JP2016056069A - 撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法 - Google Patents

撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法 Download PDF

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【課題】撥水剤内部添加型の撥水性ALCにおいても、均一な発泡性と、撥水性の両立を図ることができる撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法を提供する。
【解決手段】珪酸質原料と石灰質原料とを含む主原料と、金属アルミニウム粉末の発泡剤と、水と、シリコーン系の撥水剤と、を加える原料スラリー調整工程と、原料スラリーを補強材を配置した型枠内に流し込んで半硬化体を形成する工程と、半硬化体を高温高圧蒸気養生する工程とを備える撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法であって、原料スラリー調整工程において、金属アルミニウム粉末として、該金属アルミニウム粉末の表面に実質的に脂肪酸が付着していない粉末を用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、撥水性軽量気泡コンクリート(ALC)の製造方法に関し、更に詳しくは、発泡剤として乾式粉砕により得られる金属アルミニウム粉末を使用する、内添式の撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法に関する。
軽量気泡コンクリート(以下、ALCと称する)は、無数の細かい気泡を含んだ多孔質体で形成されているため、軽量性、耐火性、断熱性などにおいて優れた諸性能を有しており、建築物の外壁、床材、屋根、間仕切りなどの部位に広く使用されている。ALCの主原料は珪酸質原料と石灰質原料であり、珪酸質原料としては珪石または珪砂が、石灰質原料としては生石灰とセメントが使用されている。また、発泡剤として金属アルミニウム粉末が一般的に使用されている(特許文献1参照)。
これらの原料を用いて一般的に次のような製造工程を経てALCの製造が行われている。すなわち、まず珪酸質原料及び石灰質原料からなる主原料に発泡剤と水を加えてミキサーで混練し、得られたスラリーを予め補強材を配した型枠に流し込む。型枠内では、発泡剤による化学反応で発泡し、同時に硬化が進行する。そして、半硬化状態になった時点で当該半硬化体を脱型し、ピアノ線などで所定の寸法に切断した後、オートクレーブにより高温高圧蒸気養生を行う。これによりALCが得られる。
発泡剤として使用する金属アルミニウム粉末は、予め数mm程度の大きさに荒粉砕したアルミニウム箔の原料に粉砕助剤として脂肪酸を添加し、1グラム当たりの水面被覆面積が4500cm以上20000cmになるまで乾式粉砕されるが、この製造工程においては脂肪酸を一般的には0.3質量%超含有するのが普通である。
このような脂肪酸付き金属アルミニウム粉末は、水系スラリーにおいて金属アルミニウム粉末が均等に分散しないため、不均質な発泡や発泡阻害を生じて、ALCが不良品となり易い。この脂肪酸は加熱によって除去することが可能ではあるが、この工程は一般にコストが嵩み余分な工程が増える。このため、脂肪酸付き金属アルミニウム粉末に界面活性剤の分散剤をあらかじめ加えることで、この問題を回避して分散性を向上させ、脂肪酸付き金属アルミニウム粉末を使用できるようにしている。
ところで、ALCには用途に応じてALC表面に撥水性が要求されることがある。撥水性の付与にはスラリー組成内にシリコーン系などの撥水剤をあらかじめ含有させる撥水剤内部添加型の撥水性ALCと、ALC製造後のALC表面に撥水剤を塗布する表面塗布型の撥水性ALCとがある。
特開2001−261466号公報
特に上記の内部添加型の撥水性ALCにおいては、撥水性の発現は非常に微妙であり、スラリー組成によっては撥水性を阻害することがあるが、その原因は非常に複雑であり、スラリー組成と撥水性維持との関係は従来不明であった。
