば、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番が、U1→U2→・・・→U6、となっている場合は、ビーム切換部材16も、これに対応して、ビームLBnが入射する走査ユニットUnを、U1→U2→・・・→U6の順番で切り換える。
以上のことから、ビーム切換部材16の各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、走査ユニットUn(U1〜U6)の各々のポリゴンミラーPMによるスポット光SPの1回の走査期間の間だけ、オン状態となっていればよい。詳しくは後述するが、ポリゴンミラーPMの反射面数をNp、ポリゴンミラーPMの回転速度をVp(rpm)とすると、ポリゴンミラーPMの反射面RPの1面分の回転角度に対応した時間Tssは、Tss=60/(Np・Vp)〔秒〕となる。例えば、反射面数Npが8、回転速度Vpが3万の場合、ポリゴンミラーPMの1回転は2ミリ秒であり、時間Tssは、0.25ミリ秒となる。これは周波数に換算すると4kHzであり、紫外域の波長のビームLBを描画データに応答して数十MHz程度で高速に変調するための音響光学変調素子に比べると、相当に低い応答周波数の音響光学変調素子でよいことを意味する。そのため、入射するビームLB(0次光)に対して偏向されるビームLB1〜LB6(1次回折光)の回折角が大きいものを使うことができ、選択用光学素子AOM1〜AOM6をストレートに通過するビームLBの進路に対して、偏向されたビームLB1〜LB6を分離するミラーIM1〜IM6(図5、図6A、図6B)の配置が容易になる。
次に、図7を参照して走査ユニットUn(U1〜U6)の光学的な構成について説明する。なお、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、同一の構成を有することから、走査ユニットU1についてのみ説明し、他の走査ユニットUnについてはその説明を省略する。また、図7においては、照射中心軸Len(Le1)と平行する方向をZt方向とし、Zt方向と直交する平面上にあって、基板FSがプロセス装置PR1から露光装置EXを経てプロセス装置PR2に向かう方向をXt方向とし、Zt方向と直交する平面上であって、Xt方向と直交する方向をYt方向とする。つまり、図7のXt、Yt、Ztの3次元座標は、図1のX、Y、Zの3次元座標を、Y軸を中心にZ軸方向が照射中心軸Len(Le1)と平行となるように回転させた3次元座標である。
図7に示すように、走査ユニットU1内には、ビームLB1の入射位置から基板FSの被照射面までのビームLB1の進行方向に沿って、反射ミラーM20、ビームエキスパンダーBE、反射ミラーM21、偏光ビームスプリッタBS、反射ミラーM22、像シフト光学部材SR、フィールドアパーチャFA、反射ミラーM23、λ/4波長板QW、シリンドリカルレンズCYa、反射ミラーM24、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、反射ミラーM25、シリンドリカルレンズCYbが設けられる。さらに、走査ユニットU1内には、基板FSの被照射面からの反射光を偏光ビームスプリッタBSを介して検出するための光学レンズ系G10および光検出器DT1が設けられる。
走査ユニットU1に入射するビームLB1は、−Zt方向に向けて進み、XtYt平面に対して45°傾いた反射ミラーM20に入射する。この走査ユニットU1に入射するビームLB1の軸線は、照射中心軸Le1と同軸になるように反射ミラーM20に入射する。反射ミラーM20は、ビームLB1を走査ユニットU1に入射させる入射光学部材として機能し、入射したビームLB1を、Xt軸と平行に設定される光軸に沿って反射ミラーM21に向けて−Xt方向に反射する。したがって、Xt軸と平行に進むビームLB1の光軸は、XtZt平面と平行な面内で照射中心軸Le1と直交する。反射ミラーM20で反射したビームLB1は、Xt軸と平行に進むビームLB1の光軸に沿って配置されるビームエキスパンダーBEを透過して反射ミラーM21に入射する。ビームエキスパンダーBEは、透過するビームLB1の径を拡大させる。ビームエキスパンダーBEは、集光レンズBe1と、集光レンズBe1によって収斂された後に発散するビームLB1を平行光にするコリメートレンズBe2とを有する。
反射ミラーM21は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を偏光ビームスプリッタBSに向けて−Yt方向に反射する。偏光ビームスプリッタBSの偏光分離面は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、P偏光のビームを反射し、P偏光と直交する方向に偏光した直線偏光(S偏光)のビームを透過するものである。走査ユニットU1に入射するビームLB1は、P偏光のビームなので、偏光ビームスプリッタBSは、反射ミラーM21からのビームLB1を−Xt方向に反射して反射ミラーM22側に導く。
反射ミラーM22は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を、反射ミラーM22から−Zt方向に離れた反射ミラーM23に向けて−Zt方向に反射する。反射ミラーM22で反射されたビームLB1は、Zt軸と平行な光軸に沿って像シフト光学部材SRおよびフィールドアパーチャ(視野絞り)FAを通過して、反射ミラーM23に入射する。像シフト光学部材SRは、ビームLB1の進行方向と直交する平面(XtYt平面)内において、ビームLB1の断面内の中心位置を2次元的に調整する。像シフト光学部材SRは、Zt軸と平行に進むビームLB1の光軸に沿って配置される2枚の石英の平行平板Sr1、Sr2で構成され、平行平板Sr1は、Xt軸回りに傾斜可能であり、平行平板Sr2は、Yt軸回りに傾斜可能である。この平行平板Sr1、Sr2がそれぞれ、Xt軸、Yt軸回りに傾斜することで、ビームLB1の進行方向と直交するXtYt平面において、ビームLB1の中心の位置を2次元に微小量シフトする。この平行平板Sr1、Sr2は、制御装置20の制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。
像シフト光学部材SRを通ったビームLB1は、フィールドアパーチャFAの円形開口を透過して反射ミラーM23に達する。フィールドアパーチャFAの円形開口は、ビームエキスパンダーBEで拡大されたビームLB1の断面内の強度分布の裾野部分をカットする絞りである。フィールドアパーチャFAの円形開口の口径が調整可能な可変虹彩絞りにすると、スポット光SPの強度(輝度)を調整することができる。
反射ミラーM23は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を、反射ミラーM23から+Xt方向に離れた反射ミラーM24に向けて+Xt方向に反射する。反射ミラーM23で反射したビームLB1は、λ/4波長板QWおよびシリンドリカルレンズCYaを透過して反射ミラーM24に入射する。反射ミラーM24は、入射したビームLB1をポリゴンミラー(回転多面鏡、走査用偏向部材)PMに向けて反射する。ポリゴンミラーPMは、入射したビームLB1を、Xt軸と平行な光軸AXfを有するfθレンズFTに向けて+Xt方向に反射する。ポリゴンミラーPMは、ビームLB1のスポット光SPを基板FSの被照射面上で走査するために、入射したビームLB1をXtYt平面と平行な面内で偏向(反射)する。具体的には、ポリゴンミラーPMは、Zt軸方向に延びる回転軸AXpと、回転軸AXpの周りに形成された複数の反射面RP(本第1の実施の形態では8つの反射面RP)とを有する。回転軸AXpを中心にこのポリゴンミラーPMを所定の回転方向に回転させることで反射面RPに照射されるパルス状のビームLB1の反射角を連続的に変化させることができる。これにより、1つの反射面RPによってビームLB1の反射方向が偏向され、基板FSの被照射面上に照射されるビームLB1のスポット光SPを走査方向(基板FSの幅方向、Yt方向)に沿って走査することができる。
1つの反射面RPによって、ビームLB1のスポット光SPを描画ラインSL1に沿って走査することができる。このため、ポリゴンミラーPMの1回転で、基板FSの被照射面上にスポット光SPが走査される描画ラインSL1の数は、最大で反射面RPの数と同じ8本となる。ポリゴンミラーPMは、モータ等を含むポリゴン駆動部RMによって一定の速度で回転する。ポリゴン駆動部RMによるポリゴンミラーPMの回転は、制御装置20によって制御される。上述したように、描画ラインSL1の実効的な長さ(例えば30mm)は、このポリゴンミラーPMによってスポット光SPを走査することができる最大走査長(例えば31mm)以下の長さに設定されており、初期設定(設計上)では、最大走査長の中央に描画ラインSL1の中心点(照射中心軸Le1が通る)が設定されている。
なお、一例として、描画ラインSL1の実効的な長さを30mmとし、実効的なサイズφが3μmのスポット光SPを1.5μmずつオーバーラップさせながらスポット光SPを描画ラインSL1に沿って基板FSの被照射面上に照射する場合は、1回の走査で照射されるスポット光SPの数(光源装置14からのビームLBのパルス数)は、20000(30mm/1.5μm)となる。また、描画ラインSL1に沿ったスポット光SPの走査時間を200μsecとすると、この間に、パルス状のスポット光SPを20000回照射しなければならないので、光源装置14の発光周波数Fsは、Fs≧20000回/200μsec=100MHzとなる。
シリンドリカルレンズCYaは、ポリゴンミラーPMによる走査方向(回転方向)と直交する非走査方向(Zt方向)に関して、入射したビームLB1をポリゴンミラーPMの反射面RP上にスリット状に収斂する。この母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYaによって、反射面RPがZt方向に対して傾いている場合(XtYt平面の法線に対する反射面RPの傾き)があっても、その影響を抑制することができ、基板FSの被照射面上に照射されるビームLB1の照射位置がXt方向にずれることを抑制する。
Xt軸方向に延びる光軸AXfを有するfθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって反射されたビームLB1を、XtYt平面において、光軸AXfと平行となるように反射ミラーM25に投射するテレセントリック系のスキャンレンズである。ビームLB1のfθレンズFTへの入射角θは、ポリゴンミラーPMの回転角(θ/2)に応じて変わる。fθレンズFTは、反射ミラーM25およびシリンドリカルレンズCYbを介して、その入射角θに比例した基板FSの被照射面上の像高位置にビームLB1を投射する。焦点距離をfoとし、像高位置をyとすると、fθレンズFTは、y=fo・θ、の関係を満たすように設計されている。したがって、このfθレンズFTによって、ビームLB1(スポット光SP)をYt方向(Y方向)に正確に等速で走査することが可能になる。fθレンズFTへの入射角θが0度のときに、fθレンズFTに入射したビームLB1は、光軸AXf上に沿って進む。
反射ミラーM25は、入射したビームLB1を、シリンドリカルレンズCYbを介して基板FSに向けて−Zt方向に反射する。fθレンズFTおよび母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYbによって、基板FSに投射されるビームLB1が基板FSの被照射面上で直径数μm程度(例えば、3μm)の微小なスポット光SPに収斂される。また、基板FSの被照射面上に投射されるスポット光SPは、ポリゴンミラーPMによって、Yt方向に延びる描画ラインSL1によって1次元走査される。なお、fθレンズFTの光軸AXfと照射中心軸Le1とは、同一の平面上にあり、その平面はXtZt平面と平行である。したがって、光軸AXf上に進んだビームLB1は、反射ミラーM25によって−Zt方向に反射し、照射中心軸Le1と同軸になって基板FSに投射される。本第1の実施の形態において、少なくともfθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって偏向されたビームLB1を基板FSの被照射面に投射する投射光学系として機能する。また、少なくとも反射部材(反射ミラーM21〜M25)および偏光ビームスプリッタBSは、反射ミラーM20から基板FSまでのビームLB1の光路を折り曲げる光路偏向部材として機能する。この光路偏向部材によって、反射ミラーM20に入射するビームLB1の入射軸と照射中心軸Le1とを略同軸にすることができる。XtZt平面に関して、走査ユニットU1内を通るビームLB1は、略U字状またはコ字状の光路を通った後、−Zt方向に進んで基板FSに投射される。
このように、基板FSがX方向に搬送されている状態で、各走査ユニットUn(U1〜U6)によって、ビームLBnのスポット光SPを走査方向(Y方向)に一次元に走査することで、スポット光SPを基板FSの被照射面に相対的に2次元走査することができる。したがって、基板FSの露光領域Wに所定のパターンを描画露光することができる。
光検出器DT1は、入射した光を光電変換する光電変換素子を有する。回転ドラムDRの表面には、予め決められた基準パターンが形成されている。この基準パターンが形成された回転ドラムDR上の部分は、ビームLB1の波長域に対して低めの反射率(10〜50%)の素材で構成され、基準パターンが形成されていない回転ドラムDR上の他の部分は、反射率が10%以下の材料または光を吸収する材料で構成される。そのため、基板FSが巻き付けられていない状態(または基板FSの透明部を通した状態)で、回転ドラムDRの基準パターンが形成された領域に走査ユニットU1からビームLB1のスポット光SPを照射すると、その反射光が、シリンドリカルレンズCYb、反射ミラーM25、fθレンズFT、ポリゴンミラーPM、反射ミラーM24、シリンドリカルレンズCYa、λ/4波長板QW、反射ミラーM23、フィールドアパーチャFA、像シフト光学部材SR、および、反射ミラーM22を通過して偏光ビームスプリッタBSに入射する。ここで、偏光ビームスプリッタBSと基板FSとの間、具体的には、反射ミラーM23とシリンドリカルレンズCYaとの間には、λ/4波長板QWが設けられている。これにより、基板FSに照射されるビームLB1は、このλ/4波長板QWによってP偏光から円偏光に変換され、基板FSから偏光ビームスプリッタBSに入射する反射光は、このλ/4波長板QWによって、円偏光からS偏光に変換される。したがって、基板FSからの反射光は偏光ビームスプリッタBSを透過し、光学レンズ系G10を介して光検出器DT1に入射する。
このとき、パルス状のビームLB1(好ましくは、種光S1に由来するビームLB1)が連続して走査ユニットU1に入射される状態で、回転ドラムDRを回転して走査ユニットU1がスポット光SPを走査することで、回転ドラムDRの外周面には、スポット光SPが2次元的に照射される。したがって、回転ドラムDRに形成された基準パターンの画像を光検出器DT1によって取得することができる。具体的には、光検出器DT1から出力される光電信号の強度変化を、スポット光SPのパルス発光のためのクロックパルス信号(光源装置14内で作られる)に応答して、各走査時間毎にデジタルサンプリングすることでYt方向の1次元の画像データとして取得し、さらに回転ドラムDRの回転角度位置を計測するエンコーダENnの計測値に応答して、副走査方向の一定距離(例えばスポット光SPのサイズφの1/2)毎にYt方向の1次元の画像データをXt方向に並べることにより、回転ドラムDRの表面の2次元の画像情報を所得する。制御装置20は、この取得した回転ドラムDRの基準パターンの2次元の画像情報に基づいて、走査ユニットU1の描画ラインSL1の傾きを計測する。この描画ラインSL1の傾きとは、各走査ユニットUn(U1〜U6)間における相対的な傾きであってもよく、回転ドラムDRの中心軸AXoに対する傾き(絶対的な傾き)であってもよい。なお、同様にして、各描画ラインSL2〜SL6の傾きも計測することができることはいうまでもない。
走査ユニットU1のポリゴンミラーPMの周辺には、図8に示すように原点センサ(原点検出器)60が設けられている。原点センサ60は、各反射面RPによるスポット光SPの走査開始を示すパルス状の原点信号SZを出力する。原点センサ60は、ポリゴンミラーPMの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始される直前の所定位置に来ると、原点信号SZを出力する。ポリゴンミラーPMは、走査角度範囲θsで、基板FSに投射されるビームLB1を偏向することができるので、ポリゴンミラーPMで反射したビームLB1の反射方向(偏向方向)が走査角度範囲θs内になると、反射したビームLB1がfθレンズFTに入射する。したがって、原点センサ60は、反射面RPで反射されるビームLB1の反射方向が走査角度範囲θs内に入る直前の所定位置にポリゴンミラーPMの回転位置が来ると原点信号SZを出力する。ポリゴンミラーPMは、反射面RPを8つ有するので、原点センサ60は、ポリゴンミラーPMが1回転する期間で8回原点信号SZを出力することになる。この原点センサ60が検出した原点信号SZは制御装置20に送られる。原点センサ60が原点信号SZを出力してから、スポット光SPの描画ラインSL1に沿った走査が開始される。
原点センサ60は、これからスポット光SPの走査(ビームLB1の偏向)を行う反射面RPの隣りの反射面RP(本第1の実施の形態では、ポリゴンミラーPMの回転方向の1つ手前の反射面RP)を用いて、原点信号SZを出力する。各反射面RPを区別するため、便宜上、図8において、現在ビームLB1の偏向を行っている反射面RPをRPaで表し、その他の反射面RPを、反時計方向回り(ポリゴンミラーPMの回転方向とは反対の方向回り)に、RPb〜RPhで表す。
原点センサ60は、半導体レーザ等の非感光性の波長域のレーザビームBgaを射出する光源部62と、光源部62からのレーザビームBgaを反射させてポリゴンミラーPMの反射面RPbに投射するミラー64、66とを備えるビーム送光系60aを有する。また、原点センサ60は、受光部68と、反射面RPbで反射したレーザビームBgaの反射光(反射ビームBgb)を受光部68に導くミラー70、72と、ミラー72で反射された反射ビームBgbを微小なスポット光に集光するレンズ系74とを備えるビーム受光系60bを有する。受光部68は、レンズ系74によって集光された反射ビームBgbのスポット光を電気信号に変換する光電変換素子を有する。ここで、レーザビームBgaがポリゴンミラーPMの各反射面RPに投射される位置は、レンズ系74の瞳面(焦点の位置)となるように設定されている。
ビーム送光系60aとビーム受光系60bとは、ポリゴンミラーPMの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始される直前の所定位置になったときに、ビーム送光系60aが射出したレーザビームBgaの反射ビームBgbをビーム受光系60bが受光することができる位置に設けられている。つまり、ビーム送光系60aとビーム受光系60bとは、反射面RPの角度が所定の角度位置になったときに、ビーム送光系60aが射出したレーザビームBgaの反射ビームBgbを受光することができる位置に設けられている。なお、図8の符号Msfは、回転軸AXpと同軸に配置されたポリゴン駆動部RM(図7参照)の回転モータのシャフトである
