JP2014207133A - 水素生成システムおよび燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の原料供給源を切り替えて原料ガスを供給する場合、急激な原料組成の変化によって、改質器が過昇温となることを防ぐことができる水素生成システムを提供する。
【解決手段】
本発明に係る水素生成システムは、原料が充填された第1原料供給部1および第2原料供給部2と、原料の供給源となっている第1原料供給部1の原料が無くなると第2原料供給部2に切り替える原料供給切替部3と、原料供給切替部3を介して第1原料供給部1または第2原料供給部2から供給された原料と外部から供給された空気とを用いて水素含有ガスを生成する改質器6と、原料供給切替部3による原料の供給源の切替を示す信号である切替信号に応じて、改質器6に供給される原料流量と空気流量との比が所定値となるように制御する制御器7と、を備える。
【選択図】図1
【解決手段】
本発明に係る水素生成システムは、原料が充填された第1原料供給部1および第2原料供給部2と、原料の供給源となっている第1原料供給部1の原料が無くなると第2原料供給部2に切り替える原料供給切替部3と、原料供給切替部3を介して第1原料供給部1または第2原料供給部2から供給された原料と外部から供給された空気とを用いて水素含有ガスを生成する改質器6と、原料供給切替部3による原料の供給源の切替を示す信号である切替信号に応じて、改質器6に供給される原料流量と空気流量との比が所定値となるように制御する制御器7と、を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、供給された原料ガスと空気とを利用して水素を生成する水素生成システムおよびこの水素生成システムを備えた燃料電池システムに関する。
燃料電池に供給する原料としては都市ガスなどの化石燃料が知られている。また、都市ガス以外にもLPGガスシリンダ(LPGガスボンベ)から原料を供給することも考えられている。
ところで、LPGガスシリンダから原料を供給する構成の場合、供給される原料のガス組成が、シリンダ内のガス圧力に応じて変化する(例えば、非特許文献1)。すなわち、非特許文献1では、原料供給源としてLPGガスシリンダ(LPGガスボンベ)を用いた燃料電池システムを開示している。そして、同文献の図2には、LPGガスシリンダから吐出されるガス組成が、シリンダ内のガス圧力に応じて、変化することが記載されている。
このため、燃料電池システムに供給するガスの供給源としてLPGガスシリンダを用いる構成の場合、ガス組成の変化に応じて改質器温度が変化してしまう。そこで、例えば、特許文献1では、改質器の温度が一定となるように、改質器への原料供給量、空気供給量、及び循環ガス供給量を決定する燃料電池システムが開示されている。より具体的には、特許文献1に係る燃料電池システムは、改質ガス温度の低下に応じて、A/F(空気流量と原料流量の比)の値を予め設定したテーブルデータに基づいて設定して改質ガスの温度を一定にしている。
しかしながら、特許文献1に開示されている燃料電池システムでは、複数の原料供給源を切り替えて原料ガスを供給する場合、急激な原料組成の変化によって、改質器が過昇温で劣化することを防ぐことができないという問題がある。
ここで、複数の原料供給源を切り替えるとは、例えば、使用中のLPGシリンダ内の原料量が少なくなった際に、新たな(満タンの)LPGシリンダに切り替えることなどが挙げられる。すなわち、一般的なLPGは、C3H8またはC4H10の混合物として市場に流通している。このように、LPGシリンダ内には、C3H8やC4H10といった飽和蒸気圧力の異なる物質が混在しており、飽和蒸気圧力の高い(沸点の低い)C3H8が先にシリンダ外へ供給される。そのため、非特許文献1に記載されるように、LPGシリンダから一定流量で原料を供給した場合、シリンダから供給される原料組成は、経時的に変化する。例えば、シリンダ使用初期にはC3H8とC4H10の比率が6:4程度であったものが、シリンダ使用末期にはその比率が90:10程度まで変化する。
シリンダ使用末期になると、この使用末期のシリンダは新品のシリンダに切り替えられることとなるが、この切替時には、燃料電池システムに供給される原料ガス組成が急激に変化することになる。このため、この急激な変化に応じて、原料流量や改質空気流量などを制御する必要がある。
しかしながら、特許文献1に開示された燃料電池システムでは、使用末期となったLPGシリンダを新品のシリンダに切り替える場合、切替後の改質器における温度変化を検知した後に、原料流量、または改質空気流量などを制御する構成となる。このため、一時的に、改質器は過昇温の状態に曝されてしまう可能性があるという問題があった。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の原料供給源を切り替えて原料ガスを供給する場合、急激な原料組成の変化によって、改質器が過昇温となることを防ぐことができる水素生成システムを提供することにある。
また、急激な原料組成の変化は改質器において生成される水素量の変化を招き、燃料電池の燃料利用率が大きくなる場合がある。そこで、本発明では、複数の原料供給源を切り替えて原料ガスを供給する場合、急激な原料組成の変化によって、燃料電池の燃料利用率が大きくなることを防ぐことができる燃料電池システムをさらに提供する。
本発明に係る水素生成システムは、上記した課題を解決するために、原料が充填された複数の原料供給部と、原料の供給源となっている原料供給部の原料が無くなると他の原料供給部に切り替える切替部と、前記切替部を介して前記原料供給部から供給された原料と、外部から供給された空気とを用いて水素含有ガスを生成する改質器と、前記切替部による原料の供給源の切替を示す信号である切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるように制御する制御器と、を備える。
本発明に係る燃料電池システムは、上記した課題を解決するために、原料が充填された複数の原料供給部と、原料の供給源となっている原料供給部の原料が無くなると他の原料供給部に切り替える切替部と、前記切替部を介して前記原料供給部から供給された原料と、外部から供給された空気とを用いて水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器によって生成された水素含有ガスと、外部から供給された発電用空気とを利用して発電反応により発電する燃料電池と、前記切替部による原料の供給源の切替を示す信号である切替信号に応じて、前記燃料電池の発電電流値を所定値に変更するように制御する制御器と、を備える。
本発明に係る燃料電池システムは、上記した課題を解決するために、原料が充填された複数の原料供給部と、原料の供給源となっている原料供給部の原料が無くなると他方の原料供給部に切り替える切替部と、前記切替部を介して前記原料供給部から供給された原料と、外部から供給された空気とを用いて水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器によって生成された水素含有ガスと、外部から供給された発電用空気とを利用して発電反応により発電する燃料電池と、前記切替部による原料の供給源の切替を示す信号である切替信号に応じて、前記改質器に供給される原料流量と空気流量との比が所定値となるように制御する制御器と、を備える。
