JP2015086084A - (炭酸)ストロンチウムアパタイトおよびその微粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】一段階の反応により、結晶性を制御した(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高純度で得るための、簡便で生産性の良好な(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法、およびコーティング用途に好適な(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法を与えること。【解決手段】水中に於いて、ストロンチウム塩とリン酸塩、および炭酸塩または炭酸水素塩を、反応系のpHが5〜13の範囲において、これらを特定のモル比率の範囲で混合し、反応を行う(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法、およびこれより得られた(炭酸)ストロンチウムをメディアミルを使用して湿式分散処理を行う(炭酸)ストロンチウム微粒子の製造方法を用いる。【選択図】なし
Description
本発明は一段階の反応により、結晶性を制御した(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高純度で得るための、簡便で生産性の良好な(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法、およびコーティング用途に好適な(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法に関する。
近年、ストロンチウム化合物の骨に対する様々な影響が注目を集めている。その一つとして、従来からの骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネート剤に代わるストロンチウムラネレート(非特許文献1)の好ましい薬理作用が認められ、欧州において一部医薬品として承認されている。或いは骨転位した癌に対する疼痛緩和治療薬として、放射性同位元素である89Srを利用した塩化ストロンチウム89(GEヘルスケア社/日本メジフィジックス株式会社製メタストロン注)が臨床に実際に用いられている。こうした例のように、ストロンチウムは生体内に於いて造骨活性を示す部位に集積する性質を示すことから、例えば、骨の修復過程が重要である骨折治療や整形外科、形成外科、歯科等様々な医療分野に於いて有用な役割を果たすことが期待される。
例えば、医薬品としてのストロンチウム化合物の応用に関して、特許文献1には、軟骨障害および骨傷害の治療に有効であるストロンチウム塩とビタミンDを組み合わせた薬学的組成物が示されており、更に特許文献2には、ストロンチウムと有機酸との間で形成される水溶性ストロンチウム塩から成る軟骨障害および骨傷害の治療に有効である薬学的組成物が開示されている。
生体インプラントへの応用に向けて、ストロンチウムを利用する例として、例えば非特許文献2には、金属チタン表面にストロンチウムを導入することで、細胞の初期接着と増殖が促進され、好ましい作用を示すことが報告されている。非特許文献3では炭酸ストロンチウムアパタイトを用いて、これの細胞培養におけるアルカリフォスファターゼ活性に対する好ましい効果を示している。
ストロンチウム化合物の薬理作用は、量依存性があり、過剰な投与では逆に骨の再生に逆効果であることも知られている。従って、骨再生を行う生体内の局所的部位に於いて、溶離するストロンチウム化合物の濃度が制御された形で存在することが好ましく、ストロンチウム化合物として、生体内での溶解性が適度な範囲にある化合物が望まれている。
上記の技術的背景から、結晶性を制御することで、生体内での溶解性を制御したストロンチウムアパタイトを利用して、生体に吸収されやすく、これに伴ってストロンチウムの徐放性を発揮出来るようなストロンチウムアパタイトが実現出来れば、極めて好ましい効果が期待される。非特許文献3には、炭酸ストロンチウムアパタイトの合成方法と、これを用いてディスクを作製し、その表面において骨芽細胞を培養した場合の、細胞の初期接着と増殖および活性を評価し、炭酸アパタイト中に含まれるストロンチウムの割合とこれらの性質との相関について報告を行っている。その結果として、ストロンチウムを導入することで細胞の初期接着が促進され、さらに、細胞の骨アルカリフォスファターゼ活性と炭酸アパタイト中に含まれるストロンチウムの割合には最適値が存在することが報告されている。しかしながら上記の報告に用いられる炭酸ストロンチウムアパタイトはその製造方法に大きな課題を抱えるものであった。即ち、その製造にあたっては、先ず炭酸カルシウムおよび炭酸ストロンチウムを含む石膏を作製した後、これをリン酸ナトリウム水溶液中に浸漬した状態で、100℃で7日間という長時間を有して作製されるものであり、工業的に安定に生産するためには工程の長さと品質の安定性に大きな問題があった。加えて、上記の方法で得られる炭酸ストロンチウムアパタイト中に不純物として微量の炭酸カルシウムが混在し純度に問題があった。更には、利用しようとするアパタイトの形状も、骨充填材などの用途で好ましく利用される微粒状或いは顆粒状ではなく、あらかじめ石膏の形でモールド可能な形状に限られる問題や、硬くて脆いため利用方法に制限があった。
ストロンチウムアパタイトは、従来から生体適合性や生体に対する安全性が確認されていることに加え、さらにユニークな特性の一つとしてX線造影性に優れることが知られている。ストロンチウムを含むアパタイトの用途の一つとして、例えば生体(吸収性)インプラントの表面コートに利用するなどのコーティング素材としての利用が挙げられる。この場合、ストロンチウムアパタイトでコートされた表面が、生体親和性と優れた骨伝導性を示すと共に、X線造影性を示すことが出来るという好ましい効果が期待される。
更には、上記したストロンチウムアパタイトの層をコーティングにより形成する場合、表面コート層の厚みや性状が均一であることが好ましく、コーティング適性として、ストロンチウムアパタイトが出来るだけ微細で均一な微粒子であること、およびコーティング液中においてストロンチウムアパタイト微粒子が安定に分散し、経時により沈降することや沈殿物や凝集物を発生させることのない適性が要求される。従来の様々な製造方法で得られるストロンチウムアパタイトは粒状もしくは塊状の粉体として得られ、これらは水などの媒体中に安定で微粒子状に分散した分散物を得ることが困難で、コーティング用途に適用することが困難であった。
特許文献3には、生体インプラント表面にストロンチウムアパタイト層を形成する方法が開示される。この方法は従来から検討されている疑似体液から基材表面にアパタイト層を形成する手法にならったもので、インプラント基材表面にストロンチウム塩を含む溶液から自発的にストロンチウムアパタイト層を形成する方法であるが、アパタイト層の厚みの制御が困難であり、層の形成にも長時間を要し、加えてストロンチウムアパタイトの結晶性を制御することは極めて困難であった。
特許文献4にはストロンチウムアパタイト及び/またはリン酸ストロンチウムを含むリン酸ストロンチウム系失透ガラスからなる生体インプラント材料が開示されている。このリン酸ストロンチウム系失透ガラスの製造方法として例示される方法は、酸化ストロンチウムを五酸化燐とともにガラス原料成分として二酸化珪素およびアルミナ等を含む各種酸化物を加えて1600℃の高温で溶融し、冷却することで失透ガラスを製造するものである。この際、酸化ストロンチウムとともに酸化カルシウムを任意の割合で混合することで、アパタイト中にストロンチウムとカルシウムが任意の割合で含まれる固溶体が得られることが開示されている。この方法を利用してストロンチウムアパタイトを製造した場合、生成物は不純物を多く含むと共に、結晶性が極めて高いことからストロンチウムイオンの溶出が極めて小さく、そのため生体活性や生体吸収性に乏しいものであった。
特許文献5には、同様にストロンチウムアパタイト及び/またはリン酸ストロンチウムを含むリン酸ストロンチウム系失透ガラス粉末と練和剤を用いた医科用または歯科用硬化性組成物が開示されている。特に、歯科用セメント材料として、良好な硬化特性とX線造影能を備えることから好ましいが、この場合もストロンチウムアパタイトを含むガラス体としての利用方法に限られることから、ガラス等の成分を含まない純度の高いストロンチウムを含むアパタイトの製造方法が望まれていた。
特許文献6には、ストロンチウムアパタイトの製造方法として、リン酸水素ストロンチウムと水酸化ストロンチウムまたは炭酸ストロンチウムをポットミルを用いて混合、攪拌しメカノケミカル的な反応によりストロンチウムアパタイトの前駆体を得た後に、これを800℃程度の温度で仮焼することでストロンチウムアパタイトを合成する方法が開示されている。この方法においては原料物質の粉体を長時間攪拌する必要があり、その後の仮焼の工程でも高温で処理する必要があることから、反応条件の僅かな差異で生成物の純度や構造および結晶性が大きく左右されることがあり、生産性が低く、高純度のストロンチウムアパタイトが得難いという問題があった。
非特許文献4には、均一沈殿法によるストロンチウムアパタイトの合成方法が示されている。この中で合成方法として、尿素を用いて、リン酸ストロンチウム塩の前駆体を経てストロンチウムアパタイトを合成する方法が示されている。この方法では、尿素の加水分解反応を利用することから、発生する二酸化炭素が生成するストロンチウムアパタイト中に取り込まれる場合がある。このことで、生成するストロンチウムアパタイトの純度に悪影響を与え、反応条件により純度や結晶性が様々に変化し、更にはこれ以外にも塩素イオン等の種々の不純物が含まれる場合があることから、高純度のストロンチウムアパタイトを得ることは困難であった。
P.J.Marie, Bone, 38, S10-S14 (2006)
J-W.Park, et al., Clin. Oral Impl. Res., 21, 398-408 (2010)
Zhang W et al, Acta Biomater., 7, 800-808 (2011)
加藤千晴、藤田一美、松田恵三、日本化学会誌、No.3、321-327、(2002)
本発明は一段階の反応により、結晶性を制御した(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高純度で得るための、簡便で生産性の良好な(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法、およびコーティング用途に好適な(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法を与えることを課題とする。
本発明の課題は、下記の製造方法を用いることで基本的に解決される。
1.水中に於いて、ストロンチウム塩とリン酸塩、および炭酸塩または炭酸水素塩を混合し、反応を行う(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法であって、ストロンチウム塩のモル比率をA、リン酸塩のモル比率をB、および炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率をCとした場合、下記(i)〜(iii)の何れかの要件を満たし、かつ反応系のpHが5〜13の範囲にある(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法。
(i)リン酸塩が第三リン酸塩の場合
A:B:C=1:(0.6〜0.8)α:(0.1〜0.3)α。
(ii)リン酸塩がリン酸水素塩の場合
A:B:C=1:(0.6〜1.2)α:p(0.3〜0.5)α。
(iii)リン酸塩がリン酸二水素塩の場合
A:B:C=1:(0.6〜1.2)α:p(0.7〜1.0)α。
式中、αは0.1≦α≦10の実数を表す。pは係数を表し、炭酸塩の場合は1、炭酸水素塩の場合は2を表す。
2.炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率が、前記した炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率の下限値に、前記(i)の要件の場合は0.1αを加えたモル比率未満であり、前記要件(ii)または(iii)の場合は0.1pαを加えたモル比率未満である前記1記載のストロンチウムアパタイトの製造方法。
3.炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率が、前記した炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率の下限値に、前記(i)の要件の場合は0.1αを加えたモル比率以上であり、前記要件(ii)または(iii)の場合は0.1pαを加えたモル比率以上である前記1記載の炭酸ストロンチウムアパタイトの製造方法。
4.上記1〜3の何れかに記載の製造方法により得られた(炭酸)ストロンチウムアパタイトを、メディアミルを使用して湿式分散処理を行う(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法。
5.上記湿式分散処理を行う際に、ポリリン酸(塩)を加えて湿式分散処理を行う、上記4に記載の(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法。
1.水中に於いて、ストロンチウム塩とリン酸塩、および炭酸塩または炭酸水素塩を混合し、反応を行う(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法であって、ストロンチウム塩のモル比率をA、リン酸塩のモル比率をB、および炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率をCとした場合、下記(i)〜(iii)の何れかの要件を満たし、かつ反応系のpHが5〜13の範囲にある(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法。
