JP2015010974A - Nmr用キラルシフト剤、および、それを用いた光学純度または絶対配置を決定する方法 - Google Patents

Nmr用キラルシフト剤、および、それを用いた光学純度または絶対配置を決定する方法 Download PDF

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Abstract


【課題】 アキラルな分子から構成されるNMR用キラルシフト剤、ならびに、それを用いて種々のキラルな物質の光学純度および絶対配置を核磁気共鳴分光法によって決定する方法を提供する。
【解決手段】 本発明のNMR用キラルシフト剤は、アキラルなオキソポルフィリノーゲンからなる。アキラルなポルフィリノーゲンは、キラルな物質と1対1で水素結合し、錯体となる。それにより、キラルな物質に関するキラルな情報(光学純度または絶対配置)がポルフィリノーゲンに転送され得、転送されたキラルな情報は、プロトン核磁気共鳴分光法によって容易に読み出すことができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、アキラルな分子から構成されるNMR用キラルシフト剤、および、それを用いて、種々のキラルな物質の光学純度および絶対配置を核磁気共鳴分光法によって決定する方法に関する。
キラルな物質は、香料、調味料、食品添加物、医薬品、農薬等で利用されている。キラルな物質は、その光学異性体によって生体に対する活性が著しく異なる場合がある。例えば、サリマイドのR体は優れた薬効を示すが、サリマイドのS体は重篤な薬害を引き起こすことが知られている。このように、キラルな物質を認識すること、すなわち、光学純度および絶対配置を求めることが重要である。
最近、キラルな物質を認識するためのNMR用キラルシフト剤として、オキソポルフィリノーゲンが開発されている(例えば、非特許文献1を参照。)。非特許文献1によれば、オキソポルフィリノーゲンのピロールのNHは、キラルな物質と錯体化する。このオキソポルフィリノーゲンとキラルな物質との錯体をプロトン核磁気共鳴分光法(プロトンNMR)にて測定すれば、キラルな物質の光学純度に応じて、NMRスペクトルのピークが分裂する、および/または、ピークがシフトする。例えば、ピーク分裂の幅とキラルな物質の光学純度との間には直線関係があるので、ピーク分裂の幅に基づいて、キラルな物質の光学純度を求めることができる。
しかしながら、非特許文献1に記載のNMR用キラルシフト剤であるオキソポルフィリノーゲンは、キラルな物質と1対2で錯体化するため、平衡モデルによるデータの解析が複雑であった。また、非特許文献1のオキソポルフィリノーゲンは、酸性のキラルな物質を認識できるのみであり、認識可能なキラルな物質に制限があった。したがって、種々のキラルな物質を認識でき、キラルな物質と1対1で錯体化するNMR用キラルシフト剤の開発が望まれる。
別のキラルな物質を認識するためのNMR用キラルシフト剤として、ポルフィリンが開発されている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1によれば、NMR用キラルシフト剤は、式(A)で示されるアキラルなポルフィリンからなる。このポルフィリンがジプロトン化され、キラルな物質と結合し、錯体化する。
しかしながら、特許文献1のポルフィリンもまた、キラルな物質と1対2で錯体化し、酸性のキラルな物質を認識できるのみである。したがって、種々のキラルな物質を認識でき、キラルな物質と1対1で錯体化するNMR用キラルシフト剤の開発が望まれる。
特願2010−216279
Shundoら,J.Am.Chem.Soc.,2009,131,9494−9495
以上より、本発明の課題は、キラルな物質と1対1で錯体化することのできるアキラルな分子から構成されるNMR用キラルシフト剤、ならびに、それを用いて種々のキラルな物質の光学純度および絶対配置を核磁気共鳴分光法によって決定する方法を提供することである。
本発明によるアキラルなオキソポルフィリノーゲンは、前記オキソポルフィリノーゲンが有する4つのピロール基のうち2つは、化学修飾によりブロックされており、前記オキソポルフィリノーゲンとキラルな物質とは、ブロックされていない2つのピロール基において、1対1で錯体化し、これにより上記課題を解決する。
前記オキソポルフィリノーゲンは、式(I)で示されてもよい。

ここで、X1およびX2は、前記化学修飾であり、それぞれ、ベンジル基、アルキル基、および、これらの誘導体からなる群から選択され、Y1〜Y8は、互いに同一または別異のアキラルな原子団およびアキラルな官能基からなる群から選択される。
前記X1およびX2は、別異または同一のベンジル基またはベンジル基の誘導体であってもよい。
前記アキラルな原子団は、水素原子およびハロゲン原子であってもよい。
前記アキラルな官能基は、直鎖状または分岐状のアルキル基、直鎖状または分岐状のハロゲン化アルキル基、エチレングリコール鎖、エチレングリコールのオリゴマー、ポリマー鎖、芳香族基、複素芳香族基、複素環基、エステル基、エーテル基、環状エーテル基、アミド基、アルケン、アルキン、ケトン基、アミン基、環状アミン基、アルコキシ基、ビニル基、チオエーテル基、スルホン基、シアノ基、ニトロ基およびそれらの誘導体であってもよい。
前記Y1〜Y8は、水素原子であってもよい。
本発明によるキラルな物質の光学純度を決定する方法は、少なくとも上述のNMR用キラルシフト剤と前記キラルな物質とを含む混合溶液を錯体化するステップと、前記錯体化された混合溶液の核磁気共鳴スペクトルを測定するステップと、前記錯体化された混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅を測定するステップと、前記ピーク分裂の幅に基づいて前記キラルな物質の光学純度を決定するステップとを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記光学純度を決定するステップに先立って、前記NMR用キラルシフト剤とエナンチオピュアなキラルな物質とを含む別の混合溶液を用いて、ピーク分裂の幅と前記キラルな物質の光学純度との間の関係式Δδ=Δδmax’×ee(ここで、Δδはピーク分裂の幅であり、Δδmax’は、前記NMR用キラルシフト剤と前記エナンチオピュアな前記キラルな物質との錯体の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅であり、eeは前記キラルな物質の光学純度)を求めるステップであって、前記別の混合溶液中の前記NMR用キラルシフト剤、前記キラルな物質、および、水の濃度は、前記混合溶液のそれらに一致する、ステップをさらに包含してもよい。
前記錯体化するステップは、10℃以上55℃以下の温度範囲で行ってもよい。
前記錯体化するステップにおいて、前記混合溶液中の前記NMR用キラルシフト剤に対する水の濃度は、100モル当量以下であってもよい。
前記錯体化するステップにおいて、前記混合溶液中の前記NMR用キラルシフト剤に対する前記キラルな物質は、10モル当量以上であってもよい。
前記決定するステップは、関係式Δδ=Δδmax×ee×pHG*(ここで、Δδは前記ピーク分裂の幅であり、Δδmaxは、前記NMR用キラルシフト剤とエナンチオピュアな前記キラルな物質との錯体の核磁気共鳴スペクトルにおける特性値であり、eeは前記キラルな物質の光学純度であり、pHG*は前記NMR用キラルシフト剤総量のうち、前記キラルな物質と錯体化したものの割合である)を用いてもよい。
本発明によるキラルな物質の絶対配置を決定する方法は、上述のNMR用キラルシフト剤と前記キラルな物質との第1の混合溶液を錯体化するステップと、前記第1の混合溶液にエナンチオピュアな前記キラルな物質を添加した第2の混合溶液を錯体化するステップと、前記錯体化された第1および第2の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルを測定するステップと、前記錯体化された第1の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ)と、前記錯体化された第2の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ)とを比較するステップとを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記第2の混合溶液を錯体化するステップに先立って、前記錯体化された第1の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅に基づいて、前記キラルな物質の光学純度を決定するステップをさらに包含してもよい。
前記第2の混合溶液を錯体化するステップは、前記エナンチオピュアな前記キラルな物質を、%ee/100当量(%eeは、前記キラルな物質の光学純度である)以下添加してもよい。
前記第2の混合溶液を錯体化するステップにおいて、前記エナンチオピュアな前記キラルな物質がR体であり、かつ、前記比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ<Δδ、Δδ=ΔδまたはΔδ>Δδを満たす場合、前記キラルな物質は、それぞれ、R体リッチなキラル混合物、R体のエナンチオピュア、または、S体リッチなキラル混合物もしくはS体のエナンチオピュアであると決定され、前記第2の混合溶液を錯体化するステップにおいて、前記エナンチオピュアな前記キラルな物質がS体であり、かつ、前記比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ<Δδ、Δδ=ΔδまたはΔδ>Δδを満たす場合、前記キラルな物質は、それぞれ、S体リッチなキラル混合物、S体のエナンチオピュア、または、R体リッチなキラル混合物もしくはR体のエナンチオピュアであると決定されてもよい。
前記第2の混合溶液を錯体化するステップにおいて、前記エナンチオピュアな前記キラルな物質がR体であり、かつ、前記比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ>Δδを満たす場合、前記第1の混合溶液に前記エナンチオピュアな前記キラルな物質としてS体を添加した第3の混合溶液を錯体化するステップと、前記錯体化された第3の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルを測定するステップと、前記錯体化された第1の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルのピーク分裂の幅(Δδ)と、前記錯体化された第3の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ)とをさらに比較するステップとをさらに包含してもよい。
前記さらに比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ<ΔδまたはΔδ=Δδを満たす場合、それぞれ、前記キラルな物質は、S体リッチなキラル混合物またはS体のエナンチオピュアであると決定されてもよい。
前記第2の混合溶液を錯体化するステップにおいて、前記エナンチオピュアな前記キラルな物質がS体であり、かつ、前記比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ>Δδを満たす場合、前記第1の混合溶液に前記エナンチオピュアな前記キラルな物質としてR体を添加した第3の混合溶液を錯体化するステップと、前記錯体化された第3の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルを測定するステップと、前記錯体化された第1の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ)と、前記錯体化された第3の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ)とをさらに比較するステップとをさらに包含してもよい。
前記さらに比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ<ΔδまたはΔδ=Δδを満たす場合、それぞれ、前記キラルな物質は、R体リッチなキラル混合物またはR体のエナンチオピュアであると決定されてもよい。