受光部68内の前記光電変換素子の受光面の直前には、微小幅のスリット開口を備えた遮光体が設けられている(図示略)。反射面RPbの角度位置が、所定の角度範囲内の間は、反射ビームBgbがレンズ系74に入射して、反射ビームBgbのスポット光が受光部68内の前記遮光体上を一定方向に走査する。その走査中に、遮光体のスリット開口を透過した反射ビームBgbのスポット光が受光部68の前記光電変換素子で受光され、その受光信号が増幅器で増幅されてパルス状の原点信号SZとして出力される。
原点センサ60は、上述したように、ビームLB1を偏向する(スポット光SPを走査する)反射面RPaより、回転方向の1つ手前の反射面RPbを用いて原点信号SZを検出する。そのため、隣り合う反射面RP(例えば、反射面RPaと反射面RPb)同士の各なす角ηjが設計値(反射面RPが8つの場合は135度)に対して誤差を持っていると、その誤差のばらつきによって、図9に示すように、原点信号SZの発生タイミングが反射面RP毎に異なってしまう場合がある。
図9においては、反射面RPbを用いて発生した原点信号SZをSZbとする。同様に、反射面RPc、RPd、RPe、・・・を用いて発生した原点信号SZをSZc、SZd、SZe、・・・とする。ポリゴンミラーPMの隣り合う反射面RP同士のなす角ηjが設計値の場合は、各原点信号SZ(SZb、SZc、SZd、・・・)の発生タイミングの間隔は、時間Tpxとなる。この所定の時間Tpxは、ポリゴンミラーPMが反射面RPの1面分回転するのに要する時間である。しかしながら、図9においては、ポリゴンミラーPMの反射面RPのなす角ηjの誤差によって、反射面RPc、RPdを用いて発生した原点信号SZc、SZdのタイミングが、正規の発生タイミングに対してずれている。また、原点信号SZb、SZc、SZd、SZe、・・・が発生する時間間隔Tp1、Tp2、Tp3、・・・は、ポリゴンミラーPMの製造誤差により、μ秒オーダーでは一定ではない。図9に示すタイムチャートにおいては、Tp1<Tpx、Tp2>Tpx、Tp3<Tpx、となっている。なお、反射面RPの数をNp、ポリゴンミラーPMの回転速度をVpとすると、Tpxは、Tpx=60/(Np×Vp)〔秒〕、で表される。例えば、Vpが3万rpmで、Npが8とすると、Tpxは、250μ秒となる。
したがって、ポリゴンミラーPMの隣り合う反射面RP同士の各なす角ηjの誤差によって、各反射面RP(RPa〜RPh)によって描画されるスポット光SPの基板FSの被照射面上の描画ラインSL1の描画開始点(走査開始点)の位置が主走査方向にばらつく。これにより、描画ラインSL1の描画終了点の位置も主走査方向にばらつく。つまり、各反射面RPによって描画されるスポット光SPの描画ラインSL1の位置が、走査方向(Y方向)に沿ってシフトするので、各描画ラインSLnの描画開始点および描画終了点の位置がX方向に沿って直線的にならない。このスポット光SPの描画ラインSL1の描画開始点および描画終了点の位置が主走査方向にばらつく要因は、Tp1、Tp2、Tp3、・・・=Tpx、とならないからである。
そこで、本第1の実施の形態では、図9に示すタイムチャートのように、1つのパルス状の原点信号SZが発生してから時間Tpx後を描画開始点として、スポット光SPの描画を開始する。つまり、制御装置20は、原点信号SZが発生してから時間Tpx後に、ビームLB1が走査ユニットU1に入射するようにビーム切換部材16を制御するとともに、図4に示した光源装置14の駆動回路36aに、これから走査を行う走査ユニットU1の描画ビット列データSdw、つまり、シリアルデータDL1を出力する。これにより、原点信号SZの検出に用いた反射面RPbと実際にスポット光SPを走査する反射面RPとを同一の反射面にすることができる。
具体的に説明すると、制御装置20は、走査ユニットU1の原点センサ60が原点信号SZbを出力してから時間Tpx後に、ビーム切換部材16の選択用光学素子AOM1に、一定時間(オン時間Ton)オンの駆動信号を出力する。この選択用光学素子AOM1がオンになる一定時間(オン時間Ton)は、予め決められた時間であり、ポリゴンミラーPMの1つの反射面RPによってスポット光SPが描画ラインSL1に沿って1回走査される期間(走査期間)をカバーするように設定されている。そして、制御装置20は、ある特定の列、例えば、1列目のシリアルデータDL1を光源装置14の駆動回路36aに出力する。これにより、走査ユニットU1がスポット光SPの走査を行う走査時間中はビームLB1が走査ユニットU1に入射するので、走査ユニットU1は、ある特定の列(例えば、1列目)のシリアルデータDL1に応じたパターンを描画することができる。このように、走査ユニットU1の原点センサ60が原点信号SZbを出力してから時間Tpx後に走査ユニットU1がスポット光SPの走査を行うので、原点信号SZbの検出に用いた反射面RPbで、その原点信号SZbに起因したスポット光SPの走査を行うことができる。
次に、制御装置20は、走査ユニットU1の原点センサ60が原点信号SZdを出力してから時間Tpx後に、ビーム切換部材16の選択用光学素子AOM1に、一定時間(オン時間Ton)オンの駆動信号を出力する。そして、制御装置20は、次の列、例えば、2列目のシリアルデータDL1を光源装置14の駆動回路36aに出力する。これにより、走査ユニットU1がスポット光SPの走査を行うのに必要な時間を含む時間中はビームLB1が走査ユニットU1に入射するので、走査ユニットU1は、次の列(例えば、2列目)のシリアルデータDL1に応じたパターンを描画することができる。このように、走査ユニットU1の原点センサ60が原点信号SZdを出力してから、時間Tpx後に走査ユニットU1がスポット光SPの走査を行うので、原点信号SZdの検出に用いた反射面RPbで、その原点信号SZdに起因したスポット光SPの走査を行うことができる。なお、スポット光SPの走査を、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎に行うのではなく1面飛ばしで行う場合は、原点信号SZを1つ飛ばし(1つ置き)で使って描画処理を行う。そのような1つ飛ばしによる描画処理の理由については後で詳しく説明する。
このようにして、走査ユニットU1の原点センサ60が原点信号SZを出力してから時間Tpx後に、走査ユニットU1がスポット光SPを走査するように、制御装置20は、ビーム切換部材16を制御するとともに、光源装置14の駆動回路36aにシリアルデータDL1を出力する。また、制御装置20は、走査ユニットU1による走査が開始される度に、出力するシリアルデータDL1の列を、1列目、2列目、3列目、4列目、・・・、というように列方向にずらしていく。なお、走査ユニットU1によるスポット光SPの1回の走査から次の走査までの間に、他の走査ユニットUn(走査ユニットU2〜U6)によるスポット光SPの走査が順番に行われている。他の走査ユニットUn(U2〜U6)によるスポット光SPの走査は、走査ユニットU1の走査と同様である。また、原点センサ60は、各走査ユニットUn(U1〜U6)毎に設けられている。
以上のように、走査ユニットU1の原点信号SZbの検出に用いた反射面RPを用いてスポット光SPの走査を行うことで、ポリゴンミラーPMの隣り合う反射面RP同士の各なす角ηjに誤差があった場合であっても、各反射面RP(RPa〜RPh)によって描画されるスポット光SPの基板FSの被照射面上の描画開始点および描画終了点の位置が主走査方向にばらつくことを抑制することができる。
そのためには、ポリゴンミラーPMが45度回転する時間Tpxが、μ秒オーダーで正確であること、つまり、ポリゴンミラーPMの速度がむらなく精密に等速度で回転させる必要がある。そのように精密に等速度でポリゴンミラーPMを回転させた場合は、原点信号SZの発生に用いられた反射面RPは、常に、時間Tpx後には正確に45度だけ回転してビームLB1をfθレンズFTに向かって反射する角度になっている。したがって、ポリゴンミラーPMの回転等速性を高め、1回転中の速度ムラも極力低減させることで、原点信号SZの発生に用いられる反射面RPの位置とビームLB1を偏向してスポット光SPを走査するために用いられる反射面RPの位置とを異ならせることができる。つまり、原点信号SZの発生タイミングを時間Tpxだけ遅らせるので、結果的にスポット光SPの走査を行う反射面RPを用いて原点信号SZを検出しているのと同等の作用を有する。これにより、原点センサ60の配置の自由度が向上し、剛性が高く安定な構成の原点センサを設けることができる。また、原点センサ60が検出対象とする反射面RPは、ビームLB1を偏向する反射面RPの回転方向の1つ手前としたが、ポリゴンミラーPMの回転方向の手前であればよく、1つ手前に限られない。この場合、原点センサ60が検出対象とする反射面RPを、ビームLB1を偏向する反射面RPの回転方向のn(1以上の整数)だけ手前にする場合は、原点信号SZが発生してからn×時間Tpx後に描画開始点を設定すればよい。
さらに、原点センサ60から1つ置きに発生する原点信号SZb、SZd、・・・、の各々に対して、描画開始点をn×時間Tpx後に描画開始点を設定することで、描画ラインSL1毎に対応した画素データ列の読み出し動作、データ転送(通信)動作、或いは補正計算等の処理時間に余裕が生じる。そのため、画素データ列の転送ミス、画素データ列の誤りや部分的な消失を確実に回避することができる。
なお、以上の図8のように、これからスポット光SPの走査(ビームLB1の偏向)を行う反射面RPの隣りの反射面RP(本第1の実施の形態では、ポリゴンミラーPMの回転方向の1つ手前の反射面RP)を検出する原点センサ60を設けずに、これからスポット光SPの走査(ビームLB1の偏向)を行う反射面RPと同じ反射面RPを検出する原点センサを設けてもよい。その場合は、図9で説明したように、ポリゴンミラーPMの各反射面RPa〜RPh毎に発生する原点信号(パルス状)SZの時間間隔がばらつくので、各反射面RPa〜RPh毎に、そのばらつき分に応じた時間的なオフセットを加味する必要がある。
図10は、走査ユニットUnのポリゴンミラーPMがスポット光SPを基板FSの被照射面上で走査することができるポリゴンミラーPMの最大走査回転角度範囲αを説明する図である。このポリゴンミラーPMが最大走査回転角度範囲αだけ回転する期間がスポット光SPの有効走査期間(最大走査時間)となる。この最大走査回転角度範囲αは、上述した描画ラインSLnの最大走査長に対応し、最大走査回転角度範囲αが大きくなる程、最大走査長は長くなる。走査ユニットUnのポリゴンミラーPMが、反射面RPの1面分回転する回転角度βは、ポリゴンミラーPMの反射面RPの数Npによって規定され、β=360/Np、で表すことができる。本第1の実施の形態では、Np=8、なので、β=45度、となる。したがって、走査ユニットUnのポリゴンミラーPMの反射面RPが、スポット光SPを基板FSの被照射面上で走査することができない、つまり、反射面RPで反射した反射光がfθレンズFTに入射することができないポリゴンミラーPMの非走査回転角度範囲γは、γ=β−α=45度−α、で表すことができる。このポリゴンミラーPMが非走査回転角度範囲γだけ回転する期間はスポット光SPの無効走査期間となる。この最大走査回転角度範囲αは、ポリゴンミラーPMとfθレンズFTとの距離等の条件によって変わる。例えば、本第1の実施の形態では、最大走査回転角度範囲αを15度とすると、非走査回転角度範囲γは30度となり、ポリゴンミラーPMの走査効率は、図10において、α/β=1/3となる。つまり、走査ユニットUnのポリゴンミラーPMが非走査回転角度範囲γ(30度)分だけ回転する間に、ポリゴンミラーPMに入射するビームLBnは無駄となる。なお、図8の走査角度範囲θsと、最大走査回転角度範囲αとは、θs=2×α、の関係を有する。
したがって、ある1つの走査ユニットUn(例えば、走査ユニットU1とする)のポリゴンミラーPMの回転角度が最大走査回転角度範囲α以外の間に、つまり、非走査回転角度範囲γの間に、走査ユニットU1以外の他の走査ユニットUnにビームLBnを入射し、他の走査ユニットUnのポリゴンミラーPMによってスポット光SPの走査を行わせる。ここで、ポリゴンミラーPMの走査効率は1/3なので、走査ユニットU1がスポット光SPを走査してから次の走査を行うまでの間に、走査ユニットU1以外の2つの走査ユニットUnにビームLBnを振り分けて、スポット光SPの走査を行うことができる。つまり、走査ユニットU1のポリゴンミラーPMが1面分回転する間に、走査ユニットU1を含む3つの走査ユニットUnの各々に、対応するビームLBnを振り分けて、スポット光SPの走査を行うことが可能である。
しかしながら、ポリゴンミラーPMの走査効率は1/3なので、各走査ユニットUnが最大走査回転角度範囲α(15度)でスポット光SPを走査する場合においては、走査ユニットU1のポリゴンミラーPMが反射面RPの1面分(β=45度)回転する間に、ビームLBnを走査ユニットU1以外の3つ以上の走査ユニットUn(U2〜U6)に振り分けることはできない。つまり、走査ユニットU1のスポット光SPの走査の開始から次のスポット光SPの走査の開始までの期間に、ビームLBnを走査ユニットU1以外の3つ以上の走査ユニットUn(U2〜U6)に振り分けることはできない。そこで、走査ユニットU1のスポット光SPによる走査の開始から次の走査の開始までの期間に、他の5つの走査ユニットUn(U2〜U6)の各々にビームLBnを振り分けて、スポット光SPによる走査を行わせるには、以下の方法が考えられる。
最大走査回転角度範囲αが15度の場合であっても、実際にスポット光SPの走査が可能なポリゴンミラーPMの走査回転角度範囲α´を、最大走査回転角度範囲α(α=15度)より小さく設定する。具体的には、走査ユニットUn(U1〜U6)の各々のポリゴンミラーPMが反射面RPの1面分(β=45度)回転する間に、ビームLBnを振り分けたい走査ユニットUnの数は6つなので、走査回転角度範囲α´を、α´=45/6=7.5度、にする。すなわち、図7中のfθレンズFTに入射するビームLBnの光軸AXfを中心とした振り角を±7.5度に制限する。これにより、各走査ユニットUnのポリゴンミラーPMが45度回転する間(反射面RPの1面分回転する間)に、ビームLBnを6つの走査ユニットUn(U1〜U6)のいずれか1つに順番に振分けて入射させることができ、走査ユニットUn(U1〜U6)は、スポット光SPによる走査を順番に行うことができる。しかし、この場合だと、実際にスポット光SPの走査が可能な走査回転角度範囲α´が小さくなり過ぎてしまい、スポット光SPが走査される最大走査範囲長、つまり、描画ラインSLnの最大走査長が短くなりすぎるという問題がある。そのような問題を避けるには、スポット光SPが走査される最大走査長を変えないように、焦点距離の長いfθレンズFTを用意し、ポリゴンミラーPMの反射面RPからfθレンズFTまでの距離(作動距離)を長く設定することになる。その場合、fθレンズFTの大型化、走査ユニットUn(U1〜U6)のXt方向の寸法の大型化を招くとともに、作動距離が長いことによりビーム走査の安定性が低下する懸念もある。
一方で、ポリゴンミラーPMの反射面RPの数を少なくして、ポリゴンミラーPMが反射面RPの1面分回転する回転角度βを大きくすることが考えられる。この場合は、描画ラインSLnが短くなったり、走査ユニットUn(U1〜U6)を大型化したりすることを抑制しながら、走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMが反射面RPの1面分(回転角度β)回転する間に、ビームLBnを振り分けて6つの走査ユニットUn(U1〜U6)が順番にスポット光SPを走査することができる。例えば、ポリゴンミラーPMの反射面RPの数を4つにした場合、つまり、ポリゴンミラーPMの形状を正方形にした場合は、ポリゴンミラーPMの反射面RPが1面分回転する回転角度βは90度となる。したがって、走査ユニットU1のポリゴンミラーPMが反射面RPの1面分回転する間に、ビームLBnを振り分けて6つの走査ユニットUn(U1〜U6)でスポット光SPの走査を行う場合は、実際にスポット光SPの走査が可能なポリゴンミラーPMの走査回転角度範囲α´が、α´=90/6=15度、となり、上記した最大走査回転角度範囲αと等しくなる。
しかしながら、三角形、正方形のような反射面数が少ない多角形のポリゴンミラーPMを高速回転させると空気抵抗(風損)が大きくなり過ぎて、回転速度、回転数が低下(律則)する。例えば、ポリゴンミラーPMを数万rpm(rotation per minute)で高速回転させたい場合であっても、空気抵抗によって回転速度が2〜3割程度減少し、所望の高速回転速度、高回転数を得ることはできない。また、ポリゴンミラーPMの外形の大きさを大きくする方法も考えられるが、ポリゴンミラーPMの重量が大きくなり過ぎ、所望の高速回転速度、高回転数を得ることはできない。なお、ポリゴンミラーPMの反射面数を少なくしても回転時の風損を低減する手法として、ポリゴンミラーPMの全体を真空環境内に設置したり、空気よりも分子量の小さい気体(ヘリウム等)の環境内に設置したりすることも考えられる。その場合、ポリゴンミラーPMの周囲に、そのような環境を作るための気密構造体を設けることになり、それだけ走査ユニットUn(U1〜U6)を大型化することにつながる。
そこで、本第1の実施の形態においては、反射面数が比較的多い多角形、つまり、円形により近い8角形のポリゴンミラーPMを用いつつ、実際にスポット光SPの走査が可能なポリゴンミラーPMの走査回転角度範囲α´を最大走査回転角度範囲α(α=15度)とし、スポット光SPの走査(ビームLBnの偏向)を行うポリゴンミラーPMの反射面RPを1つ置きに設定する。つまり、各走査ユニットUn(U1〜U6)によるスポット光SPの走査が、ポリゴンミラーPMの反射面RPの1面置き(1面飛ばし)毎に繰り返される。したがって、走査ユニットU1がスポット光SPを走査してから次の走査を行うまでの間に、走査ユニットU1以外の5つの走査ユニットU2〜U6の各々に順番にビームLB2〜LB6を振り分けて、スポット光SPの走査を行うことができる。つまり、6つの走査ユニットUn(U1〜U6)のうちの着目する1つの走査ユニットUnのポリゴンミラーPMが2面分回転する間に、6つの走査ユニットUn(U1〜U6)の各々にビームLB1〜LB6を振り分けることによって、6つの走査ユニットUn(U1〜U6)の全てがスポット光SPの走査を行うことが可能となる。この場合、各走査ユニットUn(U1〜U6)がスポット光SPの走査を開始してから次のスポット光SPの走査を開始するまでに、ポリゴンミラーPMは2面分(90度)回転することになる。このような描画動作を行うために、6つの走査ユニットUn(U1〜U6)の各々のポリゴンミラーPMは、回転速度が同一になるように同期制御されるとともに、各ポリゴンミラーPMの反射面RPの角度位置が相互に所定の位相関係となるように同期制御される。
