以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複した説明を適宜省略する。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、以下の実施の形態の説明に用いる「上」または「上方」並びに「下」または「下方」はそれぞれ、半導体装置の基板の主面に対して直角に遠ざかる向き並びに基板の主面に近づく向きを示し、半導体装置の実装状態における上下方向ではない点にも留意する必要がある。
まず、本発明の実施の形態について説明するにあたり、本発明の理解を容易にするために、上述した課題を解決すべく本発明者が行った鋭意検討について説明する。まず、本発明者が鋭意検討を行う対象となった従来の窒化物半導体装置とそれらが有する問題点について説明する。図7、図8、図9、および図10は、従来の半導体装置を示す模式的な断面図、および電界強度の距離依存性を示すグラフである。なお、図7〜図10におけるグラフの横軸の距離については、それぞれの半導体装置における基板の主面に沿った直線距離である。
すなわち、図7に示すように、従来のSBD100は、基板101上に順次積層された、バッファ層102、電子走行層103、および電子供給層104上に、選択的に絶縁膜106、アノード電極107、およびカソード電極108を備える。そして、アノード電極107は、電子供給層104上に段差部分を有することなく、主面に沿って一様に形成されている。
ところが、図7中下部に示す、SBD100における逆バイアス印加時の電界分布のグラフに示すように、アノード電極107を一様に形成しただけでは、アノード電極107のカソード電極108側端部(アノード端EA)において電界が強くなる。すなわち、アノード端EAが、電界強度が極大になる電界集中部になる。なお、カソード端ECは、カソード電極108のアノード電極107側端部である。そのため、SBD100において十分な耐圧を維持できないという問題があった。
また、図8に示すように、従来のHEMT型の電界効果トランジスタ(FET)200は、基板201上に順次積層された、バッファ層202、電子走行層203、および電子供給層204上に、選択的に絶縁膜205、ゲート電極206、ドレイン電極207、およびソース電極208が設けられている。そして、ゲート電極206は、電子供給層204上に段差部分を有することなく一様に形成されている。
ところが、図8中下部に示す、FET200のオフ時の電界分布のグラフに示すように、HEMT型のFET200においても、ゲート電極206を一様に形成しただけでは、ゲート電極206のドレイン電極207側端部において電界が強くなる。すなわち、ゲート端EGが、電界強度が極大になる電界集中部になる。なお、ドレイン端EDは、ドレイン電極207のゲート電極206側端部である。そのため、上述したSBD100と同様に、FET200において十分な耐圧を維持できないという問題があった。
そこで、上述したSBD100に対して鋭意検討が行われ、図9に示すようなフィールドプレート構造を有するSBD110が案出された。このSBD110は、SBD100の構成に、アノード電極111のカソード電極108側端部が階段状に絶縁膜112上にせり出した、フィールドプレート部111aをさらに備える。
アノード電極111にフィールドプレート部111aを設けることによって、図9中下部に示す、SBD110における逆バイアス印加時の電界分布のグラフに示すように、アノード電極111における電界集中部を2箇所に分散させることができる。具体的に電界集中部は、アノード電極111のカソード電極108側端部(アノード端EA)と、フィールドプレート部111aのカソード電極108側端部(フィールドプレート端FP)との2箇所である。ところが、本発明者が種々の実験から得た知見によれば、この場合においてもアノード端EAやフィールドプレート端FPにおける電界は強いままであるため、SBD110において電流コラプスが生じやすくなり、順方向特性が悪化する問題が残存していた。
そこでさらに、このSBD110に対して鋭意検討が行われ、図10に示すような2段のフィールドプレート構造を有するSBD120が案出された。このSBD120は、SBD110の構成においてアノード電極121のカソード電極108側端部にさらに階段状のフィールドプレート構造が追加されている。具体的には、SBD120は、アノード電極121のカソード電極108側端部が絶縁膜122に2段の階段状にせり出した、フィールドプレート部121a,121bを備える。
このような2段のフィールドプレート構造を設けることによって、図10中下部に示すSBD120における逆バイアス印加時の電界分布のグラフに示すように、アノード電極121の近傍における電界集中部を3箇所に分散させることができる。具体的に電界手中点は、アノード電極121のカソード電極108側端部(アノード端EA)と、フィールドプレート部121aのカソード電極108側端部(第1フィールドプレート端FP1)と、フィールドプレート部121bのカソード電極108側端部(第2フィールドプレート端FP2)との3箇所に分散される。このように、フィールドプレート構造を多段で構成することによって、電界集中部を分散させることができる。
ところが、本発明者が種々の実験により得た知見によれば、フィールドプレート構造を多段で構成するだけでは、アノード電極121側の電界集中を分散させるのみである。そのため、フィールドプレート構造の多段化だけでは、半導体装置の特性を大きく改善させる効果は得られず、高耐圧化、電流コラプスの低減、およびリーク電流の低減を十分実現できないという問題が残存していた。
そこで本発明者らは、このSBD120に対してさらなる鋭意検討を行って改良を行い、新たなSBDを案出した。図11は、本発明者らが案出した窒化物半導体装置としてのSBDの模式的な断面図である。このSBD130は、電子走行層103が電子供給層104との界面に生じる2次元電子ガス(2DEG)のキャリア濃度(2DEG濃度)を制御する、窒化ガリウム(GaN)からなる2次元電子ガス濃度制御層131を、電子供給層104上に備える。そして、2次元電子ガス濃度制御層131により、この2DEG濃度制御層131が設けられた領域aにおける電子走行層103中の2DEG濃度が、領域a以外の領域Aにおける2DEG濃度より低濃度に変調される。2DEG濃度の低い領域aは、2DEG濃度の高い領域Aと変調点Pを挟んで変調されている。これによって、2次元電子ガス濃度制御層131が設けられた部分の電界強度を抑制できる。
そして、このSBD130においては、2次元電子ガス濃度制御層131上にアノード電極132の1段目が乗り上げている。さらに、アノード電極132のカソード電極108側端部が、絶縁膜133にせり出して2段目のフィールドプレート部132aおよび3段目のフィールドプレート部132bからなるフィールドプレート構造を構成している。ここで、2次元電子ガス濃度制御層131のカソード電極108側端部は、最上段である3段目のフィールドプレート部132bのカソード電極108側端部より、カソード電極108に向かってせり出している。
ところが、本発明者が種々実験および検討を行ったところ、2次元電子ガス制御層131のカソード電極108側端部が、電界強度が極めて高い電界集中部になっていることを知見した。すなわち、本発明者は、2次元電子ガス制御層131がフィールドプレート部132bのカソード電極108側端部より外側にせり出した場合、フィールドプレート構造による電界強度の分散が有効に作用しないことを想起するに至った。2次元電子ガス制御層131のカソード電極108側端部に大きな電界が集中すると、2次元電子ガス制御層131に損傷が生じやすくなるので、耐圧の低下やリーク電流の増加などが生じて窒化物半導体装置の特性に悪影響を及ぼす。さらに、電流コラプスによるオン抵抗の増加によって、オン電流が減少するという問題も生じる。
