JP2015141186A - 潤滑剤の劣化度評価装置及び劣化度評価方法 - Google Patents

潤滑剤の劣化度評価装置及び劣化度評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】潤滑油やグリース等、潤滑剤の劣化度の評価精度を向上させ、小型で持ち運び容易な潤滑剤の劣化度評価装置、及び劣化度評価方法を提供する。【解決手段】劣化度評価装置1は、発光素子6から発光された赤外線をATR結晶7内に入射して減衰全反射通過させ、受光素子8により赤外線を検出する検出部2と、検出された赤外線強度に基づいて潤滑剤の劣化度を評価する評価部3と、を備え、検出部には、潤滑剤の劣化度に相関して変動する帯域を透過させる第1フィルタ9aと、劣化度との相関による変動が小さい帯域を透過させる第2フィルタ9bとが挿入可能であり、評価部は、第1フィルタが挿入されたときの第1検出強度を第2フィルタが挿入されたときの第2検出強度に基づいて補正して、潤滑剤の劣化度を評価するように構成される。【選択図】図2

Description

本発明は、液状の潤滑油や半固形状のグリース等の、潤滑剤の劣化度評価装置及び劣化度評価方法に関する。
従来一般に、赤外線吸収スペクトル法を用いて、潤滑剤の一種であるタービン油の波数1710cm−1付近に現れる劣化度に相関して赤外線の吸光比率が変化する吸収ピーク(カルボン酸のCO基等に起因する)の吸光比率を測定してタービン油の劣化度を評価する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このようなタービン油の劣化度の評価結果によって、タービン油の交換時期や潤滑対象部の異常摩耗(潤滑異常)等の診断が行われていた。
特開平9−96398号公報
上記赤外線吸収スペクトル法による測定方法では、通常、組立て式あるいは固定式の測定セルが使用され、この測定セルに潤滑剤を注入して所定の厚さの試料膜を形成して測定が行われる。しかしながら、上記測定セルは、一対の枠板間にスペーサを挟み、これらをネジで一体に組付けて構成されているため、ネジの締付け具合等により測定中にセル厚さ即ち試料膜の厚さが変動してしまう場合があった。このため、劣化度を正確に把握するためには、試料膜厚さを加味して吸光比率を補正する必要があった。
また、他の赤外線吸収スペクトル法による測定方法として、ATR(減衰全反射)結晶を用いた測定方法(ATR法)が知られている。ATR法は、主に、固形物の赤外線吸収スペクトルを測定する際に用いられている。ATR法では、ATR結晶の一面に試料を密着させ、ATR結晶内で全反射が生じるように赤外線を入光させる。このとき、界面では、赤外線が試料側に少しだけもぐりこんで反射する。これにより、試料に吸収のある領域では、吸収の強さに応じて反射光のエネルギーが減少する。ATR法は、このような原理の方法であるから、試料厚さの影響を受けることなく測定することができ、上述の測定セルを用いた場合のような試料厚さの補正を必要としない、とされている。しかしながら、実際の測定では、他の要因、例えば、試料の汚染状態や塗布状態、気温、測定系の性能変化等の影響により誤差が生じてしまっていた。
また、従来、吸収ピークの吸光比率に基づいた測定をするためには、プリズムや回折格子等の分散型分光器、マイケルソン干渉計等の干渉型分光器等の分光手段が用いられている。このような分光手段を用いる場合には、構造が複雑になり、潤滑剤の劣化度評価装置を使用者が携帯できるように小型化することは極めて困難であった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながら、精度の良好な劣化度の評価を容易に行うことができる潤滑剤の劣化度評価装置及び劣化度評価方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の通りである。
1.潤滑剤の劣化度を評価する潤滑剤の劣化度評価装置であって、
発光素子から発光された所定帯域の赤外線をATR結晶内に入射して減衰全反射通過させ、当該通過させた赤外線を受光素子によって受光することにより、その強度を電気的に検出する検出部と、
前記検出部により検出された赤外線の強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価する評価部と、を備え、
前記検出部には、前記発光素子と前記受光素子の間の光路上に、固有の帯域の赤外線を透過させる帯域フィルタを挿入可能であり、
前記帯域フィルタは、試料となる潤滑剤の劣化度に相関して変動する波数を含む帯域を前記固有の帯域とする第1フィルタと、前記第1フィルタの前記固有の帯域に比して前記劣化度との相関による変動が小さい帯域を前記固有の帯域とする第2フィルタと、が設けられており、
前記検出部は、前記ATR結晶の一面に前記試料となる潤滑剤が塗布された状態で、前記発光素子と前記受光素子の間の光路上に、前記第1フィルタと、前記第2フィルタと、を別々に挿入したときの赤外線の強度をそれぞれ検出し、
前記評価部は、前記第1フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第1検出強度を、前記第2フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第2検出強度に基づいて補正し、該補正された第1検出強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価することを特徴とする潤滑剤の劣化度評価装置。
2.前記評価部は、前記第2検出強度を予め設定された基準値に基づいて補正し、次いで前記第1検出強度を前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正する上記1.記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
3.前記第2フィルタの前記固有の帯域は、1800cm−1〜2200cm−1内の所定の波数を含む帯域である上記1.又は2.に記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
4.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、カルボキシル基の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記1.乃至3.のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
5.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、前記潤滑剤に含まれる添加剤の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記1.乃至4.のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
6.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、水の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記1.乃至5.のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
7.潤滑剤の劣化度を評価する潤滑剤の劣化度評価方法であって、
発光素子から発光された所定帯域の赤外線をATR結晶内に入射して減衰全反射通過させ、当該通過させた赤外線を受光素子によって受光することにより、その強度を電気的に検出する検出工程と、
前記検出工程により検出された赤外線の強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価する評価工程と、を備え、
前記検出工程では、前記ATR結晶の一面に前記試料となる潤滑剤が塗布された状態で、前記発光素子と前記受光素子の間の光路上に、試料となる潤滑剤の劣化度に相関して変動する波数を含む帯域の赤外線を透過可能な第1フィルタと、前記第1フィルタに比して前記劣化度との相関による変動が小さい帯域の赤外線を透過可能な第2フィルタと、を別々に挿入したときの赤外線の強度をそれぞれ検出し、
