以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係るX線管装置について詳細に説明する。始めに、X線管装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図である。
図1に示すように、X線管装置10は、大まかにハウジング20と、ハウジング20内に収納された回転陽極型のX線管30と、X線管30とハウジング20との間の空間に充填された冷却液7と、高電圧絶縁部材6と、保持部材8と、ゴム部材2d、2eと、回転駆動部としてのステータコイル9と、リセプタクル300、400とを備えている。本実施形態において、冷却液7は絶縁油である。
X線管装置10は、図示しない循環冷却システムをさらに備えていてもよい。この場合、ハウジング20には、図示しない冷却液7の導入口及び排出口が形成されている。循環冷却システムは、例えば、ハウジング20内の冷却液7を放熱及び循環させる冷却器と、冷却器をハウジング20の導入口及び排出口に液密及び気密に連結する導管(ホースなど)とを備えている。冷却器は、循環ポンプ及び熱交換器を有している。循環ポンプは、ハウジング20側から取り入れた冷却液7を熱交換器に吐出し、冷却液7の流れをハウジング20内に作り出す。熱交換器は、ハウジング20及び循環ポンプ間に連結され、冷却液7の熱を外部に放出する。
ハウジング20は、筒状に形成されたハウジング本体20eと、蓋部(側板)20f、20g、20hとを有している。ハウジング本体20e、蓋部20f、20g、20hは、金属材料又は樹脂材料で形成されている。この実施形態において、ハウジング本体20e、蓋部20f、20g、20hはアルミニウムを用いた鋳物で形成されている。樹脂材料を使用する場合は、ネジ部など強度を必要とする個所や、樹脂の射出成形で成形し難い個所、またハウジング20の外部への電磁気ノイズの漏洩を防止する図示しない遮蔽層など、部分的に金属を併用しても良い。
後述する高電圧供給端子44が位置する側のハウジング本体20eの開口部には、環状の段差部が形成されている。上記段差部の内周面には、環状の溝部が形成されている。X線管装置の管軸に沿った方向において、蓋部20fの周縁部はハウジング本体20eの段差部に接触している。ハウジング本体20eの上記溝部にはC形止め輪20iが嵌合されている。
C形止め輪20iは、管軸に沿った方向における、ハウジング本体20eに対する蓋部20fの位置を規制している。この実施形態において、蓋部20fのがたつきを防止するため、蓋部20fの位置は固定されている。高電圧供給端子44が位置する側のハウジング本体20eの開口部は、蓋部20f及びC形止め輪20iなどにより液密に閉塞されている。
ハウジング本体20eと蓋部20fとの間に設けられた環状の被シール部は、ゴム部材2aで液密にシールされている。この実施形態において、ゴム部材2aはOリングで形成されている。ゴム部材2aは、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
後述する高電圧供給端子54が位置する側のハウジング本体20eの開口部の内周面には、環状の溝部が形成されている。蓋部20gはハウジング本体20eの内部に位置している。蓋部20hは蓋部20gに対向している。蓋部20gは、冷却液7が出入りする開口部20kを有している。蓋部20hには、雰囲気としての空気が出入りする通気孔20mが形成されている。
ハウジング本体20eの上記溝部にはC形止め輪20jが嵌合されている。C形止め輪20jは、蓋部20hがゴム部材2bの周縁部(シール部)へ応力を加えている状態を保持している。ゴム部材2bのシール部はOリングのように形成されている。上記のことから、高電圧供給端子54が位置する側のハウジング本体20eの開口部は、蓋部20g、蓋部20h、C形止め輪20j及びゴム部材2bなどにより液密に閉塞されている。
ハウジング本体20eと蓋部20gと蓋部20hとの間に設けられた環状の被シール部は、ゴム部材2bのシール部で液密にシールされている。ゴム部材2bは、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
この実施形態において、ゴム部材2bはゴムベローズ(ゴム膜)であり、冷却液7に接している。ゴム部材2bは、ハウジング20内において、蓋部20g及び蓋部20hで囲まれた領域を、第1空間と、第2空間とに仕切っている。第1空間は、開口部20kと繋がった空間であり、冷却液7が存在する空間である。第2空間は、通気孔20mと繋がった空間であり、外気が存在する空間である。ゴム部材2bは、冷却液7の体積変化を吸収し、冷却液7の圧力調整を行っている。
図2は、図1に示したX線管装置の一部を拡大して示す図である。図1及び図2に示すように、ハウジング本体20eは、X線透過領域R1に対向したX線放射口20oを有している。X線放射口20oは、ハウジング本体20eの一部を貫通して形成されている。ハウジング20は、X線放射窓20wを有している。X線放射窓20wは、X線を透過しハウジング20外部に放射する。
なお、後述するX線遮蔽部520及び540は、X線放射口20oにおけるハウジング20外部へのX線の放射を妨げることのないように設けられている。このため、X線遮蔽部540は、X線放射口20oの側縁に設けられている。
X線放射窓20wは、ハウジング20の外側に位置している。X線放射窓20wは、機械的強度の高い材料を利用して形成することができる。この実施形態において、X線放射窓20wは、アルミニウムを利用して形成されているが、他の金属材料や樹脂などを利用して形成することも可能である。X線放射窓20wは凹型形状を有し、X線管30とX線放射窓20wとの間隔の低減を図っている。
X線放射窓20wに対向したハウジング本体20eの外壁には、取付け面が形成されている。X線放射口20oを囲むようにハウジング本体20eの取付け面には枠状の溝部が形成されている。X線放射窓20wは、上記取付け面に対向した状態で、上記取付け面に接触され、締め具としてのねじ20sによりハウジング本体20eに締め付けられている。ねじ20sは、X線放射窓20wに形成された貫通孔を通り、ハウジング本体20eに形成されたねじ穴に締め付けられている。X線放射窓20wはX線放射口20oを閉塞している。
ハウジング本体20eとX線放射窓20wとの間に設けられた枠状の被シール部は、ゴム部材2cで液密にシールされている。この実施形態において、ゴム部材2cはOリングで形成されている。ゴム部材2cは、ハウジング本体20eの取付け面に形成された溝部に設けられている。ゴム部材2cは、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
