JP2016160443A - 傾斜組織を有する鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Vを全く添加せずとも、圧延ままで、900MPa以上のTS(引張強さ)を得ることができ、さらには靭性にも優れた鋼材を提案する。【解決手段】所定の化学組成を含む鋼材であって、鋼中心から鋼表面までの距離をrとしたとき、鋼中心から半径10mmの円周内の領域の95%(体積率)以上がフェライトとパーライトの組織からなり、鋼中心からr/2位置以上の領域は、中心側から表面側へ順にベイナイト(上部ベイナイトおよび/または下部ベイナイト)、さらには焼戻しマルテンサイトと、組織が順次変化する傾斜組織とする。【選択図】図3

Description

本発明は、熱間圧延ままで、鋼材の表層部は焼入れ、焼戻し相当の熱処理が施された組織になり、一方、鋼材の中心部は標準組織になる、傾斜組織を有する鋼材に関する。
近年、大気中のCO濃度の上昇に伴う地球温暖化を抑制するべく、部品製造時の熱処理から排出されるCOに関して、その削減が求められている。
このようなCOの削減手段としては、熱処理工程の省略が考えられる。そして、熱処理工程を省略するために、いわゆる非調質鋼が種々提案されている。この非調質鋼を得るために、特許文献1では、Vを積極的に添加してV析出物のサイズ分布を規定し、オーステナイト粒径の粗大化を防ぐことで、従来のV添加型の非調質鋼の欠点だった低靭性を克服している。また、圧延後の冷却において、さらにV炭化物を均一かつ微細に析出させることで析出強化し、高強度化を実現することで、圧延ままで、高靭性かつ高強度の非調質鋼を実現している。
一方で、鋼に添加される合金原料の産出地域は限られている。このため、合金原料の価格は、合金原料が産出される地域の情勢や、合金原料を運搬する際の海上航路の安全保障費、船の燃料費の変動の影響などを強く受けるので、合金原料価格の変動に伴うコスト増のリスクが高く、Vもこの例外ではない。このため、Vを増量するのは、強度と靭性の両立には効果的かもしれないが、合金コスト増加のリスクに結びつき、最終製品の収益性の確保にはむしろ不利となる。
このような観点から、鉄鋼メーカーでは合金価格変動によるリスクを軽減するために、合金元素添加量を減らしても、従来と同等の特性が得られる鋼の開発が活発になっている。
例えば、V添加を抑制した直接切削用非調質棒鋼が特許文献2に、提案されている。特許文献2では、V添加量を低減しても所定の強度を得るために、代わりのNb添加量と鋼組織を規定している。
特開2005−281837号公報 特開2010−280978号公報
しかしながら、特許文献2の実施例の記載によれば、900MPa以上のTSが得られる鋼は、いずれも、Vが0.10質量%以上未だ添加されており、Vを全く添加せずに900MPa以上の強度を有する鋼は、結局のところ得られていない。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、Vを全く添加せずとも、900MPa以上相当の曲げ強度を得ることができ、さらには靭性にも優れた鋼材を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題の解決に向け、丸棒鋼すなわち円形断面の鋼材についてV非添加鋼であっても、圧延ままで焼入れし、最表層が急冷してから自己焼戻しされた焼戻しマルテンサイト、その内側がベイナイト、そして中心部がフェライト−パーライトからなる傾斜組織とすることにより、これらの要求を満たすことができることを知見し、本発明を開発するに至った。
本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.050〜0.30%、
Si:0.05〜1.50%、
Mn:0.75〜2.00%、
Cr:0.50〜2.00%、
Al:0.010〜0.050%、
N:0.0020〜0.0100%、
P:0.030%以下(0%を含む)、
S:0.030%以下(0%を含む)、
Cu:0.20%以下(0%を含む)および
Ni:0.20%以下(0%を含む)
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記に示す(1)式により求められるBs温度が540℃以上である、円形断面の鋼材であって、上記鋼材の圧延方向に対して垂直な面の中心から半径10mmの円周内の95%(体積率)以上がフェライトとパーライトからなり、前記垂直な面における鋼材の半径をrとしたとき、該面内で前記中心からr/2位置より表面側が、中心側から表面側へと順にベイナイト(上部ベイナイトおよび/または下部ベイナイト)、さらに焼戻しマルテンサイトと、順次変化する傾斜組織からなり、前記円周内と鋼表面からr/4位置との硬度差がビッカース硬さで60以上あり、前記r/4位置では、 引張強さが900MPa以上かつシャルピー衝撃試験値が40J/cm以上であることを特徴とする、傾斜組織を有する鋼材。