そこで、本発明者は、以上の点を考慮して改めて鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、2次元電子ガス制御層のカソード電極側端部を、フィールドプレート部の下方領域に位置させるのが好ましいことを想起するに至った。すなわち、アノード電極側からカソード電極側に向けて2DEG濃度が増える変調点Pを、フィールドプレート部の下方領域に位置させるのが好ましいことを想起するに至った。
また、本発明者の知見によれば、フィールドプレート部のカソード電極側の屈曲部や端部も電界集中部になりやすい。そこで、本発明者はさらに、電界集中を分散させる電界分散効果を得るためには、フィールドプレート部において隣り合う電界集中部の間に、2次元電子ガス濃度制御層により構成される2次元電子ガス濃度制御領域の電界集中部を位置させることを想到した。すなわち、本発明者は、アノード電極側からカソード電極側に向けて2DEG濃度が増える変調点Pを、フィールドプレート部において隣り合う電界集中部の間に位置させることを想到した。この構成を実現するためには、2DEG濃度のカソード電極側の変調点Pが、基板の主面に沿った直線距離で、フィールドプレート部のカソード電極側の端部から1μm以上、好適には2μm以上離すのが好ましい。
以上により、2次元電子ガス濃度制御領域において電界集中部を分散できるので、窒化物半導体装置において、リーク電流を低減させつつ、電流コラプスを抑制できるとともに、オン抵抗を低減できる。以下に説明する本発明の実施の形態は、以上の鋭意検討に基づいて案出されたものである。
(実施の形態1)
次に、本発明の実施の形態1による半導体装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態1によるショットキーバリアダイオード(SBD)である半導体装置10の模式的な断面図である。図1に示すように、実施の形態1による半導体装置10においては、基板11の主面上に、バッファ層12を介して電子走行層13が設けられている。電子走行層13上には電子供給層14が設けられている。さらに、電子供給層14の表面上に、選択的に、2次元電子ガス濃度制御層15、絶縁膜16、アノード電極17、およびカソード電極18が設けられている。
基板11は、主面(主表面)上にIII族窒化物系化合物半導体を形成できる材料、たとえばシリコン(Si)、サファイア、酸化亜鉛(ZnO)、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等から構成されている。バッファ層12は、基板11上にIII族窒化物系化合物半導体層を好適に形成するための層である。バッファ層12は、たとえば窒化アルミニウム(AlN)層と窒化ガリウム(GaN)層とが交互に積層された公知の構造を有する。そして、基板11およびバッファ層12が基体を構成している。
第1半導体層としての電子走行層13は、III族窒化物系化合物半導体としてのInxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)からなり、具体的にたとえばアンドープのGaNからなる。また、第2半導体層としての電子供給層14は、電子走行層13よりもバンドギャップが広いIII族窒化物系化合物半導体である、InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)からなる。InxAlyGa1-x-yNのAl組成比yは、目標になる2次元電子ガス濃度に応じて設定し、In組成比xが0の場合に、好適には0.15以上0.35以下、より好適には0.20以上0.30以下、具体的にはたとえば0.25である。また、電子供給層14の膜厚は、好適には10nm以上50nm以下、より好適には20nm以上25nm以下である。ここで、電子走行層13および電子供給層14によって半導体積層体の一部が構成され、この半導体積層体の内部における電子走行層13の電子供給層14との界面に2次元電子ガス(2DEG)層が生じる。
ここで、電子供給層14は、InxAlyGa1-x-yNからなる単層に限定されず、バンドギャップが異なる複数種類のIII族窒化物系化合物半導体を積層した構造しても良く、具体的にたとえば、GaN層とAlN層とを順次複数回繰り返して積層した構造でも良い。この場合の電子供給層14のバンドギャップは平均バンドギャップであり、具体的には積層構造を構成する各半導体層の層厚比によって重み付け(積分)をしたバンドギャップの値である。また、複数種類のIII族窒化物系化合物半導体を積層して電子供給層14を構成する場合、電子供給層14内に2DEGが発生しないように形成するのが好ましい。
また、第3半導体層の一部からなる2次元電子ガス濃度制御層15は、電子走行層13に生じる2DEGの濃度を局所的に変調させるために、電子供給層14のバンドギャップより狭いIII族窒化物系化合物半導体としてのInxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)からなり、具体的にはたとえばGaNからなる。ここで、電子走行層13に生じる2DEGのキャリア濃度(2DEG濃度)は、2次元電子ガス濃度制御層15の膜厚が大きいほど低下するように変調される。そのため、この実施の形態1において2次元電子ガス濃度制御層15の膜厚は、たとえば20nm以上200nm以下が好ましく、好適には、成長とエッチングを用いた膜厚制御により2DEG濃度の制御が容易になる20nm以上100nm以下、より好適には、膜厚のばらつきによる2DEG濃度のばらつきを受けにくくなる25nm以上80nm以下である。
また、この実施の形態1においては、電子走行層13、電子供給層14、および2次元電子ガス濃度制御層15によって半導体積層体が構成される。なお、半導体積層体は、さらに他のInxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)からなる半導体層を適宜必要な部分に設けて構成しても良い。そして、2次元電子ガス濃度制御層15により半導体積層体の内部の2DEGが変調される。これにより、半導体積層体には、2次元電子ガス濃度制御層15の下方領域において2DEG濃度が低い領域aと、この領域aからカソード電極18に向かって2DEG濃度の変調点P1を挟んで高濃度の領域Aとが2水準で生じる。このように領域aの2DEG濃度を低濃度化させる領域、ここでは半導体積層体における領域aが2次元電子ガス濃度制御領域となる。すなわち、この実施の形態1においては、2次元電子ガス濃度制御層15によって2次元電子ガス濃度制御領域が規定される。そして、半導体装置10を高耐圧化するための電界強度の観点から、2DEG濃度制御領域内の領域aの2DEG濃度は、7×1012cm-2未満にするのが好ましい。また、半導体装置10のオン抵抗を低減する観点からは、2DEG濃度制御領域以外の領域Aの2DEG濃度は、7×1012cm-2以上にするのが好ましい。また、図1中の中央のグラフにおいて太実線で示すように、2次元電子ガス濃度制御層15を単独で設けた場合には、2次元電子ガス濃度制御層15のカソード電極18側端部、すなわち変調点P1の電子供給層14表面に沿った位置近傍(2次元電子ガス濃度制御層端D)が電界集中部となり、この部分で電界強度が極大となる。
