以下、図面を用いて本発明を説明するが、本発明が図示されたものに限られないことはもちろんである。
なお、本明細書において、バイオマスチップ(以下、単に「チップ」と記載することもある。)とは、製材副産物の端材等をチッパーで切削したものや破砕機で破砕して形状を整えた、木を原料としたチップである。その大きさは、燃焼炉内へ安定的に供給できる大きさ及び形状であればどのようなものでも良い。例えば、欧州規格EN14961に準拠したチップを用いることが可能である。樹種はどのようなものでも良い。また、本明細書において、バイオマスチップには、おが粉や鉋屑を押し出し成形する等によって製造される木質ペレットも含まれる。
また、本明細書において、バイオマス粉とは、バイオマスチップ等の木質バイオマスを、例えば特開2012−61376号公報に開示される粉砕機で粉砕して製造される木質バイオマスの微粉である。その平均粒径は300μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは40μm以下である。
図1は、本発明のバイオマス燃焼装置及びその付属装置の一例を概念的に示したフロー図である。本例においては、バイオマス粉バーナはパイロットバーナとして用いられている。図1おいて、100は前処理装置、200はバイオマス燃焼装置、300は排ガス処理装置であり、バイオマス燃焼装置200は図示しない燃焼制御装置を備える。燃焼制御装置は、予め設定されている複数の運転モードのうちの一つを選択的に実行し、選択された運転モードに応じて前処理装置100、バイオマス燃焼装置200、排ガス処理装置300が備える各機器の動作を制御する。燃焼制御装置は、オペレータからの指令又は燃焼制御装置に格納されているプログラムに従って運転モードの選択及び開始を行う。運転モードの詳細については後述する。
前処理装置100は、バイオマスチップを貯留するチップサイロ110、チップサイロからチップを搬送するチップコンベア120、チップコンベアで搬送されたチップを脱水する脱水機130、脱水されたチップを搬送する脱水チップコンベア140を有する。
バイオマス燃焼装置200は、燃焼炉210、チップ供給装置220、ホッパ230、燃焼空気供給装置241、バイオマス粉バーナ250、粉ホッパ261、粉供給装置262、粉搬送ファン263、バーナ空気供給ファン264、熱交換器270を有する。
排ガス処理装置300は、集塵器310、煤塵貯留槽320、誘引通風機330、煙突340を有する。また、これらを接続する図示しない煙道、ダンパ、排ガス分析計を有する。
最初に、図1を参照して前処理装置100について説明する。チップサイロ110は、木材伐採地や工場等で製造されたチップを一時貯留するものである。チップサイロ110の下部にはチップを所望の供給量で取り出すことができる任意の供給装置が設けられている。チップコンベア120は、チップサイロ110から取り出されたチップを脱水機130に搬送するものである。なお、チップコンベア120を設けず、チップサイロ110から脱水機130に直接チップを供給するようにしても良いし、必要に応じてチップコンベア120を複数台のコンベアで構成することも可能である。
脱水機130は、チップコンベア120から搬送されたチップの含水率を低減するためのものである。脱水チップコンベア140は、脱水機130で脱水されたチップをバイオマス燃焼装置200が有するホッパ230内へ搬送するものである。なお、必要に応じて、脱水チップ搬送コンベアを省略して脱水機130から直接ホッパ230へ排出しても良いし、脱水チップコンベア140を複数台のコンベアで構成することも可能である。また、チップの含水率が十分に低い場合は、脱水機130をバイパスできることはもちろんである。
また必要ならば、前処理装置100は、任意の熱源を用いてチップを乾燥させる乾燥装置や、チップを自然乾燥させるための装置、例えば屋根付ヤードを有しても良い。
また、バイオマス燃焼装置200においてバイオマス粉の消費量が増大した場合に、貯留しているチップからバイオマス粉を製造して、これをバイオマス粉バーナ250に供給するため、前処理装置100が、バイオマスチップ粉砕装置を備えていても良い。
次に、図2を参照して、脱水機130について詳細に説明する。図2は、脱水機130の内部構造を示す模式図である。脱水機130は、長孔Hを有する筐体131、受入シュート132、上側ローラ133、下側ローラ134、これらのローラの軸それぞれに一対ずつ設けられた軸受135、136、排出シュート137、歯車やベルト等からなる伝導機構と電動機とを備え上側及び下側の両ローラを駆動する図示しない駆動装置を有する。なお、駆動装置は、上側ローラ133のみ、又は下側ローラ134のみを駆動するものであっても良い。
受入シュート132は、チップコンベア120から搬送されたチップを受けるとともにそのまま上下ローラ133、134間へ供給することができるように筐体131に取り付けられている。
上側ローラ133は、軸受135を介して筐体131に形成された長孔H内に回転自在かつ上下動自在に係止されている。なお、上側ローラ133は軸受135とともに筐体131に対して上下動自在に係止されておればよく、例えば、長孔Hに代えて筐体に取り付けられた案内レールに、軸受135を上下動自在に係止させた構造とすることができる。