本発明にかかる水素生成システムは、以上に説明したように構成され、複数の原料供給源を切り替えて原料ガスを供給する場合、急激な原料組成の変化によって、改質器が過昇温となることを防ぐことができるという効果を奏する。
また、本発明にかかる燃料電池システムは、以上に説明したように構成され、複数の原料供給源を切り替えて原料ガスを供給する場合、急激な原料組成の変化によって、燃料電池の燃料利用率が大きくなることを防ぐことができるという効果を奏する。
本発明では以下に示す態様を提供する。
本発明の第1の態様に係る水素生成システムは、原料の供給源となっている原料供給部の原料が無くなると他の原料供給部に切り替える切替部と、前記切替部を介して前記原料供給部から供給された原料と、外部から供給された空気とを用いて水素含有ガスを生成する改質器と、前記切替部による原料の供給源の切替を示す信号である切替信号に応じて、前記改質器に供給される原料流量と空気流量との比が所定値となるように制御する制御器と、を備えるように構成されていてもよい。
ここで、原料供給部が他の原料供給部に切り替えられることによって、原料供給部に充填されている原料の組成が変化する場合がある。この組成変化が大きい場合、改質器において過昇温が生じることがある。
上記した構成によると、第1の態様に係る水素生成システムは、この原料供給部の切替を示す切替信号に応じて、制御器が改質器に供給する原料流量と空気流量との比を所定値とすることができる。ところで、この原料流量と空気流量との比の所定値は、切替られた直後の他の原料供給部から供給される原料の組成に対して改質器の温度が所定の温度範囲となるように予め設定された値である。このため、原料の供給源が他の原料供給部へと切替えられることによって、改質器が過昇温となることを防ぐことができる。
また、本発明の第2の態様に係る水素生成システムは、上記した第1の態様において、前記改質器へ供給する前記空気流量を調整する改質空気流量調整部をさらに備え、前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるように、前記改質空気流量調整部を制御して前記空気流量を変更させるように構成されていてもよい。
また、本発明の第3の態様に係る水素生成システムは、上記した第1の態様において、前記改質器へ供給する前記原料流量を調整する原料流量調整部をさらに備え、前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるように、前記原料流量調整部を制御して前記原料流量を変更させるように構成されていてもよい。
また、本発明の第4の態様に係る水素生成システムは、上記した第1の態様において、前記改質器へ供給する前記空気流量を調整する改質空気流量調整部と、前記改質器へ供給する前記原料流量を調整する原料流量調整部と、をさらに備え、前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるように、前記改質空気流量調整部および前記原料流量調整部を制御して前記空気流量と原料流量とを変更させるように構成されていてもよい。
また、本発明の第5の態様に係る燃料電池システムは、上記した第1の態様〜第4の態様のいずれか1つの態様に記載の水素生成システムと、前記改質器によって生成された水素含有ガスと外部から供給された発電用空気とを利用して発電反応により発電する燃料電池と、を備え、前記制御器は、前記切替部の切替時に生成される切替信号に応じて、前記燃料電池の発電電流値を所定値に変更するようにさらに制御するように構成されていてもよい。
上記した構成によると、上述した水素生成システムを備えているため、他の原料供給部への切替により原料組成が変化し、そのことに起因して改質器が過昇温度になることを防ぐことができる。
さらに、制御器は、燃料電池の発電電流値を所定値に変更するようにさらに制御することができる。このため、他の原料供給部への切替により原料組成が変化し、そのことに起因して燃料電池における燃料利用率(Uf)が大きくなりすぎることを防止することができる。
なお、発電電流値の所定値とは、他の原料供給部への切替後の原料の組成と、改質器に供給される空気流量から求められる、改質器で生成された改質ガス(水素含有ガス)組成に対して、燃料電池の燃料利用率が例えば、85%以下となる発電電流値である。
また、本発明の第6の態様に係る燃料電池システムは、原料が充填された複数の原料供給部と、原料の供給源となっている原料供給部の原料が無くなると他の原料供給部に切り替える切替部と、前記切替部を介して前記原料供給部から供給された原料と、外部から供給された空気とを用いて水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器によって生成された水素含有ガスと、外部から供給された発電用空気とを利用して発電反応により発電する燃料電池と、前記切替部による原料の供給源の切替を示す信号である切替信号に応じて、前記燃料電池の発電電流値を所定値に変更するように制御する制御器と、を備えるように構成されていてもよい。
上記した構成によると、燃料電池システムは制御器を備え、燃料電池の発電電流値を所定値に変更するようにさらに制御することができる。このため、他の原料供給部への切替により原料組成が変化し、そのことに起因して燃料電池における燃料利用率が大きくなりすぎることを防止することができる。
なお、発電電流値の所定値とは、他の原料供給部への切替後の原料の組成と、改質器に供給される空気流量から求められる、改質器で生成された改質ガス(水素含有ガス)組成に対して、燃料電池の燃料利用率が例えば、85%以下となる発電電流値である。
また、本発明の第7の態様に係る燃料電池システムは、原料が充填された複数の原料供給部と、原料の供給源となっている原料供給部の原料が無くなると他方の原料供給部に切り替える切替部と、前記切替部を介して前記原料供給部から供給された原料と、外部から供給された空気とを用いて水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器によって生成された水素含有ガスと、外部から供給された発電用空気とを利用して発電反応により発電する燃料電池と、前記切替部による原料の供給源の切替を示す信号である切替信号に応じて、前記改質器に供給される原料流量と空気流量との比が所定値となるように制御する制御器と、を備えるように構成されていてもよい。