本発明によるNMR用キラルシフト剤は、アキラルなオキソポルフィリノーゲンからなり、オキソポルフィリノーゲンが有する4つのピロール基のうち2つは、化学修飾によりブロックされている。その結果、オキソポルフィリノーゲンとキラルな物質とは、ブロックされていない2つのピロール基において、1対1で錯体化する。アキラルなポルフィリノーゲンとキラルな物質とが1対1で錯体化しても、ジアステレオマーは形成されずに、鏡像異性体の立体対称性を維持し得る。このようなアキラルなオキソポルフィリノーゲンは、式(I)で表され、キラルな物質と1対1で錯体化することにより、キラルな物質に関するキラルな情報(光学純度または絶対配置)がオキソポルフィリノーゲンに転送され、転送されたキラルな情報は、プロトン核磁気共鳴によって容易に読み出すことができる。オキソポルフィリノーゲンとキラルな物質とは、式(I)中のピロール基により、水素結合で錯体化するので、種々のキラルな物質を認識するのに有利である。本発明によるNMR用キラルシフト剤は、酸性官能基を有するキラルな物質に加えて、アルコール、エステル、ケトン等の任意のキラルな物質に対してもキラルな情報をオキソポルフィリノーゲンに転送することができるので、汎用性が高い。
本発明によるキラルな物質の光学純度を決定する方法は、上記NMR用キラルシフト剤とキラルな物質との混合溶液を錯体化するステップを包含する。これにより、キラルな物質に関するキラルな情報がNMR用キラルシフト剤に転送される。本発明による光学純度を決定する方法は、上記錯体化された混合溶液のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定するステップと、ピーク分裂を測定するステップとをさらに包含する。本発明によれば、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定することによって、上記キラルな情報をピーク分裂の幅として容易に読み出すことができる。さらに、本発明による光学純度を決定する方法は、ピーク分裂の幅に基づいてキラルな物質の光学純度を決定するステップを包含する。本発明によれば、上記ピーク分裂の幅と上記キラルな情報の光学純度とは一定の関係にあるので、上記ピーク分裂の幅に基づいて光学純度を容易に決定できる。
本発明によるキラルな物質の絶対配置を決定する方法は、上記NMR用キラルシフト剤とキラルな物質との第1の混合溶液を錯体化するステップを包含する。これにより、キラルな物質に関するキラルな情報がNMR用キラルシフト剤に転送される。本発明による絶対配置を決定する方法は、第1の混合溶液にエナンチオピュアなキラルな物質を添加した第2の混合溶液を錯体化するステップをさらに包含する。これにより、キラルな物質に関するキラル情報に加えて、エナンチオピュアなキラルな物質に関するキラルな情報がNMR用キラルシフト剤に転送される。次いで、本発明による絶対配置を決定する方法は、錯体化された第1および第2の混合溶液のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定するステップを包含する。本発明によれば、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定することによって、上記キラルな情報を容易に読み出すことができる。さらに、本発明による絶対配置を決定する方法は、錯体化された第1の混合溶液のプロトン核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ/ppm)と、錯体化された第2の混合溶液のプロトン核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ/ppm)とを比較するステップを包含する。本発明によれば、ピーク分裂の幅のシフトと、キラルな情報の絶対配置とは一定の関係にあるので、上記ピーク分裂の幅の比較により絶対配置を容易に決定できる。
本発明によるオキソポルフィリノーゲンとキラルな物質との関係を示す図 本発明のオキソポルフィリノーゲンがキラルな物質と錯体化した場合の対称性の変化を示す図 キラルな物質の光学純度とオキソポルフィリノーゲンのNMRスペクトルのプロトンのピークとの例示的な関係(A)およびキラルな物質の光学純度とオキソポルフィリノーゲンのNMRスペクトルのプロトンのピーク分裂の幅との例示的な関係(B)を示す図 本発明による光学純度を決定するステップを示すフローチャート 本発明のNMR用キラルシフト剤における競合する結合モデルと、それに対応する典型的なプロトンNMRスペクトルの模式図とを示す図 本発明による絶対配置を決定するステップを示すフローチャート 第1の混合溶液および第2の混合溶液の例示的なNMRスペクトルを示す図 本発明による絶対配置を決定するさらなるステップを示すフローチャート 第1の混合溶液および第3の混合溶液の例示的なNMRスペクトルを示す図 21,N23−ビス(4−ブロモベンジル)−5,10,15,20−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキソシクロヘキサジエン−2,5−イリジン)ポルフィリノーゲンHを示す図 種々の被検物質を示す図 実施例1によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図 実施例2によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図 実施例3によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図 実施例4によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図 実施例5によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図 実施例6によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)〜(C)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(D)とを示す図 実施例7によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)〜(D)とを示す図 実施例8によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図 実施例9によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)〜(D)とを示す図 実施例10によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)〜(D)とを示す図 比較例11によるNMRスペクトルの水の濃度依存性を示す図 実施例1によるNMRスペクトルの温度依存性を示す図 実施例1による滴定実験のNMRスペクトル(A)と、ピーク分裂の幅の絶対配置依存性(B)とを示す図
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、同様の構成要素には同様の参照番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明によるNMR用キラルシフト剤について説明する。
本発明によるNMR用キラルシフト剤は、部分的に化学修飾されたアキラルなオキソポルフィリノーゲン(以降では単にオキソポルフィリノーゲンと称する)からなる。非特許文献1に記載の化学修飾されていないオキソポルフィリノーゲンは、キラルな物質と1対2で錯体化するが、本発明におけるオキソポルフィリノーゲンは、4つのピロール基の内2つが化学修飾によりブロックされているので、残り2つのピロール基において、認識されるべきキラルな物質と1対1で錯体化する。錯体化によりジアステレオマーは形成されずに、鏡像異性体の立体対称性を維持し得るので、特許文献1および非特許文献1に示されるような、キラルな物質と1対2で結合するNMR用キラルシフト剤とは異なる。
このようなオキシポルフィリノーゲンは、好ましくは、式(I)で示される。
ここで、X1およびX2は、上述の化学修飾であり、それぞれ、ベンジル基、アルキル基、および、これらの誘導体からなる群から選択される。Y1〜Y8は、互いに同一または別異のアキラルな原子団およびアキラルな官能基からなる群から選択される。このようなオキソポルフィリノーゲンであれば、キラルシフト剤として機能し得る。
より好ましくは、X1およびX2は、別異または同一のベンジル基またはベンジル基の誘導体である。これにより、図1を参照して後述するように、オキソポルフィリノーゲンが、キラルな物質と1対2で錯体化することを確実に防ぐことができる。なお、X1およびX2のいずれもベンジル基またはベンジル基の誘導体であってもよいし、X1がベンジル基であり、X2がベンジル基の誘導体であってもよいし、その逆であってもよい。しかしながら、製造の容易さからX1およびX2は同じ置換基が好ましい。
例示的なアキラルな原子団は、水素原子およびハロゲン原子である。
例示的なアキラルな官能基は、直鎖状または分岐状のアルキル基、直鎖状または分岐状のハロゲン化アルキル基、エチレングリコール鎖、エチレングリコールのオリゴマー、ポリマー鎖、芳香族基、複素芳香族基、複素環基、エステル基、エーテル基、環状エーテル基、アミド基、アルケン、アルキン、ケトン基、アミン基、環状アミン基、アルコキシ基、ビニル基、チオエーテル基、スルホン基、シアノ基、ニトロ基およびそれらの誘導体である。
本明細書において、直鎖状のアルキル基はメチル基またはエチル基を含むものとする。直鎖状または分岐状のアルキル基の誘導体は、末端が任意の置換基で置換された直鎖状または分岐状のアルキル基を含む。例示的な直鎖状または分岐状のハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基、塩素化アルキル基、臭化アルキル基、ヨウ化アルキル基である。芳香族基の誘導体は、任意の置換基で置換された芳香族基を含む。複素芳香族基の誘導体は、任意の置換基で置換された複素芳香族基を含む。複素環基の誘導体は、任意の置換基で置換された複素環基を含む。
上記アキラルな原子団およびアキラルな官能基の中でも、Y1〜Y8が水素原子であるオキソポルフィリノーゲンは、製造および入手が容易であり、後述するプロトンNMRスペクトルにおいてダブレット(ピーク分裂)が明瞭であるため好ましい。より具体的には、上記式(I)において、X1およびX2がベンジル基またはベンジル基の誘導体であり、Y1〜Y8が水素原子である、N,N’−二置換オキソポルフィリノーゲンがある。
なお、本発明によるNMR用キラルシフト剤として具体的なアキラルなポルフィリノーゲンを示したが、これらは好適なポルフィリノーゲンの例示に過ぎず、当業者であれば、上述のX1〜X2およびY1〜Y8から適宜選択し、設計可能であることに留意されたい。ただし、実施の形態2で詳述するように、プロトン核磁気共鳴分光法(プロトンNMR)によるスペクトルを解析する際のスペクトルが複雑にならないように、X1〜X2およびY1〜Y8を選択するのが好ましい。
本発明におけるオキソポルフィリノーゲンは、市販の安価な化学試薬から3段階の合成反応にて大量に製造できる。また、Hill,J.P.らのEur.J.Org.Chem.2893−2902(2005)およびHill,J.O.らのJ.Org.Chem.69,5861−5869(2004)等を参照して、製造することもできる。
次に、本発明によるオキソポルフィリノーゲンがNMR用キラルシフト剤として機能し得る原理について説明する。
図1は、本発明によるオキソポルフィリノーゲンとキラルな物質との関係を示す図である。
図1(A)は、式(I)においてX1およびX2がベンジル基であるオキソポルフィリノーゲン100の模式図である。図1(B)は、オキソポルフィリノーゲン100がキラルな物質110と錯体化している模式図である。