図3は、図1に示したX線管30を示す断面図である。
図1及び図3に示すように、X線管30は、真空外囲器31を備えている。真空外囲器31は、陽極ターゲット35の軸線aに垂直な方向にて陽極ターゲット35と対向する径大部と、軸線aに垂直な方向にてロータ14と対向する径小部と、径大部及び径小部を繋ぐ中継部と、を有している。
真空外囲器31は、真空容器32を有している。真空容器32は、例えば、ガラス、又は銅、ステンレス及びアルミニウム等の金属で形成されている。この実施形態において、真空容器32はガラスで形成されている。なお、真空容器32を金属で形成する場合、真空容器32は、X線透過領域R1に対向した開口を有している。そして、真空容器32の開口は、X線を透過する材料としてのベリリウムで形成されたX線透過窓で気密に閉塞されている。真空外囲器31の一部は、高電圧絶縁部材50で形成されている。本実施形態において、高電圧絶縁部材50は、ガラスで形成されている。
X線管30は、陽極ターゲット35及び陰極36を有している。
陽極ターゲット35は、真空外囲器31内に設けられている。陽極ターゲット35は、円盤状に形成されている。陽極ターゲット35は、この陽極ターゲットの外面の一部に設けられた傘状のターゲット層35aを有している。ターゲット層35aは、陰極36から照射される電子が衝突されることによりX線を放出する。陽極ターゲット35は、モリブデン合金などの金属で形成されている。
陽極ターゲット35の外側面や、陽極ターゲット35でのターゲット層35aとは反対側の表面には、放熱を高めるために、黒色化処理が施されている。ターゲット層35aはタングステン合金等の金属で形成されている。陽極ターゲット35は、管軸を中心に回転自在である。このため、陽極ターゲット35の軸線aは、管軸と平行である。
陰極36は、真空外囲器31内に設けられている。陰極36は、陽極ターゲット35に照射する電子を放出する。陰極36には相対的に負の電圧が印加される。低膨張合金であるKOV部材55は、真空外囲器31内で高電圧供給端子54を覆っている。ここでは、高電圧供給端子54はガラス製の高電圧絶縁部材50に封着され、KOV部材55は高電圧絶縁部材50に摩擦ばめを利用して固定されている。KOV部材55には、陰極支持部材37が取付けられている。陰極36は、陰極支持部材37に取付けられている。
高電圧供給端子54は、陰極支持部材37の内部を通って陰極36に接続されている。高電圧供給端子54は、陰極36に相対的に負の電圧を印加するともに陰極36の図示しないフィラメント(電子放出源)にフィラメント電流を供給するものである。
X線管30は、固定軸11、回転体12、軸受け13及びロータ14を備えている。固定軸11は、円柱状に形成されている。固定軸11の外周の一部には突出部が形成され、突出部は真空外囲器31に気密に取付けられている。固定軸11には、高電圧供給端子44が電気的に接続されている。固定軸11は回転体12を回転可能に支持する。
回転体12は、筒状に形成され、固定軸11と同軸的に設けられている。回転体12の外面にロータ14が取り付けられている。回転体12には、陽極ターゲット35が取付けられている。軸受け13は、固定軸11と回転体12の間に形成されている。回転体12は、陽極ターゲット35とともに回転可能に設けられている。
高電圧供給端子44は、固定軸11、軸受け13及び回転体12を介して陽極ターゲット35に相対的に正の電圧を印加する。この実施形態において、高電圧供給端子44及び高電圧供給端子54は、金属端子である。
X線管30の固定軸11は高電圧絶縁部材6にも固定されている。高電圧絶縁部材6はハウジング20に、直接又はステータコイル9などを介して間接的に固定されている。高電圧絶縁部材6は、一端が円錐形をし、他端が閉塞した管状に形成されている。高電圧絶縁部材6は、固定軸11と、ハウジング20及びステータコイル9との間を電気的に絶縁するものである。
図1及び図2に示すように、X線管装置10は、鉛で形成されたX線遮蔽部510、520、530、540、590をさらに備えている。これらのX線遮蔽部は、少なくとも鉛を含むX線不透過材で形成されていればよく、鉛合金等で形成されていてもよい。
図1に示すように、X線遮蔽部510は、管軸に沿った方向にターゲット層35aと対向したハウジング20の一端側に設けられている。X線遮蔽部510は、ターゲット層35aから放射されるX線を遮蔽するものである。X線遮蔽部510は、第1遮蔽部511及び第2遮蔽部512を有している。
第1遮蔽部511は、管軸に沿った方向にターゲット層35aと対向した側の蓋部20gに貼り付けられている。第1遮蔽部511は、蓋部20g全体を覆っている。第1遮蔽部511は、開口部20kと対向した個所が開口して形成され、開口部20kによる冷却液7の出入りを維持している。
第2遮蔽部512は、第1遮蔽部511上に設けられている。第2遮蔽部512は、開口部20k付近からハウジング20の外部に出射する恐れのあるX線を遮蔽するものである。
X線遮蔽部520は円筒状に形成されている。X線遮蔽部520の一端部は、第1遮蔽部511に近接している。このため、X線遮蔽部510及びX線遮蔽部520間の隙間から出射する恐れのあるX線を遮蔽することができる。
X線遮蔽部520は、管軸に沿って第1遮蔽部511から陽極ターゲット35(ターゲット層35aの表面の延長線上)を越える位置まで延出している。この実施形態において、X線遮蔽部520は、第1遮蔽部511からステータコイル9と対向する位置まで延出している。X線遮蔽部520は、必要に応じてハウジング20に固定されている。
X線遮蔽部530は、筒状に形成され、ハウジング20の筒部20r内に設けられている。X線遮蔽部530の一端部は、X線遮蔽部520に近接している。X線遮蔽部530は、必要に応じて筒部20rに固定されている。ここでは、X線遮蔽部530は、筒部20rの内壁に形成された突出部に固定されている。なお、上記突出部は、X線遮蔽部530の位置決めにも利用されている。このため、筒部20rから出射する恐れのあるX線を遮蔽することができる。
図2に示すように、X線遮蔽部540は、枠状に形成され、ハウジング20のX線放射口20oの側縁に設けられている。X線遮蔽部540の一端部は、X線遮蔽部520に近接している。X線遮蔽部540は、必要に応じてX線放射口20oの側縁に固定されている。
図1に示すように、X線遮蔽部材590は、環状に形成されている。X線遮蔽部材590は、ステータコイル9に取り付けられ、ハウジング20と同電位に設定されている。軸線aに垂直な方向において、X線遮蔽部材590は、X線遮蔽部520で取り囲まれている。X線遮蔽部材590は、散乱X線の遮蔽に寄与している。