下側ローラ134は、軸受136を介して筐体131に回転可能に軸支されている。上側ローラ133と下側ローラ134とは、各ローラの軸が略鉛直平面内で互いに平行となるように配置されている。
排出シュート137は、上側ローラ133と下側ローラ134との間を通過したチップを受けるとともにそのまま脱水機130の外部へ排出できるよう、筐体131に取り付けられている。
脱水機130は以上のように構成されているので、次のように作動する。受入シュート132上に供給されるチップは、受入シュート132に沿って落下し、上側ローラ133と下側ローラ134との間に供給される。各ローラは駆動装置によって回転しているので、供給されたチップをローラ間に挟み込む。ローラ間に挟み込まれるチップの厚みに応じて、上側ローラ133が、軸受135の長孔H内での上下動とともに、上下動する。上側ローラは自重でチップに挟圧荷重をかけるのに十分な重量を有している。よって、チップがローラ間を通過する際、チップの厚みにかかわらず、チップには上下方向から脱水に十分な挟圧荷重が加えられる。上下ローラ間を通過し、脱水されたチップは、排出シュート137上に落下し、排出シュート137に沿って落下し、脱水機130外に排出される。
このような脱水機によって、雨に濡れるなどして70〜80質量%程度まで高まった含水率(チップに占める水の質量割合)を、40質量%以下、好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下に低減することが可能である。また、生木から作られたばかりのチップの含水率は40〜50質量%程度であるが、このようなチップの含水率も上記の値まで低減することが可能である。
また、確実にチップを脱水するために、脱水機103を2台又は3台以上直列に設けても良いし、1台の脱水機103が2対又は3対以上の回転ローラを直列に備えるようにしても良い。この場合、後段の脱水機又は回転ローラ対ほど挟圧荷重が大きいものとすれば、より大きな脱水作用が得られるので好ましい。また、一度脱水機103から排出されたチップを再び同じ脱水機103に供給して複数回脱水処理するようにすれば、低コストで確実に脱水できる。
次に、図1を参照してバイオマス燃焼装置200について説明する。バイオマス燃焼装置200は燃焼炉210を有する。燃焼炉210は例えば鋼板で形成され、耐火材が内張されている。燃焼炉210は燃焼室Cを有すると共に、チップ供給口S1、バーナ取付口S2、燃焼空気入口A1、A2、排ガス出口E1、灰排出口E2を有する。また、燃焼炉210には、燃焼室C内の温度を計測できる位置に図示しない温度計が設置されている。この温度計は、燃焼室C内の温度を計測し、それを温度信号として燃焼制御装置に供給する。
図3を参照してバイオマス燃焼装置200について詳細に説明する。図3は、図1に示されるバイオマス燃焼装置200の断面図である。燃焼炉210には、チップ供給口S1を介して燃焼室C内へチップ供給可能にチップ供給装置220が取り付けられている。チップ供給装置220は、ケーシング221、プッシャ222、プッシャ222を往復駆動する流体圧シリンダ223で構成されている。流体圧シリンダ223によるプッシャ222の往復駆動速度は、燃焼制御装置からの信号によって適宜可変である。また、チップ供給装置220上部には、チップ供給用のホッパ230が取り付けられている。なお、チップ供給装置220は上記の構成には限られず、例えば、電動機によってケーシング内で回転駆動するスクリューを有するスクリューフィーダ等の供給装置で構成することもできる。
燃焼室C内には固定火格子211が設けられており、その上面にチップ供給口S1からチップBが供給される。固定火格子211の下面には仕切りがあり、仕切りの上流側と下流側とのそれぞれに、後述する燃焼空気入口A1、A2を介して燃焼空気が供給される。また、固定火格子211には、燃焼空気を下から上に向けて流通させる複数の開口hが設けられている。なお、図3に示される実施例においては、固定火格子211を有する燃焼炉210が示されているが、燃焼炉の形式は固定火格子式には限られず、例えば、振動火格子式、階段振動火格子式、下込式、ポット式、流動層式等とすることができる。
燃焼炉210の下部には、固定火格子の上流側に燃焼空気を供給する燃焼空気入口A1、固定火格子の下流側に燃焼空気を供給する燃焼空気入口A2が設けられており、それぞれ燃焼空気供給装置241と、配管L1、L2を介して接続されている。配管L1、L2にはそれぞれダンパD1、D2が設けられている。燃焼制御装置は、燃焼空気供給装置241の回転速度や、ダンパD1及び/又はD2の開度が調節されることによって、燃焼空気供給装置241から燃焼空気入口A1、A2に供給される燃焼空気の量を制御することができる。なお、配管L1及び配管L2を単一の燃焼空気供給装置241に接続する代わりに、配管L1、L2それぞれに1台ずつ個別に燃焼空気供給装置を接続し、それらの燃焼空気供給装置を個別に制御するようにしても良い。
