JP2015147698A - ポリマーセメント用合成樹脂エマルション - Google Patents

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Abstract

【課題】防水性としての塗膜の伸び、密着性及び耐白華性を満たすことができるポリマーセメント用合成樹脂エマルションを提供する。【解決手段】合成樹脂エマルションは、(A)疎水性単量体由来の構造単位を94〜99.95質量部、(B)親水性単量体由来の構造単位を0.1〜6質量部(但し、単量体由来の構造単位の合計である(A)および(B)の合計は100質量部である。)有する共重合体を含有する。(H)界面活性剤は、単量体由来の構造単位の合計100質量部に対して、不揮発分換算で0.5〜7質量部含有するものが好ましく、合成樹脂エマルションの平均粒子径は250〜500nmであることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリマーセメント用合成樹脂エマルションに関する。
一般に、コンクリート構造物等の被塗装物に対して、合成樹脂塗料は得られる塗膜に防水性を付与できるが、密着性が不十分であり、密着性に優れているセメント塗料から得られる塗膜は防水性としての塗膜の伸びが不十分であった。このため、例えば建築物外壁に用いる塗料から得られる塗膜に防水性としての塗膜の伸びと密着性とを発揮させるためには、建築物外壁に密着強度に優れるセメント塗料を塗布して第1の塗膜を形成した後、防水性としての塗膜の伸びを有する樹脂塗料を塗布して第2の塗膜を形成し、2層構造としなければならなかった。
1つの塗料から得られる塗膜に防水性としての塗膜の伸びと密着性とを発揮させるために、セメントを混ぜる樹脂としてポリマーセメント用合成樹脂エマルションが提案されている。特許文献1には塗膜の伸び率の向上と施工した際の膨れを抑制するポリマーセメント用合成樹脂エマルションが記載されている。
特開2007−001804号公報
しかしながら、ポリマーセメントは得られる塗膜に防水性としての塗膜の伸びと密着性を付与できるが、耐白華性が不十分であった。このため、例えば建築物外壁にポリマーセメントを塗布して塗膜を形成し、その塗膜に白華による変色を防止するには、前記塗膜を形成した後、白華が見えないようにするため上塗り塗料を塗布して上塗り塗膜を形成し、両塗膜による2層構造としなければならないという問題があった。
そこで、本発明の目的とするところは、2層構造としなければならないという条件に制約されることなく、防水性としての塗膜の伸び、密着性及び耐白華性を満たすことができるポリマーセメント用合成樹脂エマルションを提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の合成樹脂エマルションは、(A)疎水性単量体由来の構造単位を94〜99.95質量部、(B)親水性単量体由来の構造単位を0.05〜6質量部(但し、単量体由来の構造単位の合計である(A)および(B)の合計は100質量部である。)有する共重合体を含有し、平均粒子径が250〜500nmであることを特徴とする。
請求項2に記載の発明の合成樹脂エマルションは、請求項1に係る発明において、(A)疎水性単量体由来の構造単位が、(A−1)α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を59.95〜84.95質量部、(A−2)芳香環含有不飽和単量体由来の構造単位を15〜40質量部含有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明の合成樹脂エマルションは、請求項1又は請求項2に係る発明において、(B)親水性単量体由来の構造単位が、(B−1)(メタ)アクリル酸を0.05〜1.0質量部含有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明の合成樹脂エマルションは、請求項1から請求項3のいずれか一項に係る発明において、単量体由来の構造単位の合計100質量部に対して、(H)界面活性剤が不揮発分換算で0.5〜7質量部含有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明の合成樹脂エマルションは、請求項1から請求項4のいずれか一項に係る発明において、(H)界面活性剤が、(H−1)非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、(H−2)陰イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩又はポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩であり、(H−1)/(H−2)=1〜3であることを特徴とする。
請求項1に記載の発明の合成樹脂エマルションによれば、防水性、密着性及び耐白華性を満たすことができるポリマーセメントからなる塗膜を提供することができるという優れた効果を奏する。
請求項2に記載の発明の合成樹脂エマルションによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、ポリマーセメントから形成される塗膜の撥水性を高めてより防水性を向上させることができるという優れた効果を奏する。
請求項3に記載の発明の合成樹脂エマルションによれば、請求項1及び2に記載の発明の効果に加え、ポリマーセメントから形成される塗膜のコンクリート等の被塗装物への密着性をより向上させることができるという優れた効果を奏する。
請求項4に記載の発明の合成樹脂エマルションによれば、請求項1から3に記載の発明の効果に加え、エマルションの貯蔵安定性に優れ、ポリマーセメントから形成される塗膜の耐白化性に優れたものとなるという優れた効果を奏する。