また、第1電極としてのアノード電極17は、電子供給層14とショットキー接触する。すなわちアノード電極17は、たとえばNi/Auの積層構造を有する。これにより、アノード電極17は、電子供給層14を介して電子走行層13に発生した2DEG層とショットキー接触する。なお、アノード電極17は、電子供給層14におけるアノード電極17の形成領域をリセスエッチングによって除去し、2次元電子ガス濃度制御層15の下層に存在する2DEGに対して側面からショットキー接触させても良い。
また、アノード電極17は、2次元電子ガス濃度制御層15上に乗り上げて少なくとも1段の段差を形成しているとともに、カソード電極18側に向かってせり出すように延伸している。この実施の形態1においては、たとえば、アノード電極17は、2次元電子ガス濃度制御層15の側面および上面の一部に接触して設けられている。なお、アノード電極17と2次元電子ガス濃度制御層15との間に他の半導体膜や誘電体膜を介して互いに非接触としても良い。
第2電極としてのカソード電極18は、電子供給層14とオーミック接触する。すなわちカソード電極18は、たとえば、下部電極層がTi層で上部電極層がAl層(以下、Ti/Al)からなる積層構造を有する。これにより、カソード電極18は、電子供給層14を介して電子走行層13に発生した2DEG層とオーミック接触する。
また、絶縁膜16は、たとえば酸化シリコン(SiO2)から構成される。絶縁膜16は、主に、2次元電子ガス濃度制御層15、アノード電極17、カソード電極18、および電子供給層14の表面を保護する。ここで、上述した2次元電子ガス濃度制御層15のカソード電極18側端部の電界強度を低減するためには、この2次元電子ガス濃度制御層15の端部の上方領域、かつアノード電極17の下方領域における絶縁膜16の膜厚を増加させるのが有効である。しかし、絶縁膜16の膜厚を単に増加させるだけでは、図1中の中央のグラフに示すような、アノード電極17の2次元電子ガス濃度制御層15との接触端部(アノード端EA)の位置での電界が強まるだけである。この場合、リーク電流が増加したり電流コラプスが悪化したりするため、電界分散の観点からは、2次元電子ガス濃度制御層15の端部とアノード電極17の端部との間の絶縁膜16の膜厚を単に増加させるのは好ましくない。
そこで、この実施の形態1においては、アノード電極17に多段の階段状、たとえば2段の階段状にフィールドプレート部17a,17bを設ける。そして、アノード電極17のフィールドプレート部17a,17bの下方領域において、絶縁膜16の膜厚を、アノード電極17側からカソード電極18に向かって連続的または段階的に大きくなるように増加させる。これによって、フィールドプレート部17a,17bによる電界分散効果を得ることができる。その上で、2次元電子ガス濃度制御層15の上方領域、かつフィールドプレート部17bの下方領域の絶縁膜16の膜厚d10を500nm以上とするのが好ましい。フィールドプレート部17a,17bとその下方領域の絶縁膜16とを上述のように形成することにより、電界分散効果を維持しつつ2次元電子ガス濃度制御層15のカソード電極18側端部にかかる電界を緩和させることができる。
なお、この実施の形態1においては、絶縁膜16をSiO2から構成しているが、その他の材料、具体的には窒化シリコン(SiN)や酸化アルミニウム(Al2O3:アルミナ)などを用いても良い。また、絶縁膜16を、複数種類の材料を適宜組み合せたり、順次積層させたりして構成してもよい。この場合においても、フィールドプレート部17bの下方領域における2次元電子ガス濃度制御層15上の絶縁膜16の膜厚d10は、SiO2の膜厚に換算して500nm以上とするのが好ましい。ここで、SiO2以外の、比誘電率εrxの誘電体の膜厚drから、SiO2換算膜厚dに換算する場合には、以下の(1)式に従って算出することができる。なお、εrSiO2=3.9〜4.1である。
d=(εrSiO2/εrx)dr……(1)
また、アノード電極17を多段状に構成すると、アノード電極17の絶縁膜16側の屈曲端部(以下、電極エッジ部)、すなわち絶縁膜16の階段状部分における膜厚が変化する部分の端部(以下、膜厚変化部)に対応する半導体積層体の表面の位置が電界集中部になる。具体的に、図1の中央のグラフにおいて実線で示すように、基板11の主面に平行な面方向において、上述したアノード端EA、フィールドプレート部17aの屈曲部(第1フィールドプレート端FP1)、およびフィールドプレート部17bのカソード電極18側端部(第2フィールドプレート端FP2)が、電界強度が極大になる電界集中部となる。また、上述したように、2次元電子ガス濃度制御層端Dも電界集中部となる。そして、絶縁膜16が誘電体から構成されるため電界集中に対しては高耐圧である一方、2次元電子ガス濃度制御層15は窒化物系半導体から構成されるため、絶縁膜16に比して絶縁破壊電界強度が低く電界に対する耐圧が低い。そこで、この2次元電子ガス濃度制御層15の部分において電界集中を分散させる必要がある。
また、基板11の主面に沿って、これらの電界集中部の間の間隔が小さいと、それぞれの電界集中部における電界が互いに干渉しあい、フィールドプレート部17a,17bによる電界分散効果を弱めてしまう。そのため、電界集中が最も問題となる2次元電子ガス濃度制御層15のカソード電極18側端部、すなわち2次元電子ガス制御領域におけるカソード電極18側の第1変調点としての変調点P1と、アノード電極17におけるフィールドプレート部17bのカソード電極18側端部との電界集中部どうしにおいて、互いの電界が相互に及ばないようにすれば、それぞれの間における電界分布のいわゆる裾どうしの重畳に由来する電界の極大点が存在しなくなるため好ましい。具体的には、変調点P1とフィールドプレート部17bのカソード電極18側端部との間の領域における電界強度が、変調点P1およびフィールドプレート部17bのカソード電極18側端部のうちの少なくとも一方における電界集中部の電界強度よりも小さくなるようにする。
そして、このような構成を実現するためには、たとえば、変調点P1とフィールドプレート部17bのカソード電極18側端部との間の基板11の主面に沿った電界強度分布において、変調点P1の周辺とフィールドプレート部17bのカソード電極18側端部の周辺との電界強度分布におけるそれぞれの半値幅の和が、変調点P1とフィールドプレート部17bのカソード電極18側端部との間の距離よりも小さくなるようにするのがより好ましい。
さらに、2次元電子ガス濃度制御層15がInxAlyGa1-x-yNからなることから、In組成比xおよびAl組成yが0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1の範囲において、その比誘電率は8.5〜13.5、バンドギャップエネルギーは1.9〜6.2eVとなる。そこで、高耐圧の半導体装置10において上述の状態を実現するためには、具体的にたとえば、2次元電子ガス制御領域におけるカソード電極18側の変調点P1と、アノード電極17におけるフィールドプレート部17bのカソード電極18側端部との基板11の主面に沿った間隔l0を、1μm以上、好適には、2μm以上とするのが好ましい。また、同様の理由から、アノード電極17における電極エッジ部や絶縁膜16の膜厚変化部などの電界集中部の間の、基板11の主面に沿った間隔l1は、0.5μm以上とするのが好ましく、各電界集中部間の干渉による電流コラプスの影響をさらに抑えることができる点から、1μm以上とするのがより好ましい。以上の間隔l0,l1は、600V以上の耐圧を有する半導体装置に適用するのが好ましいが、必ずしもこのような半導体装置のみに限定されるものではない。また、InxAlyGa1-x-yNからなる2次元電子ガス濃度制御層15において、In組成比xおよびAl組成比yが0≦x≦0.3、0≦y≦1、0≦x+y≦1の範囲では、その比誘電率は8.5〜10.7、バンドギャップエネルギーは2.8〜6.2eVとなる。このとき、2次元電子ガス制御領域におけるカソード電極18側の変調点P1と、アノード電極17におけるフィールドプレート部17bのカソード電極18側端部との基板11の主面に沿った間隔l0は、1μm以上、より好適には2μm以上とすることで、電界集中を効果的に分散できるため、より好ましい。