図1及び図3に示すように、保持部材8及びゴム部材2d、2eは、X線管30とハウジング20との間の領域に位置している。
X線管装置10は、複数のゴム部材2dと、複数のゴム部材2eとを有している。この実施形態において、X線管装置10は、3個のゴム部材2dと3個のゴム部材2eとを有している。ゴム部材2dは軸線aの周りに等間隔に位置し、ゴム部材2eも軸線の周りに等間隔に位置している。ゴム部材2d、2eは、X線管30及びハウジング20の少なくとも一方を押圧し、ハウジング20に対するX線管30の位置を固定する。また、この実施形態において、ゴム部材2d、2eは、軸線aに垂直な方向にX線管30及びハウジング20の少なくとも一方を押圧している。
保持部材8は、環状に形成され、X線管30及びハウジング20にそれぞれ離間して位置している。保持部材8は、機械的強度の高い材料で形成されている。保持部材8は、少なくともゴム部材2d及びゴム部材2eより高い剛性を有している。この実施形態において、保持部材8は、電気絶縁材料である樹脂材料で形成されている。
ゴム部材2dは、保持部材8に取付けられている。ここでは、ゴム部材2dから突出した取付け部2p(図4)を保持部材8の貫通孔に嵌め入れている。なお、ゴム部材2d及び取付け部2pは、同一材料を利用して一体に形成されている。ゴム部材2dは、ハウジング20と保持部材8との間の隙間に挟み込まれ、ハウジング20を直接又は間接的に押圧している。この実施形態において、ゴム部材2dは、X線遮蔽部520に接触し、ハウジング20を間接的に押圧している。
ゴム部材2eは、保持部材8に取付けられている。ここでは、ゴム部材2eから突出した取付け部を保持部材8の貫通孔に嵌め入れている。なお、ゴム部材2e及び上記取付け部は、同一材料を利用して一体に形成されている。ゴム部材2eは、保持部材8とX線管30との間の隙間に挟み込まれ、X線管30を直接又は間接的に押圧している。この実施形態において、ゴム部材2eは、X線管30(真空外囲器31)に接触し、X線管30を直接押圧している。
この実施形態において、ゴム部材2d、2eは、保持部材8とともにハウジング20に対するX線管30の位置を固定している。ゴム部材2d、2e及び保持部材8は、ハウジング20に対するX線管30の位置ずれを防止している。特に、ゴム部材2d、2e及び保持部材8は、軸線aに垂直な方向におけるハウジング20に対するX線管30の位置ずれを防止している。ゴム部材2d、2eは、X線管30に生じる振動のハウジング20への伝達量を軽減する。ゴム部材2d、2eは冷却液7の存在する空間に位置している。
図1及び図3に示すように、ステータコイル9は、複数個所でハウジング20に固定されている。ステータコイル9は、高電圧絶縁部材6に対してX線管30の反対側に位置している。ステータコイル9は、ロータ14の外面に対向して真空外囲器31の外側を囲んでいる。
ステータコイル9は、ロータ14、回転体12及び陽極ターゲット35を回転させるものである。ステータコイル9に所定の電流が供給されることでロータ14に与える磁界を発生するため、陽極ターゲット35などが所定の速度で回転される。
図1に示すように、冷却媒体としての冷却液7は、X線管30が発生する熱の少なくとも一部を吸収するものである。
X線管装置10は、陽極用のリセプタクル300及び陰極用のリセプタクル400を有している。リセプタクル300は、ハウジング20の筒部20qの内部に位置し、筒部20qに取付けられている。リセプタクル400は、ハウジング20の筒部20rの内部に位置し、筒部20rに取付けられている。
リセプタクル300は、電気絶縁部材としてのハウジング301と、高電圧供給端子としての端子302とを有している。
ハウジング301は、筒部20q(ハウジング20)の外側に開口した桶状に形成されている。ハウジング301は、ほぼ軸対称なコップ形状であると言うことができる。また、ハウジング301のプラグ差込口がハウジング20の外側に開口していると言うことができる。
ハウジング301の開口側の端部において、ハウジング301の外面には、環状の突出部が形成されている。ハウジング301は、絶縁性の材料として、例えば樹脂で形成されている。端子302は、ハウジング301の底部に液密に取付けられ、上記底部を貫通している。端子302は絶縁被覆配線を介して高電圧供給端子44と接続されている。
筒部20qの段差部には、雌ねじの加工がなされている。リングナット310は、側面に雄ねじの加工がなされている。リングナット310は、筒部20qの段差部に締め付けられ、ハウジング301を押圧している。
リセプタクル300及びリセプタクル300に挿入される図示しないプラグは、非面圧式であり、着脱可能に形成されている。プラグをリセプタクル300に連結した状態で、プラグから端子302に高電圧(例えば、+70〜+80kV)が供給される。
リセプタクル400は、リセプタクル300と同様に形成されている。
リセプタクル400は、電気絶縁部材としてのハウジング401と、高電圧供給端子としての端子402とを有している。
ハウジング401は、筒部20r(ハウジング20)の外側に開口した桶状に形成されている。ハウジング401は、ほぼ軸対称なコップ形状であると言うことができる。また、ハウジング401のプラグ差込口がハウジング20の外側に開口していると言うことができる。
ハウジング401の開口側の端部において、ハウジング401の外面には、環状の突出部が形成されている。ハウジング401は、絶縁性の材料として、例えば樹脂で形成されている。端子402は、ハウジング401の底部に液密に取付けられ、上記底部を貫通している。端子402は絶縁被覆配線を介して高電圧供給端子54と接続されている。
筒部20rの段差部には、雌ねじの加工がなされている。リングナット410は、側面に雄ねじの加工がなされている。リングナット410は、筒部20rの段差部に締め付けられ、ハウジング401を押圧している。
リセプタクル400及びリセプタクル400に挿入される図示しないプラグは、非面圧式であり、着脱可能に形成されている。プラグをリセプタクル400に連結した状態で、プラグから端子402に高電圧(例えば、−70〜−80kV)が供給される。
筒部20qとリセプタクル300との間に設けられた枠状の被シール部は、ゴム部材2fで液密にシールされている。この実施形態において、ゴム部材2fはOリングで形成されている。ゴム部材2fは、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
なお、ゴム部材2gは、ゴム部材2fと同様にOリングで形成されている。ゴム部材2gは、筒部20rとリセプタクル400との間に設けられた被シール部を液密にシールしている。
