JP2016106617A - 被検物質のがん幹細胞誘導性評価技術 - Google Patents

被検物質のがん幹細胞誘導性評価技術 Download PDF

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Abstract

【課題】被検物質のがん幹細胞誘導性評価技術を提供する。
【解決手段】不死化細胞の培地に含まれる培養成分を含む培地において、被検物質の存在下及び非存在下で、リプログラミング関連遺伝子のプロモーターの制御下にマーカー遺伝子を組み込んだ多能性幹細胞を培養し、前記被検物質による多能性幹細胞のがん幹細胞への誘導促進を評価する工程を含むことを特徴とする、がん幹細胞への誘導を促進する被検物質のスクリーニング方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、被検物質のがん幹細胞誘導性評価技術に関する。
被検物質の発がん性リスク評価は、変異原性試験や反復投与毒性試験、統計学的にヒトに与える影響の評価などによって行われてきた。しかし、近年のがん研究ではがん及びがん組織は特定の遺伝子変異だけによる均一な細胞の集合体では無く、不均一な細胞の集団であること、「がん誘導性の微小環境」によってがんの基となる「がん幹細胞」が作られること、がん幹細胞の分化や増殖、浸潤ががん組織の成長や転移、また、がん治療における再発の原因であることが明らかとなってきた。がん幹細胞は際限なく増殖を繰り返し、分化を継続してがん細胞を生みだす。この増殖分化を促進するシグナルを提供するのが微小環境(ニッチ)である。一方、この分化過程は詳細には解明されていないが、本発明者らはiPS 細胞を用いて,がん由来細胞株の培養液にがん幹細胞を誘導する“ニッチ” が存在することを示してきた(特許文献1)。
WO2014/148562
本発明は、被検物質のがん幹細胞誘導性評価技術を提供することを目的とする。
本発明者はiPS細胞、ES細胞などの多能性幹細胞を用いることで、変異原性の有無に関わらずがん誘導性のニッチに作用して、がん幹細胞への誘導に陽性もしくは陰性を示す被検物質をスクリーニングできることを見出した。
本発明は、以下のスクリーニング方法を提供するものである。
項1. 不死化細胞の培地に含まれる培養成分を含む培地において、被検物質の存在下及び非存在下で、リプログラミング関連遺伝子のプロモーターの制御下にマーカー遺伝子を組み込んだ多能性幹細胞を培養し、前記被検物質による多能性幹細胞のがん幹細胞への誘導促進を評価する工程を含むことを特徴とする、がん幹細胞への誘導を促進する被検物質のスクリーニング方法。
項2. 前記多能性幹細胞がiPS細胞又はES細胞である、項1に記載のスクリーニング方法。
項3. 前記リプログラミング関連遺伝子がNanogである、項1又は2に記載のスクリーニング方法。
項4. 前記不死化細胞ががん細胞である、項1〜3のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
項5. 不死化細胞の培地に含まれる培養成分を含む培地において、被検物質の存在下及び非存在下で、リプログラミング関連遺伝子のプロモーターの制御下にマーカー遺伝子を組み込んだ多能性幹細胞を培養し、前記被検物質による多能性幹細胞のがん幹細胞への誘導抑制を評価する工程を含むことを特徴とする、がん幹細胞への誘導を抑制する被検物質のスクリーニング方法。
項6. 前記多能性幹細胞がiPS細胞又はES細胞である、項5に記載のスクリーニング方法。
項7. 前記リプログラミング関連遺伝子がNanogである、項5又は6に記載のスクリーニング方法。
項8. 前記不死化細胞ががん細胞である、項5〜7のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
本発明によれば、がん幹細胞の誘導を促進もしくは抑制する被検物質をスクリーニングすることができる。
これまでエームズ試験(Ames test)やBhas42細胞を用いた変異原性試験といった方法で発癌性予測が行われてきたが、本発明によれば、変異原性に依らない、自然発生的ながんの危険予測を可能となる。がん幹細胞はがん細胞に移行するので、本発明のスクリーニング方法により既知の方法では安全とされていた「がん誘発性物質」を検出することが可能となる。
