JP2015091760A - コラーゲン様ペプチドからなる薬物担体 - Google Patents

コラーゲン様ペプチドからなる薬物担体 Download PDF

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Abstract

【課題】ステルス性であって、かつ、尿排泄性が高い薬物担体を開発すること。
【解決手段】本発明のステルス性かつ高尿排泄性の薬物担体は、第1番目のトリペプチド配列(X1−Y1−Gly)と、・・・、第i番目のトリペプチド配列(Xi−Yi−Gly)と、・・・、第n番目のトリペプチド配列(Xn−Yn−Gly)とを含むアミノ酸配列を含み、3重らせん構造を形成する。(ここで、i及びnは整数で、1<i<nであり、n≧7であって、X1、・・・、Xi、・・・Xnのアミノ酸は独立に選択され、Y1、・・・、Yi、・・・Ynのアミノ酸も独立に選択される。)前記基本ユニットは連続して繰り返される場合がある。本発明の医薬組成物は本発明の薬物担体に薬物が結合した化合物を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、コラーゲン様ペプチドからなる薬物担体と、これを利用する医薬組成物とに関する。具体的には、コラーゲン様ペプチドからなるステルス性かつ高尿排泄性の薬物担体と、該薬物担体に薬物が結合した化合物を含む医薬組成物とに関する。
標的の臓器に薬物を送達したり、薬物の体内での動態を制御したりするための薬物送達システムの開発は、創薬の一分野をなす重要な領域である。これまでに、リポソーム、デンドリマー、ペプチド超分子、無機ナノ粒子等のさまざな薬物担体が開発されている(非特許文献1−4)。一般に、これら比較的大きなサイズの薬物担体は細網内皮系細胞に捕捉され、分解をうけやすい。これに対し、薬物担体の表面を修飾処理すると、細網内皮系細胞に捕捉されにくくすることができる。薬物担体についてステルス性とは、細網内皮系細胞に捕捉されにくい性質をいう。例えば、一定のサイズのリポソームの表面をポリエチレングリコールで修飾することによって、ステルス性リポソームを作成することができる。ところが、かかるステルス性リポソームは腎臓の糸球体から濾過されるにはサイズが大きすぎるため、尿排泄性が低い(非特許文献5−7)。腎障害を有する患者での薬物の使用、あるいは、通常の診断薬等の使用においては、投与後長時間生体内に滞留することにより副作用を惹起する可能性がある。ステルス性であって、かつ、薬物の尿中排泄性が高い薬物担体はいままでに知られていなかった。
Nishiyama, N.ら、Drug Delivery System,26:29(2011). Matsumura, Y.、Drug Delivery System 26:20(2011). Martin, C.ら、Nature Reviews Drug Discovery,2:29(2003). Takakura, Y.ら、European Journal of Pharmaceutical Sciences,13:71(2001). Szebeni, J.,Advanced Drug Delivery Reviews,63:1020(2011). Jiang,W.ら、Bioanalysis,3,333(2011). Grenader, T.ら、Anti−Cancer Drugs,21:868(2010).
そこで、ステルス性であって、かつ、尿排泄性が高い薬物担体を開発する必要がある。
本発明は、第1番目のトリペプチド配列(X1−Y1−Gly)と、・・・、第i番目のトリペプチド配列(Xi−Yi−Gly)と、・・・、第n番目のトリペプチド配列(Xn−Yn−Gly)とを含むアミノ酸配列を含み、投与される動物種の体温で3重らせんを形成するペプチドからなる、ステルス性かつ高尿排泄性の薬物担体を提供する。(ここで、i及びnは整数で、1<i<nであり、n≧7であって、X1、・・・、Xi、・・・Xnのアミノ酸は独立に選択され、Y1、・・・、Yi、・・・Ynのアミノ酸も独立に選択される。)
本発明の薬物担体において、前記アミノ酸配列はX−Y−Glyからなる基本ユニットが7回又は8回以上繰り返されたアミノ酸配列の場合がある。(ここでX及びYは独立に選択される任意のアミノ酸である。)
本発明の薬物担体において、前記基本ユニットのアミノ酸配列はPro−Hyp−Glyの場合がある。
本発明の薬物担体において、前記基本ユニットは連続して繰り返される場合がある。
本発明の薬物担体において、本発明の前記ペプチドはプロリン残基のヒドロキシル化以外の修飾を受ける場合がある。
本発明の薬物担体において、前記ペプチドは配列番号1ないし6、及び、9ないし12からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列の場合がある。
本発明の薬物担体は、薬物の送達に用いられる場合がある。
本発明の薬物担体において、前記薬物は、治療及び/又は診断のための医薬の場合がある。
本発明の薬物担体において、前記ペプチドはホモ又はヘテロ3量体の場合がある。
本発明は、前記薬物担体に薬物が結合した化合物を含む医薬組成物を提供する。
本発明の医薬組成物は、イメージングのために用いられる場合がある。
本発明の医薬組成物は、生体機能測定のために用いられる場合がある。
本発明の医薬組成物において、前記生体機能測定は、酸化ストレスの測定の場合がある。そこで、本発明は酸化ストレス検査用の医薬組成物を提供する。本発明の酸化ストレス検査用の医薬組成物は、本発明の薬物担体に酸化ストレスに鋭敏に反応する標識剤が結合した化合物を含む。前記酸化ストレスに鋭敏に反応する標識剤は、スピンプローブ標識剤と、蛍光標識剤とを含むが、これらに限定されない。前記酸化ストレスに鋭敏に反応する蛍光標識剤は、アクリジン誘導体及びフルオレセイン誘導体蛍光物質を含むが、これらに限定されない。
本発明はステルス性かつ高尿排泄性の薬物担体と薬物とが結合した化合物を投与するステップを含む、薬物を送達させる方法を提供する。前記薬物担体は、第1番目のトリペプチド配列(X1−Y1−Gly)と、・・・、第i番目のトリペプチド配列(Xi−Yi−Gly)と、・・・、第n番目のトリペプチド配列(Xn−Yn−Gly)とを含むアミノ酸配列を含み、投与される動物種の体温で3重らせんを形成するペプチドからなる。(ここで、i及びnは整数で、1<i<nであり、n≧7であって、X1、・・・、Xi、・・・Xnのアミノ酸は独立に選択され、Y1、・・・、Yi、・・・Ynのアミノ酸も独立に選択される。)
本発明の薬物を送達させる方法において、前記ペプチドのアミノ酸配列はX−Y−Glyからなる基本ユニットが7回又は8回以上繰り返されたアミノ酸配列の場合がある。(ここでX及びYは独立に選択される任意のアミノ酸である。)
本発明の薬物を送達させる方法において、前記基本ユニットのアミノ酸配列はPro−Hyp−Glyの場合がある。
本発明の薬物を送達させる方法において、前記基本ユニットは連続して繰り返される場合がある。
本発明の薬物を送達させる方法において、前記ペプチドはプロリン残基のヒドロキシル化以外の修飾を受ける場合がある。
本発明の薬物を送達させる方法において、前記ペプチドは配列番号1ないし6、及び、9ないし12からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列の場合がある。
本発明の薬物を送達させる方法において、前記薬物担体は薬物の送達に用いられる場合がある。
本発明の薬物を送達させる方法において、前記薬物担体に結合させる薬物は、治療及び/又は診断のための医薬の場合がある。
本発明の薬物を送達させる方法において、前記薬物担体はホモ又はヘテロ3量体の場合がある。
本発明は、本発明の薬物担体に薬物が結合した化合物を含む医薬組成物を投与するステップを含む治療又は診断のための方法を提供する。
本発明の治療又は診断のための方法において、前記医薬組成物はイメージングのために用いられる場合がある。
