JP2015229841A - 固定金具及びこれを用いた被固定棒材の円柱状支持材への固定方法 - Google Patents

Abstract

【課題】溶接不要、簡便かつ低コストで、被固定棒材を円柱状支持材へ状態を視認しつつ固定する。【解決手段】ボルト２が設けられた基部１１及び、この基部１１からボルト２の推進方向へ対向しつつ伸延し、その側面に装着穴１２ａが形成された腕部１２からなる固定金具１を用い、腕部１２の間に円柱状支持材４の周面を挟み、セパレータ３を腕部１２の装着穴１２ａに装着し、固定金具１とセパレータ３とで円柱状支持材４を包囲して仮組立し、セパレータ３を円柱状支持材４に固定するのに適切な位置に位置決めした後、ボルト２を推進させ、セパレータ３と円柱状支持材４との接点Ａ１及びセパレータ３と腕部１２の各装着穴１２ａとの接点Ａ２，Ａ３の三箇所でセパレータ３を支持し、セパレータ３が弓なり状に曲がるまでボルト２を推進させ、セパレータ３を接点Ａ１〜Ａ３で固定金具１に食い込ませつつ円柱状支持材４に固定する。【選択図】図１

Description

本発明は、土木、建築分野で壁面または擁壁を構築する場面において適用される固定金具と、これを用いた被固定棒材の円柱状支持材への固定方法であり、例えば、壁面構築用の型枠パネルを左右に並べ、かつ、上方に積み上げて壁面または擁壁を構築する際に、型枠パネルの背面に一端側が揺動自在に取り付けられている被固定棒材の他端側を、円柱状支持材に固定するための固定金具と、これを用いた被固定棒材の円柱状支持材への固定方法に関する。

例えば、下記特許文献１などで提案しているように、出願人は従来から、一定の大きさをした矩形状の壁面構築用の型枠パネルを左右に並べ、かつ、上方に積み上げて壁面または擁壁を構築する技術に関し、その構築方法や型枠パネル、型枠パネルの背面に取り付ける装着具等を発明している。

下記特許文献２では、型枠パネルの背面に取り付けた装着具に一端側が揺動自在に取り付けられている被固定棒材の他端側を支柱に固定するための固定金具に関し、被固定棒材の他端側を支柱に溶接して固定することで発生する手間や資格の問題、被固定棒材の防錆処理した防錆皮膜が破壊されることにより、性能劣化を招く問題等を解決可能な固定金具を提案している。この固定金具により、壁面または擁壁を構築するに際し、溶接することなく簡便に、かつ、固定状態を視覚的に確認しながら被固定棒材を支柱等に固定することができるようになった。

特許第４６５２６２４号公報 特許第４１４９４５０号公報

ただし、特許文献２で提案する固定金具は、外周に係合部が軸方向へ設けられている被固定棒材に適用可能であるので、特定の被固定棒材の固定手段として限定されてしまうことがある。また、構成部品である受け部材又は押し付け部材に被固定棒材の係合部に係合する係止部を設けるが、この係止部の作製は必ずしも汎用ではなく、コスト高になりかねないという課題を含んでいる。水平方向回動部材、受け部材、押し付け部材及び固定部材といった部品点数が多いという課題もあった。一方、施工現場において、被固定棒材が支柱等に固定されたことを視覚的に確認することで済ませて、固定作業を効率的に進めたいといった要請がある。

本発明は、上記実情に鑑み提案され、壁面または擁壁を構築する際に被固定棒材を支柱や梁等の円柱状支持材に固定するための固定金具に関し、溶接を必要としないで簡便に、かつ、汎用的な手段で作製することができてコストが抑えられるとともに、被固定棒材が円柱状支持材に固定されたことを視覚的に確認することができる固定金具及び、これを用いた被固定棒材の円柱状支持材への固定方法を提供することを目的とする。

