JP2014207883A - がん幹細胞及びその用途 - Google Patents

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Tomonari Kasai
智成 笠井
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Abstract

【課題】新しいがん治療の技術を提供する。
【解決手段】以下の工程を含むことを特徴とする、in vivo又はin vitroでがん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする方法:
工程1:iPS細胞をがん細胞の培地に含まれる培養成分の存在下に培養して、がん幹細胞を含む細胞集団を誘導する工程、
工程2:in vivo又はin vitroでがん幹細胞を含む細胞集団にがん治療薬の候補物質を作用させて、がん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする工程
【選択図】図16

Description

本発明は、がん治療薬のスクリーニング方法、がん幹細胞及びそれを含む細胞集団及びその調製方法、多数の前記細胞集団のライブラリー、がん幹細胞に有効ながん治療薬、iPS細胞からがん幹細胞を誘導するための誘導剤、各種組織がん、がん幹細胞のモデル動物などに関する。
がんは遺伝子の疾患として、基本的に4つ以上の遺伝子が経年により続けて変異し、その変異の影響が蓄積することで発症するという「発がん多段階説」が信じられている。発症したがんは、臓器別、あるいは特異的に発現している細胞表面蛋白質などの違いにより多くの種類があるものの、それぞれは、単一のがん細胞からなる均一な組織として考えられている。このため、個々のがん治療薬、特に、分子標的がん治療薬と呼ばれるものは、特異的に発現している蛋白質等の「分子標的」を指向した単一のあるいは限られた種類のがん細胞を攻撃するものとなっており、がん細胞表面に発現している蛋白質あるいは、がん細胞から体液中に放出されることなどで存在する「腫瘍マーカー」等のバイオマーカーで、その特異性を特定診断し、治療薬・治療方法が決められることが標準的である。
がんの難治性の原因として、がん幹細胞の関与が提唱されている(がん幹細胞説)。様々ながん(患者組織)より、がん幹細胞が単離され報告されているが、その存在割合の低さ、安定した培養維持の困難さが単離精製を困難なものとし、大規模な研究、解析を妨げている。すべてのがん幹細胞が単離されているわけでもない。腫瘍組織内のがん細胞の種類は患者毎に異なり、不均一であり、かつまた限定的と考えられる。このため、すべての種類のがん細胞を把握することが容易ではないこともあって、がん幹細胞の存在自体について、あるいはがんの進展増悪に果たす役割に否定的な見解を表明する研究者も多い。特許文献1は、がん幹細胞を用いた殺がん幹細胞物質のスクリーニング方法を開示する。
従来のがん治療薬によるがん治療では、がんの再発、転移といった問題が常につきまとい、治療効果は、「5年生存率」などのように表現され、全生存期間(OS)あるいは延命効果がエンドポイント(指標)となっている。つまり、現実的には、がんの「根治」は困難というのが一般的である。これは、分子標的治療薬を含めたがん治療薬が、結果として、集団内の特定のがん細胞のみに効果を示し、不均一性を示す残りのがん細胞やがん幹細胞には薬効を示さないため、治療行為によって、こうした残りのがん細胞やがん幹細胞の増殖を助ける結果となり、再発・転移につながることで、がんが「根治」されることが少ないと推測される。新たな治療方法、治療標的の探索だけでなく、がん細胞の「不均一性」の理解と対策が、求められている。
特開2010−13380
本発明は、がん幹細胞を死滅させ、がんを根治する技術を提供することを目的とする。
iPS細胞から身体の各組織の正常な幹細胞が誘導され、これを経由して、あらゆる組織細胞が誘導形成される「多能性」を示すことが、京都大学山中らにより報告されている。本発明者らは、これを、がん細胞の培養上清中で培養することで、効率的にiPS細胞から正常幹細胞ではなく、がん幹細胞(iPS-CSC)が誘導されることを見出した。正常細胞を含め、用いるがん細胞の種類、培養上清等を種々変更し、研究することでがん幹細胞(iPS-CSC)化が起こる条件を見出した。
本発明は、以下の発明を提供するものである。
項1. 以下の工程を含むことを特徴とする、in vivo又はin vitroでがん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする方法:
工程1:iPS細胞をがん細胞の培地に含まれる培養成分の存在下に培養して、がん幹細胞を含む細胞集団を誘導する工程、
工程2:in vivo又はin vitroでがん幹細胞を含む細胞集団にがん治療薬の候補物質を作用させて、がん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする工程
項2. 工程1において、異なる表現型を有する複数のがん細胞の各培地に含まれる培養成分の存在下にiPS細胞を各々培養して、異なる表現型を有するがん幹細胞を含む複数の細胞集団を誘導し、かつ、工程2において、前記候補物質は異なる表現型を有するがん幹細胞を含む複数の細胞集団に対する有効性を試験することを特徴とする、項1に記載のがん治療薬のスクリーニング方法。
項3. 工程1で得られたがん幹細胞を含む細胞集団を非ヒト哺乳動物に移植して前記非ヒト哺乳動物内でがん幹細胞を含む細胞集団を形成し、この非ヒト哺乳動物にがん治療薬の候補物質を作用させることで、in vivoでがん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする工程を含む、項1または2に記載のがん治療薬のスクリーニング方法。
項4. 工程1で得られたがん幹細胞を含む細胞集団に対し、in vitroでがん治療薬の候補物質を作用させてがん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする工程を含む、項1または2に記載のがん治療薬のスクリーニング方法。
項5. 項1〜4のいずれかに記載のがん幹細胞に有効ながん治療薬のスクリーニング方法とがん細胞に有効ながん治療薬のスクリーニング方法とを組み合わせ、がん幹細胞に特異的に有効であるがん治療薬をスクリーニングする方法。
項6. 項1〜4のいずれかに記載のがん幹細胞に有効ながん治療薬のスクリーニング方法とがん細胞に有効ながん治療薬のスクリーニング方法とを組み合わせ、がん幹細胞とがん細胞の両方に有効であるがん治療薬をスクリーニングする方法。
項7. 既存のがん治療薬を項1〜4のいずれかに記載のがん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする方法に適用し、がん細胞とがん幹細胞の両方に有効な薬物をスクリーニングすることを特徴とする、項6に記載の方法。