図1(B)に示すように、本発明によるオキソポルフィリノーゲン100は、その片側(図では下側)において、ピロール基によりキラルな物質110と水素結合で錯体化している。一方、もう方側(図では上側)には、X1およびX2であるベンジル基がキラルな物質と錯体化することを遮蔽している。その結果、本発明によるオキソポルフィリノーゲン100は、キラルな物質110と1対1で水素結合により錯体化する。すなわち、本発明によるオキソポルフィリノーゲン100は、ジアステレオマーを形成せずに、鏡像異性体の立体対称性を維持し得る。キラルな物質110は、カルボン酸、アルコール、エステル、ケトン、保護アミノ酸など任意のキラルな物質であり得る。
本発明のオキソポルフィリノーゲン100は、キラルな物質と錯体化することにより、対称性が変化する。この変化により、プロトンNMRにおいて共鳴周波数の違いが生じ、これに基づいてキラルな物質を認識できる。
図2は、本発明のオキソポルフィリノーゲンがキラルな物質と錯体化した場合の対称性の変化を示す図である。
図2(A)に示すように、オキソポルフィリノーゲンがキラルな物質と錯体化していない場合、オキソポルフィリノーゲンの、例えば、N−アルキル化ピロールβ−H(H、H)は、プロキラルな関係(すなわち、同じ環境)にあり、対称性を有しているため、プロトンNMRでは同じ共鳴周波数を有する。すなわち、HおよびHは、プロトンNMRスペクトルにおいてシングレットである。なお、オキソポルフィリノーゲンがキラルな物質と錯体化しているが、キラルな物質がラセミ体である場合も、同様に、N−アルキル化ピロールβ−H(H、H)は、時間平均すると、対称性を有しているため、プロトンNMRでは同じ共鳴周波数を有する。
一方、図2(B)に示すように、オキソポルフィリノーゲンがラセミ体でないキラルな物質と錯体化している場合、オキソポルフィリノーゲンのN−アルキル化ピロールβ−H(H、H)は、例えば、アミン基に近いプロトンHと、メチル基に近いプロトンHとに区別され得、対称性が異なるため、プロトンNMRでは異なる共鳴周波数を有する。すなわち、HおよびHは、プロトンNMRスペクトルにおいてダブレットである。
ここで、オキソポルフィリノーゲンに、R体のエナンチオピュア、ラセミ体、および、S体のエナンチオピュアなキラルな物質がそれぞれ錯体化する場合を想定する。
上述したように、図2(A)のように、キラルな物質がラセミ体である場合、N−アルキル化ピロールβ−H(H、H)に結合したキラルな物質はR体からS体へ、S体からR体へ高速交換するが、高速交換によって対称性の違いは平均化される。したがって、オキソポルフィリノーゲンがラセミ体のキラルな物質と結合すると、N−アルキル化ピロールβ−Hの化学シフトは、1つの値に収束し、シングレットとなる。
一方、図2(B)に示すように、キラルな物質がR体のエナンチオピュア(R−100%ee)である場合、磁気的環境の非等価性により、N−アルキル化ピロールβ−Hは、シングレットからダブレットへとスプリットされ、低磁場および高磁場シフト(化学シフト)する。図示しないが、キラルな物質がS体のエナンチオピュア(S−100%ee)である場合も同様に、N−アルキル化ピロールβ−Hは、シングレットからダブレットへとスプリットされ、低磁場および高磁場シフトするが、図2(B)のピーク位置は反転する。すなわち、本発明のオキソポルフィリノーゲンは、キラルな物質の光学純度ならびに絶対配置によって、プロトンの化学シフトおよびダブレットが変化し得る。
ここでは、N−アルキル化ピロールβ−Hを例示したが、これに限らない。例えば、ヘミキノイドオルト−H、NHピロールβ−H等のプロトンのピークも、同様に、光学純度に依存してシングレットからダブレットへと変化し、絶対配置に依存して化学シフトする。なお、上述したアキラルな原子団およびアキラルな官能基を有するアキラルなオキソポルフィリノーゲンであれば、同様の対称性の変化を生じさせるプロトンを有する。
図1および図2を参照して説明したように、キラルな物質は、本発明によるアキラルなオキソポルフィリノーゲンと錯体化して、そのアキラルなオキソポルフィリノーゲンの化学的な環境を変化させる。その変化した化学的な環境は、キラルな物質の光学純度および絶対配置に応じた対称性の差異をオキソポルフィリノーゲンに生じさせ、プロトンのピーク分裂の幅によって確認できる。したがって、本発明によるオキソポルフィリノーゲンは、任意のキラルな物質に対してNMR用キラルシフト剤として機能し得る。
なお、キラルな物質によってアキラルなオキソポルフィリノーゲンの化学的な環境を変化させること(対称性を変化させること)、ならびに、化学的な環境の変化(対称性の変化)の程度を認識することを、本明細書では、それぞれ、「キラルな物質に関するキラルな情報のアキラルなオキソポルフィリノーゲンへの転送」、ならびに、「アキラルなオキソポルフィリノーゲンからキラルな物質に関するキラルな情報の読出」ということもある。
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明したNMR用キラルシフト剤を用いて、キラルな物質の光学純度を決定する方法について説明する。
実施の形態1で説明したように、アキラルなオキソポルフィリノーゲンからなるNMR用キラルシフト剤にキラルな物質を反応させると、オキソポルフィリノーゲンのピロール基のプロトンは、キラルな物質と水素結合により錯体化する。その結果、キラルな物質は、オキソポルフィリノーゲンの化学的環境を変化させ、キラルな物質に関するキラルな情報(光学純度)がオキソポルフィリノーゲンに転送される。このような錯体のプロトンのピークは、錯体化したキラルな物質の光学純度に応じて、シングレットまたはダブレットとなり得る。さらにそのダブレットの幅(すなわち、ピーク分裂の幅)もまた、キラルな物質の光学純度に依存している。したがって、このような錯体のプロトン核磁気共鳴スペクトル(以降では単にNMRスペクトルと称する)を測定することによって、オキソポルフィリノーゲンに転送されたキラルな物質に関するキラルな情報(光学純度)を読み出すことができる。
図3は、キラルな物質の光学純度とオキソポルフィリノーゲンのNMRスペクトルのプロトンのピークとの例示的な関係(A)およびキラルな物質の光学純度とオキソポルフィリノーゲンのNMRスペクトルのプロトンのピーク分裂の幅との例示的な関係(B)を示す図である。
図3(A)に示すように、キラルな物質の光学純度に応じて、オキソポルフィリノーゲンのプロトンは、シングレットからダブレットまで変化し得る。図3(A)では、光学純度(%ee)をS体0%(すなわちラセミ体)、20%、40%、60%、80%および100%まで変化させたキラルな物質と錯体化したオキソポルフィリノーゲンのプロトンの例示的なダブレット、および、光学純度R体100%のキラルな物質と錯体化したオキソポルフィリノーゲンのプロトンの例示的なダブレットを示す。
図3(A)に例示的に示すピークから得られるピーク分裂の幅(Δδ/ppm)と、光学純度(%ee)とをプロットすると、図3(B)に示すように、ピーク分裂の幅と光学純度とは直線関係にある。このような関係を検量線として用いることで、ピーク分裂の幅から光学純度を求めることができる。
直線関係について詳述する。オキソポルフィリノーゲン(単にHとも呼ぶ)の結合等温式は、Hとキラルな物質Gまたは水分子Wとの1対1の結合モデル式(1a)および(1b)によって与えられる。式(1a)および(1b)に記載のKHG*およびKHWは、それぞれ、HとGとが錯体化(H・G)される際の結合平衡定数、および、HとWとが錯体化(H・W)される際の結合平衡定数である。
なお、図5を参照して後述するように、H・G、HおよびH・W間の平衡交換過程はNMRのタイムスケールよりも十分に早く、NMRシグナルは平均化される。
式(1a)および(1b)における結合平衡定数の定義より、各結合平衡定数および、物質収支式は、式(2)で表わされる。ここで、[H]、[Gおよび[W]は、それぞれ、H、G*およびWの総濃度を表わす。[HG]および[HW]は、それぞれの錯体の濃度である。
式(3)において、pHG*、pおよびpは、それぞれ、Hの総量のうち、キラルな物質Gと結合したH、何も結合していないフリーなHおよび水分子と結合したHの割合(モル分率等の濃度)である。
H・G、H、H・W間の平衡交換が早いため、実際にNMRで観測されるピロールNHの化学シフト値(δNH)は、H・G、H、H・Wの濃度に依存した平均値となり、式(4)で表わされる。ここで、NHδHG*NHδおよびNHδHWは、それぞれ、H・G、H、H・WにおけるピロールNHの化学シフト値である。
δNH=pHG*×NHδHG*+p×NHδ+pHW×NHδHW・・・・・・(4)
結合位置がR体またはS体のキラルな物質によって占有される確率は、光学純度(%ee:0〜100)の関数として式(5a)および(5b)で与えられる。
(ee)=[G]t/([G]t+[G]t)=(1+ee)/2・・・(5a)
(ee)=[G]t/([G]t+[G]t)=(1−ee)/2・・・(5b)
eeは、%ee/100であり、[G]tおよび[G]tは、それぞれ、R体およびS体のキラルな物質の総濃度である。
オキソポルフィリノーゲンHにキラルな物質G*が結合すると、図2で説明したように、本来等価であるH内の2つのプロトンHとH(例えばN−アルキル化ピロールβ−H)とに磁気異方性を与える。この際に得られる2つのプロトンHとHとの化学シフト値は、式(6a)〜(6b)で与えられる。
βδHG*,AβδA,R(ee)+βδA,S(ee)・・・(6a)
βδHG*,BβδB,R(ee)+βδB,S(ee)・・・(6b)
ここで、βδHG*,AβδHG*,Bとは、それぞれ、早い平衡交換過程において観測されるHとHとの化学シフト値である。βδA,RβδA,Sとは、それぞれ、エナンチオピュアなR体とS体とが結合した際のHの化学シフト値である。同様に、βδB,RβδB,Sとは、それぞれ、エナンチオピュアなR体およびS体が結合した際のHの化学シフト値である。対称性から、βδA,RβδB,SβδA,SβδB,Rである。
フリーなHの存在と、HとWから成る錯体H・Wの存在とを考慮すると、観測されるHおよびHの化学シフトであるβδおよびβδは、式(7a)〜(7b)で表わされる。
βδ=pHG*×βδHG*A+p×βδ+pHW×βδHW・・・(7a)
βδ=pHG*×βδHG*B+p×βδ+pHW×βδHW・・・(7b)
ここで、βδおよびβδHWは、それぞれ、フリーなH、および、HとWとから成る錯体H・WのN−アルキルピーロールβ−Hの化学シフトである。対称性から、βδおよびβδHWの値は、HおよびHの区別がない。
以上を考慮したうえで、キラルな物質G*の添加によって引き起こされるオキソポルフィリノーゲンHのピーク分裂の幅Δδ(=βδβδ)は、ΔδmaxβδA,RβδB,Rと定義すると、式(8)で表わされる。Δδmaxは、Hとエナンチオピュアなキラルな物質G*との錯体における特性値(プロトンの最大化学シフト差)である。
Δδ=Δδmax×ee×pHG*・・・・・・・・・(8)
このように、ピーク分裂の幅は、pHG*を固定すれば、図3(B)に示すように、キラルな物質の光学純度に対して直線関係にあり、式(8)を検量線として用いることができる。
なお、式(8)において、pHG*値が同じであれば、キラルな物質の光学純度R体20%、40%、60%、80%および100%のプロトンのダブレットは、それぞれ、S体20%、40%、60%、80%および100%のプロトンのダブレット(ピーク分裂の幅Δδ)と同一となる。
図4は、本発明による光学純度を決定するステップを示すフローチャートである。
ステップS410:本発明のNMR用キラルシフト剤とキラルな物質(被検物質)との混合溶液を錯体化する。なお、本明細書では、「混合溶液を錯体化する」とは、混合溶液中のNMR用キラルシフト剤とキラルな物質とが水素結合によって錯体化することを意図する。
ここで、NMR用キラルシフト剤は、実施の形態1で詳述したため説明を省略する。被検物質であるキラルな物質は、酸性官能基を有するキラルな物質、アルコール、エステル、ケトン等の任意のキラルな物質であり、制限はない。酸性官能基とは、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン基および水酸基からなる群から選択される官能基である。
混合溶液において、少なくとも、NMR用キラルシフト剤の濃度、キラルな物質の濃度、および、含有される水の濃度を求めておくとよい。なお、後述するように、水が多いと、正しく測定できない場合があるので、水の濃度は、100モル当量以下が好ましい。
