以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るプロジェクターについて説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
図1は、本実施形態のプロジェクター500を示す概略構成図である。図1に示すように、本実施形態のプロジェクター500は、光源装置200と、平行化レンズ305と、照明光学系310と、色分離光学系320と、3つの液晶ライトバルブ(光変調装置)330R,330G,330Bと、クロスダイクロイックプリズム340と、投射光学系350と、を備えている。
光源装置200から射出された光は、平行化レンズ305を通過して照明光学系310に入射する。平行化レンズ305は、光源装置200からの光を平行化する。
照明光学系310は、光源装置200から射出される光の照度を、液晶ライトバルブ330R,330G,330B上において均一化するように調整する。さらに、照明光学系310は、光源装置200から射出される光の偏光方向を一方向に揃える。その理由は、光源装置200から射出される光を液晶ライトバルブ330R,330G,330Bで有効に利用するためである。
照度分布と偏光方向とが調整された光は、色分離光学系320に入射する。色分離光学系320は、入射光を赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の3つの色光に分離する。3つの色光は、各色光に対応付けられた液晶ライトバルブ330R,330G,330Bにより、映像信号に応じてそれぞれ変調される。液晶ライトバルブ330R,330G,330Bは、後述する液晶パネル560R,560G,560Bと、偏光板(図示せず)と、を備えている。偏光板は、液晶パネル560R,560G,560Bのそれぞれの光入射側および光射出側に配置される。
変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム340により合成される。合成光は投射光学系350に入射する。投射光学系350は、入射光をスクリーン700(図6参照)に投射する。これにより、スクリーン700上に映像が表示される。なお、平行化レンズ305、照明光学系310、色分離光学系320、クロスダイクロイックプリズム340、投射光学系350の各々の構成としては、周知の構成を採用することができる。
図2は、光源装置200の構成を示す断面図である。図2には、光源ユニット210の断面図が示されている。図2においては、3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、X軸方向は、第1電極92と第2電極93とが対向する方向と平行な方向、すなわち、図2における左右方向である。Z軸方向は、第1電極92と第2電極93とが対向する方向(X軸方向)と直交し、かつ、第1電極92と第2電極93とが対向する方向および鉛直方向を含む面と平行な方向である。Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向である。
本実施形態においてZ軸方向は、例えば、鉛直方向と平行である。そのため、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を鉛直方向上側、Z軸方向の負の側(−Z側)を鉛直方向下側とする。これは、後述する図3,4,5,10,11についても同様である。なお、以下の説明においては、X軸方向を、単に対向方向と呼び、Z軸方向を、単に直交方向と呼ぶ場合がある。
図2に示すように、光源装置200は、光源ユニット210と、放電灯点灯装置(放電灯駆動装置)10と、を備えている。光源ユニット210は、放電灯90と、主反射鏡112と、副反射鏡50と、を有する。
放電灯点灯装置10は、放電灯90に駆動電流Iを供給して放電灯90を点灯させる。主反射鏡112は、放電灯90から射出された光を照射方向Dに向けて反射する。照射方向Dは、放電灯90の光軸AXと平行である。照射方向Dは、例えば、対向方向(X軸方向)と平行である。
放電灯90は、発光管510と、第1電極92および第2電極93と、を有する。
発光管510の形状は、照射方向Dに沿って延びる棒状である。発光管510の一方の端部、すなわち、放電灯90の一方の端部を第1端部90e1とする。発光管510の他方の端部、すなわち、放電灯90の他方の端部を第2端部90e2とする。発光管510の材料は、例えば、石英ガラス等の透光性材料である。発光管510の中央部は球状に膨らんでおり、その内部は放電空間91である。放電空間91には、水銀、希ガス、金属ハロゲン化合物等を含む放電媒体であるガスが封入されている。
放電空間91には、第1電極92および第2電極93の先端が突出している。第1電極92は、放電空間91の第1端部90e1側に配置されている。第2電極93は、放電空間91の第2端部90e2側に配置されている。第1電極92および第2電極93の形状は、光軸AXに沿って延びる棒状である。放電空間91には、第1電極92および第2電極93の電極先端部が、所定距離だけ離れて対向するように配置されている。第1電極92および第2電極93の材料は、例えば、タングステン等の金属である。
図3から図5は、放電灯90の部分を示す拡大断面図である。図3は、後述するアークフレア方向AFDが第2電極93側(+X側)に傾いた状態を示す図である。図4は、アークフレア方向AFDが傾いていない状態を示す図である。図5は、アークフレア方向AFDが第1電極92側(−X側)に傾いた状態を示す図である。
第1電極92は、図3から図5に示すように、芯棒533と、コイル部532と、本体部531と、突起531pと、を有する。第1電極92は、発光管510への封入前の段階において、芯棒533に電極材(タングステン等)の線材を巻き付けてコイル部532を形成し、形成されたコイル部532を加熱・溶融することにより形成される。これにより、第1電極92の先端側には、熱容量が大きい本体部531と、アーク放電ARの発生位置となる突起531pが形成される。
