以下、本発明の吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第一実施形態又は第二実施形態である軽失禁パッド1を、展開した状態で表面シート側(すなわち、着用者の肌対向面側)から厚さ方向DTに見た平面図であり、図2は、本発明の第一実施形態の軽失禁パッドにおける図1の軽失禁パッド1におけるII−II'線に沿った断面の端面図であり、図3は、図1の軽失禁パッドにおける体液吸収領域、シクロデキストリン配置領域、接着剤塗工領域及び香料塗工領域を説明するための平面図である。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で表面シート側から厚さ方向に見」ることを、単に「平面視」という。
図1及び図3に示すように、本発明の第一実施形態の軽失禁パッド1は、平面視にて、長手方向DLに延びる長辺と幅方向DWに延びる短辺を有する長方形の長手方向両端縁が円弧状に膨らんだ形状を有している。なお、本発明において吸収性物品の形状は、このような形状に限定されず、長手方向DLの長さ寸法が幅方向DWの幅寸法よりも長い長形状のものであれば、任意の縦長の形状(例えば、長方形、楕円形、瓢箪形など)とすることができる。
なお、本明細書においては、縦長の吸収性物品の長手方向DLに延びる中央軸線CLに向かう方向を、幅方向における内方側の方向といい、前記中央軸線CLから遠ざかる方向を、幅方向における外方側の方向という。同様に、縦長の吸収性物品の幅方向DWに延びる中央軸線CWに向かう方向を、長手方向における内方側の方向といい、前記中央軸線CWから遠ざかる方向を長手方向における外方側の方向という。また、吸収性物品の厚さ方向DTにおいて、着用者の肌面に対向する側(肌対向面側)に向かう方向を、肌対向面側の方向といい、着用者の肌面に対向する側とは反対側(非肌対向面側)に向かう方向を、非肌対向面側の方向という。
本発明の吸収性物品は、図3に示すように、平面視にて、吸収性物品の長手方向DLに延びる中央軸線CLを幅方向DWに跨って延在すると共に、吸収性物品の幅方向DWに延びる中央軸線CWを長手方向DLに跨って延在する体液吸収領域TAと、該体液吸収領域以外の領域を有している。ここで、「体液吸収領域」とは、着用者が吸収性物品を着用する際に、着用者の体液排泄位置に対応する領域を指し、吸収性物品の種類、具体的には、着用者から排出される尿や便、経血などの体液の種類、着用者の年齢や性別、着用者の排泄口が当接する位置や領域、吸収層の構造などに応じて、吸収性物品の種類毎に適宜設定される領域である。なお、前記体液吸収領域TAは、通常、吸収性物品の長手方向DLの全長の約1/3以上の長手方向長さと、吸収性物品の幅方向DWの全長の約1/3以上の幅方向長さを有する。また、「体液吸収領域以外の領域」は、前記体液吸収領域から長手方向及び幅方向における外方側の方向に延在する前記体液吸収領域以外の領域を指し、当該領域には、着用者から排出された体液を吸収しない領域と、着用者の体液排泄位置に対応する領域ではないものの、着用者から排出された体液を吸収し得る領域とが含まれる。
本発明の第一実施形態に係る軽失禁パッド1は、図2に示すように、厚さ方向DTにおいて着用者の肌対向面側に位置し、液透過性の不織布やプラスチックフィルムなどの任意の液透過性シートからなる表面シート2と、着用者の非肌対向面側に位置し、液不透過性の不織布やプラスチックフィルムなどの任意の液不透過性シートからなる裏面シート3と、前記表面シート2及び前記裏面シート3の間に位置し、且つ吸収性ポリマーを少なくとも含む吸収性材料6を2枚の液透過性シート7,7’(例えば、エアスルー不織布など)で挟持した吸収性シートSAと、該吸収性シートSA及び前記裏面シート3の間に位置し、且つシクロデキストリンと吸収性ポリマー及び液保持性物質(例えば、パルプ等)の混合物とを含むシクロデキストリン含有吸収材層4を2枚の液透過性シート(例えばティッシュ等)からなるキャリアリート5、5’で挟持したシクロデキストリン保持体と、前記表面シートから前記裏面シートに至るまでの積層物を前記幅方向の両外方側から挟持するように折り畳んで前記積層物に接合され、且つ前記幅方向の内方側の端縁がギャザー部を形成するように自由端とされた、前記長手方向に延びる一対のサイドギャザーシート8,8’と、前記一対のサイドギャザーシート8,8’の折れ目近傍に位置し、且つ前記一対のサイドギャザーシートのそれぞれに2本ずつ配置された線状弾性部材9,9’とを含む、各種部材によって構成されている。
本実施形態において、前記吸収性シートSA(吸収体)は、着用者から排出された尿などの体液を吸収し保持する機能を有するものであれば特に制限されないが、好ましくは上述のような吸収性ポリマーを少なくとも含む吸収性材料6を、2枚のエアスルー不織布等の液透過性シートで挟持したものが用いられる。ここで、「吸収性ポリマー」とは、水を吸収して保持することのできるポリマーであり、例えば、水溶性高分子が適度に架橋された三次元網目構造を有するポリマーなどが挙げられる。具体的には、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状ポリマーが挙げられる。このような吸収性ポリマーは、水だけでなく、アンモニア成分等からなる臭気も吸収することができる。
なお、前記吸収性シートSA(吸収体)に用いることができる吸収性材料は、吸収性ポリマーを含むものであれば特に制限されず、当該吸収性ポリマーのほかにパルプ等の液保持性物質を含むこともできるが、着用者から排出された尿などの体液を、前記吸収性シートの非肌対向面側に位置するシクロデキストリンに効率よく接触させるために、前記吸収性材料は、パルプ等の液保持性物質を含まないものを用いることが好ましい。