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、内部添加型の撥水性ALCにおいて、均一な発泡を得つつも、高い撥水性を維持できるALCの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のうち、特に撥水剤内部添加型の撥水性ALCにおいては、上記の金属アルミニウム粉末の分散剤として界面活性剤を用いると、内部添加の撥水剤が均一に分散せず、また、金属アルミニウム粉末による発泡均一性も低下することを見出した。すなわち、撥水剤内部添加型の撥水性ALCにおいては、従来行われていた分散剤による金属アルミニウム粉末の均一分散という手法がうまく機能せず、撥水剤内部添加型のALCにおいては脂肪酸の除去が最も有効であることを見出して本発明を完成するに至った。具体的には本発明は以下のものを提供する。
(1) 珪酸質原料と石灰質原料とを含む主原料と、金属アルミニウム粉末の発泡剤と、水と、シリコーン系の撥水剤と、を加える原料スラリー調整工程と、
前記原料スラリーを、補強材を配置した型枠内に流し込んで半硬化体を形成する工程と、
前記半硬化体を高温高圧蒸気養生する工程と、を備える撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法であって、
前記原料スラリー調整工程において、前記金属アルミニウム粉末として、該金属アルミニウム粉末の表面に実質的に脂肪酸が付着していない粉末を用いることを特徴とする撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法。
(2) 前記発泡剤における、前記脂肪酸の含有量が0.3質量%以下である(1)に記載の撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法。
(3) 前記金属アルミニウム粉末が、該金属アルミニウム粉末の表面に付着する脂肪酸を加熱して除去する脂肪酸除去工程を経たものである(1)又は(2)に記載の撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法。
(4) 前記原料スラリー調整工程において、脂肪酸と凝集防止剤を含有する気泡安定剤を含有させる(1)から(3)のいずれかに記載の撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法。
本発明によれば、撥水剤内部添加型の撥水性ALCにおいても、均一な発泡性と、撥水性の両立を図ることができる。
本発明の一実施形態である撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法を示す概略図である。 本発明の他の実施形態である撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法を示す概略図である。 従来の撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法の一例を示す概略図である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の撥水性軽量気泡コンクリート(ALC)の製造方法は、原料スラリー調整工程S10と、その後の半硬化体形成工程S20と、その後の蒸気養生工程S30とからなる。なお、本発明におけるALCとは、JIS A 5416に規定しているALCの範囲のものに限定されず、広義のALCを意味する。
原料スラリー調整工程S10は、本発明の特徴となる工程であり、珪酸質原料と石灰質原料とを含む主原料に、脂肪酸無し金属アルミニウム粉末(図1においては油脂無アルミ粉と標記)と、水と、を加える工程である。
その後の半硬化体形成工程S20は、S10で得られる原料スラリーを、補強材を配置した型枠内に流し込んで半硬化体を形成する工程であり、蒸気養生工程S30は、この半硬化体をオートクレーブにて高温高圧蒸気養生する工程である。なお、図1においては、蒸気養生工程S30は略して記載されているが、実際には半硬化体がオートクレーブ(図示せず)内に移動して高温高圧の蒸気処理が行われる。
<原料スラリー調整工程S10>
本発明における原料スラリー調整工程S10は、脂肪酸無し金属アルミニウム粉末処理工程S11と、主原料調整工程S12と、スラリー化工程S13とを有している。そして、本発明においては、脂肪酸無し金属アルミニウム粉末処理工程S11において、従来用いていた界面活性剤の分散剤を使用せず、水と脂肪酸無し金属アルミニウム粉末とあらかじめ混合する点に特徴がある。