本発明の治療又は診断のための方法において、前記医薬組成物は生体機能測定のために用いられる場合がある。
本明細書と、本明細書に添付される配列表とにおいて、ペプチドの構造は、当業者に周知慣用のアミノ酸の3文字による表記法で記述される。本明細書においてアミノ酸はL体である。本明細書のアミノ酸は、分子生物学で一般的なタンパク質の翻訳に用いられることが知られた20種類のL−アミノ酸の他、当該技術分野においてよく知られる修飾アミノ酸残基、例えば、4−ヒドロキシ−L−プロリン、4−フルオロ−L−プロリン及びN−イソブチルグリシンを含む。本明細書において、ヒドロキシルプロリンは、4−ヒドロキシ−L−プロリンであり、「Hyp」と表される。
本明細書において、薬物担体とは、薬物と結合させて薬物の生体内動態を変化させるための物質である。
本明細書において、高尿排泄性の薬物担体とは、ある薬物担体が、単独でも、薬物が結合した状態でも、急速に投与量のほとんどが尿中に排泄されることをいう。例えば、ラットでは、投与後24時間以内に、投与量の90%以上、好ましくは、95%以上が尿中に排泄されることをいう。
本明細書において、ステルス性の薬物担体とは、ある薬物担体が、単独でも、薬物が結合した状態でも、血液中で分解及び修飾を受けず、細網内皮細胞に捕捉されないで、血液中に主に存在することをいう。
本発明の薬物担体は、いわゆるコラーゲン様ペプチドからなる。本明細書において、コラーゲン様ペプチドとは、第1番目のトリペプチド配列(X1−Y1−Gly)と、・・・、第i番目のトリペプチド配列(Xi−Yi−Gly)と、・・・、第n番目のトリペプチド配列(Xn−Yn−Glu)とを含むアミノ酸配列を含む1次構造を有し、生体内で3重らせん状の3次構造を有するペプチドをいう。ここで、i及びnは整数で、1<i<nであり、n≧7であって、X1、・・・、Xi、・・・Xn及びY1、・・・、Yi、・・・Ynは、独立に選択される任意のアミノ酸であって、天然のアミノ酸残基でもよく、当該技術分野においてよく知られる修飾アミノ酸残基、例えば、Hyp、4−フルオロ−L−プロリン又はN−イソブチルグリシンでもよい。
本明細書のコラーゲン様ペプチドのアミノ酸配列は、X−Y−Glyからなる基本ユニットが7回又は8回以上繰り返されたアミノ酸配列の場合がある。(ここでX及びYは独立に選択される任意のアミノ酸であって、天然のアミノ酸残基でもよく、当該技術分野においてよく知られる修飾アミノ酸残基、例えば、Hyp、4−フルオロ−L−プロリン又はN−イソブチルグリシンでもよい。)
本明細書のコラーゲン様ペプチドにおいて、前記基本ユニットが連続して繰り返されるとは、1個の基本ユニットと隣の基本ユニットとが常に接しており、無関係なアミノ酸残基が介在しないことをいう。X−Y−Glyからなる基本ユニットがn回連続して繰り返されたアミノ酸配列は、(X−Y−Gly)nと表記される。代替的には、本明細書のコラーゲン様ペプチドは、生体内で3重らせんを形成することを条件として、1個の基本ユニットと隣の基本ユニットとの間に1個又は2個以上の無関係なアミノ酸残基が介在してもかまわない。しかし、本明細書のコラーゲン様ペプチドのアミノ酸配列が基本ユニットの他に無関係なアミノ酸残基を含む場合には、当該ペプチドのアミノ酸配列中の80%以上のアミノ酸残基が基本ユニットで占められることがあり、90%以上のアミノ酸残基が基本ユニットで占められることがある。
本明細書のコラーゲン様ペプチドにおいて、基本ユニットのアミノ酸配列はXがProで、YがHypの場合がある。
Kobayashi Y.ら(Biopolymers、9:415(1970))によると、コラーゲン様ペプチドは基本ユニットの繰り返し回数が21回未満であれば合成可能である。したがって、本明細書のコラーゲン様ペプチドにおいて、基本ユニットの繰り返しの回数の上限は20回である。よって基本ユニットの繰り返しの回数は21回未満である。換言すると、基本ユニットの繰り返しの回数は、20回、19回、18回、17回、16回、15回、14回、13回、12回、11回又は10回の場合がある。
また、本明細書の実施例に示されるとおり、基本ユニットの繰り返しの回数が5回の場合には融解温度が投与される動物の体温より低いため、投与された動物の体内で3重らせんを形成することができなかった。一方、7回の場合には本発明の作用効果を奏することができた。したがって、本明細書のコラーゲン様ペプチドにおいて、基本ユニットの繰り返しの回数の下限は7回である。よって基本ユニットの繰り返しの回数は、7回又は8回以上である。
本明細書のコラーゲン様ペプチドにおいて、ホモ3量体とは、同一の1次構造のペプチド3本からなる3量体をいう。またヘテロ3量体とは、同一の1次構造のペプチド2本と、該ペプチドとは異なる1次構造のペプチド1本とからなる3量体か、それぞれ異なる1次構造のペプチド3本からなる3量体かをいう。
本明細書において、融解温度とは、本明細書のコラーゲン様ペプチドが3重らせん構造の半量がランダムコイルに転移する温度をいう。融解温度は、例えば、円2色性スペクトル測定による高次構造解析などの公知の方法により測定されるが、これに限定されない他の公知の方法によっても測定できる。
本発明の薬物担体のコラーゲン様ペプチドは投与される動物種の体温で3重らせんを形成する。そこで、本発明の薬物担体のコラーゲン様ペプチドは投与される動物種の体温より高い融解温度を有する。
本発明において、投与される動物種とは、本発明の薬物担体を用いて薬物を送達する技術が適用される全ての動物種をいい、ヒトと、実験動物と、獣医学の治療対象となる動物とを含むが、これらに限定されない。具体的には、投与される動物種には、ヒト、サル、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、イヌ、ウサギ及びニワトリを含むが、これらに限定されない。
これらの動物の平均体温は、ヒトでは36°C、サルでは38°C、ネコでは38.5°C、イヌでは38.5°C、ラットでは37.5°C、マウスでは37.5°C、ブタでは39°C、ウマでは37.5°C、ウシでは38.5°C、ウサギでは39°C、ニワトリでは42°Cである。
したがって、本発明の薬物担体のコラーゲン様ペプチドの融解温度は、36°C以上が好ましく、37°C以上がより好ましく、37.5°C以上がより好ましく、38°C以上がより好ましく、38.5°C以上がより好ましく、39°C以上がより好ましく、42°C以上がより好ましい。
本明細書において、「修飾」とは、タンパク質の合成に用いられる20種類のL−アミノ酸からなるペプチドにいずれかの置換基が共有結合することをいう。本発明の薬物担体のコラーゲン様ペプチドについて「プロリン残基のヒドロキシル化以外の修飾を受ける」とは、投与される動物種において3重らせんを形成することを条件として、プロリン残基にヒドロキシル基が結合することを除いて、いずれのアミノ酸残基にいかなる置換基が結合するものであってもかまわない。本発明の薬物担体のコラーゲン様ペプチドを修飾する置換基は、アシル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、アミド基、アルキル基、アリル基、アリール基、グアニジル基、アミジン基、グアニジル基、アミジン基、カルバモイル基、トリニトロフェニル基を含むが、これらに限定されない。これらの置換基によるペプチドの修飾は、例えば、Walker JM編、“The protein protocols handbook、2nd Ed.”HUMANA PRESS,Totowa,New Jersey,USA(2002)のような文献に説明される公知の方法により調製することができる。本明細書において、本発明の薬物担体のコラーゲン様ペプチドには、生体内の代謝反応によって、本発明のコラーゲン様ペプチドか、プロリン残基のヒドロキシル化以外の修飾を受けた誘導体かが生成するような前駆体が含まれる。前記前駆体には、本発明のコラーゲン様ペプチドか、該コラーゲン様ペプチドがプロリン残基のヒドロキシル化以外の修飾を受けた誘導体かのエステル化誘導体が含まれるが、これに限られない。