また、前記吸収性シートSA(吸収体)に用いることができる液透過性シートは、液透過性を有するシートであれば特に制限されず、例えば、エアースルー不織布、スパンボンド、積層不織布(例えば、SBS不織布等)、ティッシュなどの親水性の不織布を用いることができる。液透過性の観点から、前記液透過性シートはエアースルー不織布が好ましい。
本実施形態の軽失禁パッド1において、前記吸収性シートSAは、上述の吸収性ポリマー(吸収性材料6)を、接着剤を塗布した2枚の液透過性シート7,7’の間の、該2枚の液透過性シート7,7’の前記幅方向DWにおける中央域に配置し、当該吸収性ポリマーが配置された領域(吸収性ポリマー配置領域)と前記幅方向DWの両側に隣接する領域には前記吸収性ポリマーが存在しないように前記吸収性ポリマーを前記2枚の液透過性シート7,7’で挟持した後、前記2枚の液透過性シート7,7’の前記幅方向における両端縁側の前記吸収性ポリマーが存在しない領域(吸収性ポリマー非存在領域)を、それぞれ前記長手方向DLに延びる折畳み線に沿って前記幅方向の内方側に折り畳む(いわゆる、額巻きする)ことによって作製することができる。なお、前記2枚の液透過性シート7,7’の幅方向における両端縁側の前記吸収性ポリマー非存在領域を前記幅方向の内方側に折り畳む際は、肌対向面側又は非肌対向面側のいずれの方向に折り畳んでもよい。このように前記吸収性ポリマーを挟持した2枚の液透過性シートの各吸収性ポリマー非存在領域を折り畳むことで、前記吸収性ポリマーが前記吸収性シートから漏出し難くなると共に、前記吸収性シートの折り畳まれた部分(折畳み部)が、4層の積層構造となることによって剛性が高くなるため、吸収性物品の着用時に着用者の足の動き等によって吸収性物品の幅方向DWの外方側から力が加わっても、前記吸収性シートが変形し難くなる。その結果、着用者から排出された尿などの体液の吸収面積を確保することができ、吸収性物品として良好な吸収性能を維持することができる。
なお、本発明の吸収性物品において、吸収性シート(吸収体)は、上述の態様に限定されず、例えば、前記吸収性材料を、1枚の液透過性シートを折って挟持するように、或いは3枚以上の液透過性シートで囲繞するようにして前記液透過性シートの前記幅方向及び/又は前記長手方向における中央域に保持した後、該中央域に隣接する領域であって、前記吸収性材料が存在しない領域(吸収性材料非存在領域)を前記長手方向及び/又は前記幅方向に延びる折畳み線に沿って前記幅方向及び/又は前記長手方向の内方側に折り畳むことによって作製してもよい。
このようにして作製された吸収体は、着用者から排出された尿などの体液を吸収すると吸収性シート内の吸収性ポリマーが膨潤して、吸収性シートの厚さが増大するため、吸収性物品に着用者の体重等による体圧が掛かった場合でも、膨潤した吸収性ポリマーが圧力緩衝層のように作用して、前記吸収性ポリマーに吸収された体液が表面シートに液戻りし難くなり、前記体液が、前記吸収性シートの非肌対向面側に位置するシクロデキストリン保持体内のシクロデキストリンに接触する機会を十分に確保することができる。また、前記体液が前記吸収性シート内に長時間留まっていると、前記体液が前記吸収性シートの面方向の広範囲に拡散するため、前記体液を、より広い範囲の領域から前記シクロデキストリンに接触させることができる。その結果、前記シクロデキストリン含有吸収材層内のシクロデキストリンが有する消臭機能やシクロデキストリン錯体が有する活性成分の徐放機能をより効率よく、より効果的に発揮させることができる。
また、図2及び図3に示すように、本実施形態の軽失禁パッド1は、前記吸収性シートSAの前記幅方向における両端縁側の前記折り畳まれた部分(すなわち、折畳み部)において、前記2枚の液透過性シート7,7’に挟まれた前記長手方向に延びる領域(香料塗工領域TF、T’F)の各々又はいずれか一方に、液体香料が塗工されている。このような位置に液体香料を塗工することで、前記液体香料が、前記吸収性シートを前記軽失禁パッド1内に固定するためのホットメルト型接着剤や前記吸収性ポリマーに接触することがないため、前記接着剤の接着力や前記吸収性ポリマーの吸収性能の低下を招くことなく、前記液体香料による芳香作用を発揮させることができる。さらに、前記シクロデキストリン保持体内のシクロデキストリンと離れた位置に液体香料が塗工されていることで、当該液体香料が未包接のシクロデキストリンに吸着され難く、前記液体香料の芳香作用を着実に発揮させることができる。なお、本発明の吸収性物品に用いられる液体香料は、特に制限されず、天然香料や合成香料等の従来より公知の任意の液体香料を用いることができるが、吸収性物品が人体に適用されるものであることを考慮すると、植物由来の天然香料を用いることが好ましい。
本発明の吸収性物品において、前記吸収性シート(吸収体)が配置される位置は、特に制限されず、シクロデキストリン保持体の肌対向面側、非肌対向面側又はその両方の位置に配置することができる。例えば、前記吸収性シートが前記シクロデキストリン保持体の非肌対向面側に配置されていると、着用者から排出された尿などの体液が、シクロデキストリン保持体内のシクロデキストリンに接触してから前記吸収性シートに到達するため、前記体液がシクロデキストリンに接触するタイミングが早くなり、また、前記体液がシクロデキストリンに接触する機会を十分に確保することができ、結果的にシクロデキストリンが有する消臭機能や香料の放出機能の即効性を高めつつ、これらの機能を十分に発揮させることができる。
