図1は、実施形態に係る保持装置10を説明するための図である。図1(a)は車室内から窓際に設けられた保持装置10を見上げた図であり、図1(b)は車両内部を切り欠いて保持装置10の取付構造を示す図である。図2は、実施形態の保持装置10の取付状態を説明するための図である。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
保持装置10は、車室内の窓18の縁またはその近傍に設けられ、窓18を覆うカーテンやシェードなどを広げて留めるために用いられる。シェードは、不使用時に窓18の下方側の位置の収容ケースに収容され、使用時に引き出される。保持装置10は、窓18の上方側の車体に固定され、引き出されたシェードのシェード枠部16を保持する。シェードは、シェード枠部16の保持孔16aを保持装置10に引っ掛けられると窓18を覆った状態となる。
保持装置10は、先端が鉤状に形成された保持部材20と、保持部材20を車体に固定するための長手状の長尺部材22と、を備える。図1(b)に示すように、保持装置10は、先端側が車体パネル14の第1取付孔14aに取り付けられ、中途部分が内装部材12の第2取付孔12aに取り付けられる。保持装置10が取り付けられる内装部材12および車体パネル14は天井に位置するため、車室内からみると内装部材12および車体パネル14の下側が表側に位置し、上側が裏側に位置する。なお、図1(b)では、車体パネル14の末端が屈曲しているため、内装部材12より厚みを持っているように示されるが、保持装置10の取付部分の厚さは、図2に示すように内装部材12とほぼ同じである。
内装部材12は、車体パネル14より車室上方に設けられる。金属製の車体パネル14は樹脂製の内装部材12より強度が強く、内装部材12のみに保持装置10を取り付ける場合と比較すると、車体パネル14にも取り付けることで保持装置10の耐荷重性が向上する。また、内装部材12および車体パネル14の2箇所で支持することで保持装置10のガタツキを抑えることができる。
保持装置10は、保持部材20に長尺部材22を組み付けてユニット化された状態で、内装部材12に仮止めされる。そして、内装部材12を車体パネル14に取り付けた後、保持装置10の先端を車体パネル14の第1取付孔14aに位置合わせして、長尺部材22を押し込んで先端を第1取付孔14aに係合させて保持装置10の本止めをする。長尺部材22を押し込むことで保持装置10を取り付けられるため、ボルト等により取り付ける場合と比べて、取付作業の負担を軽減できる。
内装部材12および車体パネル14は上下方向に離れており、対向する車体パネル14の第1取付孔14aと、内装部材12の第2取付孔12aは、所定の間隔離れている。取付時の長尺部材22の押し込み方向は、長尺部材22の長手方向、または車両上方へ向かう略鉛直方向であり、内装部材12の第2取付孔12aおよび車体パネル14の第1取付孔14aが対向する対向方向と同じ方向である。
図3は、保持装置10の組み付けについて説明するための図である。図3に示すように、保持装置10は保持部材20に長尺部材22を組み付けてユニット化される。保持部材20は、一端部に鉤状の保持部24を有し、他端部に車体パネル14に係止する挟持部32を有する。
保持部材20は、保持部24と挟持部32の間に角筒状の収容部26を有する。収容部26の長手方向の一端には開口部43が形成され、他端には貫通孔41が形成される。収容部26は、一対の弾性爪体34が形成される幅方向側の一対の側壁部26b、長手方向に側壁部26bの長さより短い正面側壁部26a、正面側壁部26aに対向する背面側壁部26cを有する。収容空間はこれらの4つの面で形成される。背面側壁部26cには保持部24が連結される。収容部26の正面側に、開口部43から連続して切り欠くように形成された切欠部42が形成される。切欠部42は、一対の側壁部26bの正面側の一辺を縁として形成され、開口部43は、一対の側壁部26bの下端側の一辺を縁として形成される。開口部43および切欠部42は、対向する一対の側壁部26bの間で側壁部26bの連続する2辺に渡って形成される。切欠部42および開口部43は、長尺部材22を斜めに挿入するための挿入口として機能する。なお、幅方向は、一対の弾性爪体34が対向する方向である。
切欠部42は、開口部43から正面側壁部26aの上縁に渡って形成される。正面側壁部26aの上縁は、弾性爪体34より挟持部32側に位置する。切欠部42の幅は、収容部26内の収容空間の幅と同じであり、収容部26に収容される長尺部材22が通過可能である。