なお、スポット光SPの走査(ビームLBnの偏向)を行うポリゴンミラーPMの反射面RPを1面置きにすることから、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMが1回転する間に、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の各々に沿ったスポット光SPの走査回数は4回となる。そのため、スポット光SPの走査(ビームLBnの偏向)が、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎に繰り返される場合、つまり、ポリゴンミラーPMの各反射面RPで行われる場合に比べ、描画ラインSLnの数が半分になるので、基板FSの搬送速度も半分に減速することが好ましい。基板FSの搬送速度を半分にしたくない場合は、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転速度および発振周波数Fsを2倍に高めることになる。例えば、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎にスポット光SPの走査(ビームLBnの偏向)を繰り返す際のポリゴンミラーPMの回転速度が2万rpmで、光源装置14からのビームLBの発振周波数Fsが200MHzだった場合、ポリゴンミラーPMの1面置きの反射面RP毎にスポット光SPの走査(ビームLBnの偏向)を繰り返す場合は、ポリゴンミラーPMの回転速度は4万rpmに、光源装置14からのビームLBの発振周波数Fsは400MHzに設定される。
ここで、制御装置20は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)のうち、どの走査ユニットUnがスポット光SPの走査を行うかを原点信号SZに基づいて管理している。しかしながら、各走査ユニットUn(U1〜U6)の原点センサ60は、各反射面RPが所定の角度位置になると原点信号SZを発生するので、この原点信号SZをそのまま用いてしまうと、制御装置20は、各走査ユニットUn(U1〜U6)が連続した反射面RP毎にスポット光SPを走査すると判断してしまう。したがって、1つの走査ユニットUnがスポット光SPの走査を行ってから次の走査を行うまでに、ビームLBnをそれ以外の5つの走査ユニットUnに振り分けることができない。そのため、スポット光SPの走査を行うポリゴンミラーPMの反射面RPを1つ置きに設定するためには、原点信号SZを間引いた副原点信号(副原点パルス信号)ZPを生成する必要がある。また、上述したように、スポット光SPの走査(偏向)を行う反射面RPの回転方向の1つ手前の反射面RPを用いて、原点信号SZの検出を行うことから、原点信号SZの発生タイミングを時間Tpxだけ遅延させた副原点信号ZPを生成する必要がある。以下、この副原点信号ZPを生成する副原点生成回路CAの構成について説明する。
図11は、原点信号SZを間引いてその発生タイミングを時間Tpxだけ遅延させた副原点信号ZPを生成するための副原点生成回路CAの構成図、図12は、図11の副原点生成回路CAによって生成される副原点信号ZPのタイムチャートを示す図である。この副原点生成回路CAは、分周器80と遅延回路82とを有する。分周器80は、原点信号SZの発生タイミングの周波数を1/2に分周して原点信号SZ´として遅延回路82に出力する。遅延回路82は、送られてきた原点信号SZ´を時間Tpxだけ遅延させて、副原点信号ZPとして出力する。この副原点生成回路CAは、各走査ユニットUn(U1〜U6)の原点センサ60に対応して複数に設けられている。
なお、走査ユニットUnの原点センサ60に対応する副原点生成回路CAをCAnで表す場合がある。つまり、走査ユニットU1の原点センサ60に対応する副原点生成回路CAをCA1で表し、走査ユニットU2〜U6の原点センサ60に対応する副原点生成回路CAをCA2〜CA6で表す場合がある。また、走査ユニットUnの原点センサから出力される原点信号SZをSZnで表す場合がある。つまり、走査ユニットU1の原点センサ60から出力される原点信号SZをSZ1で表し、走査ユニットU2〜U6の原点センサ60から出力される原点信号SZをSZ2〜SZ6で表す場合がある。そして、原点信号SZnに基づいて生成された原点信号SZ´、副原点信号ZPをSZn´、ZPnで表す場合がある。つまり、原点信号SZ1に基づいて生成された原点信号SZ´、副原点信号ZPをSZ1´、ZP1で表し、同様に、原点信号SZ2〜SZ6に基づいて生成された原点信号SZ´、副原点信号ZPをSZ2´〜SZ6´、ZP2〜ZP6で表す場合がある。
図13は、露光装置EXの電気的な構成を示すブロック図、図14は、原点信号SZ1〜SZ6、副原点信号ZP1〜ZP6、および、シリアルデータDL1〜DL6が出力されるタイミングを示すタイムチャートである。露光装置EXの制御装置20は、回転制御部100、ビーム切換制御部102、描画データ出力制御部104、および、露光制御部106を備える。また、露光装置EXは、各走査ユニットUn(U1〜U6)のモータ等を含むポリゴン駆動部RMを駆動させるモータ駆動回路Drm1〜Drm6を備える。
回転制御部100は、モータ駆動回路Drm1〜Drm6を制御することで、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転を制御する。回転制御部100は、モータ駆動回路Drm1〜Drm6を制御することで、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転角度位置が互いに所定の位相関係となるように、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMを同期して回転させる。詳しくは、回転制御部100は、複数の走査ユニットU1〜U6のポリゴンミラーPMの回転速度(回転数)が互いに同一で、且つ、一定の角度分ずつ回転角度位置の位相がずれるように、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転を制御する。なお、図13中の参照符号PD1〜PD6は、回転制御部100からモータ駆動回路Drm1〜Drm6に出力される制御信号を表している。
本第1の実施の形態では、ポリゴンミラーPMの回転速度Vpを3.9万rpm(650rps)とする。また、反射面数Npを8、走査効率(α/β)を1/3、スポット光SPの走査を行う反射面RPを1面置きに設定しているので、6つのポリゴンミラーPM間の回転角度位置の位相差を、最大走査回転角度範囲α、つまり、15度とする。スポット光SPの走査は、U1→U2→・・・→U6の順番で行われるものとする。したがって、この順で6つの走査ユニットU1〜U6の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が15度ずつずれた状態で等速回転するように回転制御部100によって同期制御される。これにより、走査ユニットU1と走査ユニットU4の回転角度位置の位相のずれは、丁度1面分の回転角度に対応した45度となる。そのため、走査ユニットU1と走査ユニットU4の回転角度位置の位相、すなわち原点信号SZ1、SZ4の発生タイミングは揃っていてもよい。同様に、走査ユニットU2と走査ユニットU5の回転角度位置、および、走査ユニットU3と走査ユニットU6の回転角度位置の位相のずれはともに45度なるので、走査ユニットU2と走査ユニットU5の各々からの原点信号SZ2、SZ5の発生タイミング、および、走査ユニットU3と走査ユニットU6の各々からの原点信号SZ3、SZ6の発生タイミングは時間軸上で揃っていてもよい。
具体的には、回転制御部100は、走査ユニットU1と走査ユニットU4のポリゴンミラーPMの回転、走査ユニットU2と走査ユニットU5のポリゴンミラーPMの回転、および、走査ユニットU3と走査ユニットU6のポリゴンミラーPMの回転のそれぞれが第1の制御状態となるように、各走査ユニットU1〜U6のポリゴンミラーPMの回転を各モータ駆動回路Drm1〜Drm6を介して制御する。この第1の制御状態とは、ポリゴンミラーPMが1回転する度に出力される周回パルス信号の位相差が0(零)となっている状態である。つまり、走査ユニットU1と走査ユニットU4のポリゴンミラーPMが1回転する度に出力される周回パルス信号の位相差が0(零)となるように、走査ユニットU1と走査ユニットU4のポリゴンミラーPMの回転を制御する。同様に、走査ユニットU2と走査ユニットU5、および、走査ユニットU3と走査ユニットU6のポリゴンミラーPMが1回転する度に出力される周回パルス信号の位相差が0(零)となるように、走査ユニットU2と走査ユニットU5、および、走査ユニットU3と走査ユニットU6のポリゴンミラーPMの回転を制御する。
この周回パルス信号は、図示しない分周器によって走査ユニットUnの原点信号SZnが8回出力される度に1回出力される信号であってもよい。また、周回パルス信号は、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴン駆動部RMに設けられたエンコーダ(図示略)から出力される信号であってもよい。周回パルス信号を検出するセンサをポリゴンミラーPMに近傍に設けてもよい。図14に示す例では、走査ユニットUnの原点信号SZnが8回出力される度に1回、周回パルス信号が発生されるものとし、その周回パルス信号の発生に対応した原点信号SZnの一部を点線で表している。なお、各原点信号SZ1と各原点信号SZ4とは、隣り合う反射面RP(例えば、反射面RPaと反射面RPb)同士の各なす角ηjの誤差(図8参照)を考慮しなければ、時間軸上では全て位相が一致している。同様に、各原点信号SZ2と各原点信号SZ5、および、各原点信号SZ3と各原点信号SZ6とは、隣り合う反射面RP同士の各なす角ηjの誤差(図8参照)を考慮しなければ、時間軸上では全て位相が一致している。なお、図14においては、説明をわかり易くするため、隣り合う反射面RP同士の各なす角ηjの誤差はないものとして説明する。
そして、回転制御部100は、第1の制御状態を保ったまま、走査ユニットU1、U4のポリゴンミラーPMの回転角度位置に対して、走査ユニットU2、U5のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が15度ずれるように、走査ユニットU2、U5のポリゴンミラーPMの回転を制御する。同様に、回転制御部100は、第1の制御状態を保ったまま、走査ユニットU1、U4のポリゴンミラーPMの回転角度位置に対して走査ユニットU3、U6のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が30度ずれるように、走査ユニットU3、U6の回転を制御する。このポリゴンミラーPMが15度回転する時間(ビームLBnの最大走査時間)をTsとする。
具体的には、回転制御部100は、走査ユニットU1、U4により得られた周回パルス信号に対して、走査ユニットU2、U5により得られる周回パルス信号が時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU2、U5のポリゴンミラーPMの回転を制御する(図14参照)。同様に、回転制御部100は、走査ユニットU1、U4により得られた周回パルス信号に対して、走査ユニットU3、U6により得られる周回パルス信号が時間2×Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU3、U6のポリゴンミラーPMの回転を制御する(図14参照)。ポリゴンミラーPMの回転速度Vpを3.9万rpm(650rps)とすると、時間Tsは、Ts=〔1/(Vp×Np)〕×(α/β)=1/(650×8×3)秒〔約64.1μ秒〕である。このようにして、各走査ユニットU1〜U6のポリゴンミラーPMの回転を制御することで、U1→U2→・・・→U6の順番で、各走査ユニットU1〜U6がスポット光SPの走査を時分割して行うことが可能になる。
ビーム切換制御部102は、ビーム切換部材16の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)を制御して、1つの走査ユニットUnが走査を開始してから次の走査を開始するまでに、光源装置14からのビームLBを6つの走査ユニットUn(U1〜U6)に振り分ける。そのため、ビーム切換制御部102は、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMのビームLBnの走査(偏向)が、ポリゴンミラーPMの1つ置きの反射面RP毎に繰り返されるように、選択用光学素子AOM1〜AOM6によってビームLBから生成されるビームLB1〜LB6のいずれか1つを時分割で各走査ユニットUn(U1〜U6)に入射させる。
具体的に説明すると、ビーム切換制御部102は、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)に基づいて副原点信号ZPn(ZP1〜ZP6)を生成する図11に示したような副原点生成回路CAn(CA1〜CA6)を備える。この副原点生成回路CAn(CA1〜CA6)によって副原点信号ZPn(ZP1〜ZP6)が発生すると、副原点信号ZPn(ZP1〜ZP6)の発生に由来する走査ユニットUn(U1〜U6)に対応する選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)を、一定時間(オン時間Ton)オンにする。例えば、副原点信号ZP1が発生すると、副原点信号ZP1の発生に由来する走査ユニットU1に対応する選択用光学素子AOM1を一定時間(オン時間Ton)オンにする。この副原点信号ZPnは、原点センサ60から出力される原点信号SZnに基づいて生成されたものであり、原点信号SZnの周波数を1/2に分周し、つまり、原点信号SZnを半分に間引き、且つ、時間Tpxだけ遅延させたものである。この一定時間(オン時間Ton)は、副原点信号ZPnが発生した時点から次に走査を行う走査ユニットUnからの副原点信号ZPnが発生する時点までの期間、すなわち、ポリゴンミラーPMが15度だけ回転するのに要する時間Tsに対応している。選択用光学素子AOMnのオン時間Tonが時間Ts以上に設定されると、選択用光学素子AOMnのうちの2つが同時にオン状態になる期間が生じ、スポット光SPによる描画動作をさせるべき走査ユニットUnに、ビームLB1〜LB6を正しく導入できないことになる。したがって、オン時間TonはTon≦Tsに設定される。
このとき、各原点信号SZ1と各原点信号SZ4とは、隣り合う反射面RP(例えば、反射面RPaと反射面RPb)同士の各なす角ηjの誤差を考慮しなければ、時間軸上では全て同期しており、副原点信号ZP1と副原点信号ZP4との位相が約半周期ずれるように設定される(図14参照)。この副原点信号ZP1と副原点信号ZP4との位相の約半周期のずれは、副原点生成回路CAn(CA1〜CA6)の分周器80によって行われる。つまり、分周器80は、原点信号SZ1を間引くタイミングと原点信号SZ4を間引くタイミングを略半周期ずらす。
副原点信号ZP2と副原点信号ZP5との関係も同様に、分周器80によって、副原点信号ZP2と副原点信号ZP5との位相が約半周期ずれるように設定される(図14参照)。また、副原点信号ZP3と副原点信号ZP6との関係も同様に、分周器80によって、副原点信号ZP3と副原点信号ZP6との位相が約半周期ずれるように設定される(図14参照)。
したがって、図14に示すように、走査ユニットU1〜U6毎に生成される副原点信号ZP1〜ZP6の発生タイミングは、時間Tsずつずれたものになる。本第1の実施の形態においては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番は、U1→U2→・・・→U6、となっているので、副原点信号ZPnも、副原点信号ZP1が発生してから時間Ts後に副原点信号ZP2が発生するといった具合に、ZP1→ZP2→・・・→ZP6の順番で時間Ts間隔で発生する。したがって、ビーム切換制御部102は、発生した副原点信号ZPn(ZP1〜ZP6)に応じて、ビーム切換部材16の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)を制御することで、U1→U2→・・・→U6の順番で走査ユニットUnの各々に、対応するビームLB1〜LB6を入射させることができる。つまり、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMによるビームLBnの走査(偏向)が、ポリゴンミラーPMの1面置きの反射面RP毎に繰り返されるように各走査ユニットUn(U1〜U6)に入射するビームLBnを時分割で切り替えることができる。
描画データ出力制御部104は、走査ユニットUnよってスポット光SPが走査される1描画ラインSLnのパターンに対応する1列分のシリアルデータDLnを描画ビット列データSdwとして光源装置14の駆動回路36aに出力する。スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番は、U1→U2→・・・→U6、となっているので、描画データ出力制御部104は、1列分のシリアルデータDLnが、DL1→DL2→・・・→DL6、の順番で繰り返される描画ビット列データSdwを出力する。
図15を用いて、描画データ出力制御部104の構成について詳しく説明する。描画データ出力制御部104は、走査ユニットU1〜U6の各々に対応した6つの生成回路110、112、114、116、118、120と、OR回路GT10とを有する。生成回路110は、メモリ部BM1、カウンタ部CN1、および、ゲート部GT1を備え、生成回路112は、メモリ部BM2、カウンタ部CN2、および、ゲート部GT2を備える。生成回路114は、メモリ部BM3、カウンタ部CN3、および、ゲート部GT3を備え、生成回路116は、メモリ部BM4、カウンタ部CN4、および、ゲート部GT4を備える。生成回路118は、メモリ部BM5、カウンタ部CN5、および、ゲート部GT5を備え、生成回路120は、メモリ部BM6、カウンタ部CN6、および、ゲート部GT6を備える。
メモリ部BM1〜BM6は、各走査ユニットUn(U1〜U6)が描画露光すべきパターンに応じたパターンデータ(ビットマップ)を記憶するメモリである。カウンタ部CN1〜CN6は、各メモリ部BM1〜BM6に記憶されたパターンデータのうち、次に描画すべき1描画ラインSLn分のシリアルデータDL1〜DL6を、1画素ずつクロック信号CLKに同期して出力するためのカウンタである。このカウンタ部CN1〜CN6は、図14に示すように、ビーム切換制御部102の副原点生成回路CA1〜CA6から副原点信号ZP1〜ZP6が出力されてから、1つのシリアルデータDL1〜DL6を出力させる。
各メモリ部BM1〜BM6に記憶されたパターンデータは、不図示のアドレスカウンタ等によって、出力されるシリアルデータDL1〜DL6が列方向にシフトされる。つまり、不図示のアドレスカウンタによって読み出す列が、1列目、2列目、3列目、・・・、というようにシフトされる。そのシフトは、例えば、走査ユニットU1に対応するメモリ部BM1であればシリアルデータDL1を出力し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU2に対応した副原点信号ZP2が発生したタイミングで行われる。同様に、メモリ部BM2に記憶されたパターンデータのシリアルデータDL2のシフトは、シリアルデータDL2が出力し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU3に対応した副原点信号ZP3が発生したタイミングで行われる。同様に、メモリ部BM3〜BM6に記憶されたパターンデータのシリアルデータDL3〜DL6のシフトは、シリアルデータDL3〜DL6を出力し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU4〜U6、U1に対応した副原点信号ZP4〜ZP6、ZP1が発生したタイミングで行われる。なお、スポット光SPの走査は、U1→U2→U3→・・・→U6、という順番で行われる。