燃焼炉210には、バーナ取付口S2を介して燃焼室Cに向けてバイオマス粉燃焼ガスが噴出されるようにバイオマス粉バーナ250が取り付けられている。バイオマス粉バーナ250は、それぞれ燃焼室Cに臨む開口部を有するバーナ内筒251とバーナ外筒252、図示しないスパークプラグ等の点火装置、図示しない火炎検出器を有しており、固定火格子211上に供給されたチップBに向かってバイオマス粉燃焼ガスが噴出されるように配置されている。バーナ内筒251内には、粉ホッパ261から粉供給装置262によって取り出されたバイオマス粉が、配管L3を介し、粉搬送ファン263によって送り出された空気に同伴して供給される。粉搬送ファン263によって送り出された空気は、バイオマス粉を搬送した後、バイオマス粉バーナ250の一次空気としても機能する。また、バーナ外筒252内には、配管L4を介してバーナ空気供給ファン264から送り出される二次空気が供給される。
粉供給装置262は、例えばテーブルフィーダで構成され、フィーダは燃焼制御装置からの制御信号によって回転速度可変に制御され、これにより、バイオマス粉取り出し量(バイオマス粉バーナ250への供給量)を必要に応じて変化させることができる。粉供給装置262はテーブルフィーダに限られず、ロータリーバルブ等の任意の供給装置とすることができる。
粉搬送ファン263及びバーナ空気供給ファン264は、燃焼制御装置からの制御信号によって回転速度が調節される。配管L3、L4にはそれぞれダンパD3、D4が設けられており、燃焼制御装置からの制御信号によって開度が調節される。粉搬送ファン263の回転数や、ダンパD3の開度の調節によって、粉搬送ファン263から供給される一次空気の量を調節することができ、バーナ空気供給ファン264の回転数や、ダンパD4の開度の調節によって、ファン264から供給される二次空気の量を調節することができる。
燃焼室Cの上部には、燃焼室内で発生する燃焼ガスと外部から供給される空気、水等の熱媒体との間で熱交換する、熱交換器270が設けられている。本例において、熱交換器270はその内部を熱媒体が流通する蛇行管からなる熱交換器であるが、熱交換器の形式は図示されるものに限られないことはもちろんであり、燃焼ガスと熱媒体の間で熱交換できればどのような熱交換器でも良い。また、燃焼室Cに露出しているものにも限られず、燃焼炉210の壁面に埋設されるようにすると、熱交換できるとともに燃焼炉210を構成する耐火材の過熱防止及び長寿命化が期待できるので好適である。
燃焼炉210の上部には排ガス出口E1が設けられており、排ガス出口E1を介して後述する排ガス処理装置300へ排ガスが排出される。また、燃焼炉210の下部には灰排出口E2が設けられるとともに、スクリューフィーダやスクレーパコンベア等からなる図示しない灰排出装置が設けられている。灰排出装置は連続的に又は間欠的に作動して、灰排出口E2を介して燃焼室Cの外部へ灰を排出する。
次に、図1を参照して排ガス処理装置300を説明する。集塵器310は、燃焼炉210の排ガス出口E1を介して排出された排ガスと、排ガスに同伴した煤塵とを分離する装置であり、例えばサイクロンやバグフィルタからなる。煤塵貯留槽320は集塵器310で分離された煤塵を貯留するものである。誘引通風機330は集塵器310を介して燃焼炉210の燃焼室Cから排ガスを誘引するファンである。煙突340は排ガスを外部に放出する筒である。燃焼炉210の排ガス出口E1、集塵器310、誘引通風機330及び煙突340は、図示しない煙道によって接続されている。また、煙道の所定の位置には、排ガス分析計が設置され、排ガス中の一酸化炭素濃度や酸素濃度がリアルタイムで計測可能となっている。この排ガス分析計によって計測された一酸化炭素濃度などの計測値は、計測信号として燃焼制御装置に伝達される。
続いて、図1、3を参照して本発明のバイオマス燃焼装置200の作動について説明する。チップサイロ110から供給されるチップは、チップコンベア120を介して脱水機130に搬送される。脱水機130で含水率が低減されたチップは脱水チップコンベア140を介してホッパ230に搬送される。ホッパ230内に所定量のチップが貯留されると、バイオマス燃焼装置200の起動の準備が整う。
[起動モード]
次に、図3を参照して起動モードについて説明する。オペレータによってスタートボタンが押される等、バイオマス燃焼装置200起動の指令信号が与えられると、燃焼制御装置は運転モードとして起動モードを選択し、起動モードに応じた各機器の運転制御を開始する。起動モードとは、バイオマス燃焼装置200を、コールド状態から燃焼室C内でチップが安定的に燃焼される状態に移行させる運転モードである。起動モードでは、バイオマス粉バーナ250は燃焼室C内のチップを点火するためのパイロットバーナとして機能する。
起動モードによる運転が開始されると、燃焼制御装置はチップ供給装置220を駆動し、着火に必要な所定量のチップBが、ホッパ230から燃焼室C内の固定火格子211上に供給される。また、燃焼制御装置は燃焼空気供給装置241を駆動するとともにダンパD1、D2の開度を調節し、配管L1、L2を介して所定の供給量で燃焼空気を固定火格子211が有する開口hを通じてチップBに供給する。
