JP2016036821A - 連続鋳造方法 - Google Patents

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優 石原
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孝司 三宅
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Abstract

【課題】Ni含有鋼の鋳片表面温度のばらつきを抑止する。
【解決手段】止水区間において、軸受箱率R<0.2の幅方向位置では空気量Q2(20Nm3/(m2・Hr)≦Q2≦40Nm3/(m2・Hr))で冷却する。軸受箱率R≧0.2の幅方向位置では、R=0との鋳片表面温度差が大きくなる可能性があるため、予測鋳片表面温度差Teを算出する。予測鋳片表面温度差Te≦35の場合、その位置を空気量Q2(20Nm3/(m2・Hr)≦Q2≦40Nm3/(m2・Hr))で冷却する。一方、予測鋳片表面温度差Te>35の場合、別の空気量Q1で冷却する。空気量Q1は予測鋳片表面温度差Te、鋳造速度Vc及び軸受箱率Rを基に算出した量である。止水区間は、曲げ完了位置から矯正完了位置までの区間において曲げ完了位置から矯正完了位置の上流側3mの位置までの範囲を少なくとも含む領域である。
【選択図】図4

Description

本発明は、止水区間において所定の空気量で鋳片を冷却するNi含有鋼の鋳造方法に関する。
Ni含有鋼は他の鋼種に比べて内部割れや表面割れ等が発生しやすい。そこで、従来よりNi含有鋼で割れの発生を防止する鋳造方法が提案されている(特許文献1,2参照)。特許文献1,2では鋳片の冷却方法を規定している。
また、Ni含有鋼では鋳片温度の低下を抑止するため、二次冷却帯に水量をゼロとする止水区間(空冷区間)を設けることがある。止水区間では鋳片を空気冷却することにより緩冷している。特許文献3はNi含有鋼に限定するものではないが、二次冷却帯に水冷区間と空冷区間を設けた方法が記載されている。
ところで、連続鋳造機には、鋳造方向に沿って複数のロールが並設されている。各ロールは鋳片幅方向に2以上に分割され、分割位置に軸受箱が配置されている。軸受箱が配置された部分(以下「軸受箱部」と称する)では鋳片にロールが接触しないため、抜熱量が少ない。これにより、鋳片の軸受箱部とロール接触部とで温度差が生じる。
また、二次冷却水が鋳片表面に滞留し、鋳片と軸受箱との間を通過して下流に流れることがある。二次冷却水が流れた部分では過冷却されることにより、鋳片温度が低下する。これによっても鋳片の軸受箱部とロール接触部とで温度差が生じる。
このように軸受箱に起因して鋳片表面温度が鋳片幅方向にばらつくと、内部割れや表面割れ等が発生する。その結果、Ni含有鋼の品質が低下する。
なお、軸受箱に起因するものではないが、鋳片表面温度がばらつくことは従来より問題とされている。この問題を解決する方法が特許文献4,5で提案されている。
特許文献4では「100℃以上の温度の熱水を、絞り11を設置した枝管12を通すことによって、予め微細な水滴の熱水としてノズル5から噴射する」ことにより鋳片を均一に冷却している。
また、特許文献5では「放射温度計による鋳片幅方向温度差ΔT_width(℃)が150℃超える場合に、凝固シェル厚d(mm)とスラブ全厚D(mm)に対して少なくともd/D=0.1〜0.4を満たす冷却帯範囲で鋳片に対する冷却強度を調整し、前記鋳片幅方向温度差が150℃以内となる」ようにしている。
また、特許文献6,7には、軸受箱による鋳片表面温度のばらつきを防止する方法が記載されている。
特許文献6では二次冷却帯において「噴射した気体の少なくとも一部を、ロールチョックと鋳片との隙間を鋳造方向下流側から鋳造方向上流側に向かう気体流となし、該気体流によって、連続鋳造中の鋳片表面に溜まる、前記冷却水の残留水が、ロールチョックと鋳片との隙間を流下することを抑制しながら鋳片を二次冷却する」。
また、特許文献7では炭素濃度Cが0.03〜0.60[mass%]の炭素鋼を対象とし、「鋳型直下から最下流ロールまでの比水量が、0.5〜1.5[L/kg-steel]であって、鋳型直下のロールスタンドからメニスカス距離が15mの位置に配置されたロールスタンドまでの第2区間に鋳造方向に並設された複数のロールについて、鋳片幅方向位置において、前記ロールの全本数に対する、その幅方向位置に軸受箱が存在するロールの本数の比率を軸受箱率Rとし、前記第2区間の0≦R≦0.2である幅方向範囲における比水量をWA[L/kg-steel]とし、前記第2区間の0.2<R≦1である幅方向範囲における比水量をWB[L/kg-steel]、軸受箱率RをRBとすると、0.5≦WA≦1.5」であり、WB/WAが下記(1)式を満たすようにしている。
1.21RB+0.76≦WB/WA≦2.61RB+1.16 ・・・(1)
特開平10−166216号公報 特開平8−10919号公報 特開昭53−42133号公報 特開昭61−49760号公報 特開2013−86107号公報 特開2011−200893号公報 特開2013−119099号公報
しかし、特許文献4〜6には軸受箱が鋳片表面温度にどのように影響するかが記載されていない。また、軸受箱数との関係で冷却方法をどのように改善すべきかが考慮されていない。したがって、特許文献4〜6の方法では軸受箱に起因する鋳片表面温度のばらつきを解消できない。
また、特許文献4〜6は主に水冷却の改善方法であるが、Ni含有鋼では上述したように空気冷却を行うことがある。水冷却と空気冷却とは異なるため、特許文献4〜6の水冷条件をNi含有鋼の空気冷却に適用することはできない。
なお、特許文献7では軸受箱との関係で冷却水量比を規定しているが、水冷却と空気冷却とは異なるため、上記と同様に特許文献7の冷却水量比をNi含有鋼の空気冷却に適用できない。
また、特許文献7では炭素鋼を対象としているが、炭素鋼とNi含有鋼では性質が異なり、それによって冷却条件が異なることは広く知られている。したがって、特許文献7の炭素鋼の冷却条件をNi含有鋼の空気冷却に適用することはできない。
このように特許文献4〜7の方法ではNi含有鋼において軸受箱に起因する鋳片表面温度のばらつきを抑止できない。
そこで、本発明の目的は、Ni含有鋼において鋳片表面温度が鋳片幅方向にばらつくことを抑止可能な方法を提供することである。
本発明の連続鋳造方法は、鋳造方向に並設された複数のロールを備えた垂直曲げ型連続鋳造機を用いた方法であり、前記ロールは、鋳片幅方向に2以上に分割されているとともに、各分割位置に配置された軸受箱を有している。
Ni含有量が6〜10mass%のNi含有鋼を、鋳造速度Vcが0.7〜1.3m/minで鋳造する際に、
鋳型直下から曲げ完了位置までの比水量を0.09〜0.33l/kgとし、
曲げ完了位置から矯正完了位置までの区間において曲げ完了位置から矯正完了位置の上流側3mの位置までの範囲を少なくとも含む領域を、二次冷却水量がゼロであり且つ空気冷却する止水区間とする。
前記止水区間において、所定の幅方向位置における、鋳造方向に並設されたロールの全数に対する、軸受箱が存在するロールの数の比率を軸受箱率Rとするとき、
鋳片の幅両端から幅中央に向かって100mmの範囲を除く鋳片幅方向領域において、
曲げ完了位置における、軸受箱率R=0の幅方向位置での鋳片表面温度と軸受箱率R≧0.2の幅方向位置での鋳片表面温度とを測定し、これらの温度差Tmを算出し、
