JP2014177661A - Sn−Znめっき鋼板の耐食性判定方法および耐食性判定を満足するSn−Znめっき鋼板 - Google Patents

Sn−Znめっき鋼板の耐食性判定方法および耐食性判定を満足するSn−Znめっき鋼板 Download PDF

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【課題】溶融Sn−Znめっき鋼板の耐食性の有無をより迅速かつ定量的に判定することが可能なSn−Znめっき鋼板の耐食性判定方法とSn−Znめっき鋼板を提供すること。
【解決手段】本発明に係る耐食性判定方法では、3質量%〜15質量%のZnを含み、残部がSnおよび不可避的不純物からなる溶融めっき層を有したSn−Znめっき鋼板について、溶融めっき層のSn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量と溶融めっき層のSn初晶の融解に伴う吸熱量とが以下の関係式を満足するかに基づき、Sn−Znめっき鋼板の耐食性を判定する。Sn初晶の融解に伴う吸熱ピーク温度は示差走査熱量測定法で200℃以上230℃未満に観測され、Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱ピーク温度は示差走査熱量測定法で198℃以上200℃未満に観測される。(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}≧0.3
【選択図】図1

Description

本発明は、Sn−Znめっき鋼板の耐食性判定方法および耐食性判定を満足するSn−Znめっき鋼板に関する。
従来、燃料タンク材料として、耐食性、加工性、はんだ性(溶接性)等の優れたPb−Sn合金めっき鋼板が主として用いられ、自動車用燃料タンクとして幅広く使用されている。
Sn−Zn合金めっき鋼板は、例えば以下の特許文献1のように、ZnおよびSnイオンを含む水溶液中で電解する電気めっき法で、主として製造されてきた。Sn−Zn電気合金めっき鋼板は、主としてはんだ性等の要求される電子部品として、腐食環境がさほど厳しくない用途で使用されてきた。
一方、溶融Sn−Znめっき鋼板が、自動車燃料タンク用途の厳しい腐食環境において優れた特性を有することが知見され、例えば以下の特許文献2〜特許文献5に記載のような溶融Sn−Znめっき鋼板が開示されてきた。
自動車用燃料タンク素材として使用されてきたPb−Sn合金めっき鋼板は、各種の優れた特性(例えば、加工性、燃料タンク内面耐食性、はんだ性、シーム溶接性等)により多用されてきたが、近年の地球環境認識の高まりにつれ、Pbフリー化の方向に移行しつつある。
前記した溶融Sn−Znめっき鋼板は、確かに優れた耐食性、加工性、半田性を有するものである。しかしながら、近年、更なる耐食性の向上が求められている。この場合、Sn−Znめっき鋼板では、加工を受けていない平面部でも、Zn偏析に起因する孔食が発生する場合がある。特に、塩害環境を想定した塩水噴霧試験では赤錆発生に至るまでの期間が短く、塩害環境中の耐食性は十分とはいえない。犠牲防食能を更に向上させるためには、Znの添加量を増やせば良い。しかしながら、Zn量が高くなりすぎると、めっき層の主体がSnからZnへと移行していくこととなるが、Zn自体の溶出がSnよりも遥かに大きいため、めっき層自体の耐食性が損なわれるという問題がある。
特開昭52−130438号公報 特許第3126622号公報 特許第3126623号公報 国際公開第96/30560号 特開2006−348365号公報
上述のように、様々な溶融Sn−Znめっき鋼板が存在しており、これらSn−Znめっき鋼板の耐食性は、それぞれ異なるものである。また、Sn−Znめっき鋼板の性能は、長時間の耐食性評価をしてみないと判断できないため、時間と労力が必要となる。また、顕微鏡による組織観察を行うことも考えられるが、定量的に評価することが難しい。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、溶融Sn−Znめっき鋼板の耐食性の有無をより迅速かつ定量的に判定することが可能なSn−Znめっき鋼板の耐食性判定方法および耐食性判定を満足するSn−Znめっき鋼板を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、以下で詳述するような溶融めっき層に関する融解温度および融解に伴う吸熱量に着目することで、溶融Sn−Znめっき鋼板の耐食性の有無を、より迅速かつ定量的に判定することが可能であることに想到した。本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)3質量%〜15質量%のZnを含み、残部がSnおよび不可避的不純物からなる溶融めっき層を有したSn−Znめっき鋼板について、前記溶融めっき層のSn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量と、前記溶融めっき層のSn初晶の融解に伴う吸熱量とが、以下の関係式を満足するか否かに基づいて、前記Sn−Znめっき鋼板の耐食性を判定し、前記融解に伴う吸熱ピーク温度および前記融解に伴う吸熱量は、示差走査熱量測定法により測定され、前記Sn初晶の融解に伴う吸熱ピーク温度は、200℃以上230℃未満に観測され、前記Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱ピーク温度は、198℃以上200℃未満に観測されることを特徴とする、Sn−Znめっき鋼板の耐食性判定方法。