混合により、NMR用キラルシフト剤のオキソポルフィリノーゲンと被検物質とが錯体化し、被検物質に関するキラルな情報がNMR用キラルシフト剤に転送される。この錯体化は、好ましくは、10℃以上55℃以下、好ましくは室温(20℃以上35℃以下)の温度で行われる。これにより、オキソポルフィリノーゲンと被検物質との間の錯体化が促進され、被検物質が結合したオキソポルフィリノーゲンである錯体を確実に生成することができる。
好ましくは、混合溶液中のNMR用キラルシフト剤に対する水の濃度は、100モル当量以下である。これは、本発明のNMR用キラルシフト剤は、水分子と水素結合することによりピークシフトを生じるが、水分子が多すぎることにより、ピーク分裂の幅が小さくなり、正しく判定できない場合があるためである。図5を参照して、詳述する。
図5は、本発明のNMR用キラルシフト剤における競合する結合モデルと、それに対応する典型的なプロトンNMRスペクトルの模式図とを示す図である。
図5aは、NMR用キラルシフト剤が、キラルな物質を含有する水溶液中でとり得る3つの状態(510、520、530)を模式的に示している。図5aにおいて、対象とするプロトンをA、BおよびXで示す。図5bは、NMR用キラルシフト剤のピロールNH共鳴(H)の変化を示す模式図である。図5cは、NMR用キラルシフト剤のN−アルキル化ピロールβ−H共鳴(HおよびH)の変化を示す模式図である。図5bおよびcにおいて、矢印は、プロトンNMRスペクトルにおける実際の化学シフトの位置を示す。
図5aに示すように、水溶液中では、NMR用キラルシフト剤が水素結合していない状態510と、NMR用キラルシフト剤がキラルな物質Gと水素結合した状態520と、NMR用キラルシフト剤が水分子Wと水素結合した状態530とが共存しているが、これら3つの状態の平均の状態540が測定されることになる。
図5bに示すように、状態510では、ピロールNHのスペクトルはシフトしない。一方、状態520および530では、ピロールNHのスペクトルは、いずれもシフトする。状態520および530におけるシフト量は異なり得る。プロトンNMR測定をすると、これらの平均の状態としてシフトしたピロールNHのピーク550が得られる。
図5cに示すように、状態510では、N−アルキル化ピロールβ−Hのスペクトルはシフトも分裂もしない。しかしながら、状態520では、N−アルキル化ピロールβ−Hのスペクトルはシフトし、かつ、分裂する。一方、状態530では、N−アルキル化ピロールβ−Hのスペクトルはシフトするが分裂しない。状態520および530のシフト量は異なるとともに、シフト方向も異なり得る。プロトンNMR測定をすると、これらの平均の状態としてシフトしかつ分裂したN−アルキル化ピロールβ−Hのピーク560が得られる。
したがって、プロトンNMR測定において、キラルな物質の光学純度を精度よく決定するためには、N−アルキル化ピロールβ−Hのピーク560の分裂が観察される必要がある。すなわち、状態510、520および530の平衡を状態520に偏らせることにより、状態530による影響を少なくし、正しく分裂を測定できる。混合溶液中のNMR用キラルシフト剤に対する水の濃度を、100モル当量以下とすれば、状態530による影響を少なくできる。
また、好ましくは、被検物質をNMR用キラルシフト剤に対して少なくとも10モル当量混合する。これにより、光学純度の決定に十分な量の錯体が得られるので、精度よく光学純度を決定できる。なお、上限は特にないが、オキソポルフィリノーゲンのNMRスペクトルが感度良く検出できるように留意する必要がある。
ステップS420:ステップS410で得られた錯体化した混合溶液のプロトン核磁気共鳴スペクトル(NMRスペクトル)を測定する。
ステップS430:ステップS420で得られたNMRスペクトルのピーク分裂の幅を測定する。これらステップS420およびS430により、単にNMRスペクトルを測定するだけで、キラルな情報をピーク分裂の幅として容易に読み出すことができる。
ステップS440:ステップS430で得られたピーク分裂の幅に基づいて被検物質であるキラルな物質の光学純度を決定する。光学純度の決定には、2通りあるが、いずれも上述の式(8)を用いる。
第1の方法は、データベースが、被検物質と同じキラルな物質の特性値Δδmax(プロトンの最大化学シフト差)、NMR用キラルシフト剤と被検物質とが錯体化される際の結合平衡定数KHG*、および、NMR用キラルシフト剤と水とが錯体化される際の結合平衡定数KHWを有している場合である。この場合、ステップS410で求めた各種濃度とこれらのデータとから式(8)におけるpHG*が求められるので、ステップS430で測定したΔδ、データベースにあるΔδmax、および、求めたpHG*を式(8)に代入すれば、光学純度を求めることができる。
詳細な導出は次のとおりである。上述の式(2)から式(9a)〜(9c)が得られる。
[H](1+KHG*[G]+KHW[W])−[H]=0・・・(9a)
[G](1+KHG*[H])−[G]=0・・・・・・・・・(9b)
[W](1+KHW[H])−[W]=0・・・・・・・・・・(9c)
式(9)にNewton法を適用することにより、解として式(10a)〜(10c)が得られる。
式(10c)を解くと、有効な解として式(11)が得られる。
すなわち、データベースが有するKHG*およびKHW、ならびに、ステップS410で求めた各種濃度([H]、[G、[W])があれば、式(11)から[H]を算出できる。続いて、式(10a)に算出した[H]を代入すれば、[HG]が算出でされる。これら算出した[H]および[HG]を、式(3)に代入すれば、pHG*が求められる。次に、データベースが有する特性値Δδmaxと、求めたpHG*と、ステップS430で得られたピーク分裂の幅Δδとを式(8)に代入すれば、光学純度(ee)を求めることができる。
第2の方法は、データベースが、被検物質と同じキラルな物質の特性値Δδmax(プロトンの最大化学シフト差)、NMR用キラルシフト剤と被検物質とが錯体化される際の結合平衡定数KHG*、および、NMR用キラルシフト剤と水とが錯体化される際の結合平衡定数KHWを有していない場合である。この場合、ステップS440に先立って、被検物質と同じキラルな物質のうちエナンチオピュアなキラルな物質を用いて、ピーク分裂の幅を求め、図3(B)に示す検量線を作成する、キャリブレーションを行ってもよい。
詳細には、キャリブレーションに用いるNMR用キラルシフト剤と被検物質との混合溶液の濃度は、ステップS410で求めた、NMR用キラルシフト剤の濃度、キラルな物質の濃度、および、含有される水の濃度と同一となるように調整される。これにより、ステップS410における混合溶液から算出されるpHG*と、キャリブレーションにおける混合溶液から算出されるpHG*とが同一の値となるため、式(8)を次式(8’)とみなすことができる。
Δδ=Δδmax’×ee・・・・・・・・・(8’)
式(8’)において、Δδmax’は、キャリブレーションにおける混合溶液のピーク分裂の幅(ppm)であり、Δδは、ステップS430で測定したピーク分裂の幅(ppm)である。
キャリブレーションで求めた検量線(すなわち、式(8’))にステップS430で測定したΔδを代入すれば、光学純度(ee)を求めることができる。
以上説明してきたように、実施の形態2による光学純度を決定する方法は、NMR用キラルシフト剤と被検物質であるキラルな物質との混合溶液を錯体化するステップと、混合溶液のNMRスペクトルを測定するステップと、ピーク分裂を測定するステップと、ピーク分裂の幅に基づいてキラルな物質の光学純度を決定するステップとを包含する。錯体化により、被検物質に関するキラルな情報がNMR用キラルシフト剤に転送される。転送されたキラルな情報は、プロトンNMRにおけるピーク分裂の幅として容易に読み出され、上記ピーク分裂の幅に基づいて光学純度を容易に決定できる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1で説明したNMR用キラルシフト剤を用いて、キラルな物質の絶対配置を決定する方法について説明する。
図6は、本発明による絶対配置を決定するステップを示すフローチャートである。
ステップS610:本発明のNMR用キラルシフト剤とキラルな物質(被検物質)との第1の混合溶液を錯体化する。
ここで、NMR用キラルシフト剤は、実施の形態1で詳述したため説明を省略する。混合により、NMR用キラルシフト剤のオキソポルフィリノーゲンと被検物質とが水素結合により錯体化し、被検物質に関するキラルな情報がNMR用キラルシフト剤に転送される。ステップS610は、実施の形態2で詳述したステップS410(図4)と同様であるため、説明を省略する。
ステップS620:第1の混合溶液に、S体またはR体のエナンチオピュアなキラルな物質を添加した第2の混合溶液を錯体化する。S体またはR体のエナンチオピュアなキラルな物質は、被検物質と同じキラルな物質のうちS体またはR体のエナンチオピュアな物質である。ここでもやはり、添加および錯体化の手順は、ステップS410(図4)と同様である。ステップS620により、被検物質と、エナンチオピュアなキラルな物質とを合わせたキラルな情報がNMR用キラルシフト剤に転送されることになる。
ステップS620は、被検物質に、エナンチオピュアなキラルな物質が添加されることによって、意図的に光学純度を変化させることを目的としている。またエナンチオピュアなキラルな物質の添加量は、意図的な絶対配置の変化量を制御するため少量がよい。添加量が多すぎると、絶対配置の変化量が大きくなりすぎ、NMRスペクトルから変化量を正しく読み取れない場合がある。具体的には、図3を参照して説明したように、ピーク分裂の幅は、キラルな物質の絶対配置に係わらず光学純度が同じであれば、同じ値となる。したがって、添加量が多すぎると、本来S体(またはR体)のキラルな物質のピーク分裂として読みとるべき情報が、R体(またはS体)のキラルな物質のピーク分裂として誤って読み取ってしまう、逆転現象を引き起こす。
被検物質の光学純度が既知である場合、エナンチオピュアなキラルな物質の添加量は、好ましくは、第1の混合溶液に含まれている被検物質の総量と比較して%ee/100モル当量(%eeは、ステップS610で用いる被検物質であるキラルな物質の光学純度である)以下である。これにより、逆転現象を確実に防ぐことができる。添加量の下限は特に設けない。なお、被検物質の光学純度が不明である場合、ステップS620に先立って、第1の混合溶液のプロトン核磁気共鳴スペクトル(NMRスペクトル)を測定し、そのピーク分裂の幅に基づいて、被検物質の光学純度を決定してもよい。このようなキラルな物質(被検物質)の光学純度の決定は、実施の形態2に詳述したとおりである。
ステップS630:錯体化された第1の混合溶液および第2の混合溶液のNMRスペクトルを測定する。錯体化された第1の混合溶液(以降では、単に第1の混合溶液と称する)のNMRスペクトルの測定と、錯体化された第2の混合溶液(以降では、単に第2の混合溶液と称する)のNMRスペクトルの測定とを、同時に行ってもよいし、上述したように、光学純度を決定するために、第1の混合溶液のNMRスペクトルをステップS620に先立って測定してもよい。ステップS630により、第1の混合溶液および第2の混合溶液におけるキラルな情報を読み出すことができる。
図7は、第1の混合溶液および第2の混合溶液の例示的なNMRスペクトルを示す図である。
NMRスペクトル710および720は、それぞれ、第1の混合溶液および第2の混合溶液のNMRスペクトルである。図7は、ステップS630で得られる例示的なパターンを示し、本発明の方法を採用すればいずれかのパターンが得られる。図7(A)は、NMRスペクトル710のピーク分裂の幅(Δδ)が、NMRスペクトル720のそれ(Δδ)よりも狭い(Δδ<Δδ)パターンである。図7(B)は、NMRスペクトル710のピーク分裂の幅(Δδ)が、NMRスペクトル720のそれ(Δδ)よりも広い(Δδ>Δδ)パターンである。図7(C)は、NMRスペクトル710のピーク分裂の幅(Δδ)とNMRスペクトル720のそれ(Δδ)とが一致する(Δδ=Δδ)パターンである。