項8. 哺乳類iPS細胞由来のがん幹細胞の複数の遺伝子発現を、iPS細胞での各遺伝子の発現量を基準として球面自己組織化マップ(sSOM)によりクラスタリング及び可視化することを特徴とする、がん幹細胞の可視化分類方法。
項9. iPS細胞とがん細胞の間に存在する様々な分化の程度を有するがん幹細胞を含む細胞集団。
項10. がん幹細胞とともにがん細胞を含む、項9に記載の細胞集団。
項11. iPS細胞を様々な種類のがん細胞の各培地に含まれる培養成分の存在下に各々培養して異なる表現型を有するがん幹細胞を含む複数の細胞集団を誘導して得られる、がん幹細胞を含む複数の細胞集団のライブラリー。
項12. 表現型の異なる複数のがん幹細胞を含む細胞集団に有効ながん治療薬。
項13. 異なる表現型を有する複数のがん細胞の各培地に含まれる培養成分の存在下にiPS細胞を各々培養して、異なる表現型を有するがん幹細胞を含む複数の細胞集団を誘導することを特徴とする、異なる表現型を有するがん細胞の複数の細胞集団を調製する方法。
項14. iPS細胞製造用の遺伝子、マーカー遺伝子及び薬剤耐性遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の外来遺伝子を含むがん幹細胞。
項15. がん細胞の培養液の培養成分を含むiPS細胞からがん幹細胞を誘導するための誘導剤。
項16. 前記培養成分が、がん細胞の培養液の培養上清を含む、項15に記載の誘導剤。
項17. 項15又は16に記載の誘導剤の存在下にiPS細胞を培養して得られるがん幹細胞。
項18. iPS細胞を様々な種類のがん細胞の各培地に含まれる培養成分の存在下に各々培養して複数のがん幹細胞を誘導して得られる、がん幹細胞のライブラリー。
項19. 項17に記載のがん幹細胞を動物に移植して得られるがん幹細胞を含む各種組織がん、
項20. 項17に記載のがん幹細胞を動物、好ましくは免疫不全動物に移植して得られるがん幹細胞のモデル動物。
項21. がん幹細胞が、大腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮頚がん、子宮内膜がん、前立腺がん、胃がん、肝臓がん、食道がん、膵臓がん、膀胱がん、胆管がん、喉頭がん、黒色腫、肺がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、甲状腺がんまたは多発性骨髄腫のがん幹細胞である、項20に記載のがん幹細胞のモデル動物。
本発明によれば、複数のがん幹細胞を含むがん組織の細胞に有効ながん治療薬を提供することができる。
がん幹細胞はいくつかの種類に分類することができる。本発明では、iPS細胞を用いて多種類のがん幹細胞を網羅的に誘導することができる。がん幹細胞に有効ながん治療薬は、がんの転移、再発を抑制することができ、がんの理想的な治療を提供できる。
球面自己組織化マッピングによるiPS-CSCの遺伝子発現プロファイルの視覚化 個別細胞間の遺伝子発現比較 ヒアルロン酸(HA)の添加によるスフェロイドの形成 ヒアルロン酸(HA)を添加して培養したがん幹細胞を移植したヌードマウスにおける腫瘍形成 実施例1で使用したマウスiPS細胞(miPS) iPS細胞と微小環境における仮説 iPS細胞をがん細胞培養液で培養するがん幹細胞の作製 がん幹細胞が悪性腫瘍を形成できることの確認 がん幹細胞の不均一性 Matrigel(登録商標)中で管腔形成した細胞の不均一性 miPS -LLCcm細胞由来悪性腫瘍からの初代培養とその浮遊培養。初代培養は、がん幹細胞(miPS -LLCcm)をヌードマウスに移植し、形成された腫瘍塊から得られた。浮遊培養は、がん幹細胞(miPS -LLCcm)を血清不含の培地で培養して得られたスフェロイドを示す。スフェロイド形成によりがん幹細胞は濃縮されている。 がん幹細胞(miPS -LLCcm)のスフェロイドから形成した腫瘍。スフェロイドが血管新生能を有し、悪性度が高いことを示す。 左)代表的ながん抑制遺伝子であるp53の発現。右)がんの浸潤、転移に関わるマトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP2)の発現。 がん幹細胞は正常な前駆細胞と共存することを示す。 がん幹細胞は正常な前駆細胞と共存することを示す。 本発明の1つの実施形態の応用例を概略的に示す がん幹細胞(miPS‐Huh7cm、miPS‐HepG2cm、miPS‐PLC/PRF5cm)を接着培養した結果を示す。 がん幹細胞(miPS‐Huh7cm、miPS‐HepG2cm、miPS‐PLC/PRF5cm)を各々ヌードマウスに移植した結果を示す。 図18で示される腫瘍を摘出してプライマリーカルチャーを作製した結果を示す。 本発明のスクリーニング方法による結果を示す。 定量的PCR法での遺伝子解析の一例を示す。
本発明者は、図6に示される仮説をもとに、iPS細胞からがん幹細胞の誘導を試みた。
iPS細胞は、がん細胞を培養した培地自体或いはその培養成分を用いて培養することで、がん幹細胞に誘導することができる(図7)。がん細胞を培養した培地の培養成分としては、培地を遠心分離して得られた培養上清や、培地をカラムクロマトグラフィーなどにより分画したフラクションなどが挙げられる。或いはiPS細胞とマイトマイシンCなどで処理して増殖能を失ったがん細胞を共培養することでiPS細胞をがん幹細胞に変換することができる。増殖能を失ったがん細胞は、継代時に除去することができる。この場合には、「培養成分」はiPS細胞と共存させるがん細胞を包含する。
本発明の実施例で実際に得られたがん幹細胞を以下の表1に列挙する。がん細胞の培養成分は共培養する増殖性を失ったがん細胞を包含する。
iPS細胞をがん細胞を培養した培地を用いて培養して得たがん幹細胞をヌードマウスに移植すると、良性の奇形腫(テラトーマ)ではなく悪性腫瘍が生じることを本発明者は確認した(図8、図17−19)。
図5に示されるiPS細胞(GFP)を用いて調製したがん幹細胞を用いて腫瘍を形成した。具体的には、本発明で作製した、がん幹細胞をヌードマウスの皮下に移植し生成された腫瘍を、抗GFP抗体、抗サイトケラチン抗体で染色した。その結果、本腫瘍はGFPのみ発現している細胞(GFP+ CK-)、サイトケラチンのみ発現している細胞(GFP- CK+)、及び両者の発現が見られない細胞(GFP- CK-)からなっていることが見いだされた(図9) 。GFP+細胞は、未だ未分化な状態である細胞を示しており、CK+細胞は上皮系細胞へ分化した細胞を示す。両者が陰性の細胞は、サイトケラチンを発現するに至っていない上皮系分化の途中の細胞、或いは、上皮系以外(少なくともサイトケラチンを発現しない)細胞へ分化していることを示している。このことは、腫瘍は様々な細胞からなる不均一な集団であることを示している。