矯正開始位置における、軸受箱率R=0の幅方向位置での鋳片表面温度と軸受箱率R≧0.2の幅方向位置での鋳片表面温度との予測鋳片表面温度差Teを算出し、ここで、Teは下記(1)式から算出できる。
Te=Tm+L1×Vc+L2 ・・・(1)
ここで、L1=−97.6×R+16.9
2=181.5×R−20.7 である
前記止水区間では、
軸受箱率R≧0.2の幅方向位置であり且つTe>35を満たす幅方向位置で下記(2)式を満足する空気量Q1の空気冷却を実施し、
[K×(α1×Te2+β1×Te+γ1)]≦Q1≦[K×(α2×Te2+β2×Te+γ2)]・・・(2)
ここで、Q1:空気量(Nm3/(m2・Hr))
K :−1.82×{(d-0.5×h-1)/79.1}+2.82
d :冷却用ノズルの先端開口部の円相当径
h :ノズルから鋳片までの距離
R :止水区間の軸受箱率
α1:(1.65×R−0.10)×Vc+(−5.60×R+2.24)
β1:(−90.65×R+7.51)×Vc+(356.76×R−142.05)
γ1:(1112.26×R−94.20)×Vc+(−5607.51×R+2227.89)
α2:(1.64×R−0.10)×Vc+(−5.60×R+2.23)
β2:(−75.91×R+4.67)×Vc+(310.21×R−121.95)
γ2:(779.47×R−70.29)×Vc+(−4257.77×R+1678.94)
軸受箱率R≧0.2の幅方向位置であり且つTe≦35を満たす幅方向位置、及び軸受箱率R<0.2の幅方向位置で下記(3)式を満足する空気量Q2の空気冷却を実施する。
20Nm3/(m2・Hr)≦Q2≦40Nm3/(m2・Hr)・・・(3)
本発明では二次冷却帯に水冷区間と空冷区間(止水区間)とを設け、空冷区間(止水区間)の空気量Q1,Q2を「軸受箱率R」及び「予測鋳片表面温度差Te」を基に各幅方向位置で変えている。
「予測鋳片表面温度差Te」により鋳片表面温度がばらつくかを予測することができ、「予測鋳片表面温度差Te」が大きい場合は、鋳片表面温度のばらつきを小さくする「空気量Q2」で鋳片を空冷する。「空気量Q2」は、「鋳造速度Vc」、「軸受箱率R」及び「予測鋳片表面温度差Te」を基に算出したものである。
このような方法で鋳片を空気冷却することにより、Ni含有鋼において軸受箱に起因した鋳片表面温度のばらつきを抑止できる。これにより、表面割れや内部割れ等の発生を抑止できるため、鋳片を幅方向全体にわたって高品質にすることができる。
連続鋳造機の構成を示す模式断面図である。 止水区間を説明する模式図である。 止水区間及び止水区間後の冷却長さを説明する模式図である。 止水区間の一部(基準側)を示す模式図である。 止水区間の冷却方法のフローチャートである。 従来の鋳片表面温度と本発明の鋳片表面温度とを説明する図である。 鋳片表面温度の測定方法を説明する図である。 止水区間で空気冷却を実施する領域を説明する図である。 予測鋳片表面温度Teを求めるために行った実験結果を示す図である。 空気量を説明する図である。 ノズル詰り発生率と空気量との関係を示す図である。 空気量Q1を求めるために行った実験結果を示す図である。 空気量Q1の上限を求める実験結果を示す図である。 空気量Q1の上限を求める実験結果を示す図である。 空気量Q1の上限を求める実験結果を示す図である。 空気量Qの比率とd-0.5×h-1の比率との関係を示す図である。 空気量Q1の下限を求める実験結果を示す図である。 空気量Q1の下限を求める実験結果を示す図である。 空気量Q1の下限を求める実験結果を示す図である。 止水区間(基準側)の一例を示す模式図である。 空気量Qと予測鋳片表面温度Teとの関係を示す図(Vc=0.7m/min)である。 空気量Qと予測鋳片表面温度Teとの関係を示す図(Vc=1.0m/min)である。 空気量Qと予測鋳片表面温度Teとの関係を示す図(Vc=1.3m/min)である。 ノズル直径dの算出方法を説明する図である。 ノズルから鋳片までの距離hを示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
連続鋳造機100は、図1に示すように、垂直曲げ型連続鋳造機であって、タンディッシュ1と、タンディッシュ1の底部に取り付けられた浸漬ノズル2と、浸漬ノズル2の下部が配置された鋳型3と、鋳型3の直下から鋳造経路Pに沿って設けられた複数のロールを有するロール群4とを備えている。鋳型3には平面視において略矩形状の開口が形成されており、スラブ(例えば、厚み230〜280mm、幅1230〜2100mmの鋳片)を鋳造可能である。本実施形態では、Ni含有量が6〜10mass%であるNi含有鋼を鋳造する。
鋳造経路Pは、垂直方向に延在した垂直部11と、垂直部11から緩やかに湾曲した曲げ部12と、曲げ部12に連接した円弧部13と、円弧部13の下流に設けられた矯正部14と、矯正部14から水平方向に延在した水平部15とを有している。本実施形態では、鋳造経路Pの一方側(鋳片の下側に対応)を「基準側」と呼び、鋳造経路Pの他方側(鋳片の上側に対応)を「反基準側」と呼ぶ。また、鋳造経路Pに沿って鋳型3に近い側を上流側と呼び、鋳型3に遠い側を下流側と呼ぶ。
ロール群4は、鋳造方向に沿って並設された複数のロール対16を備えている。ロール対16は、鋳片を挟んで互いに反対側に配置された基準側ロール17と反基準側ロール18とを有している。基準側ロール17は鋳造経路Pの一方側(鋳片の下側に対応)に配置され、反基準側ロール18は鋳造経路Pの他方側(鋳片の上側に対応)に配置されている。ロール対16は、鋳造経路Pに沿って配置されたロールスタンドに設けられている。
鋳造方向に隣り合う基準側ロール17,17の間には冷却ノズル5が配置されている(図1参照)。また、鋳造方向に隣り合う反基準側ロール18,18の間にも冷却ノズル5が配置されている。本実施形態では冷却ノズル5が配置された区間を「二次冷却帯」と呼び、冷却ノズル5から噴霧される冷却水を「二次冷却水」と呼ぶ。
タンディッシュ1内の溶鋼6を、浸漬ノズル2を介して鋳型3内に注入すると、溶鋼6は鋳型3内で冷却され(一次冷却)、凝固シェルを形成しながら下方へ引き抜かれる。そして、内部まで凝固することにより鋳片が鋳造される。
鋳造速度Vcは0.7〜1.3m/minとする。鋳造速度Vcが0.7m/min未満と遅い場合は、冷却時間が長くなるため、鋳片に負荷がかかる矯正部14通過時に鋳片表面温度が大きく低下する。これにより表面割れが発生する。一方、鋳造速度が1.3m/minを超える場合、凝固シェル厚みが薄いため、鋳片がバルジングしやすい。これにより内部割れが発生する。
ところで、鋳片に曲げや矯正等の負荷がかかると表面割れや内部割れ等が発生しやすい。特に鋳片温度が脆化温度域にあるときに鋳片に負荷がかかると、割れがより発生しやすい。そこで鋳片に負荷がかかる区間では、鋳片温度を脆化温度域から外す必要がある。Ni含有鋼では脆化温度域が低温側に拡大するため、脆化温度域を回避するには鋳片温度を高温側にするとよい。また、二次冷却水を噴霧している場合、二次冷却水が鋳片への溜まり水や垂れ水となって、鋳片表面温度が低下する原因となる。そこで、本実施形態では、二次冷却帯に二次冷却水をゼロとする「止水区間」を設ける(図1参照)。この区間で鋳片を緩冷することにより、鋳片温度の低下を抑えて脆化温度域を回避する。また、溜まり水や垂れ水が生じるのを抑止する。
本実施形態では二次冷却水をゼロとする区間を「止水区間」と呼ぶのに対し、鋳片に二次冷却水を噴霧する区間を「水冷区間」と呼ぶ(図1参照)。以下に「水冷区間」及び「止水区間」について説明する。
〈水冷区間〉