図7(A)および図7(B)の場合、第1の混合溶液におけるキラルな物質(被検物質)の光学純度と、第2の混合溶液におけるそれとが異なることが分かる。一方、図7(C)の場合、第1の混合溶液におけるキラルな物質の光学純度と、第2の混合溶液におけるそれとが同一であることが分かる。
ステップS640:第1の混合溶液のNMRスペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ/ppm)と、第2の混合溶液のNMRスペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ/ppm)とを比較する。本発明によれば、ピーク分裂の幅の変化と、キラルな情報の絶対配置とは一定の関係にあるので、上記ピーク分裂の幅の比較により被検物質の絶対配置を容易に決定できる。
したがって、図7のパターンおよびステップS620で用いたエナンチオピュアなキラルな物質の絶対配置を考慮すれば、ステップS640において、ピーク分裂の幅の比較によって被検物質の絶対配置を決定する場合分けは(1)〜(6)の6通りと導ける。
(1)ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がR体であり、かつ、ステップS640においてピーク分裂の幅の関係がΔδ<Δδ(図7(A))である場合、被検物質は、R体リッチなキラル混合物であると決定される。
(2)ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がR体であり、かつ、ステップS640においてピーク分裂の幅の関係がΔδ=Δδ(図7(C))である場合、被検物質は、R体のエナンチオピュアであると決定される。
(3)ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がR体であり、かつ、ステップS640においてピーク分裂の幅の関係がΔδ>Δδ(図7(B))である場合、被検物質は、S体リッチなキラル混合物またはS体のエナンチオピュアであると決定される。
(4)ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がS体であり、かつ、ステップS640においてピーク分裂の幅の関係がΔδ<Δδ(図7(A))である場合、被検物質は、S体リッチなキラル混合物であると決定される。
(5)ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がS体であり、かつ、ステップS640においてピーク分裂の幅の関係がΔδ=Δδ(図7(C))である場合、被検物質は、S体のエナンチオピュアであると決定される。
(6)ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がS体であり、かつ、ステップS640においてピーク分裂の幅の関係がΔδ>Δδ(図7(B))である場合、被検物質は、R体リッチなキラル混合物またはR体のエナンチオピュアであると決定される。
以上の(1)〜(6)を表1にまとめる。
(3)および(6)の場合において、被検物質の光学純度が不明であれば、被検物質が、S体(R体)リッチなキラル混合物であるか、または、S体(R体)のエナンチオピュアであるかを判別できない。(3)および(6)の場合、絶対配置を決定するさらなるステップを行う。
図8は、本発明による絶対配置を決定するさらなるステップを示すフローチャートである。
ステップS810:ステップS810は、ステップS640(図6)に続いて行われる。ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がR体である場合、第1の混合溶液にS体のエナンチオピュアなキラルな物質を添加した第3の混合溶液を錯体化する。ステップS810により、被検物質と、S体のエナンチオピュアなキラルな物質とを合わせたキラルな情報がNMR用キラルシフト剤に転送されることになる。
ここでもやはり、添加および錯体化の手順は、実施の形態2で詳述したステップS410(図4)と同様である。なお、ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がS体である場合、ステップS810ではR体のエナンチオピュアなキラルな物質が添加されることに留意されたい。
ステップS820:錯体化された第3の混合溶液(以降では、単に第3の混合溶液と称する)のNMRスペクトルを測定する。これにより第3の混合溶液におけるキラルな情報を読み出すことができる。
図9は、第1の混合溶液および第3の混合溶液の例示的なNMRスペクトルを示す図である。
NMRスペクトル910および920は、それぞれ、第1の混合溶液および第3の混合溶液のNMRスペクトルである。なお、NMRスペクトル910は、図7に示すNMRスペクトル710と同一である。図9は、ステップS820で得られる例示的なパターンを示し、本発明の方法を採用すればいずれかのパターンが得られる。図9(A)は、NMRスペクトル910のピーク分裂の幅(Δδ)が、NMRスペクトル920のそれ(Δδ)よりも狭い(Δδ<Δδ)パターンである。なお、逆は起こり得ない。図9(B)は、NMRスペクトル910のピーク分裂の幅(Δδ)とNMRスペクトル920のそれ(Δδ)とが一致する(Δδ=Δδ)パターンである。
図9(A)の場合、第1の混合溶液におけるキラルな物質(被検物質)の光学純度と、第3の混合溶液におけるそれとが異なることが分かる。一方、図9(B)の場合、第1の混合溶液における被検物質の光学純度と、第3の混合溶液におけるそれとが同一であることが分かる。
ステップS830:第1の混合溶液のNMRスペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ/ppm)と、第3の混合溶液のNMRスペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ/ppm)とを比較する。
したがって、図9のパターン、および、ステップS620およびS810で用いたエナンチオピュアなキラルな物質の絶対配置の組み合わせを考慮すれば、ステップS830において、ピーク分裂の幅の比較によって被検物質の絶対配置を決定する場合分けは(7)〜(10)の4通りである。
(7)上述の(3)の場合(つまり、ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がR体であり、かつ、ステップS640においてピーク分裂の幅の関係がΔδ>Δδ(図7(B))である場合)は、ステップS810においてエナンチオピュアなキラルな物質がS体であり、かつ、ステップS830においてピーク分裂の幅の関係がΔδ<Δδ(図9(A))であれば、被検物質は、S体リッチなキラル混合物であると決定される。
(8)上述の(3)の場合(つまり、ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がR体であり、かつ、ステップS640においてピーク分裂の幅の関係がΔδ>Δδ(図7(B))である場合)は、ステップS810においてエナンチオピュアなキラルな物質がS体であり、かつ、ステップS830においてピーク分裂の幅の関係がΔδ=Δδ(図9(B))であれば、被検物質は、S体のエナンチオピュアであると決定される。
(9)上述の(6)の場合(つまり、ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がS体であり、かつ、ステップS640においてピーク分裂の幅の関係がΔδ>Δδ(図7(B))である場合)は、ステップS810においてエナンチオピュアなキラルな物質がR体であり、かつ、ステップS830においてピーク分裂の幅の関係がΔδ<Δδ(図9(A))であれば、被検物質は、R体リッチなキラル混合物であると決定される。
(10)上述の(6)の場合(つまり、ステップS620においてエナンチオピュアなキラルな物質がS体であり、かつ、ステップS640においてピーク分裂の幅の関係がΔδ>Δδ(図7(B))である場合)は、ステップS810においてエナンチオピュアなキラルな物質がR体であり、かつ、ステップS830においてピーク分裂の幅の関係がΔδ=Δδ(図9(B))である場合、被検物質は、R体のエナンチオピュアであると決定される。
以上の(7)〜(10)を表2にまとめる。
以上説明してきたように、実施の形態3による絶対配置を決定する方法は、NMR用キラルシフト剤と被検物質であるキラルな物質との第1の混合溶液を錯体化するステップと、第1の混合溶液にエナンチオピュアなキラルな物質を添加した第2の混合溶液を錯体化するステップと、第1および第2の混合溶液のNMRスペクトルを測定するステップと、第1の混合溶液のNMRスペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ/ppm)と、錯体化された第2の混合溶液のNMRスペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ/ppm)とを比較するステップとを包含する。錯体化によって、被検物質およびエナンチオピュアなキラルな物質に関するキラルな情報がNMR用キラルシフト剤に転送される。NMRスペクトルを測定することによって、上記キラルな情報を容易に読み出すことができる。ピーク分裂の幅のシフトと、キラルな情報の絶対配置とは一定の関係にあるので、上記ピーク分裂の幅の比較により、被検物質の絶対配置を容易に決定できる。
実施の形態1〜3では、キラルな物質のRS表記法(R、S、rac(ラセミ))についてのみ詳述したが、DL表記法(D、L、DL(ラセミ))あるいはプラスマイナス表記法(+、−、±(ラセミ))についても同様である。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[実施例1]
実施例1では、NMR用キラルシフト剤としてN21,N23−ビス(4−ブロモベンジル)−5,10,15,20−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキソシクロヘキサジエン−2,5−イリジン)ポルフィリノーゲン(いわゆる、N,N’−二置換オキソポルフィリノーゲン、以降では単にHと称する)を、キラルな物質(被検物質)としてイブプロフェン(以降では単に1aと称する)を用いた。
図10は、N21,N23−ビス(4−ブロモベンジル)−5,10,15,20−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキソシクロヘキサジエン−2,5−イリジン)ポルフィリノーゲンHを示す図である。
図11は、種々の被検物質を示す図である。
図10のHは、式(I)においてX1およびX2がベンジル基の誘導体であるブロモベンジルであり、Y1〜Y8が水素原子である。また、Hは、ピロールNH1010、NHピロールβ−H1020、ヘミキノノイドオルト−H1030、1040、N−アルキル化ピロールβ−H1050、ベンジル−H1060、1070を有する。Hは、Hill,J.P.らのEur.J.Org.Chem.2893−2902(2005)およびHill,J.O.らのJ.Org.Chem.69,5861−5869(2004)に記載の手順にしたがって合成した。
図11の1aは、イブプロフェンであり、カルボン酸である酸性官能基を有する。イブプロフェン(R体、ならびに、S体およびラセミ体)は、それぞれ、ナカライテスク株式会社および東京化成工業株式会社から入手した。
S体およびラセミ体の1aを用いて、所定の光学純度を有するキラルな物質を調製した。所定の光学純度は、rac−0%ee(ラセミ体)、S−20%ee、S−40%ee、S−60%ee、S−80%ee、S−100%ee、および、R−100%eeであった。
種々の光学純度の1aとHとの混合溶液を用いて、HのNMR用キラルシフト剤としての有効性、ならびに、光学純度の決定方法の有効性を確認した。まず、Hと1aとの混合溶液を錯体化した。具体的には、HをNMR管内で重溶媒である重クロロホルム(Cambridge Isotope Laboratory Inc.)に溶解させ、次いで、被検物質としてキラルな物質である1aを直接NMR管内に注入した。
