JP2016185890A - 耐火物及びスライディングノズル用プレート - Google Patents

耐火物及びスライディングノズル用プレート Download PDF

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Abstract

【課題】AlCを含有する耐火物であって、低熱膨張率、低弾性率というAlC固有の特徴を有していると共に、緻密で強固なマトリックスを持ち、鋳造中の受熱によるAlCの大幅な変質による著しい劣化も抑制できる耐火物、及びその耐火物を使用したスライディングノズル用プレートを提供する。
【解決手段】AlC、Al、フリーの炭素及びSiOを含有し、AlCの含有量が15質量%以上40質量%以下、フリーの炭素の含有量が3質量%以上7質量%以下、SiOの含有量が1質量%以上5質量%以下、SiO/AlCの質量比が0.025以上0.20以下であり、かつ、AlC、Al及びフリーの炭素の含有量の合計が90質量%以上である耐火物。
【選択図】なし

Description

本発明は、鋼の鋳造に好適に使用される耐火物、及びその耐火物を使用したスライディングノズル用プレートに関する。
鋼の鋳造において、取鍋やタンディッシュ等の溶鋼容器から排出される溶鋼の流路たる鋳造用ノズル又は溶鋼の流量を制御するスライディングノズル装置が使用される。このスライディングノズル装置には、2枚又は3枚の耐火物製のノズル孔を持つスライディングノズル用プレートが使用される。スライディングノズル用プレートは拘束された条件下、重ね合わせられ、さらに面圧が付加された状態で摺動され、ノズル孔の開度を調整することで溶鋼の流量が調整される。
このことから、スライディングノズル用プレートには、拘束条件下での使用に耐えうる機械的強度、鋳造時の熱応力に対する耐熱衝撃性、溶鋼中の成分やスラグなどに対する耐食性、耐酸化性、さらには、稼動面となる摺動面が損耗を受ける面荒れに対する耐面荒れ性などの特性が要求される。
スライディングノズル用プレートには、一般的に、アルミナ−炭素質耐火物が使用されており、例えば耐熱衝撃性を向上させるために、低熱膨張率であるジルコニアムライトやアルミナジルコニア等の耐火原料が使用されている。ただし、ジルコニアムライトはSiO成分を含むことから耐食性は低下する。アルミナジルコニアはSiO成分を含まないことからジルコニアムライトよりも耐食性に優れているが、熱膨張率の低減効果が小さい。
従来一般的に、耐食性を向上させるためには、スラグと反応しにくい電融アルミナ等の高純度で緻密な原料の使用、さらに炭素の種類や炭素含有量の適正化等が実施されている。構造体としての強度を確保し、また摺動による耐磨耗性を向上するためには、使用する原料の粒度構成の適正化等により組織を緻密化し高強度化する、さらには摺動面の研磨精度を向上させるなどの手法が実施されている。また、酸化防止並びに強度及び耐磨耗性向上に有効な炭化珪素、炭化硼素、窒化アルミニウム等の非酸化物や、シリコン、アルミニウムなどの金属が適宜用いられている。
これらのほか、ジルコニアムライト等と比較して耐食性に優れ、1000℃の熱膨張係率が約0.4%と、アルミナと比較して約半分の低熱膨張率であるアルミニウムオキシカーバイド(AlC)を含有する原料の適用も提案されている。
例えば特許文献1には、AlCを15.5質量%以上95質量%以下含有する炭素含有耐火物が示されている。AlCを15.5質量%以上含有することで、熱膨張率が低減して耐熱衝撃性が向上するとともに、耐酸化性及び耐食性も向上することが示されている。
しかしながら、取鍋用のスライディングノズル用プレートなど、大型形状で長時間、多数回繰り返し使用される条件に、特許文献1の耐火物を適用した場合、むしろAlCが焼結し、高弾性率となることでエッジ欠けなどの損耗を生じやすくなる。すなわち、高温条件となるノズル孔周り等では、耐火物の気孔中の一酸化炭素とAlCが反応し、AlとCを析出するが、この際、体積膨張を伴うことから組織が過度に緻密化し、高強度、高弾性率となる。適度な緻密化は、耐磨耗性や耐食性の向上に寄与するが、焼結が進行して著しく緻密化すると過度に高弾性率となるとともに、前記の反応によりAlCの含有量が減少することから、AlCによる熱膨張率の低減効果が失われ、耐熱衝撃性が低下する。よって、特許文献1の耐火物は、繰り返し多数回使用される条件や、長時間鋳造等の条件への適用には適していない。
特許文献2には、鋳造時の受熱によりAlCが一酸化炭素により酸化されアルミナ化することを抑制することを目的として、AlCの結晶の断面積を円に換算したときの平均直径が20μm以上であるアルミニウムオキシカーバイド組成物を15〜95質量%含有する耐火物が示されている。このアルミニウムオキシカーバイド組成物は、AlCの結晶とコランダムの結晶とが交互に積層されて配列された層状組織を有しており、安定なコランダム層がAlCの結晶の酸化(アルミナ化)を抑制することで、AlCの効果を長時間保持することが可能である。