本実施形態の軽失禁パッド1において、前記シクロデキストリン保持体は、前記シクロデキストリン含有吸収材層4内のシクロデキストリンの少なくとも一部を、該シクロデキストリンの非肌対向面側に位置する前記キャリアシート5’(保持シート)に接合し、且つ軽失禁パッド1(吸収性物品)の長手方向DLに沿って連続的又は間欠的に延在するホットメルト型の接着剤を含み、さらに、前記シクロデキストリン保持体は、平面視にて、軽失禁パッド1の長手方向DL及び幅方向DWに延在する接着剤塗工領域THと、前記シクロデキストリンが配置される領域であって、前記長手方向DL及び前記幅方向DWに延在するシクロデキストリン配置領域TCと、を有し、前記シクロデキストリン配置領域TCの前記長手方向DLにおける両端縁ELC、E'LC及び前記幅方向DWにおける両端縁EWC、E'WCが、それぞれ前記接着剤塗工領域THの前記長手方向DLにおける両端縁ELH、E'LH及び前記幅方向DWにおける両端縁EWH、E'WHよりも、前記長手方向DL及び前記幅方向DWにおいて内方側に位置するように構成されている。
ここで、本明細書において「接着剤塗工領域」とは、接着剤が塗工された平面視における領域を意味し、具体的には、吸収性物品の長手方向DL及び幅方向DWに延在する領域であって、前記幅方向DWにおいて最も外方側に位置する接着剤の端部を、前記長手方向DLの両側においてそれぞれ前記長手方向DLに沿って結んでなる2本の長手方向仮想直線と、前記長手方向DLにおいて最も外方側に位置する接着剤の端部を、前記幅方向DWの両側においてそれぞれ前記幅方向DWに沿って結んでなる2本の幅方向仮想直線とで囲繞される領域を指す。なお、図3においては、前記2本の長手方向仮想直線及び前記2本の幅方向仮想直線は、接着剤塗工領域THを区画する部分(線分)のみを、それぞれ接着剤塗工領域THの前記幅方向DWにおける両端縁EWH、E'WH及び前記長手方向DLにおける両端縁ELH、E'LHとして示している。
この接着剤塗工領域THは、着用者から排出された体液とシクロデキストリンとの接触効率の観点から、図3に示すように、平面視にて、吸収性物品の長手方向DLに延びる中央軸線CLを幅方向DWに跨って該幅方向DWに延在すると共に、吸収性物品の幅方向DWに延びる中央軸線CWを前記長手方向DLに跨って該長手方向DLに延在する領域であって、吸収性物品の体液吸収領域TAと重複する領域であることが好ましく、前記体液吸収領域TAを包含する領域であることが更に好ましい。
また、本明細書において「シクロデキストリン配置領域」とは、シクロデキストリンが前記保持シートの表面上に配置された平面視における領域を意味し、具体的には、前記長手方向DL及び前記幅方向DWに延在する領域であって、前記幅方向DWにおいて最も外方側に位置するシクロデキストリンの端部を、前記長手方向DLの両側においてそれぞれ前記長手方向DLに結んでなる2本の長手方向仮想直線と、前記長手方向DLにおいて最も外方側に位置するシクロデキストリンの端部を、前記幅方向DWの両側においてそれぞれ前記幅方向DWに結んでなる2本の幅方向仮想直線とで囲繞される領域を指す。なお、図3においては、前記2本の長手方向仮想直線及び前記2本の幅方向仮想直線は、シクロデキストリン配置領域TCを区画する部分(線分)のみを、それぞれシクロデキストリン配置領域TCの前記幅方向DWにおける両端縁EWC、E'WC及び前記長手方向DLにおける両端縁ELC、E'LCとして示している。
このシクロデキストリン配置領域TCは、着用者から排出された体液とシクロデキストリンとの接触効率の向上等の観点から、図3に示すように、平面視にて、吸収性物品の長手方向DLに延びる中央軸線CLを幅方向DWに跨って該幅方向DWに延在すると共に、吸収性物品の幅方向DWに延びる中央軸線CWを長手方向DLに跨って該長手方向DLに延在する領域であって、吸収性物品の前記体液吸収領域TAと重複する領域であることが好ましく、前記体液吸収領域TAを包含する領域であることが更に好ましい。シクロデキストリン配置領域TCが吸収性物品の体液吸収領域TAを包含する領域であると、着用者から排出された尿などの体液がシクロデキストリンに接触し易くなり、シクロデキストリンが有する消臭機能や香料の徐放機能をより確実に発揮させることができる。
本実施形態において、軽失禁パッド1は、シクロデキストリン保持体内のシクロデキストリンが、前記接着剤によってティッシュ等からなるキャリアシート5’(保持シート)に部分的に接合されており、且つ、平面視にて、前記シクロデキストリン配置領域TCの前記長手方向DLにおける両端縁ELC、E'LC及び前記幅方向DWにおける両端縁EWC、E'WCが、それぞれ前記接着剤塗工領域THの前記長手方向における両端縁ELH、E'LH及び前記幅方向DWにおける両端縁EWH、E'WHよりも、前記長手方向DL及び前記幅方向DWにおいて内方側に位置する構造を有しているため、シクロデキストリンが前記接着剤によって前記キャリアシート5’に保持されている部分においては、前記シクロデキストリン含有吸収材層4内のシクロデキストリンが前記キャリアシート5’の面方向に移動し難くなっており、また、シクロデキストリンが前記接着剤によって前記キャリアシート5’に保持されていない部分においては、前記シクロデキストリン含有吸収材層4内のシクロデキストリンが前記キャリアシート5’の面方向に一定程度移動することができるものの、シクロデキストリン配置領域TCの前記長手方向DLにおける両端縁ELC、E'LC及び前記幅方向DWにおける両端縁EWC、E'WCよりもそれぞれ外方側に位置する前記接着剤によって、それより外方側へは移動し難くなっている。したがって、本実施形態の軽失禁パッド1は、シクロデキストリン保持体内のシクロデキストリンを前記接着剤によって規定された接着剤塗工領域TH内に留めておくことができ、シクロデキストリンが偏在化するのを効果的に防ぐことができる。その結果、本実施形態の軽失禁パッド1は、着用者から排出された尿などの体液をシクロデキストリンに着実に接触させることができるため、シクロデキストリンが有する消臭機能(臭気成分の吸着機能)や香料等の活性成分の徐放機能を安定して、十分に発揮させることができる。