実施例1では、各光学純度の1aに対して、2種類の濃度のNMR用試料を調製した。2種類の試料において、混合溶液中のHに対する1aの濃度および混合溶液中のHに対する水の濃度の組み合わせは、460モル当量および15モル当量、ならびに、50モル当量および18モル当量であった。1aの濃度460モル当量の混合溶液において、重クロロホルムの濃度は0.68mMであった。1aの濃度50モル当量において、重クロロホルムの濃度は0.77mMであった。
次に、錯体化された混合溶液のプロトン核磁気共鳴分光スペクトル(NMRスペクトル)を測定した。測定には、300.4MHzで動作するAL300BX分光計(JEOL)を用い、25℃で行った。なお、すべてのNMRスペクトルはテトラメチルシランを標準物質とした。結果を図12に示し、後述する。図12および結合モデルから被検物質の特性値を算出した。結果を表4に示す。
次に、錯体化する好適な温度を調べるため、H(重クロロホルム:0.6mM)と、1a(S−100%ee、408モル当量)とを、50.4℃、28.3℃、5.7℃、−13.3℃および−32.4℃でそれぞれ混合し、NMRスペクトルを測定した。測定結果を図23に示し、後述する。
Hと1aとの混合溶液を用いた滴定実験により、絶対配置の決定方法の有効性を確認した。Hと1a(R−100%ee、122モル当量)との混合溶液を調製し、これにエナンチオピュアなキラルな物質としてS−100%eeの1aを順次添加し、都度、混合溶液のNMRスペクトルを測定した。
具体的には、HをNMR管内で重溶媒である重クロロホルム(0.72mM)に溶解させ、次いで、1a(R−100%ee、122モル当量)を直接NMR管内に注入した。このとき、混合溶液中のHに対する水の濃度は12.5モル当量であった。ここに、S−100%eeの1aを、3モル当量、20モル当量、35モル当量、15モル当量、30モル当量、70モル当量、35モル当量、10モル当量、60モル当量、295モル当量、385モル当量および490モル当量の順に添加し、都度、混合溶液のNMRスペクトルを測定した。最終的に、R−100%eeの1aとS−100%eeの1aとの合計濃度(混合溶液中のHに対する1aの濃度)が、1780モル当量まで添加した。結果を図24に示し、後述する。
[実施例2]
実施例2では、NMR用キラルシフト剤としてHを、被検物質として2−フェニルプロピオン酸(以降では1bと称する)を用いた。
図11の1bは、2−フェニルプロピオン酸であり、カルボン酸である酸性官能基を有する。1b(R体およびラセミ体)は、それぞれ、和光純薬工業株式会社および東京化成工業株式会社から入手した。
R体およびラセミ体の1bを用いて、所定の光学純度を有するキラルな物質を調製した。所定の光学純度は、rac−0%ee(ラセミ体)、R−25%ee、R−50%ee、R−75%ee、および、R−100%eeであった。
実施例1と同様の手順で、種々の光学純度の1bとHとの混合溶液を用いて、NMRスペクトルの測定、ならびに、被検物質の特性値を算出した。実施例2では、混合溶液中のHに対する1bの濃度および混合溶液中のHに対する水の濃度が、1380モル当量および47モル当量であった。重クロロホルムの濃度は0.68mMであった。結果を図13および表4に示し後述する。実施例1と同様の手順で、Hと1bとの混合溶液を用いた滴定実験を行った。
[実施例3]
実施例3では、NMR用キラルシフト剤としてHを、被検物質としてN−boc−フェニルグリシン(以降では1cと称する)を用いた。
図11の1cは、N−boc−フェニルグリシンであり、カルボン酸である酸性官能基を有する。1c(L体およびD体)は、いずれも、東京化成工業株式会社から入手した。ラセミ体DLは、L体およびD体から調製した。
L体、D体およびラセミ体の1cを用いて、所定の光学純度を有するキラルな物質を調製した。所定の光学純度は、DL−0%ee(ラセミ体)、L−25%ee、L−50%ee、L−75%ee、L−100%、および、D−100%eeであった。
実施例1と同様の手順で、種々の光学純度の1cとHとの混合溶液を用いて、NMRスペクトルの測定、ならびに、被検物質の特性値を算出した。実施例3では、混合溶液中のHに対する1cの濃度および混合溶液中のHに対する水の濃度が、2460モル当量および16モル当量であった。重クロロホルムの濃度は0.68mMであった。結果を図14および表4に示し後述する。実施例1と同様の手順で、Hと1cとの混合溶液を用いた滴定実験を行った。
[実施例4]
実施例4では、NMR用キラルシフト剤としてHを、被検物質としてN−boc−フェニルアラニン(以降では1dと称する)を用いた。
図11の1dは、N−boc−フェニルアラニンであり、カルボン酸である酸性官能基を有する。1d(L体およびD体)は、いずれも、東京化成工業株式会社から入手した。ラセミ体DLは、L体およびD体から調製した。
L体、D体およびラセミ体の1dを用いて、所定の光学純度を有するキラルな物質を調製した。所定の光学純度は、DL−0%ee(ラセミ体)、L−25%ee、L−50%ee、L−75%ee、L−100%、および、D−100%eeであった。
実施例1と同様の手順で、種々の光学純度の1dとHとの混合溶液を用いて、NMRスペクトルの測定、ならびに、被検物質の特性値を算出した。実施例4では、混合溶液中のHに対する1dの濃度および混合溶液中のHに対する水の濃度が、300モル当量および17.5モル当量であった。重クロロホルムの濃度は0.69mMであった。結果を図15および表4に示し後述する。実施例1と同様の手順で、Hと1dとの混合溶液を用いた滴定実験を行った。
[実施例5]
実施例5では、NMR用キラルシフト剤としてHを、被検物質としてロイシン酸(以降では1eと称する)を用いた。
図11の1eは、ロイシン酸であり、カルボン酸である酸性官能基を有する。1e(L体およびDL体)は、いずれも、東京化成工業株式会社から入手した。
L体およびラセミ体の1eを用いて、所定の光学純度を有するキラルな物質を調製した。所定の光学純度は、DL−0%ee(ラセミ体)、L−25%ee、L−50%ee、L−75%ee、および、L−100%であった。
実施例1と同様の手順で、種々の光学純度の1eとHとの混合溶液を用いて、NMRスペクトルの測定、ならびに、被検物質の特性値を算出した。実施例5では、混合溶液中のHに対する1eの濃度および混合溶液中のHに対する水の濃度が、330モル当量および17.4モル当量であった。重クロロホルムの濃度は0.69mMであった。結果を図16および表4に示し後述する。実施例1と同様の手順で、Hと1eとの混合溶液を用いた滴定実験を行った。
[実施例6]
実施例6では、NMR用キラルシフト剤としてHを、被検物質として2−フェノキシ−プロピオン酸メチルエステル(以降では2aと称する)を用いた。
図11の2aは、2−フェノキシ−プロピオン酸メチルエステルである。R体およびS体の2aは、それぞれ、R体の2−フェノキシプロピオン酸(和光純薬工業株式会社)およびS体の2−フェノキシプロピオン酸(和光純薬工業株式会社)からカルボン酸のエステル化により合成した。具体的には、2−フェノキシプロピオン酸(1.0g)とヨウ化メタン(5モル当量)と炭酸カリウム(10モル当量)とをアセトン(100mL)中で2時間還流させた。次いで、アセトンを減圧下で除去し、残渣をシリカゲルカラム(展開溶媒:ジクロロメタン)に通し、無色の液体である2aを得た。ラセミ体racは、R体およびS体から調製した。
R体、S体およびラセミ体の2aを用いて、所定の光学純度を有するキラルな物質を調製した。所定の光学純度は、rac−0%ee(ラセミ体)、R−20%ee、R−40%ee、R−60%ee、R−80%ee、R−100%ee、および、S−100%であった。
実施例1と同様の手順で、種々の光学純度の2aとHとの混合溶液を用いて、NMRスペクトルの測定、ならびに、被検物質の特性値を算出した。実施例6では、各光学純度の2aに対して、3種類の濃度のNMR用試料を調製した。実施例6では、混合溶液中のHに対する2aの濃度が、130モル当量、370モル当量および740モル当量であった。重クロロホルムの濃度は0.68mMであった。結果を図17および表4に示し後述する。実施例1と同様の手順で、Hと2aとの混合溶液を用いた滴定実験を行った。
[実施例7]
実施例7では、NMR用キラルシフト剤としてHを、被検物質としてバリンメチルエステル(以降では2bと称する)を用いた。
図11の2bは、バリンメチルエステルである。D体およびL体の2bは、それぞれ、D体のバリンメチルエステル塩酸塩(東京化成工業株式会社)およびL体のバリンメチルエステル塩酸塩(東京化成工業株式会社)から塩酸塩の中和により合成した。具体的には、バリンメチルエステル塩酸塩を純水に溶解させ、過剰の炭酸カリウム水溶液(pH=12)を用いて中和させた。水溶液を3回ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下でジクロロメタンをろ過および除去し、白色固体の2bを得た。ラセミ体DLは、D体およびL体から調製した。
D体、L体およびラセミ体の2bを用いて、所定の光学純度を有するキラルな物質を調製した。所定の光学純度は、DL−0%ee(ラセミ体)、L−25%ee、L−50%ee、L−75%ee、L−100%ee、および、D−100%であった。
実施例1と同様の手順で、種々の光学純度2bとHとの混合溶液を用いて、NMRスペクトルの測定、ならびに、被検物質の特性値を算出した。実施例7では、混合溶液中のHに対する2bの濃度および混合溶液中のHに対する水の濃度が、3000モル当量および38.7モル当量であった。重クロロホルムの濃度は0.68mMであった。結果を図18および表4に示し後述する。実施例1と同様の手順で、Hと2bとの混合溶液を用いた滴定実験を行った。
[実施例8]
実施例8では、NMR用キラルシフト剤としてHを、被検物質としてアトロピン(ヒヨスチアミンとも呼ばれる。以降では2cと称する)を用いた。
図11の2cは、アトロピンである。L体およびラセミ体の2cは、いずれも、東京化成工業株式会社から入手した。
L体およびラセミ体の2cを用いて、所定の光学純度を有するキラルな物質を調製した。所定の光学純度は、DL−0%ee(ラセミ体)、L−25%ee、L−50%ee、L−75%ee、および、L−100%eeであった。
実施例1と同様の手順で、種々の光学純度の2cとHとの混合溶液を用いて、NMRスペクトルの測定、ならびに、被検物質の特性値を算出した。実施例8では、混合溶液中のHに対する2cの濃度および混合溶液中のHに対する水の濃度が、835モル当量および19モル当量であった。重クロロホルムの濃度は0.68mMであった。結果を図19および表4に示し後述する。実施例1と同様の手順で、Hと2cとの混合溶液を用いた滴定実験を行った。
[実施例9]
実施例9では、NMR用キラルシフト剤としてHを、被検物質としてメントール(以降では3aと称する)を用いた。
図11の3aは、メントールであり、アルコールの一種である。+体のメントールおよび−体の3aは、それぞれ、Sigma−Aldrich Co. LLC.および和光純薬工業株式会社から入手した。ラセミ体±は、+体および−体の3aから調製した。
+体、−体およびラセミ体の3aを用いて、所定の光学純度を有するキラルな物質を調製した。所定の光学純度は、(±)−0%ee(ラセミ体)、(−)−25%ee、(−)−50%ee、(−)−75%ee、(−)−100%ee、および、(+)−100%eeであった。
実施例1と同様の手順で、種々の光学純度の3aとHとの混合溶液を用いて、NMRスペクトルの測定、ならびに、被検物質の特性値を算出した。実施例9では、混合溶液中のHに対する3aの濃度が、840モル当量であった。重クロロホルムの濃度は0.68mMであった。結果を図20および表4に示し後述する。実施例1と同様の手順で、Hと3aとの混合溶液を用いた滴定実験を行った。
[実施例10]
実施例10では、NMR用キラルシフト剤としてHを、被検物質としてショウノウ(以降では4aと称する)を用いた。
図11の4aは、ショウノウであり、ケトンの一種である。+体の4aおよび−体の4aは、それぞれ、東京化成工業株式会社および和光純薬工業株式会社から入手した。ラセミ体±は、+体および−体の4aから調製した。
+体、−体およびラセミ体の4aを用いて、所定の光学純度を有するキラルな物質を調製した。所定の光学純度は、(±)−0%ee(ラセミ体)、(−)−25%ee、(−)−50%ee、(−)−75%ee、(−)−100%ee、および、(+)−100%eeであった。