鋳型3直下から曲げ部12完了位置までを「水冷区間」とする。この区間では比水量(二次冷却水量)を0.09〜0.33l/kg(l/kg―steel)とする。「比水量」は鋳片単位重量当たりに使用する冷却水量であり、下記式で表される。
比水量が0.09l/kg未満では、冷却不足からバルジングが起こりやすい。これにより内部割れが発生する。また、凝固シェルが薄いためブレークアウト(シェルの破断)が発生しやすい。一方、比水量が0.33l/kgを超えると、曲げ部12で鋳片表面温度が大きく低下し、表面割れが発生する。
〈止水区間〉
本実施形態では、曲げ部12完了位置から矯正部14完了位置まで(円弧部13及び矯正部14)を「止水区間」とする。ここで、「曲げ部12完了位置」は「円弧部13開始位置」でもある。この区間では二次冷却水量をゼロとし、鋳片に空気を噴霧する。
なお、水平部15は水冷区間としてもよく、止水区間としてもよい。水平部15では鋳片に負荷がかからないとともに鋳片内部がほぼ凝固しているため、割れが発生しにくいためである。また、止水区間に垂直部11及び曲げ部12を含めないようにする。垂直部11及び曲げ部12を止水区間とすると、冷却不足からバルジングによる内部割れやブレークアウトが発生しやすいためである。
なお、本実施形態では「止水区間」を「曲げ部12完了位置から矯正部14完了位置まで」としているが、「止水区間」は、『曲げ部12完了位置から矯正部14完了位置において「曲げ部12完了位置から矯正部14完了位置の上流側3mの位置Gまでの範囲S」を少なくとも含む領域』であるとよい(図2A参照)。「止水区間」として少なくとも範囲Sを確保できれば、鋳片を十分に緩冷することが可能であり、また、鋳片への溜まり水や上流側からの垂れ水による表面温度の低下を抑制できる。
上記から「止水区間の終点」は「矯正部14完了位置から上流に向かって3mの位置Gまでの範囲R」内であればどの位置でもよい。「止水区間の終点」を矯正部14完了位置より上流にした場合(図2B参照)、止水区間の下流、つまり「止水区間の終点から矯正部14完了位置までの範囲T」では鋳片に二次冷却水を噴霧する。
本発明では「範囲Tの鋳造方向長さ」を「止水区間後の冷却長さ」と呼ぶ。「止水区間後の冷却長さ」は3m以内である。「止水区間後の冷却長さ」が矯正部14完了位置から上流側3mを超えると、二次冷却水を噴霧する区間が長くなるため、鋳片温度が低下しやすい。これにより表面割れが発生する。
本実施形態では、図1に示すように「止水区間の終点」が「矯正部14完了位置」であるため、「止水区間後の冷却長さ」がゼロである。
ところで、止水区間には、図1に示すように基準側ロール17及び反基準側ロール18が鋳造方向に並設されている。基準側ロール17及び反基準側ロール18は鋳片幅方向に2以上に分割され、分割位置に軸受箱が配置されている。図3には、本実施形態の止水区間の一部(基準側)を示し、上流から下流に向かって基準側ロール31,32,・・・36,41,42,・・・46と付している。なお、各基準側ロールの両端にも軸受箱が配置されているが、図3ではこれらを省略している。また、鋳造方向に隣り合う2本の基準側ロール間にはノズルが配置されているが、図3ではノズルを省略している。
図3に示すように、基準側ロール群20は、ロール群30及びロール群40を有している。ロール群30は2分割された6本の基準側ロール31,32,33,34,35,36から構成されている。また、ロール群40は3分割された6本の基準側ロール41,42,43,44,45,46から構成されている。
〈ロール群30〉
ロール31は鋳片幅方向に並んだ2つのロール部31A,31Bを有している。2つのロール部31A,31Bの間には軸受箱が配置されている。軸受箱はロール部31A,31Bを回転自在に支持している。本実施形態では、軸受箱が配置された部分を軸受箱部31aと呼ぶ。
ロール32は2つのロール部32A,32Bを有し、2つのロール部32A,32Bの間には軸受箱が配置された軸受箱部32aが存在する。
軸受箱部31aと軸受箱部32aとは異なる幅方向範囲に配置され、いずれも鋳片の幅方向に重複しない。
ロール33,35はロール31と同様な構成であり、ロール34,36はロール32と同様な構成である。
ロール群30では、軸受箱部31a,33a,35aが同じ幅方向範囲に配置され、軸受箱部32a,34a,36aが同じ幅方向範囲に配置され、これらの軸受箱部が千鳥状に配置されている。
〈ロール群40〉
ロール41は3つのロール部41A,41B,41Cを有している。ロール部41Aとロール部41Bの間には軸受箱が配置された軸受箱部41aが存在し、ロール部41Bとロール部41Cの間には軸受箱が配置された軸受箱部41bが存在する。
ロール42は3つのロール部42A,42B,42Cを有している。隣り合う2つのロール部42Aとロール部42Bの間には軸受箱部42aが存在し、隣り合う2つのロール部42Bとロール部42Cの間には軸受箱部42bが存在する。
軸受箱部41a,41b,42a,42bはそれぞれ異なる幅方向範囲に配置され、鋳片の幅方向に重複しない。
ロール43,45はロール41と同様な構成であり、ロール44,46はロール42と同様な構成である。
ロール群40では、軸受箱部41a,43a,45aが同じ幅方向範囲に配置され、軸受箱部42a,44a,46aが同じ幅方向範囲に配置され、軸受箱部41b,43b,45bが同じ幅方向範囲に配置され、軸受箱部42b,44b,46bが同じ幅方向範囲に配置されている。
また、ロール群30の軸受箱部31a,33a,35aとロール群40の軸受箱部41b,43b,45bとが同じ幅方向範囲に配置され、ロール群30の軸受箱部32a,34a,36aとロール群40の軸受箱部42a,44a,46aとが同じ幅方向範囲に配置されている。
本実施形態では、鋳片の所定の幅方向位置において、鋳造方向に並設された全ロール数に対する、その幅方向位置に軸受箱が存在するロールの数の比率を「軸受箱率R」とする。所定の幅方向位置において軸受箱部が存在しない場合、その幅方向位置ではR=0である。一方、所定の幅方向位置において軸受箱だけが存在する場合、その幅方向位置ではR=1である。
図3では、
・軸受箱部41a,43a,45aに対応する鋳片幅方向範囲を「wA」とし、
・軸受箱部に対応する鋳片幅方向範囲32a,34a,36a,42a,44a,46aを「wB」とし、
・軸受箱部に対応する鋳片幅方向範囲31a,33a,35a,41b,43b,45bを「wC」とし、
・軸受箱部42b,44b,46bに対応する鋳片幅方向範囲を「wD」としている。
図3に示す基準側ロール群20では
1)幅方向範囲wAの軸受箱率Rが(3/12)=0.25であり、
2)幅方向範囲wBの軸受箱率Rが(6/12)=0.5であり、
3)幅方向範囲wCの軸受箱率Rが(6/12)=0.5であり、
4)幅方向範囲wDの軸受箱率Rが(3/12)=0.25であり、
5)幅方向範囲wA,wB,wC,wDを除く幅方向範囲では、軸受箱率Rが0である。
鋳片の軸受箱部ではロールと接触しないため、抜熱量が少ない。したがって、鋳片の軸受箱部はロール接触部(ロール部と接触する部分)より高温となる。その一方で、鋳片の軸受箱部は鋳片表面に滞留した二次冷却水の通り道となり、二次冷却水が通過した部分では過冷却され低温となる。このような理由から鋳片の「軸受箱部」と「ロール接触部」とで温度差が生じる結果、鋳片表面温度が鋳片幅方向にばらつく。これにより表面割れ、内部割れ、皮下割れ等の欠陥が生じ、Ni含有鋼の品質が低下する。