なお、本実施形態の軽失禁パッド1においては、前記シクロデキストリン配置領域TCの前記長手方向DLにおける両端縁ELC、E'LC及び前記幅方向DWにおける両端縁EWC、E'WCが、それぞれ前記接着剤塗工領域THの前記長手方向における両端縁ELH、E'LH及び前記幅方向DWにおける両端縁EWH、E'WHよりも、前記長手方向DL及び前記幅方向DWにおいて内方側に位置する構造を有しているが、本発明の吸収性物品においては、このような構造に限定されず、前記シクロデキストリン配置領域TCの前記長手方向DLにおける両端縁ELC、E'LC又は前記幅方向DWにおける両端縁EWC、E'WCのいずれかが、前記接着剤塗工領域THの前記長手方向における両端縁ELH、E'LH又は前記幅方向DWにおける両端縁EWH、E'WHよりも、前記長手方向DL又は前記幅方向DWにおいて内方側に位置する構造を有していればよい。そのような構造を有する吸収性物品においても、前記シクロデキストリン保持体内のシクロデキストリンを前記接着剤によって規定された接着剤塗工領域TH内に一定程度留めておくことができ、シクロデキストリンが偏在化するのを十分に防ぐことができる。
上述したとおり、本実施形態の軽失禁パッド1において、シクロデキストリン保持体は、前記シクロデキストリンと、前記吸収性ポリマー及び前記液保持性物質の混合物とを含むシクロデキストリン含有吸収材層4を2枚の液透過性シートからなるキャリアシート5、5’で挟持した構造を有しているが、本発明の吸収性物品においては、前記シクロデキストリンが前記保持シートに保持される構造を有していれば、上述の構造に限定されない。例えば、前記シクロデキストリン保持体は、粉粒物等の任意の形態のシクロデキストリンを、必要であれば前記吸収性ポリマー及び/又は前記液保持性物質と共に、1枚の液透過性シートを折って挟むようにして、或いは3枚以上の液透過性シートで囲繞するようにして構成してもよい。また、複数枚の液透過性シートをキャリアシートとして用いる場合、各液透過性シートは、同じ種類の液透過性シートを用いても、異なる種類の液透過性シートを用いてもよい。
本発明においてキャリアシートに用いる液透過性シートは、例えば、パルプ等の細かい繊維の集合体からなる不織布(ティッシュを含む)、織布等の任意のシート状繊維構造体を用いることができる。この繊維構造体の坪量は、特に制限されないが、液透過性やシクロデキストリンの流出防止等の観点から、例えば1〜50g/m2、好ましくは5〜30g/m2、更に好ましくは10〜20g/m2である。
また、前記繊維構造体は、着用者から排出された体液が透過することができ、且つシクロデキストリンが繊維構造体の構成繊維間を通過して前記シクロデキストリン保持体から流出しない程度の(例えば、後述するシクロデキストリン粉粒物の粒径よりも小さい)繊維間距離を有していることが好ましい。このような繊維構造体としては、例えば、1〜300μmの繊維間距離が全体の90%以上を占めるような繊維構造体が挙げられ、好ましくは10〜150μmの繊維間距離が全体の90%以上を占めるような繊維構造体が挙げられる。
ここで、繊維構造体の繊維間距離は、水銀圧入法(JIS R 1655)に準拠して、水銀ポロシメーター(株式会社島津製作所製)等を用いて測定することができる。この水銀圧入法は、水銀を測定対象物である繊維構造体の構成繊維間に圧入したときの水銀に加えられた圧力と、繊維構造体の構成繊維間の空間内に押し込まれた水銀の容積とを測定することによって、前記繊維構造体の構造に関する情報を得ることができる。
具体的には、繊維構造体の繊維間距離は、水銀ポロシメーターを用いて以下の手順に従って測定することができる。
1)測定対象物である繊維構造体を24mm×15mmにカットして、測定用サンプルを作製する。この測定用サンプルは、3枚作製する。
2)3枚の測定用サンプルを、互いに重なり合わないようにして水銀ポロシメーター(株式会社島津製作所製)のサンプルセルにセットした後、水銀に加える圧力を徐々に変化させながら、繊維構造体の構成繊維間の空間(すなわち、細孔)内に押し込まれた水銀の体積(すなわち、細孔容積)を測定する。なお、測定は、22℃、65%RHの環境下で行う。
3)下記の式(1)に従って前記細孔の孔径D(μm)(すなわち、繊維構造体の繊維間距離(μm))を算出し、該孔径Dと前記細孔容積との関係を、前記孔径Dの分布曲線(微分・積分曲線)として得る。なお、下記の式(1)における各種測定条件は、水銀の表面張力が0.483N/m、接触角が130°、水銀圧力が0〜414MPa(絶対圧)である。
(式中、Dは孔径(繊維間距離)、γは水銀の表面張力、θは接触角、Pは圧力を表す。)
4)得られた孔径Dの分布曲線から、孔径Dが0〜500μmである細孔の合計容積に対する、孔径Dが1〜300μm(又は10〜150μm)である細孔の容積の割合を算出する。
5)上記2)〜4)の操作を3回行い、得られた容積の割合の平均値を、1〜300μm(又は10〜150μm)の繊維間距離が全体に占める割合(%)とする。
また、本実施形態の軽失禁パッド1において、シクロデキストリン保持体は、前記シクロデキストリン含有吸収材層4内のシクロデキストリンと、該シクロデキストリンの非肌対向面側に配置されるティッシュ等からなるキャリアシート5’とが前記接着剤によって部分的に接合されているが、本発明の吸収性物品において、シクロデキストリンとキャリアシート(液透過性シート)との接合形態は、このような形態に限定されず、例えば、シクロデキストリンが、該シクロデキストリンの肌対向面側に配置される液透過性シートと接合されていてもよく、また、前記シクロデキストリンが、該シクロデキストリンの肌対向面側及び非肌対向面側の両方に配置される液透過性シートとそれぞれ接合されていてもよい。