しかしながら、トータルの鋳造時間が800分を上回るような、より長時間の鋳造を行う過酷な使用条件では、この特許文献2のアルミニウムオキシカーバイド組成物を適用したスライディングノズル用プレートであっても、特に高温条件下となるノズル孔周りでは、AlCの一酸化炭素による酸化で、アルミナ化が進行し、組織が緻密化し、エッジ欠け等の損耗を生じやすくなる。また、このアルミニウムオキシカーバイド組成物を適用した配合を成形した成形体を1000℃以上の高温で焼成する、いわゆる高温焼成タイプのスライディングノズル用プレートでは、焼成によりAlCがアルミナ化し、炭素を析出することで体積膨張し、組織が過度に緻密化する。よって弾性率が著しく上昇することがあるから、高温焼成タイプのスライディングノズルプレートの場合、AlCの特徴である耐熱衝撃性に優れるという特性を得ることができない場合がある。
特開2012−072006号公報 特開2013−053034号公報
前述のとおり、AlCを含有する耐火物は、熱膨張率が低く、耐熱衝撃性に優れるという特徴を有しているが、使用条件等によっては、次のような問題点が生じる。
(1)長時間の鋳造条件、特に一酸化炭素雰囲気下ではAlとCを析出してAlCの変質が進行し、AlCの特徴である熱膨張率の低減効果が減衰して、この特徴を持続することが困難となる。
(2)高温焼成タイプのスライディングノズル用プレートなど、1000℃以上の高温で焼成すると、AlCの焼結が進行して著しく高強度・高弾性率となり熱膨張率の低減効果が小さくなる。
これらの問題点を解消するために、AlCを含有する材質を低温度域で焼成する(低温焼成タイプ又は不焼成タイプ)等の手段を講じることも考えられる。しかしながら、低温焼成タイプ又は不焼成タイプは、高温焼成タイプと比較するとマトリックスの緻密さ及び強固さが十分でなく、強度や耐酸化性及び耐磨耗性に劣る。また、低温焼成タイプ又は不焼成タイプは、強度付与や緻密化のために一般的にAlを含有することから、鋳造中の受熱によるAlの焼結作用により弾性率が上昇する、組織が変化する等の点で、高温焼成タイプと比較して、特性や組織の安定性に劣る。
本発明が解決しようとする課題は、AlCを含有する耐火物であって、低熱膨張率、低弾性率というAlC固有の特徴を有していると共に、緻密で強固なマトリックスを持ち、鋳造中の受熱によるAlCの大幅な変質による著しい劣化も抑制できる耐火物、及びその耐火物を使用したスライディングノズル用プレートを提供することにある。
本発明は、次の(1)〜(7)に記載の耐火物、及び(8)に記載のスライディングノズル用プレートを提供する。
(1)AlC、Al、フリーの炭素及びSiOを含有し、AlCの含有量が15質量%以上40質量%以下、フリーの炭素の含有量が3質量%以上7質量%以下、SiOの含有量が1質量%以上5質量%以下、SiO/AlCの質量比が0.025以上0.20以下であり、かつ、AlC、Al及びフリーの炭素の含有量の合計が90質量%以上である耐火物。
(2)前記のAlC、Al、フリーの炭素及びSiO以外の残部が、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物及び金属の群から選択される1種又は2種以上からなる、(1)に記載の耐火物。
(3)前記AlCの結晶の大きさが、当該AlCの結晶の断面積を円に換算したときの平均直径で20μm以上である、(1)又は(2)に記載の耐火物。
(4)前記AlCを含む粒子が、電融法により製造された原料に由来する粒子であって、コランダムを含む、(1)から(3)のいずれかに記載の耐火物。
(5)前記AlCを含む粒子が、当該耐火物のマトリクスと接する部分の少なくとも一部で変質層を形成しており、当該変質層は、厚さが1μm以上50μm以下で、Alを含有する、(1)から(4)のいずれかに記載の耐火物。
(6)前記SiOは、非晶質若しくは結晶質のSiOを主体とする構成物、又はAlとの化合物を主体とする構成物である、(1)から(5)のいずれかに記載の耐火物。
(7)前記AlCを含む粒子の変質層以外のSiOを含む構成物のうち粒子状構成物の最大径が、100μm以下である、(1)から(6)のいずれかに記載の耐火物。
(8)(1)から(7)のいずれかに記載の耐火物を使用した、スライディングノズル用プレート。
ここで、「フリーの炭素」とは他の元素との化合物を除く炭素成分のことをいう。このフリーの炭素は、非晶質であるか結晶質であるか等の形態を問わない。なお、「非晶質」を本明細書では「無定形」と同意義で使用する。
本発明によれば、AlCを含有する耐火物において、焼成又は使用中の高温還元雰囲気下での、AlCの変質による組織劣化や、過度の焼結による弾性率上昇による耐熱衝撃性の低下を抑制することが可能となる。よって、低熱膨張率、低弾性率というAlC固有の特徴がいかんなく発揮され、その耐火物の耐用性を高めることができる。そして、本発明の耐火物を鋳造用耐火物、特にスライディングノズル用プレートに適用することで、長時間繰り返し使用しても損耗が軽減され、優れた耐用性を得ることができる。
以下、本発明の耐化物について、主としてスライディングノズル用プレートに適用する場合を例に説明する。