さらに、基板11の主面に平行な面に沿って、アノード電極17におけるフィールドプレート構造のうちの最上段のフィールドプレート部17bのカソード電極18側端部と、最上段から1段下がったフィールドプレート部17aの屈曲端部との間、好適には幅方向中央部に、2次元電子ガス制御領域におけるカソード電極18側の変調点P1が位置するように構成する。具体的には、基板11の主面に沿って、フィールドプレート部17bのカソード電極18側端部と、フィールドプレート部17aの電極エッジ部との間、好適には幅方向中央部に、2次元電子ガス濃度制御層15のカソード電極18側端部が位置するように構成する。換言すると、2次元電子ガス濃度制御層15のカソード電極18側端部は、その他の電界集中部、たとえば絶縁膜16の膜厚変化部やアノード電極17の電極エッジ部の下方以外、好適には、隣り合う電界集中部の幅方向中央部に位置させるのが好ましい。これにより、2次元電子ガス制御領域における電界分散効果をより一層効果的に奏することが可能になる。
ここで、図1の下部のグラフは、図1の中央の実線および太実線のグラフが組み合わされた電界分布を示すグラフである。この下部のグラフに示すように、基板11の主面に沿って、2次元電子ガス濃度制御層15のカソード電極18側端部を、アノード電極17およびフィールドプレート部17a,17bにより分散された電界集中部の間に位置させることにより、フィールドプレート部17a,17bによる電界分散効果を維持しつつ、これらの電界集中部の電界強度を低減できる。さらに、2次元電子ガス濃度制御層15のカソード電極18側端部における電界強度も低減できるので、半導体装置10の電流コラプスの低減および高耐圧化を実現できる。
また、本発明者の知見によれば、アノード電極17の屈曲部において、その屈曲角度が90度以下の鋭角になると、この屈曲部に電荷が集中して電界が強くなる。そのため、アノード電極17における電界強度を抑制するためには、絶縁膜16の階段状部分における膜厚変化部近傍の傾斜角度θを90度未満にするのが好ましく、60度未満がより好ましい。これにより、絶縁膜16にせり出して設けられるアノード電極17の屈曲部の下方部分における角度が、90度より大きく、好適には120度より大きくなるため、アノード電極17の近傍における電界強度の増加を抑制できる。
さらに、フィールドプレート部17bのカソード電極18側端部と、カソード電極18のアノード電極17側端部との基板11の主面に沿った間隔をLyとする。なお、間隔Lyは、カソード電極18の形状が電子供給層14上で一様でない場合においても同様であり、その形状は限定されない。また、フィールドプレート部17bのカソード電極18側端部と、2DEG濃度の変調点のうちの、フィールドプレート部17bのカソード電極18側端部から連続して変調されているアノード電極17側の第2変調点としての変調点P2との基板11の主面に沿った間隔をLxとする。そして、逆バイアス印加時において、低電圧が印加されるアノード電極17と基板11とが同電位の、いわゆるアノード接地の場合、半導体装置10に対する逆バイアス印加時の電界分布から、フィールドプレート部17bのカソード電極18側端部直下で、基板11の主面に平行な面方向の部分において電界強度が強まって電流コラプスが悪化することによるオン抵抗の増加を防止するためには、Ly≧Lxとするのが好ましい。ここで、この実施の形態1による半導体装置10において600V以上の耐圧を実現するためには、間隔Lxは、5μm以上20μm以下、間隔Lyは、5μm以上30μm以下とするのが好ましい。
また、本発明者が実験から得た知見によれば、フィールドプレート部17a,17bの下方領域における絶縁膜16の段差をそれぞれ、上方に向かって段階的に大きくなるようにすることによって、電界をより一層緩和することができる。すなわち、電界を緩和する観点からは、フィールドプレート部17bの下方領域における絶縁膜16の段差d1を、フィールドプレート部17aの下方領域における絶縁膜16の膜厚d0より大きくする(d0<d1)のが好ましい。
以上のようにして、この実施の形態1による半導体装置10が構成されている。そして、この半導体装置10は、次のように製造することができる。
すなわち、まず、基板11上に、たとえばMOCVD法等の結晶成長法を用いて、バッファ層12、電子走行層13、および電子供給層14を順次成長させる。次に、電子供給層14上に、2次元電子ガス濃度制御層15となるべき半導体層を成長させる。なお、この半導体層の成長時にたとえば炭素などの不純物をドーピングしてもよい。ここで、この半導体層の成長は、具体的に次のようにして行うことができる。すなわち、たとえば有機金属化学気相成長法(MOCVD:Metal Organic CVD)法により、トリメチルガリウム(TMGa)とアンモニア(NH3)とを、それぞれ所定の流量(それぞれたとえば58μmol/min、12L/min)で導入する。これと同時に、トリメチルアルミニウム(TMAl)を、NH3の流量の0.1%以下の一定の流量で流すとともに、成長温度をたとえば1050℃として、半導体層をエピタキシャル成長させる。その後、たとえば反応性イオンエッチング法などのドライエッチング法を用いることにより、選択エッチングを行って、後に2次元電子ガス濃度制御領域となる領域以外の半導体層を選択的に除去することにより、2次元電子ガス濃度制御層15を形成する。
その後、たとえばスパッタリング法およびリフトオフ法によりカソード電極18を形成する。次に、たとえばプラズマエンハンスト化学気相成長(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法とフォトリソグラフィ技術とエッチング技術とを順次適宜用いることにより、階段状部分を有する絶縁膜16の一部を形成する。次に、スパッタリング法およびリフトオフ法によりアノード電極17を形成する。その後、アノード電極17の少なくとも一部を覆うように絶縁膜16の残部を形成する。以上の工程により、この実施の形態1による半導体装置10が製造される。
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、部分的に2DEG濃度が変調される電子走行層13、電子供給層14、および2次元電子ガス濃度制御層15からなる半導体積層体と、少なくとも半導体積層体上に設けられる絶縁膜16と、アノード電極17およびカソード電極18とを備えた半導体装置10において、アノード電極17がカソード電極18に向かって絶縁膜16にせり出したフィールドプレート部17a,17bを有し、フィールドプレート部17a,17bの下方領域における絶縁膜16の膜厚が、アノード電極17側に比してカソード電極18側が連続的または段階的に大きくなるように構成され、電子走行層13内の2次元電子ガス濃度制御領域における2DEG濃度が、変調点P1,P2を挟んでその他の領域Aの2DEG濃度より低くなるように変調され、変調点のうちのカソード電極18側の位置にある変調点P1がフィールドプレート部17a,17bから基板11に向かう下方領域内にあるとともに、変調点P1とフィールドプレート部17bのカソード電極18側の端部との間の間隔l0を、基板11の主面に沿って1μm以上としていることにより、2次元電子ガス濃度制御層15のカソード電極18側端部の電界集中部を、フィールドプレート部17bにより生じる他の電界集中部からずれた位置にすることができる。したがって、2次元電子ガス濃度制御層15の部分において電界分散効果を得ることができ、半導体装置10において、高耐圧化、電流コラプスの低減、およびリーク電流の低減をより一層の向上させることが可能となる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2による半導体装置について説明する。図2は、この実施の形態2によるショットキーバリアダイオードである半導体装置20を示す模式的な断面図である。