上記目的を達成するため、本発明は、被固定棒材を円柱状支持材に固定するための固定金具であって、ボルトが設けられている基部と、この基部から、前記ボルトの推進方向へ対向しつつ伸延し、その側面に前記被固定棒材が貫通する装着穴が形成されている腕部とからなり、前記腕部で前記円柱状支持材の周面を挟むとともに、前記被固定棒材を前記装着穴に装着し、前記腕部と前記被固定棒材とで前記円柱状支持材を包囲することで仮組立が完了し、この仮組立の状態で前記被固定棒材が前後、左右、上下の各方向に移動可能であり、前記仮組立を経て前記被固定棒材の位置を決定した後に、前記ボルトを推進させることにより、前記被固定棒材と前記円柱状支持材との接点、及び、前記被固定棒材と前記腕部の各装着穴との接点の三箇所で前記被固定棒材を支持可能であり、前記三箇所の接点で前記被固定棒材を支持した後に、前記被固定棒材が弓なり状に曲がるまで前記ボルトを推進させることにより、固定状態を視認しつつ、前記被固定棒材を前記三箇所の接点で食い込ませ、前記被固定棒材を前記円柱状支持材に固定可能であることを特徴とする。

特に、上記固定金具の腕部に、側面の縁から装着穴まで切り欠いた導入溝が形成されていることを特徴とする。

また 本発明は、上記固定金具を用いた被固定棒材の円柱状支持材への固定方法であって、前記腕部で前記円柱状支持材の周面を挟むとともに、前記被固定棒材を前記装着穴に装着し、前記腕部と前記被固定棒材とで前記円柱状支持材を包囲することで仮組立を完了し、この仮組立の状態で前記被固定棒材を前後、左右、上下の各方向に移動させて前記被固定棒材の位置を決定し、前記ボルトを推進させることにより、前記被固定棒材と前記円柱状支持材との接点、及び、前記被固定棒材と前記腕部の各装着穴との接点の三箇所で前記被固定棒材を支持し、前記被固定棒材が弓なり状に曲がるまで前記ボルトを推進させることにより、固定状態を視認しつつ、前記被固定棒を前記三箇所の接点で食い込ませ、前記被固定棒材を前記円柱状支持材に固定することを特徴とする。前記被固定棒材の表面には、凹凸が形成されていることが好ましい。

本発明に係る固定金具は、ボルトが設けられている基部と、この基部からボルトの推進方向へ対向しつつ伸延し、その側面に被固定棒材が貫通する装着穴が形成されている腕部とからなる。したがって、固定金具の本体とボルトの２部品で構成可能であり、製作コストを抑えることができる。特に、固定金具の本体は、基部と、この基部から対向しつつ伸延し、その側面に装着穴が形成されている腕部とからなるので、作製に特別な手段が不要であり、従来に比べて大幅にコストを低減することができる。

さらに、本発明は、腕部で円柱状支持材の周面を挟むとともに、被固定棒材を装着穴に装着し、腕部と被固定棒材とで円柱状支持材を包囲することで仮組立が完了し、この仮組立の状態で被固定棒材が前後、左右、上下の各方向に移動可能な構成である。仮組立を経て被固定棒材の位置を決定した後には、ボルトを推進させることにより、被固定棒材と円柱状支持材との接点、及び、被固定棒材と腕部の各装着穴との接点の三箇所で被固定棒材を支持可能な構成である。また、三箇所の接点で被固定棒材を支持した後には、被固定棒材が弓なり状に曲がるまでボルトを推進させることにより、固定状態を視認しつつ、被固定棒材を三箇所の接点で食い込ませ、被固定棒材を円柱状支持材に固定可能な構成である。したがって、被固定棒材の向きを三次元的に調整した上で、被固定棒材を円柱状支持材に支持し、固定することができるので、固定作業を容易に、かつ、効率的に進めることができる。その固定状態において被固定棒材は弓なり状に曲がるので、固定が確実になされているか否かを視認することができる。このような固定作業であるので、溶接が不要である。必ず被固定棒材の外周に凹凸等の係合部が設けられている、といった必要もない。

本発明は、その腕部に、側面の縁から装着穴まで切り欠いた導入溝が形成されている構成をその技術的範囲に含み、これにより被固定棒材を更に容易に装着穴に装着することが可能となるので、作業性をさらに向上させることができる。

そして、上述のような固定金具を用いた本発明に係る被固定棒材の円柱状支持材への固定方法は、溶接を不要として簡便に、かつ、汎用的な手段で作製することができてコストが抑えられた固定金具により、被固定棒材が固定されることを視認しながら、被固定棒材を円柱状支持材へ固定することができる。すなわち、低コストで簡便な被固定棒材の円柱状支持材への固定を実現することができる。被固定棒材の外周に凹凸等の係合部が設けられていてももちろん、被固定棒材を円柱状支持材へ強固に固定することができる。

