JP2015149349A - 下地層付き金属部材、絶縁回路基板、半導体装置、ヒートシンク付き絶縁回路基板、及び、下地層付き金属部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
風力発電、電気自動車、ハイブリッド自動車等を制御するために用いられる大電力制御用のパワー半導体素子においては、発熱量が多いことから、これを搭載する基板として、例えばAlN(窒化アルミ)、Al2O3(アルミナ)などのセラミックス基板からなる絶縁層と、この絶縁層の一方の面に形成された導電性の優れた金属からなる回路層と、を備えた絶縁回路基板が、従来から広く用いられている。
また、絶縁回路基板として、絶縁層の他方の面に熱伝導性に優れた金属からなる金属層を形成し、この金属層とヒートシンクを接合したものが提供されている。
ここで、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層に半導体素子をはんだ接合する場合には、表面にアルミニウムの酸化皮膜が形成されるため、はんだ材との接合を良好に行うことができなかった。
また、銅又は銅合金からなる回路層に半導体素子をはんだ接合する場合には、溶融したはんだ材と銅とが反応して回路層の内部にはんだ材の成分が侵入し、回路層の特性が変化するおそれがあった。
また、特許文献3、4には、金属酸化物粒子と有機物からなる還元剤とを含む酸化物ペーストを用いて、半導体素子等の電子部品やヒートシンクベースを接合する技術が提案されている。
ここで、Ag下地層は、ガラスが回路層の酸化被膜と反応することにより形成されたガラス層と、このガラス層上に形成されたAg層とを備えている。このガラス層中には導電性粒子が分散しており、この導電性粒子によってガラス層の導通が確保されている。
また、特許文献5〜7のガラス含有ペーストを用いて金属層の表面にAg下地層を形成し、金属層とヒートシンクとを接合した場合、電気抵抗値が高くなると熱伝導性も劣化することから、金属層からヒートシンクへの熱伝達も阻害され、熱を効率的に放散することができなくなるおそれがあった。
また、金属部材のうち前記被接合体と接合される接合面に形成された下地層が、下地層金属の粉末を堆積することによって形成されているので、下地層は多孔質な構造となり、上述の冷熱サイクル負荷時に金属部材及び被接合体との間に作用する熱ひずみをこの下地層で吸収することができる。
この場合、前記下地層の空隙率が10%以上とされているので、金属部材及び被接合体との間に作用する熱ひずみを下地層で吸収することができ、金属部材や被接合体に割れ等が発生することを抑制できる。
一方、前記下地層の空隙率が50%以下とされているので、下地層の電気抵抗や熱抵抗が上昇することを抑制できる。
この構成の半導体装置によれば、回路層と半導体素子等の電子部品とを、はんだや金属ペースト等の接合材を用いて確実に接合することができる。よって、冷熱サイクル負荷時の接合信頼性に優れ、かつ、確実に回路層と電子部品とが電気的に接合された半導体装置を提供することができる。
この構成のヒートシンク付き絶縁回路基板によれば金属層とヒートシンクとを確実に接合することができる。よって、金属層とヒートシンクとが確実に接合され、絶縁回路基板側の熱をヒートシンク側に効率的に放散することが可能なヒートシンク付き絶縁回路基板を提供することができる。
まず、本発明の第1の実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
図1に、本発明の第1実施形態である半導体装置1を示す。この半導体装置1は、絶縁回路基板10と、この絶縁回路基板10の一方の面(図1において上面)に接合層2を介して接合された半導体素子3と、を備えている。
セラミックス基板11は、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)、Si3N4(窒化ケイ素)、Al2O3(アルミナ)等で構成されている。本実施形態では、放熱性の優れたAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
この下地層30は、図2に示すように、回路層12の表面に、Ag粉末31が堆積されることによって形成されている。
また、下地層30は、多孔質な構造とされており、その空隙率は10%以上50%以下の範囲内とされている。