図2に示すように、実施の形態2による半導体装置20においては、電子走行層13上に、選択的にリセス部21aが形成された電子供給層21が設けられている。このリセス部21aによって、電子走行層13内において2DEG濃度が変調され、変調点P1,P2を挟んで、他の領域Aに比して2DEG濃度が低い領域aを含む2次元電子ガス濃度制御領域が構成される。また、アノード電極22は、一部がリセス部21a内に設けられつつ、リセス部21aの上方領域に絶縁膜16にせり出してフィールドプレート部22a,22bが設けられている。そして、実施の形態1と同様の理由から、具体的には、リセス部21aのカソード電極18側の端部、すなわちカソード電極18側の変調点P1が、フィールドプレート部22a,22bの下方領域に位置するとともに、フィールドプレート部22bのカソード電極18側端部からの間隔l0が基板11の主面に沿って1μm以上、好適には2μm以上になるように構成される。
また、電子走行層13の領域aの2DEG濃度は、リセス部21aの底面部分における電子供給層21の膜厚に応じて変化する。ここで、2DEG濃度を十分な量だけ変調させることができる点から、リセス部21aの深さは電子供給層21の膜厚の4分の1(1/4)以上にするのが、好ましい。しかしながら、電子供給層21に設けられたリセス部21aが電子走行層13にまで達すると、2DEG層が消去してしまう。これにより、2DEG濃度の制御が困難になるため、リセス部21aの深さは、リセス部21a以外の領域における電子供給層21の膜厚未満とするのが好ましい。さらに、実施の形態1におけると同様の理由により、リセス部21aのカソード電極18側端部の上方領域、かつフィールドプレート部22bの下方領域の絶縁膜16の膜厚d20をSiO2膜に換算して500nm以上とするのが好ましい。これによって、電界分散効果を維持しつつリセス部21aのカソード電極18側端部における電界を緩和できる。その他の構成については、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
以上のように構成された半導体装置20は、次のように製造することができる。まず、実施の形態1と同様にして、基板11上にバッファ層12、電子走行層13、および電子供給層21を順次成長させる。次に、リソグラフィ工程およびエッチング工程により、電子供給層21の2次元電子ガス濃度制御領域を構成する部分に、選択的にリセス部21aを形成する。その後、実施の形態1と同様にして、電子供給層21上に、カソード電極18、および絶縁膜16を順次形成した後、リセス部21aの上方領域を、絶縁膜16を介して覆うように2段のフィールドプレート部22a,22bを有するアノード電極22を形成する。その他の工程については実施の形態1と同様に行い、実施の形態2による半導体装置20を製造する。
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、2次元電子ガス濃度制御領域aの上方領域にフィールドプレート部22a,22bを設け、リセス部21aのカソード電極18側端部、すなわち2次元電子ガス濃度制御領域を規定する変調点のうちのカソード電極18側の変調点P1と、フィールドプレート部22aのカソード電極18側端部との間隔l0を1μm以上にしていることにより、実施の形態1と同様の効果を得ることが可能となる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3によるショットキーバリアダイオードである半導体装置について説明する。図3は、実施の形態3による半導体装置30の模式的な断面図である。
図3に示すように、実施の形態3による半導体装置30においては、電子供給層14と2次元電子ガス濃度制御層31と絶縁膜16の階段状部分との上に、アノード電極32が設けられている。そして、実施の形態1と異なり、アノード電極32は、2次元電子ガス濃度制御層31上に1段乗り上げているとともに、絶縁膜16上に3段のフィールドプレート部32a,32b,32cを有する。すなわちアノード電極32は、4段のフィールドプレート構造を有する。なお、アノード電極32の下方領域における絶縁膜16の段数については、特に限定するものではないが、製造工程数の増加に伴うコストを考慮すると、3段が好ましい。
また、最上段のフィールドプレート部32cのカソード電極18側端部、および2次元電子ガス濃度制御層31のカソード電極18側端部は電界集中部になる。そこで、実施の形態1と同様の理由から、フィールドプレート部32cのカソード電極18側端部と、2次元電子ガス濃度制御層31のカソード電極18側端部、すなわち2DEG濃度の変調点P1との、基板11の主面に沿った間隔l0は、1μm以上、好適には2μm以上になるように構成するのが好ましい。さらに、2次元電子ガス濃度制御層31の上方領域、かつ最上段のフィールドプレート部32cの下方領域における絶縁膜16の膜厚d30は、SiO2膜に換算して500nm以上になるように構成されている。また、基板11の主面に沿って、2次元電子ガス濃度制御層31上に接したアノード電極32のカソード電極18側端部とフィールドプレート部32aの電極エッジ部との間隔l1、およびフィールドプレート部32a,32bのそれぞれの電極エッジ部間の間隔l2はいずれも、0.5μm以上が好ましく、1μm以上とするのが、各電界集中部間の干渉による電流コラプスの影響をさらに抑えることができる点から、より好ましい。
また、フィールドプレート部32cのカソード電極18側端部とカソード電極18のアノード電極32側端部との基板11の主面に沿った間隔をLyとし、フィールドプレート部32cのカソード電極18側端部と、フィールドプレート部32cのカソード電極18側端部から連続して変調されているアノード電極32側の変調点P2との基板11の主面に沿った間隔をLxとする。この場合、半導体30に対する逆バイアス印加時においてアノード接地の場合、実施の形態1と同様の理由から、Ly≧Lxとするのが好ましい。その他の構成および製造方法については実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
以上説明した本発明の実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4によるショットキーバリアダイオードである半導体装置について説明する。図4は、半導体装置40を示す模式的な断面図である。
図4に示すように、実施の形態4による半導体装置40においては、電子供給層14と2次元電子ガス濃度制御層41と絶縁膜16の階段状部分との上に、アノード電極42が設けられている。そして、アノード電極42は、2次元電子ガス濃度制御層41上に1段乗り上げているとともに、実施の形態1,3と異なり、絶縁膜16上に5段のフィールドプレート部42a,42b,42c,42d,42eを有する。すなわちアノード電極42は、6段のフィールドプレート構造を有する。
