JP2016193450A - 押出線材の製造方法、押出線材及び巻線用導体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回転するホイールの周面に沿って形成された凹溝と前記凹溝の開口部の一部を周方向に沿って覆うシューと前記凹溝に挿入されたアバットメントの凸部とで囲まれる空間に鋳造材を導入してダイスで押し出すコンフォーム押出工程を備え、前記コンフォーム押出工程は、前記ホイールの周面と、前記アバットメントにおける前記周面との対向面との間の隙間を0.70mm超1.30mm未満として行う押出線材の製造方法。
【選択図】図1
Description
前記コンフォーム押出工程は、前記ホイールの周面と、前記アバットメントにおける前記周面との対向面との間の隙間を0.70mm超1.30mm未満として行う。
本発明者らは、アップキャスト材などの表面性状に劣る素材であっても、コンフォーム押出を施すことで鋳造痕や深いキズなどを低減できる、との知見を得た。しかし、コンフォーム押出材を調べたところ、押出材の金属表面を部分的に押し上げて気泡が形成されるフクレ(以下、導体フクレと呼ぶことがある)が多数生じる場合がある、との知見を得た。導体フクレの発生の一因として、後述するように押出時、素材表面の周囲環境に存在する異物を巻き込み、押出材の表面近傍に異物層が形成され、この異物層の界面近傍で、押出時の加工熱などによってガスが発生することが考えられる。また、このような異物層が存在する場合には、導体フクレが生じなくても、コンフォーム押出材に伸線加工や圧延加工などを施した後に熱処理を行ったり、絶縁被覆の形成にあたり焼付を行ったりするなどして、加熱されることでガスが発生して導体フクレが発生する場合がある、との知見を得た。ガスの発生によって表面部分が破れるなどすると(導体フクレが破れたりすると)、新たなガス溜まりとなることで、最終的には被覆フクレをも生じる恐れがある。このフクレなどの欠陥の低減対策を種々検討した結果、コンフォーム押出を特定の条件で行うことが好ましい、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
上記コンフォーム押出工程は、上記ホイールの周面と、上記アバットメントにおける上記周面との対向面との間の隙間を0.70mm超1.30mm未満として行う。
本発明の実施形態に係る押出線材の製造方法、押出線材、巻線用導体の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
実施形態の押出線材の製造方法は、金属から構成される押出素材にコンフォーム押出を直接施して、金属の押出線材を製造する。特に、実施形態の押出線材の製造方法は、コンフォーム押出条件を特定の条件とすることを特徴の一つとする。この特徴点によって、フクレなどの欠陥が少ない押出線材を製造できる。この押出線材を上流素材として得られた塑性加工材(例えば、後述の巻線用導体など)に対して、フクレなどの欠陥を低減できる。以下、まず、コンフォーム押出及び条件を説明する。
・・・原理及び装置
コンフォーム押出は、回転するホイールの周面にホイールの周方向に沿って形成された凹溝と、凹溝の開口部の一部をホイールの周方向に沿って覆うシューと、凹溝に挿入されたアバットメントの凸部とで囲まれる空間に押出素材(ここでは鋳造材)を導入してダイスで押し出す押出方法である。コンフォーム押出には、コンフォーム押出装置を利用できる。コンフォーム押出装置は、市販の装置や公知の装置を利用できる。以下、図4,図5を参照して、コンフォーム押出装置2及び押出原理をより詳細に説明する。
実施形態の押出線材の製造方法は、ホイール20とアバットメント24との間につくられる隙間(シューギャップg)を特定の範囲とする。シューギャップgは、図5に示すように、ホイール20の周面200(凹溝202の開口縁からホイール200の周縁まで延びる面)と、アバットメント24における周面200との対向面240との間の隙間をいい、0.70mm超1.30mm未満とする。シューギャップgをこの範囲とすることで、後述する試験例1に示すように、フクレなどの欠陥が少なく、表面性状に優れる押出線材1を製造できる。更に後述する試験例2に示すように、押出線材1に伸線加工及び圧延加工を施して、平角状の巻線用導体(平角線)を製造した場合、この巻線用導体は、フクレなどの欠陥が少なく、表面性状に優れる。シューギャップgを0.70mm超とすることで、押出素材を拘束する押出圧力が緩和されて上述の異物を巻き込み難くなり、異物を屑100として十分に排出できて異物層を形成し難くなる結果、異物に起因したフクレが生じ難くなると考えられる。いわば、異物の排出経路を十分に確保できる。一方、シューギャップgを1.30mm未満とすることで、押出素材を適切に拘束して押出可能になって上述の異物を巻き込み難くなり、異物層を形成し難くなる結果、フクレが生じ難くなると考えられる。シューギャップgは0.75mm以上1.25mm以下、更に0.80mm以上1.20mm以下、0.85mm以上1.15mm以下が好ましい。シューギャップgの調整は、例えば、シュー22に設けられてアバットメント24の台座部244を収納する収納部と台座部244との間に配置する調整部材245の厚みを調整することで容易に行える。調整部材245は、例えば、板材などであり、板材の枚数を変更することで、調整部材245の厚みを調整できる。
