下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、実施形態に記載した材料、数値等は、好ましい例を示しているだけであり、それに限定する主旨ではない。更に、本願発明は、その技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で、構成に適宜変更を加えることが可能である。
以下では、本実施形態の人体検知器1について、図1A、1B、2、3A、3B、4〜8、9A、9B、9C及び10に基づいて説明する。
人体検知器1は、赤外線検出素子31の出力信号に基づいて人体検知信号を出力する赤外線センサモジュール2と、赤外線センサモジュール2を収納するハウジング5と、を備える。赤外線センサモジュール2は、赤外線検出素子31を有する赤外線センサ3と、赤外線センサ3が実装される回路基板4と、を備える。赤外線センサ3は、赤外線検出素子31と、パッケージ32と、を備える。パッケージ32は、赤外線検出素子31が収納されるパッケージ本体33と、パッケージ本体33において赤外線検出素子31の受光面31a(図1B及び4参照)に対向する部位に設けられ赤外線を透過する赤外線透過部材34と、端子35と、を備える。ハウジング5は、赤外線センサ3を露出させる開口部51が形成されている。人体検知器1は、赤外線センサ3を覆うように配置されて開口部51を塞ぐ保護カバー6を更に備える。保護カバー6は、赤外線検出素子31に赤外線を集光するレンズ71を有するドーム状のレンズ部材7と、開口部51内でハウジング5とレンズ部材7との間に配置されレンズ部材7を保持する保持部材8と、を備える。保持部材8は、レンズ部材7を保持しハウジング5に保持される枠状の保持枠81と、レンズ部材7の開口縁よりも内側で赤外線センサ3を囲む壁部82と、保持枠81と壁部82とを連結する連結部83と、を備える。以上の構成を備えた人体検知器1では、誤動作の発生を抑制することが可能となる。
人体検知器1の各構成要素については、以下に、より詳細に説明する。
人体検知器1は、従来例の熱線センサ付き自動スイッチと同様、例えば、天井に取り付けて使用することができる。
赤外線検出素子31は、例えば、図3A、3B及び4に示すように、1枚の焦電体基板310に4個の検出部314が形成されたクワッドタイプの焦電素子により構成することができる。
赤外線検出素子31は、1枚の焦電体基板310に、4個の検出部314が2×2のアレイ状に配列されている。赤外線検出素子31は、各検出部314の平面視形状を正方形状とすることができる。赤外線検出素子31は、焦電体基板310の中央部において仮想正方形VR1(図4参照)の4つの角それぞれに検出部314の中心が位置するように4つの検出部314が配置されている。仮想正方形VR1は、焦電体基板310の外周線310dよりも内側にある。
焦電体基板310は、焦電性を有する基板である。焦電体基板310は、例えば単結晶のLiTaO3基板により構成されている。
検出部314は、焦電体基板310の表面311に形成された表面電極315と、焦電体基板310の裏面312に形成された裏面電極316と、焦電体基板310において表面電極315と裏面電極316とで挟まれた部分313と、を含むコンデンサである。図3Aでは、各検出部314において赤外線透過部材34側に位置する表面電極315の極性を、“+”、“−”の符号で示してある。検出部314の受光面324は、表面電極315の表面である。赤外線検出素子31は、4個の検出部314のうち、仮想正方形VR1の一方の対角線上にある同極性の2個の検出部314同士が並列接続され、他方の対角線上にある同極性の2個の検出部314同士が並列接続されている。要するに、赤外線検出素子31は、図3Aの左右方向に沿って並んで形成されている2個の検出部314同士が逆並列に接続され、且つ、図3Aの上下方向に沿って並んで形成されている2個の検出部314同士が逆並列に接続されている。
赤外線検出素子31が複数個の検出部314を備えている場合、赤外線検出素子31の受光面31aは、複数個の受光面324を内包する最小の凸多角形VR2(図4参照)の外周線で囲まれた領域の表面を意味する。したがって、図3の例では、最小の凸多角形VR2は、上述の仮想正方形VR1よりも大きな正方形となる。
赤外線センサ3におけるパッケージ本体33は、図1Bに示すように、台座36と、台座36に固着されるキャップ37と、を備える。パッケージ本体33は、キャップ37において赤外線検出素子31の受光面31aに対向する部位に窓孔37dが形成されている。パッケージ32は、パッケージ本体33の窓孔37dが、赤外線透過部材34により塞がれている。