Bs[℃]=830−270×C[%]−90×Mn[%]−37×Ni[%]−70×Cr[%]・・・(1)
なお、C[%]は、鋼中のC含有量(質量%)、Mn[%]は、鋼中のMn含有量(質量%)、Ni[%]は、鋼中のNi含有量(質量%)、Cr[%]は、鋼中のCr含有量(質量%)、をそれぞれ意味する。
2.前記鋼材は、さらに、Feを代替してTi:0.0010〜0.0100質量%を含む、前記1に記載の傾斜組織を有する鋼材。
3.前記1または2のいずれかに記載の鋼材を製造する方法であって、前記1または2に記載の成分組成である鋼材を、熱間圧延により丸棒に成形し、次いで、温度が800〜1000℃の範囲にある状態から、鋼材の圧延方向に対して垂直な面における鋼材の半径をrとしたとき、該面内で鋼材の中心からr/2位置を3.0℃/s以上の冷却速度で冷却するとともに、該冷却の開始から下記(2)式で定める時間(P[s])の経過後は、鋼材の冷却を大気中での放冷とすることを特徴とする、傾斜組織を有する鋼材の製造方法。

P[s]=0.01×r±r/10 ・・・(2)
本発明によれば、圧延ままで、鋼表面からr/4位置(以下、クォーター位置ともいう)で引張強さ:900MPa以上でかつシャルピー衝撃試験値:40J/cm以上の鋼材が得られるため、そのまま、例えば建設機械や産業機械、自動車のシャフトやピン等の素材として用いることができる。
傾斜組織を有する断面硬度を、S45CにVを0.2%添加した非調質鋼の断面硬度と比較した結果を示す図である。 各組織部のビッカース硬さとシャルピー衝撃試験値を示す図である。 傾斜組織鋼の破壊前後の重錘の速度差を100%としたときのV添加型非調質鋼の破壊前後の重錘の速度差の割合を示す図である。 実施例の結果を、TSとシャルピー衝撃試験値との関係で示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
発明者らは、まず、鋼材に大きな曲げ荷重が掛かる場合の丸棒の破壊様式を詳細に調査した。その結果、大きな曲げの応力がかかる場合の鋼材の破壊は、
I まず、鋼表面に亀裂が発生し、
II 表面で発生した亀裂が鋼中心部に向けて伝播し、
III 亀裂が鋼材のある程度の深部まで到達した瞬間に鋼材が曲げ荷重に耐えられなくなり一瞬で脆性的に破壊する
なお且つ、上記IIIの段階に記した鋼材のある程度の深部は、応力状態や鋼材の強度、化学成分、および組織により異なるが、ほとんどの場合、鋼表層部であることを知見した。
ところで、亀裂の発生・進展に影響を与える鋼材部分が鋼表層部であり、それよりも内部では単に脆性的に破壊する、すなわち破壊に対する抵抗の大小が鋼表層部の特性で決定するのであれば、極論すると、鋼材の断面内における半径rの中間(r/2位置)より鋼材の中心側(鋼中心部)は中空でも良いということになる。しかしながら、ほとんどの鋼材では中心まで焼入および焼戻しを施したり、高価なVを添加して鋼材の中心部まで析出物を生じさせることによって強度の強化を行ったりしている。
これは、亀裂の進展の脆性的になる位置が、鋼表面側の鋼材特性のみならず、鋼中心部からの拘束による影響もあることを示唆している。
そこで、発明者らはこの鋼中心部の最適な特性を明らかにするため、JISに規定のS45Cの化学成分を有する直径:80mmの丸棒を910℃に加熱・均熱後、中心まで冷却されない程度の短時間水冷を施し、その後大気中で空冷することで、鋼表層部は、空冷時の鋼材中心からの復熱による焼戻しマルテンサイト〜ベイナイト組織、鋼中心部はフェライト+パーライト組織のC断面組織を作製(本発明では、本鋼材を傾斜組織鋼という)し、その断面硬度を、S45CにVを0.2%添加した非調質鋼のそれと比較した。
その結果を図1に示す。なお、同図は、中心に対して左側を便宜的にマイナス符号としている。
鋼表面に近いところは傾斜組織鋼の方が高硬度となっている一方、中心付近は非調質鋼よりも低硬度となっている。
一方で、シャルピー衝撃試験値は、図2に示すように、各組織の硬さに対応した値を取ることが分かる。
このようにして得られた硬さとシャルピー衝撃値の関係を用いて、図1のような断面硬度分布を有する鋼材の断面全体のシャルピー衝撃試験値を積分により計算してみると、傾斜組織鋼のほうがシャルピー衝撃試験値は高くなる。
これはあくまでも計算値であるので、丸棒全体としてどのようになるかを確認するために、上記のような断面硬度分布を有する直径:80mmの傾斜組織鋼とV添加型非調質鋼の鋼材靭性を、500kgの重錘を5m高さから自由落下させて破壊することによって比較した。
鋼材靭性は、破壊前と破壊後の重錘の速度差を指標とし、傾斜組織鋼の速度差を100%としたときのV添加型非調質鋼の速度差の割合を図3に示す。