請求項5に記載の発明の合成樹脂エマルションによれば、請求項1から4に記載の発明の効果に加え、合成樹脂エマルションはセメント混和性に優れ、ポリマーセメントから形成される塗膜は耐水性に優れたものとなるという優れた効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ポリマーセメントとは、本明細書において合成樹脂エマルションとセメントと骨材と必要により水及び添加材などを混ぜ合わせたスラリー状の塗材をいう。
合成樹脂エマルションとは、非水溶性の共重合体粒子が界面活性剤により水などの水性媒体中で乳化・分散した混濁液をいう。合成樹脂エマルションは、水などの水性媒体が蒸発することにより、共重合体粒子同士が融着し共重合体からなる膜を形成する。
ポリマーセメントは、例えばコンクリート構造物等の被塗物に塗布してポリマーセメントが乾燥及び成膜することにより塗膜(以下、ポリマーセメントから形成される塗膜という。)を形成する。被塗物としては、コンクリート以外のフレキシブル板(繊維強化セメント板)などの建築資材や鋼板などの金属板等であってもよい。
前記合成樹脂エマルションは、ポリマーセメントの有機結合材の主成分であって、(A)疎水性単量体由来の構造単位を94〜99.95質量部、(B)親水性単量体由来の構造単位を0.1〜6質量部(但し、単量体由来の構造単位の合計である(A)および(B)の合計は100質量部である。)有する共重合体を含有するものである。また、前記合成樹脂エマルションは、平均粒子径が250〜500nmであるものであり、単量体由来の構造単位の合計100質量部に対して、(H)界面活性剤を不揮発分換算で0.5〜7質量部含有するものである。平均粒子径が250nmを下回るとセメントを混和した際にセメントに含まれるイオンに対する合成樹脂エマルションの安定性が減少して合成樹脂エマルションが凝集するおそれがある。一方、500nmを上回ると合成樹脂エマルション粒子が大きすぎて自重で沈降し分離したりするおそれがある。
(A)疎水性単量体由来の構造単位の含有量は、単量体成分の合計100質量部に対し、好ましくは94〜99.95質量部である。この範囲にある合成樹脂エマルションを用いたポリマーセメントからなる塗膜は、防水性、密着性及び耐白華性に優れるためである。94質量部を下回るとポリマーセメントから形成される塗膜の防水性及び耐白華性が不十分となるおそれがある。一方、99.95質量部を上回ると(B)親水性単量体由来の構造単位が少ないことによりポリマーセメントから形成される塗膜のコンクリート等の被塗装物への密着性が不十分となる恐れがある。より好ましくは95.5〜99.0質量部であり、最も好ましくは97.0〜97.5質量部である。
(A)疎水性単量体由来の構造単位としては、(A−1)α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位、(A−2)芳香環含有不飽和単量体由来の構造単位とがある。疎水性であるためポリマーセメントから形成される塗膜の撥水性を高めてより防水性を向上させることができる点から好ましい。
(A−1)α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が用いられる。なお、(メタ)アクリルは、アクリルとメタクリルの総称である。
(A−2)芳香環含有不飽和単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエン等が用いられる。(A−2)芳香環含有不飽和単量体は前記(A−1)α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体より疎水性が強く、よりポリマーセメントから形成される塗膜の防水性を向上させることができる。
(A−2)芳香環含有不飽和単量体の含有量は、単量体成分の合計100質量部に対し、好ましくは15.0〜40.0質量部である。15.0質量部を下回るとよりポリマーセメントから形成される塗膜の防水性を向上させる効果が不十分となるおそれがある。一方、40.0質量部を上回ると(A−2)芳香環含有不飽和単量体には紫外線による変色特性があるため長期的にポリマーセメントから形成される塗膜が変色する恐れがある。より好ましくは20.0〜35.0質量部であり、最も好ましくは25.0〜30.0質量部である。
(B)親水性単量体由来の構造単位としては、(B−1)(メタ)アクリル酸に加え、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2−アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンスルホン酸ナトリウム等が用いられる。親水性であるためポリマーセメントから形成される塗膜のコンクリート等の被塗装物への密着性を向上させることができる。
(B)親水性単量体由来の構造単位の含有量は、単量体成分の合計100質量部に対し、好ましくは0.05〜6.0質量部である。0.05質量部を下回るとポリマーセメントから形成される塗膜のコンクリート等の被塗装物への密着性が不十分となるおそれがある。一方、6.0質量部を上回ると親水性であるためポリマーセメントから形成される塗膜の防水性が不十分となる恐れがある。より好ましくは1.0〜4.5質量部であり、最も好ましくは2.5〜3.0質量部である。
(B−1)(メタ)アクリル酸としては、(メタ)アクリル酸、ジ(メタ)アクリル酸等が用いられる。親水性であるためポリマーセメントから形成される塗膜のコンクリート等の被塗装物への密着性を向上させることができることに加え、エマルションの安定性を向上させることができる。
(B−1)(メタ)アクリル酸の含有量は、単量体成分の合計100質量部に対し、好ましくは0.05〜1.0質量部である。0.05質量部を下回るとエマルションの安定性を向上させる効果が不十分となるおそれがある。一方、1.0質量部を上回ると(B−1)(メタ)アクリル酸にはポリマーセメントから形成される塗膜に白華が発現しやすいという特性があるため、耐白華性が劣る恐れがある。より好ましくは0.1〜0.9質量部であり、最も好ましくは0.5〜0.8質量部である。