第2電極93は、芯棒543と、コイル部542と、本体部541と、突起541pと、を有する。第2電極93は、第1電極92と同様にして形成される。
なお、第1電極92と第2電極93とは、同様の構成であるため、以下の説明においては、代表して第1電極92についてのみ説明する場合がある。また、第1電極92の先端の突起531pと第2電極93の先端の突起541pとは、同様の構成であるため、以下の説明においては、代表して突起531pについてのみ説明する場合がある。
図2に示すように、放電灯90の第1端部90e1には、第1端子536が設けられている。第1端子536と第1電極92とは、放電灯90の内部を貫通する導電性部材534により電気的に接続されている。同様に、放電灯90の第2端部90e2には、第2端子546が設けられている。第2端子546と第2電極93とは、放電灯90の内部を貫通する導電性部材544により電気的に接続されている。第1端子536および第2端子546の材料は、例えば、タングステン等の金属である。導電性部材534,544の材料としては、例えば、モリブデン箔が利用される。
第1端子536および第2端子546は、放電灯点灯装置10に接続されている。放電灯点灯装置10は、第1端子536および第2端子546に、放電灯90を駆動するための駆動電力を供給する。その結果、第1電極92および第2電極93の間でアーク放電ARが起きる。アーク放電ARにより発生した光(放電光)は、破線の矢印で示すように、放電位置から全方向に向かって放射される。
図3から図5に示すように、放電灯90を点灯すると、放電空間91内に封入されたガスは、アーク放電ARの発生により加熱され、放電空間91内において対流する。詳細には、アーク放電ARおよびその付近の領域は極めて高温となるため、放電空間91内において、アーク放電ARから概ね鉛直方向上側(+Z側)に流れる対流AC(一点鎖線の矢印で示す)が形成される。対流ACは、発光管510の内壁に当たって発光管510の内壁に沿って移動し、第1電極92および第2電極93の芯棒533,543等を通過することによって冷却されつつ降下する。
降下した対流ACは、発光管510の内壁に沿って更に降下するが、アーク放電ARの鉛直方向下側で互いに衝突して上方のアーク放電ARに戻されるように上昇する。対流ACが、発光管510の内壁を沿って移動することによって、発光管510は加熱される。
図3は、第1電極92が陽極として動作し、第2電極93が陰極として動作する第1極性状態を示している。第1極性状態では、放電により、第2電極93(陰極)から第1電極92(陽極)へ電子が移動する。陰極(第2電極93)からは電子が放出される。陰極(第2電極93)から放出された電子は陽極(第1電極92)の先端に衝突する。この衝突によって熱が生じ、陽極(第1電極92)の先端(突起531p)の温度が上昇する。
図5は、第1電極92が陰極として動作し、第2電極93が陽極として動作する第2極性状態を示している。第2極性状態では、第1極性状態とは逆に、第1電極92から第2電極93へ電子が移動する。その結果、第2電極93の先端(突起541p)の温度が上昇する。
このように、放電灯90に駆動電流Iが供給されることで、電子が衝突する陽極の温度は上昇する。一方、電子を放出する陰極の温度は、陽極に向けて電子を放出している間、低下する。
第1電極92と第2電極93との電極間距離は、突起531p,541pの劣化とともに大きくなる。突起531p,541pが損耗するためである。電極間距離が大きくなると、第1電極92と第2電極93との間の抵抗が大きくなるため、ランプ電圧Vlaが大きくなる。したがって、ランプ電圧Vlaを参照することによって、電極間距離の変化、すなわち、放電灯90の劣化度合いを検出することができる。
主反射鏡112は、図2に示すように、固定部材114により、放電灯90の第1端部90e1に固定されている。主反射鏡112は、放電光のうち、照射方向Dと反対側に向かって進む光を照射方向Dに向かって反射する。主反射鏡112の反射面(放電灯90側の面)の形状は、放電光を照射方向Dに向かって反射できる範囲内において、特に限定されず、例えば、回転楕円形状であっても、回転放物線形状であってもよい。例えば、主反射鏡112の反射面の形状を回転放物線形状とした場合、主反射鏡112は、放電光を光軸AXに略平行な光に変換することができる。これにより、平行化レンズ305を省略することができる。
副反射鏡50は、固定部材522により、放電灯90の第2端部90e2側に固定されている。副反射鏡50の反射面(放電灯90側の面)の形状は、放電空間91の第2端部90e2側の部分を囲む球面形状である。副反射鏡50は、放電光のうち、主反射鏡112が配置された側と反対側に向かって進む光を主反射鏡112に向かって反射する。これにより、放電空間91から放射される光の利用効率を高めることができる。
固定部材114,522の材料は、放電灯90からの発熱に耐え得る耐熱材料である範囲内において、特に限定されず、例えば、無機接着剤である。
以下、プロジェクター500の回路構成について説明する。
図6は、本実施形態のプロジェクター500の回路構成の一例を示す図である。プロジェクター500は、図1に示した光学系の他、画像信号変換部511と、直流電源装置80と、液晶パネル560R,560G,560Bと、画像処理装置570と、CPU(Central Processing Unit)580と、を備えている。
画像信号変換部511は、外部から入力された画像信号502(輝度−色差信号やアナログRGB信号など)を所定のワード長のデジタルRGB信号に変換して画像信号512R,512G,512Bを生成し、画像処理装置570に供給する。