長尺部材22は、本体部46と、本体部46の一端に形成された押圧面48を含む頭部47と、本体部46の他端に形成された挿入側端部50とを有する。挿入側端部50は、本体部46の外径より細く形成され、長尺部材22の挿入端側が先細形状となるように形成される。これにより、収容部26への挿入が容易となる。本体部46の幅方向側の側面には突出部52がそれぞれ形成される。突出部52は、長尺部材22の長手方向に延びる。
長尺部材22は、挿入側端部50から、切欠部42および開口部43からなる挿入口を介して保持部材20の収容部26に挿入される。具体的には、開口部43が一対の側壁部26bの下縁の間に、切欠部42が一対の側壁部26bの正面側縁の間に形成され、開口部43および切欠部42は側壁部26bの下縁および正面側縁に沿って収容空間を開口させる。つまり、切欠部42も開口である。長尺部材22を収容部26に押し込むと、突出部52が、弾性爪体34の周りに形成されたスリット36に遊嵌され、挿入側端部50が挟持部32に挟持されて、長尺部材22と保持部材20が組み付けられる。長尺部材22の一端である頭部47の押圧面48は開口部43から露出する。突出部52は、スリット36内にて長手方向に移動可能である。このように、保持装置10を車体に係止するための長尺部材22を保持装置10に組み付けることで、ユニット化できる。これにより、保持部材20と保持部材20の車体への止め具が別体で、ユニット化できない保持装置と比べて、輸送が容易となり、その後の取付作業も容易となる。
図4(a)は、保持装置10の斜視図であり、図4(b)は、保持装置10の側面図である。長尺部材22は、収容部26に収容された状態で、保持部材20に対して長尺部材22の長手方向にスライド可能に設けられる。保持部材20に長尺部材22が挿入されて、長尺部材22の挿入側端部50が複数の挟持部32により挟持され、突出部52がスリット36に遊嵌されることで、ユニット化されている。弾性爪体34を形成するためのスリット36に突出部52を遊嵌することで、弾性爪体34の側方への動きを突出部52により制限して、長尺部材22が収容部26から外れるのを抑え、内装部材12に取り付けた状態の保持装置10のガタツキを抑えることができる。
図4(b)に示すように、保持部材20のスリット36は、突出部52より長手方向に長く、突出部52が長手方向に移動できるようになっている。スリット36は、長手方向に沿って延びる。また、4つの挟持部32は、四方から挿入側端部50を挟持しており、挿入側端部50がさらに押し込まれると拡開する。内装部材12の仮止め時には、保持部材20の外周に設けられたフランジ状の第2係止部40と、長尺部材22の頭部47とが離間している。車体パネル14への取付時には、頭部47が第2係止部40に当接するように押圧面48が押し込まれる。
図4(b)に示すように、保持部24は、背面側壁部26cから正面側に向かうように屈曲され、保持部24の先端24aは、押圧面48と長手方向に重複する位置に張り出す。つまり、長手方向において保持部24と頭部47の押圧面48は対向する。保持部24は、収容部26の開口部43を長手方向に見て、3分の1以上覆うように、押圧面48の下方に張り出す。また、保持部24の先端24aからフランジ状の第2係止部40までの最小間隔H1は、長尺部材22の長手方向の長さH2より短い。そのため、長尺部材22を収容部26の開口部43から挿入しようとすると、保持部24が障害となる。実施形態では、図3に示すように、開口部43だけでなく、開口部43に連続して切り欠いて挿入口の一部として形成しているため、長尺部材22を挿入する際、保持部24を避けて長尺部材22を正面斜め方向から収容部26に挿入できる。
弾性爪体34は、第1係合部28および第2係合部30が段状に形成され、第2係合部30は第1係合部28より保持部24の先端24a側に位置し、長手方向の異なる位置の2箇所で係合可能となっている。第1係合部28は、仮止め状態において、内装部材12の第2取付孔12aの縁に係合し、第2係合部30は、本止め状態において、第2取付孔12aの縁に係合する。
第1係止部44が車体パネル14の第1取付孔14aの表側の縁に当接し、第2係止部40が内装部材12の第2取付孔12aの表側の縁に当接する。取付状態においては、挟持部32が第1取付孔14aの裏側の縁に係止し、第2係合部30が第2取付孔12aの裏側の縁に係止する。挟持部32は、内装部材12に第2係合部30が係合した状態において、車体パネル14に係合する第3係合部として機能する。
図5(a)は、保持部材20の斜視図であり、図5(b)は、保持部材20の側面図である。また、図6(a)は、保持部材20の正面図であり、図6(b)は、保持部材20の下面図である。