本発明で得られるがん幹細胞は、iPS細胞から誘導されるので、(i)iPS細胞製造用の遺伝子、(ii)マーカー遺伝子及び(iii)薬剤耐性遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の外来遺伝子を含み得る。
iPS細胞製造用の遺伝子としては、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc、LIN28, L-MYC, NANOG, SV40LTなどが挙げられ、これら以外にもiPS細胞製造のために細胞内に導入される遺伝子は全てiPS細胞製造用の遺伝子に含まれる。
マーカー遺伝子としては、CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)、DsRed、GFP、YFP、RFP、CFPなどの蛍光タンパク質遺伝子、β-グルクロニダーゼ(GUS)、lacZ、カエデ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子などが挙げられ、蛍光タンパク質遺伝子が好ましく使用される。
薬剤耐性遺伝子としては、公知の薬剤耐性遺伝子を広く使用することができ、特に限定されないが、例えばピューロマイシン耐性遺伝子(puro)、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)、ハイグロマイシン耐性遺伝子(Hyg)、ブラストサイジン耐性遺伝子(bsr)などが挙げられる。
本発明で樹立したmiPS由来細胞株の一部の腫瘍形成、組織学的判定を結果を以下の表2に記載する。
iPS細胞は奇形腫(良性)を生じ得るが、悪性腫瘍は生じない。本発明で得られるがん幹細胞は悪性腫瘍を形成できる点でiPS細胞と異なる。培養液/培養成分を利用するために用いるがん細胞は哺乳類(ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、サルなど)由来のがん細胞であれば特に限定されず、マウス由来がん細胞、ヒト由来がん細胞などを広く用いることができる。また、がんの種類(大腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮頚がん、子宮内膜がん、前立腺がん、胃がん、肝臓がん、食道がん、膵臓がん、膀胱がん、胆管がん、喉頭がん、黒色腫、肺がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、甲状腺がん、多発性骨髄腫など)にも因らない。がん細胞の培養液/培養成分は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。がん細胞の培養液をiPS細胞の培養に用いることで、所望のがん幹細胞が得られる。
がん幹細胞は、動物、好ましくはヌードマウスなどの免疫不全動物の各組織に移植することで、移植された組織のがんを形成できる。例えばがん幹細胞を動物の肝臓に移植すると肝臓がんが誘導でき、がん幹細胞を動物の膵臓に移植すると膵臓がんが誘導できる。
本発明は、がん幹細胞を動物に移植して作製できるがん/がん幹細胞のモデル動物にも関する。がん幹細胞を移植する動物は、免疫不全動物が好ましく、ヌードマウスがより好ましい。がん幹細胞は動物に移植したときにがんを造る機能を有する。がん幹細胞の動物への移植により形成されたがんの細胞は未分化マーカーを有しており、がん幹細胞を含むので、がん幹細胞に対する抗がん剤の候補物質の治療効果を確認するためのモデル動物として有用である。
本発明により得られたがん幹細胞を脳、胃、肺、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、大腸、結腸、膀胱、食道、甲状腺、乳房、子宮、前立腺などに移植することで、所望の臓器のがん疾患モデル動物を得ることができる。
本発明のがん幹細胞は、がん幹細胞をヌードマウスなどの動物に移植し、形成された腫瘍を摘出してプライマリーカルチャーを作製すると、浮遊培養でスフェロイド(Spheroid)を形成し、自己複製能があり、未分化マーカーを発現するがん幹細胞とすることができる。これらのがん幹細胞から形成された腫瘍由来のがん幹細胞も本発明のがん幹細胞として、がん幹細胞のライブラリーを作製したり、薬物のスクリーニングなどに使用することができる。
がん幹細胞は、哺乳動物に移植することで、in vivo担がん動物モデルを作出することができる。これら、新たな担がん動物モデル作製にあたっては、ヒト、マウスなどの各種哺乳類のがん細胞株が利用できる。
なお、本明細書ではマウス(m)のiPS細胞とがん細胞(例えばLLC)の培地(cm)を用いてがん幹細胞を誘導しているため、がん幹細胞を「miPS-LLCcm」のように記載する場合があるが、ヒトiPS細胞を含む他のiPS細胞でも同様にがん細胞の培地を用いてがん幹細胞を誘導できる。
がん細胞の培地を用いて誘導された本発明のがん幹細胞は、試験管内血管様管腔形成試験に供すると、血管様管腔構造を形成する。この構造に含まれる細胞を血管内皮マーカーCD31で染色すると、GFP陽性且つ、CD31陽性(GFP+、CD31+)、GFP陽性且つCD31陰性(GFP+、CD31−)、GFP陰性且つCD31陽性(GFP−、CD31+)、両者陰性(GFP−、CD31−)の細胞からなっていることが見いだされた(図10)。このことは、がん幹細胞は血管新生に関わる細胞へと分化し、少なくとも4種類の細胞からなる血管を試験管内で形成しうる能力を持っている細胞集団であることを示している。
本発明のがん幹細胞は、浮遊培養を行うことでスフェロイドを形成させることができる。スフェロイドの形成によりがん幹細胞を濃縮することができるため好ましい(図11)。スフェロイド細胞は、2×10以上、好ましくは5×10以上、より好ましくは1×10以上の細胞をヌードマウスなどの皮下に注入することにより造腫瘍能を有することを本発明者は確認した(図12)。
また、本発明のがん幹細胞の細胞集団をヌードマウスの尾静脈に注入することにより肺転移が生じることを本発明者は確認し、肺で形成された腫瘍より初代培養、樹立したがん幹細胞株miPS-LLCcm LMTでは、がんの浸潤、転移に関わるマトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP2)の発現が顕著に高いことを見いだした。これはmiPS-LLCcm細胞内に、MMP2高発現がん幹細胞が含まれており、この細胞が優先的に肺に浸潤し、腫瘍を形成したと考えられる。つまり、本発明で使用するiPSからがん幹細胞の作成方法では、様々な特徴をもつがん幹細胞が同時に作製されることを示している。(図13右)。
このようにiPS細胞から誘導されるがん幹細胞及びその細胞集団は、優れた造腫瘍能、転移能を有しており、in vivo及びin vitroにおけるがん治療薬のスクリーニングのツールとして優れたものである。
