JP2015063453A - 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】サーモクロミック層と、色調補正樹脂層とを有し、前記サーモクロミック層は、熱可塑性樹脂と、二酸化バナジウム粒子を含有し、前記色調補正樹脂層は、ポリビニルアセタール樹脂又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ、前記二酸化バナジウム粒子の色調と補色に調色されている合わせガラス用中間膜。
【選択図】なし
Description
合わせガラス用中間膜中に二酸化バナジウムを微分散させることにより、二酸化バナジウムの相転移温度未満では可視光線及び赤外線の透過率が高いが、相転移温度以上になると可視光線の透過率が高い状態で、赤外線の透過率が低下する性質を示す合わせガラス用中間膜が得られることが期待される。
本発明は、サーモクロミック性に優れ、かつ、見るものに不快な印象を与えず、美観に優れる合わせガラス用中間膜、並びに、該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することを目的とする。
以下、本発明を詳述する。
図1に示す中間膜1は、サーモクロミック層2と、サーモクロミック層2の一方の表面2a(第1の表面)側に配置された色調補正樹脂層3と、サーモクロミック層2の他方の表面2b(第2の表面)側に配置された紫外線遮蔽層4とを有する。中間膜1は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。なお、本発明において、紫外線遮蔽層4は必須の構成要件ではない。
サーモクロミック層2は、熱可塑性樹脂と、二酸化バナジウム粒子5とを含有する。
色調補正樹脂層3は、ポリビニルアセタール樹脂又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ、二酸化バナジウム粒子5の色調と補色に調色されている。これにより、色調補正樹脂層3は、サーモクロミック層2の不快な印象を与える色調を補正して、美観に優れる外観とすることが可能となる。
サーモクロミック層が、熱可塑性樹脂と二酸化バナジウム粒子とを含有することにより、サーモクロミック層として二酸化バナジウム薄膜を用いて作製された合わせガラスなどに比較して、美観及びサーモクロミック性に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスが得られる。これは、以下のような理由によると推察される。
従来の二酸化バナジウム薄膜は、スパッタ等を用いて作製されるため、V2O5等の不純物が生じやすく、不純物の色が混じりやすいという問題があった。二酸化バナジウムにV2O5が混ざった場合は、黒色に近い色を呈することとなり、補色することが困難であった。また、V2O5が混ざることで、サーモクロミック性も低下するという問題もあった。
一方、本発明に係る合わせガラス用中間膜のサーモクロミック層は、熱可塑性樹脂と二酸化バナジウム粒子とを含有するため、用いる二酸化バナジウム粒子を適宜選択することで、サーモクロミック層の色目及びサーモクロミック性を調節することができ、美観及びサーモクロミック性に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスが得られる。例えば、二酸化バナジウム粒子の色に、V2O5の色が混ざることが好ましくなければ、V2O5を含有しないか、或いは、V2O5の含有量が少ない二酸化バナジウム粒子を原料として用いることができ、逆に、意図的に二酸化バナジウム粒子の色に、V2O5の色を混ざった粒子を原料として用いることも出来る。
なかでも、上記熱可塑性樹脂は、汎用性が高いことから、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、サーモクロミック層と色調補正樹脂層との密着性を高める観点からは、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
また、サーモクロミック層の長期安定性を高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂であることが好ましい。ポリエステル樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等の他の熱可塑性樹脂に比較して、サーモクロミック層が含有する二酸化バナジウム粒子の劣化を抑制することができ、サーモクロミック層の長期安定性をより一層高めることができる。
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して、原料となるポリビニルアルコールの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
上記アセチル化度が0.1モル%以上であると、上記ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性を高めることができ、また、二酸化バナジウム粒子を分散させた場合の二酸化バナジウム粒子の長期安定性がより一層高まる。上記アセチル化度が30モル%以下であると、中間膜の耐湿性が高くなる。
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
上記アセタール化度が60モル%以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなり、また、二酸化バナジウム粒子を分散させた場合の二酸化バナジウム粒子の長期安定性がより一層高まる。上記アセタール化度が85モル%以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間を短縮することができる。
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、アセチル化度(アセチル基量)と水酸基の含有率(ビニルアルコール量)とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、ついで、100モル%からアセチル化度と水酸基の含有率とを差し引くことにより算出され得る。
なお、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度(アセチル基量)は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