上記した構成によると、前記切替信号に応じて、制御器が原料流量と空気流量との比が所定値となるように制御することができる。このため、他の原料供給部への切替により原料組成が変化し、そのことに起因して燃料電池における燃料利用率が大きくなりすぎる場合であっても、原料流量と空気流量との比を所定値とすることで、燃料利用率の上昇を防ぐことができる。すなわち、原料流量と空気流量との比を所定値とすることで、改質器に供給される原料と空気の総量における、酸素原子と炭素原子のモル比であるO/Cの値が大きくなることを抑制し、完全燃焼の割合が大きくなることを防ぐことができる。その結果、改質ガスに含まれるH2およびCOの量が減少することを防ぐことができる。つまり、燃料電池で発電反応に寄与できる燃料の量が減少することを防ぎ、燃料電池の燃料利用率が大きくなることを防ぐことができる。
また、本発明の第8の態様に係る燃料電池システムは、上記した第7の態様において、前記改質器へ供給する前記空気流量を調整する改質空気流量調整部を備え、前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるよう前記改質空気流量調整部を制御して前記空気流量を変更させるように構成されていてもよい。
上記した構成によると、前記切替信号に応じて、制御器が改質空気流量調整部を制御して原料流量と空気流量との比(A/F)を所定値とすることができる。このため、他の原料供給部への切替により原料組成が変化し、そのことに起因して燃料電池における燃料利用率が大きくなりすぎる場合であっても、原料流量と空気流量との比が所定値となるように、該空気流量を調整することで、燃料利用率の上昇を防ぐことができる。すなわち、空気流量を調整し、原料流量と空気流量との比を所定値とすることで、改質器に供給される原料と空気の総量における、酸素原子と炭素原子のモル比であるO/Cの値が大きくなることを抑制し、完全燃焼の割合が大きくなることを防ぐことができる。その結果、改質ガスに含まれるH2およびCOの量が減少することを防ぐことができる。つまり、燃料電池で発電反応に寄与できる燃料の量が減少することを防ぎ、燃料電池の燃料利用率が大きくなることを防ぐことができる。
また、本発明の第9の態様に係る燃料電池システムは、上記した第7の態様において、前記改質器へ供給する前記原料流量を調整する原料流量調整部をさらに備え、前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるよう前記原料流量調整部を制御するように構成されていてもよい。
上記した構成によると、前記切替信号に応じて、制御器が原料流量調整部を制御して原料流量と空気流量との比(A/F)を所定値とすることができる。このため、他の原料供給部への切替により原料組成が変化し、そのことに起因して燃料電池における燃料利用率が大きくなりすぎる場合であっても、原料流量と空気流量との比が所定値となるように、該原料流量を調整することで、燃料利用率の上昇を防ぐことができる。すなわち、原料流量を調整し、原料流量と空気流量との比を所定値とすることで、改質器に供給される原料と空気の総量における、酸素原子と炭素原子のモル比であるO/Cの値が大きくなることを抑制し、完全燃焼の割合が大きくなることを防ぐことができる。その結果、改質ガスに含まれるH2およびCOの量が減少することを防ぐことができる。つまり、燃料電池で発電反応に寄与できる燃料の量が減少することを防ぎ、燃料電池の燃料利用率が大きくなることを防ぐことができる。
また、本発明の第10の態様に係る燃料電池システムは、上記した第7の態様において、前記改質器へ供給する前記空気流量を調整する改質空気流量調整部と、前記改質器へ供給する前記原料流量を調整する原料流量調整部と、をさらに備え、前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるように、前記改質空気流量調整部および前記原料流量調整部を制御して前記空気流量と原料流量とを変更させるように構成されていてもよい。
上記した構成によると、前記切替信号に応じて、制御器が空気流量調整部および原料流量調整部を制御して原料流量と空気流量との比(A/F)を所定値とすることができる。このため、他の原料供給部への切替により原料組成が変化し、そのことに起因して燃料電池における燃料利用率が大きくなりすぎる場合であっても、原料流量と空気流量との比が所定値となるように、該原料流量および該空気流量を調整することで、燃料利用率の上昇を防ぐことができる。すなわち、原料流量および空気流量を調整し、原料流量と空気流量との比を所定値とすることで、改質器に供給される原料と空気の総量における、酸素原子と炭素原子のモル比であるO/Cの値が大きくなることを抑制し、完全燃焼の割合が大きくなることを防ぐことができる。その結果、改質ガスに含まれるH2およびCOの量が減少することを防ぐことができる。つまり、燃料電池で発電反応に寄与できる燃料の量が減少することを防ぎ、燃料電池の燃料利用率が大きくなることを防ぐことができる。
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1を、図面を参照して説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は対応する構成部材には同一の参照符号を付して、その説明については省略する。
以下、本発明の実施形態1を、図面を参照して説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は対応する構成部材には同一の参照符号を付して、その説明については省略する。
図1を参照して本発明の実施形態1に係る水素生成システム100について説明する。図1は、実施形態1に係る水素生成システム100の要部構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、水素生成システム100は、原料供給切替部(切替部)3、原料流量調整部4、空気流量調整部5、改質器6、および制御器7を備えてなる構成である。そして、水素生成システム100は、原料の供給源として第1原料供給部1および第2原料供給部2の2つの原料供給部を備えている。
第1原料供給部1および第2原料供給部2から供給される原料は、例えば、プロパンガス、ブタンガスを主成分とするLPG等とすることができる。本実施例では、第1原料供給部1および第2原料供給部2として、C3H8とC4H10が40:60で混合充填されたLPGシリンダを用いる。また、最初に第1原料供給部1から原料供給切替部3を経由して、改質器6へ原料が供給されるものとする。前述の通り、第1原料供給部1(LPGシリンダ)から供給されるガスは、C3H8とC4H10との飽和蒸気圧力差によって、供給の初期段階では、原料中においてC3H8を含む割合が高くなる。例えば、C3H8:C4H10が70:30の割合となる。そして、第1原料供給部1からのガスの供給が進み原料の残量がほぼ無くなるシリンダ使用末期には、C3H8:C4H10が0:100の割合となるものとして説明する。そして、第1原料供給部1において充填されている原料が空になると原料供給切替部3によって第2原料供給部2に原料の供給源が切り替わるようになっている。そして、空になった第1原料供給部1は、新たに原料が充填された第1原料供給部1と交換される。