画像処理装置570は、3つの画像信号512R,512G,512Bに対してそれぞれ画像処理を行う。画像処理装置570は、液晶パネル560R,560G,560Bをそれぞれ駆動するための駆動信号572R,572G,572Bを液晶パネル560R,560G,560Bに供給する。
直流電源装置80は、外部の交流電源600から供給される交流電圧を一定の直流電圧に変換する。直流電源装置80は、トランス(図示しないが、直流電源装置80に含まれる)の2次側にある画像信号変換部511、画像処理装置570およびトランスの1次側にある放電灯点灯装置10に直流電圧を供給する。
放電灯点灯装置10は、起動時に放電灯90の電極間に高電圧を発生し、絶縁破壊を生じさせて放電路を形成する。以後、放電灯点灯装置10は、放電灯90が放電を維持するための駆動電流Iを供給する。
液晶パネル560R,560G,560Bは、前述した液晶ライトバルブ330R,330G,330Bにそれぞれ備えられている。液晶パネル560R,560G,560Bは、それぞれ駆動信号572R,572G,572Bに基づいて、前述した光学系を介して各液晶パネル560R,560G,560Bに入射される色光の透過率(輝度)を変調する。
CPU580は、プロジェクター500の点灯開始から消灯に至るまでの各種の動作を制御する。例えば、図6の例では、通信信号582を介して点灯命令や消灯命令を放電灯点灯装置10に出力する。CPU580は、放電灯点灯装置10から通信信号584を介して放電灯90の点灯情報を受け取る。
以下、放電灯点灯装置10の回路構成について説明する。
図7は、放電灯点灯装置10の回路構成の一例を示す図である。
放電灯点灯装置10は、図7に示すように、電力制御回路20と、極性反転回路30と、制御部40と、動作検出部60と、イグナイター回路70と、を備えている。
電力制御回路20は、放電灯90に供給する駆動電力を生成する。本実施形態においては、電力制御回路20は、直流電源装置80からの電圧を入力とし、入力電圧を降圧して直流電流Idを出力するダウンチョッパー回路で構成されている。
電力制御回路20は、スイッチ素子21、ダイオード22、コイル23およびコンデンサー24を含んで構成される。スイッチ素子21は、例えば、トランジスターで構成される。本実施形態においては、スイッチ素子21の一端は直流電源装置80の正電圧側に接続され、他端はダイオード22のカソード端子およびコイル23の一端に接続されている。
コイル23の他端にコンデンサー24の一端が接続され、コンデンサー24の他端はダイオード22のアノード端子および直流電源装置80の負電圧側に接続されている。スイッチ素子21の制御端子には、後述する制御部40から電流制御信号が入力されてスイッチ素子21のON/OFFが制御される。電流制御信号には、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号が用いられてもよい。
スイッチ素子21がONすると、コイル23に電流が流れ、コイル23にエネルギーが蓄えられる。その後、スイッチ素子21がOFFすると、コイル23に蓄えられたエネルギーがコンデンサー24とダイオード22とを通る経路で放出される。その結果、スイッチ素子21がONする時間の割合に応じた直流電流Idが発生する。
極性反転回路30は、電力制御回路20から入力される直流電流Idを所定のタイミングで極性反転させる。これにより、極性反転回路30は、制御された時間だけ継続する直流である駆動電流I、もしくは、任意の周波数を持つ交流である駆動電流Iを生成し、出力する。本実施形態において、極性反転回路30は、インバーターブリッジ回路(フルブリッジ回路)で構成されている。
極性反転回路30は、例えば、トランジスターなどで構成される第1のスイッチ素子31、第2のスイッチ素子32、第3のスイッチ素子33、および第4のスイッチ素子34を含んでいる。極性反転回路30は、直列接続された第1のスイッチ素子31および第2のスイッチ素子32と、直列接続された第3のスイッチ素子33および第4のスイッチ素子34と、が互いに並列接続された構成を有する。第1のスイッチ素子31、第2のスイッチ素子32、第3のスイッチ素子33、および第4のスイッチ素子34の制御端子には、それぞれ制御部40から極性反転制御信号が入力される。この極性反転制御信号に基づいて、第1のスイッチ素子31、第2のスイッチ素子32、第3のスイッチ素子33および第4のスイッチ素子34のON/OFF動作が制御される。
極性反転回路30においては、第1のスイッチ素子31および第4のスイッチ素子34と、第2のスイッチ素子32および第3のスイッチ素子33と、を交互にON/OFFさせる動作が繰り返される。これにより、電力制御回路20から出力される直流電流Idの極性が交互に反転する。極性反転回路30は、第1のスイッチ素子31と第2のスイッチ素子32との共通接続点、および第3のスイッチ素子33と第4のスイッチ素子34との共通接続点から、制御された時間だけ同一極性状態を継続する直流である駆動電流I、もしくは制御された周波数をもつ交流である駆動電流Iを生成し、出力する。
すなわち、極性反転回路30は、第1のスイッチ素子31および第4のスイッチ素子34がONのときには第2のスイッチ素子32および第3のスイッチ素子33がOFFであり、第1のスイッチ素子31および第4のスイッチ素子34がOFFのときには第2のスイッチ素子32および第3のスイッチ素子33がONであるように制御される。したがって、第1のスイッチ素子31および第4のスイッチ素子34がONのときには、コンデンサー24の一端から第1のスイッチ素子31、放電灯90、第4のスイッチ素子34の順に流れる駆動電流Iが発生する。第2のスイッチ素子32および第3のスイッチ素子33がONのときには、コンデンサー24の一端から第3のスイッチ素子33、放電灯90、第2のスイッチ素子32の順に流れる駆動電流Iが発生する。