(H)界面活性剤とは、単量体又は単量体由来の構造単位と水性媒体とを乳化させることを目的とする、分子内に親水基と疎水基とをもつ物質である。(H)界面活性剤は、単量体由来の構造単位の合計100質量部に対して、不揮発分換算で0.5〜7質量部含有することが好ましい。エマルションの貯蔵安定性に優れ、ポリマーセメントから形成される塗膜の耐白化性に優れるためである。0.5質量部を下回るとエマルションの表面積が小さくならざるを得なくエマルションの平均粒子径が大きくなり貯蔵安定性が劣るおそれがある。一方、7質量部を上回ると (H)界面活性剤には水を吸収しやすい特性があるためポリマーセメントから形成される塗膜の耐白化性が劣る恐れがある。より好ましくは1.0〜5質量部であり、最も好ましくは2〜4質量部である。
(H)界面活性剤は、(H−1)非イオン性界面活性剤及び(H−2)陰イオン性界面活性剤を使用することができる。そして、(H−1)非イオン性界面活性剤と(H−2)陰イオン性界面活性剤とは、併用して使うことによって前記合成樹脂エマルションの粒子径を大きくすることができるとともにポリマーセメントから形成される塗膜の耐水性に優れるためより望ましい。(H−1)非イオン性界面活性剤と(H−2)陰イオン性界面活性剤の添加比率は、好ましくは(H−1)/(H−2)=1〜3である。合成樹脂エマルションはセメント混和性に優れ、ポリマーセメントから形成される塗膜は耐水性に優れたものとなるためである。1を下回ると前記合成樹脂エマルションの粒子径を大きくすることができなくセメントが混和しないおそれがある。一方、3を上回るとポリマーセメントから形成される塗膜の耐水性が悪くなるおそれがある。より好ましくは(H−1)/(H−2)=1.5〜2.5であり、最も好ましくは(H−1)/(H−2)=1.8〜2.2である。
(H−1)非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体、ソルビタン脂肪酸エステルなどを使用することができる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルが耐水性に優れるため好ましい。また、HLB(hydrophile lipophile balance)は16〜19であるものが好ましい。エマルションにセメントが混和しやすく、ポリマーセメントから形成される塗膜の耐水性に優れたものとなるためである。16を下回るとエマルションの粒子径が小さくなりセメントが混和しないおそれがある。一方、19を上回るとより親水性となるためポリマーセメントから形成される塗膜の耐水性が劣る恐れがある。より好ましくは17〜19であり、最も好ましくは18〜19である。
(H−1)非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、日本乳化剤株式会社製のニューコール2318(HLB:16.0)、ニューコール2320(HLB:16.4)、ニューコール2327(HLB:17.2)、ニューコール2330(HLB:17.5)、ニューコール2344(HLB:18.2)、ニューコール2360(HLB:18.6)、ニューコール2399−S(HLB:19.2)、ニューコールNT−20(HLB:16.3)、ニューコールNT−30(HLB:17.4)、ニューコールNT−40(HLB:18.0)及びニューコールNT−50(HLB:18.3)、花王株式会社製のエマルゲン123P(HLB:16.9)、エマルゲン130K(HLB:18.1)、エマルゲン147(HLB:16.3)、エマルゲン150(HLB:18.4)、エマルゲン350(HLB:17.8)、エマルゲン430(HLB:16.2)、エマルゲン1118S−70(HLB:16.4)、エマルゲン1135S−70(HLB:17,9)、エマルゲン1150S−60(HLB:18.5)及びエマルゲン4085(HLB:18.9)並びに第一工業製薬製のノイゲンXL−160(HLB:16.3)、ノイゲンXL−160D(HLB:16.3)、ノイゲンXL−400(HLB:18.4)、ノイゲンXL−400D(HLB:18.4)、ノイゲンXL−1000(HLB:19.3)、ノイゲンTDS−200D(HLB:16.3)及びノイゲンTDS−500F(HLB:18.3)等がある。(H−1)非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルとしては、日本乳化剤株式会社製のニューコール719(HLB:16.0)、ニューコール723(HLB:16.6)、ニューコール723(60)(HLB:16.6)、ニューコール729(HLB:17.2)、ニューコール733(HLB:17.5)、ニューコール740(HLB:17.9)、ニューコール740(60)(HLB:17.9)、ニューコール747(HLB:18.2)及びニューコール780(60)(HLB:18.9)並びに花王株式会社製のエマルゲンA−500(HLB:18.0)等があるが、これらに限定されるものではない。
(H−2)陰イオン性界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩、アルキル硫酸アルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノール硫酸アルカリ金属塩、アルキルジフエニルエーテルジスルホン酸アルカリ金属塩、ジアルキルスルホコハク酸アルカリ金属塩などを用いることができる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノール硫酸アルカリ金属塩が分子中に占める親油基の割合が大きいために前記合成樹脂エマルションの粒子径を大きくすることができるため好ましい。ただし、(H−2)陰イオン性界面活性剤は親水性が強いため、添加割合が大きいとポリマーセメントから形成される塗膜の耐水性が悪くなるおそれがある。