原料供給切替部3は、原料の供給源を第1原料供給部1および第2原料供給部2のいずれかを選択し、切り替えるものであり、例えば、3方弁などにより実現できる。原料供給切替部3は第1原料供給部1および第2原料供給部2内のガス圧を監視し、ガス圧が所定値以下になったら原料の供給源を切り替えるように動作する。
原料供給切替部3を介して第1原料供給部1または第2原料供給部2のいずれかから供給された原料の流量は、制御器7からの制御指示に応じて、原料流量調整部4によって調整されて改質器6に導かれる。なお、原料流量調整部4としては、例えば、ダイアフラムポンプなどの流体搬送装置を用いても良いし、オリフィス径を調整する流量調整弁であってもよい。
また、改質器6には、さらに空気(改質空気)が供給されるように構成されており、この改質空気の流量は、制御器7からの制御指示に応じて、空気流量調整部5によって調整される。空気流量調整部5は、原料流量調整部4と同様に、例えば、ダイアフラムポンプなどの流体搬送装置を用いることができる。
改質器6は、供給された原料に含まれる炭化水素と、改質空気に含まれる酸素とを用いて、部分酸化改質反応(Partial Oxidation)が行われ、水素と一酸化炭素が生成される。そして、生成された水素と一酸化炭素は、例えば、燃料電池の燃料として利用することができる。この改質器6は、例えば、容器中に改質触媒が充填して構成することができる。改質触媒は、例えば、白金およびロジウムの少なくとも一方を含浸したアルミナ担体を用いることができる。なお、改質触媒は特に限定されず、例えば、部分酸化改質反応を進行させることのできる多様な触媒を用いることができる。
上記した構成を有する水素生成システム100における動作説明を、以下に説明する。
まず、図2、図3を参照して、第1原料供給部1から原料が供給され、第1原料供給部1内に充填された原料がなくなる直前、すなわち原料の供給源を、第2原料供給部2に切り替える直前までの期間中(第1期間)での動作について説明する。図2は、C4H10のモル分布率とA/Fの値との関係を示すグラフである。図3は、原料の供給源の切替直前における図1に示す水素生成システムを説明するブロック図である。
第1期間では、水素生成システム100では、改質器6に備えた温度センサ(不図示)による検知結果に基づき、制御器7が原料流量調整部4および空気流量調整部5の少なくともいずれか一方を制御し、改質器6の出口付近における改質ガス温度が一定(例えば、835℃)となるようにしている。例えば、図2に示すように、改質ガス温度が835℃となるように維持するためには、原料中におけるC4H10のモル分布率の変動に応じてA/Fの値を上げるように制御する。
図2では、C4H10のモル分布率とA/Fの値との関係を、C4H10のモル分布率が30%、70%、80%、90%、100%のそれぞれについてプロットしている。すなわち、C4H10のモル分布率が30%のときA/Fの値が約10.0となる。モル分布率が70%のときA/Fの値が約11.0となる。モル分布率が80%のときA/Fの値が約11.2となる。モル分布率が90%のときA/Fの値が約11.5となる。また、モル分布率が100パーセントのときA/Fの値が約11.8となる。
なお、図2では、特定のC4H10モル分布率とA/Fの値の関係のみを示しているが、例えば最小二乗法など公知の近似法を使ってモデル関数(右肩上がりのグラフ)として示すことができる。
すなわち、C4H10のモル分布率は、第1原料供給部1の使用開始時点では原料中において30%程度であったのが徐々に増加し、使用末期時にはおよそ100%にほぼ近づく。これに対して、改質ガス温度を835℃に保つためには、A/Fの値を当初、10.0であったところ徐々に値を上げていき、使用末期時には11.8程度まで上昇させる。
そして、第1原料供給部1に充填された原料の供給が継続し、第2原料供給部2に原料の供給源を切り替える直前に達したとする。このタイミングでの水素生成システム100の状態を図3に示す。
例えば、図3に示すように、原料供給部1からは、原料として2.0SLM(Standard Liter per Minute)のLPGが、原料供給切替部3を経由して改質器6へと供給されている。このタイミングでのLPG組成はC3H8:C4H10が0:100である。また、23.6SLMの改質空気が、改質器6へと供給される。そして、この場合、改質器6へ供給される改質空気流量と原料流量とのモル比であるA/Fは、11.8となる。なお、SLMとは、Standard Liter per Minuteの略であり、標準状態(1atm、摂氏0度)に換算したガスの流量である。例えば、理想気体では標準状態において、1モルで22.4リットルとなる。
上記した原料と改質空気とが改質器6に供給されると、改質器6において、混合ガス中のCnHm(C3H8およびC4H10)が下記の反応式(化学式(1))によって、H2、CO、CO2、H2Oに改質される。
ここで、O/C=2α/nとなる。なお、a、b、c、dは混合ガスの組成、改質器の特性、および、改質温度等によって変化する。ここで、O/Cとは、改質器6に供給される原料と空気の総量における、酸素原子と炭素原子のモル比であり、O/CにおけるOは、水(H2O)に由来する酸素原子を含まず、供給された改質空気に含まれる酸素(O2)に由来する酸素原子のみを含むものとする。
供給源を切り替える直前のタイミングでは、供給される原料組成が上述したようにC3H8:C4H10が0:100の割合となっており、改質器6での部分酸化反応は、O/C=1.24、またA/F=11.8で行われる。そして、改質器6の出口付近における改質ガス温度は835℃となっている。一般的に、触媒を用いた部分酸化改質(CPOX:Catalytic Partial Oxidation)の改質温度は750〜850℃の範囲で行われており、実施形態1に係る改質器6の改質ガス温度も、この通常の部分酸化改質用の触媒使用温度範囲内となっている。
そして、第1原料供給部1が空になりと原料の供給源が第2原料供給部2へと原料供給切替部3によって切り替えられる。次に、第2原料供給部2に原料の供給源が切り替わるタイミング(第2期間)での動作について説明する。特に、実施形態1に係る水素生成システム100では、供給源が切り替わったタイミングに応じて、改質空気および原料のうち少なくともいずれか一方の流量を調整することができるという特徴的な構成を有している。
まず、実施形態1に係る水素生成システム100の特徴的な構成について説明する前に、比較例として、この特徴的な構成を有さない場合について図4を参照して説明する。
(実施形態1の比較例の動作)
図4には、原料の供給源が切り替わった直後の原料組成がC3H8:C4H10=70:30となると仮定した場合に対する、水素生成システムの各部および全体の物質とエネルギーバランス計算から求まる各流体の温度および流量が記載されている。図4は、原料の供給源の切替直後における、比較例に係る水素生成システムを説明するブロック図である。
図4には、原料の供給源が切り替わった直後の原料組成がC3H8:C4H10=70:30となると仮定した場合に対する、水素生成システムの各部および全体の物質とエネルギーバランス計算から求まる各流体の温度および流量が記載されている。図4は、原料の供給源の切替直後における、比較例に係る水素生成システムを説明するブロック図である。