上記のように本実施形態に係るX線管装置が形成されている。
ここで、上記ゴム部材2d、2eについてより詳細に説明する。図4は、図1に示したゴム部材2dを拡大して示す図であり、(a)上面図と、(b)断面図と、(c)正面図とで示す図である。
図1及び図4に示すように、複数のゴム部材2dの中の少なくとも1つは貫通孔を有している。ここでは、ゴム部材2dは、中実部材に貫通孔h1を設けて構成されている。貫通孔h1は、X線管30とハウジング20との間の空間に開口している。ゴム部材2eは、中実部材で構成されている。ゴム部材2eは、貫通孔無しに形成されている。
この実施形態において、貫通孔h1の両端が上記空間に開口している。ゴム部材2dは、円柱状に形成されている。X線遮蔽部520に接触するゴム部材2dの上面は、円形である。貫通孔h1は、直線的に形成され、一平面に沿った方向に延在している。貫通孔h1が延在する方向に垂直な平面上の貫通孔h1の輪郭は、真円を形成している。
ここで、上記一平面に垂直な方向におけるゴム部材2dの最大の長さをL1、上記一平面に垂直な方向における貫通孔h1の最大の幅をW1、とする。この実施形態において、長さL1はゴム部材2dの高さ(最大の高さ)であり、幅W1は貫通孔h1の内径(最大の内径)である。ゴム部材2dの高さとは、ゴム部材2dがハウジング20を間接的に押圧する方向のゴム部材2dの寸法である。
すると、本実施形態に係るゴム部材2dは、次の関係式を満たすように形成されている。
0.25×L1<W1<L1
上記のように構成されたX線管装置では、ステータコイル9に所定の電流を印加することでロータ14が回転し、陽極ターゲット35が回転する。次に、リセプタクル300、400に所定の高電圧を印加する。
リセプタクル300に印加された高電圧は、高電圧供給端子44、固定軸11、軸受け13及び回転体12を介して陽極ターゲット35に供給される。リセプタクル400に印加された高電圧は、高電圧供給端子54を介して陰極36に供給される。
これにより、陰極36から放出された電子は陽極ターゲット35のターゲット層35aに衝突し、陽極ターゲット35からX線が放射される。X線は、真空容器32(又はX線透過窓)及びX線放射窓20wを通ってハウジング20の外部へ放射される。
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線管装置10によれば、X線管装置10は、回転陽極型のX線管30と、ハウジング20と、ゴム部材2d、2eと、を備えている。X線管30は、陰極36と、陽極ターゲット35と、真空外囲器31と、を有している。
ゴム部材2d、2eは、X線管30とハウジング20との間の領域に位置し、X線管30及びハウジング20の少なくとも一方を押圧し、ハウジング20に対するX線管30の位置を固定している。この実施形態において、ゴム部材2d、2eは、保持部材8とともにハウジング20に対するX線管30の位置を固定している。
ゴム部材2dは、X線管30とハウジング20との間の空間に開口した貫通孔h1を有している。ゴム部材2dに貫通孔h1を形成し、貫通孔h1を上記空間に開口することにより、ゴム部材2dの弾力を小さくすることができる。
X線管装置の種類毎に固定部(ゴム部材2d、2e、保持部材8等)全体の弾性係数を調整する必要があるが、上記のようにゴム部材2dに貫通孔h1を形成することにより、上記弾性係数を調整する(小さくする)ことが可能となる。
簡便な手法にて、ゴム部材2d、2eの剛性を適度な剛性となるように調整することができるため、X線管装置の種類毎にゴム部材2d、2eの剛性を調整し、固定部の弾性係数を調整して適正な防振効果を得ることが可能となる。
また、X線管装置の種類(例えば管種)が変わっても、1種類又は複数種類の共通部品を用いてゴム部材(ハウジング20に対するX線管30の位置を固定するゴム部材)を形成することができる。例えば、1種類の共通部品を用いて上記ゴム部材を形成することができ得る。本実施形態では、1種類の共通部品(ゴム部材2e)を用いてゴム部材2d、2eを形成することができ得る。
ゴム部材2dは、次の関係式を満たすように形成されていた方が望ましい。
0.25×L1<W1
これにより、ゴム部材2dに貫通孔h1を形成した効果をより明確にすることができ、ゴム部材2dの弾力を明確に調整することができる。
なお、物理的には、ゴム部材2dは、次の関係式を満たすようにも形成されている。
W1<L1
上記のことから、製造時間の長期化及び製造コストの高騰を抑制することのできる防振構造のX線管装置10を得ることができる。
次に、上記第1の実施形態に係るX線管装置10のゴム部材2dの変形例について説明する。
(変形例1)
図5は、上記第1の実施形態に係るX線管装置10のゴム部材2dの変形例1を拡大して示す図であり、(a)上面図と、(b)断面図と、(c)正面図とで示す図である。
図5に示すように、ゴム部材2dは、中実部材に複数の貫通孔を設けて構成されている。ここでは、ゴム部材2dは、貫通孔h1の他に、他の貫通孔h2を設けて構成されている。貫通孔h2は、貫通孔h1と分離して形成され、X線管30とハウジング20との間の空間に開口している。この変形例1において、貫通孔h2の両端が上記空間に開口している。貫通孔h1及び貫通孔h2は、ゴム部材2dの高さ方向に並べられている。
ゴム部材2dの形状は、直方体である。X線遮蔽部520(図1)に接触するゴム部材2dの上面は、矩形である。貫通孔h2は、直線的に形成され、上記一平面に沿った方向に延在している。なお、貫通孔h1及び貫通孔h2は、上記一平面に垂直な方向に間隔を置いて設けられている。貫通孔h2が延在する方向に垂直な平面上の貫通孔h2の輪郭は、真円を形成している。
ここで、上記一平面に垂直な方向におけるゴム部材2dの最大の長さをL1、上記一平面に垂直な方向におけるゴム部材2dに形成された各貫通孔h1、h2の最大の幅をW1(W1a、W1b)、ゴム部材2dに形成された全ての貫通孔h1、h2の幅W1a、W1bの総和をW2、とする。この実施形態において、長さL1はゴム部材2dの高さ(最大の高さ)であり、幅W1aは貫通孔h1の内径(最大の内径)であり、幅W1bは貫通孔h2の内径(最大の内径)である。
上記のように、ゴム部材2dは複数の貫通孔を有していてもよく、この場合もゴム部材2dの剛性を調整することができ、弾力を小さくすることができる。
ゴム部材2dは、次の関係式を満たすように形成されていた方が望ましい。
0.25×L1<W2
これにより、ゴム部材2dに貫通孔h1、h2を形成した効果をより明確にすることができ、ゴム部材2dの弾力を明確に調整することができる。
なお、物理的には、ゴム部材2dは、次の関係式を満たすようにも形成されている。