これについて本発明の図1における脂肪酸無し金属アルミニウム粉末処理工程S11と、従来技術の図3におけるS13に相当する箇所とを比較する。図3においては、あらかじめ界面活性剤の分散剤と、水と、脂肪酸付き金属アルミニウム粉末(図3においては油脂付アルミ粉と標記)とを混合して脂肪酸付き金属アルミニウム粉末を分散させる。このとき、主原料調整工程(図1のS12に相当)においてシリコーン系撥水剤(図1から図3においてはシリコーンオイルとして例示標記)を添加する場合、すなわち、内部添加型の撥水性ALCを製造する場合には、理由は定かでないが、内部添加の撥水剤が均一に分散しないために撥水性が低下する。また、金属アルミニウム粉末による発泡均一性も低下する。このため、本発明においては、図1の脂肪酸無し金属アルミニウム粉末処理工程S11Sに示すように、従来用いていた界面活性剤の分散剤を使用せず、水と脂肪酸無し金属アルミニウム粉末とあらかじめ混合することで、撥水性と発泡均一性とを両立することができる。
<主原料調整工程S12>
主原料調整工程S12では、珪酸質原料としては珪石又は珪砂を、上記石灰質原料としては生石灰やセメントや石膏を使用し、従来公知のシリコーン系の撥水剤と、水と、必要に応じて、高温高圧蒸気養生前の半硬化体を水に溶解したALCスラリーや、高温高圧蒸気養生後のALCブロックを粉状に粉砕したALC粉とを鋳込みミキサーに投入する。
<脂肪酸無し金属アルミニウム粉末処理工程S11>
一方、脂肪酸無し金属アルミニウム粉末処理工程S11では、発泡剤として乾式粉砕した金属アルミニウム粉末を使用する。
発泡剤として使用される乾式粉砕した脂肪酸無し金属アルミニウム粉末とは、予め数mmに荒粉砕したアルミニウムは箔を原料として用い、その原料に粉砕助剤として脂肪酸を添加し、常圧で不活性な気体の雰囲気中で水面被覆面積が4500cm以上20000cmになるまで粉砕した後、脂肪酸を除去したものである。脂肪酸の除去率は、粉末あたりの質量%で0.3質量%以下であることが好ましい。乾式粉砕した金属アルミニウム粉末としては、44μmふるい残分が20〜50重量%、水面拡散面積が4500〜12000cmになるまで粉砕したものが好ましい。ここで使用する前記脂肪酸としては、ステアリン酸またはオレイン酸が代表的である。この脂肪酸は金属アルミニウム粉末の水分散性の観点からは0.3質量%以下まで加熱乾燥により除去することができる。
計量後の脂肪酸無し金属アルミニウム粉末は、水と共に、アルミ懸濁槽にて撹拌混合される。このときの水の量は、脂肪酸無しアルミニウム粉末の1重量部に対し、水10から60質量部であることが、脂肪酸無し金属アルミニウム粉末が均一に混ざり易くなり、かつミキサー投入時点でアルミニウム粉末が主原料と均質に混ざり易くなることから望ましい。水量が10質量部未満では、混合、攪拌のバラツキが大きくて、ALCの発泡高さなどの管理が難しくなり、60質量部超ではアルミニウムの混合攪拌槽が大きくなりすぎるなどの点で不経済となる割に効果が上がらないので好ましくない。
<スラリー化工程S13>
主原料調整工程S12で調整された主原料と、脂肪酸無し金属アルミニウム粉末処理工程S11で水分散された脂肪酸無し金属アルミニウム粉末とは、鋳込みミキサーにて混合されて最終的な原料スラリーとして調整され、モールド内に注入されて、半硬化体形成工程S20と、その後の蒸気養生工程S30とを経て撥水性軽量気泡コンクリートが製造される。
このスラリー化工程S13においては、図1に示すように気泡安定剤を別途含有させてもよい。気泡安定剤としては、脂肪酸と凝集防止剤との混合物を含む水溶液であることが好ましく、凝集防止剤としてはトリエタノールアミンが例示でき、脂肪酸としてはオレイン酸が好ましく例示できる。
脂肪酸と凝集防止剤との混合割合は、凝集防止剤100質量部に対して、脂肪酸が100質量部から1000質量部が好ましい。脂肪酸割合が100質量部未満であるとコスト的に不経済となる点から好ましくなく、1000質量部超になると脂肪酸が溶けきらずに残ってしまう点から好ましくない。
また、脂肪酸無し金属アルミニウム粉末100質量部に対する、前記気泡安定剤中における前記脂肪酸と前記凝集防止剤との混合物の割合は100質量部以上1000質量部以下であることが好ましい。混合物割合が100質量部未満であるとコスト的に不経済となる点から好ましくなく、1000質量部超になると脂肪酸が溶けきらずに残ってしまう点から好ましくない。
<他の実施形態>