本法により、エピジェネティックな変化を引き起こすものの、変異原性試験など従来の「がん原性」試験法では「陰性」となる被検物質の、がん幹細胞化及びがん化活性を測ることが可能となり、こうした「有害物質」の社会あるいは環境中への拡散を防止する手段を提供する。さらに、がん幹細胞化や再発を抑制する物質の活性を測ることが可能となる。例えば、被検物質31(1,2-dichloro propane solution)の発がん性は、当初認識されていなかったが、その後変更され確定したように、従来法では判定が容易ではない物質の発がん性を的確にとらえることができる事例と考える。このように、本明細書記載の方法により、簡便かつ迅速に、未知物質のがんとの関わり、例えば、発がん性の有無などを検証することができることを証明している。
本発明のスクリーニング方法は、特に以下の点で優れている。
・変異原性を有しないが、遺伝子変異を伴わないエピジェネティックな変化を引き起こすことで、がんを誘発する物質の検出が可能となる。
・がん誘発性被検物質を10日以内で検出できる。
・特別な装置や器具の必要が無く、通常の細胞を培養出来る施設で蛍光検出が出来れば実施可能である。
・自然発生的ながんの形成メカニズムなど、がん研究にも応用可能である。
・がん化を抑制し、生体にとって有用な物質を検出できる。
スクリーニングのタイムスケジュール 被検物質1-19の顕微鏡観察結果。被検物質11と18はiPS細胞からがん幹細胞への転換を促進する物質であり、被検物質8,10,12,17はiPS細胞からがん幹細胞への転換を促進する物質であった。 iPS細胞からがん幹細胞への転換を促進する被検物質17についての最適濃度検討の結果。 iPS細胞からがん幹細胞への転換を促進する被検物質8についての最適濃度検討の結果。 iPS細胞からがん幹細胞への転換を促進する被検物質10についての最適濃度検討の結果。 iPS細胞からがん幹細胞への転換を促進する被検物質12についての最適濃度検討の結果。 iPS細胞からがん幹細胞への転換を促進する被検物質18についての最適濃度検討の結果。 iPS細胞からがん幹細胞への転換を促進する被検物質11についての最適濃度検討の結果。 造腫瘍能評価。細胞移植後4週目に観察を行った結果を示す。 mES-LLCcm培養36日後のES細胞 チューブフォーメーションアッセイ(分化能評価) スフェアフォーメーションアッセイ(自己複製能評価)。左:アッセイ開始時、右:無血清培地、非接着培養4日目 腹腔に移植40日後に形成された腫瘍(造腫瘍能評価) 培養26日目のプライマリーカルチャー 腫瘍切片観察像 5mm角の腫瘍を移植したマウスに形成された腫瘍。(上段:皮下移植、下段:腹腔移植)
本明細書において、不死化細胞としては、実験室環境において3カ月以上にわたり培養可能である細胞集団を指し、各種がん細胞が好ましく例示される。不死化細胞としては、CHO細胞、褐色細胞腫NS0細胞、CV-1細胞、COS-1細胞、COS-7細胞、CHO-K1細胞、3T3細胞、NIH/3T3細胞、HeLa細胞、C127I細胞、BS-C-1細胞、MRC-5細胞、HEK-293細胞、PC12細胞、HEK293T細胞、RBL細胞、SH- SY5Y細胞、MDCK細胞、SJ-RH30細胞、HepG2細胞、ND7/23細胞、ベロ細胞、Caco-2細胞、K562細胞、ジャーカット細胞、Per.C6細胞、HUVEC細胞、マウスCRL 2514細胞、CRL 2515細胞、Huh7細胞、A549細胞、マウスP19-CL6細胞、マウスB16-F10細胞、PLC/PRF5細胞、LLC細胞、IMR-90細胞、MCF-7細胞、U-2 OS細胞、T84細胞などが挙げられる。不死化細胞としては、がん細胞が好ましい。
培養液/培養成分を利用するために用いるがん細胞としては、哺乳類(ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、サルなど)由来のがん細胞であれば特に限定されず、マウス由来がん細胞、ヒト由来がん細胞などを広く用いることができる。また、がんの種類(大腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮頚がん、子宮内膜がん、前立腺がん、胃がん、肝臓がん、食道がん、膵臓がん、膀胱がん、胆管がん、喉頭がん、黒色腫、肺がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、甲状腺がん、多発性骨髄腫など)にも因らない。