W2<L1
(変形例2)
図6は、上記第1の実施形態に係るX線管装置10のゴム部材2dの変形例2を拡大して示す図であり、(a)上面図と、(b)断面図と、(c)正面図とで示す図である。
図6に示すように、貫通孔h1及び貫通孔h2がゴム部材2dの幅方向に並べられている以外、ゴム部材2dは、上記変形例1のゴム部材2dと同様に形成されている。
この変形例2において、長さL1はゴム部材2dの高さ(最大の高さ)であり、幅W1aは貫通孔h1の内径(最大の内径)であり、幅W1bは貫通孔h2の内径(最大の内径)である。
上記のように、ゴム部材2dは複数の貫通孔を有していてもよく、この場合もゴム部材2dの剛性を調整することができ、弾力を小さくすることができる。
ゴム部材2dは、次の関係式を満たすように形成されていた方が望ましい。
0.25×L1<W1a、0.25×L1<W1b
次に、第2の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、上記第1の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図7は、第2の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図である。図8は、本実施形態に係る回転陽極型X線管ユニットを示す断面図である。
図7に示すように、X線管装置は、大まかにハウジング20と、ハウジング20内に収納された回転陽極型のX線管30と、X線管30とハウジング20との間の空間に充填された冷却媒体としての冷却液7と、シールド構造体80と、回転駆動部としてのステータコイル9と、循環部23と、高電圧ケーブル61、71と、リセプタクル300、400とを備えている。
ハウジング20は、筒状に形成されたハウジング本体20eと、蓋部20f、20g、20hとを有している。ハウジング本体20eは、樹脂材料で形成されている。蓋部20f、20g、20hは金属または樹脂材料で形成されている。樹脂材料を使用する場合でも、ネジ部など強度を必要とする個所や、樹脂の射出成形で成形し難い個所、また後述するハウジング20の外部への電磁気ノイズの漏洩を防止する遮蔽層など、部分的に金属を併用しても良い。
固定部材90は、ハウジング20の内部に設けられている。固定部材90は、陰極36に対して陽極ターゲット35の反対側においてX線管30の外側に位置している。固定部材90は、電気絶縁部材であり、樹脂などの電気絶縁材料で形成されている。
固定部材90には、X線遮蔽体600が取付けられている。X線遮蔽体600は硬鉛で形成されている。X線遮蔽体600は枠状に形成されている。軸線aに垂直な方向において、X線遮蔽体600は、X線遮蔽体82に重なる端部を有している。X線遮蔽体600の端部の外径は、X線遮蔽体82の内径より僅かに小さい。X線遮蔽体600は、不所望なX線(散乱X線等)の遮蔽に寄与している。
固定部材90は、複数のゴム部材92を利用しハウジング本体20eに固定されている。ゴム部材92は固定部材90に取付けられている。ここでは、ゴム部材92から突出した取付け部を固定部材90の貫通孔に嵌め入れている。なお、ゴム部材92及び取付け部は、同一材料を利用して一体に形成されている。
例えば、固定部材90は、3、4個所でゴム部材92で固定されている。ゴム部材92は、ハウジング本体20eに接触している。このため、固定部材90及びゴム部材92は、摩擦ばめを利用してハウジング本体20eに固定されている。
固定部材90に形成された貫通孔90aは、高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との接続空間、高電圧ケーブル71の通路、冷却液7の流路、として利用されている。固定部材90は、高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との接続部や、高電圧ケーブル71の絶縁性を維持できる形状で配置されている。
また、X線遮蔽体600及びX線遮蔽部520は、固定部材90に取り付けられている。X線遮蔽部520は、貫通孔90aと対向した個所が開口して形成されている。上記のように、陰極36側において、鉛と絶縁材とが複合的に使用されている。これにより、鉛の使用量を低減することができる。また、高電圧ケーブル71と、X線遮蔽体600及びX線遮蔽部520との絶縁性を確保することができる。
図7及び図8に示すように、シールド構造体80は、軸線aに垂直な方向にて真空外囲器31の径大部及び中継部を取り囲んでいる。シールド構造体80は、X線を透過するX線透過領域R1と、X線を遮蔽しX線透過領域R1を囲んだX線遮蔽領域R2とを有している。シールド構造体80は、真空外囲器31との間に冷却液7を流す流路CC1を形成している。
少なくとも、X線管30及びシールド構造体80は、回転陽極型のX線管ユニット5を形成している。この実施形態において、X線管ユニット5は、X線管30、シールド構造体80、保持部材70、固定部材90、X線遮蔽体600、X線遮蔽部520、及びゴム部材91、92、95で形成されている。
なお、X線管ユニット5は、X線管30、シールド構造体80、保持部材70、固定部材90、X線遮蔽体600、X線遮蔽部520、及びゴム部材91、92、95に、接続部材40、高電圧絶縁部材4、ステータコイル9、及びX線遮蔽部材590を加えて形成されていてもよい。
シールド構造体80は、シェルとしての絶縁部材81と、X線遮蔽体82と、を有している。絶縁部材81で形成される流路形成体は、真空外囲器31との間に冷却液7が流れる流路CC1を形成する。
絶縁部材81は、電気絶縁性材料として例えば樹脂材料で形成されている。条件次第では、絶縁部材81は、防護体として機能する。絶縁部材81は、軸線aに垂直な方向において、真空外囲器31に隙間を置いて設けられている。
絶縁部材81は、筒状に形成されている。絶縁部材81は、X線遮蔽体82と独立して設けられている。絶縁部材81の外径はX線遮蔽体82の内径より僅かに小さく、絶縁部材81はX線遮蔽体82内に導入可能である。絶縁部材81は、少なくとも真空外囲器31の径大部を取り囲んでいる。この実施形態において、絶縁部材81は、真空外囲器31の径大部及び中継部を取り囲んでいる。絶縁部材81は、X線管30と、ハウジング20との間を電気的に絶縁するものである。
X線遮蔽体82は、筒状に形成されている。X線遮蔽体82は、X線不透過材としての鉛で形成され、X線遮蔽領域R2に設けられ、X線を遮蔽している。この実施形態において、X線遮蔽体82は硬鉛で形成されている。X線遮蔽体82は、X線透過領域R1に重なった貫通孔を含んでいる。上記貫通孔は、例えば円形であり、X線透過窓として機能する。X線遮蔽体82は、絶縁部材81に対してX線管30の反対側に位置している。X線遮蔽体82は、絶縁部材81に固定されている。