ここで、シクロデキストリンは、グルコピラノース単位がα-1,4結合によって連結された環状オリゴ糖であり、一般に、シクロデキストリン一分子中に含まれるグルコピラノース単位の数が、6個のものをα−シクロデキストリン、7個のものをβ−シクロデキストリン、8個のものをγ−シクロデキストリンという。シクロデキストリンは、水分等の存在により、環状構造の内側に他の分子(例えば、香料や消臭成分等の活性成分、排泄物の臭気成分など)を包接することができると共に、包接した他の分子を環境変化等の外的作用によって放出することができる。本発明の吸収性物品に用いられるシクロデキストリンは、特に制限されず、α−、β−、γ−シクロデキストリン及び/又はそれらの混合物のほかに、化学修飾(例えば、メチル化やアセチル化)されたα−、β−、γ−シクロデキストリン及び/又はそれらの混合物などを用いることができる。なお、本発明の吸収性物品において、「シクロデキストリン」は、未包接のシクロデキストリンのほか、香料等の各種活性成分を保持したシクロデキストリンなどを含む。
本発明の吸収性物品において、シクロデキストリンは、天然香料や合成香料等の任意の香料を保持したシクロデキストリンを用いることが好ましい。このような香料を保持したシクロデキストリンは、着用者から排出された尿などの体液と接触することによって、当該シクロデキストリンに保持されていた香料を徐々に放出する機能を有するため、当該放出された香料によって、前記体液の匂いをマスキングすることができると共に、香料を放出した後の未包接のシクロデキストリンによって、前記体液に含まれるアンモニア成分等の臭気成分を吸着することができる。したがって、このような香料を保持したシクロデキストリンを用いると、着用者から排出される尿などの体液から生じる臭気を効果的に抑制することができる。
なお、前記シクロデキストリンに保持させる香料は、特に制限されず、従来より公知の天然香料や合成香料等の任意の香料を用いることができるが、吸収性物品が人体に適用されるものであることを考慮すると、植物由来の天然香料を用いることが好ましい。また、前記シクロデキストリンに保持させる香料は、上述の液体香料と同一の成分であることが好ましい。各香料が同一成分であると、前記香料を保持したシクロデキストリンに着用者から排出された尿などの体液が接触して、前記香料がシクロデキストリンから放出されても、それぞれの香料に起因する異なる香り同士が混ざって香りが変化するようなことがなく、また、複数の香りが混ざり合った不快な香りを生じることもない。さらに、着用者から尿などの体液が排出された時に、前記液体香料による香りに加えて、前記シクロデキストリンから放出された香料による香りが発生するため、前記吸収性物品から発せられる香りが増強され、前記体液の排出時の臭気をより強力にマスキングすることができる。
さらに、本発明の吸収性物品において、未包接のシクロデキストリン(香料を保持していないシクロデキストリン)と香料を保持したシクロデキストリンとを併用すると、上述の香料を保持したシクロデキストリンによる効果に加えて、吸収性物品内に一定量以上の未包接のシクロデキストリンを確保することができるため、当該未包接のシクロデキストリンによる臭気成分の吸着作用をより確実に発現させることができ、吸収性物品の消臭作用を更に増大させることができる。未包接のシクロデキストリンは、使用するシクロデキストリンの全量に対して、5〜50質量%の割合で使用することが好ましい。なお、香料を保持したシクロデキストリンは、シクロデキストリン分子の環状構造の内側に香料を包接した包接錯体のほか、種々の分子間力や分子間相互作用などによってシクロデキストリン分子と香料とが会合したものを含む。
本発明の吸収性物品に用いられるシクロデキストリンの形態は、特に制限されず、種々の形態のものを用いることができるが、分散性や製造時の取扱い易さ、着用者から排出された尿などの体液との接触効率の向上等の観点から、マルトシクロデキストリン、プルラン、アラビアガム等のバインダーで粒径を調整したシクロデキストリン粉粒物として用いることが好ましい。シクロデキストリン粉粒物の粒径は、特に制限されず、例えば、5μm〜300μm程度、好ましくは10μm〜100μmのものを用いることができるが、前記シクロデキストリンに隣接するキャリアシート(液透過性シート)を構成する繊維構造体の繊維間距離よりも大きい粒径を有していることが特に好ましい。シクロデキストリン粉粒物の粒径が前記キャリアシートを構成する繊維構造体の繊維間距離よりも大きいと、シクロデキストリン粉粒物が、前記繊維構造体の構成繊維間を通過してシクロデキストリン保持体から流出するのを防ぐことができるため、シクロデキストリンが有する消臭機能や香料等の活性成分の徐放機能を安定して、十分に発揮させることができる。
なお、上述のシクロデキストリン粉粒物の粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製マイクロトラックMT3300EXII)を用いた乾式レーザー回折散乱法によって測定することができる。この乾式レーザー回折散乱法は、紛体試料をエアーで分散させながら、該試料にレーザー光を照射し、その回折散乱パターンから体積基準の粒子径分布を測定するものであり、本明細書においては、前記粒子径分布から得られるメジアン径(D50)を前記粉粒物の粒径として用いる。乾式レーザー回折散乱法による具体的な測定条件は、以下のとおりである。
測定回数:1回
測定時間:10秒
分散圧力:100kPa
粒子透過性:透過
粒子屈折率:1.81
粒子形状:非球形
溶媒:空気(エアー)
溶媒屈折率:1.00
測定範囲:0.243〜2000μm