不死化細胞(好ましくはがん細胞)の培養液/培養成分は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。がん細胞を培養した培地の培養成分としては、培地を遠心分離して得られた培養上清や、培地をカラムクロマトグラフィーなどにより分画したフラクションなどが挙げられる。或いは多能性幹細胞とマイトマイシンCなどで処理して増殖能を失ったがん細胞を共培養することで多能性幹細胞をがん幹細胞に変換することができる。増殖能を失ったがん細胞は、継代時に除去することができる。この場合には、「培養成分」は多能性幹細胞と共存させるがん細胞を包含する。
多能性幹細胞は、がん細胞のような不死化細胞を培養した培地自体或いはその培養成分を用いて培養することで、がん幹細胞に誘導することができる。多能性幹細胞は、がん幹細胞に誘導できる細胞であれば特に限定されないが、例えばiPS細胞、ES細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞、造血幹細胞が挙げられ、iPS細胞、ES細胞が好ましい。
本発明では、被検物質を含まない培地での培養がコントロールであり、被検物質を添加することで多能性幹細胞からがん幹細胞への形質転換が促進されるか抑制されるかを評価することにより、がん幹細胞への誘導を促進/抑制する物質をスクリーニングすることができる。
多能性幹細胞は、哺乳類の多能性幹細胞が好ましい。哺乳類としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、ウシ、ウマ、ブタなどが挙げられ、ヒト、マウス、ラットの多能性幹細胞が好ましく、ヒト又はマウスの多能性幹細胞がより好ましい。
本発明のスクリーニング方法で得られるがん幹細胞とがん幹細胞化に使用したエフェクター細胞の組み合わせの一例を以下の表1に例示する。がん細胞の培養成分は共培養する増殖性を失ったがん細胞を包含する。以下の表1は、単なる例示であり、他の不死化細胞の培地に含まれる培養成分を使用しても多能性幹細胞からがん幹細胞が誘導できる。
多能性幹細胞は、LIFの非存在下で培養すると分化するが、不死化細胞を培養した培地自体或いはその培養成分を用いて培養することで、LIFの非存在下であってもより未分化ながん幹細胞に誘導することができる。
Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc、LIN28, L-MYC, NANOG, SV40LTなどのリプログラミング関連遺伝子のプロモーターの制御下にマーカー遺伝子を組み込むことで、多能性幹細胞から誘導された細胞ががん幹細胞(リプログラミング関連遺伝子を発現する)かがん細胞(リプログラミング関連遺伝子の発現が抑制されている)であるかを区別することができる。
本発明で使用する多能性幹細胞は、リプログラミング関連遺伝子(Nanog等)のプロモーターの制御下にマーカー遺伝子を含むのが好ましい。
マーカー遺伝子としては、CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)、DsRed、GFP、YFP、RFP、CFPなどの蛍光タンパク質遺伝子、β-グルクロニダーゼ(GUS)、lacZ、カエデ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子などが挙げられ、蛍光タンパク質遺伝子が好ましく例示される。
多能性幹細胞のがん幹細胞化の有無をスクリーニングする対象である被検物質としては、特に限定されず、有機物質および無機物質を広く包含する。また、被検物質は合成物と天然物の両方を包含する。被検物質が水に溶けにくい場合にはエタノール、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)などの適当な有機溶媒に溶かしたり、薬物と無毒性の酸又は塩基との塩として培地中に溶解させることができる。培養の温度は室温から40℃程度、好ましくは37℃程度である。被検物質としては、例えば医薬あるいはその候補物質、工業的に使用される化学製品、植物、動物、微生物などの抽出物(単一の被検物質および混合物を含む)などが挙げられる。