X線遮蔽体82の外径はハウジング本体20eの内径より小さく、X線遮蔽体82はハウジング本体20e内に導入可能である。X線遮蔽体82はハウジング本体20eに間隔を置いて形成されている。X線遮蔽体82は、真空外囲器31の径大部及び中継部を取り囲んでいる。
X線遮蔽体82の端部は、X線遮蔽部材590を取り囲んでいる。X線遮蔽部510、X線遮蔽部520、X線遮蔽体600、X線遮蔽体82及びX線遮蔽部材590は、X線透過領域R1外に放射されたX線を遮蔽することができるため、ハウジング20の外部へのX線の漏洩を防止することができる。
シールド構造体80がある程度の強度と延性を有する場合、シールド構造体80は防護体として機能することができる。陽極ターゲット35が高速回転中に破損した場合、高い運動エネルギを有した陽極ターゲット35の破片は、ガラスで形成された真空容器32を破壊し、更にハウジング20の内面に向かう方向へと飛散する。シールド構造体80は、高い運動エネルギを有した状態で飛散する陽極ターゲット35の破片のハウジング20への衝突を防護する。
シールド構造体80に陽極ターゲット35の破片が衝突しても、シールド構造体80は十分な変形を起こすことにより破片の運動エネルギを吸収することができる。シールド構造体80及びハウジング20は、隙間を置いて位置しているため、シールド構造体80に変形が生じてもハウジング20自体の変形を防止できる。これにより、ハウジング20に生じる恐れのあった亀裂の発生を防止することができる。
保持部材70は、環状に形成され、X線管30(真空外囲器31)の周りに間隔を置いて設けられている。保持部材70は、樹脂などの電気絶縁材料を利用して形成されている。複数のゴム部材91は、保持部材70の内周面側に取り付けられ、X線管30(真空外囲器31)を押圧している。ここでは、ゴム部材91から突出した取付け部を保持部材70の貫通孔に嵌め入れている。なお、ゴム部材91及び取付け部は、同一材料を利用して一体に形成されている。
複数のゴム部材95は、保持部材70の外周面側に取り付けられ、絶縁部材81を押圧している。ここでは、ゴム部材95から突出した取付け部95p(図9)を保持部材70の貫通孔に嵌め入れている。なお、ゴム部材95及び取付け部95pは、同一材料を利用して一体に形成されている。このため、保持部材70及びゴム部材91、95は、摩擦ばめを利用してハウジング20に対するX線管30の位置を固定している。
図7に示すように、X線管装置は高電圧絶縁部材4を有している。高電圧絶縁部材4は、接続部材40を介してX線管30に固定されている。高電圧絶縁部材4と接続部材40は機械的に強固に接続されている。高電圧絶縁部材4は、一端が円錐形をし、他端が閉塞した管状に形成されている。高電圧絶縁部材4は、軸線aに垂直な方向にて真空外囲器31の径小部及び中継部を取り囲んでいる。高電圧絶縁部材4は、固定軸11と、ハウジング20及びステータコイル9との間を電気的に絶縁するものである。
高電圧絶縁部材4は、接続部材40の近傍に冷却液7の出入り口が形成されている。高電圧絶縁部材4は、真空外囲器31との間に冷却液7が流れる流路を形成する流路形成体として機能している。ハウジング20内の冷却液7に自然対流が生じるためである。
また、本実施形態において、絶縁部材81及び高電圧絶縁部材4は、独立して形成され、間隔を置いて設けられている。絶縁部材81と真空外囲器31との間の流路CC1と、高電圧絶縁部材4と真空外囲器31との間の流路CC2とが分離するため、冷却液7に自然対流を生じ易くすることができる。
ステータコイル9は、高電圧絶縁部材4に接着されている。
X線管装置は、循環部23及び空洞部24を備えている。循環部23は、ハウジング20内部に設けられ、流路CC1、CC2に冷却液7の流れを形成する。循環部23は、チャンバ23aと、モータ23bと、フィン23cとを備えている。チャンバ23aは、冷却液7の取込み口及び吐出し口を有している。
モータ23bは、チャンバ23aの内壁に取付けられている。フィン23cは、チャンバ23a内にてモータ23bに取付けられている。モータ23bは、図示しない電源供給部から電力が与えられることにより、フィン23cを回転させる。循環部23は、取込み口からチャンバ23a内に取込んだ冷却液7を、吐出し口からチャンバ23aの外部に吐出す。
空洞部24は、筒状の内周壁と、筒状の外周壁と、内周壁及び外周壁の一端を液密に閉塞する環状の一端壁と、内周壁及び外周壁の他端を液密に閉塞する環状の他端壁と、を有している。この実施形態において、他端壁は、接続部材40及び高電圧絶縁部材4で形成され、複数の取入れ口INを有している。外周壁の一部に形成された開口は、チャンバ23aの吐出し口と液密に連通している。
空洞部24は、チャンバ23aの吐出し口と、取入れ口INとを繋ぐ流路として機能する。このため、冷却液7は、真空外囲器31の径小部側から中継部側に流路CC2を流れる。循環部23は、貫通孔90aを通過した冷却液7を取込む。このため、冷却液7(例えば、流路CC2を通った冷却液7)は、真空外囲器31の中継部側から径大部側に流路CC1を流れる。
ハウジング20の内部に強制対流を生じさせることができるため、冷却液7をハウジング20の内部において循環させることができる。また、流路CC1、CC2は冷却液7の流れを形成することができる。この実施形態において、冷却液7は、高電圧供給端子44側から高電圧供給端子54側に流路CCを流れる。
冷却液7としては、水系冷却液や、絶縁性の冷却液としての絶縁油を利用することができる。この実施形態において、冷却液7は、絶縁油である。
X線管装置は、陽極用のリセプタクル300及び陰極用のリセプタクル400を有している。
電気絶縁性部材64は、電気絶縁性樹脂で形成され、端子302と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くし、ハウジング301に直に接着されている。より詳しくは、電気絶縁性部材64はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材64を利用することにより、端子302と高電圧ケーブル61との電気的接続部と、ハウジング20との電気絶縁性を向上することができる。
電気絶縁性部材74は、電気絶縁性樹脂で形成され、端子402と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くし、ハウジング401に直に接着されている。より詳しくは、電気絶縁性部材74はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材74を利用することにより、端子402と高電圧ケーブル71との電気的接続部と、ハウジング20との電気絶縁性を向上することができる。