本発明の耐火物において、AlCの含有量は15質量%以上40質量%以下である。AlCの含有量が15質量%未満では、耐火物の熱膨張率が高くなり、十分な耐熱衝撃性を得ることができない。AlCの含有量が40質量%を超えると、耐火物の熱膨張率が著しく低くなり、特にメタルバンドを周囲に巻くスライディングノズル用プレートでは、鋳造時の受熱による耐火物の熱膨張量よりもメタルバンドの熱膨張量が大きくなってメタルバンドがずれる等の問題を生じることがある。これがスライディングノズル用プレートの亀裂の拡大ないしは耐用性の低下を惹き起こし、また使用後の取り外し作業に支障を来す等、メタルバンドの機能を減殺することになる。
また本発明の耐火物は、AlCに加えAlとフリーの炭素を含有し、これらAlC、Al及びフリーの炭素の含有量の合計が90質量%以上である。
AlCは還元性の強い物質であることから、耐火物中にSiO、MgO、ZrO、TiO等の成分を含む場合は、鋳造中の高温条件下で、これらの成分がAlCにより還元されて消失する、又はZrC等の炭化物等を生成する等により、組織の安定性を保てなくなって亀裂や組織劣化の原因となることがある。これらの成分に対してAlは、AlCとの共存下でも還元され難く、鋳造中等の高温下でも安定して使用できることから、その他主骨材の成分として使用することが好ましい。
一方、AlCは炭素と接する場合、温度、雰囲気条件によっては下記(1)の反応によりAlガスと一酸化炭素に分解することが知られている。
AlC(s)+3C(s)=4Al(g)+4CO(g) …(1)
この反応によりAlCを含む粒子の表層から散逸したAlガスは、これら粒子の界面又は周囲で再酸化され、Alとして析出し、粒界を埋めて緻密化するとともに高弾性率化し、耐熱衝撃性を低下させる要因となると考えられる。また、炭素がさらに多量に存在する場合、温度、雰囲気条件によっては、下記(2)の反応により、Alを生成する。
AlC(s)+6C(s)=Al(s)+4CO(g) …(2)
このように、AlCは還元性の強い物質ではあるが、耐火物中のフリーの炭素のほか、AlやSi等のAlCより還元性の強い物質を多量に併存させて非酸化雰囲気中1000℃以上の高温で焼成すると、耐火物(マトリクス)は緻密化するものの、AlC自体が還元されAlの生成が促進される。Alを生成すると、AlCによる低熱膨張性の特徴ないし効果が損なわれるだけでなく、水和反応により亀裂を生じ、製品の歩留まり低下の要因となり、耐火物内部の組織劣化により使用中の損傷促進の要因となる。また、焼成段階でAlを生成せずに製品化できたとしても、耐火物(マトリクス)中にフリーの炭素や、Al、Si等の残存金属、炭化物、窒化物等、還元性の物質を含有すると、同様に長時間の鋳造等、高温に長時間曝される条件ではAlC自体が還元されAlを生成することとなる。
これに対して本発明の耐火物では、SiOを1質量%以上5質量%以下含有させることで、非酸化雰囲気下での高温焼成中、又は高温に長時間曝される長時間の鋳造条件でも、耐火物(マトリックス)内部の強還元雰囲気をSiOが緩衝し(酸素供給源として作用する)、AlCの還元によるAlの生成を抑制する効果が得られる。また、SiOが周囲の炭素に還元され、一酸化炭素とSiOガスに分解された場合は、発生した一酸化炭素がAlCと反応し、AlCを含有する粒子の表層にAlを主成分とする反応層(変質層)を形成する。このAlを主成分とする変質層の形成により、AlCの焼結、酸化や還元による反応を抑制する効果が得られ、弾性率の上昇を抑制できるとともに、スライディングノズル用プレート等の耐火物の低熱膨張率効果を持続することが可能となる。
すなわち、SiOを、AlC及びフリーの炭素を含む耐火物(マトリックス)中に含有させると、下記(3)及び(4)の反応により一酸化炭素とSiOが発生し、発生した一酸化炭素等がAlCと反応し、AlCを含む粒子の表層にAlを主成分とする緻密な変質層が形成される。
SiO(s)+2C(s)=SiO(g)+CO(g) …(3)
AlC(s)+2CO(g)=2Al(s)+3C(s) …(4)
この緻密な変質層が、炭素との接触及び反応によるAlCの分解、その分解によるAlガスの散逸を抑制し、焼結による弾性率の上昇やAlの生成を抑制する効果が得られると考えられる。
このように本発明の耐火物においては、AlCを含む粒子が、耐火物のマトリックスと接する部分の少なくとも一部で変質層を形成し、この変質層はAlを含有する。そして、AlCを含む粒子の表層にAl23を主成分とする変質層が存在することで、長時間鋳造等、長時間の熱負荷を受けた場合でも、この変質層が、AlCと周囲の雰囲気が直接接触することを防ぎ、AlCの変質を抑制することが可能となる。なお、この変質層はAl23を主成分とするものであるが、SiO2(SiOガス等)や、AlCの周囲に存在する物質との反応による化合物が含まれることもある。
AlCを含む粒子表層の変質層は、AlCを含む原料粒子を予め、約1000℃以上の温度条件下、一酸化炭素雰囲気などで、所定の時間熱処理することにより、形成することができる。また、AlCを含む原料粒子、Alを含む原料粒子、フリーの炭素を含む原料粒子(炭素質原料)、及びSiOを含む原料粒子を所定の割合で配合してバインダーを加え、混練、分散した後に所定の圧力で成形した成形体を、還元雰囲気又は非酸化雰囲気で、約1000℃以上の温度条件で焼成することで、SiOが酸素の供給源となり、AlCを含む粒子の表層にAl23を主な成分とする変質層の形成を促進することもできる。
この変質層の厚さは、焼成温度及び焼成時間に加えて、SiOを含む原料粒子の種類や量の影響も受けるが、耐火物の組織中において、そのマトリックスと接するAlCを含む粒子の変質層の厚さは1μm以上50μm以下であることが好ましい。この変質層の厚さが1μm未満では、AlCの変質を抑制する効果が得られにくく、厚さが50μmを超えると、実質的に耐火物(骨材)中のAlCの含有量が少なくなることから熱膨張率が高くなり、耐熱衝撃性が低下する虞が生じる。
前述のとおりSiOは、AlCを含む粒子表層における変質層の形成に寄与する。このことから、本発明の耐火物ではまず、SiO自体の含有量を1質量%以上5質量%以下としている。SiOの含有量が1質量%未満では、耐火物の組織内部の強還元雰囲気を緩衝する効果が小さく、SiOの含有量が5質量%を超えると、耐食性が低下する傾向となり、特にスライディングノズル用プレート等の浸食性の強い溶鋼やスラグ等に直接接触する用途では十分な耐用性を得ることができない。
また、SiOはAlCとの関係で変質層を形成させるので、その含有量はAlCの含有量に応じて相対的にも規定すべきである。すなわち、本発明では、SiO/AlCの質量比を0.025以上0.20以下としている。この質量比が0.025未満では、AlCを含む粒子の表層全体に十分な作用を及ぼすことができず、変質層の形成が不均一になる。また、この質量比が0.20を超えると、過剰なSiOが耐火物(マトリクス)中の他の成分及び操業中の外来成分等と低融物を生成して耐食性等の低下を招来しやすくなる。
さらに、SiOは耐火物中の雰囲気の緩衝材となることから、耐火物中に存在するSiOを含む粒子は、できるだけ微細で、耐火物中に均一に存在することが望ましい。この点から、本発明の耐火物においてSiOを含む粒子の最大径は100μm以下であることが好ましい。また、SiOを含む粒子は、その反応性を高めるために、できるだけ、例えばヒュームドシリカ、溶融シリカ等の呼称で流通する非晶質であることが好ましい。ここで、前記の最大径を特定する対象となる「SiOを含む粒子」とは、AlCを含む粒子の変質層以外のSiOを含む構成物のうち粒子状構成物のことをいう。すなわち、仮にAlCを含む粒子の変質層にSiOが含まれていたとしても、このAlCを含む粒子は、最大径を特定する際には「SiOを含む粒子」とは扱わない。言い換えれば、この「SiOを含む粒子」は、本発明の耐火物において、SiO源の原料粒子として含有させたSiOの未反応分、あるいはAlCとの反応以外の反応又は析出物として存在する。
なお、このようなSiOは、主として非晶質又は結晶質のSiO成分を主体とする構成物として存在するが、本発明の耐火物では、Alとの化合物を主体とする構成物としても存在しうる。また、このAlとの化合物は、前記変質層中にも存在しうる。
原料としてのSiOの場合は、溶融シリカ等の非晶質、クリストバライト、トリジマイト、石英等のSiO成分単体で構成される鉱物、ムライト、アンダリューサイト、カイアナイト、シリマナイト、カオリナイト等のAl−SiO系成分から構成される鉱物から選択する1種類以上であることが好ましい。非晶質であってもアルカリ金属酸化物や硼素を多量に含むガラスや、例えばMgO、CaO等のAl以外の成分との化合物等は低融物を生成して耐食性の低下等を惹き起こすので、含有しないことが好ましい。
フリーの炭素は、前述のとおり、SiOを還元しながらAlCを含む粒子の表層に変質層を形成させるために不可欠である。フリーの炭素にはマトリクスを形成する結合機能を担うものや、粒子状として含む場合はフィラーとしての諸機能を担うものも含まれる。そのようなフリーの炭素は3質量%以上7質量%以下必要である。3質量%未満では、前記の変質層の形成が不均一若しくは不十分であったり、又は耐火物(特にマトリクス部分)としての強度や耐熱衝撃性が低下する虞がある。7質量%を超えると、前記の変質層の形成は十分であるものの、耐磨耗性、耐酸化性又は耐消化性の低下を生じやすくなる。
AlC、Al、フリーの炭素及びSiO以外の残部の成分としては、MgO、ZrO、TiO等の酸化物、SiC、BC、Al等の炭化物、Si、AlN、BN等の窒化物、又はホウ化物を含有することができる。ただし、SiC、BC、BN、Siを多量に含有する場合は、溶鋼との反応による溶出や、FeOによる溶損により耐火物の損耗が大きくなる。また、Al、AlNを多量に含有する場合は、水和反応により耐火物が消化する等の問題が生じる。さらに、AlN、BN、BC等は、非常に高価な原料であり、多量に添加すると費用に対する効果を十分得られないだけでなく、消化によるトラブルや耐食性の低下による耐用低下を招く。また、Al、Si、Mg、Fe等の金属を焼結材や酸化防止剤として含有することも可能であるが、多量に添加すると、焼成工程又は鋳造時の受熱により焼結が進行し著しく高弾性率となり耐熱衝撃性を低下させる要因となり好ましくない。
これら残部の構成物は複数種を併存させることもできるが、必須ではないので含有しなくてもよい。
本発明の耐火物においてAlCを含む粒子は、アーク溶融法等の電融法により製造された電融原料に由来する粒子であって、この電融原料がAlC及びコランダムを含有し、電融原料中のAlCの結晶の大きさが、AlCの結晶の断面積を円に換算したときの平均直径で20μm以上であることが好ましい。なお、この電融原料中のAlCの結晶の大きさは、ほぼそのまま、耐火物中のAlCの結晶の大きさとなる。
