JP2015036367A - エストロジェン分泌増進用組成物、及びその芳香組成物、並びにその芳香用具。 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
合成された1,8-シネオール又は天然物から単離、精製された1,8-シネオールを有効成分として含有するエストロジェンの分泌を嗅覚神経を介する方法によって増進させるエストロジェン分泌増進用組成物、エストロジェン分泌芳香組成物、及び、エストロジェン芳香用具である。
【選択図】図1
Description
ところで、エストロジェン分泌を制御する組成物として、特許文献1には、エストロジェン(女性ホルモンの1群)の主成分である17β-エストラジオールの分泌促進剤として、香科組成物のアンプレット・シード油やアンブレットリドを用いることが開示している。また、特許文献2には、女性ホルモン不足症を治療するものとして菌生冬虫夏草の抽出物を用いることが開示している。また、特許文献3は、本発明者らによるものであるが、β−カリオフィレンの芳香成分の女性に対する影響が開示されている。
・コラーゲンの生成促進(美肌効果、ハリ・つやの衰え予防)
・カルシウムの骨への吸収促進(骨粗鬆症のリスク低減)
・毛髪の新生促進(増毛促進)
・基礎代謝亢進(リンゴ型肥満の予防)
・認知機能亢進(認知症リスク低減)
・血管拡張促進(動脈硬化のリスク低減)
・免疫機能亢進(膠原病、リューマチ等自己免疫疾患リスク低減)
・乳腺の発達促進(乳房の弾力やハリの維持による美容効果)
・善玉コレステロール(HDL)増加(動脈硬化のリスク低減)
請求項2の発明は、請求項1に記載のエストロジェン分泌増進用組成物において、前記エストロジェンは、17β-エストラジオールであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のエストロジェン分泌増進用組成物において、前記組成物の投与手段が香料、精油、化粧品による嗅覚神経を介して脳に伝達されるように投与することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載のエストロジェン分泌増進用組成物において、前記組成物の投与手段が飲食物による嗅覚神経を介して脳に伝達されるように投与することを特徴する。
本発明の第2の様態である請求項5の発明は、合成された1,8-シネオール又は天然物から単離、精製された1,8-シネオールを有効成分として含有してエストロジェンの分泌を増進させることを特徴するエストロジェン分泌芳香組成物である。
請求項6の発明は、請求項5に記載のエストロジェン分泌芳香組成物において、前記エストロジェンは、17β-エストラジオールであることを特徴とする。
本発明の第3の様態である請求項7の発明は、合成された1,8-シネオール又は天然物から単離、精製された1,8-シネオールを有効成分として含有してエストロジェンの分泌を増進させることを特徴するエストロジェン芳香用具である。
請求項8の発明は、請求項7に記載のエストロジェン分泌芳香用具において、前記エストロジェンは、17β-エストラジオールであることを特徴とする。
また、副次的効果として、特に黄体後期において、集中力、性欲、陽性/陰性感情、気分、不安の症状を改善でき、それによって、女性の不定愁訴症状の改善、アンチエージングをもたらす効果が期待できる。
また、本発明の組成物は、嗅覚神経を介する方法によって投与できるので、短時間で効果を発揮させることができ、また、血液を介さないので肝臓や腎臓等の臓器に副作用を及ぼさないという利点もある。
この1,8-シネオールは、別名ユーカリプトール (eucalyptol)と呼ばれる天然に存在する有機化合物(合成も可能であるが)で、環状エーテル構造を持つモノテルペノイドの一種であり、1,8-シネオールは他にリモネンオキシド、カジェプトール (cajeptol) とも呼ばれ、こころよい芳香と味を持つことから、食品添加物・香料・化粧品に利用され、下記のような構造式を有する。
(1)1,8-シネオールは、黄体後期(月経期も含む)の女性にみられるエストロジェン分泌の低下が原因の不快症状、及び出産後の女性の不快症状の改善に効果があると推定できる。また、エストロジェン分泌の低下が原因の不快症状は黄体後期(月経期も含む)の女性のみならず、出産後の女性、更年期の女性にもみられるが、このような女性の不快症状に対しても1,8-シネオールは有効であると推定できる。また、上述のアンチエージング効果があると推定できる。