前記評価工程では、前記第1フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第1検出強度を、前記第2フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第2検出強度に基づいて補正し、該補正された第1検出強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価することを特徴とする潤滑剤の劣化度評価方法。
8.前記評価工程では、前記第2検出強度を予め設定された基準値に基づいて補正し、次いで前記第1検出強度を前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正する上記7.記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
9.前記第2フィルタの前記固有の帯域は、1800cm−1〜2200cm−1内の所定の波数を含む帯域である上記7.又は8.に記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
10.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、カルボキシル基の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記7.乃至9.のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
11.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、前記潤滑剤に含まれる添加剤の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記7.乃至10.のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
12.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、水の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記7.乃至11.のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
本発明の潤滑剤の劣化度評価装置によると、検出部は、発光素子から発光された所定帯域の赤外線をATR結晶内に入射して減衰全反射通過させ、当該通過させた赤外線を受光素子によって受光することにより、その強度を電気的に検出するように構成されている。このように、従来用いられていた分光手段を必要としないので、簡易な構成とすることができる。その結果、装置の小型化を図ることができ、可搬型の評価装置として好適である。
また、発光素子と受光素子の間の光路上に、固有の帯域の赤外線を透過可能な帯域フィルタを挿入可能である。このように、異なる帯域フィルタを交換可能なように構成したので、潤滑剤の種類に応じた好適な劣化度評価を容易かつ確実に行うことができる。
また、帯域フィルタは、試料となる潤滑剤の劣化度に相関して変動する波数を含む帯域を固有の帯域とする第1フィルタと、第1フィルタの固有の帯域に比して劣化度との相関による変動が小さい帯域を固有の帯域とする第2フィルタと、が設けられており、検出部は、ATR結晶の一面に試料となる潤滑剤が塗布された状態で、発光素子と受光素子の間の光路上に、第1フィルタと、第2フィルタと、を別々に挿入したときの赤外線の強度をそれぞれ検出し、評価部は、第1フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第1検出強度を、第2フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第2検出強度に基づいて補正する。これにより、試料の劣化度による影響が少ない第2検出強度に基づいて、劣化度による影響が大きい第1検出強度が補正されるため、潤滑油の劣化度を正確に評価することができる。
前記評価部は、前記第2検出強度を予め設定された基準値に基づいて補正し、次いで前記第1検出強度を前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正する場合は、試料の劣化度とは関係しない要因(試料の汚染状態や塗布状態、気温、検出部を構成する部品・材料の性能変化等)による測定値の変化分を補正することができ、潤滑油の劣化度をより正確に評価することができる。
例えば、前記評価部は、前記第2検出強度に対する予め設定された基準値の比を算出し、次いで前記第1検出強度に前記算出された比を乗ずることによって前記第1検出強度を補正すれば、検出された第2検出強度(V2)に対する基準値(V2)の比(V2/V2)に基づいて、試料の劣化度とは関係しない要因(試料の汚染状態や塗布状態、気温、検出部を構成する部品・材料の性能変化等)による第1検出強度(V1)の変化分を補正することができ、簡単な演算(V1×(V2/V2))によって潤滑油の劣化度を正確に評価することができる。
前記第2フィルタの前記固有の帯域は、1800cm−1〜2200cm−1内の所定の波数を含む帯域である場合は、潤滑剤の劣化度との相関が極めて小さい赤外線に基づいて補正するので、潤滑剤の劣化度をより正確に評価することができる。
前記第1フィルタの前記固有の帯域は、カルボキシル基の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である場合は、劣化度の指標となる物質であるカルボキシル基により吸収される帯域の赤外線の強度が検出されるため、劣化度の評価を的確に行うことができる。
前記第1フィルタの前記固有の帯域は、前記潤滑剤に含まれる添加剤の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である場合は、劣化度の指標となる添加剤により吸収される帯域の赤外線の強度が検出されるため、劣化度の評価を的確に行うことができる。
前記第1フィルタの前記固有の帯域は、水の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である場合は、劣化度の指標となる水分により吸収される帯域の赤外線の強度が検出されるため、劣化度の評価を的確に行うことができる。
本発明の潤滑剤の劣化度評価方法によると、検出工程では、ATR結晶の一面に試料となる潤滑剤が塗布された状態で、赤外線の光路上に、試料となる潤滑剤の劣化度に相関して変動する波数を含む帯域の赤外線を透過可能な第1フィルタと、第1フィルタに比して潤滑剤の劣化度との相関が小さい帯域の赤外線を透過可能な第2フィルタと、を別々に挿入したときの赤外線の強度をそれぞれ検出するようにしている。また、評価工程では、第1フィルタを挿入したときに検出した赤外線の強度である第1検出強度を、第2フィルタを挿入したときに検出した赤外線の強度である第2検出強度に基づいて補正するとともに、該補正された第1検出強度に基づいて潤滑剤の劣化度を評価するようにしている。これによって、試料の劣化度による影響が少ない第2検出強度に基づいて、劣化度による影響が大きい第1検出強度が補正されるため、潤滑油の劣化度を正確に評価することができる。
前記評価工程では、前記第2検出強度を予め設定された基準値に基づいて補正し、次いで前記第1検出強度を前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正する場合は、試料の劣化度とは関係しない要因(試料の汚染状態や塗布状態、気温、検出工程で用いる部品・材料の性能変化等)による測定値の変化分を補正することができ、潤滑油の劣化度をより正確に評価することができる。
例えば、前記評価工程では、前記第2検出強度に対する予め設定された基準値の比を算出し、次いで前記第1検出強度に前記算出された比を乗ずることによって前記第1検出強度を補正すれば、検出された第2検出強度(V2)に対する基準値(V2)の比(V2/V2)に基づいて、試料の劣化度とは関係しない要因(試料の汚染状態や塗布状態、気温、検出工程で用いる部品・材料の性能変化等)による第1検出強度(V1)の変化分を補正することができ、簡単な演算(V1×(V2/V2))によって潤滑油の劣化度を正確に評価することができる。
前記第2フィルタの前記固有の帯域は、1800cm−1〜2200cm−1内の所定の波数を含む帯域である場合は、潤滑剤の劣化度との相関が極めて小さい赤外線に基づいて補正するので、潤滑剤の劣化度をより正確に評価することができる。