本明細書において、薬物とは、生体内で生物活性を示す化合物か、生体での周囲環境を検出又は計測できる化合物かをいう。
前記生体内で生物活性を示す化合物は、ホルモン剤のように受容体に結合することによりアゴニストとして生物活性を示す化合物と、受容体拮抗剤のように受容体に結合してアゴニストの結合を阻害することにより生物活性を示す化合物と、酵素阻害剤のように酵素と結合することにより酵素活性を阻害し生物活性を示す化合物とを含むが、これらに限定されない。かかる生体内で生物活性を示す化合物の薬物を本発明のステルス性かつ尿排泄性の高い薬物担体に結合させることにより、尿中排泄性を高め、腎障害患者等での薬物の安全性を高めることが可能な場合がある。
前記生体での周囲環境を検出又は計測できる化合物は、X線造影剤、MRI造影剤、放射性医薬品及び蛍光プローブ剤を含むが、これらに限定されない。かかる生体での周囲環境を検出又は計測できる化合物の薬物を本発明のステルス性かつ尿排泄性の高い薬物担体に結合させることにより、薬物の血液指向性や尿中排泄性を高めることが可能な場合がある。
本発明の薬物担体と薬物との結合は、共有結合及び非共有結合のいずれの場合でもかまわない。共有結合には、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬物担体と薬物との結合は、例えば、Walker JM編、“The protein protocols handbook、2nd Ed.”HUMANA PRESS,Totowa,New Jersey,US,(2002)などに記載されている公知の手順によって実施することができる。
非共有結合の場合は、イオン結合、水素結合、疎水結合、ファンデルワールス力による結合、及び、金属錯体による結合が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬物担体と薬物とを混合することにより、前記結合形態によって、結合体を形成できる。
本発明の薬物担体と結合するのに好ましい生体内で生物活性を示す化合物の薬物には、例えば、5α−レダクターゼ阻害薬、5−リポキシゲナーゼ阻害薬、ACE阻害薬、CCK拮抗薬、COX−I及びCOXII阻害薬、HIVプロテアーゼ阻害薬、HMGCoAレダクターゼ阻害薬、LH−RH作動薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、α−及びβ−アドレナリン作動薬、α−及びβ−アドレナリン遮断薬、アルドース還元酵素阻害薬、アルドステロン拮抗薬、アロマターゼ阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、アンドロゲン、イオン交換レジン、インスリン増感剤、うっ血除去薬、エストロゲン、エリテマトーデス抑制薬、エンケファリナーゼ阻害薬、カリウムチャンネル活性化物質/オープナー、カルシウムチャンネル遮断薬、カルシウム調節薬、キサンチンオキシダーゼ阻害剤、キレート剤、グルココルチコイド、コリンエステラーゼ再活性化薬、コリンエステラーゼ阻害薬、コリン作動薬、セロトニンノルアドレナリン再取込阻害薬、セロトニン取込阻害薬、セロトニン受容体作動薬、セロトニン受容体拮抗薬、ソマトスタチン類似体、ドパミン受容体作動薬、ドパミン受容体拮抗薬、トポイソメラーゼI及びII阻害薬、トロンボキサンA2受容体拮抗薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、フィブリノーゲン受容体拮抗薬、フッ素サプリメント、ブラジキニン拮抗薬、プロゲストゲン、プロスタグランジン、プロテアーゼ阻害薬、プロラクチン阻害薬、ヘパリン拮抗薬、ペプシン阻害薬、ベンゾジアゼピン拮抗薬、マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、ロイコトリエン拮抗薬、胃及び膵臓分泌刺激薬、胃プロトンポンプ阻害薬、胃細胞保護薬、胃腸管運動促進剤、胃分泌阻害薬、解毒剤、解熱薬、外部寄生生物撲滅薬、角質溶解薬、緩下剤/下剤、肝酵素誘発物質、肝保護物質、気管支拡張薬、逆転写酵素阻害薬、去痰薬、強心薬、筋弛緩剤、駆虫薬、駆梅薬、血管拡張薬及び血管収縮薬を含む血管調節物質、血管保護物質、血栓溶解薬、血漿容積膨張剤、嫌酒薬、呼吸刺激物質、向知性薬、抗アクネ剤、抗アメーバ剤、抗アレルギー薬、抗アンドロゲン剤、抗ウイルス薬、抗うつ薬、抗エストロゲン剤、抗けいれん薬、抗ゴナドトロピン剤、抗コリン薬、抗ジスキネジア薬、抗ニューモシスティス薬、抗パーキンソン病薬、抗ヒスタミン剤、抗ページェット病薬、抗マイコバクテリア薬、抗マラリア薬、抗ムスカリン剤、抗メトヘモグロビン血症薬、抗リケッチア薬、抗悪性腫瘍剤及び補助剤、抗炎症薬、抗活動亢進剤、抗褐色細胞腫薬、抗乾癬薬、抗関節炎/抗リウマチ剤、抗狭心症薬、抗凝固剤、抗菌補助剤、抗菌薬、抗血小板血症薬、抗血栓薬、抗原虫薬、抗鼓腸薬、抗好中球減少薬、抗攻撃性薬、抗甲状腺機能低下薬、抗甲状腺薬、抗高リン血症薬、抗高脂血症薬、抗骨粗しょう症薬、抗脂漏薬、抗湿疹薬、抗蛇毒素、抗徐脈薬、抗真菌薬、抗精神病薬、抗線維化剤、抗前立腺肥大症薬、抗脱毛症剤、抗痛風薬、抗潰瘍薬、抗糖尿病薬、抗動脈硬化剤、抗尿結石症薬、抗不安薬、抗不整脈薬、抗片頭痛薬、抗利尿薬、抗緑内障薬、抗喘息薬、抗躁薬、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、酵素、酵素補因子、鉱質コルチコイド、降圧薬、骨吸収阻害薬、催吐剤、散瞳薬、子宮収縮抑制薬、止血薬、止瀉薬、脂肪作用薬、収斂薬、縮瞳薬、昇圧薬、消化補助薬、消毒薬/殺菌剤、色素沈着物質、食欲抑制剤、神経保護薬、人工妊娠中絶薬、制酸薬、制吐薬、性腺刺激因子、成長ホルモン阻害薬、成長ホルモン放出因子、成長刺激物質、清拭剤、造血薬、造血薬、脱色剤、炭酸脱水酵素阻害薬、胆石溶解剤、蛋白同化剤、中枢神経刺激薬、鎮咳薬、鎮静薬/催眠薬、鎮痛剤(麻薬性及び非麻薬性鎮痛剤を含む)、鎮痒薬、鎮痙薬、乳汁分泌刺激ホルモン、尿酸排泄促進薬、粘液溶解薬、避妊薬、非ステロイド性抗炎症薬、副腎皮質刺激ホルモン、副腎皮質抑制薬、分娩誘発薬、放射医薬品、麻薬拮抗薬、免疫調節物質、免疫抑制物質、溶血薬、卵巣ホルモン、利胆薬、利尿薬、疱疹状皮膚炎抑制薬及びそれらの組みあわせである医薬類を含むが、これらに限定されない。
本発明の薬物担体と結合するのに好ましい生体内で生物活性を示す化合物の薬物の具体例には、アザチオプリン、アセトヘキサミド、アセチルサリチル酸、アプレピタント、アルクロフェナク、アロプリノール、アトロピン、イルベサルタン、塩酸モキシフロキサシン、塩酸ラロキシフェン、塩酸ロピバカイン水和物、エストラジオール、エダラボン、エトラビリン、エムトリシタビン、エルデカルシトール、ベンゾチアジド、カルプロフェン、カルベジロール、カンデサルタン・シレキセチル、ゲフィチニブ、セレコキシブ、クロルジアゼポキシド、クロニジン、クロザピン、コデイン、リン酸コデイン、硫酸コデイン、デラコキシブ、ジアセレイン、ジクロフェナク、ジルチアゼム、デュタステリド、ドセタキセル、エトドラク、エトポキシド、エトリコキシブ、エベロリムス、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンプロフェン、フェンチアザク、フルルビプロフェン、グリセオフルビン、ハロペリドール、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロラゼパム、酢酸メドロキトプロゲステロン、メゲストロール、メロキシカム、メトキサレン、メチルプレドニゾン、モルヒネ、硫酸モルヒネ、ナプロキセン、ナラトリプタン塩酸塩、ニセルゴリン、ニフェジピン、ニフルミク、オランザピン、オキサプロジン、オキサゼパム、オキシフェンブタゾン、パクリタキセル、パルペリドン、ビルダグリプチン、フェニンジオン、フェノバルビタール、ピロキシカム、ピルプロフェン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロカイン、プロゲステロン、ピリメタミン、リスペリドン、ロフェコキシブ、アセナピン、スルファジアジン、スルファメラジン、スルフイソキサゾール、スリンダク、スプロフェン、タダラフィル、テマゼパム、チアプロフェン酸、チロミソール、トルメチク、バルデコキシブ、ボリノスタット、ロクロニウム臭化物、アセノクマロール、アセチルジギトキシン、アデノシン、アネトール、アニレリジン、アリピプラゾール、イトラコナゾール、イミダフェナシン、エキセメスタン、オロパタジン塩酸塩、ベンゾカイン、ベンゾナテート、ベタメタゾン、酢酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ビサコジル、ブロモジフェンヒドラミン、ブタンベン、クロラムブシル、クロラムフェニコール、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロルプロマジン、パルミチン酸クリンダマイシン、クリオキノール、クロピドグレル、塩酸アミオダロン、酢酸コルチゾン、塩酸シクリジン、塩酸シプロヘプタジン、デメクロサイクリン、ジアゼパム、シスプラチン、ジブカイン、ジギトキシン、ネオスチグミンメチル硫酸塩、ネララビン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、ジメチステロン、ジスルフィラム、トシル酸スブラタスト、ドキュセートカルシウム、ジヒドロゲステロン、エナラプリラート、酒石酸エルゴタミン、エリスロマイシン、エストール酸エリスロマイシン、ピバル酸フルメタゾン、フィンゴリモド塩酸塩、フルオシノロンアセトニド、フルオロメトロン、エナント酸フルフェナジン、フォンダパリヌクスナトリウム、フルランドレノリド、グアイフェネシン、ハラゾン、塩酸フェキソフェナジン、ヒドロコルチゾン、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、リバスチグミンレベチラセタム、レボチロキシンナトリウム、メチルクロチアジド、ミコナゾール、メサラジン、モメタゾンフランカルボン酸エステル、硝酸ミコナゾール、ニトロフラゾン、ニトロメルソール、、ペンタゾシン、ペントバルビタール、フェンタニルクエン酸塩、プリミドン、硫酸キニーネ、スタノゾロール、硝酸スルコナゾール、スルファジメトキシン、スルファエチドール、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファピリジン、タクロリムス、テストステロン、トリアゾラム、ラルテグラビルカリウム、リセドロン酸ナトリウム、トリクロルメチアジド及びトリオキサレンを含むが、これらに限定されない。
本生体内で生物活性を示す化合物の薬物のなかには、細胞内に作用点がある場合がある。かかる薬物は本発明の薬物担体と結合したままでは作用点に到達することができない。このような薬物は、例えば、エステル結合で本発明の薬物担体に結合した化合物としたり、あるいは、本発明の薬物担体に結合した包摂化合物に包摂させたりすることにより、投与後、速やかに薬物が薬物担体から放出させて、細胞内の作用点に到達させることが可能となる。このように、本明細書に列挙された生物活性を示す多種多様の化合物は、本発明の薬物担体との結合様式を最適化することにより、本発明の薬物担体の利点を享受することができる。
前記スピンプローブ標識剤は、N−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン誘導体(Cook R.ら、Biochemistry, 8, 3188(1963))、N−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン誘導体(Landgraf, W.C.ら、Arch.Biochem. Biophys.,130:111(1969))及びN−(2,2,5,5−テトラメチル−3−カルボニル−ピロリジン−1−オキシル)−イミダゾール(Ohinish S.ら、J.Biochem.75:211(1974))を含むが、これらに限定されない。
本発明の薬物担体に前記スピンプローブ標識剤が結合した化合物は、前記スピンプローブ標識剤が薬物担体ペプチドの主鎖又は側鎖のアミノ基に結合する場合には、式1−1、式1−2、式2−1又は式2−2で表される。
Figure 2015091760
Figure 2015091760
Figure 2015091760
Figure 2015091760
式1−1、式1−2、式2−1及び式2−2において、R及びRのうちいずれか一方は、前記薬物担体ペプチドのペプチジル基であり、他の一方は、水素原子か、アルキル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、エステル基又はアミド基かである。
また、本発明の薬物担体に前記スピンプローブ標識剤が結合した化合物は、前記スピンプローブ標識剤が薬物担体ペプチドの主鎖又は側鎖のカルボキシル基と結合している場合には、式3−1又は式3−2で表される。
Figure 2015091760
Figure 2015091760
式3−1及び式3−2において、Rは前記薬物担体ペプチドのペプチジル基である。
本発明の薬物担体に前記スピンプローブ標識剤が結合した化合物は、前記スピンプローブ標識剤が薬物担体ペプチドのシステイン基と結合する場合には、式4−1又は式4−2で表される。
Figure 2015091760
Figure 2015091760
式4−1及び式4−2において、Rは、前記薬物担体ペプチドのペプチジル基である。
本発明の薬物担体に前記スピンプローブ標識剤が結合した化合物は、スピンプローブ標識剤3−カルボキシPROXLが薬物担体ペプチドのアミノ末端のプロリンの2級アミノ基に縮合結合する場合には、式5で表される。
Figure 2015091760
式5において、Rは、前記アミノ末端のプロリンに続く、アミノ末端から2番目のアミノ酸からカルボキシ末端までのペプチジル基を示す。
式5の化合物は、配列番号9又は13のアミノ酸配列のコラーゲン様ペプチドのアミノ末端のプロリン残基の2級アミノ基にスピンプローブ標識剤3−カルボキシPROXYLが縮合結合した化合物の場合がある。
本発明の薬物担体に前記スピンプローブ標識剤が結合した化合物は、スピンプローブ標識剤3−カルボキシPROXYLが薬物担体ペプチドのアミノ末端の1級アミノ基に縮合結合する場合には、式6で表される。
Figure 2015091760
式6において、Rは、前記薬物担体ペプチドのアミノ末端からカルボキシ末端までのペプチジル基である。
式6の化合物は、配列番号10又は12のアミノ酸配列のコラーゲン様ペプチドのアミノ末端のグリシン残基のアミノ基にスピンプローブ標識剤3−カルボキシPROXYLが縮合結合した化合物の場合がある。
本発明の薬物担体に前記スピンプローブ標識剤が結合した化合物は、スピンプローブ標識剤3−カルバミドメチルPROXYLが薬物担体ペプチドのシステイン残基とスルフィド結合する場合には、式7で表される。
Figure 2015091760
式7において、Rは、前記薬物担体ペプチドのアミノ末端から前記システイン残基のアミノ末端側に隣接するアミノ酸残基までのペプチジル基か、水素原子(H)か、R19−C(=O)−か、R19−C(=O)−O−か、R19−C(=NH)−かである。ここでR19は、炭素数1ないし9のアルキル基か、炭素数2ないし9のアルケニル基か、炭素数6ないし9の芳香族アルキル基か、水素(H)かである。式7において、Rは、前記薬物担体ペプチドの前記システイン残基のカルボキシル末端側に隣接するアミノ酸残基からカルボキシル末端までのペプチジル基か、水酸基か、アミノ基かである。ここでR及びRがペプチジル基のとき、該ペプチジル基は、アシル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、アミド基、アルキル基、アリル基、アリール基、グアニジル基、アミジン基、グアニジル基、アミジン基、カルバモイル基、トリニトロフェニル基を含むが、これらに限定されない置換基で修飾されてもよい。さらに、R及びRがペプチジル基のとき、該ペプチジル基は、生体内の代謝反応で分解されうる修飾、例えば、エステル化誘導体の場合がある。
