JP2015183254A - 水電解セル - Google Patents

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Abstract

【課題】 高表面積な触媒層からなる低酸素過電圧の酸素発生電極を陽極に備えた水電解セルにおいて、電解槽に漏洩電流が流れた場合でも、陰極と陽極の性能劣化を抑制することができる、陰極室及び陽極室の充電容量を有する水電解セルを提供する。
【解決手段】 陰極室21の充放電容量を、陽極室23の充放電容量の1〜2倍の範囲の大きさに調整することで、活性陰極22の電位を活性陰極22の劣化する電位よりも卑な電位に保ち、活性陰極22を保護することができ、陽極24の電位を陽極が還元することによって劣化してしまう電位よりも貴な電位に保ち、陽極24を保護することが出来る。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルカリ性の電解液を電気分解する水電解セルに関する。
近年、COによる地球温暖化、化石燃料の埋蔵量の減少等の問題を解決するためのクリーンエネルギーとして、再生可能エネルギーを利用して製造した水素が注目されている。再生可能エネルギーを利用した水素製造においては、化石燃料の改質による従来の水素の製造に匹敵する安価なコストが求められている。そのため、再生可能エネルギーを利用した水素製造には、従来の技術では達成できなかった水準の高いエネルギー効率と安価な設備が求められる。
上記の要求に応え得る水素の製造方法として、水の電気分解(電解)が挙げられる。水の電解方法としては、陽極及び陰極触媒をコーティングした固体高分子電解質を用いる固体高分子型水電解法、酸素イオン伝導体である固体電解質を用いて、高温・高圧の水蒸気を電解する高温水蒸気電解法、NaOH又はKOH等を含むアルカリ性の水(電解液)を電解するアルカリ水電解法等がある。
中でも、アルカリ水電解法は、大規模化が容易であり、他の水の電解方法に比べると装置が安価であるため、すでに小規模な商業プラントとして実績がある。よって、今後はアルカリ水電解法を用いた大規模な水素製造装置の開発が期待されている。例えば、風力又は太陽光等の自然エネルギーにより発電された電気を利用したアルカリ水の電解により、水素を大量に製造し、水素を消費地へ運搬し供給する構想がいくつも提案されている。
アルカリ水電解に用いられる電解セルユニット(水電解セル)は、通常、陽極(酸素極)と陽極室フレーム、陰極(水素極)と陰極室フレーム、及び陽極室と陰極室とを隔てるイオン透過性膈膜(隔膜)を備えており、電流を流すことにより陽極において酸素が発生し、陰極において水素が発生する。アルカリ水電解における主な電力損失の要因としては、陽極の過電圧、陰極の過電圧、イオン透過性膈膜のオーム損、電解セルユニットを構成する電解セルの構造抵抗によるオーム損等が挙げられる。これらの電力損失を削減することで、電解槽の電解時の電流密度を高めて、設備を小型化し、設備費を大幅に削減することが可能になる。
アルカリ水電解における電力損失の中で、陽極の過電圧による電力損失は、全電力損失の6割程度と大きな割合を占めている。よって、アルカリ水電解装置の電力損失を低減させるために、陽極の過電圧を下げる手段が注目を集めている。
アルカリ水電解において、酸素を発生させる陽極として必要な要件は、酸素発生の過電圧が低いこと以外に、NaOH又はKOH等を含むアルカリ水に曝される環境においても、電極の基材及び触媒層の腐食や、電解液への溶解等が起きにくいことが挙げられる。そのため、一般に陽極に用いられる導電性基材としてはニッケル、ニッケル合金、ステンレススチール、又は鉄若しくはステンレススチールの表面にニッケルメッキを施したものが使われている。また電極触媒(触媒層)としては、多孔質ニッケル、ニッケルを主成分とした酸化物等が用いられている。
電極触媒として、ニッケルを用いたアルカリ水電解において、酸素過電圧を低下させる方法としては、電極触媒の表面積を大きくし、実電流密度を低く抑えることが提案されている。電極触媒の表面積を大きくするために、比表面積が大きい素材であるラネーニッケルを電極として用いることが提案されている。ラネーニッケルは、ニッケルとアルミニウムからなるラネー合金から、NaOHなどのアルカリによって、アルミニウムのみを溶解除去した後に残存するニッケルである。ラネーニッケルは、アルミが溶解することにより多数の細孔が形成された比表面積の非常に大きい多孔質体であり、極めて反応性が高い。ラネーニッケル電極の作製方法としては、電気メッキやプラズマ溶射等の方法で、ニッケル網等の導電性基材の表面にラネー合金層を形成した後に、ラネー合金層をNaOHなどのアルカリによって展開する方法が知られている。
しかしながら、このラネーニッケル電極は、アルカリ水電解用の陽極に用いても、その大きな比表面積から予想されるほどの低い酸素過電圧は未だに実現されていない。その理由について、本発明者らは次のように推定している。
ラネーニッケル電極は非常に微細な細孔を有し、触媒としての反応面積は大きいが、一方で、酸素を発生させる電位においては、表面が酸化され、電極表面に水酸化ニッケルが生成しやすい。さらに、ラネーニッケルの細孔は非常に小さいため、生成した水酸化ニッケルによって細孔が塞がれることにより、予期した活性が得られないと考えられる。
また、ラネーニッケル電極はあまりに多孔質であるため、その機械的強度は非常に弱い。そのため、高電流密度で大量に酸素ガスを発生させるアルカリ水電解用の陽極としてラネーニッケル電極を長時間使用すると、表面のラネーニッケル触媒が脱落し、酸素過電圧が上昇してしまう恐れがある。
さらに、アルミニウムなどと合金化した後、NaOH溶液などでアルミニウムを除去することにより生成されたラネーニッケル等は、空気に曝されると、その表面に吸蔵された水素と空気中の酸素とが発熱を伴い激しく反応する。この反応熱により、表面のニッケルが酸化して触媒としての活性を失う場合がある。従って、アルカリ水電解のように、電解液を抜いてメンテナンスをする必要があるシステムにラネーニッケルを使用する場合、ラネーニッケルの取り扱いが非常に難しい。
これまでに、ラネーニッケル電極をアルカリ水電解用の酸素発生陽極として実用化するために、様々な方法が提案されているが、上記の問題により解決に至っていない。
一方、特許文献1では、ニッケル化合物を主成分として、ある一定範囲の細孔径と比表面積を持つ第一の細孔のグループとそれと異なる細孔径と比表面積を持つ第二の細孔のグループが組み合わされることにより、多孔質でありながら強度が強く、酸素過電圧も低い状態で安定して電解できるアルカリ水電解用陽極が報告されている。
特許文献1に記載のアルカリ水電解用陽極は、触媒層の細孔径と比表面積がアルカリ水電解にとって、最適な範囲に調節されているため、その酸素発生過電圧が低い。また、このアルカリ水電解用陽極は、表面積が大きいので、電極の電位変動によって生じる表面の化学種の酸化・還元に対する耐久性に優れている。このように、アルカリ水電解用陽極をアルカリ水電解用電解槽に適合させることにより、低いセル電圧での水電解が可能になるとともに、再生可能エネルギーのような電力変動が激しい電源を用いたアルカリ水電解においても、陽極として優れた耐久性が発揮される。