また、固定火格子上のチップBに点火するために、燃焼制御装置はバイオマス粉バーナ250の運転を開始する。まず、燃焼制御装置は粉搬送ファン263、粉供給装置262の運転を開始し、バーナ内筒251内に所定量のバイオマス粉及び一次空気が供給される。また、燃焼制御装置はバーナ空気供給ファン264の運転を開始し、バーナ外筒252内に所定量の二次空気が供給される。この際、バイオマス粉を確実に点火すると共に、安定した火炎を形成するため、一次空気と二次空気の合計の空気比は1.0〜1.5が好ましく、1.1〜1.4がより好ましく、1.2〜1.3が更に好ましい。また、一次空気と二次空気の合計量に対する一次空気の割合は20〜50%が好ましく、30〜40%がより好ましい。
続いて燃焼制御装置はバイオマス粉バーナ250の点火装置を作動させる。バーナ内筒251の開口部から噴出されるバイオマス粉は点火装置によって点火され、バイオマス粉バーナ250から固定火格子211上のチップBに向かう火炎F1が形成されると共に、チップBに向けて燃焼ガスが噴出される。
火炎検出器によって火炎F1の形成が確認されると、燃焼制御装置はバイオマス粉バーナ250の一次空気と二次空気の合計の空気比を小さく、好ましくは0.9〜1.0にすべく、粉搬送ファン263、バーナ空気供給ファン264の回転数及び/又はダンパD3、D4の開度を調節する。
この調節によりバイオマス粉バーナ250は空気不足となるので、バイオマス粉バーナ250に供給されるバイオマス粉の一部は完全燃焼できず不完全燃焼状態、すなわち、熱分解工程が途中まで進行した状態でチップBに向けて吹き付けられる。この熱分解工程が途中まで進行したバイオマス粉は、チップBの表面あるいはその近傍において、可燃性ガスを放出すると共に炭化され炭となる。また、チップBにはバイオマス粉バーナ250から高温の燃焼ガスと火炎F1を形成することによる輻射熱が供給されるとともに、固定火格子211の開口hを通じて燃焼空気が供給される。したがって、熱分解工程が途中まで進行した状態でチップBに向けて吹き付けられたバイオマス粉から発生した可燃性ガスや炭は、チップBに極めて近い位置で速やかに燃焼して熱を放出し、チップの点火を促進する。
チップが点火されると共にチップの燃焼が安定すると、燃焼室C内に火炎F2が形成され、燃焼室C内の温度が上昇する。燃焼炉210に設けられた温度計によって計測される温度計測値が所定値に達すると、燃焼制御装置はバイオマス燃焼装置200の起動が完了したと判断し、起動モードを終了し、運転モードを通常運転モードに切り替える。
[通常運転モード]
続いて通常運転モードについて説明する。運転モードが通常運転モードに切り替えられると、燃焼制御装置はバイオマス粉バーナ250の運転を停止し、火炎F1は消失する。また、燃焼制御装置はチップ供給装置220の運転を開始し、所定の供給スピードで固定火格子211上にチップBが供給される。チップBは、固定火格子211上に供給されると、乾燥、熱分解、燃焼というプロセスを経ながら、新たに供給されるチップBに押されて、徐々に固定火格子211上を移動し、固定火格子端に達するまでに燃え尽きて灰となる。また、チップ供給量に対して空気比が1.1〜1.8、好ましくは1.2〜1.6、更に好ましくは1.3〜1.4となるように、燃焼制御装置はチップ供給装置220、燃焼空気供給装置241及びダンパD1、D2を制御する。この制御により、固定火格子211に設けられた開口hを通じて燃焼空気が供給され、固定火格子211上において安定した火炎F2の形成が継続する。
また、運転モードが通常運転モードに切り替えられると、熱交換器270に燃焼ガスから熱が与えられるので、ボイラや熱風発生装置等の熱利用設備の運転を開始することが可能となる。熱交換器270で燃焼ガスと熱交換して得られる蒸気は、例えば蒸気タービンに供給して発電に利用することや、各種工場で乾燥、加温、加熱、滅菌、洗浄等に用いるユーティリティ蒸気として利用することが可能である。また、熱交換によって得られる温水は、例えば入浴施設での給湯やロードヒーティングの熱源として利用可能である。また、熱交換によって得られる熱風は、例えばビニルハウスや工場の暖房用途や、本実施例の前処理装置100に供給してチップ乾燥に用いることができる。また、温水や熱風は冷凍サイクルの蒸発器加熱源として冷房用途に利用することも可能である。なお、各媒体について、上記の用途に限られないことはもちろんであり、例えば蒸気を暖房用途に用いることも可能である。
熱交換器270と熱交換した後、排ガス出口E1から排出される排ガスは排ガス処理装置300で処理される。
[補助運転モード]
次に、補助運転モードについて説明する。補助運転モードでは、バイオマス粉バーナは補助バーナとして機能する。
通常運転モードで運転中にオペレータから補助運転モードの実行を指令された場合や、起動モード終了時に補助運転モードに切り替えるプログラムが実行されている場合、燃焼制御装置は運転モードを補助運転モードに切り替える。補助運転モードとは、バイオマス粉バーナ250を補助バーナとして運転し、バイオマス粉バーナ250から噴出される燃焼ガスの熱によって、バイオマス燃焼装置200に要求される熱需要の一部又は全部を賄うよう各装置を制御するモードである。
