JP2016030719A - 炭化珪素粉末、及び、炭化珪素単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ここで、炭化珪素ウエハは、昇華再結晶法によって炭化珪素粉末を昇華させて炭化珪素単結晶を得た後、この炭化珪素単結晶を切断することによって、製造することができる。
昇華させるのに好適な炭化珪素粉末として、平均粒径を特定の範囲内に定めたものなどが知られている。例えば、特許文献1に、炭化ケイ素の平均粒径が10μm以下になると、単結晶を作るための炭化ケイ素の昇華温度(2,000〜5,000℃)で焼結を起こし、昇華表面積が小さくなり、単結晶の成長が遅くなること、及び、炭化ケイ素の平均粒径が500μm以上になると、粒子自身の比表面積が小さくなるため、単結晶の成長が遅くなることが記載されている。
上記のように既存の炭化珪素粉末は、昇華速度や歩留まりの面での問題を抱えており、これらの問題は、炭化珪素製半導体の普及の妨げになっていた。
そこで、本発明の目的は、昇華再結晶法における炭化珪素単結晶(例えば、炭化珪素ウエハの材料として用いられるもの)の原料として用いられる炭化珪素粉末であって、大きな昇華速度を安定して維持することができ、かつ、焼結が起こりにくい炭化珪素粉末を提供することにある。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[2]を提供するものである。
[1] 多結晶の炭化珪素粉末であって、平均結晶子径が300nm以下の結晶子から構成されることを特徴とする炭化珪素粉末。
[2] 前記[1]に記載の炭化珪素粉末を原料として用いて、昇華再結晶法により、炭化珪素種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
また、本発明の炭化珪素粉末は、焼結が起こりにくいものであることから、昇華再結晶法において、昇華されずに残存する炭化珪素の量が少なくなり、歩留まりを向上させることができる。
このように、本発明の炭化珪素粉末によれば、昇華再結晶法における炭化珪素単結晶の生産性を向上させることができる。
ここで、多結晶とは、多数の単結晶から構成されていることを意味する。単結晶とは、一つの結晶内のどの部分においても、結晶軸の方向が同一であるものを意味する。また、結晶子とは、単結晶とみなせる最大の集まりを意味する。
炭化珪素粉末を構成する結晶子としては、特に限定されるものではないが、例えば、4H型、3C型、6H型、15R型等の結晶子からなる1種類以上である。また、炭化珪素粉末は不定形の結晶(例えば非晶質の炭化珪素)を含んでいてもよい。
なお、平均結晶子径とは、炭化珪素粉末をX線回折測定に供した場合に得られるプロファイルを解析することによって求めるものである。
具体的には、平均結晶子径は、炭化珪素粉末をX線回折することで、回折ピークの半値幅を求め、Scherrerの式により算出されるものである。
なお、後述する実施例においては、Bruker社製のX線回折分析装置である「D8 ADVANCE」を用いて、2θ=5〜65°の範囲で測定したプロファイルを、同社の解析ソフトウェアである「Eva」を用いて、既知の炭化珪素粉末のプロファイルとフィッティングすることにより算出している。
ここでフィッティングに用いる既知の炭化珪素粉末を構成する結晶子の型は、測定対象である炭化珪素粉末を構成する結晶子の型に応じて適宜選択されるものである。
具体的には、珪素を含む無機珪酸質原料と炭素を含む炭素質原料を混合して、炭化珪素製造用原料を得る工程と、上記炭化珪素製造用原料を、2,500℃以上で焼成し、炭化珪素からなる塊状物を得る工程と、上記炭化珪素からなる塊状物を粉砕した後、得られた粉砕物を分級し、炭化珪素粉末を得る工程、を含む製造方法によって、本発明の炭化珪素粉末を製造することができる。
無機珪酸質原料の平均粒径は、焼成時の環境や原料の状態(結晶質、非晶質)、および後述する炭素質原料との反応性によって、適宜選ばれる。
なお、本明細書中、「平均粒径」とは、ふるいによる分級を行って得られた、50%重量累積粒径をいう。
焼成方法としては、特に限定されるものではないが、外部加熱による方法、通電加熱による方法等が挙げられる。外部加熱による方法としては、例えば、流動層やバッチ式の炉を用いる方法が挙げられる。通電加熱による方法としては、例えば、アチソン炉を用いる方法が挙げられる。焼成雰囲気は、還元雰囲気であることが望ましい。還元性が弱い雰囲気下で焼成すると、炭化珪素の収率が低くなるからである。この際、無機珪酸質原料として非晶質シリカを用いると、反応性が良いことから炉の制御が容易になるため、無機珪酸質原料としては非晶質シリカを使うことが好適である。