しかしながら、表面積が大きく、電気の充放電容量の多いニッケル系の陽極を、アルカリ水電解槽に使用した場合、アルカリ水電解システムの停止時に、陽極よりも卑な電位にある活性陰極室側に、電解槽に存在する金属配管や電解液などからなる寄生抵抗経由で流れる漏洩電流の総量が多くなる。その為、活性陰極の平衡電位が貴な電位に上昇してしまう。活性陰極の電位が、活性陰極の溶解電位になると、活性陰極表面の元素が、活性溶解してしまう。その結果、活性陰極の性能が劣化してしまう問題がある。
ここで、電極の充放電容量とは、ニッケル系陽極を陽分極させて、酸素を発生させるとき、付随して生じるニッケルの酸化反応に伴い放出される電荷量を充電容量と呼び、ニッケル系陽極の還元反応に伴い授受される電荷量を放電容量と呼び、それらを総称したものである。
これに対して、陽極の表面積を小さくする事で、陽極の電気の充放電容量を陰極の許容できる電気量よりも十分小さくすることで、活性陰極を保護することは可能である。しかし、そのような対策をとると、陽極の表面積が減少することで、酸素発生の過電圧が上昇してしまい、アルカリ水電解システムの電力損失が増大する。
特許文献2では、活性陰極よりも漏洩電流を優先的に消費する、かつ表面積の非常に大きな、構造体を陰極の集電体に使用することで、陰極の電位を集電体の平衡電位に保ち、活性陰極を保護する方法が報告されている。
国際公開第2013/191140号 特開2012−57199号公報
しかし、特許文献2の対策も、アルカリ水電解に適用すると次のような問題が生じる。食塩電解の場合、陽極室の電解質の水素イオン指数(pH)が中性付近であり、ルテニウム等の白金族の金属の酸化物の被覆をチタン基材上に設けた不溶性のDSA(Dimensionally Stable Anode:寸法安定性陽極)を使用すると、陽極の電位が卑な電位になっても陽極の性能劣化が生じる問題は生じない。そのため、特許文献2のような方法によって、活性陰極を保護しても、システム上の問題は発生しない。
しかし、アルカリ水電解用の陽極には、特許文献1のようなニッケル系電極が使用されることが多い。特許文献1のようなニッケル系の電極が使用されたアルカリ水電解システムの陰極保護に、特許文献1の方法を適用すると、陰極の電位が卑な電位に保持される反面、反作用として、陽極の電位が卑な電位に低下し過ぎてしまい、陽極表面が過剰に還元されてしまう。これにより、陽極の劣化が促進され、アルカリ水電解システム全体の電力損失を増大させることになる。
陽極表面が過剰に還元された場合に、陽極の劣化が促進される理由は、以下の通りである。ニッケル系電極は、酸素発生電位では、酸化数の高いNiOOHの構造をとる。仮に、電力供給が停止時している状態で、電解槽に漏洩電流が流れても、陽極の電気の充放電容の許容量に対して、漏洩電流が小さければ、陽極の表面の化学種の還元は、Ni(OH)で留まる。ここで、NiOOHとNi(OH)の結晶構造は、どちらも六方晶系の水酸化カドミウム型である。そのため、その酸化・還元反応に伴う構造の可逆性は高く、繰り返し酸化・還元反応が生じても、アルカリ水電解用の陽極としての性能の変化は小さい。
しかしながら、活性陰極を保護するために、陰極の充放電容量を過剰に大きくすると、陽極が許容できる放電容量を超えてしまい、陽極が金属ニッケルまで還元されてしまう場合がある。ここで、金属ニッケルは、面心立方構造であり、NiOOH及びNi(OH)の結晶構造である、六方晶晶系の水酸化カドミウム型の構造と明らかに構造が異なる。そのため、酸化・還元反応が繰り返された場合、陽極表面の微細構造が破壊されて、性能が劣化してしまう場合がある。以上のような理由で、陽極表面が過剰に還元された場合に、アルカリ水電解システムの劣化が促進される恐れがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電力エネルギーの変換効率が高く、再生可能エネルギー等の変動の激しい電力源に対して、高い耐久性を有する陽極を有する水電解セルを提供することを目的とする。
本発明は、電力エネルギーの変換効率の低下を抑制すると共に、出力電力の変動が激しい電力源を使用した場合であっても陽極の劣化を抑制することができる水電解セルを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、陰極室(水素極室)の充放電容量を、陽極室(酸素極室)の充放電容量の1〜2倍の範囲の大きさに調整することで、活性陰極(水素極)の電位を活性陰極の劣化する電位よりも卑な電位に保って活性陰極を保護し、かつ、陽極(酸素極)表面の化学種が金属ニッケルに還元することを防止できることを見出した。これにより、再生可能エネルギー等の出力電力の変動が激しい電力源に対して高い耐久性を有し、水電解セルの運転停止などで水電解セルに漏洩電流が流れた場合に、陰極及び陽極性能が劣化しない、水電解セルを発明するに至った。
すなわち、本発明は、水素極及び酸素極で構成される電極対と、水素極と酸素極との間に挟まれた隔膜と、水素極を支持すると共に電解質水溶液を内包する水素極室と、酸素極を支持すると共に電解質水溶液を内包する酸素極室と、を備え、電解質水溶液を電気分解することにより、水素極室から水素を発生し、酸素極室から酸素を発生する水電解セルにおいて、水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の電荷量が、酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の電荷量の1〜2倍である水素電解セルである。
本発明においては、水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の電荷量が、酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の電荷量の1〜2倍であるので、水素極室の充放電容量を、酸素極室の充放電容量の1〜2倍の範囲の大きさに調整することができる。これにより水素極の電位を水素極が劣化する電位より卑な電位に保って水素極を保護し、かつ、酸素極表面の化学種が金属ニッケルに還元されることが防止される。そのため、再生可能エネルギー等の出力電力の変動が激しい電力源を使用しても酸素極の劣化を抑制することができる。また、本発明によれば、水電解セルの運転停止時などにおいて水電解セルに漏洩電流が流れても、酸素極及び水素極の性能の低下を防止することができ、電力エネルギーの変換効率の低下を抑制することができる。
また、酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の電荷量は、陽極面積1mあたり、0.01〜10Fの範囲であるようにすることができる。
また、酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の電荷量は、陽極面積1mあたり、0.05〜5Fの範囲であるようにしてもよい。