(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}≧0.3

(2)前記関係式を満足する場合、判定対象とした前記Sn−Znめっき鋼板は、鉛フリー防錆鋼板として利用可能な耐食性を有すると判定し、前記関係式を満たさない場合には、判定対象とした前記Sn−Znめっき鋼板は、鉛フリー防錆鋼板として利用可能な耐食性を有しないと判定することを特徴とする、(1)に記載のSn−Znめっき鋼板の耐食性判定方法。
(3)鋼板表面に、SnおよびZnを少なくとも含み、残部が不可避的不純物からなる溶融めっき層を有しており、前記溶融めっき層のSn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量と、前記溶融めっき層のSn初晶の融解に伴う吸熱量とが、以下の関係式を満足することを特徴とする、Sn−Znめっき鋼板。

(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}≧0.3

ここで、上記関係式において、前記融解に伴う吸熱ピーク温度および前記融解に伴う吸熱量は、示差走査熱量測定法により測定されたものであり、前記Sn初晶の融解に伴う吸熱ピーク温度は、200℃以上230℃未満に観測され、前記Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱ピーク温度は、198℃以上200℃未満に観測される。
以上説明したように、本実施形態に係る熱量測定により、溶融Sn−Zn系めっき鋼板か否かを、従来の方法よりも迅速かつ定量的に判断することができる。これにより、耐食性に優れる燃料タンク用の鉛フリー防錆鋼板として利用可能な溶融Sn−Zn系めっき鋼板か否かを判断することができる。また、上記関係式を満足するめっき鋼板は、Pbを使用しない燃料タンク材料として好適な特性を有する。
本発明の実施形態に係る溶融めっき層の示差走査熱測定曲線の一例を示したグラフ図である。 比較例に該当する溶融めっき層の示差走査熱測定曲線の一例を示したグラフ図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
(本発明者らが得た知見について)
本発明の実施形態に係るSn−Znめっき鋼板の耐食性判定方法およびSn−Znめっき鋼板について説明するに先立ち、本発明者らが溶融Sn−Znめっき層について検討した結果得られた知見について、詳細に説明する。
本発明者らは、耐食性が劣る溶融Sn−Znめっき組織、および、耐食性が優れる溶融Sn−Znめっき組織について、鋭意検討を行った。その結果、以下のような知見を得ることができた。
すなわち、本発明者らは、耐食性が劣る溶融Sn−Znめっき組織は、Sn初晶とセル状の二元Sn−Zn共晶組織とが混在した凝固組織となりやすく、腐食の起点となるZnが共晶セル−共晶セル粒界に偏析しやすい構造である一方で、耐食性が優れる溶融Sn−Znめっき組織は、Sn初晶を積極的に成長させ、共晶セルの成長を抑制させたものであることを突き止めた。さらに、これらのめっき組織の示差走査熱量を測定し、得られた測定結果について検討したところ、Sn初晶が十分に晶出しためっき層と、Sn−Zn共晶セルが成長しためっき層とでは、それぞれの結晶組織に特徴的な融解挙動を示すことを知見した。
本発明は、この知見に基づき、融解に伴うSn初晶とSn−Zn共晶との吸熱量比が特定の領域(範囲)に含まれるか否かを確認することで、耐食性が優れる溶融Sn−Znめっきかどうかを迅速に判断することができるようにしたものである。
すなわち、本発明者らは、熱分析の一手法である示差走査熱量測定(Dirferentialial Scamming Calorimetry:DSC)により得られる溶融めっき層の熱分析結果と、溶融Sn−Znめっき鋼板の耐食性と、の間に強い相関が認められることを見出した。
示差走査熱量測定(Differenlial Scanning Calorimetry:DSC)は、標準物質と試料とを同時に加熱し、温度差が生じた場合、その温度差を打ち消すために必要なエネルギーを加え、要したエネルギー(熱含量変化)の時間変化を基準物質の温度と共に測定する方法である。測定により得られる示差走査熱量測定曲線は、ある温度での吸熱反応、発熱反応に対するシグナルをピークとして与えるとともに、この示差走査熱量測定方法では熱エネルギーを電気のジュール熱で与えるため、反応熱を定量的に測定できる。
すなわち、以下で詳述する本発明の実施形態は、Sn、Znおよび不可避的不純物からなる溶融めっき層を有する鋼板について、前記溶融めっき層のSn−Zn共晶の融解熱(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)とSn初晶の融解熱(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)のそれぞれの吸熱量比が、以下の関係式(1)を満たすか否かに基づいて、高耐食性Sn−Znめっき鋼板の耐食性を高速に判定する方法である。