補助運転モードでは、通常運転モードと同様にチップが火格子上に供給されると共に燃焼空気が供給され、火炎F2が形成される。これと同時に、燃焼制御装置が粉供給装置262、粉搬送ファン263、バーナ空気供給ファン264を駆動すると共に、ダンパD3、D4の開度を調節する。よってバイオマス粉バーナ250によって火炎F1が形成され燃焼ガスが噴出される。つまり、補助運転モードでは、チップの燃焼熱とバイオマス粉の燃焼熱が、熱交換器270及び熱媒体を介して外部に供給される。
補助運転モードでは、チップ供給装置220によって燃焼室Cに供給されるチップが完全燃焼すると共に、過剰に空気が供給されて熱効率が低下することを防止するため、供給されるチップの量に対して空気比が1.1〜1.8、好ましくは1.2〜1.6、更に好ましくは1.3〜1.4となるように、燃焼制御装置が、チップ供給装置220、燃焼空気供給装置241及び/又はダンパD1、D2を制御する。
また、バイオマス粉バーナによって形成される火炎F1を安定したものとすると共に、過剰に空気が供給されて熱効率が低下することを防止するため、燃焼制御装置は、バイオマス粉バーナ250に供給されるバイオマス粉の量に対して、バイオマス粉バーナ250に供給される一次空気と二次空気の合計の空気比が1.0〜1.5、好ましくは1.1〜1.4、より好ましくは1.2〜1.3となり、また、一次空気と二次空気の合計量に対する一次空気の割合が20〜50%、好ましくは30〜40%となるように、粉供給装置262、粉搬送ファン263、バーナ空気供給ファン264及び/又はダンパD3、D4を制御する。
補助運転モードでは、バイオマス燃焼装置200は、熱利用設備における熱需要の変動に迅速に対応することが可能である。チップBは燃焼室C内に供給されると最初に乾燥工程を経るため、チップ供給量を増やしてもすぐには燃焼室C内温度が上昇せず、むしろ急激に供給量を増やすとチップの乾燥に熱が奪われ燃焼室C内温度が低下する恐れがある。また、チップ供給量を減らしても、既に燃焼室C内に供給されているチップBの燃焼は継続するのですぐには燃焼室C内温度は低下しない。これに対して、バイオマス粉は粒度がある一定の範囲内に収まっており、しかも流体搬送が可能であるので、供給量を正確に制御できる。すなわち、バイオマス粉バーナ250から出力される発熱量を正確にしかも素早く調節することが容易である。このバイオマス粉の性質を利用して、補助運転モードでは、チップ供給装置220を所定の速度で駆動してチップ燃焼でベースとなる出力熱量を確保すると共に、バイオマス粉バーナ250でのバイオマス粉の燃焼量を制御することで、バイオマス燃焼装置200から出力される合計の出力熱量を調節し、熱需要の変動に迅速に対応することができる。
また、補助運転モードでは、不測の事態によってバイオマス燃焼装置200から出力される熱量が変動することを防止できる。例えば、燃焼制御装置がチップ供給装置220を一定速度で運転していても、チップの含水率のばらつき、チップBの固定火格子211上での滞留による燃焼量の一時的低下、及びチップ滞留の解消による燃焼量の一時的増加等に起因して、燃焼室C内温度が大きく変動し、バイオマス燃焼装置200から出力される熱量が変動することがある。補助運転モードでは、燃焼室C内温度の変化に応じて、燃焼制御装置が粉供給装置262、粉搬送ファン263、バーナ空気供給ファン264及び/又はダンパD3、D4を制御して、バイオマス粉バーナ250の燃焼量を調節することによって、燃焼室C内の温度を目標温度に維持し、バイオマス燃焼装置200から出力される熱量が変動することを未然に防止することができる。
また、不測の事態の一つとして、前処理装置100等チップ供給系にトラブルが発生し、チップが供給されないことも挙げられる。補助運転モードでは、このようなトラブルが発生しても、燃焼制御装置がバイオマス粉バーナ250の燃焼量を調節して、バイオマス粉バーナ250から出力される熱量をバイオマス燃焼装置200に要求されている熱量と等しくすることで、バイオマス粉バーナ250の運転のみでバイオマス燃焼装置200の運転を継続することが可能である。バイオマス粉バーナ250の定格出力を、バイオマス燃焼装置200の定格出力熱量と等しくする場合には、バイオマス粉バーナ250のみでバイオマス燃焼装置200の運転を継続することが可能となる。
また、バイオマス粉バーナ250の定格出力を、バイオマス燃焼装置200をホールド状態とすること、すなわち熱交換器270から熱媒体が供給される熱利用設備を一時停止又は最低出力まで低下させた上で、燃焼室C内温度や熱媒体の温度が維持される状態とすることが可能な熱量としてもよい。バイオマス粉バーナ250がこのような定格出力を有することによって、前処理装置100等チップ供給系にトラブルが生じても、補助運転モードでバイオマス粉バーナ250を運転し、バイオマス燃焼装置200をホールド状態として燃焼室C内温度が低下することを防止できる。よって、トラブルから復旧した際に迅速にバイオマス燃焼装置200をトラブル発生前の負荷まで上げることができる。バイオマス粉バーナ250の定格出力を、バイオマス燃焼装置200をホールド状態とすることが可能な出力とすると、バーナを比較的小型なものとしてバイオマス燃焼装置全体のコストダウンを図ることもできる。バイオマス燃焼装置200をホールド状態とすることが可能な出力熱量は、燃焼炉210や、熱利用設備の熱容量や構造にもよるが、例えばバイオマス燃焼装置200の定格出力熱量に対して10%、30%、又は50%である。