(i)リン酸塩が第三リン酸塩の場合
A:B:C=1:(0.6〜0.8)α:(0.1〜0.3)α。
(ii)リン酸塩がリン酸水素塩の場合
A:B:C=1:(0.6〜1.2)α:p(0.3〜0.5)α。
(iii)リン酸塩がリン酸二水素塩の場合
A:B:C=1:(0.6〜1.2)α:p(0.7〜1.0)α。
式中、αは0.1≦α≦10の実数を表す。pは係数を表し、炭酸塩の場合は1、炭酸水素塩の場合は2を表す。
2.炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率が、前記した炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率の下限値に、前記(i)の要件の場合は0.1αを加えたモル比率未満であり、前記要件(ii)または(iii)の場合は0.1pαを加えたモル比率未満である前記1記載のストロンチウムアパタイトの製造方法。
3.炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率が、前記した炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率の下限値に、前記(i)の要件の場合は0.1αを加えたモル比率以上であり、前記要件(ii)または(iii)の場合は0.1pαを加えたモル比率以上である前記1記載の炭酸ストロンチウムアパタイトの製造方法。
4.上記1〜3の何れかに記載の製造方法により得られた(炭酸)ストロンチウムアパタイトを、メディアミルを使用して湿式分散処理を行う(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法。
5.上記湿式分散処理を行う際に、ポリリン酸(塩)を加えて湿式分散処理を行う、上記4に記載の(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法。
本発明により、一段階の反応により結晶性を制御した(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高純度で得るための、簡便で生産性の良好な(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法、およびコーティング用途に好適な(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法を与えることが出来る。
最初に、本発明が目的とする(炭酸)ストロンチウムアパタイトについて説明を行う。本発明に於いて(炭酸)ストロンチウムアパタイトとは、ストロンチウムアパタイト、或いは、炭酸ストロンチウムアパタイトを指す。
次に、本発明で言う高純度の基準について説明を行う。本発明で得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイトは医療用途への適用を前提に、極めて安全性の高い、高品質の材料を提供することを意図している。従って、特に実質的に有機物を含まず、無機物であっても生体に対する安全性が懸念されるような成分が含まれないことが望ましい。本発明で高純度とする基準として、安全性に懸念のない塩類などの無機成分であれば、本発明で得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイト中に微量であれば含まれている場合であっても許容され、無機成分は5質量%未満であることが好ましく、更に好ましくは1質量%未満である。本発明において実質的に有機物を含まないとは、(炭酸)ストロンチウムアパタイトに対して有機物が1質量%未満であることを意味する。より好ましくは0.1質量%未満である。これら以外に、安全性に懸念のある不純物が本発明で得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイト中に含まれないことが重要である。尚、本発明で得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイト中には、炭酸イオン(および場合によってはナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン或いは結晶水等)が結晶内部に閉じ込められた形で含まれている場合があるが、これらは不純物ではなく、(炭酸)ストロンチウムアパタイトの構成成分として見なす。
本発明で得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイトは高純度であることと共に、その微粒子を製造出来ることが特徴である。本発明で得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子としての大きさは体積平均粒子径に於いて40nmから10μmの範囲にあり、体積平均粒子径が小さいほどコーティング用途に適用した場合、均一性に優れたコーティング膜が形成されることからより好ましい。さらに、本発明に於いてコーティング用途に好適であるための条件として、(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子を分散した分散液において、該微粒子の分散安定性が良好であり、長期間(例えば室温に於いて1週間の保管期間)の保存に際しても微粒子の凝集や沈降が発生しないことが挙げられる。
本発明で与えられる(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法を構成する要素として、水中に於いてストロンチウム塩とリン酸塩、および炭酸塩または炭酸水素塩を混合することで反応を行うことが基本である。以下に各々の構成要素について説明を行う。
ストロンチウム塩として本発明で好ましく用いることの出来る化合物としては、塩化ストロンチウムおよびその水和物、臭化ストロンチウムおよびその水和物、ヨウ化ストロンチウムおよびその水和物、酢酸ストロンチウムおよびその水和物、硝酸ストロンチウム、シュウ酸ストロンチウムおよびその水和物、ギ酸ストロンチウムおよびその水和物、水酸化ストロンチウムおよびその水和物、酸化ストロンチウムなどの、10℃の水に対する溶解性が1質量%以上であるストロンチウム塩を好ましく用いることが出来る。これらのストロンチウム塩中には不純物が可能な限り含まれていないことが好ましく、純度としては少なくとも95質量%以上の純度でストロンチウム塩およびその水和物が含まれていることが好ましく、さらに98質量%以上の純度であることが好ましい。
リン酸塩として好適である原料の例としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸アンモニウムおよびこれら各々の水和物等が特に好ましい例として挙げられる。これらについても、10℃の水に対する溶解性が1質量%以上であるリン酸塩が好ましく用いることが出来る。上記のようにリン酸塩にはリン酸水素塩(HPO4 ――)、リン酸二水素塩(H2PO4 −)および第三リン酸塩(PO4 ―――)の三種類が存在するが、それぞれについて以下に述べる適切な反応条件を選択することで、何れも本発明の(炭酸)ストロンチウムアパタイトを得るために好ましく用いることが出来る。これらのリン酸塩中には不純物が可能な限り含まれていないことが好ましく、純度としては少なくとも95質量%以上の純度でリン酸塩およびその水和物が含まれていることが好ましく、さらに98質量%以上の純度であることが好ましい。
本発明に於いて用いることの出来る炭酸塩または炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等の10℃の水に対する溶解性が1質量%以上の炭酸塩または炭酸水素塩が特に好ましい。これらの炭酸塩または炭酸水素塩中には不純物が可能な限り含まれていないことが好ましく、純度としては少なくとも95質量%以上の純度で炭酸塩または炭酸水素塩が含まれていることが好ましく、さらに98質量%以上の純度であることが好ましい。炭酸塩と炭酸水素塩では本発明の(炭酸)ストロンチウムアパタイトを得るために用いることの出来るモル比率が異なるため炭酸塩または炭酸水素塩はそれぞれ個別に本文中で説明を行う。
本発明の(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法は、基本的には水中に於いて、ストロンチウム塩とリン酸塩、および炭酸塩または炭酸水素塩が後述する各々のモル比率の範囲内で互いに混合される方法であればそれらの添加方法に依らない。このように混合する1段階の反応で(炭酸)ストロンチウムアパタイトが製造できることが本発明の最も大きな特徴である。混合方法として、例えば、各々の塩を固体(分散状態)或いは水溶液の状態で、各々独立して水中に添加し、水中に於いて各々の塩が均一に混合するよう攪拌を行う添加方法を行っても良い。或いは、リン酸塩と、炭酸塩または炭酸水素塩を共に溶解した水溶液をあらかじめ作製しておき、これを用いてストロンチウム塩を溶解した水溶液中に添加する方法や、或いは、リン酸塩と、炭酸塩または炭酸水素塩を共に溶解した水溶液中にストロンチウム塩を溶解した水溶液を添加する方法を行っても良い。本発明に於いて重要なポイントは、リン酸塩と炭酸塩または炭酸水素塩が共に適切なモル比率を維持した状態でストロンチウム塩と混合されることが重要である。本発明に於いて最も好ましく利用出来る添加方法としては、ストロンチウム塩を溶解した水溶液中に、リン酸塩と、炭酸塩または炭酸水素塩の両方を溶解した水溶液を添加し、混合する方法が挙げられる。
ストロンチウム塩を水中に溶解した場合の水溶液のpHは特に調整する必要はなく、この場合通常、水溶液のpHは6〜7前後である。上記の好ましい添加方法に従い、このストロンチウム塩を溶解した水溶液に対してリン酸塩および炭酸塩または炭酸水素塩の両方を含有する水溶液を混合する場合、後者の水溶液のpHは7〜13の範囲にあることが好ましい。但し、ストロンチウム塩とリン酸塩および、炭酸塩または炭酸水素塩を混合して反応を行う際の、反応系のpHは5〜13の範囲である。通常は、本発明の方法に於いては、pHは特に調整せずとも上記の好ましい範囲内に保たれる。
ストロンチウム塩とリン酸塩、および炭酸塩または炭酸水素塩を用いて水中でこれらを混合して反応を行う際の反応温度としては、0〜100℃の範囲が好ましく、より好ましくは20〜70℃である。これらの温度範囲から外れた反応温度でストロンチウム塩とリン酸塩および炭酸塩または炭酸水素塩を水中で混合して反応を行った場合、目的とする(炭酸)ストロンチウムアパタイトの収率が低下し、これ以外の化合物が副成する場合もあることから、生成物の収率と純度が低下する場合がある。また、本発明に於いて水中とは、少なくとも水を50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらには80質量%以上含む媒体中において上述した反応を行うことを意味し、必要に応じて水以外に、水に混和する各種有機溶剤や、或いは窒素、ヘリウム、炭酸ガス、その他の気体を導入した状態で反応を行っても良い。
次に、本発明で用いることの出来るリン酸塩について更に詳しく説明を行う。本発明に用いることの出来るリン酸塩として第三リン酸塩を使用した場合について説明する。例えば第三リン酸塩としてリン酸ナトリウム(Na3PO4)を用いた場合、これと上記のストロンチウム塩(例として塩化ストロンチウムの場合を示す)との間で(炭酸)ストロンチウムアパタイトを得るためには、下記のように炭酸塩(ここでは例として炭酸ナトリウムを用いた場合を示す)を添加することで該アパタイトを得るための反応が進行することを本発明に於いて見出したものである。
10SrCl2 +6Na3PO4 +Na2CO3 +2H2O
→ Sr10(PO4)6(OH)2 +20NaCl +CO2+ H2O
→ Sr10(PO4)6(OH)2 +20NaCl +CO2+ H2O
ここで、炭酸塩に代えて炭酸水素塩を用いた場合には、第三リン酸塩のpHが11以上である強アルカリ性であることから、第三リン酸塩と炭酸水素塩を同じ溶液中に共に溶解した場合、炭酸水素塩はアルカリで中和され炭酸塩に変化する。その際に、第三リン酸塩が中和反応でリン酸水素塩に変化してもリン酸塩としてのモル比率には変化が無いことから炭酸水素塩を炭酸塩の代わりに用いた場合でも、各々の用いるべきモル比率は先の炭酸塩の場合と同一である。
上記の化学反応式から、ストロンチウム塩と第三リン酸塩、および炭酸塩の各々のモル比率については、計算上では各々1:0.6:0.1の比率でストロンチウムアパタイトを形成する反応に寄与することが示唆される。一方、リン酸水素塩と炭酸塩は、それぞれ単独で用いてストロンチウム塩と反応させた場合、各々リン酸水素ストロンチウムと炭酸ストロンチウムを生成する。従って、計算上では第三リン酸塩と炭酸塩がそれぞれ0.6:0.1の比率で共に含まれている場合に、後者のリン酸水素ストロンチウム塩や炭酸ストロンチウム塩を生成することなく、上記の反応式のストロンチウムアパタイトが生成することが期待される。このような推測から、ストロンチウム塩の存在下で、第三リン酸塩と炭酸塩を同時に混合して反応を行うことが好ましく、その際の第三リン酸塩と炭酸塩のモル比率が重要であると考えられる。但し、実際の反応系に於いては、必ずしも上記のモル比率でのみ上記のような反応が進行するのではなく、モル比率には、各々0.6:0.1の比率の場合を含めて、好ましい範囲が存在することが後述する実施例を含めて、本発明において明らかとなった。