被検物質の濃度は、細胞毒性が公知の物質に対しては、毒性を発現しない程度の濃度が好ましく、例えば0.01〜10000μM程度、好ましくは0.1〜1000μM程度、より好ましくは1〜100μM程度の濃度が挙げられる。被検物質の毒性が不明な場合には、複数の濃度で被検物質を加えて1〜48時間程度、好ましくは1〜24時間程度培養し、多能性幹細胞又はそれから誘導されたがん幹細胞が生存する濃度でスクリーニングを行う。
被検物質が存在しない培地で多能性幹細胞を培養した場合、培地中に添加される不死化細胞の培地に含まれる培養成分の影響で多能性幹細胞はがん幹細胞に変化する。リプログラミング関連遺伝子に導入されているリプログラミング関連遺伝子のプロモーターの下流に組み込まれたGFPなどのマーカー遺伝子は、細胞が未分化な状態ではGFPを恒常的に発現しているが、細胞の分化が促進するとGFPを発現しなくなる。一方、多能性幹細胞からがん幹細胞(CSC)が出現する場合、両者はともにマーカー遺伝子を発現(例えばGFPの蛍光)するので、細胞数の増加とともに培養細胞全体のマーカー遺伝子の発現強度(例えばGFPの蛍光強度)は増強される。また、胚様体あるいはスフェロイド状の細胞塊を形成する。本発明のスクリーニング方法では、このリプログラミング関連遺伝子のプロモータの制御下にあるマーカー遺伝子の発現強度と胚様体あるいはスフェロイド状の細胞塊の出現の有無に基づき被検物質が多能性幹細胞のがん幹細胞への転換を促進もしくは抑制するか、影響を与えないかを判定することができる。
被検物質が多能性幹細胞のがん幹細胞への転換を抑制する場合、がん化を抑制し、生体にとって有用な物質であると評価される。被検物質が多能性幹細胞のがん幹細胞への転換を促進する場合、がん化を促進し、生体にとって有害な物質であると評価される。
多能性幹細胞の培養期間は、2日〜3週間程度、好ましくは4日〜2週間程度、より好ましくは6日〜10日程度である。96ウェル又は384ウェルのマイクロタイタープレートで多能性幹細胞を培養すると、day8前後で多能性幹細胞が増殖し、継代培養が必要になるので、継代培養前のday8前後で多能性幹細胞のがん幹細胞への転換を促進/抑制する被検物質の評価を行うことが好ましい。
多能性幹細胞の1つの容器への播種量は、特に限定されないが、マイクロタイタープレートのウェルあたりの播種量として1×102〜1×105 cells/well程度、より好ましくは2×102〜5×104 cells/well程度、さらに好ましくは5×102 〜1×104 cells/well程度である。
マーカー遺伝子の発現量の検出は、マイクロプレートリーダー、CCDカメラなどを用いて行うことができる。胚様体あるいはスフェロイド状の細胞塊は、マーカー遺伝子の発現量が多いために識別可能である。
なお、本明細書ではマウス(m)のiPS細胞とがん細胞(例えばLLC)の培地(cm)を用いてがん幹細胞を誘導した場合、がん幹細胞を「miPS-LLCcm」のように記載する場合があるが、ヒトiPS細胞を含む他のiPS細胞でも同様にがん細胞の培地を用いてがん幹細胞を得ることができる。
同様に、本明細書ではマウス(m)のES細胞とがん細胞(例えばLLC)の培地(cm)を用いてがん幹細胞を誘導した場合、がん幹細胞を「mES-LLCcm」のように記載する場合があるが、ヒトES細胞を含む他のES細胞でも同様にがん細胞の培地を用いてがん幹細胞を得ることができる。
多能性幹細胞と不死化細胞の由来は一致していてもしていなくてもよい。例えばヒトのiPS細胞、ヒトのES細胞を培地で培養する場合、マウス由来のがん細胞の培地、ラット由来のがん細胞の培地、サル由来のがん細胞の培地などをいずれも使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。
実施例1
がん細胞株の培養上清とmiPS用培地を混合して調整した培養液中に、被検物質1-49を各々添加してmiPS細胞を96wellプレートに1000cells/wellで播種し、培養した。この時、GFP蛍光を蛍光顕微鏡によって8日間(再現性評価では10日間)モニタリングした。実験に用いるマウスiPS細胞(miPS: iPS-MEF-Ng-20D-17)は、リプログラミング関連遺伝子の一つである Nanogプロモーター遺伝子の下流にGFP遺伝子が組み込まれている(Okita K ら. Nature、 2007年448巻313−317頁Generation of germline-competent induced pluripotent stem cells)。