実施例1と同様の手順で、種々の光学純度の4aとHとの混合溶液を用いて、NMRスペクトルの測定、ならびに、被検物質の特性値を算出した。実施例10では、混合溶液中のHに対する4aの濃度およびHに対する水の濃度が、490モル当量および17モル当量であった。重クロロホルムの濃度は0.68mMであった。結果を図21および表4に示し後述する。実施例1と同様の手順で、Hと4aとの混合溶液を用いた滴定実験を行った。
[比較例11]
比較例10では、NMR用キラルシフト剤としてHを、キラルな物質でない被検物質として水を用いた。
Hに水を最大188モル当量追加し、適宜、NMRスペクトルを測定した。また、被検物質の特性値を算出した。結果を図22および表4に示し後述する。
以上の実施例および比較例1〜11の条件を表3にまとめる。
図12は、実施例1によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図である。
図12(A)は、1aの濃度が460モル当量の場合のNMRスペクトルの光学純度依存性を示す。図12(A)に示すピーク1210は、N−アルキル化ピロールβ−H1050(図10)のピークに相当する。図12(A)によれば、ピーク1210は、1aの光学純度が増大するにつれて、明瞭なダブレットとなった。さらに、そのダブレットの幅Δδ(ピーク分裂の幅)もまた、1aの光学純度が増大するにつれて、増大した。このことから、1aのキラルな情報は、N−アルキル化ピロールβ−H1050に転送され、読み出すことができることを確認した。なお、図示しないが、1aの濃度が50モル当量の場合も同様の傾向を示した。
図12(B)は、図12(A)に示されるピーク1210について、各光学純度におけるピーク分裂の幅をプロットした図である。図12(B)によれば、ピーク分裂の幅と光学純度との間に線形関係があることが分かる。
図12(B)に示す460モル当量の直線についてR乗値を求めたところ、R=0.997であり、限りなく1に近かった。さらに、この線形関係から式(8)を求めたところ、Δδ=0.22×ee×0.54と導出された。ここで、0.22は、特性値Δδmax(Hとイブプロフェンとが錯体化する際の最大化学シフト差)であり、pHG*は、0.54であった。したがって、図12(B)に示す直線は式(8)を満たしており、これを検量線として用いて、未知の光学純度(%ee)を求めることができることを示す。
同様に、1aの濃度が50モル当量についても、ピーク分裂の幅と光学純度との間に線形関係があり、R乗値は0.994であった。なお、光学純度(%ee)を高精度(±3%ee)に求めるためには、NMRスペクトルをフィッティングし、次いで、ピーク分裂の幅(Δδ/ppm)を測定することが望ましい。
また、図12(A)において、Hの濃度、1aの濃度、および、含有される水の濃度を一定にし、S体の1aのピーク1210とR体の1aのそれとのピーク分裂の幅を測定したところ、いずれも同じ値であった。このことから、キラルな物質とNMR用キラルシフト剤との錯体から得られるピーク分裂の幅は、キラルな物質の絶対配置にかかわらず、光学純度に応じて決まることが確認された。
図12では、N−アルキル化ピロールβ−Hのピークに基づいて検量線を求めたが、NHピロールβ−H1020、ヘミキノノイドのオルト−H1030、1040等のピークに基づいて検量線を求めてもよい。
ここで、図12(B)に示される1aとHとのN−アルキル化ピロールβ−Hについて検量線が得られており、かつ、光学純度が未知である1aの光学純度を求める場合を想定する。
Hと、光学純度が未知である1aとの混合溶液を室温で錯体化する(図4のステップS410)。ここで、Hに対する1aの濃度は460モル当量であり、Hに対する水の濃度は、15モル当量であると想定する。次いで、錯体化された混合溶液のプロトン核磁気共鳴NMRスペクトル(NMRスペクトル)を測定する(図4のステップS420)。得られたNMRスペクトルのN−アルキル化ピロールβ−Hのピーク分裂の幅Δδ(ppm)を測定する(図4のステップS430)。ピーク分裂の幅は0.07であったとする。次いで、ピーク分裂の幅に基づいて光学純度(%ee)を決定する(図4のステップS440)。
具体的な光学純度の決定手順は次のとおりである。R体のエナンチオピュアな1aとHとの混合溶液を調製し、室温で錯体化し、この混合溶液のNMRスペクトルを測定し、キャリブレーションを行う。混合溶液において、Hに対する1aの濃度と、Hに対する水の濃度は、それぞれ、460モル当量および15モル当量となるように調整する。キャリブレーションで得られたΔδmax’(ppm)は、0.11であったとする。このΔδmax’(ppm)は光学純度100ee%における化学シフトである。
(%ee,Δδ)の座標系に、(100,0.11)および(0,0)をプロットし、式(8’)を満たす図12(B)の検量線1220を求める。次に、ステップS430で得られたΔδ(=0.07ppm)を検量線1220に適用すれば、1aの光学純度が62.5ee%であると求めることができる。
なお、ここでは、キャリブレーションを想定したが、これに限らない。例えば、後述する表4を参照し、式(8)のpHG*を求めて、光学純度を決定してもよい。
図13は、実施例2によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図である。
図14は、実施例3によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図である。
図15は、実施例4によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図である。
図16は、実施例5によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図である。
図17は、実施例6によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)〜(C)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(D)とを示す図である。
図18は、実施例7によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)〜(D)とを示す図である。
図19は、実施例8によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)とを示す図である。
図20は、実施例9によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)〜(D)とを示す図である。
図21は、実施例10によるNMRスペクトルの光学純度依存性(A)と、光学純度とピーク分裂の幅との関係(B)〜(D)とを示す図である。
図22は、比較例11によるNMRスペクトルの水の濃度依存性を示す図である。
図13〜図21によれば、いずれも、図12と同様の結果が得られた。図17(A)〜(C)は、それぞれ、2aの濃度が130モル当量、370モル当量および740モル当量であるNMRスペクトルを示しており、これらから得られた図17(D)の線形関係のR乗値は、いずれも、0.998よりも大きく、検量線として有効であることを確認した。
図18(A)に示すピーク1810〜1830、および、図20(A)に示すピーク2010〜2030は、それぞれ、ヘミキノイドのオルト−H1030、1040(図10)およびN−アルキル化ピロールβ−H1050(図10)のピークに相当する。図18(B)〜(D)、ならびに、図20(B)〜(D)は、それぞれ、ピーク1820、1810および1830、ならびに、ピーク2020、2010および2030に基づいてプロットされた光学純度とピーク分裂の幅との関係である。一方、図21(A)に示すピーク2110〜2130は、それぞれ、NHピロールのβ−H1020(図10)およびヘミキノイドのオルト−H1030、1040(図10)のピークに相当する。図21(B)〜(D)は、それぞれ、ピーク2130、2120および2110に基づいてプロットされた光学純度とピーク分裂の幅との関係である。図18、図20および図21によれば、N−アルキル化ピロールβ−Hのピーク以外にも、ヘミキノイドのオルト−Hのピーク、あるいは、NHピロールのβ−Hのピークを用いても、検量線を得ることができることが分かった。
図22(A)および(B)は、それぞれ、ピロールNH1010(図10)およびN−アルキル化ピロールβ−H1050(図10)のピーク位置の水の濃度依存性を示す。図22(A)によれば、水の濃度が増大するにつれて、ピークシフトすることが分かる。このことは、図5を参照して説明したように、本発明のNMR用キラルシフト剤と被検物質とを含む混合溶液中の水の量によっては、NMRスペクトルの中にはピークシフトの影響を受けるピークがあり得ることを示唆する。また、図22(B)によれば、水の濃度が増大しても、ピークは分裂しなかった。このことから、本発明のNMR用キラルシフト剤は、キラルな物質に対してのみピークをダブレットにすることが示された。
表4には、Hと被検物質とが錯体化される際の結合定数KHG*、N−アルキル化ピロールβ−Hのピークの最大分裂幅(特性値)Δδmax、および、ピロールNH1010の最大化学シフトNHδHG*を示す。
表4中の被検物質1aの理論値は、密度汎関数理論を用いて算出した。1aのΔδmaxの値は、すべての配位ならびにすべてのN−アルキル化ピロールβ−Hについて平均化した値である。被検物質4aのΔδmaxは、7.033ppmにおけるヘミキノイドオルト−H共鳴ピークの値である。なお、水については、KHG*およびNHδHG*に代えて水の結合定数KHWおよびNHδHWの値を記載している。H単体のピロールNH1010の化学シフトNHδは、7.86(±0.40)ppmであった。
表4によれば、結合定数KHG*、N−アルキル化ピロールβ−Hのピークの最大分裂幅Δδmax、および、ピロールNH1010の最大化学シフトNHδHG*をデータベース化することで、エナンチオピュアなキラル物質を用いた検量線の作成を必要とせずに、式(8)を用いて検体の光学純度を算出することも可能である。
以上より、本発明によるアキラルなオキソポルフィリノーゲンのNMR用キラルシフト剤として有効性、ならびに、それを用いた光学純度を決定する方法の有効性が確認された。また、種々の実施例で用いたキラルな物質から、本発明のNMR用キラルシフト剤は、酸性官能基を有するキラルな物質だけでなく、アルコール、エステル、ケトン等の任意のキラルな物質に対して用いることができることが確認された。
図23は、実施例1によるNMRスペクトルの温度依存性を示す図である。
図23(A)に示すピーク2310は、N−アルキル化ピロールβ−H1050(図10)のピークに相当する。図23(B)は、図23(A)のピーク2310の分裂幅の温度依存性を示す。
図23(A)および(B)によれば、ピーク分裂の幅は、温度が低温になればなるほど小さくなり、測定温度が室温において最大となり、測定温度が室温を超えて高温になるほど小さくなる傾向を示す。図23(B)によれば、10℃以上55℃以下、好ましくは、20℃以上35℃以下であれば、温度に影響を受けることなく、ピーク分裂の幅を測定できる。
このことから、本発明のNMR用キラルシフト剤とキラルな物質との混合(図4のステップS410、図6のステップS610、S620、図8のステップS810)は、少なくとも、10℃以上55℃以下で行うことが好ましいことが分かった。また、混合溶液において形成されたNMR用キラルシフト剤とキラルな物質との錯体を維持させるため、当然ながら、混合溶液のNMRスペクトルの測定(図4のステップS420、図6のステップS630、図8のステップS820)もまた室温で行うことが好ましい。
図24は、実施例1による滴定実験のNMRスペクトル(A)と、ピーク分裂の幅の絶対配置依存性(B)とを示す図である。