同図に示したとおり、鋼中心付近に、よりシャルピー衝撃値の高い組織を有する鋼材のほうが、そうでない鋼材よりも鋼材全体としての靭性は良くなることが分った。
ところで、鋼材の熱間圧延工程では、鋼材全体がオーステナイト組織である温度で圧延を完了し、一般的にその後は冷却床で室温まで冷却する。発明者らはこの鋼材の熱間圧延後の冷却に着目し、鋼材の熱間圧延後に、鋼表層部をベイナイトからマルテンサイトまでの組織変態を起こさせ、その後は鋼中心からの復熱によりマルテンサイトを焼き戻す工程を着想した。そして、種々の実験と検討を重ねた結果、丸棒の冷却の開始温度域、変態を起こさせるべき鋼材のr/2位置での冷却速度、その冷却中に鋼材のr/2位置で変態が起きるための成分バランスを規定する式、および冷却時間の最適な範囲を見出したのである。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
(A)鋼材の化学組成
以下、鋼材の化学組成に関する%表示は質量%を意味する。
C:0.050〜0.30%
Cは、Fe中に固溶または微細な炭化物として析出し、鋼材を強化する元素である。また熱処理中にオーステナイト中に固溶し、オーステナイトを固溶強化することで焼入性を調整することができる、極めて有用な元素である。しかしながら、Cを0.30%超含有すると、鋼材の焼入性が高くなりすぎて、後述する(2)式に示すような時間内で鋼表層部の組織を十分に変態させることができなくなる。一方、Cの含有量を0.050%未満とすると、マルテンサイト、上部ベイナイト、下部ベイナイトまたは針状フェライトとセメンタイトで構成される微細組織、いわゆる急冷したときに得られる組織が得られなくなる。したがって、Cの含有量は0.050〜0.30%とした。好ましくは0.10〜0.28%の範囲である。
Si:0.05〜1.50%
Siは、Fe中に固溶し、鋼材を固溶強化する元素である。また焼戻しの際に焼戻し軟化抵抗を示し、焼戻し後の強度維持にも有効な成分である。しかし、Siはフェライトフォーマーであるため、Siを1.50%超含有すると、後述の(2)式に示す時間内に鋼表層部の組織の変態がフェライト+パーライト変態となってしまい、所定の組織が得られなくなる。一方、Siの含有量を0.05%未満とすると十分な固溶強化と焼戻し軟化抵抗を得られなくなる。したがって、Siの含有量は0.05〜1.50%とした。好ましくは0.08〜1.00%の範囲である。
Mn:0.75〜2.00%
Mnは、Fe中に固溶し、鋼材を固溶強化すると共に、鋼材の焼入性を劇的に上げる効果のある添加元素である。しかし、Mnを2.00%超添加すると、焼入性が上がりすぎてしまうために、後述の(2)式に示す時間内に、鋼表層部の組織の変態が起きなくなってしまう。一方、鉄鋼製品中には、鋼材の性能を劣化させる原料由来のSが不可避的に含まれるが、MnはこのSと化合物を形成して、Sの鋼材に対する悪影響を取り除く効果がある。しかしながら、Mnの添加量が0.75%未満の添加では十分な量の化合物が形成されずに、Sの悪影響を取り除く効果が不十分となる。したがって、Mnの含有量は0.75〜2.00%とした。好ましくは0.90〜1.80%の範囲である。
Cr:0.50〜2.00%
Crは、Fe中に固溶し、鋼材を固溶強化すると共に、鋼材の焼入性を上げる効果のある添加元素である。しかし、Crを2.00%超添加すると、焼入性が上がりすぎてしまうために(2)式に示す時間内に鋼表層部での組織変態が起きなくなってしまう。一方で、Crは鋼材の変態中にフェライトからセメンタイト中に分配されるにも関わらず、侵入型固溶元素であるCと比して置換型固溶元素であるため拡散が遅く、セメンタイトの形成を著しく遅らせる効果を有する元素である。また、焼戻し時に炭化物を形成して焼戻し軟化抵抗も示す、有用な元素であるが、Crの含有量が0.50%未満ではこれらの十分な効果が得られない。したがって、Crの含有量は0.50〜2.00%とした。好ましくは0.65〜1.80%の範囲である。
Al:0.010〜0.050%
Alは、鉄鋼製品の製造過程で不可避的に大気から混入する酸素を酸化物として固定し、酸素が鋼材に及ぼす悪影響を無害化する元素であると同時に、後述するNと窒化物を形成し加熱中の鋼材のオーステナイト粒径の粗大化を抑制する効果が得られる元素である。しかし、Alを0.050%超含有すると粗大な酸化物が形成され、鋼材内部でのクラックの発生起点となるおそれが生じる。一方で0.010%未満の含有では酸素を無害化する効果やオーステナイト粒径粗大化抑制の効果が十分に得られなくなる。したがって、Alの含有量は0.010〜0.050%とした。好ましくは0.025〜0.045%の範囲である。
N:0.0020〜0.0100%