(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}≧0.3 ・・・(1)
ここで、Sn−Znの二元状態図に着目すると、Zn含有量3質量%での融点は215℃であり、Zn含有量の増加とともに融点は低下していく。また、Zn含有量が8.8質量%で共晶となり、共晶の融点が198.5℃となる。従って、200℃以上230℃未満にSn初晶の融解に対応する吸熱ピークが観測され、198℃以上200℃未満にSn−Zn共晶の融解に対応する吸熱ピークが観測される。
Sn−Znめっき鋼板の溶融めっき層を構成するめっき組織を、上記の関係式(1)に示しためっき条件を満たす溶融Sn−Znめっき組織にするためには、めっき層中のZnの質量比を、3%以上15%以下にする必要がある。Znの質量比が3%未満である場合には、Znによる犠牲防食性が発揮されないため、好ましくない。また、Znの質量比が15%を超えると亜共晶領域となり、Zn初晶とSn−Zn共晶とが晶出し、Zn部のピンホール的な腐食形態を示して耐食性が劣化するとともに、Sn初晶が晶出しない。そのため、(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}<0.3となる。
また、溶融Sn−Znめっきの付着量については、特に限定されるものではないが、10g/m〜60g/mとすることが好ましい。溶融めっきの場合、めっき付着量を制御するためにはガスワイピング法が用いられ、付着量を下げるにはガス吐出量を上げればよいが、ガス吐出量を上げ過ぎると溶融しためっき液のスプラッシュにより表面品位が低下する。このスプラッシュを抑制可能な下限付着量が10g/mであるため、10g/mを下限値とすることが好ましい。一方、めっき付着量を上げると耐食性は向上するものの、60g/mを超過するとスポット抵抗溶接での連続打点が低下してくるため、60g/mを上限値とすることが好ましい。
さらに、溶融Sn−Znめっき処理の前に、鋼板に対してプレめっきを行っても良い。ここで、溶融Sn−Znめっき処理の前に鋼板にプレめっきすることでも、溶融めっき層のめっき組織が変化して耐食性に影響することが判明している。
鋼板に対してNiプレめっきを行う場合、Ni付着量(金属Niとしての付着量)が0.3g/m以下までは、Sn初晶が優先して晶出するために(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}≧0.3となり、優れた耐食性を示す。一方、Ni付着量が0.3g/mを超えると(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}<0.3となり、耐食性が劣化する。従って、鋼板に対してNiプレめっきを行う場合、Ni付着量は、0.3g/m以下とすることが好ましい。
また、鋼板に対してプレめっきとしてFe−Niめっきを行う場合で、かつ、Fe−NiめっきのNi質量比率が80%超である場合、Niプレめっきを行う場合と同様に、Niとしての付着量が0.3g/mを超えると(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}<0.3となり、耐食性が劣化するため、好ましくない。一方、Fe−NiめっきのNi質量比率が80%以下の場合であれば、Ni付着量に関係なく初晶Snが晶出して、(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}≧0.3となり、優れた耐食性を示す。
本発明の実施形態において、溶融Sn−Znめっき鋼板に使用する母材鋼の成分については、特に限定されるものではないが、鋼種としては、例えば、Ti、Nb、B等を添加したIF鋼、Al−k鋼、Cr添加鋼、ステンレス鋼、ハイテン等が挙げられる。
(耐食性の高速判定方法と耐食性を有するめっき鋼板について)
上記知見をもとに本発明者らが完成した耐食性の高速判定方法と、耐食性を有するめっき鋼板について、以下で詳細に説明する。
まず、溶融めっき層の融解挙動について説明する。この融解挙動は、本判定方法では最も重要である。Sn−Znめっき鋼板の耐食性(例えば、この鋼板を用いて製造した燃料タンクの内面と外面における耐食性にも適用できる。)は、DSCによって測定された、溶融めっき層のSn−Zn共晶の融解熱と、Sn初晶の融解熱と、の吸熱量比に基づいて判断される。
本実施形態では、先だって説明したように、溶融めっき層のSn−Zn共晶の融解熱とSn初晶の融解熱との吸熱量比が、以下の関係式(1)を満たすことが必要である。
(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}≧0.3 ・・・(1)
吸熱量比を上記の式(1)のように規定した理由は、(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}=0.3を境界にして、Sn−Znめっき層の組織が大きく異なるためである。
