以下、添付図面を参照しつつ、生産システム、及び、生産システムを構成するロボットセル装置の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
生産システム1は、図1に示すように、複数のロボットセル装置10,20,30,40と、複数のロボットセル装置10,20,30,40を統括的に制御するシステムコントローラ50と、各ロボットセル装置10,20,30,40から加工済みワークを受け取る又は製品の組み立てに必要なワーク用部品を各ロボットセル装置10,20,30,40に供給する搬送ロボット60とを備えて構成される。各ロボットセル装置10,20,30,40は、いわゆるセル生産となるように、例えば図4の模式的な平面図に示されるように互いに隣接して配置され、半製品であるワークに対して所定のワーク用部品を取り付けるといった各種の組立作業をシステムコントローラ50による統括制御に基づいて行い、製品を完成する。
本実施形態では、一例として4つのロボットセル装置10,20,30,40を用いて説明するが、これに限定される訳ではなく、2つ又は3つのロボットセル装置で生産システムを構成してもよいし、5つ以上のロボットセル装置で生産システムを構成してもよい。
ここで、生産システム1を構成するロボットセル装置10,20,30,40について、図2及び図3を参照して説明する。以下では、重複する説明を省略するため、ロボットセル装置10を例にとって説明するが、生産システム1を構成する他のロボットセル装置20,30,40の基本的な構成はロボットセル装置10と同様である。なお、各ロボットセル装置10,20,30,40で行う加工の種類が異なる場合があり、その場合には、加工の種類の相違に応じてロボットの構成等が多少異なることになる。
ロボットセル装置10は、図2及び図3に示すように、生産ロボット12、架台14、制御装置16、接点検知部18(18a〜18f)、及び、ブース19を備えている。ブース19は、4つの柱部19a〜19dと、柱部19a〜19dによって支持される天板19eと、透明カバー19f〜19hとを有しており、生産ロボット12を外部から保護する。なお、ブース19は前面が例えば開放されている。
生産ロボット12は、例えば6軸制御が可能な組立ロボットであり、互いに回動可能に連結されたロボットアーム12aと、連結されたロボットアーム12aの先端に設けられたハンド12bとを有している。生産ロボット12は、搬送ロボット60(図5参照)によって搬送されて装置ストッカーに格納されるワーク用部品をハンド12bで把持し、半製品であるワークに組み付ける等の作業を行う。また、生産ロボット12は、加工済みのワークを搬送ロボット60に受け渡す。生産ロボット12による組立作業等は、制御装置16によって制御される。図2及び図3に示す例では、生産ロボット12は、一腕の作業ロボットであるが、双腕ロボット等の他の組立ロボットでもよいし、組立以外の加工(例えば接着剤の塗布など)を行うロボットでもよい。
架台14は、生産ロボット12を固定して支持するための部材であり、生産ロボット12の基端が接続固定される。架台14は、生産ロボット12が組立作業を行う多角形形状の加工ステージ11と、その角部において加工ステージ11を下方から支持する脚部13a〜13dとを有している。加工ステージ11は、本実施形態では、例えば平面視した際の形状が台形形状の板状部材である。加工ステージ11は、矩形形状や六角形形状といった他の多角形形状の板状部材でもよいし、円形形状や多角形形状の一部に円弧が含まれるような形状の板状部材であってもよい。なお、ロボットセル装置10の平面形状は、この加工ステージ11の平面形状によって画定される。
脚部13a〜13dは、例えば断面が矩形形状の部材であり、加工ステージ11の各角部の下面に接続されて、加工ステージ11及び加工ステージ11に固定される生産ロボット12を支持している。架台14では、このように加工ステージ11を例えば4本の脚部13a〜13dで支持する構成としていることから、所定の空間MAが架台14の下方に形成される。この空間MAは、搬送ロボット60が走行するための領域であり、搬送ロボット60が走行可能な高さを有している(図5参照)。また、空間MAの平面領域としては、加工ステージ11の平面形状に対応する床面FLの領域(例えば台形形状)の内、脚部13a〜13d及び制御装置16が配置される箇所を除いた領域となっている。つまり、搬送ロボット60が走行可能な空間MAは、加工ステージ11、脚部13a〜13d、制御装置16及びロボットセル装置10が設置される床面FLによって画定される。