更に、上記の好ましい第三リン酸塩と炭酸塩のモル比率の範囲内に於いて、ストロンチウム塩は1モル比未満もしくは1モル比を超えて反応系中に存在していても何ら問題はないことが判明した。即ち、ストロンチウム塩1モル比に対し、第三リン酸塩および炭酸塩は上記の好ましいモル比率の例として、例えば0.6:0.1の比率を保ったまま、0.6α:0.1α (0.1≦α≦10)で表されるαの実数倍で第三リン酸塩と炭酸塩が含まれている場合に於いても上記の反応が進行することが明らかとなった。例えば、αが1である場合は、前記の反応式に従ってストロンチウム塩と第三リン酸塩および炭酸塩はそれぞれ過不足無く反応に寄与し、最も収率の良好な結果を与えると考えられる。一方、αが1未満である場合には、第三リン酸塩および炭酸塩に対するストロンチウム塩の割合が過剰であるため、反応終了時に過剰のストロンチウム塩が反応系に残存することになるが、これは生成する該アパタイト中から容易に水洗等の処理で除去することが出来る。但し、αとして0.1未満である場合には、用いるストロンチウム塩の90%以上が過剰であるため、収率が低下し、現実的には好ましくない。さらに、αが1を超える場合には、用いるストロンチウム塩に対して、第三リン酸塩及び炭酸塩の両方が過剰となるが、この場合も同様に水洗等の処理で除去することが出来る。但し、αとして10を超える場合には、用いる第三リン酸塩及び炭酸塩の双方の90%以上が過剰であるため、収率が低下し、現実的には好ましくない。
反応を行う際のストロンチウム塩と第三リン酸塩のモル比について、先の反応式においてはストロンチウム塩1モル比に対して、少なくとも0.6αモル比含まれていることが必要であると見積もったが、後述する実施例に於いて示すように、実際の実験結果に於いてもこれを裏付ける結果が得られた。但し、第三リン酸塩は0.6αモル比を超えて反応系に添加されていても良く、その上限として0.8αモル比を超えない範囲のモル比である場合に高純度の(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高収率で得ることが出来ることを見出した。即ち、ストロンチウム塩1モル比に対して、第三リン酸塩の用いることの出来るモル比として(0.6〜0.8)αモル比の範囲であることが必要で、この範囲から逸脱した比率で反応を行った場合、ストロンチウムアパタイト以外の化合物が副成し、生成物の純度が低下する。
次に、炭酸塩の比率に関しては、前記の化学式からの見積もりでは、ストロンチウム塩1モル比に対して0.1αのモル比が好ましい範囲に含まれるとしたが、後述する実施例に於いて示すように、実際に様々なモル比に於いて実験を行った結果、前記の好ましいモル比率の範囲内で第三リン酸塩を共に含む反応系に於いて、炭酸塩の用いるべき好ましいモル比の範囲は(0.1〜0.3)αで含まれる場合であって、この場合に於いて本発明の目的とする(炭酸)ストロンチウムアパタイトを得ることが出来ることを見出した。以上を整理すると、ストロンチウム塩1モル比に対して、第三リン酸塩と炭酸塩は各々(0.6〜0.8)αモル比と(0.1〜0.3)αモル比の範囲内でこれらを水中に於いて混合して反応を行った場合に、本発明の目的とする、結晶性が制御された高純度の(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高収率で得ることが出来る。
上記の組み合わせで反応を行う場合の反応系のpHは特に制御する必要はなく、使用する第三リン酸塩の水溶液が通常pHが11〜13の範囲であるため、これに炭酸塩または炭酸水素塩を加えた水溶液のpHもこの範囲にあることから、反応系のpHとしてpHが5〜13の範囲において、ストロンチウム塩を含有する水溶液と、第三リン酸塩及び炭酸塩または炭酸水素塩を含有する水溶液を混合することで両者を反応させ、本発明の目的である(炭酸)ストロンチウムアパタイトを得ることが出来る。
本発明に用いることの出来るリン酸塩としてリン酸水素塩を使用した場合について説明する。リン酸水素塩を溶解した水溶液のpHは8〜10の範囲にあるため、これをそのまま反応系に加えて反応を行うことが出来る。例えばリン酸水素塩としてリン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)を用いた場合、これと前記のストロンチウム塩(例として塩化ストロンチウムの場合を示す)との間で(炭酸)ストロンチウムアパタイトを得るためには、下記のように炭酸塩(ここでは例として炭酸ナトリウムを用いた場合を示す)を添加することで下記のようにストロンチウムアパタイトを生成する反応が進行すると考えられる。
10SrCl2 +6Na2HPO4 +4Na2CO3 +2H2O
→ Sr10(PO4)6(OH)2 +20NaCl +4CO2 +4H2O
→ Sr10(PO4)6(OH)2 +20NaCl +4CO2 +4H2O
上記の化学反応式から、ストロンチウム塩とリン酸水素塩、および炭酸塩の各々のモル比率については、計算上では各々1:0.6:0.4の比率でストロンチウムアパタイトを形成する反応に寄与することが示唆される。一方、リン酸水素塩と炭酸塩は、それぞれ単独で用いてストロンチウム塩と反応させた場合、各々リン酸水素ストロンチウムと炭酸ストロンチウムを生成する。従って、計算上ではリン酸水素塩と炭酸塩がそれぞれ0.6:0.4の比率で共に含まれている場合に、後者のリン酸水素ストロンチウム塩や炭酸ストロンチウム塩を生成することなく、上記の反応式のストロンチウムアパタイトが生成することが期待される。このような推測から、ストロンチウム塩の存在下で、リン酸水素塩と炭酸塩を同時に混合して反応を行うことが好ましく、その際のリン酸水素塩と炭酸塩のモル比率が重要であると考えられる。但し、実際の反応系に於いては、必ずしも上記のモル比率でのみ上記のような反応が進行するのではなく、モル比率には、各々0.6:0.4の比率の場合を含めて、好ましい範囲が存在することが後述する実施例を含めて、本発明において明らかとなった。
更に、上記の好ましいリン酸水素塩と炭酸塩のモル比率の範囲内に於いて、ストロンチウム塩は1モル比未満もしくは1モル比を超えて反応系中に存在していても何ら問題はないことが判明した。即ち、ストロンチウム塩1モル比に対し、リン酸塩および炭酸塩は上記の好ましいモル比率の例として、例えば0.6:0.4の比率を保ったまま、0.6α:0.4α (0.1≦α≦10)で表されるαの実数倍でリン酸塩と炭酸塩が含まれている場合に於いても上記の反応が進行することが明らかとなった。例えば、αが1である場合は、前記の反応式に従ってストロンチウム塩とリン酸水素塩および炭酸塩はそれぞれ過不足無く反応に寄与し、最も収率の良好な結果を与えると考えられる。一方、αが1未満である場合には、リン酸塩および炭酸塩に対するストロンチウム塩の割合が過剰であるため、反応終了時に過剰のストロンチウム塩が反応系に残存することになるが、これは生成する該アパタイト中から容易に水洗等の処理で除去することが出来る。但し、αとして0.1未満である場合には、用いるストロンチウム塩の90%以上が過剰であるため、収率が低下し、現実的には好ましくない。さらに、αが1を超える場合には、用いるストロンチウム塩に対して、リン酸塩及び炭酸塩の両方が過剰となるが、この場合も同様に水洗等の処理で除去することが出来る。但し、αとして10を超える場合には、用いるリン酸塩及び炭酸塩の双方の90%以上が過剰であるため、収率が低下し、現実的には好ましくない。
反応を行う際のストロンチウム塩とリン酸水素塩のモル比について、先の反応式においてはストロンチウム塩1モル比に対して、少なくとも0.6αモル比含まれていることが必要であると見積もったが、後述する実施例に於いて示すように、実際の実験結果に於いてもこれを裏付ける結果が得られた。但し、リン酸水素塩は0.6αモル比を超えて反応系に添加されていても良く、その上限として1.2αモル比を超えない範囲のモル比である場合に高純度の(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高収率で得ることが出来ることを見出した。即ち、ストロンチウム塩1モル比に対して、リン酸水素塩の用いることの出来るモル比として(0.6〜1.2)αモル比の範囲であることが必要で、この範囲から逸脱した比率で反応を行った場合、ストロンチウムアパタイト以外の化合物が副成し、生成物の純度が低下する。
次に、炭酸塩の比率に関しては、前記の化学式からの見積もりでは、ストロンチウム塩1モル比に対して0.4αのモル比が好ましい範囲に含まれるとしたが、後述する実施例に於いて示すように、実際に様々なモル比に於いて実験を行った結果、前記の好ましいモル比率の範囲内でリン酸水素塩を共に含む反応系に於いて、炭酸塩の用いるべき好ましいモル比の範囲は(0.3〜0.5)αで含まれる場合であって、この場合に於いて本発明の目的とする(炭酸)ストロンチウムアパタイトを得ることが出来ることを見出した。以上を整理すると、ストロンチウム塩1モル比に対して、リン酸水素塩と炭酸塩は各々(0.6〜1.2)αモル比と(0.3〜0.5)αモル比の範囲内でこれらを水中に於いて混合して反応を行った場合に、本発明の目的とする、結晶性が制御された高純度の(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高収率で得ることが出来る。
同様に、前記の化学式に於いて炭酸塩に代えて、炭酸水素塩として炭酸水素ナトリウムを用いた場合は次式のようにストロンチウムアパタイトを生成する反応が進行すると考えられる。
10SrCl2 +6Na2HPO4 +8NaHCO3 +2H2O
→ Sr10(PO4)6(OH)2 +20NaCl +8CO2 +8H2O
→ Sr10(PO4)6(OH)2 +20NaCl +8CO2 +8H2O
上記の反応式に於いて、炭酸塩に代えて炭酸水素塩を用いた場合にも、ストロンチウム塩1モル比に対するリン酸水素塩のモル比率には影響がなく、リン酸水素塩のモル比率として(0.6〜1.2)αであることが判明した。また、ストロンチウム塩1モル比に対して炭酸水素塩のモル比率の範囲は、炭酸塩を用いた場合の2倍が必要であることが後述する実施例で示すように本発明に於いて明らかとなった。以上を纏めると、ストロンチウム塩に対してリン酸水素塩と、炭酸塩または炭酸水素塩を水中に於いて混合し反応を行う際に、ストロンチウム塩1モル比に対して、リン酸水素塩を(0.6〜1.2)αモル比で、炭酸塩または炭酸水素塩はp(0.3〜0.5)α(炭酸塩の場合p=1、炭酸水素塩の場合p=2)モル比を用いて反応を行った場合に於いて、本発明の目的とする、結晶性が制御された高純度の(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高収率で得ることが出来る。
上記の組み合わせで反応を行う場合の反応系のpHは特に制御する必要はなく、使用するリン酸水素塩の水溶液が通常pHが8〜10の範囲であり、これに炭酸塩または炭酸水素塩を加えた水溶液のpHは高々pH11未満の範囲にあることから、これをそのまま反応に用いても、ストロンチウム塩を溶解した水溶液のpHが6〜7付近であるため、これらを混合した反応系のpH範囲として、pH=5〜13の範囲に保たれたままストロンチウム塩と、リン酸水素塩及び炭酸塩または炭酸水素塩を水中で混合し、円滑に反応を進行させることが出来る。
次に、本発明に用いることの出来るリン酸塩としてリン酸二水素塩を使用した場合について同様に説明する。例えばリン酸水素塩としてリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)を用いた場合、これとストロンチウム塩(例として塩化ストロンチウムの場合を示す)および炭酸塩(例として炭酸ナトリウムを用いた場合を示す)を添加することで、下式の化学式に従ってヒドロキシアパタイトを生成する反応が進行すると考えられる。
ここで、上述した好ましい添加方法として、リン酸塩と炭酸塩または炭酸水素塩をあらかじめ混合した水溶液を作製し、これとストロンチウム塩を溶解した水溶液を混合する方法を述べたが、この場合、リン酸塩としてリン酸二水素塩を用いた場合、炭酸塩または炭酸水素塩と混合することで中和反応が進行し、リン酸二水素塩はリン酸水素塩に変化し、炭酸塩は炭酸水素塩として存在するが、反応における互いのモル比率の関係には変化がないため、反応式としては結果的に下記の式と変わりはないことに触れておく。この場合も、上記のリン酸水素塩を用いる場合と同様に、反応系のpHは特に制御する必要はなく、使用するリン酸二水素塩の水溶液が通常pHが4〜5の範囲であり、これに炭酸塩または炭酸水素塩を加えた水溶液のpHは高々pH11未満の範囲にあることから、これをそのまま反応に用いても、ストロンチウム塩を溶解した水溶液のpHが6〜7付近であるため、これらを混合した反応系のpH範囲として、pH=5〜13の範囲に保たれたままストロンチウム塩と、リン酸水素塩及び炭酸塩または炭酸水素塩を水中で混合し、円滑に反応を進行させることが出来る。
10SrCl2 +6NaH2PO4 +7Na2CO3 +2H2O
→ Sr10(PO4)6(OH)2 +20NaCl +7CO2 +7H2O
→ Sr10(PO4)6(OH)2 +20NaCl +7CO2 +7H2O
上記の化学反応式から、ストロンチウム塩とリン酸二水素塩、および炭酸塩の各々のモル比率については、計算上では各々1:0.6:0.7の比率でストロンチウムアパタイトを形成する反応に寄与することが示唆される。一方、リン酸二水素塩と炭酸塩は、それぞれ単独で用いてストロンチウム塩と反応させた場合、各々リン酸二水素ストロンチウムと炭酸ストロンチウムを生成する。従って、計算上ではリン酸二水素塩と炭酸塩がそれぞれ0.6:0.7の比率で共に含まれている場合に、後者のリン酸二水素ストロンチウム塩や炭酸ストロンチウム塩を生成することなく、上記の反応式のストロンチウムアパタイトが生成することが期待される。このような推測から、ストロンチウム塩の存在下で、リン酸二水素塩と炭酸塩を同時に混合して反応を行うことが好ましく、その際のリン酸二水素塩と炭酸塩のモル比率が重要であると考えられる。但し、実際の反応系に於いては、必ずしも上記のモル比率でのみ上記のような反応が進行するのではなく、モル比率には、各々0.6:0.7の比率の場合を含めて、好ましい範囲が存在することが後述する実施例を含めて、本発明において明らかとなった。