より詳細には、(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}<0.3という熱分析挙動を示すめっき組織は、Sn−Zn共晶セルが全面に成長し、Sn−Zn共晶セル−共晶セル粒界でめっき層を深さ方向に貫通するZn偏析が起こりやすい。
一方、(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}≧0.3という熱分析挙動を示すめっき組織は、Sn−Zn共晶セル凝固を抑制するのに十分なSn初晶が晶出している。このため、Zn偏析が劇的に減少している。その結果、溶融めっき層の耐食性が飛躍的に向上するとともに加工性や溶接性も向上していた。
以上により、耐食性に優れる溶融めっき層を構成するSn−Zn二元合金組成では、融解に伴うSn初晶とSn−Zn共晶との吸熱量比を、下記の式(1)のように規定した。
(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)十(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}≧0.3 ・・・(1)
ここで、本実施形態に係る溶融めっき層の組成では、Sn初晶の融解に伴う吸熱ピーク温度bが200℃以上230℃以下となり、Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱ピーク温度aが198℃以上200℃未満となる。
従って、上記2種類のめっき組織の吸熱量が上記関係式(1)を満足する場合、判定対象としたSn−Znめっき鋼板は、鉛フリー防錆鋼板として利用可能な耐食性を有すると判定することができ、関係式(1)を満たさない場合には、判定対象としたSn−Znめっき鋼板は、鉛フリー防錆鋼板として利用可能な耐食性を有しないと判定することができる。
逆に、3質量%〜15質量%のZnを含み、残部がSnおよび不可避的不純物からなる溶融めっき層を有しており、この溶融めっき層の熱分析結果が上記関係式(1)を満足している溶融Sn−Znめっき鋼板は、鉛フリー防錆鋼板として利用可能な程の耐食性を有する鋼板となる。
本実施形態では、上記のような溶融熱(溶融に伴う吸熱量)を測定するに際して、物質の熱分析を行うことが可能な公知の測定機器を利用することが可能であるが、このような測定機器の一例として、示差走査熱量測定装置(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を挙げることができる。示差走査熱量測定装置を用いて溶融熱を測定する場合、例えば溶融Sn−Zn系めっき鋼板(厚み:0.5mm〜2.0mm)を直径6mmφに打ち抜き、アルミニウム製パンに封入することで測定試料とすることができる。また、昇温速度は、一般的には2℃/min〜20℃/minの範囲で選択できる。得られる測定結果は、昇温速度に依存性を持つ。昇温速度が大きくなると、全体の挙動は高温側にシフトし、ピーク分解能は低下する。ただし、単位時間あたりの変化量は大きくなるので、見かけの感度は高まり、微小ピークの検出には有利なことがある。また、目的とする挙動自体、昇温速度依存性がある場合があり、種々の昇温速度で測定を試みることが好ましいものの、本実施形態においては、昇温速度2.5℃/minで、効率的かつ最適な示差走査熱量測定曲線を得ることができた。この2.5℃/minという昇温速度では、198℃以上200℃未満の吸熱ピークと200℃以上230℃以下に現れる吸熱ピークとを、より明確に分離することが可能である。
なお、本実施形態では、吸熱ピーク温度は、示差走査熱量測定曲線で現れる吸熱ピーク頂点温度(ピークトップ温度)をさす。また、吸熱量は、ベースラインと曲線で囲まれた面積より求めることとする。
以上説明したように、本実施形態に係る熱量測定により、耐食性に優れる燃料タンク用の鉛フリー防錆鋼板として利用可能な溶融Sn−Zn系めっき鋼板か否かを、従来の方法よりも迅速かつ定量的に判断することができる。また、上記関係式(1)を満足するめっき鋼板は、Pbを使用しない燃料タンク材料として好適な特性を有する。
以下に、実施例および比較例を示しながら、本発明の実施形態に係る耐食性の判定方法および溶融Sn−Znめっき鋼板について詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の実施形態に係る耐食性の判定方法および溶融Sn−Znめっき鋼板のあくまでも一例であって、本発明に係る耐食性の判定方法および溶融Sn−Znめっき鋼板が、下記に示す実施例に限定されるわけではない。
[実験方法]
以下に示す実験例では、板厚0.8mmの焼鈍・調圧済みのIF鋼板に、プレめっき処理として、電気めっき法によりワット浴(硫酸ニッケル240g/L、塩化ニッケル45g/L、ホウ酸30g/L、pH=4.0)からNiめっきを0.1〜1g/m(片面あたり浴温度50℃、電流密度10A/dm)施した。Fe−Ni合金めっき浴は、前記のNiめっきのワット浴に対して、硫酸鉄を30〜300g/L添加したものを使用した。Ni付着量は、蛍光X線分析による検量線法にて測定した。Fe−NiめっきのNi質量比は、事前にCu板にめっきしたあと、めっきを塩酸(1N)で溶かした水溶液中のFe,Ni濃度をICP法により分析することで特定した。