式7の化合物は、配列番号11のアミノ酸配列のコラーゲン様ペプチドのペプチジル基にスピンプローブ標識剤3−カルバミドメチルPROXYLがスルフィド結合した化合物の場合がある。
本発明の医薬組成物は、本発明の薬物担体に薬物が結合した化合物に加えて、薬学的に許容可能な医薬品添加物を含む場合がある。前記医薬品添加物は、希釈剤及び膨張剤と、結合剤及び接着剤と、滑剤と、流動促進剤と、可塑剤と、崩壊剤と、担体溶媒と、緩衝剤と、着色料と、香料と、甘味料と、防腐剤及び安定化剤と、吸着剤と、当業者に知られたその他の医薬品添加剤とを含むが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物が経口投与用の医薬組成物の場合には、本発明の薬物担体に薬物が結合した化合物と、緩衝剤、賦形剤、滑剤、可塑剤、安定化剤及び崩壊剤を含むが、これらに限定されない、医薬品添加物とが、固形製剤として調製される。本発明の医薬組成物が非経口注射用の医薬組成物の場合の医薬品添加物は、滅菌液剤、懸濁剤及び/又は乳剤をさらに含む場合がある。本発明の医薬組成物が非経口注射用の医薬組成物の場合、本発明の薬物担体に薬物が結合した化合物は固形製剤として調製される。投与直前に前記固形製剤は、生理食塩水、滅菌精製水等の溶媒が添加されて、該溶媒に溶解又は懸濁された状態で注射により投与される場合がある。本発明の医薬組成物又はその一部が固形製剤として調製される場合には、該固形製剤は単位剤形で調製されることが好ましい。
本発明の医薬組成物は、通常は、動物に投与される場合には、該動物の体重1kgにつき1〜5000μgの範囲内の単位用量で投与される。ヒトに投与される場合には、該ヒト個体の体重1kgについて約0.03〜1000μgの範囲内の単位用量で投与される。
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
ペプチド1ないし6のホモ3量体の円2色性スペクトルを表す波形図。 ペプチド1ないし3、7及び8のホモ3量体を投与後、血清中残存量の投与量に対する割合の経時的な変化を表すグラフ。 PROXYL標識ペプチド9又はカルバモイルPROXYLと、100μMのAAPHとを反応させた場合のESR信号強度の経時的な変化を示すグラフ。 PROXYL標識ペプチド9又はカルバモイルPROXYLと、1mMのAAPHとを反応させた場合のESR信号強度の経時的な変化を示すグラフ。 AAPH投与マウスにおける未変化体の尿中排泄率と、未変化体及び還元体の尿中排泄率とを示すグラフ。
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
材料及び方法
1. コラーゲン様ペプチドの合成
本実施例において、アミノ酸は、プロリン、ヒドロキシプロリン、グリシン、アルギニン及びアスパラギン酸はNovabiochem(メルク株式会社)の製品が購入され、ペプチド合成に供された。C末端(カルボキシ末端)がカルボキシル基であるペプチドの合成は、2−Chlorotrityl Chloride−樹脂(株式会社ペプチド研究所)上で、C末端がアミドであるペプチドの合成は、Rink−amide樹脂(Novabiochem(メルク株式会社))上で、通常のFmoc型固相合成法により実施された。
(Pro−Hyp−Gly)の基本ユニットを連続して5回繰り返したペプチド(Pro−Hyp−Gly)(以下、ペプチド7と記載)及び(Pro−Pro−Gly)の基本ユニットを連続して10回繰り返したペプチド(Pro−Pro−Gly)10(以下、ペプチド8と記載)は、株式会社ペプチド研究所より購入され、実験に供せられた。
ペプチド1ないし8のアミノ酸配列は、それぞれ、添付される配列表の配列番号1ないし8に列挙される。ペプチド1ないし8の構造の簡単な説明は以下のとおりである。ペプチド1のアミノ酸配列はPro−Hyp−Glyからなる基本ユニットが連続して10回繰り返された配列からなる。ペプチド2のアミノ酸配列は、ペプチド1で基本ユニットが連続して10回繰り返されるうち、アミノ末端から第5番目の基本ユニットがPro−Arg−Glyに置換された配列からなる。ペプチド3のアミノ酸配列は、ペプチド1で基本ユニットが連続して10回繰り返されるうちアミノ末端から第5番目の基本ユニットがAsp−Hyp−Glyに置換された配列からなる。ペプチド4ないし6は、それぞれ、ペプチド1ないし3のカルボキシル末端がアミド化されたペプチドである。ペプチド7はPro−Hyp−Glyからなる基本ユニットが連続して5回繰り返された配列からなる。ペプチド8はPro−Pro−Glyからなる基本ユニットが連続して10回繰り返された配列からなる。
結果
合成された各ペプチドは、Bruker Autofrex II(ブルカージャパン株式会社)を用いてMALDI−TOF質量分析法で解析された。その結果が表1に示される。
Figure 2015091760
表1の結果から、ペプチド1ないし6はそれぞれのアミノ酸配列から予測される質量を有することが確認された。
2. コラーゲン様ペプチド3重らせん構造の形成
材料及び方法
2.1 3重らせん構造の形成
本実施例で合成したペプチド1ないし6について、3重らせん構造の形成を確実とする目的で、PBS(生理的リン酸緩衝液)あるいは蒸留水中でペプチド濃度が1〜10mg/mL、温度4°Cの条件で自己集合させてホモ3量体が形成された。得られたホモ3量体は、4°Cにて保存された。
2.2 コラーゲン様ペプチドの高次構造形成の確認
ペプチド1ないし6のホモ3量体標品の高次構造は、円2色性スペクトル法により確認された。
2.2.1 円2色性スペクトル測定による高次構造解析
以下の条件で、本実施例(1)で形成されたペプチド1ないし6のホモ3量体標品の円2色性スペクトルが測定された。
溶媒:PBS
装置:JASCO J−820装置にPTC−423L温度制御装置を装着して使用
セル長:0.5mm
測定波長:190−260nm
データ取り込み:0.5nm毎
スキャン速度:50nm/分
レスポンス:1秒
データ積算:3回
感度:100mdeg
測定温度:4°C、融解温度測定では1時間あたり18°Cで温度を上昇させた。
結果
ペプチド1ないし6のホモ3量体の円2色性スペクトルの測定結果をそれぞれ図1に示した。
図1の結果から、ペプチド1ないし6のホモ3量体標品の円2色性スペクトルは、いずれも、225nmに正のピークを有する典型的なコラーゲン3重らせん構造のスペクトルパターンを示した。よって、ペプチド1ないし6の標品は3重らせんを形成していることが確認された。
2.2.2 コラーゲン様ペプチドの融解温度
ペプチド1ないし6のホモ3量体標品と、ペプチド7及び8とを溶媒PBSに1mg/mLの濃度で溶解した標品溶液が用意された。融解温度(3重らせんからランダムコイルへの転移)が、実施例2と同様の条件で前記溶液の温度を上昇させながら、225nmの正のコットン効果の楕円率の変化に基づいて測定された。その結果が表2に示される。
Figure 2015091760
表2に示すとおり、ペプチド1ないし6の融解温度は56.5から66.0°Cまでの範囲であった。一方、ペプチド7及び8の融解温度は、ヒトを含む哺乳動物の体温(約37°C)を大きく下回り、それぞれ、5.0及び25.0°Cと報告されている(Fields, GB及びProckop DJ.、Biopolymers(Peptide Science):40,345(1996))。