Nは、既述のAlと窒化物を形成して加熱中の鋼材のオーステナイト粒径の粗大化を抑制する効果が得られる元素である。しかし、0.0100%超の含有量ではFe中に固溶して、常温でいわゆる歪時効を起こすため、鋼材の伸びを著しく低下させるおそれが生じる。一方で、0.0020%未満の含有量では十分な量の窒化物が形成されずに、オーステナイト粒径の粗大化抑制効果が十分に得られなくなる。したがって、Nの含有量は0.0020〜0.0100%とした。好ましくは0.0040〜0.0090%の範囲である。
P:0.030%以下(0%を含む)
Pは、オーステナイト結晶粒界に偏析して、常温まで冷却されても旧オーステナイト粒界部を脆化して鋼材の靭性を低下させる有害な元素である。よって、低ければ低いほど望ましいが、不純物として許容できる上限は0.030%である。好ましくは0.025%以下であり、0%であっても良い。
S:0.030%以下(0%を含む)
Sは、鋼材中に固溶して鋼の強度を低下させる有害な元素である。Sの悪影響はMnを添加して化合物を形成させることで取り除くことができる。しかし、その量が限度を超えると、Mnでも影響を取り去りきれなくなるばかりでなく、Mnが大量にSと化合物を形成する結果、Mnの本来の添加目的である、鋼材の強化と焼入性の向上とが得られなくなる。これらの観点から、Sの含有量は低ければ低いほど望ましいが、許容できる上限は0.030%である。好ましくは0.025%以下であり、0%であっても良い。
Cu:0.20%以下(0%を含む)
本発明において、Cuは鋼材に悪影響を及ぼす元素である。すなわち、Cuは、鋼材の熱間圧延中に鋼表面の結晶粒界で液相を形成し、結晶粒界の結合力を低下させることで表面割れの発生を招く。これを防ぐためには、Cuの量を一定以下に管理すればよく、この上限は0.20%である。好ましくは0.17%であり、0%であっても良い。
Ni:0.20%以下(0%を含む)
Niは、鋼材の焼入性を上げてしまうため、過剰に添加するとCや、Mn、Crなどの焼入性を調整する元素の添加を抑制するだけでは焼入性の調整が困難になる。また、Niは強烈なオーステナイト安定化元素であるため、冷却時の鋼表面で形成されるマルテンサイト中に残留オーステナイトが残存し、部品となった後の使用時の経年劣化を早めてしまう。これを抑制するために、Niの量を一定以下に管理する必要があり、この上限は0.20%である。好ましくは0.15%、より好ましくは0.12%であり、0%であっても良い。
Ti:0.0010〜0.0100%
Tiは、炭化物や窒化物を高温で形成し、加熱中の鋼材のオーステナイト粒径の粗大化を抑制して、鋼材の靭性を向上させる効果のある元素であるため含有してもよいが、このTi添加の効果は0.0100%超加えると、逆にTi化合物の粗大化を引き起こし効果が得られなくなるおそれがあるため上限を、0.0100%とする。一方、0.0010%未満の添加では靭性向上の効果が所望したほど得られない。したがって、Tiは添加する場合、0.0010〜0.0100%の範囲とする。好ましくは0.0040〜0.0080%の範囲である。
混入を極力避けたい元素:B
Bは微量であっても、万が一鋼材に固溶してしまった場合、鋼材の焼入性を劇的に向上してしまう元素である。焼入性が高い鋼材では、後述のとおり、組織の所定の位置がフェライトとパーライトとなってしまい十分な靭性が得られなくなる。このため、Bの混入は極力避け、万が一固溶してしまった場合でもその量は2masssppm未満(0を含む)とするのが好ましい。
次に、本発明に含まれる鋼材の組織に関する要件や添加合金量から得られる計算温度などについて述べる。
〔鋼材の圧延方向に対して垂直な面の中心から半径10mmの円周内の95%(体積率)以上がフェライトとパーライトからなり、前記垂直な面における鋼材の半径をrとしたとき、該面内で前記中心からr/2位置より表面側が、中心側から表面側へと順にベイナイト(上部ベイナイトおよび/または下部ベイナイト)、さらに焼戻しマルテンサイトと、順次変化する傾斜組織からなる〕
本発明のような強度や靭性を得るためには、鋼材の圧延方向に対して垂直な面の中心から半径10mmの円周内(以下、中心部という)を、焼準を施した鋼で得られるような95%(体積率)以上がフェライトとパーライトの組織とし、さらに、この垂直な面における鋼材の半径をrとしたとき、この面内で鋼材の中心からr/2位置より表面側(以下、鋼表層部という)を中心側から表面側に順にベイナイト、次に焼戻しマルテンサイトとする傾斜組織を造りこむ必要がある。
そのためには、冷却中に鋼表層部の組織変態を起こさせ、変態が起こった直後に、冷却を大気中での放冷へと切り替えることで、中心部まで変態することを抑制し、中心部の組織を確実にフェライトとパーライトとするとともに、復熱によって変態が起こった部分を焼戻すことが必要である。