軸受箱率Rが大きくなるにつれて鋳片表面温度のばらつきは大きくなる傾向があることから、本発明者らは「止水区間の軸受箱率R」と「鋳片表面温度のばらつき」と「割れ発生」との関係を調べた。その結果、軸受箱率R<0.2では鋳片表面温度のばらつきが小さいため、割れが発生しにくいが、軸受箱率R≧0.2では鋳片表面温度のばらつきが大きいため、割れが発生しやすいという知見を得た。また、軸受箱率R≧0.2で割れが発生するかは、「矯正部14開始位置での鋳片表面温度差」が35℃を超えるかで判断できるという知見を得た。ここで「鋳片表面温度差」とはR≧0.2とR=0との鋳片表面温度差である。
そこで、本発明では、「止水区間の軸受箱率R」と「矯正部14開始位置での鋳片表面温度差」を基に各幅方向位置で空気量を変える。これにより鋳片表面温度が鋳片幅方向にばらつくことを抑止し、割れの発生を抑える。
具体的には、止水区間の各幅方向位置の軸受箱率Rを調べ、R<0.2の幅方向位置では(図4のS1:YES)、R=0(軸受箱が存在しない位置)との温度差が小さいと考えられるため、その位置をR=0と同じ空気量Q2(20Nm3/(m2・Hr)≦空気量Q2≦40Nm3/(m2・Hr))で冷却する(S2)。
一方、R≧0.2の幅方向位置では(S1:NO)、R=0との鋳片表面温度差が大きくなる可能性がある。そこで、鋳片表面温度差が大きくなるかを予測する。
先ず、止水区間の始点である曲げ部12完了位置において「R≧0.2の位置の鋳片表面温度TR0.2」と「R=0の位置の鋳片表面温度TR=0」とを測定し(S3)、これらの温度差Tm=|TR0.2−TR=0|を算出する(S4)。得られた「温度差Tm」から「鋳造速度Vc」及び「軸受箱率R」を用いて「矯正部14開始位置での予測鋳片表面温度差Te」を算出する(S5)。これが鋳片表面温度差の予測値である。
予測鋳片表面温度差Te≦35℃である場合(S6:YES)、その位置とR=0との温度差は小さくなると考えられるため、その位置をR=0と同じ空気量Q2(20Nm3/(m2・Hr)≦空気量Q2≦40Nm3/(m2・Hr))で冷却する(S2)。一方、予測鋳片表面温度差Te>35℃である場合(S6:NO)、その位置とR=0との温度差が大きくなると考えられるため、別の空気量Q1で冷却する(S7)。空気量Q1は、「予測鋳片表面温度差Te」と、鋳片の冷却に影響する「鋳造速度Vc」及び「軸受箱率R」とを用いて算出した空気量であり、R=0との温度差を小さくすることが可能な空気量である。上記方法を止水区間の全ての幅方向位置で実施する。
従来は「軸受箱率R」及び「予測鋳片表面温度差Te」を考慮することなく鋳片を幅方向に均一に冷却していたため、図5の左図に示すように鋳片表面温度が鋳片幅方向に大きくばらついた。しかし、上記方法を実施すると、鋳片表面温度のばらつきを小さくすることができる(図5の右図参照)。これにより表面割れ及び皮下割れの発生を抑止でき、鋳片を幅方向全体にわたって高品質にすることができる。
なお、図3に示すように、軸受箱率Rが異なる幅方向範囲wA,wB,wC,wD及びR=0の範囲が鋳片幅方向に並んでいる。幅方向範囲wA内では、どの幅方向位置でも、鋳造条件及び冷却条件が同様であるため鋳片表面温度が略同じと考えられる。そこで、幅方向範囲wAの任意の幅方向位置で空気量を決定すれば、その空気量を幅方向範囲wAの全体に実施するとよい。これにより、幅方向範囲wAの全ての幅方向位置で上記効果が得られる。幅方向範囲wB,wC,wD及びR=0の範囲でも同様である。
また、曲げ部12完了位置での鋳片表面温度の測定には放射温度計等を用いることができる(図6参照)。
さらに、曲げ部12完了位置での鋳片表面温度差Tmの算出には、鋳片幅方向に隣接する2つの幅方向範囲の温度を用いることが好ましく、鋳片幅方向に隣接する2つの位置の温度を用いるとより好ましい。表面割れ、内部割れ、皮下割れ等は隣り合う部位との温度差によって生じるためである。
例えば、図3の幅方向範囲wC(R=0.5)を冷却する場合、図6に示すように、曲げ部12完了位置において、「幅方向範囲wCの任意の幅方向位置m1」及び「幅方向範囲wCに隣接する幅方向範囲wE(R=0)の任意の幅方向位置m2」で鋳片表面温度を測定し(図4のS3)、これらの温度差Tmを算出する(図4のS4)。そして、温度差Tmから「予測鋳片表面温度差Te」を算出する(図4のS5)。「予測鋳片表面温度差Te」は、図6に示すように、矯正部14開始位置において幅方向位置m1,m2に対応する位置e1と位置e2との予測温度差である。「予測鋳片表面温度差Te」から空気量を決定し、幅方向範囲wCを冷却する。
また、図7に示すように、鋳片の幅方向両端から100mmの領域U1,U2は鋳片の広面側(長辺側)及び狭面側(短辺側)から冷却されるのに対し、領域U1,U2より中央側の領域(鋳片幅方向領域)U3は主に鋳片の広面側(長辺側)だけから冷却される。このため領域U1,U2では領域U3より鋳片温度が大きく低下しやすい。そこで、領域U1,U2には上記方法を実施せず、空気量をゼロとすることが好ましい。
なお、上記では止水区間の基準側(鋳片の下側に対応)について説明したが、反基準側についても同様な方法を実施する。本実施形態では、基準側ロールと反基準側ロールの構成が同一であるため、反基準側でも基準側と同様な冷却方法を実施する。
次に、図4に示す「予測鋳片表面温度差Te」の算出方法と、「空気量Q1」及び「空気量Q2」について説明する。
(予測鋳片表面温度差Te)
図1の曲げ部12完了位置から矯正部14開始位置までの区間において、二次冷却量及び空気量をゼロとした場合でも「鋳造速度Vc」及び「軸受箱率R」の影響により「鋳片表面温度差」が変化することがある。そこで、「鋳片表面温度差」が「鋳造速度Vc」及び「軸受箱率R」によって受ける影響を調べるため、以下の実験を行った。ここで、「鋳片表面温度差」とは、「軸受箱率R≧0.2の鋳片表面温度」と「軸受箱率R=0の鋳片表面温度」との差である。
曲げ部完了位置から矯正部開始位置までの区間において、二次冷却水量及び空気量をゼロとした。本実験では、曲げ部完了位置から矯正部開始位置までの区間の軸受箱率Rが0.43,0.32,0.23の3つ幅方向位置を対象とした。鋳造速度Vcは0.7m/min,1.0m/min,1.3m/minの3つの条件とした。
曲げ完了位置において、R=0.43,R=0.32,R=0.23の位置の「鋳片表面温度(TR=0.43,TR=0.32,TR=0.23)」と、各位置に隣接するR=0の「鋳表面片温度(TR=0)」とを測定し、これらの温度差(「曲げ出側温度差Tm」)を算出した。
また、矯正部開始位置において、R=0.43,R=0.32,R=0.23の位置の「鋳片表面温度(TR=0.43,TR=0.32,TR=0.23)」と、各位置に隣接するR=0の「鋳片表面温度(TR=0)」とを測定し、これらの温度差(「矯正入側温度差T」)を算出した。
ここで、曲げ完了位置での測定位置と矯正部開始位置での測定位置とは鋳片幅方向について同じ位置である。
上記2つの温度差(矯正入側温度差T−曲げ出側温度差Tm)を算出し、「矯正入側温度差T−曲げ出側温度差Tm」と「鋳造速度Vc」との関係を図8(上図)に示す。
図8に示すように各軸受箱率で一次近似線を引くことができた。各近似線は軸受箱率Rによって異なることから、各近似線の近似式を求め(T−Tm=a×Vc+b、ここでaは傾き、bは切片である)、(1)「近似式の傾きa」と「軸受箱率R」との関係と、(2)「近似式の切片b」と「軸受箱率R」との関係を調べた。図8の中央図及び下図にはこれらを示している。(1)及び(2)のそれぞれで近似線を引くと、下記の近似式が得られた。
(1)傾きa=−97.6×軸受箱率R+16.9