これらの鋼板に、塩化亜鉛、塩化アンモニウムおよび塩酸を含むめっき用フラックスを塗布した後、300℃のSn−Zn系溶融めっき浴に導入した。めっき浴と鋼板表面とを5秒間反応させた後、めっき浴より鋼板を引き出し、ガスワイビング法により付着量調整を行い、めっき付着量(Sn+Znの全付着量)を30g/m(片面あたり)に制御した。ガスワイビングの後、エアジェットクーラーにて10℃/secの冷却速度にて溶融めっき層を凝固した。めっき付着量は、蛍光X線分析によりSnおよびZnの付着量を測定し、その合計より求めた。
得られたSn−Znめっき鋼板の示差走査熱量測定曲線を、パーキンエルマー製DSC7を使用して求めた。測定試料の準備は、Sn−Znめっき鋼板を直径6mmφに打ち抜き、アルミニウム製パンに封入した。昇温速度を2.5℃/minとして、常温から250℃まで測定を行った。吸熱ピーク温度a、bは、示差走査熱量測定曲線で現れる吸熱ピーク頂点温度(ピークトップ温度)より求め、また、吸熱量は、ベースラインと曲線で囲まれた面積より求めた。
[評価方法]
燃料タンク外面の塩害環境での耐食性は、JIS Z2371に則した塩水噴霧試験(Salt Spray Testing:SST)により、960時間後の赤錆発生面積率で評価し、赤錆面積率10%以下を良好とした。
燃料タンク内面の耐食性は、以下の方法により行なった。
圧力容器中にて100℃で24時間放置した強制劣化ガソリンに10vo1%の水を添加し、腐食液を作製した。この腐食液350ml中にて、ビードつき引抜加工を行っためっき鋼板(板厚減少率15%、30×35mm端面・裏面シール)を45℃にて3週間の腐食試験を行い、溶出した金属イオンのイオン種と溶出量を測定した。得られた溶出量について、総金属量200ppm未満を良好とした。
加工性は、幅30mm×300mmの試験片を、2個の表面が平滑な金型(幅60mm×長さ40mm;材質SKD11)により1500kgで押えながら挟み、金型間を引き抜く際の動摩擦抵抗を測定することで評価し、摩擦係数が0.13以下を良好とした。
溶接性は、スポット抵抗溶接法にて評価した。より詳細には、板厚0.8mmの試料を2枚重ね合わせ、電極はCr−Cu電極(DR8R−6Φ40R)、加圧力は200kg、予備加圧50サイクル−通電12サイクル−ホールド3サイクル、通電電流は8kAにて、溶接ボタン径が3.6mm以下になるまでの溶接打点数にて評価した。得られた打点数が200点以上を、良好とした。
得られた評価結果を、以下の表1に示した。
ここで、表1中、外面耐食性、内面耐食性、加工性および溶接性について、評価結果が良好であった場合には、「良」と示しており、評価結果が良好ではなかった場合には、「劣」と示している。また、各試料の総合評価の結果を、以下のように示した。
A:Good、使用可
B:Bad、使用不可
Figure 2014177661
図1は、試料No.1の示差走査熱量測定曲線を示す。表1のNo.1〜16の発明例では、いずれも使用に十分耐えうる特性を有している。No.1〜16は、Ni付着量の影響を見るために作製された試料である。Ni付着量アップにより、吸熱量比が低下(すなわちSn初晶が減少)していっているが、No.4でも実用上は使用可能レベルである。
図2は、No.17の示差走査熱量測定曲線を示す。No.17〜18の比較例では、Ni付着量が多く、吸熱量比(DSC比)が低下しており、Sn初晶がほとんど現れなかった。共晶セル粒界のZn偏析および粗大Zn結晶の成長が助長されるため、内外面いずれの耐食性も低下して加工性や溶接性も低下した。No.19の比較例ではZn含有量(質量%)が高く、もはやSn初晶が現れなかった。共晶セル粒界のZn偏析および粗大Zn結晶の成長が助長されるため、内外面いずれの耐食性も低下して加工性や溶接性も低下した。
また、表1から明らかなように、上記関係式(1)で表される吸熱量比(DSC比)が0.3以上となっているNo.1〜No.16では耐食性(外面耐食性および内面耐食性)は良好と評価されている一方、吸熱量比(DSC比)が0.3未満となっているNo.17〜No.19では、耐食性(外面耐食性および内面耐食性)は良好ではないと評価されている。この結果からも明らかなように、上記関係式(1)を満足するか否かは耐食性に関する評価結果と相関があり、この関係式(1)を満足するか否かに応じて、耐食性を有しているか否かを迅速に判定することが可能であることがわかる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明の示差走査熱量測定により耐食性、加工性、溶接性に優れ、劣化ガソリン等に対しても長期間耐える燃料タンク用の鉛フリー防錆鋼板として用いることができる溶融Sn−Zn系めっき鋼板を迅速に判断することができる。このようなめっき鋼板は、Pbを使用しない燃料タンク材料として好適な特性を有する。
a Sn−Zn共晶の吸熱ピーク温度
b Sn初晶の吸熱ピーク温度