続いて、図4を参照して、本発明の他の実施例について説明する。図4は、本発明の他の実施例にかかるバイオマス燃焼装置の断面図である。図4に示されるバイオマス燃焼装置200は、燃焼炉210に燃焼空気入口A3が設けられると共に、バイオマス粉バーナ250とは別の、第2バイオマス粉バーナ255が設けられている点で、図1、3に示されるバイオマス燃焼装置200とは異なっている。なお、図4には、バイオマス燃焼装置200が通常運転モードで運転され、バイオマス粉バーナ250の運転が停止されている状態が示されている。
排ガス出口E1近傍には、燃焼空気入口A3が設けられている。燃焼空気入口A3は、第2燃焼空気供給装置242と配管L5、ダンパD5を介して接続されている。第2燃焼空気供給装置242の回転数やダンパD5の開度は燃焼制御装置によって制御され、燃焼空気入口A3から供給される燃焼空気の量が調節される。
第2バイオマス粉バーナ255は、燃焼炉210の上面に設けられ、排ガス出口E1近傍に火炎F3を形成可能とされている。この第2バイオマス粉バーナ255は、燃焼室Cで発生する燃焼ガスに同伴する未燃分を完全燃焼させるための二次燃焼バーナとして機能する。また、第2バイオマス粉バーナ255と熱交換器270とはいずれも燃焼炉210の上方の比較的近い位置に設けられるため、第2バイオマス粉バーナ255から噴出される燃焼ガスは熱交換器270に熱を与えることも可能である。
第2バイオマス粉バーナ255の構造はバイオマス粉バーナ250と同じであり、バーナ内筒256、バーナ外筒257を有する。また、バイオマス粉バーナ250と同様に、バーナ内筒256内には、第2粉ホッパ281から第2粉供給装置282によって取り出されたバイオマス粉が、ダンパD6を有する配管L6を介し、第2粉搬送ファン283によって送り出された空気に同伴して供給される。第2粉搬送ファン283によって送り出された空気は、第2バイオマス粉バーナ255の一次空気としても機能する。また、バーナ外筒257内には、ダンパD7を有する配管L7を介して第2バーナ空気供給ファン284から送り出される二次空気が供給される。また、第2粉供給装置282、各ファン283、284、及び各ダンパD6、D7は、燃焼制御装置によって制御され、第2バイオマス粉バーナ255へ供給されるバイオマス粉の量や燃焼空気の量が調節される。
その他の装置に関しては、図4に示されるバイオマス燃焼装置200は図3に示されるバイオマス燃焼装置200と同様に構成されている。
次に、第2バイオマス粉バーナ255の作動について説明する。燃焼制御装置は、安定した火炎を形成するため、第2バイオマス粉バーナ255に供給されるバイオマス粉の量に対して、一次空気と二次空気の合計の空気比が1.0〜1.5、好ましくは1.1〜1.4、より好ましくは1.2〜1.3とされ、一次空気と二次空気の合計量に対する一次空気の割合が20〜50%、好ましくは30〜40%となるように、第2粉供給装置282、各ファン283、284及びダンパD6、D7を制御する。また、配管L5及びダンパD5を介して第2燃焼空気供給装置242から供給される所定量の燃焼空気が、排ガスに混入されるよう燃焼空気入口A3から排ガスの流れに向けて噴出される。
排ガス出口E1の周辺には、上記のように第2バイオマス粉バーナ255と燃焼空気入口A3が設けられているので、燃焼室Cから排出される排ガス中に一酸化炭素やすす等の未燃分が同伴されても、未燃分は燃焼空気と熱が与えられて完全燃焼する。
また、排ガス処理装置300が有する排ガス分析計から供給される排ガス中の一酸化炭素濃度計測値が上昇した場合に、燃焼制御装置が第2バイオマス粉バーナ255の燃焼量を増加させるように第2粉供給装置282、各ファン283、284、及び各ダンパD6、D7を制御すると共に、燃焼空気入口A3から供給される燃焼空気量を増加させるように第2燃焼空気供給装置242を制御する。逆に、一酸化炭素濃度計測値が低下した場合には、第2バイオマス粉バーナ255の燃焼量を減少させるとともに燃焼空気入口A3から供給される燃焼空気量を減少させる。燃焼制御装置が第2バイオマス粉バーナ255をこのように制御することによって、第2バイオマス粉バーナ255におけるバイオマス粉の消費量を必要最小限に抑えつつ、確実に未燃分が排出されることを防止することができる。