上記ポリアルキレンナフタレート樹脂としては、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
上記二酸化バナジウム粒子は、サーモクロミック特性を有することから、本発明の合わせガラス用中間膜や合わせガラスに優れたサーモクロミック性を付与することができる。
即ち、可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質にいったん吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記二酸化バナジウム粒子の使用により、上記二酸化バナジウムの相転移温度以上の条件で、赤外線(熱線)を効果的に遮断でき、上記二酸化バナジウムの相転移温度未満の条件で、赤外線(熱線)を効果的に透過できる。
また、上記二酸化バナジウム粒子は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、V2O5、V2O3及びVO等の二酸化バナジウム以外のバナジウム酸化物を含んでいても良い。上記二酸化バナジウム以外のバナジウム酸化物の含有量は、XRD測定を行い、リートベルト解析を行うことによって、二酸化バナジウムの含有量をモル%で求め、100モル%から求めた二酸化バナジウムの含有量を引くことにより、求めることができる。上記二酸化バナジウム以外のバナジウム酸化物の含有量は、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0%、すなわち含有しないことが更に好ましい。上記二酸化バナジウム以外のバナジウム酸化物の含有量が、上記好ましい範囲であれば、補色が容易となることから、美観及びサーモクロミック性に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスが得られる。
二酸化バナジウムは様々な結晶相が存在するが、単斜晶結晶と正方晶結晶(ルチル型)が可逆的に相転移する。その相転移温度は約68℃である。上記相転移温度は、二酸化バナジウム中のバナジウム原子の一部をバナジウム以外の金属原子で置換することにより調整することができる。従って、二酸化バナジウム粒子又は置換二酸化バナジウム粒子を適宜選択したり、置換二酸化バナジウム粒子において置換する原子種や置換率を適宜選択したりすることにより、得られる合わせガラス用中間膜のサーモクロミック性を制御することができる。
なお、置換率とは、バナジウム原子数と置換された原子数との合計に占める、置換された原子数の割合を百分率で示した値である。
上記コア粒子として、例えば、酸化ケイ素、シリカゲル、酸化チタン、ガラス、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト化合物、ハイドロタルサイト化合物の焼成物、及び、炭酸カルシウム等の無機粒子が挙げられる。
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA−EX150」)等を用いて測定できる。
また、上記サーモクロミック層100質量%中、二酸化バナジウム粒子の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.5質量%以上、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5.5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3.5質量%以下、最も好ましくは3.0質量%以下である。上記サーモクロミック層における二酸化バナジウム粒子の含有量が上記好ましい範囲内であると、サーモクロミック性を充分に高めることができる。
上記グリセリンエステルは特に限定されず、例えば、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリントリステアリン酸エステル、デカグリセリンデカステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンジステアリン酸エステル、ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンペンタステアリン酸エステル、テトラグリセリンモノステアリン酸エステル、テトラグリセリントリステアリン酸エステル、テトラグリセリンペンタステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、グリセロールモノステアレート、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンデカオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンペンタオレイン酸エステル、テトラグリセリンモノオレイン酸エステル、テトラグリセリンペンタオレイン酸エステル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、グリセロールモノオレエート、2−エチルヘキサン酸トリグリセライド、カプリン酸モノグリセライド、カプリン酸トリグリセライド、ミリスチン酸モノグリセライド、ミリスチン酸トリグリセライド、デカグリセリンモノカプリル酸エステル、ポリグリセリンカプリル酸エステル、カプリル酸トリグリセライド、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、テトラグリセリンモノラウリン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル、デカグリセリンヘプタベヘニン酸エステル、デカグリセリンドデカベヘニン酸エステル、ポリグリセリンベヘニン酸エステル、デカグリセリンエルカ酸エステル、ポリグリセリンエルカ酸エステル、テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等が挙げられる。
上記グリセリンエステルのうち市販品としては、例えば、SYグリスターCR−ED(阪本薬品工業社製、縮合リシノール酸ポリグリセリン酸エステル)、SYグリスターPO−5S(阪本薬品工業社製、オレイン酸ヘキサグリセリンペンタエステル)等が挙げられる。
上記ポリカルボン酸は特に限定されず、例えば、主鎖骨格にカルボキシル基を有するポリマーにポリオキシアルキレンをグラフトしたポリカルボン酸重合体等が挙げられる。
上記ポリカルボン酸のうち市販品としては、例えば、日油社製マリアリムシリーズ(AFB−0561、AKM−0531、AFB−1521、AEM−3511、AAB−0851、AWS−0851、AKM−1511−60等)等が挙げられる。