(2)植物の精油(エッセンシャルオイル)を用いて症状の改善や健康維持を図る療法を一般にアロマテラピー(芳香治療、芳香療法)というが、この植物の精油(混合物)の代わりに、1,8-シネオール(精油に含まれる単一物質)を用いて、病気の治療を図ることも可能である。
従って、1,8-シネオールは、「エストロジェン分泌増進の芳香による症状の改善組成物」としても利用できると考えられる。
(3)上記(2)と同様に、器具や道具のような形態でも、1,8-シネオールによる症状の改善や健康維持は可能である。従って、1,8-シネオールは、「芳香による症状の改善用用具」としても利用できると考えられる。
(4)エストロジェン分泌増進用組成物(以下、「本発明の増進用組成物」という場合がある)
本発明のエストロジェン分泌増進用組成物は、1,8-シネオールを有効成分として含有するものである。
使用する1,8-シネオールは、天然物(例えば、ティートリー、ペパーミント、ユーカリ、ローズマリー等)などから抽出されたものでもよく、人工的に合成されたものであってもよい。また、1,8-シネオールは、試薬として既に販売されているのでそれを用いてもよい。
本発明のエストロジェン分泌芳香組成物は、その使用態様に応じて様々な組成で調製されるが、通常は、1,8-シネオール濃度が0.3〜3.75%で、好ましくは1.5%になるように、適当な溶媒、例えば、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ミネラルオイル、クエン酸トリエチル、エタノール、ベンジルベンゾエイトと混合することにより調製される。
一般には、アロマポット、ディフーザーを用いて、芳香浴としてその香りを吸入する。また、必要に応じて他の成分を加え、化粧品(スキンケア製品、香水等)、入浴剤、芳香剤、スプレー、マッサージオイル、シャンプー、洗濯洗剤などとして使用することもできる。
本発明のエストロジェン分泌芳香用具は、合成された1,8-シネオール又は天然物から単離、精製された1,8-シネオールを含有する部分を持つものである。
使用する1,8-シネオールは、芳香組成物と同様に、合成された又は天然物から単離、精製されたものを用いる。
また、飲食物を口に入れる前又は咀嚼中、通常その食品の匂いを嗅いでいる。従って、食品或いは飲料という形態でも1,8-シネオールはその効果を発揮でき、1,8-シネオールは女性の不定愁訴症状の改善用の飲食物としても利用できる。
飲食物の種類は限定されず、フレーバーティー、フレーバーコーヒー、フレーバービール、飴、ガム、ブレスケア、調味料などを例示できる。例えば、本発明の食品は、通常の食品の製造工程に、1,8-シネオールを添加する工程を追加することにより製造され、食品中の1,8-シネオールの含有量は、食品の種類により異なるが、通常は、0.3-3.75%程度が適量である。
芳香用具は、芳香に使用される器具、道具等であればどのようなものでもよく、生理用品、紙類、繊維製品(下着、ストキング等)、貼布薬、石鹸、ろうそく、枕、布団、などを例示することができる。
本発明の芳香用具は、植物の精油の代わりに1,8-シネオールを用いること以外は、一般の芳香用具と同様に製造することができる。
本発明のエストロジェン分泌増進用組成物の使用対象及び投与方法は、1,8-シネオールを、エストロジェンの低下を示す者に投与することを特徴とするものである。
1,8-シネオールの投与方法は特に限定されず、通常の医薬等と同様に経口的、経静脈的、経皮的に投与してもよいが、好ましくは、1,8-シネオールによる刺激が嗅覚神経を介して脳に伝達されるような手段で投与する。このような投与手段の一例としては、1,8-シネオールを含む空気を、エストロジェン分泌の低下を示す者に嗅がせる手段を例示することができる。このときの空気中の1,8-シネオールの量は厳密には計測できないが、芳香を発散する溶液の使用する1,8-シネオールの含有量は、例えば、プロピレングリコールを溶媒に用いた場合には、0.3〜3.75%の範囲が好ましく、1.5%程度がより好ましい。
〔実施例1〕
正常月経周期(26日〜34日)を回帰する精神的・身体的に健常な20代の非喫煙女性を対象として、1,8-シネオールを嗅いだ場合に生じるホルモン変化を調べた。
1−1.説明会
被験者には、事前に実験内容を説明して承諾を得てから、実験当日は匂いが強い食べ物や刺激物(ニンニク・タマネギ・香辛料・香草など)を朝から食べないようにし、実験開始30分前からは何も食べないようにしてもらうようにした。また、基礎体温を記載してもらい、排卵検査薬を用いて、排卵日(LHサージ)を確定してもらった。