このようにして、順次出力されるシリアルデータDL1〜DL6は、副原点信号ZP1〜ZP6が印加されてから一定時間(オン時間Ton)中に開かれるゲート部GT1〜GT6を通って6入力のOR回路GT10に印加される。OR回路GT10は、シリアルデータDL1→DL2→DL3→DL4→DL5→DL6→DL1・・・の順に繰り返し合成されたシリアルデータDLnを描画ビット列データSdwとして光源装置14の駆動回路36aに出力する。このようにして、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、スポット光SPの走査を行うと同時に、パターンデータに応じたパターンを描画露光することができる。
本第1の実施の形態では、走査ユニットUn(U1〜U6)毎に、パターンデータを用意し、各走査ユニットUn(U1〜U6)のパターンデータの中から、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番にしたがってシリアルデータDL1〜DL6を出力するようにした。しかしながら、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番は予め決められているので、各走査ユニットUn(U1〜U6)のパターンデータの各シリアルデータDL1〜DL6を組み合わせた1つのパターンデータを用意してもよい。つまり、各走査ユニットUn(U1〜U6)のパターンデータの各列のシリアルデータDLn(DL1〜DL6)を、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番に応じて配列させた1つのパターンデータを構築するようにしてもよい。この場合は、各走査ユニットUn(U1〜U6)の原点センサ60に基づく副原点信号ZPn(ZP1〜ZP6)に応じて、1つのパターンデータのシリアルデータDLnを1列目から順番に出力すればよい。
ところで、図13に示した露光制御部106は、回転制御部100、ビーム切換制御部102、および、描画データ出力制御部104等を制御するものである。露光制御部106は、アライメント顕微鏡AMm(AM1〜AM4)が撮像した撮像信号ig(ig1〜ig4)を解析して、アライメントマークMKm(MK1〜MK4)の基板FS上の位置を検出する。そして、露光制御部106は、検出したアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置に基づいて、基板FS上における露光領域Wの描画露光の開始位置を検出(決定)する。露光制御部106は、カウンタ回路106aを備え、カウンタ回路106aは、図2に示したエンコーダEN1a〜EN3a、EN1b〜EN3bによって検出された検出信号をカウントする。露光制御部106は、描画露光の開始位置が検出されたときのエンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値(マーク検出位置)と、エンコーダEN2a、EN2bに基づくカウント値(奇数番の描画ラインSLnの位置)とに基づいて、基板FSの描画露光の開始位置が描画ラインSL1、SL3、SL5上に位置するか否かを判断する。露光制御部106は、描画露光の開始位置が描画ラインSL1、SL3、SL5上に位置すると判断すると、描画データ出力制御部104を制御して、走査ユニットU1、U3、U5にスポット光SPの走査を開始させる。なお、回転制御部100およびビーム切換制御部102は、露光制御部106の制御の下、周回パルス信号および副原点信号ZPn(ZP1〜ZP6)に基づいて、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転およびビーム切換部材16によるビームLBnの振り分けを制御しているものとする。
露光制御部106は、描画露光の開始位置が検出されたときのエンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値(マーク検出位置)と、エンコーダEN3a、EN3bに基づくカウント値(偶数番の描画ラインの位置)とに基づいて、基板FSの描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上に位置するか否かを判断する。露光制御部106は、描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上に位置すると判断すると、描画データ出力制御部104を制御して、走査ユニットU2、U4、U6にスポット光SPの走査を開始させる。
先の図3に示すように、基板FSの搬送方向(+X方向)に応じて、描画ラインSL1、SL3、SL5の各々における描画露光が先行し、基板FSが所定距離だけ搬送されてから、描画ラインSL2、SL4、SL6の各々における描画露光が行われる。一方で、6つの走査ユニットU1〜U6の各ポリゴンミラーPMは相互に一定の角度位相を保って回転制御されているため、副原点信号ZP1〜ZP6は、図14のように順次時間Tsだけ位相差を持って発生し続ける。そのため、描画ラインSL1、SL3、SL5における描画露光の開始時点から描画ラインSL2、SL4、SL6における描画露光の開始直前までの間も、副原点信号ZP2、ZP4、ZP6によって図15中のゲート部GT2、GT4、GT6が開かれ、選択用光学素子AOM2、AOM4、AOM6が一定時間Tonだけオン状態になることを繰り返すことになる。そこで、図13の構成において、ビーム切換制御部102内には、露光制御部106において判断されるエンコーダEN1a、EN1bのカウント値、或いはエンコーダEN2a、EN2bのカウント値に基づいて、生成される副原点信号ZP1〜ZP6の各々を描画データ出力制御部104に送るか禁止するかを選択する選択ゲート回路を設けるのがよい。併せて、走査ユニットU1〜U6の各々に対応した選択用光学素子AOM1〜AOM6の各ドライバ回路DRVn(DRV1〜DRV6)(図19参照)にも、その選択ゲート回路を介して副原点信号ZP1〜ZP6を与えるのがよい。
ここで、上述したように、描画ラインSL1、SL3、SL5は、描画ラインSL2、SL4、SL6より基板FSの搬送方向の上流側に位置することから、基板FSの露光領域Wの描画露光の開始位置は先に描画ラインSL1、SL3、SL5上まで到達し、その後一定の時間をおいて、描画ラインSL2、SL4、SL6上に到達する。そのため、描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6に到達するまでは、走査ユニットU1、U3、U5のみでパターンの描画露光を行うことになる。したがって、先に説明したような副原点信号ZP1〜ZP6の選択ゲート回路をビーム切換制御部102内に設けない場合、露光制御部106は、光源装置14の駆動回路36aに出力する描画ビット列データSdwのうち、シリアルデータDL2、DL4、DL6に対応する部分の画素データを全てロー「(0)」にすることで、実質的に走査ユニットU2、U4、U6による描画露光をキャンセルする。キャンセル期間中は、メモリ部BM2、BM4、BM6から出力されるシリアルデータDL2、DL4、DL6の列は、シフトされず1列目のままである。そして、露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上に到達してから、シリアルデータDL2、DL4、DL6の出力を開始し、シリアルデータDL2、DL4、DL6の列方向へのシフトが行われる。
また、同様に、露光領域Wの描画露光の終了位置は、先に描画ラインSL1、SL3、SL5上に到達し、その後一定の時間をおいて、描画ラインSL2、SL4、SL6上に達する。そのため、描画露光の終了位置が描画ラインSL1、SL3、SL5に到達した後、描画ラインSL2、SL4、SL6に到達するまでは、走査ユニットU2、U4、U6のみでパターンの描画露光を行うことになる。そこで、先に説明したような副原点信号ZP1〜ZP6の選択ゲート回路をビーム切換制御部102内に設けない場合、露光制御部106は、光源装置14の駆動回路36aに出力する描画ビット列データSdwのうち、シリアルデータDL1、DL3、DL5に対応する部分の画素データを全てロー「(0)」にすることで、実質的に走査ユニットU1、U3、U5による描画露光をキャンセルする。なお、選択ゲート回路を設けない場合、描画露光のキャンセル中であっても、描画露光がキャンセルされている走査ユニットU1、U3、U5には、ビームLB1、LB3、LB5が導入されるように、選択用光学素子AOM1、AOM3、AOM5は副原点信号ZP1、ZP3、ZP5に応答して選択的に一定時間Tonだけオン状態になることを繰り返す。
図16は、走査ユニットU1による標準的なパターン描画の際の各部の信号状態とビームLBの発振状態とのタイムチャートを示す図である。2次元のマトリックスGmは、描画すべきパターンデータのビットパターンPPを示し、基板FS上での1画素(ピクセル)は、例えば、Y方向の寸法Pyを3μm、X方向の寸法Pxを3μmに設定されている。図16において、矢印で示すSL1−1、SL1−2、SL1−3、・・・、SL1−6は、基板FSのX方向の移動(長尺方向の副走査)に伴って、描画ラインSL1によって順次描画される描画ラインを示し、各描画ラインSL1−1、SL1−2、SL1−3、・・・、SL1−6のX方向の間隔は、例えば、1画素単位の寸法Pxの1/2となるように、基板FSの搬送速度が設定される。
さらに、基板FS上に投射されるスポット光SPのXY方向の寸法(スポットサイズφ)は、1画素の大きさと同程度か、それよりも少し大きめとする。よって、スポット光SPのサイズφは、実効的な直径(ガウス分布の1/e2の幅、または、ピーク強度の半値全幅)として、3〜4μm程度に設定され、描画ラインSL1に沿ってスポット光SPを連続的に投射する際は、例えば、スポット光SPの実効的な直径の1/2でオーバーラップするように、ビームLBの発光周波数Fs(パルス時間間隔)とポリゴンミラーPMによるスポット光SPの走査速度とが設定されている。すなわち、図4に示す光源装置14内の偏光ビームスプリッタ38から射出される種光ビームをLseとすると、この種光ビームLseは、制御回路52(クロック発生器52a)から出力されるクロック信号LTCの各パルスに応答して図16のように射出される。
そのクロック信号LTCと、図15の生成回路110内のカウンタ部CN1に供給されるクロック信号CLKとは、2:1の周波数比に設定され、クロック信号LTCが100MHzの場合は、クロック信号CLKは50MHzに設定される。なお、クロック信号LTCとクロック信号CLKの周波数比は整数倍であればよく、例えば、クロック信号CLKの設定周波数をクロック信号LTCの1/4倍の25MHzに落とすとともに、スポット光SPの走査速度も半分に落とすように設定してもよい。
図16に示す描画ビット列データSdwは、生成回路110から出力されるシリアルデータDL1に相当し、ここでは、例えば、ビットパターンPPの描画ラインSL1−2上のパターンに対応している。光源装置14内の駆動回路36aは、描画ビット列データSdwに応答して電気光学素子36の偏光状態を切り換えるので(図4参照)、種光ビームLseは、描画ビット列データSdwがハイ(「1」)の間は、図4中のDFB半導体レーザ素子30からの種光S1によって生成され、描画ビット列データSdwがロー(「0」)の間は、図4中のDFB半導体レーザ素子32からの種光S2によって生成される。以上の図16に示した走査ユニットU1の描画露光の動作は、他の走査ユニットU2〜U6でも同じある。
以上のように本第1の実施の形態では、走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの1つ置きの反射面RP毎に、ポリゴンミラーPMの偏向(走査)が繰り返されるようにビーム切換制御部102がビーム切換部材16を制御して、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の各々にスポット光SPの1次元走査を順番に行わせた。これにより、スポット光SPが走査される描画ラインSLn(SL1〜SL6)の長さを短くせずに、1つのビームLBを複数の走査ユニットUn(U1〜U6)に振り分けることができ、有効にビームLBを活用することができる。また、ポリゴンミラーPMの形状(多角形の形状)を円形に近づけることができるので、ポリゴンミラーPMの回転速度が低下することを防止でき、ポリゴンミラーPMを高速に回転させることができる。
ビーム切換部材16は、光源装置14からのビームLBの進行方向に沿って直列にn個配置され、ビームLBを回折させて偏向したn個のビームLBnのいずれか1つを選択して、対応する走査ユニットUnに導入させる選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)を有する。したがって、ビームLBnが入射すべき走査ユニットUn(U1〜U6)のいずれか1つを簡単に選択でき、描画露光すべき1つの走査ユニットUnに対して光源装置14からのビームLBを効率的に集中させることができ、高い露光量が得られる。例えば、光源装置14からの射出するビームLBを複数のビームスプリッタを使って6つに振幅分割し、分割した6つのビームLBn(LB1〜LB6)の各々を、描画データのシリアルデータDL1〜DL6によって変調させる描画用の音響光学変調素子を介して6つの走査ユニットU1〜U6に導いた場合、描画用の音響光学変調素子でのビーム強度の減衰を20%、走査ユニットUn内でのビーム強度の減衰を30%とすると、1つの走査ユニットUnにおけるスポット光SPの強度は、元のビームLBの強度を100%としたとき、約9.3%となる。一方、第1の実施の形態のように、光源装置14からのビームLBを選択用光学素子AOMnによって偏向させて、6つの走査ユニットUnのいずれか1つに入射するようにした場合、選択用光学素子AOMnでのビーム強度の減衰を20%としたとき、1つの走査ユニットUnにおけるスポット光SPの強度は、元のビームLBの強度の約56%になる。
回転制御部100は、回転速度が互いに同一で、且つ、一定の角度分ずつ回転角度位置の位相がずれるように、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転を制御する。これにより、1つの走査ユニットUnによるスポット光SPの1次元走査から次の1次元走査が行われるまでの間に、他の複数の走査ユニットUnによるスポット光SPの1次元走査を順番に行わせることが可能となる。
なお、上記第1の実施の形態では、1つのビームLBを6つの走査ユニットUnに振り分ける態様で説明したが、光源装置14からの1つのビームLBを9つの走査ユニットUn(U1〜U9)に振り分けるものであってもよい。この場合は、ポリゴンミラーPMの走査効率(α/β)を1/3とすると、ポリゴンミラーPMが3つの反射面RP分回転する間に、9つの走査ユニットU1〜U9にビームLBnを振り分けることができるので、スポット光SPの走査は2つ置きの反射面RP毎に行われることになる。これにより、1つの走査ユニットUnによるスポット光SPの走査がされてから次のスポット光SPの走査を行うまでに、その他の8つの走査ユニットUnにスポット光SPの走査を順番に行わせることができる。また、ポリゴンミラーPMの走査効率を1/3とすると、ポリゴンミラーPMが3つの反射面RP分回転して、1つのビームLBを9つの走査ユニットUnに振り分けることができるので、副原点生成回路CAnの分周器80は、原点信号SZnの発生タイミングの周波数を1/3に分周する。この場合、走査ユニットU1、U4、U7の周回パルス信号は同期している(時間軸上で同位相になっている)。同様に、走査ユニットU2、U5、U8の周回パルス信号は同期しており、走査ユニットU3、U6、U9の周回パルス信号は同期している。そして、走査ユニットU2、U5、U8の周回パルス信号は、走査ユニットU1、U4、U7の周回パルス信号に対して時間Tsだけ遅れて発生し、走査ユニットU3、U6、U9の周回パルス信号は、走査ユニットU1、U4、U7の周回パルス信号に対して2×時間Tsだけ遅れて発生する。また、走査ユニットU1、U4、U7の副原点信号ZP1、ZP4、ZP7の発生タイミングは、1周期の1/3ずつ位相がずれており、同様に、走査ユニットU2、U5、U8の副原点信号ZP2、ZP5、ZP8の発生タイミング、および、走査ユニットU3、U6、U9の副原点信号ZP3、ZP6、ZP9の発生タイミングも、1周期の1/3ずつ位相がずれている。なお、時間Tsは、スポット光SPの走査が可能なポリゴンミラーPMの走査回転角度範囲α´だけポリゴンミラーPMが回転する時間であり、ポリゴンミラーPMが1つの反射面RP分回転する角度βに走査効率を乗算した値が走査回転角度範囲α´となる。
ポリゴンミラーPMの走査効率を1/3で、1つのビームLBを12個の走査ユニットUn(U1〜U12)に振り分ける場合は、ポリゴンミラーPMが4つの反射面RP分回転する間に、12個の走査ユニットU1〜U12にビームLBnを振り分けることができるので、スポット光SPの走査は3つ置きの反射面RP毎に行われることになる。また、ポリゴンミラーPMの走査効率を1/3とすると、ポリゴンミラーPMが4つの反射面RP分回転して、光源装置14からのビームLBを直列に配置された12個の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM12)で択一的に偏向されるビームLBn(LB1〜LB12)を、対応する1つの走査ユニットUn(U1〜U12)に入射させることができるので、副原点生成回路CAnの分周器80は、原点信号SZnの発生タイミングの周波数を1/4に分周する。この場合、走査ユニットU1、U4、U7、U10の周回パルス信号は同期している(時間軸上で同位相になっている)。同様に、走査ユニットU2、U5、U8、U11の周回パルス信号は同期しており、走査ユニットU3、U6、U9、U12の周回パルス信号は同期している。そして、走査ユニットU2、U5、U8、U11の周回パルス信号は、走査ユニットU1、U4、U7、U10の周回パルス信号に対して時間Tsだけ遅れて発生し、走査ユニットU3、U6、U9、U12の周回パルス信号は、走査ユニットU1、U4、U7、U10の周回パルス信号に対して2×時間Tsだけ遅れて発生する。また、走査ユニットU1、U4、U7、U10の副原点信号ZP1、ZP4、ZP7、ZP10の発生タイミングは、1周期の1/4ずつ位相がずれており、同様に、走査ユニットU2、U5、U8、U11の副原点信号ZP2、ZP5、ZP7、ZP11の発生タイミング、および、走査ユニットU3、U6、U9、U12の副原点信号ZP3、ZP6、ZP9、ZP12の発生タイミングも、1周期の1/4ずつ位相がずれている。