コラーゲン様ペプチドの血清中安定性
材料及び方法
実施例1で製造されたコラーゲン様ペプチドの血清中安定性が測定された。ペプチド1、2、3ないし7、8のPBS溶液(1.2x10−3mol/L)が用意され、ペプチド終濃度が(1.2x10−4mol/L)となるように新鮮健常ヒト血清と混合された反応液0.2mLが37°Cでインキュベートされた。ペプチド1、2、3ないし7、8と血清との混合開始時から、前記反応液より一定時間ごとに20μLずつサンプルが回収され、逆相液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)分析(装置:島津Prominence system、カラムCOSMOSIL 5C18−AR−II(ナカライテスク)、4.6x250mm、グラジエント10−30%/30分、30−90%/35分(ペプチド7のみは5−20%/30分、20−90%/35分)MeCN/DW(0.05%TFA)220nm、60°C、1mL/分)にて各時点におけるペプチドのピーク面積を測定し、その保持率が血中安定性の指標として評価された。
結果
ペプチド1ないし3、7及び8のホモ3量体を投与後、血清中残存量の投与量に対する割合の経時的な変化を表すグラフを図2に示す。図2から明かなとおり、ペプチド1、2、3は血清中で安定に存在したが、ペプチド7及び8は、血清中で速やかに分解された。よって、体温で3重らせん構造を形成できるコラーゲン様ペプチドは血液中で安定であることが示された。
コラーゲン様ペプチド薬物担体のラットにおける尿中排泄率の測定
材料及び方法
1 動物への投与と尿の回収
7週齢の雄性Wistar系ラット(清水実験材料株式会社、体重200−250g)が投与条件ごとに4匹用意された。ペプチド1ないし8の0.1mg/mLのPBS溶液が調製され、ラットの体重100gあたり100μLが右大腿静脈から急速投与された。投与後24時間までの尿が回収され、3000xgで10分遠心後、上清が0.45μmのフィルターで濾過され、得られた尿検体は−20°Cで保存された。
2 尿の前処理及びRP−HPLCによる分析
前記尿検体は解凍され、20°Cで遠心された。回収された上清のうち1.0mLに、20μg/全尿量相当の量の15N−ペプチドが内部標準として添加され、10mM リン酸緩衝液(pH3.2)で平衡化された逆相前処理カラム(InertSep RP1 30mg)に懸架された。前記カラムは20% アセトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸1.5mLで溶出され、減圧乾燥された。残渣は0.1%TFA 110μLで溶解され、0.2 μmフィルターで濾過された。得られた濾液がRP−HPLC法による分析に供された。
RP−HPLCの条件は以下のとおりである。
装置:Agilent 1100 HPLC system(アジレント・テクノロジー株式会社)
カラム:Cosmosil 5C18−ARII(1x150mm、ナカライテスク株式会社)
カラム温度:50°C
送液速度:50μL/分
溶媒:A液 0.1%TFA/水、B液 0.1%TFA/アセトニトリル
グラジエント溶出:5−25% B/5−25分
検出波長:220nm
インジェクション量:100μL
フラクション採取:50μL/分画
3 尿中排泄率の測定
内部標準物質がペプチド1ないし8の水溶液に添加されたサンプルが実施例1と同様にMALDI−TOF質量分析法で解析された。前記内部標準物質は、配列番号1ないし8のアミノ酸配列からなるペプチドのグリシン残基のうち4個が15Nで標識されたものが用いられた。得られたペプチドの同位体ピーク強度の比からソフトウェアISOTOPICA(Fernandez−de−Cossio Jら、Nucleic Acids Res. 32(Web Server issue):W674、(2004))を用いてペプチドの混合比が算出され、検量線が作成された。前記4.2節のRP−HPLCの画分の0.5μLに同量のCHCA(α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)がマトリックスとして添加され、実施例1と同様にMALDI−TOF質量分析法で解析された。目的のペプチドを含む画分のペプチドのピークパターンから、ISOTOPICAを用いて内部標準物質と投与ペプチドとの混合比が算出され、前記検量線から尿検体中のペプチド濃度が計算された。前記尿検体の体積及びペプチド濃度に基づいて算出される尿中排泄量の投与量に対する百分率として尿中排泄率が算定された。
4 結果
ペプチド1ないし8をラット静脈内に投与後24時間の尿中排泄率の結果が表3に示された。
Figure 2015091760
動物に経静脈投与したペプチド1ないし6は未変化体としてほぼ定量的に尿中に排泄された。これに対しペプチド7及び8は尿中に未変化体は検出されなかった。ペプチドは一般的に体内のプロテアーゼにより容易に分解されることが知られている。しかしペプチド1ないし6は、生分解を受けず高い血液指向性と尿中排泄率の動態を示した。このような動態特性は、抗体などのタンパク質やリポソームなどのサイズの大きい薬物担体とも異なる、特異なものであった。
なお、本実施例において、上記コラーゲン様ペプチドを投与した動物において有害事象が認められなかったので、本コラーゲン様ペプチドは安全性が高いことが示された。
5. 酸化ストレス検査薬としてのコラーゲン様ペプチドの使用
実施例3で血液指向性及び尿中排泄率が高いことが確認されたコラーゲン様ペプチドについて、スピンラベル剤で標識されたペプチドが動物に投与され、生体中における安定ラジカルの安定性、血液指向性及び尿中排泄を測定することにより、生体の酸化ストレス検査薬としての有用性が評価された。
1 材料及び方法
1.1 スピンプローブ標識ペプチドの合成
スピンプローブ標識剤として3−カルボキシPROXYL(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)がコラーゲン様ペプチドの標識に供された。カルバモイルPROXYL(PROXYL−carbamoyl、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)が本発明のスピンプローブ標識ペプチド(以下、「SPペプチド」という。)の対照実験に用いられた。実施例1と同様に、RINK−アミド樹脂(Novabiochem(メルク株式会社))上で、通常のFmoc型固相合成法によりペプチド9ないし13が合成された。これに3−カルボキシPROXYL、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、各5当量が、溶媒ジメチルホルムアミド中で、室温下、2時間反応させることにより、以下に記載のSPペプチド9ないし13が合成された。
ペプチドの樹脂からの切り出し及び脱保護は、以下の手順で実行された。すなわち、それぞれのペプチド−樹脂(約0.1mmol)が、氷冷下、蒸留水、m−クレゾール、チオアニソール(各0.25mL)、トリイソプロピルシラン(0.125mL)、トリフルオロ酢酸(4.125mL)と混合され、室温で1時間撹拌された。切り出されたペプチドは、約5倍容のエーテルを加えることにより沈澱された。ペプチドは、蒸留水に溶解され、高速液体クロマトグラフィーによって精製され、凍結乾燥された。