AlCを含む原料は、焼結法では生産性が低く、量産することが困難である。したがって、焼結法による原料は大変高価となり、スライディングノズル用プレート等の耐火物への産業上の適用は現実的に困難である。また、焼結法では、結晶径が大きいAlCを得ることは困難であり、微粉として耐火物に適用することは容易であるが、緻密な骨材原料として適用することは困難である。
これに対して、電融法により製造されたAlCを含む電融原料は、生産性が高く、比較的安価に多量に製造できる。さらに、AlCの結晶が大きく緻密な原料を得ることができる。電融法によるAlCを含む電融原料は、出発原料としてアルミナ原料と炭素質原料を所定の比率で混合し、アーク溶融後、冷却することで製造される。そして、出発原料中のアルミナ原料が多い場合は、AlCとコランダムを主な構成鉱物とする電融原料が製造される。一方、炭素質原料が多い場合は、AlCとAl又はAlOCを主な構成鉱物とする電融原料が製造される。AlCとコランダムを主な構成鉱物とする原料は、組織も安定しており耐食性も良好であるが、AlCとAl又はAlOCを主な構成鉱物とする原料は、水和されやすく、骨材として使用しても粒子の崩壊が生じるなど安定した組織を得ることができない。
また、この電融原料中のAlCの結晶の大きさは大きいほど、高温の酸化雰囲気中であっても、AlCの酸化によるAl化が進行し難く、これを使用した耐火物は安定した組織を維持し、低熱膨張率化の効果を持続することが可能である。また、高温の還元雰囲気であっても、AlCが還元によりAlを生成し難く、これを使用した耐火物は水和による組織崩壊を生じることなく、安定した組織を保持することが可能である。
前述のとおり、この電融原料中のAlCの結晶の大きさは、ほぼそのまま、耐火物中のAlCの結晶の大きさとなる。すなわち、本発明の耐火物では、その耐火物中のAlCの結晶の大きさは大きいほど好ましく、具体的には、耐火物中のAlCの結晶の断面積を円に換算したときの平均直径で20μm以上であることが好ましい。この平均直径の上限は特に限定されないが、また個別の用途に応じて設計する耐火物中に含有させるAlCを含む粒子の最大大きさと同程度でもよいが、AlCを含む粒子内部の構造がAlCとAlとの層状となることから、上限は事実上、概ね250μm程度となる。
本発明の耐火物は、各々の用途、使用条件に応じた通常の耐火物製品としての製造方法に準じて製造することができる。例えばスライディングノズル用プレートの場合、前述の原料から構成された粉体に、結合材としてのフェノール樹脂等を添加し混練して坏土を作製する、その坏土を所定の成形機・成形条件にて成形する、その成形体を所定の熱処理(乾燥及び非酸化雰囲気中での焼成)を行う、焼成後、その焼成体にタールやピッチを含浸する(必須ではない)、含浸した焼成体を熱処理する(揮発分の除去)、所定の表面加工を行う等の、スライディングノズル用プレートの通常の製造工程を採用することができる。
本実施例では、下記の表1A、表1B及び表2に示す原料構成に従い各原料を所定の割合に秤量し、ミキサー内で混合し、有機バインダーとしてフェノールレジンを加えさらに混練を行い、坏土を作製した。これらの坏土をオイルプレス(一軸成形機)で230mm×100mm×47mmの形状に、所定の圧力で成形し、成形体を作製した。さらにこれらの成形体を非酸化雰囲気で、所定の温度で焼成し、評価用の耐火物を作製した。各耐火物中のAlCを含む粒子表層の変質層の厚さは、焼成温度及び焼成時間を変更することにより、調整した。すなわち焼成温度が高いほどAlCを含む粒子の表層に形成される変質層は厚くなり、また、同じ焼成温度でも最高焼成温度のキープ時間が長いほど、変質層は厚くなる。
なお、本実施例では、表1A、表1B及び表2に示すとおり、AlCを含むアルミニウムオキシカーバイド原料(AlC組成物)として、AlC組成物1〜6の6種を使用した、各AlC組成物の性状は以下のとおりである。
(1)AlC組成物1
AlCの含有量が80質量%で残部がコランダムより構成され、さらにAlCとコランダムが層状に配置された組織を取り、AlCの結晶の大きさ(AlCの結晶の断面積を円に換算したときの平均直径をいう。以下同じ。)が80μmで、電融法により製造されたアルミニウムオキシカーバイド原料。
(2)AlC組成物2
AlCの含有量が70質量%で残部がコランダムより構成され、さらにAlCとコランダムが層状に配置された組織を取り、AlCの結晶の大きさが20μmの電融法により製造されたアルミニウムオキシカーバイド原料。
(3)AlC組成物3
AlCの含有量が80質量%で残部がコランダムより構成され、さらにAlCとコランダムが層状に配置された組織を取り、AlCの結晶の大きさが15μmの電融法により製造されたアルミニウムオキシカーバイド原料。
(4)AlC組成物4
AlCの含有量が80質量%で残部がコランダムより構成され、さらにAlCとコランダムが層状に配置された組織を取り、AlCの結晶の大きさが20μmの電融法により製造されたアルミニウムオキシカーバイド原料。