本発明に係る固定金具の要部を、概略的に説明する要部拡大図であって、（ａ）は要部概略正面図、（ｂ）は要部概略底面図である。 本発明に係る固定金具について各部品に分解して示す分解斜視図である。 本発明に係る固定金具を適用する型枠パネルを説明する説明図である。 実施例１で構築される壁面（擁壁）の側方断面図である。 図４の平面図である。 実施例１において、その固定金具が仮組立の状態において、前後、左右及び上下方向に対して調整可能であることを説明する説明図である。 実施例２で構築される壁面（擁壁）の平面図である。 図８の側方断面図である。 実施例２において、その固定金具が仮組立の状態において、前後、左右及び上下方向に対して調整可能であることを説明する説明図である。

以下、本発明に係る固定金具についての実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態は、本発明の構成を具現化した例示に過ぎず、本発明は、特許請求の範囲に記載した事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことができる。

本発明に係る固定金具１は、被固定棒材としての例えば、丸棒状のセパレータ３を、支柱や梁として適用される断面円形の円柱状支持材４に固定するためのものである。特に、図１（ａ）、（ｂ）及び図２に示すように、固定金具１は、ボルト２と、このボルト２が設けられている基部１１と、この基部１１から、ボルト２の推進方向へ対向しつつ伸延し、その側面にセパレータ３が貫通する装着穴１２ａが形成されている腕部１２とから構成される金具本体１０とからなる。金具本体１０の腕部１２の側面には、その縁から装着穴１２ａまで切り欠いて略Ｌ字状に形成された導入溝１２ｂが設けられている。

金具本体１０は、金属製である。基部１１は、設けられるボルト２の大きさに対応させて一定の幅Ｗを有している。この一定の幅Ｗは小さくなる程、ボルト２を推進させてセパレータ３を円柱状支持材４に固定する際に求められる金具本体１０の強度を高めることができる。したがって、基部１１が有する一定の幅Ｗは、設けられるボルト２の大きさに対応する限り、小さいことが好ましい。

腕部１２は、ボルト２の推進方向へ対向しつつ伸延している。その対向する間隔は、セパレータ３を固定しようとする円柱状支持材４の径に対応させれば任意でよい。金具本体１０は、一定の幅Ｗを有する基部１１と、対向しつつ伸延する腕部１２とから、全体として略Ｖ字状又は略Ｕ字状であることが好ましい。なお、円柱状支持材４が小径の場合には、一定の幅Ｗの基部１１と腕部１２とを有する略コの字状の金具本体１０であっても採用し得る。

基部１１に設けられるボルト２は、汎用品を採用することができる。本実施形態においてボルト２は、そのネジ部の径に対応するナット２ａと組になって基部１１に設けられている。このナット２ａは、ボルト２の推進力を、ナット２ａを通じて基部１１が受け止められるようにするための構成である。したがって、基部１１にタップネジを設ける構成等により、ナット２ａの代用をすることが可能である。

セパレータ３や円柱状支持材４には通常、防錆処理が施されているものが採用される。本発明では、セパレータ３の外周に、例えば、ネジを切って形成されるような係合部が軸方向に設けられていなくても、セパレータ３を円柱状支持材４へ固定することができる。ただし、図示するように、外周面の凹凸としてネジを切って形成されるネジ切り部３ｂが他端側に設けられているセパレータ３が、ネジ切り部３ｂを固定金具１に食い込ませることで、円柱状支持材４へより強固に固定することができるので好ましい形態といえる。

また、セパレータ３は、図３に示すように、本発明において一端側にカタカナの「レ」の字のように折り曲げられた引っ掛け部３ａが設けられている。この引っ掛け部３ａは、後述する装着具５の引っ掛け穴５ａに揺動自在に引っ掛けるための構成である。

また、本発明において型枠パネル６は、図３に示すように、一定の大きさをした矩形状の壁面構築用パネルであって、背面の下側の左右と、背面の上側の左右とに、左右方向の幅の左右端から１／４の位置に、防錆処理が施されたフック６ａが設けられている。このフック６ａ内へは、装着具５の一部である挿入部分５ｂが挿入、嵌合される。装着具５は金属板製で、引っ掛け穴５ａが形成されるとともに、両端部がそれぞれ挿入部分５ｂとして機能する。装着具５には防錆処理が施されていることが好ましい。