前記第1フィルタの前記固有の帯域は、カルボキシル基の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である場合は、劣化度の指標となる物質であるカルボキシル基により吸収される帯域の赤外線の強度が検出されるため、劣化度の評価を的確に行うことができる。
前記第1フィルタの前記固有の帯域は、前記潤滑剤に含まれる添加剤の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である場合は、劣化度の指標となる添加剤により吸収される帯域の赤外線の強度が検出されるため、劣化度の評価を的確に行うことができる。
前記第1フィルタの前記固有の帯域は、水の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である場合は、劣化度の指標となる水分により吸収される帯域の赤外線の強度が検出されるため、劣化度の評価を的確に行うことができる。
実施例に係る劣化度評価装置を示す正面図である。 実施例に係る劣化度評価装置の概略ブロック図である。 実施例に係るATR結晶を示す側面図である。 図3のI−I断面図である。 潤滑剤の赤外線スペクトルの例を示す図である。 潤滑剤の劣化度評価に用いる検量線の作成を説明するための図である。 潤滑剤の劣化度評価に用いる検量線の作成を説明するための図である。 潤滑剤の劣化度評価に用いる検量線の例を示す図である。
1.潤滑剤の劣化度評価装置
本実施形態に係る潤滑剤の劣化度評価装置(1)は、以下に述べる検出部(2)と、評価部(3)と、を備えている。また、本実施形態に係る潤滑剤の劣化度評価装置(1)は、後述する表示部(4)及び出力部(5)を更に備えることができる。
潤滑剤の劣化度評価装置(1)の評価対象となる潤滑剤は、液状の潤滑油や半固形状のグリース等であり、例えば、添加剤(酸化防止剤、さび止め剤、消泡剤、増ちょう剤等)を含んだ添加潤滑剤や、添加剤を含まない無添加潤滑剤等を挙げることができる。また、潤滑剤の用途は特に限定されず、例えば、エンジン油、工業用潤滑油(スピンドル油、マシン油、シリンダ油、冷凍機油、タービン油及びギヤ油等)を挙げることができる。このような潤滑剤のうち、劣化度評価装置(1)はグリースについて好適に用いることができる。上記「グリース」とは、流動性がない潤滑剤であり、原料基油に増ちょう剤を分散させて半固体又は固体状にしたものである(JISK2220:2003を参照。)。
上記のような潤滑剤の性能は、使用によって劣化する。潤滑剤の劣化とは、酸化、添加剤の減少、水分混入等である。
上記検出部(2)は、発光素子(6)から発光された所定帯域の赤外線をATR結晶(7)内に入射して減衰全反射通過させ、当該通過させた赤外線を受光素子(8)によって受光することにより、その強度を電気的に検出する。
上記発光素子(6)の構造、種類、大きさ、形状、発光形態等は特に問わない。上記「所定帯域」は、以下に説明する潤滑剤の劣化度に相関して透過率が変化する波数帯域、及び劣化度と透過率との相関度が低い波数帯域を含む帯域であればよく、評価対象となる潤滑剤に応じて設定すればよい。上記所定帯域は、例えば、波数600cm−1〜5000cm−1程度の帯域とすることができる。また、上記所定帯域は連続した1つの帯域であってもよいし、複数の帯域に分割されていてもよい。
上記ATR結晶(7)の構造、大きさ、材質、形状、形態等は特に問わない。ATR結晶(7)には、通常、試料となる潤滑剤が塗布される試料塗布面(7c)が設定されている。試料塗布面(7c)は、グリースを対象とする場合には、試料の拭き取り易さといった観点から、周囲に段差を形成しない平坦な形態であることが好ましい(例えば、図3、図4等参照)。また、タービン油等の粘度が比較的低い潤滑剤を対象とする場合には、試料を好適に保持するといった観点から、試料塗布面(7c)を底壁として、周囲に側壁を設けることが好ましい。
上記受光素子(8)の構造、種類、大きさ、形状、受光形態等は特に問わない。例えば、受光素子(8)として、焦電素子、熱電素子、ボロメータ等の熱型赤外線センサを用いることができる。フォトダイオード、フォトトランジスタ等の量子型赤外線センサが用いられてもよい。受光素子(8)は、ATR結晶(7)の出光面(7b)に、受光面を極力近接させて配置されていることが好ましい。これにより、受光効率を向上させることができるからである。
上記検出部(2)は、上記発光素子(6)と上記受光素子(8)の間の光路上に、固有の帯域の赤外線を通過させる帯域フィルタ(9a、9b)を挿入可能に設けられる。帯域フィルタ(9a、9b)として、1以上の第1フィルタ(9a)と、1以上の第2フィルタ(9b)と、を設けることができる。帯域フィルタ(9a、9b)は、ATR結晶(7)と受光素子(8)の間の光路上に挿入される形態であってもよいし、発光素子(6)とATR結晶(7)の間の光路上に挿入される形態であってもよい。
赤外線の波数による潤滑剤の吸収率の変化を表す赤外線スペクトルにおいて、赤外線吸収率が極大(透過率が極小)となる部分(又はその波数)を、以下「赤外線吸収ピーク」と呼ぶ。
上記第1フィルタ(9a)は、潤滑剤の劣化度に相関して赤外線吸収率が変化する波数を含む帯域を固有の通過帯域とする帯域フィルタである。この第1フィルタ(9a)の帯域は、例えば、赤外線スペクトルにおいて、潤滑剤の劣化度に応じて透過(吸収)率の大きさが変化する赤外線吸収ピーク(劣化度相関吸収ピーク)の波数を含む帯域とすることができる。劣化度相関吸収ピークは、赤外線スペクトルにおいて、潤滑剤中に存在する劣化度の指標となる物質に特定波数の赤外線が吸収されることにより生じる赤外線吸収ピークである。
上述のように、劣化度相関吸収ピークは、赤外線スペクトルにおいて、潤滑剤中に存在する劣化度の指標となる物質に特定波数の赤外線が吸収されることにより、潤滑剤中に存在する劣化度の指標となる物質の量に応じてその大きさが変化する。従って、劣化度相関吸収ピークを中心とする赤外線の検出強度である第1検出強度を測定することにより、潤滑剤の劣化度を一定限評価することができる。
潤滑剤の劣化度は、その酸化、添加剤の減少、水分混入等により評価することができる。このため、第1フィルタ(9a)の固有の帯域を、この劣化度の指標となる物質の赤外線吸収ピークの出現帯域を含む所定の帯域とすることにより、劣化度の評価を好適に行うことができる。
潤滑剤の劣化度の指標となる物質として、例えば、カルボキシル基(赤外線吸収ピークの出現帯域:波数1700cm−1〜1725cm−1)が挙げられる。この場合、第1フィルタ(9a)の前記固有の帯域は、カルボキシル基の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域とすることができる。具体的には、第1フィルタ(9a)の固有の帯域は、上記出現帯域内の波数(例えば波数1710cm−1付近)を通過帯域に含むように、適宜設定されればよい。
また、劣化度の指標となる物質として、潤滑剤の添加剤(赤外線吸収ピークの出現帯域:波数600cm−1〜3650cm−1)が挙げられる。添加剤の種類は問わず、例えば、フェノール系酸化防止剤(水酸基(−OH)に由来して波数3640cm−1付近に赤外線吸収ピークが出現する。)、芳香族アミン系酸化防止剤(イミノ基(−NH−)に由来して波数3420cm−1付近に赤外線吸収ピークが出現する。)、エステル系添加剤(エステル基(−COO−)に由来して波数1740cm−1付近に赤外線吸収ピークが出現する。)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP。−C−O−P−結合に由来して波数1000cm−1付近に赤外線吸収ピークが出現する。)。潤滑剤に含まれる添加剤の種類により、赤外線吸収ピークの出現帯域は波数600cm−1〜3650cm−1の範囲に分散している。したがって、第1フィルタ(9a)の前記固有の帯域は、検出すべき1又は2以上の添加剤について、その添加剤の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域とすることができる。具体的には、上記フェノール系酸化防止剤に着目する場合、第1フィルタ(9a)の固有の帯域は、上記赤外線吸収ピークの波数(3640cm−1付近)を通過帯域に含むように、適宜設定することができる。