(5)AlC組成物5
AlCの含有量が80質量%で残部がコランダムより構成され、さらにAlCとコランダムが層状に配置された組織を取り、AlCの結晶の大きさが250μmの電融法により製造されたアルミニウムオキシカーバイド原料。
(6)AlC組成物6
AlCの含有量が95質量%で残部がコランダムより構成され、AlCの結晶の大きさ3μmの焼結法により製造されたアルミニウムオキシカーバイド原料。
得られた耐火物について、以下の要領で組成(成分)を分析した。
(1)AlC、Al(コランダム)の各含有量ついては、X線回折による内部標準法で定量化を行った。標準サンプルがない場合はリードベルド法によるプロファイルから定量を行うことができる。
(2)フリーの炭素の含有量については、JIS−R−2012に準じて定量化を行った。
(3)SiOの含有量については、JIS−R−2216に準じて蛍光X線により定量化したSiO量から、X線回折による内部標準法で定量化したSiC量及びSi量をSiOに換算し、差し引いて定量化を行った。
(4)AlCを含む粒子の表層に形成される変質層の厚さとその成分については、顕微鏡サンプルを作製し、顕微鏡及びEPMAを用いて、その厚みを観察、評価するとともに、その化学成分を分析した。この分析の結果、変質層にはAlが主成分として含有されていることを確認した。
また、得られた耐火物から所定形状の試料を切り出し、以下の評価を行った。
(1)かさ比重、見掛け気孔率
JIS−R−2205に準じて評価した。
(2)曲げ強さ
JIS-R-2213に準じて評価した。
(3)弾性率
試料の両端に端子を当て、超音波パルスが試料を透過する伝播時間から試料中の音速を測定し、下記計算式で弾性率を算出した。
音速=試料長さ/伝播時間
弾性率=かさ比重×音速×音速
(4)熱膨張率
JIS−R−2207に準じて評価した。
(5)耐食性
高周波誘導炉にて、SS400と酸化鉄を用いて、1600℃で3時間、侵食試験を行った。この侵食試験により侵食された溶損量を、試験後にカットした試料の断面積から求め、この溶損量を指数化し、比較例1(表1A参照)を100として相対的に指数化した。この指数が小さいほど、耐食性に優れていることを示す。
いるということである。
(6)耐酸化磨耗性
回転炉を用い試料を大気雰囲気下、1000℃で2時間熱処理した後冷却する操作を3回繰り返した。BS(ブリティッシュスタンダード)磨耗法に準じて、酸化後の試料に砥粒をブラストし、磨耗量を定量化した。さらにこの磨耗量を、比較例1(表1A参照)を100として相対的に指数化した。この指数が小さいほど、耐酸化磨耗性に優れていることを示す。
(7)耐熱衝撃性(長時間使用、繰り返し使用、多数回使用に対する適性)
実炉使用を想定し、還元雰囲気で1500℃の温度条件で5時間保持する熱処理を行った後に、高周波誘導炉を用いて溶銑にサンプルを1600℃×3分間浸漬し,その後空冷する、溶銑浸漬法により評価を行った。具体的には、試験後の試料の亀裂の程度を評価した。
(8)メタルバンドずれ
実使用を想定し、実形状のスライディングノズル用プレートにメタルバンド(メタル製のフープ)を焼き嵌めし、バーナーで内孔を120分加熱し、メタルバンドの熱膨張量が低熱膨張率のスライディングノズル用プレートの熱膨張量よりも大きくなり、メタルバンドずれが生じるか否かを評価した。
(9)耐消化性
炭化アルミニウムの生成による水和、組織の安定性を評価することを目的として、オートクレーブを用いた消化(水和)試験を行った。耐消化性の評価は、50mm×50mm×50mmの形状の試料を学振法4に記載のマグネシアクリンカーの消化試験の方法に準じたオートクレーブを用いて、0.49MPaの加湿条件下、150℃で3時間保持し、試験後の試料の外観及び粉化率を評価した。粉化率が5%以下を良好(○)、5%超を不良(×)とした。
(10)総合評価
前記の耐食性、耐酸化磨耗性、耐熱衝撃性、メタルバンドずれ及び耐消化性の各評価結果を総合的して、優(◎)、良(○)、可(△)、不可(×)の4段階で評価した。可(△)以上が合格である。
[実施例A]
実施例Aは耐火物中のAlCの含有量、フリーの炭素の含有量、SiOの含有量、SiO/AlCの質量比、AlC、Al及びフリーの炭素の含有量の合計量(以下「3成分の合計量」という。)、SiO/AlCの質量比、AlCを含むアルミニウムオキシカーバイド原料(AlC組成物)中のAlCの結晶の大きさについて調査した例である。表1A及び表1Bにこれら各例の構成と結果を示す。
Figure 2016185890
Figure 2016185890
実施例1〜3は、AlC含有量が15質量%、フリーの炭素の含有量が5質量%、SiOの含有量が1〜3.1質量%、SiO/AlCの質量比が0.07〜0.20、前記3成分の合計量が92.5〜94.5質量%と、本発明の範囲内にある。これらの実施例1〜3は、SiOを含有しない又はその含有量が0.6質量%と少ない比較例1、2と比較して、長時間熱処理後の耐熱衝撃性が良好である。また、SiOの含有量が5質量%と本特許の請求範囲内にあってもSiO/AlCの質量比が0.327と本発明の範囲外の比較例3は、SiOが過剰となり著しく耐食性が低下するとともに、長時間熱処理を受けると余剰のSiOが焼結することから耐熱衝撃性がやや低下する傾向となる。