接合層2は、Ag粒子及び酸化銀粒子の少なくとも一方又は両方と有機物とを含む接合材の焼成体とされており、本実施形態においては、酸化銀粒子と有機物からなる還元剤とを含む酸化銀ペーストの焼成体とされている。すなわち、接合層2は、酸化銀が還元されたAgの焼成体とされているのである。ここで、酸化銀を還元することにより生成される粒子は、例えば粒径10nm〜1μmと非常に微細であることから、緻密なAgの焼成体が形成されることになる。
この酸化銀ペーストは、酸化銀粉末(酸化銀粒子)と、還元剤と、樹脂と、溶剤と、を含有しており、本実施形態では、これらに加えて有機金属化合物粉末を含有している。
酸化銀粉末の含有量が酸化銀ペースト全体の60mass%以上92mass%以下とされ、還元剤の含有量が酸化銀ペースト全体の5mass%以上20mass%以下とされ、有機金属化合物粉末の含有量が酸化銀ペースト全体の0mass%以上10mass%以下とされており、残部が溶剤とされている。この酸化銀ペーストにおいては、焼結によって得られる接合層2に未反応の有機物が残存することを抑制するために、分散剤及び樹脂は添加していない。
有機金属化合物は、熱分解によって生成する有機酸によって酸化銀の還元反応や有機物の分解反応を促進させる作用を有するものであり、例えば蟻酸Ag、酢酸Ag、プロピオン酸Ag、安息香酸Ag、シュウ酸Agなどのカルボン酸系金属塩等が適用される。
なお、この酸化銀ペーストは、その粘度が10Pa・s以上500Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以上300Pa・s以下に調整されている。
まず、Ag及び窒化物形成元素を含む銅部材接合用ペーストを用いてセラミックス基板11の一方の面に銅板22を接合し、回路層12を形成する(回路層形成工程S01)。
ここで、銅部材接合用ペーストは、Ag及び窒化物形成元素を含む粉末成分と、樹脂と、溶剤と、分散剤と、可塑剤と、還元剤と、を含有するものであり、粉末成分は、Ag及び窒化物形成元素以外に、In、Sn、Al、Mn及びZnから選択される1種又は2種以上の添加元素を含有するものとされている。本実施形態では、窒化物形成元素としてTiを用いた。
なお、凝固が終了した後では、Ag及び窒化物形成元素層24のAgが十分に拡散されており、セラミックス基板11と銅板22との接合界面にAg及び窒化物形成元素層24が残存していない。
この下地層形成工程S02においては、図4に示すように、回路層12の表面に対して、プラズマダスト法により、Ag粉末31を堆積することで形成される。すなわち、プラズマと共にAg粉末31を回路層12の一方の面に吹き付けることで下地層30を形成している。本実施形態では、Ag粉末31として、平均粒径0.2μm以上15μm以下の範囲内のものを使用した。また、プラズマダスト法の条件として、回路層12側の温度を150℃以下とし、Ag粉末31の噴射速度を100mm/秒以上500mm/秒以下の範囲内とし、キャリアガス流量を0.5NL/分以上5.0NL/分以下の範囲内とし、プラズマガスの流量を20NL/分以上50NL/分以下の範囲内とした。なお、Ag粉末31のキャリアガスとして窒素、プラズマガスとして窒素+5体積%水素を用いた。
なお、酸化銀ペーストを塗布する際には、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、感光性プロセス等の種々の手段を採用することができる。本実施形態では、スクリーン印刷法によって酸化銀ペーストを印刷した。
そして、半導体素子3と絶縁回路基板10とを積層した状態で加熱炉内に装入し、酸化銀ペーストの焼成を行う(焼成工程S05)。このとき、半導体素子3と絶縁回路基板10とを積層方向に加圧した状態で加熱することによって、より確実に接合することができる。この場合、加圧圧力は0.5〜10MPaとすることが望ましい。
このようにして、下地層30の上に接合層2が形成され、半導体素子3と回路層12とが接合される。これにより、本実施形態である半導体装置1が製造される。
また、拡散層32の厚さが300nm以下とされているので、半導体装置1に対して冷熱サイクルを負荷した場合でも、下地層30に割れ等が発生することが抑制でき、半導体素子3の冷熱サイクルに対する接合信頼性を向上させることができる。
また、下地層30の空隙率が50%以下とされているので、この下地層30の電気抵抗や熱抵抗が上昇することを抑制できる。よって、半導体素子3と回路層12とを確実に電気的に接続できるとともに、半導体素子3で発生した熱を絶縁回路基板10側へと効率良く伝達することができる。