また、上記第1の実施の形態では、走査ユニットUnのポリゴンミラーPMの走査効率を1/3として説明したが、走査効率は、1/2であってもよく、1/4であってもよい。走査効率が1/2の場合は、ポリゴンミラーPMが1つの反射面RP分回転する間に、2つの走査ユニットUnにビームLBnを振り分けることができるので、1つのビームLBnを6つの走査ユニットUnに振り分けたい場合は、スポット光SPの走査が、ポリゴンミラーPMの2つ置きの反射面RP毎に行われることになる。つまり、ポリゴンミラーPMの走査効率が1/2の場合は、ポリゴンミラーPMが3つの反射面RP分回転する間に6つの走査ユニットUnにビームLBnを振り分けることができる。これにより、1つの走査ユニットUnによるスポット光SPの走査がされてから次のスポット光SPの走査を行うまでに、その他の5つの走査ユニットUnにスポット光SPの走査を順番に行わせることができる。また、ポリゴンミラーPMの走査効率を1/2とすると、ポリゴンミラーPMが3つの反射面RP分回転して、1つのビームLBを6つの走査ユニットUnに振り分けることができるので、副原点生成回路CAnの分周器80は、原点信号SZnの発生タイミングの周波数を1/3に分周する。この場合、走査ユニットU1、U3、U5の周回パルス信号は同期している。同様に、走査ユニットU2、U4、U6の周回パルス信号は同期している。そして、走査ユニットU2、U4、U6の周回パルス信号は、走査ユニットU1、U3、U5の周回パルス信号に対して時間Tsだけ遅れて発生する。また、走査ユニットU1、U3、U5の副原点信号ZP1、ZP3、ZP5の発生タイミングは、1周期の1/3ずつ位相がずれており、走査ユニットU2、U4、U6の副原点信号ZP2、ZP4、ZP6の発生タイミングも、1周期の1/3ずつ位相がずれている。
ポリゴンミラーPMの走査効率が1/4の場合は、ポリゴンミラーPMが1つの反射面RP分回転する間に、4つの走査ユニットUnにビームLBnを振り分けることができるので、1つのビームLBを8つの走査ユニットUnに振り分けたい場合は、スポット光SPの走査が、ポリゴンミラーPMの1つ置きの反射面RP毎に行われることになる。つまり、ポリゴンミラーPMの走査効率が1/4の場合は、ポリゴンミラーPMが2つの反射面RP分回転する間に8つの走査ユニットUnにビームLBnを振り分けることができる。これにより、1つの走査ユニットUnによるスポット光SPの走査がされてから次のスポット光SPの走査を行うまでに、その他の7つの走査ユニットUnにスポット光SPの走査を順番に行わせることができる。また、ポリゴンミラーPMの走査効率を1/4とすると、ポリゴンミラーPMが2つの反射面RP分回転して、1つのビームLBを8つの走査ユニットUnに振り分けることができるので、副原点生成回路CAnの分周器80は、原点信号SZnの発生タイミングの周波数を1/2に分周する。この場合、走査ユニットU1、U5の周回パルス信号は同期しており、走査ユニットU2、U6の周回パルス信号は同期している。同様に、走査ユニットU3、U7の周回パルス信号は同期しており、走査ユニットU4、U8の周回パルス信号は同期している。そして、走査ユニットU2、U6の周回パルス信号は、走査ユニットU1、U5の周回パルス信号に対して時間Tsだけ遅れて発生する。走査ユニットU3、U7の周回パルス信号は、走査ユニットU1、U5の周回パルス信号に対して2×時間Tsだけ遅れて発生し、走査ユニットU4、U8の周回パルス信号は、走査ユニットU1、U5の周回パルス信号に対して3×時間Tsだけ遅れて発生する。また、走査ユニットU1、U5の副原点信号ZP1、ZP5の発生タイミングは、1周期の1/2ずつ位相がずれており、走査ユニットU2、U6の副原点信号ZP2、ZP6の発生タイミングも、1周期の1/2ずつ位相がずれている。同様に、走査ユニットU3、U7の副原点信号ZP3、ZP7の発生タイミング、および、走査ユニットU4、U8の副原点信号ZP4、ZP8も、それぞれ1周期の1/2ずつ位相がずれている。
また、上記第1の実施の形態では、ポリゴンミラーPMの形状を、8角形としたが(反射面RPが8つ)としたが、6角形、7角形であってもよいし、9角形以上であってもよい。これにより、ポリゴンミラーPMの走査効率も変わる。一般的に、多角形の形状のポリゴンミラーPMの反射面数が多くなる程、ポリゴンミラーPMの1反射面RPにおける走査効率は大きくなり、反射面数が少なくなる程、ポリゴンミラーPMの走査効率は小さくなる。
基板FS上にスポット光SPが投射されて走査可能なポリゴンミラーPMの最大走査回転角度範囲αは、fθレンズFTの入射画角(図10中の角度θsに相当)で決まるので、その入射画角に対応して、最適な反射面数のポリゴンミラーPMを選ぶことができる。先の例のように、入射画角(θs)が30度未満のfθレンズFTの場合、その半分の15度分の回転で反射面RPが変わる24面のポリゴンミラーPM、或いは、30度分の回転で反射面RPが変わる12面のポリゴンミラーPMとしてもよい。この場合、24面のポリゴンミラーPMでは走査効率(α/β)が1/2よりは大きく、1.0よりも小さい状態となるので、6つの走査ユニットU1〜U6の各々の24面のポリゴンミラーPMは5面飛ばしでスポット光SPの走査を行うように制御される。また、12面のポリゴンミラーPMでは走査効率が1/3よりも大きく、1/2未満の状態となるので、6つの走査ユニットU1〜U6の各々の12面のポリゴンミラーPMは2面飛ばしでスポット光SPの走査を行うように制御される。
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態においては、常にスポット光SPの走査(偏向)がポリゴンミラーPMの反射面RPの1面置き毎に繰り返されるものとした。しかし、第2の実施の形態においては、スポット光SPの走査(偏向)が、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎に繰り返される第1の状態にするか、ポリゴンミラーPMの反射面RPの1面置き毎に繰り返される第2の状態にするかを任意に切り換えることができるようにした。つまり、走査ユニットU1がスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでに、ビームLBを3つの走査ユニットUnに時分割で振り分けるか、6つの走査ユニットUnに時分割で振り分けるかを切り換えることができる。
ポリゴンミラーPMの走査効率は1/3なので、スポット光SPの走査をポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎に繰り返す場合は、例えば、走査ユニットU1がスポット光SPを走査してから次の走査を行うまでの間に、走査ユニットU1以外の2つの走査ユニットUnにしかビームLBを振り分けることができない。したがって、2つのビームLBを用意し、1つ目のビームLBを3つの走査ユニットUnに時分割で振り分け、2つ目のビームLBを残りの3つの走査ユニットUnに時分割で振り分ける。したがって、スポット光SPの走査が並行して2つの走査ユニットUnによって行われる。光源装置14を2つ設けることで2つのビームLBを生成してもよいし、1つの光源装置14からのビームLBをビームスプリッタ等によって分割することで2つのビームLBを生成してもよい。図17〜図21に示す本第2の実施の形態の露光装置EXでは、2つの光源装置14を備えるものとする(図19参照)。なお、第2の実施の形態においては、上記第1の実施の形態と同様の構成については、同一の参照符号を付し、異なる部分だけを説明する。
図17は、本第2の実施の形態のビーム切換部材(ビーム配送ユニット)16Aの構成図である。ビーム切換部材16Aは、図5のビーム切換部材16と同様に複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)、複数の集光レンズCD1〜CD6、複数の反射ミラーM1〜M12、複数のミラーIM1〜IM6、および、複数のコリメートレンズCL1〜CL6を有し、その他に、反射ミラーM13、M14と吸収体TR1、TR2とを有する。なお、吸収体TR1は、上記第1の実施の形態で示した図5の吸収体TRに相当するものであり、反射ミラーM12で反射したビームLBを吸収する。
選択用光学素子AOM1〜AOM3は、光学素子モジュール(第1の光学素子モジュール)OM1を構成し、選択用光学素子AOM4〜AOM6は、光学素子モジュール(第2の光学素子モジュール)OM2を構成する。この第1の光学素子モジュールOM1の選択用光学素子AOM1〜AOM3は、上記第1の実施の形態で説明したように、ビームLBの進行方向に沿って直列に配列された状態にある。同様に、第2の光学素子モジュールOM2の選択用光学素子AOM4〜AOM6も、ビームLBの進行方向に沿って直列に配置された状態にある。なお、第1の光学素子モジュールOM1の選択用光学素子AOM1〜AOM3に対応する走査ユニットU1〜U3を第1の走査モジュールとする。また、第2の光学素子モジュールOM2の選択用光学素子AOM4〜AOM6に対応する走査ユニットU4〜U6を第2の走査モジュールとする。この第1の走査モジュールの走査ユニットU1〜U3、および、第2の走査モジュールの走査ユニットU4〜U6は、上記第1の実施の形態で説明したように所定の配置関係で配置されている。
第2の実施の形態では、反射ミラーM6、M13、M14は、ビームLBの進行方向に関して、第1の光学素子モジュールOM1と第2の光学素子モジュールOM2とを並列に配置する第1の配置状態と、第1の光学素子モジュールOM1と第2の光学素子モジュールOM2とを直列に配置する第2の配置状態とに切り換える配置切換部材(可動部材)SWEを構成する。この配置切換部材SWEは、反射ミラーM6、M13、M14を支持するスライド部材SEを有し、スライド部材SEは、支持部材IUBに対してX方向に移動可能である。このスライド部材SE(配置切換部材SWE)のX方向への移動は、アクチュエータAC(図19参照)によって行われる。このアクチュエータACは、ビーム切換制御部102の駆動制御部102a(図19参照)の制御によって駆動する。
第1の配置状態のときは、第1の光学素子モジュールOM1と第2の光学素子モジュールOM2との各々に2つの光源装置14からのビームLBが並行して入射する状態となり、第2の配置状態のときは、1つの光源装置14からのビームLBが第1の光学素子モジュールOM1と第2の光学素子モジュールOM2とに入射する状態となる。つまり、第2の配置状態のときは、第1の光学素子モジュールOM1を透過したビームLBが第2の光学素子モジュールOM2に入射する。図17は、配置切換部材SWEによって第1の光学素子モジュールOM1と第2の光学素子モジュールOM2とが直列に配置された第2の配置状態となっているときの状態を示している。つまり、この第2の配置状態のときは、第1の光学素子モジュールOM1および第2の光学素子モジュールOM2の全ての選択用光学素子AOM1〜AOM6がビームLBの進行方向に沿って直列に配置された状態となり、上記第1の実施の形態で示した図5と同一である。したがって、上記第1の実施の形態と同様に、直列に配置された第1の光学素子モジュールOM1および第2の光学素子モジュールOM2の各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)によって、第1の走査モジュールおよび第2の走査モジュール(U1〜U6)の中から、いずれか1つの偏向されたビームLBnが入射する走査ユニットUnを1つ選択することができる。なお、図17のときの配置切換部材SWEの位置を第2の位置と呼ぶ。また、第1の配置状態のときに、第1の光学素子モジュールOM1(AOM1〜AOM3)に入射するビームLBを第1の光源装置14AからのビームLBaと呼び、第1の配置状態のときに、第2の光学素子モジュールOM2(AOM4〜AOM6)に入射するビームを第2の光源装置14BからのビームLBbと呼ぶ。
配置切換部材SWEが−X方向側に移動して第1の位置に来ると、第1の光学素子モジュールOM1と第2の光学素子モジュールOM2とが、並列に配置された第1の配置状態になる。図18は、配置切換部材SWEの位置が第1の位置となったときのビームLBa、LBbの光路を示す図である。第1の配置状態のときは、第1の光学素子モジュールOM1にビームLBaが入射し、第2の光学素子モジュールOM2にそれぞれビームLBbが入射する。第1の光学素子モジュールOM1および第2の光学素子モジュールOM2の各々に入射するビームLBを区別するため、第1の光学素子モジュールOM1に入射するビームLBをLBaで表し、第2の光学素子モジュールOM2に直接入射するビームLBをLBbで表す。
図18に示すように、配置切換部材SWEが第1の位置に移動すると、反射ミラーM6の位置が−X方向にシフトするため、反射ミラーM6で反射したビームLBaは、反射ミラーM7ではなく吸収体TR2に入射する。したがって、第1の光学素子モジュールOM1に入射するビームLBaは、第1の光学素子モジュールOM1(選択用光学素子AOM1〜AOM3)のみに入射し、第2の光学素子モジュールOM2に入射しない。つまり、ビームLBaは、選択用光学素子AOM1〜AOM3のみを透過することができる。また、配置切換部材SWEの位置が第1の位置になると、第2の光源装置14Bから射出して反射ミラーM13に向かって+Y方向に進むビームLBbが反射ミラーM13、M14によって反射ミラーM7に導かれる。したがって、ビームLBbは、第2の光学素子モジュールOM2(選択用光学素子AOM4〜AOM6)のみを透過することができる。
したがって、第1の光学素子モジュールOM1は、直列に配置された3つの選択用光学素子AOM1〜AOM3によって、第1の走査モジュールを構成する3つの走査ユニットU1〜U3のうちの1つに、ビームLBaから偏向されたビームLB1〜LB3のいずれか1つを入射させることができる。また、第2の光学素子モジュールOM2は、直列に配置された3つの選択用光学素子AOM4〜AOM6によって、第2の走査モジュールを構成する3つの走査ユニットU4〜U6のうちの1つに、ビームLBbから偏向されたビームLB4〜LB6のいずれか1つを入射させることができる。したがって、並列に配置された第1の光学素子モジュールOM1(AOM1〜AOM3)と第2の光学素子モジュールOM2(AOM4〜AOM6)とによって、第1の走査モジュール(U1〜U3)と第2の走査モジュール(U4〜U6)との中から、ビームLBが入射する走査ユニットUnをそれぞれ1つ選択することができる。この場合は、第1の走査モジュールのいずれか1つの走査ユニットUnと、第2の走査モジュールのいずれか1つの走査ユニットUnとによってスポット光SPの描画ラインSLnに沿った走査による露光動作が並行して行われる。
ビーム切換制御部102は、スポット光SPの走査(偏向)が、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎に繰り返される第1の状態(第1の描画モード)の場合には、アクチュエータACを制御して、配置切換部材SWEを第1の位置に配置させる。また、ビーム切換制御部102は、ポリゴンミラーPMの反射面RPの1面置き毎に繰り返される第2の状態(第2の描画モード)の場合には、アクチュエータACを制御して、配置切換部材SWEを第2の位置に配置させる。
図19は、第2の実施の形態におけるビーム切換制御部102の構成を示す図である。図19においては、ビーム切換制御部102の制御対象となる選択用光学素子AOM1〜AOM6、および、光源装置14も図示している。本第2の実施の形態では、第1の光学素子モジュールOM1からビームLBaを入射する光源装置14を14Aで表し、第2の光学素子モジュールOM2のみに直接ビームLBbを入射する光源装置14を14Bで表している。
配置切換部材SWEが第2の位置にある場合は、図19に示すように、光源装置14AからのビームLBa(LB)が、AOM1→AOM2→AOM3→・・・・→AOM6、の順で選択用光学素子AOMnを通過(透過)可能であり、選択用光学素子AOM6を通過したビームLBaは吸収体TR1に入射する。また、配置切換部材SWEが第1の位置に移動すると、光源装置14AからビームLBaが、AOM1→AOM2→AOM3、の順で選択用光学素子AOMnを通過可能であり、選択用光学素子AOM3を通過したビームLBaは吸収体TR2に入射する。さらに、配置切換部材SWEが第1の位置に移動した状態では、光源装置14BからのビームLBbが、AOM4→AOM5→AOM6、の順で選択用光学素子AOMnを通過可能であり、選択用光学素子AOM6を通過したビームLBは吸収体TR1に入射する。なお、図19の配置切換部材SWEは、概念図であり、図17、図18に示す配置切換部材SWEの実際の構成とは異なっている。図19に示す例では、配置切換部材SWEが第2の位置にあり、つまり、第1の光学素子モジュールOM1と第2の光学素子モジュールOM2とが直列に配置された第2の配置状態にあり、選択用光学素子AOM5がオン状態の場合を示している。これにより、光源装置14AからのビームLBaから回折によって偏向されたビームLB5が走査ユニットU5に入射することになる。
ビーム切換制御部102は、選択用光学素子AOM1〜AOM6の各々を超音波(高周波)信号で駆動するドライバ回路DRVn(DRV1〜DRV6)と、各走査ユニットUn(U1〜U6)の原点センサ60からの原点信号SZn(SZ1〜SZ6)に応じて副原点信号ZPn(ZP1〜ZP6)を生成する副原点生成回路CAan(CAa1〜CAa6)とを有する。ドライバ回路DRVn(DRV1〜DRV6)には、副原点信号ZPn(ZP1〜ZP6)を受けてから一定時間だけ選択用光学素子AOM1〜AOM6をオン状態にするオン時間Tonの情報が露光制御部106から送られる。ドライバ回路DRV1は、副原点生成回路CAa1から副原点信号ZP1が送られてくると、選択用光学素子AOM1をオン時間Tonだけオン状態にする。同様に、ドライバ回路DRV2〜DRV6は、副原点生成回路CAa2〜CAa6から副原点信号ZP2〜ZP6が送られてくると、選択用光学素子AOM2〜AOM6をオン時間Tonだけオン状態にする。露光制御部106は、ポリゴンミラーPMの回転速度を変える場合は、それに応じてオン時間Tonの長さを変更する。なお、ドライバ回路DRVn(DRV1〜DRV6)は、先の第1の実施の形態における図13のビーム切換制御部102中にも同様に設けられている。
副原点生成回路CAan(CAa1〜CAa6)は、論理回路LCCと遅延回路82とを有する。副原点生成回路CAan(CAa1〜CAa6)の論理回路LCCには、各走査ユニットUn(U1〜U6)の原点センサ60からの原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が入力される。つまり、副原点生成回路CAa1の論理回路LCCには原点信号SZ1が入力され、同様に、副原点生成回路CAa2〜CAa6の論理回路LCCには原点信号SZ2〜SZ6が入力される。また、各副原点生成回路CAan(CAa1〜CAa6)の論理回路LCCには、ステータス信号STSが入力される。このステータス信号(論理値)STSは、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎に繰り返される第1の状態の場合は「1」に設定され、ポリゴンミラーPMの反射面RPの1面置き毎に繰り返される第2の状態の場合は「0」に設定されている。このステータス信号STSは、露光制御部106から送られる。