(H−2)陰イオン性界面活性剤のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アルカリ金属塩としては、日本乳化剤株式会社製のニューコールB4−SN、ニューコールB13−SN、ニューコール1020−SN、ニューコール2308−SF、ニューコール2320−SN、ニューコール2360−SN、ニューコール1305−SN、ニューコール1330−SF及びニューコール1703−SFD、花王株式会社製のエマール20C、エマールE−27C、エマール270J、エマール20CM、エマールD−3−D、エマールD−4−D、エマール、ラテムルE−118B、ラテムルE−150、レベノールWX及びラテムルWX並びに第一工業製薬製のハイテノールXJ−630S、ハイテノール330T、ハイテノール227L、ハイテノール325L、ハイテノール325SM及びハイテノールW−2320等がある。(H−2)陰イオン性界面活性剤のポリオキシエチレンアルキルフェノール硫酸アルカリ金属塩としては、日本乳化剤株式会社製のニューコール707−SF、ニューコール707−SFC、ニューコール707−SN、ニューコール714−SF、ニューコール714−SN、ニューコール723−SF、ニューコール740−SF、ニューコール780−SF、ニューコール2607−SF及びニューコール2614−SF並びに第一工業製薬製のハイテノールNF−08、ハイテノールNF−0825、ハイテノールNF−13及びハイテノールNF−17等があるが、これらに限定されるものではない。
重合開始剤とは、単量体の重合を開始させるためのラジカルを発生するために加えられる化合物である。
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などの無機系重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどのパーオキサイド類、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物類などの有機系重合開始剤を使用することができる。これらの中でも過硫酸塩などの無機系重合開始剤が水への溶解度が大きく容易に水溶液にすることができるため好ましい。重合開始剤の使用量は、単量体成分100質量部に対し、好ましくは0.1〜1.5質量部の使用である。0.1を下回ると重合が不十分となるおそれがある。一方、1.5質量部を上回るとポリマーセメントから形成される塗膜の耐水性が劣る恐れがある。より好ましくは0.2〜1.0質量部であり、最も好ましくは0.3〜0.5質量部である。
前記合成樹脂エマルションは、複数種類の前記単量体成分が水性媒体中で乳化重合して共重合体となりできあがるものである。なお、単量体の配列としては、特に制限されるものではなく、グラフト状、ブロック状、ランダム状の何れであってもよい。
フォックス(FOX)の計算式から求められる共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−40〜0℃である。ポリマーセメントから形成される塗膜の耐汚染性と防水性に優れるためである。−40℃を下回るとポリマーセメントから形成される塗膜が粘着性を有したものとなり埃などの汚染物質が付着しやすくなり耐汚染性が不十分となるおそれがある。一方、0℃を上回るとポリマーセメントから形成される塗膜が硬くなり防水性が不十分となるおそれがある。より好ましくは−30〜−10℃であり、最も好ましくは−25〜−15℃である。
フォックスの計算式から得られるTgとは、下記(a)式により算出したものである。単量体のTgは、ポリマーハンドブック(John Willey & Sons)に記載されている値などの既知の値を用いることができる。なお、式中、Wiは単量体iの質量分率、Tgiは単量体iのTg(℃)を示す。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))・・・(a)
前記乳化重合の方法は、特に制限されるものではない。一例をあげると、重合反応が進行する反応器に水性媒体として水または水溶液(以下、反応器水性媒体という。)を入れて、該反応器に、前記単量体成分、乳化剤としての界面活性剤及び水又は水溶液等を予め乳化させたもの(以下、プレ乳化エマルションという。)と重合開始剤水溶液を滴下して行うことができる。
反応器水性媒体にはエマルションの粒子径を調整するために界面活性剤を予め添加することができる。また、これに代えてプレ乳化エマルションを界面活性剤必要量を予め添加することができる(以下、初期添加プレ乳化エマルションとする。)。前記合成樹脂エマルションの粒子径は前記反応器中の反応器水性媒体の(H−2)陰イオン性界面活性剤の濃度に依存するためである。なお、初期添加プレ乳化エマルションには、これを核として単量体の重合が始まるため、重合を安定して行うことができるという効果もある。
重合開始時の反応器水性媒体の(H−2)陰イオン性界面活性剤の濃度は、好ましくは0.05〜0.9g/Lである。安定な合成樹脂エマルションができるためである。0.05g/Lを下回るとエマルション粒子径が大きくなりすぎ自重で沈降し分離するなど安定性が不十分となるおそれがある。一方、0.9g/Lを上回るとエマルション粒子径が小きくなりセメント混和性が不十分となる恐れがある。より好ましくは0.15〜0.70g/Lであり、最も好ましくは0.30〜0.55g/Lである。