また、前記シクロデキストリン粉粒物は、上述の未包接のシクロデキストリンや香料を保持したシクロデキストリンのほかに、消臭成分等の任意の活性成分を保持したシクロデキストリン、及び/又はバインダーや吸収性成分(例えば、パルプや吸収性ポリマー等)、吸着性成分(例えば、ゼオライトやシリカゲル、活性炭等)などの任意の機能性成分を少量(例えば、10質量%以下)含んでいてもよい。前記活性成分としては、例えば、従来より公知の消臭成分、抗菌成分及びそれらの混合物などが挙げられる。このような活性成分を保持したシクロデキストリンは、シクロデキストリン分子の環状構造の内側に前記活性成分を包接した包接錯体のほか、種々の分子間力や分子間相互作用などによってシクロデキストリン分子と前記活性成分とが会合したものを含む。
前記活性成分を保持したシクロデキストリン(すなわち、シクロデキストリン錯体)は、着用者から排出された尿などの体液に含まれる水分と接触することによって、シクロデキストリンに保持されていた活性成分を徐々に放出し、前記活性成分の有する作用を発現させる機能を有する。このようなシクロデキストリン錯体は、例えば、未包接のシクロデキストリンを含む溶液に、香料や活性成分を添加して攪拌混合することで、容易に得ることができる。また、シクロデキストリンの包接の有無は、X線を用いた元素分析等により確認することができる。
本実施形態の軽失禁パッド1において、シクロデキストリン保持体は、上述のシクロデキストリンと、前記吸収性ポリマー及び前記液保持性物質(例えば、パルプ等)の混合物とを含むシクロデキストリン含有吸収材層4が、該シクロデキストリン含有吸収材層4の肌対向面側及び非肌対向面側に位置する2枚の液透過性シート(例えば、ティッシュ等)からなるキャリアシート5、5’によって挟持された構造を有し、さらに、前記シクロデキストリン含有吸収材層4内のシクロデキストリンの少なくとも一部は、ホットメルト型の接着剤によって、前記シクロデキストリン含有吸収材層4の非肌対向面側に位置するキャリアシート5’(保持シート)の肌対向面側の表面上に保持されている。シクロデキストリン保持体がこのように構成されていると、着用者から排出された尿などの体液が前記シクロデキストリン保持体に到達したときに、前記体液が重力の作用によって前記シクロデキストリン含有吸収材層4内の下側(非肌対向面側)の部分に移行して該部分に留まるため、該部分に留まった体液が前記キャリアシート5’の肌対向面側の表面上に保持されたシクロデキストリンと接触し易い状態を形成することができ、シクロデキストリンが有する消臭機能や香料等の活性成分の徐放機能をより効率よく、より効果的に発揮させることができる。
このようなシクロデキストリン保持体は、上述のシクロデキストリンと、前記吸収性ポリマー及び前記液保持性物質の混合物とを含むシクロデキストリン含有吸収材層4を、ホットメルト型の接着剤を用いて、2枚のキャリアシート5、5’に接合することによって得ることができる。具体的には、ティッシュ等からなるキャリアシート5’(保持シート)を着用者の肌対向面側となる面を上にして、前記キャリアシート5’を静止した状態で又は搬送しながら、前記キャリアシート5’の肌対向面側の表面上に前記接着剤を前記軽失禁パッド1の前記長手方向DLに対応する方向に沿って塗工する接着剤塗工工程と、シクロデキストリンを、前記接着剤が塗工された接着剤塗工領域TH内の少なくとも前記接着剤の表面上に配置するシクロデキストリン配置工程と、吸収性ポリマー及び液保持性物質(例えば、パルプ等)の混合物を、前記キャリアシート5’における前記接着剤塗工領域TH内の少なくとも前記接着剤及び前記シクロデキストリンの表面上に配置することによって、シクロデキストリン含有吸収材層4を形成するシクロデキストリン含有吸収材層形成工程と、前記シクロデキストリン含有吸収材層4の肌対向面側の表面上に、接着剤を介して又は介さないでキャリアシート5を配置するキャリアシート配置工程とを経て、上述のシクロデキストリン保持体を得ることができる。
前記シクロデキストリン配置工程において、前記シクロデキストリンを前記キャリアシート上に塗工された接着剤の表面上に配置する方法は、特に制限されず、上述の粉粒物の状態のまま配置しても、分散媒体(例えば、ポリシロキサンオイル、鉱油など)に分散させた状態で配置しても、溶剤(例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール等のジオール類やクエン酸トリエチル、フタル酸ジエチル等のエステル系有機溶剤など)に溶解した溶液の状態で配置してもよい。
また、前記シクロデキストリン配置工程において、シクロデキストリンの配置手段は、特に制限されず、例えば、非接触式又は接触式のコーターを用いて、スプレー状や複数の筋状、オメガ状等の任意の形態で塗工することができる。シクロデキストリンは、平面視にて、シクロデキストリン配置領域TC内に隙間なく塗工しても、シクロデキストリン配置領域TC内にシクロデキストリンが存在しない領域(すなわち、シクロデキストリン不存在領域)が複数形成されるように塗工してもよい。特に、シクロデキストリン配置領域TCが、吸収性物品の体液吸収領域TAと重なる重複領域を含み、当該重複領域内においてシクロデキストリン不存在領域が複数形成されるように塗工することが好ましい。このようなシクロデキストリン不存在領域が形成されていると、該領域が着用者から排出された尿などの体液の通路として機能するため、前記体液が、シクロデキストリン含有吸収材層によって阻害されることなく、吸収性物品の厚さ方向DTに浸透していくことができる。その結果、本発明の吸収性物品は、消臭機能と共に優れた吸収性能を発揮することができる。