本発明のがん幹細胞を含む細胞集団は、複数のがん幹細胞を含み得(図14,15)、各がん幹細胞について遺伝子発現パターンなどのデータを取得し、それらの各がん幹細胞に対するがん治療薬の候補物質の作用を検討することで、細胞特性ごとに優れた作用パターンを有するがん治療薬をスクリーニングすることができる。
図16は、悪性腫瘍を構成する細胞集団は多数のがん幹細胞で構成されていることを示している。これらの細胞の遺伝子発現、プロテオミクス、メタボローム解析等を通して、その細胞で機能が亢進している、或いは抑制されている分子、細胞内シグナル伝達経路が明確化される。これらの情報をもとに、既存のがん治療薬や、阻害剤の作用機作、あるいは薬物候補化合物のライブラリーのスクリーニングなどから、効果的な薬剤の候補を選択することができる。その後、実際にがん幹細胞への効果を検証し、この結果も細胞のプロファイルとしてデータベースに組み込むことができる。このようなデータベースは、がん治療薬のスクリーニングの結果を随時追加することで、より有用なデータベースにすることができる。このようなデータベースを用いてがん治療薬のスクリーニングを行うことで、がん幹細胞に有効ながん治療薬のスクリーニングを効率よく行うことができる。
図20に示すように、公知のがん治療薬を本発明のがん幹細胞を用いたスクリーニングにかけると、がん幹細胞に対して有効ながん治療薬は一部である。したがって、本発明のスクリーニング方法により得られたがん幹細胞の増殖抑制作用を有するがん治療薬とがん細胞の増殖抑制作用を有する既存のがん治療薬を併用することで効果的にがんを治療することができ、がん幹細胞の増殖によるがんの再発も抑制できる。また、公知のがん治療薬をスクリーニング対象のがん治療薬の候補物質とすることで、がん細胞とがん幹細胞の両方に有効である理想的ながん治療薬を見出すことができる。
iPS細胞からのがん幹細胞への誘導は、各種がん細胞の培養上清をiPS細胞の培養系へ添加することにより行う。実施例に記載してあるマウスiPS細胞のがん幹細胞化に使用した肺がん細胞、胚性がん細胞、悪性黒色腫、乳がん細胞に加え、がん幹細胞の多様性を考慮し、大腸がん、膵臓がん、脳腫瘍、肝臓がん、白血病細胞を含む様々ながん細胞を利用してがん幹細胞の作製をすることができる。
臨床検体から単離、報告されているがん幹細胞は、例として次の様な細胞表面マーカーを持つ。脳腫瘍;CD133+、乳がん;CD44high,CD24 low、悪性黒色腫;ABCB5+、肺がん;CD133+、肝臓がん;CD133+、膵臓がん;CD44+,CD24+, EAS+、大腸がん;CD133+、白血病;CD34+、CD38-である。少なくともこれらのマーカーを発現しているがん幹細胞は、本発明で作製可能である。さらにiPS細胞から他のマーカーを発現しているがん幹細胞を得ることもできる。
がん幹細胞の作製では、上記がん細胞を培養し、その培養上清を回収する。ここにはiPS細胞をがん幹細胞化する「条件因子」が含まれている。この培養上清を添加したiPS細胞培養培地を用い、iPS細胞を培養する。このときLIFを含んだ培地でも良い。この場合、より分化度の低いがん幹細胞の取得が見込まれる。培養は好ましくは1ヶ月程度行う。このとき、CD44発現がん幹細胞はヒアルロン酸添加により、その作製効率の向上が可能である。その後、がんの培養上清を含まない培地で培養、維持を行う。
本発明において、iPS細胞から誘導された好ましいがん幹細胞は種々のがん幹細胞を含む不均一ながん幹細胞の集団であり、がん細胞をさらに含んでいてもよい。
不均一ながん幹細胞は、セルソーターなどにより分化の程度の異なる各がん幹細胞に分離することもでき、公知の手法に従い細胞1個ずつに分離して、各がん幹細胞について薬物候補物質を作用させてがん治療薬のスクリーニングを行ってもよい。
がん幹細胞の集団は、iPS細胞の培地(培地)にがん細胞の培地、例えば培養上清を加えることで得ることができる。或いはがん細胞の培地からがん幹細胞の誘導に有用な少なくとも1種の成分を抽出し、その成分をiPS細胞の培地に加えても、がん幹細胞の集団を得ることができる。
がん幹細胞は、分化することができる細胞であり、最終的にそれ以上分化しないがん細胞に至る。がん幹細胞はiPS細胞とがん細胞の間に位置し、様々な分化の程度を有する複数のがん幹細胞を含む細胞集団である。がん幹細胞がさらに分化するとがん細胞になる。したがって、本発明のがん幹細胞を含む細胞集団には、がん細胞が含まれていてもよい。ここで、「不均一ながん幹細胞の細胞集団」とは、誘導により生成するがん幹細胞が、用いる条件等により、表現系や機能、分化の程度等の異なる2種以上のがん幹細胞に更に「不均一化」することを意味し、その結果得られる複数のがん幹細胞を含む細胞集団を意味する。
本発明で得られるがん幹細胞の細胞集団は、正常なiPS細胞から得られるものであり、がん細胞の培地由来の成分の作用を受けてがん幹細胞に誘導された細胞集団である。この細胞集団は、iPS細胞から誘導する時間が十分短いので、遺伝子変異の導入は行われていないと考えられる。従来、がん細胞は様々な変異が蓄積して生成すると考えられていたが、このような多数の変異を有するがん細胞はそれが由来する患者ごとに異なるものであり、がんの病態の理解が複雑になっていた。一方、本発明で得られるがん幹細胞の細胞集団は、がん細胞の培地に由来する成分のみでがん幹細胞になるためのスイッチが入ったものであり、遺伝的に均質なものであるため、各がん幹細胞の細胞集団に対するがん治療薬の候補物質の作用を比較して評価しやすい利点がある。
がんは、ランダムに他の組織もしくは器官に転移するのではなく、がんと関連の深い臓器もしくは組織に転移することが知られている。「がん」はその発生する臓器もしくは組織(胃がん、肺がん、大腸・結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、腎がん、膀胱がん、食道がん、甲状腺がん、乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、前立腺がん、白血病など)、あるいはがんが発生した細胞の種類(腺がん、扁平上皮がん、肉腫など)、あるいは消化器系のがん、呼吸器系のがん、血液・リンパ系のがん、皮膚がんなどにより分類され、1つのがん治療薬で治療できる一群のがん、あるいは、同一のがん治療薬では治療が難しいがんがあることが知られている。これらのがんの分類は、がん幹細胞においても有効であり、がん幹細胞は下記のようないくつかの種類に分類され、その製造法を合わせて記載する。
本発明を用いることで、1つの腫瘍を構成するがん幹細胞におけるすべての段階のがん幹細胞(iPS-CSC)及びがん細胞を試験管内で作製、維持することが可能である。本発明者は、がん幹細胞はiPS細胞に近い未分化な段階からこれ以上分化しないがん細胞に至る複数の分化の段階を有するがん幹細胞の混合物であると考えている。これらの一連のがん幹細胞を含む集団をがん治療薬のスクリーニングに用いることで、少なくとも1つの不均一ながん幹細胞の細胞集団に網羅的に有効ながん治療薬を得ることができ、がんの再発、転移を抑制できる。