重合反応中の反応器水性媒体は、共重合体の凝集物が発生しないようにミキサーなどで常に撹拌し、重合反応が効率良く進行するように重合反応温度を75〜100℃に調整することが好ましい。重合反応温度が75℃を下回ると重合反応が十分でなくエマルションに単量体が残るおそれがある。一方、95℃を上回ると水性媒体の沸点を超えるため水性媒体が揮発するおそれがある。より好ましくは80〜95℃であり、最も好ましくは85〜90℃である。
プレ乳化エマルションと重合開始剤水溶液は、120〜240分かけて反応器中の水性媒体に滴下し重合させることが好ましい。滴下重合する時間が120分を下回ると短い時間での重合となり凝集物が多くなるおそれがある。一方、240分を上回ると当該時間中加熱する必要があり、製造過程として非効率となるおそれがある。より好ましくは150〜210分であり、最も好ましくは165〜195分である。なお、滴下重合後に120分程反応器中の温度を80〜90℃に保ち後重合することが好ましい。反応器中に残った単量体を減らすことができるためである。
このように乳化重合して得られたポリマーセメント用合成樹脂エマルションは、セメント混和性に優れると共に、ポリマーセメントから形成される塗膜は耐白華性が優れたものとなる。また、該ポリマーセメント用合成樹脂エマルションには、必要に応じてpH調整剤、防腐剤、消泡剤などを添加することができる。
前記ポリマーセメント用合成樹脂エマルションは、セメント及び骨材と混合することによりポリマーセメントとなる。ポリマーセメントには必要に応じて、造膜助剤、粘性調整剤、白華防止剤、硬化促進剤、着色顔料、消泡剤等のその他の添加剤成分を通常の方法に従って配合することができる。
セメントとは、本明細書において水硬性材料のセメントをいい、ポルトランドセメント、ホワイトセメント、早強セメント、アルミナセメントなどのことをいう。
セメントの混合量は、前記ポリマーセメント用合成樹脂エマルションの不揮発分100質量部に対し、好ましくは50〜500質量部である。50質量部を下回るとセメントの特性が生かされず、ポリマーセメントから形成される塗膜のコンクリート等の被塗装物への密着性が不十分となるおそれがある。一方、500質量部を上回ると合成樹脂の特性が生かされず、ポリマーセメントから形成される塗膜の防水性が不十分となる恐れがある。より好ましくは75〜350質量部であり、最も好ましくは100〜200質量部である。
骨材とはポリマーセメントに混ぜる補充材料であり、増量剤としての役割や、前記ポリマーセメントが乾燥する際の収縮を抑える役割を有している。骨材の一例として、珪砂、砂利、砕石、寒水石、セルベンなどを挙げることができる。これらは特に限定されるものではないが、耐白華性に優れる寒水石が好んで使用することができる。セメントのアルカリ成分で寒水石の表面が反応し、密な塗膜になると推測されるためである。
骨材の混合量は、前記ポリマーセメント用合成樹脂エマルションの不揮発分100質量部に対し、好ましくは100〜600質量部である。100質量部を下回ると前記ポリマーセメントが乾燥する際の収縮を抑えることができずに乾燥したポリマーセメントから形成される塗膜に亀裂(クラック)が生じるおそれがある。一方、600質量部を上回ると合成樹脂の含有比率が小さくなり、ポリマーセメントから形成される塗膜の防水性としての塗膜の伸びが不十分となる恐れがある。より好ましくは150〜500質量部であり、最も好ましくは200〜400質量部である。
前記ポリマーセメントは、紛体部と液体部とからなる2部材からなる塗料であり、これらを塗装直前に混合し、被塗装物に塗装するものである。
紛体部は、セメント、骨材、その他の添加剤成分の内の紛体性状のものを混ぜ合わせたものである。また、液体部は、合成樹脂エマルション、その他の添加剤成分の内の液体性状のものを混ぜ合わせたものである。
次に、上記のように構成されたポリマーセメントの作用について説明する。
建築物等の被塗物表面に塗膜を形成する場合には、通常の方法に従って被塗物にポリマーセメントを塗布し、例えば常温で24時間乾燥することにより、ポリマーセメントが硬化して被塗物表面にポリマーセメントから形成される塗膜ができあがる。ポリマーセメントから形成される塗膜は、ポリマーセメントの主たる成分であるセメントの特質に基づいて被塗装物への密着性を発現することができる。また、ポリマーセメントの主たる成分である合成樹脂エマルションの疎水性単量体由来の構造単位の含有量が、単量体成分の合計100質量部に対し、94〜99.95質量部であることにより、ポリマーセメントからなる塗膜は、防水性及び耐白華性を発現することができる。
以上の実施形態によって発揮される効果を以下に記載する。
・ポリマーセメント用合成樹脂エマルションであって、(A)疎水性単量体由来の構造単位を94〜99.95質量部、(B)親水性単量体由来の構造単位を0.05〜6質量部(但し、単量体由来の構造単位の合計である(A)および(B)の合計は100質量部である。)有する共重合体を含有し、平均粒子径が250〜500nmであることを特徴とする合成樹脂エマルション。この合成樹脂エマルションを用いたポリマーセメントからなる塗膜は、防水性、密着性及び耐白華性に優れている。
・前記合成樹脂エマルションの(A)疎水性単量体由来の構造単位が、(A−1)α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を59.95〜84.95質量部、(A−2)芳香環含有不飽和単量体由来の構造単位を15〜40質量部含有するものであること。この合成樹脂エマルションを用いたポリマーセメントからなる塗膜は、撥水性を高めてより防水性に優れている。
・前記合成樹脂エマルションの(B)親水性単量体由来の構造単位が、(B−1)(メタ)アクリル酸を0.05〜1.0質量部含有するものであること。この合成樹脂エマルションを用いたポリマーセメントからなる塗膜は、コンクリート等の被塗装物への密着性に優れている。
・前記合成樹脂エマルションの単量体由来の構造単位の合計100質量部に対して、(H)界面活性剤が不揮発分換算で0.5〜7質量部含有するものであること。この合成樹脂エマルションによれば、エマルションの貯蔵安定性に優れ、この合成樹脂エマルションを用いたポリマーセメントからなる塗膜は、耐白化性に優れている。