また、本発明の吸収性物品において、シクロデキストリンの塗工量は、特に制限されず、所望の消臭性能や吸収性能等に応じて適宜設定することができ、例えば、吸収性物品1個当たり20mg〜100mgとすることができる。さらに、前記シクロデキストリンは、着用者から排出された尿などの体液とシクロデキストリンとの接触機会を増大させる観点から、図3に示すように、平面視にて、吸収性物品の体液吸収領域TAを包含する領域内に配置されていることが好ましい。
本実施形態において、前記シクロデキストリン保持体内のシクロデキストリン含有吸収材層4は、シクロデキストリンと、前記吸収性ポリマー及び前記液保持性物質の混合物とを含み、吸収層として機能するものである。本実施形態において、前記シクロデキストリン含有吸収材層は、シクロデキストリンを含む吸収性を有する層であれば特に制限されないが、前記シクロデキストリン含有吸収材層は、シクロデキストリンと、吸収性ポリマー及びパルプの混合物とを含むものが好ましい。前記シクロデキストリン含有吸収材層としてこのような態様のものを用いると、前記シクロデキストリン含有吸収材層内において、パルプの集合体が、当該シクロデキストリン含有吸収材層に到達した体液を毛細管現象によってシクロデキストリン含有吸収材層内の広範囲に拡散させるように作用するため、前記シクロデキストリン含有吸収材層内の広範囲の箇所において前記体液を吸収、保持することができ、吸収性物品として優れた吸収性能を得ることができると共に、前記シクロデキストリン含有吸収材層において前記体液を吸収、保持することができるため、着用者から排出された尿などの体液の量が多いような場合にも、当該シクロデキストリン含有吸収材層の内部に保持された体液を、前記シクロデキストリン含有吸収材層内のシクロデキストリンに長時間に亘り着実に接触させることができる。
また、前記シクロデキストリン含有吸収材層において、前記吸収性ポリマー及び前記液保持性物質の含有量は、特に制限されないが、それらの合計100質量部当たり、それぞれ60質量部以下及び40質量部以上含むことが好ましい。シクロデキストリン含有吸収材層において、吸収性ポリマーの含有量が60質量部以下であると、吸収性ポリマーに吸収されない体液が存在し易くなるため、前記シクロデキストリンに接触し得る体液の量及び接触時間が増大すると共に、液保持性物質の含有量が40質量部以上であると、前記液保持性物質の毛細管現象によって体液がより広範囲に拡散し易くなるため、前記体液と前記シクロデキストリンとをより広い範囲の領域で接触させることができる。
本実施形態の軽失禁パッド1において、シクロデキストリン含有吸収材層4は、該シクロデキストリン含有吸収材層4内のシクロデキストリンの少なくとも一部がホットメルト型の接着剤によって前記キャリアシート5’(保持シート)と接合されているが、本発明の吸収性物品において、前記シクロデキストリンと保持シートとを接合するための接着剤は、特に制限されず、従来より公知の任意の接着剤を用いることができる。
また、本実施形態の軽失禁パッド1において、前記接着剤は、キャリアシート5’(保持シート)とシクロデキストリン含有吸収材層4との間で前記長手方向DLに延在すると共に、前記幅方向DWに複数列並ぶように配置されている。接着剤がこのように配置されていると、平面視にて、接着剤塗工領域TH内に接着剤が存在しない領域(すなわち、接着剤不存在領域)が部分的に形成され、該領域が着用者から排出された尿などの体液の通路として機能するため、前記体液が、前記接着剤によって阻害されることなく、前記保持シートの前記長手方向DLに拡散されながら前記厚さ方向DTの非肌対向面側に浸透していくことができると共に、前記体液が、前記保持シートの肌対向面側から非肌対向面側へ浸透するときに、前記保持シートの面方向に拡散しながら浸透することによって、前記保持シートの面方向に拡散した前記体液を、広範囲の箇所で前記シクロデキストリンと接触させることができる。その結果、本発明の吸収性物品は、吸収性物品として良好な吸収性能を備えつつ、シクロデキストリンが有する消臭機能や香料の徐放機能をより効果的に、より効率よく発揮させることができる。
本実施形態の軽失禁パッド1において、前記接着剤の塗工形態は、特に制限されず、例えば、平面視にて直線状や波形状、螺旋状、ジグザグ状、オメガ状等の線状の実線又は破線;ドット状;格子状等の幾何学模様などの任意の形態で塗工することができる。また、前記シクロデキストリンと前記保持シートとを接合するための接着剤は、平面視にて、前記接着剤が接着剤塗工領域TH内に隙間なく存在するように、面状の形態(いわゆる、べた塗り)で前記保持シート上に塗工することもできる。接着剤をこのようなべた塗りの形態で塗工すると、接着剤が、前記保持シートを構成する繊維構造体の構成繊維間に浸入して前記繊維構造体内の空隙に充填されるため、前記保持シートによって保持されたシクロデキストリンが、前記液透過性シートを透過してシクロデキストリン保持体から流出し難くなると共に、前記液透過性シートの強度が増大することによって着用時に破断し難くなり、また、熱による収縮も生じ難くなる。その結果、本発明の吸収性物品は、シクロデキストリン保持体の構造を安定して維持することができるため、前記シクロデキストリン保持体内のシクロデキストリンが有する消臭機能や香料の徐放機能をより安定して、より確実に発揮させることができる。なお、後述する第二実施形態のように、保持シートが、シクロデキストリンよりも肌対向面側に位置する構造の吸収性物品においては、上述のように接着剤を保持シートにべた塗りすると当該接着剤によって保持シートの液透過性が阻害されてしまうため、好ましくない。
また、本発明の吸収性物品において、前記接着剤の塗工量は、特に制限されず、所望の接着強度や液透過性、消臭性能等に応じて適宜設定することができ、例えば1〜40g/m2、好ましくは2〜20g/m2、更に好ましくは4〜10g/m2とすることができる。