（実施例１）
以下、本発明に係る固定金具１を使用してセパレータ３の他端側を、円柱状支持材の一例としての円形断面を有する円形支柱４１に固定し、型枠パネル６を積み上げて壁面（擁壁）を構築する様子を、図４〜図６に基づいて説明する。

まず、道路の脇等で壁面を構築する場合、図４及び図５に示すように、コンクリートを打設して基礎Ｂを構築し、この基礎Ｂに積み上げる型枠パネル６の位置から所定距離おいた後方位置に、円形支柱４１を型枠パネル６の幅Ｌの間隔（フック６ａの間隔Ｓの２倍）で立設していく。具体的には、２つのフック６ａの間に位置させるようにして円形支柱４１を立設する。最下段の型枠パネル６を左右方向へ並べながら、その型枠パネル６の下側のフック６ａへ装着具５を、挿入部分５ｂを挿入して取り付ける。続いて、装着具５の引っ掛け穴５ａにセパレータ３の引っ掛け部３ａを揺動自在に引っ掛ける。なお、図５に示すように、フック６ａの間隔Ｓの２倍の長さが、ほぼ型枠パネル６の幅Ｌの長さに相当する（型枠パネルの幅Ｌの１／２の長さが、フックの間隔Ｓの長さに相当する。１／２Ｌ＝Ｓ）。

次に、固定金具１の腕部１２の間に円形支柱４１の周面を挟むとともに、装着具５に引っ掛けたセパレータ３の引っ掛け部３ａが設けられていない他端側のネジ切り部３ｂを、導入溝１２ｂを通じて装着穴１２ａに装着し、固定金具１の腕部１２とセパレータ３とで円形支柱４１を包囲して仮組立する。この仮組立の状態でセパレータ３は固定金具１の装着穴１２ａに装着されているのみであるから、図６（ａ）〜図６（ｃ）に示すように、仮組立の状態のセパレータ３を、軸方向に対して前後に移動させることができ、固定金具１とともに左右、上下の各方向にも移動させることができる。そして、仮組立するのに併せて、セパレータ３を円形支柱４１に固定するのに適切な位置に位置決めする。

本実施例１において、円形支柱４１は２つのフック６ａの間に立設しているので、特に図５に示すように、セパレータ３は型枠パネル６の平面に対して斜めに固定されることになる。このような斜めの位置決めも、仮組立の状態のセパレータ３が前後、左右、上下の各方向に移動させることができるので簡便に行うことができる。

セパレータ３を位置決めした後には、固定金具１のボルト２を推進させて、セパレータ３と円形支柱４１との接点Ａ１、及び、セパレータ３と腕部１２の各装着穴１２ａとの接点Ａ２，Ａ３の三箇所でセパレータ３を支持する（図１（ａ）も参照のこと）。続いて、セパレータ３が弓なり状に曲がるまでボルト２を推進させる。これにより、図４及び図５に示すように、セパレータ３を三箇所の接点Ａ１〜Ａ３で固定金具１に食い込ませつつ円形支柱４１に固定することができる。固定ができているということは、セパレータ３が弓なり状に曲がっている状態であるので、その固定状態を視覚的に確認することもできる。なお、本発明において、固定金具１及び円形支柱４１との三箇所の接点Ａ１〜Ａ３がセパレータ３の他端側のネジ切り部３ｂにおいて形成されることが、これらの接点Ａ１〜Ａ３でセパレータ３を固定金具１に食い込ませて強固に支持、固定するのに有利である。

上述のようにして最下段の型枠パネル６の下側を固定したら、次に最下段の型枠パネル６の上側のフック６ａへ装着具５を取り付け、装着具５へセパレータ３の一端側を引っ掛け、上述した手順でセパレータ３の他端側を円形支柱４１へ固定する。以後、２段目以降の型枠パネル６に対しても、同様にしてセパレータ３を円形支柱４１に固定することができ、これにより型枠パネル６を複数段積み上げ、壁面を構築することができる。