次に、本発明の第2の実施形態について、図5から図8を参照して説明する。
図5に、本発明の第2実施形態である半導体装置101を示す。この半導体装置101は、ヒートシンク付き絶縁回路基板140と、このヒートシンク付き絶縁回路基板140の一方の面(図5において上面)側に第1接合層102を介して接合された半導体素子103と、を備えている。
また、ヒートシンク付き絶縁回路基板140は、絶縁回路基板110と、この絶縁回路基板110の他方の面(図5において下面)側に第2接合層105を介して接合されたヒートシンク141と、を備えている。
ここで、本実施形態では、回路層112と第1下地層130a、金属層113と第2下地層130b、ヒートシンク141と第3下地層130cが、それぞれ下地層付き金属部材とされており、回路層112を構成するCu、金属層113及びヒートシンク141を構成するAlが接合面金属とされ、第1下地層130a、第2下地層130b、第3下地層130cを構成するAgが下地層金属とされている。
また、第1下地層130aは、多孔質な構造とされており、その空隙率は10%以上50%以下の範囲内とされている。
また、第2下地層130b及び第3下地層130cは、多孔質な構造とされており、その空隙率は10%以上50%以下の範囲内とされている。
まず、セラミックス基板111の一方の面に、銅板122を接合して回路層112を形成する(回路層形成工程S101)。本実施形態では、Ag−Cu−Ti系ろう材124を用いて銅板122を接合している。
この第1、第2下地層形成工程S103においては、図7に示すように、回路層112及び金属層113の表面に対して、プラズマダスト法により、Ag粉末131を堆積することで、第1下地層130a及び第2下地層130bを形成している。すなわち、プラズマと共にAg粉末131を回路層112及び金属層113の表面に吹き付けることで第1下地層130a及び第2下地層130bを形成している。ここで、Ag粉末131として、平均粒径0.2μm以上15μm以下の範囲内のものを使用した。また、プラズマダスト法の条件として、回路層112及び金属層113側の温度を150℃以下とし、Ag粉末131の噴射速度を100mm/秒以上500mm/秒以下の範囲内とし、キャリアガス流量を0.5NL/分以上5.0NL/分以下の範囲内とし、プラズマガスの流量を20NL/分以上50NL/分以下の範囲内とした。なお、Ag粉末131のキャリアガスとして窒素、プラズマガスとして窒素+5体積%水素を用いた。
この第3Ag下地層形成工程S104においても、上述した第1、第2下地層形成工程S103と同様に、ヒートシンク141の表面に対して、プラズマダスト法により、Ag粉末131を堆積することで、第3下地層130cを形成している。
また、酸化銀ペーストを塗布した状態で乾燥(例えば、室温、大気雰囲気で24時間保管)した後、金属層113側の酸化銀ペーストにヒートシンク141を積層する(ヒートシンク積層工程S107)。
このようにして、半導体素子103と回路層112とが接合されるとともに、金属層113とヒートシンク141とが接合され、本実施形態である半導体装置101及びヒートシンク付き絶縁回路基板140が製造される。
また、本実施形態では、アルミニウムからなる金属層113の表面に第2下地層130bが形成され、アルミニウム合金からなるヒートシンク141の接合面に第3下地層130cが形成されており、これら第2、第3下地層130b、130cの間に酸化銀ペーストの焼成体からなる第2接合層105が形成されているので、金属層113とヒートシンク141とを確実に接合することができる。
また、拡散層の厚さが300nm以下とされているので、半導体装置101に対して冷熱サイクルを負荷した場合でも、第2下地層130b及び第3下地層130cに割れ等が発生することが抑制でき、ヒートシンク141と絶縁回路基板110とを確実に接合することができる。
また、第2下地層130b及び第3下地層130cの空隙率が50%以下とされているので、これら第2下地層130b及び第3下地層130cの熱抵抗が上昇することを抑制できる。よって、絶縁回路基板110側の熱をヒートシンク141へと効率良く伝達して放散することが可能となる。
次に、本発明の第3の実施形態について、図9から図11を参照して説明する。
図9に、本発明の第3実施形態である半導体装置201を示す。この半導体装置201は、ヒートシンク付き絶縁回路基板240と、このヒートシンク付き絶縁回路基板240の一方の面(図9において上面)側に第1接合層202を介して接合された半導体素子203と、を備えている。
