JP2015148032A - 海島型複合繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 海部と2つ以上の島部とからなり、海部と島部との接合面が繊維長さ方向に連続した海島構造を有し、以下の(a)〜(d)の要件を満たす海島型複合繊維である。
(a)海成分がポリメチルペンテンを主成分とするポリメチルペンテン系樹脂
(b)島成分が分散染料で染色可能な熱可塑性樹脂
(c)繊維横断面における海部の面積比率が50%を超える
(d)繊維横断面における海部の最小厚みが1μm以上
分散染料で染色可能な熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
染色性を改善するために、特許文献1では、芯成分に分散染料で染色することが可能なポリエステル樹脂、鞘成分にポリプロピレン樹脂を配置したポリプロピレン複合繊維が提案されている。このような構成とすることにより繊維を濃色に染色できるうえ、耐光・耐塩素堅牢度も良好なポリプロピレン繊維が得られることが記載されている。
一方、ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂やポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂とからなる繊維は、相溶性が低いため、樹脂の接合面で剥離し易く、製糸安定性や染色性の悪化が生じ、取り扱いが難しいという問題があった。
そこで、特許文献2では、芯成分にポリプロピレン樹脂、鞘成分にポリエステル樹脂を配置し、ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が28g/minを超えて60g/min未満の芯鞘型複合繊維とすることで、糸切れがなく安定して紡糸でき、染色性も良好な芯鞘型複合繊維が得られることが記載されている。また、この文献には、比較的低温の温水浴中で湿熱延伸するなど、穏やかな延伸条件により芯成分と鞘成分の剥離を起こさないようにすることが記載されている。
また、製織、製編された生地は、通常、プレセットやファイナルセット等の乾熱処理を行う。ポリプロピレン樹脂を用いた繊維は、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂を用いた繊維と比べて融点が低く、乾熱処理の際、融着が生じる。このため、ポリプロピレン繊維は、ポリエステル繊維やナイロン繊維等との併用が困難であった。
そこで、特許文献3は、優れた耐熱性と耐薬品性を有する極細繊維を得るために、ポリメチルペンテンを一成分に用いた分割型複合繊維が記載されている。
また、特許文献2は、低温での湿熱処理を行うなどの穏やかな延伸条件とすることによって、繊維の芯鞘剥離を生じにくくすることが記載されているものの、このような条件では生産性が低く、コスト高となる。
一方、特許文献3では、融点が220℃以上の優れた耐熱性を有している繊維が得られることが記載されているものの、この繊維は、主な用途が工業用のフィルターである分割型複合繊維であり、衣料用途に用いる際に重要となる染色性や耐剥離性については記載されていない。
したがって、本発明は、ポリオレフィン樹脂と可染性の熱可塑性樹脂とからなる複合繊維において、特別な延伸方法を採らなくとも、耐剥離性、製糸安定性及び耐熱性が良好で染色斑の少ない、ポリオレフィン複合繊維を得ることを目的としたものである。
(a)海成分がポリメチルペンテンを主成分とするポリメチルペンテン系樹脂
(b)島成分が分散染料で染色可能な熱可塑性樹脂
(c)繊維横断面における海部の面積比率が50%を超える
(d)繊維横断面における海部の最小厚みが1μm以上
また、その中でも、分散染料で染色可能な熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂であることが好ましい。さらに、海島型複合繊維の水滴の接触角は、135°以上であることが好ましい。また、海島型複合繊維は、185℃の乾熱雰囲気下で乾熱処理後に融着および溶断がないことが好ましい。また、海島型複合繊維の密度は1.10g/cm3以下であることが好ましく、単糸繊度は1dtex以上であることが好ましい。
本発明において、島部は、海部の海成分に覆われており、通常のプレセットやファイナルセット等の後加工における乾熱処理でも問題のない良好な耐熱性を備えている。島成分の融点が低すぎると、乾熱処理により、島部の融解が生じ易くなる傾向がある。また高過ぎると、海成分との複合紡糸が難しくなる傾向がある。よって、耐熱性、安定した製糸性や海部と島部との剥離を抑制し易い点から、上記の範囲が好ましい。より好ましい上記熱可塑性樹脂の融点は、210℃以上、270℃以下であり、さらに好ましくは220℃以上、265℃以下である。
海部の最小厚みが1μm未満の場合、延伸工程、製織編工程、染色工程において、海成分と島成分との剥離が生じ易くなる。このため、製糸安定性の悪化、染色斑の発生、染色後の白化現象が生じ易い。