被験者を月経周期により、卵胞期(月経開始後5-10日)、黄体後期(LHサージ後9-12日)の2グループに分けた。各々のグループの被験者に、1.5%の1,8-シネオールを含む溶媒(プロピレングリコール)又は溶媒のみを嗅がせ、実験開始前と実験開始20分後に唾液採取を行い、分泌されるエストロジェン(女性ホルモン)の内、最も作用が強い17βエストラジオール(E2)を酵素免疫測定法により測定した。
一定時間の反応後、プレート状の抗体に結合しているもの以外の溶液を捨て、酵素反応(発色する)を誘発する基質を添加する。こうすることで、発色は(B)の結合量を反映した色合いになる。この色合いは、吸光光度計による測定から定量化し、(A)が少なければ、(B)の方が抗体を多く取るので、発色の強さは強くなり、一方、(B)が多ければ、相対的に(B)が抗体を取る量が減り、発色の強さは弱くなる。こうした原理を利用して、別途、「既知の濃度の17βエストラジオール(標準検体)」を複数濃度測定し、検量線を算出しておくことで、発色の色合いから(A)「未知の濃度の17βエストラジオールを含む唾液検体」の濃度を算出した。
ペルオキシダーゼ(Hydrogen peroxidase,Horseradish peroxidase,HRP)
反応 色原性基質+H2O2 ⇔酸化型色素+2H2O
起源 西洋わさび(Horseradish)
分子量, 40,000,至適pH:pH6.5
基質特異性 色原性基質(水素供与体)については特異性はない.
過酸化物としてはH2O2, CH3OOH, C2H6OOHのみ
阻害剤と活性化剤 阻害剤:CN−,S−−,F−,N3−(抗凝固剤として用いられるフッ素イオン、保存料として用いられるNaN3を含有)
安定性 乾燥,冷蔵状態で数年間,水溶液で冷蔵1年間
[実施例1]
実施例1:1,8-シネオールの1.5%をプロピレングリコールで溶かしたものと、比較例1:コントロールとしてプロピレングリコール(PG)だけのものとを比較実験を行った。
被験者は卵胞期(Follicular Phase)6人、黄体後期(Late Luteal Phase)5人の全体で11人を対象とし、比較例1と実施例1のぞれぞれの実験結果を示す。
実施例1と比較例1の実験前と実験後の比較結果は、実施例1で分泌される17βエストラジオール(E2)は3.1pg/mlから3.4pg/mlに濃度が有意に増加した(対応のあるt検定、P<0.05)のに対して、比較例1は3.0pg/mlから3.0pg/mlで濃度に違いはなかった。
これらの変化量(嗅いだ後―嗅ぐ前)について比較(PG vs 1,8-Cineole)すると、コントロールのプロピレングリコール(PG)に比べ、17βエストラジオールの濃度(E2)が有意に増加した(対応のあるt検定、P<0.05)。
そのため、上述したように、溶媒のプロピレングリコール(PG)に、実施例1と同じ1.50%の1,8-シネオールを溶かしたものと、それより少ない0.30%を溶かしたもの、それより多い、3.75%と、7.50%を溶かしたものを、新たに3人ずつの黄体後期の被験者を対象に実験を行った。
その変化量の結果を図2に示して説明すると、17βエストラジオールの増加は、1,8-シネオール(Cineole)が1.50%の溶液の割合が有意に増加したことが判り、少なくとも0.30%から3.75%では17βエストラジオールの増加が認められ、逆に、7.50%では逆効果になることが判る。すなわち、0.30%〜3.75%の溶液でエストロジェン分泌増進効果が認められ、1.50%前後の溶液が好ましいことが判る。
この「集中力」の検証には、PC操作による認知課題であるANT(attention network task)テストを用いて、1.8-cineoleを嗅いだ前後の集中力の変化をPG(コントロール)の場合と比較を行った。
前述のANTは、ヒトの注意機能(実行機能、覚醒機能、注意定位機能)を、短時間で効率よく評価するために開発された検証手段である。ANTは、実験トライアルが開始されると、背景の中央に中心点が1000ms表示される。次に、“*”が手がかり刺激として表示される。手がかり刺激が呈示された500ms後に、5つの矢印の画像が注視点の上方もしくは下方に呈示される。被験者の課題は、5つの矢印のうち、中央の矢印の向きをテンキーのボタンでできるだけ素早く(RT:リアクションタイム)かつ正確に回答することである。