図2には、本発明の他の実施形態が示されている。この実施形態では、原料スラリー調整工程S10aが図1のS10と異なっている。具体的には、脂肪酸無し金属アルミニウム粉末処理工程S11a(図1のS11に相当)において、油脂無アルミ粉と水とを混合してアルミスラリー溶液を形成した後に、計量を行うプロセスであり、図1のようにあらかじめアルミ粉を計量しておくのではなく、スラリー後に計量する点が異なっており、他の工程は図1と同様である。このように、本発明は図2のような製造プロセスにおいても適用できるものである。
以下に、本発明におけるALCの製造方法の実施例を挙げるが本発明はこれに限定されるものではない。
<脂肪酸無し金属アルミニウム粉末処理工程S11>
脂肪酸無し金属アルミニウム粉末としては、大和金属粉工業(株)製品「P−300」(実施例1)及び「P−1112」(実施例2)を用い、いずれも加熱乾燥によって脂肪酸量を0.3質量%以下にした。なお、「P−300」は平均粒径50μm程度、「P−1112」は平均粒径40μm程度である。
図1に示すように、上記の脂肪酸無し金属アルミニウム粉末1質量部に対して水20質量部相当の水溶液を加えて攪拌混合したところ、脂肪酸無し金属アルミニウム粉末が水に溶解した。
<主原料調整工程S12及びスラリー化工程S13>
珪石1848質量部、セメント710質量部、生石灰150質量部、石膏180質量部、シリコーン系の撥水剤(製品名:DOW CORNING TORAY BY 16−846 FLUID、東レ・ダウコーニング社製)1.2質量部、水2600質量部を混合し、更に、気泡安定剤の水溶液(混合質量比=オレイン酸1質量部:トリエタノールアミン2質量部:水25質量部)の0.7質量部、に、上記脂肪酸無し金属アルミニウム粉末処理工程S11で得られた、脂肪酸無し金属アルミニウム粉末水分散液2.4質量部を加えて鋳込みミキサーで混合した(スラリー化工程S13)。その後、半硬化体形成工程S20と、蒸気養生工程S30を経て本発明の実施例1、2の撥水性軽量気泡コンクリート(ALC)を製造した。
実施例の撥水性及び、気泡均一性を確認した結果、気泡会合による不均一な気泡状態は見られず、撥水性も均一であっていずれも良好であった。
比較例として、図3に示すように、脂肪酸除去前の脂肪酸付き金属アルミニウム粉末を用い、分散剤として、脂肪酸付き金属アルミニウム粉末1質量部に対して、0.05質量部の界面活性剤(製品名ディスパノール、日油社製)を用いた以外は実施例と同様にして比較例の撥水性軽量気泡コンクリート(ALC)を製造した。
比較例の撥水性及び、気泡均一性を確認した結果、界面活性剤の影響で気泡会合が起こり粗大気泡が作られ、撥水性も濃淡部が見られ不均一な状態であっていずれも実施例に劣るものであった。
S10(S10a) 原料スラリー調整工程
S11(S11a) 脂肪酸無し金属アルミニウム粉末処理工程
S12 主原料調整工程
S13 スラリー化工程
S20 半硬化体形成工程
S30 蒸気養生工程

Claims (4)

  1. 珪酸質原料と石灰質原料とを含む主原料と、金属アルミニウム粉末の発泡剤と、水と、シリコーン系の撥水剤と、を加える原料スラリー調整工程と、
    前記原料スラリーを、補強材を配置した型枠内に流し込んで半硬化体を形成する工程と、
    前記半硬化体を高温高圧蒸気養生する工程と、を備える撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法であって、
    前記原料スラリー調整工程において、前記金属アルミニウム粉末として、該金属アルミニウム粉末の表面に実質的に脂肪酸が付着していない粉末を用いることを特徴とする撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法。
  2. 前記発泡剤における、前記脂肪酸の含有量が0.3質量%以下である請求項1に記載の撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法。
  3. 前記金属アルミニウム粉末が、該金属アルミニウム粉末の表面に付着する脂肪酸を加熱して除去する脂肪酸除去工程を経たものである請求項1又は2に記載の撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法。
  4. 前記原料スラリー調整工程において、脂肪酸と凝集防止剤を含有する気泡安定剤を含有させる請求項1から3のいずれかに記載の撥水性軽量気泡コンクリートの製造方法。
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