更に、上記の好ましいリン酸二水素塩と炭酸塩のモル比率の範囲内に於いて、ストロンチウム塩は1モル比未満もしくは1モル比を超えて反応系中に存在していても何ら問題はないことが判明した。即ち、ストロンチウム塩1モル比に対し、リン酸二水素塩および炭酸塩は上記の好ましいモル比率の例として、例えば0.6:0.7の比率を保ったまま、0.6α:0.7α (0.1≦α≦10)で表されるαの実数倍でリン酸二水素塩と炭酸塩が含まれている場合に於いても上記の反応が進行することが明らかとなった。例えば、αが1である場合は、前記の反応式に従ってストロンチウム塩とリン酸二水素塩および炭酸塩はそれぞれ過不足無く反応に寄与し、最も収率の良好な結果を与えると考えられる。一方、αが1未満である場合には、リン酸二水素塩および炭酸塩に対するストロンチウム塩の割合が過剰であるため、反応終了時に過剰のストロンチウム塩が反応系に残存することになるが、これは生成するストロンチウムアパタイト中から容易に水洗等の処理で除去することが出来る。但し、αとして0.1未満である場合には、用いるストロンチウム塩の90%以上が過剰であるため、収率が低下し、現実的には好ましくない。さらに、αが1を超える場合には、用いるストロンチウム塩に対して、リン酸二水素塩及び炭酸塩の両方が過剰となるが、この場合も生成するストロンチウムアパタイト中から容易に水洗等の処理で除去することが出来る。但し、αとして10を超える場合には、用いるリン酸塩及び炭酸塩の双方の90%以上が過剰であるため、収率が低下し、現実的には好ましくない。
反応を行う際のストロンチウム塩とリン酸二水素塩のモル比について、先の反応式においてはストロンチウム塩1モル比に対して、少なくとも0.6αモル比含まれていることが必要であると見積もったが、後述する実施例に於いて示すように、実際の実験結果に於いてもこれを裏付ける結果が得られた。但し、リン酸二水素塩は0.6αモル比を超えて反応系に添加されていても良く、その上限として1.2αモル比を超えない範囲のモル比である場合に高純度の(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高収率で得ることが出来ることを見出した。即ち、ストロンチウム塩1モル比に対して、リン酸二水素塩の用いることの出来るモル比として(0.6〜1.2)αモル比の範囲であることが必要で、この範囲から逸脱した比率で反応を行った場合、ストロンチウムアパタイト以外の化合物が副成し、生成物の純度が低下する場合があることが判明した。
次に、炭酸塩の比率に関しては、前記の化学式からの見積もりでは、ストロンチウム塩1モル比に対して0.7αのモル比が好ましい範囲に含まれるとしたが、後述する実施例に於いて示すように、実際に様々なモル比に於いて実験を行った結果、前記の好ましいモル比率の範囲内でリン酸二水素塩を共に含む反応系に於いて、炭酸塩の用いるべき好ましいモル比の範囲は(0.7〜1.0)αで含まれる場合であって、この場合に於いて本発明の目的とする(炭酸)ストロンチウムアパタイトを得ることが出来ることを見出した。以上を整理すると、ストロンチウム塩1モル比に対して、リン酸二水素塩と炭酸塩は各々(0.6〜1.2)αモル比と(0.7〜1.0)αモル比の範囲内でこれらを水中に於いて混合して反応を行った場合に、本発明の目的とする、結晶性が制御された高純度の(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高収率で得ることが出来る。
或いは、上式の炭酸塩に代えて、炭酸水素塩として炭酸水素ナトリウムを用いた場合は下式のようにしてストロンチウムアパタイトを生成する反応が進行すると考えられる。
10SrCl2 +6NaH2PO4 +14NaHCO3 +2H2O
→ Sr10(PO4)6(OH)2+20NaCl+14CO2+14H2O
→ Sr10(PO4)6(OH)2+20NaCl+14CO2+14H2O
上記の反応式に於いて、炭酸塩に代えて炭酸水素塩を用いた場合にも、ストロンチウム塩1モル比に対するリン酸二水素塩のモル比率には影響がなく、リン酸二水素塩のモル比率として(0.6〜1.2)αであることが判明した。また、ストロンチウム塩1モル比に対して炭酸水素塩の好ましいモル比率の範囲は、(1.4〜2.0)αモル比の範囲であり、ストロンチウム塩1モル比に対して、リン酸二水素塩と炭酸水素塩は各々(0.6〜1.2)αモル比と(1.4〜2.0)αモル比の範囲内でこれらを水中に於いて混合して反応を行った場合に、本発明の目的とする(炭酸)ストロンチウムアパタイトを得ることが出来る。以上を纏めると、ストロンチウム塩に対してリン酸二水素塩と、炭酸塩または炭酸水素塩を水中に於いて混合し反応を行う際に、ストロンチウム塩1モル比に対して、リン酸水素塩を(0.6〜1.2)αモル比で、炭酸塩または炭酸水素塩はp(0.7〜1.0)α(炭酸塩の場合p=1、炭酸水素塩の場合p=2)モル比を用いて反応を行った場合に於いて、本発明の目的とする、結晶性が制御された高純度の(炭酸)ストロンチウムアパタイトを高収率で得ることが出来る。
上記の組み合わせで反応を行う場合の反応系のpHは特に制御する必要はなく、使用するリン酸二水素塩の水溶液が通常pHが4〜5の範囲であり、これに炭酸塩または炭酸水素塩を加えた水溶液のpHは7〜11の範囲にあることから、pHが5〜13の範囲でストロンチウム塩と、リン酸二水素塩及び炭酸塩または炭酸水素塩を水中に於いて混合することで反応を行うことが出来る。
上記した炭酸塩または炭酸水素塩(以下炭酸(水素)塩とも記載)の用いるべきモル比率の範囲に於いて、ストロンチウム塩と第三リン酸塩の組み合わせで炭酸(水素)塩を用いた場合には、炭酸(水素)塩のモル比率の下限値に0.1αを加えたモル比率未満のモル比率において反応を行った場合、さらに、ストロンチウム塩とリン酸水素塩またはリン酸二水素塩の組み合わせで炭酸(水素)塩を用いた場合には、炭酸(水素)塩のモル比率の下限値に0.1pαを加えたモル比率未満のモル比率において反応を行った場合、生成するストロンチウムアパタイト中には炭酸イオンが含まれないか、含まれている場合であっても質量%で該アパタイトに対して高々2質量%未満であり、実質的に炭酸イオンの影響は認められないことからストロンチウムアパタイトとして利用出来ることが明らかとなった。
一方、炭酸(水素)塩の用いるべきモル比率の範囲に於いて、ストロンチウム塩と第三リン酸塩の組み合わせで炭酸(水素)塩を用いた場合には、炭酸(水素)塩のモル比率の下限値に0.1αを加えたモル比率以上のモル比率において反応を行った場合、さらに、ストロンチウム塩とリン酸水素塩またはリン酸二水素塩の組み合わせで炭酸(水素)塩を用いた場合には、炭酸(水素)塩のモル比率の下限値に0.1pαを加えたモル比率以上のモル比率において反応を行った場合、生成するストロンチウムアパタイト中には炭酸イオンが含まれており、この場合、後述する実施例において示すように、炭酸イオンをストロンチウムアパタイト中に効率よく導入出来ることが明らかとなった。ストロンチウムアパタイト中に更に炭酸イオンが導入されることで、その結晶性が低下する場合や、或いは水中或いは生体内における溶解性が増加することが考えられることから、本発明で得られる炭酸ストロンチウムアパタイトは医療用途、特に生体内吸収材料としてとりわけ有用である。
本発明の(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法に於いて、ストロンチウム塩、リン酸塩、および炭酸塩または炭酸水素塩の3成分の内、炭酸塩または炭酸水素塩が上述した上限を超えたモル比率で含まれている場合には、(炭酸)ストロンチウムアパタイト以外に特に炭酸ストロンチウムが副成し易くなる。
更に、本発明の(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法に於いて、ストロンチウム塩、リン酸塩および炭酸塩または炭酸水素塩の3成分の内、リン酸塩が上述した上限を超えたモル比率で含まれている場合には、(炭酸)ストロンチウムアパタイト以外に特にリン酸水素ストロンチウム或いはリン酸ストロンチウムが副成し易くなる。
上記で得られる(炭酸)ストロンチウムのアパタイトは微粒状の粉体であるが、それぞれの粉体を走査型電子顕微鏡で観察すると、ナノメートルサイズの微小な微粒子が集合して粉体を形成しており、比表面積の極めて大きな表面多孔質の粉体であることが判明した。これらの(炭酸)ストロンチウムアパタイトは例えばクロマト用カラム用担体や蛋白や様々な物質に対する吸着剤の用途に対して粉体として利用することも出来るが、必要に応じて微粒子集合体の粉砕や微分散を行うことで微粒化を行い、個々の(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子が単独もしくは複数個凝集して媒体中で分散した分散体としてコーティング用途に好ましく利用することも出来る。
上記微粒化の方法として特に好ましい方法は、媒体中に於いて上記の方法で得られる(炭酸)ストロンチウムのアパタイトの粉体を用いて、これに湿式分散処理を行うことで作製される(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子を用いることが特に好ましい。こうした湿式分散処理を行うためには、従来から知られている様々な湿式分散処理方法を利用することが出来る。好ましい湿式分散方法としては、メディアミルを利用した湿式分散方式が特に好ましく、具体的には、(炭酸)ストロンチウムアパタイトを導入した媒体中に於いて、通常ガラスビーズやアルミナビーズ、その他のセラミックビーズ等のメディアを加えて振盪や攪拌を行い、(炭酸)ストロンチウムアパタイト粒子と該ビーズが機械的に衝突し、微粉砕されることで微粒化を行う処理方法を利用することが出来る。少量をバッチ方式で処理を行う場合には、メディアミルとしてペイントコンディショナーを使用して数時間に亘る振盪を行うことで湿式分散処理を行うことが出来る。また上記したメディアミルは、ダイノミルのような連続方式での湿式分散処理が可能である装置を用いて、これを複数台用いて直列に配置して1パスで湿式分散処理を行っても良く、或いは1台のメディアミルを用いて複数回処理を繰り返すことも好ましく行うことが出来る。このような湿式分散処理を行うことで、経時により沈降することや、沈殿物や凝集物が発生することが無く、また均一な厚みのコート層が得られるといったコーティング用途に好適な(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子を得ることが出来る。
上記でコーティング用途に好適であるとは、コーティングにより形成されるコート層の厚みに対して、該コート層中に含まれる(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の体積平均粒子径が同等かそれ以下であることが好ましく、該コート層の厚みを超えた大きさの微粒子が含まれている場合、該コート層から微粒子が露出し、表面の平滑性が失われる場合がある。本発明で意図するコーティングによって形成されるコート層の厚みは高々10μm以下であることから、従って、本発明で目的とする(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の大きさとしては、体積平均粒子径において10μm以下であることが好ましい。本発明で得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子としての大きさは体積平均粒子径に於いて40nmから10μmの範囲にあり、体積平均粒子径が小さいほどコーティング用途に適用した場合、均一性に優れたコーティング膜が形成されることからより好ましいと捉えた。
さらに、本発明に於いてコーティング用途に好適であるための条件として、(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子を分散した分散液において、該微粒子の分散安定性が良好であり、長期間(例えば室温に於いて1週間の保管期間)の保存に際しても微粒子の凝集や沈降が発生しないことが挙げられる。
(炭酸)ストロンチウムアパタイトを分散するための媒体としては水が最も好ましいが、水に対して20質量%未満の添加量であれば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類や、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等の極性溶媒等、水と混和性のある種々の溶剤を添加して用いることも出来る。
上記したメディアを利用して(炭酸)ストロンチウムアパタイトの湿式分散処理を行う場合に、使用するメディアはセラミックビーズを用いることが好ましい。特に(炭酸)ストロンチウムアパタイトを分散する場合に、ビーズが研磨されるなどしてビーズ由来の不純物が得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の分散物に混入することを防止することが好ましい。こうした目的で利用できるセラミックビーズとして、具体的にはZrO、立方晶ジルコニア、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナなどのジルコニアを含有するセラミックビーズなどを最も好ましく用いることが出来る。また、メディアの平均直径は0.01〜10mmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜5mmである。こうしたメディアを使用したメディアミルを用いる湿式分散処理の条件は、通常行われる室温での処理であり、特に処理時間や温度等に関する制限は無い。また、パス回数については1回で十分である場合もあるが、2〜7回程度のパス回数で処理を行うことで、より粒子径分布が狭く、かつ分散安定性に優れた(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の分散物が得られることから好ましく行うことが出来る。