上記二酸化バナジウム粒子の色調と補色に調色された色調補正樹脂層は、熱可塑性樹脂と、二酸化バナジウム粒子を含有するサーモクロミック層が呈する黄緑色の色調に対して補色となる紫色を有することが好ましい。例えば、色調補正樹脂層に着色剤として、青色着色剤と赤色着色剤とを添加することや、紫色着色剤を添加することで、上記二酸化バナジウム粒子の色調と補色に調色することができる。また、上記サーモクロミック層は、着色剤を含有していても良い。
上記紫外線遮蔽層が積層されていることで、紫外線の透過が効果的に抑制され、上記サーモクロミック層のサーモクロミック性が低下することを防止できる。その結果、優れたサーモクロミック性を長期間にわたり維持することができる。
上記絶縁性金属酸化物としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。上記絶縁性金属酸化物は、例えば5.0eV以上のバンドギャップエネルギーを有する。
上記ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等のベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤が挙げられる。紫外線を吸収する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤はハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
上記ベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
上記トリアジン系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(BASF社製、「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
上記ベンゾエート系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(BASF社製、「tinuvin120」)等が挙げられる。
上記マロン酸エステル系紫外線遮蔽剤としては、例えば、マロン酸[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−ジメチルエステル(クラリアントジャパン社製、Hostavin PR−25)等が挙げられる。
上記シュウ酸アニリド系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−エチル2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社製、Sanduvor V SU)等が挙げられる。
初期及び経時後のサーモクロミック性をより一層高める観点からは、紫外線遮蔽層100質量%中、紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.8質量%以下である。特に、紫外線遮蔽層100質量%中、紫外線遮蔽剤の含有量が0.2質量%以上であることにより、合わせガラスの経時後のサーモクロミック性の低下を顕著に抑制できる。
初期及び経時後のサーモクロミック性をより一層高める観点からは、サーモクロミック層100質量%中、紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.8質量%以下である。特に、サーモクロミック層100質量%中、紫外線遮蔽剤の含有量が0.3質量%以上であることにより、合わせガラスの経時後のサーモクロミック性の低下を顕著に抑制できる。
上記可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
上記サーモクロミック層、色調補正樹脂層及び紫外線遮蔽層における上記可塑剤の含有量はそれぞれ異なっていてもよい。例えば、サーモクロミック層、色調補正樹脂層及び紫外線遮蔽層の内の少なくとも一層の上記可塑剤の含有量が、上記熱可塑性樹脂100質量部に対して55質量部以上である場合、合わせガラスの遮音性を高めることができる。
また、実用面の観点、並びに美観を高める観点からは、色調補正樹脂層の厚みの好ましい下限は0.01mm、より好ましい下限は0.05mm、好ましい上限は0.8mm、より好ましい上限は0.6mmである。
更に、実用面の観点、並びに長期間にわたりサーモクロミック性を充分に維持する観点からは、紫外線遮蔽層の厚みの好ましい下限は0.001mm、より好ましい下限は0.2mm、好ましい上限は0.8mm、より好ましい上限は0.6mmである。
別の態様の本発明では、このような色調補正サーモクロミック層を有することで、単層であっても、美観に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得ることができる。
なお、別の態様の本発明における熱可塑性樹脂、二酸化バナジウム粒子としては、本発明の合わせガラス用中間膜と同様のものを使用することができる。また、紫外線遮蔽層の構成や、可塑剤、分散剤等についても本発明の合わせガラス用中間膜と同様のものを使用することができる。
図2に、本発明の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を示す部分切欠断面図である。
図2に示す合わせガラス11は、中間膜1と、合わせガラス部材12、13とを備える。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。中間膜1は、合わせガラス部材12、13の間に挟み込まれている。従って、合わせガラス11は、合わせガラス部材12と、中間膜1と、合わせガラス部材13とがこの順で積層されて構成されている。合わせガラス部材12は、色調補正樹脂層3の外側の表面3aに積層されている。合わせガラス部材13は、紫外線遮蔽層4の外側の表面4aに積層されている。
(1)サーモクロミック層の作製
二酸化バナジウム粒子(新興化学工業社製、平均粒子径77μm)0.1質量部、分散剤としてポリカルボン酸(AFB−0561、日油社製)0.5質量部を、可塑剤である28質量部のトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)中に添加し、水平型のマイクロビーズミルで混合して二酸化バナジウム粒子分散液を得た。分散液中の二酸化バナジウム粒子の体積平均粒子径は132nmであった。なお、上記二酸化バナジウム粒子分散液に添加する前の二酸化バナジウム粒子について、放射光施設内でXRD測定(波長0.5Å、露光時間10分間)を行い、得られたXRDパターンについて解析ソフト(リガク社製PDXL)を用いてリートベルト解析することによって、上記二酸化バナジウム粒子中の二酸化バナジウムの含有量を算出した。上記二酸化バナジウム粒子中の二酸化バナジウムの含有量は100モル%であり、上記二酸化バナジウム以外のバナジウム酸化物の含有量は0モル%であった。