なお、第2バイオマス粉バーナ255は、バイオマス燃焼装置200が起動モードで運転されている場合にも運転させることができる。起動モードでバイオマス燃焼装置200が運転されている場合に、第2バイオマス粉バーナ255を運転させることにより、炉内温度が比較的低く未燃分が発生しやすい起動時においても燃焼炉210から未燃分が排出されることを確実に防止することができる。しかも、第2バイオマス粉バーナ255から噴出される燃焼ガスの熱によって、燃焼室C内や熱交換器270の昇温を促進することができる。また、第2バイオマス粉バーナ255は、バイオマス燃焼装置200が補助運転モードで運転されている場合にも運転させることができる。補助運転モードでバイオマス燃焼装置200が運転されている場合に第2バイオマス粉バーナ255を運転させることにより、通常運転モードで第2バイオマス粉バーナ255を運転する場合と同様に、燃焼炉210から未燃分が排出されることを確実に防止することができる。
次に、図5を参照して、本発明の他の実施例について説明する。図5は、本発明のバイオマス燃焼装置200の他の例及びその付属装置の一例を概念的に示したフロー図である。図5に示されるバイオマス燃焼装置200は、前処理装置100、排ガス処理装置300、チップの少なくとも一部を熱分解する熱分解炉400及び有価物回収装置500と共に用いられ、図示しない燃焼制御装置を備える。本実施例において燃焼制御装置は、前処理装置100、バイオマス燃焼装置200、排ガス処理装置300、熱分解炉400及び有価物回収装置500が備える各機器の動作を制御する。
前処理装置100は、図1に示される前処理装置100と同様に構成される。ただし、脱水チップコンベア104の下流にはシュート、コンベア等からなる図示しない振り分け装置が設けられ、後述するホッパ230と熱分解炉用ホッパ430にチップを供給できるように構成されている。
バイオマス燃焼装置200は、図1、3に示されるバイオマス燃焼装置200と同様に構成される。ただし、熱交換器270を有していない点、後述するロータリーキルン410が貫通するように燃焼炉210が構成されている点、及び、排ガス出口E1が燃焼炉210の上面に設けられている点で、図5に示されるバイオマス燃焼装置200は図1、3に示されるバイオマス燃焼装置200と異なる。
排ガス処理装置300は、図1に示される排ガス処理装置300と同様に構成され、燃焼炉210の排ガス出口E1から排出される排ガスを処理する。
次に図6を参照して熱分解炉400について説明する。図6は、図5に示されるバイオマス燃焼装置200及び熱分解炉400の断面図である。図6においてC1は燃焼炉210が有する燃焼室、C2はロータリーキルン410が有する熱分解室である。なお、図6には、バイオマス燃焼装置200が補助運転モードで作動し、燃焼炉210の燃焼室C1内にチップが供給されず、バイオマス粉バーナ250のみが運転されている状態が示されている。
熱分解炉400は、チップから熱分解ガス及び炭を製造するためのものであり、ロータリーキルン410、熱分解炉用チップ供給装置420、熱分解炉用ホッパ430、分離排出装置440を有する。ロータリーキルン410は、一端が有底で他端が開放されており、内部に熱分解室C2を有する鋼板製の円筒体である。ロータリーキルン410の中心軸は水平面に対して開放端側が低くなるように傾斜している。ロータリーキルン410は図示しない駆動装置によって中心軸周りに回転駆動される。
ロータリーキルン410は、燃焼炉210を貫通しており、外面の一部が燃焼炉210の燃焼室C1内に露出している。ロータリーキルン410と燃焼炉210との係合部には図示しないシール機構が設けられ、燃焼室C1が外気と遮断されている。
ロータリーキルン410の有底端側にはチップ供給口S3が設けられ、チップ供給口S3を介して熱分解室C2内へチップ供給可能に熱分解炉用チップ供給装置420が取り付けられている。熱分解炉用チップ供給装置420は、ケーシング421、スクリュー422、スクリューを回転駆動する電動機423で構成されている。電動機423は燃焼制御装置によって速度可変に駆動される。ケーシング421とロータリーキルン410との係合部には図示しないシール機構が設けられ、熱分解室C2が外気と遮断されている。また、熱分解炉用チップ供給装置420の上部には、ケーシング421内へチップを供給可能に熱分解炉用ホッパ430が取り付けられている。なお、熱分解炉用チップ供給装置420は上記の構成には限られず、例えば、プッシャ式等の供給装置で構成することもできる。
ロータリーキルン410の開放端側は分離排出装置440内に挿入され、熱分解室C2は分離排出装置440の内部と連通している。分離排出装置440は、上部に熱分解ガス出口E3を有し、下部に炭排出口E4を有する。また、分離排出装置440は図示しない放射温度計を有し、熱分解室C2内の温度が計測可能となっている。あるいはこれに代えて、分離排出装置440は熱分解室C2内の温度の指標としての分離排出装置440内の温度が計測可能な図示しない温度計を有し、通過する熱分解ガスの温度が計測可能となっている。これらの温度計は、計測値を温度信号として燃焼制御装置に供給する。