また、水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の電荷量は、陰極面積1mあたり、0.01〜20Fの範囲であるようにすることができる。
また、水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の電荷量は、陰極面積1mあたり、0.05〜10Fの範囲であるようにすることができる。
更に、上記構成において、水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の電荷量が、酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の電荷量の1〜2倍以下となる静電容量を有する漏洩電流吸収体が、水素極と電気的に接続されていてもよい。
また、漏洩電流吸収体は、酸化ニッケル、金属ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むものとすることができる。
また、水素極は、Ru−La−Pt系、Ru−Ce系、Pt−Ce系、及びPt−Ni系からなる群から選択されたものとすることができる。
本発明によれば、再生可能エネルギー等の出力電力の変動が激しい電力源に対して、高い耐久性を有する水電解セルを提供することができる。
本発明は、電力エネルギーの変換効率の低下を抑制すると共に、出力電力の変動が激しい電力源を使用した場合であっても陽極の劣化を抑制することができる水電解セルを提供することができる。
本発明の一実施形態に係るアルカリ水電解用の陽極を備える複極式エレメントの概略断面図である。 (a)は、図1に示す複極式エレメントを備える複極式エレメントスタックの平面図である。(b)は、陽極液入口及び陰極液出口が設けられた側面を示す側面図である。(c)は、陽極液出口及び陰極液入口が設けられた側面を示す側面図である。 各陰極サンプルにおける、陰極室に蓄えられる負の電気量を示すグラフである。 水素発生時に陰極室に蓄えられる負の電荷量を酸素発生時に陽極室に蓄えられる正の電荷量で除した値(電荷量比)と漏洩電流の終点電位の関係を示すグラフである。 図4を、−0.9Vから−1.0V v.s.Ag/AgClの範囲について拡大したグラフである。 水素発生電位と任意の電位の間で、サイクリックボルタンメトリーを10回繰り返したことによる、水素発生過電圧の劣化幅を、任意の電位に対してプロットしたグラフである。 酸素発生電位と任意の電位の間で、サイクリックボルタンメトリーを1000回繰り返したことによる、酸素発生過電圧の劣化幅を、任意の電位に対してプロットしたグラフである。
以下、本発明を実施するための一形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態に係る電解槽では、アルカリ水を電気分解し、陽極で酸素を発生させ、陰極で水素を発生させる。
電解槽は、イオン透過性隔膜(以下「隔膜」と言う。)を介して直列に連結された複数の水電解セル(少なくとも一対の電解セル)を有する。なお、「複数の水電解セルが直列に連結される」とは、各水電解セルが備える陽極及び陰極が所定の方向に沿って交互に並ぶように複数の水電解セルが配置されることを意味する。直列に並んだ多数の水電解セルを有する電解槽は、一般的に、複極式アルカリ水電解槽と呼ばれるものである。
電解槽は、複極式エレメントスタック1の陽極24が陽極ターミナルで終端され、陰極22が陰極ターミナルで終端されたものである。複極式エレメントスタック1は、複数の複極式エレメント2を備えている。
図1は、複極式エレメントスタック1を構成する複極式エレメント2の断面模式図である。複極式エレメント2は、一対の陽極24と陰極22を有する。複極式エレメント2内において、陰極22を取り付けた陰極室枠と、陽極24を取り付けた陽極室枠とが、隔壁25を介して配置されている。つまり、陽極室23と陰極室21とは隔壁25によって区分されている。また、複極式エレメント2の上部には、生成する気体と液体を分離する気液分離室27がある。複極式エレメント2の枠にはガスケット26が配置されている。複極式エレメント2は、一対の陽極24と陰極22との間に隔壁25を備えている。
図2(a)は、複極式エレメントスタック1を構成する一対の複極式エレメント2の平面図、図2(b)は、複極式エレメントスタック1の一方の側面であり、陽極液入口及び陰極液出口が設けられた側面を示す側面図、図2(c)は、複極式エレメントスタック1の他方の側面であり、陽極液出口及び陰極液入口が設けられた側面を示す側面図である。
複極式エレメントスタック1内では、複極式エレメント2、隔膜28、複極式エレメント2がこの順序で直列に並べられている。電解液であるアルカリ水は、陽極室23及び陰極室21に供給される。水電解セルは、隣接する複極式エレメント2において、隔膜28を挟んで対向する陰極22及び陽極24を備えている。一つの水電解セルに属する一対の陽極24と陰極22とは、電気的に接続されている。水電解セルは、隣接する複極式エレメント2の一方の陰極22と、隣接する複極式エレメント2間に配置された隔膜28と、隣接する複極式エレメント2の他方の陽極24とを備えている。水電解セルは、陰極(水素極)22を支持すると共に電解質水溶液を内包する陰極室(水素極室)21と、陽極(酸素極)24を支持すると共に電解質水溶液を内包する陽極室(酸素極室)23と、を備える。
電解液の流れは以下の通りである。陽極24側の電解液である陽極液は、陽極液入口29から陽極室23内に流入し、気液分離室27を通過して、陽極液出口32から排出される。陰極22側の電解液である陰極液は、陰極液入口31から陰極室21内に流入し、気液分離室27を通過して、陰極液出口30から排出される。
各複極式エレメント2は隔膜28を介して直列に連結され、一方の複極式エレメント2の陽極室23と他方の複極式エレメント2の陰極室21とが対向し、且つ隔膜28で分離された状態で、電解が行われる。電解において、アルカリ水中のアルカリ金属イオンは、一方の複極式エレメント2の陽極室23から、隔膜28を通過して、隣の複極式エレメント2の陰極室21へ移動し、OHイオンは複極式エレメント2の陰極室21から隔膜28を通過して陽極室23へ移動する。よって、水電解セルにおいて電解中の電流は、複極式エレメント2が直列に連結された方向に沿って、流れることになる。つまり、水電解セルにおいて、電流は、隔膜28を介して陽極室23から陰極室21に向かって流れる。アルカリ水の電解に伴い、陽極24側で酸素ガスが生成し、陰極22側で水素ガスが生成される。
<陰極>
陰極22としては、Ru−La−Pt系、Ru−Ce系、Pt−Ce系、及び、Pt−Ni系からなる群から選択される熱分解型活性陰極を用いる。特に、Ruを主成分とするRu−La−Pt系やRu−Ce系の陰極については、漏洩電流によって、活性陰極に電荷が流れた場合、ルテニウムの溶出が問題となりやすいので、本発明の適用が効果的である。
<陽極>
陽極24は、導電性基材と、導電性基材を被覆する触媒層と、を備え、触媒層は多孔質体である。なお、触媒層は導電性基材の表面全体を被覆していることが好ましい。