この細胞は未分化な状態ではGFPを恒常的に発現しているが、細胞の分化が促進するとGFPを発現しなくなる。一方、miPSからがん幹細胞(CSC)が出現する場合、GFPの蛍光は継続的に観察される。また、がん幹細胞への誘導の過程で胚様体あるいはスフェロイド状の細胞塊を形成することが判っている。被検物質の添加によって、49種の物質の内、9種の物質ではGFP蛍光が亢進されて細胞塊の形成が増加し、これら13種の被検物質がmiPS細胞のCSC化を促進すると考えられた。細胞塊の大きさとGFP蛍光強度を判定の基準とした。なお、49種の物質は市販品を購入した。
対照は、miPS培地(+LIF)での培養(control)、LIFを含まないmiPS培地にCM(LLC)の培地(cm)を加えたもの(control + CM)、LIFを含まないmiPS培地にCMとDMSOを加えたもの(control + CM + DMSO)の3つを使用した。被検物質1-19の結果を図2に示し、49種類の化合物のうち被検物質1-19、31の物質名を以下の表2に示す。
被検物質11と18はday5以降で強いGFP蛍光を示す細胞塊が認められ、iPS細胞からがん幹細胞への転換が促進されていることが明らかになった。被検物質8,10,12,17は緑色蛍光が減弱し、iPS細胞からがん幹細胞への転換を抑制する物質であることが明らかになった(図2)。
被検物質20,21,22,24,27,28,31は、iPS細胞からがん幹細胞への転換を促進し、被検物質23,25,26,29,30はiPS細胞からがん幹細胞への転換を抑制することが明らかになった。
被検物質32〜49のうち、被検物質31,36,43,47,48はiPS細胞からがん幹細胞への転換を促進し、被検物質33,38,39,44,49はiPS細胞からがん幹細胞への転換を抑制し、被検物質32,34,35,37,40,41,42,45,46はiPS細胞からがん幹細胞への転換について促進も抑制もしないことが明らかになった。
実施例2
被検物質8,10,12,17について最適濃度の検討を行った。結果を、図3A〜図3Fに示す。
実施例3
被検物質20,21,22-1,22-2,24,27,28,31について処理濃度を検討し、再現性評価を行った。再現性評価は、6-wellにスケールアップして10,000 cells/wellでmiPSを播種し、スクリーニングで陽性を示した被検物質を用いて再現性を調べた。その結果、これらの被検物質について良好な再現性が得られることを確認した。
実施例4
スクリーニングでの偽陽性を排除し、陽性を示した細胞はヌードマウス(Balb/c-nu/nu)に移植して腫瘍形成を観察し、偽陽性の頻度を確認した。結果を図5に示す。
具体的には、がん幹細胞化を促進すると考えられた被検物質11と18について、化合物を添加した条件下でmiPS細胞の培養を4週間行った。培養開始から2週間後、3週間後および4週間後の細胞をそれぞれ、BALB/c-nu/nuマウスの皮下に106個移植し、腫瘍形成能の評価を行った。
移植4週間後に対照区(miPS培地(-LIF)にCM(LLC)の培地(cm)を加えて培養した細胞)では腫瘍形成が認められなかった。一方、被検物質を添加して培養した細胞では、培養2週間後および4週間後の細胞を移植して4週間後に腫瘍形成が確認された。
実施例5
1)マウス胚性細胞(mES細胞)から誘導したがん幹細胞
がん細胞株の培養上清とmES細胞培養用培地を混合して調整した培養液中でmES細胞(B6マウス由来胚性細胞)を4週間以上培養して(マウスB6系統)の腹腔あるいは皮下に移植した。本実施例では、理研バイオリソースセンターから譲渡されたES細胞(B6J-23^(UTR))を用いた。がん細胞株には、マウスルイス肺癌由来細胞(LLC細胞)あるいはマウスメラノーマ由来細胞(B16細胞)を用い、2種のがん幹細胞株、mES-LLCcmとmES-B16cmを得た。mES-LLCcm培養36日後のES細胞の顕微鏡写真を図5に示す。
図5に示すように、LLCの培養上清を添加して培養した場合、36日間を通して、胚細胞様の形態を示す細胞が増殖した。この結果から、マウスES細胞の全てが分化することはなく、幹細胞の性質を保持している細胞が存在することが明らかになった。