種々のがん細胞の培養上清を用いて作製したがん幹細胞(iPS-CSC)、及びそれらをマウスに移植して形成した腫瘍から初代培養したがん幹細胞(iPS-CSC)の細胞表面蛋白質遺伝子の発現をDNAマイクロアレイにより網羅的に解析し、その発現様式を球面自己組織化マッピングによって視覚化すると、生成するがん幹細胞(iPS-CSC)のマッピングの表現型に幾つかのパターンが存在することを見出した(図1)。これは、同じiPS細胞を用いても、用いる条件により、異なる機能、性質のがん幹細胞(iPS-CSC)が生成することを見出したものである。微小環境を含めた「条件因子」の差異に依ると考えられる。この解析ではiPS細胞での各遺伝子発現量を基準にして、発現量の増加割合をクラスタリングした。このようながん幹細胞の球面自己組織化マッピング(sSOM)による視覚化は、多様ながん幹細胞の特徴を直感的・視覚的に認識するために非常に有効な手段である。
本発明の1つの実施形態によれば、遺伝子発現パターンは大きく二種類に分類される。用いる条件、がん細胞等の選択等により、更に多くの遺伝子発現パターンが見出される可能性がある。
個々の細胞間で比較してみると(図2)、miPS-MC.E12co(MC.E12細胞と共培養して得られたiPS-CSC)の腫瘍形成前後(左グラフ)や、miPS-LLCcmとmiPS-LLCcm LMT(miPS-LLCcmの肺転移細胞:高転移能のiPS-CSCと考えられる)との間(右グラフ)でも遺伝子の発現の変動が見られる。実施例はiPS細胞樹立時に組み込まれた薬剤耐性遺伝子を利用しがん幹細胞集団を濃縮しているが、依然多種のがん幹細胞からなっている。
iPS細胞から誘導されたがん幹細胞は、がん細胞を含み得る。このような多種のがん幹細胞を含む集団をターゲットにすることで、がん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングすることができる。
本発明では、がん幹細胞の集団をがんの種類に応じて複数得ることができる。
性質の異なる多数のがん幹細胞集団についてがん治療薬のスクリーニングを行えば、がん治療薬の候補物質が多数のがん幹細胞、がん細胞に対してどのような作用を示すのかがわかる。
本発明では、がん幹細胞の細胞集団を複数得られる。各細胞集団の培地にがん治療薬の候補物質を加えて培養することで、がん幹細胞に対する細胞障害性、細胞毒性などの有効性を評価することができる。各幹細胞の集団に対する網羅的な評価を行うことで、がん治療薬の候補物質の抗がんスペクトル、がん細胞のみに有効であるのか、1つの集団のがん幹細胞の一部のみあるいは全部に有効であるのか、さらに表現型の異なるがん幹細胞の複数の集団にまたがって有効であるのか等の評価を行うことができる。
薬物候補物質の培地中の濃度は、1ppb〜1%程度、好ましくは1ppm〜0.1%程度である。薬物が水に溶けにくい場合にはエタノール、DMSOなどの適当な有機溶媒に溶かしたり、薬物と無毒性の酸又は塩基との塩として培地中に溶解させることができる。iPS細胞、がん幹細胞などの培養の温度は室温から40℃程度、好ましくは37℃程度である。
iPS細胞及びがん幹細胞、がん細胞は、動物由来、好ましくは脊椎動物由来、特に哺乳動物由来である。哺乳動物としては、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、マウス、ラット、ハムスターなどが挙げられ、特にヒト由来である。
iPSの培地としては通常の培地が広く用いられる。
iPS細胞と培地をとるためのがん細胞の由来は一致していてもしていなくてもよい。例えばヒトのiPS細胞を培地で培養する場合、マウス由来のがん細胞の培地、ラット由来のがん細胞の培地、サル由来のがん細胞の培地などをいずれも使用することができる。がん細胞の培地をそのままiPS細胞の培地に添加してもよく、がん細胞の培地の上清をiPS細胞の培地に加えてもよい。
がん幹細胞は、CD44を高発現している細胞が多く存在することが知られている。CD44の高発現細胞は、CD44のリガンドであるヒアルロン酸を培地に加えると細胞の増殖性、がん幹細胞の悪性度が高まり、がん治療薬のスクリーニングに適している。したがって、がん細胞の培地とともにヒアルロン酸を加えて培養することで好ましいがん幹細胞の集団を得ることができる。ヒアルロン酸の培地中の濃度としては、50〜200μg/ml程度が挙げられる。
図3のようにヒアルロン酸をがん幹細胞を含む培地中に添加することによってがん幹細胞は効率良くスフェロイドを形成する。
また、ヒアルロン酸を培地に添加して培養したU251MG細胞はヌードマウス(Balb/c-nu/nu)に移植すると腫瘍形成能が非常に高く、悪性度は亢進している(図4)。がん治療薬のスクリーニングにおいてがん幹細胞の悪性度を亢進することは非常に重要である。
ヒアルロン酸を添加した培地でiPS-CSCを培養することによって、不均一ではあるが悪性度が高い、すなわち、がん幹細胞としての性質が強いiPS-CSCの濃縮が出来る。本技術を用いれば細胞は容易に回収でき、分泌因子やタンパク質の解析も可能である。培地に添加したい物質、細胞に処理したい薬剤等の曝露も簡便になる。
がん幹細胞化については、最終的には免疫不全マウスでの悪性腫瘍形成能、具体的には標本作製後、病理診断(活発な細胞分裂像、異型細胞、血管新生等の有無)で評価することができる。その傍ら細胞レベルでは、試験管内での血管構造形成能の評価により、腫瘍内血管新生への傍証を得る。がん幹細胞(miPS-LLCcm)内のp53の発現を定量的PCRによって確認すると、親株であるマウスiPS細胞(miPS+LIF/-MEF;LIF存在下、フィーダー細胞であるMEF細胞非存在下で培養)と比較してがん幹細胞で有意に減少していることが見いだされた。これは、iPSからがん幹細胞化への一つの指標となり得る知見である(図13左)。よって、p53に代表されるがん抑制因子の遺伝子発現変動等の解析をPCR法で行う。同時に、前述のCD44等既知のがん幹細胞マーカーの発現をPCR法や、抗体を使用したウエスタン解析、FACS解析により確認する。
がん幹細胞化が確認された細胞株については、様々な細胞からなる集団と見なせるので、さらにスフェロイド培養によるシングルセルクローニング(がん幹細胞ではスフェロイドは単一の細胞の自己複製によって形成されると考えられる)を行い、個々の細胞に分離後、次世代シークエンサー等による網羅的遺伝子発現解析やエピジェネティック解析、プロテオーム解析、メタボローム解析を行い、細胞情報としてデータベース化を進める。これらの情報から、生育阻害に効果的な作用点を推測し、がん治療薬の候補をリスト化、新薬開発の基礎情報とする(図16のコンセプト)。
特に細胞表面マーカー(既知のものも含め)の知見はドラッグデリバリーシステムを想定したときに、有用な情報となるのみならず、がん治療薬の評価にも応用する。