上記のように本実施形態に係るX線管装置が形成されている。
ここで、上記ゴム部材91、92、95についてより詳細に説明する。図9は、図7に示したゴム部材95及び調整部材を拡大して示す図であり、(a)上面図と、(b)断面図と、(c)正面図とで示す図である。
図7に示すように、複数のゴム部材91、複数のゴム部材92、及び複数のゴム部材95の中の少なくとも1つは貫通孔を有し、貫通孔内にはゴム部材の材質とは異なる材質で形成された調整部材が充填されている。
ゴム部材91は、中実部材で構成されている。ゴム部材91は、貫通孔無しに形成されている。ゴム部材92及びゴム部材95は、中実部材に貫通孔を設けて構成されている。上記貫通孔は、X線管30とハウジング20との間の空間に開口している。ゴム部材92の貫通孔内にはゴム部材92の材質とは異なる材質で形成された調整部材93が充填されている。ゴム部材95の貫通孔内にはゴム部材95の材質とは異なる材質で形成された調整部材96が充填されている。
ここで、ゴム部材95及び調整部材96について説明する。なお、ゴム部材95及び調整部材96の説明を、ゴム部材92及びゴム部材92の貫通孔内に充填される調整部材に適用でき得る。
図7及び図9に示すように、ゴム部材95は、貫通孔h1を有している。この実施形態において、貫通孔h1の両端が上記空間に開口している。ゴム部材95は、円柱状に形成されている。絶縁部材81に接触するゴム部材95の上面は、円形である。貫通孔h1は、直線的に形成され、一平面に沿った方向に延在している。貫通孔h1が延在する方向に垂直な平面上の貫通孔h1の輪郭は、真円を形成している。
ここで、上記一平面に垂直な方向におけるゴム部材95の最大の長さをL1、上記一平面に垂直な方向における貫通孔h1の最大の幅をW1、とする。この実施形態において、長さL1はゴム部材95の高さ(最大の高さ)であり、幅W1は貫通孔h1の内径(最大の内径)である。
すると、本実施形態に係るゴム部材95は、次の関係式を満たすように形成されている。
0.25×L1<W1<L1
調整部材96の材質は、例えばゴム部材95の材質とは異なるゴムを利用することができる。また、プラスチックを利用して調整部材96を形成することにより、ゴム部材95及び調整部材96の集合体の剛性をより向上させることができ、貫通孔h1無しに形成されたゴム部材95の剛性より向上させることができる。
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線管装置10によれば、X線管装置10は、回転陽極型のX線管30と、絶縁部材81(流路形成体)と、X線遮蔽体82(X線遮蔽手段)と、ハウジング20と、ゴム部材91、92、95と、を備えている。絶縁部材81は、軸線aに垂直な方向にて真空外囲器31を取り囲むシェルとして機能し、真空外囲器31との間に冷却液7が流れる流路CC1を形成する。X線遮蔽体82は、X線の漏洩を防止し、X線管30及び絶縁部材81とともにX線管ユニット5を形成する。ハウジング20は、X線管ユニット5を収納し、X線管ユニット5との間に冷却液7が流れる空間を形成する。
ゴム部材91、92、95は、X線管ユニット5とハウジング20との間の領域に位置し、X線管ユニット5及びハウジング20の少なくとも一方を押圧し、ハウジング20に対するX線管ユニット5の位置を固定している。この実施形態において、ゴム部材91、95は、保持部材70とともにハウジング20に対するX線管ユニット5の位置を固定している。
ゴム部材92、95は、X線管ユニット5とハウジング20との間の空間に開口した貫通孔(h1)を有している。ゴム部材92、95の貫通孔(h1)には、調整部材(96)が充填されている。ゴム部材95及び調整部材96の集合体の弾力をゴム部材95単独の弾力より小さくすることができる。また、ゴム部材92及び調整部材の集合体の弾力をゴム部材92単独の弾力より小さくすることができる。
X線管装置の種類毎に固定部(ゴム部材91、92、95、保持部材70、固定部材90等)全体の弾性係数を調整する必要があるが、上記のようにゴム部材に貫通孔を形成し、貫通孔に調整部材を充填することにより、上記弾性係数を調整する(大きくする)ことが可能となる。
簡便な手法にて、ゴム部材92、95の剛性を適度な剛性となるように調整することができるため、X線管装置の種類毎に上記集合体の剛性を調整し、固定部の弾性係数を調整して適正な防振効果を得ることが可能となる。
また、X線管装置の種類(例えば管種)が変わっても、1種類又は複数種類の共通部品を用いてゴム部材(ハウジング20に対するX線管30の位置を固定するゴム部材)を形成することができる。例えば、1種類の共通部品を用いて上記ゴム部材を形成することができ得る。本実施形態では、1種類の共通部品(ゴム部材91)を用いてゴム部材91、92、95を形成することができ得る。
ゴム部材95等は、次の関係式を満たすように形成されていた方が望ましい。
0.25×L1<W1
上記のことから、製造時間の長期化及び製造コストの高騰を抑制することのできる防振構造のX線管装置10を得ることができる。
次に、上記第2の実施形態に係るX線管装置10のゴム部材95及び調整部材96の変形例について説明する。
(変形例1)
図10は、上記第2の実施形態に係るX線管装置10のゴム部材95及び調整部材96の変形例1を拡大して示す図であり、(a)上面図と、(b)断面図と、(c)分解図とで示す図である。
図10に示すように、調整部材96は円柱状に形成され、貫通孔h1に対応した形状に形成されている。調整部材96は、ゴム部材95の材質とは異なる材質で形成され、貫通孔h1内に挿入されている。
上記のように、調整部材96はゴム部材95の貫通孔h1内に挿入されていてもよく、この場合もゴム部材95及び調整部材96の集合体の剛性を調整することができる。
(変形例2)
図11は、上記第2の実施形態に係るX線管装置10のゴム部材95及び調整部材96の変形例2を拡大して示す図であり、(a)上面図と、(b)断面図と、(c)正面図とで示す図である。
図11に示すように、ゴム部材95は、中実部材に複数の貫通孔を設けて構成されている。ここでは、ゴム部材95は、貫通孔h1の他に、他の貫通孔h2を設けて構成されている。貫通孔h2は、貫通孔h1と分離して形成され、X線管ユニット5とハウジング20との間の空間に開口している。この変形例2において、貫通孔h2の両端が上記空間に開口している。貫通孔h1及び貫通孔h2は、ゴム部材95の高さ方向に並べられている。