台座36は、金属製であるのが好ましい。台座36は、円板状に形成されている。台座36の周部には、台座36の中央部に比べて薄いフランジ36bが形成されている。
キャップ37は、金属製であるのが好ましい。キャップ37は、筒体37aと、第1フランジ37bと、第2フランジ37cと、を備えているのが好ましい。筒体37aは、円筒状に形成されている。第1フランジ37bは、筒体37aにおける台座36に近い側の第1端部37aaから外方へ突出している。第2フランジ37cは、筒体37aにおける第1端部37aaとは反対の第2端部37abから内方へ突出している。キャップ37は、第2フランジ37cの内周面が窓孔37dの内周面を構成している。キャップ37は、全体として、有底円筒状の形状である。
端子35は、台座36の厚さ方向に貫通して設けられている。端子35は、ピン状に形成されている。パッケージ32は、3つの端子35を備えている。要するに、パッケージ32は、台座36に保持された3つの端子35を備えている。パッケージ32は、3つの端子35のうちの1つの端子35が人体検知信号の取り出し用の端子を構成し、別の1つの端子35が給電用の端子を構成し、残りの1つの端子35がグラウンド用の端子を構成している。
パッケージ32は、台座36のフランジ36bと、キャップ37の第1フランジ37bとを、溶接により、気密性が確保できるように接合してある。
赤外線透過部材34としては、例えば、シリコン基板やゲルマニウム基板等を用いることができる。赤外線透過部材34は、適宜の光学フィルタ膜、反射防止膜等を備えているのが好ましい。
赤外線センサモジュール2は、図5に示すように、赤外線検出素子31の他に、信号処理回路305を備えているのが好ましい。信号処理回路305は、増幅回路301と、帯域フィルタ302と、比較回路303と、出力回路304と、を備えている。
信号処理回路305は、増幅回路301と、帯域フィルタ302と、比較回路303と、出力回路304と、が1つのIC素子に集積化されているのが好ましい。赤外線センサ3は、赤外線検出素子31と信号処理回路305の構成部品(例えば、上述のIC素子)とが実装された基板307(図1B参照)が、パッケージ本体33内に収納されているのが好ましい。基板307は、例えば、MID(Molded Interconnect Devices)基板により構成することができる。基板307は、MID基板に限らず、例えば、部品内蔵基板、セラミック基板、プリント基板等により構成することができる。
増幅回路301は、赤外線検出素子31の出力信号を増幅する回路である。増幅回路301は、例えば、電流電圧変換回路と、電圧増幅回路と、で構成することができる。電流電圧変換回路は、赤外線検出素子31から出力される出力信号である電流信号を電圧信号に変換して出力する回路である。電圧増幅回路は、電流電圧変換回路により変換された電圧信号のうち所定の周波数帯域の電圧信号を増幅して出力する回路である。
帯域フィルタ302は、増幅回路301で増幅された電圧信号から、雑音となる不要な周波数成分を除去するフィルタである。
比較回路303は、増幅回路301で増幅された電圧信号と予め設定された閾値とを比較し電圧信号が閾値を超えたか否かを判断する回路である。比較回路303は、例えば、コンパレータ等を用いて構成することができる。
出力回路304は、比較回路303において電圧信号が閾値を超えたと判断されたときに人体検知信号を出力信号として出す回路である。
赤外線センサモジュール2は、信号処理回路305の構成部品がパッケージ32内に収納された例に限らず、信号処理回路305の構成部品の一部もしくは全部が赤外線センサ3とは別に回路基板4に実装された構成としてもよい。
回路基板4(以下、「第1回路基板4」ともいう)は、例えば、プリント基板により構成することができる。
人体検知器1は、図1A及び2に示すように、赤外線センサモジュール2とは別に回路モジュール9を備えているのが好ましい。回路モジュール9は、スイッチ要素91と、制御回路の構成部品と、外部接続端子と、スイッチ要素91と制御回路の構成部品と外部接続端子とが実装される回路基板94(以下、「第2回路基板94」ともいう)と、を備えるのが好ましい。第2回路基板94は、第1回路基板4において赤外線センサ3が配置された第1面とは反対の第2面側に配置されている。第2回路基板94は、第1回路基板4の厚さ方向において第1回路基板4から離れて配置されている。第2回路基板94は、リード線等により第1回路基板4と電気的に接続されている。
スイッチ要素91としては、例えば、半導体スイッチ素子を採用することができる。半導体スイッチ素子としては、例えば、双方向サイリスタ等を挙げることができる。スイッチ要素91としては、半導体スイッチ素子に限らず、例えば、リレーの接点等を採用してもよい。