また、ヒートシンク付き絶縁回路基板240は、絶縁回路基板210と、この絶縁回路基板210の他方の面(図9において下面)側に第2接合層205を介して接合されたヒートシンク241と、を備えている。
ここで、本実施形態では、回路層212と第1下地層230a及び金属層213と第2下地層230bが、それぞれ下地層付き金属部材とされており、回路層212及び金属層213を構成するAlが接合面金属とされ、第1下地層230a及び第2下地層230bを構成するCuが下地層金属とされている。
また、第1下地層230a及び第2下地層230bは、多孔質な構造とされており、その空隙率は10%以上50%以下の範囲内とされている。
まず、セラミックス基板211の一方の面及び他方の面に、ろう材箔224、225を介して、回路層212及び金属層213となるアルミニウム板222、223を積層する。本実施形態においては、ろう材箔224,225は、融点降下元素であるSiを含有したAl−Si系のろう材とされている。そして、アルミニウム板222、223、及びセラミックス基板211を積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm2)した状態で、加熱炉内に挿入し加熱して、セラミックス基板211の一方の面及び他方の面に回路層212及び金属層213を形成する(回路層及び金属層形成工程S201)。ここで、回路層及び金属層形成工程S201において、加熱温度は550℃以上650℃以下、加熱時間は30分以上180分以下とされている。
この第1、第2下地層形成工程S203においては、図11に示すように、回路層212及び金属層213の表面に対して、プラズマダスト法により、Cu粉末231を堆積することで、第1下地層230a及び第2下地層230bを形成している。すなわち、プラズマと共にCu粉末231を回路層212及び金属層213の表面に吹き付けることで第1下地層230a及び第2下地層230bを形成している。ここで、Cu粉末231として、平均粒径0.2μm以上15μm以下の範囲内のものを使用した。また、プラズマダスト法の条件として、回路層212及び金属層213側の温度を150℃以下とし、Cu粉末231の噴射速度を100mm/秒以上500mm/秒以下の範囲内とし、キャリアガス流量を0.5NL/分以上5.0NL/分以下の範囲内とし、プラズマガスの流量を20NL/分以上50NL/分以下の範囲内とした。なお、Cu粉末231のキャリアガスとして窒素、プラズマガスとして窒素+5体積%水素を用いた。
また、第2下地層230bの表面に、第2接合層205となるはんだ材を介してヒートシンク241を積層する(ヒートシンク積層工程S204)。
そして、半導体素子203と絶縁回路基板210とヒートシンク241を積層した状態で加熱炉内に装入し、はんだ付けを行う(はんだ付け工程S205)。
また、本実施形態では、アルミニウムからなる回路層212の表面にCuからなる第1下地層230aが形成されており、第1下地層230aと半導体素子203との間にはんだ材からなる第1接合層202が形成されているので、半導体素子203と回路層212とを確実に接合することができる。
さらに、アルミニウムからなる金属層213の表面にCuからなる第2下地層230bが形成されており、第2下地層230bとヒートシンク241との間にはんだ材からなる第2接合層205が形成されているので、金属層213とヒートシンク241とを確実に接合することができる。
以下に、本発明の第4の実施形態について、図12から図16を参照して説明する。
図12に、本発明の第4実施形態である半導体装置301を示す。この半導体装置301は、絶縁回路基板310と、この絶縁回路基板310の一方の面(図12において上面)に接合層302を介して接合された半導体素子303と、を備えている。
この回路層312には、回路パターンが形成されており、その一方の面(図12において上面)が、半導体素子303が搭載される搭載面されている。ここで、回路層312の厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では0.6mmに設定されている。
また、銅層312Bは、図16に示すように、無酸素銅の圧延板からなる銅板322Bがアルミニウム層312Aに固相拡散接合されることにより形成されている。