・前記合成樹脂エマルションの(H)界面活性剤が、(H−1)非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、(H−2)陰イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩又はポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩であり、(H−1)/(H−2)=1〜3であるものであること。この合成樹脂エマルションによれば、合成樹脂エマルションはセメント混和性に優れ、ポリマーセメントから形成される塗膜は耐水性に優れている。
・前記合成樹脂エマルションの(H−1)非イオン性界面活性剤のHLBが16〜19であるものであること。この合成樹脂エマルションによれば、エマルションにセメントが混和しやすく、この合成樹脂エマルションを用いたポリマーセメントからなる塗膜は、耐水性に優れている。
・前記合成樹脂エマルションのガラス転移温度(Tg)が、−40〜0℃であるものであること。この合成樹脂エマルションを用いたポリマーセメントからなる塗膜は、耐汚染性と防水性に優れている。
・前記合成樹脂エマルションの重合開始時の反応器水性媒体の(H−2)陰イオン性界面活性剤の濃度が、0.05〜0.9g/Lであるものであること。この合成樹脂エマルションは安定性に優れている。
以下に、実験例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、実験例1〜8、10〜20、22〜38、40〜45及び47〜60は実施例であり、実験例9、21、39及び46は比較例である。
合成樹脂エマルションは実験例の表中に記載の配合量で以下のように作成した。
反応器水性媒体が86℃になるように反応器をヒーターで加熱した。単量体成分、乳化剤としての界面活性剤及び水又は水溶液は、予め乳化させたてプレ乳化エマルションとした。プレ乳化エマルションと重合開始剤水溶液は、180分かけて反応器水性媒体に連続滴下して、プレ乳化エマルション中の単量体成分を重合した。なお、エマルションの粒子径を調整するために、連続滴下前に初期添加プレ乳化エマルションを界面活性剤必要量に応じて予め反応器に添加した。滴下中は凝集物の発生を抑制するためミキサーで常に撹拌した。プレ乳化エマルションの連続添加後120分間90℃で後重合した。反応器中で重合したエマルションから凝集物等の不純物をろ過により取り除き、合成樹脂エマルションとした。
ポリマーセメントは以下のように作成した。
紛体部は、セメントとして普通ポルトランドセメント100質量部及び骨材として平均粒子径が0.5mmの炭酸カルシウム100質量部を紛体用ミキサーで均一になるように撹拌したものを用いた。液体部は、前記合成樹脂エマルションを用いた。紛体部200質量部に対して液体部100質量部をモルタル用ミキサーで均一になるように撹拌した。
ポリマーセメントの試験体は以下のように作成した。
防水性試験用の試験体は、JIS A 6909(2003)、7.29.1伸び試験の試験体に従い、ポリマーセメントを乾燥膜厚で1mmとなる型枠に注入し乾燥後に型枠から外して試験体とし、同JIS 7.29.2の伸び試験の試験片に従い、JIS K 6251(2010)、4.1(試験片の形状及び寸法)に規定するダンベル状2号形に打ち抜き試験片とした。
密着性の試験体は、JIS A 6909(2003)、7.9.1 a)付着強さ試験の試験体に従い、同JIS 7.2 b)記載の70×70×20mmのモルタル板にポリマーセメントを乾燥膜厚でおよそ2mmとなるように塗装し乾燥させ試験体とした。
耐白華性、耐白化性及び耐黄変性の試験体は、IS A 6909(2003)、7.18.1 耐候性試験A法の試験体に従い、150×50mmの厚さ4mmのフレキシブル板(繊維強化セメント板)にポリマーセメントを乾燥膜厚でおよそ2mmとなるように塗装し乾燥させ試験体とした。
得られた合成樹脂エマルションについて、平均粒子径、貯蔵安定性及びセメント混和性(以下、合成樹脂エマルションの性能とする。)を下記の方法に従って測定した。また、得られたポリマーセメントからなる塗膜について、防水性、密着性、耐白華性、耐白化性及び耐黄変性(以下、ポリマーセメント塗膜の性能とする。)を下記の方法に従って測定した。
平均粒子径:レーザー回折や散乱式粒度分布測定装置を用いて平均粒子径測定した複数の合成樹脂エマルションについて、以下の条件で平均粒子径−光透過率の検量線を作成し、平均粒子径を求める合成樹脂エマルションの光透過率から前記検量線により平均粒子径を求めた。不揮発分相当で0.1gの重量の合成樹脂エマルションを、脱イオン水で1Lの容積まで希釈し、0.1g/Lの水溶液とし、以下の測定条件で光透過率を測定した。機種:島津製作所 UVmini−1240 波長:445nm セル:10mm
貯蔵安定性:JIS K 5600−2−7(1999)、7.加温安定性、試料を容器に入れて密封し、温度35℃で3か月間保存した後、室温に戻し容器の中の状態を確認した。そして、粘度測定値が試験開始前と比較して±20%以内であり、エマルション粒子の沈降がない場合を◎、粘度測定値が試験開始前と比較して±20%を超えるがマルション粒子の沈降がない場合を○、マルション粒子の沈降があり撹拌することにより一様になる場合を△、エマルション粒子の沈降があり撹拌しても一様にならない場合を×として評価した。
セメント混和性:合成樹脂エマルションに、合成樹脂エマルションの不揮発分に相当する量の普通ポルトランドセメントを撹拌しながら混合し、スラリー状としたものの状態を確認した。そして、スラリー状としたものの可使時間(スラリー状としたものの粘度や状態が使用するに耐えられなくなるまでの時間。)が1時間以上あるものを◎、スラリーの可使時間が30分以上あるものを○、スラリーの可使時間が5分以上あるものを△、スラリーの可使時間が5分未満であるものを×として評価した。