ペプチド9ないし13は、それぞれ、配列番号9ないし13のアミノ酸配列からなるペプチドである。配列番号9のアミノ酸配列は配列番号4のアミノ酸配列と同一である。ペプチド9は、Pro−Hyp−Glyからなる基本ユニットが連続して10回繰り返された配列からなるペプチド1のカルボキシル末端がアミド化されたペプチドである。ペプチド10は、アミノ末端がグリシンで、そのカルボキシル側にPro−Hyp−Glyからなる基本ユニットが連続して7回繰り返された配列が続き、さらに、Pro−Arg−Glyが続き、そのカルボキシル末端がアミド化されたペプチドである。ペプチド11は、アミノ末端がグリシンで、そのカルボキシル側にPro−Arg−Glyが続き、そのカルボキシル側にPro−Hyp−Glyからなる基本ユニットが連続して7回繰り返された配列が続き、さらにそのカルボキシル側にシステインが続き、そのカルボキシル末端がアミド化されたペプチドである。ペプチド12は、アミノ末端がグリシンで、そのカルボキシル側にPro−Hyp−Glyからなる基本ユニットが連続して7回繰り返された配列が続き、そのカルボキシル末端がアミド化されたペプチドである。ペプチド13は、Pro−Hyp−Glyからなる基本ユニットが連続して10回繰り返された配列のうちアミノ末端から第5番目の基本ユニットがPro−Hyp−Alaに置換された配列からなるペプチドのカルボキシル末端がアミド化されたペプチドである。
ペプチド9、10、12及び13は、それぞれ、配列番号9、10、12及び13のカルボキシ末端のカルボキシル基がアミド化されたペプチジル基のアミノ末端に、ニトロキシド安定ラジカル標識剤で式9に示される3−カルボキシPROXYLが縮合結合されたスピンプローブ標識化合物である。
Figure 2015091760
PROXYL標識ペプチド9及び13は、下記式10で表される。
Figure 2015091760
PROXYL標識ペプチド9及び13は、それぞれ配列番号9及び13のアミノ酸配列を有するコラーゲン様ペプチドのカルボキシ末端がアミド化され、かつ、該ペプチドのアミノ末端のプロリン残基の2級アミノ基にスピンプローブ標識剤である3−カルボキシPROXYLが縮合結合した化合物であり、式10におけるRは、該ペプチドのアミノ末端のプロリン残基のカルボキシル基とペプチド結合する次のアミノ酸残基からカルボキシ末端までのペプチジル基を示す。
下記式11は、PROXYL標識ペプチド10及び12を表す。
Figure 2015091760
PROXYL標識ペプチド10及び12は、それぞれ配列番号10及び12のアミノ酸配列を有するコラーゲン様ペプチドのカルボキシ末端がアミド化され、かつ、該ペプチドのアミノ末端の1級アミノ基にスピンプローブ標識剤である3−カルボキシPROXYLが縮合結合した化合物であり、式11における−NH−R10は、配列番号10又は12のアミノ酸配列を有するコラーゲン様ペプチドのペプチジル基である。
下記式12は、PROXYL標識ペプチド11を表す。
Figure 2015091760
PROXYL標識ペプチド11は、それぞれ配列番号11のアミノ酸配列を有するコラーゲン様ペプチドのカルボキシ末端のシステイン残基のカルボキシル基がアミド化され、かつ、該システイン残基のチオール基にスピンプローブ標識剤である3−カルバミドメチルPROXYLが縮合結合した化合物であり、式11におけるR11は、配列番号11のアミノ酸配列を有するペプチドのアミノ末端から、カルボキシ末端のシステインに隣接したグリシン残基までのアミノ酸配列を有するペプチジル基を表す。
SPペプチド11は、ペプチド11のシステインの側鎖末端に化学式(1)に示すPROXYL基が結合する。そこで、あらかじめシステインの−SH基がフリーであるペプチド11前駆体が合成された。前記ペプチド11前駆体は3−(2−ヨードアセトアミド)−PROXYL(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)を用いて、PROXYL標識され、HPLCで精製された。50%エタノール、0.1%Tris−HCL(pH8.8)、5mM EDTA中でペプチド11前駆体に対して10モル等量の3−(2−ヨードアセトアミド)−PROXYLが加えられ、室温で1時間反応された。ジチオスレイトールが3−(2−イオドアセトアミド)−PROXYLに対して2モル等量加えられ、反応が終結された。目的物は、Cosmosil 5C18−AR(ナカライテスク)カラム、0.05%TFAを含む水―アセトニトリルの直線グラジエントを用いる逆相HPLCにより精製され、凍結乾燥された。
1.2 SPペプチドの3量体形成
実施例2と同様に、SPペプチド9ないし13の水溶液(1mg/mL)を4°C、24時間静置することにより、SPペプチドの3量体が形成された。
1.3 SPペプチドの融解温度の測定
SPペプチド9ないし13の3量体を蒸留水に1mg/mLの濃度で溶解した標品溶液が用意された。融解温度(3重らせんからランダムコイルへの転移)が、実施例2と同様の条件で前記溶液の温度を上昇させながら、225nmの正のコットン効果の楕円率の変化に基づいて測定された。
1.4 投与液の調製、動物への投与及び尿の採取
SPペプチドの3量体の50μM、100μM及び200μMのPBS溶液が調製された。実験動物として、6週齢の雄性ddyマウス(清水実験材料株式会社)、体重29.6−38.7g)が投与条件ごとに8匹用意された。50μMの投与液(マウス1匹あたり0.1mL)が尾静脈から急速投与された(投与量:5nmol/マウス1匹)。投与後6時間までの尿が回収され、0.45μmのフィルターで濾過後、得られた尿検体はESRによる定量分析まで−20°Cで保存された。
1.5 尿試料の前処理
PBSで溶解された1.0mMの原液から、PBSによる希釈系列が調製された。
1.6 検量線用標準試料
次にPBSによる標準液が、ペプチドを投与されないマウスの尿を用いて希釈され、検量線用の希釈系列が調製された。ここで、尿中濃度の検量線用標準試料は、PBS標準液:マウスブランク尿=1:9の容積比で混合された。
1.7 X−バンドESR法による定量分析
サンプル内容量が100μLの濾過された尿サンプルがフラット石英セル(日本電子株式会社)に封入され、尿中のSP−ペプチド濃度が定量された。
ESRの測定条件は以下の条件で行われた。
ESR測定装置:X−バンド電子スピン共鳴装置(日本電子株式会社、RE−3X型)
磁気フィールド: 320.7±5.0mT
変調幅:0.1mT
掃引時間:2.0分
時間定数:0.03秒
積算:3回
Gain:200
マイクロ波出力:10.0mW
マイクロ波周波数:9.45GHz
測定温度:23°C
PROXYLのニトロキシド安定ラジカル由来の3本のESR信号における低磁場側から2番目のピーク値が、外部標準であるMn2+由来のESRピーク値に対する相対比(S/M比)で表示され、SPペプチド濃度と前記相対比(S/M比)とを用いて検量線が作成された。
生体内で還元されたPROXYLは、フェリシアン化カリウムで再酸化して定量された。フェリシアン化カリウムで酸化する場合は、尿サンプル1.0mLに100mMフェリシアン化カリウム10μL(フェリシアン化カリウムの最終濃度は1.0mM)が添加され、同様に測定された。
2 結果
2.1 SPペプチドの融解温度
PROXYL標識ペプチド9ないし13の融解温度が表5に示される。
Figure 2015091760
表4に示すとおり、PROXYL標識コラーゲン様ペプチドの融解温度は、29.0°Cから58.0°Cまでの範囲である。実施例2で融解温度が測定されたペプチド4をPROXYL標識したペプチドがPROXYL標識ペプチド9である。そこで表2と表5とを比較すると、66.0°Cから58.0°CにPROXYL標識により融解温度が低下した。
2.2 SPペプチドの安定ラジカル還元率及び尿中排泄率
表5にSPペプチドの尿中排泄率の測定結果が示される。
Figure 2015091760
SPペプチドの中で、PROXYL標識ペプチド9及び10は、未変化体のままで、投与量のほぼ100%が尿中に排泄された。PROXYL標識ペプチド11及び12は、未変化体の尿中排泄率が50〜70%であったが、還元体をあわせた合計の排泄率は、投与量の90%以上であった。一方、PROXYL標識ペプチド13は、未変化体の排泄率が20%、還元体をあわせた合計の排泄率でも30%以下であった。対照として使用したカルバモイルPROXYLは、未変化体の排泄率が6%、還元体をあわせた合計の排泄率は9%であった。