また、劣化度の指標となる物質として、水(赤外線吸収ピークの出現帯域:波数3100cm−1〜3600cm−1)が挙げられる。よって、潤滑剤に含まれる水分によって劣化度を評価しようする場合には、第1フィルタ(9a)の前記固有の帯域は、水の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域とすることができる。具体的には、第1フィルタ(9a)の固有の帯域は、上記赤外線吸収ピークの出現帯域内の所定の波数(例えば、3350cm−1付近)を通過帯域に含むように、適宜設定することができる。
以上のように、添加剤や水の赤外線吸収ピークの出現波数を含む帯域を第1フィルタの固有の帯域とする場合、潤滑剤中の添加剤の残存量や水分含有量等を測定することができ、カルボキシル基と同様に潤滑剤の劣化度評価に用いることができる。
第1フィルタ(9a)は1つに限らず、カルボキシル基、添加剤及び水のうちの1以上の物質により赤外線吸収ピークが出現する波数にそれぞれ対応して、固有の帯域の異なる複数の第1フィルタ(9a)を備えることができる。それによって、それぞれ異なる物質による赤外線吸収ピークを測定して劣化度の評価を行うようにすることができる。
上記第1フィルタ(9a)は、複数の物質の劣化度相関吸収ピークのそれぞれに対応して複数設けることができる。第1フィルタ(9a)を複数備えて切り替え可能に構成することにより、劣化度相関吸収ピークが異なる複数の種類の潤滑剤に対応することができる。また、劣化度の指標となる物質が同じ場合や、異なる物質で劣化度相関吸収ピークの出現帯域が共通する場合等においては、異なる種類の潤滑剤であっても共通の第1フィルタ(9a)を使用するようにしてもよい。
上記劣化度相関吸収ピークは、劣化度の評価対象となる潤滑剤の未使用状態及び所定の劣化状態の試料についての各赤外線スペクトルに基づいて予め決定しておくことができる。尚、各劣化状態における潤滑剤の酸価を求め、その酸価を潤滑剤の劣化を評価する基準とすることができる。
具体的には、同一の測定条件(潤滑剤の塗布状態、温度等が同一であり、発光素子・受光素子等測定系の性能が変化していない状態)において、未使用状態(劣化していない)の潤滑剤と、予め所定の劣化状態まで劣化させた潤滑剤とを用いてそれらの赤外線透過(吸収)スペクトルを測定する。そして、得られた各赤外線吸収スペクトルを比較し、それら赤外線吸収スペクトルに出現するピークのうち、劣化の程度に応じて大きさ(透過率又は吸収率)が変化するピークを、その潤滑剤の劣化度相関吸収ピークとして設定することができる。上記劣化度相関吸収ピークを決定するための赤外線スペクトルの測定方法、装置等は特に限定されず、既知の又は新規の測定方法、装置を用いることができる。
上記第2フィルタ(9b)は、第1フィルタ(9a)の固有の帯域に比して劣化度との相関が小さい帯域を固有の帯域とする帯域フィルタである。この帯域は、潤滑剤の赤外線透過スペクトルにおいて、潤滑剤の劣化度によらず、透過率が略一定となる帯域であることが好ましい。具体的には、第2フィルタ(9b)の固有の帯域は、赤外線透過スペクトルにおいて、上述の劣化度の指標となる物質の吸収ピークを含まない帯域であって、透過率が比較的一様である帯域を任意に選択することができる。例えば、グリースについて、第2フィルタ(9b)の固有の帯域は、波数1800cm−1〜2200cm−1の範囲内の所定の波数(例えば、波数1980cm−1〜2040cm−1)を含む帯域とすることができる(図5参照)。
第2フィルタ(9b)は、複数設けることができる。第2フィルタ(9b)を複数備えて切り替え可能に構成することにより、劣化度によらず透過率が略一定となる帯域が異なる、複数の種類の潤滑剤に対応することができる。また、1種類の潤滑剤において劣化度によらず透過率が略一定となる帯域が複数ある場合、その各帯域に対応する第2フィルタ(9b)を備えることによって、劣化度をより正確に評価することも可能である。また、異なる種類の潤滑剤であっても、劣化度によらず透過率が略一定となる帯域が共通する場合等においては、共通の第2フィルタ(9b)を使用するようにしてもよい。
上記第1フィルタ(9a)の固有の帯域は、そのフィルタの透過率のピーク値の約半分の透過率となる波数帯域(透過帯域の半値幅)や、約1/4の透過率となる波数帯域(透過帯域の1/4値幅)内に、上述の劣化度の指標となる物質の赤外線吸収ピークを含むような帯域とすることができる。透過帯域の半値幅又は1/4値幅が、上記赤外線吸収ピークの出現帯域と同じ程度となるようにしてもよい。
一方、上記第2フィルタ(9b)の固有の帯域は、そのフィルタの透過帯域の半値幅内又は1/4値幅内に、上述の劣化度の指標となる物質の赤外線吸収ピークを含まない帯域とすることができる。
上記帯域フィルタ(9a、9b)の挿入形態は特に問わない。例えば、手動にて挿入する形態や、アクチュエータの駆動により上記光路上に自動で挿入される形態等を挙げることができる。また、帯域フィルタ(9a、9b)は、例えば、スリット等の挿入部を設けてカートリッジを挿す形態や、複数の帯域フィルタを板に装着し、この板を回転させたりスライドさせたりすることにより切り替える形態等の形態とすることができる。
上記評価部(3)は、上記検出部(2)により電気的に検出された赤外線の強度に基づいて潤滑剤の劣化度を評価する限り、その構成等は特に問わない。評価部(3)は、ATR結晶(7)の一面に試料となる潤滑剤が塗布された状態において、第1フィルタ(9a)が挿入されたときに検出された赤外線の強度である第1検出強度(V1)を、第2フィルタ(9b)が挿入されたときに検出された赤外線の強度である第2検出強度(V2)に基づいて補正し、該補正された赤外線の強度に基づいて行うことができる。
潤滑剤の劣化度を正確に評価するために、潤滑剤の種類毎に、予め、第2フィルタ(9b)を挿入したときの第2検出強度(V2)、及び第1検出強度(V1)と劣化度との相関を、較正しておくことが好ましい(図6、7参照)。較正は、1つの測定条件(潤滑剤の塗布状態、汚染状態、温度等が同一)において、未使用状態の潤滑剤と、予め所定の劣化状態まで劣化させた潤滑剤とについて、第1検出強度(V1)及び第2検出強度(V2)を測定して行うことができる。
上記較正において、第2検出強度(V2)は、前述のとおり潤滑剤の劣化度による変化が小さいので、未使用状態の潤滑剤と、予め所定の劣化状態まで劣化させた潤滑剤とについて第2検出強度(V2)を測定しても、その値は略一定となる。この較正時の第2検出強度を、基準値(第2検出強度基準値V2)として評価部(3)に備えられたメモリに記憶しておくことができる。
一方、上記較正において、未使用状態及び所定の劣化状態まで劣化させた潤滑剤について計測された第1検出強度(V1)は、第1フィルタ(9a)の透過帯域が試料となる潤滑剤の劣化度に相関する波数を含む帯域であることから、潤滑剤の劣化度により変化する。よって、第1検出強度(V1)と潤滑剤の劣化度との相関(比例)関係を明らかにすることができる。この第1検出強度(V1)と潤滑剤の劣化度との相関関係は、後述する「検量線」に表すことができる。尚、従来一般に劣化度の評価基準として酸価が用いられている。酸価とは、1gの油を中和するのに必要な水酸化カリウムの量を意味し、この酸価によって潤滑剤の劣化度を表すことができる。したがって、各劣化状態における第1検出強度(V1)は、酸価との相関として表すことができる。
そして、任意の時点で適宜の測定条件により、劣化状態が不明な潤滑剤を測定したときには、第1検出強度(V1)に、潤滑剤の劣化度による変化分と、潤滑剤の汚染状態や試料の塗布状態、気温、測定系の性能等、潤滑剤の劣化度には関係しない変化分とが含まれている。一方、第2検出強度(V2)には、潤滑剤の劣化度には関係しない変化分のみが含まれていることとなる。よって、第2検出強度(V2)により潤滑剤の劣化度には関係しない変化分を求め、その変化分に対応する補正を第1検出強度(V1)に対して加えることによって、潤滑剤の劣化度による変化を正確に知ることが可能となる。