そして、これらのアルミニウム層312Aと銅層312Bとの界面には、図13に示すように、金属間化合物層315が形成されている。
本実施形態では、図13に示すように、アルミニウム層312A側から銅層312B側に向けて順に、アルミニウム層312Aと銅層312Bとの接合界面に沿って、θ相316、η2相317が積層し、さらにζ2相318a、δ相318b、及びγ2相318cのうち少なくとも一つの相が積層して構成されている(図14の状態図参照)。
また、本実施形態では、銅層312Bと金属間化合物層315との界面に沿って、酸化物319がζ2相318a、δ相318b、又はγ2相318cからなる層の内部に層状に分散している。なお、この酸化物319は、アルミナ(Al2O3)等のアルミニウム酸化物とされている。
また、下地層330は、多孔質な構造とされており、その空隙率は10%以上50%以下の範囲内とされている。
まず、セラミックス基板311の一方の面及び他方の面に、アルミニウム板322A、323を接合し、アルミニウム層312A及び金属層313を形成する(アルミニウム層及び金属層形成工程S301)。
本実施形態では、図16に示すように、セラミックス基板311の一方の面及び他方の面に、ろう材箔324,325を介して、アルミニウム層312A及び金属層313となるアルミニウム板322A、323を積層する。本実施形態においては、ろう材箔324,325は、融点降下元素であるSiを含有したAl−Si系のろう材とされている。そして、アルミニウム板322A、323、及びセラミックス基板311を積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm2)した状態で、加熱炉内に挿入し加熱することにより、アルミニウム板322A、323を接合している。なお、本実施形態では、アルミニウム層及び金属層形成工程S301において、加熱温度は550℃以上650℃以下、加熱時間は30分以上180分以下とされている。
アルミニウム層312Aの上に銅板322Bを積層し、これらを積層方向に加圧(圧力3〜35kgf/cm2)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱することにより、アルミニウム層312Aと銅板322Bとを固相拡散接合する。ここで、銅層形成工程S302において、加熱温度は400℃以上548℃以下、加熱時間は15分以上270分以下とされている。なお、アルミニウム層312Aと銅板322Bとの固相拡散接合を行う場合には、加熱温度を、AlとCuの共晶温度(548.8℃)より5℃低い温度から共晶温度未満の温度範囲とすることが好ましい。
この銅層形成工程S302により、セラミックス基板311の一方の面にアルミニウム層312Aと銅層312Bとからなる回路層312が形成される。
この下地層形成工程S303においては、図16に示すように、回路層312(銅層312B)の表面に対して、プラズマダスト法により、Ag粉末331を堆積することで、下地層330を形成している。すなわち、プラズマと共にAg粉末331を回路層312(銅層312B)の表面に吹き付けることで下地層330を形成している。ここで、Ag粉末131として、平均粒径0.2μm以上15μm以下の範囲内のものを使用した。また、プラズマダスト法の条件として、回路層312側の温度を150℃以下とし、Ag粉末331の噴射速度を100mm/秒以上500mm/秒以下の範囲内とし、キャリアガス流量を0.5NL/分以上5.0NL/分以下の範囲内とし、プラズマガスの流量を20NL/分以上50NL/分以下の範囲内とした。なお、Ag粉末331のキャリアガスとして窒素、プラズマガスとして窒素+5体積%水素を用いた。
なお、酸化銀ペーストを塗布する際には、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、感光性プロセス等の種々の手段を採用することができる。本実施形態では、スクリーン印刷法によって酸化銀ペーストを印刷した。
そして、半導体素子303と絶縁回路基板310とを積層した状態で加熱炉内に装入し、酸化銀ペーストの焼成を行う(焼成工程S306)。このとき、半導体素子303と絶縁回路基板310を積層方向に加圧した状態で加熱することによって、より確実に接合することができる。この場合、加圧圧力は0.5〜10MPaとすることが望ましい。
このようにして、半導体素子303と回路層312(銅層312B)とが接合され、本実施形態である半導体装置301が製造される。