実施例4〜6は、AlC含有量が40質量%、フリーの炭素の含有量が5質量%、SiOの含有量が1〜5質量%、SiO/AlCの質量比が0.025〜0.125、前記3成分の合計量が91.1〜95質量%と、本発明の範囲内にある。これに対して、AlCの含有量は40質量%と実施例4〜6と同じであるもののSiOの含有量が6質量%、8質量%と本発明の範囲よりも多い比較例4、5は、耐食性が実施例4〜6と比較して著しく低下する。また、酸化処理後は組織も劣化することから、耐酸化性、耐磨耗性も低下する。
実施例7、8は、AlCの含有量が30.1質量%、23.6質量%でSiOを2質量%含有し、原料であるAlC組成物中のAlCの結晶の大きさが80μm、20μmと、本発明の範囲内である。実施例7、8は、ともに良好な耐食性、耐酸化磨耗性、耐熱衝撃性を示す。
一方、実施例12はAlCの含有量が22.2質量%でSiOを2質量%含有するが、原料であるAlC組成物中のAlCの結晶の大きさが15μmと小さい。このため、耐酸化磨耗性は良好であるものの、熱処理を受けるとAlCの変質が進行しやすく耐熱衝撃性にやや劣る。ただし、耐酸化磨耗性と耐食性を併せて総合的に判断すると、十分な効果があると判断される。
実施例2、9、10は、AlCを15質量%、SiOを2質量%含有し、フリーの炭素の含有量が3〜7質量%と本発明の範囲内である。いずれも良好な耐酸化磨耗性、耐食性、耐熱衝撃性を示す。これに対して、比較例6、7は、AlCを15質量%、SiOを2質量%含有するが、フリーの炭素の含有量が、それぞれ2.5質量%、8.0質量%と本発明の範囲外である。よって、フリーの炭素の含有量が少ない比較例6は、耐酸化磨耗性、耐食性は良好であるが、弾性率が高くなり、また長時間の熱処理によりフリーの炭素が少ないことで焼結が進行し、耐熱衝撃性が低下する。また、フリーの炭素の含有量が多い比較例7は、耐熱衝撃性は良好であるが、フリーの炭素が過剰となり耐酸化磨耗性及び耐食性が低下する。
実施例5、11は、AlCを40質量%、SiOを2質量%含有し、フリーの炭素含有量が、それぞれ5質量%、7質量%と本発明の範囲内である。いずれも良好な耐酸化磨耗性、耐食性、耐熱衝撃性を示す。一方、比較例8、9は、AlCを40質量%、SiOを2質量%含有するが、フリーの炭素の含有量が、それぞれ2.5質量%、8質量%と本発明の範囲外である。よって、フリーの炭素の含有量が少ない比較例8は、耐酸化磨耗性、耐食性は良好であるが、弾性率が高くなり、また長時間の熱処理によりフリーの炭素が少ないことで焼結が進行し、耐熱衝撃性が低下する。また、フリーの炭素の含有量が多い比較例9は、耐熱衝撃性は良好であるが、フリーの炭素が過剰となり耐酸化磨耗性及び耐食性が低下する。
実施例1〜11は、いずれもAlCの含有量が15〜40質量%の範囲にあり、SiOを1〜5質量%の範囲で含有し、SiO/AlCの質量比が0.025〜0.20と本発明の範囲内である。いずれも良好な耐酸化磨耗性、耐食性、耐熱衝撃性を示す。これに対して比較例10、11は、AlCの含有量がそれぞれ11.3質量%、45.2質量%と本発明の範囲外である。AlCの含有量が少ない比較例10は、十分な熱膨張率の低減効果を得ることができず、AlCを15質量%含有する実施例1〜3及び実施例9、10と比較して耐熱衝撃性が劣る。また、AlCの含有量が多い比較例11は、耐酸化磨耗性、耐食性、耐熱衝撃性いずれも良好であったが、実形状のスライディングノズル用プレートを製造し、メタルバンドを焼き嵌めした試料の内孔をバーナーで加熱する実炉を模擬した加熱試験を実施した結果、スライディングノズル用プレートの熱膨張率が著しく低いことから、高温度域にあるスライディングノズル用プレートの膨張量に対して、外周のメタルバンドの熱膨張量の方が大きくなり、メタルバンドの拘束力が低下してメタルバンドがずれ落ちるという現象が生じた。実使用で同様の現象が生じた場合はプレートの摺動に不具合が生じる、プレートの亀裂が拡大する、使用後のプレートの回収が困難になる、再使用が困難になるなど多くのトラブルを生じる要因となることから、実使用には適さないと判断される。
一方、比較例12、13は、前記3成分の合計量が88.9質量%、88.6質量%と本発明の範囲よりも少ない。このため、前記3成分(AlC、Al及びフリーの炭素)以外の成分が相対的に多くなり、耐食性や耐酸化磨耗性が低下する。
なお、比較例2のAlC粒子の変質層の厚みは、最大部で0.5μmではあるものの、厚みや生成状態が不均一であった。
[実施例B]
実施例Bは、耐火物中のAlCを含有する粒子(以下「AlC粒子」という。)の表層の変質層の厚さ(AlC粒子が耐火物のマトリクスと接する部分における変質層の厚さ)について検討した結果である。顕微鏡によるミクロ組織観察により変質層の厚さを評価するとともに、EPMAによる分析結果からこの変質層はいずれもAlを主な成分としていることを確認している。また、実施例Bでは、SiO成分の形態、粒度に関しても検討を行っている。表2にこれらの構成と結果を示す。
Figure 2016185890