各論理回路LCCは、入力された原点信号SZn(SZ1〜SZ6)に基づいて、原点信号SZn´(SZ1´〜SZ6´)を生成し、各遅延回路82に出力する。各遅延回路82は、入力された原点信号SZn´(SZ1´〜SZ6´)を時間Tpxだけ遅延させて、副原点信号ZPn(ZP1〜ZP6)を出力する。
図20は、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)とステータス信号STSを入力する論理回路LCCの構成を示す図である。論理回路LCCは、2入力のORゲートLC1、2入力のANDゲートLC2、および、ワンショットパルス発生器LC3で構成される。ステータス信号STSは、ORゲートLC1の一方の入力信号として印加される。ORゲートLC1の出力信号(論理値)は、ANDゲートLC2の一方の入力信号として印加され、原点信号SZnは、ANDゲートLC2の他方の入力信号として印加される。ANDゲートLC2の出力信号(論理値)は、原点信号SZn´として遅延回路82に入力される。ワンショットパルス発生器LC3は、通常は論理値「1」の信号SDoを出力するが、原点信号SZn´(SZ1´〜SZ6´)が発生すると、一定時間Tdpだけ論理値「0」の信号SDoを出力する。つまり、ワンショットパルス発生器LC3は、原点信号SZn´(SZ1´〜SZ6´)が発生すると、一定時間Tdpだけ信号SDoの論理値を反転させる。時間Tdpは、2×Tpx>Tdp>Tpx、の関係に設定され、好ましくは、Tdp≒1.5×Tpx、に設定される。
図21は、図20の論理回路LCCの動作を説明するタイミングチャートを示す図である。図21の左半分は、各走査ユニットUn(U1〜U6)によるスポット光SPの走査が面飛ばしをせずに連続した反射面RP毎に行われる第1の状態の場合を示し、右半分は、各走査ユニットUn(U1〜U6)によるスポット光SPの走査が反射面RPを1面飛ばして行われる第2の状態の場合を示している。なお、図21においては、説明をわかり易くするため、ポリゴンミラーPMの隣り合う反射面RP(例えば、反射面RPaと反射面RPb)同士の各なす角ηjに誤差が無く、原点信号SZnが時間Tpx間隔で正確に発生しているものとする。
スポット光SPの走査が面飛ばしをせずに反射面RP毎に行われる第1の状態のときは、ステータス信号STSは「1」なので、ORゲートLC1の出力信号は、信号SDoの状態にかかわらず、常に「1」となっている。したがって、ANDゲートLC2から出力される出力信号(原点信号SZn´)は、原点信号SZnと同じタイミングで出力される。つまり、第1の状態のときは、原点信号SZnと原点信号SZn´とは同じと見做すことができる。第1の状態のときは、ワンショットパルス発生器LC3に印加される原点信号SZn´の時間間隔Tpxは時間Tpdより小さい。そのため、ワンショットパルス発生器LC3からの信号SDoは「0」のままとなる。なお、ポリゴンミラーPMの反射面RP同士の各なす角ηjに誤差がある場合であっても、原点信号SZn´の時間間隔は時間Tpdより小さいことに変わりはない。
スポット光SPの走査が反射面RPの1面飛ばしで行われる第2の状態になると、ステータス信号STSが「0」に切り換えられる。そのため、ORゲートLC1の出力信号は、信号SDoが「1」のときだけ、「1」となる。信号SDoが「1」の状態(この場合は、ORゲートLC1の出力信号も「1」の状態)で、原点信号SZn(便宜上、この原点信号SZnを1番目の原点信号SZnと呼ぶ)が印加されると、それに応答してANDゲートLC2も原点信号SZn´を出力する。しかしながら、原点信号SZn´が発生すると、ワンショットパルス発生器LC3からの信号SDoは、時間Tpdだけ「0」に変化する。そのため、時間Tpdの間は、ORゲートLC1の2入力はいずれも「0」の信号となるため、ORゲートLC1の出力信号は「0」のままとなる。これにより、時間Tpdの間は、ANDゲートLC2の出力信号も「0」のままとなる。したがって、時間Tpdが経過する前にANDゲートLC2に2番目の原点信号SZnが印加されても、ANDゲートLC2は、原点信号SZn´を出力しない。
そして、時間Tpdが経過すると、ワンショットパルス発生器LC3からの信号SDoが「1」に反転するので、先の1番目の原点信号SZnの場合と同様に、時間Tpd経過後に印加される3番目の原点信号SZnに応じた原点信号SZn´がANDゲートLC2から出力される。このような動作の繰り返しにより、論理回路LCCは、時間Tpx毎に繰り返し発生する原点信号SZnを、2×時間Tpx毎に繰り返し発生する原点信号SZn´に変換している。別の見方をすれば、論理回路LCCは、時間Tpx毎に繰り返し発生する原点信号SZnのパルスを1つ置きに間引いた原点信号SZn´を生成している、つまり、原点信号SZnの発生タイミングの周波数を1/2に分周している。なお、副原点生成回路CAanの論理回路LCCを、上記第1の実施の形態で説明した副原点生成回路CAnの分周器80(図11)に置き換えてもよい。分周器80に置き換える場合は、分周器80は、第2の状態のときは原点信号SZnを1/2に分周し、また、第1の状態のときは原点信号SZnを分周しないようにすればよい。また、上記第1の実施の形態の副原点生成回路CAnを、本第2の実施の形態の副原点生成回路CAanに置き換えてもよい。なお、第2の状態の場合は、副原点生成回路CAa1の論理回路LCCから出力される原点信号SZ1´と、副原点生成回路CAa4の論理回路LCCから出力される原点信号SZ4´とは半周期位相がずれている。同様に、副原点生成回路CAa2、CAa3の論理回路LCCから出力される原点信号SZ2´、SZ3´と、副原点生成回路CAa5、CAa6の論理回路LCCから出力される原点信号SZ5´、SZ6´とは半周期位相がずれている。
このように、ビーム切換制御部102の各副原点生成回路CAa1〜CAa6の論理回路LCCに入力するステータス信号STSの値を反転させるだけで、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎にスポット光SPの走査による描画露光を繰り返す第1の状態にするか、ポリゴンミラーPMの反射面RPの1面置き毎にスポット光SPの走査による描画露光を繰り返す第2の状態にするかを任意に切り換えることができる。
なお、本第2の実施の形態においても、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転制御は、上記第1の実施の形態と同様である。つまり、各走査ユニットUn(U1〜U6)の原点センサ60から出力される原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が、図14に示すような関係を有するように、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転が制御されている。したがって、スポット光SPの走査が面飛ばしをせずに反射面RP毎に行われる第1の状態のときは、走査ユニットU1〜U3は、U1→U2→U3、の順番でスポット光SPの走査を繰り返し行うことができ、走査ユニットU4〜U6は、U4→U5→U6、の順番でスポット光SPの走査を繰り返し行うことができる。
このワンショットパルス発生器LC3に設定される時間Tpdは、露光制御部106からのポリゴンミラーPMの回転速度の情報に応じて変更できることが好ましい。また、1面飛ばしに限らず、2面飛ばしにしてスポット光SPを走査する場合でも、図20のような構成であれば、時間Tpdを、(n+1)×Tpx>Tdp>n×Tpx、の関係に設定するだけで対応することができる。なお、nは、飛ばす反射面RPの数を表している。例えば、nが2の場合は、スポット光SPの走査が反射面RPの2面置きに行われることを意味し、nが3の場合は、スポット光SPの走査が反射面RPの3面置きに行われることを意味する。
次に、スポット光SPの走査が面飛ばしをせずに反射面RP毎に行われる第1の状態のときに、描画データ出力制御部104による、光源装置14A、14Bの駆動回路36aへの描画ビット列データSdwの出力制御について簡単に説明する。第1の状態のときは、第1の走査モジュール(走査ユニットU1〜U3)と、第2の走査モジュール(走査ユニットU4〜U6)とでスポット光SPの走査が並行して行われる。そのため、描画データ出力制御部104は、第1の走査モジュールに入射するビームLBaを射出する光源装置14Aの駆動回路36aには、走査ユニットU1〜U3の各々に対応したシリアルデータDL1〜DL3を時系列的に合成した描画ビット列データSdwを出力し、第2の走査モジュールに入射するビームLBbを射出する光源装置14Bの駆動回路36aには、走査ユニットU4〜U6の各々に対応したシリアルデータDL4〜DL6を時系列的に合成した描画ビット列データSdwを出力する。
また、図15に示した描画データ出力制御部104は、ステータス信号STSが「1」、「0」のいずれの場合も、おおよそそのまま使うことができる。スポット光SPの走査が面飛ばしをせずに反射面RP毎に行われる第1の状態のときは、副原点信号ZP1の発生後、時間Ts後に副原点信号ZP2が発生し、さらに時間Ts後に副原点信号ZP3が発生する。したがって、カウンタ部CN1〜CN3によって、DL1→DL2→DL3の順でシリアルデータDL1〜DL3が繰り返し出力される。副原点信号ZP1〜ZP3が印加されてから一定時間(オン時間Ton)中に開かれるゲート部GT1〜GT3を通って、この順次出力されるシリアルデータDL1〜DL3は、描画ビット列データSdwとして第1の光源装置14Aの駆動回路36aに入力される。同様に、スポット光SPの走査が面飛ばしをせずに反射面RP毎に行われる第1の状態のときは、副原点信号ZP4の発生後、時間Ts後に副原点信号ZP5が発生し、さらに時間Ts後に副原点信号ZP6が発生する。したがって、カウンタ部CN4〜CN6によって、DL4→DL5→DL6の順でシリアルデータDL4〜DL6が繰り返し出力される。副原点信号ZP4〜ZP6が印加されてから一定時間(オン時間Ton)中に開かれるゲート部GT4〜GT6を通って、この順次出力されるシリアルデータDL4〜DL6は、描画ビット列データSdwとして第2の光源装置14Bの駆動回路36aに入力される。
次に、第1の状態のときのシリアルデータDL1〜DL6のシフトについて簡単に説明する。シリアルデータDL1の列方向のシフトは、シリアルデータDL1を出し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU2に対応した副原点信号ZP2が発生したタイミングで行われる。シリアルデータDL2の列方向のシフトは、シリアルデータDL2を出し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU3に対応した副原点信号ZP3が発生したタイミングで行われる。シリアルデータDL3の列方向のシフトは、シリアルデータDL3を出し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU1に対応した副原点信号ZP1が発生したタイミングで行われる。また、シリアルデータDL4の列方向のシフトは、シリアルデータDL4を出し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU5に対応した副原点信号ZP5が発生したタイミングで行われる。シリアルデータDL5の列方向のシフトは、シリアルデータDL5を出し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU6に対応した副原点信号ZP6が発生したタイミングで行われる。シリアルデータDL6の列方向のシフトは、シリアルデータDL6を出し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU4に対応した副原点信号ZP4が発生したタイミングで行われる。なお、第2の状態のときの、描画ビット列データSdwの出力制御は、第1の実施の形態と同様なので説明を省略する。
また、スポット光SPの走査が反射面RPの1面飛ばしで行われる第2の状態の場合は、面飛ばしをせずに反射面RP毎に行われる第1の状態に比べ、各走査ユニットUn(U1〜U6)のスポット光SPの走査開始間隔が長い。例えば、反射面RPの1面飛ばしでスポット光SPの走査を行う場合は、面飛ばしを行わない場合に比べ、各走査ユニットUn(U1〜U6)のスポット光SPの走査開始間隔が2倍になる。また、反射面RPを2面飛ばしで行う場合は、面飛ばしを行わない場合に比べ、スポット光SPの走査開始間隔が3倍になる。したがって、第1の状態と第2の状態とで、ポリゴンミラーPMの回転速度および基板FSの搬送速度を同じにしてしまうと、第1の状態と第2の状態とでは、露光結果が異なるものとなってしまう。
そこで、第1の状態と第2の状態とでポリゴンミラーPMの回転速度および基板FSの搬送速度の少なくとも一方を変更(補正)して、第1の状態と第2の状態とにおける露光結果を同じ状態にする制御モードを、露光制御部106に持たせてもよい。例えば、第1の状態のときのスポット光SPの走査開始間隔と第2の状態のときのスポット光SPの走査開始間隔とが1:2の場合は、露光制御部106は、第1の状態のときのポリゴンミラーPMの回転速度と第2の状態のときのポリゴンミラーPMの回転速度の比が1:2となるように、回転制御部100を制御する。具体的には、第1の状態のときのポリゴンミラーPMの回転速度を2万rpmにし、第2の状態のときのポリゴンミラーPMの回転速度を4万rpmにする。併せて、光源装置14(14A、14B)のビームLB(LBa、LBb)の発光周波数Fsを、例えば第1の状態のときに200MHzであれば、第2の状態のときは400MHzに設定する。これにより、第1の状態のときの副原点信号ZPnの発生タイミングの間隔と、第2の状態のときの副原点信号ZPnの発生タイミングの間隔とを略同一にすることができる。
また、例えば、第1の状態のときのスポット光SPの走査開始間隔と第2の状態のときのスポット光SPの走査開始間隔とが1:2の場合は、第1の状態のときの基板FSの搬送速度と第2の状態のときの基板FSの搬送速度との比が、2:1となるように駆動ローラR1〜R3、回転ドラムDRの回転速度を制御する制御モードを露光制御部106に持たせてもよい。以上のような、ポリゴンミラーPMの回転速度や発光周波数Fs(クロック信号LTCの周波数)を補正する制御モード(走査補正モード)、または基板FSの搬送速度を補正する制御モード(搬送補正モード)のいずれか一方によって、第1の状態のときの基板FS上における描画ラインSLn(SL1〜SL6)のX方向の間隔と、第2の状態のときの基板FS上における描画ラインSLn(SL1〜SL6)のX方向の間隔とを、同じ間隔(例えば、1.5μm)にすることができる。さらに、第1の状態と第2の状態とで、描画データ出力制御部104内のメモリ部BM1〜BM6の各々に記憶されるパターンデータ(ビットマップ)は、何ら補正する必要も無く、そのまま使うことができる。
また、上記の走査補正モードと搬送補正モードとの両方を使って、第1の状態で基板FS上に描画されるパターンと、第2の状態で基板FS上に描画されるパターンとを同等にするように補正してもよい。例えば、第1の状態(ポリゴンミラーPMの各反射面RP毎のビーム走査の場合)において、ポリゴンミラーPMの回転速度が2万rpm、光源装置14(14A、14B)のビームLBの発光周波数Fsが200MHz、基板FSの搬送速度が5mm/秒であった場合、第2の状態(ポリゴンミラーPMの1反射面RP飛ばしによるビーム走査の場合)では、基板FSの搬送速度を半分ではなく−25%減速させた3.75mm/秒に設定し、ポリゴンミラーPMの回転速度は1.5倍の3万rpm、ビームLBの発光周波数Fsも1.5倍の300MHzに設定するようにしてもよい。このように、走査補正モードと搬送補正モードとの両方を組み合わせると、第2の状態の場合に、基板FSの搬送速度を半分まで低下させる必要がないので、生産性の極端な低下が抑えられる。
なお、第2の実施の形態においても、上記第1の実施の形態で説明したように、ビームLBa、LBbを振り分ける走査ユニットUnの数は、任意に変更してもよい。また、ポリゴンミラーPMの走査効率も任意に変更してもよい。また、第2の実施の形態においては、ポリゴンミラーPMの走査効率が1/3、走査ユニットUnの数が6つとしたので、6つの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)を2つの光学素子モジュールOM1、OM2に分け、それに対応して6つの走査ユニットUn(U1〜U6)を2つの走査モジュールに分けた。しかしながら、ポリゴンミラーPMの走査効率が1/M、走査ユニットUnおよび選択用光学素子AOMnの数がQの場合は、Q個の選択用光学素子AOMnをQ/M個の光学素子モジュールOM1、OM2、・・・に分け、Q個の走査ユニットUnをQ/M個の走査モジュールに分ければよい。この場合、各光学素子モジュールOM1、OM2、・・・の各々に含まれる選択用光学素子AOMnの数は等しく、また、Q/M個の走査モジュールの各々に含まれる走査ユニットUnの数も等しくするのが好ましい。なお、このQ/Mは、正数であることが好ましい。つまり、Qは、Mの倍数であることが好ましい。
例えば、ポリゴンミラーPMの走査効率が1/2、走査ユニットUnおよび選択用光学素子AOMnの数が6つの場合は、6つの選択用光学素子AOMnを3つの光学素子モジュールOM1、OM2、OM3に等しく分け、6つの走査ユニットUnを3つの走査モジュールに等しく分ければよい。そして、第1の状態の場合は、3つの光学素子モジュールOM1、OM2、OM3を並列に配置して、3つの光学素子モジュールOM1、OM2、OM3の各々に3つの光源装置14からのビームLB(この場合、LBa、LBb、LBc)が並行して入射するようにし、第2の状態の場合は、3つの光学素子モジュールOM1、OM2、OM3を直列に配置して、1つの光源装置14からのビームLBが3つの光学素子モジュールOM1、OM2、OM3をシリアルに通るように入射させればよい。
以上のように本第2の実施の形態では、走査ユニットUnのポリゴンミラーPMによるビームLBn(スポット光SP)の偏向(走査)が、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎に繰り返される第1の状態(第1の描画モード)と、ポリゴンミラーPMの少なくとも1つ置きの反射面RP毎に繰り返される第2の状態(第2の描画モード)とのいずれか一方に切り換わるように、ビーム切換制御部102がビーム切換部材16Aを制御して、複数の走査ユニットUnの各々によるスポット光SPの1次元走査を順番に行わせた。これにより、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるとともに、面飛ばしでスポット光SPの走査を行うか、面飛ばしをしないでスポット光SPの走査を行うかを切り換えることができる。