なお、本明細書中、アチソン炉とは、上方に開口した箱型の間接抵抗加熱炉をいう。ここで、間接抵抗加熱とは、被加熱物に電流を直接流すのではなく、電流を流して発熱させた発熱体によって、炭化珪素を得るものである。
この様な炉を用いることで、下記式(1)で示される反応が生じ、炭化珪素からなる塊状物が得られる。
SiO2+3C → SiC+2CO (1)
発熱体を構成する物質の形態は、特に限定されず、例えば、粉状、塊状等が挙げられる。発熱体は、アチソン炉の通電方向の両端に設けられた電極芯を結ぶように全体として棒状の形状になるように設けられる。ここでの棒状の形状とは、例えば、円柱状、角柱状等が挙げられる。
ここで、上述した方法等によって得られる炭化珪素粉末の平均結晶子径は、使用する炉や原料の状態によって変わるため、本発明の炭化珪素粉末(平均結晶子径が300nm以下の結晶子から構成されるもの)を得るための焼成温度や焼成時間等の数値を特定の範囲に定めることは難しい。しかし、炭化珪素粉末の平均結晶子径は焼成温度および焼成時間によって影響を受けることから、本発明の炭化珪素粉末を得るためには、使用する炉や原料の状態によって、焼成温度及び焼成時間を適宜定めればよい。具体的には、焼成温度が高いほど、焼成時間が長いほど平均結晶子径が大きくなる傾向がある。
このようにして得られた炭化珪素粉末の粒径は、所望の昇華再結晶法の条件に応じて制御されるものである。しかしながら、上述のように粒径が小さいと、昇華再結晶法において、原料である炭化珪素粉末を昇華させる際に原料の焼結が進行してしまう。これは、粒径が1μm未満である粉末において顕著であることから、粒径は1μm以上であることが望ましい。
本発明の炭化珪素粉末は、加熱時の昇華速度が大きいので、該粉末を昇華再結晶法の原料として用いることで、炭化珪素種結晶上に炭化珪素単結晶を容易にかつ短時間で成長させることができる。
[使用原料]
(1)無機珪酸質原料:高純度シリカ(非晶質シリカであるシリカゲル;シリカの含有率(絶乾状態):99.99質量%以上;酸素原子を除く不純物の含有率:10ppm以下;平均粒子径:600μm;太平洋セメント社製)
(2)炭素質原料:カーボンブラック(東海カーボン社製;商品名「シーストTA」)
(3)発熱体:カーボンブラックを3,000℃で熱処理して得られた結晶性の黒鉛粉
上記無機珪酸質原料と上記炭素質原料を、2軸ミキサーを用いて炭素と珪酸のモル比(C/SiO2)が3.0となるように混合して、炭化珪素製造用原料を得た。得られた炭化珪素製造用原料850kg、及び上記発熱体を、アチソン炉(アチソン炉の内寸;長さ2,500mm、幅1,000mm、高さ850mm)に収容した後、表1に示す焼成温度及び焼成時間で焼成を行い、塊状の炭化珪素を得た。
得られた塊状の炭化珪素を、ジョークラッシャー及びボールミルを用いて粉砕した。粉砕後、篩を用いて、粒径が2mm以下の炭化珪素粉末1〜6を得た。
また、得られた各炭化珪素粉末5g及び50gを、内寸φ100×100mmの黒鉛製の坩堝に入れた。この坩堝を真空加熱炉の中に静置し、50Pa以下の環境下で2,200℃、10時間の加熱を行った。
ここで、5gの場合は、試料が微量であるため、いずれの場合も焼結は確認されなかった。50gの場合は、試料の焼結が確認された。
加熱後に残った炭化珪素粉末の質量から、昇華した炭化珪素粉末の質量を算出し、該質量を加熱時間の10時間で除することで、昇華速度(mg/時間)を算出した。
また、炭化珪素粉末50gを加熱した場合の昇華速度を、炭化珪素粉末5gを加熱した場合の昇華速度で除して数値を算出し、算出した数値を、さらに、炭化珪素粉末50gと炭化珪素粉末5gの質量比10(50g/5g)で除して、得られた数値を耐焼結性の指標とした。該数値が小さいほど、炭化珪素粉末50gを加熱した場合に焼結が起こりやすく、昇華速度が低下することを示している。
それぞれの結果を表2に示す。
Claims (2)
- 多結晶の炭化珪素粉末であって、平均結晶子径が300nm以下の結晶子から構成されることを特徴とする炭化珪素粉末。
- 請求項1に記載の炭化珪素粉末を原料として用いて、昇華再結晶法により、炭化珪素種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
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