本発明では、図６に示すように、仮組立の状態においてセパレータ３が前後、左右、上下の各方向に移動することができるので、セパレータ３を固定する円形支柱４１上の位置の自由度が高い。セパレータ３の位置を決定した後には、ボルト２を推進させる作業のみにより、セパレータ３と円形支柱４１との接点Ａ１、及び、セパレータ３と腕部１２の各装着穴１２ａとの接点Ａ２，Ａ３の三箇所でセパレータ３を支持することができる。さらに、セパレータ３が弓なり状に曲がるまでボルト２を推進させることで、その固定状態を視認しつつ、セパレータ３を三箇所の接点Ａ１〜Ａ３で円形支柱４１に食い込ませて固定することができるので、その作業は容易かつ効率的である。

特に、本発明では、セパレータ３が円形支柱４１に固定されていることを、セパレータ３が弓なり状であることをもって確認することができる、すなわち、その固定状態を視覚的に確認することができ、セパレータ３が確実に固定されているか否かを確認する作業までもが容易かつ効率的である。

また、本発明では、セパレータ３の円形支柱４１への固定に溶接が不要である。金具本体１０についても、基部１１及び腕部１２からなり、作製に特別な手段が不要である。したがって、構成部品の作製及び施工の両面から、そのコストを極めて大幅に抑えて被固定棒材の円形支柱への固定を実現している。

ここで、図６に示すように、本発明では、仮組立の状態においてセパレータ３を前後、左右、上下の各方向に移動させることができる。したがって、図５に示すように、壁面又は擁壁の左右の端部におけるセパレータ３の円形支柱４１への固定においても、壁面又は擁壁の中央部におけるセパレータ３の円形支柱４１への固定においても、簡便な作業で済ますことができる。そうすると、型枠パネル６を複数段積み上げ、壁面または擁壁を構築するに際し、本発明の固定金具１により、すべての箇所のセパレータ３に対して円形支柱４１へ適切に固定することができる。そして、益々、製作コスト及び施工コストを極めて大幅に抑えた被固定棒材の円形支柱への固定を実現することができる。

また、上記実施形態では、被固定棒材として従来との対比が明確となるように、丸棒状のセパレータ３（所謂丸セパ）を取り上げて説明しているが、本発明は、矩形断面である帯鉄（所謂板セパ等）を、被固定棒材として採用して構成することも可能である。したがって、本発明は、固定しようとする被固定棒材の形状等が限定されないという効果も有する。

（実施例２）
次に、本発明に係る固定金具１を使用してセパレータ３の他端側を、円柱状支持材として、例えば、水平方向に延伸する断面円形の円形梁材４２に固定し、型枠パネル６を積み上げて壁面（擁壁）を構築する様子を、図７〜図９に基づいて説明する。

まず、道路の脇等で壁面を構築する場合、図７及び図８に示すように、コンクリートを打設して基礎Ｂを構築し、この基礎Ｂに積み上げる型枠パネル６の位置から所定距離おいた後方位置に、角柱として例えば、リップみぞ形鋼（Ｃ形鋼）Ｐを型枠パネル６の幅の間隔（フック６ａの２倍の間隔）で立設していく。具体的には、２つのフック６ａの間に位置させるようにしてリップみぞ形鋼Ｐを立設する。

ここで、図７に示すように、型枠パネル６の位置から所定距離おいた後方位置において、リップみぞ形鋼（Ｃ形鋼）Ｐを立設する間隔は、上述のように、型枠パネル６の幅Ｌと等倍（Ｌ）とする場合、型枠パネル６の幅Ｌの１／２倍（１／２Ｌ）とする場合、型枠パネル６の幅Ｌの１．５倍（３／２Ｌ）とする場合のほか、また、例えば、型枠パネル６の幅Ｌの２倍（２Ｌ）とする場合など各施工現場において適宜調整することができる。

次に、これら立設したリップみぞ形鋼Ｐに対して直交方向、すなわち水平方向に円形梁材４２を掛け、この円形梁材４２をリップみぞ形鋼Ｐに適宜の固定手段（例えば、実施例２においてＵ字アンカーＣ）により固定する。さらに、最下段の型枠パネル６を左右方向へ並べながら、その型枠パネル６の下側のフック６ａへ装着具５を、挿入部分５ｂを挿入して取り付ける。続いて、装着具５の引っ掛け穴５ａにセパレータ３の引っ掛け部３ａを揺動自在に引っ掛ける。図７〜図９に示すように、Ｕ字アンカーＣを使って、リップみぞ形鋼Ｐをまたぎ、かつ、円形梁材４２をたすき掛けのようにして固定すれば、リップみぞ形鋼Ｐの任意の高さにおいて円形梁材４２を固定することができるので便宜である。