防水性:JIS A 6909(2003)、7.29.3 b)−10℃時の伸び試験、伸び率E(%)で評価した。そして、E=40%以上を◎、E=20%以上を○、E=10%以上を△、E=10%未満を×として評価した。
密着性:JIS A 6909(2003)、7.9.1 a)付着強さ試験で評価した。そして、A=1.0N/mm以上を◎、A=0.5N/mm以上を○、A=0.1N/mm以上を△、A=0.1N/mm未満を×として評価した。
耐白華性:前記耐白華性の試験体を、塗装面の長手方向の下半分を1日浸水させ、浸水終了後に試験体を乾燥させた後に試験体の状態を確認した。そして、白華の発生がない場合を◎、塗装面の長手方向の非浸水部と浸水部との界面に、界面方向に1mm幅以下の白華の発生がある場合を○、同様に1mm幅以上の白華の発生がある場合を△、浸水部全体に白華の発生が見られる場合を×として評価した。
耐白化性:前記耐白化性の試験体を、塗装面の長手方向の下半分を1日浸水させ、浸水終了直後と試験体を乾燥させた後とに試験体の変色状態を確認した。そして、浸水終了直後と試験体を乾燥させた後と共に変色がない場合を◎、浸水終了直後に白く変色が見られるものの試験体を乾燥させた後には白い変色が元の色に戻った場合を○、浸水終了直後及び乾燥後に白く変色が見られ、非浸水部と乾燥後の浸水部との色差が3号(JIS L 0804(2004)変退色用グレースケール)以上の場合を△、同様に色差が3号に満たない場合を×として評価した。
耐黄変性:前記耐黄変性の試験体を、JIS A 6909(2003)、7.18.2に従い、300時間耐候性試験機(JIS K 5600−7−7に規定するキセノンランプ法の方法1、サイクルA)に照射し、未試験の控え試験体との色差を測定した。そして、色差が4−5号(JIS L 0804(2004)変退色用グレースケール)以上の場合を◎、色差が4号以上の場合を○、色差が3号以上の場合を△、同様に色差が3号に満たない場合を×として評価した。
実施例において以下の単量体を用い、表中では単量体の略称を用いた。以下に単量体の名称及び略称並びにTgを記載する。(A−1)α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体として、メタクリル酸メチル(MMA 105℃)、アクリル酸ブチル(BA −55℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA −70℃)及びメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA 83℃)。(A−2)芳香環含有不飽和単量体として、スチレン(St 100℃)及びα−メチルスチレン(MSt 175℃)。(B−1)(メタ)アクリル酸として、アクリル酸(AA 106℃)、メタクリル酸(MAA 227℃)及びジメタクリル酸(DMAA 227℃)。(B−1)以外の(B)親水性単量体として、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル(HPMA 76℃)及びアクリルアミド(アクリルアミド 165℃)。
表中において界面活性剤は以下のものを用いた。(H−1)非イオン性界面活性剤としてH-1A(ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル(HLB:14.7))、H-1B(ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB:16.3))、H-1C(ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB:17.5))、H-1D(ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB:18.4))、H-1E(ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB:18.5))、H-1F(ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB:18.6))及びH-1G(ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB:19.3))。(H−2)陰イオン性界面活性剤として、H−2A(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩)、H−2B(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩)及びH−2C(ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩)。
その他成分として以下のものを用いた。開始剤として過硫酸ナトリウム(NaPS)。pH調整剤として25%アンモニア水。防腐剤としてイソチアゾリン系化合物の混合物(有効成分約30%)。
(実験例1)
実験例1は最良の実験例である。実験例1では、単量体、界面活性剤、水、開始剤、pH調整剤及び防腐剤を表1に示す組成で合成樹脂エマルションを重合した。反応器水性媒体の(H−2)陰イオン性界面活性剤の濃度は、0.459g/Lであり、平均粒子径は400nmであった。合成樹脂エマルションの性能及びポリマーセメントの性能を表中に合わせて記載した。
(実験例2〜8)
実験例2〜8は、表1に示す組成に単量体を代えたものである。エマルションの性能として貯蔵安定性及びセメント混和性に優れるとともに、ポリマーセメントの性能として密着性、耐白華性、耐白化性及び耐黄変性にも優れる結果が得られた。
Figure 2015147698
(実験例9〜21)