図24(A)に示すピーク2410は、N−アルキル化ピロールβ−H1050(図10)のピークに相当する。図24(B)は、図24(A)のピーク2410の分裂幅をプロットした絶対配置依存性を示す。図24(A)において、NMRスペクトルaが、R−100%eeの1aをHと混合した混合溶液のNMRスペクトルであり、NMRスペクトルbが、これにS−100%eeのイブプロフェン(3モル当量)を添加した混合溶液のNMRスペクトルであり、NMRスペクトルcが、これにS−100%eeのイブプロフェン(20モル当量)を添加した混合溶液のNMRスペクトルであり、同様に、NMRスペクトルd〜mは、順次S−100%eeのイブプロフェンを添加した際のNMRスペクトルである。図24(B)において、−1はR−100%eeを示し、0はrac−0%ee(ラセミ体)を示し、1はS−100%eeを示す。
図24(A)によれば、ピーク2410は、滴定が進むにつれて、ピークシフトするとともに、ダブレットからシングレットへ、その後、ダブレットへと変化した。図24(B)によれば、ピーク2410の分裂幅Δδは、ラセミ体で0になり、R−100%eeへ近づくにつれ、あるいは、S−100%eeへ近づくにつれ、増大した。なお、図示しないが、実施例2〜10による滴定実験の結果も同様の傾向を示すことを確認した。
ここで、光学純度が100%eeであり、絶対配置が未知である1aの絶対配置を求める場合を想定する。
Hと1a(100%ee)との第1の混合溶液を室温にて錯体化する(図6のステップS610)。第1の混合溶液にエナンチオピュアなキラルな物質としてS−100%eeの1aを添加した第2の混合溶液を錯体化する(図6のステップS620)。これらの第1および第2の混合溶液のNMRスペクトルを測定する(図6のステップS630)。
第1の混合溶液のNMRスペクトルが、ピーク分裂の幅Δδ1aを有するスペクトルaであり、第2の混合溶液のNMRスペクトルが、ピーク分裂の幅Δδ2dを有するスペクトルdであったと仮定する。これらのピーク分裂の幅を比較する(図6のステップS640)。ピーク分裂の幅Δδ1aとΔδ2dとの関係は、Δδ1a>Δδ2dとなる。
表1を参照すると、この想定では、場合(6)に相当し、求めるべき1aの絶対配置は、R体リッチなキラル混合物またはR体のエナンチオピュアであることが分かる。この想定では、光学純度が100%eeであることが分かっているため、1aの絶対配置はR体のエナンチオピュアである決定できる。なお、図6のステップS610で用いたキラルな物質(ここでは、1a)の光学純度が不明な場合には、表2を参照し、図8の方法を行えば、R体リッチなキラル混合物またはR体のエナンチオピュアのいずれかを決定できることは言うまでもない。
以上より、本発明によるアキラルなオキソポルフィリノーゲンを用いた絶対配置を決定する方法の有効性が確認された。
本発明によるNMR用キラルシフト剤は、アキラルなオキソポルフィリノーゲンからなる。本発明によるNMR用キラルシフト剤を用いれば、医薬品等のキラルな物質の光学純度および絶対配置をプロトン核磁気共鳴スペクトルのピーク分裂から容易に判定できる。アキラルなオキソポルフィリノーゲンは、被検体のキラリティーに影響を与える可能性がないため、不斉合成や不斉増幅反応のモニタリングに応用可能である。
100 アキラルなオキソポルフィリノーゲン
110 キラルな物質

Claims (20)

  1. アキラルなオキソポルフィリノーゲンからなり、
    前記オキソポルフィリノーゲンが有する4つのピロール基のうち2つは、化学修飾によりブロックされており、
    前記オキソポルフィリノーゲンとキラルな物質とは、ブロックされていない2つのピロール基において、1対1で錯体化する、NMR用キラルシフト剤。
  2. 前記オキソポルフィリノーゲンは、式(I)で示される、請求項1に記載のNMR用キラルシフト剤。

    ここで、
    X1およびX2は、前記化学修飾であり、それぞれ、ベンジル基、アルキル基、および、これらの誘導体からなる群から選択され、
    Y1〜Y8は、互いに同一または別異のアキラルな原子団およびアキラルな官能基からなる群から選択される、NMR用キラルシフト剤。
  3. 前記X1およびX2は、別異または同一のベンジル基またはベンジル基の誘導体である、請求項2に記載のNMR用キラルシフト剤。
  4. 前記アキラルな原子団は、水素原子およびハロゲン原子である、請求項2に記載のNMR用キラルシフト剤。
  5. 前記アキラルな官能基は、直鎖状または分岐状のアルキル基、直鎖状または分岐状のハロゲン化アルキル基、エチレングリコール鎖、エチレングリコールのオリゴマー、ポリマー鎖、芳香族基、複素芳香族基、複素環基、エステル基、エーテル基、環状エーテル基、アミド基、アルケン、アルキン、ケトン基、アミン基、環状アミン基、アルコキシ基、ビニル基、チオエーテル基、スルホン基、シアノ基、ニトロ基およびそれらの誘導体である、請求項4に記載のNMR用キラルシフト剤。
  6. 前記Y1〜Y8は、水素原子である、請求項2に記載のNMRキラルシフト剤。
  7. キラルな物質の光学純度を決定する方法であって、
    少なくとも請求項1〜6のいずれかに記載のNMR用キラルシフト剤と前記キラルな物質とを含む混合溶液を錯体化するステップと、
    前記錯体化された混合溶液の核磁気共鳴スペクトルを測定するステップと、
    前記錯体化された混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅を測定するステップと、
    前記ピーク分裂の幅に基づいて前記キラルな物質の光学純度を決定するステップと
    を包含する、方法。
  8. 前記光学純度を決定するステップに先立って、前記NMR用キラルシフト剤とエナンチオピュアなキラルな物質とを含む別の混合溶液を用いて、ピーク分裂の幅と前記キラルな物質の光学純度との間の関係式Δδ=Δδmax’×ee(ここで、Δδはピーク分裂の幅であり、Δδmax’は、前記NMR用キラルシフト剤と前記エナンチオピュアな前記キラルな物質との錯体の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅であり、eeは前記キラルな物質の光学純度)を求めるステップであって、前記別の混合溶液中の前記NMR用キラルシフト剤、前記キラルな物質、および、水の濃度は、前記混合溶液のそれらに一致する、ステップをさらに包含する、請求項7に記載の方法。
  9. 前記錯体化するステップは、10℃以上55℃以下の温度範囲で行う、請求項7に記載の方法。
  10. 前記錯体化するステップにおいて、前記混合溶液中の前記NMR用キラルシフト剤に対する水の濃度は、100モル当量以下である、請求項7に記載の方法。
  11. 前記錯体化するステップにおいて、前記混合溶液中の前記NMR用キラルシフト剤に対する前記キラルな物質は、10モル当量以上である、請求項7に記載の方法。
  12. 前記決定するステップは、関係式Δδ=Δδmax×ee×pHG*(ここで、Δδは前記ピーク分裂の幅であり、Δδmaxは、前記NMR用キラルシフト剤とエナンチオピュアな前記キラルな物質との錯体の核磁気共鳴スペクトルにおける特性値であり、eeは前記キラルな物質の光学純度であり、pHG*は前記NMR用キラルシフト剤総量のうち、前記キラルな物質と錯体化したものの割合である)を用いる、請求項7に記載の方法。
  13. キラルな物質の絶対配置を決定する方法であって、
    請求項1〜6のいずれかに記載のNMR用キラルシフト剤と前記キラルな物質との第1の混合溶液を錯体化するステップと、
    前記第1の混合溶液にエナンチオピュアな前記キラルな物質を添加した第2の混合溶液を錯体化するステップと、
    前記錯体化された第1および第2の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルを測定するステップと、
    前記錯体化された第1の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ)と、前記錯体化された第2の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ)とを比較するステップと
    を包含する、方法。
  14. 前記第2の混合溶液を錯体化するステップに先立って、前記錯体化された第1の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅に基づいて、前記キラルな物質の光学純度を決定するステップをさらに包含する、請求項13に記載の方法。
  15. 前記第2の混合溶液を錯体化するステップは、前記エナンチオピュアな前記キラルな物質を、%ee/100当量(%eeは、前記キラルな物質の光学純度である)以下添加する、請求項13に記載の方法。
  16. 前記第2の混合溶液を錯体化するステップにおいて、前記エナンチオピュアな前記キラルな物質がR体であり、かつ、前記比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ<Δδ、Δδ=ΔδまたはΔδ>Δδを満たす場合、前記キラルな物質は、それぞれ、R体リッチなキラル混合物、R体のエナンチオピュア、または、S体リッチなキラル混合物もしくはS体のエナンチオピュアであると決定され、
    前記第2の混合溶液を錯体化するステップにおいて、前記エナンチオピュアな前記キラルな物質がS体であり、かつ、前記比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ<Δδ、Δδ=ΔδまたはΔδ>Δδを満たす場合、前記キラルな物質は、それぞれ、S体リッチなキラル混合物、S体のエナンチオピュア、または、R体リッチなキラル混合物もしくはR体のエナンチオピュアであると決定される、請求項13に記載の方法。
  17. 前記第2の混合溶液を錯体化するステップにおいて、前記エナンチオピュアな前記キラルな物質がR体であり、かつ、前記比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ>Δδを満たす場合、
    前記第1の混合溶液に前記エナンチオピュアな前記キラルな物質としてS体を添加した第3の混合溶液を錯体化するステップと、
    前記錯体化された第3の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルを測定するステップと、
    前記錯体化された第1の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルのピーク分裂の幅(Δδ)と、前記錯体化された第3の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ)とをさらに比較するステップと
    をさらに包含する、請求項16に記載の方法。
  18. 前記さらに比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ<ΔδまたはΔδ=Δδを満たす場合、それぞれ、前記キラルな物質は、S体リッチなキラル混合物またはS体のエナンチオピュアであると決定される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記第2の混合溶液を錯体化するステップにおいて、前記エナンチオピュアな前記キラルな物質がS体であり、かつ、前記比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ>Δδを満たす場合、
    前記第1の混合溶液に前記エナンチオピュアな前記キラルな物質としてR体を添加した第3の混合溶液を錯体化するステップと、
    前記錯体化された第3の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルを測定するステップと、
    前記錯体化された第1の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ)と、前記錯体化された第3の混合溶液の核磁気共鳴スペクトルにおけるピーク分裂の幅(Δδ)とをさらに比較するステップと
    をさらに包含する、請求項16に記載の方法。
  20. 前記さらに比較するステップにおいて、前記ピーク分裂の幅の関係がΔδ<ΔδまたはΔδ=Δδを満たす場合、それぞれ、前記キラルな物質は、R体リッチなキラル混合物またはR体のエナンチオピュアであると決定される、請求項19に記載の方法。
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