制御回路は、赤外線センサモジュール2の出力回路304から出力される人体検知信号に基づいてスイッチ要素91を制御するように構成されている。
外部接続端子は、ハウジング5の上壁に形成された電線挿通孔を通してハウジング5内に挿入された電線が電気的且つ機械的に接続される速結端子により構成することができる。
速結端子は、第2回路基板94に実装される金属製の端子板と、端子板との間に電線を保持する板ばねと、を備える。速結端子における板ばねは、例えば、帯状の金属板等からなる導電板を折曲して形成することができる。人体検知器1は、電線挿通孔等を覆う端子カバー56が着脱自在に取り付けられるのが好ましい。これにより、人体検知器1は、例えば、配線器具用の埋込ボックスを用いずに天井に取り付けて使用する場合に、電線挿通孔等に埃や水滴等が入って外部接続端子に付着するのを抑制することが可能となる。端子カバー56は、例えば、合成樹脂により形成されているのが好ましい。
回路モジュール9は、外部接続端子として、一対の電源端子と、一対の負荷端子と、一対の子器端子と、を備えている。要するに、回路モジュール9は、6つの外部接続端子を備えている。スイッチ要素91は、第2回路基板94において電源端子に電気的に接続された第1導体部と負荷端子に電気的に接続された第2導体部との間に接続されている。一対の子器端子には、人体検知器1を親器として、人体検知器1と略同じ構成の子器を接続することができる。子器は、赤外線センサモジュール2を備えているが、スイッチ要素91を備えていない。子器は、赤外線センサモジュール2において人体検知信号が出力されたときに、子器と一対の子器端子とを接続している信号線間の電圧を変化させることにより親器の制御回路へ人体検知信号を伝送することができる。第2回路基板94は、プリント基板により構成することができる。
人体検知器1は、例えば、電源端子と負荷端子との間に、電源と制御対象の負荷との直列回路を接続して使用することができる。これにより、人体検知器1は、赤外線センサモジュール2の出力信号に基づいてスイッチ要素91をオン、オフ制御することで、負荷のオン、オフを制御することが可能となる。要するに、人体検知器1は、制御対象の負荷を制御する負荷制御装置として利用することができる。制御対象の負荷としては、例えば、照明負荷、空調機、換気扇等が挙げられる。
人体検知器1は、例えば、制御対象の負荷が照明負荷であるとすれば、照明負荷を設置している室内に赤外線センサ3の検知エリアを設定しておくことによって、室内に人が存在するか存在しないかに応じて照明負荷を点灯、消灯させることが可能になる。したがって、人体検知器1は、例えば、室内に人が入ったときに照明負荷を点灯させ、室内から人が退出したときに照明負荷を消灯させることが可能となる。
ハウジング5は、図1A及び2に示すように、ボディ52とカバー53とを結合して構成されている。ボディ52は、合成樹脂製であり、上面が開放された箱状に形成されている。カバー53は、下面が開放された箱状に形成されている。ボディ52は、上縁から上方に向かって複数の組立片52bが突出して設けられている。各組立片52bには、組立孔52cが形成されている。カバー53は、下端部の外周面に、組立孔52cに嵌り込む組立突起53cが突出して設けられている。
ハウジング5は、ボディ52の下端部から側方へ延設されたフランジ54を備えている。フランジ54は、外周形状が円形状に形成されているのが好ましい。
ハウジング5は、ボディ52の下端部の中央部に、上述の開口部51が形成されている。開口部51の開口形状は、円形状であるのが好ましい。
人体検知器1は、例えば、フランジ54と、フランジ54の螺子挿通孔54bに挿通された引締め螺子560と、引締め螺子560の軸部562に嵌め合された挟み金具570と、を利用して天井材100に取り付けることができる。カバー53には、引締め螺子560の軸部562を収納する収納部55が形成されており、収納部55は、一側面と下面とが開放された直方体状の形状に形成されている。収納部55の上端部には、上下方向に直交する面内で挟み金具570を出入り可能とするスリット551が形成されている。
人体検知器1は、例えば、既設の熱線センサ付き自動スイッチとの取り替え等で施工するときに、図1Aに二点鎖線で示すように天井材100に形成されている円形状の埋込孔101の内径がフランジ54の外径よりも大きい場合がある。この場合、人体検知器1は、フランジ54よりも外径の大きなプレート枠59を備えた構成とすることができる。プレート枠59は、例えば、合成樹脂により形成されているのが好ましい。プレート枠59は、ハウジング5を挿入することが可能な開口部591を備えており、下面における開口部591の周部にハウジング5のフランジ54を収納する凹部592が形成されている。図1Aには、埋込孔101の内径がフランジ54の外径よりも小さい場合の天井材100を一点鎖線で示してある。