また、本実施形態では、回路層312が銅層312Bを有しているので、半導体素子303から発生する熱を銅層312Bで面方向に拡げることができ、絶縁回路基板310側へ効率的に熱を伝達することができる。
また、回路層312の一方の面側に比較的変形抵抗の大きい銅又は銅合金からなる銅層312Bが形成されているので、パワーサイクル負荷時に、回路層312の変形を抑制することができ、パワーサイクルに対する高い信頼性を得ることが可能となる。
さらに、上述の固相拡散接合の加熱温度を、AlとCuの共晶温度(548.8℃)より5℃低い温度から共晶温度未満の範囲とした場合には、AlとCuの化合物が必要以上に形成されることを抑制できるとともに、固相拡散接合の際の拡散速度が確保され、比較的短時間で固相拡散接合することができる。
例えば、回路層、金属層、銅層等を構成する銅板を、無酸素銅の圧延板として説明したが、これに限定されることはなく、他の銅又は銅合金で構成されたものであってもよい。
同様に、回路層、金属層、アルミニウム層等を構成するアルミニウム板を、純度99.99mass%の純アルミニウムの圧延板として説明したが、これに限定されることはなく、純度99mass%のアルミニウム(2Nアルミニウム)等、他のアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されたものであってもよい。
さらに、ヒートシンクと金属層との間に、緩衝層を設けても良い。緩衝層としては、アルミニウム又はアルミニウム合金若しくはアルミニウムを含む複合材(例えばAlSiC等)からなる板材を用いることができる。これら緩衝層を接合する接合面に下地層を形成してもよい。
次に示す絶縁回路基板を用いて、各種半導体装置(パワーモジュール)を作製した。
絶縁回路基板は、セラミックス基板の一方の面及び他方の面に、表1に示す金属板を接合して製作した。ここで、セラミックス基板は、AlNとし、サイズは27mm×17mm×0.6mmとした。回路層及び金属層となる金属板は25mm×15mmとした。
また、半導体素子のサイズは、13mm×10mm×0.25mmのものを使用した。
従来例1−2においては、ガラス含有Agペーストを用いてAg下地層を形成した。回路層上にガラス含有Agペーストを塗布した後に加熱炉内に装入して、600℃で焼成することによって、回路層上にAg下地層を形成した。ここで使用したガラス含有Agペーストは、セルロース系樹脂と、Bi2O3−ZnO−B2O3系無鉛ガラスフリット、溶剤としてα−テルピネオール及びAgを含有するガラス含有Agペーストとした。
TEM(日本電子株式会社製電界放射形電子顕微鏡JEM−2010F)にて絶縁回路基板の断面の測定を行い、EDS分析により拡散層の位置を特定し、暗視野像により拡散層の厚さを測定した。測定結果を表1に示す。
下地層を形成した絶縁回路基板について、図17及び図18に記載された方法により、テスタ(KEITHLEY社製:2010MULTIMETER)を用いて、下地層の厚さ方向の電気抵抗値を測定した。測定結果を表2に示す。
シェアテストによって、シェア強度(せん断強度)の測定を行った。半導体素子を上にして回路層を水平に固定し、半導体素子をシェアツールで横から水平に押圧して、回路層と半導体素子との接合が破壊されたときの強度及び破壊の位置(破壊モード)を確認した。なお、強度は、3回のシェア強度試験を実施してその平均値とした。評価結果を表2に示す。
超音波探傷装置を用いて、以下の式から半導体素子と回路層との接合率を求めた。ここで、初期接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわち半導体素子面積とした。超音波探傷像において剥離は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を剥離面積とした。
(接合率)={(初期接合面積)−(剥離面積)}/(初期接合面積)×100
なお、半導体装置に冷熱サイクル試験を行い、初期の接合率と冷熱サイクル試験後の接合率とを比較した。冷熱サイクルは、−40℃×5分←→125℃×3分、3000サイクルとした。評価結果を表2に示す。
各発明例、比較例及び従来例の半導体装置を5個ずつ作成し、−40℃×5分←→125℃×3分、3000サイクルの冷熱サイクルを負荷した後に、半導体素子の割れを目視にて確認した。割れた個数が0個であったものを◎と、1個割れていたものを○と、2個以上割れていたものを×と評価した。評価結果を表2に示す。