ここで、冷却中に鋼表層部で十分に変態が起きないまま復熱させてしまうと、復熱によって鋼材全体の温度が上昇し、r/2位置での変態が開始する際の温度がBs温度を上回ってしまう。このように、組織変態を開始する際の変態温度がBs温度を上回る場合、変態時の組織形態は、変態が開始するときのCの拡散速度によって一義的に決定されるため、たとえ変態前に、ベイナイトが生成する温度域やマルテンサイト変態温度直上まで冷却したとしても、変態までのインキュベーションタイムに影響を与えるだけで、得られる組織はフェライトとパーライト組織となってしまう。ゆえに、所定の鋼強さが得られないばかりでなく、このようにして得られたフェライトとパーライト組織は連続冷却で得られるフェライトとパーライトよりも靭性に劣っており、後述するき裂の進展を抑制する効果が得られない。
また、本発明で、中心部の95%(体積率)以上をフェライトとパーライトとしているのは、鋼中心部が靭性に優れた方が鋼全体として、曲げにより発生・進展するき裂に対する抵抗力が、鋼中心部がそうでない鋼に比して高いからである。なお、中心部のフェライトとパーライトの体積率が95%未満の場合、フェライトとパーライトよりも靭性に劣る相が結晶粒界にフィルム状に形成され、き裂がフィルム状相を優先的に進展するようになる結果、同じフェライトとパーライト組織でも靭性が劣る組織となってしまう。なお、丸棒径が40mm超の場合、中心部にも鋼表層部にも相当しない領域が生じるが、この領域の組織は、現実的にはフェライト、パーライト、ベイナイトあるいはこれらの混合組織となる。本発明では、この領域の組織分率は特に規定されない。
この理由は、上述したような方法で傾斜組織を造り込む場合、丸棒径が大きくなればなるほど表層から離れた領域の組織の制御は困難になる。
そこで、発明者らはこれを勘案して最低限必要な組織規定を絞り込んだ結果、I中心部の組織を規定する、II大気放冷前の冷却中に少なくとも表面からr/2位置まで(すなわち鋼表層部)は変態を起こさせる、III中心部と、鋼表層部の機械的特性を代表するクォーター位置の硬度差を規定すれば、V添加型非調質鋼のような断面硬度分布の鋼よりも高い鋼材全体の靭性を有する鋼が得られることを知見した。
ところで、鋼表層部で変態組織を得るための手段としてr/2位置までマルテンサイト変態が起こるのを待ってから復熱させるのも一つの手段として考えられる。しかしこの手段では、鋼材の温度が下がりすぎて十分な復熱が得られずに、鋼表層部が焼戻しマルテンサイトではなく焼入ままのマルテンサイトと同等となってしまう結果、鋼表層部に大きな引張りの残留応力が残り、焼き割れのリスクが高まるだけに留まらず、鋼表層部が極めて低靭性となって、とても実使用に耐えるものではない。
このため、本発明に定める鋼材では、鋼表層部は焼戻しマルテンサイトとベイナイト(上部ベイナイトおよび/または下部ベイナイト)とすることが重要である。と言うのは、変態により得られたマルテンサイトを焼戻すことができるほどの復熱が得らる場合、鋼表層部に導入される引張の残留応力も小さく、さらには、焼戻しによりこの残留応力が大幅に緩和されるだけでなく、鋼表層部の変態と中心部の放冷時の変態の時間差が大きい結果、最終的に得られる鋼表層部ではむしろ圧縮の残留応力が得られるようになる。こうして得られた焼戻しマルテンサイト組織は高強度・高靭性であることに加えて、圧縮の残留応力も加わって亀裂の発生を抑える効果が高くなる。
また、この焼戻しマルテンサイトの内側に得られるベイナイト組織も、圧縮の残留応力に加えてV添加型非調質鋼より靭性の高い中心部の組織からの拘束によって亀裂の進展を抑える効果が高い。よって、このようにして得られた鋼表層部の機械的特性は、鋼表面からの距離がr/4位置において、引張強さ:900MPa以上でかつシャルピー衝撃試験値:40J/cm以上となる。
なお、高周波加熱などの技術を用いれば、鋼表層部の表面側を焼入ままマルテンサイトを焼戻しマルテンサイトとしたり、ベイナイトとするようなことも可能であり、これでも、V添加型非調質鋼に対する鋼全体の靭性向上の効果は得られると考えられるが、熱処理工程を増やすこととなるとともに専用の設備が必要となるため、本発明では検討しなかった。
〔(1)式に示すBs温度が540℃以上〕
本発明において、冷却中に鋼中心からr/2位置でベイナイト(上部ベイナイトおよび/または下部ベイナイト)を得るためには、焼入性を上げることは逆効果である。焼入性を上げすぎると、冷却中に上記変態が起きず、復熱時にはフェライト+パーライト変態を起こすようになってしまう。これを避けるためには、以下の(1)式で与えられるBs温度を制御するのが最も効果的である。
そして、本発明では、上記Bs温度を540℃以上、より好ましくは550℃以上になるように添加元素の添加量のバランスをとれば、冷却中に、鋼中心からr/2位置でベイナイト変態を起こすことが効率的に可能になる。