第1の状態の場合は、ポリゴンミラーPMの走査効率(α/β)が1/2未満となる場合に、走査効率の逆数に応じた数の走査ユニットUnを1つの走査モジュールとしてグループ化し、そのグループ化された走査モジュールの複数を用いて、各走査モジュール毎に、その内の1つの走査ユニットUnがスポット光SPの1次元走査を行う。これにより、複数の描画ラインSLnのうち、走査モジュールの数と同じ数の描画ラインSLnを同時にスポット光SPで走査させることができる。また、第2の状態の場合は、ポリゴンミラーPMの少なくとも1つ置きの反射面RP毎にビーム走査を行うように制御されるので、ポリゴンミラーPMの走査効率(α/β)の逆数に応じた数よりも多い複数の走査ユニットUnがあっても、ビームLBを有効に活用しつつ、その複数の走査ユニットUnの全てが、描画ラインSLnに沿ってスポット光SPを走査させることができる。
上記の第1の状態の場合、グループ化された2つの走査モジュールには、光源装置14A、14Bの各々からのビームLBa、LBbが並行して入射されるので、ビーム切換部材16A内の選択用光学素子AOM1〜AOM6の各々は、ビーム切換制御部102によって、グループ化された走査モジュール単位で、ビームLB1〜LB6が対応する走査ユニットU1〜U6に時分割で入射するように、オン/オフ状態をスイッチングされる。
ビーム切換部材16Aに設けられた配置切換部材SWEは、第1の光源装置14AからのビームLBaを、6つの走査ユニットU1〜U6のうちの3つの走査ユニットU1〜U3の各々にビームLB1〜LB3として振り分け、且つ、第2の光源装置14BからのビームLBbを、残りの3つの走査ユニットU4〜U6の各々にビームLB4〜LB6として振り分けるように、ビームLBaの光路に沿って3つの選択用光学素子AOM1〜AOM3が直列に連なり、且つ、ビームLBbの光路に沿って選択用光学素子AOM4〜AOM6が直列に連なる第1の配置状態と、1つの光源装置14AからのビームLBaを、6つの走査ユニットU1〜U6の各々にビームLB1〜LB6として振り分けるように、ビームLBaの光路に沿って6つの選択用光学素子AOM1〜AOM6が直列に連なる第2の配置状態とを切り替えるものである。
これにより、第1の状態の場合は、配置切換部材SWEによって第1の配置状態に設定することで、各走査ユニットU1〜U6の各々が、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎にスポット光SPによる走査を繰り返すことができるとともに、6つの走査ユニットU1〜U6のうちの2つの走査ユニットがほぼ同時にスポット光SPによる走査を行うことができる。また、第2の状態の場合は、配置切換部材SWEによって第2の配置状態に設定することで、ポリゴンミラーPMの少なくとも1つ置きの反射面RP毎のビーム走査ではあるが、6つの走査ユニットU1〜U6の全てでスポット光SPによる走査を繰り返すことができる。
したがって、本第2の実施態様によれば、描画装置の初期設置時のセットアップでは、1つの光源装置14Aを使って、第2の配置状態になるように配置切換部材SWEを設定し、その後に基板FSの搬送速度を上げたい場合は、第2の光源装置14Bを増設して、第1の配置状態になるように配置切換部材SWEを設定すればよく、ハードウェア上では、光源装置の増設、配置切換部材SWEの切替え、と言った簡単な操作で描画装置をグレードアップできる。
なお、上記各実施の形態では、ポリゴンミラーPMのビームLBnの偏向を行う反射面RPに対して、ポリゴンミラーPMの回転方向の1つ手前の反射面RPを用いて、原点信号SZnの検出を行ったが、ビームLBnの偏向を行う反射面RP自体を用いて原点信号SZnの検出を行うようにしてもよい。この場合は、原点信号SZn、または原点信号SZnから求められる原点信号SZn´を時間Tpxだけ遅延させる必要はないので、原点信号SZn、または原点信号SZn´を副原点信号ZPnとすればよい。
また、上記各実施の形態では、光源装置14(14A、14B)の描画用光変調器としての電気光学素子36を、描画ビット列データSdwを用いてスイッチングするようにしたが、描画用光変調器として描画用光学素子AOMを用いてもよい。この描画用光学素子AOMは、音響光学変調素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)である。つまり、上記第1の実施の形態においては、光源装置14と初段の選択用光学素子AOM1との間に描画用光学素子AOMを配置し、描画用光学素子AOMを透過した光源装置14からのビームLBが選択用光学素子AOM1に入射するようにしてもよい。この場合は、描画用光学素子AOMは、描画ビット列データSdwに応じてスイッチングされる。この場合であっても、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記第2の実施の形態においては、第1の光源装置14Aと第1の光学素子モジュールOM1の初段の選択用光学素子AOM1との間と、第2の光源装置14Bと第2の光学素子モジュールOM2の初段の選択用光学素子AOM4との間に、それぞれ描画用光学素子AOM(AOMa、AOMb)が配置される。つまり、描画用光学素子AOMaを透過した光源装置14AからのビームLBaが選択用光学素子AOM1に入射し、描画用光学素子AOMbを透過した光源装置14BからのビームLBbが選択用光学素子AOM4に入射する。この場合は、第1の状態の場合は、描画用光学素子AOMaは、シリアルデータDL1〜DL3で構成される描画ビット列データSdwに応じてスイッチングされ、描画用光学素子AOMbは、シリアルデータDL4〜DL6で構成される描画ビット列データSdwに応じてスイッチングされる。また、第2の状態の場合は、描画用光学素子AOMaのみが、シリアルデータDL1〜DL6で構成される描画ビット列データSdwに応じてスイッチングされる。
また、この描画用光学素子AOMを走査ユニットUn毎に設けてもよい。この場合は、描画用光学素子AOMは、各走査ユニットUnの反射ミラーM20(図7参照)の手前に設けてもよい。この各走査ユニットUn(U1〜U6)の描画用光学素子AOMは、各シリアルデータDLn(DL1〜DL6)に応じてスイッチングされる。例えば、走査ユニットU3の描画用光学素子AOMは、シリアルデータDL3に応じてスイッチングされる。
[第3の実施の形態]
図22は、第3の実施の形態によるビーム切換部材(ビーム配送ユニット)16Bの構成を示し、ここでは、1つの光源装置14から射出してビーム切換部材16Bに入射するビームLBwが円偏光の平行光束になっているものとする。ビーム切換部材16Bには、6つの選択用光学素子AOM1〜AOM6、2つの吸収体TR1、TR2、6つのレンズ系CG1〜CG6、ミラーM30、M31、M32、集光レンズCG0、そして、偏光ビームスプリッタBS1と2つの描画用光学素子(音響光学変調素子)AOMa、AOMbが設けられる。なお、上記第1の実施の形態または上記第2の実施の形態と同様の構成については、同一の参照符号を付している。
ビーム切換部材16Bに入射するビームLBwは、集光レンズCG0を通って偏光ビームスプリッタBS1によって、直線P偏光のビームLBpと直線S偏光のビームLBsに分離される。偏光ビームスプリッタBS1で反射されたS偏光のビームLBsは、描画用光学素子AOMaに入射する。描画用光学素子AOMaに入射したビームLBsは、集光レンズCG0の集光作用によって、描画用光学素子AOMa内でビームウエストとなるように収斂される。描画用光学素子AOMaには、ドライバ回路DRVnを介して、図16で示したような描画ビット列データSdw(DLn)が印加される。その描画ビット列データSdwは、ここでは奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の各々に対応したシリアルデータDL1、DL3、DL5を合成したものとなっている。したがって、描画用光学素子AOMaは、描画ビット列データSdw(DLn)が「1」のときに、オン状態となって、入射したビームLBsの1次回折光を、偏向された描画ビーム(強度変調されたビーム)としてミラーM31に向けて射出する。ミラーM31で反射した描画ビームは、レンズ系CG1を通って選択用光学素子AOM1に入射する。また、描画ビット列データSdw(DLn)が「0」のときに描画用光学素子AOMaから射出される0次光(LBs)は、ミラーM31で反射されるが、後続のレンズ系CG1に入射しないような角度で進む。なお、レンズ系CG1は、描画用光学素子AOMaから発散して射出する描画ビームを選択用光学素子AOM1の回折部分で集光してビームウエストにする。
選択用光学素子AOM1を透過した描画ビームは、レンズ系CG1と同様のレンズ系CG3を介して選択用光学素子AOM3に入射し、選択用光学素子AOM3を透過した描画ビームは、レンズ系CG1と同様のレンズ系CG5を介して選択用光学素子AOM5に入射する。図22では、3つの選択用光学素子AOM1、AOM3、AOM5がビーム光路に沿って直列に配置され、そのうちの選択用光学素子AOM3のみがオン状態となって、描画用光学素子AOMaで強度変調された描画ビームが、対応する走査ユニットU3にビームLB3として入射される。なお、レンズ系CG1、CG3、CG5は、図5や図17中の1枚のコリメートレンズCLと1枚の集光レンズCDとを組み合わせたものに相当する。
一方、偏光ビームスプリッタBS1を透過したP偏光のビームLBpは、ミラーM30で反射されて描画用光学素子AOMbに入射する。描画用光学素子AOMbに入射したビームLBpは、集光レンズCG0の集光作用によって、描画用光学素子AOMb内でビームウエストとなるように収斂される。描画用光学素子AOMbには、ドライバ回路DRVnを介して、図16で示したような描画ビット列データSdw(DLn)が印加される。描画ビット列データSdwは、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の各々に対応したシリアルデータDL2、DL4、DL6を合成したものとなっている。したがって、描画用光学素子AOMbは、描画ビット列データSdw(DLn)が「1」のときに、オン状態となって、入射したビームLBpの1次回折光を、偏向された描画ビーム(強度変調されたビーム)としてミラーM32に向けて射出する。ミラーM32で反射した描画ビームは、レンズ系CG1と同様のレンズ系CG2を通って選択用光学素子AOM2に入射する。また、描画ビット列データSdw(DLn)が「0」のときに描画用光学素子AOMbから射出される0次光(LBp)は、ミラーM32で反射されるが、後続のレンズ系CG2に入射しないような角度で進む。なお、レンズ系CG2は、描画用光学素子AOMbから発散して射出する描画ビームを選択用光学素子AOM2の回折部分で集光してビームウエストにする。
選択用光学素子AOM2を透過した描画ビームは、レンズ系CG1と同様のレンズ系CG4を介して選択用光学素子AOM4に入射し、選択用光学素子AOM4を透過した描画ビームは、レンズ系CG1と同様のレンズ系CG6を介して選択用光学素子AOM6に入射する。図22では、3つの選択用光学素子AOM2、AOM4、AOM6がビーム光路に沿って直列に配置され、そのうちの選択用光学素子AOM2のみがオン状態となって、描画用光学素子AOMbで強度変調された描画ビームが、対応する走査ユニットU2にビームLB2として入射される。なお、レンズ系CG2、CG4、CG6は、図5や図17中の1枚のコリメートレンズCLと1枚の集光レンズCDとを組み合わせたものに相当する。
以上の図22のようなビーム切換部材(ビーム配送ユニット)16Bを用いると、1つの光源装置14からのビームLBwを偏光ビームスプリッタBS1で2つに分割し、その一方のビームLBsから描画用光学素子AOMaによって生成される描画ビーム(LB1、LB3、LB5)を、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5のいずれか1つに順番に入射させ、偏光ビームスプリッタBS1で分割された他方のビームLBpから描画用光学素子AOMbによって生成される描画ビーム(LB2、LB4、LB6)を、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6のいずれか1つに順番に入射させることができる。
この第3の実施の形態では、光源装置14からのビームLBwを偏光ビームスプリッタBS1で2つに分割した後に、描画用光学素子AOMa、AOMbでパターンデータに基づいたビームLBの強度変調が行われるため、6つの走査ユニットU1〜U6の各々によるスポット光SPの強度は、偏光ビームスプリッタBS1での減衰を−50%、描画用光学素子AOMa、AOMbと各選択用光学素子AOMnでの減衰を−20%、各走査ユニットU1〜U6内での減衰を−30%とすると、元のビームLBwの強度(100%)の約22.4%になる。しかしながら、6つの走査ユニットU1〜U6の各々のポリゴンミラーPMの走査効率が1/3以下であり、1つの光源装置14からのビームLBwを使う場合は、ポリゴンミラーPMの反射面RPを1面飛ばしでビーム走査することなく、6つの描画ラインSLnの各々でスポット光SPの走査によるパターン描画ができる。
〔変形例1〕
第3の実施の形態のように、奇数番の選択用光学素子AOM1、AOM3、AOM5に入射するビームLBsと、偶数番の選択用光学素子AOM2、AOM4、AOM6に入射するビームLBpとの偏光方向が直交している場合、奇数番の選択用光学素子AOMnと偶数番の選択用光学素子AOMnとは、ビーム入射軸の回りに相対的に90度回転して配置する必要がある。図23は、例えば、奇数番の選択用光学素子AOM1、AOM3、AOM5のうちの選択用光学素子AOM3を偶数番の選択用光学素子AOMnに対して90度回転させて配置する場合の構成を示す。選択用光学素子AOM3は、レンズ系CG3を通ったS偏光の描画ビームを入射するので、回折効率が高い方向はXY平面と平行なY方向になる。すなわち、選択用光学素子AOM3内に生成される回折格子の周期方向がY方向になるように、選択用光学素子AOM3を90度回転して配置する。
このような選択用光学素子AOM3の配置により、選択用光学素子AOM3がオン状態のときに偏向されて射出するビームLB3は、0次光の進行方向に対して、Y方向に傾いて進む。そのため、0次光の光路からビームLB3を分離して、ビームLB3が支持部材IUBの開口部TH3をZ方向に通過させるように、選択用光学素子AOM3からのビームLB3をXY平面内で反射させるミラーIM3aと、ミラーIM3aで反射されたビームLB3を開口部TH3に通すように−Z方向に反射するミラーIM3bが設けられる。他の奇数番の選択用光学素子AOM1、AOM5の各々についても、同様に、ミラーIM1aとIM1bの組、ミラーIM5aとIM5bの組が設けられる。さらに、図22の構成では、描画用光学素子AOMa、AOMbに入射するビームLBs、LBpの偏光方向が直交していることから、描画用光学素子AOMa、AOMbはビーム入射軸の回りに相対的に90度回転させた関係で配置することになる。
ただし、図22中の偏光ビームスプリッタBS1を振幅分割のビームスプリッタやハーフミラーにする場合は、ビームLBwの偏光方向を一方向のみ(例えばP偏光)にすれば、描画用光学素子AOMa、AOMbの一方、奇数番の選択用光学素子AOMnと偶数番の選択用光学素子AOMnの一方を、図23のように相対的に90度回転させて配置する必要はない。
〔変形例2〕
第3の実施の形態では、6つの選択用光学素子AOM1〜AOM6の各々に対応した走査ユニットU1〜U6の全てが、ポリゴンミラーPMの全ての反射面RP毎に描画ラインSL1〜SL6の各々に沿ったスポット光SPの走査を行える構成となっている。そこで、奇数番の選択用光学素子AOM1、AOM3、AOM5を順番に通ってきた描画ビーム(描画用光学素子AOMaで変調されたビーム)を入射するように、図22の選択用光学素子AOM5と吸収体TR2の間に、さらに3つの選択用光学素子AOM7、AOM9、AOM11を直列に設け、偶数番の選択用光学素子AOM2、AOM4、AOM6を順番に通ってきた描画ビーム(描画用光学素子AOMbで変調されたビーム)を入射するように、選択用光学素子AOM6と吸収体TR1の間に、さらに3つの選択用光学素子AOM8、AOM10、AOM12を直列に設ける。そして、選択用光学素子AOM7〜AOM12の各々で偏向(スイッチング)されたビームLB7〜LB12が導入される6つの走査ユニットU7〜U12を増設し、合計12個の走査ユニットU1〜U12を基板FSの幅方向(Y方向)に配置する。これによって、12本の描画ラインSL1〜SL12の継ぎ描画露光が可能となり、Y方向の最大露光幅を2倍に拡大できる。
この場合、走査ユニットU1〜U12の各々のポリゴンミラーPMの走査効率が1/3以下である場合、第1の描画モジュールとしてグループ化される奇数番の走査ユニットU1、U3、U5、U7、U9、U11、および第2の描画モジュールとしてグループ化される偶数番の走査ユニットU2、U4、U6、U8、U10、U12は、いずれも、ポリゴンミラーPMの反射面RPの1面置きにビームLBnを走査する。このようにすると、基板FSのY方向の幅が大きくなった場合でも、走査ユニットU7〜U12、選択用光学素子AOM7〜AOM12等を追加するだけで、大きな露光領域W(図3)に対するパターン描画が可能となる。このように、6つの走査ユニットU7〜U12と選択用光学素子AOM7〜AOM12を増設して、12個の走査ユニットU1〜U12にする構成は、先の第2の実施の形態(図17〜図19)で説明した2つの光源装置14A、14Bを用いる場合にも同様に適用できる。
〔変形例3〕
図24は、変形例3による基板FSの搬送形態と走査ユニットUn(描画ラインSLn)との配置関係を示し、ここでは、変形例2のように12個の走査ユニットU1〜U12を設け、各走査ユニットUnの描画ラインSL1〜SL12をY方向に継ぎ描画露光できるように、回転ドラムDR上に配置する。また、図1に示した基板搬送機構12における回転ドラムDRや各種のローラR1〜R3、RT1、RT2等の回転軸方向(Y方向)の長さをHd、12個の走査ユニットUnによる継ぎ描画によって露光可能なY方向の最大描画幅をSh(Sh<Hd)、露光可能な基板FS0の最大支持幅をTdとする。変形例3における12の描画ラインSL1〜SL12の各々に対応する12の走査ユニットU1〜U12の各々は、図22(第3の実施の形態)のように、1つの光源装置14からのビームLBwをビームスプリッタやハーフミラーで2分割する方式のビーム切換部材(ビーム配送ユニット)16B、或いは、図19(第2の実施の形態)のように、2つの光源装置14A、14Bの各々からのビームLBa、LBbを用いる方式のビーム切換部材(ビーム配送ユニット)16Aから、対応する12のビームLB1〜LB12を時分割で入射するように構成される。したがって、例えば各描画ラインSL1〜SL12のY方向の長さが50mmの場合、最大描画幅Shは600mmとなり、一例として最大支持幅Tdとなる基板FS0の幅を650mm、回転ドラムDRの長さHdを700mm程度にすることができる。
図24のような描画装置によって、最大支持幅Tdと同じ幅の基板FS0の露光を行う場合、先の図2、図3で示した4つのアライメント顕微鏡AM1〜AM4(観察領域Vw1〜Vw4)の他に、3つのアライメント顕微鏡AM5〜AM7(観察領域Vw5〜Vw7)をY方向に増設する。その場合、基板FS0の幅方向の両側に位置するアライメント顕微鏡AM1(観察領域Vw1)とアライメント顕微鏡AM7(観察領域Vw7)は、基板FS0の両側に、X方向に一定ピッチで形成されるアライメントマークを検出する。また、アライメント顕微鏡AM4(観察領域Vw4)は、最大支持幅Tdのほぼ中央に位置するように配置される。