mES細胞のがん幹細胞誘導培養を4週間行った後、マトリゲル上に播種して、VEGFを含む血管への分化誘導培地(EGM-2)で24時間培養すると、図6に示すように、チューブ状の構造体(血管様細胞)を形成した。マウスES細胞をがん細胞の培養成分とともに培養した細胞は、血管様細胞への分化能を有することが明らかになった。
また、がん幹細胞誘導培養後のmES-LLCcmを非接着で、無血清条件下で培養すると図7に示すようにスフェアを形成し、自己増殖能があることが判った。
図5〜図7の結果から、マウスES細胞をがん細胞の培養上清とともに培養することで、がん幹細胞が得られたことが明らかになった。
がん幹細胞に用いる細胞はマウスES細胞、ヒトES細胞をはじめとする哺乳動物由来の胚性細胞であっても、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、間葉系幹細胞、神経幹細胞、造血幹細胞であっても良く、用いる細胞株培養上清はヒト由来、マウス由来、サル由来であっても、癌細胞株であっても、正常不死化細胞であっても良い。
図8に示すように、1×105個のmES-LLCcm細胞をB6マウスの腹腔に移植したところ、約1ヶ月で腫瘍が形成された。腫瘍を摘出して、1) 腫瘍の一部を4%パラフォルムアルデヒドで固定した(切片観察用、図10)。2)同一腫瘍の一部から、プライマリーカルチャーを作製した(図9)。3)また、同一腫瘍の一部を5mm角にして健康なB6マウスの皮下あるいは腹腔に新たに移植した(がん細胞であることを確認)。
プライマリーカルチャーをがん幹細胞誘導時と同様の培地で培養すると培養26日間を通じてES様の細胞が増殖した。
図10に示すように異型分裂像(○)を多見し、悪性奇形腫と診断された。
図11に示すように、形成された腫瘍を5mm角に切断して、健康なB6マウスの皮下に移植した場合も腹腔に移植した場合も腫瘍が形成された。これらの結果はmES-LLCcmであってもB16細胞の培養上清を用いたmES-B16cmであっても同様に観察された。
様々な臓器・器官の細胞に分化誘導しながらがん幹細胞を作成することで、あらゆるがんのモデルを作製できると考えられる。

Claims (8)

  1. 不死化細胞の培地に含まれる培養成分を含む培地において、被検物質の存在下及び非存在下で、リプログラミング関連遺伝子のプロモーターの制御下にマーカー遺伝子を組み込んだ多能性幹細胞を培養し、前記被検物質による多能性幹細胞のがん幹細胞への誘導促進を評価する工程を含むことを特徴とする、がん幹細胞への誘導を促進する被検物質のスクリーニング方法。
  2. 前記多能性幹細胞がiPS細胞又はES細胞である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
  3. 前記リプログラミング関連遺伝子がNanogである、請求項1又は2に記載のスクリーニング方法。
  4. 前記不死化細胞ががん細胞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  5. 不死化細胞の培地に含まれる培養成分を含む培地において、被検物質の存在下及び非存在下で、リプログラミング関連遺伝子のプロモーターの制御下にマーカー遺伝子を組み込んだ多能性幹細胞を培養し、前記被検物質による多能性幹細胞のがん幹細胞への誘導抑制を評価する工程を含むことを特徴とする、がん幹細胞への誘導を抑制する被検物質のスクリーニング方法。
  6. 前記多能性幹細胞がiPS細胞又はES細胞である、請求項5に記載のスクリーニング方法。
  7. 前記リプログラミング関連遺伝子がNanogである、請求項5又は6に記載のスクリーニング方法。
  8. 前記不死化細胞ががん細胞である、請求項5〜7のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
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WO2019150756A1 (ja) * 2018-01-31 2019-08-08 ヤマハ発動機株式会社 生体対象物の移動方法及び移動装置
JPWO2019150756A1 (ja) * 2018-01-31 2021-01-07 ヤマハ発動機株式会社 生体対象物の移動方法及び移動装置

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