本実施形態において、電力制御回路20と極性反転回路30とを合わせた部分が放電灯駆動部230に対応する。すなわち、放電灯駆動部230は、放電灯90を駆動する駆動電流Iを放電灯90に供給する。
制御部40は、放電灯駆動部230を制御する。より詳細には、本実施形態において制御部40は、放電灯90に生じるアーク放電ARの後述するアークフレアAFにおけるアークフレア角度φが周期的に変化するように放電灯駆動部230を制御する。詳細については、後述する。
図7の例では、制御部40は、電力制御回路20および極性反転回路30を制御することにより、駆動電流Iが同一極性を継続する保持時間、駆動電流Iの電流値(駆動電力の電力値)、周波数等のパラメーターを制御する。制御部40は、極性反転回路30に対して、駆動電流Iの極性反転タイミングにより、駆動電流Iが同一極性で継続する保持時間、駆動電流Iの周波数等を制御する極性反転制御を行う。制御部40は、電力制御回路20に対して、出力される直流電流Idの電流値を制御する電流制御を行う。
制御部40の構成は、特に限定されない。本実施形態においては、制御部40は、システムコントローラー41、電力制御回路コントローラー42、および極性反転回路コントローラー43を含んで構成されている。なお、制御部40は、その一部または全てを半導体集積回路で構成してもよい。
システムコントローラー41は、電力制御回路コントローラー42および極性反転回路コントローラー43を制御することにより、電力制御回路20および極性反転回路30を制御する。システムコントローラー41は、動作検出部60が検出したランプ電圧Vlaおよび駆動電流Iに基づき、電力制御回路コントローラー42および極性反転回路コントローラー43を制御してもよい。
本実施形態においては、システムコントローラー41には、記憶部44が接続されている。
システムコントローラー41は、記憶部44に格納された情報に基づき、電力制御回路20および極性反転回路30を制御してもよい。記憶部44には、例えば、駆動電流Iが同一極性で継続する保持時間、駆動電流Iの電流値、周波数、波形、変調パターン等の駆動パラメーターに関する情報が格納されていてもよい。
電力制御回路コントローラー42は、システムコントローラー41からの制御信号に基づき、電力制御回路20へ電流制御信号を出力することにより、電力制御回路20を制御する。
極性反転回路コントローラー43は、システムコントローラー41からの制御信号に基づき、極性反転回路30へ極性反転制御信号を出力することにより、極性反転回路30を制御する。
制御部40は、専用回路を用いて実現され、上述した制御や後述する処理の各種制御を行うようにすることができる。これに対して、制御部40は、例えば、CPUが記憶部44に記憶された制御プログラムを実行することによりコンピューターとして機能し、これらの処理の各種制御を行うようにすることもできる。
図8は、制御部40の他の構成例について説明するための図である。図8に示すように、制御部40は、制御プログラムにより、電力制御回路20を制御する電流制御手段40−1、極性反転回路30を制御する極性反転制御手段40−2として機能するように構成されてもよい。
図7に示した例では、制御部40は、放電灯点灯装置10の一部として構成されている。これに対して、制御部40の機能の一部をCPU580が担うように構成されていてもよい。
動作検出部60は、本実施形態においては、放電灯90のランプ電圧Vlaを検出して制御部40にランプ電圧情報を出力する電圧検出部を含む。また、動作検出部60は、駆動電流Iを検出して制御部40に駆動電流情報を出力する電流検出部などを含んでいてもよい。本実施形態においては、動作検出部60は、第1の抵抗61、第2の抵抗62および第3の抵抗63を含んで構成されている。
本実施形態において、動作検出部60の電圧検出部は、放電灯90と並列に、互いに直列接続された第1の抵抗61および第2の抵抗62で分圧した電圧によりランプ電圧Vlaを検出する。また、本実施形態において、電流検出部は、放電灯90に直列に接続された第3の抵抗63に発生する電圧により駆動電流Iを検出する。
イグナイター回路70は、放電灯90の点灯開始時にのみ動作する。イグナイター回路70は、放電灯90の点灯開始時に放電灯90の電極間(第1電極92と第2電極93との間)を絶縁破壊して放電路を形成するために必要な高電圧(放電灯90の通常点灯時よりも高い電圧)を、放電灯90の電極間(第1電極92と第2電極93との間)に供給する。本実施形態においては、イグナイター回路70は、放電灯90と並列に接続されている。
次に、制御部40の放電灯駆動部230の制御について説明する。図9は、本実施形態の駆動電流波形DW1を示すグラフである。図9において縦軸は駆動電流Iを示しており、横軸は時間Tを示している。図9において駆動電流Iは、第1極性状態である場合を正とし、第2極性状態となる場合を負として示している。
制御部40は、図9に示す駆動電流波形DW1に沿って駆動電流Iが放電灯90に供給されるように放電灯駆動部230を制御する。駆動電流波形DW1(駆動電流I)は、第1駆動期間PH11と、第2駆動期間PH12と、を交互に有する。
第1駆動期間PH11は、後述するアークフレアAFが第2電極93側(+X側)に傾くように放電灯90に駆動電流Iが供給される期間である。第1駆動期間PH11は、第1直流期間PH11aと、接続期間PH11bと、を有する。
第1直流期間PH11aは、放電灯90に第1電極92が陽極となる直流電流が供給される期間である。図9の例では、第1直流期間PH11aにおいて駆動電流Iの値は、Imに一定に維持される。本実施形態において第1直流期間PH11aは、1つの第1駆動期間PH11内に、例えば、接続期間PH11bを挟んで2つ設けられている。