次に、固定金具１の腕部１２の間に円形梁材４２の周面を挟むとともに、装着具５に引っ掛けたセパレータ３の引っ掛け部３ａが設けられていない他端側を、導入溝１２ｂを通じて装着穴１２ａに装着し、固定金具１とセパレータ３とで円形梁材４２を包囲して仮組立する。この仮組立の状態でセパレータ３は固定金具１の装着穴１２ａに装着されているのみであるから、図９に示すように、仮組立の状態のセパレータ３を、軸方向に対して前後に移動させることができ、固定金具１とともに左右、上下の各方向にも移動させることができる。

そして、仮組立するのに併せて、セパレータ３を円形梁材４２に固定するのに適切な位置に位置決めする。本実施例２において、円形梁材４２は型枠パネル６の平面に対して平行に設置されているので、特に図７に示すように、セパレータ３は型枠パネル６の平面に対して略直角（略垂直）に固定される。

セパレータ３を位置決めした後には、固定金具１のボルト２を推進させて、セパレータ３と円形梁材４２との接点Ａ１、及び、セパレータ３と腕部１２の各装着穴１２ａとの接点Ａ２，Ａ３の三箇所でセパレータ３を支持する等、実施例１と同様の作業により、セパレータ３を三箇所の接点Ａ１〜Ａ３で固定金具１に食い込ませつつ円形梁材４２に固定することができる。以後、２段目以降の型枠パネル６に対しても、同様にしてセパレータ３を円形梁材４２に固定することができ、これにより型枠パネル６を複数段積み上げ、壁面を構築することができる。

本実施例２は本実施例１と同様、例えば、図９に示すように、仮組立の状態においてセパレータ３が前後、左右、上下の各方向に移動することができるので、セパレータ３を固定する円形梁材４２上の位置の自由度が高い。さらに、セパレータ３が弓なり状に曲がるまでボルト２を推進させることで、その固定状態を視認しつつ、セパレータ３を三箇所の接点Ａ１〜Ａ３で円形梁材４２に食い込ませて固定することができるので、その作業は容易かつ効率的である。セパレータ３の固定状態を視覚的に確認することができ、セパレータ３が確実に固定されているか否かを確認する作業までもが容易かつ効率的である。

また、セパレータ３の円形梁材４２への固定に溶接が不要であり、金具本体１０についても、基部１１及び腕部１２からなり、作製に特別な手段が不要であるので、セパレータ３の固定に係る施工コストを極めて大幅に抑えることを実現している。本実施例２においても、被固定棒材として従来との対比が明確となるように、丸棒状のセパレータ３（所謂丸セパ）を取り上げて説明しているが、本発明は、矩形断面である帯鉄（所謂板セパ等）を、被固定棒材として採用して構成することも可能であり、固定しようとする被固定棒材が限定されないという効果を有している。

実施例２で説明した固定金具１を用いた被固定棒材（セパレータ３）の円柱状支持材（円形梁材４２）への固定方法は、例えば、コンクリートを打設して構築した基礎Ｂの後方に法面が迫る等、基礎Ｂから法面までのスペースが十分でない場合の施工に好適である。実施例１では、セパレータ３が型枠パネル６の平面に対して斜めに固定されることになるので（図５参照）、基礎Ｂから法面までのスペースが十分でないと、セパレータ３が固定される斜めの角度が広がりすぎ、擁壁（型枠パネル６）を支持するための十分な強度をセパレータ３に備えさせることが難しくなる恐れがあるからである。一方、実施例２では、セパレータ３が型枠パネル６の平面に対して略直角に固定されるので、擁壁（型枠パネル６）を支持するための十分な強度をセパレータ３に備えさせることができる。

以上、本発明について出願人が最良であると信じる実施形態をいくつか詳述したが、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、上記実施形態に限定されることなく、種々の設計変更を行うことが可能である。上記実施形態では、本発明について、一定の大きさをした矩形状の壁面構築用の型枠パネルを左右に並べ、かつ、上方に積み上げて壁面または擁壁を構築するのに適用した例を説明したが、このような型枠パネルへの適用例に限られることなく、土木、建築分野で壁面、擁壁を構築する場面において被固定棒材を円柱状支持材へ固定する汎用的な手段として適用することができる。