この陽極24の触媒層中の細孔のうち、孔径が2〜5nmの範囲内である第一細孔の比表面積は0.6〜2.0m/gであり、第一細孔の細孔容積は3×10−4〜9×10−4ml/gである。触媒層中の細孔のうち、孔径が0.01〜2.00μmの範囲内である第二細孔の比表面積は2.0〜5.0m/gであり、第二細孔の細孔容積は、0.04〜0.2ml/gである。
孔径が0.01〜2.00μmの範囲内である第二細孔は、比表面積は小さいが、細孔容量が大きいため、第一細孔は、第二細孔の内壁に存在することになる。第一細孔は、触媒層の表面積を非常に大きくする。第一細孔の表面は、水酸化物イオンの酸化反応(酸素の生成反応)の反応場(反応界面)として機能する。第一細孔の内部では、酸素発生の際に水酸化ニッケルが生成され、そのため細孔を更に小さくすると予想される。しかし、第一細孔は孔径が大きな第二細孔の内部に存在するため、第一細孔内で生成された酸素は第二細孔を通じて触媒層の外へ抜けやすく、電解を阻害しにくい。そのため、本実施形態では電解時に酸素発生過電圧が上昇しにくいと推定される。
第一細孔の比表面積は0.6〜1.5m/gであることが好ましく、0.6〜1.0m/gであることがより好ましい。第一細孔の比表面積は0.62〜0.98m/gであってもよい。一般的には第一細孔の比表面積の増加に伴い、酸素発生電位が低くなると考えられる。ただし、第一細孔が小さすぎると酸素発生時に生成する水酸化ニッケルにより第一細孔が完全に埋まり、第一細孔の実質的な表面積が少なくなる傾向がある。第一細孔の比表面積が減少すると、触媒層全体の表面積も減少する傾向がある。触媒層全体の表面積の減少に伴い、酸素発生電位が上昇する傾向がある。
第一細孔の容積は3.3×10−4〜8.5×10−4ml/gことが好ましい。第一細孔の容積は3.6×10−4ml/g〜7.9×10−4ml/gであってもよい。第一細孔の細孔容積の増加に伴い、比表面積が減少する傾向がある。第一細孔の細孔容積の減少に伴い、触媒層全体の比表面積が増加する傾向がある。
第二細孔の比表面積は2.3〜4.5m/gであることが好ましい。第二細孔の比表面積は2.5〜4.2m/gであってもよい。第二細孔の比表面積の増加に伴い触媒層全体の細孔容積が減少する傾向がある。また、第二細孔の比表面積の低下に伴い触媒層全体の細孔容積が増加する傾向がある。
第二細孔の容積は0.04〜0.15ml/gであることが好ましく、0.04〜0.1ml/gであることがより好ましい。第二細孔の容積は0.04〜0.09ml/gであってもよい。第二細孔の細孔容積の増加に伴い、触媒層内で発生した酸素ガスが脱泡し易い傾向がある。第二細孔の細孔容積の減少に伴い、触媒層で発生した酸素ガスが脱泡し難くなる傾向があり、酸素発生過電圧が高くなる傾向がある。一方で、第二細孔の細孔容積の減少に伴い、触媒層の機械的強度は高まる傾向がある。
触媒層は元素としてニッケルを含む。触媒層は、酸化ニッケル、金属ニッケル(ニッケルの金属結晶)及び水酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。触媒層は、ニッケルとその他の金属とから構成される合金を含んでもよい。触媒層は、金属ニッケルからなることが特に好ましい。なお、触媒層は、チタン、クロム、モリブデン、コバルト、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、白金族及び希土類元素等からなる群より選ばれる少なくとも一種をさらに含んでもよい。また、触媒層の表面が、ロジウム、パラジウム、イリジウム及びルテニウム等からなる群より選ばれる少なくとも一種の触媒で修飾されてもよい。
触媒層がニッケルの金属結晶を含み、触媒層中のニッケルの金属結晶の(1 1 1)面によって回折されるX線のピーク強度がINiであり、触媒層中のNiOの(0 1 2)面によって回折されるX線のピーク強度がINiOであるとき、[INi/(INi+INiO)]×100の値が75〜100%であることが好ましい。I[INi/(INi+INiO)]×100は90〜100%であることがより好ましく、95〜100%であることが特に好ましい。
[INi/(INi+INiO)]×100が大きいほど、触媒層の電気抵抗が低く、酸素発生を行う際の電圧損失が小さくなる。触媒層中の酸化ニッケルの部分では、導電性が低下するが、酸素発生反応も起き難い。また、酸化ニッケルは比較的、化学的安定性に優れるため、触媒層が酸化ニッケルを含有することは、触媒層の強度を維持するために有効な場合がある。なお、INi及びINiOは、触媒層についてのXRD((X‐Ray Diffraction)の測定結果から求められる。
触媒層の厚みは50〜800μmであることが好ましく、100〜400μmであることがより好ましい。厚みが50μm以下では、触媒層が薄いため、触媒層全体の表面積が少なくなり、酸素過電圧が高くなることが予想される。また、厚みが800μm以上では触媒層が厚くなりすぎて、剥離等が起こりやすくなる場合があり、さらに陽極24の製作コストが高くなりすぎる場合がある。
陽極24は、アルカリ水電解用陽極として使用した場合、酸素発生時に陽極室23内に蓄えられる正の電荷量は、陽極24の電位(高電位側の電位)を電流密度0.4A/cm2おける酸素発生電位(単位:V v.s.Ag/AgCl)に設定し、酸素を発生させる場合と逆側に電流を流した場合に、陽極24の電位が0Vになるまでに流した電流を積分することで求められる。前記陽極24の正の電荷量の範囲が、陽極面積1mあたり、0.01F以上にすることで、再生可能エネルギー等の出力電力の変動が激しい電力源に対して、高い耐久性を有する陽極24となる。前記陽極24の正の電荷量の範囲を、陽極面積1mあたり、0.05F以上にすることがより好ましく、更に高い耐久性を有する陽極24を得ることができる。
しかしながら、前記陽極24の正の電荷量の範囲が、陽極面積1mあたり、10Fよりも大きくなると、触媒層の構造がもろくなり、触媒層の機械的な強度が弱くなるため、物理的衝撃に対する耐久性が低下する。そのため、前記陽極24の正の電荷量の範囲は、陽極面積1mあたり、10F以下にすることが好ましく、5F以下にすることが特に好ましい。
<導電性基材>
導電性基材としては、ニッケル鉄、バナジウム、モリブデン、銅、銀、マンガン、白金族、黒鉛及びクロム等からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる基材が挙げられる。二種以上の金属からなる合金又は、二種以上の導電性物質の混合物からなる導電性基材を用いてもよい。好ましくは、導電性基材は金属ニッケルからなる。導電性基材の形状としては、網状、板状又はエキスパンドメタル等が挙げられる。好ましくは、導電性基材はエキスパンドメタルである。なお、エキスパンドメタルとは、千鳥状の切れ目を入れた金属板を引き伸ばして網目状に加工したものである。導電性基材に表面処理を行ってもよい。ブラスト処理又はエッチング等により、導電性基材の表面に凹凸を設けると、触媒層と導電性基材との密着性が向上する。導電性基材の厚みは、0.5〜2.0mmであることが好ましく、1〜1.3mmであることがより好ましい。