拡散層の厚さが300nmを超えた比較例2では、冷熱サイクル後の半導体素子割れが多かった。
また、ガラス含有Agペーストにて下地層を形成した従来例1及び従来例2では電気抵抗が高かった。
下地層の断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、空隙率の面積を解析し、(空隙率)=(空隙の面積)/(下地層全体の面積)×100の式により空隙率を求めた。測定結果を表3に示す。
半導体素子としてヒータチップを用いて、半導体装置を作製し、これらの半導体装置を冷却器にろう付け接合した。次に、ヒータチップを100Wの電力で加熱し、熱電対を用いてヒータチップの温度を実測した。また、冷却器を流通する冷却媒体(エチレングリコール:水=9:1)の温度を実測した。そして、ヒータチップの温度と冷却媒体の温度差を電力で割った値を熱抵抗とした。
なお、本発明例13を基準として1とし、この本発明例13との比率で評価した。評価結果を表3に示す。
実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
3、103、203、303 半導体素子
10、110、210、310 絶縁回路基板
12、112、212、312 回路層(金属部材)
30 下地層
31 Ag粉末(下地層金属の粉末)
32 拡散層
113、213、313 金属層(金属部材)
130a、230a 第1下地層(下地層)
130b、230b 第2下地層(下地層)
140、240 ヒートシンク付き絶縁回路基板
141、241 ヒートシンク
Claims (7)
- 被接合体と接合される金属部材と、この金属部材のうち前記被接合体との接合面に形成された下地層と、を備えた下地層付き金属部材であって、
前記金属部材の前記接合面を構成する接合面金属と、前記下地層を構成する下地層金属と、が互いに異なる金属材料とされており、
前記下地層は、前記金属部材の前記接合面に、前記下地層金属の粉末を堆積することによって形成されており、
前記金属部材の前記接合面と前記下地層との間に拡散層が形成され、この拡散層の厚さが10nm以上300nm以下の範囲内とされていることを特徴とする下地層付き金属部材。 - 前記下地層における空隙率が10%以上50%以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の下地層付き金属部材。
- 絶縁層と、この絶縁層の一方の面に配設された回路層と、を備えた絶縁回路基板であって、
前記回路層のうち前記絶縁層が配設された面と反対側の面は、被接合体と接合される接合面とされ、この接合面に下地層が形成され、前記回路層と前記下地層とが請求項1又は請求項2に記載の下地層付き金属部材とされており、
前記下地層は、前記回路層の前記接合面に、前記下地層を構成する下地層金属の粉末を堆積することによって形成されており、
前記回路層の前記接合面と前記下地層との間に拡散層が形成され、この拡散層の厚さが10nm以上300nm以下の範囲内とされていることを特徴とする絶縁回路基板。 - 絶縁層と、この絶縁層の一方の面に配設された回路層と、前記絶縁層の他方の面に配設された金属層と、を備えた絶縁回路基板であって、
前記金属層のうち前記絶縁層が配設された面と反対側の面は、被接合体と接合される接合面とされ、この接合面に下地層が形成され、前記回路層と前記下地層とが請求項1又は請求項2に記載の下地層付き金属部材とされており、
前記下地層は、前記金属層の前記接合面に、前記下地層を構成する下地層金属の粉末を堆積することによって形成されており、
前記金属層の前記接合面と前記下地層との間に拡散層が形成され、この拡散層の厚さが10nm以上300nm以下の範囲内とされていることを特徴とする絶縁回路基板。 - 請求項3に記載の絶縁回路基板と、前記回路層に接合された半導体素子と、を備えたことを特徴とする半導体装置。
- 請求項4に記載の絶縁回路基板と、前記金属層に接合されたヒートシンクと、を備えたことを特徴とするヒートシンク付き絶縁回路基板。
- 請求項1又は請求項2に記載の下地層付き金属部材の製造方法であって、
前記金属部材のうち前記被接合体が接合される接合面に、前記下地層を構成する下地層金属の粉末をプラズマダスト法によって堆積することにより、前記下地層を形成することを特徴とする下地層付き金属部材の製造方法。
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