(2)切片b=181.5×軸受箱率R−20.7
「傾きa」及び「切片b」を上記近似式「T−Tm=a×Vc+b」に代入すると、下記式が得られた。
T−Tm=(−97.6×R+16.9)×Vc+(181.5×R−20.7)
この式から「矯正入側温度差T」は以下の式で表される。
T=Tm+(−97.6×R+16.9)×Vc+(181.5×R−20.7)
上記式から「曲げ出側温度差Tm」(曲げ部完了位置での温度差)、「軸受箱率R」及び「鋳造速度Vc」がわかると、「矯正入側温度差T」(矯正部開始位置での温度差)を算出できる。そうすると、「矯正部開始位置での予測鋳片表面温度差Te」は以下の式で算出される。
Te=Tm+(−97.6×R+16.9)×Vc+(181.5×R−20.7)
Te=Tm+L1×Vc+L2 ・・・(1)
ここで、Te:矯正部開始位置での予測鋳片表面温度差
Tm:曲げ部完了位置での鋳片表面温度差
1=−97.6×R+16.9
2=181.5×R−20.7 である。
また、「鋳片表面温度差」とは『「軸受箱率R≧0.2の鋳片表面温度」と「軸受箱率R=0の鋳片表面温度」との差』である。
(1)式の「軸受箱率R」は「曲げ部完了位置から矯正部開始位置までの区間の軸受箱率」であるが、この区間の二次冷却水量は0であるため、(1)式のRを「止水区間の軸受箱率R」とする。
次に、空気量について説明する。
(空気量Q2 (図4のS2))
「R<0.2の幅方向位置」及び「R≧0.2の幅方向位置であり且つ予測鋳片表面温度差Te≦35の位置」では、空気量Q2を20Nm3/(m2・Hr)≦空気量Q2≦40Nm3/(m2・Hr)とする。これはR=0の空気量と同じ空気量である。「空気量」は以下の式で表される。
例えば、図9に示すように、区間Zにおいて幅方向領域Yに2つのノズル151,152が配置されている場合、区間Zにおける幅方向領域Yの空気量QYは以下の式で表される。
ここで、W:幅方向領域Yの鋳片幅方向長さ(m)
L:区間Zの鋳造方向長さ(m)
A:ノズル151から噴霧される単位時間当たりの平均空気量(Nm3/Hr)
B:ノズル152から噴霧される単位時間当たりの平均空気量(Nm3/Hr)
である。
空気量Q2が40Nm3/(m2・Hr)を超えると、鋳片温度(ロール接触部の温度)が低下するため、軸受箱部との温度差を十分に小さくすることができない。このため表面割れが発生する。一方、空気量が少ない場合、空気中の不純物によってノズルが詰りやすい。空気量とノズル詰り発生率との関係を調べたところ、図10に示すように空気量が20Nm3/(m2・Hr)以上ではノズル詰り発生率がゼロに近いが、20Nm3/(m2・Hr)未満ではノズル詰り発生率が急激に増加した。そこで、空気量Q2の下限を20Nm3/(m2・Hr)とする。
(空気量Q1(図4のS7) )
「R≧0.2の幅方向位置であり且つ予測鋳片表面温度差Te>35である位置」では「R=0の位置」との鋳片表面温度差が大きくなるため、割れが発生しやすい。そこで、上記位置でも割れの発生を抑止できる空気量Qを調べるため、以下の実験を行った。
曲げ部完了位置から矯正部完了位置までを止水区間とし、「予測鋳片表面温度差Te」と「空気量」を変えたときの割れの発生を調べた。ここでは、Te>35℃を対象としている。また、本実験では、曲げ部完了位置から矯正部完了位置までの区間の軸受箱率Rが0.43,0.32,0.23の3つ幅方向位置を対象とした。鋳造速度Vcは0.7m/min,1.0m/min,1.3m/minの3つの条件とした。
図11には「空気量Qと予測鋳片表面温度差Teとの関係」を示している。「〇」は割れ無しであり、「×」は割れ有りであり、各図で『「割れ無し」の上限となる近似線(上限近似線)』と『「割れ無し」の下限となる近似線(下限近似線)』を引いた。図11に示す実験は後述する表2〜表7の実験に対応している。
〈空気量Qの上限〉
図12には、「割れ無し」の上限近似線を各軸受箱率R(R=0.43,R=0.32,R=0.23)に分けて図示している。3つの各図(R=0.43,R=0.32,R=0.23)には3種類の鋳造速度Vc(Vc=0.7m/min,Vc=1.0m/min,Vc=1.3m/min)の上限近似線を示している。
上限近似線は鋳造速度Vcによって異なるため、各近似線の2次近似式(Q=α2×Te2+β2×Te+γ2)を算出し、2次近似式の各係数(α222)と鋳造速度Vcとの関係を調べた。図13には「(I)係数α2と鋳造速度Vcとの関係」、「(II)係数β2と鋳造速度Vcとの関係」及び「(III)係数γ2と鋳造速度Vcとの関係」を示している。各軸受箱率(R=0.43,R=0.32,R=0.23)で一次近似線を引くことができ、下記の一次近似式が得られた。
(I)α2=a×Vc+b
(II)β2=c×Vc+d
(III)γ2=e×Vc+f
上記(I)〜(III)式は各軸受箱率(R=0.43,R=0.32,R=0.23)によって異なるため、(I)〜(III)式の各係数(a,b,c,d,e,f)と軸受箱率Rとの関係を調べた。図14には「(i)係数aと軸受箱率Rとの関係」、「(ii)係数bと軸受箱率Rとの関係」、「(iii)係数cと軸受箱率Rとの関係」、「(iv)係数dと軸受箱率Rとの関係」、「(v)係数eと軸受箱率Rとの関係」及び「(vi)係数fと軸受箱率Rとの関係」を示している。図14において各図で近似線を引くと、以下の一次近似式が得られた。
(i)a=h×R+i=1.64×R−0.10
(ii)b=j×R+k=−5.60×R+2.23
(iii)c=l×R+m=−75.91×R+4.67
(iv)d=n×R+o=310.21×R−121.95
(v)e=p×R+q=779.47×R−70.29
(vi)f=r×R+s=−4257.77×R+1678.94
上記(i)〜(vi)式を(I)〜(III)式へ代入し、 (I)〜(III)式を「割れ無し」の上限近似式Q=α2×Te2+β2×Te+γ2に代入すると、以下の式が得られた。
Q=α2×Te2+β2×Te+γ2 ・・・(A1)
ここで、α2:(1.64×R−0.10)×Vc+(−5.60×R+2.23)
β2:(−75.91×R+4.67)×Vc+(310.21×R−121.95)
γ2:(779.47×R−70.29)×Vc+(−4257.77×R+1678.94) である。
(A1)式の「軸受箱率R」は「曲げ部完了位置から矯正部完了位置までの区間の軸受箱率」であるが、この区間の二次冷却水量は0であるため、(A1)式のRを「止水区間の軸受箱率R」とする。
上記から空気量Q≦α2×Te2+β2×Te+γ2のとき、割れが発生しないと考えられる。しかし、上記実験はある1種類のノズルで行ったものであり、異なる種類のノズルを用いた場合、「ノズル直径d」及び「ノズルから鋳片表面までの距離h」が変わることにより、割れが発生しない空気量Qも変わる。そこで、本発明者らは、「ノズル直径d」及び「ノズルから鋳片表面までの距離h」が「空気量Q」(割れが発生しない空気量Q)にどのような影響を与えるかを調べた。
「ノズル直径d」及び「ノズルから鋳片表面までの距離h」を変化させた場合、一般的に熱伝達係数が変化することが知られている。円状噴流の場合に用いられる熱伝達係数の算出式は以下の通りである。(出典:鋼材の強制冷却 日本鉄鋼協会(1978年発行))
α=13×(λν-0.5)×(d-0.5×h-1)×(ve0.5)・・・(a)
ここで、α:熱伝達係数
λ:気体の熱伝導率
ν:気体の動粘性係数
d:ノズル径
h:冷却体とノズルの距離
ve:出口流速 である。
A=13×(λν-0.5)×(ve0.5)とすると、(a)式は以下の式で表される。