人体検知器1は、挟み金具570がスリット551に入っている状態で引締め螺子560の頭部561を回すと、挟み金具570がスリット551から出て、下方へ移動するようになっている。したがって、人体検知器1は、フランジ54の上面若しくはプレート枠59の上面を天井材100の下面に当接させた状態で引締め螺子560を回転させると、挟み金具570がスリット551から出てフランジ54に近付く方向に移動する。よって、人体検知器1は、挟み金具570とフランジ54若しくはプレート枠59との間に天井材100を挟持することができる。
人体検知器1のフランジ54には、天井材100の上側に配置された埋込ボックスの螺子孔に嵌め合せる螺子や、人体検知器1を天井材100へ直付けする際に用いるタッピン螺子を挿通するための挿通孔54cが2つ形成されている。人体検知器1は、ハウジング5の下面を覆う化粧プレート58を備えるのが好ましい。化粧プレート58は、ハウジング5に着脱自在に取り付けられる。化粧プレート58の外周形状は、円形状であるのが好ましい。化粧プレート58の外径は、フランジ54の外径と略同じであるのが好ましい。化粧プレート58は、上面から4本のフックが突出して設けられており、フックをフランジ54の取付孔54dに挿入して取付孔54dの周部に引っ掛けることによりハウジング5に取り付けることができる。化粧プレート58は、人体検知器1の見栄えを良くするためのプレートである。化粧プレート58は、合成樹脂により形成されているのが好ましい。化粧プレート58の中央部には、保護カバー6を露出させる開口部581が形成されている。開口部581の開口形状は、円形状であるのが好ましい。
図1A、1B、2、6〜8に示すレンズ部材7の材料としては、例えば、ポリエチレンを採用するのが好ましい。レンズ部材7は、例えば、成形法により形成することができる。成形法としては、例えば、射出成形法、圧縮成形法等を採用することができる。レンズ部材7は、例えば、人体検知器1を見た人から赤外線センサ3が視認されるのを抑制するように構成されているのが好ましい。このため、レンズ部材7の材料としては、例えば、白色顔料が添加されたポリエチレンを採用するのが好ましい。白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)等の無機顔料を採用するのが好ましい。
レンズ部材7の各レンズ71は、集光レンズであり、凸レンズにより構成されている。レンズ部材7は、各レンズ71それぞれの赤外線検出素子31側での焦点が同一位置となるように設計してあるのが好ましい。
レンズ部材7は、図7及び8に示すように、複数のレンズ71により構成されるレンズアレイ700が一体に形成されている。レンズ部材7は、ドーム状に形成されたレンズ部材本体70にレンズアレイ700が形成されている。レンズアレイ700は、赤外線が入射する第1面701が、各レンズ71の光入射面の一群により構成され、赤外線が出射する第2面702が、各レンズ71の光出射面の一群により構成されている。ここで、レンズアレイ700は、第1面701が半球面の一部により構成され、第2面702が凹凸を有している。これにより、レンズアレイ700は、第1面701が凹凸を有している場合に比べて、外観を向上させることが可能となる。
レンズアレイ700は、隣り合うレンズ71の光出射面同士の境界が線状であるのが好ましい。これにより、レンズアレイ700は、隣り合うレンズ71間の隙間を低減することが可能となる。よって、人体検知器1は、高感度化を図ることが可能となる。
レンズ部材7は、複数のレンズ71を有するレンズ部材本体70における複数のレンズ71以外の部位の厚さが、各レンズ71の厚さよりも大きいのが好ましい。これにより、人体検知器1は、レンズ部材7において複数のレンズ71以外の部位の厚さが各レンズ71の厚さ以下の場合に比べて、不要な方向からの赤外線を減衰させることが可能となる。要するに、人体検知器1は、検知エリア以外の不要な方向からレンズ部材7に入射する赤外線の透過率を低下させることが可能となる。よって、人体検知器1は、不要な方向からレンズ部材7へ入射した後に赤外線検出素子31へ入射する赤外線の入射量を低減することが可能となり、誤検知の発生を抑制することが可能となる。