図4に示すように、原料の供給源の切替直前と同じ原料流量および空気流量(すなわち同じA/F)で、原料および改質空気を改質器6に供給すると、この改質器6でのO/Cは1.51となり、図3に示す状態のときよりもO/Cの値が上がることとなる。これは、同じA/Fのとき、以下の化学式(2)、(3)で示すようにC3H8の方が、C4H10と比較してO/Cが大きくなるためである。なお、化学式(2)、(3)において[2.1 O2+7.9 N2]は空気を示している。
C3H8+[2.1 O2+7.9 N2] O/C=1.40・・・(2)
C4H10+[2.1 O2+7.9 N2] O/C=1.05・・・(3)
ここで、O/Cが大きくなると、改質反応における完全燃焼割合が大きくなるため、発熱量が増大する。つまり、COがさらにCO2およびH2Oへと変化する反応は燃焼反応であり、その結果O/Cの値が所定の値よりも大きくなりすぎると改質器6は過昇温になる。このようにO/Cは、改質器6が過昇温になるか否か判断する基準として利用することができる。
C4H10+[2.1 O2+7.9 N2] O/C=1.05・・・(3)
ここで、O/Cが大きくなると、改質反応における完全燃焼割合が大きくなるため、発熱量が増大する。つまり、COがさらにCO2およびH2Oへと変化する反応は燃焼反応であり、その結果O/Cの値が所定の値よりも大きくなりすぎると改質器6は過昇温になる。このようにO/Cは、改質器6が過昇温になるか否か判断する基準として利用することができる。
図4の場合、改質器6ではO/C=1.51となり、改質器6の出口付近における改質ガス温度は1037℃と高くなりすぎてしまう。このため、改質触媒や改質触媒を収容する構造体等が劣化してしまう。
このように、改質器6が過昇温になった場合、改質器6の温度の急上昇を検知してから原料流量や改質空気流量を調整して、改質器6の温度を適切な範囲に制御したとしても、一時的には改質器6の温度が過昇温状態になってしまうことは防ぐことができない。長期に渡って継続して水素生成システムが利用される場合、第1原料供給部1と第2原料供給部2との切替が何度も行われる。このような使用条件においては、上記した一時的な過昇温によって引き起こされる劣化が水素生成システムにおいて蓄積し、システムの寿命を短くしてしまう。そこで、実施形態1に係る水素生成システムでは以下のような構成とすることでこのような過昇温が発生することを防ぐように工夫されている。
(実施形態1に係る水素生成システムの動作)
実施形態1に係る水素生成システムの動作について図5を参照して説明する。図5は、原料の供給源の切替直後における図1に示す水素生成システムの制御を示すブロック図である。
実施形態1に係る水素生成システムの動作について図5を参照して説明する。図5は、原料の供給源の切替直後における図1に示す水素生成システムの制御を示すブロック図である。
まず、第1原料供給部1から第2原料供給部2に原料の供給源が切り替わると、原料供給切替部2が切替信号を制御器7に向けて発信する。制御器7は、切替信号を受信すると、予め設定した所定時間後に、予め設定したA/Fとなるように、空気流量調整部5を制御して改質空気の流量を調整する。すなわち、上述したように過昇温を防ぐためにはO/Cの値を、所定の値となるように制御できる構成が理想であるが、実際には正確に原料組成を知りうることができない。そこで、実施形態1に係る水素生成システムでは、直接、測定可能なA/Fの値を用いて、過昇温を防ぐように構成されている。
なお、実施形態1に係る水素生成システムでは、予め設定した所定時間とは、ゼロ秒(すなわち、原料の供給源が切替ったタイミングと同時)としている。しかしながら、このようなゼロ秒に限定されるものではなく、予め設定した所定時間とは、切替後に第2原料供給部2からの原料が改質器6に到達するまでの時間であっても良い。この時間は、原料供給切替部3から改質器6までの配管内容積と切替時の原料流量とから算出され得る。
また、予め設定したA/Fは、以下のようにして設定されている。すなわち、第2原料供給部2に切り替えられた直後における原料の組成は、上述したように、C3H8:C4H10が70:30の割合となるものとみなしている。そこで、この組成のときに改質器6の温度が所定温度範囲に収まるようにA/Fの値が設定されている。また、このA/Fの値は、供給する原料組成または水素生成システムの運転条件の変更等に応じて、適時変更するように構成されていることが好適である。
なお、上述したように、O/Cは、改質器6が過昇温になるか否か判断する基準となりうる値であるが、実際のシステムの運用時には、正確な原料組成は不明なため、原料1モル中の炭素原子の正確な数は分からない。そのため、OとCの比の値が所定の値となるように実際には直接、制御することができない。そこで実施形態1に係る水素生成システムでは、システム運用時に測定可能なA/Fを使って改質器6の温度が所定温度範囲に収まるように制御する構成となっている。より具体的には、原料供給部の切替時に予め設定されているA/Fの値となるように制御し、その後、改質器6の温度の測定結果に応じてA/Fの値を微調整していくこととなる。
実施形態1に係る水素生成システムでは、例えば、原料の供給源の切替後のA/FをA/F=10.0と設定しており、これに応じて、改質空気流量は20.0SLMとなるように制御される。また、A/F=10.0として原料と改質空気との流量を調整することにより、改質器6における出口付近の改質ガス温度は835℃とすることができる。これは、通常の部分酸化改質用の触媒使用温度範囲内であり、改質触媒および構造体の劣化を抑制することができる。
上記では、予め設定したA/Fとなるように、改質空気流量を調節するように制御しているが、これに限定されるものではない。予め設定したA/Fとなるように、改質空気流量ではなく、原料流量を調整するように制御する構成であっても良い。さらには、改質空気流量と原料流量との両方調整するように制御する構成であっても良い。
予め設定したA/Fとなるように原料流量を調整する構成の場合、原料供給切替部3からの切替信号を制御器7が受信すると、原料流量調整部4を制御して原料流量を調整する。一方、原料流量および改質空気流量を調整するように制御する構成の場合、原料供給切替部3からの切替信号を制御器7が受信すると、原料流量調整部5および空気流量調整部4をそれぞれ制御して原料流量および改質空気の流量を調整する。
上記では、第1原料供給部1と第2原料供給部2との間の切替が行われると、原料切替部3から制御器7に切替信号を出力する構成であったがこれに限定されるものではない。例えば、制御器7が第1原料供給部1内または第2原料供給部2内のガス圧を監視し、所定の圧力以下となると、原料供給切替部3に制御信号を送信する。そして、原料供給切替部3はこの制御信号に応じて、原料の供給源を切り替えるように構成されていてもよい。
(実施形態2)