なお、中央の矢印をターゲット刺激、それ以外の4つの矢印をディストラクター刺激と呼ぶ。実験では、合計4条件の手がかり刺激条件が呈示される。まず、No Cue条件では、手がかり刺激は表示されない。次に、Central Cue条件では、注視点の位置すなわち画面中央に手がかり刺激が呈示される。Congruent Cue条件では、ターゲット刺激が呈示される位置に手がかり刺激が呈示される。すなわち、矢印が注視点の上方に呈示される場合は、手がかり刺激も注視点上方に呈示される。最後に、Incongruent Cue条件では、画面中央を横切る水平線に対して、ターゲット刺激とは対称な位置に手がかり刺激が呈示される。すなわち、ターゲット刺激が注視点の上方に呈示される場合、注視点を挟んでターゲット刺激とは逆の位置に手がかり刺激が呈示される。
[選択的注意能力(Conflicting Score)]
Incongruent Flanker条件のRT−Congruent Flanker条件のRTを調べた。これは、選択的注意能力の指標と考えられ、選択的注意能力が高いほど、Conflicting Scoreは小さくなるものと考えられる。
Unconscious Dot Probe課題は、ヒトの注意バイアスを評価するために開発された検証手段である。本実施例での実験では、課題に用いる視覚刺激に男性のヌード画像を用い、この画像に対する注意がどれだけ高いか(バイアス)が性欲を反映する指標と考え、測定を行った。ただし、刺激画像の呈示時間は17ms(知覚可能な閾値を下回る)で、閾値下(Uncoscious)でのDot Probe課題による測定を行った。
被験者の課題は、この傾いた縞模様がどちら向きに傾いていたかをテンキーのボタンでできるだけ素早く(RT(リアクションタイム)かつ正確に回答することである。例えば、男性のヌード画像に注意が向かっている程、縞模様の傾きを見落とすことになる為、正答率は低下することが期待される。そこで、この正答率を指標として、男性ヌード画像へのバイアスの強さを比較した。
これらの実験結果が図4のグラフであるが、本発明の実施例の1,8-シネオールを嗅いだ前後で、男性ヌード画像に対するバイアスが、コントロール(PG)に比べ、高まった。
これらの実験結果が図5のグラフであるが、本発明の実施例の1,8-シネオールを嗅いだ前後で、コントロール(PG)に比べ、ポジティブ感情が増加し、ネガティブ感情が低下した。
これらの実験結果が図6のグラフであるが、1,8-シネオール(1.5%)を嗅いだ前後で、本発明の1,8-シネオールの実施例はコントロール(PG)に比べ、肯定的作用としては、活力がやや高まり、不安、抑うつ、疲労感がやや減少した。これらの結果から、「活気」「不安」「抑うつ」「疲労感」の気分の改善に利用可能である。
STAIとは「状態不安」「特性不安」の2つの尺度から不安の状態及び特性の質問項目に答える検査である。
これらの実験結果の図14のグラフで説明すると、1,8-シネオールを嗅いだ前後で、コントロール(PG)に比べ、状態不安が減少した。
これらの各テストの結果から判るように、不安感の軽減利用可能である。
また、本発明の組成物は、嗅覚神経を介する方法によって投与できるので、短時間で効果を発揮させることができ、また、血液を介さないので肝臓や腎臓等の臓器に副作用を及ぼさないという利点もある。
Claims (8)
- 合成された1,8-シネオール又は天然物から単離、精製された1,8-シネオールを有効成分として含有するエストロジェンの分泌を増進させることを特徴とするエストロジェン分泌増進用組成物。
- 前記エストロジェンは、17β-エストラジオールであることを特徴とする請求項1に記載のエストロジェン分泌増進用組成物。
- 前記組成物の投与手段が、香料、精油、化粧品による嗅覚神経を介して脳に伝達されるように投与することを特徴とする請求項1又は2に記載のエストロジェン分泌増進用組成物。
- 前記組成物の投与手段が、飲食物による嗅覚神経を介して脳に伝達されるように投与することを特徴とする請求項1又は2に記載のエストロジェン分泌増進用組成物。
- 合成された1,8-シネオール又は天然物から単離、精製された1,8-シネオールを有効成分として含有してエストロジェンの分泌を増進させることを特徴するエストロジェン分泌芳香組成物。
- 前記エストロジェンは、17β-エストラジオールであることを特徴とする請求項5に記載のエストロジェン分泌芳香組成物。
- 合成された1,8-シネオール又は天然物から単離、精製された1,8-シネオールを有効成分として含有してエストロジェンの分泌を増進させることを特徴するエストロジェン芳香用具。
- 前記エストロジェンは、17β-エストラジオールであることを特徴とする請求項7に記載のエストロジェン分泌芳香用具。
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