得られた二酸化バナジウム粒子分散液の全量を、ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)(平均重合度1700、水酸基の含有率30.5モル%、アセチル化度1モル%、ブチラール化度68.5モル%)72質量部に加え、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートに挟み、厚さ100μmのスペーサを介して、熱プレスにて150℃、100kg/cm2の条件で15分間加圧し、厚さ100μmのサーモクロミック層を得た。
ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100質量部に、可塑剤である40質量部のトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)と、上記サーモクロミック層が含有する二酸化バナジウム粒子の黄緑みがかった色と補色となる色調に調整するための着色剤として、青色の顔料トナー(住化カラー社製の商品名「SG−5A1083N」)0.15質量部と赤色の顔料トナー(住化カラー社製の商品名「SG−100N」)0.04質量部を加え、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、ポリテトラフルオロエチレンシートに挟み、厚さ380μmのスペーサを介して、熱プレスにて150℃、100kg/cm2の条件で15分間加圧し、厚さ380μmの色調補正樹脂層を得た。
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40質量部に、紫外線遮蔽剤として2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製、Tinuvin326)0.1質量部を溶解して溶液を調製した。得られた溶液の全量と、ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100質量部とをミキシングロールで充分に混練することにより、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物をポリテトラフルオロエチレンシートに挟み、厚さ380μmのスペーサを介して、熱プレスにて150℃、100kg/cm2の条件で15分間加圧し、厚さ380μmの紫外線遮蔽層を得た。
色調補正樹脂層/サーモクロミック層/紫外線遮蔽層の順に厚み方向に重ね、150℃で5分間プレスすることにより3層構造を有する厚み860μmの合わせガラス用中間膜を得た。
得られた中間膜を、縦5cm×横5cmの大きさに切断した。次に、JIS R3202に準拠した2枚のフロートガラス(縦5cm×横5cm×厚み2mm)を用意した。この2枚のフロートガラスの間に、得られた中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、合わせガラスを得た。
紫外線遮蔽層を用いず、色調補正樹脂層/サーモクロミック層の順に厚み方向に重ね、150℃で5分間プレスすることにより2層構造を有する厚み480μmの合わせガラス用中間膜を作製したこと以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
実施例1の「(1)サーモクロミック層の作製」において、二酸化バナジウム粒子(新興化学工業社製)に代えて、タングステン置換型二酸化バナジウム粒子((WO3)2原子%(VO2)98原子%、NanoAmor社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
(1)サーモクロミック層の作製
ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.1質量部の二酸化バナジウム粒子を添加し、樹脂を溶融混練して二酸化バナジウム粒子を樹脂中に均一に分散させた。得られた混練物をT型ダイを備えた溶融押出機を用いて押出し、厚さ100μmのサーモクロミック層を得た。
得られたサーモクロミック層を用いた以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
実施例4の「(1)サーモクロミック層の作製」において、二酸化バナジウム粒子(新興化学工業社製)に代えて、タングステン置換型二酸化バナジウム粒子((WO3)2原子%(VO2)98原子%、NanoAmor社製)を用いた以外は、実施例4と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
(1)サーモクロミック層の製造
二酸化バナジウム粒子(新興化学工業株式会社製、平均粒子径77μm)0.1質量部、分散剤としてポリカルボン酸(AFB−0561、日油社製)0.5質量部、青色着色剤として青色の顔料トナー(住化カラー社製の商品名「SG−5A1083N」)0.15質量部、赤色着色剤として赤色の顔料トナー(住化カラー社製の商品名「SG−100N」)0.04質量部を加え、28質量部のトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)中に添加し、ビーズミルで混合して二酸化バナジウム粒子分散液を得た。
得られた二酸化バナジウム粒子分散液の全量を、ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)72質量部に加え、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、ポリテトラフルオロエチレンシートに挟み、厚さ100μmのスペーサを介して、熱プレスにて150℃、100kg/cm2の条件で15分間加圧し、厚さ100μmのサーモクロミック層を得た。
得られたサーモクロミック層を合わせガラス用中間膜として用いた以外は、実施例1と同様にして合わせガラスを得た。