このようなアルカリ水電解用の陽極24をアルカリ水電解槽(複極式エレメントスタック1)に用いる事で、電力エネルギーの変換効率が高く、再生可能エネルギーなどの出力電力の変動する電源に対する耐久性の高い、アルカリ水電解システムが得られる。
複極式エレメントスタック1によれば、複極式エレメント2を備えているので、電力エネルギーの変換効率の低下を抑制すると共に、出力電力の変動が激しい電力源を使用した場合であっても陽極の劣化を抑制することができる。
(アルカリ水電解用の陽極の製造方法)
本実施形態に係るアルカリ水電解用の陽極24の製造方法は、酸化ニッケルを溶射法によって導電性基材に吹き付ける第一工程(溶射工程)と、導電性基材に吹付けられた酸化ニッケルを還元する第二工程(還元工程)と、を備える。
<溶射工程>
本実施形態の製造方法では、触媒層の出発原料として、酸化ニッケルは粉末状であることが好ましい。第一工程に先立ち、平均粒径が1.0〜5.0μmである酸化ニッケル粉末を噴霧乾燥造粒機により造粒し、平均粒径が10〜100μmである酸化ニッケルの粒子を得る。この酸化ニッケルの粒子をプラズマガス等の高温のガス中に吹き込み、溶融させて、導電性基材に吹き付ける。つまり、導電性基材を溶融した酸化ニッケルでコーティングする。造粒する前の酸化ニッケルの粒径が大きすぎても、小さすぎても、電極を形成した際に必要な孔径や比表面積、細孔容量が得られない。造粒前の酸化ニッケルの粉末の平均粒径は1.0〜5.0μmであることが好ましく、1.0〜1.2μmであることがより好ましい。
酸化ニッケル粉末と他の金属の粉末との混合物を溶射法によって導電性基材に吹き付けてもよい。他の金属の粉末としては、金属ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、コバルト、マンガン、鉄、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、白金族及び希土類元素等からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の粉末が挙げられる。さらに、導電性基材に吹き付ける前の酸化ニッケル粉末に、アラビアゴム、カルボキシルメチルセルロース及びラウリル硫酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を混ぜてもよい。
仮にラネーニッケルを溶射法により導電性基材に吹き付けた場合、ラネーニッケルが溶融して、その表面積が小さくなり、上記のような細孔の孔径、比表面積及び細孔容積を有する触媒層を形成することは困難である。ニッケルとアルミニウムとの合金を溶射法により導電性基材に吹き付けた場合、空気中でアルミニウムが酸化する。そのため、触媒層中のアルミニウムをアルカリ水溶液で除去したとしても、大きな表面積を有する触媒層を得難い。ニッケルとアルミニウムの合金を真空中で溶融して導電性基材に吹き付ける方法により陽極を製造する場合、製造装置が簡便でなく、生産性も低いので、生産コストが高くなり好ましくない。
溶射法としては、アセチレンなどの可燃性ガスと酸素の燃焼熱で溶射用粉末を溶融する方法、溶射法に用いる溶射用粉末(触媒層の原料粉末)を棒状に加工し、可燃性ガスを燃焼した熱で溶融した素材を燃焼ガスで吹き付ける方法、アルゴン、水素、窒素又はヘリウムなどのガスを加熱して得たプラズマガスで溶射用粉末を溶融する方法がある。その中では、窒素又はアルゴンに水素を混ぜたガスをプラズマ化して、プラズマで溶射用粉末を溶融するプラズマ溶射法が好ましい。プラズマ溶射法では、プラズマガスの速度が音速を超える程度に大きく、ガスの温度が5000℃以上である。そのため、融点の高い溶射用粉末を溶融することができ、溶融した溶射用粉末を高速で基材に付着させることができる。その結果、緻密で強度の強いコーティング層(触媒層の前駆体)を形成することが可能になる。プラズマ溶射法を用いた場合、原料粉末のコーティング速度が速いため、10〜1000μmの厚みを有する触媒層を比較的短時間で形成することができる。プラズマ溶射法では、その条件にもよるが、溶融した原料粉末の粒子が基材上に積層する過程で粒子間に形成される細孔が、他の溶射法を用いた場合に比べ緻密になりやすい。水素を含むプラズマガスを用いた溶射法で酸化物を基材に吹き付ける場合、コーティングの一部が還元されやすく、コーティング層の導電性が増し、導電性に優れた陽極を製造することが可能となる。
プラズマ溶射法による吹き付け時の高温状態と、続く急冷過程と、を経由した酸化ニッケル中には、多数の結晶欠陥が形成される。このような酸化ニッケルを還元することにより、高い活性を有する触媒層を形成することが可能となる。本実施形態の触媒層中に第二細孔がどのように形成されるかは必ずしも明らかではないが、上記のような溶射用粉末の組成(酸化ニッケル)及び溶射方法等が第二細孔の形成に影響していると推定している。
<還元工程>
溶射法によって形成されたコーティング層を、水素気流下で還元することにより、触媒層の第一細孔が形成される。コーティング層を電解によって還元してもよい。例えば、コーティング層が形成された導電性基材を陰極として食塩水の電解を行って陰極で水素を発生させることにより、コーティング層が還元され、所望の触媒層が得られる。または、濃度が32%程度である苛性ソーダ水溶液の電気分解を70℃〜90℃の液温で行ってもよい。電気分解の実施時間は1ヶ月から半年程度であればよい。還元工程として、コーティング層が形成された導電性基材を陰極として水の電解を行ってもよい。還元工程として、コーティング層が形成された導電性基材を陰極として、濃度が10%〜30%であるKOH又はNaOHの水溶液の電気分解(陰極における水素の発生)を半年程度行ってもよい。ただし、これらの方法は、時間がかかる上、生産性も低いという欠点がある。しかし、これらの電解還元によれば、微細な細孔が形成された触媒層(多孔質の触媒層)を得ることができる。この電解還元では、低温で実施されるため、酸化ニッケルの還元に非常に時間を要するが、触媒層の第一細孔の孔径を2〜5nmの範囲に容易に制御することができる。電解還元によって得られる触媒層には、脱泡性及び電子伝導性に優れた骨格が形成される。
溶射法により形成されたコーティング層(酸化ニッケル)を水素で還元する際の温度は重要である。還元の温度が高すぎる場合、還元により生じた細孔が熱によりつぶされて、期待する細孔、比表面積及び細孔容量が得られない場合がある。また還元温度が低すぎると、酸化ニッケルの還元が進まない。そのため、水素によるコーティング層の還元反応の温度としては、180〜300℃が好ましく、180〜250℃が特に好ましい。
上記以外の還元方法には、ヒドラジン、亜硫酸ソーダ又は水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤でコーティング層を常温〜100℃で処理する方法もある。しかし、これらの方法は、コーティング層を還元するために非常に長い時間を要し、コーティング層の還元が進み難い。還元反応を促進するために還元剤を100℃以上に加熱することも考えられるが、還元剤の溶液の蒸発や還元剤の分解が生じるため、好ましくない。