候補がん治療薬の効果は、不均一な細胞集団のまま試験する他、スフェロイド形成している細胞に対しても試験をする。不均一な集団の場合、効果は標的とするがん幹細胞のみならず、そこから生まれる分化ヒエラルキーの下流にある細胞の存在割合に影響し、少なくとも細胞集団の均衡は崩れると考えられる。先の網羅的解析情報のうち、細胞表面マーカーの発現をFACS等により評価することで、どの細胞集団の生育が阻害されていたかを評価することが可能となる。
In vivo の試験では、ある程度腫瘍を成長させる必要がある。このため、腫瘍はがん幹細胞や、分化した細胞からなる不均一な集団となるので、がん幹細胞に有効ながん治療薬候補(本スクリーニングで見いだされる)と、分化したがん細胞に有効な既存のがん治療薬の併用試験が考えられる。
sSOMによるがん幹細胞の分類について、以下に説明する。
異なる細胞間における遺伝子発現量の差異は、その細胞の特徴づける情報の一つとして利用される。特定の比較的少数の個々の遺伝子に注目した発現量の差異を検出し、比較する手法では定量的PCR法が広く利用されている。その結果は、しばしば二次元の棒グラフとして表現される。
定量的PCR法での遺伝子解析の一例を以下の図21に示す。実施例細胞での、Dll1遺伝子、EphA1遺伝子の発現量を、定量的PCR法により求めたものである。各細胞での遺伝子発現量は親株であるmiPSに対する相対量として表している。
本法は、特定の個々の遺伝子を対照として解析を行うものである。しかし、少数の個々の解析の結果から、細胞群を分類するのは困難である。細胞を分類する為には、多数の遺伝子の発現量(プロファイル)を総括して比較する必要がある。
近年、DNAアレイ、次世代シークエンサーを用いた遺伝子発現プロファイルや、プロテオーム、メタボローム等の網羅的解析技術の発達により、これらの結果をもとに細胞の分類や、分類群の特徴となる分子の検出が試みられている。
網羅的解析の結果は解析対照となる分子の種類の数を成分とした高次元のデータ(例えば10000種の遺伝子と対照とする解析結果は、10000の成分からなるパラメーターと見なせる)をとなり、検体間の比較による類似性、相関関係を発見する為の膨大なデータ分析(データ マイニング)が必要となる。データマイニングの結果から得られる情報は、主に二次元のヒートマップとして視覚化されることが多い。
SOM(自己組織化マップ)は高次元データ群の分類(クラスタリング)、可視化の手法として知られている。sSOM(球面SOM)はその分析結果を球面上に反映させ、検体間の類似性、相違性がより視覚的に認識しやすくなる。本発明で得られた細胞分類の視覚化には、例えばsSOM解析ソフトウエア(SOM ジャパンより購入)を利用することができる。
実施例では、マウス細胞表面タンパク質遺伝子約1000種を対照としたDNAマイクロアレイのデータをsSOMにより分析した。親株であるマウスiPS細胞での発現量を基準として、各々のがん幹細胞株での相対的な発現パターンを比較している。尚、iPS細胞、及び、実施例がん幹細胞はピューロマイシン処理により分化細胞を除去した後、RNAを抽出し、DNAマイクロアレイに供している。
sSOMは、アレイに搭載してある遺伝子の検体間の発現パターンの相関性を自己学習しながら、球面上に遺伝子を配置する。各細胞の分析結果は個別の球体で表現される。iPS細胞と比較して高発現している遺伝子が存在する領域が赤く表示され、低発現の遺伝子を青で表示している(図1)。
実施例の細胞では、細胞表面タンパク質の遺伝子の発現パターンからは、大きく2種類の分類が可能である。このことは、本発明による手法では、性質の異なる少なくとも2種類のがん幹細胞群が得られることを示している。
sSOMでの細胞分類に用いるデータは、細胞表面タンパク質遺伝子に限らず代謝系酵素群の遺伝子、がん遺伝子、がん抑制遺伝子、転写因子遺伝子等の発現パターン、miRNA発現、染色体メチル化DNAパターン、或はメタボローム、プロテオーム解析からの得られる代謝産物、タンパク質分子のパターン等でもよく、それぞれに異なった分類結果が予想される。分類結果の組み合わせにより、本発明で得られるがん幹細胞が複数種類で有ることが予想される。
これらの情報をもとにがん幹細胞をカタログ化し、がんの個別化治療への指標とする。例えば、細胞表面抗原の発現分類からは、がん幹細胞標的治療薬に利用する分子の候補を選択し、代謝や細胞内タンパク質の動態を考慮した抗がん剤を組み合わせることにより、がん幹細胞の特徴に合わせたがん治療薬剤の開発に利用できる。
がん治療薬の治療対象のがんとしては、例えば頭頚部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨・軟部肉腫、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、皮膚癌、脳腫瘍、中皮腫などが挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。
実施例1
miPS-CSC細胞の培養、GFP陽性がん幹細胞の濃縮
マウスiPS細胞(図5)より誘導した種々のがん幹細胞は、15% FBS、2mM L-Glutamine、0.1mM Non-essential amino acids、0.1mM 2-mercaptoethanol、50μg/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM培地と各種がん細胞(マウスLewis Lung Carcinoma (肺がん)、マウスP19-CL6(胚性癌腫)、マウスB16-F10(悪性黒色腫)、マウスBALB MC.E12(乳がん)共培養)の培養上清を用い、37℃、5%CO2条件下でマウスiPS細胞を培養して調製した。なお、培養ディッシュは0.1%のゼラチン溶液を用いてゼラチンコートしたものを使用した。マウスiPS細胞の培養には、上記培地に1000U/ml LIFを添加している。
(GFP陽性)がん幹細胞、未分化iPS細胞の濃縮には、1μg/mlのPuromycineを添加し培養を行った。培地交換は毎日行い約1週間(1回以上の継代を含む)培養した。ただし、miPS B16cm primaryのみはPuromycine濃度が1μg/mlの培地では培養出来なかった為、0.3μg/ml Puromycineで添加した培地を用いて濃縮を行った。
得られた各種がん幹細胞を表1に示す。
実施例2
Microarrayを用いた遺伝子発現解析
実施例1の条件で培養した細胞についてRNeasy kit (50) (QIAGEN)を用いた方法、もしくはTRIzol (Invitorogen)を用いた方法でRNAを抽出した。その後、50μg以下のRNAに対してDNase I処理を行い、再度RNeasy kit (50) (QIAGEN) にて精製を行った。