レンズ71で制御する制御対象の赤外線は、例えば、5μm〜25μmの波長域の赤外線が挙げられる。レンズ71は、レンズ71の厚さが大きいほど制御対象の赤外線の透過率が低下する。レンズ71は、厚さが0.1mm厚くなると、垂直入射する制御対象の赤外線の透過率が概ね10%程度、低下する。垂直入射するとは、レンズ71の光入射面の任意の点に、この任意の点の法線に沿って入射することを意味する。また、レンズ71は、光入射面の任意の点に斜め入射する制御対象の赤外線の光路長が、この任意の点に対応するレンズ71の厚さよりも長くなって透過率が低くなりすぎる懸念がある。斜め入射するとは、レンズ71の光入射面の任意の点に、この任意の点の法線に対して傾いた方向から入射することを意味する。
人体検知器1の検知エリアは、赤外線受光経路により決まる。赤外線受光経路は、レンズ71を通して検出部314に入射する赤外線束を赤外線の進む方向と反対の方向に延長したときに形成される3次元領域である。言い換えれば、赤外線受光経路は、赤外線検出素子31の検出部314の受光面324上に像をつくるために使われる赤外線束が通ることができる赤外線通過領域を意味する。更に言えば、赤外線受光経路は、人体からの赤外線を検出する有効領域である。
人体検知器1の検知エリアは、赤外線検出素子31とレンズ部材7とで略決めることが可能である。この場合、人体検知器1の検知エリアには、各レンズ71ごとに、検出部314の数の赤外線受光経路が形成される。
レンズ部材7は、図1B、7及び8に示すように、レンズ部材本体70の開口縁から突出する2つのフック73を一体に備えている。
図1A、1B、2、6〜8、9A、9B及び9Cに示す保持部材8は、合成樹脂により形成されている。保持部材8の材料である合成樹脂としては、例えば、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)等を採用することができる。保持部材8は、合成樹脂に黒色顔料や白色顔料を添加した材料の成形品により構成されているのが好ましい。黒色顔料及び白色顔料としては、無機顔料が好ましい。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック等を採用することができる。白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)等を採用することができる。
保持部材8における保持枠81の内周面には、保持枠81の軸方向の第1端部81aの内径を第2端部81bの内径よりも小さくする段差部81cが設けられている。保護カバー6は、保持枠81の段差部81cにレンズ部材7のフック73が引っ掛けられることによって、保持枠81がレンズ部材7を保持している。連結部83には、2つのフック73それぞれを挿入可能な2つの取付孔86(図9B及び9C参照)が形成されている。要するに、レンズ部材7は、フック73を取付孔86に挿入して段差部81cに引っ掛けることにより、保持枠81に保持されている。保持枠81へのレンズ部材7の挿入量は、連結部83により制限される。よって、レンズ部材7は、保持部材8に対して抜け止めされる。
保持枠81の外周面は、球面の一部により構成されている。また、保持部材8は、保持枠81の外周面から突出する2つの軸部85を備えている。軸部85は、半円柱状の形状に形成されている。軸部85は、保持枠81の軸方向に沿った方向において第1端部81aに近い側が半円柱面となっている。保持部材8は、2つの軸部85を結ぶ直線上に、前記球面の中心があるのが好ましい。
保持部材8の壁部82及び連結部83については、後述する。
人体検知器1は、ハウジング5との間に保護カバー6を保持する板ばね10(図2及び10参照)を備えている。要するに、板ばね10は、保護カバー6に対して軸部85をボディ52の下壁の上面に押し付ける向きの力を与えている。
よって、人体検知器1は、ハウジング5に対して保護カバー6を一対の軸部85の軸回りで回転させることができる。これにより、人体検知器1は、レンズ部材7の向きを変えることができるから、検知エリアを変えることができる。人体検知器1は、各レンズ71の赤外線検出素子31側の焦点と、図4に示す赤外線検出素子31の受光面31aの中心31bとが前記球面の中心に位置するように設計してあるのが好ましい。これにより、人体検知器1は、保護カバー6の向きによらず、各レンズ71の赤外線検出素子31側の焦点を赤外線検出素子31の受光面31aの中心31bに合わせることが可能となる。
ハウジング5は、ボディ52の下壁の中央部において開口部51の周囲から上方へ突出した円筒状のばね保持部512を備えている。ばね保持部512の内径は、保護カバー6の一対の軸部85の先端間の距離と同程度で若干大きく設定されている。これにより、人体検知器1は、ボディ52の下壁の上面に沿った方向における保護カバー6の移動が、ばね保持部512により規制される。