次に、実施形態2として、上記した実施形態1に係る水素生成システム100を用いた燃料電池システム200について図6を参照して説明する。図6は、図1に示す水素生成システム100を備えた、実施形態2に係る燃料電池システム200の要部構成の一例を示すブロック図である。図6に示すように燃料電池システム200は、実施形態1で説明した水素生成システム100の構成において、改質器6の下流側に燃料電池8をさらに備えた構成である。このため、実施形態1と同様の部材についてはその説明は省略する。
次に、実施形態2として、上記した実施形態1に係る水素生成システム100を用いた燃料電池システム200について図6を参照して説明する。図6は、図1に示す水素生成システム100を備えた、実施形態2に係る燃料電池システム200の要部構成の一例を示すブロック図である。図6に示すように燃料電池システム200は、実施形態1で説明した水素生成システム100の構成において、改質器6の下流側に燃料電池8をさらに備えた構成である。このため、実施形態1と同様の部材についてはその説明は省略する。
燃料電池8は、アノードとカソードとを備える固体酸化物形燃料電池であって、改質器6からアノードへ供給される水素含有ガス(改質ガス)と、カソードへ供給される空気(カソード空気)とを利用して発電反応により発電する。図6に示すように、カソード空気は、不図示のカソードガス経路を通じて、燃料電池8のカソードへと供給される。カソードガス経路中には、不図示の空気供給器を備え、この空気供給器によって供給される空気量が調整されるように構成されている。
固体酸化物形燃料電池は、例えば、アノードとカソードとの間で発電反応を行って発電する複数の燃料電池単セルを直列に接続して構成される。かかる燃料電池単セルには、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を電解質等に用いた公知の構成を採用しうる。燃料電池単セルの材料としては、イットリビウムやスカンジウムをドープしたジルコニア、あるいはランタンガレート系の固体電解質を用いることもできる。イットリア安定化ジルコニアを用いた燃料電池単セルでは、電解質の厚みにも依存するが、例えば、摂氏600度から摂氏1000度程度の温度範囲で発電反応が行われる。
なお、固体酸化物形燃料電池の発電により得られた電力は、図示されない端子を介して外部の電力負荷へと供給される。
次に、上述した実施形態2に係る燃料電池システム200の動作について説明する。まず、図7を参照して、第1原料供給部1から原料が供給され、第1原料供給部1内に充填された原料がなくなる直前、すなわち第1原料供給部1から第2原料供給部2へと原料の供給源を切り替える直前までの期間中(第1期間)での動作について説明する。図7は、原料の供給源の切替直前における図6に示す燃料電池システム200を説明するブロック図である。
第1期間、燃料電池システム200では、燃料電池8において予め設定された発電電流量となるように制御されている。そして、第1原料供給部1から改質器6に原料が継続的に供給され、第1原料供給部1から第2原料供給部に原料の供給源を切り替える直前に至ったとする。このときの状態は、例えば、図7に示すようになる。図7では、原料の供給源を切り替える直前における、燃料電池システムの各部および全体の物質とエネルギーバランス計算から求まる各流体の温度および流量が記載されている。
すなわち、供給源の切替直前では、供給される原料の組成はC3H8:C4H10が0:100の割合となっており、改質器6での部分酸化反応では、O/C=1.24、またA/F=11.8となるように制御されている。また、改質器6の出口付近における改質ガス温度は835℃となっている。そして、改質器6で生成された水素を含有する改質ガスは、燃料電池8のアノードに供給される。
燃料電池8は、定格電流25Aで電力を発電するように構成されている。この際、燃料利用率(Uf(FU))は65%となるように運転されている。一般的には、固体酸化物形燃料電池において、起電圧が著しく低下するUf、すなわち限界Ufは、80%から90%となるときであり、実施形態2に係る燃料電池システム200は、限界Uf以下となるように運転されている。
そして、第1原料供給部1が空になると原料供給切替部3によって原料の供給源が第2原料供給部2に切り替えられる。次に、第2原料供給部2に原料の供給源が切り替わるタイミング(第2期間)での動作について説明する。特に、実施形態2に係る燃料電池システムでは、供給源が切り替わったタイミングに応じて、予め設定した発電電流値となるように制御することができるという特徴的な構成を有している。
まず、実施形態2に係る燃料電池システム200の特徴的な構成について説明する前に、比較例として、この特徴的な構成を有さない燃料電池システムの場合について図8を参照して説明する。図8は、原料の供給源の切替直後における、比較例に係る燃料電池システムを説明するブロック図である。
(実施形態2の比較例の動作)
図8には、原料の供給源が切り替わった直後の原料組成がC3H8:C4H10=70:30となると仮定した場合に対する、燃料電池システムの各部および全体の物質とエネルギーバランス計算から求まる各流体の温度および流量が記載されている。
図8には、原料の供給源が切り替わった直後の原料組成がC3H8:C4H10=70:30となると仮定した場合に対する、燃料電池システムの各部および全体の物質とエネルギーバランス計算から求まる各流体の温度および流量が記載されている。
原料の供給源の切替直前と同じ原料流量および空気流量(すなわち同じA/F)のままである場合、改質器6でのO/Cは1.51となる。上述したように、O/Cが大きくなると、改質反応における完全燃焼割合が大きくなる。このため、改質ガスに含まれるH2とCOとの流量が減少する。その結果、燃料電池8で発電反応に寄与できる燃料の量が減少する。
つまり、原料の組成比が変わると実施形態1で述べたように改質器6における改質ガス温度が変化するだけではなく、生成される水素および一酸化炭素の量が変化してしまう。そのため、同じ定格電流25Aで電力を発電した場合、燃料電池8のUfは86%に急激に上昇し、Ufが限界Ufを超えてしまう。このため、起電圧が著しく低下してしまい、局所的な燃料枯れで燃料電池8が劣化する可能性がある。そこで、実施形態2に係る燃料電池システムでは以下のような構成とすることでこのような燃料電池8の劣化を防ぐように工夫されている。
(実施形態2に係る燃料電池システムの動作)
実施形態2に係る燃料電池システムの動作について図9を参照して説明する。図9は、原料の供給源の切替直後における図6に示す燃料電池システムの制御を示すブロック図である。
実施形態2に係る燃料電池システムの動作について図9を参照して説明する。図9は、原料の供給源の切替直後における図6に示す燃料電池システムの制御を示すブロック図である。
まず、第1原料供給部1から第2原料供給部2に原料の供給源が切り替わると、原料供給切替部2が切替信号を制御器7に向けて発信する。制御器7は、切替信号を受信すると、予め設定した所定時間後に、予め設定した発電電流値(例えば25A)となるように制御する。発電電流値の制御は、具体的には、電力負荷側の抵抗値を変えることで行う。