7.5μg分のRNAを2mM oligo dT、1mM dATP、1mM dCTP、1mM dGTP、0.2mM dTTP、0.8mM アミノアルキル化dUTP存在下でSuperScriptII (Invitorogen)を用いて逆転写し、cDNAを合成した。cDNA合成後、RNase H処理を行った。合成したcDNAはエタノール沈殿により回収し、6.7μlの0.1M NaHCO3(pH 8.0) に溶解し、当量 (6.7μl) のCy3 dyeを加え、遮光、25℃、120分反応させた。Cy3標識cDNAはQIAquickカラム(QIAGEN)により精製した。
Cy3標識cDNAを用いて、当研究室で作製したマウス細胞表面タンパク質遺伝子アレイスライドに対して、55℃、15時間ハイブリダイゼーションを行い、FLA8000 scanner (Fuji Film)、によりGenePix(登録商標) Pro5.1 software (Axon instrument)により蛍光強度の検出、解析を行った。
sSOM(球面自己組織化マップ)を用いた解析
Microarrayで検出したCy3の蛍光強度から、miPS細胞の各遺伝子発現量を基準とし、各々の細胞内での発現量を相対的な数値として球面自己組織化マップ上でクラスタリングし、miPS細胞と比較して変化率の高い遺伝子を視覚化した(図1)。
遺伝子発現解析
Microarrayで検出したCy3の蛍光強度を正規化し、比較を行う細胞の値の対数をプロットした散布図を作成、遺伝子の発現様式を比較した (図2)。
実施例3
1)概略
ヒトグリオーマ由来U251MG細胞を用いて実験を行った。
通常の接着系ディッシュ上で培養した細胞を継代する際、ヒアルロン酸(HA)を添加した培地中に移して非接着系ディッシュで培養し、さらに継代して非接着系ディッシュ上で細胞塊を作製した。細胞塊をヌードマウスに接種して担がんを作製した後、接着系ディッシュ上で初代培養(U251MG-P1とした)を行った。初代培養細胞を再びHA添加培地に継代して非接着ディッシュ上で培養した。
2)ヒアルロン酸添加培地を用いた培養
ヒトグリオーマ由来U251MG細胞、U251MG-P1細胞をそれぞれ非接着ディッシュ上でHAを添加した培地(100 μg/ml ヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬社製 ヒアルロン酸ナトリウム,鶏冠製)、10% FBS、50 U/ml ペニシリン、および 50 μg/ml ストレプトマイシンを含むDMEM)上と添加していない通常の培地(10% FBS、50 U/ml ペニシリン、および 50 μg/ml ストレプトマイシンを含むDMEM)上で2〜5日間培養した。HAを添加しない場合には殆ど細胞が増殖しなかったが、HAを添加した場合には細胞の密度が濃い部分が形成され、一部では細胞塊(スフェロイド)が形成された(図3)。
3)HA添加培地でスフェロイド培養(ITS+, FBS-)したU251MG細胞の腫瘍形成能
HA添加無血清培地(インスリン-トランスフェリン-亜セレン酸ナトリウム 培地サプリメント(Sigma-Aldrich社製)、100 μg/ml ヒアルロン酸ナトリウム、50 U/ml ペニシリン、および 50 μg/ml ストレプトマイシンを含むDMEM)で2週間、非接着系ディッシュ(直径10 mm, 培地量10 ml)でスフェロイド培養したU251MG細胞をヌードマウスBalb/c-nu/nu、メス、4週齢に移植して4週間観察した(図4)。2枚のディッシュから集めた細胞をそれぞれマウスの左腹部に移植した。右腹部には通常培養したU251MG細胞を107個、それぞれ移植した。ディッシュ2枚以上から集めた細胞の移植によって担がんが形成された。
実施例4:ヒトがん細胞株を用いたmiPS‐CSC
ヒト肝がん由来細胞株Huh‐7, HepG2, PLC/PRF‐5 の培養上清を用いてmiPS細胞を培養し、実施例1と同様にして3種のがん幹細胞、miPS‐Huh7cm、miPS‐HepG2cm、miPS‐PLC/PRF5cm を作製した。これらのがん幹細胞を接着培養した結果を図17及び表1に示す。図17に示されるように、これらのがん幹細胞は、未分化マーカーを発現していることが明らかになった。さらに、miPS‐Huh7cm、miPS‐HepG2cm、miPS‐PLC/PRF5cm を各々ヌードマウス皮下に移植した結果を図18に示す。
それぞれ1×106個の細胞を200 μlのPBSに懸濁してマウスの皮下に移植した。移植後4週間で腫瘍体積は100 mm3に達した。移植6週後に腫瘍を摘出して切片を作成し、HE染色をして病理学的観察をおこなった。観察の結果から、これらのがん幹細胞は造腫瘍能を有することが確認された。形成された腫瘍は良性の奇形腫(teratoma)ではなく、胚(細胞)性腫瘍(Embryonal carcinoma)であり、多彩な(上皮性)悪性腫瘍が認められた。また、図18で示される腫瘍を摘出してプライマリーカルチャーを作製すると浮遊培養でスフェロイドを形成し、自己複製能があり、未分化マーカーを発現していた(図19)。
実施例5
がん幹細胞の生育を阻害する化合物のスクリーニング系への適用例を図20、表3、表4に示す。実施例細胞miPS-LLCcm、miPS-LLCcmLMTの2種の細胞を例として用いた。各細胞は、ピューロマイシン処理によりがん幹細胞を濃縮し使用した。
化合物(阻害剤)は文部科学省新学術領域研究「がん研究の特性等を踏まえた支援活動」化学療法基盤支援活動より標準阻害剤キット1、2を入手し使用した。(190種類の阻害剤、表3、表4に示す。)。
スクリーニング系には、がん幹細胞、及び分化細胞集団からの分泌因子を含む培養上精(CM)を添加し、ニッチにおける自己複製制御機構を模倣した環境で行った。
5000個の細胞を播種し、24時間後に薬剤を終濃度1μMとなる様に添加し、48時間後にMTTアッセイを行い、細胞生存率をもとめた。細胞生存率は、薬剤を添加していない条件を100%とした。生存率を30%以下に抑制したものを赤色のグラフで示した(図21)。
今回の一次スクリーニングからは、二株に共通する阻害剤として4種類、miPS-LLCcmLMTに対してのみ効果が見られた薬剤が8種類見られた。上記のスクリーニングは、実施例4に見られるがん幹細胞でも実施可能であり、スクリーニングで得られる候補化合物は、実施例4で作成したものを含むがん幹細胞移植モデルマウスを利用しin vivoの試験を行う。本発明から得られるがん幹細胞は、抗がん幹細胞剤のスクリーニングに適用可能である。
さらに、miPS-LLCcmの1×105 cells/mlの細胞懸濁液を22Gニードルを使用して0.4ml(4×104 cells/ml)肝臓に移植した。1ヵ月後肝臓の切片を顕微鏡で確認したところ、肝臓様の組織が形成されていることが確認できた。この結果から、本発明で得られたがん幹細胞を脳、胃、肺、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、大腸などの各種臓器に移植することで、これらの臓器のがんのモデル動物が得られることが明らかになった。