制御装置16は、生産ロボット12の動作を制御する装置であり、記憶装置、電子演算装置、入力装置及び表示装置を有するコンピュータにより構成されている。制御装置16は、生産ロボット12及びシステムコントローラ50と相互に通信可能となるように接続されており、ロボットセル装置10に割り当てられた作業に必要なワーク用部品の内部ストック状況、ロボットセル装置10での作業の進捗情報、及び、製造における上流/下流工程を担う他のロボットセル装置での作業の進捗情報等の信号を送受信する。制御装置16は、送受信するこれら各種情報に基づいて、生産ロボット12の動作を制御する。制御装置16は、その下端がロボットセル装置10が設置される床面FLに至るように装置の後ろ側(即ち側面11d側)に設置されている。
接点検知部18は、ロボットセル装置10が他のロボットセル装置20,30,40と隣接配置されているか否か、及び、隣接配置されている場合には、どのような状態で隣接配置されているかを検知するための接点式の検知部材である。接点検知部18は、ロボットセル装置10の各側面に相当する加工ステージ11の3つの側面11a〜11cの両端に対で設けられている。本実施形態では、ロボットセル装置10は、図2〜図4に示すように、例えば制御装置16が配置された装置後方の側面11dを除く3つの側面11a〜11cに合計3対の接点検知部18a〜18fを有している。なお、ロボットセル装置20,30,40では、後述する説明を容易にするため、接点検知部28(28a〜28f),38(38a〜38f),48(48a〜48f)としているが接点検知部18と同様である。
3対の接点検知部18a〜18fには、加工ステージ11(ロボットセル装置10)における設置個所(例えば接点検知部18bの場合、装置前方の側面11aの左端等)を示す識別情報が予め割り当てられており、また、その間隔が他のロボットセル装置20,30,40における接点検知部28,38,48の配置間隔と同じになっている。このため、後述するように、ロボットセル装置10の何れかの対の接点検知部18a〜18fが他のロボットセル装置20,30,40における、ある対の接点検知部28,38又は48と対向して両者が互いに接したことが導通などの手段によって検知されると、検知された接点検知部の識別情報を制御装置16を介して、システムコントローラ50に出力する。
システムコントローラ50では、各ロボットセル装置10,20,30,40からこのような検知された識別情報を取得すると、これら検知された識別情報に基づいて各ロボットセル装置10,20,30,40がどのような配置状態で互いに配置されているかを算出する。本実施形態では、検知部として、物理的に直接接触して導通するといった検知手段を例示したが、これに限定される訳ではなく、非接触な検知手段等を用いてもよい。
ここで、図1に戻り、生産システム1の説明を続ける。システムコントローラ50は、ロボットセル装置10,20,30,40の動作を統括的に制御する制御部であり、記憶装置、電子演算装置、入力装置及び表示装置を有するコンピュータにより構成されている。システムコントローラ50は、ロボットセル装置10,20,30,40での作業に用いるワーク用部品をどのタイミングで何れのロボットセル装置10,20,30,40に供給するか、及び、ロボットセル装置10,20,30,40で加工された加工済みワークをどのタイミングで回収(受け渡し)するか等を判定する。また、システムコントローラ50は、これら判定結果に基づいてワーク用部品を供給する又は加工済みワークを回収するための搬送ロボット60を制御する搬送ロボット制御部52を有している。
搬送ロボット制御部52は、搬送ロボット60の搬送路Tを設定する搬送路設定部54を含んでおり、搬送路設定部54で設定した搬送路Tに沿って搬送ロボット60を移動させる。搬送ロボット制御部52は、搬送ロボット60の移動制御信号を無線通信によって送信する。
搬送路設定部54は、何れかのロボットセル装置10,20,30,40からシステムコントローラ50に対して所定のワーク用部品の供給指示信号を受信すると、接点検知部18等によって検知、算出されたロボットセル装置10,20,30,40の隣接配置状態と、当該配置状態における搬送ロボット60の現在位置情報とに基づいて、各ロボットセル装置10,20,30,40の下方の空間MAにおける搬送ロボット60の搬送路Tを設定する。搬送路設定部54は、この搬送路Tが平面視した際に当該ワーク部品を必要とするロボットセル装置10,20,30又は40の受渡し部17(図4,図5参照)を通るように、搬送路Tを設定する。受渡し部17は、例えば加工ステージ11に設けられた孔等である。搬送ロボット60が当該ロボットセル装置10,20,30又は40にワーク部品を供給できるようであれば、搬送路Tが、平面視した際に受渡し部17の近辺を通るように設定してもよい。なお、搬送路設定部54は、搬送路Tを設定する際、制御装置16及び脚部13が配置されている箇所を走行禁止領域として搬送路Tから除外する。