コンフォーム押出を行うことで、以下の利点がある。
(1)種々の断面形状の押出線材1を連続して押出可能である。
(2)種々の大きさの押出線材1を連続して押出可能である。押出後の押出線材1の断面積は、押出前の押出素材(鋳造材10)の断面積よりも小さいものの他、実質的に同じもの、大きいものも押出可能である。
(3)押出加工に基づく塑性変形によって、鋳造時に生じたキズなどの表面欠陥がない新生面を形成可能である上に、少なくとも表面側領域を構成する結晶を微細にできて表面性状に優れる押出線材1を製造できる。上述のように異物の巻き込みを低減でき、異物による結晶の微細化を阻害され難いことからも、結晶を均一的に微細化できる。
(4)鋳造材10を構成する粗大な結晶粒を押出加工によって消失して、微細な結晶粒から構成される加工組織にできる。
・・・製造方法
押出素材は、鋳造材10とする。押出素材は、コンフォーム押出装置2に連続して供給できるように長尺材が好ましい。そのため、鋳造材10は、長尺材を製造可能である連続鋳造法で製造された連続鋳造材が好ましい。連続鋳造法は、アップキャスト法、ベルトアンドホイール法、ツインベルト法などが挙げられる。アップキャスト法は、特に酸素含有量が少ない無酸素銅の鋳造材を製造できる。鋳造材10を無酸素銅のアップキャスト材とする場合、導電性に優れることが望まれる用途の押出線材1を製造できて好ましい。
実施形態の押出線材の製造方法によって得られた押出線材1は、代表的には、巻線や電線の導体といった導電性に優れることが望まれる金属線の素材などに利用できる。そのため、押出素材(鋳造材10)の構成金属は、銅(純銅)、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの導電性に優れるものが挙げられる。純銅は、無酸素銅、タフピッチ銅、脱酸銅などが挙げられる。無酸素銅は、Cuを99.95質量%以上含有し、残部が不可避不純物であるもの、好ましくは不可避不純物の合計含有量が0.03質量%以下であるものが挙げられる。無酸素銅中の酸素含有量は、少ないほど導電性に優れることから、0.005質量%(50質量ppm)以下、更に0.002質量%以下(20質量ppm以下)が好ましい。酸素含有量は、溶解時に精錬したり、鋳造雰囲気を調整したりすることで調整できる。アップキャスト法であれば、鋳造雰囲気を調整し易く、酸素含有量を低くし易い。従って、導電性により優れることが望まれる場合には、鋳造材10は、酸素含有量が0.005質量%以下の無酸素銅のアップキャスト材が好ましい。
押出素材(鋳造材10)の大きさ(線径(直径)、断面積、長さなど)は適宜選択できる。鋳造材10の断面積は、40mm2以上130mm2以下(丸線の場合、線径(直径)換算で7.0mm以上13.0mm以下程度)が挙げられる。押出前の鋳造材10の断面積が上記範囲を満たし、コンフォーム押出後の押出線材1の断面積が10mm2以上80mm2以下(丸線の場合、線径(直径)換算で3.5mm以上10mm以下程度)を満たし、かつ、シューギャップgが上述の範囲を満たすことで、フクレなどの欠陥が極めて少ない押出線材1が得られて好ましい。この押出線材1を用いて平板状の巻線用導体などを製造すると、フクレなどの欠陥が極めて少ない巻線用導体が得られて好ましい。
実施形態の押出線材1は、代表的には上述の実施形態の押出線材の製造方法によって製造されることで、フクレなどの欠陥が少なく、表面性状に優れる。また、押出線材1は、フクレなどの欠陥の原因となる上述の異物の巻き込み、異物層なども少ない、好ましくは実質的に含まない。そのため、押出線材1の断面組織は、代表的には、実質的に一様な金属から構成される加工組織を有する。また、押出線材1を用いて平板状の巻線用導体などを製造すると、フクレなどの欠陥が極めて少ない巻線用導体が得られる。
押出線材1の構成金属は、押出素材である鋳造材10と同様である。詳細は、押出素材の組成の項を参照するとよい。
・・形状
押出線材1の断面形状は、例えば、円形(丸線)、矩形(平角線や平板)、多角形、楕円などが挙げられる。ダイス26の形状を変更することで、所望の形状にできる。
・・大きさ
詳細は、押出素材の大きさの項を参照するとよい。
・・・粒径
押出線材1は上述のように微細な加工組織を有しており、例えば、横断面又は縦断面における平均結晶粒径が1μm以上100μm以下である。上記平均結晶粒径は50μm以下、更に30μm以下であると、伸線性や圧延性などの塑性加工性に優れ、3μm以上、更に6μm以上であると、押出し易い加工度であっても容易に実現でき、押出線材1の生産性に優れる。平均結晶粒径は、横断面又は縦断面の光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡の観察像に試験線(例えば長さ3mm)を引き、試験線を分断する結晶粒の数を試験線の長さで除して求めるライン法が利用できる。複数の断面(例えば、n≧3)に対して求めた値を更に平均した値を利用できる。