第1直流期間PH11aの長さt11aは、例えば、20ms(ミリ秒)以上である。言い換えると、第1直流期間PH11aの長さt11aは、例えば、25Hzの交流電流の半周期の長さ以上である。第1直流期間PH11aの長さt11aをこのように設定することで、後述するアークフレア角度φを好適に変化させることができる。本実施形態においては、第1直流期間PH11aが2つ設けられているため、1つの第1駆動期間PH11内における第1直流期間PH11aの長さt11aの合計は、40ms(ミリ秒)以上である。
接続期間PH11bは、2つの第1直流期間PH11aを繋ぐ期間である。すなわち、接続期間PH11bは、2つの第1直流期間PH11a同士の間に位置する。接続期間PH11bにおいては、第1直流期間PH11aと反対の極性の駆動電流Iが放電灯90に供給される。すなわち、接続期間PH11bは、放電灯90に第1電極92が陰極となる直流電流が供給される期間である。図9の例では、接続期間PH11bにおいて駆動電流Iの値は、−Imに一定に維持される。
接続期間PH11bの長さt11bは、第1直流期間PH11aの長さt11aに対して、十分に小さい。接続期間PH11bの長さt11bは、例えば、第1直流期間PH11aの長さt11aの10%以下程度である。すなわち、接続期間PH11bの長さt11bは、例えば、2ms(ミリ秒)以下程度である。
第2駆動期間PH12は、後述するアークフレアAFが第1電極92側(−X側)に傾くように放電灯90に駆動電流Iが供給される期間である。第2駆動期間PH12は、第2直流期間PH12aと、接続期間PH12bと、を有する。
第2直流期間PH12aは、極性が反転している点を除いて、第1直流期間PH11aと同様である。すなわち、第2直流期間PH12aは、放電灯90に第2電極93が陽極となる直流電流が供給される期間である。第2直流期間PH12aの長さt12aは、例えば、20ms(ミリ秒)以上である。
接続期間PH12bは、極性が反転している点を除いて、第1駆動期間PH11の接続期間PH11bと同様である。すなわち、接続期間PH12bの長さt12bは、例えば、第2直流期間PH12aの長さt12aの10%以下程度である。すなわち、接続期間PH12bの長さt12bは、例えば、2ms(ミリ秒)以下程度である。
上記のような駆動電流波形DW1に沿って、放電灯90に駆動電流Iが供給されることで、アークフレア角度φを周期的に変化させることができる。以下、詳細に説明する。
まず、アークフレア角度φについて説明する。
図10および図11は、アークフレア角度φを説明するための図である。図10は、図3におけるアーク放電ARが生じている部分を拡大して示している。図11は、図4におけるアーク放電ARが生じている部分を拡大して示している。
図10および図11に示すように、アーク放電ARの鉛直方向上側(+Z側)には、アークフレアAFが生じる。アークフレアAFは、放電空間91に封入された水銀等のガスが、アーク放電AR、あるいはアーク放電AR近傍を通過して発光する部分である。水銀等のガスは、アーク放電AR、あるいはアーク放電AR近傍を通過する際に膨張する。そのため、アークフレアAFは、例えば、対向方向(X軸方向)に広がる。
図10に示すように、アークフレア角度φは、アークフレアAFの傾く方向であるアークフレア方向AFDが直交方向(Z軸方向)、すなわち本実施形態では鉛直方向に対して傾く角度である。
図3および図10に示すように、アークフレア方向AFDは、アークフレアAFを通りアークフレアAFの上側(+Z側)に流れる対流ACの中心となる方向である。より詳細には、アークフレア方向AFDは、図10に示す第1近似直線C11の直交方向(Z軸方向)に対する角度θ11と、第2近似直線C12の直交方向に対する角度θ12との平均角度である。すなわち、アークフレア方向AFDは、第1近似直線C11と第2近似直線C12とが成す角を二等分する直線の方向である。
第1近似直線C11は、アークフレアAFの外形線における、第1電極92の突起531pと接する箇所およびその近傍の近似直線である。第2近似直線C12は、アークフレアAFの外形線における、第2電極93の突起541pと接する箇所およびその近傍の近似直線である。
なお、アークフレアAFの外形線における第1電極92の突起531pと接する箇所の近傍とは、例えば、アークフレアAFの外形線における第1電極92の突起531pと接する箇所に対して、距離が0.1mm程度以内となる箇所を含む。これは、アークフレアAFの外形線における第2電極93の突起541pと接する箇所の近傍についても同様である。
図11に示すように、アークフレア方向AFDが直交方向(Z軸方向)、すなわち本実施形態では鉛直方向と平行な方向となる場合、アークフレア角度φは0°である。この場合、図11に示す第1近似直線C21の直交方向に対する角度は、−θ21であり、第2近似直線C22の直交方向に対する角度は、θ21である。すなわち、第1近似直線C21と第2近似直線C22とは、直交方向を基準としてそれぞれ逆側に傾いている。第1近似直線C21は、傾きが異なる点を除いて、図10の第1近似直線C11と同様である。第2近似直線C22は、傾きが異なる点を除いて、図10の第2近似直線C12と同様である。
具体的なアークフレア角度φの計測方法としては、例えば、画像を用いた計測方法を採用できる。例えば、アークフレアAFを撮影した画像をグレースケール画像に変換して、明るさ情報の数値が所定の範囲内となる部分を検出する。これにより、発光するアークフレアAFの外形を検出する。検出したアークフレアAFの外形から求められた第1近似直線C11および第2近似直線C12から、アークフレア角度φを算出する。この計測方法を用いる場合、例えば、所定時間内で複数枚画像を撮影し、複数枚の画像のそれぞれから算出されたアークフレア角度φ値の平均の値を、アークフレア角度φとして算出してもよい。