上記の(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の分散物を製造する際に、分散剤として、各種界面活性剤や無機化合物および各種水溶性ポリマーなどを添加して湿式分散処理を行い、得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の分散物における体積平均粒子径をより小さくすることが好ましい。
上記の分散剤として用いることの出来るアニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、オクチルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルアンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル塩類、アセチルアルコール硫酸エステルナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ラウリル燐酸ナトリウム、ステアリル燐酸ナトリウム等のアルキル燐酸エステル塩類、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸アンモニウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ラウリルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。
前記の分散剤として用いることの出来るノニオン性界面活性剤としては、種々の鎖長のポリエチレンオキサイドに、アルキル基やフェニル基およびアルキル置換フェニル基が結合したポリエチレンオキサイドアルキルエーテル、ポリエチレンオキサイドアルキルフェニルエーテルが好ましく用いることが出来、これらの内でも、商品名TWEEN20、同40、同60および同80として知られるソルビタンモノアルキレート誘導体が最も好ましく用いることが出来る。
前記の分散剤として用いることの出来る水溶性ポリマーとしては、例えば、ゼラチン、ゼラチン誘導体(例えば、フタル化ゼラチン等)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、キサンタン、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、デンプン、各種変性デンプン(例えばリン酸変性デンプン等)等を挙げることが出来る。
前記の分散剤として用いることの出来る無機化合物として各種リン酸塩を挙げることが出来るが、特に好ましい例としてポリリン酸(塩)を挙げることが出来る。この場合、得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の分散物中に含まれる微粒子の大きさが体積平均粒子径にして40〜900nmの範囲にある微粒子に分散され、実質的に有機物を含まず、高純度で分散安定性に優れた(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の分散物が得られることから、極めて好ましく用いることが出来る。本発明により得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の分散物をコーティング用途に使用して、例えば前記した生体インプラントへの適用を行った場合、(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の分散物中に有機物が含まれている場合、生体に対する安全性が損なわれる場合がある。よって本発明の(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法によって得られる分散物は、有機物を含有しないことが好ましい。尚、本発明において実質的に有機物を含まないとは、(炭酸)ストロンチウムアパタイトに対して有機物が1質量%以下であることを意味する。より好ましくは0.1質量%以下である。
上記で用いることの出来るポリリン酸(塩)の例として、ピロリン酸(ナトリウム)、トリポリリン酸(ナトリウム)、テトラポリリン酸(ナトリウム)、直鎖状のポリリン酸(ナトリウム)のような直鎖状のポリリン酸(塩)及びこれらの水和物が挙げられ、或いは環状化合物であるヘキサメタリン酸(ナトリウム)などを含み、実際には高分子化合物であるメタリン酸(ナトリウム)や、或いは、直鎖状骨格のみならず、分岐構造を含むウルトラリン酸(ナトリウム)及びこれらの水和物などを挙げることが出来る。これらの種々のポリリン酸(塩)は複数の種類を任意の割合で混合して用いても良い。なおここでポリリン酸(塩)とは、ポリリン酸あるいはこれらの塩であることを意味する。
上記のような種々の分散剤を用いて(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子を製造する場合には、(炭酸)ストロンチウムアパタイトに対する各種分散剤の比率についても好ましい範囲が存在する。(炭酸)ストロンチウムアパタイト100質量部に対して、用いられる分散剤の量は、5〜100質量部とすることが最も好ましい。
以下に実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の百分率は断りのない限り質量基準である。
(実施例1)(ストロンチウムアパタイトの合成)
塩化ストロンチウム六水和物(和光純薬工業製試薬)134グラム(0.5モル)を1リットルの三角フラスコ内に秤取り、イオン交換水350グラムを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸水素二アンモニウム(和光純薬工業製試薬)40グラム(0.3モル)および炭酸ナトリウム(和光純薬工業製試薬)16グラム(0.15モル)を秤取り、イオン交換水300グラムを加えて溶解した。上記で作製した塩化ストロンチウム水溶液を導入した三角フラスコを50℃に調整した水浴上に移し、攪拌しながら滴下漏斗を用いて、リン酸水素二アンモニウムおよび炭酸ナトリウムを溶解した水溶液を1時間に亘って徐々に滴下した。反応時の反応系のpHは7であった。滴下終了後さらに1時間加熱攪拌を行った。その後水浴上から三角フラスコを移し、室温まで冷却した後、グラスフィルターを用いて生成した白色沈殿を吸引濾過した。フィルター上の白色沈殿は更に繰り返しイオン交換水で洗浄を行った後、60℃に調節した乾燥器内で1昼夜乾燥を行い、白色の粉体を得た。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。
塩化ストロンチウム六水和物(和光純薬工業製試薬)134グラム(0.5モル)を1リットルの三角フラスコ内に秤取り、イオン交換水350グラムを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸水素二アンモニウム(和光純薬工業製試薬)40グラム(0.3モル)および炭酸ナトリウム(和光純薬工業製試薬)16グラム(0.15モル)を秤取り、イオン交換水300グラムを加えて溶解した。上記で作製した塩化ストロンチウム水溶液を導入した三角フラスコを50℃に調整した水浴上に移し、攪拌しながら滴下漏斗を用いて、リン酸水素二アンモニウムおよび炭酸ナトリウムを溶解した水溶液を1時間に亘って徐々に滴下した。反応時の反応系のpHは7であった。滴下終了後さらに1時間加熱攪拌を行った。その後水浴上から三角フラスコを移し、室温まで冷却した後、グラスフィルターを用いて生成した白色沈殿を吸引濾過した。フィルター上の白色沈殿は更に繰り返しイオン交換水で洗浄を行った後、60℃に調節した乾燥器内で1昼夜乾燥を行い、白色の粉体を得た。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。
得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、図1に示す結果を得た。図1には、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンを示した。ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかった。
上記の様にして得られたストロンチウムアパタイトを従来技術の方法で得られるストロンチウムアパタイトと比較するため、非特許文献4に示される方法に従い、尿素中でリン酸水素ストロンチウムを熟成させる均一沈殿法を用いてストロンチウムアパタイトを合成した。得られたストロンチウムアパタイトを広角X線回折により測定を行った結果を図2に示した。図2は、比較として非特許文献4の方法で合成したストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンを表す。図2では回折強度が図1と比較して増加しており、またピークの半値幅も狭いことから本実施例1で得られたストロンチウムアパタイトは従来技術で得られるストロンチウムアパタイトと比較して結晶性が低下していることが明らかとなった。さらに、本実施例で得られた比較的結晶性の低いストロンチウムアパタイトは2θ=30°付近の回折ピークが特徴的な分離をしており、従来のストロンチウムアパタイトとは結晶構造がやや異なることを示唆している結果であった。従って、本実施例の方法に従って、結晶性を制御したストロンチウムアパタイトが得られることが明らかとなった。このように結晶性を低下させることで、得られたストロンチウムアパタイトの生体内における溶解性が相対的に増加すると予想されることから、生体に吸収されやすく、これに伴ってストロンチウムの徐放性を発揮出来るようなストロンチウムアパタイトが得られたと考えられる。
図3には、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトのFT−IRスペクトルチャートを示した。図3より、生成物はストロンチウムアパタイトであり、炭酸イオンは結晶中に含まれておらず高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。また、ここでは示していないが、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトを蛍光X線分析およびEDS(エネルギー分散型X線分光法)を用いてそれぞれの方法で含まれている元素分析を行った結果、99質量%以上の高純度のストロンチウムアパタイトであり、構成元素比率も理論値と良く一致する結果を得た。
(分散剤を使用しない場合のストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法と評価結果)
上記で得られたストロンチウムアパタイトを用いて以下のようにしてメディアミルを利用した湿式分散処理を行うことで、ストロンチウムアパタイト微粒子を製造した。即ち、上記で得たストロンチウムアパタイト20グラムを0.2リットルのポリプロピレン容器に移し、さらにイオン交換水80グラムおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを160グラム加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して6時間湿式分散処理を行った。その後、濾布を使用して分散物からジルコニアビーズを分離した。得られた分散物の固形分濃度は20質量%であった。これを用いて以下のように評価を行った。
上記で得られたストロンチウムアパタイトを用いて以下のようにしてメディアミルを利用した湿式分散処理を行うことで、ストロンチウムアパタイト微粒子を製造した。即ち、上記で得たストロンチウムアパタイト20グラムを0.2リットルのポリプロピレン容器に移し、さらにイオン交換水80グラムおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを160グラム加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して6時間湿式分散処理を行った。その後、濾布を使用して分散物からジルコニアビーズを分離した。得られた分散物の固形分濃度は20質量%であった。これを用いて以下のように評価を行った。
上記で得られた分散物を用いて、分散しているストロンチウムアパタイト微粒子の大きさを測定するために、光散乱回折式粒度分布計(堀場製作所製粒度分布測定装置LA−920)を使用して測定した。結果を図4に示す。図4は、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトを分散剤を使用せず湿式分散処理を行って得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。図4より求められた体積平均粒子径は、メジアン径で2.4μmであり、比較的粒子径分布の狭い微粒子であることが明らかとなった。また上記で得られた分散物に含まれるストロンチウムアパタイト微粒子の分散安定性を評価するために、分散物を透明ガラス製容器内に入れて1週間室温で静置しておき、静置後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。
(ポリリン酸(塩)を用いた際のストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法と評価結果)