また、人体検知器1は、開口部51の周部においてばね保持部512の内側で、軸部85がばね保持部512の内周面に沿った方向に回転できるようになっている。要するに、人体検知器1は、軸部85の半円柱面がボディ52の下壁の上面における開口部51の周部に当たった状態で、ハウジング5の上下方向に直交する面内において保護カバー6を回転させることができる。
板ばね10は、図10に示すように、第1板片111と、第2板片112と、4つの第3板片113と、を備える。第1板片111は、円環状に形成されており、ハウジング5に固定される。第2板片112は、第1板片111の内側で第1板片111から離れている。第2板片112は、保護カバー6の2つの軸部85をボディ52の下壁との間に挟持する。板ばね10は、第1板片111と第2板片112とが同心的に配置されているのが好ましい。第3板片113は、第1板片111と第2板片112との間にあり、第1板片111と第2板片112とを連結している。第3板片113は、円弧状に形成されており、第1板片111の内周面及び第2板片112の外周面から離れて配置されている。第3板片113は、長さ方向の第1端部が第1板片111側へ曲がっていて第1板片111の内周面と連結されている。また、第3板片113は、長さ方向の第2端部が第2板片112側へ曲がっていて第2板片112の外周面と連結されている。また、各第3板片113は、同じ形状であり、第1板片111の内周方向に沿った方向において略等間隔で離れて配置されているのが好ましい。第1板片111には、厚さ方向に折り曲げられた4つの突片114が設けられている。
ばね保持部512の上面には、ばね保持部512の他の部位よりボディ52の下壁からの高さを大きくした2つの円弧状の突出部が設けられており、突出部の両端に、スリットが形成されている。板ばね10は、第1板片111の突片114をスリットに挿入してスリットの内面に弾接させることができる。
第2板片112の内径は、保持枠81の軸方向において軸部85よりも第2端部81b側の所定位置の外径と同程度に設定してある。これにより、人体検知器1は、第2板片112の内周面と保持枠81の外周面とが当たっている。したがって、人体検知器1は、保護カバー6の向きを変えるときに、板ばね10の第2板片112の内周面と保持枠81の外周面との間に生じる摩擦力に抗して保護カバー6を回転させることになる。よって、人体検知器1は、保護カバー6を回転させた後に、保護カバー6が回転するのを抑制することが可能となる。
板ばね10は、例えば、金属板に打ち抜き加工や曲げ加工等を施すことにより形成することができる。
ところで、本願発明者らは、従来例の熱線センサ付き自動スイッチにおいて、熱線センサ付き自動スイッチが配置されている部屋のドアを開けるときや閉めるときに、誤動作が発生するメカニズムについて検討した。そして、本願発明者らは、発熱部品の発熱により熱線センサのパッケージの温度が上昇している状態で、集光レンズと保持枠との隙間を通して気体が熱線センサの周囲の空間に流入してパッケージが冷やされて、温度変化が生じるので、誤動作が発生すると考えた。
そこで、本実施形態の人体検知器1では、保持部材8に上述の壁部82を設け、保持枠81と壁部82とを連結する連結部83を備えた構成としてある。これにより、本実施形態の人体検知器1では、部屋のドアを開けるときや閉めるときに誤動作が発生するのを抑制する可能となる。より詳細には、本実施形態の人体検知器1では、外部から流入する気体が赤外線センサ3のパッケージ本体33に到達しにくくなることで、気流によるパッケージ本体33の温度変化が生じにくくなり、誤動作の発生を抑制することが可能となる、と推考される。
壁部82は、筒状に形成されているのが好ましい。壁部82は、回路基板4から遠い側の端82a(以下、「下端82a」ともいう)が、回路基板4の厚さ方向に沿った方向において赤外線透過部材34よりも回路基板4から離れた位置にあるのが好ましい。要するに、人体検知器1は、上下方向において壁部82の下端82aが、赤外線透過部材34よりも下にあるのが好ましい。これにより、人体検知器1は、気流が赤外線透過部材34の下面側へ回り込みにくくなり、赤外線検出素子31の受光面31aに近い赤外線透過部材34の、気流による温度変化を抑制することが可能となり、誤動作の発生を、より抑制することが可能となる。壁部82は、筒状の形状として、円筒状の形状が、より好ましい。
壁部82は、回路基板4に近い側の端82b(以下、「上端82b」ともいう)が、回路基板4の厚さ方向に沿った方向において回路基板4から離れた位置にあり、且つ、赤外線透過部材34よりも回路基板4に近い位置にあるのが好ましい。要するに、人体検知器1は、上下方向において壁部82の上端82bが、回路基板4よりも下で赤外線透過部材34よりも上にあるのが好ましい。これにより、人体検知器1は、気流がパッケージ本体33側へ、より回り込みにくくなり、気流による温度変化を抑制することが可能となり、誤動作の発生を、より抑制することが可能となる。