Claims (3)

  1. 3質量%〜15質量%のZnを含み、残部がSnおよび不可避的不純物からなる溶融めっき層を有したSn−Znめっき鋼板について、前記溶融めっき層のSn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量と、前記溶融めっき層のSn初晶の融解に伴う吸熱量とが、以下の関係式を満足するか否かに基づいて、前記Sn−Znめっき鋼板の耐食性を判定し、
    前記融解に伴う吸熱ピーク温度および前記融解に伴う吸熱量は、示差走査熱量測定法により測定され、
    前記Sn初晶の融解に伴う吸熱ピーク温度は、200℃以上230℃未満に観測され、
    前記Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱ピーク温度は、198℃以上200℃未満に観測される
    ことを特徴とする、Sn−Znめっき鋼板の耐食性判定方法。

    (Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}≧0.3
  2. 前記関係式を満足する場合、判定対象とした前記Sn−Znめっき鋼板は、鉛フリー防錆鋼板として利用可能な耐食性を有すると判定し、
    前記関係式を満たさない場合には、判定対象とした前記Sn−Znめっき鋼板は、鉛フリー防錆鋼板として利用可能な耐食性を有しないと判定する
    ことを特徴とする、請求項1に記載のSn−Znめっき鋼板の耐食性判定方法。
  3. 鋼板表面に、3質量%〜15質量%のZnを含み、残部がSnおよび不可避的不純物からなる溶融めっき層を有しており、
    前記溶融めっき層のSn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量と、前記溶融めっき層のSn初晶の融解に伴う吸熱量とが、以下の関係式を満足する
    ことを特徴とする、Sn−Znめっき鋼板。

    (Sn初晶の融解に伴う吸熱量)/{(Sn初晶の融解に伴う吸熱量)+(Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱量)}≧0.3

    ここで、上記関係式において、
    前記融解に伴う吸熱ピーク温度および前記融解に伴う吸熱量は、示差走査熱量測定法により測定されたものであり、
    前記Sn初晶の融解に伴う吸熱ピーク温度は、200℃以上230℃未満に観測され、
    前記Sn−Zn共晶の融解に伴う吸熱ピーク温度は、198℃以上200℃未満に観測される。
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