α=A×(d-0.5×h-1)・・・(b)
(b)式から熱伝達係数αは(d-0.5×h-1)に比例することがわかった。
そこで、下記表1に示す実験において「d-0.5×h-1」を算出した。表1のNo.1〜No.3は、異なる3種類のノズルで空気冷却を実施し、割れが発生しなかったものである。No.1〜No.3では予測鋳片表面温度差Teが同じであるが、空気量Qが異なっている。
No.1を基準とし、
No.1のd-0.5×h-1=79.1→「1」と定義し、
No.1のQ=406→「1」と定義して、
No.2及びNo.3のNo.1に対する比率「(d-0.5×h-1)/79.1)」及び「Q/406」を算出した。表1では上記比率を「d-0.5×h-1の比率」及び「Qの比率」とし、これらの関係を図15に示している。
図15ではほぼ直線近似でき、下記の近似式が得られた。
Qの比率=−1.82×(d-0.5×h-1の比率)+2.82
Qの比率=Q/406であるため、上記式は下記式で表される。
Q/406=−1.82×(d-0.5×h-1/79.1)+2.82
Q=[−1.82×(d-0.5×h-1/79.1)+2.82]×406
Q=K×406・・・(c)
ここで、K=−1.82×{(d-0.5*h-1)/79.1}+2.82である。
(c)式から基準となる流量(No.1の流量=406Nm3/(m2・Hr))にKを掛け合わせることで、「ノズル直径d」及び「ノズルから鋳片表面までの距離h」が異なる空気量Qを求めることができる。そうすると、Kは「ノズル直径d」及び「ノズルから鋳片表面までの距離h」を補正する流量補正係数であり、上記(A1)式にも流量補正係数Kを掛け合わせれば、「ノズル直径d」及び「ノズルから鋳片表面までの距離h」を補正した空気量の上限が得られる。
以上から、空気量の上限は下記式で表される。
Q=K×(α2×Te2+β2×Te+γ2) ・・・(A)
ここで、K:−1.82×{(d-0.5*h-1)/79.1}+2.82
α2:(1.64×R−0.10)×Vc+(−5.60×R+2.23)
β2:(−75.91×R+4.67)×Vc+(310.21×R−121.95)
γ2:(779.47×R−70.29)×Vc+(−4257.77×R+1678.94)
R :止水区間の軸受箱率 である。
空気量Qが「K×(α2×Te2+β2×Te+γ2)Nm3/(m2・Hr)」を超えると、鋳片の熱振幅が鋳造方向に大きくなるため皮下割れが発生する。
〈空気量Qの下限〉
空気量Qの上限と同様な方法で空気量Qの下限を求める。図16には、図11の「割れ無し」の下限近似線を示している。図16では各軸受箱率R(R=0.43,R=0.32,R=0.23)に分けて図示している。3つの各図(R=0.43,R=0.32,R=0.23)には3種類の鋳造速度Vc(Vc=0.7m/min,Vc=1.0m/min,Vc=1.3m/min)の下限近似線を示している。
下限近似線は鋳造速度Vcによって異なるため、各近似線の2次近似式(Q=α1×Te2+β1×Te+γ1)を算出し、各係数(α111)と鋳造速度Vcとの関係を調べた。図17には「(VI)係数α1と鋳造速度Vcとの関係」、「(V)係数β1と鋳造速度Vcとの関係」及び「(IV)係数γ1と鋳造速度Vcとの関係」を示している。各軸受箱率(R=0.43,R=0.32,R=0.23)で一次近似線を引くことができた。これらの一次近似式を下記に示す。
(VI)α1=a×Vc+b
(V)β1=c×Vc+d
(IV)γ1=e×Vc+f
上記(VI)〜(IV)式は各軸受箱率(R=0.43,R=0.32,R=0.23)によって異なるため、(VI)〜(IV)式の各係数(a,b,c,d,e,f)と軸受箱率Rとの関係を調べた。図18には「(vii)係数aと軸受箱率Rとの関係」、「(viii)係数bと軸受箱率Rとの関係」、「(ix)係数cと軸受箱率Rとの関係」、「(x)係数dと軸受箱率Rとの関係」、「(xi)係数eと軸受箱率Rとの関係」及び「(xii)係数fと軸受箱率Rとの関係」を示している。図18において各図で近似線を引くと、以下の一次近似式が得られた。
(vii)a=h×R+i=1.65×R−0.10
(viii)b=j×R+k=−5.60×R+2.24
(ix)c=l×R+m=−90.65×R+7.51
(x)d=n×R+o=356.76×R−142.05
(xi)e=p×R+q=1112.26×R−94.20
(xii)f=r×R+s=−5607.51×R+2227.89
上記(vii)〜(xii)式を(VI)〜(IV)式へ代入し、(VI)〜(IV)式を「割れ無し」の下限近似式Q=α1×Te2+β1×Te+γ1に代入すると、以下の式が得られた。
Q=α1×Te2+β1×Te+γ1 ・・・(B1)
ここで、α1:(1.65×R−0.10)×Vc+(−5.60×R+2.24)
β1:(−90.65×R+7.51)×Vc+(356.76×R−142.05)
γ1:(1112.26×R−94.20)×Vc+(−5607.51×R+2227.89) である。
(B1)式の「軸受箱率R」は「曲げ部完了位置から矯正部完了位置までの区間の軸受箱率」であるが、この区間の二次冷却水量は0であるため、(B1)式では「止水区間の軸受箱率R」とする。
なお、図11に示す実験は1種類のノズルで行ったものであるため、上記(B1)式にも流量補正係数Kを掛け合わせることで、「ノズル直径d」及び「ノズルから鋳片表面までの距離h」を補正した空気量の下限が得られる(下記(B)式参照)。
Q=K×(α1×Te2+β1×Te+γ1)・・・(B)
ここで、K=−1.82×{(d-0.5*h-1)/79.1}+2.82
α1:(1.65×R−0.10)×Vc+(−5.60×R+2.24)
β1:(−90.65×R+7.51)×Vc+(356.76×R−142.05)
γ1:(1112.26×R−94.20)×Vc+(−5607.51×R+2227.89)
R :止水区間の軸受箱率 である。
空気量Qが「K×(α1×Te2+β1×Te+γ1)Nm3/(m2・Hr)」未満であると、R=0との鋳片表面温度差を十分に小さくすることができないため表面割れ等が発生する。
以上から、R≧0.2の幅方向位置であり且つ予測鋳片表面温度差Te>35の位置では、下記の空気量Q1で空気冷却する。
[K×(α1×Te2+β1×Te+γ1)]≦Q1≦[K×(α2×Te2+β2×Te+γ2)]・・・(2)
ここで、Q1:空気量(Nm3/(m2・Hr))
K:−1.82×{(d-0.5×h-1)/79.1}+2.82
d:冷却用ノズルの先端開口部の円相当径
h:ノズルから鋳片までの距離
R:止水区間の軸受箱率
α1:(1.65×R−0.10)×Vc+(−5.60×R+2.24)
β1:(−90.65×R+7.51)×Vc+(356.76×R−142.05)
γ1:(1112.26×R−94.20)×Vc+(−5607.51×R+2227.89)
α2:(1.64×R−0.10)×Vc+(−5.60×R+2.23)
β2:(−75.91×R+4.67)×Vc+(310.21×R−121.95)
γ2:(779.47×R−70.29)×Vc+(−4257.77×R+1678.94)
上記空気量Q1で冷却することにより、R=0との鋳片表面温度差を小さくすることできる。これにより割れの発生を抑止できる。
次に、図19に示す止水区間(基準側)で本発明を実施する場合を説明する。図19は止水区間の一例である。
幅方向範囲w1〜w9において、
幅方向範囲w1,w3,w5,w7,w9では軸受箱率R=0であり、