Bs[℃]=830−270×C[%]−90×Mn[%]−37×Ni[%]−70×Cr[%]・・・(1)
なお、C[%]は、鋼中のC含有量(質量%)、Mn[%]は、鋼中のMn含有量(質量%)、Ni[%]は、鋼中のNi含有量(質量%)、Cr[%]は、鋼中のCr含有量(質量%)、をそれぞれ意味する。
〔中心部とクォーター位置との硬度差がビッカース硬さで60以上〕
本発明に従う傾斜組織鋼は、鋼表層部を、焼戻しマルテンサイト組織およびベイナイト(上部ベイナイトおよび/または下部ベイナイト)で構成される微細組織とすることによってクォーター位置での強度を確保し、鋼中心側は冷却中に変態させずに、冷却後の放冷時に変態させることで、フェライトとパーライトから成る標準組織とし、中心部の粘り強さ(靭性)を確保している。このような、中心部と鋼表層部で鋼材の機械的特性に果たす役割が異なる傾斜組織とするためには、中心部とクォーター位置との硬度差をビッカース硬さで60以上の差が有る状態とする。好ましくは75以上である。
〔r/4位置では、引張強さが900MPa以上かつシャルピー衝撃試験値が40J/cm以上〕
r/4位置の引張強さが900MPa未満となると、引張強さが900MPa以上ある鋼材と同等以上の曲げ強度を確保できない。よって、本発明では、r/4位置の引張強さは900MPa以上とする。 また、r/4位置のシャルピー衝撃試験値が40J/cm未満であると、丸棒鋼全体としての靭性が不足するため、本発明では、r/4位置のシャルピー衝撃試験値が40J/cm以上とする。
このような傾斜組織を有する鋼を得るための製造方法については、特に限定する必要はないが、その好ましい態様の一例として次の製造方法を挙げることができる。
すなわち、上記のような化学成分に調整した鋼材を加熱して全体をオーステナイト化した後、適宜加工し、適当な温度から急冷し、鋼表層部を変態させた後に、鋼材自身の復熱により自己焼戻しさせればよい。
こういった熱処理は、熱間圧延ライン中で行う場合に限らず、鋼材が室温まで冷却されてしまった鋼材に対して実施しても同じ効果が得られる。
鉄鋼製品の製造ラインで実施するためには、以下のようにすれば良い。
〔鋼材を、熱間圧延により丸棒に成形し、次いで、温度が800〜1000℃の範囲にある状態から、鋼材の圧延方向に対して垂直な面における鋼材の半径をrとしたとき、該面内で鋼材の中心からr/2位置を3.0℃/s以上の冷却速度で冷却するとともに、該冷却の開始から(2)式で定める時間(P[s])が経過後は、鋼材の冷却を大気中での放冷とする〕
本発明に定めるような傾斜組織を造り込む熱処理方法としては、組織全体をオーステナイト化した鋼表面を一定時間冷却する必要がある。組織全体をオーステナイト化するための温度は800〜1000℃である。
その後の冷却時の冷却速度であるが、鋼材の圧延方向に対して垂直な面における鋼材の半径をrとしたとき、該面内で鋼材の中心からr/2位置で3.0℃/s以上の冷却速度とする必要がある。より好ましくは4.0℃/sである。
また、マルテンサイト変態を起こした鋼表面の靭性を確保するために、鋼を冷却し切らずに復熱を得る必要がある。このためには冷却の途中で冷却を大気中での放冷に切り替える必要があるが、この切り替えるタイミングは鋼材のサイズ毎に異なる。これを(2)式(P[s]=0.01×r±r/10)で規定した。このタイミングの許容範囲は±r/10[s]、より好ましくは±r/15[s]である。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼種No.1〜39を、150kg真空溶解炉を用いて溶製し、鋼塊を作製した後、一旦、直径:120mmの丸棒に熱間鍛造し、この120mm丸棒を焼準した後に、表2に示すサイズの直棒を切り出した。
なお、表1中の鋼種No.1〜16は、化学組成が本発明で規定する範囲内に適合する適合鋼である。一方、鋼種No.17〜39は、下線がしてある成分が本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較例の鋼である。
Figure 2016160443
Figure 2016160443
上記の直棒を、さらに180mm長さに切断し、中心まで800〜900℃に加熱して鋼全体をオーステナイト化した後に、表2に示す条件で水槽中に、時間:P(s)だけ水冷し、その後大気中で放冷した。
なお、中心からr/2位置の冷却速度(表2中にはr/2位置の冷速[℃/s]と表示)は、鋼材の所定の位置までドリルで穴を開け、その穴に接触型熱伝対を設置することで測定した。また、冷却速度を計算する範囲は、水冷開始から時間:P[s]が経過するまでとし、水冷時間:Pはストップウオッチで計測した。