一般的に触媒層の原料として使用される酸化ニッケルは、その組成が化学量論比に近い。このような酸化ニッケルの還元開始温度は300℃以上である。そのため、一般的には、酸化ニッケルを400℃以上の高温に加熱した状態で、水素還元が行われてきた。このような温度条件下では酸化ニッケル中の金属の熱運動が激しくなり、金属の凝集が急激に進むため、孔径が2〜5nmの範囲内になる細孔はほとんど消滅してしまう。
一方、溶射法(特にプラズマ溶射法)によって導電性基材に吹き付けられた酸化ニッケルは、上記のように多くの結晶欠陥を含み、化学量論比から外れた組成を有する。そのため、溶射工程を経た酸化ニッケルは還元され易く、250℃以下の低温でも十分に還元される。そして、250℃以下の低温で水素還元を行うことにより、酸化ニッケル中の金属元素の熱運動が抑制され、金属元素が凝集し難い。その結果、孔径が2〜5nmの範囲内になる第一細孔を触媒層中に容易に形成することができる。
上記の溶射工程及び還元工程によって、本発明に用いるアルカリ水電解用陽極を得る事ができる。さらに、触媒層の表面を、ロジウム、パラジウム、イリジウム及びルテニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の触媒で修飾してもよい。
<陰極室の電気の充放電容量の調整方法>
本発明における陰極室21の電気の充放電容量の調整方法は、水素発生時に陰極室21内に蓄えられる負の電荷量が、酸素発生時に陽極室23内に蓄えられる正の電荷量の1倍から2倍の範囲になるような、電気の充放電容量を有する漏洩電流吸収体33或いは、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵することが出来るような、化学電池の負極として機能する漏洩電流を吸収する機能を有する漏洩電流吸収体33を、陰極室21の、陰極室21の電位と等しい電位になる位置に、電気的に接続することで、調整することができる。水素発生時に陰極室21内に蓄えられる負の電荷量が、酸素発生時に陽極室23内に蓄えられる正の電荷量の1倍〜2倍の範囲となる漏洩電流吸収体は、所定の静電容量を有するコンデンサーでもよく、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して蓄える化学電池の負極として機能する構造体でもよい。
漏洩電流吸収体は、導電性基材と、導電性基材を被覆する表面層と、を備える。この表面層中は多孔質体である。
漏洩電流吸収体の電気の充放電容量は、陰極室21の電位と等しい電位になる位置に、電気的に接続した状態で、陰極22の電位を、電流密度0.4A/cmにおける水素発生電位(単位:V v.s. Ag/AgCl)に設定し、水素を発生させる場合と逆側に電流を流した場合に、陰極22の電位が−0.8Vになるまでに流した電流を積分することにより求められる。漏洩電流吸収体の充電容量が、陰極1mあたり、0.01F〜20Fの範囲にすることが好ましく、0.05F〜10Fにすることが特に好ましい。
漏洩電流吸収体の表面層は、元素としてニッケルを含む。この表面層は、酸化ニッケル、金属ニッケル(ニッケルの金属結晶)、水酸化ニッケル及びからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。表面層は、ニッケルとその他の金属とから構成される合金を含んでもよい。表面層が金属ニッケルからなることが特に好ましい。なお、表面層は、チタン、クロム、モリブデン、コバルト、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、白金族及び希土類元素等からなる群より選ばれる少なくとも一種をさらに含んでもよい。
漏洩電流吸収体の電気の表面層がニッケルの金属結晶を含み、表面層中のニッケルの金属結晶の(1 1 1)面によって回折されるX線のピーク強度がINiであり、表面層中のNiOの(0 1 2)面によって回折されるX線のピーク強度がINiOであるとき、[INi/(INi+INiO)]×100の値が75〜100%であることが好ましい。I[INi/(INi+INiO)]×100は90〜100%であることがより好ましく、95〜100%であることが特に好ましい。
[INi/(INi+INiO)]×100が大きいほど、漏洩電流吸収体の単位表面積あたりの充放電容量が大きくなるため、より少量で漏洩電流を吸収する十分な効果を得る事ができる。また、表面層の酸化ニッケルの部分では、導電性が低下するため、再生可能エネルギーなどの変動が激しい電源を用いてアルカリ水電解を行う場合、漏洩電流吸収体の表面で生じる充放電反応に伴い流れる電流による、電力損失をより小さくすることができる。なお、INi及びINiOは、触媒層についてのXRD((X‐Ray Diffraction)の測定結果から求められる。
表面層の厚みは50〜800μmであることが好ましく、100〜400μmであることがより好ましい。厚みが50μm以下では、表面層が薄いため、表面層全体の表面積が少なくなり、単位面積当たりの漏洩電流を吸収する能力が低下するために、陰極室21内に、漏洩電流吸収体を設置することが現実できには困難になる。また、厚みが800μm以上では触媒層が厚くなりすぎて、剥離等が起こりやすくなる場合があり、漏洩電流吸収体の製作コストが高くなりすぎる場合がある。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(漏洩電流吸収体の作製)
粒径が0.2〜2μmである酸化ニッケル粉末100重量部、アラビアゴム2.25重量部、カルボキシルメチルセルロース0.7重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.001重量部、及び水100重量部を混合・攪拌して、懸濁液を調整した。噴霧乾燥造粒機を用いて、懸濁液から、粒径が5〜50μmである造粒物を調製した。
造粒成形物をプラズマ溶射法によって導電性基材の両面に吹き付けた。以上の工程により、導電性基材と、導電性基材を被覆する表面層と、を備える構造体を得た。
(構造体A)
導電性基材としては、予めブラスト処理を施したニッケルエクスパンド基材を用いた。基材の厚みは1mmであった。プラズマ溶射法では、プラズマガスとして、アルゴンと窒素とを1:0.8の割合で混合したガスを用いた。導電性基材の表面を被覆する表面層の前駆体の厚みと、導電性基材の裏面を被覆する表面層の前駆体の厚みが、3:2の割合になるように調整した。導電性基材の表面層の前駆体の重量が、1.5kg/m
に調整したものを構造体Aの前駆体とした。
上記のように作製した構造体Aの前駆体を、切断加工により、寸法を、縦3cm×横3cmに調整した。この電極を、長さ80cm、内径50mmの石英管中に設置した。この石英管を、幅60cmの環状炉内に差し込んで、石英管内を200℃に加熱し、石英管内へ水素気流を2時間供給し続けることにより、触媒層の前駆体を還元した。以上の工程により、導電性基材と、導電性基材を被覆する表面層と、を備える、構造体Aを得た。