なお、実施形態2では、予め設定した所定時間は、ゼロ秒(原料供給切替部3の切替タイミングと同時)としているがこれに限定されるものではない。例えば、予め設定した所定時間は、切替後に第2原料供給部2からの原料が改質器6に到達するまでの時間であっても良い。この時間は、原料供給切替部3から改質器6までの配管内容積と切替時の原料流量とから算出され得る。
なお、実施形態2に係る燃料電池システム200では、原料の供給源の切替時の発電電流値が所定の電流値(例えば25A)となるよう調整されているため、原料ガス組成が切替後の組成(C3H8:C4H10=70:30)に変化し、かつ改質空気流量が切替前の流量のままであったとしても、燃料電池8の燃料利用率はUf=78%とすることができる。これは、一般的な燃料電池における限界Uf以下の値であり、燃料電池8の局所的な燃料枯れによる劣化を抑制することができる。
また、実施形態1、2では、改質器6が部分酸化改質反応によって水素を生成する構成であったが、改質器の改質反応方式はこれに限定されるものではなく、例えば、OSR(酸化的水蒸気改質)方式であっても良い。OSR方式の場合、改質器6には上述した原料と改質空気に加えて改質水がさらに供給される。ただし、改質器6の温度は、部分酸化改質の場合と同様にA/Fによって制御することができる。
また、実施形態2に係る燃料電池システム200では、上述したように、原料の供給源の切替に際して、発電電流値を予め設定した値となるように制御する構成であった。しかしながらこの構成に限定されるものではない。例えば、原料の供給源の切替に際して、A/Fの値を下げる、すなわち燃料(F)の割合を大きくするように少なくとも原料流量および改質空気流量のうちのいずれか一方を調整する構成としてもよい。
具体的には、A/Fの値を予め設定した値まで下げるように原料流量を調整する構成の場合、図9に示すように原料供給切替部3からの切替信号を制御器7が受信すると、原料流量調整部4を制御して原料の流量を調整する。一方、改質空気流量を調整する構成の場合、図9に示すように原料供給切替部3からの切替信号を制御器7が受信すると、空気流量調整部5を制御して改質空気の流量を調整する。
あるいは、原料流量および改質空気流量を調整するように制御する構成の場合、原料供給切替部3からの切替信号を制御器7が受信すると、原料流量調整部5および空気流量調整部4をそれぞれ制御して原料流量および改質空気の流量を調整する。
以上のように、燃料電池システム200では、原料の供給源の切替に際して、A/Fの値を下げることができるため、燃料電池で発電反応に寄与できる燃料の量が減少することを防ぎ、燃料電池の燃料利用率が大きくなることを防ぐことができる。
なお、上記した燃料電池システム200では、第1原料供給部1と第2原料供給部2との間で原料の供給源が切替えられると、原料切替部3から制御器7に切替信号を出力する構成であったがこれに限定されるものではない。例えば、制御器7が第1原料供給部1内または第2原料供給部2内のガス圧を監視し、所定の圧力以下となると、原料供給切替部3に制御信号を送信する。そして、原料供給切替部3はこの制御信号に応じて、原料の供給源を切り替えるように構成されていてもよい。
実施形態2に係る燃料電池システム200では、原料の供給源の切替に際して、燃料電池8におけるUfが大きくなることを防ぐために、発電電流値を予め設定した値とする、あるいは、少なくとも原料流量および改質空気流量のうちのいずれか一方を調整する構成であった。
しかしながら、燃料電池システム200において、原料の供給源の切替に際して、燃料電池8におけるUfが大きくなることを防ぐとともに、改質器6での過昇温を防ぐ構成とすることもできる。
例えば、原料1から原料2に切り替わる直前では、図10に示すように、燃料電池システム200では、燃料電池8の発電電流値が27Aに設定されており、この燃料電池8のUfが70%で定格運転されているとする。図10は、原料の供給源の切替直前における、比較例に係る燃料電池システム200の一例を説明するブロック図である。ここで燃料電池システム200において原料を供給している第1原料供給部1において供給すべき原料が尽きた場合、原料の供給源は、第2原料供給部2に切替られる。
この原料の供給源の切替直後(例えば、原料の供給源が切替ったタイミングと同時)に、実施形態1に示す水素生成システム100のように、改質器6が過昇温とならないようにするために、A/Fの値を10.0へと変更した場合、この切替直後の燃料電池8におけるUfは、図11に示すように、84%まで上昇し、限界Ufである80%を超えてしまう。図11は、原料の供給源の切替直後における、比較例に係る燃料電池システムの一例を説明するブロック図である。
そこで、切替直後にA/Fの値を所定の値となるように調整するとともに、燃料電池8の発電電流値を27Aから25Aまで下げ、Ufを限界Uf以下となるように制御する構成であってもよい。このように制御することで、例えば、図9に示す燃料電池システム200のように、A/Fの値を10.0としつつ燃料電池8のUfを限界Uf以下となるように制御することができる。
また、図12に示すように、実施形態2に係る燃料電池システムにおいて、さらに燃焼器9を備えた構成としてもよい。このようにさらに燃焼器9を備えた構成を実施形態2の変形例として説明する。
(実施形態2の変形例)
図12に示すように実施形態2の変形例に係る燃料電池システムは、上述した実施形態2に係る燃料電池システムの構成加えて、燃焼器9、燃焼器温度検知器10、および燃焼空気流量調整部11を備える。
図12に示すように実施形態2の変形例に係る燃料電池システムは、上述した実施形態2に係る燃料電池システムの構成加えて、燃焼器9、燃焼器温度検知器10、および燃焼空気流量調整部11を備える。
燃焼器9は、燃料電池8のアノードから排出されるアノードオフガスを燃焼させて、高温の燃焼排ガスを生成するものである。生成した燃焼排ガスは、カソードへ供給される空気の予熱に用いたり、改質器6が水蒸気改質器である場合、この改質器6の加熱に用いたりすることができる。なお、燃焼器9としては、アノードオフガスを燃焼することができるものであれば、拡散式燃焼器であっても良いし、触媒式燃焼器であっても良い。
燃焼器温度検知器10は、燃焼器9の温度(例えば、燃焼器9の出口付近の燃焼排ガス温度)を検知するものである。燃焼器温度検知器10は検知した結果を制御器7に送出する。燃焼空気流量調整部11は、燃焼器9においてアノードオフガスを燃焼させるために利用する空気(燃焼空気)流量を制御器7からの制御指示に応じて調整するものである。燃焼空気流量調整部11は、上記した空気流量調整部5と同様に、例えば、ダイアフラムポンプなどの流体搬送装置を用いることができる。
ところで、改質器6に供給する改質空気流量および原料流量のA/Fの値、および燃料電池8のUfの値が変化した場合、燃料電池8のアノードから排出されるアノードオフガス組成も変化する。このアノードオフガス組成が変化すると、「燃焼器9での燃焼空気流量」÷「燃焼器9でアノードオフガスを理論的に完全燃焼する為に必要となる燃焼空気流量」で求められるλが変化する。