特に好ましくは、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等の熱可塑性樹脂からなる繊維と、混繊や交編織等により混用した繊維構造物であり、これらは、染色性、耐熱性、軽量性、撥水性などの特徴を、適宜、有効に活用しながら、目的とする繊維構造物を得ることができる。
準備した海成分と島成分を別々に溶融して、上記断面形状となるように、紡糸口金より吐出し、冷却した後、延伸して、本発明の海島型複合繊維を得ることができる。
示差走査熱量計(DSC)(リガク製 「DSC 8230」)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/minで300℃まで昇温し、吸熱ピークのピークトップを熱可塑性樹脂の融点とした。
10kgの糸を生産した際の平均糸切れ回数で製糸安定性を評価し、下記の基準でB以上を合格とした。
A:糸切れ回数が1回未満の場合
B:糸切れ回数が1回以上、3回未満の場合
C:糸切れ回数が3回以上の場合
得られた海島型複合繊維の任意の2箇所を長さ方向に垂直に切断し、切断面を電子顕微鏡により1500倍で観察し、島部の融合・剥離の発生状況を確認した。これらの欠点が発生していないものは「良好」とした。また、同様の切断面にて繊維直径、海部の最小厚みを測定した。
JIS L1013に準じて、島津製作所製オートグラフAGSを用いた引張試験を行い、測定長:200mm、引張り速度:200mm/分の条件下にて、繊維が破断したときの破断強度、および破断伸度をそれぞれ5回測定し、その平均値を求めた。
得られた海島型複合繊維はJIS K7112 D法に準じた密度勾配管法により密度を算出した。密度勾配管に重液として塩化亜鉛水溶液、軽液としてエタノールを用いて調整した浸漬液を用意し、23℃の恒温槽24時間静置した。試料を密度勾配管にいれ1時間静置した後、浮沈状態を確認した。軽量性は下記の基準に基づいて評価した。
A:比重が1.0g/cm3未満の優れた軽量性を有する。
B:比重が1.0g/cm3以上、1.1g/cm3未満の良好な軽量性を有する。
C:比重が1.1g/cm3以上で軽量性を有していない。
得られた海島型複合繊維を用いて筒編地を作製し、水平に置いた筒編地表面に2.5μLの水を落とし、水滴の接触角を計測した。撥水性は下記の基準に基づいて評価した。
○:真球に近い水滴で、135°以上の接触角を有する。
×:真球から少しくずれた水滴で、135°未満の接触角を有する。
得られた海島型複合繊維で作製した筒編地を開反した後、20cm×25cmの枠で固定し、185℃の熱風にて2分間乾熱処理を行った。乾熱処理後の布帛を電子顕微鏡により1000倍で観察し、下記の基準により評価した。
○:糸融着や溶断がなく、風合いが硬くならない場合
×:糸融着や溶断があり、風合いが硬くなる場合
得られた海島型複合繊維で作製した筒編地を、70℃で20分間の精錬を行い、水洗、風乾し、分散染料(ダイアニックス(登録商標) ブルー ACE)2.0%o.w.f、浴比1:50、130℃で1時間の高圧染色後、還元洗浄を常法で行い、下記の基準により評価した。
○:色斑や白化現象がない場合
△:色斑はあるが白化現象がない場合
×:白化現象がある場合
海成分にポリメチルペンテン(三井化学製「TPX(登録商標) DX820」、MFR180g/10min、融点233℃)、島成分にポリエチレンテレフタレート(融点258℃)を用い、海:島の面積比率が56:44となるように供給し、図1のように19個の島成分が繊維中央に配置される口金から285℃で紡出し、1500m/minで未延伸糸を巻き取った。次いで、得られた未延伸糸を延伸速度800m/min、延伸倍率2.4倍で延伸し、66dtex/24fの海島型複合繊維を得た。得られた海島型複合繊維の繊維横断面における海部の最小厚みは1.8μmであり、海部と島部の界面での剥離は認められず、製糸安定性は良好であった。185℃で2分間の乾熱処理後も融着や溶断はなく耐熱性に優れたものであった。また色斑なく濃青色に染色され、染色性は良好であった。撥水性評価で計測した接触角は136.8°で良好な撥水性を有し、軽量性も良好であった。得られた結果を表1に示す。
44dtex/24fとした以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製した。得られた海島型複合繊維の繊維横断面における海部の最小厚みは1.1μmであり、海部と島部の界面での剥離は認められず、製糸安定性は良好であった。185℃で2分間の乾熱処理後も融着や溶断はなく耐熱性に優れたものであった。また色斑なく濃青色に染色され、染色性は良好であった。撥水性評価で計測した接触角は136.2°で良好な撥水性を有し、軽量性も良好であった。得られた結果を表1に示す。
島成分が7個配置される口金を用いた以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製した。得られた海島型複合繊維における海部の最小厚みは1.3μmであり、海部と島部の界面での剥離は認められず、製糸安定性は良好であった。185℃で2分間の乾熱処理後も融着や溶断はなく耐熱性に優れたものであった。また色斑なく濃青色に染色され、染色性は良好であった。撥水性評価で計測した接触角は136.5°で良好な撥水性を有し、軽量性も良好であった。得られた結果を表1に示す。