また、上記実施形態では固定金具について、側面の縁から装着穴まで切り欠いた導入溝が形成されている腕部の構成を説明しているが、この導入溝は、作業上の簡便さを高めるための構成であって、被固定棒材を装着することができる装着穴を固定金具が備える限りにおいて、必ずしも必要ではない点に留意すべきである。

さらに、円柱状支持材について、その外周面に凹凸が形成されている円形支柱、円形梁材を採用することによっても、固定金具を使って被固定棒材（セパレータ）を強固に円柱状支持材に固定することができる。実施例２において、基礎から所定距離おいた後方位置に立設する柱に角柱（リップみぞ形鋼（Ｃ形鋼））を使った例を使用したが、円柱でもかまわない。

１・・・固定金具
１０・・金具本体
１１・・基部
１２・・腕部
１２ａ・装着穴
１２ｂ・導入溝
２・・・ボルト
２ａ・・ナット
３・・・セパレータ
３ａ・・引っ掛け部
３ｂ・・ネジ切り（凹凸）
４・・・円柱状支持材
４１・・円形支柱（実施例１）
４２・・円形梁材（実施例２）
５・・・装着具
５ａ・・引っ掛け穴
５ｂ・・挿入部分
６・・・型枠パネル
６ａ・・フック
Ｗ・・・基部の幅
Ａ１，Ａ２，Ａ３・接点
Ｂ・・・基礎
Ｃ・・・Ｕ字アンカー
Ｐ・・・リップみぞ形鋼（Ｃ形鋼）
Ｌ・・・型枠パネルの幅
Ｓ・・・フックの間隔

Claims (4)

1. 被固定棒材を円柱状支持材に固定するための固定金具であって、
   ボルトが設けられている基部と、この基部から、前記ボルトの推進方向へ対向しつつ伸延し、その側面に前記被固定棒材が貫通する装着穴が形成されている腕部とからなり、
   前記腕部で前記円柱状支持材の周面を挟むとともに、前記被固定棒材を前記装着穴に装着し、前記腕部と前記被固定棒材とで前記円柱状支持材を包囲することで仮組立が完了し、この仮組立の状態で前記被固定棒材が前後、左右、上下の各方向に移動可能であり、
   前記仮組立を経て前記被固定棒材の位置を決定した後に、前記ボルトを推進させることにより、前記被固定棒材と前記円柱状支持材との接点、及び、前記被固定棒材と前記腕部の各装着穴との接点の三箇所で前記被固定棒材を支持可能であり、
   前記三箇所の接点で前記被固定棒材を支持した後に、前記被固定棒材が弓なり状に曲がるまで前記ボルトを推進させることにより、固定状態を視認しつつ、前記被固定棒材を前記三箇所の接点で食い込ませ、前記被固定棒材を前記円柱状支持材に固定可能である、
   ことを特徴とする固定金具。
2. 前記腕部に、前記側面の縁から前記装着穴まで切り欠いた導入溝が形成されている、
   ことを特徴とする請求項１に記載の固定金具。
3. 請求項１又は請求項２に記載の固定金具を用い、
   前記腕部で前記円柱状支持材の周面を挟むとともに、前記被固定棒材を前記装着穴に装着し、前記腕部と前記被固定棒材とで前記円柱状支持材を包囲することで仮組立を完了し、この仮組立の状態で前記被固定棒材を前後、左右、上下の各方向に移動させて前記被固定棒材の位置を決定し、前記ボルトを推進させることにより、前記被固定棒材と前記円柱状支持材との接点、及び、前記被固定棒材と前記腕部の各装着穴との接点の三箇所で前記被固定棒材を支持し、前記被固定棒材が弓なり状に曲がるまで前記ボルトを推進させることにより、固定状態を視認しつつ、前記被固定棒材を前記三箇所の接点で食い込ませ、前記被固定棒材を前記円柱状支持材に固定する、
   ことを特徴とする被固定棒材の円柱状支持材への固定方法。
4. 前記被固定棒材の表面に凹凸が形成されている、
   ことを特徴とする請求項３に記載の被固定棒材の円柱状支持材への固定方法。

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