ここでλの値が大きくなりすぎた場合(例えばλ=10など)、燃焼器9での燃焼排ガスが燃焼空気によって希釈され、燃焼器9の温度が低下する。そして、燃焼器9が低温となると、燃焼器9での炎が失火したり、燃焼排ガス中に含まれるCOなどの未燃焼ガス流量が増加したりして安全面で問題となる。
逆に、λの値が小さくなりすぎた場合(例えばλ=0.5など)、不完全燃焼となり、燃焼ガス中に含まれるCOなどの未燃焼ガス流量が増加し、安全面で問題となる。このため、λの値が適切な値となるように燃焼空気流量を調整する必要がある。
そこで、実施形態2の変形例に係る燃料電池システムでは、燃焼器温度検知器10が検知する温度が予め設定した温度となるように、燃焼器9に供給する燃焼空気流量を調整する。すなわち、燃焼器温度検知器10が所定間隔(例えば、数秒間隔)で検知した温度を制御器7に送出しており、この温度に基づき、制御器7は、燃焼空気流量調整部11に制御信号を出力して燃焼器9に供給される燃焼空気流量を調整させる。
以上のようにして、実施形態2の変形例に係る燃料電池システムは、λの値が所定の範囲に収まるように燃焼器9に供給する燃焼空気流量を調整することができる。
上記発明から、当業者にとって、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明の水素生成システム100は、原料の供給源が他の原料供給部に切り替えられるタイミングにおいて、適切な温度範囲となるように改質器6を管理することができる構成である。また、燃料電池システム200は、原料の供給源が他の原料供給部に切り替えられるタイミングにおいて、燃料電池の燃料利用率が大きくならないように燃料電池を管理することができる構成である。
このため、原料供給部が切り替えられ原料組成が大きく変化するような水素生成システム100または燃料電池システム200において幅広く適用できる。
1 第1原料供給部(原料供給部)
2 第2原料供給部(原料供給部)
3 原料供給切替部(切替部)
4 原料流量調整部
5 空気流量調整部
6 改質器
7 制御器
8 燃料電池
9 燃焼器
10 燃焼器温度検知器
11 燃焼空気流量調整部
100 水素生成システム
200 燃料電池システム
2 第2原料供給部(原料供給部)
3 原料供給切替部(切替部)
4 原料流量調整部
5 空気流量調整部
6 改質器
7 制御器
8 燃料電池
9 燃焼器
10 燃焼器温度検知器
11 燃焼空気流量調整部
100 水素生成システム
200 燃料電池システム
Claims (10)
- 原料が充填された複数の原料供給部と、
原料の供給源となっている原料供給部の原料が無くなると他の原料供給部に切り替える切替部と、
前記切替部を介して前記原料供給部から供給された原料と、外部から供給された空気とを用いて水素含有ガスを生成する改質器と、
前記切替部による原料の供給源の切替を示す信号である切替信号に応じて、前記改質器に供給される原料流量と空気流量との比が所定値となるように制御する制御器と、を備える水素生成システム。 - 前記改質器へ供給する前記空気流量を調整する改質空気流量調整部をさらに備え、
前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるように、前記改質空気流量調整部を制御して前記空気流量を変更させる請求項1に記載の水素生成システム。 - 前記改質器へ供給する前記原料流量を調整する原料流量調整部をさらに備え、
前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるように、前記原料流量調整部を制御して前記原料流量を変更させる請求項1に記載の水素生成システム。 - 前記改質器へ供給する前記空気流量を調整する改質空気流量調整部と、
前記改質器へ供給する前記原料流量を調整する原料流量調整部と、をさらに備え、
前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるように、前記改質空気流量調整部および前記原料流量調整部を制御して前記空気流量と原料流量とを変更させる請求項1に記載の水素生成システム。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載の水素生成システムと、
前記改質器によって生成された水素含有ガスと、外部から供給された発電用空気とを利用して発電反応により発電する燃料電池と、を備え、
前記制御器は、前記切替部の切替時に生成される切替信号に応じて、前記燃料電池の発電電流値を所定値に変更するようにさらに制御する、燃料電池システム。 - 原料が充填された複数の原料供給部と、
原料の供給源となっている原料供給部の原料が無くなると他の原料供給部に切り替える切替部と、
前記切替部を介して前記原料供給部から供給された原料と、外部から供給された空気とを用いて水素含有ガスを生成する改質器と、
前記改質器によって生成された水素含有ガスと、外部から供給された発電用空気とを利用して発電反応により発電する燃料電池と、
前記切替部による原料の供給源の切替を示す信号である切替信号に応じて、前記燃料電池の発電電流値を所定値に変更するように制御する制御器と、を備える燃料電池システム。 - 原料が充填された複数の原料供給部と、
原料の供給源となっている原料供給部の原料が無くなると他方の原料供給部に切り替える切替部と、
前記切替部を介して前記原料供給部から供給された原料と、外部から供給された空気とを用いて水素含有ガスを生成する改質器と、
前記改質器によって生成された水素含有ガスと、外部から供給された発電用空気とを利用して発電反応により発電する燃料電池と、
前記切替部による原料の供給源の切替を示す信号である切替信号に応じて、前記改質器に供給される原料流量と空気流量との比が所定値となるように制御する制御器と、を備える燃料電池システム。 - 前記改質器へ供給する前記空気流量を調整する改質空気流量調整部を備え、
前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるよう前記改質空気流量調整部を制御して前記空気流量を変更させる請求項7に記載の燃料電池システム。 - 前記改質器へ供給する前記原料流量を調整する原料流量調整部をさらに備え、
前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるよう前記原料流量調整部を制御して前記原料流量を変更させる請求項7に記載の燃料電池システム。 - 前記改質器へ供給する前記空気流量を調整する改質空気流量調整部と、
前記改質器へ供給する前記原料流量を調整する原料流量調整部と、をさらに備え、
前記制御器は、前記切替信号に応じて、前記改質器に供給される前記原料流量と前記空気流量との比が所定値となるように、前記改質空気流量調整部および前記原料流量調整部を制御して前記空気流量と原料流量とを変更させる、請求項7に記載の燃料電池システム。
Priority Applications (1)
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