幅方向範囲w2では軸受箱率R=0.23であり、
幅方向範囲w4,w6では軸受箱率R=0.43であり、
幅方向範囲w8では軸受箱率R=0.32 である。
なお、鋳片の幅両端から100mmの「領域U1」及び「領域U2」には本発明の方法を実施しないため、これらの領域を除いた「領域U3」の軸受箱率Rを示している。
鋳造方向に隣り合う2本の基準側ロール間には複数のノズルが所定の間隔で配置されている。図19では、鋳造方向に軸受箱部と隣合うノズルに色を付している。例えば、基準側ロール141と基準側ロール142との間には、7個のノズル61,62,63,64,65,66,67が鋳片幅方向に並んでいる。このうちノズル63は、基準側ロール142の軸受箱部142aと隣り合うため色を付している。また、ノズル65は、基準側ロール141の軸受箱部141aと隣り合うため色を付している。
軸受箱部と鋳造方向に隣合うノズル(ノズル63,65,72,83,92等)には強冷却ノズルを用いている。強冷却ノズルは他のノズルと独立した配管系統であり、流量制御を単独で調整することができる。
(R<0.2の幅方向範囲)
幅方向範囲w1,w3,w5,w7,w9では軸受箱率R=0(<0.2)であるため(図4のS1:Yes)、空気量を20Nm3/(m2・Hr)≦空気量Q1≦40Nm3/(m2・Hr)で冷却する(図4のS2)。空気量の調整は、幅方向範囲w1,w3,w5,w7,w9に配置されたノズルの噴霧量等を調整することにより行う。例えば、幅方向範囲w1の場合、幅方向範囲w1に配置されたノズル61,81,111等の噴霧量を調整する。また、幅方向範囲w3の場合、幅方向範囲w3に配置されたノズル62,82,112等の噴霧量を調整する。
(R≧0.2の幅方向範囲)
幅方向範囲w2,w4,w6,w8では軸受箱率R≧0.2であるため、R=0の位置との鋳片表面温度差が大きくなる可能性がある。そこでR=0との鋳片表面温度差を予測する。
先ず、幅方向範囲w2について調べる。
曲げ部完了位置において、「幅方向範囲w2」内の任意の位置p2で「鋳片表面温度Tp2:R0.2」を測定する。また、曲げ部完了位置において、「幅方向範囲w2に隣接する軸受箱率R=0の幅方向範囲」(例えば、幅方向範囲w3)の任意の位置(p3)で「鋳片表面温度Tp3:R=0」を測定する(図4のS3)。そして、これらの温度差Tm2を算出する(図4のS4)。鋳片表面温度差Tm2は以下の式で表される。
曲げ部完了位置での鋳片表面温度差Tm2=|Tp2:R0.2−Tp3:R=0|
なお、「幅方向範囲w2に隣接する軸受箱率R=0の幅方向範囲」は、「幅方向範囲w1」でもよい。
そして、鋳片表面温度差Tm2を用いて上記(1)式から「矯正部開始位置での予測鋳片表面温度差Te2」を算出する(図4のS5)。予測鋳片表面温度差Te2は以下の式で表される。
Te2=Tm2+L1×Vc+L2
ここで、L1=−97.6×R+16.9
2=181.5×R−20.7
Rは止水区間の軸受箱率(R≧0.2) である。
「予測鋳片表面温度差Te2」は、矯正部開始位置において、曲げ部完了位置での測定位置(p2,p3)と鋳片幅方向に対応する位置p12と位置p13の予測温度差である。
予測鋳片表面温度差Te2≦35℃である場合、「幅方向範囲w2」と「軸受箱率R=0の幅方向範囲」との温度差が小さくなると考えられるため、「幅方向範囲w2」を空気量Q2(20Nm3/(m2・Hr)≦空気量Q2≦40Nm3/(m2・Hr))で冷却する(図4のS2)。空気量の調整は幅方向範囲w2に配置されたノズル51,71,91等の噴霧量を調整することによって行う。
一方、予測鋳片表面温度差Te2>35℃である場合、「軸受箱率R=0の幅方向範囲」との温度差が大きくなり、割れが発生すると考えられる。そこで、「幅方向範囲w2」を上記(2)式を満たす空気量Q1で冷却する(図4のS7)。
幅方向範囲w2の冷却方法が決定すると、残りの幅方向範囲w4,w6,w8についても幅方向範囲w2と同様な方法で冷却する。
なお、上記では止水区間の基準側(鋳片の下側に対応)について説明したが、反基準側についても基準側と同様な方法で冷却する。
このように、本実施形態では二次冷却帯に水冷区間と空冷区間(止水区間)とを設け、止水区間の空気量を各幅方向位置の「軸受箱率R」によって変えている。また、「軸受箱率R」が大きいときは、「予測鋳片表面温度差Te」を算出し、「予測鋳片表面温度差Te」によって空気量を変えている。
さらに、「予測鋳片表面温度差Te」が大きい場合は、割れが発生する可能性があるため、鋳片の冷却に影響する「鋳造速度Vc」及び「軸受箱率R」と「予測鋳片表面温度差Te」とを基に「空気量Q2」を算出し、「空気量Q2」でその幅方向位置を冷却する。
このような方法で鋳片を空気冷却することにより、Ni含有鋼において軸受箱に起因する鋳片表面温度のばらつきを抑止できる。これにより、割れが発生することを抑止できるため、鋳片を幅方向全体にわたって高品質にすることができる。
次に、上記知見を得るために行った実験を説明する。
鋳造条件及び止水区間の冷却条件を変えたときの割れの有無を調べた。表2〜表7には、実験条件及び実験結果を示している。また、図20〜22には「空気量Qと予測鋳片表面温度差Teとの関係」を示している。本実験では、垂直曲げ型連続鋳造機として、機長が40.6[m]であり、円弧部の曲率半径Rが10.7[m]である連続鋳造機を用いた。また、鋳片サイズが厚み280[mm]×幅2100[mm]であるスラブを鋳造した。
下記に実験条件を示す。
・溶鋼の含有成分
C:0.4〜0.6mass%
Mn:0.6〜0.9mass%
Si:0〜0.3mass%
P:0.005mass%以下
S:0.002mass%以下
Ni:6〜10mass%
・止水区間(二次冷却水量=0とする区間)の軸受箱率Rを0〜0.4とした。
・止水区間に配置されたロール:ロール径が230〜290mmの基準側ロール及び反基準側ロールを用いた。
・ノズル直径d:空冷用ノズル先端部の開口面積を求め(図23A参照)、開口面積から算出した円相当径をノズル直径d(m)とした。
・ノズルから鋳片表面までの距離h:ノズル先端から鋳片表面までの距離h(m)を測定した(図23B参照)。
・鋳造方向に軸受箱と隣り合うノズルに強冷却ノズルを用いた。強冷却ノズルを他のノズルと独立した配管系統とし、流量制御を単独で調整できるようにした。
表2〜表7の「矯正入側の温度差」は、矯正部開始位置における鋳片表面温度差であり、実測値から算出したものである。「鋳片表面温度差」とは、「軸受箱率R≧0.2での鋳片表面温度」と「軸受箱率R=0での鋳片表面温度」との差である。軸受箱率R≧0.2が存在しない実験(No.96,97,191,192,283,284)では、『「軸受箱率Rがゼロでない位置の鋳片表面温度」と「軸受箱率R=0での鋳片表面温度」との差』を「矯正入側の温度差」とした。
次に、実験結果の評価方法を説明する。
<内部割れ 有無>
特許第4397825号と同様に、過硫酸アンモニウムを用いた断面マクロ試験を実施した。鋳造後にスラブの一部(試料)を採取し、試料を所定の平面度まで研磨した後、研磨面に過硫酸アンモニウム((NH4)228)を塗布し、腐食させた(腐食処理)。そして、研磨面を肉眼や顕微鏡を用いて目視により確認した。金属組織上の欠陥が存在する部分と存在しない部分とでは腐食の進行が異なり、欠陥が存在する部分には腐食班が生じる。そこで、腐食班が1つでも発生した場合は、内部割れが発生したと評価して表1に「有」と示した。一方、腐食班が発生しなかった場合は、内部割れが発生しなかったと評価して「無」と示した。