人体検知器1は、赤外線検出素子31が、焦電素子であるのが好ましい。これにより、人体検知器1は、赤外線検出素子31として温度変化に敏感な焦電素子を用いることで高感度化を図りながらも、気流に起因した誤動作の発生を抑制することが可能となる。
なお、壁部82の外周面は、凹凸面により構成されていてもよい。
図11A、11B及び11Cは、第1変形例の人体検知器における保持部材8を示す。第1変形例の人体検知器は、基本構成が実施形態の人体検知器1と同じであり、保持部材8の連結部83に貫通孔84が形成されている点のみが実施形態の人体検知器1と相違する。
第1変形例の人体検知器は、保持部材8の連結部83に、保持枠81の軸方向に沿った方向に貫通する貫通孔84が形成されている。これにより、人体検知器1は、仮にレンズ部材7と保持部材8との隙間から気流が流入したとしても、流入した気流が貫通孔84を通って回路基板4側へ流れやすくなる。よって、人体検知器1では、気流が赤外線センサ3のパッケージ本体33側へ回り込みにくくなり、気流に起因した誤動作の発生を抑制することが可能となる。
保持部材8は、連結部83に形成されている貫通孔84の数が複数であり、複数の貫通孔84が保持枠81の内周方向に沿った方向において等間隔で並んでいるのが好ましい。これにより、人体検知器1は、仮にレンズ部材7と保持部材8との隙間から気流が流入したとしても、流入した気流が流入経路によらず貫通孔84を通って回路基板4側へ流れやすくなる。よって、人体検知器1では、気流が赤外線センサ3のパッケージ本体33側へ回り込みにくくなり、気流に起因した誤動作の発生を抑制することが可能となる。
第2変形例の人体検知器は、実施形態の人体検知器1と基本構成が同じであり、図12に示すようにパッケージ本体33の側面を囲むセンサカバー38を備え、センサカバー38が、パッケージ本体33よりも熱伝導率の低い材料により形成されている点が相違する。これにより、第2変形例の人体検知器は、パッケージ本体33の温度変化を抑制することが可能となり、気流による誤動作の発生を、より抑制することが可能となる。センサカバー38は、筒状の形状が好ましく、円筒状の形状が、より好ましい。
センサカバー38の材料としては、例えば、樹脂やゴム等を採用することができる。樹脂としては、例えば、ABS、ポリエチレン等を採用することができる。
第3変形例の人体検知器は、第2変形例の人体検知器と基本構成が同じである。第3変形例の人体検知器は、図13及び14に示すように、センサカバー38が、筒状のセンサカバー本体381と、センサカバー本体381の内周面から突出しパッケージ本体33の側面に当たるリブ384と、を備える。そして、第3変形例の人体検知器は、センサカバー本体381とパッケージ本体33の側面との間に空隙380がある。これにより、第3変形例の人体検知器は、空隙380の空気層が断熱層として機能することが可能となって、パッケージ本体33の温度変化を抑制することが可能となり、気流による誤動作の発生を、より抑制することが可能となる。第3変形例の人体検知器は、空隙380のギャップ長をリブ384により規定することが可能である。リブ384の数は、複数であるのが好ましい。
第4変形例の人体検知器は、第2変形例の人体検知器と基本構成が同じである。第4変形例の人体検知器は、図15に示すように、センサカバー38が、筒状のセンサカバー本体381と、赤外線透過部材34を覆う赤外線透過カバー部382と、を備え、赤外線透過カバー部382がポリエチレンにより形成されている。これにより、第4変形例の人体検知器は、気流によるパッケージ本体33の温度変化をより抑制することが可能となり、気流による誤動作の発生を、より抑制することが可能となる。
第4変形例の人体検知器におけるセンサカバー38は、赤外線透過カバー部382が赤外線を透過し、センサカバー本体381が赤外線及び可視光を遮るのが好ましい。このようなセンサカバー38は、例えば、赤外線透過カバー部382とセンサカバー本体381とで、ポリエチレンに対する添加物及び添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品により構成することができる。2色成形品とは、異なる色または種類の成形材料を供給し、それぞれ溶融可塑化後に、1個の金型キャビティに同時あるいは順次に連続して射出することで一体成形されたものを意味する。ここで、異なる種類の成形材料とは、ポリエチレンに対する添加物の種類が同じで、添加物の濃度が異なる成形材料を意味している。2色成形品は、1基の型締装置に2基の射出装置を備えた形式の射出成形機である2色射出成形機を利用して一体成形することができる。