上記で得たストロンチウムアパタイト20グラムを0.2リットルのポリプロピレン容器に移し、これにピロリン酸ナトリウム十水和物(和光純薬工業製試薬)を4グラム添加し、さらにイオン交換水76グラムおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを160グラム加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して6時間湿式分散処理を行った。その後、濾布を使用して分散物からジルコニアビーズを分離した。得られた分散物のpHは10.7であり、固形分濃度は22質量%であった。得られた分散物を用いて、分散しているストロンチウムアパタイト微粒子の大きさを先の場合と同様にして測定し、図5に示す結果を得た。図5は、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトを分散剤としてポリリン酸(塩)を使用して湿式分散処理を行って得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。求められた体積平均粒子径は、メジアン径で380nmであった。ポリリン酸(塩)として使用したピロリン酸ナトリウム十水和物の添加により、粒子径が大幅に低下したnmオーダーの微細なストロンチウムアパタイト微粒子が得られることが明らかとなった。上記で得られた分散物に含まれるストロンチウムアパタイト微粒子の分散安定性を評価するために、分散物を透明ガラス製容器内に入れて1週間室温で静置しておき、静置後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。
上記で得たストロンチウムアパタイト20グラムを0.2リットルのポリプロピレン容器に移し、これにピロリン酸ナトリウム十水和物(和光純薬工業製試薬)を4グラム添加し、さらにイオン交換水76グラムおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを160グラム加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して6時間湿式分散処理を行った。その後、濾布を使用して分散物からジルコニアビーズを分離した。得られた分散物のpHは10.7であり、固形分濃度は22質量%であった。得られた分散物を用いて、分散しているストロンチウムアパタイト微粒子の大きさを先の場合と同様にして測定し、図5に示す結果を得た。図5は、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトを分散剤としてポリリン酸(塩)を使用して湿式分散処理を行って得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。求められた体積平均粒子径は、メジアン径で380nmであった。ポリリン酸(塩)として使用したピロリン酸ナトリウム十水和物の添加により、粒子径が大幅に低下したnmオーダーの微細なストロンチウムアパタイト微粒子が得られることが明らかとなった。上記で得られた分散物に含まれるストロンチウムアパタイト微粒子の分散安定性を評価するために、分散物を透明ガラス製容器内に入れて1週間室温で静置しておき、静置後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。
(ストロンチウムアパタイト微粒子のコーティング評価結果)
上記のピロリン酸ナトリウム十水和物を添加して湿式分散処理後に得られた分散物を用いて、これをスライドガラス上に乾燥塗布膜厚が約2μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、ほぼ完全に透明である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。
上記のピロリン酸ナトリウム十水和物を添加して湿式分散処理後に得られた分散物を用いて、これをスライドガラス上に乾燥塗布膜厚が約2μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、ほぼ完全に透明である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。
(実施例2)(炭酸ストロンチウムアパタイトの合成)
塩化ストロンチウム六水和物134グラム(0.5モル)を1リットルの三角フラスコ内に秤取り、イオン交換水350グラムを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸水素二アンモニウム40グラム(0.3モル)および炭酸ナトリウム26.5グラム(0.25モル)を秤取り、イオン交換水300グラムを加えて溶解した。実施例1と同様にして、反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。
塩化ストロンチウム六水和物134グラム(0.5モル)を1リットルの三角フラスコ内に秤取り、イオン交換水350グラムを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸水素二アンモニウム40グラム(0.3モル)および炭酸ナトリウム26.5グラム(0.25モル)を秤取り、イオン交換水300グラムを加えて溶解した。実施例1と同様にして、反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。
さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、図6に示す結果を得た。図6は実施例2で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンを示す。生成物は実施例1の場合と同様に結晶性が低下していることを示し、炭酸ストロンチウムアパタイト以外の成分は含まれていないことが確認された。さらにFT−IRを用いて生成物を解析し、図7に示す結果を得た。図7は実施例2で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトのFT−IRスペクトルチャートを示す。図7において、1435cm−1および1400cm−1付近に(B型)炭酸アパタイトに特有の炭酸イオンによる吸収ピークが認められ、この1400cm−1の吸光度を1010cm−1付近のリン酸イオンに基づく吸収ピークの吸光度に対してFeathersotone等の方法に従い(J.D.B. Featherstone, Caries Res., 18, 63-66 (1984))炭酸イオンの割合を計算した。その結果、本実施例で得られた生成物は炭酸ストロンチウムアパタイトであり、該アパタイト中に含まれる炭酸イオンの割合は質量%で10.3質量%と計算された。以上の結果より、本実施例では、結晶性を制御した高純度の炭酸ストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
上記で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトを用いて実施例1と同様にして分散剤を用いないで湿式分散処理を行った結果、体積平均粒子径として2.1μmであり実施例1の場合と同様に粒子径分布の狭い炭酸ストロンチウムアパタイト微粒子が得られていることが確認された。得られた該微粒子を含む分散液をスライドガラス表面にコートし、乾燥させることで厚さ3μmのコート膜を作製した結果、殆ど透明で、表面が平滑である均一なコート膜が得られた。また、分散物を透明ガラス製容器内に入れて1週間室温で静置しておき、静置後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。
(実施例3)(ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例1においてリン酸水素二アンモニウムを80グラム(0.6モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折およびFT−IRを用いて解析を行い、実施例1と同様に比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが確認された。
実施例1においてリン酸水素二アンモニウムを80グラム(0.6モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折およびFT−IRを用いて解析を行い、実施例1と同様に比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが確認された。
(比較例1)
実施例1においてリン酸水素二アンモニウムを86グラム(0.65モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折を用いて解析を行い、図8に示す結果を得た。図8は比較例1で得られた生成物粉体試料の広角X線回折パターンを示す。生成物にはストロンチウムアパタイト以外の成分としてリン酸水素ストロンチウムが顕著に含まれていることが判明し、高純度のストロンチウムアパタイトは得られなかった。
実施例1においてリン酸水素二アンモニウムを86グラム(0.65モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折を用いて解析を行い、図8に示す結果を得た。図8は比較例1で得られた生成物粉体試料の広角X線回折パターンを示す。生成物にはストロンチウムアパタイト以外の成分としてリン酸水素ストロンチウムが顕著に含まれていることが判明し、高純度のストロンチウムアパタイトは得られなかった。
(比較例2)
実施例1においてリン酸水素二アンモニウムを33グラム(0.25モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折を用いて解析を行い、図9に示す結果を得た。図9は比較例2で得られた生成物粉体試料の広角X線回折パターンを示す。生成物にはストロンチウムアパタイト以外の成分として炭酸ストロンチウムが含まれていることが判明し、高純度のストロンチウムアパタイトは得られなかった。
実施例1においてリン酸水素二アンモニウムを33グラム(0.25モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折を用いて解析を行い、図9に示す結果を得た。図9は比較例2で得られた生成物粉体試料の広角X線回折パターンを示す。生成物にはストロンチウムアパタイト以外の成分として炭酸ストロンチウムが含まれていることが判明し、高純度のストロンチウムアパタイトは得られなかった。
(比較例3)
実施例1において炭酸ナトリウムを11グラム(0.1モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折を用いて解析を行ったところ、生成物にはストロンチウムアパタイト以外の成分としてリン酸水素ストロンチウムが含まれていることが判明し、高純度のストロンチウムアパタイトは得られなかった。
実施例1において炭酸ナトリウムを11グラム(0.1モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折を用いて解析を行ったところ、生成物にはストロンチウムアパタイト以外の成分としてリン酸水素ストロンチウムが含まれていることが判明し、高純度のストロンチウムアパタイトは得られなかった。
(比較例4)
実施例1において炭酸ナトリウムを32グラム(0.3モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折を用いて解析を行ったところ、生成物にはストロンチウムアパタイト以外の成分として炭酸ストロンチウムが含まれていることが判明し、高純度のストロンチウムアパタイトは得られなかった。
実施例1において炭酸ナトリウムを32グラム(0.3モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折を用いて解析を行ったところ、生成物にはストロンチウムアパタイト以外の成分として炭酸ストロンチウムが含まれていることが判明し、高純度のストロンチウムアパタイトは得られなかった。
(実施例4)(ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例1において炭酸ナトリウムに代えて炭酸水素ナトリウムを25グラム(0.3モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。実施例1と同様にして、得られた生成物を解析した結果、生成物は実施例1で得られたストロンチウムアパタイトと同一の構造であった。
実施例1において炭酸ナトリウムに代えて炭酸水素ナトリウムを25グラム(0.3モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。実施例1と同様にして、得られた生成物を解析した結果、生成物は実施例1で得られたストロンチウムアパタイトと同一の構造であった。
(実施例5)(炭酸ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例2において炭酸ナトリウムに代えて炭酸水素ナトリウムを42グラム(0.5モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。実施例2と同様にして得られた生成物を解析した結果、生成物は実施例2で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトと同一の構造であった。
実施例2において炭酸ナトリウムに代えて炭酸水素ナトリウムを42グラム(0.5モル)用いた以外は同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。実施例2と同様にして得られた生成物を解析した結果、生成物は実施例2で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトと同一の構造であった。
(実施例6)(炭酸ストロンチウムアパタイトの合成)