上記のようにして作製した棒鋼のクォーター位置で各種の試験片を採取して、TS(引張強さ[MPa])、靭性(シャルピー衝撃試験値[J/cm])を調査した。引張試験片はJIS Z 2201に定める4号試験片とし、引張速度が引張試験機のストロークの速度で10mm/minで測定した。シャルピー衝撃試験片はJIS Z 2242で定めるUノッチ試験片(ノッチ下高さ8mm)とし、測定温度は25℃とした。
ミクロ組織観察用試験片は、中心部すなわち中心から半径:10mmの円周内、表面(鋼表面から5mmまで)および中心からr/2位置よりそれぞれ試験片を採取し、観察に供した。具体的には、圧延方向に対して垂直な面を切り出し、鏡面研磨してナイタール溶液で腐食した後、倍率100倍とした光学顕微鏡で観察して、ミクロ組織の判定を行った。
表3に上記の各試験結果をまとめて示す。
なお、中心部の組織はフェライトとパーライトの合計の存在比率(体積%)を示した。中心部の組織については、中心位置、中心から半径5mm位置および中心から半径10mm位置についてそれぞれ1点ずつ組織観察を行い、各位置におけるフェライトとパーライトの合計の存在比率(体積%)を求め、これを平均して中心部のフェライトとパーライトの存在比率とした。さらに、中心部とクォーター位置の硬度差ΔHvを以下のようにして求めた。まず、丸棒のC断面を鏡面研磨後、その面に任意の直線Iを描き、その直線Iの長さの半分の位置を通過する、上記任意の直線Iに直行する直線IIを更に描き、鋼の中心として、直線IIの長さの半分の位置を中心にして半径10mmの円周を、クォーター位置として直線IIの鋼表層側から直線IIの長さの8分の1の位置を中心にして半径5mmの円周をそれぞれ描いた。これらの円周内でそれぞれ4点ずつ、JIS Z 2244に準拠してビッカース硬さを測定し、これらの4点の平均をそれぞれの位置の硬度として、硬度差を求めた。
さらに、このようにして得られた各サイズの傾斜組織を有する鋼と0.2%のVを添加した非調質鋼(熱間圧延まま)の鋼材全体の靭性を、500kgの重錘を5m高さから自由落下させて破壊したときの、破壊前と破壊後の重錘の速度差を求めて比較した。値は、V添加型非調質鋼の速度差を100%とした場合の比率で表した。なお、V添加方非調質鋼は、S45CにVを0.2質量%添加の鋼を、表2に示す各製造番号の半径と同一の半径に丸棒に熱間圧延後、空冷したものを用いた。
Figure 2016160443
表3から明らかなように、本発明で定める化学組成およびミクロ組織を有する本発明例の製造番号、すなわち、製造番号1〜16の場合は、いずれも目標とする組織、TS、靭性が得られている。
これに対して、たとえ化学成分が本発明に定める範囲内に調整されていても、比較例5−1〜5−2、および8−1〜8−2のように、製造条件が本発明に定める範囲を逸脱した場合は、組織が急冷組織とならずに所望の強度が得られない(5−1、8−1)か、または急冷組織は得られるが冷却速度が大きすぎるために組織がマルテンサイトとなって、十分な靭性が得られず、さらに十分な復熱も得られないため鋼最外層部で焼戻しマルテンサイト組織が得られていない(5−2、8−2)。
また、化学成分が本発明に定める範囲を逸脱している製造番号17〜39(比較例)は、所定の組織を得られないため、TSおよび靭性のいずれかを満足できないか、試験片の製造過程で不具合が発生した。
すなわち、製造番号17〜22は、Cの含有量が多すぎて強度自体は満足するが焼入性が高すぎ、変態が復熱中と成ってしまった結果、r/2位置の鋼組織がフェライトとパーライトとなって、クォーター位置のTSが目標の強度を満たさず、また、ΔHvは60未満となってしまった。
また、製造番号23〜28は、Cの含有量が下限を下回っているため、十分な焼入性が得られずに、r/2位置の鋼組織がフェライトとパーライトとなるためクォーター位置のTSが目標の強度を満たさず、ΔHvは60未満となってしまった。
製造番号29は、Siが上限を上回っているため、固溶強化によりTSは満足するも組織にかかわらず靭性が低い。
製造番号30は、製造番号29とは逆にSiの含有量が下限を下回っているため、十分な固溶強化が得られずTSを満足しない。
製造番号31は、Mnの含有量が上限を上回っているため焼入性が高すぎて変態が復熱中となってしまった結果、r/2位置の組織がフェライトとパーライトとなり、クォーター位置の高硬度化が達成されずに、ΔHvは60未満となってしまった。
製造番号32は、これとは逆に、Mnの含有量が下限を下回った結果、r/2位置の組織がフェライトとパーライトとなって、クォーター位置のTSが900MPa以上を満足しない。
製造番号33は、Crの含有量が上限を上回っているため焼入性が高すぎて変態が復熱中となってしまった結果、r/2位置の組織がフェライトとパーライトとなり、クォーター位置の高硬度化が達成されずに、ΔHvが低い。