具体的には、上記較正時の第2検出強度基準値(V2)と、実際に劣化状態が不明な潤滑剤を測定したときの第2検出強度(V2)とを対比すれば、潤滑剤の劣化度には関係しない変化分を知ることができる。そして、その変化分に対応する補正を、劣化状態が不明な潤滑剤を測定したときの第1検出強度(V1)に対して行うことによって、第1検出強度の補正値(V1)を得る。例えば、第1検出強度補正値(V1)は、測定された第2検出強度(V2)に対する第2検出強度基準値(V2)の比(V2/V2)を、第1検出強度(V1)に乗じて算出することができる(V1=V1×(V2/V2))。この第1検出強度補正値(V1)は、供試潤滑剤の劣化度(酸価)に相関する値となるため、第1検出強度補正値(V1)に基づいて供試潤滑剤の劣化度を評価することができる。
尚、第1検出強度の補正方法は上記演算に限定されず、上記構成時における第2検出強度基準値(V2)や第1検出強度(例えば、第1検出強度基準値V1とすることができる。)を用いて、補正のための算出式を適宜設定することができる。
以上のように、評価部(3)は、第2検出強度(V2)を予め設定された基準値(第2検出強度基準値V2)に基づいて補正し、次いで第1検出強度(V1)を前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正するようにすることができる。即ち、評価部(3)による劣化度の評価は、ATR結晶(7)の一面に試料となる潤滑剤が塗布された状態において、第2フィルタ(9b)が挿入されたときに検出された赤外線の強度である第2検出強度(V2)を予め設定されて記憶されている第2検出強度基準値(V2)に基づいて補正し、次いでその補正がされた第2検出強度に基づいて第1検出強度(V1)を補正した第1検出強度補正値(V1)を求め、求められた第1検出強度補正値(V1)に基づいて潤滑剤の劣化度を評価するように構成することができる。
更に、評価部(3)は、第1検出強度補正値(V1)を予め定めた判定基準に従って区分し、その判定結果を出力等するように構成することができる。上記「判定基準」としては、例えば、酸価等の劣化度を示す数値の管理限界値を設定しておき、この管理限界以上の数値を示した場合には「異常」、管理限界値の半値以上〜管理限界値未満の数値を示した場合には「注意」、管理限界値の半値未満の場合には「良好」等と判定するための基準とすることができる。
その他、劣化度評価装置(1)は表示部(4)及び出力部(5)を備えることができる。表示部(4)の構造、大きさ、形状、表示形態等は特に問わない。表示部(4)としては、例えば、LED等の発光手段から構成されるドットマトリックス表示器や液晶表示器等を用いることができる。表示内容としては、例えば、使用者への指示・報知事項、第1検出強度の補正値、それを吸光比率や酸価等に変換したデータ、所定の判定基準に則った良否の判定結果等を挙げることができる。
出力部(5)は、評価部(3)による劣化度の評価データ等を外部出力可能な限り、その構造、大きさ、形状、出力形式等は問わない。出力部(5)として、例えば、ステレオミニジャック等のシリアルポート、USBポート等を挙げることができる。出力部(5)により、潤滑剤の劣化度評価装置とは別体に設けられたパーソナルコンピュータや外部ストレージ等へ処理結果を転送することができる。
2.潤滑剤の劣化度評価方法
本実施形態に係る潤滑剤の劣化度評価方法は、潤滑剤の劣化度を評価する潤滑剤の劣化度評価方法であって、発光素子(6)から発光された所定帯域の赤外線をATR結晶(7)内に入射して減衰全反射通過させ、当該通過させた赤外線を受光素子(8)によって受光することにより、その強度を電気的に検出する検出工程と、検出工程により検出された赤外線の強度に基づいて潤滑剤の劣化度を評価する評価工程と、を備える。検出工程では、ATR結晶(7)の一面に試料となる潤滑剤を塗布した状態で、発光素子(6)と受光素子(8)の間の光路上に、試料となる潤滑剤の劣化度に相関して変動する波数を含む帯域の赤外線を透過可能な第1フィルタ(9a)と、第1フィルタ(9a)に比して劣化度との相関による変動が小さい帯域の赤外線を透過可能な第2フィルタ(9b)と、を別々に挿入したときの赤外線の強度をそれぞれ検出する。評価工程では、第1フィルタ(9a)を挿入したときに検出した赤外線の強度である第1検出強度(V1)を、第2フィルタ(9b)を挿入したときに検出した赤外線の強度である第2検出強度(V2)に基づいて補正するとともに、該補正された第1検出強度に基づいて潤滑剤の劣化度を評価する。
評価工程では、第2検出強度(V2)を予め設定された基準値(第2検出強度基準値V2)に基づいて補正し、次いで第1検出強度(V1)を前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正するようにすることができる。即ち、評価工程における劣化度の評価は、ATR結晶(7)の一面に試料となる潤滑剤が塗布された状態において、第2フィルタ(9b)が挿入されたときに検出された赤外線の強度である第2検出強度(V2)を予め設定されて記憶されている第2検出強度基準値(V2)に基づいて補正し、次いでその補正がされた第2検出強度に基づいて第1検出強度(V1)を補正した第1検出強度補正値(V1)を求め、求められた第1検出強度補正値(V1)に基づいて潤滑剤の劣化度を評価するように構成することができる。
例えば、評価工程では、第2検出強度(V2)に対する予め設定された基準値(第2検出強度基準値V2)の比(V2/V2)を算出し、次いで第1検出強度(V1)に算出された比(V2/V2)を乗ずることによって第1検出強度を補正するようにすることができる。すなわち、第1検出強度の補正値(V1)は、V1=V1×(V2/V2)により求めることができる。
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。本実施例では、対象とする「潤滑剤」として、種々の添加剤(酸化防止剤、さび止め剤、消泡剤及び増ちょう剤等)を含んだグリースを例示する。
本実施例に係る潤滑剤の劣化度評価装置1は、図1及び2に示すように、検出部2と、評価部3と、表示部4と、出力部5と、を備えている。これらは筐体10内に収納されている。検出部2は、発光素子6と、ATR結晶7と、受光素子8と、を有している。検出部2は、発光素子6から発光された赤外線をATR結晶内に入射して減衰全反射通過させ、当該通過させた赤外線を受光素子によって受光することにより、その強度を電気的に検出する。
発光素子6は、波数600〜5000cm−1の帯域の赤外線を発光可能である。
ATR結晶7の材料は特に限定されず、例えばセレン化亜鉛(ZnSe)の結晶を用いることができる。また、ATR結晶7は側面形状を台形状とすることができ、その一端側となる発光素子6側の入光面7aから赤外線を入光させて内部で多重反射させ、他端側となる受光素子8側の出光面7bから外部へ出光させる。これら入光面7a及び出光面7bは、それぞれ上述の台形状の斜辺に相当する面である。また、ATR結晶7の台形状の長辺に相当する面に試料塗布面7cが設定されている。試料塗布面7cは、評価対象のグリース等潤滑剤が塗布される面である。本実施例においては、図3及び4に示すように、ATR結晶7の試料塗布面7cと筐体10の表面とは、段差のない平坦な面としている。本例では、試料塗布面7cは筐体10に開閉自在に設けられた蓋11で覆われている。蓋11は、閉時には、マグネットキャッチ(図示せず)によりその状態が確実に保持される。
受光素子8は焦電効果を利用した赤外線センサ(焦電素子)である。受光素子8は、ATR結晶7を透過した赤外線を受光し、その受光量に応じた大きさの電圧を出力する。図2に示すように、受光素子8は、ATR結晶7の出光面7bに極力近接して配置されている。
図2に示すように、検出部2は、発光素子6と受光素子8の間の光路上に、帯域フィルタ9a、9bを挿入可能に設けられている。帯域フィルタ9a、9bは、それぞれに設定された固有の帯域の赤外線を透過可能である。本例においては、帯域フィルタ9a(本発明に係る第1フィルタとして例示する)の透過帯域は、カルボキシル基による赤外線吸収ピークの出現帯域1700cm−1〜1725cm−1を含む帯域1687cm−1〜1761cm−1としている。また、帯域フィルタ9b(本発明に係る第2フィルタとして例示する)の透過帯域は、前述の波数1800cm−1〜2200cm−1内の一定の波数を含む帯域1980cm−1〜2040cm−1としている。尚、これらの帯域幅は、赤外光の透過率のピーク値の1/4値幅である。また、本実施例において、これら帯域フィルタ9a、9bは、ATR結晶7の出光面7bと受光素子8の受光面との間に形成されたスリットに自動又は手動で切り替えて挿入される。