また、搬送路設定部54は、何れかのロボットセル装置10,20,30,40からシステムコントローラ50に対してワークに対する加工が終了し加工済みワークの回収の指示信号を受信すると、部品供給の場合と同様に、接点検知部18等によって検知、算出されたロボットセル装置10,20,30,40の配置状態と、当該配置状態における搬送ロボット60の現在位置情報とに基づいて、各ロボットセル装置10,20,30,40の下方の空間MAにおける搬送ロボット60の搬送路Tを設定する。搬送路Tが受渡し部17又はその近辺を通るように設定されるのは、部品供給の場合と同様である。
搬送ロボット60は、図5に示すように、複数の車輪62を有しており、必要とされるワーク用部品を所定のロボットセル装置10等に供給したり、他のロボットセル装置等への搬送が必要とされる加工済みワークを回収したりする移動式のロボットである。搬送ロボット60は、供給及び回収用のマニピュレータを有しており、ロボットセル装置10の受渡し部17を介して必要なワーク用部品の供給や加工済みワークの回収を実行する。搬送ロボット60は、車輪62の回転数や操舵方向等を検出することで、現在位置を取得する。搬送ロボット60は、床面FL上に設けられたマークで自機の位置を取得したり、又は現在位置を修正するようにしてもよい。なお、ロボットセル装置10等の下方空間MAは搬送ロボット60の高さよりも高くなっており、搬送ロボット60の自由な移動が可能となっている。
続いて、図4を参照して、搬送路設定部54による搬送ロボット60の搬送路Tの設定方法の例について説明する。
まず、各ロボットセル装置10,20,30,40が図4に示すような所定のセル生産位置に配置されると、各ロボットセル装置10,20,30,40の接点検知部18,28,38,48が対向する接点検知部を検知する。図4に示す例では、ロボットセル装置10の接点検知部18a,18bがロボットセル装置20の接点検知部28b,28aそれぞれに接する。また、ロボットセル装置10の接点検知部18c,18dがロボットセル装置30の接点検知部38d,38cそれぞれに接する。また、ロボットセル装置10の接点検知部18e,18fがロボットセル装置40の接点検知部48f,48eそれぞれに接する。
そして、各ロボットセル装置10,20,30,40から、これら接点検知部18,28,38,48で検知された識別情報がシステムコントローラ50へ送信される。システムコントローラ50の搬送路設定部54では、これら識別情報からロボットセル装置10,20,30,40の配置状態を算出する。具体的には、ロボットセル装置10の前方の側面11aがロボットセル装置20の前方の側面に隣接配置され、ロボットセル装置10の横の両側面11b,11cがそれぞれロボットセル装置20,30の横の側面に隣接配置されていることが、搬送路設定部54によって算出される。
続いて、搬送路設定部54は、これらロボットセル装置10,20,30,40の下方の領域の内、各制御装置16及び脚部13によって搬送ロボット60が移動できない領域を除いた空間MA(平面視、略台形形状が4つ集まった領域)において、搬送ロボット60が必要とされるロボットセル装置10の受渡し部17を通るように、搬送路Tを設定する。そして、搬送路設定部54は、この設定した搬送路Tを移動してロボットセル装置10にワーク用部品を供給したり、又は、加工済みワークを回収するように無線信号を搬送ロボット60に送信する。この無線信号を受信した搬送ロボット60は、搬送路Tを通って、ロボットセル装置10へ移動し、ワーク用部品の供給や加工済みワークの回収等を実行する。
各ロボットセル装置10,20,30,40は、このような搬送制御を行う搬送ロボット60によって必要なワーク用部品を取得し、ワークに取り付ける等の加工を行って、製品を完成する。
このように、生産システム1では、各ロボットセル装置10,20,30,40の架台14の下方に搬送ロボット60が移動可能な空間MAがそれぞれ設けられており、搬送路設定部54は、これら空間MAを含むように搬送ロボット60の搬送路Tを設定している。つまり、ロボットセル装置が設置されていない床面FLの領域だけでなく、ロボットセル装置10,20,30,40が設置されている床面FLの領域においても、搬送ロボット60を自由に移動させることができる。このため、生産システム1によれば、搬送ロボット60の搬送路の確保をそれほど考慮することなくセル生産により適したロボットセル装置10,20,30,40の配置を行うことができ、これにより、その自由度を高めることが可能となる。