(陰極サンプルA)
マイクロメッシュ状の活性陰極(Ru−Ce系の熱分解活性陰極)を切断加工により、寸法を、縦2cm×横2cmに調整した。構造体Aを切断加工により、寸法を、縦2cm×横1cmに調整した。これら活性陰極と構造体Aを積層し、陰極電位と構造体Aの電位が等しい電位になるように接続したものを陰極サンプルAとした。
(陰極サンプルB)
マイクロメッシュ状の活性陰極(Ru−Ce系の熱分解活性陰極)を切断加工により、寸法を、縦2cm×横2cmに調整した。構造体Aを切断加工により、寸法を、縦2cm×横2cmに調整した。これら活性陰極と構造体Aを積層し、陰極電位と構造体Aの電位が等しい電位になるように接続したものを陰極サンプルBとした。
(陰極サンプルC)
マイクロメッシュ状の活性陰極(Ru−Ce系の熱分解活性陰極)を切断加工により、寸法を、縦2cm×横2cmに調整した。これを陰極サンプルCとした。
(陰極サンプルD)
マイクロメッシュ状の活性陰極(Ru−Ce系の熱分解活性陰極)を切断加工により、寸法を、縦2cm×横2cmに調整した。構造体Aを切断加工により、寸法を、縦2cm×横0.8cmに調整した。これら活性陰極と構造体Aを積層し、陰極電位と構造体Aの電位が等しい電位になるように接続したものを陰極サンプルDとした。
(陰極サンプルE)
マイクロメッシュ状の活性陰極(Ru−Ce系の熱分解活性陰極)を切断加工により、寸法を、縦2cm×横2cmに調整した。構造体Aを切断加工により、寸法を、縦2cm×横2.1cmに調整した。これら活性陰極と構造体Aを積層し、陰極電位と構造体Aの電位が等しい電位になるように接続したものを陰極サンプルEとした。
[陰極サンプルの酸化曲線の測定]
陰極サンプルA、B、C,D、Eを、フッ素樹脂製ビーカーを満たすKOHの水溶液に浸漬した。KOHの水溶液の温度は90℃に維持した。水溶液におけるKOHの濃度は30重量%であった。陰極サンプル、白金金網(対極)及び対極の周りを覆うフッ素樹脂の筒を備え、これらの電気伝導性が確保された装置で、陰極サンプルに対して、0.4A/cmの電流密度の還元電流を流し、30分間、水素を発生させた。その後、0.05A/cmの酸化電流を流し、陰極サンプルの電位の変化を測定した。この電位変化を、流した電流のトータル電気量に対してプロットして、陰極サンプルの酸化曲線とした。
測定は、電解液として、30wt%KOHを用い、対極として、メッシュ状の白金電極を用いて、温度90℃にて行った。フッ素樹脂の筒としては、その周りに多数の1mmφの穴を開けたものを用いた。陰極サンプルの陰極電位は、液抵抗によるオーム損の影響を排除するために、ルギン管を使用する三電極法によって測定した。ルギン管の先端と陽極との間隔は、常に0.05mmに固定した。陽極電位の測定装置としては、ソーラートロン社製の「1470BECシステム」を用いた。三電極法用の参照極としては、銀−塩化銀(Ag/AgCl)を用いた。
[水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の電荷量の測定]
陰極サンプルA、B、C,D、Eについて、測定した陰極サンプルの酸化曲線において、陰極電位が−0.8Vv.s.Ag/AgClになるまで流した電流のトータル電気量を水素発生時に水素極室に蓄えられる負の電気量とした。
(陽極サンプルの作製)
粒径が0.2〜2μmである酸化ニッケル粉末100重量部、アラビアゴム2.25重量部、カルボキシルメチルセルロース0.7重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.001重量部、及び水100重量部を混合・攪拌して、懸濁液を調整した。噴霧乾燥造粒機を用いて、懸濁液から、粒径が5〜50μmである造粒物を調製した。
造粒成形物をプラズマ溶射法によって導電性基材の両面に吹き付けた。以上の工程により、導電性基材と、導電性基材を被覆する表面層と、を備える構造体を得た。
(陽極サンプルA)
導電性基材としては、予めブラスト処理を施したニッケルエクスパンド基材を用いた。基材の厚みは1mmであった。プラズマ溶射法では、プラズマガスとして、アルゴンと窒素とを1:0.8の割合で混合したガスを用いた。導電性基材の表面を被覆する表面層の前駆体の厚みと、導電性基材の裏面を被覆する表面層の前駆体の厚みが、3:2の割合になるように調整した。導電性基材の表面層の前駆体の重量が、2.0kg/mに調整したものを陽極サンプルAの前駆体とした。
上記のように作製した陽極サンプルAの前駆体を、切断加工により、寸法を、縦3cm×横3cmに調整した。この電極を、長さ80cm、内径50mmの石英管中に設置した。この石英管を、幅60cmの環状炉内に差し込んで、石英管内を200℃に加熱し、石英管内へ水素気流を2時間供給し続けることにより、触媒層の前駆体を還元した。以上の工程により、導電性基材と、導電性基材を被覆する表面層と、を備える、陽極サンプルAを得た。
[陽極サンプルの陽極電位の測定]
縦2cm×横2cmに切断加工した陽極サンプルを、フッ素樹脂製ビーカーを満たすKOHの水溶液に浸漬した。KOHの水溶液の温度は90℃に維持した。水溶液におけるKOHの濃度は30重量%であった。陽極サンプル、白金金網(対極)及び対極の周りを覆うフッ素樹脂の筒を備え、これらの電気伝導性が確保された装置で、陽極サンプルに対して、還元電流を流し、陽極サンプルの陽極電位の変化を測定した。この電位変化を、流した電流のトータル電気量に対してプロットして、陽極サンプルの還元曲線を測定した。
測定は、電解液として、30重量%KOHを用い、対極として、メッシュ状の白金電極を用いて、温度90℃にて行った。フッ素樹脂の筒としては、その周りに多数の1mmφの穴を開けたものを用いた。陽極サンプルの陽極電位は、液抵抗によるオーム損の影響を排除するために、ルギン管を使用する三電極法によって測定した。ルギン管の先端と陽極との間隔は、常に1mmに固定した。陽極電位の測定装置としては、ソーラートロン社製の「1470BECシステム」を用いた。三電極法用の参照極としては、銀−塩化銀(Ag/AgCl)を用いた。
[酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の電荷量の測定]
陽極サンプルAについて測定した、陽極サンプルの還元曲線において、陽極電位が0Vv.s.Ag/AgClになるまで流した電流のトータル電気量を酸素発生時に酸素極室に蓄えられる正の電気量とした。
[電解停止時の漏洩電流の終点電位曲線の測定]
電解停止時の漏洩電流は、陰極の電位と陽極の電位間の電位差が0Vになった時点で停止する。即ち、陰極サンプルの酸化曲線と陽極サンプルの還元曲線の交点で電解停止時の漏洩電流は停止する。この前提に基づき、各陰極サンプルの酸化曲線と陽極サンプルAの還元曲線の交点を測定することで、電解停止時の漏洩電流の終点電位を求めた。この、電解停止時の漏洩電流の終点電位を、陰極サンプルA、B、C、D、Eの水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の電荷量を陽極サンプルAの酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の電気容量で除した値(電荷量比)に対してプロットして、電解停止時の漏洩電流の終点電位曲線を求めた。