次に、アークフレア角度φが変化する仕組みについて説明する。
本実施形態においてアークフレア角度φは、例えば、アークフレア方向AFDが直交方向(Z軸方向)に対して第2電極93側(+X側)に傾く場合を正の値として、アークフレア方向AFDが直交方向に対して第1電極92側(−X側)に傾く角度を負の値とする。この場合、図9に示す第1駆動期間PH11においては、アークフレア角度φは、図3および図10に示すように正となり、図9に示す第2駆動期間PH12においては、アークフレア角度φは、図5に示すように負となる。これは、以下の理由による。
例えば、第1駆動期間PH11では、第1直流期間PH11aが設けられるため、陽極となる第1電極92の温度が大きくなる。一方、第1駆動期間PH11では、陰極となる第2電極93の温度は低下する。これにより、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差が大きくなり、第1電極92の上側(+Z側)から生じる上昇気流が、第2電極93の上側から生じる上昇気流に比べて大きくなる。したがって、第1電極92の上側から生じる上昇気流によってアークフレアAFが陰極である第2電極93側(+X側)に押され、アークフレアAFのアークフレア方向AFDが第2電極93側に傾く。その結果、アークフレア角度φが正の値となる。
第1駆動期間PH11と同様に、第2駆動期間PH12においては、陽極となる第2電極93の温度が、陰極となる第1電極92よりも大きくなる。そのため、第2電極93の上側(+Z側)に生じる上昇気流によって、図5に示すように、アークフレア方向AFDが第1電極92側(−X側)に傾き、アークフレア角度φが負の値となる。
アークフレア角度φの絶対値は、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差が大きいほど、大きくなり、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差が小さいほど、小さくなる。第1電極92の温度と第2電極93の温度とが同程度である場合には、図4および図11に示すように、アークフレア角度φは、ほぼ0°となる。
ここで、第1電極92の温度と第2電極93の温度とが同程度である、とは、例えば、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差が100℃未満である場合を含む。このような場合においては、第1電極92の上側に生じる上昇気流と、第2電極93の上側に生じる上昇気流との差がほとんどなく、アークフレア角度φが変化しにくい。
一例として、アークフレア角度φを10°以上、15°以下程度にする場合、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差を200℃以上、400℃以下程度にすればよい。
次に、本実施形態におけるアークフレア角度φの周期的な変化について説明する。
本実施形態においては、駆動電流波形DW1が第1駆動期間PH11から第2駆動期間PH12に切り替わると、第1駆動期間PH11において上昇した第1電極92の温度が低下し始め、かつ、第1駆動期間PH11において低下した第2電極93の温度が上昇し始める。そのため、第1電極92の温度と第2電極93の温度とが近づき、第1電極92の温度と第2電極93の温度とが同程度となった後に、第2電極93の温度が第1電極92の温度よりも大きくなる。
したがって、駆動電流波形DW1が第1駆動期間PH11から第2駆動期間PH12に切り替わると、アークフレア方向AFDは、図3に示す第2電極93側(+X側)に傾く方向から、図4に示す直交方向(Z軸方向)と平行な方向を経て、図5に示す第1電極92側(−X側)に傾く方向となる。
一方、第2駆動期間PH12から第1駆動期間PH11に切り替わると、上記と反対に、アークフレア方向AFDは、図5に示す第1電極92側(−X側)に傾く方向から、図4に示す直交方向(Z軸方向)と平行な方向を経て、図3に示す第2電極93側(+X側)に傾く方向となる。
したがって、第1駆動期間PH11と第2駆動期間PH12とが交互に繰り返されることで、アークフレア方向AFD、すなわちアークフレア角度φは、図3から図5に示す各状態間で、周期的に変化する。図3から図5に示す各状態は、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差の変化に応じて、連続的に移り変わる。
本実施形態において、アークフレア角度φの絶対値は、例えば、20°以下である。すなわち、アークフレア角度φは、例えば、−20°から20°までの範囲内で周期的に変化する。アークフレア角度φをこのような数値範囲で変化させることで、失透をより抑制できる。
以上に説明したようにして、アークフレア角度φを周期的に変化させることができる。
本実施形態によれば、アークフレア角度φが周期的に変化するため、失透が生じることを抑制できる。以下、詳細に説明する。
例えば、放電灯90に複数の周波数を有する交流電流を供給するような場合、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差は、比較的大きくなりにくい。そのため、第1電極92の温度と第2電極93の温度とは同程度となり、アークフレア方向AFDは、図4および図11に示すように、直交方向(Z軸方向)と略平行な方向となりやすい。すなわち、アークフレア角度φが、ほぼ0°となりやすい。
ここで、アークフレア方向AFDは、アークフレアAFを通過した対流AC、すなわち水銀等のガスが、最も早く発光管510の内壁に到達する方向である。そのため、アークフレア方向AFDの延長上に位置する発光管510の内壁の部分には、対流ACの温度が最も大きい状態で、対流ACが衝突する。これにより、アークフレア方向AFDの延長上にある発光管510の内壁の部分が、発光管510の内壁において最も加熱される箇所となる。