また、生産システム1では、各ロボットセル装置10,20,30,40は、互いが隣接配置されているか否か等を検知する接点検知部18,28,38,48を有しており、搬送路設定部54は、接点検知部18,28,38,48で検知された検知情報(位置識別情報)に基づいて各ロボットセル装置10,20,30,40の配置状態を算出し、この配置状態に応じて搬送ロボット60の搬送路Tを設定している。これにより、接点検知部18,28,38,48を各ロボットセル装置10,20,30,40に設けるといった簡易な手段で各ロボットセル装置10,20,30,40の配置状態を容易に算出することができる。
特に、接点検知部18,28,38,48は、各ロボットセル装置10,20,30,40それぞれの側面に設けられており、各ロボットセル装置10,20,30,40の各接点検知部18,28,38,48が互いに接触することで各ロボットセル装置10,20,30,40の側面が他のロボットセル装置の何れの側面に隣接配置されたかの配置状態を算出するため、簡易な手段であるものの、必要とされる配置状態を確実に算出することができる。
また、生産システム1では、ロボットセル装置10等は、生産ロボット12による加工に用いるワーク用部品の供給等を受ける受渡し部17を有し、この受渡し部17が平面視した際に空間MAに重なるようになっている。そして、搬送路設定部54は、平面視した際にこの受渡し部17又は受渡し部17の近辺を通るように搬送ロボット60の搬送路Tを設定するようになっている。これにより、搬送ロボット60によるワーク用部品の供給や加工済みワークの回収をより確実に行うことができる。
また、生産システム1では、ロボットセル装置10等の架台14は、加工を行う加工ステージ11及び加工ステージ11を支持する脚部13を含んでおり、加工ステージ11と脚部13等によって移動用の空間MAが画定されるようになっている。つまり、所定の長さの脚部13を設けるといったことにより、ロボットセル装置10の下方に搬送ロボット60が移動可能な空間を設けているため、複雑な装置構成とすることなく、搬送ロボット60用に十分な移動空間を確保することが可能となっている。
また、上記生産システム1による製品の生産方法は、ロボットセル装置10,20,30,40で製品を生産するための生産方法であり、加工済みワークの受け取り及びワーク用部品の供給の少なくとも一方を行う搬送ロボット60が移動可能な空間MAを下方に設けたロボットセル装置10等の配置状態を算出するステップと、この算出するステップで算出された配置状態に応じて、空間MAを含むように搬送ロボット60の搬送路Tを設定するステップと、ロボットセル装置10等のうち少なくとも何れかの装置が、搬送ロボット60から受け取ったワーク用部品をワークに組み付ける又は加工済みワークを搬送ロボット60に受け渡すステップと、を備えている。このように搬送路Tを決定するため、ロボットセル装置10等の配置を決める際に搬送路Tをそれほど考慮しなくてもよくなり、より効率的なセル生産の配置を自由に決めることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形を適用できる。例えば、上記実施形態では、脚部13a〜13dとして断面矩形形状の中実部材を用いたが、強度を十分に確保することができれば、各ロボットセル装置10等の脚部13a〜13dとして伸縮可能なテレスコピック機構の部材を用いてもよい。この場合、ロボットセル装置10等を運送する際の装置全長を低めにすることができるので、運送が容易になり、また、装置を使用する際には、十分な床面高さを確保して自由に搬送ロボット60を移動させることが可能となる。また、ロボットセル装置10等において、脚部13とその他の部材とが分離可能となっていてもよい。この場合も同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態では、ワーク用部品の供給や加工済みワークの回収をすべて搬送ロボット60で行う例を示したが、搬送ロボット60がその一部のみを行い、他の作業を他の手段で行うようにしてももちろんよい。また、上記実施形態では、搬送ロボット60の搬送路Tを設定する搬送路設定部54をシステムコントローラ50に設けた例を示したが、各ロボットセル装置10等の制御装置16でかかる搬送路設定部の機能の一部又は全部を担うようにして、搬送ロボット60の搬送路Tの設定及びその走行制御を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態では、制御装置16を装置の後方に配置した例であったため、側面11dを通過する搬送路Tを設定できなかったが、制御装置16を他の部分に移動することで、側面11dを通過可能となるように搬送路Tを設定してももちろんよい。