帯域フィルタ9aの透過帯域は、グリースの劣化度に相関して吸光比率が変化するピークである波数1710cm−1を含む帯域である。また、帯域フィルタ9bの透過帯域は、一定の測定条件の下では、グリースの劣化度によらず、帯域全体に渡って略一定の吸光比率を示す帯域である。
図5は、未使用状態のグリースと所定の劣化状態のグリースのそれぞれについて、FT−IR法により測定した赤外線スペクトルを示している。図5において、縦軸は赤外線の透過率(%)、横軸は波数(cm−1)としている。同図において、帯域フィルタ9aの帯域である1687cm−1〜1761cm−1では、未使用状態のグリースと劣化状態のグリースとでは、スペクトルの形状(波数による透過率の変化)に顕著な差異が生じていることがわかる。従って、この帯域の赤外線を受光素子で受光したときのそれぞれの検出強度には顕著な差が生じる。
一方、図5において、帯域フィルタ9bの帯域である1980cm−1〜2040cm−1では、未使用状態のグリースと劣化状態のグリースとで、赤外線透過率の値は変化しているが、スペクトルの形状に大きな差異は見られない。従って、この帯域の赤外線を受光素子で受光したときのそれぞれの検出強度の差は、上記帯域フィルタ9aによる検出強度の差ほど顕著とはならない。本発明に係る第2フィルタの固有の帯域はこのような帯域を選択して用いている。
また、図5において、未使用状態のグリースのスペクトルと劣化状態のグリースのスペクトルとを比較すると、透過率の値のレベルに差が生じていることがわかる。例えば、帯域フィルタ9bの帯域である1980cm−1〜2040cm−1においては、一定の測定条件の下では殆ど差はない筈であるが、そのレベルは異なっている。このレベル差は、グリースの汚染状態や試料の塗布状態、気温、部品・材料の性能変化等、グリースの劣化状態とは関係しない要因によって生じたものと考えられる。本発明における補正は、このようなグリースの劣化状態とは関係しない要因によって生じた変化分をキャンセルするための補正である。
評価部3は、受光素子8にて検出された赤外線の検出強度に基づいて、評価対象となるグリースの劣化度を評価する。本実施例において、評価部3は、ATR結晶7の一面に試料となるグリースが塗布された状態で、帯域フィルタ9aが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第1検出強度V1を、帯域フィルタ9bが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第2検出強度V2に基づいて補正する。具体的には、前記のように、測定された第2検出強度V2に対する第2検出強度基準値V2の比(V2/V2)を第1検出強度V1に乗ずることにより、補正した第1検出強度補正値V1を求めることができる(V1=V1×(V2/V2))。
本発明の構成により赤外線の強度を検出する場合、上述のように、試料の汚染状態や、試料の塗布状態、気温、測定系の性能等の測定条件の違いによって検出値が変化する。このような変化は、検出する帯域によらず現れる。従って、劣化度に相関して変動する帯域の検出強度を、劣化度との相関が小さい帯域の検出強度を用いて補正することにより、この検出強度補正値に基づいてより正確に劣化度を評価することができる。
評価部3は、前記のようにして補正された第1検出強度補正値V1に基づいてグリースの劣化度を評価する。具体的には、予め較正を行うことにより、図8に示すような第1検出強度補正値V1とグリースの酸価との相関を示す検量線を求めておき、これと実測から求められた第1検出強度補正値V1とを比較する。本実施例では、検量線にグリースの酸価の管理限界値を設定し、第1検出強度補正値V1が管理限界以上の酸価の数値に相当する場合には「異常」、管理限界値の半値以上〜管理限界値未満の数値を示した場合には「注意」、管理限界値の半値未満の場合には「良好」と判定している。
尚、複数の物質について(すなわち、複数の第1フィルタ9aを備えて)各第1検出強度を測定する場合には、それぞれに対して第1検出強度を補正し、それぞれに対応して予め設定された検量線を用いるようにすることができる。劣化度は、物質ごとの評価を組み合わせる等により、総合的に評価することができる。
表示部4は、劣化度評価装置1の筐体10の正面側の面に設けられている。表示部4は評価部3による評価結果を液晶表示する。評価結果は、評価部3の図示しないメモリに記憶されており、筐体10の正面の操作スイッチ12の操作により随時表示することができる。本例においては、スイッチ12は複数(図1中4つ)設けられており、それぞれプッシュ式のスイッチである。スイッチ12は、電源入切、測定スタート、測定モード切替、データ転送等の機能を有している。
出力部5は、評価部3による評価結果を外部出力する。本実施例において、出力部5は、ステレオミニジャックであり、潤滑剤の劣化度評価装置1と外部のパーソナルコンピュータ等とを配線コードを介して接続し、スイッチ12を操作することにより、各種データを外部へ転送することができる。
尚、本劣化度評価装置1の上部側及び下部側には、電源供給用のACアダプタジャック及び電池収納部が設けられている。潤滑剤の劣化度評価装置1を使用する際には、ACアダプタジャックを介した交流電源を用いることもできるが、この電池収納部にAAサイズ(単3)の塩化チオニルリチウム電池1本又はアルカリ乾電池2本を収納して潤滑剤の劣化度評価装置1と電気的に接続することにより、ACアダプタジャックからの電力供給なしに、潤滑剤の劣化度評価装置1を使用することも可能である。
上述のような構成を備える潤滑剤の劣化度評価装置1の大きさは、例えば90mm×145mm×25mm程度と、極めて小型とすることができる。従って、潤滑剤の劣化度評価装置1を試料となるグリースが実際に使用されている各現場に持参し、その場で採取した試料を測定する等の使用方法が可能である。
次に、本実施例に係る潤滑剤の劣化度評価方法について説明する。
最初に、潤滑剤の劣化度の評価に用いる検量線を作成する。検量線の作成は、前記較正の段階において行うことができる。検量線は、本劣化度評価装置1を用いて、劣化の評価を行うグリースの酸価の値が既知な種々の劣化状態の試料について、帯域フィルタ9aを挿入したときの検出強度の測定を行い、検出強度を示す電圧値と、各試料の酸価と、の相関を求めることにより作成する。図6は、各試料について帯域フィルタ9a及び9bをそれぞれ挿入して測定した赤外線検出強度(電圧値)を示している。同図において、V11〜V15は、帯域フィルタ9aを挿入したときの電圧値、V21〜V25は、帯域フィルタ9bを挿入したときの電圧値である。いずれの電圧値も、それぞれ図示されているような短時間における平均値とする。これらの測定は、各試料の塗布状態を均一にし、略同一の温度で短時間に行われているため、各測定値はそれぞれの試料の劣化状態のみに起因して変化しているものと考えることができる。
図7は、このようにして測定した各赤外線検出強度(電圧値)と酸価との相関を表したグラフである。同図において、y=−6.5768x+492.87で表される実線は、酸価をx、電圧値をyとしてV11〜V15をプロットしたときの線形近似であり、これを検量線として用いることができる。尚、検量線は、線形近似に限らず任意の近似方式を適用することが可能である。
また、図6及び7において、測定条件はほぼ同一であるため、電圧値V21〜V25は各試料の劣化状態に関わらず略同一の値を示している。そこで、例えばV21〜V25の平均値を、前記第2検出強度基準値V2とすることができる。
予め上記のような較正を行うことによって検量線を設定し、第2検出強度基準値V2を設定しておけば、その後に行う潤滑剤の測定においてその潤滑剤の劣化度を正確に評価することが可能になる。
次に、上述の構成の劣化度評価装置1を用いた潤滑剤の劣化度評価方法について説明する。スイッチ12を操作して装置1の電源を入れた後、劣化度評価対象となるグリースをATR結晶7の試料塗布面7cに塗布する。そして、この塗布されたグリースについて、帯域フィルタ9aと帯域フィルタ9bをそれぞれ挿入したときの赤外線強度をそれぞれ測定する。具体的には、帯域フィルタ9a又は9bを挿入し、スイッチ12を操作して測定をスタートする。すると、予め設定されたサンプリング周期で、帯域フィルタ9a又は9bを介したときの赤外線の強度(受光素子8が受光する赤外線の受光量に応じた電圧)が連続して複数回測定される。複数回測定を行うのは安定した計測値を得るためであり、測定値の処理方法は特に問わない。測定結果は、評価部3により図示しないメモリに記録される。