また、最上段のフィールドプレート部42eのカソード電極18側端部、および2次元電子ガス濃度制御層41のカソード電極18側端部は電界集中部になる。そこで、実施の形態1と同様の理由から、フィールドプレート部42eのカソード電極18側端部と、2次元電子ガス濃度制御層41のカソード電極18側端部、すなわち2DEG濃度の変調点P1との、基板11の主面に沿った間隔l0は、1μm以上、好適には2μm以上になるように構成するのが好ましい。
また、フィールドプレート部42a〜42dの電極エッジ部はそれぞれ電界集中部になる。電界集中部間の距離が近いと電界が互いに干渉しあい、フィールドプレート構造による電界分散効果を弱めることになる。そこで、フィールドプレート部42d,42cのそれぞれの電極エッジ部間の間隔l1、フィールドプレート部42c,42bのそれぞれの電極エッジ部間の間隔l2、フィールドプレート部42b,42aのそれぞれの電極エッジ部間の間隔l3はいずれも、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
また、階段状に形成されたフィールドプレート部42a〜42eの下方領域における絶縁膜16の段差をそれぞれ、上方に向かって段階的に大きくすることによって、電界の強度をより一層緩和することができる。すなわち、それぞれのフィールドプレート部42b,42c,42d,42eの下方領域における絶縁膜16の段差をそれぞれ、d0,d1,d2,d3,d4とすると、それぞれの段差は等しくても良いが、d0<d1<d2<d3<d4とするのがより好ましい。なお、実施の形態1と同様に、フィールドプレート部42eの下方領域における絶縁膜16の膜厚であるd0+d1+d2+d3+d4のSiO2換算膜厚は500nm以上が好ましい。
さらに、フィールドプレート部42eのカソード電極18側端部とこのカソード電極18のアノード電極42側端部との基板11の主面に沿った間隔をLyとし、フィールドプレート部42eのカソード電極18側端部と、2次元電子ガス濃度制御層41のカソード電極18側端部から連続している変調されているアノード電極42側の変調点P2との、基板11の主面に沿った間隔をLxとすると、逆バイアス印加時においてアノード接地の場合、実施の形態1,2,3と同様の理由から、Ly≧Lxとするのが好ましい。その他の構成および製造方法については実施の形態1,3と同様であるので、説明を省略する。
以上説明した本発明の実施の形態4によれば、実施の形態1〜3と同様の効果を得ることができるとともに、アノード電極42をフィールドプレート部42a〜42eによって多段状のフィールドプレート構造としていることにより、2次元電子ガス濃度制御層41に印加される電界をさらに分散させて、電界集中部における電界強度をより一層緩和することが可能になる。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5によるHEMT型電界効果トランジスタである半導体装置について説明する。図5は、この実施の形態5による半導体装置50を示す模式的な断面図である。
図5に示すように、実施の形態5による半導体装置50は、基板11、バッファ層12、電子走行層13、電子供給層14、2次元電子ガス濃度制御層51、絶縁膜52、ゲート電極53、ドレイン電極54、およびソース電極55を備える。
第3半導体層の一部からなる2次元電子ガス濃度制御層51は、電子走行層13に生じる2DEGの濃度を局所的に変調させるために、電子供給層14のバンドギャップより狭いIII族窒化物系化合物半導体、具体的にはたとえばGaNから構成される。ここで、電子走行層13に生じる2DEG濃度は、2次元電子ガス濃度制御層51の膜厚が大きいほど低下するように変調される。そのため、この実施の形態5において、2次元電子ガス濃度制御層15の膜厚は、たとえば20nm以上200nm以下が好ましく、好適には成長とエッチングを用いた膜厚制御により2DEG濃度の制御が容易な20nm以上100nm以下、より好適には膜厚ばらつきによる2DEG濃度のばらつきを受けにくい25nm以上80nm以下である。
また、この実施の形態5においては、電子走行層13、電子供給層14、および2次元電子ガス濃度制御層51によって半導体積層体が構成される。そして、2次元電子ガス濃度制御層51により半導体積層体の内部の2DEG濃度が変調される。これにより、2DEG濃度の変調点P1,P2を挟んで2次元電子ガス濃度制御層51の下方領域における2DEG濃度が低い領域a、すなわち2次元電子ガス濃度制御領域が規定される。そして、半導体装置50を高耐圧化するための電界強度の観点からは、低濃度の領域aの2DEG濃度は、7×1012cm-2以下にするのが好ましい。また、半導体装置50のオン抵抗を低減する観点から、2DEG濃度が領域aに比して高い領域Aのキャリア濃度は、7×1012cm-2よりも高くするのが好ましい。
第2電極としてのドレイン電極54および第3電極としてのソース電極55は、電子供給層14上に設けられ、たとえばTi/Alの積層構造から構成される。これにより、ドレイン電極54およびソース電極55は、電子供給層14を介して電子走行層13に発生した領域Aにおける2DEG層とオーミック接触する。
また、第1電極としてのゲート電極53は、ドレイン電極54とソース電極55との間に配置され、2次元電子ガス濃度制御層51上、および絶縁膜52にせり出して設けられている。このゲート電極53は、たとえばNi/Auの積層構造から構成される。これによって、ゲート電極53は、2次元電子ガス濃度制御層51および電子供給層14を介して、2次元電子ガス濃度制御層51によって2DEG濃度が変調されて低減された電子走行層13中の領域aの2DEG層とショットキー接触する。
また、絶縁膜52は、たとえばSiO2から構成される。絶縁膜52は、主に、2次元電子ガス濃度制御層51と、ゲート電極53と、ドレイン電極54と、ソース電極55と、電子供給層14の表面とを保護する。また、2次元電子ガス濃度制御層51のドレイン電極54側端部の電界強度を低減するためには、この2次元電子ガス濃度制御層51の端部の上方領域かつゲート電極53の下方領域に配置される絶縁膜52の膜厚を増加させるのが有効である。ところが、この部分の絶縁膜52の膜厚を単に増加させるのみでは、ゲート電極53の2次元電子ガス濃度制御層51との接触端部(ゲート端)の位置での電界が強まってしまう。そこで、この実施の形態5においては、ゲート電極53に多段の階段状、たとえばドレイン電極54に向かって3段の階段状にフィールドプレート部53a,53b,53cがせり出すように延伸して設けられている。その上で、2次元電子ガス濃度制御層51の上方領域かつフィールドプレート部53cの下方領域の絶縁膜52の膜厚d50を500nm以上とするのが好ましい。これによって、電界分散効果を維持しつつ2次元電子ガス濃度制御層51のゲート端の部分における電界を緩和させることができる。なお、絶縁膜52を、SiNやAl2O3などのSiO2以外の誘電体材料、または複数種類の材料を適宜組合せたり順次積層させたりして構成する場合には、膜厚d50として、上述した(1)式に基づいてSiO2換算膜厚dに換算した値が500nm以上とするのが好ましい。
