JP2015221763A - 植物生長促進剤及び植物生長促進方法 - Google Patents

植物生長促進剤及び植物生長促進方法 Download PDF

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隆浩 福元
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Abstract

【課題】植物の生長を促進する優れた方法の提供。【解決手段】セロトニンと鉄イオンを含む植物生長促進剤と、これを植物に施用する手順を含む、植物生長促進方法を提供する。この植物生長促進剤によれば、種子の発根・発芽、根の伸長、茎・葉の生長を促進することができ、さらに果実数を増加させることが可能である。また、この植物生長促進剤は、移植樹木の根の活着を促進して、移植後の立ち枯れを防止するためにも用いることができる。【選択図】なし

Description

本発明は、植物生長促進剤及び植物生長促進方法に関する。より詳しくは、セロトニンと鉄イオンを含む植物生長促進剤等に関する。
いくつかの化学物質には、植物に施用することによって植物の生長を促進する効果を示すものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。セロトニン(5−hydroxytryptamine、5−HT)は、哺乳類において良く知られた神経伝達物質であるが、多くの植物もセロトニンを有している。植物におけるセロトニンの詳細な機能は明らかではないが、セロトニンが側根の生長に関与していることが報告されている(非特許文献1参照)。
特開2012−250979号公報 特開2009−001558号公報
Plant Cell Physiol., 2011, 52(3):490-508
本発明は、植物の生長を促進する優れた方法を提供することを主な目的とする。
上記課題解決のため、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供する。
[1]セロトニンと鉄イオンを含む植物生長促進剤。
[2]セロトニンを10pM〜50nM、鉄イオンを0.05〜5.0mg/Lを含む[2]の植物生長促進剤。
[3]セロトニンと鉄イオンを含む植物生長促進剤を植物に施用する手順を含む、植物生長促進方法。
[4]植物への施用が、散布処理、土壌処理、種子処理又は水耕処理である[3]の植物生長促進方法。
[5]セロトニンと鉄イオンを含む植物生長促進剤を移植後の植物に施用する手順を含む、植物根活着促進方法。
本発明により、植物の生長を促進する優れた方法が提供される。
本発明に係る植物生長促進剤について、ヒマワリ種子の発根を促進する作用の評価を行った結果を示す図面代用写真である。 本発明に係る植物生長促進剤について、ムクナ豆種子の発根を促進する作用の評価を行った結果を示す図面代用写真である。 本発明に係る植物生長促進剤の有効性をベビーリーフの水耕栽培において評価した結果を示す図面代用写真である。 本発明に係る植物生長促進剤の有効性をほうれん草の水耕栽培において評価した結果を示す図面代用写真である。 本発明に係る植物生長促進剤の根張り促進効果を評価した結果を示す図面代用写真である。 本発明に係る植物生長促進剤の高塩土壌における有効性を評価した結果を示す図面代用写真である。
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
1.植物生長促進剤
本発明に係る植物生長促進剤は、セロトニンと鉄イオンを含むことを特徴とする。
セロトニンは、合成化合物であっても、天然由来の化合物であってもよい。
合成化合物とする場合、文献記載の公知手法(例えば、Life Sci., 2014, Vol.97, No.1, p.20-26参照)を用いて合成することができる。
天然由来の化合物とする場合、植物の抽出物中に得ることができる。セロトニンを抽出可能な植物としては、特に限定されないが、ひまわり、コーヒー豆、タマネギ、長ネギ、ほうれん草、レタス、チシャ、チコリー、白菜、甘草、パイナップル、バナナ、トマト、キュウリ、ムクナ草、イチゴ、チェリー、プラム、ぶどう、パパイヤ、ベンケイソウ属植物、大豆、レインツリー属植物、エンドウ豆、ハーマル属植物、ピーナッツ、アーモンド、カカオ豆、アカシア(オジギソウ属)、マラキュージャ属植物、プラム、ナスビ、イラクサ、Gush属植物、パンプキン、胡椒、ジャガイモ、トウモロコシ、ブロッコリー、かぼちゃ、さつまいも、ペパーミント、ベリーリーフ、クルミ、レモン、セダー、ベルガモット、ラム、バニラ草、イチョウ、朝鮮人参、高麗人参、ハーブ属(一般にハーブと称される植物の総称)、胡麻、麻、亜麻、綿実、ゴーヤ、スイカ、カキネガラシ、とうがらし、米、玄米、小麦、大麦、ハスカップ、行者ニンニク、人参及びごぼうなどがあげられる。これらの植物には、セロトニンが含まれていることが知られている。また、植物の抽出部位も、特に限定されないが、葉、茎、根、花、種子、果実、及びこれらの皮などであってよい。また、昆布、ワカメ及びモズクなどの海藻類にもセロトニンが含まれており、これらからセロトニンを得ることもできる。特には、ひまわりの種子、トマトの皮、モズク及びワカメ等は、多くのセロトニンを含み、入手や抽出操作も容易であるため、好ましい。