次に、評価部3は、測定されたグリースの第1検出強度V1を、測定された第2検出強度V2と、記憶されている第2検出強度基準値V2と、の比を用いて補正する。例えば、評価部3は、V1×(V2/V2)という演算を行うことにより補正された第1検出強度(第1検出強度補正値V1)を求めることができる。
そして、評価部3は、予め設定された検量線に基づいて、算出された第1検出強度補正値V1に対応するグリースの劣化度(酸価)を求める。更に、図8に示すように、第1検出強度補正値V1が所定の管理限界以上の酸価の数値に相当する場合には「異常」、管理限界値の半値以上〜管理限界値未満の数値を示した場合には「注意」、管理限界値の半値未満の場合には「良好」等と判定することができる。
上記測定結果の数値や判定結果は、表示部4に表示される。また、これらのデータは、劣化度評価装置1内のメモリに記憶したり、出力部5を介して接続されたパソコン等に転送したりすることができる。
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、本発明に係る第1フィルタとして、1つの帯域フィルタ9aを用いて1つの潤滑剤であるグリースの劣化度を評価する例を示したが、これに限定されず、例えば、潤滑剤の種類に応じた複数の第1フィルタを用いて、各潤滑剤の劣化度を評価するようにしてもよい。
また、上記実施例では、本発明に係る第2フィルタとしての帯域フィルタ9bの帯域として波数1980cm−1〜2040cm−1の帯域を例示したが、これに限定されず、例えば、第2フィルタの固有の帯域として、上記帯域内のより狭い帯域としてもよいし、上記帯域を含んだ波数1800cm−1〜2800cm−1内のより広い帯域としてもよい。更に、第1フィルタの固有の帯域に比して劣化度との相関による変動が小さい他の帯域を固有の帯域としてもよい。
また、上記実施例では、表示部4や出力部5を備える形態を例示したが、これに限定されず、これらを備えない形態であってもよい。
1;劣化度評価装置、10;筐体、11;蓋、12;スイッチ、2;検出部、3;評価部、4;表示部、5;出力部、6;発光素子、7;ATR結晶、7a;入光面、7b;出光面、7c;試料塗布面、8;受光素子、9a,9b;帯域フィルタ、V1;第1検出強度、V1;第1検出強度補正値、V2;第2検出強度、V2;第2検出強度基準値。
本発明は、以下の通りである。
1.潤滑剤中の1以上の物質の、前記潤滑剤の劣化度に相関して変動する赤外線吸収ピークによって前記潤滑剤の劣化度を評価する潤滑剤の劣化度評価装置であって、
発光素子から発光された所定帯域の赤外線をATR結晶内に入射して減衰全反射通過させ、当該通過させた赤外線を受光素子によって受光することにより、その強度を電気的に検出する検出部と、
前記検出部により検出された赤外線の強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価する評価部と、を備え、
前記検出部には、前記発光素子と前記受光素子の間の光路上に、固有の帯域の赤外線を透過させる帯域フィルタを挿入可能であり、
前記帯域フィルタは、前記物質毎に対応して備えられ当該物質の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域を前記固有の帯域とする第1フィルタと、前記第1フィルタの前記固有の帯域に比して前記潤滑剤の劣化度との相関による変動が小さい帯域を前記固有の帯域とする第2フィルタと、が設けられており、
前記検出部は、前記ATR結晶の一面に試料となる潤滑剤が塗布された状態で、前記発光素子と前記受光素子の間の光路上に、前記第1フィルタと、前記第2フィルタと、を別々に挿入したときの赤外線の強度をそれぞれ検出し、
前記評価部は、前記第2フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第2検出強度を予め設定された基準値に基づいて補正し、次いで前記第1フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第1検出強度を、前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正し、該補正された第1検出強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価することを特徴とする潤滑剤の劣化度評価装置。
.前記第2フィルタの前記固有の帯域は、1800cm−1〜2200cm−1内の所定の波数を含む帯域である上記1.記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、カルボキシル基の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記1.又は2.に記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、前記潤滑剤に含まれる添加剤の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記1.乃至.のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、水の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記1.乃至.のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
潤滑剤中の1以上の物質の、前記潤滑剤の劣化度に相関して変動する赤外線吸収ピークによって前記潤滑剤の劣化度を評価する潤滑剤の劣化度評価方法であって、
発光素子から発光された所定帯域の赤外線をATR結晶内に入射して減衰全反射通過させ、当該通過させた赤外線を受光素子によって受光することにより、その強度を電気的に検出する検出工程と、
前記検出工程により検出された赤外線の強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価する評価工程と、を備え、
前記検出工程では、前記ATR結晶の一面に試料となる潤滑剤が塗布された状態で、前記発光素子と前記受光素子の間の光路上に、前記物質毎に対応して備えられ当該物質の赤外線吸収ピークの波数を含む固有の帯域の赤外線を透過可能な第1フィルタと、前記第1フィルタに比して前記潤滑剤の劣化度との相関による変動が小さい固有の帯域の赤外線を透過可能な第2フィルタと、を別々に挿入したときの赤外線の強度をそれぞれ検出し、
前記評価工程では、前記第2フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第2検出強度を予め設定された基準値に基づいて補正し、次いで前記第1フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第1検出強度を、前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正し、該補正された第1検出強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価することを特徴とする潤滑剤の劣化度評価方法。
.前記第2フィルタの前記固有の帯域は、1800cm−1〜2200cm−1内の所定の波数を含む帯域である上記6.記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、カルボキシル基の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記6.又は7.に記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、前記潤滑剤に含まれる添加剤の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記6.乃至8.のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
10.前記第1フィルタの前記固有の帯域は、水の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である上記6.乃至9.のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