図5(a)に示すように、角筒状の収容部26に収容空間が設けられ、正面側壁部26a側が切欠部42により切り欠かれている。切欠部42は、収容部26の正面側において、収容部26の長手方向の長さの半分以上を切り欠くように形成される。正面側壁部26aの長手方向の長さは、側壁部26bの長手方向の長さの半分以下であり、側壁部26bより短い。収容部26の側壁部26bには、弾性爪体34が幅方向に撓み可能な片持ち片として形成される。弾性爪体34は、挟持部32側から長手方向に延出する。なお、切欠部42は、正面側壁部26aを全て切り欠くように形成され、切欠部42の軸方向の長さは限定されなくてよく、長尺部材22が収容部26に対して斜めに挿入できればよい。また、弾性爪体34は幅方向に撓み可能な両持ち片として形成されてよい。
弾性爪体34の周りには、収容部26の外部と内部の収容空間を連通するスリット36が形成される。第1係止部44は、収容部26の上端面であり、第1係止部44を外側に延出するように張出部38が形成される。図6(b)に示すように張出部38は、収容部26より外側に張り出し、車体パネル14に当接して、保持装置10の傾斜を抑える。
複数の挟持部32は、収容部26の上端に形成され、撓み可能な弾性爪体である。図6(b)に示すように、貫通孔41を四方から囲むように挟持部32が設けられる。挟持部32は、貫通孔41の中心軸に向かって屈曲する。貫通孔41に挿入側端部50が挿入されると、挿入側端部50の押し込みにより拡開して、挿入側端部50を受け入れて挟持する。実施形態では4つの挟持部32を設ける態様を示したが、対向するように設けられた一対の挟持部32であってよい。
図7は、長尺部材22について説明するための図である。図7(a)は正面側を見た長尺部材22の斜視図であり、図7(b)は背面側を見た長尺部材22の斜視図である。
長尺部材22は、収容部26に収容される本体部46と、本体部46の一端に設けられる傘状の頭部47と、本体部46の他端に設けられ、長手方向に延出する挿入側端部50と、を有する。
挿入側端部50は、保持部材20の貫通孔41に挿入容易にするため、先端が先細形状に形成される。挿入側端部50は、放射状に配置された複数の羽根部64と、その羽根部64の間に、挟持部32に挟持される第1段部54および第2段部56とを有する。複数の羽根部64は、複数の挟持部32の間にそれぞれ入り込む。仮止め状態において、第2段部56に保持部材20の挟持部32が引っ掛かり、本止め状態において、第1段部54に挟持部32が引っ掛かる。挿入側端部50は、第1段部54から第2段部56に渡って先細となるテーパ面が形成され、挿入側端部50の挟持部32に対する相対移動によって挟持部32が拡開するように設けられている。
掛止部58は、本体部46の正面に段状に形成される。掛止部58は、取付時に長尺部材22を押し込む際、正面側壁部26aの上縁に当接して過剰な押し込みを制限する。空隙部62は、本体部46の幅方向の側面に形成され、保持部材20の弾性爪体34が撓む際に入り込む。壁部60は、保持部材20のリブ45に幅方向に対向するように配設され、シェード枠部16を保持部24に引っ掛けた状態でシェードに不測の外力が加わった場合に、保持部材20と長尺部材22の相対的な幅方向のずれを抑える。
図8は、保持装置10の断面図である。図8(a)は図6(b)に示す保持部材20の線分A−Aの同じ位置の断面であり、図8(b)は図6(b)に示す保持部材20の線分B−Bと同じ位置の断面である。
図8(a)に示す保持装置10は、内装部材12および車体パネル14に取り付け前の状態であり、保持部材20のフランジ状の第2係止部40と、長尺部材22の頭部47が離間し、挟持部32が挿入側端部50の第2段部56に係合した状態である。
長尺部材22の押圧面48を上方に押圧した場合、長尺部材22が保持部材20に対して相対移動し、本体部46の上端46aが収容部26の上縁26dに当接して、長尺部材22の移動が止まる。収容部26の正面側壁部26aおよび背面側壁部26cの間に長尺部材22の本体部46をほぼ隙間無く収めることで長尺部材22のガタツキを抑える。
図9は、保持装置10の取付作業について説明するための図である。図9(a)は取付前の保持装置10の正面を示し、図9(b)は内装部材12に仮止めした保持装置10を示し、図9(c)は車体パネル14に本止めした保持装置10を示す。
図9(b)は、第1係合部28が内装部材12の第2取付孔12aの縁に係合し、保持装置10を内装部材12に仮止めした状態を示す。作業者は、保持装置10を仮止めした状態で内装部材12を車体パネル14に取り付ける。