実施例13〜16はAlCを20〜30.1質量%の範囲で含有し、SiOの含有量が2質量%であり、AlC粒子の表層にあってAlを主な成分とする変質層の厚さが1μm以上50μm以下で、本発明の範囲内にある耐火物である。これら実施例13〜実施例15は、いずれも良好な耐食性、耐酸化磨耗性を示し、長時間受熱後の耐熱衝撃性も良好である。
一方、実施例25は、変質層の厚さが0.8μmと薄い。このため、長時間受熱後の耐熱衝撃性が実施例13〜16と比較してやや劣るが、耐酸化磨耗性、耐食性と併せて総合的に判断すると、十分効果があると判断される。
また、実施例26は、変質層の厚さが55μmと厚い。このため焼成後、プレート耐火物製品として本発明の範囲内のAlCの含有量を確保するためには、AlC含有原料中のAlC粒子の平均直径が55μm以上の原料を多量に適用する必要がある。実施例26は、AlC粒子の平均直径が250μmの原料を60質量%、すなわちAlCとしては48質量%と多量に適用しているが、焼成により表層に55μmと厚い変質層を形成したことから、AlCの含有量は22.6%と大幅に減少している。このため焼成によるAlCの変質に伴い著しく高弾性率となり耐熱衝撃性がやや低下する傾向にある。しかしながら耐酸化磨耗性、耐食性と併せて総合的に評価を行うと十分にその効果があると判断される。
実施例14、17〜20は、いずれもAlCの含有量が21質量%であり、SiO成分を2.0質量%含有し、SiOを含有するシリカ原料の最大粒径が100μm以下の原料を適用した結果を示す。実施例14は無定形のマイクロシリカを、実施例17、18は溶融シリカを、実施例19は石英を90質量%以上含む珪石を、実施例20はクリストバライトを、実施例21はトリジマイトを、それぞれシリカ原料として含有する耐火物であり、いずれも良好な耐食性、耐酸化磨耗性を示し、長時間受熱後の耐熱衝撃性も良好である。
一方、実施例27は、AlCの含有量が21質量%であり、無定形のマイクロシリカと最大粒径が100μm超の粒度の溶融シリカをSiO成分として合計2質量%含有する。粒径100μm超の大きな溶融シリカを含むことから、耐火物のマトリックス中でSiO成分が局所的に偏在しやすく、長時間受熱時に強還元雰囲気の緩衝材としてAlC粒子の変質を抑制する効果が小さくなる。よって、最大粒径が100μm以下の溶融シリカを2質量%適用した実施例17、18と比較して耐熱衝撃性がやや低下する傾向にあるが、耐酸化磨耗性、耐食性と併せて総合的に評価を行うと、十分効果があると判断される。
なお、表2では、原料構成においてシリカ原料の最大粒径を示しているが、得られた耐火物中において、前記の変質層以外のSiOを含む構成物のうち粒子状構成物の最大径は、シリカ原料の最大粒径を超えることはない。また、表2中の最大粒径が144μmの溶融シリカは、粒径100μm超のものを20質量%以上含有する。
実施例22〜24は、いずれもAlCの含有量が21質量%であり、それぞれ、ムライト、アンダリューサイト、シリマナイトといった、Al-SiO系の鉱物相を含む、最大粒径が100μm以下の原料をシリカ原料として適用し、耐火物中にSiOを1.1〜1.3質量%の範囲で含有する耐火物である。いずれも本発明の範囲内であり、良好な耐食性、耐酸化磨耗性を示し、長時間受熱後の耐熱衝撃性も良好である。

Claims (8)

  1. AlC、Al、フリーの炭素及びSiOを含有し、AlCの含有量が15質量%以上40質量%以下、フリーの炭素の含有量が3質量%以上7質量%以下、SiOの含有量が1質量%以上5質量%以下、SiO/AlCの質量比が0.025以上0.20以下であり、かつ、AlC、Al及びフリーの炭素の含有量の合計が90質量%以上である耐火物。
  2. 前記のAlC、Al、フリーの炭素及びSiO以外の残部が、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物及び金属の群から選択される1種又は2種以上からなる、請求項1に記載の耐火物。
  3. 前記AlCの結晶の大きさが、当該AlCの結晶の断面積を円に換算したときの平均直径で20μm以上である、請求項1又は請求項2に記載の耐火物。
  4. 前記AlCを含む粒子が、電融法により製造された原料に由来する粒子であって、コランダムを含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物。
  5. 前記AlCを含む粒子が、当該耐火物のマトリクスと接する部分の少なくとも一部で変質層を形成しており、当該変質層は、厚さが1μm以上50μm以下で、Alを含有する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の耐火物。
  6. 前記SiOは、非晶質若しくは結晶質のSiOを主体とする構成物、又はAlとの化合物を主体とする構成物である、請求項1から請求項5のいずれかに記載の耐火物。
  7. 前記AlCを含む粒子の変質層以外のSiOを含む構成物のうち粒子状構成物の最大径が、100μm以下である、請求項1から請求項6のいずれかに記載の耐火物。
  8. 請求項1から請求項7のいずれかに記載の耐火物を使用した、スライディングノズル用プレート。
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