ポリメチルペンテン系樹脂とポリプロピレン(日本ポリプロ製「SA01A」)を80:20の質量比率でブレンドした樹脂を海成分に用いること以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製した。得られた海島型複合繊維における海部の最小厚みは1.6μmであり、海部と島部の界面での剥離は認められず、製糸安定性は良好であった。185℃で2分間の乾熱処理後も融着や溶断はなく耐熱性に優れたものであった。また色斑なく濃青色に染色され、染色性は良好であった。撥水性評価で計測した接触角は136.1°で良好な撥水性を有し、軽量性も良好であった。得られた結果を表1に示す。
通常の芯鞘糸(単芯)となる口金を用いた以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製した。得られた海島繊維は芯成分と鞘成分の界面で剥離がみられた。また、染色性評価では色斑が発生したが、白化現象は生じなかった。撥水性評価で計測した接触角は136.9°と撥水性は良好であった。得られた結果を表2に示す。
図2のように19個の島成分が繊維全体に均一に配置される口金を用いた以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製した。得られた海島型複合繊維における海部の最小厚みは0.3μm以下であり、一部の島部は表面へ露出していた。また、海部と島部との界面で剥離がみられ、製糸安定性は不良であり、染色性評価では白化現象が生じた。島部の露出もあり、撥水性評価で計測した接触角は132.1°と撥水性が低いものであった。得られた結果を表2に示す。
図3のように花弁型で、島成分が繊維表面に露出するように配置される口金を用いた以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製した。熱可塑性樹脂が繊維表面に露出しているため、製糸安定性が悪く、複合繊維を得ることはできなかった。得られた結果を表2に示す。
海:島の面積比率を50:50とした以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製した。得られた海島型複合繊維は島成分が融合し、1つの芯を有する芯鞘繊維となっていた。染色性評価では色斑が発生したが、白化現象は生じなかった。撥水性評価で計測した接触角は135.9°と撥水性は良好であった。得られた結果を表2に示す。
ポリメチルペンテン系樹脂とポリプロピレンを20:80の質量比率でブレンドした樹脂を海成分に用いた以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製した。得られた海島型複合繊維における海部の最小厚みは1.6μmであり、海部と島部の界面での剥離は認められず、製糸安定性は良好であった。185℃で2分間の乾熱処理で融着や溶断が発生し耐熱性は良くなかった。また色斑なく濃青色に染色され、染色性は良好であった。表面張力の上昇により、接触角が133.9°となり、撥水性は低いものであった。得られた結果を表2に示す。
ポリメチルペンテン系樹脂を単独で用い、280℃で口金から紡出し、800m/minで未延伸糸を巻き取った。次いで、得られた未延伸糸を延伸速度600m/min、延伸倍率2.3倍で延伸し、36dtex/24fの海島型複合繊維を得た。185℃で2分間の乾熱処理後も融着や溶断はなく耐熱性に優れたものだったが、ポリメチルペンテン系樹脂は分散染料にて染色できなかったため白色であった。撥水性評価で計測した接触角は137.1°と良好であった。得られた結果を表2に示す。
b 島部
p 繊維外周の接点
q 繊維外周の法線と島部外周の交点
X 海部の最小厚み
Claims (6)
- 海部と2つ以上の島部とからなり、海部と島部との接合面が繊維長さ方向に連続した海島構造を有し、以下の(a)〜(d)の要件を満たす海島型複合繊維。
(a)海成分がポリメチルペンテンを主成分とするポリメチルペンテン系樹脂
(b)島成分が分散染料で染色可能な熱可塑性樹脂
(c)繊維横断面における海部の面積比率が50%を超える
(d)繊維横断面における海部の最小厚みが1μm以上 - 分散染料で染色可能な熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である請求項1記載の海島型複合繊維。
- 水滴の接触角が、135°以上である請求項1または2記載の海島型複合繊維。
- 185℃の乾熱雰囲気下の乾熱処理後に融着および溶断がない請求項1〜3いずれか一項に記載の海島型複合繊維。
- 密度が、1.10g/cm3以下である請求項1〜4いずれか一項に記載の海島型複合繊維。
- 単糸繊度が、1dtex以上である請求項1〜5いずれか一項に記載の海島型複合繊維。
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