製造番号34は、これとは逆にCrの含有量が下限を下回った結果、r/2位置の組織がフェライトとパーライトとなりクォーター位置のTSが900MPa以上を満足しない。
製造番号35は、Alの含有量が下限を下回っているため、オーステナイト結晶粒粗大化を抑制することができずに、靭性が低くなってしまった。
製造番号36は、これとは逆にAlの含有量が上限を上回った結果、酸化物が大量に形成され、鋼を脆くしてしまった結果、靭性が低くなってしまった。
製造番号37は、Nの含有量が下限を下回った結果、十分な量のAINが形成されず、十分なオーステナイト結晶粒粗大化抑制効果が得られなかったため、靭性が低い。
これとは逆に、製造番号38ではNの含有量が上限を上回ってしまった結果、水冷後に置き割れが発生してしまい、製造性に乏しいばかりでなく、試験片加工が困難となり、測定不能となった。
製造番号39は、Tiを、上限を超えて添加した結果、オーステナイト結晶粒粗大化抑制効果を発揮するTi化合物が粗大化してしまい、十分な靭性が得られなかった。
これらの結果をまとめて組織図にしたものを図4に示す。
図4は、クォーター位置における引張強さTSとシャルピー衝撃試験値との関係を示すグラフである。引張強さTSが900MPa以上、かつ、シャルピー衝撃試験値が40J/cm以上を満足し、さらに、r/2位置の組織がベイナイトであるものは、速度差比率が100%超となっており、V添加非調質鋼と同等以上の衝撃特性を有することが分かる。
表3および図4から、鋼中心部の95%(体積率)以上がフェライトとパーライトの組織からなり、鋼表層部が、ベイナイト(上部ベイナイトおよび/または下部ベイナイト)、および焼戻しマルテンサイトと、組織が順次変化している本発明に従う傾斜組織鋼は、鋼表面からr/4位置において、優れたTSとシャルピー衝撃試験値を有していることが分かる。
本発明の傾斜組織を有する鋼材を用いると、圧延ままで、高い衝撃特性が得られるため、そのまま、例えば建設機械や産業機械、自動車のシャフトやピン等の素材として用いるのに好適である。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.050〜0.30%、
    Si:0.05〜1.50%、
    Mn:0.75〜2.00%、
    Cr:0.50〜2.00%、
    Al:0.010〜0.050%、
    N:0.0020〜0.0100%、
    P:0.030%以下(0%を含む)、
    S:0.030%以下(0%を含む)、
    Cu:0.20%以下(0%を含む)および
    Ni:0.20%以下(0%を含む)
    を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記に示す(1)式により求められるBs温度が540℃以上である、円形断面の鋼材であって、上記鋼材の圧延方向に対して垂直な面の中心から半径10mmの円周内の95%(体積率)以上がフェライトとパーライトからなり、前記垂直な面における鋼材の半径をrとしたとき、該面内で前記中心からr/2位置より表面側が、中心側から表面側へと順にベイナイト(上部ベイナイトおよび/または下部ベイナイト)、さらに焼戻しマルテンサイトと、順次変化する傾斜組織からなり、前記円周内と鋼表面からr/4位置との硬度差がビッカース硬さで60以上あり、前記r/4位置では、 引張強さが900MPa以上かつシャルピー衝撃試験値が40J/cm以上であることを特徴とする、傾斜組織を有する鋼材。

    Bs[℃]=830−270×C[%]−90×Mn[%]−37×Ni[%]−70×Cr[%]・・・(1)
    なお、C[%]は、鋼中のC含有量(質量%)、Mn[%]は、鋼中のMn含有量(質量%)、Ni[%]は、鋼中のNi含有量(質量%)、Cr[%]は、鋼中のCr含有量(質量%)、をそれぞれ意味する。
  2. 前記鋼材は、さらに、Feを代替してTi:0.0010〜0.0100質量%を含む、請求項1に記載の傾斜組織を有する鋼材。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の鋼材を製造する方法であって、請求項1または2に記載の成分組成である鋼材を、熱間圧延により丸棒に成形し、次いで、温度が800〜1000℃の範囲にある状態から、鋼材の圧延方向に対して垂直な面における鋼材の半径をrとしたとき、該面内で鋼材の中心からr/2位置を3.0℃/s以上の冷却速度で冷却するとともに、該冷却の開始から下記(2)式で定める時間(P[s])の経過後は、鋼材の冷却を大気中での放冷とすることを特徴とする、傾斜組織を有する鋼材の製造方法。

    P[s]=0.01×r±r/10 ・・・(2)
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