塩化ストロンチウム六水和物134グラム(0.5モル)を1リットルの三角フラスコ内に秤取り、イオン交換水350グラムを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸二水素ナトリウム二水和物47グラム(0.30モル)および炭酸ナトリウム43グラム(0.4モル)を秤取り、イオン交換水300グラムを加えて溶解した。その後、実施例1と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。尚、反応中の系のpHは7.0であった。生成物の収量は、炭酸ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例2で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。また炭酸ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかったことから、比較的低結晶性の高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。生成物をFT−IRを用いて解析を行った結果、1435cm−1および1400cm−1付近に(B型)炭酸アパタイトに特有の炭酸イオンによる吸収ピークが認められ、この1400cm−1の吸光度を1010cm−1付近のリン酸イオンに基づく吸収ピークの吸光度に対してFeathersotone等の方法に従い(J.D.B. Featherstone, Caries Res., 18, 63-66 (1984))炭酸イオンの割合を計算した。その結果、本実施例で得られた生成物は炭酸ストロンチウムアパタイトであり、該アパタイト中に含まれる炭酸イオンの割合は質量%で5.0質量%と計算された。以上の結果より、本実施例では、比較的低結晶性の、高純度の炭酸ストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
塩化ストロンチウム六水和物134グラム(0.5モル)を1リットルの三角フラスコ内に秤取り、イオン交換水350グラムを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸二水素ナトリウム二水和物47グラム(0.30モル)および炭酸ナトリウム43グラム(0.4モル)を秤取り、イオン交換水300グラムを加えて溶解した。その後、実施例1と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。尚、反応中の系のpHは7.0であった。生成物の収量は、炭酸ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例2で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。また炭酸ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかったことから、比較的低結晶性の高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。生成物をFT−IRを用いて解析を行った結果、1435cm−1および1400cm−1付近に(B型)炭酸アパタイトに特有の炭酸イオンによる吸収ピークが認められ、この1400cm−1の吸光度を1010cm−1付近のリン酸イオンに基づく吸収ピークの吸光度に対してFeathersotone等の方法に従い(J.D.B. Featherstone, Caries Res., 18, 63-66 (1984))炭酸イオンの割合を計算した。その結果、本実施例で得られた生成物は炭酸ストロンチウムアパタイトであり、該アパタイト中に含まれる炭酸イオンの割合は質量%で5.0質量%と計算された。以上の結果より、本実施例では、比較的低結晶性の、高純度の炭酸ストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
(実施例7)(炭酸ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例6において、炭酸ナトリウムを53グラム(0.5モル)用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。実施例6と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例6で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、炭酸ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかった。さらにFT−IRによる測定によって生成物中には炭酸イオンの存在が確認され、これから求めた該アパタイト中に含まれる炭酸イオンの割合は質量%で25.0質量%と計算された。以上の結果より、本実施例では、比較的低結晶性の、高純度の炭酸ストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
実施例6において、炭酸ナトリウムを53グラム(0.5モル)用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。実施例6と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例6で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、炭酸ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかった。さらにFT−IRによる測定によって生成物中には炭酸イオンの存在が確認され、これから求めた該アパタイト中に含まれる炭酸イオンの割合は質量%で25.0質量%と計算された。以上の結果より、本実施例では、比較的低結晶性の、高純度の炭酸ストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
(実施例8)(ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例6において、炭酸ナトリウムを37グラム(0.35モル)用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかった。さらにFT−IRによる測定によって生成物中には炭酸イオンが認められなかったことから、比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
実施例6において、炭酸ナトリウムを37グラム(0.35モル)用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかった。さらにFT−IRによる測定によって生成物中には炭酸イオンが認められなかったことから、比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
(実施例9)(ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例6において、炭酸ナトリウムに代えて、炭酸水素ナトリウムを60グラム(0.7モル)用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7.5であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかったことから、比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
実施例6において、炭酸ナトリウムに代えて、炭酸水素ナトリウムを60グラム(0.7モル)用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは7.5であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかったことから、比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
(実施例10)(炭酸ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例6において、炭酸ナトリウムに代えて、炭酸水素ナトリウムを67グラム(0.8モル)用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは8であった。生成物の収量は、炭酸ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例2で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、炭酸ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかった。生成物をFT−IRを用いて解析を行った結果、1435cm−1および1400cm−1付近に(B型)炭酸アパタイトに特有の炭酸イオンによる吸収ピークが認められ、この吸収ピークの吸光度に基づき生成物に含まれる炭酸イオンの割合を計算した。その結果、本実施例で得られた生成物は炭酸ストロンチウムアパタイトであり、該アパタイト中に含まれる炭酸イオンの割合は質量%で3.0質量%と計算された。以上の結果より、本実施例では、比較的低結晶性の、高純度の炭酸ストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
実施例6において、炭酸ナトリウムに代えて、炭酸水素ナトリウムを67グラム(0.8モル)用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは8であった。生成物の収量は、炭酸ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例2で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、炭酸ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかった。生成物をFT−IRを用いて解析を行った結果、1435cm−1および1400cm−1付近に(B型)炭酸アパタイトに特有の炭酸イオンによる吸収ピークが認められ、この吸収ピークの吸光度に基づき生成物に含まれる炭酸イオンの割合を計算した。その結果、本実施例で得られた生成物は炭酸ストロンチウムアパタイトであり、該アパタイト中に含まれる炭酸イオンの割合は質量%で3.0質量%と計算された。以上の結果より、本実施例では、比較的低結晶性の、高純度の炭酸ストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
(実施例11)(炭酸ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例6において、炭酸ナトリウムに代えて、炭酸水素ナトリウムを84グラム(1.0モル)用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは8であった。生成物の収量は、炭酸ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例2で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、炭酸ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかった。生成物をFT−IRを用いて解析を行った結果、1435cm−1および1400cm−1付近に(B型)炭酸アパタイトに特有の炭酸イオンによる吸収ピークが認められ、この吸収ピークの吸光度に基づき生成物に含まれる炭酸イオンの割合を計算した。その結果、本実施例で得られた生成物は炭酸ストロンチウムアパタイトであり、該アパタイト中に含まれる炭酸イオンの割合は質量%で19質量%と計算された。以上の結果より、本実施例では、比較的低結晶性の、高純度の炭酸ストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
実施例6において、炭酸ナトリウムに代えて、炭酸水素ナトリウムを84グラム(1.0モル)用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。反応時の反応系のpHは8であった。生成物の収量は、炭酸ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして、得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例2で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、炭酸ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかった。生成物をFT−IRを用いて解析を行った結果、1435cm−1および1400cm−1付近に(B型)炭酸アパタイトに特有の炭酸イオンによる吸収ピークが認められ、この吸収ピークの吸光度に基づき生成物に含まれる炭酸イオンの割合を計算した。その結果、本実施例で得られた生成物は炭酸ストロンチウムアパタイトであり、該アパタイト中に含まれる炭酸イオンの割合は質量%で19質量%と計算された。以上の結果より、本実施例では、比較的低結晶性の、高純度の炭酸ストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
(比較例5)
実施例6において、炭酸ナトリウムを0.3モル添加した以外は同様にして反応を行ったところ、生成物中にはリン酸水素ストロンチウムが僅かに含まれていることが生成物の広角X線回折パターンより明らかとなり、高純度のストロンチウムアパタイトは得られなかった。