以上の結果から、SPペプチドの動態は、実施例3及び4で示された血液指向性及び高い尿排泄性のコラーゲン様ペプチドの動態特性に依存する結果となった。
3 PROXYL標識ペプチドによる酸化ストレスの定量
3.1 酸化ストレス応答プローブとしての、インビトロの反応性試験
PBS(pH7.4)を用いて20μMに調製したPROXYL−(Pro−Hyp−Gly)10の100μLと、PBS(pH7.4)を用いて各濃度(0.2、2.0mM)に調製した2,2’−azobis(2−aminopropane)dihydrochloride(AAPH、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)の100μLを混合し、37°Cで6時間反応させた。
X−band ESR装置により、経時的(反応開始から0、30、60、90、120、240、360分)にPROXYL標識ペプチド9のESRスペクトル及び信号強度を測定し、定量された信号強度の減少を利用して、AAPH由来のペルオキシルラジカル種(ROO・)とPROXYL標識ペプチド9との反応性(酸化ストレス応答性)が評価された。同様の実験を、カルバモイルPROXYL単体でも行い、反応性が比較された。
4 結果
図3は、PROXYL標識ペプチド9(最終濃度10μM)又はカルバモイルPROXYL(最終濃度10μM)と、AAPH(100μM)とを反応させた場合のESRの信号強度の経時的な変化を示すグラフである。縦軸は反応開始時のESR信号強度を対照としたときのESR信号強度の相対値の百分率を表し、横軸は反応時間(単位は時間)を表す。黒丸(●)は100μMのAAPHと反応させた10μMのPROXYL標識ペプチド9の各反応時間でのESR信号強度の相対値を表し、白丸(○)は100μMのAAPHと反応させた10μMのカルバモイルPROXYLの各反応時間でのESR信号強度の相対値を表す。PROXYL標識ペプチド9(最終濃度10μM)又はカルバモイルPROXYL(最終濃度10μM)と、最終濃度が100μMのAAPHとを反応させた場合、反応開始から2時間までESRの信号強度は減少することなく安定に存在した。図4は、PROXYL標識ペプチド9(最終濃度10μM)又はカルバモイルPROXYL(最終濃度10μM)と、AAPH(1mM)とを反応させた場合のESRの信号強度の経時的な変化を示すグラフである。縦軸は反応開始時のESR信号強度を対照としたときのESR信号強度の相対値の百分率を表し、横軸は反応時間(単位は時間)を表す。黒丸(●)は1mMのAAPHと反応させた10μMのPROXYL標識ペプチド9の各反応時間でのESR信号強度の相対値を表し、白丸(○)は1mMのAAPHと反応させた10μMのカルバモイルPROXYLの各反応時間でのESR信号強度の相対値を表す。PROXYL標識ペプチド9(最終濃度10μM)又はカルバモイルPROXYL(最終濃度10μM)と、最終濃度が1mMのAAPHとを反応させた場合、反応開始から6時間で、PROXYL標識ペプチド9のESR信号強度は反応開始前の69%まで減少し、カルバモイルPROXYLのESR信号強度は反応開始前の50%まで減少した。
5 酸化ストレス応答プローブとしてのインビボの反応性試験
5.1 AAPHのLD50
予備検討としてAAPHのLD50を求めた。AAPHを腹腔内投与(25、50、75、100mg/kg)したマウスの12時間後の生存判定試験から、AAPHのLD50は100mg/kgであった。
5.2 尿中排泄率の定量
マウスの100%生存が確認された中で最高投与量の50mg/kgにてAAPHを腹腔内投与したマウスに、PROXYL標識ペプチド9をマウス1匹あたり5nmolで尾静脈注射し、6時間の尿中排泄量をX−band ESR装置により定量した。
5.3 結果
図5は、未変化体の尿中排泄率と、未変化体及び還元体の尿中排泄率とを示すグラフである。縦軸は、尿中排泄率、すなわち、投与量に対する尿中排泄量の百分率を表す。左の棒グラフは未変化体(unchanged)だけの尿中排泄率を表し、右の棒グラフは未変化体及び還元体の和(unchanged+reduced)を表す。誤差棒は、同一条件の実験を4回繰り返した測定値の標準偏差を表す。AAPHを投与しない健常マウスにおいて、PROXYL標識ペプチド9は尾静脈注射後の6時間で未変化体の尿中排泄率はほぼ100%であることに対して、AAPH投与マウスにおいてPROXYL標識ペプチド9未変化体の尿中排泄率は低下し、58%であった。これに伴って、還元体の尿中排泄率(33%)が増加し、未変化体と還元体の合計による尿中排泄率は91%であった。
また、本実施例の薬物担体に薬物が結合した化合物を投与した動物では有害事象が認められなかったため、本実施例の薬物担体に薬物が結合した化合物の高い安全性が示された。
本実施例で示されたとおり、本実施例の薬物担体に薬物が結合した化合物は投与された生体内の酸化ストレス状態を反映して還元体として排泄されるので、優れた酸化ストレス応答プローブとなり得ることが示された。

Claims (12)

  1. 第1番目のトリペプチド配列(X1−Y1−Gly)と、・・・、第i番目のトリペプチド配列(Xi−Yi−Gly)と、・・・、第n番目のトリペプチド配列(Xn−Yn−Gly)とを含むアミノ酸配列を含み、投与される動物種の体温で3重らせんを形成するペプチドからなることを特徴とする、ステルス性かつ高尿排泄性の薬物担体。(ここで、i及びnは整数で、1<i<nであり、n≧7であって、X1、・・・、Xi、・・・Xnのアミノ酸は独立に選択され、Y1、・・・、Yi、・・・Ynのアミノ酸も独立に選択される。)
  2. 前記アミノ酸配列はX−Y−Glyからなる基本ユニットが7回又は8回以上繰り返されたアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項1に記載の薬物担体。(ここでX及びYは独立に選択される任意のアミノ酸である。)
  3. 前記アミノ酸配列はPro−Hyp−Glyからなる基本ユニットが7回又は8回以上繰り返されたアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項2に記載の薬物担体。
  4. 前記基本ユニットは連続して繰り返されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の薬物担体。
  5. 前記ペプチドはプロリン残基のヒドロキシル化以外の修飾を受けることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の薬物担体。
  6. 前記ペプチドは配列番号1ないし6、及び、9ないし12からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項1に記載の薬物担体。
  7. 薬物の送達に用いられることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の薬物担体。
  8. 前記薬物は、治療及び/又は診断のための医薬であることを特徴とする、請求項7に記載の薬物担体。
  9. 前記ペプチドはホモ又はヘテロ3量体であることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の薬物担体。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1つに記載の薬物担体に薬物が結合した化合物を含むことを特徴とする、医薬組成物。
  11. イメージングのために用いられることを特徴とする、請求項10に記載の医薬組成物。
  12. 生体機能測定のために用いられることを特徴とする、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
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