また、先の各実施の形態で説明したような6つの走査ユニットU1〜U6の各々による描画ラインSL1〜SL6によって露光領域Wにパターン描画が可能な基板FS1の場合、その幅Td1は、回転ドラムDRの最大支持幅Tdの半分程度であるので、基板FS1は、例えば、回転ドラムDRの外周面の−Y方向側に寄せて搬送される。その際、基板FS1上のアライメントマークMK1〜MK4(図3)の各々は、4つのアライメント顕微鏡AM1〜AM4の各観察領域Vw1〜Vw4によって検出可能である。そして、基板FS1の露光の場合は、6つの走査ユニットU1〜U6だけを使用すればよいので、走査ユニットU1〜U6の各々は、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RPごとのビーム走査、またはポリゴンミラーPMの1反射面RP置きのビーム走査のどちらのモードでも、各描画ラインSL1〜SL6に沿ったスポット走査が可能である。
例えば、第2の実施の形態のように、2つの光源装置14A、14Bの各々からのビームLBa、LBbをともに使うように設定されている場合、光源装置14AからのビームLBaは、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5、U7、U9、U11の各々に対応した選択用光学素子AOM1、AOM3、AOM5、AOM7、AOM9、AOM11を直列に透過するように、ビーム切換部材16A内でグループ化され、光源装置14AからのビームLBaは、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6、U8、U10、U12の各々に対応した選択用光学素子AOM2、AOM4、AOM6、AOM8、AOM10、AOM12を直列に透過するように、ビーム切換部材16A内でグループ化される。そして、基板FS1の露光の際には、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎に出力される3つの原点信号SZ1、SZ3、SZ5のみに基づいて、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の順番で、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎のビーム走査が繰り返されるように制御され、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎に出力される3つの原点信号SZ2、SZ4、SZ6のみに基づいて、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の順番で、ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎のビーム走査が繰り返されるように制御される。
さらに、最大支持幅Tdよりは小さく、基板FS1の幅Td1よりも大きい幅Td2の基板FS2に対して露光を行う場合は、基板FS2を回転ドラムDRの最大支持幅Tdの中央部分に合せるようにして搬送する。その際、基板FS2上の露光領域Wは、Y方向に連接した8個の走査ユニットU3〜U10の各々による描画ラインSL3〜SL10によって描画されるものとする。このような場合、光源装置14AからのビームLBa(強度変調された描画ビーム)を入射する奇数番の4つの選択用光学素子AOM3、AOM5、AOM7、AOM9が、時分割でビームLB3、LB5、LB7、LB9のいずれか1つを順番に生成し、光源装置14BからのビームLBb(強度変調された描画ビーム)を入射する偶数番の4つの選択用光学素子AOM4、AOM6、AOM8、AOM10が、時分割でビームLB4、LB6、LB8、LB10のいずれか1つを順番に生成するように制御される。したがって、少なくとも8個の走査ユニットU3〜U10の各々は、ポリゴンミラーPMの1反射面RP置きのビーム走査のモードに設定される。
そして、基板FS2の露光の際には、奇数番の走査ユニットU3、U5、U7、U9の各々のポリゴンミラーPMの1反射面RP置きに出力される4つの副原点信号ZP3、ZP5、ZP7、ZP9のみに基づいて、奇数番の走査ユニットU3、U5、U7、U9の順番で、ポリゴンミラーPMの1反射面RP置き毎にビーム走査が繰り返されるように制御され、偶数番の走査ユニットU4、U6、U8、U10の各々のポリゴンミラーPMの1反射面RP置きに出力される4つの副原点信号ZP4、ZP6、ZP8、ZP10のみに基づいて、偶数番の走査ユニットU4、U6、U8、U10の順番で、ポリゴンミラーPMの1反射面RP置きのビーム走査が繰り返されるように制御される。なお、図24では、基板FS2上の幅方向の両側に形成されるアライメントマーク(図3中のマークMK1、MK4に相当)が、アライメント顕微鏡AM2、AM6の各観察領域Vw2、Vw6で検出されるような関係で配置されているが、露光領域WのY方向のサイズによっては、必ずしもそのような関係で配置できないこともある。その場合は、7つのアライメント顕微鏡AM1〜AM7のうちの幾つかをY方向に移動可能な構成を設け、観察領域Vw1〜Vw7のY方向の位置間隔を調整可能としておくとよい。
以上の変形例3によれば、露光すべき基板FSの幅や露光領域WのY方向の寸法に応じて、必要な走査ユニットUnのみを使った効率的な露光が可能となる。また、図24のように12個の走査ユニットU1〜U12の各々のポリゴンミラーPMの走査効率が1/3以下である場合は、例えば、各ポリゴンミラーPMの3反射面RP置きにビーム走査を行うようにすれば、1つの光源装置14からのビームであっても、最大描画幅Shに渡って良好にパターン描画が可能となる。
また、9個の走査ユニットU1〜U9で描画装置を構成する場合は、奇数番の5個の走査ユニットU1、U3、U5、U7、U9と、偶数番の4個の走査ユニットU2、U4、U6、U8とが使われる。そのため、9個の走査ユニットU1〜U9の全てによる描画ラインSL1〜SL9によって露光領域Wにパターン描画する際は、ポリゴンミラーPMの走査効率が1/3以下である場合、例えば、各ポリゴンミラーPMの1反射面RP置きにビーム走査を行うようにすればよい。ただし、この場合は、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5、U7、U9の各々の原点信号SZnから生成される副原点信号ZP1、ZP3、ZP5、ZP7、ZP9のみを、その順番で参照することを繰り返して、奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5、SL7、SL9の各々でのスポット走査を行い、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6、U8の各々の原点信号SZnから生成される副原点信号ZP2、ZP4、ZP6、ZP8のみを、その順番で参照することを繰り返して、偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6、SL8の各々でのスポット走査を行えばよい。
以上、変形例3では、描画ラインSLnに沿って光源装置14からのビームのスポット光SPを走査する複数の走査ユニットUnを、各描画ラインSLnによって描画されるパターンが基板FS上で描画ラインSLnの方向(主走査方向)に継がれるように配置し、複数の走査ユニットと基板FSとを主走査方向と交差する副走査方向に相対移動させる描画装置を用いたパターン描画方法であって、複数の走査ユニットUnのうちで、基板FSの主走査方向の幅、または基板FS上のパターン描画される露光領域の主走査方向の幅、或いはその露光領域の位置に対応した特定の走査ユニットを選定することと、光源装置14からのビームを配送するビーム配送ユニットを介して、特定の走査ユニットの各々で描画すべきパターンデータに基づいて強度変調された描画ビームを特定の走査ユニットの各々に択一的に順次供給することと、を含むパターン描画方法が提供される。これにより、変形例3では、基板FSの幅が変わったり、基板FS上の露光領域Wの幅や位置が変わったりしても、基板FSのY方向の搬送位置を適切に定めることで、高い継ぎ精度を維持した精密なパターン描画が可能となる。なお、その際、複数の走査ユニットの全てのポリゴンミラーPMの間で、回転速度や回転角度位相を同期させるのではなく、パターン描画に寄与する特定の走査ユニットのポリゴンミラーPMの間でだけ、回転速度や回転角度位相を同期させてもよい。
〔変形例4〕
さらに、9個の走査ユニットU1〜U9を使う描画装置の別の構成として、奇数番と偶数番とでグループ分けするのではなく、単純に、走査ユニットUnが並んだ順に2つのグループに分けることもできる。すなわち、6個の走査ユニットU1〜U6による第1の走査モジュールと、3個の走査ユニットU7〜U9による第2の走査モジュールとに分け、第1の走査モジュールに対しては、第1の光源装置14AからのビームLBaを供給し、第2の走査モジュールに対しては、第2の光源装置14BからのビームLBbを供給するようにしてもよい。その場合、ポリゴンミラーPMの走査効率(α/β)が、1/4<(α/β)≦1/3であると、第1の走査モジュール内の6個の走査ユニットU1〜U6の各々は、先の第1の実施の形態(図13)と同様に、ポリゴンミラーPMの1反射面RP置きのビーム走査によって、各描画ラインSL1〜SL6に沿ったスポット光SPの走査を行うことになる。
これに対して、第2の走査モジュール内の3個の走査ユニットU7〜U9の各々は、ポリゴンミラーPMの全ての反射面RP毎にビーム走査することができる。したがって、3個の走査ユニットU7〜U9の各々が、そのままポリゴンミラーPMの全ての反射面RP毎にビーム走査を行ってしまうと、6個の走査ユニットU1〜U6の各々による各描画ラインSL1〜SL6におけるスポット光SPの走査の繰り返し時間間隔ΔTc1と、3個の走査ユニットU7〜U9の各々による各描画ラインSL7〜SL9におけるスポット光SPの走査繰り返し時間間隔ΔTc2とが、ΔTc1=2ΔTc2の関係になり、描画ラインSL1〜SL6によって基板FS上に描画されるパターンと、描画ラインSL7〜SL9によって基板FS上に描画されるパターンとは異なったものになってしまい、良好な継ぎ露光ができない。
そこで、ポリゴンミラーPMの全ての反射面RP毎のビーム走査が可能な3個の走査ユニットU7〜U9の各々においても、ポリゴンミラーPMの1反射面RP置きのビーム走査を行わせるように制御する。このような制御は、走査ユニットU7〜U9の各々から発生する原点信号SZ7〜SZ9を、図11の回路、または図19中の副原点生成回路CAan等に入力して副原点信号ZP7〜ZP9を生成すること、その副原点信号ZP7〜ZP9に応答して、対応する選択用光学素子AOM7〜AOM9の各々を一定時間Tonだけ順次オン状態にするとともに、描画ラインSL7〜SL9の各々で描画すべきパターンに対応した描画用のシリアルデータDL7〜DL9の各々を第2の光源装置14B内の電気光学素子36の駆動回路36aに順次送出することで実現できる。
〔変形例5〕
図25は、変形例5による選択用光学素子AOMnのドライバ回路DRVnの構成を示す。先の各実施の形態や変形例で説明したように、複数の走査ユニットUnの各々が、ポリゴンミラーPMの1反射面RP以上置きにビーム走査するような場合、光源装置14(14A、14B)から射出されるビームLB(LBa、LBb)や、描画用光学素子AOMa、AOMbから射出されるビームLBs、LBpは、その光路に沿って配置された複数の選択用光学素子AOMnを透過する。図25では、ビームLBが、選択用光学素子AOM1、AOM2を透過した後、選択用光学素子AOM3でスイッチングされて、走査ユニットU3に向かうビームLB3が発生している。一般に、選択用光学素子AOMn内の光学材料は、紫外波長域のビームLB(例えば波長355nm)に対して比較的高い透過率を有しているが、数パーセント程度の減衰率を持っている。
個々の選択用光学素子AOMnの透過率を95%とした場合、図25のように選択用光学素子AOM3がオン状態となるとき、選択用光学素子AOM3に入射するビームLBの強度は、2つの選択用光学素子AOM1、AOM2による減衰を受けるので、選択用光学素子AOM1に入射する元のビーム強度(100%)に対して、約90%(0.952)になる。さらに、6個の選択用光学素子AOM1〜AOM6が連なっている場合、最後の選択用光学素子AOM6入射するビームLBの強度は、5つの選択用光学素子AOM1〜AOM5による減衰を受けるので、元のビーム強度(100%)に対して、約77%(0.955)になる。
このことから、6個の選択用光学素子AOM1〜AOM6の各々に入射するビームLBの強度は、順番に、100%、95%、90%、85%、81%、77%となる。このことは、選択用光学素子AOM1〜AOM6の各々で偏向されて射出するビームLB1〜LB6の強度も、その比率で変わってくることを意味する。そこで、本変形例5では、図19で示した複数の選択用光学素子AOMnの各々のドライバ回路DRVnにおいて、選択用光学素子AOM1〜AOM6の駆動条件を調整して、ビームLB1〜LB6の強度の変動を少なくするように制御する。
図25において、ドライバ回路DRV1〜DRV6(DRV5、DRV6は図示を省略)はいずれも同じ構成であるので、詳細な説明はドライバ回路DRV1のみについて行う。先の図19に示したように、ドライバ回路DRV1〜DRV6の各々には、選択用光学素子AOM1〜AOM6(図25では、AOM5、AOM6の図示を省略)の各々のオン状態の時間Tonを設定する情報と副原点信号ZP1〜ZP6とが入力される。また、図25の構成では、選択用光学素子AOM1〜AOM6の各々に超音波を印加するための高周波発信源200が共通に設けられる。ドライバ回路DRV1は、高周波発信源200からの高周波信号を受けて、それを高電圧の振幅に増幅するアンプ202に伝達するか否かを高速に切替えるスイッチング素子201と、時間Tonを設定する情報と副原点信号ZP1とに基づいてスイッチング素子201の開閉を制御するロジック回路203と、アンプ202の増幅率(ゲイン)を調整して選択用光学素子AOM1に印加する高圧の高周波信号の振幅を調整するゲイン調整器204とを備える。
選択用光学素子AOM1に印加する高圧の高周波信号の振幅を許容範囲内で変えると、選択用光学素子AOM1の回折効率が微調でき、偏向されて射出するビームLB1(1次回折光)の強度を変えることが可能である。そこで、本変形例5では、光源装置14に近い側の選択用光学素子AOM1のドライバ回路DRV1から、光源装置14から離れた側の選択用光学素子AOM6のドライバ回路DRV6の順に、各選択用光学素子AOMnに印加される高圧の高周波信号の振幅が高くなるように、ゲイン調整器204を調整する。例えば、ビームLBの光路の終端の選択用光学素子AOM6に印加される高圧の高周波信号の振幅を最も回折効率が高くなるような値Va6に設定し、ビームLBの光路の最初の選択用光学素子AOM1に印加される高圧の高周波信号の振幅を、許容範囲内で回折効率が低下した状態となるような値Va1に設定する。その間の選択用光学素子AOM2〜AOM5に印加される高圧の高周波信号の振幅Va2〜Va5は、Va1<Va2<Va3<Va4<Va5<Va6になるように設定される。
以上の設定により、6個の選択用光学素子AOM1〜AOM6の各々から射出されるビームLB1〜LB6の強度バラツキを緩和、若しくは抑えることが可能である。これによって、各描画ラインSL1〜SL6の各々によって描画されるパターンの露光量のバラツキを抑えることができ、高精度なパターン描画が可能となる。なお、各ドライバ回路DRV1〜DRV6によって設定される高圧の高周波信号の振幅Va1〜Va6は、その順番で漸次大きくする必要はなく、例えば、Va1=Va2<Va3=Va4<Va5=Va6の関係であってもよい。また、各走査ユニットU1〜U6毎に、スポット光SPとなる描画用のビームLB1〜LB6の強度を調整する方式は、変形例5のような方法以外に、各走査ユニットU1〜U6内の光路中に、所定の透過率を有する減光フィルタ(NDフィルタ)を設ける方法であってもよい。
なお、図25のドライバ回路DRVnでは、高周波発信源200からの高周波信号をスイッチング素子201によってアンプ202に伝達するか否かを切替えるものとした。しかしながら、選択用光学素子AOMnのオン/オフの切替え時の応答性(立上り特性)を高めるために、回折効率が実質的にゼロとみなせる状態、例えば、1次回折光の強度がオン時の強度に対して1/1000以下になるような低レベルの高周波信号を、選択用光学素子AOMnに常に印加し続け、オン状態のときだけ適正な高レベルの高周波信号を選択用光学素子AOMnに印加するようにしてもよい。図26は、そのようなドライバ回路DRVnの構成を示し、ここでは代表してドライバ回路DRV1の構成を示し、図25中の部材と同じものには同じ符号を付してある。
図26の構成では、直列接続された2つの抵抗RE1、RE2を追加する。抵抗RE1、RE2の直列回路は、スイッチング素子201の手前で高周波発信源200に並列に挿入され、抵抗比RE2/(RE1+RE2)で分圧された高周波発信源200からの高周波信号が、常時アンプ202に印加されている。抵抗RE2を可変抵抗器にし、スイッチング素子201がオフ(非導通)状態のときに、選択用光学素子AOM1から射出する1次回折光、すなわち、ビームLB1の強度が充分に小さな値(例えば本来の強度の1/1000以下)となるように、選択用光学素子AOM1に印加される高周波信号のレベルを調整する。このように、抵抗RE1、RE2によって、選択用光学素子AOM1に高周波信号のバイアス(嵩上げ)を印加することで、応答性を高められる。なお、この場合、スイッチング素子201がオフ(非導通)状態の間も、極めて弱い強度ではあるが、ビームLB1が対応する走査ユニットU1に入射するので、何らかのトラブルによって、描画動作中に基板FSの搬送速度が低減したり、停止したりするような場合は、光源装置14(14A、14B)の出口に設けたシャッタを閉じたり、減光フィルターを挿入したりする。
〔変形例6〕
以上の各実施の態様、各変形例では、シート状の基板FSを回転ドラムDRの外周面に密接させた状態で、円筒面状に湾曲した基板FSの表面に、複数の走査ユニットUnの各々による描画ラインSLnに沿ってパターン描画を行うようにした。しかしながら、例えば、国際公開第2013/150677号公報に開示されているように、基板FSを平面状に支持しつつ長尺方向に送りながら露光処理するような構成であってもよい。この場合、基板FSの表面がXY平面と平行に設定されるものとすると、例えば、図1、図2に示した奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の各照射中心軸Le1、Le3、Le5と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の各照射中心軸Le2、Le4、Le6とが、XZ平面と平行な面内でみると互いにZ軸と平行で、且つ、X方向に一定の間隔で位置するように複数の走査ユニットU1〜U6を配置すればよい。