<表面割れ 有無>
鋳造後のスラブを徐冷するもしくはスラブにカバーをかけて徐冷した後、スラブ表面を1.5mm溶削(スカーフ)し、磁粉探傷試験を実施した。本試験で表面割れが発生した場合を「有」とし、発生しなかった場合を「無」とした。
<皮下割れ 有無>
鋳片断面を塩酸によって腐食させ、表層から5〜20mmの範囲に割れが発生しているか確認した。割れが発生した場合を「有」とし、割れが発生しなかった場合を「無」とした。
<総合評価>
内部割れ、表面割れ、及び皮下割れが全て「無」である場合は総合評価を「○」とし、1つでも「有」が存在する場合は総合評価を「×」とした。
(表2,表3)
鋳造速度Vc=0.7m/minに関する実験条件及び実験結果を示している。
(表4,表5)
鋳造速度Vc=1.0m/minに関する実験条件及び実験結果を示している。
(表6,表7)
鋳造速度Vc=1.3m/minに関する実験条件及び実験結果を示している。
表2〜表7から下記の結果が得られた。
<鋳造速度Vc>
鋳造速度Vc=0.7m/min,1.0m/min,1.3m/minでは割れが発生しなかったが、Vc=0.6m/min(No.88)及びVc=1.4m/minでは(No.89)では割れが発生した。
No.88では、鋳造速度Vcが遅く、矯正部で鋳片表面温度が大きく低下した。このため表面割れが発生した。
一方、No.89では、鋳造速度Vcが速かったため、冷却不足によるバルジングが発生し、内部割れが発生した。
これらの結果から、鋳造速度Vcを0.7〜1.3m/minとすると割れの発生を抑止できることがわかった。
<二次冷却水量>
二次冷却水量が0.09〜0.33l/kgでは割れが発生しなかったが、二次冷却水量が0.07l/kg(No.197)及び0.40l/kg(No.198)では割れが発生した。
No.197では、冷却不足からバルジングよる内部割れが発生した。
一方、No.198では、曲げ部で鋳片表面温度が大きく低下したため、表面割れが発生した。
これらの結果から、二次冷却水量を0.09〜0.33l/kgとすると割れの発生を抑止できることがわかった。
<止水区間後の冷却長さ>
「止水区間後の冷却長さ」が3m以下では割れが発生しなかったが、「止水区間後の冷却長さ」が5m及び7m(No.90〜No.95,No.185〜190)では割れが発生した。
No.90〜No.95,No.185〜190では、矯正通過時の鋳片温度を脆化温度より高温側にできなかったため、表面割れが発生したと考えられる。
これらから、「止水区間後の冷却長さ」を3m以下とすると割れの発生を抑止できることがわかった。
また、No.96,97,191,192,283,284のように、軸受箱率Rが0.14と小さい位置では、R=0と同じ空気量でも鋳片表面温度差を十分に小さくできることがわかった。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、基準側ロールの構成と反基準側ロールの構成は同じでもよく、異なっていてもよい。また、基準側ロール及び反基準側ロールの構成やノズルの位置は図3及び図19に示すものに限られず、変更可能である。
また、上述した実施形態では「曲げ部12完了位置での鋳片表面温度差Tm」を求めるときに、隣り合う2つの幅方向領域の鋳片表面温度を用いたが(図6及び図19参照)、隣り合わない領域の鋳片表面温度を用いてもよい。
さらに、上述した実施形態では1つの幅方向範囲の空気量を1つの幅方向位置から決定したが(図6及び図19参照)、1つの幅方向範囲において2つ以上の幅方向位置から空気量を決定してもよい。
本発明は、Ni含有鋼の鋳造に利用することができる。
1 タンディッシュ
2 浸漬ノズル
3 鋳型
4 ロール群
5,51,61,62,63,64,65,66,67,71,72,81,82,83,91,92,95,151,152 ノズル
6 溶鋼
11 垂直部
12 曲げ部
13 円弧部
14 矯正部
15 水平部
16 ロール対
17,31,32,33,34,35,36,41,42,43,44,45,46,141,142 基準側ロール
18 反基準側ロール
31A,31B,32A,32B,41A,41B,41C,42A,42B,42C ロール部
31a,32a,41a,41b,42a,42b,141a,142a 軸受箱部
100 連続鋳造機
S,R,U1,U2 領域
3 領域(鋳片幅方向領域)

Claims (1)

  1. 鋳造方向に並設された複数のロールを備えた垂直曲げ型連続鋳造機を用いた連続鋳造方法であり、
    前記ロールは、鋳片幅方向に2以上に分割されているとともに、各分割位置に配置された軸受箱を有しており、
    Ni含有量が6〜10mass%のNi含有鋼を、鋳造速度Vcが0.7〜1.3m/minで鋳造する際に、
    鋳型直下から曲げ完了位置までの比水量を0.09〜0.33l/kgとし、
    曲げ完了位置から矯正完了位置までの区間において曲げ完了位置から矯正完了位置の上流側3mの位置までの範囲を少なくとも含む領域を、二次冷却水量がゼロであり且つ空気冷却する止水区間とし、
    前記止水区間において、所定の幅方向位置における、鋳造方向に並設されたロールの全数に対する、軸受箱が存在するロールの数の比率を軸受箱率Rとするとき、
    鋳片の幅両端から幅中央に向かって100mmの範囲を除く鋳片幅方向領域において、
    曲げ完了位置における、軸受箱率R=0の幅方向位置での鋳片表面温度と軸受箱率R≧0.2の幅方向位置での鋳片表面温度とを測定し、これらの温度差Tmを算出し、
    矯正開始位置における、軸受箱率R=0の幅方向位置での鋳片表面温度と軸受箱率R≧0.2の幅方向位置での鋳片表面温度との予測鋳片表面温度差Teを算出し、ここで、Teは下記(1)式から算出できる
    Te=Tm+L1×Vc+L2 ・・・(1)
    ここで、L1=−97.6×R+16.9
    2=181.5×R−20.7 である
    前記止水区間では、
    軸受箱率R≧0.2の幅方向位置であり且つTe>35を満たす幅方向位置で下記(2)式を満足する空気量Q1の空気冷却を実施し、
    [K×(α1×Te2+β1×Te+γ1)]≦Q1≦[K×(α2×Te2+β2×Te+γ2)]・・・(2)
    ここで、Q1:空気量(Nm3/(m2・Hr))
    K :−1.82×{(d-0.5×h-1)/79.1}+2.82
    d :冷却用ノズルの先端開口部の円相当径
    h :ノズルから鋳片までの距離
    R :止水区間の軸受箱率
    α1:(1.65×R−0.10)×Vc+(−5.60×R+2.24)
    β1:(−90.65×R+7.51)×Vc+(356.76×R−142.05)
    γ1:(1112.26×R−94.20)×Vc+(−5607.51×R+2227.89)
    α2:(1.64×R−0.10)×Vc+(−5.60×R+2.23)
    β2:(−75.91×R+4.67)×Vc+(310.21×R−121.95)
    γ2:(779.47×R−70.29)×Vc+(−4257.77×R+1678.94)
    軸受箱率R≧0.2の幅方向位置であり且つTe≦35を満たす幅方向位置、及び軸受箱率R<0.2の幅方向位置で下記(3)式を満足する空気量Q2の空気冷却を実施することを特徴とする連続鋳造方法。
    20Nm3/(m2・Hr)≦Q2≦40Nm3/(m2・Hr)・・・(3)
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