ゴム部材95の形状は、直方体である。絶縁部材81(図7)に接触するゴム部材95の上面は、矩形である。貫通孔h2は、直線的に形成され、上記一平面に沿った方向に延在している。なお、貫通孔h1及び貫通孔h2は、上記一平面に垂直な方向に間隔を置いて設けられている。貫通孔h2が延在する方向に垂直な平面上の貫通孔h2の輪郭は、真円を形成している。
ここで、上記一平面に垂直な方向におけるゴム部材95の最大の長さをL1、上記一平面に垂直な方向におけるゴム部材95に形成された各貫通孔h1、h2の最大の幅をW1(W1a、W1b)、ゴム部材95に形成された全ての貫通孔h1、h2の幅W1a、W1bの総和をW2、とする。この実施形態において、長さL1はゴム部材95の高さ(最大の高さ)であり、幅W1aは貫通孔h1の内径(最大の内径)であり、幅W1bは貫通孔h2の内径(最大の内径)である。
本実施形態に係るゴム部材95は、次の関係式を満たすように形成されている。
0.25×L1<W2
上記のように、ゴム部材95は複数の貫通孔を有していてもよい。また、貫通孔h1、h2の中、貫通孔h1内にのみ調整部材96が充填されていてもよい。
上記のように、貫通孔h1内にのみ調整部材96が充填されていてもよく、この場合もゴム部材95及び調整部材96の集合体の剛性を調整することができる。
(変形例3)
図12は、上記第2の実施形態に係るX線管装置10のゴム部材95及び調整部材の変形例3を拡大して示す図であり、(a)上面図と、(b)断面図と、(c)正面図とで示す図である。
図12に示すように、ゴム部材95は、中実部材に複数の貫通孔を設けて構成されている。ここでは、ゴム部材95は、ゴム部材95の高さ方向に並べられた貫通孔h1及び貫通孔h2を有している。
ゴム部材95の形状は、直方体である。絶縁部材81(図7)に接触するゴム部材95の上面は、矩形である。貫通孔h2は、直線的に形成され、上記一平面に沿った方向に延在している。なお、貫通孔h1及び貫通孔h2は、上記一平面に垂直な方向に間隔を置いて設けられている。貫通孔h2が延在する方向に垂直な平面上の貫通孔h2の輪郭は、真円を形成している。
ここで、上記一平面に垂直な方向におけるゴム部材95の最大の長さをL1、上記一平面に垂直な方向におけるゴム部材95に形成された各貫通孔h1、h2の最大の幅をW1(W1a、W1b)、ゴム部材95に形成された全ての貫通孔h1、h2の幅W1a、W1bの総和をW2、とする。この実施形態において、長さL1はゴム部材95の高さ(最大の高さ)であり、幅W1aは貫通孔h1の内径(最大の内径)であり、幅W1bは貫通孔h2の内径(最大の内径)である。
本実施形態に係るゴム部材95は、次の関係式を満たすように形成されている。
0.25×L1<W2
上記のように、ゴム部材95は複数の貫通孔を有していてもよい。また、貫通孔h1、h2内に、それぞれ調整部材が充填されていてもよい。貫通孔h1内には、ゴム部材95の材質とは異なる材質で形成された調整部材96が充填されている。貫通孔h2内には、ゴム部材95の材質とは異なる材質で形成された調整部材97が充填されている。
上記のように、各貫通孔h1、h2内に調整部材96、97が充填されていてもよく、この場合もゴム部材95及び調整部材96、97の集合体の剛性を調整することができる。
(変形例4)
図13は、上記第2の実施形態に係るX線管装置10のゴム部材95及び調整部材の変形例4を拡大して示す図であり、(a)上面図と、(b)断面図と、(c)分解図とで示す図である。
図13に示すように、貫通孔h1及び貫通孔h2がゴム部材2dの幅方向に並べられている以外、ゴム部材2dは、上記変形例3のゴム部材2dと同様に形成されている。この変形例4において、長さL1はゴム部材2dの高さ(最大の高さ)であり、幅W1aは貫通孔h1の内径(最大の内径)であり、幅W1bは貫通孔h2の内径(最大の内径)である。
本実施形態に係るゴム部材2dは、次の関係式を満たすように形成されている。
0.25×L1<W1a、0.25×L1<W1b
調整部材96は円柱状に形成され、貫通孔h1に対応した形状に形成されている。調整部材96は、ゴム部材95の材質とは異なる材質で形成され、貫通孔h1内に挿入されている。調整部材97は円柱状に形成され、貫通孔h2に対応した形状に形成されている。調整部材97は、ゴム部材95の材質とは異なる材質で形成され、貫通孔h2内に挿入されている。
上記のように、調整部材96、97はゴム部材95の貫通孔h1、h2内に挿入されていてもよく、この場合もゴム部材95及び調整部材96、97の集合体の剛性を調整することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、貫通孔が延在する方向に垂直な平面上の貫通孔の輪郭は真円が望ましく、これにより、貫通孔を形成し易くすることができる。但し、貫通孔の上記輪郭は、真円に限定されるものではなく種々変形可能であり、楕円や矩形等であってもよい。
1個のゴム部材に複数の貫通孔を設ける場合、複数の貫通孔は互いに分離して設けたほうが望ましく、これにより、貫通孔内に調整部材を充填したり、挿入したりし易くすることができる。但し、複数の貫通孔は、互いに交差してゴム部材に設けられていてもよい。
上述した実施形態では、保持部材8(70)とハウジング20の内壁との間の隙間に挟まれるゴム部材2d(95)やその集合体の剛性を調整した場合について説明したが、剛性を調整するゴム部材やその集合体は上述した例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、保持部材8(70)と、X線管30との間の隙間に挟まれるゴム部材2e(91)やその集合体の剛性を調整してもよい。
真空外囲器31が接地電位となるような金属外囲器の場合、保持部材8(70)は金属材で形成されていてもよい。
上記X線管装置は、保持部材8(70)無しに形成されていてもよい。この場合、ゴム部材が直接、X線管30とハウジング20の内壁との隙間に挟まれていてもよく、これにより上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
上述したように、X線管装置は、循環冷却システムを備えていてもよい。但し、X線管装置は、循環冷却システム無しに形成されていてもよい。この場合、ハウジング20内の冷却液7は、ハウジング20の外表面からの放熱によって冷却される。
本発明の実施形態は、上述したX線管装置に限らず、各種のX線管装置に適用することができる。例えば、本発明の実施形態を、モノブロックまたはモノタンク等と呼ばれているX線管装置に適用することができる。ここで、上記X線管装置は、X線管ユニット及び高電圧発生器がハウジング内に収容され、冷却液に浸って形成されている。