次に、図5を参照して有価物回収装置500について説明する。有価物回収装置500は、分離排出装置440の熱分解ガス出口E3と煙道で接続されるガス精製装置510を有する。ガス精製装置510は、熱分解ガスを脱湿、除塵するための装置であり、例えばシリカゲル等の吸着剤を有する吸着塔や、サイクロンやバグフィルタ等の集塵器で構成される。また、ガス精製装置510は、必要に応じて、酸洗浄、アルカリ洗浄するための装置、例えば湿式スクラバーを有する。
誘引通風機520はガス精製装置510と煙道で接続され、精製処理された熱分解ガスを吸引するファンであり、吸引したガスをガスホルダ530に送る。ガスホルダ530は、上下動可能な蓋を備えたガスタンクやゴム製バルーン等で構成される。
また、有価物回収装置500は、分離排出装置440の炭排出口E4と配管等で外気と遮断されて接続される炭タンク540を有する。炭タンク540は外気と遮断された鋼板製のタンクであり、必要に応じて、内部の炭が発火することを防止するために、炭を冷却する冷却機構や窒素ガス等の不活性ガスをタンク内部に供給する不活性ガス供給装置を備える。
続いて、図5、6を参照してバイオマス燃焼装置200、熱分解炉400の作動について説明する。バイオマス燃焼装置200は、図1、3に示されるバイオマス燃焼装置200と同様に、起動モードで起動し、通常運転モードや補助運転モードに移行することができる。
バイオマス燃焼装置200の運転により、熱分解室C2の内部温度がチップを熱分解できる程度、例えば、炉内温度が300℃以上、好ましくは500℃以上となったことが、分離排出装置440が有する温度計によって計測されると、燃焼制御装置はロータリーキルン410の回転駆動を開始すると共に、熱分解炉用チップ供給装置420の運転を開始し、熱分解されるチップBを熱分解室C2内部へ供給する。
熱分解室C2内へ供給されたチップBは、バイオマス粉バーナ250から噴出される燃焼ガスの熱によって、ロータリーキルン410を通じて間接的に加熱される。熱分解室C2内は空気不足状態であるので、加熱されたチップBは燃焼せず、熱分解され、一酸化炭素や水素等を含む可燃性の熱分解ガスと炭になる。ロータリーキルン410は回転軸が水平面に対して傾斜しているので、回転駆動されながら、熱分解室C2内のチップBを徐々に下流側に移動させる。チップBは、下流側に移動させられながら加熱され、ロータリーキルン410の開放端に達するまでに熱分解反応を完了させる。
熱分解室C2内で生成した熱分解ガスは、誘引通風機520の作用によって分離排出装置440に流入し、熱分解ガス出口E3を経由してガス精製装置510へ供給される。また、熱分解室C2内で生成した炭は、分離排出装置440に流入し、炭排出口E4を経由して炭タンク540に向けて落下する。
得られる可燃性ガスは、例えば、発電用ガスエンジンや発電用ガスタービンの燃料として利用することが可能である。また、水素ガスやメタノールなどの原料として利用することが可能である。
また、得られる炭は建材、水質浄化材、消臭剤等様々な用途に利用することが可能である。また、燃料として利用することも可能であり、粉ホッパ261に供給してバイオマス粉バーナ250の燃料であるバイオマス粉に混ぜて使用することも可能である。
前述のとおり、図6には、バイオマス燃焼装置200が、燃焼室C1内にチップBが供給されない補助運転モードで運転されている状態が示されている。このようにバイオマス燃焼装置200を運転することにより、チップBは燃焼室C1に供給されず、チップBの全量が熱分解室C2に供給されるので、大量の熱分解ガス及び炭を製造することが可能である。バイオマス粉の在庫量が低下した場合や、ランニングコストを低減させる必要がある場合には、バイオマス粉バーナでのバイオマス粉燃焼量を低下させ、その低下した分の熱量を補うように燃焼室C1内でチップBの一部を燃焼させることができる。さらにランニングコストを低減させるために、バイオマス燃焼装置200が通常運転モード、すなわちバイオマス粉バーナ250の運転が停止され、チップBのみを燃焼している状態で運転されてもよいことはもちろんである。
本例では、熱分解室C2内にチップのみを供給しているが、チップと共にあるいは単独でバイオマス粉を供給することも可能である。バイオマス粉は含水率が小さく、しかも表面積が大きいので、熱分解室C2内に供給されると速やかに熱分解される。よって、熱分解室内にバイオマス粉を供給することにより効率よく可燃性ガスと炭を製造することができる。
本発明のバイオマス燃焼装置の実施形態として、熱交換器や熱分解炉を有する燃焼炉について説明してきたが、次のような実施形態も可能である。すなわち、炉内で化石燃料を燃焼させてその燃焼熱でセメント原料の仮焼又は焼成を行うセメント焼成装置の仮焼炉又は焼成炉(ロータリーキルン)に、チップ供給装置、燃焼空気供給装置及びバイオマス粉バーナを設けることで、セメント焼成装置が、仮焼炉又は焼成炉を燃焼炉とする本発明のバイオマス燃焼装置を具備するように構成される。このようにセメント焼成装置を構成することにより、バイオマス粉バーナを運転して仮焼炉及び/又は焼成炉内にバイオマス粉の燃焼による燃焼ガスを噴出させると共に、これらの炉内にチップと燃焼空気を供給してチップを燃焼させることで、バイオマス燃料のみを燃料として用いて、セメント原料の仮焼及び/又は焼成を行うことができる。