添加物は、例えば、顔料、ヒンダードアミン光安定剤(Hinderd Amine Light Stabilizer:HALS)及び赤外線吸収剤の群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。これにより、第4変形例の人体検知器は、センサカバー本体381において、入射した可視光や赤外線の波長変換が行なわれるのを防止することができ、また、センサカバー本体381を透過する可視光及び赤外線それぞれの量を低減することが可能となる。
顔料は、有機顔料、無機顔料のいずれでもよいが、耐光性、耐候性等の観点から、無機材料のほうが、より好ましい。顔料としては、有機顔料、無機顔料いずれの場合も、例えば、白色顔料、黒色顔料等を用いることができる。無機顔料のうち白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華等を用いることができる。また、無機顔料のうち黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック等を用いることができる。
センサカバー38は、赤外線透過カバー部382とセンサカバー本体381とで、ポリエチレンに対する添加物をいずれも白色顔料とする場合、センサカバー本体381の方を、ポリエチレンに対する添加物の濃度を高く設定すればよい。同様に、センサカバー38は、赤外線透過カバー部382とセンサカバー本体381とで、ポリエチレンに対する添加物をいずれも黒色顔料とする場合、センサカバー本体381の方を、ポリエチレンに対する添加物の濃度を高く設定すればよい。また、センサカバー38は、赤外線透過カバー部382とセンサカバー本体381とで、ポリエチレンに対する添加物を異ならせる場合、例えば、赤外線透過カバー部382での添加物を白色顔料、センサカバー本体381での添加物を黒色顔料とすることができる。
赤外線吸収剤としては、ポリエチレンの耐光性向上や酸化防止、着色、成形性向上等の機能向上が図れる添加剤が好ましい。このような吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、リン酸エステル系添加剤、亜リン酸エステル剤等が挙げられる。ヒンダードアミン光安定剤は、上述の吸収剤と同様、ポリエチレンの耐光性向上や酸化防止、着色、成形性向上等の機能向上が図れる。
また、第4変形例の人体検知器では、赤外線透過カバー部382とセンサカバー本体381とを上述の2色成形品により構成しているので、部品点数を削減でき、低コスト化が可能となる。また、センサカバー本体381をポリエチレン以外の材料により形成した場合には、ポリエチレンにより形成された赤外線透過カバー部382と接着することが難しく、両者を結合するための構造を別途に設ける必要がある。これに対して、第4変形例の人体検知器では、赤外線透過カバー部382とセンサカバー本体381とを結合するための構造を別途に設ける必要がないから、センサカバー38の形状設計が容易になり、且つセンサカバー38の形状の自由度が高くなる。
赤外線透過カバー部382の形状は、湾曲した形状としてあるが、これに限らず、例えば、平板状や、ドーム状の形状としてもよい。
第5変形例の人体検知器は、実施形態の人体検知器1と基本構成が同じであり、図16に示すように、パッケージ本体33と回路基板4との間に空隙390がある点が実施形態の人体検知器1と相違する。これにより、第5変形例の人体検知器では、空隙390により形成される空気層が断熱層として機能することが可能となる。よって、第5変形例の人体検知器では、回路基板4からパッケージ本体33への伝熱を抑制することが可能となり、気流によるパッケージ本体33の温度変化を抑制することが可能となるから、気流による誤動作を抑制することが可能となる。
第6変形例の人体検知器は、第2変形例の人体検知器と基本構成が同じである。第6変形例の人体検知器は、図17に示すように、センサカバー38が、筒状のセンサカバー本体381と、センサカバー本体381の内周面から突出してパッケージ本体33と回路基板4との間に介在するリブ383と、を備えている。そして、第6変形例の人体検知器は、パッケージ本体33と回路基板4との間に空隙390がある。これにより、第6変形例の人体検知器は、空隙390のギャップ長をリブ383により規定することが可能となり、回路基板4からパッケージ本体33への伝熱をより抑制することが可能となる。リブ383の数は、複数であるのが好ましい。