押出線材1は上述のように微細な加工組織を有することで、機械的特性にも優れる。例えば、室温における引張強さが200MPa以上、室温における破断伸びが30%以上、及び室温における0.2%耐力が100MPa以上の少なくとも一つを満たす形態が挙げられる。組成、押出条件などを調整することで、室温における引張強さが220MPa以上、更に240MPa以上を満たす形態や、室温における破断伸びが40%以上、45%以上、更に47%以上を満たす形態、0.2%耐力が200MPa以上を満たす形態などとすることができる。
押出線材1は、組成にもよるが、導電性に優れる金属で構成される鋳造材10を用いて製造されることで、導電率が高い。例えば、上述の酸素含有量が特定の範囲である無酸素銅で構成される場合、室温における導電率が98%IACS以上、更に100%IACS以上を満たす形態などとすることができる。
押出線材1は、組成にもよるが、導電性に優れる金属で構成される鋳造材10を用いて製造されることで、導電性に優れることが求められる用途、代表的には巻線や電線の導体などを製造するための素材に好適に利用できる。導体は、断面円形状の丸線、後述する断面矩形状の平角線が代表的である。
実施形態の巻線用導体は、実施形態の押出線材1に伸線加工と圧延加工とを施して平角状(横断面形状が矩形状)に製造された平角線であり、フクレなどの欠陥が少なく、表面性状に優れる。この巻線用導体は、フクレなどの欠陥の原因となる上述の異物の巻き込み、異物層なども少ない、好ましくは実質的に含まない。そのため、巻線用導体の断面組織は、上述の押出線材1と同様に、代表的には、実質的に一様な金属から構成される加工組織を有する。
実施形態の巻線用導体の構成金属は、押出素材である鋳造材10と同様である。詳細は、押出素材の組成の項を参照するとよい。
・・大きさ
実施形態の巻線用導体の大きさは、例えば、厚さ0.5mm以上5mm以下程度、幅(長辺の長さ)1mm以上20mm以下程度が挙げられる。
実施形態の巻線用導体は、代表的には、その表面に絶縁被覆が形成されて、被覆線(被覆平角線)として利用される。絶縁被覆の材質は、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリウレタン、ポリエステルなどの電気絶縁性に優れる樹脂が挙げられる。絶縁被覆の厚さは、所望の耐電圧特性に応じて選択するとよく、例えば、0.01mm(10μm)以上0.5mm(500μm)以下程度が挙げられる。絶縁被覆の形成は、例えば、公知のエナメル線の製造に利用されている公知の手法を利用できる。代表的には、導体の表面に絶縁被覆を構成する樹脂を塗布する工程と、塗布された導体を焼付炉に通して上記樹脂を乾燥・硬化させて焼付する工程とを、絶縁被覆が所定の厚さに達するまで1回又は複数回繰り返すことが挙げられる。
無酸素銅からなるアップキャスト材を用意し、シューギャップの大きさを変えてコンフォーム押出を行い、得られた押出線材の外観観察、表面近傍の断面組織の観察を行った。
シューギャップ:0.35mm、0.70mm、0.90mm、0.92mm、1.30mmから選択
押出速度(m/min):11m/min
ダイチャンバの温度(℃):300℃以上400℃以下
試験例1で作製した押出線材に伸線加工及び圧延加工を施して平角線を作製し、外観観察、表面近傍の断面組織の観察、フクレ不良の発生量を調べた。
試料No.1−101(0.35mm) 約173
試料No.1−102(0.70mm) 約4.30
試料No.1−1(0.90mm) 1
試料No.1−2(0.92mm) 約1.49
試料No.1−103(1.30mm) 約4.53
2 コンフォーム押出装置 20 ホイール 200 周面 202 凹溝
22 シュー 24 アバットメント 240 ホイールの周面との対向面
242 凸部 244 台座部 245 調整部材
26 ダイス 28 ダイチャンバ
100 屑(バリ)
Claims (6)
- 回転するホイールの周面に沿って形成された凹溝と前記凹溝の開口部の一部を周方向に沿って覆うシューと前記凹溝に挿入されたアバットメントの凸部とで囲まれる空間に鋳造材を導入してダイスで押し出すコンフォーム押出工程を備え、
前記コンフォーム押出工程は、前記ホイールの周面と、前記アバットメントにおける前記周面との対向面との間の隙間を0.70mm超1.30mm未満として行う押出線材の製造方法。 - 前記鋳造材は、アップキャスト材である請求項1に記載の押出線材の製造方法。
- 前記鋳造材の構成金属は、酸素含有量が0.005質量%以下である無酸素銅である請求項1又は請求項2に記載の押出線材の製造方法。
- 前記鋳造材の断面積は、40mm2以上130mm2以下であり、
前記コンフォーム押出工程で得られた押出線材の断面積は、10mm2以上80mm2以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の押出線材の製造方法。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の押出線材の製造方法によって製造された押出線材。
- 請求項5に記載の押出線材に伸線加工と圧延加工とを施して平角状に製造された巻線用導体。
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