セロトニンの配合量は、特に限定されないが10pM〜50nM、好ましくは50pM〜10nMである。
鉄イオンは、二価あるいは三価鉄であってよい。鉄イオンは、水酸化鉄、酸鉄又は塩化鉄等のかたちで植物生長促進剤に添加することができる。
鉄イオンの配合量は、特に限定されないが、0.05〜5.0mg/Lである。
本発明に係る植物生長促進剤は、水溶液、水和剤、乳剤、液剤、油剤、フロアブル、粉剤、微粒剤、粒剤、エアゾール又はペースト剤等の任意の形態とすることができる。また、本発明に係る植物生長促進剤は、セロトニンと鉄イオンに加えて、植物生長作用を有することが知られている活性成分や、公知の製剤用添加剤を含むことができる。公知の製剤用添加剤としては、賦形剤、乳化剤、湿潤剤等を挙げることができる。
2.植物生長促進方法
本発明に係る植物生長促進剤は、種子の発根・発芽を促進する作用及び根の伸長を促進する作用を有する。また、本発明に係る植物生長促進剤は、茎・葉の生長を促進し、果実数を増加させる作用も有する。さらに、本発明に係る植物生長促進剤は、移植植物の根の活着を促進して、移植後の枯れを防止するためにも用いることができる。
本発明に係る植物生長促進剤の適用対象植物は特に限定されない。植物生長促進剤の植物への施用形態は、散布処理、土壌処理、種子処理及び水耕処理のいずれであってもよい。植物生長促進剤は、そのままあるいは希釈して用いることができる。
散布処理及び土壌処理の場合、植物生長促進剤を水で適宜希釈し(例えば200〜500倍程度)、散布する。種子処理の場合、水で適宜希釈した植物生長促進剤(例えば500〜1000倍程度)中に種子を浸漬する。また、水耕処理の場合、植物生長促進剤を水で適宜希釈して循環水栽培するか(例えば100〜1000倍程度)、あるいは静置水培養する(例えば100〜1000倍程度)。
<製造例1:植物生長促進剤の調製>
以下の手順により、植物生長促進剤を調製した。
1)市販のヒマワリの種(品種名:ミラクルビーム)を生理食塩水(500ml/種子100個)中で粉砕した。
2)市販のトマト(ミニトマト)を37℃の生理食塩水で20分程度ゆでた後、皮のみを採取した。皮をハサミで細かく切り分けた後、生理食塩水(500ml/皮5g)中で粉砕した。
3)市販のモズク及びわかめ(合計30g)を、粘性が生じるまで乳鉢中で混和した。
4)上記1)〜3)の粉砕物及び混和物を混合した(混合液A)。
5)混合液Aを30℃に調整された恒温槽に浸し、18時間程度緩やかに曝気した。
6)続いて、混合液Aを38℃に調整された恒温槽に浸し、6時間程度静置した。
7)市販のコーヒー豆を生理食塩水(500ml/種子50個)中で粉砕し、混合液Aに添加した(混合液B)。
8)混合液Bを23℃に調整された恒温槽に浸し、24時間程度振盪した。
9)続いて、混合液Bを38℃に調整された恒温槽に浸し、44時間程度曝気した。
10)さらに、混合液Bを35℃に調整された恒温槽に浸し、12時間程度静置した。
11)上澄液をボトル(1)に分取し、室温で18時間曝気した。
12)ボトル(1)から1/4量の上澄液をボトル(2)に回収し、室温で18時間静置した。
13)ボトル(2)から1/2量の上澄液をボトル(3)に回収し、室温で18時間曝気した。
14)ボトル(3)から1/4量の上澄液をボトル(4)に回収し、室温で18時間静置した。
15)上澄液をボトル(5)に分注し、40℃に調整した恒温槽で24時間静置した。
16)セファロース粒子を充填したカラムに15)の溶液を滴下し、初回滴下2分後から7分間後までのカラム通過液を回収した。
17)カラム通過液を濾過後(複式濾過、1段目濾紙は0.1μm、2段目濾紙0.05μm、3段目濾紙は0.025μm)、滅菌容器中で室温保存した。
<試験例1:植物生長作用の評価1>
製造例1の植物生長促進剤と市販の液肥について、種子の発根を促進する作用の評価を行った。市販の液肥には、比較品1(ぐんぐん育つ活力剤、ホーマック)、比較品2(HB101、株式会社フローラ)及び比較品3(メネデール、メネデール株式会社)をそれぞれ原液、100倍、1000倍希釈で用いた。
ヒマワリ(ミラクルビーム)の種を、製造例1の植物生長促進剤(500倍希釈)又は市販の液肥を散布した培養土に播種し、1日2回水やりを行った。