実施例6
マウス細胞表面タンパク質遺伝子約1000種を対照としたDNAマイクロアレイのデータをsSOMにより分析した。親株であるマウスiPS細胞での発現量を基準として、各々のがん幹細胞株(miPS-LLCcm、miPS-LLCcm LMT、miPS-LLCcm Puro primary、miPS-MC.E12co、miPS-MC.E12co primary、miPS-B16cm primary、miPS-P19cm)及びiPS細胞(miPS(+L/-M))での相対的な発現パターンをsSOM解析ソフトウエア(SOM ジャパンより購入)を利用して解析した(図1)。尚、iPS細胞、及び、各種がん幹細胞はピューロマイシン処理により分化細胞を除去した後、RNAを抽出し、DNAマイクロアレイに供した。
図1において、iPS細胞と比較して高発現している遺伝子が存在する領域が赤く表示され、低発現の遺伝子を青で表示している。
本実施例では、細胞表面タンパク質の遺伝子の発現パターンからは、大きく2種類の分類が可能である。このことは、本発明による手法では、性質の異なる少なくとも2種類のがん幹細胞群が得られることを示している。
図1はマウスの結果を示しているが、この方法は全ての哺乳類由来のiPS細胞から誘導したがん幹細胞に適用できる。

Claims (21)

  1. 以下の工程を含むことを特徴とする、in vivo又はin vitroでがん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする方法:
    工程1:iPS細胞をがん細胞の培地に含まれる培養成分の存在下に培養して、がん幹細胞を含む細胞集団を誘導する工程、
    工程2:in vivo又はin vitroでがん幹細胞を含む細胞集団にがん治療薬の候補物質を作用させて、がん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする工程
  2. 工程1において、異なる表現型を有する複数のがん細胞の各培地に含まれる培養成分の存在下にiPS細胞を各々培養して、異なる表現型を有するがん幹細胞を含む複数の細胞集団を誘導し、かつ、工程2において、前記候補物質は異なる表現型を有するがん幹細胞を含む複数の細胞集団に対する有効性を試験することを特徴とする、請求項1に記載のがん治療薬のスクリーニング方法。
  3. 工程1で得られたがん幹細胞を含む細胞集団を非ヒト哺乳動物に移植して前記非ヒト哺乳動物内でがん幹細胞を含む細胞集団を形成し、この非ヒト哺乳動物にがん治療薬の候補物質を作用させることで、in vivoでがん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする工程を含む、請求項1または2に記載のがん治療薬のスクリーニング方法。
  4. 工程1で得られたがん幹細胞を含む細胞集団に対し、in vitroでがん治療薬の候補物質を作用させてがん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする工程を含む、請求項1または2に記載のがん治療薬のスクリーニング方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のがん幹細胞に有効ながん治療薬のスクリーニング方法とがん細胞に有効ながん治療薬のスクリーニング方法とを組み合わせ、がん幹細胞に特異的に有効であるがん治療薬をスクリーニングする方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のがん幹細胞に有効ながん治療薬のスクリーニング方法とがん細胞に有効ながん治療薬のスクリーニング方法とを組み合わせ、がん幹細胞とがん細胞の両方に有効であるがん治療薬をスクリーニングする方法。
  7. 既存のがん治療薬を請求項1〜4のいずれかに記載のがん幹細胞に有効ながん治療薬をスクリーニングする方法に適用し、がん細胞とがん幹細胞の両方に有効な薬物をスクリーニングすることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. 哺乳類iPS細胞由来のがん幹細胞の複数の遺伝子発現を、iPS細胞での各遺伝子の発現量を基準として球面自己組織化マップ(sSOM)によりクラスタリング及び可視化することを特徴とする、がん幹細胞の可視化分類方法。
  9. iPS細胞とがん細胞の間に存在する様々な分化の程度を有するがん幹細胞を含む細胞集団。
  10. がん幹細胞とともにがん細胞を含む、請求項9に記載の細胞集団。
  11. iPS細胞を様々な種類のがん細胞の各培地に含まれる培養成分の存在下に各々培養して異なる表現型を有するがん幹細胞を含む複数の細胞集団を誘導して得られる、がん幹細胞を含む複数の細胞集団のライブラリー。
  12. 表現型の異なる複数のがん幹細胞を含む細胞集団に有効ながん治療薬。
  13. 異なる表現型を有する複数のがん細胞の各培地に含まれる培養成分の存在下にiPS細胞を各々培養して、異なる表現型を有するがん幹細胞を含む複数の細胞集団を誘導することを特徴とする、異なる表現型を有するがん細胞の複数の細胞集団を調製する方法。
  14. iPS細胞製造用の遺伝子、マーカー遺伝子及び薬剤耐性遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の外来遺伝子を含むがん幹細胞。
  15. がん細胞の培養液の培養成分を含むiPS細胞からがん幹細胞を誘導するための誘導剤。
  16. 前記培養成分が、がん細胞の培養液の培養上清を含む、請求項15に記載の誘導剤。
  17. 請求項15又は16に記載の誘導剤の存在下にiPS細胞を培養して得られるがん幹細胞。
  18. iPS細胞を様々な種類のがん細胞の各培地に含まれる培養成分の存在下に各々培養して複数のがん幹細胞を誘導して得られる、がん幹細胞のライブラリー。
  19. 請求項17に記載のがん幹細胞を動物に移植して得られるがん幹細胞を含む各種組織がん、
  20. 請求項17に記載のがん幹細胞を動物、好ましくは免疫不全動物に移植して得られるがん幹細胞のモデル動物。
  21. がん幹細胞が、大腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮頚がん、子宮内膜がん、前立腺がん、胃がん、肝臓がん、食道がん、膵臓がん、膀胱がん、胆管がん、喉頭がん、黒色腫、肺がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、甲状腺がんまたは多発性骨髄腫のがん幹細胞である、請求項20に記載のがん幹細胞のモデル動物。
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