また、ゲート電極53を多段状に構成する場合、ゲート電極53における電極エッジ部、すなわち絶縁膜52の膜厚変化部が電界集中部になる。さらに、上述したように、2次元電子ガス濃度制御層51におけるドレイン電極54側端部も電界集中部となる。そして、これらの電界集中部の間の間隔が小さいと電界が互いに干渉しあい、フィールドプレート部53a〜53cによる電界分散効果を弱めてしまう。そのため、実施の形態1と同様の理由から、電界集中が最も問題となる2次元電子ガス濃度制御層51のドレイン電極54側端部と、ゲート電極53におけるフィールドプレート部53cのドレイン電極54側端部との、基板11の主面に平行な面に沿った間隔l0は、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。また、同様の理由から、基板11の主面に平行な面に沿って、フィールドプレート部53b,53aのそれぞれの電極エッジ部間の間隔l1、および2次元電子ガス濃度制御層51上に接したゲート電極53のドレイン電極54側端部とフィールドプレート部53aの電極エッジ部との間隔l2はいずれも、0.5μm以上が好ましく、各電界集中部間の干渉による電流コラプスの影響をさらに抑えることができる点から、1μm以上とするのがより好ましい。なお、これらの間隔l0,l1,l2は、600Vの耐圧を有する半導体装置に適用するのが好ましいが、必ずしもこのような半導体装置のみに限定されるものではない。
さらに、基板11の主面に沿って、ゲート電極53におけるフィールドプレート構造のうちの最上段のフィールドプレート部53cのドレイン電極54側端部と、最上段から1段下がったフィールドプレート部53bの屈曲端部との間、好適には幅方向中央部に、2次元電子ガス制御領域におけるドレイン電極54側の変調点P1が位置するように構成する。具体的には、基板11の主面に沿って、フィールドプレート部53bのドレイン電極54側端部と、フィールドプレート部53bの電極エッジ部との間、好適には幅方向中央部に、2次元電子ガス濃度制御層51のドレイン電極54側端部が位置するように構成する。換言すると、2次元電子ガス濃度制御層51のドレイン電極54側端部は、その他の電界集中部、たとえば絶縁膜52の膜厚変化部やゲート電極53の電極エッジ部の下方以外、好適には、隣り合う電界集中部の幅方向中央部に位置させるのが好ましい。これにより、2次元電子ガス制御領域における電界分散効果をより一層効果的に奏することが可能になる。
また、ゲート電極53の電極エッジ部における角度が90°以下の鋭角になると、この屈曲部に電荷が集中して電界が強くなる。そのため、ゲート電極53における電界強度を抑制するためには、絶縁膜52の階段状部分における膜厚変化部近傍の傾斜角度θを90°未満にするのが好ましく、60°未満がより好ましい。これにより、絶縁膜52にせり出して設けられるゲート電極53のフィールドプレート部53a〜53cの電極エッジ部の角度が、鈍角、すなわち90°より大きくなり、好適には120°より大きくなるため、ゲート電極53における電界強度の増加を抑制できる。
ここで、フィールドプレート部53cのドレイン電極54側端部とこのドレイン電極54のゲート電極53側端部との、基板11の主面方向に沿った間隔をLyとする。なお、間隔Lyは、ドレイン電極54の形状が電子供給層14上で一様でない場合においても同様であり、その形状は限定されない。また、フィールドプレート部53cのドレイン電極54側端部と、2次元電子ガス濃度制御層51のドレイン電極54側端部の下方の変調点P1から連続して変調されているソース電極55側の変調点P2との、基板11の主面方向に沿った間隔をLxとする。この場合、半導体装置50の電源オフ時の電界分布から、フィールドプレート部53cのドレイン電極54側端部直下で、基板11の主面に平行な面方向の部分において電界強度が強まり電流コラプスが悪化することによるオン抵抗の増加を防止するためには、Ly≧Lxとするのが好ましい。ここで、この実施の形態5による半導体装置50において600V以上の耐圧を実現するためには、間隔Lxは、5μm以上20μm以下、間隔Lyは、5μm以上30μm以下とするのが好ましい。
さらに、階段状に形成されたフィールドプレート部53a〜53cの下方領域における絶縁膜52の段差をそれぞれ、上方に向かって段階的に大きくすることによって、電界をより一層緩和することができる。すなわち、それぞれのフィールドプレート部53a,53b,53cの下方領域における絶縁膜52の段差をそれぞれ、d0,d1,d2とすると、それぞれの段差は等しくても良いが、d0<d1<d2になるようにするのがより好ましい。その他の構成および半導体装置の製造方法については、実施の形態1〜4と同様であるので、その説明を省略する。
以上説明した本発明の実施の形態5によれば、部分的に変調された2次元電子ガス濃度制御領域を有する電子走行層13、電子供給層14、および2次元電子ガス濃度制御層51からなる半導体積層体と、少なくとも半導体積層体上に設けられる絶縁膜52と、ゲート電極53、ドレイン電極54およびソース電極55を備えた半導体装置50において、ゲート電極53がドレイン電極54に向かって絶縁膜52にせり出したフィールドプレート部53a〜53cを有し、フィールドプレート部53a〜53cの下方領域の絶縁膜52の膜厚が、ゲート電極53側の膜厚に比してドレイン電極54側の膜厚が連続的または段階的に大きくなるように構成され、2次元電子ガス濃度制御領域を構成する領域aの2DEG濃度が、変調点P1,P2を挟んでその他の領域Aの2DEG濃度より低くなるように変調され、変調点のうちのドレイン電極54側の位置にある変調点P1が、フィールドプレート部53a〜53cから基板11に向かう下方領域内にあるとともに、変調点P1とフィールドプレート部53cのドレイン電極54側端部との間の、基板11の主面に沿った間隔l0を1μm以上にしていることにより、2次元電子ガス濃度制御層51のドレイン電極54側端部の電界集中部を、フィールドプレート部53a〜53cの電極エッジ部に位置する他の電界集中部からずれた位置にすることができるので、2次元電子ガス濃度制御層51における電界を分散させることができ、半導体装置50において、高耐圧化、電流コラプスの低減、およびリーク電流の低減をより一層の向上させることが可能となり、実施の形態1〜4と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態6)
次に、実施の形態6によるHEMT型電界効果トランジスタである半導体装置について説明する。図6は、この実施の形態6による半導体装置60の模式的な断面図である。
図6に示すように、実施の形態6による半導体装置60は、実施の形態5と異なり、2次元電子ガス濃度制御層61にリセス部61aが形成されている。なお、リセス部61aは、2次元電子ガス濃度制御層61に対して従来公知のリソグラフィ工程およびエッチング工程により形成される。
また、フィールドプレート部62a,62b,62cをドレイン電極54側に向けて絶縁膜52にせり出して延伸させたゲート電極62が、2次元電子ガス濃度制御層61上に、リセス部61aを通じて電子供給層14に直接接するように設けられている。これにより、2次元電子ガス濃度制御層61の下方領域の電子走行層13内において、2DEG層の2つの2DEG濃度が低い領域aが生じる。この場合、電子走行層13内において、変調点ドレイン電極54側から変調点P1,P2,P3,P4の4箇所存在し、変調点P1,P2の間の連続した領域と、変調点P3,P4の間の連続した領域とが、2DEG濃度の低い領域aからなる2次元電子ガス濃度制御領域を構成している。そして、実施の形態1におけると同様の理由から、電界集中が最も問題となる2次元電子ガス濃度制御層61の最もドレイン電極54側に近い端部、すなわち変調点P1の位置と、ゲート電極62におけるフィールドプレート部62cのドレイン電極54側端部との、基板11の主面に沿った間隔l0は、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。