(試験結果)
陽極サンプルの酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の電気容量は、1.54F/mだった。
図3に、陰極サンプルA、B、C、D、Eの水素発生時に陰極室内に蓄えられる負の電荷量を示す。
図4に、電解停止時の漏洩電流の終点電位を、電荷量比に対してプロットして求めた、電解停止時の漏洩電流の終点電位曲線を示す。
図5に、図4の縦軸を、終点電位を細かく観察するために、−0.9Vから−1.0V v.s.Ag/AgClの範囲について拡大した結果を示す。
図6に、陰極電位と水素発生過電圧の劣化幅の関係を示す。水素発生過電圧の劣化幅は以下のようにして求めた。陰極サンプルC(活性陰極)について、電流密度6kA/mで水素を発生させた場合の水素発生過電圧を測定した。この陰極サンプルCの水素発生過電圧を水素発生過電圧の基準とした。陰極サンプルCについて、水素発生電位と任意の電位間で、10回サイクリックボルタンメトリーを行った。その後、陰極サンプルCについて、電流密度6kA/mで水素を発生させた場合の水素発生過電圧を測定した。その水素発生過電圧と先に測定した基準水素発生過電圧の差を水素発生過電圧の劣化幅として求めた。この劣化幅を陰極電位に対してプロットし、陰極電位と水素発生過電圧の関係を求めた。
図6から、陰極電位が−0.2V v.s.Ag/AgCl以上になると陰極サンプルCの触媒層中のRuが溶解するために水素過電圧が上昇してしまうことが分かる。従って、漏洩電流の終点電位を、−0.2V v.s.Ag/AgCl未満にすることで、陰極サンプルCの触媒層中のRu溶出を防止することができる。
図7に、陽極電位と酸素発生過電圧の劣化幅の関係を示す。酸素発生過電圧の劣化幅は以下のようにして求めた。陽極サンプルAについて、電流密度6kA/mで酸素を発生させた場合の酸素発生過電圧を測定した。この陽極サンプルAの酸素発生過電圧を酸素発生過電圧の基準とした。陽極サンプルAについて、酸素発生電位と任意の電位間で、500回サイクリックボルタンメトリーを行った。その後、陽極サンプルAについて、電流密度6kA/mで酸素を発生させた場合の酸素発生過電圧を測定した。その酸素発生過電圧と先に測定した基準酸素発生過電圧の差を酸素発生過電圧の劣化幅として求めた。この劣化幅を陽極電位に対してプロットし、陽極電位と酸素発生過電圧の関係を求めた。
図7から陽極電位が、−0.92V v.s.Ag/AgCl以下になると、酸素発生過電圧が上昇してしまう。これは、陽極電位が、−0.92V v.s.Ag/AgCl以下になると、陽極が完全に還元してしまうためと考えられる。この還元反応が繰り返されることで、陽極サンプルAの表面構造が壊れるため、酸素発生過電圧が上昇すると考えられる。このような陽極サンプルAの酸素発生過電圧の上昇を防ぐためには、漏洩電流の終点電位を、−0.92V v.s.Ag/AgClより大きくしなければならない。
電解停止時の漏洩電流の終点電位曲線より、陰極サンプルDと陽極サンプルAを組み合わせた構成の場合、すなわち、電荷量比が0.8倍の時、漏洩電流の終点電位は、0.065V v.s.Ag/AgClとなり、陰極サンプルDの触媒層中のRuが溶解してしまう。陰極サンプルEと陰極サンプルAを組み合わせた構成の場合、すなわち、電荷量比が2.3倍の時、漏洩電流の終点電位が、−0.93V v.s.Ag/AgClとなり、陽極が完全に還元してしまう。一方、陰極サンプルA及び陰極サンプルBと陽極サンプルAを組み合わせた構成の場合、すなわち、電荷量比が1倍から2倍の時、漏洩電流の終点電位が、−0.92V v.s.Ag/AgClより大きく、−0.2V v.s.Ag/AgClよりも小さい範囲に入るため、陽極サンプル及び陰極サンプルどちらもバランスよく保護することができる。
本発明に係る水電解セルによれば、NaOH又はKOH等を含むアルカリ性の電解液の電気分解において、陽極の酸素発生電位を低減し、高いエネルギー変換効率を示すとともに、自然エネルギーを用いた変動の大きな電力を用いても安定して酸素や水素を製造することが可能である。
1…複極式エレメントスタック、2…複極式エレメント(水電解セル)、21…陰極室(水素極室)、22…陰極(水素極)、23…陽極室(酸素極室)、24…陽極(酸素極)、25…隔壁、26…ガスケット、27…気液分離室、28…隔膜、29…陽極液入口、30…陰極液出口、31…陰極液入口、32…陽極液出口、33…漏洩電流吸収体。

Claims (8)

  1. 水素極及び酸素極で構成される電極対と、
    前記水素極と前記酸素極との間に挟まれた隔膜と、
    前記水素極を支持すると共に電解質水溶液を内包する水素極室と、
    前記酸素極を支持すると共に電解質水溶液を内包する酸素極室と、を備え、
    前記電解質水溶液を電気分解することにより、前記水素極室から水素を発生し、前記酸素極室から酸素を発生する水電解セルにおいて、
    水素発生時に前記水素極室内に蓄えられる負の電荷量が、酸素発生時に前記酸素極室内に蓄えられる正の電荷量の1〜2倍である水電解セル。
  2. 前記酸素発生時に前記酸素極室内に蓄えられる正の電荷量は、陽極面積1mあたり、0.01〜10Fの範囲である請求項1に記載の水電解セル。
  3. 前記酸素発生時に前記酸素極室内に蓄えられる正の電荷量は、陽極面積1mあたり、0.05〜5Fの範囲である請求項1に記載の水電解セル。
  4. 前記水素発生時に前記水素極室内に蓄えられる負の電荷量は、陰極面積1mあたり、0.01〜20Fの範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水電解セル。
  5. 前記水素発生時に前記水素極室内に蓄えられる負の電荷量は、陰極面積1mあたり、0.05〜10Fの範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水電解セル。
  6. 前記水素発生時に前記水素極室内に蓄えられる負の電荷量が、前記酸素発生時に前記酸素極室内に蓄えられる正の電荷量の1〜2倍以下となる静電容量を有する漏洩電流吸収体が、前記水素極と電気的に接続された、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水電解セル。
  7. 前記漏洩電流吸収体が、酸化ニッケル、金属ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項6に記載の水電解セル。
  8. 前記水素極が、Ru−La−Pt系、Ru−Ce系、Pt−Ce系、及びPt−Ni系からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の水電解セル。
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