実施例1の「(1)サーモクロミック層の作製」において、ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)を、ポリビニルブチラール樹脂(PVB2)(平均重合度2300、水酸基の含有率22モル%、アセチル化度13モル%、ブチラール化度65モル%)に変更した以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
実施例1の「(1)サーモクロミック層の作製」において、ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)を、ポリビニルブチラール樹脂(PVB2)に変更し、二酸化バナジウム粒子(新興化学工業社製)に代えて、タングステン置換型二酸化バナジウム粒子((WO3)2原子%(VO2)98原子%、NanoAmor社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
実施例1の「(2)色調補正樹脂層の作製」において、青色の顔料トナー(住化カラー社製の商品名「SG−5A1083N」)、及び、赤色の顔料トナー(住化カラー社製の商品名「SG−100N」)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
実施例1の「(2)色調補正樹脂層の作製」において、赤色の顔料トナー(住化カラー社製の商品名「SG−100N」)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
実施例1の「(2)色調補正樹脂層の作製」において、青色の顔料トナー(住化カラー社製の商品名「SG−5A1083N」)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
実施例4において、赤色の顔料トナー(住化カラー社製の商品名「SG−100N」)を添加しなかった以外は、実施例4と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
実施例4において、青色の顔料トナー(住化カラー社製の商品名「SG−5A1083N」)を添加しなかった以外は、実施例4と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
得られた合わせガラスの性能を以下の方法で評価した。結果を表1に示した。
紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製「V−670」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた合わせガラスの10℃及び100℃における波長780〜2500nmでの赤外線透過率Tirを求めた。
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3211(1998)に準拠した方法で、実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた合わせガラスの「波長480nmの透過率Tb」、「波長530nmの透過率Tg」及び「波長680nmの透過率Tr」を測定した。次いで、得られた測定値から「TbとTgの差」、「TgとTrの差」及び「TbとTrの差」を算出した。「TbとTgの差」、「TgとTrの差」及び「TbとTrの差」の絶対値が、それぞれ10未満である場合を○、10以上である場合を×と評価した。
試験者の顔面より1000mmの距離に、視線が合わせガラスの面に直交するように実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた合わせガラスを配置した状態で、試験者が試験者から25mの距離にある光源を5秒間観測した。上記光源として、高圧水銀灯(日本技術センター製、S−LIGHT SA160)を使用した。また、実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた合わせガラスの場合、色調補正樹脂層が試験者の手前側に来るように配置した。20人の試験者が観察し、不快な印象を受ける人の人数によって、外観を下記に示す基準で評価した。
○ 不快な印象を受ける人が6人以下
× 不快な印象を受ける人が7人以上
2…サーモクロミック層
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…色調補正樹脂層
3a…外側の表面
4…紫外線遮蔽層
4a…外側の表面
5…二酸化バナジウム粒子
11…合わせガラス
12…合わせガラス部材
13…合わせガラス部材
Claims (9)
- サーモクロミック層と、色調補正樹脂層とを有し、
前記サーモクロミック層は、熱可塑性樹脂と、二酸化バナジウム粒子を含有し、
前記色調補正樹脂層は、ポリビニルアセタール樹脂又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ、前記二酸化バナジウム粒子の色調と補色に調色されている
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。 - 熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
- 熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項2記載の合わせガラス用中間膜。
- ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする請求項3記載の合わせガラス用中間膜。
- サーモクロミック層に含まれる熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることを特徴とする請求項2記載の合わせガラス用中間膜。
- サーモクロミック層に含まれるポリビニルアセタール樹脂は、水酸基の含有率が30モル%以下であり、アセチル基量が5モル%以上であることを特徴とする請求項5に記載の合わせガラス用中間膜。
- 更に、紫外線遮蔽層が積層されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
- 熱可塑性樹脂と、二酸化バナジウム粒子を含有し、かつ、前記二酸化バナジウム粒子の色調と補色に調色されている色調補正サーモクロミック層を有することを特徴とする合わせガラス用中間膜。
- 合わせガラス部材の間に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜を有することを特徴とする合わせガラス。
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