そのため、例えば、図4に示す状態では、アークフレア方向AFDの延長上に位置する最加熱部HTA2が、発光管510の内壁で最も加熱される箇所となる。この状態が長時間続くと、最加熱部HTA2の温度が過剰に大きくなり、失透が生じる問題がある。なお、最加熱部HTA2は、発光管510の上側(+Z側)の部分である発光管上部510aの内壁の一部である。
上記問題に対して、本実施形態によれば、アークフレア角度φが周期的に変化する。すなわち、アークフレア方向AFDが周期的に変化する。これにより、発光管510における対流ACによって最も加熱される箇所が周期的に変化する。したがって、発光管510の内壁の一部が過剰に加熱されることを抑制できる。その結果、本実施形態によれば、失透が生じることを抑制できる。
また、本実施形態によれば、駆動電流Iは、第1駆動期間PH11と、第2駆動期間PH12と、を交互に有する。そのため、アークフレア方向AFDが、図3から図5に示すように周期的に変化する。例えば、アークフレア方向AFDが図3に示す状態では、発光管510における最も加熱される箇所は、最加熱部HTA1である。例えば、アークフレア方向AFDが図5に示す状態では、発光管510の内壁における最も加熱される箇所は、最加熱部HTA3である。最加熱部HTA1および最加熱部HTA3は、発光管上部510aの内壁の一部である。
したがって、本実施形態によれば、アークフレア方向AFDによって最も加熱される箇所が、最加熱部HTA1と最加熱部HTA3との間を、最加熱部HTA2を介して変化する。これにより、対流ACによる熱を、発光管上部510aの内壁の広い範囲で分散して受けることができるため、発光管510の内壁の一部の温度が過剰に大きくなることをより抑制できる。その結果、本実施形態によれば、失透が生じることをより抑制できる。
また、本実施形態によれば、第1駆動期間PH11は第1直流期間PH11aを有し、第2駆動期間PH12は第2直流期間PH12aを有する。そのため、第1駆動期間PH11および第2駆動期間PH12において、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差を大きくしやすい。これにより、アークフレア角度φを大きくしやすく、発光管510の内壁において最も加熱される箇所が変化する範囲を広くしやすい。したがって、本実施形態によれば、失透が生じることをより抑制できる。
また、例えば、アークフレア角度φの絶対値が、5°よりも小さい範囲内で変化する場合、発光管510の内壁における最も加熱される箇所の変化する範囲が狭く、失透の抑制効果を十分に得られにくい場合がある。
これに対して、本実施形態によれば、第1直流期間PH11aの長さt11aおよび第2直流期間PH12aの長さt11bは、20ms以上である。これにより、例えば、アークフレア角度φの絶対値の最大値を5°以上にしやすく、失透の抑制効果を好適に得られる。
また、上記説明したように、アークフレア角度φは、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差が大きくなるほど、大きくなる。アークフレア角度φが大きくなると、アークフレア方向AFDが変化する角度範囲を大きくできるため、発光管510の内壁における最も加熱される箇所が変化する範囲を広くできる。しかし、その一方で、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差が大きくなり過ぎると、温度が高い側の電極の突起が過度に溶融され、アーク放電ARの形成が不安定になる虞がある。
これに対して、本実施形態によれば、アークフレア角度φの絶対値は、20°以下の範囲内で変化する。この程度の範囲内でアークフレア角度φを変化させることで、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差が大きくなり過ぎることを抑制できる。これにより、アーク放電ARを安定して生じさせつつ、失透が生じることをより好適に抑制できる。なお、一例として、第1駆動期間PH11内における第1直流期間PH11aの長さt11aの合計を、例えば、50ms(ミリ秒)以下程度とすることで、アークフレア角度φの絶対値を20°以下としやすい。
上記説明したアークフレア角度φは、本発明者らによって得られた新たな知見である。また、アークフレア角度φを第1電極92の温度と第2電極93の温度との差を変化させることで変化できることは、本発明者らによって得られた新たな知見である。また、アークフレア角度φを変化させることによって、失透が生じることを抑制できることは、本発明者らによって得られた新たな知見である。
なお、本実施形態においては、以下の構成および方法を採用することもできる。
本実施形態においては、第1駆動期間PH11には、第1直流期間PH11aが3つ以上設けられてもよい。この場合、例えば、接続期間PH11bが2つ以上設けられ、複数の第1直流期間PH11a同士の間にそれぞれ接続期間PH11bが設けられる。
また、本実施形態においては、接続期間PH11b,PH12bが設けられていなくてもよい。この場合、例えば、第1駆動期間PH11は、第1直流期間PH11aのみで構成され、第2駆動期間PH12は、第2直流期間PH12aのみで構成される。
また、本実施形態においては、第1直流期間PH11aの長さt11aと第2直流期間PH12aの長さt12aとは、異なっていてもよい。