次に、本発明の第二実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第一実施形態である軽失禁パッドの平面図であると共に、本発明の第二実施形態である軽失禁パッドの平面図でもある。また、図4は、本発明の第二実施形態の軽失禁パッドにおける図1のII−II'線に沿った断面の端面図である。この第二実施形態に係る軽失禁パッド1は、シクロデキストリンを含有する層(第一実施形態においては、シクロデキストリン含有吸収材層4)がシクロデキストリンのみによって構成されたシクロデキストリン層4’であること、該シクロデキストリンの少なくとも一部が、前記表面シート2及び前記シクロデキストリン層4’の間に位置する液透過性シート7’の非肌対向面側の表面(保持面)上に保持されており、且つ前記液透過性シート7’(保持シート)が、前記保持面とは反対側の面に吸収性ポリマー等の吸収性材料6を保持して、該吸収性材料6の肌対向面側に配置される液透過性シート7と共に、吸収性シートSA(吸収体)を形成していること(すなわち、シクロデキストリン保持体内の保持シートが、吸収性シート内の非肌対向面側に位置する液透過性シートを兼用していること)、及び前記保持シートに保持されたシクロデキストリンが、ティッシュ等の液透過性シートからなるシクロデキストリン被覆シート10によって、非肌対向面側から被覆されていること以外は、上述の実施形態と同様の構成を有している。
本実施形態の軽失禁パッド1は、シクロデキストリンを含有する層がシクロデキストリンのみによって構成されているため、着用者から排出された尿などの体液が前記シクロデキストリンに接触する機会を増大させることができると共に、前記シクロデキストリンを含有する層の厚さを薄くすることができ、吸収量に応じた薄型化等の任意の製品設計を実現することができる。
また、本実施形態の軽失禁パッド1は、前記シクロデキストリンの少なくとも一部が、前記表面シート及び前記シクロデキストリン層4’の間に位置する液透過性シート7’の非肌対向面側の前記保持面上に保持されており、且つ前記液透過性シート7’(保持シート)が、前記保持面とは反対側の面(すなわち、肌対向面側の表面)に吸収性ポリマー等の吸収性材料6を保持して、該吸収性材料6の肌対向面側に配置される液透過性シート7と共に、吸収性シートSA(吸収体)を形成している。前記軽失禁パッド1をこのように構成すると、着用者から排出された尿などの体液が前記吸収性シートSAに到達したときに、前記体液が、重力の作用によって前記吸収性シートSA内の下側(非肌対向面側)の部分に移行して該部分に留まるため、該部分に留まった体液が、前記吸収性シートSAの面方向に拡散しつつ、前記液透過性シート7’へ徐々に浸透して、前記体液を前記液透過性シート7’の非肌対向面側に保持されたシクロデキストリンと、より広い範囲の領域で接触させることができる。その結果、シクロデキストリンが有する消臭機能や香料等の活性成分の徐放機能をより効率よく、より効果的に発揮させることができる。
なお、第二実施形態の軽失禁パッド1において、前記吸収性シートSAは、上述の第一実施形態の軽失禁パッド1における吸収性シートと同様に作製することができる。そしてこの第二実施形態においては、該吸収性シートSAの肌対向面側となる表面(すなわち、前記吸収性シートを構成する非肌対向面側の液透過性シート7’の保持面)上に、ホットメルト型の接着剤を前記軽失禁パッド1の前記長手方向DLに対応する方向に沿って塗工した後、当該接着剤が塗工された接着剤塗工領域TH内の少なくとも前記接着剤の表面上にシクロデキストリンを配置することによって、シクロデキストリン層4’を形成し、さらに、前記シクロデキストリン層4’上に、液透過性シートからなるシクロデキストリン被覆シート10を被覆することで、前記吸収性シートSAと一体形成された、前記液透過性シート7’、前記接着剤、前記シクロデキストリン層4’及び前記シクロデキストリン被覆シート10を含むシクロデキストリン保持体を得ることができる。
また、本実施形態の軽失禁パッド1は、前記液透過性シート7’(保持シート)に保持されたシクロデキストリンが、ティッシュ等の液透過性シートからなるシクロデキストリン被覆シート10によって、非肌対向面側から被覆されているため、前記シクロデキストリンを前記液透過性シート7’の保持面に着実に保持させることができ、前記シクロデキストリンの消臭機能や香料等の活性成分の徐放機能を安定して発揮させることができる。
本実施形態において、前記シクロデキストリン被覆シート10は、上述の第一実施形態の軽失禁パッド1におけるキャリアシートと同様の材料、すなわちティッシュ等の繊維構造体を用いることが好ましい。前記シクロデキストリン被覆シート10としてこのような繊維構造体を用いると、前記シクロデキストリン被覆シート10に到達した体液を、当該シクロデキストリン被覆シート10の面方向に拡散させることができるため、前記体液を、前記シクロデキストリン被覆シート10の肌対向面側に位置するシクロデキストリンと広い範囲の領域で接触させることができる。なお、前記シクロデキストリン被覆シート10として上述の繊維構造体を用いる場合、当該繊維構造体は、シクロデキストリンが繊維構造体の構成繊維間を通過しない程度の(例えば、上述したシクロデキストリン粉粒物の粒径よりも小さい)繊維間距離を有していることが好ましい。
本発明は、上述した各実施形態の軽失禁パッドのほかに、例えば、パンティーライナー、生理用ナプキン、使い捨ておむつ等の様々な吸収性物品に適用することができる。また、本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合わせや変更等が可能である。なお、本明細書において、「第一」、「第二」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。