作業者は、挿入側端部50を第1取付孔14aの位置に合わせ、長尺部材22の押圧面48を上方に押し込む。これにより、保持部材20が内装部材12に対して相対移動し、第1係合部28と第2取付孔12aとの係合が外れ、第2係合部30が第2取付孔12aに係合するとともに、挟持部32および挿入側端部50が第1取付孔14aに挿入される。一つの弾性爪体34に形成された第1係合部28および第2係合部30は、弾性爪体34が内向きに撓むことで、第1係合部28および第2係合部30の段を乗り越えるように第2取付孔12aを通過可能となるため、それぞれ別体の弾性爪体に形成する場合と比べて、少ない押し込み力で第1係合部28から第2係合部30に係合位置を変えることができる。
さらに、長尺部材22の押し込みにより、保持部材20の内装部材12に対する相対移動に加えて、長尺部材22が保持部材20に対して相対移動する。これにより、第1取付孔14a内に入り込んだ挟持部32が挿入側端部50の押し込みにより拡開して、長尺部材22の挟持位置が変わり、図9(c)および図2に示すように、第2段部56から第1段部54を挟持するようになる。
ここで、図9(b)に示す保持装置10を仮止めした内装部材12を車体パネル14に接近させると、内装部材12の裏側に突出する保持装置10が車体パネル14に干渉することが問題となる。保持装置10は、仮止め状態と本止め状態で内装部材12に対する係合位置が異なり、仮止め状態において、保持装置10の内装部材12の裏側への突出長さが本止め状態より短いため、内装部材12を車体パネル14に取り付ける際に、保持装置10の端部が車体パネル14に干渉することを抑えることができる。また、仮止め状態の保持装置10の内装部材12の裏側への突出長さを、所定の間隔より短くすることで、仮止め状態において保持装置10が車体パネル14に干渉することをいっそう抑えることができる。
図9(b)に示すように第1取付孔14aの幅は、対向する挟持部32の外側の幅より大きく、挟持部32が長尺部材22の押し込みにより拡開する前の状態では、挟持部32が第1取付孔14aを引っ掛かることなく通過するように設けられている。図9(c)に示すように長尺部材22の押し込みにより、頭部47がフランジ状の第2係止部40を覆った状態となる。図2に示すように第1段部54が凹むように形成されており、挟持部32が第1段部54に嵌るときに作業者にクリック感を伝達することができる。
内装部材12に覆われた状態の車体パネル14に対して、長尺部材22を押し込むだけで保持装置10を組み付けることができ、車体パネル14への組み付け工程が容易となる。また、保持装置10を内装部材12に予め組み付けて車両の組み立て工場に出荷すれば、ボルト孔で保持装置10を組み付ける場合と比べて、車両の組み立て工程を簡素化することができる。
また、鉤状の保持部24にボルト孔を形成していないため、保持部24にボルト孔を形成した場合と比べて保持部24の強度を増すことができる。保持部材20に対して長尺部材22を引き抜くことで、保持装置10の取り外しが容易である。
図10は、変形例の保持装置100の斜視図である。変形例の保持装置100は、図4(a)に示す実施形態の保持装置10と比べて、長尺部材22の頭部147が保持部材20の保持部124の基部124aに入り込み、頭部147の押圧面148が露出した状態となっている。なお、頭部147を本体部46と同じ大きさにして、本止め状態では、長尺部材22が収容部26の収容空間に完全に収容させてよい。
このように、長尺部材122の頭部147を小さく形成することで、保持部124を相対的に大きくでき、保持部124の強度を増して耐荷重性を高めることができる。
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
実施形態では、保持装置10を内装部材12と車体パネル14の両方に係合させる態様を示したが、この態様に限られない。例えば、保持装置10は第1係合部28によって内装部材12に仮止めするものの、取付状態では挟持部32により車体パネル14にのみ係合してもよい。つまり、図4(a)に示す保持装置10から第2係合部30を除いた態様である。この態様によっても、鉤状の保持部24に孔を設けることなく、保持装置10を取り付けることができる。また、内装部材12にのみ保持装置10を取り付けてもよい。
実施形態では、車体の天井に保持装置10を取り付ける態様を示したが、この態様に限られず、車体の側面に設けられてよい。また、保持装置10の保持対象はシェード枠部16に限られず、鉤状の保持部24に引っ掛けられる部材であればよい。
実施形態では、切欠部42を正面側壁部26aに形成する態様を示したが、この態様に限られない。例えば、開口部43に連続する切欠部を側壁部26bに形成して、長尺部材22を側壁部26b側から挿入してもよい。また、収容部26は角筒状に限られず、円筒状であってよく、この場合、開口部43に連続する切欠部は、円筒の側面に形成される。いずれにしても、長尺部材22を斜めに挿入可能に、挿入口が開口部43から収容部26の側方に渡って形成する。