実施例6において、炭酸ナトリウムを0.3モル添加した以外は同様にして反応を行ったところ、生成物中にはリン酸水素ストロンチウムが僅かに含まれていることが生成物の広角X線回折パターンより明らかとなり、高純度のストロンチウムアパタイトは得られなかった。
(実施例12)(ストロンチウムアパタイトの合成)
塩化ストロンチウム六水和物134グラム(0.5モル)を1リットルの三角フラスコ内に秤取り、イオン交換水350グラムを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸三ナトリウム十二水和物115グラム(0.30モル)および炭酸ナトリウム5.5グラム(0.05モル)を秤取り、イオン交換水300グラムを加えて溶解した。その後、実施例1と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。尚、反応中の系のpHは12.5であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかったことから、比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
塩化ストロンチウム六水和物134グラム(0.5モル)を1リットルの三角フラスコ内に秤取り、イオン交換水350グラムを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸三ナトリウム十二水和物115グラム(0.30モル)および炭酸ナトリウム5.5グラム(0.05モル)を秤取り、イオン交換水300グラムを加えて溶解した。その後、実施例1と同様にして反応を行い白色の粉体を得た。尚、反応中の系のpHは12.5であった。生成物の収量は、ストロンチウムアパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。さらに実施例1と同様にして得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、実施例1で得られたストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンと良く一致した。さらに、ストロンチウムアパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかったことから、比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
(実施例13)(炭酸ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例12において炭酸ナトリウムを16グラム(0.15モル)用いた以外は同様にして反応を行い、白色粉体の生成物を得た。反応時の反応系のpHは12.5であった。得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、図10に示す結果を得た。図10は実施例13で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンを示す。生成物には炭酸ストロンチウムアパタイト以外の成分として僅かに炭酸ストロンチウムに帰属されるピークが図中の矢印で示す位置に観察された。このピーク強度から不純物として含まれる炭酸ストロンチウムの質量%を求めた結果、1.5質量%で計算された。炭酸ストロンチウムはストロンチウム石として天然に存在し、固体状態で安定かつ不活性な物質として知られている。但し、生体に対する安全性は十分に調べられていないが、少なくとも生体に対する安全性が危惧される物質としてはリストアップされていないことから、本実施例に於いては本発明の高純度の範疇に許容されると判断した。但し、本実施例13以外の実施例で得られたストロンチウムアパタイトの方が純度が高いことから、より好ましく用いることが出来る。本実施例13で得られた生成物は、さらにFT−IRを用いて生成物を解析し、図11に示す結果を得た。図11は実施例13で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトのFT−IRスペクトルチャートを示す。図11において、1435cm−1および1400cm−1付近に(B型)炭酸アパタイトに特有の炭酸イオンによる吸収ピークが認められ、この1400cm−1の吸光度を1010cm−1付近のリン酸イオンに基づく吸収ピークの吸光度に対してFeathersotone等の方法に従い(J.D.B. Featherstone, Caries Res., 18, 63-66 (1984))炭酸イオンの割合を計算した。その結果、本実施例で得られた生成物は炭酸ストロンチウムアパタイトであり、該アパタイト中に含まれる炭酸イオンの割合は質量%で26.5質量%と計算された。以上の結果より、本実施例では、比較的低結晶性の、高純度の炭酸ストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
実施例12において炭酸ナトリウムを16グラム(0.15モル)用いた以外は同様にして反応を行い、白色粉体の生成物を得た。反応時の反応系のpHは12.5であった。得られた生成物を広角X線回折装置を用いて解析を行い、図10に示す結果を得た。図10は実施例13で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトの広角X線回折パターンを示す。生成物には炭酸ストロンチウムアパタイト以外の成分として僅かに炭酸ストロンチウムに帰属されるピークが図中の矢印で示す位置に観察された。このピーク強度から不純物として含まれる炭酸ストロンチウムの質量%を求めた結果、1.5質量%で計算された。炭酸ストロンチウムはストロンチウム石として天然に存在し、固体状態で安定かつ不活性な物質として知られている。但し、生体に対する安全性は十分に調べられていないが、少なくとも生体に対する安全性が危惧される物質としてはリストアップされていないことから、本実施例に於いては本発明の高純度の範疇に許容されると判断した。但し、本実施例13以外の実施例で得られたストロンチウムアパタイトの方が純度が高いことから、より好ましく用いることが出来る。本実施例13で得られた生成物は、さらにFT−IRを用いて生成物を解析し、図11に示す結果を得た。図11は実施例13で得られた炭酸ストロンチウムアパタイトのFT−IRスペクトルチャートを示す。図11において、1435cm−1および1400cm−1付近に(B型)炭酸アパタイトに特有の炭酸イオンによる吸収ピークが認められ、この1400cm−1の吸光度を1010cm−1付近のリン酸イオンに基づく吸収ピークの吸光度に対してFeathersotone等の方法に従い(J.D.B. Featherstone, Caries Res., 18, 63-66 (1984))炭酸イオンの割合を計算した。その結果、本実施例で得られた生成物は炭酸ストロンチウムアパタイトであり、該アパタイト中に含まれる炭酸イオンの割合は質量%で26.5質量%と計算された。以上の結果より、本実施例では、比較的低結晶性の、高純度の炭酸ストロンチウムアパタイトが得られていることが明らかとなった。
(実施例14)(ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例12においてリン酸三ナトリウム十二水和物を150グラム(0.4モル)用いた以外は同様にして反応を行い、得られた生成物を広角X線回折およびFT−IRを用いて解析を行い、実施例12と同様に比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが確認された。
実施例12においてリン酸三ナトリウム十二水和物を150グラム(0.4モル)用いた以外は同様にして反応を行い、得られた生成物を広角X線回折およびFT−IRを用いて解析を行い、実施例12と同様に比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが確認された。
(実施例15)(ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例12において炭酸ナトリウムに代えて炭酸水素ナトリウムを5.3グラム(0.05モル)用いた以外は同様にして反応を行い、得られた生成物を広角X線回折およびFT−IRを用いて解析を行い、実施例12と同様に比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが確認された。
実施例12において炭酸ナトリウムに代えて炭酸水素ナトリウムを5.3グラム(0.05モル)用いた以外は同様にして反応を行い、得られた生成物を広角X線回折およびFT−IRを用いて解析を行い、実施例12と同様に比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが確認された。
(実施例16)(ストロンチウムアパタイトの合成)
実施例12において作製した塩化ストロンチウム溶液とリン酸三ナトリウム十二水和物および炭酸ナトリウムを共に溶解した水溶液を用いて、後者の半量を前者の塩化ストロンチウム水溶液に滴下した以外は同様にして反応を行い、得られた生成物を広角X線回折およびFT−IRを用いて解析を行った。生成物の収量は実施例12の半分であったが、実施例12と同様に比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが確認された。
実施例12において作製した塩化ストロンチウム溶液とリン酸三ナトリウム十二水和物および炭酸ナトリウムを共に溶解した水溶液を用いて、後者の半量を前者の塩化ストロンチウム水溶液に滴下した以外は同様にして反応を行い、得られた生成物を広角X線回折およびFT−IRを用いて解析を行った。生成物の収量は実施例12の半分であったが、実施例12と同様に比較的低結晶性の、高純度のストロンチウムアパタイトが得られていることが確認された。
本発明の製造方法により得られる(炭酸)ストロンチウムアパタイトはクロマトグラフィー用カラム用担体や各種吸着剤として利用可能である。或いは、各種生体活性インプラントとしての利用も可能である。更には、フィルムや繊維への表面処理を行うことで生体に親和性を有する各種親水性材料を提供することが可能である。
Claims (5)
- 水中に於いて、ストロンチウム塩とリン酸塩、および炭酸塩または炭酸水素塩を混合し、反応を行う(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法であって、ストロンチウム塩のモル比率をA、リン酸塩のモル比率をB、および炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率をCとした場合、下記(i)〜(iii)の何れかの要件を満たし、かつ反応系のpHが5〜13の範囲にある(炭酸)ストロンチウムアパタイトの製造方法。
(i)リン酸塩が第三リン酸塩の場合
A:B:C=1:(0.6〜0.8)α:(0.1〜0.3)α。
(ii)リン酸塩がリン酸水素塩の場合
A:B:C=1:(0.6〜1.2)α:p(0.3〜0.5)α。
(iii)リン酸塩がリン酸二水素塩の場合
A:B:C=1:(0.6〜1.2)α:p(0.7〜1.0)α。
式中、αは0.1≦α≦10の実数を表す。pは係数を表し、炭酸塩の場合は1、炭酸水素塩の場合は2を表す。 - 炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率が、前記した炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率の下限値に、前記(i)の要件の場合は0.1αを加えたモル比率未満であり、前記要件(ii)または(iii)の場合は0.1pαを加えたモル比率未満である前記請求項1記載のストロンチウムアパタイトの製造方法。
- 炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率が、前記した炭酸塩または炭酸水素塩のモル比率の下限値に、前記(i)の要件の場合は0.1αを加えたモル比率以上であり、前記要件(ii)または(iii)の場合は0.1pαを加えたモル比率以上である前記請求項1記載の炭酸ストロンチウムアパタイトの製造方法。
- 前記請求項1〜3の何れかに記載の製造方法により得られた(炭酸)ストロンチウムアパタイトを、メディアミルを使用して湿式分散処理を行う(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法。
- 前記湿式分散処理を行う際に、ポリリン酸(塩)を加えて湿式分散処理を行う、前記請求項4に記載の(炭酸)ストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015086097A (ja) * | 2013-10-30 | 2015-05-07 | 三菱製紙株式会社 | ストロンチウムを含む(炭酸)カルシウムアパタイトおよびその微粒子の製造方法 |
CN111420629A (zh) * | 2019-01-09 | 2020-07-17 | 国立研究开发法人日本原子力研究开发机构 | 富含碳酸基的碳酸磷灰石 |
-
2013
- 2013-10-28 JP JP2013223574A patent/JP2015086084A/ja active Pending
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CN111420629A (zh) * | 2019-01-09 | 2020-07-17 | 国立研究开发法人日本原子力研究开发机构 | 富含碳酸基的碳酸磷灰石 |
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