また、ゲート電極62のフィールドプレート部62cのドレイン電極54側端部とこのドレイン電極54のゲート電極53側端部との、基板11の主面方向に沿った間隔をLyとする。また、フィールドプレート部62cのドレイン電極54側端部と、2次元電子ガス濃度制御層51のドレイン電極54側端部の下方の変調点P1から連続して変調されている領域aのソース電極55側の他方の変調点P2との、基板11の主面方向に沿った間隔をLxとする。この場合、実施の形態5におけると同様の理由から、Ly≧Lxとするのが好ましい。ここで、この実施の形態6による半導体装置60において600V以上の耐圧を実現するためには、間隔Lxは、5μm以上20μm以下、間隔Lyは、5μm以上30μm以下とするのが好ましい。その他の構成および製造方法は、実施の形態5と同様であるので、説明を省略する。
この実施の形態6によれば、2次元電子ガス濃度制御層61の最もドレイン電極54側に近い端部から、フィールドプレート部62cのドレイン電極54側端部までの、基板11の主面に沿った間隔l0を1μm以上としていることにより、実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。たとえば、上述の実施の形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
また、上述の実施の形態5,6においては、ゲート電極の端部を、ドレイン電極側およびソース電極側に向かって絶縁膜52に乗り上げてせり出した、多段の階段状の構造としている。しかしながら、必ずしもこのような構造に限定されるものではなく、ゲート電極の端部のうちの少なくとも高電圧が印加される側のみ、具体的にたとえばゲート電極のドレイン電極側の端部のみを、絶縁膜52に乗り上げてせり出した、多段の階段状の構造としてもよい。
また、上述の実施の形態5,6においては、多段の階段状のフィールドプレート部をゲート電極に設けた構成について説明している。しかしながら、電界効果トランジスタにおけるフィールドプレート構造は、必ずしもゲート電極に設ける形態のみに限定されるものではない。具体的にたとえば、本発明は、特許文献2に記載されているような、フィールドプレート構造をソース電極に設ける形態に対しても、好適に適用できる。この場合、ソース電極のフィールドプレート構造のドレイン電極側端部が電界集中部の1つとなる。そして、この電界集中部が、1つの半導体素子内において生じる電界集中部の中で最もドレイン電極に近い側にある場合、2DEG濃度のドレイン電極側の変調点Pは、基板の主面に沿った直線距離で、ソース電極のフィールドプレート構造のドレイン電極側の端部から1μm以上、好適には2μm以上離すのが好ましい。
また、上述の実施の形態においては、電子供給層がInxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)から構成され、電子走行層13および2次元電子ガス濃度制御層15がGaNから構成されている。しかしながら、これらの層の構成材料は上記のものに限定されない。すなわち、電子供給層は、電子走行層よりもバンドギャップが広いIII族窒化物系化合物半導体から構成されていればよい。また、2次元電子ガス濃度制御層は、電子供給層よりもバンドギャップが狭いIII族窒化物系化合物半導体から構成されていればよい。ここで、III族窒化物系化合物半導体は、化学式AlxInyGa1-x-yAsuPvN1-u-v(但し、0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1、0≦u<1、0≦v<1、0≦u+v<1)で表されるものである。
また、ダイオードのアノード電極およびトランジスタのゲート電極の下部電極層は、電子供給層とショットキー接触する電極である。そのため、上述したニッケル(Ni)やチタン(Ti)以外にも、たとえば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)のうち少なくとも1つを含む金属膜、または、Ti、Ni、Pt、Pd、W、Au、Ag、Cu、Ta、Alのうち少なくとも1つを含む合金よりなる金属膜のうち、少なくとも1つを含む金属膜、または、Ti、W、Taのうち少なくとも1つを含む窒化物合金からなる金属膜など、上記条件を満たす金属材料であれば種々のものを用いてもよい。
また、ダイオードのアノード電極およびトランジスタのゲート電極の上部電極層は、下部電極層より仕事関数の小さい金属からなり、この条件を満たす金属材料であれば種々のものを用いてもよい。
また、ダイオードのカソード電極およびトランジスタのソース電極およびドレイン電極は、電子供給層とオーミック接触する、または、接触抵抗が十分に小さい状態で接触する電極である。ただし、本発明ではこれに限定されず、たとえばTi、Al、シリコン(Si)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、In、Taのうち少なくとも1つを含む金属膜、Ti、Al、Si、Pb、Cr、In、Taのうち少なくとも1つを含む合金よりなる金属膜、または、Ti、Al、Si、Taのうち少なくとも1つを含むシリサイド合金よりなる金属膜、または、Ti、W、Taのうち少なくとも1つを含む窒化物合金よりなる金属膜などのうち、少なくとも1つを含む金属膜など、上記条件を満たす金属材料であれば如何なるものを用いてもよい。
また、上述の実施の形態においては、本発明による半導体装置として、SBDおよびHEMTを例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、MESFET(Metal Semiconductor FET)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor FET)、MISFET(Metal Insulator Semiconductor FET)などの、種々の半導体装置に対して適用することができる。そして、本発明をこれらのFETに適用する場合、ゲート電極と2次元電子ガス濃度制御層との間に酸化膜などの絶縁膜を設けることも可能である。
また、上述の実施の形態においては、電子供給層の表面に電極を形成しているが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、電子走行層、電子供給層、および2次元電子ガス濃度制御層を含み、必要に応じてその他の層を含む半導体積層体のうちの少なくとも1層の上に電極を設けることが可能である。すなわち、半導体積層体を構成するその他の層の上に電極を設けても良い。具体的には、電子供給層の表面に、絶縁層、2次元電子ガス濃度制御層などの窒化物系半導体層、またはこれらの積層膜を介して、アノード電極、カソード電極、ゲート電極、ドレイン電極、またはソース電極を設けることも可能である。また、電子供給層の電極の形成領域の一部を電子走行層に達するまでエッチング除去してリセス部を形成し、このリセス部の表面、またはリセス部表面に所定の膜を介して、アノード電極、カソード電極、ゲート電極、ドレイン電極、またはソース電極を設けることも可能である。
また、上述の実施の形態において、実施の形態1,2を適宜組み合わせて、2次元電子ガス濃度制御層15とリセス部21aとを隣接して設けることによって、2次元電子ガス濃度制御領域を構成するようにしても良い。この場合、2DEG濃度は3水準に変調される。なお、この場合においても、電界集中部を分散させて電界強度を緩和するために、2次元電子ガス濃度制御領域はフィールドプレート部の下方領域に収まるように構成され、2次元電子ガス濃度制御領域のアノード電極側端部と最上段のフィールドプレートのカソード電極側端部との、基板11の主面に平行な面に沿った間隔l0を1μm以上、好適には2μm以上にする。また、HEMT型FETにおいても、同様の構成を採用することが可能である。