また、上記説明においては、第1駆動期間PH11に第1直流期間PH11aを設けることで、第2電極93の温度に対する第1電極92の温度の差を大きくしたが、これに限られない。本実施形態においては、例えば、放電灯90に供給される交流電流のデューティー比を変えることによって、第2電極93の温度に対する第1電極92の温度の差を大きくしてもよい。これにより、アークフレア角度φを変化させてもよい。これは、第2駆動期間PH12についても同様である。
また、本実施形態においては、図12に示すように駆動電流Iが交流期間PH21を有する構成としてもよい。図12は、本実施形態の他の一例である駆動電流波形DW2を示すグラフである。図12において縦軸は駆動電流Iを示しており、横軸は時間Tを示している。図12において駆動電流Iは、第1極性状態である場合を正とし、第2極性状態となる場合を負として示している。
図12に示すように、駆動電流波形DW2(駆動電流I)は、交流期間PH21を有する。交流期間PH21は、放電灯90に交流電流が供給される期間である。交流期間PH21は、第1駆動期間PH11と第2駆動期間PH12との間に設けられる。
交流期間PH21の周波数は、例えば、100Hz以上、5kH以下程度である。交流期間PH21の長さt21aは、特に限定されず、例えば、5ms(ミリ秒)以上、20ms(ミリ秒)以下程度とできる。
この構成によれば、第1駆動期間PH11と第2駆動期間PH12との間に交流期間PH21が設けられるため、交流期間PH21が設けられていない場合に比べて、第1電極92の温度と第2電極93の温度との差の変化を緩やかにすることができる。これにより、アークフレア方向AFDを、図3に示す状態から図5に示す状態へと、緩やかに変化させることができる。したがって、対流ACによる熱を発光管上部510aの内壁の広い範囲で均等に分散して受けやすい。その結果、失透が生じることをより抑制できる。
また、本実施形態においては、直交方向(Z軸方向)が鉛直方向であるものとしたが、これに限られない。
なお、上記の各実施形態において、透過型のプロジェクターに本発明を適用した場合の例について説明したが、本発明は、反射型のプロジェクターにも適用することも可能である。ここで、「透過型」とは、液晶パネル等を含む液晶ライトバルブが光を透過するタイプであることを意味する。「反射型」とは、液晶ライトバルブが光を反射するタイプであることを意味する。なお、光変調装置は、液晶パネル等に限られず、例えばマイクロミラーを用いた光変調装置であってもよい。
また、上記の各実施形態において、3つの液晶パネル560R,560G,560B(液晶ライトバルブ330R,330G,330B)を用いたプロジェクター500の例を挙げたが、本発明は、1つの液晶パネルのみを用いたプロジェクター、4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクターにも適用可能である。
また、上記説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
本実施形態の実施例を、比較例1,2と比較することで本発明の効果を検証した。実施例および比較例1,2の両方において、放電灯は、定格電力200Wの高圧水銀ランプとした。実施例においては、放電灯に図9に示す駆動電流波形DW1に沿った駆動電流Iを供給した。第1直流期間PH11aの長さt11aおよび第2直流期間PH12aの長さt12aは、20ms(ミリ秒)とした。接続期間PH11b,PH12bの長さt11b,12bは、0.5ms(ミリ秒)とした。
比較例1においては、放電灯に図13に示す駆動電流波形DW3に沿った駆動電流Iを供給した。図13は、比較例1の駆動電流波形DW3を示すグラフである。図13において縦軸は駆動電流Iを示しており、横軸は時間Tを示している。図13において駆動電流Iは、第1極性状態である場合を正とし、第2極性状態となる場合を負として示している。
図13に示すように、駆動電流波形DW3は、連続して設けられる複数の第1混合期間PH31と、連続して設けられる複数の第2混合期間PH32と、を交互に有する。第1混合期間PH31は、第1交流期間PH31aと、第2交流期間PH31bと、直流期間PH31cと、をこの順で有する。第1交流期間PH31aおよび第2交流期間PH31bは、駆動電流Iの値がIm1と−Im1との間で交互に切り替わる交流電流が放電灯に供給される期間である。直流期間PH31cは、駆動電流Iの値がIm1で一定に維持される直流電流が放電灯に供給される期間である。
比較例1において、第1交流期間PH31aにおける交流電流の周波数は、200Hzとした。第1交流期間PH31aの長さt31aは、200Hzの交流電流の3周期分の長さ、すなわち、15ms(ミリ秒)とした。比較例1において、第2交流期間PH31bにおける交流電流の周波数は、190Hzとした。第2交流期間PH31bの長さt31bは、190Hzの交流電流の2周期分の長さ、すなわち、約11ms(ミリ秒)とした。直流期間PH31cの長さt31cは、5ms(ミリ秒)とした。
比較例2においては、周波数が1kHzの交流電流を放電灯に供給した。
実施例および比較例1,2のそれぞれを、駆動電力200Wで1000h(時間)点灯させたときの、発光管の黒化状態について観察し、発光管に生じた失透の失透面積[mm2]、および放電灯の照度維持率[%]を測定した。結果を表1に示す。
表1において黒化状態は、黒化が生じなかった場合を○として示し、黒化生じた場合を×として示している。
表1から、比較例1,2では、失透および黒化が生じているのに対して、実施例では、失透および黒化が生じていないことが確かめられた。その結果、比較例1,2では、照度維持率が大きく低下しているのに対して、実施例では、照度維持率を維持できていることが確かめられた。
したがって、本実施例によれば、失透が生じることを抑制できることが確かめられた。また、本実施例によれば、黒化が生じることも抑制でき、照度維持率が低下することを抑制できることも確かめられた。以上により、本発明の有用性を確認できた。