発根の状態を観察した結果を図1に示す。図中、(1)は比較品1、(2)は比較品2、(3)は比較品3、(4)〜(6)は本発明の植物生長促進剤の結果を示す。市販の液肥で処理した種子(不図示)では全く発根がみられなかったが、本発明の植物生長促進剤で処理した種子(図左)では発根が認められた。植物生長促進剤の土壌処理により、根の発根と伸長を顕著に促進できることが明らかとなった。
<試験例2:植物生長作用の評価2>
製造例1の植物生長促進剤について、種子の発芽を促進する作用の評価を行った。
ムクナ豆の種を、製造例1の植物生長促進剤(500倍希釈)を散布した培養土に播種し、1日2回水やりを行った。
播種1週間後に種子を採材し、発芽の状態を観察した。結果を図2に示す。図中、(A)は本発明の植物生長促進剤により処理した種子、(B)は処理をしていない種子の結果を示す。本発明の植物生長促進剤で処理した種子のみで発芽が認められ、植物生長促進剤の土壌処理により、発芽を顕著に促進できることが明らかとなった。
<試験例3:植物生長作用の評価3>
製造例1の植物生長促進剤について、水耕処理による有効性を評価した。
ベビーリーフの水耕栽培において、循環水に製造例1の植物生長促進剤を添加(1000倍希釈)して栽培を開始した。植物生長促進剤は、循環水中にして用いた。
栽培開始1週間後に根と葉の状態を観察した。結果を図3に示す。図中、(A)は本発明の植物生長促進剤により処理した植物、(B)は処理をしていない植物を示す。本発明の植物生長促進剤で処理した植物では、処理をしていない植物に比して、根及び葉が顕著に伸長した。植物生長促進剤の水耕処理により、根及び葉を含む地上部の生長を顕著に促進できることが明らかとなった。
また、栽培植物をほうれん草として、同様の評価を行った。ほうれん草の水耕栽培(暗室・微小光条件)において、循環水に製造例1の植物生長促進剤を添加1000倍希釈して栽培を開始した。
栽培開始1週間後に根と葉の状態を観察した。結果を図4に示す。図中、(A)は本発明の植物生長促進剤により処理した植物、(B)は処理をしていない植物を示す。本発明の植物生長促進剤で処理した植物では、処理をしていない植物に比して、葉の伸長が顕著であった。
<試験例4:植物生長作用の評価3>
植物生長促進剤について、移植植物の根の活着を促進する作用の評価を行った。
市販のハーブマットに、製造例1の植物生長促進剤(500倍希釈)を散布し、屋外に静置した。1日2回水やりを行った。
植物生長促進剤の処理1週間後に根の状態を観察した。結果を図5に示す。図中、(A)は本発明の植物生長促進剤により処理した植物、(B)は処理をしていない植物を示す。本発明の植物生長促進剤で処理した植物では、処理をしていない植物に比して、根張りが促進されているのが確認さえる。植物生長促進剤の散布処理によれば、根の活着を促進して、移植後の枯れを効果的に防止できると考えられる。
<試験例5:植物生長作用の評価3>
製造例1の植物生長促進剤について、高塩土壌における有効性を評価した。
海水に浸漬した黒土に、製造例1の植物生長促進剤(500倍希釈)を散布し、ヒマワリ(ミラクルビーム)の種を播種した。1日2回水やりを行った。
播種5日後に発芽の状態を観察し、その際に通常の培養土への植え替えを行った。結果を図6に示す。図中、(A)は播種5日後の結果、(B)は植え替え7日後の結果を示す。本発明の植物生長促進剤が、高塩分を含む土壌においても、種子の発芽とその後の植物体(地上部及び根)の生長を促進する作用を示すことが確認された。
<試験例6:植物生長促進剤の有効成分の解析>
製造例1で調製したセロトニン抽出液(原液)を液体クロマトグラフを用いてフラクション化し、成分の分析を行った。セロトニン抽出液にセロトニンと鉄が含まれていることが分かった。セロトニン抽出液中に、セロトニンは約100pM、鉄イオンは約0.5mg/L含まれていた。
植物生長促進剤の有効成分がセロトニンと鉄であり、セロトニンと鉄を含む植物生長促進剤によって植物の根の発根及び伸長等の作用が発揮されるものと推定された。

Claims (4)

  1. セロトニンと鉄イオンを含む植物生長促進剤。
  2. セロトニンと鉄イオンを含む植物生長促進剤を植物に施用する手順を含む、植物生長促進方法。
  3. 植物への施用が、散布処理、土壌処理、種子処理又は水耕処理である請求項2記載の植物生長促進方法。
  4. セロトニンと鉄イオンを含む植物生長促進剤を移植後の植物に施用する手順を含む、植物根活着促進方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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