また、前記評価部は、前記第2検出強度を予め設定された基準値に基づいて補正し、次いで前記第1検出強度を前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正するため、試料の劣化度とは関係しない要因(試料の汚染状態や塗布状態、気温、検出部を構成する部品・材料の性能変化等)による測定値の変化分を補正することができ、潤滑油の劣化度を正確に評価することができる。
例えば、前記評価部は、前記第2検出強度に対する予め設定された基準値の比を算出し、次いで前記第1検出強度に前記算出された比を乗ずることによって前記第1検出強度を補正すれば、検出された第2検出強度(V2)に対する基準値(V2)の比(V2/V2)に基づいて、試料の劣化度とは関係しない要因(試料の汚染状態や塗布状態、気温、検出部を構成する部品・材料の性能変化等)による第1検出強度(V1)の変化分を補正することができ、簡単な演算(V1×(V2/V2))によって潤滑油の劣化度を正確に評価することができる。
また、前記評価工程では、前記第2検出強度を予め設定された基準値に基づいて補正し、次いで前記第1検出強度を前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正するため、試料の劣化度とは関係しない要因(試料の汚染状態や塗布状態、気温、検出工程で用いる部品・材料の性能変化等)による測定値の変化分を補正することができ、潤滑油の劣化度を正確に評価することができる。
例えば、前記評価工程では、前記第2検出強度に対する予め設定された基準値の比を算出し、次いで前記第1検出強度に前記算出された比を乗ずることによって前記第1検出強度を補正すれば、検出された第2検出強度(V2)に対する基準値(V2)の比(V2/V2)に基づいて、試料の劣化度とは関係しない要因(試料の汚染状態や塗布状態、気温、検出工程で用いる部品・材料の性能変化等)による第1検出強度(V1)の変化分を補正することができ、簡単な演算(V1×(V2/V2))によって潤滑油の劣化度を正確に評価することができる。

Claims (12)

  1. 潤滑剤の劣化度を評価する潤滑剤の劣化度評価装置であって、
    発光素子から発光された所定帯域の赤外線をATR結晶内に入射して減衰全反射通過させ、当該通過させた赤外線を受光素子によって受光することにより、その強度を電気的に検出する検出部と、
    前記検出部により検出された赤外線の強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価する評価部と、を備え、
    前記検出部には、前記発光素子と前記受光素子の間の光路上に、固有の帯域の赤外線を透過させる帯域フィルタを挿入可能であり、
    前記帯域フィルタは、試料となる潤滑剤の劣化度に相関して変動する波数を含む帯域を前記固有の帯域とする第1フィルタと、前記第1フィルタの前記固有の帯域に比して前記劣化度との相関による変動が小さい帯域を前記固有の帯域とする第2フィルタと、が設けられており、
    前記検出部は、前記ATR結晶の一面に前記試料となる潤滑剤が塗布された状態で、前記発光素子と前記受光素子の間の光路上に、前記第1フィルタと、前記第2フィルタと、を別々に挿入したときの赤外線の強度をそれぞれ検出し、
    前記評価部は、前記第1フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第1検出強度を、前記第2フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第2検出強度に基づいて補正し、該補正された第1検出強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価することを特徴とする潤滑剤の劣化度評価装置。
  2. 前記評価部は、前記第2検出強度を予め設定された基準値に基づいて補正し、次いで前記第1検出強度を前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正する請求項1記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
  3. 前記第2フィルタの前記固有の帯域は、1800cm−1〜2200cm−1内の所定の波数を含む帯域である請求項1又は2に記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
  4. 前記第1フィルタの前記固有の帯域は、カルボキシル基の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である請求項1乃至3のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
  5. 前記第1フィルタの前記固有の帯域は、前記潤滑剤に含まれる添加剤の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である請求項1乃至4のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
  6. 前記第1フィルタの前記固有の帯域は、水の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である請求項1乃至5のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価装置。
  7. 潤滑剤の劣化度を評価する潤滑剤の劣化度評価方法であって、
    発光素子から発光された所定帯域の赤外線をATR結晶内に入射して減衰全反射通過させ、当該通過させた赤外線を受光素子によって受光することにより、その強度を電気的に検出する検出工程と、
    前記検出工程により検出された赤外線の強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価する評価工程と、を備え、
    前記検出工程では、前記ATR結晶の一面に前記試料となる潤滑剤が塗布された状態で、前記発光素子と前記受光素子の間の光路上に、試料となる潤滑剤の劣化度に相関して変動する波数を含む帯域の赤外線を透過可能な第1フィルタと、前記第1フィルタに比して前記劣化度との相関による変動が小さい帯域の赤外線を透過可能な第2フィルタと、を別々に挿入したときの赤外線の強度をそれぞれ検出し、
    前記評価工程では、前記第1フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第1検出強度を、前記第2フィルタが挿入されたときに検出された赤外線の強度である第2検出強度に基づいて補正し、該補正された第1検出強度に基づいて前記潤滑剤の劣化度を評価することを特徴とする潤滑剤の劣化度評価方法。
  8. 前記評価工程では、前記第2検出強度を予め設定された基準値に基づいて補正し、次いで前記第1検出強度を前記補正がされた第2検出強度に基づいて補正する請求項7記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
  9. 前記第2フィルタの前記固有の帯域は、1800cm−1〜2200cm−1内の所定の波数を含む帯域である請求項7又は8に記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
  10. 前記第1フィルタの前記固有の帯域は、カルボキシル基の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である請求項7乃至9のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
  11. 前記第1フィルタの前記固有の帯域は、前記潤滑剤に含まれる添加剤の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である請求項7乃至10のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
  12. 前記第1フィルタの前記固有の帯域は、水の赤外線吸収ピークの波数を含む帯域である請求項7乃至11のいずれかに記載の潤滑剤の劣化度評価方法。
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