実験例9〜21は、(B)親水性単量体の配合量を代えたものであり、組成を表2に示す。この中でも、実験例9〜16は、(B−1)(メタ)アクリル酸の配合量を代えたものである。実験例9ではアクリル酸が少ないためエマルションの性能として貯蔵安定性とポリマーセメントの性能として密着性が悪化した。実験例16ではアクリル酸が多いためポリマーセメントの性能として耐白華性が悪化した。実験例21では(B)親水性単量体の配合量が多いためポリマーセメントの性能として耐白化性が悪化した。
Figure 2015147698
(実験例22〜29)
実験例22〜29は、(A−2)芳香環含有不飽和単量体の配合量を代えたものであり、組成を表3に示す。実験例22ではスチレンが少ないためポリマーセメントの性能として耐白化性が悪化した。実験例29ではスチレンが多いためポリマーセメントの性能として耐黄変性が悪化した。
Figure 2015147698
(実験例30〜36)
実験例30〜36は、(H−1)非イオン性界面活性剤を代えたものであり、組成を表4に示す。なお実験例1では、(H−1)非イオン性界面活性剤としてHLBが18.5であるものを用いた。実験例30では(H−1)非イオン性界面活性剤のHLB値が小さいためエマルションの性能としてセメント混和性が悪化した。実験例36では(H−1)非イオン性界面活性剤のHLB値が大きいためポリマーセメントの性能として耐白化性が悪化した。
(実験例37及び38)
実験例37及び38は、(H−2)陰イオン性界面活性剤を代えたものであり、組成を表4に示す。
Figure 2015147698
(実験例39〜46)
実験例39〜46は、(H)界面活性剤の添加量を代えたものであり、組成を表5に示す。なお、(H−1)陰イオン性界面活性剤/(H−2)非イオン性界面活性剤=2の比率とした。実験例39では(H)界面活性剤の添加量が少ないためエマルションの平均粒子径が大きくなり、エマルションの性能として貯蔵安定性が悪化した。実験例46では(H)界面活性剤の添加量が多いためエマルションの平均粒子径が小さくなり、エマルションの性能としてセメント混和性とポリマーセメントの性能として耐白化性が悪化した。
Figure 2015147698
(実験例47〜54)
実験例47〜54は、(H−1)陰イオン性界面活性剤/(H−2)非イオン性界面活性剤の比率を変更したものであり、組成を表6に示す。実験例47では(H−1)陰イオン性界面活性剤/(H−2)非イオン性界面活性剤の比率が小さいためエマルションの性能としてセメント混和性が悪化した。実験例54では(H−1)陰イオン性界面活性剤/(H−2)非イオン性界面活性剤の比率が大きいためポリマーセメントの性能として防水性と耐白化性が悪化した。
Figure 2015147698
(実験例55〜60)
実験例55〜60は、重合時の反応器水性媒体の(H−2)陰イオン性界面活性剤の添加量を代えたものであり、組成を表7に示す。実験例55では(H−2)陰イオン性界面活性剤の添加量が少ないためエマルションの性能として貯蔵安定性が悪化した。実験例60では(H−2)陰イオン性界面活性剤の添加量が多いためエマルションの性能としてセメント混和性が悪化した。
Figure 2015147698
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・(H−1)陰イオン性界面活性剤及び/又は(H−2)非イオン性界面活性剤に、反応性界面活性剤(重合性二重結合を有する界面活性剤)を使用してもよい。
・合成樹脂エマルションは架橋剤を使用して架橋構造としてもよい。架橋剤としては、例えば、ダイアセトンアクリルアミド(DAAM)とヒドラジド類としてアジピン酸ジヒドラジド(ADH)を使用してもよい。

Claims (5)

  1. ポリマーセメント用合成樹脂エマルションであって、(A)疎水性単量体由来の構造単位を94〜99.95質量部、(B)親水性単量体由来の構造単位を0.05〜6質量部(但し、単量体由来の構造単位の合計である(A)および(B)の合計は100質量部である。)有する共重合体を含有し、平均粒子径が250〜500nmであることを特徴とする合成樹脂エマルション。
  2. (A)疎水性単量体由来の構造単位が、(A−1)α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を59.95〜84.95質量部、(A−2)芳香環含有不飽和単量体由来の構造単位を15〜40質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂エマルション。
  3. (B)親水性単量体由来の構造単位が、(B−1)(メタ)アクリル酸を0.05〜1.0質量部含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂エマルション。
  4. 単量体由来の構造単位の合計100質量部に対して、(H)界面活性剤が不揮発分換算で0.5〜7質量部含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の合成樹脂エマルション。
  5. (H)界面活性剤が、(H−1)非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、(H−2)陰イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩又はポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩であり、(H−1)/(H−2)=1〜3であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の合成樹脂エマルション。

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